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技術 機械構造部品

出願人 日本製鉄株式会社
発明者 岩崎竜也渡里宏二
出願日 2018年8月9日 (2年4ヶ月経過) 出願番号 2018-150168
公開日 2020年2月20日 (10ヶ月経過) 公開番号 2020-026538
状態 未査定
技術分野 鋼の加工熱処理 物品の熱処理
主要キーワード 応力装置 荷重振幅 表面焼き シャフト部品 熱間鍛造装置 レーザー焼入れ 環状切欠 荒切削加工
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2020年2月20日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (2)

課題

表面焼き入れ時の加熱条件にばらつきがあっても、特に優れた疲労強度機械構造部品を提供する。

解決手段

C、Si、Mn、P、S、Cr、Al、Nを含有し、残部がFeおよび不純物からなり、部品表層にある硬さ500HV超の領域よりも0.3mm深い位置での炭化物中のMnとCrの和の、Feに対する質量比率である(Mnθ+Crθ)/Feθが0.18以下であり、A3点が760℃以下であり、部品表面から500μm深さにおける残留オーステナイト体積率が4.0〜25.0%であり、部品表面から500μm深さにおけるマルテンサイトブロック粒径分布標準偏差が0.5〜2.0μmであり、表層の一部または全部に塑性流動層を有する機械構造部品を採用する。 Mnθ、CrθおよびFeθは、それぞれ炭化物中のMn、CrおよびFeの質量%を表す。

概要

背景

自動車産業機械および建設機械などに用いられる機械部品には、疲労強度を向上させる目的で、部品表面高周波焼入れレーザー焼入れ等の部分焼入れによって硬化させる処理が施されることがある。表面焼入れ材の疲労強度は、焼き入れ後表層近傍の硬さプロファイル組織の影響を受ける。そこで、鋼成分の最適化により焼き入れ性を向上し、また有害な介在物無害化することで、あるいは、鋼材製造条件を制御して組織を微細化することで高い疲労強度を得る技術が開発されている。

特許文献1には、鋼材成分を最適化すると共に、疲労に対して有害な介在物形態を無害化することで、疲労強度を向上させる技術が記載されている。特許文献1によると、高周波加熱により、表層部を均一に加熱し、深い硬化層が得られた場合に、優れた疲労特性を得ることが出来る。

ところが、鋼を種々の部品形状に加工し、種々の条件で表面焼入れを行うと、疲労特性はばらつき、必ずしも高い疲労強度が得られないことがある。この現象は、表面焼き入れ用の機器の出力を一定として処理したとしても、部品の形状が複雑であれば、場所によって、実質的に高温にさらされる時間や、到達温度といった加熱条件に差が生じ、加熱中のオーステナイト組織焼入れ組織にばらつきが生じるためである。

実質的な加熱条件が変化した場合の疲労特性のばらつきの程度の大きさは、鋼成分や組織の影響を受けるが、特許文献1に記載された技術を適用しても、疲労特性のばらつきを低減することができない。さらに近年、部品高強度化ニーズがますます高まっており、更なる疲労特性の改善が求められる場合がある。

特許文献2では、焼入れ後切削加工を行うことで残留オーステナイト加工誘起マルテンサイト変態させ、焼入れままよりもさらに曲げ疲労強を向上させた部品及びその製造方法が記載されている。特許文献2では、切削時により多くの加工誘起変態を生じさせるために、合金元素を添加して焼入れ後の残留オーステナイト量を確保している。しかし、省合金化の観点からはより少ない合金添加量においても優れた疲労強度を発揮することが求められる。

概要

表面焼き入れ時の加熱条件にばらつきがあっても、特に優れた疲労強度の機械構造部品を提供する。C、Si、Mn、P、S、Cr、Al、Nを含有し、残部がFeおよび不純物からなり、部品表層にある硬さ500HV超の領域よりも0.3mm深い位置での炭化物中のMnとCrの和の、Feに対する質量比率である(Mnθ+Crθ)/Feθが0.18以下であり、A3点が760℃以下であり、部品表面から500μm深さにおける残留オーステナイト体積率が4.0〜25.0%であり、部品表面から500μm深さにおけるマルテンサイトブロック粒径分布標準偏差が0.5〜2.0μmであり、表層の一部または全部に塑性流動層を有する機械構造部品を採用する。 Mnθ、CrθおよびFeθは、それぞれ炭化物中のMn、CrおよびFeの質量%を表す。なし

目的

本発明の目的は、表面焼き入れ時の加熱条件にばらつきが生じた場合であっても、特に優れた疲労強度の機械構造部品を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

質量%で、C:0.40〜0.80%、Si:0.01〜0.40%、Mn:1.40〜3.00%、P:0.050%以下、S:0.001〜0.100%、Cr:0.03〜0.40%、Al:0.003〜0.080%、N:0.005〜0.025%を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、部品表層にある硬さ500HV超の領域よりも0.3mm深い位置での炭化物中のMnとCrの和の、Feに対する質量比率である(Mnθ+Crθ)/Feθが0.18以下であり、下記の(1)式で表わされるA3点が760℃以下であり、部品表面から500μm深さにおける残留オーステナイト体積率が4.0〜25.0%であり、部品表面から500μm深さにおけるマルテンサイトブロック粒径分布標準偏差が0.5〜2.0μmであり、表層の一部または全部に塑性流動層を有することを特徴とする機械構造部品。A3(℃)=854−180×C−20×Mn+40×Si−10×Cr−200×N…(1)ここで、式(1)中の各元素記号は、各元素含有量(質量%)であり、前記Mnθ、前記Crθおよび前記Feθは、それぞれ前記炭化物中のMn、CrおよびFeの質量%を表す。

請求項2

部品表面から0.9mm深さまでの範囲の硬さが500HV超である請求項1に記載の機械構造部品。

請求項3

部品表面から0.9mm深さの位置における初析フェライトパーライト面積率の総和が10面積%以下である請求項1または請求項2に記載の機械構造部品。

請求項4

さらに、Ti:0〜0.05%、Nb:0〜0.05%の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の機械構造部品。

請求項5

さらに、V:0〜0.15%、Mo:0〜0.50%、Cu:0〜0.50%、Ni:0〜0.50%の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の機械構造部品。

請求項6

さらに、B:0〜0.0050%、Ca:0〜0.005%およびBi:0〜0.4%の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の機械構造部品。

技術分野

0001

本発明は、機械構造部品に関し、特に、部品表面焼入れて用いる鋼製部品に用いるのに好適な、高い疲労強度を有する機械構造部品に関する。

背景技術

0002

自動車産業機械および建設機械などに用いられる機械部品には、疲労強度を向上させる目的で、部品表面を高周波焼入れレーザー焼入れ等の部分焼入れによって硬化させる処理が施されることがある。表面焼入れ材の疲労強度は、焼き入れ後表層近傍の硬さプロファイル組織の影響を受ける。そこで、鋼成分の最適化により焼き入れ性を向上し、また有害な介在物無害化することで、あるいは、鋼材製造条件を制御して組織を微細化することで高い疲労強度を得る技術が開発されている。

0003

特許文献1には、鋼材成分を最適化すると共に、疲労に対して有害な介在物形態を無害化することで、疲労強度を向上させる技術が記載されている。特許文献1によると、高周波加熱により、表層部を均一に加熱し、深い硬化層が得られた場合に、優れた疲労特性を得ることが出来る。

0004

ところが、鋼を種々の部品形状に加工し、種々の条件で表面焼入れを行うと、疲労特性はばらつき、必ずしも高い疲労強度が得られないことがある。この現象は、表面焼き入れ用の機器の出力を一定として処理したとしても、部品の形状が複雑であれば、場所によって、実質的に高温にさらされる時間や、到達温度といった加熱条件に差が生じ、加熱中のオーステナイト組織焼入れ組織にばらつきが生じるためである。

0005

実質的な加熱条件が変化した場合の疲労特性のばらつきの程度の大きさは、鋼成分や組織の影響を受けるが、特許文献1に記載された技術を適用しても、疲労特性のばらつきを低減することができない。さらに近年、部品高強度化ニーズがますます高まっており、更なる疲労特性の改善が求められる場合がある。

0006

特許文献2では、焼入れ後切削加工を行うことで残留オーステナイト加工誘起マルテンサイト変態させ、焼入れままよりもさらに曲げ疲労強を向上させた部品及びその製造方法が記載されている。特許文献2では、切削時により多くの加工誘起変態を生じさせるために、合金元素を添加して焼入れ後の残留オーステナイト量を確保している。しかし、省合金化の観点からはより少ない合金添加量においても優れた疲労強度を発揮することが求められる。

先行技術

0007

国際公開第2014/061782号
特開2017−82299号公報

発明が解決しようとする課題

0008

本発明の目的は、表面焼き入れ時の加熱条件にばらつきが生じた場合であっても、特に優れた疲労強度の機械構造部品を提供することである。

課題を解決するための手段

0009

本発明者らは、種々の高周波焼き入れ条件、およびレーザー焼入れ条件で鋼の表面を焼き入れ、切削前後の組織を観察することで、下記(a)〜(h)の知見を得た。
(a)表面焼き入れ条件がばらついた場合に、疲労強度が大きく劣化する鋼では、焼き入れ直前の状態における鋼組織が不均一である。
(b)表面焼き入れ条件がばらついても、表面焼入れ時直前の鋼組織を均一なオーステナイトとするために必要な要件の一つは、鋼のA3点を下げることである。特にMnを含有させることで、効果的にA3点を低下させることが可能である。
(c)表面焼き入れ条件がばらついても高い疲労特性を得るために必要なもう一つの要件は、セメンタイト母相置換型合金元素濃度の差を小さくすることである。これは、セメンタイトと母相の置換型合金元素濃度差が大きくなると、溶解に先立って元素拡散が必要になるため、A3点以上の温度であっても、セメンタイトが容易に分解せず、均一なオーステナイト組織が得られないためである。
(d)Crはセメンタイトに濃化しやすい元素であり、Crを多量に含むセメンタイトはA3点を超えても溶解しにくい。Mnもセメンタイトに濃化する元素ではあるが、Crと比べると濃化の程度は小さい。
(e)Siは鋼のA3点を上げる元素であるので、多量に含有させることは好ましくない。ただし、Siはセメンタイトの粗大化を抑制し、A3点以上の温度でのセメンタイトの溶解を容易にする効果を持つため、少量であれば含有させてもよい。
(f)焼入れ後に切削加工を行うことで、残留オーステナイトが加工誘起マルテンサイト変態し、部品表層が硬化してき裂の発生や進展を抑制するため、疲労強度が向上する。
(g)切削時の加工誘起変態量は、焼入れ後の金属組織に依存し、金属組織が微細かつ均一なほど、切削時に加工誘起変態が生じやすい。
(h)レーザー焼入れ等で加熱条件を精密に制御することで、焼入れ後の金属組織を微細かつ均一に造り込むことができる。

0010

本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記[1]〜[6]に示す機械構造部品にある。
[1] 質量%で、
C:0.40〜0.80%、
Si:0.01〜0.40%、
Mn:1.40〜3.00%、
P:0.050%以下、
S:0.001〜0.100%、
Cr:0.03〜0.40%、
Al:0.003〜0.080%、
N:0.005〜0.025%を含有し、
残部がFeおよび不純物からなり、
部品表層にある硬さ500HV超の領域よりも0.3mm深い位置での炭化物中のMnとCrの和の、Feに対する質量比率である(Mnθ+Crθ)/Feθが0.18以下であり、
下記の(1)式で表わされるA3点が760℃以下であり、
部品表面から500μm深さにおける残留オーステナイト体積率が4.0〜25.0%であり、
部品表面から500μm深さにおけるマルテンサイトブロック粒径分布標準偏差が0.5〜2.0μmであり、
表層の一部または全部に塑性流動層を有する
ことを特徴とする機械構造部品。
A3(℃)=854−180×C−20×Mn+40×Si−10×Cr−200×N …(1)
ここで、式(1)中の各元素記号は、各元素の含有量(質量%)であり、前記Mnθ、前記Crθおよび前記Feθは、それぞれ前記炭化物中のMn、CrおよびFeの質量%を表す。
[2] 部品表面から0.9mm深さまでの範囲の硬さが500HV超である[1]に記載の機械構造部品。
[3] 部品表面から0.9mm深さの位置における初析フェライトパーライト面積率の総和が10面積%以下である[1]または[2]に記載の機械構造部品。
[4] さらに、Ti:0〜0.05%、Nb:0〜0.05%の1種または2種を含有することを特徴とする[1]乃至[3]の何れか一項に記載の機械構造部品。
[5] さらに、V:0〜0.15%、Mo:0〜0.50%、Cu:0〜0.50%、Ni:0〜0.50%の1種または2種以上を含有することを特徴とする[1]乃至[4]の何れか一項に記載の機械構造部品。
[6] さらに、B:0〜0.0050%、Ca:0〜0.005%およびBi:0〜0.4%の1種または2種以上を含有することを特徴とする[1]乃至[5]の何れか一項に記載の機械構造部品。

発明の効果

0011

本発明によれば、表面焼き入れ時の加熱条件にばらつきが生じた場合であっても、特に優れた疲労強度の機械構造部品を提供できる。
本発明の機械構造部品は、化学組成を調整することを前提に、特に、焼入れ後の鋼材の組織と、切削加工後シャフト部品の組織と、について改良を加えている。その結果、均一な焼入れ組織を有し、表層の加工誘起マルテンサイト変態によって優れた疲労特性を得ることができる。

図面の簡単な説明

0012

疲労試験片の正面図である。
本発明の実施形態である機械構造部品の断面写真であって、塑性流動層を示す写真である。

0013

以下、本発明の実施形態である機械構造部品について詳しく説明する。

0014

[化学組成]
本実施形態の機械構造部品の化学組成は、次の元素を含有する。各元素の含有量の「%」は「質量%」を意味する。

0015

C:0.40〜0.80%
Cは表面焼入れ後の表層の硬さと芯部硬さを高める効果を持つ。さらにCは残留オーステナイトの安定性を高め、焼入れ後の残留オーステナイト量を増やす効果がある。この効果を十分に得るためには、Cの含有量を0.40%以上とする必要がある。Cの含有量が0.80%を超えると、熱間鍛造後の硬さが高くなりすぎ、被削性が劣化する。したがって、Cの含有量は0.80%以下とする必要がある。なお、C含有量は0.45%以上であることが好ましく、0.48%以上であることが一層好ましい。また、C含有量は、0.75%以下であることが好ましく、0.70%以下であることが一層好ましい。

0016

Si:0.01〜0.40%
機械構造部品であるギヤ等の摺動部品は、使用中に温度が上昇し焼き戻されることで、硬さが下がり、疲労強度が劣化する。Siはセメンタイトの生成、成長を抑制し、焼戻し時の軟化量を低減する効果を持つ。この効果を十分に得るためには、Siの含有量を0.01%以上とする必要がある。一方、Siの含有量が0.40%を超えると、A3点を下げることが難しくなり、低温、短時間処理における特性ばらつきを抑制することが難しくなる。したがって、Siの含有量は0.40%以下とする必要がある。なお、Si含有量は0.03%以上であることが好ましい。また、Si含有量は、0.30%以下であることが好ましく、0.23%以下であることが一層好ましく、0.18%以下であることがより一層好ましい。

0017

Mn:1.40〜3.00%
Mnは、A3点を下げて、低温、短時間処理におけるフェライトからオーステナイトへの逆変態を促進することで特性のばらつきを低減する効果を持つ。Mnは同様の効果を持つ他の置換型合金元素と比べて、単位量あたりのA3点を低下させる効果、焼き入れ性を高める効果が大きく、本発明において重要な元素である。上記した効果を得るためには、Mnの含有量を1.40%以上とする必要がある。一方、Mnの含有量が3.00%を超えると、熱間鍛造後の硬さが硬くなり、被削性が劣化する。したがって、Mn含有量は1.40〜3.00%である。なお、Mn含有量は1.50%以上であることが好ましく、1.60%以上であることが一層好ましく、1.70%以上であることがより一層好ましい。また、Mn含有量は、2.80%以下であることが好ましく、2.60%以下であることが一層好ましい。

0018

P:0.050%以下
Pは、不純物である。Pは結晶粒界偏析し、粒界脆化を引き起こす。したがって、P含有量はなるべく低い方が好ましい。P含有量は0.050%以下である。好ましいP含有量は0.040%以下である。

0019

S:0.001〜0.100%
Sは、鋼材中でMnと結合してMnSを形成し、鋼材の被削性を高める。この効果を得るためには、Sの含有量を0.001%以上とする必要がある。一方、Sの含有量が0.100%を超えると、粗大なMnSが形成され、疲労強度が劣化する。したがって、S含有量は0.001〜0.100%である。なお、S含有量は0.005%以上であることが好ましく、0.010%以上であることが一層好ましい。また、S含有量は、0.080%以下であることが好ましく、0.070%以下であることが一層好ましい。

0020

Cr:0.03〜0.40%
Crは焼き入れ性を高めて不完全焼き入れ組織の生成を抑制し、焼き入れ後の硬さばらつきを低減する効果を持つ。この効果を得るためには、Crの含有量を0.03%以上とする必要がある。一方、Crの含有量が0.40%を超えると、Crが固溶したセメンタイトが、A3点以上の温度で溶解しにくくなり、焼き入れ後の硬さのばらつきの原因となる。したがって、Cr含有量は0.03〜0.40%である。なお、Cr含有量は0.05%以上であることが好ましい。また、Cr含有量は、0.35%以下であることが好ましく、0.30%以下であることが一層好ましい。

0021

Al:0.003〜0.080%
Alは、鋼を脱酸する元素である。Alはさらに、Nと結合してAlNを形成し、マルテンサイトブロックを微細化する。この効果を得るためには、Alの含有量を0.003%以上とする必要がある。一方、Al含有量が高すぎれば、鋼中に粗大な酸化物が形成されやすくなり、疲労強度が劣化する。したがって、Al含有量は0.003〜0.080%にする必要がある。Al含有量は0.005%以上であることがより好ましく、0.010%以上であることが一層好ましい。また、Al含有量は、0.060%以下であることがより好ましく、0.050%以下であることが一層好ましい。

0022

N:0.005〜0.025%
Nは、鋼のA3点を低下させることで、焼き入れ後の硬さばらつきを低減する効果を持つ。Nはさらに、Alと結合してAlNを形成し、マルテンサイトブロックを微細化する。この効果を得るためには、Nの含有量を0.005%以上とする必要がある。一方、N含有量が高すぎれば、鋼材中に気泡が生成されて、疲労強度を劣化させる場合がある。したがって、N含有量は0.005〜0.025%にする必要がある。N含有量は0.008%以上であることがより好ましい。また、N含有量は、0.022%以下であることがより好ましく、0.020%以下であることが一層好ましい。

0023

任意元素について]
本実施形態の機械構造部品はさらに、Ti及びNbからなる群から選択される1種又は2種を含有してもよい。これらの元素の下限は0%である。

0024

Ti:0〜0.05%
Tiは母材中のNと結合してTiNを形成し、熱間鍛造時の結晶粒の粗大化を抑制する。しかしながらTi含有量が高すぎれば、TiCが生成して鋼材の硬さのばらつきが大きくなる。したがって、Ti含有量は0.05%以下である。Tiを含有させる場合のTi含有量の好ましい下限は0.005%以上であり、さらに好ましくは0.010%以上である。Ti含有量の好ましい上限は0.04%以下であり、さらに好ましくは0.03%以下である。

0025

Nb:0〜0.05%
Nbは母材中のNと結合してNbNを形成し、熱間鍛造時の結晶粒の粗大化を抑制する。Nbはさらに、熱間鍛造時の再結晶を遅らせ、結晶粒の粗大化を抑制する。しかしながらNb含有量が高すぎれば,NbCが生成して鋼材の硬さのばらつきが大きくなる。したがって、Nb含有量は0〜0.05%である。Nb含有量の好ましい下限は0.005%以上であり、さらに好ましくは0.01%以上である。Nb含有量の好ましい上限は0.04%以下であり、さらに好ましくは0.03%以下である。

0026

本実施形態の機械構造部品はさらに、V、Mo、Cu及びNiからなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。これらの元素の下限は0%である。

0027

V:0〜0.15%
Vは固溶強化、または炭窒化物を形成し、析出強化によって母相を強化するため、鋼に含有させてもよい。Vを含有させる場合は0.01%以上にするとよい。一方、V含有量が高すぎれば、母相が過度に強化され被削性が劣化する場合がある。また、Vは炭窒化物を形成することで母材中のC、Nを消費し、その結果、A3点を高め、焼き入れ性を低下させる作用も持つ。したがって、V含有量は0.15%以下である。なお、V含有量は0.12%以下であることが好ましく、0.10%以下であることが一層好ましい。

0028

Mo:0〜0.50%
Moは固溶強化、または炭窒化物を形成し、析出強化によって母相を強化するため、鋼に含有させてもよい。Moを含有させる場合は0.01%以上にするとよい。一方、Mo含有量が高すぎれば、母相が過度に強化され被削性が劣化する場合がある。また、Moは炭窒化物を形成することで母材中のC、Nを消費し、その結果、A3点を高め、焼き入れ性を低下させる作用も持つ。したがって、Mo含有量は0.50%以下である。なお、Mo含有量は0.35%以下であることが好ましく、0.25%以下であることが一層好ましい。

0029

Cu:0〜0.50%
Cuは固溶強化によって母相を強化するため、鋼に含有させてもよい。Cuを含有させる場合は0.005%以上にするとよい。一方、Cu含有量が高すぎれば、熱間鍛造時に鋼の粒界に偏析して熱間割れ誘起する。したがって、Cu含有量は0.50%以下である。なお、Cu含有量は0.30%以下であることが好ましく、0.20%以下であることが一層好ましい。

0030

Ni:0〜0.50%
Niは固溶強化によって母相を強化するため、鋼に含有させてもよい。Niを含有させる場合は0.005%以上にするとよい。Niはさらに、鋼材がCuを含有する場合に、Cuに起因する熱間割れを抑制する。しかしながら、Ni含有量が高すぎれば、その効果が飽和し、製造コストが高くなる。したがって、Ni含有量は0.50%以下である。なお、Ni含有量は0.35%以下であることが好ましく、0.25%以下であることが一層好ましい。

0031

本実施形態の機械構造部品はさらに、B、Ca及びBiからなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。これらの元素の下限は0%である。

0032

B:0〜0.0050%
Bは焼き入れ性を高めるために鋼に含有させてもよい。一方、Bの含有量が高すぎれば、その効果が飽和し、コスト増大を招く。したがって、B含有量は0.0050%以下である。なお、B含有量は0.0030%以下であることが好ましい。Bを含有させる場合にはBNの生成を抑制し、Bの働きを高めるために、Tiを同時に含有させることが好ましい。Bを含有させる場合は0.0010%以上にするとよい。

0033

Ca:0〜0.005%
Caは、機械構造部品を工具として使用した場合に工具寿命長寿命化する作用を有する。このため、必要に応じてCaを含有させてもよい。しかしながら、Caの含有量が多くなれば、粗大な酸化物を形成し、靱性を劣化させる。したがって、含有させる場合のCaの量を0.005%以下とする。含有させる場合のCaの量は、0.003%以下とすることがより好ましい。
一方、前記したCa含有による工具寿命を長寿命化する効果を安定して得るためには、Caを含有させる場合のCaの量は、0.0005%以上とすることが望ましい。

0034

Bi:0〜0.4%
Biは、切削抵抗を低下させて工具寿命を長寿命化させる作用を有する。このため、必要に応じてBiを含有させてもよい。しかしながら、Biの含有量が多くなれば、熱間加工性の低下をきたす。したがって、含有させる場合のBiの量を0.4%以下とする。含有させる場合のBiの量は、0.3%以下とすることがより好ましく、0.2%以下とすることが更に好ましい。
一方、前記したBiの含有による工具寿命を長寿命化する効果を安定して得るためには、Biを含有させる場合のBi量は、0.01%以上とすることが望ましい。

0035

本実施形態に係る機械構造部品の残部は、Feおよび不純物からなる。不純物は、鋼材を工業的に製造する際に、原料としての鉱石スクラップ、または製造環境などから混入されるものであって、本発明の効果や特性に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。不純物の具体的な例として、本実施形態に係る機械構造部品は、以下に示す各元素を、それぞれ規定の範囲内で含むことができる。

0036

希土類元素:0.0005質量%以下
マグネシウム(Mg):0.0005質量%以下
タングステン(W):0.001質量%以下
アンチモン(Sb):0.001質量%以下
コバルト(Co):0.001質量%以下
タンタル(Ta):0.001質量%以下
希土類元素は、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素の1種または2種以上を指し、希土類元素の含有量はこれらの元素の合計含有量を意味する。

0037

A3点:760℃以下
本実施形態に係る機械構造部品は、上記化学組成を有し、更に、下記式(1)で表されるA3点が760℃以下であるものとする。
鋼材に焼入れを施す際は、鋼材をオーステナイト単相とするために、少なくともA3点以上の温度域まで加熱する必要がある。したがって、均一なオーステナイト組織とするためにはA3点が低くなる組成であることが望ましく、また加熱コストや生産性の観点からも、A3点は低くなる組成が望ましい。すなわち、比較的低温で、かつ短時間の加熱処理によっても表層を均質なオーステナイトとするためには、以下の式(1)で表されるA3点を760℃以下にする。なお、A3点は750℃以下とすることがより好ましい。

0038

A3点(℃)=854−180×C−20×Mn+40×Si−10×Cr−200×N・・・(1)
ここで、式(1)中の各元素記号は、鋼中における各元素の含有量(質量%)である。

0039

機械構造部品内部のθ炭化物中の(Mn+Cr)とFeの比率:0.18以下
本実施形態においては、鋼素材から機械構造部品を製造する際の焼入れ処理における加熱時に、速やかにθ炭化物(セメンタイト)を溶解させて、焼入れ直前の鋼組織を均質なオーステナイト組織とするため、鋼材中のセメンタイトへのMnおよびCrの濃化を低減させることが重要である。

0040

セメンタイト中に含まれる置換型合金元素の中でもCrおよびMnはセメンタイトに濃化しやすい。セメンタイト中に濃化するMnおよびCr量が多くなると、セメンタイトと母相間におけるMnおよびCrの濃度差が大きくなり、焼入れ処理の加熱時に、セメンタイトの溶解に先立ってセメンタイト中のMnとCrの拡散が必要となる。そうなると、焼入れ処理時の加熱温度がA3点以上の温度であっても、セメンタイトが容易に分解せず、均一なオーステナイト組織が得られず、結果、焼入れ組織が不均一なものとなり、焼入れ部品の疲労特性のばらつきにつながる。

0041

すなわち、焼入れ処理における加熱時の鋼組織を均一なオーステナイトとするためには、加熱前に鋼材中のセメンタイトへのMnおよびCrの濃化を予め抑制しておき、加熱時のセメンタイトの溶解を容易にすることが重要である。

0042

なお、鋼素材に表面焼入れ処理を施して焼入れ部品(機械構造部品)とした後は、部品表層の金属組織は、焼入れ処理によって大きく変化する。しかし、部品表層よりも内部では、焼入れの影響を受けないため、焼入れ前の金属組織、すなわち鋼素材の金属組織からほぼ変化しない。

0043

具体的には、焼入れにより部品内部よりも硬さが上昇した表層領域焼入れ層とした場合、当該焼入れ層よりも0.3mm以上深い領域には焼入れの影響が及んでいない。従って本実施形態の機械構造部品では、部品表面から焼入れ層の厚み+0.3mm深さ位置よりも内部において、セメンタイト中のFe量(Feθ)に対するMn量(Mnθ)とCr量(Crθ)の和の比率((Mnθ+Crθ)/Feθ)を0.18以下とする。本実施形態では、ビッカース硬度が500HV以上の表層領域を焼入れ層とみなすので、500HVの硬度を有する領域から深さ0.3mmの位置での((Mnθ+Crθ)/Feθ)が0.18以下であればよい。

0044

セメンタイト中のFeに対するMnとCrの和の比率はいくら低くてもよい。なお、例えば0.3%のCと1.4%のMnと0.03%のCrを含む鋼材において、MnとCrがセメンタイトへ一切濃化しない場合、セメンタイト中のFeに対するMnとCrの和の比率は約0.015となるが、セメンタイト中のFeに対するMnとCrの和の比率は0.015であってもよい。炭化物中のFeに対するMnとCrの和の比率は0.16以下とすることが好ましく、0.12以下とすることが一層好ましい。

0045

なお、上記の「Mnθ」、「Crθ」、「Feθ」は、それぞれセメンタイト中のMn、Cr、Feの質量%を示す。

0046

機械構造部品のθ炭化物中のMnθ、Crθ、Feθは、例えば以下の方法によって測定することができる。
まず部品表面から焼入れ層の厚み+0.3mm深さ位置よりも内部が被検面となるように試験片を作成する。さらに当該試験片を10体積アセチルアセトン−1質量%塩化テトラメチルアンモニウムメタノール溶液(10%AA系電解液)中で通電し、試験片の被検面の表層0.4gを電解する。得られた電解液をメッシュ粗さが0.2μmのフィルターでろ過し、フィルター上に残った残渣(析出物や介在物)を酸溶液に溶かした上でICP発光分光分析法にて分析し、固溶状態で無いFeとCrとMnの量、すなわち析出物や介在物として存在しているFeとCrとMnの量を求める。固溶状態でないこれらの元素のうち、FeとCrは全量がθ炭化物として存在していると見なすことができる。しかし、Mnはθ炭化物以外にもMnSとしても存在しているため、Mnは、得られた値から残渣中のS量の1.7倍を引いた値の量がθ炭化物として存在していると見なすことができる。

0047

以上のようにして、鋼材中のθ炭化物中のMnθ、Crθ、Feθを求めることができる。
なお、被検面が部品表面から焼入れ層の厚み+0.3mm深さ位置よりも内部の部位であれば、その試験片の形状は板状でも円柱状であっても構わない。
また、機械構造部品中に、著しい中心偏析領域や、スケールへの合金元素の拡散により部分的に化学成分が本発明の規定から外れる領域が存在する場合は、これらの領域を避けて上記試験片を採取することとする。

0048

セメンタイト中の(Mn+Cr)とFeの比率を0.18以下にするために必要な要件の一つは、MnとCrを複合的に含有させ、かつMn量を比較的多く、Cr量を少なくすることであり、すなわち本発明の規定する成分範囲とすることである。また、機械構造部品中のセメンタイトの(Mn+Cr)とFeの比率を効率よく低減できる方法として、機械構造部品の製造方法のうち、熱間鍛造とその後の熱処理の各条件を制御する方法があるが、その詳細については後述する。

0049

表層組織:0.9mm深さの金属組織に占める初析フェライト、および、パーライトの面積率の総和が10%以下]
鋼素材に焼入れを施した後の機械構造部品において、より優れた疲労特性を得るためには、部品表面から0.9mm深さまでの範囲の金属組織(表層組織)に含まれる、不完全焼入れ組織(非焼入れ組織)である初析フェライト、および、パーライトの量を制限するとよい。一般的に、鋼表面から深さ方向に向かって焼きは入り難くなる。本実施形態で言えば、部品表面から0.9mm深さまでの範囲のうちで、最も焼きが入り難いのは、0.9mm深さの位置である。そのため、この表面から0.9mm深さの位置における初析フェライトとパーライトの面積率の総和を10%以下に制限するとよい。部品表面から0.9mm深さの位置における初析フェライトとパーライトの総和が10%以下であれば、部品表層の焼きが十分に入っていると言える。つまり、焼きが入り難い0.9mm深さの位置の不完全焼入れ組織の総和が10%以下であるということは、当該位置よりも焼きが入りやすい部品表面側にいくほど不完全焼入れ組織の量は減少する傾向となる。そのため、部品表面から0.9mm深さまでの領域全体において不完全焼入れ組織の面積率の総和は10%以下を満足しているとも言える。なお、部品の疲労特性のさらなる向上の観点から、部品表面から0.9mm深さの位置における初析フェライトとパーライトの面積率の総和は、好ましくは5%以下であり、0%であってもよい。

0050

機械構造部品の表層組織において、初析フェライトとパーライト以外の組織は、特に限定しないが、部品の強度を確保する観点から、マルテンサイト主組織とする組織とすることが望ましい。もちろん、マルテンサイト、焼戻しマルテンサイトベイナイト、および、残留オーステナイトの混合組織であっても構わない。

0051

[表層硬さ:0.9mm深さまでの範囲の硬さが500HV超]
本実施形態の機械構造部品において、優れた疲労特性を得るためには、部品表面から0.9mm深さまでの範囲のビッカース硬さを500HV超とするとよい。すなわち、部品表面から深さ方向に硬さプロファイルを測定した場合、硬さが500HV超となる位置(硬化深さ)が0.9mm以上の深さであるとよい。上述したように、鋼表面から深さ方向に向かって焼きは入り難くなるが、硬化深さ0.90mm以上である場合、硬化深さが十分に深い、つまり焼きが十分に入っていると言え、硬化深さが0.9mm以上の場合、疲労特性を向上させることができる。本実施形態の機械構造部品では、硬さが500HV以上の領域が焼入れ層となる。

0052

本実施形態の機械構造部品では、焼入れの影響が及ばない芯部のビッカース硬さは、280HV以下であってもよい。芯部のビッカース硬さが280HV以下であれば、硬度が高すぎずに被削性が向上し、素材から部品形状に切削加工することがより一層容易になる。

0053

以上説明したように、疲労特性の向上の観点からは、500HV超となる硬化深さを深く確保できることが望ましいが、部品の表面硬さももちろん大きい方が望ましい。しかしながら、この表面硬さがいくら大きくとも、硬化深さが浅いと疲労特性の向上は達成できないため、本実施形態では、部品の表面硬さに加え、0.9mm深さまでの範囲の硬さを500HV超とする、すなわち500HV超となる硬化深さが0.90mm以上であることが重要である。

0054

部品表面から500μm深さにおける残留オーステナイト体積率:4.0〜25.0%
鋼素材の焼き入れにより、機械構造部品の表層(表面から500μm深さ位置を含む)に、残留オーステナイトが発生する。この残留オーステナイトは、機械構造部品の焼入れ後の仕上切削加工時に、加工誘起マルテンサイト変態する。具体的には、仕上切削加工時に、切削工具と鋼材との間の摩擦力により、部品の表層付近にある残留オーステナイトの一部が、加工誘起マルテンサイトに変態する。一方、この作用による加工誘起マルテンサイト変態の発生は部品表面付近に限定される。切削加工面から500μm程度離れると、もはや切削加工に伴う加工誘起マルテンサイト変態は起こらない。そのため、部品表面から500μm深さ位置の残留オーステナイト体積率は、焼入れ後の切削加工の影響を受けていない部分であり、切削前の残留オーステナイト体積率と考えることができる。

0055

切削加工にともなう加工誘起マルテンサイト変態の結果、部品の強度が上昇し、曲げ疲労強度が上昇する。このような効果を得るためには、焼入れ後の部品表面から500μm深さにおける残留オーステナイト体積率が4.0%以上でなければならない。一方、残留オーステナイトは軟質であるため、部品表面から500μm深さにおける残留オーステナイト体積率が25.0%を超えるとかえって部品の強度が低下する。

0056

光学顕微鏡による組織観察では、残留オーステナイトはマルテンサイトに含まれている。つまり、光学顕微鏡による組織観察では、マルテンサイトと残留オーステナイトとの区別ができない。そこで、部品表面から500μmの深さ位置の残留オーステナイト体積率を、次の方法で測定する。11.6%の塩化アンモニウムと、35.1%のグリセリンと、53.3%の水とを含有する電解液を用意する。部品表面に直径2mmの穴が開いたマスキングを施し、この電解液を用いて、部品表面に対して研磨面が500μmの深さとなるまで、電圧20Vで電解研磨を行い、直径2mm、深さ500μmの穴を作製する。電解研磨の時間を変化させることで研磨量を調整することができる。

0057

電解研磨された試験片の表面に対してX線照射して、X線回折法により解析を行う。X線回折には、株式会社リガク製微小部X線応力装置Auto MATEMSシステムを使用する。光源にはCr管球を使用する。管電圧は40kV、管電流は40mAであり、コリメーター直径は、0.5mmである。VフィルターによってKβ線を除去し、Kα線を使用した。データ解析は、AutoMATEソフトウエア(株式会社リガク製)を用いた。Rachinger法によってKα2成分を除去し、Kα1成分のプロファイルを用いて、bcc構造の(211)面とfcc構造の(220)面の回折ピーク積分強度比に基づいて残留オーステナイト体積率を計算する。
なお、照射するX線のスポットサイズは1mm以下とする。

0058

部品表面から500μm深さにおけるマルテンサイトブロック粒径分布の標準偏差:0.5〜2.0μm
マルテンサイトブロック粒径分布の標準偏差は、マルテンサイト組織の均一さを表す。マルテンサイト組織が均一であると、残留オーステナイトの粒径が均一になるとともに、変形時に残留オーステナイトに均一に応力が付与される。その結果、均一に加工誘起マルテンサイト変態が生じて部品の疲労強度が効果的に向上する。一方、マルテンサイト組織が不均一であると、変形時に残留オーステナイトに付与される応力が不均一となり、加工誘起マルテンサイト変態を生じない残留オーステナイトが多くなって切削時の加工誘起マルテンサイト変態量が少なくなり、上記の効果が得られない。

0059

従って、マルテンサイトブロック粒径分布の標準偏差は2.0μm以下とする。より優れた疲労強度を得るためにはマルテンサイトブロック粒径分布の標準偏差は1.8μm以下とすることが好ましく、1.5μm以下とすることがより好ましい。

0060

また、マルテンサイトブロック粒径分布の標準偏差が小さすぎると、残留オーステナイト粒径が過剰に小さくなることで周囲のマルテンサイトからの拘束が大きくなり、加工誘起マルテンサイト変態に対する安定性が高まることで、切削時に生じる加工誘起マルテンサイト変態量が減少し、曲げ疲労強度が向上しない。従って、マルテンサイトブロック粒径分布の標準偏差は0.5μm以上とする。より優れた疲労強度を得るためにはマルテンサイトブロック粒径分布の標準偏差は0.8μm以上とすることが好ましい。

0061

機械構造部品の部品表面から500μm深さにおけるマルテンサイトブロック粒径分布の標準偏差は、次の方法で測定される。部品の長手方向と垂直な切断面を観察面とし、部品表面から500μmの位置を含むような試験片を作製する。観察面に対してエメリー紙による湿式研磨及びダイヤモンドペーストによるバフ琢磨を実施して鏡面仕上げした後に、エタノール過塩素酸+2n−ブドキシエタノール+水の溶液を用いて電圧40Vで電解研磨処理する。

0062

上記の観察面の表面から500μm位置が視野の中心となるように、走査型電子顕微鏡(SEM)(JSM−7100F:日本電子(株)製)を用いた電子後方散乱回折(EBSD)法で観察する。SEM−EBSDによる測定条件は、倍率2000倍、測定範囲50μm×50μm、加速電圧25kV、ステップ50nmで行う。得られたデータを、TSL社製OIMAnalysisによって解析する。解析では、方位差11°以上の境界を結晶粒界として判断し、視野全体の円相当の粒径分布を作成し、その標準偏差を部品表面から500μm深さにおけるマルテンサイトブロック粒径分布の標準偏差とする。なお、解析には、得られたデータの内で信頼性指数CI値:Confidence Index)が0.1以上の点のみを用いる。

0063

表層に塑性流動層を有する
塑性流動層は、焼入れ後の鋼素材を仕上げ切削加工する際に、切削工具と母材との間に生じる摩擦による変形が大きいと部品の表面に形成される層である。反対に、塑性流動層が部品表面に存在することは、部品表面に大きい塑性変形が生じたことの証左であり、塑性流動層が部品表面に存在する場合には、その塑性変形に起因して残留オーステナイトが加工誘起マルテンサイト変態したことを示す。本実施形態の部品においては、部品の表層の一部に塑性流動層を有していてもよく、部品の表層の全部に塑性流動層を有していてもよい。

0064

表面の塑性流動層の有無は、次の方法で測定される。部品表面を含み、部品の軸方向対して垂直な面(横断面)(図1の符号B−B‘参照)が観察面になるような試験片を採取する。鏡面研磨した試験片を、5%ナイタール溶液で腐食する。腐食された面の部品表面を含む位置を、倍率5000倍の走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察する。得られたSEM像の一例を図2に示す。同図において、塑性流動層21は、母材中心部22に対して塑性流動組織が部品表面の円周方向(図2において紙面の左方向から右方向)に湾曲している部分である。この塑性流動層の厚みが1μmを超える場合、塑性流動層を有すると判断する。

0065

[製造方法]
本発明による機械構造部品の製造方法の一例を説明する。
本発明による機械構造部品の製造方法は、鋼素材準備工程と、熱間加工工程と、荒切削工程と、表面焼き入れ工程と、仕上げ切削工程とを含む。以下、それぞれの工程を説明する。

0066

[鋼素材準備工程]
上述の化学組成を満たす溶鋼を製造する。製造された溶鋼を用いて、鋳造法により鋳片(スラブまたはブルーム)にする。あるいは、溶鋼を用いて、造塊法によりインゴットにする。鋳片又はインゴットを熱間加工して、ビレットを製造する。熱間加工は、熱間圧延でもよいし、熱間鍛造でもよい。次工程で使用される素材は、上記の鋳片又はインゴットでもよいし、ビレットでもよい。

0067

[熱間加工工程]
製造された上記鋼素材を加熱する。加熱温度が低すぎれば、熱間加工装置に過度の負荷が掛かる。一方、加熱温度が高すぎれば、スケールロスが大きい。したがって、好ましい加熱温度は1000〜1300℃である。
加熱後の鋼素材に対して、熱間加工を実施する。熱間加工はたとえば、熱間鍛造である。
以下、本工程での熱間加工を熱間鍛造として説明を続ける。
熱間鍛造の好ましい仕上げ温度は900℃以上である。仕上げ温度が低すぎれば、熱間鍛造装置金型への負担が大きくなるためである。一方、仕上げ温度の好ましい上限は、1250℃以下である。

0068

[熱処理]
切削加工を施す前に、必要に応じて、熱処理により組織を調整したり、ひずみを開放するための熱処理を施してもよい。例えば焼ならしや、焼入れ・焼戻しや、低温焼なましを施してもよい。ただし、焼き戻しを実施する場合には、焼き戻し温度が高すぎると元素の拡散が生じ、(Mn+Cr)/Feが変化するため、焼き戻し温度は600℃以下が好ましい。また、焼きならしを実施する際には、加熱後の冷却速度が遅すぎると元素の拡散が生じ、(Mn+Cr)/Feが変化するため、冷却方法放冷が好ましい。

0069

荒切削加工
上記の熱間加工後もしくは熱処理後の素材に対して、荒切削加工を実施して所定の形状にする。

0070

[表面焼き入れ処理
荒切削加工された鋼素材に対して、表面焼き入れ処理を実施する。表面焼入れは、鋼の表面近傍のみを加熱し、加熱後に加熱部が急冷される処理であれば、どのような処理で合ってもよい。表面の加熱は、高周波誘導加熱であってもよく、レーザー照射による加熱であってもよく、炎を直接鋼の表面に当てて加熱してもよい。加熱部分の冷却は、水冷ガス冷却、内部非加熱層への熱拡散による自己冷却でもよい。その中でも、精密な温度制御のもとで鋼の表面近傍のみを加熱することのできる高周波焼入れ及びレーザー焼入れ処理が好ましい。焼入れ温度が高すぎると焼入れ後の組織が粗大化し、マルテンサイトブロック粒径分布の標準偏差が大きくなりすぎる。一方焼入れ温度が低すぎるとマルテンサイトブロック粒径分布の標準偏差が小さくなりすぎる。したがって、好ましい焼入れ温度は850℃〜950℃である。

0071

[仕上げ切削加工]
表面焼き入れ処理が施された素材の表層を仕上げ切削加工することで、機械構造部品とする。仕上げ切削加工は、表層の変形量の小さい研削加工ではなく、表層の変形量が大きい切削加工が好ましい。切削加工であれば、所望の部品の形状に合わせて、旋盤加工ドリル加工エンドミル加工等を実施できる。仕上げ切削加工により塑性流動層が形成される。

0072

以上の製造工程により製造された機械構造部品は、特に優れた曲げ疲労強度を有する。

0073

次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。

0074

表1に示す化学成分の鋼種A〜Qのインゴットを1250℃に加熱した。加熱されたインゴットを熱間鍛造して、1片が75mmの正方形の断面を持つ角棒を製造した。さらに、角棒を1250℃に加熱し、仕上げ温度1000℃狙いの条件で60mmの直径を有する丸棒に熱間で鍛造し、室温まで放冷した。

0075

鍛造後の鋼Kの丸棒の一部については、更に、焼き入れ焼戻し処理を施した。焼き入れ工程では、丸棒を850℃で1時間保持後に水冷した。その後の焼戻し工程では、一部の丸棒を600℃に(No.7)、他の一部の丸棒を650℃に加熱し、その温度で3時間保持した後に室温まで放冷した(No.11)。鋼種Kの丸棒の他の一部は、850℃に加熱した後に室温まで放冷した(No.6)。さらに鋼種Kの丸棒の他の一部は、850℃に加熱し、セラミックスシートをかぶせて室温まで徐冷した(No.12)。

0076

0077

試験番号の丸棒を用いて、次の試験を実施した。
[芯部硬さ測定]
試験番号の丸棒から、1辺が10mmの正方形の断面を持つ長さ50mmの確性調査用試験片を作成した。試験片の長さ方向が鍛伸材(丸棒)の長さと平行になるよう、試験片の横断面の中心が、丸棒のR/2(Rは丸棒の半径)の位置と揃うようにした。次に試験片を樹脂マウント後に研磨し、試験片の断面の中心付近の任意の5点で、荷重98Nでのビッカース硬さを測定し、5点の測定値算術平均をその試験番号の芯部硬さとした。芯部硬さが280HV以下の場合に、十分に芯部硬さが低いと判断し、芯部硬さが280HV超の場合は、被削性が劣化したものと判断した。

0078

高周波焼入れ後の曲げ疲労強さ測定のための曲げ疲労試験片の作製]
各試験番号の丸棒のR/2から、図1に示すような、φ10の平行部に深さ1mm、先端RがR3の環状切欠きのついた曲げ疲労試験片を作成した。

0079

次に、試験片に、ノッチ部11を含む平行部12を高周波焼入れした。焼入れの条件は、表2に示す周波数及び通電時間で高周波加熱し、高周波加熱した直後に水冷することで、高周波焼入れ処理に供した。高周波焼入れ後の試験片の一部は、150℃×2hの低温焼戻し処理に供した。各条件を表2に示す。表2のうち、a〜dは焼入れ温度が850℃〜950℃になる条件であり、e、fは950℃を超える条件であった。

0080

高周波焼入れ処理後に、ノッチ部をノーズr0.4mm、すくい角−25°の市販CBN切削チップを用いて、切削速度100m/min、送り0.1mm/rev、切込み0.1mmの切削条件仕上げ加工した。

0081

高周波焼入れ後、低温焼戻し後、またはノッチ部切削加工後の試験片のつかみ部13を研磨することで、試験片の軸出しを行った。

0082

[レーザー焼入れ後の曲げ疲労強さ測定のための試験片作製]
高周波焼入れの場合と同様に、各試験番号の丸棒のR/2から、図1に示すような、φ10の平行部に深さ1mm、先端RがR3の環状切欠きのついた曲げ疲労試験片を作成した。

0083

次に、試験片の一部は、ノッチ部を含む領域を表3に示す出力及び照射速度でノッチ部を1周するようにレーザーを照射して加熱した。レーザーで表層部のみを加熱すると、内部の非加熱層への熱拡散により表層部は急冷され、焼きが入る。レーザー照射後の試験片の一部は、150℃×2hの低温焼戻し処理に供した。各条件を表3に示す。表3のうち、g〜jは焼入れ温度が850℃〜950℃になる条件であり、k、lは950℃を超える条件であった。

0084

レーザー焼入れ後、または、低温焼戻し後の試験片に対して、ノッチ部をノーズr0.4mm、すくい角−25°の市販CBN切削チップを用いて、切削速度100m/min、送り0.1mm/rev、切込み0.1mmの切削条件で仕上げ切削加工して曲げ疲労試験に供した。

0085

[曲げ疲労試験]
上述の工程で作成した曲げ疲労試験片を用いて、四点曲げ疲労試験によって疲労強度の測定を行った。支点間の距離は80mmで、支点間の中心にノッチが配置されるように試験片をセットした。さらにレーザー焼入れ試験片の場合、レーザー焼入れの焼き境、即ちレーザー焼入れの終了地点が支点側となるように試験片をセットした。荷重点間の距離は20mmであり、荷重点の中心が支点間の中心と同じになるようにした。このように支持した試験片により、試験周波数20Hz、応力比0.05の片振りの四点曲げ疲労試験を行った。繰り返し数1.0×107回まで破断しなかった荷重振幅最大荷重最低荷重の差の二分の一)のうち、最も大きい値を、その試験番号の疲労強度(疲労限度)(MPa)と定義した。いずれのレーザー照射条件によっても疲労限度が350MPa以上である場合、疲労強度に優れると判断した。結果を表4Bに示す。

0086

[焼入れ後の組織観察および硬化深さ測定]
仕上げ切削加工後の四点曲げ疲労試験片のノッチ底を含むように幅方向の中心を通る面で縦断し、切断面を観察できるように樹脂にマウントして、組織観察用及び硬化深さ測定用サンプルを作製した。

0087

サンプルをナイタールでエッチングし、光学顕微鏡を用いて、焼入れ後の表層の組織を観察した。試験片の表面から0.9mm深さを中心とした倍率200倍の写真を撮影し、画像解析により、初析フェライトとパーライトの面積率を求めた。初析フェライトとパーライトの面積率の総和が10%以下である場合、十分に焼入れがなされたと判断した。表4B中では、初析フェライトとパーライトを合わせて「非焼入れ組織」と表記している。

0088

また、ビッカース硬さ計を用いて、サンプルのノッチ底を起点とする硬さプロファイルを測定した。得られた硬さプロファイルの結果から、硬さが500HV超となる深さを硬化深さとした。硬化深さ0.90mm超である場合、硬化深さが十分に深いと判断した。結果を表4Bに示す。

0089

[焼入れ後の内部のθ炭化物中の(Mnθ+Crθ)/Feθ]
上記硬化深さ測定用のサンプルの中心からφ3×35mmの丸棒試験片を作成した。この丸棒試験片は、部品表層にある硬さ500HV超の領域よりも0.3mm深い位置の部位に相当する。作成した丸棒試験片を10%AA系電解液中で通電し、試験片の表層0.4gを電解した。電解液をメッシュ粗さが0.2μmのフィルターでろ過し、フィルター上に残った残渣を酸溶液に溶かした上でICP発光分光分析法にて分析し、固溶状態で無いFeとCrとMnの量を求めた。固溶状態でないこれらの元素のうち、FeとCrは全量がθ炭化物として存在していると仮定し、一方のMnは得られた値から含有S量の1.7倍を引いた値がθ炭化物として存在していると仮定し、θ炭化物中の(Mnθ+Crθ)とFeθの比率を求めた。なお、表4Bにおいて、θ炭化物中の(Mnθ+Crθ)/Feθを、単に(Mn+Cr)/Feと表記している。結果を表4Bに示す。

0090

[部品表面から500μmの深さ位置の残留オーステナイト体積率の測定]
仕上げ切削加工後の四点曲げ疲労試験片の平行部(12)に対して、以下の方法で、部品表面から500μmの深さ位置の残留オーステナイト体積率を測定した。

0091

仕上げ切削加工後の四点曲げ疲労試験片の平行部(12)の表面から500μmの深さ位置の残留オーステナイト体積率を、次の方法で測定した。11.6%の塩化アンモニウムと、35.1%のグリセリンと、53.3%の水とを含有する電解液を用意する。試験片表面に直径2mmの穴が開いたマスキングを施し、この電解液を用いて、試験片表面に対して研磨面が500μmの深さとなるまで、電圧20Vで電解研磨を行い、直径2mm、深さ500μmの穴を作製した。電解研磨の時間を変化させることで研磨量を調整した。

0092

電解研磨された試験片の表面に対してX線を照射して、X線回折法により解析を行った。X線回折には、株式会社リガク製微小部X線応力装置Auto MATEMSシステムを使用した。光源にはCr管球を使用した。管電圧は40kV、管電流は40mAであり、コリメーター直径は、0.5mmであった。VフィルターによってKβ線を除去し、Kα線を使用した。データ解析は、AutoMATEソフトウエア(株式会社リガク製)を用いた。Rachinger法によってKα2成分を除去し、Kα1成分のプロファイルを用いて、bcc構造の(211)面とfcc構造の(220)面の回折ピークの積分強度比に基づいて残留オーステナイト体積率を計算した。なお、照射するX線のスポットサイズは1mm以下とした。

0093

[部品表面から500μm深さにおけるマルテンサイトブロック粒径分布の標準偏差の測定]
仕上げ切削加工後の四点曲げ疲労試験片の平行部(12)の横断面(図1A−A’)の内、部品表面から500μm深さ位置を含むような試験片を作成し、以下の方法でマルテンサイトブロック粒径分布の標準偏差を測定した。

0094

作成した試験片の観察面に対してエメリー紙による湿式研磨及びダイヤモンドペーストによるバフ琢磨を実施して鏡面仕上げした後に、エタノール+過塩素酸+2n−ブドキシエタノール+水の溶液を用いて電圧40Vで電解研磨処理した。

0095

上記の観察面の表面から500μm位置が視野の中心となるように、走査型電子顕微鏡(SEM)(JSM−7100F:日本電子(株)製)を用いた電子線後方散乱回折(EBSD)法で観察した。SEM−EBSDによる測定条件は、倍率2000倍、測定範囲50μm×50μm、加速電圧25kV、ステップ50nmで行った。得られたデータを、TSL社製OIMAnalysisによって解析した。解析では、方位差11°以上の境界を結晶粒界として判断し、視野全体の円相当の粒径分布を作成し、その標準偏差を部品表面から500μm深さにおけるマルテンサイトブロック粒径分布の標準偏差とした。なお、解析には、得られたデータの内で信頼性指数(CI値:Confidence Index)が0.1以上の点のみを用いた。

0096

[部品表層の塑性流動層有無の確認]
仕上げ切削加工後の四点曲げ疲労試験片のノッチ底を通るように切断し、その切断面(図1B−B’)の内、観察面に部品表面を含ように試験片を採取し、以下の方法で、部品表層の塑性流動層の有無を確認した。

0097

採取した試験片を、5%ナイタール溶液で腐食した。腐食された面を、倍率5000倍の走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察した。得られたSEM像の一例を図2に示す。同図において、塑性流動層21は、母材中心部22に対して塑性流動組織が部品表面の円周方向(図2において紙面の左方向から右方向)に湾曲している部分である。この塑性流動層の厚みが1μmを超える場合、塑性流動層を有すると判断した。

0098

[試験結果]
表4A及び表4Bに試験結果を示す。試験番号1〜7、14〜21、24、25、28、29の発明例は、好ましい製造条件で製造し、本発明に係る機械構造部品の化学成分、(Mnθ+Crθ)/Feθ、残留オーステナイト量、マルテンサイトブロックの粒径分布の標準偏差、塑性流動層有りの条件を満たす。その結果、優れた疲労強度が得られた。

0099

試験番号8〜10、13、22、26、27、30の比較例は、本発明にかかる部品の化学成分を満足しないため、疲労強度が劣化した。
試験番号11、12は、表4Aに示した前処理条件不適切であったため、(Mnθ+Crθ)/Feθを満足せず、疲労強度が劣化した。
また、試験番号23は、C量が高すぎて芯部硬さが硬くなり、被削性が大幅に低下した。このため、試験番号23は、そもそも、機械構造用部品に適さないことが判明した。
試験番号31〜33及び35〜37は、表面焼入れ処理の条件が不適切(表2、表3の条件e、f、k、l)だったため、焼入れ温度が950℃超となった。このため、マルテンサイトブロックの粒径分布の標準偏差を満足せず、疲労強度が低下した。
試験番号34及び38は、仕上げ切削を実施しなかったため、塑性流動層が形成されず、疲労強度が低下した。

0100

0101

0102

実施例

0103

0104

11ノッチ部
12平行部
13 つかみ部

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