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技術 強化繊維基材、強化繊維積層体および繊維強化樹脂

出願人 東レ株式会社
発明者 大内山直也白波瀬彰彦成瀬恵寛
出願日 2018年8月9日 (2年3ヶ月経過) 出願番号 2018-150761
公開日 2020年2月20日 (9ヶ月経過) 公開番号 2020-026455
状態 未査定
技術分野 織物 不織物 型の被覆による成形、強化プラスチック成形 強化プラスチック材料 高分子組成物
主要キーワード アルミ金 角度構成 一方向層 衝撃付与後 幅規制ローラ ステッチ接合 付着性成分 立体形
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2020年2月20日)のものです。
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図面 (7)

課題

マトリックス樹脂含浸性が良好で、耐衝撃性などの力学特性(特に、衝撃付与後圧縮強度CAI)に優れる繊維強化樹脂生産性良く得られるだけでなく、取扱性(特に、形態安定性)に優れた強化繊維基材および強化繊維積層体を提供する。

解決手段

[1]強化繊維糸条、[2]強化繊維糸条を並行に引き揃えてなる強化繊維糸条群、[3][1]または[2]で構成される強化繊維布帛、のうちいずれかより選ばれる強化繊維集合体の少なくとも片側表面ポーラス状樹脂材料が配置された強化繊維基材であって、前記樹脂材料が、カルボキシル基含有量が35μmol/gを超え400μmol/g未満かつ重量平均分子量が10000以上100000未満のポリアリーレンスルフィド樹脂であることを特徴とする強化繊維基材、およびその積層体

概要

背景

強化繊維マトリックス樹脂含浸させた繊維強化樹脂FRP)は、優れた力学特性、軽量化等の要求特性を満たすことから主に航空、宇宙スポーツ用途に用いられてきた。これらの代表的な製造方法として、オートクレーブ成形法が知られている。かかる成形法では、強化繊維束群にマトリックス樹脂を予め含浸させたプリプレグを、成形型に積層してオートクレーブにて加熱・加圧し、FRPを成形する。プリプレグを用いると極めて信頼性の高いFRPが得られる利点があるが、製造に高いコストがかかる問題があった。

一方、FRPの生産性に優れる成形法としては、例えばレジントランスファーモールディング成形法(RTM)等の注入成形が挙げられる。RTM成形法は、マトリックス樹脂を予備含浸していないドライな強化繊維束群で構成される強化繊維基材を、成形型に積層して、液状で低粘度のマトリックス樹脂を注入することにより、後からマトリックス樹脂を含浸・固化させてFRPを成形する成形法である。

注入成形法は、FRPの生産性には優れるが、マトリックス樹脂が低粘度である必要があるため、プリプレグに用いられる高粘度のマトリックス樹脂から成形されたFRPに比べて、力学特性を十分に発揮できない場合があった。

上記に対する解決手段として、例えば特許文献1や特許文献2に開示されるように、規定の目付を有する炭素繊維一方向層と規定の厚みを有するポリフェニレンサルファイド(PPS)繊維ベール(不織布)が合わされている中間材料が提案されている。

概要

マトリックス樹脂の含浸性が良好で、耐衝撃性などの力学特性(特に、衝撃付与後圧縮強度CAI)に優れる繊維強化樹脂を生産性良く得られるだけでなく、取扱性(特に、形態安定性)に優れた強化繊維基材および強化繊維積層体を提供する。[1]強化繊維糸条、[2]強化繊維糸条を並行に引き揃えてなる強化繊維糸条群、[3][1]または[2]で構成される強化繊維布帛、のうちいずれかより選ばれる強化繊維集合体の少なくとも片側表面ポーラス状樹脂材料が配置された強化繊維基材であって、前記樹脂材料が、カルボキシル基含有量が35μmol/gを超え400μmol/g未満かつ重量平均分子量が10000以上100000未満のポリアリーレンスルフィド樹脂であることを特徴とする強化繊維基材、およびその積層体

目的

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

[1]強化繊維糸条、[2]強化繊維糸条を並行に引き揃えてなる強化繊維糸条群、[3][1]または[2]で構成される強化繊維布帛、のうちいずれかより選ばれる強化繊維集合体の少なくとも片側表面ポーラス状樹脂材料からなる熱可塑性樹脂層が配置された強化繊維基材であって、前記樹脂材料が、カルボキシル基含有量が35μmol/gを超え400μmol/g未満かつ重量平均分子量が10000以上100000未満のポリアリーレンスルフィド樹脂であることを特徴とする強化繊維基材。

請求項2

前記樹脂材料が、強化繊維基材の1〜20重量%である、請求項1に記載の強化繊維基材。

請求項3

前記樹脂材料の315.5℃×5分滞留時のメルトフローレートが50以上1500以下である、請求項1または2に記載の強化繊維基材。

請求項4

前記強化繊維糸条群が、複数の強化繊維糸条が並行に引き揃えられたシート状のものである、請求項1〜3のいずれかに記載の強化繊維基材。

請求項5

前記強化繊維糸条群が、オートメテッドファイバープレイスメント装置により並行に引き揃え配置されてなるシート状のものである、請求項1〜3のいずれかに記載の強化繊維基材。

請求項6

前記強化繊維布帛が、強化繊維糸条を一方向に並行に引き揃えてなる強化繊維糸条群と、前記強化繊維糸条群と交差する方向に延在する、繊度が前記強化繊維糸条の繊度の1/5以下である補助繊維糸条群とから構成される一方向性織物である、請求項1〜3のいずれかに記載の強化繊維基材。

請求項7

前記強化繊維布帛が、強化繊維糸条を一方向に並行に引き揃えてなる強化繊維糸条群と、前記強化繊維糸条群と交差する方向に強化繊維糸条を一方向に並行に引き揃えてなる強化繊維糸条群から構成される二方向性織物である、請求項1〜3のいずれかに記載の強化繊維基材。

請求項8

前記強化繊維布帛が、強化繊維糸条を一方向に並行に引き揃えてなる強化繊維糸条群と、前記強化繊維糸条群と交差する方向に強化繊維糸条を一方向に並行に引き揃えてなる強化繊維糸条群との少なくとも2層以上が積層され、繊度が強化繊維糸条の1/5以下である補助繊維糸条群により縫合一体化されたステッチ布帛である、請求項1〜3のいずれかに記載の強化繊維基材。

請求項9

請求項1〜8のいずれかに記載の強化繊維基材を複数枚積層してなる強化繊維積層体

請求項10

熱融着もしくはステッチにより一体化されてなる、請求項9に記載の強化繊維積層体。

請求項11

請求項1〜8のいずれかに記載の強化繊維基材または請求項9または10に記載の強化繊維積層体に、マトリックス樹脂含浸させてなる繊維強化樹脂

請求項12

強化繊維体積含有率が53〜65%の範囲であり、SACMA−SRM−2R−94に記載されている衝撃付与後常温圧縮強度が200MPa以上である、請求項11に記載の繊維強化樹脂。

技術分野

0001

本発明は、強化繊維基材強化繊維積層体およびそれらからなる繊維強化樹脂に関する。

背景技術

0002

強化繊維マトリックス樹脂含浸させた繊維強化樹脂(FRP)は、優れた力学特性、軽量化等の要求特性を満たすことから主に航空、宇宙スポーツ用途に用いられてきた。これらの代表的な製造方法として、オートクレーブ成形法が知られている。かかる成形法では、強化繊維束群にマトリックス樹脂を予め含浸させたプリプレグを、成形型に積層してオートクレーブにて加熱・加圧し、FRPを成形する。プリプレグを用いると極めて信頼性の高いFRPが得られる利点があるが、製造に高いコストがかかる問題があった。

0003

一方、FRPの生産性に優れる成形法としては、例えばレジントランスファーモールディング成形法(RTM)等の注入成形が挙げられる。RTM成形法は、マトリックス樹脂を予備含浸していないドライな強化繊維束群で構成される強化繊維基材を、成形型に積層して、液状で低粘度のマトリックス樹脂を注入することにより、後からマトリックス樹脂を含浸・固化させてFRPを成形する成形法である。

0004

注入成形法は、FRPの生産性には優れるが、マトリックス樹脂が低粘度である必要があるため、プリプレグに用いられる高粘度のマトリックス樹脂から成形されたFRPに比べて、力学特性を十分に発揮できない場合があった。

0005

上記に対する解決手段として、例えば特許文献1や特許文献2に開示されるように、規定の目付を有する炭素繊維一方向層と規定の厚みを有するポリフェニレンサルファイド(PPS)繊維ベール(不織布)が合わされている中間材料が提案されている。

先行技術

0006

特開2018−095720号公報(特許請求の範囲、実施例)
特表2018−517589号公報(特許請求の範囲、実施例)

発明が解決しようとする課題

0007

しかしながら特許文献1および特許文献2に記載されている技術では、PPS繊維ベールを用いることで耐衝撃性が改善し、航空機構造部材として重要な衝撃後圧縮強度CAI)が若干向上するものの熱硬化マトリックス樹脂(エポキシ樹脂など)や炭素繊維との接着が不十分であり、実使用上満足できるレベルでなかった。また、本願のポーラス状樹脂材料からなる熱可塑性樹脂層が配置された強化繊維基材であり、その樹脂材料にカルボキシル基含有量が35μmol/gを超え400μmol/g未満かつ重量平均分子量が10000以上100000未満のポリアリーレンスルフィド樹脂を用い、低吸水性耐熱性に優れ、層間剪断強度ILSS)、衝撃後圧縮強度(CAI)向上も可能な強化繊維基材が得られることについては何ら記載されていない。

0008

本発明は、かかる従来技術の課題を解決するものであり、具体的には、マトリックス樹脂の含浸性が良好で、低吸水性、耐衝撃性などの力学特性(特に、CAIおよびILSS)に優れる繊維強化樹脂を生産性良く得られるだけでなく、取扱性(特に、形態安定性)に優れた強化繊維基材および強化繊維積層体を提供せんとするものである。また、かかる強化繊維基材および強化繊維積層体から得られる繊維強化樹脂を提供せんとするものである。

課題を解決するための手段

0009

本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、
(1)[1]強化繊維糸条、[2]強化繊維糸条を並行に引き揃えてなる強化繊維糸条群、[3][1]または[2]で構成される強化繊維布帛、のうちいずれかより選ばれる強化繊維集合体の少なくとも片側表面にポーラス状の樹脂材料からなる熱可塑性樹脂層が配置された強化繊維基材であって、
前記樹脂材料が、カルボキシル基含有量が35μmol/gを超え400μmol/g未満かつ重量平均分子量が10000以上100000未満のポリアリーレンスルフィド樹脂であることを特徴とする強化繊維基材。
(2)前記樹脂材料が、強化繊維基材の1〜20重量%である、(1)に記載の強化繊維基材。
(3)前記樹脂材料の315.5℃×5分滞留時のメルトフローレートが50以上1500以下である、(1)または(2)に記載の強化繊維基材。
(4)前記強化繊維糸条群が、複数の強化繊維糸条が並行に引き揃えられたシート状のものである、(1)〜(3)のいずれかに記載の強化繊維基材。
(5)前記強化繊維糸条群が、オートメテッドファイバープレイスメント装置により並行に引き揃え配置されてなるシート状のものである、(1)〜(3)のいずれかに記載の強化繊維基材。
(6)前記強化繊維布帛が、強化繊維糸条を一方向に並行に引き揃えてなる強化繊維糸条群と、前記強化繊維糸条群と交差する方向に延在する、繊度が前記強化繊維糸条の繊度の1/5以下である補助繊維糸条群とから構成される一方向性織物である、(1)〜(3)のいずれかに記載の強化繊維基材。
(7)前記強化繊維布帛が、強化繊維糸条を一方向に並行に引き揃えてなる強化繊維糸条群と、前記強化繊維糸条群と交差する方向に強化繊維糸条を一方向に並行に引き揃えてなる強化繊維糸条群から構成される二方向性織物である、(1)〜(3)のいずれかに記載の強化繊維基材。
(8)前記強化繊維布帛が、強化繊維糸条を一方向に並行に引き揃えてなる強化繊維糸条群と、前記強化繊維糸条群と交差する方向に強化繊維糸条を一方向に並行に引き揃えてなる強化繊維糸条群との少なくとも2層以上が積層され、繊度が強化繊維糸条の1/5以下である補助繊維糸条群により縫合一体化されたステッチ布帛である、(1)〜(3)のいずれかに記載の強化繊維基材。
(9)(1)〜(8)のいずれかに記載の強化繊維基材を複数枚積層してなる強化繊維積層体。
(10)熱融着もしくはステッチにより一体化されてなる、(9)に記載の強化繊維積層体。
(11)(1)〜(8)のいずれかに記載の強化繊維基材または(9)または(10)に記載の強化繊維積層体に、マトリックス樹脂を含浸させてなる繊維強化樹脂。
(12)強化繊維体積含有率が53〜65%の範囲であり、SACMA−SRM−2R−94に記載されている衝撃付与後常温圧縮強度が200MPa以上である、(11)に記載の繊維強化樹脂。
である。

発明の効果

0010

本発明によれば、以下に説明するとおり、形態安定性に優れるだけでなく、RTM成形時の樹脂含浸性に優れた強化繊維基材および強化繊維積層体が得られ、また成形後は低吸水性を付与しつつ耐衝撃性に優れたFRPを得ることができる。

図面の簡単な説明

0011

本発明の強化繊維基材の一態様を説明する概略断面図である。
本発明の強化繊維基材の製造装置の一態様を示す概略側面図である。
本発明に用いる強化繊維糸条群の一態様を示す概略斜視図である。
本発明に用いる強化繊維集合体としての一方向性織物の一態様を示す概略斜視図である。
本発明に用いる強化繊維集合体としての二方向性織物の一態様を示す概略斜視図である。
本発明に用いる強化繊維集合体としてのステッチ布帛の一態様を示す概略斜視図である。

0012

以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の強化繊維基材11の一態様を説明する概略断面図である。この図に示す強化繊維基材11は、強化繊維集合体12の片面に樹脂材料13が配置された後、接着一体化されているものである。

0013

強化繊維基材11は、強化繊維糸条、強化繊維糸条群、または強化繊維糸条もしくは強化繊維糸条群で構成される強化繊維布帛、のうちいずれかより選ばれる強化繊維集合体12の、少なくとも片側表面に樹脂材料13を有することが重要である。かかる樹脂材料13を少なくとも片側表面に存在させることにより、強化繊維基材11の幅や繊維配向などの形態安定性を向上させることができたり、強化繊維糸条群からなるシート状の強化繊維基材11の搬送時などの取扱性を向上させたりすることができる。

0014

また、後述する強化繊維基材11または強化繊維集合体12を積層した積層体プリフォーム)を得る際の強化繊維集合体12同士の接着性を付与させることができたり、プリフォームに適度な剛性を付与させることができたり、プリフォームの中の強化繊維の目ズレを防止する等の形態安定効果を付与させることができる等、プリフォームの取扱性の向上ができる。

0015

特に、本発明の樹脂材料13は、強化繊維集合体12の層間に、後述するマトリックス樹脂を流動拡散させるスペースを確保(マトリックス樹脂による強化繊維集合体12の層間の塑性変形能の付与)することができたり、樹脂材料13が強化繊維集合体12の層間に発生するクラックストッパーとなる等、衝撃を受けた時に、強化繊維集合体12の層間の損傷を抑制することができ、特に優れた力学特性(特にCAI)を達成することができるという効果を発現する。その他にも、樹脂材料13がスペーサーとなって、強化繊維集合体12の層間にマトリックス樹脂の流路が確保され、注入成形に供した際にマトリックス樹脂の含浸が容易になるだけでなく、その含浸速度も速くなり、FRPの生産性により優れる、といった効果をも発現する。

0016

かかる樹脂材料13は、強化繊維集合体12と接着し、少なくとも強化繊維集合体12の片側表面に存在していればよく、強化繊維集合体12の内部に存在(強化繊維糸条に浸透)していてもよい。好ましくは、前述の理由で強化繊維集合体12の表面にその50重量%以上、より好ましくは70重量%以上が偏在しているのが好ましい。また樹脂材料13と強化繊維束12とを接着する目的でバインダー成分を含んでいても良く、例えば樹脂材料13より融点の低い熱可塑性樹脂や、熱硬化性樹脂を用いることも可能である。

0017

また、本発明の強化繊維基材11は、樹脂材料13の形態がポーラス状であるところが重要である。本発明において、ポーラス状とは平面上の厚み方向に孔が空いている形状のことをいい、かかる形態のものであれば、強化繊維基材11の厚み方向にマトリックス樹脂や空気の流路が確保できるだけでなく、平面方向の繋がりがあるため、強化繊維糸条を用いた場合の幅安定性の向上や、強化繊維糸条群からなるシート状の強化繊維基材11の搬送時などの取扱性や、また強化繊維糸条群や布帛を用いた場合の基材の形態安定性を向上させることができる。かかるポーラス状の樹脂材料13としては、例えば不織布状、マット状、ネット状、メッシュ状、織物状編物状、短繊維群状、穿孔フィルム状、多孔フィルム状などが挙げられる。中でも不織布、マットまたはメッシュは安価に入手でき、且つ平面方向にもマトリックス樹脂や空気の流路が形成されているため、上記の効果が高く発現するため好ましい。樹脂材料13が不織布である場合、構成する繊維の形態としては長繊維短繊維が挙げられ、メルトブロースパンボンドエアレイドカーディング、抄紙などの方法によって製造されるが、特に限定はされない。また副成分として繊維同士を結着させるためのバインダー成分を含んでいてもよい。構成する繊維の繊維径は1μm以上100μm未満であることが好ましく、5μm以上80μm未満がより好ましく、10μm以上60μm未満がさらに好ましい。繊維径が1μm以下であると樹脂材料の表面積が大きくなるため、後述する樹脂含浸工程において樹脂の流動が妨げられることがあるため好ましくない。また繊維径が100μm以上であるとFRPとしたときの強化繊維基材層間の厚みが大きくなり、繊維体積含有率(Vf)が低下するため好ましくない。

0018

本発明の樹脂材料13は、カルボキシル基含有量が35μmol/gを超え400μmol/g未満かつ重量平均分子量が10000以上100000未満のポリアリーレンスルフィド樹脂であることが重要である。かかる樹脂材料13は、FRP成形時にFRP層間のマトリックス樹脂および炭素繊維との接着性を大幅に向上させることで、FRP層間に強固な層を形成することでき、力学特性(特にCAIやILSS)を高めることができる。本発明の樹脂材料13で用いるポリアリーレンスルフィドを下記に詳細に説明する。

0019

本発明におけるポリアリーレンスルフィド(以下、PASと略すことがある)とは、式、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とするホモポリマーまたはコポリマーである。ここで、主要構成単位とするとは、PASを構成する全構成単位のうち、当該繰り返し単位を80モル%以上含有することを意味する。前記Arとしては下記の式(A)〜式(K)などで表されるいずれかの単位が例示されるが、なかでも式(A)で表される単位が特に好ましい。

0020

0021

上記化1において、R1、R2は水素アルキル基アルコキシ基ハロゲン基カルボキシル基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい。

0022

この繰り返し単位を主要構成単位とする限り、下記の式(L)〜式(N)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、−(Ar−S)−の単位1モルに対して0〜1モル%の範囲であることが好ましい。

0023

0024

また、本発明におけるPASは上記繰り返し単位を含むランダム共重合体ブロック共重合体およびそれらの混合物のいずれかであってもよい。

0025

PASの繰り返し単位として、式(A)のp−アリーレンスルフィド単位が、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは98モル%以上含有されることが、PAS本来が有する高い融点を維持する上で好ましい。p−アリーレンスルフィド単位が90モル%未満、つまりo−アリーレンスルフィド単位やm−アリーレンスルフィド単位が多くなると、PAS本来が有する高い融点が低下するとともに機械物性も低下する傾向にあるため、好ましくない。

0026

これらPASの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドエーテル、ポリフェニレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体およびそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましいPASとしては、ポリマーの主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位を90モル%以上、好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは98モル%以上含有するポリフェニレンスルフィドが挙げられる。

0027

また、PASに含有されるカルボキシル基については、PASの主骨格を構成するアリーレンスルフィド単位に導入されたものでも、末端を構成するアリールスルフィド単位に導入されたものでもよい。また、カルボキシル基は、アリーレンスルフィド単位またはアリールスルフィド単位に直接結合した構造であっても、アリーレンスルフィド単位またはアリールスルフィド単位にアミノ基、アミド基エステル基イミド基、アルキル基、アルコキシ基、フェニレン基などを介して間接的に結合した構造であっても良い。ただし、PASのアリーレンスルフィド単位においてカルボキシル基がアミノ基、アミド基、エステル基、イミド基、アルキル基、アルコキシ基、フェニレン基などを介して間接的に結合した構造であると、PASの主鎖に対して嵩高な成分が側鎖として導入されることになり、融点低下や機械物性の低下につながる。そのため、PASのアリーレンスルフィド単位にカルボキシル基が直接結合した構造、または、PASの末端を構成するアリールスルフィド単位にカルボキシル基が直接または間接的に結合した構造であることが好ましい。なお、カルボキシル基が直接結合したアリーレンスルフィド単位のなかでも、2,5−安息香酸スルフィド単位のようにp−フェニレンスルフィド単位を構成していることが、高い融点や優れた機械物性の観点からより好ましい。

0028

本発明の樹脂材料13に用いるPASは、カルボキシル基含有量が35μmol/gを超え400μmol/g未満のPASを含むことが必要である。高い融点や優れた機械物性の観点からすると、全カルボキシル基の内、PASのアリーレンスルフィド単位またはアリールスルフィド単位にカルボキシル基が直接結合した構造は、40μmol/g以上380μmol/g未満であることが好ましく、50μmol/g以上300μmol/g未満がより好ましい。PASのアリーレンスルフィド単位またはアリールスルフィド単位に、カルボキシル基が、アミノ基、アミド基、エステル基、イミド基、アルキル基、アルコキシ基、フェニレン基などを介して間接的に結合した構造は、高い融点や優れた機械物性の観点からすると少ないほうが好ましいものの、90μmol/g未満であれば実使用上好ましく、50μmol/g未満がより好ましい。

0029

本発明のPAS樹脂は、重合反応により調製することが可能であり、以下に、PASの重合に用いるスルフィド化剤有機極性溶媒ジハロゲン化芳香族化合物モノハロゲン化化合物重合助剤、分岐・架橋剤、分子量調整剤、重合安定剤、脱水工程、重合工程、ポリマー回収、生成PASの順に説明する。

0030

(A−1)スルフィド化剤:スルフィド化剤としては、アルカリ金属硫化物アルカリ金属水硫化物、および硫化水素が挙げられる。取り扱い性汎用性などから、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、およびそれらの混合物が好ましく用いられる。スルフィド化剤は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで調製されるスルフィド化剤も用いることができる。

0031

好ましいスルフィド化剤としては、硫化ナトリウム水硫化ナトリウムが挙げられ、取り扱い性の観点から水性混合物の状態で用いることが好ましい。

0032

以下の説明において、スルフィド化剤の量は、後述の脱水操作などにより重合反応開始前にスルフィド化剤の一部損失が生じる場合には、仕込み量から当該損失分を差し引いた残存量を意味するものとする。

0033

スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましい。アルカリ金属水酸化物の使用量はアルカリ金属水硫化物100モルに対し、好ましくは90モル以上120モル未満、より好ましくは95モル以上115モル未満、さらに好ましくは95モル以上110モル未満の範囲が例示できる。使用量をこの範囲にすることで、分解を引き起こすことなく、重合副生物量の少ないPASを得ることができる。

0034

(A−2)有機極性溶媒:重合溶媒として有機極性溶媒を用いる。具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類;N−メチル−ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドヘキサメチルリン酸トリアミドジメチルスルホンテトラメチレンスルホキシドなどに代表されるアプロチック有機溶媒;およびこれらの混合物などが反応の安定性が高いために好ましく使用される。これらのなかでも、特にN−メチル−2−ピロリドン(NMP)が好ましく用いられる。

0035

PASの重合溶媒として用いる有機極性溶媒の使用量は、特に制限はないが、安定した反応性および経済性の観点から、スルフィド化剤100モル当たり、好ましくは250モル以上550モル未満、より好ましくは250モル以上500モル未満、より好ましくは250モル以上450モル未満の範囲が例示される。

0036

(A−3)ジハロゲン化芳香族化合物:PASを製造する際、原料としてジハロゲン化芳香族化合物を用いる。PASの代表であるPPSを製造する際、ベンゼン環硫黄がポリマーの主骨格となるため、用いるジハロゲン化芳香族化合物としては、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、p−ジブロモベンゼンなどのジハロゲン化ベンゼンが挙げられる。また、カルボキシル基の導入を目的に、2,4−ジクロロ安息香酸、2,5−ジクロロ安息香酸、2,6−ジクロロ安息香酸、3,5−ジクロロ安息香酸などのカルボキシル基含有ジハロゲン化芳香族化合物、およびそれらの混合物を共重合モノマーとして用いることも好ましい態様の一つである。さらに、本発明の効果を損なわない限り、2,4−ジクロロアニリン、2,5−ジクロロアニリン、2,6−ジクロロアニリン、3,5−ジクロロアニリン、2,4−ジクロロフェノール、2,5−ジクロロフェノール、2,6−ジクロロフェノール、3,5−ジクロロフェノール、1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼン、4,4’−ジクロロフェニルエーテル、4,4’−ジクロロジフェニルスルホキシド、4,4’−ジクロロフェニルケトンなどのジハロゲン化芳香族化合物などを用いることも可能である。なかでも、p−ジクロロベンゼンに代表されるp−ジハロゲン化ベンゼンを主成分とすることが好ましい。また、2,4−ジクロロ安息香酸や2,5−ジクロロ安息香酸に代表されるジハロゲン化安息香酸を共重合成分として一部使用することも好ましい態様の一つであり、高い融点を維持する観点では、2,5−ジクロロ安息香酸がよりこの好ましい共重合成分である。

0037

ジハロゲン化芳香族化合物の使用量は、分解を抑制すると共に加工に適した粘度のPASを効率よく得る観点から、スルフィド化剤100モル当たり、好ましくは80モル以上150モル未満、より好ましくは90モル以上110モル未満、さらに好ましくは、95モル以上105モル未満の範囲が例示できる。スルフィド化剤100モル当たり、ジハロゲン化芳香族化合物が80モル未満であると、得られるPASが分解する傾向にある。スルフィド化剤100モル当たり、ジハロゲン化芳香族化合物が150モル以上であると、得られるPASの分子量が低下し、機械物性や耐薬品性が低下する傾向にある。共重合成分としてカルボキシル基含有ジハロゲン化芳香族化合物を使用する場合は、ジハロゲン化芳香族化合物の合計量の内、カルボキシル基含有ジハロゲン化芳香族化合物の使用量がスルフィド化剤100モル当たり、好ましくは0.1モル以上20モル未満、より好ましくは1モル以上15モル未満、さらに好ましくは2モル以上10モル未満の範囲が例示できる。カルボキシル基含有ジハロゲン化芳香族化合物が、スルフィド化剤100モル当たり0.1モル未満であると、得られるPASのカルボキシル基量が少なくなる。カルボキシル基含有ジハロゲン化芳香族化合物が、スルフィド化剤100モル当たり、20モル以上であると、得られるPASの分子量が低下し機械物性や耐薬品性が低下する傾向にある。

0038

カルボキシル基含有ジハロゲン化芳香族化合物を使用する場合、その添加時期に特に制限はなく、後述する脱水工程時重合開始時重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよい。脱水工程時に添加すると、脱水工程時にカルボキシル基含有ジハロゲン化芳香族化合物が揮散しないような還流装置が必要である。また、重合途中(加圧状態)で添加するには圧入装置が必要であるとともに、重合途中からカルボキシル基含有ジハロゲン化芳香族化合物が反応することになるため、重合終了時点でカルボキシル基含有ジハロゲン化芳香族化合物の消費が完結せず、重合系内に残存するとともに、PASへのカルボキシル基導入量が少なくなるため、優れた機械物性や耐薬品性を発現しにくくなる傾向にある。よって、カルボキシル基含有ジハロゲン化芳香族化合物の添加時期は、ジハロゲン化芳香族化合物の転化率が80%未満の時点が好ましく、70%未満の時点がより好ましく、脱水工程完了後から重合開始までの間がさらに好ましく、重合開始時つまりジハロゲン化芳香族化合物と同時に添加することが最も好ましい。

0039

(A−4)モノハロゲン化化合物:PASを製造する際、カルボキシル基含有量の多いPASを得る目的でカルボキシル基含有モノハロゲン化化合物を添加することも好ましい態様の一つである。カルボキシル基含有モノハロゲン化化合物としては、カルボキシル基含有モノハロゲン化芳香族化合物が好ましい例として挙げられる。具体的には、2−クロロ安息香酸、3−クロロ安息香酸、4−クロロ安息香酸、4−クロロフタル酸水素ナトリウム、2−アミノ−4−クロロ安息香酸、4−クロロ−3−ニトロ安息香酸、4’−クロロベンゾフェノン−2−カルボン酸などが挙げられる。重合時の反応性や汎用性などから、3−クロロ安息香酸、4−クロロ安息香酸、4−クロロフタル酸水素ナトリウムが好ましいモノハロゲン化化合物として挙げられる。また、本発明の効果を損なわない限り、クロロベンゼン1−クロロナフタレン、2−クロロアニリン、3−クロロアニリン、4−クロロアニリン、2−クロロフェノール、3−クロロフェノール、4−クロロフェノール、4−クロロベンズアミド、4−クロロベンゼンアセトアミド、4−クロロベンゼンスルホンアミド、4−クロロベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンチオール、2−アミノ−5−クロロベンゾフェノン、2−アミノ−4−クロロフェノール、2−クロロニトロベンゼン、3−クロロニトロベンゼン、4−クロロニトロベンゼン、4−クロロフタル酸無水物などのモノハロゲン化化合物、およびそれらの混合物を用いることも可能である。

0040

モノハロゲン化化合物を使用する場合、その使用量は、スルフィド化剤100モル当たり0.01モル以上20モル未満が好ましく、より好ましくは0.1モル以上15モル未満、さらに好ましくは1.0モル以上10モル未満、特に好ましくは2.0モル以上8モル未満の範囲である。スルフィド化剤100モル当たり、モノハロゲン化化合物が0.01モル未満であると、得られるPASのカルボキシル基量が少なくなる。スルフィド化剤100モル当たり、モノハロゲン化化合物が20モル以上であると、得られるPASの分子量が低下し、機械物性や耐薬品性が低下する傾向にある。

0041

また、ジハロゲン化芳香族化合物やモノハロゲン化化合物などのハロゲン化化合物の合計量を特定の範囲にすることが好ましい。スルフィド化剤100モルに対してハロゲン化化合物の合計量を98モル以上110モル未満にすることが好ましく、100モル以上108モル未満がより好ましく、103モル以上107モル未満が一層好ましい。スルフィド化剤100モルに対してハロゲン化化合物の合計量が98モル未満であると、得られるPASが分解する傾向にある。スルフィド化剤100モルに対してハロゲン化化合物の合計量が110モル以上であると、得られるPASの分子量が低下し機械物性や耐薬品性が低下する傾向にある。なお、ハロゲン化化合物としては、上述のジハロゲン化芳香族化合物や反応性官能基を有するモノハロゲン化芳香族化合物のみならず、後述の分岐・架橋剤で使用するトリハロゲン化以上のポリハロゲン化化合物も含む。

0042

モノハロゲン化化合物の添加時期には特に制限はなく、後述する脱水工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよい。脱水工程時に添加すると、脱水工程時にモノハロゲン化化合物が揮散しないような還流装置が必要である。また、重合途中(加圧状態)で添加するには圧入装置が必要であるとともに、重合途中からモノハロゲン化化合物が反応することになるため、重合終了時点でモノハロゲン化化合物の消費が完結せず、重合系内に残存する。モノハロゲン化化合物にカルボキシル基含有モノハロゲン化芳香族化合物を使用した場合ではPASへのカルボキシル基導入量が少なくなるため、優れた機械物性や耐薬品性を発現しにくくなる傾向にある。よって、モノハロゲン化化合物の添加時期は、ジハロゲン化芳香族化合物の転化率が80%未満の時点が好ましく、70%未満の時点がより好ましく、脱水工程完了後から重合開始までの間がさらに好ましく、重合開始時つまりジハロゲン化芳香族化合物と同時に添加することが最も好ましい。

0043

なお、モノハロゲン化化合物は、PASの分子量を調整する目的、またはPASの塩素含有量を低減する目的で使用することも可能であり、カルボキシル基含有モノハロゲン化化合物を用いた場合、PAS中のカルボキシル基含有量の増大のみならず塩素量の低減にも寄与する。

0044

(A−5)重合助剤:PASを製造する際、重合助剤を用いることも好ましい態様の一つである。重合助剤を用いる目的は、得られるPASを所望の溶融粘度に調整するためである。重合助剤の具体例としては、例えば有機カルボン酸金属塩、水、アルカリ金属塩化物(ただし、塩化ナトリウムは除く)、有機スルホン酸金属塩硫酸アルカリ金属塩アルカリ土類金属酸化物アルカリ金属リン酸塩およびアルカリ土類金属リン酸塩などが挙げられる。これらは単独で用いても2種以上同時に用いても差し障りない。なかでも、有機カルボン酸金属塩および/または水が好ましく用いられる。

0045

有機カルボン酸金属塩は、水和物、無水物または水溶液としても用いることができる。具体例としては、酢酸リチウム酢酸ナトリウム酢酸カリウム酢酸マグネシウム酢酸カルシウムプロピオン酸ナトリウム吉草酸リチウム安息香酸ナトリウムフェニル酢酸ナトリウム、およびそれらの混合物などが挙げられる。安価でかつ反応系への適度な溶解性を有する酢酸ナトリウムが好ましく用いられる。

0046

重合助剤として上記有機カルボン酸金属塩を用いる場合の使用量は、仕込みスルフィド化剤100モルに対し、1モル以上70モル未満の範囲が好ましく、2モル以上60モル未満の範囲がより好ましく、2モル以上55モル未満の範囲がいっそう好ましい。

0047

重合助剤として有機カルボン酸金属塩を使用する場合、その添加時期には特に制限はなく、後述する脱水工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよい。添加の容易性からすると、脱水工程開始時あるいは重合開始時に、スルフィド化剤と同時に添加することが好ましい。

0048

重合助剤として水を用いる場合、水単独で用いることも可能であるが、有機カルボン酸金属塩を同時に用いることが好ましい。これにより重合助剤としての効果をより高めることができ、より少ない重合助剤の使用量でも短時間で所望の溶融粘度のPASを得ることができる傾向にある。この場合の重合系内の好ましい水分量の範囲は、スルフィド化剤100モルに対し80モル以上300モル未満であり、85モル以上180モル未満がより好ましい。水分量が多すぎると反応器内圧の上昇が大きく、高い耐圧性能を有した反応器が必要となるため、経済的にも安全性の面でも好ましくない傾向にある。

0049

また、重合後に水を添加することも好ましい様態の一つである。重合後に水を添加した後の重合系内の水分量の好ましい範囲は、スルフィド化剤100モルに対して100〜1500モルであり、150〜1000モルがより好ましい。

0050

(A−6)分子量調整剤:PASを製造する際、分岐または架橋重合体を形成させ、得られるPASを所望の溶融粘度に調整するために、トリハロゲン化以上のポリハロゲン化合物などの分岐・架橋剤を併用することも可能である。ポリハロゲン化合物としてはポリハロゲン化芳香族化合物が好ましく、具体例としては、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンが挙げられる。

0051

(A−7)重合安定剤:PASを製造する際、重合反応系を安定化し、副反応を防止するために、重合安定剤を用いることも可能である。重合安定剤は、重合反応系の安定化に寄与し、チオフェノールの生成など望ましくない副反応を抑制する。重合安定剤の具体例としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩アルカリ土類金属水酸化物、およびアルカリ土類金属炭酸塩などの化合物が挙げられる。そのなかでも、水酸化ナトリウム水酸化カリウム、および水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物が好ましい。前述した有機カルボン酸金属塩も重合安定剤として作用する。また、スルフィド化剤としてアルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいことを前述したが、ここでスルフィド化剤に対して過剰となるアルカリ金属水酸化物も重合安定剤となり得る。

0052

これら重合安定剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合安定剤は、重合反応開始前の反応系内のスルフィド化剤100モルに対して、好ましくは1〜20モル、より好ましくは3〜10モルの割合で使用することが望ましい。この割合が多すぎると経済的に不利益であったり、ポリマー収率が低下したりする傾向にある。なお、反応時にアルカリ金属硫化物の一部が分解して、硫化水素が発生する場合には、その結果生成したアルカリ金属水酸化物も重合安定剤となり得る。

0053

重合安定剤の添加時期には特に限定はなく、後述する脱水工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよい。

0054

(A−8)脱水工程:PASを製造する際、スルフィド化剤は通常水和物の形で使用される。ジハロゲン化芳香族化合物やモノハロゲン化化合物を添加する前に、有機極性溶媒とスルフィド化剤を含む混合物を昇温し、過剰量の水を系外に除去することが好ましい。この工程を脱水工程と呼ぶ。この方法には特に制限はないが、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜150℃、好ましくは常温〜100℃の温度範囲で、有機極性溶媒にアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物を加え、常圧または減圧下、少なくとも150℃以上、好ましくは180℃〜260℃まで昇温し、水分を留去させる方法が挙げられる。この段階で重合助剤を加えてもよい。

0055

脱水工程が終了した段階での系内の水分量は、仕込みスルフィド化剤100モル当たり90〜110モルであることが好ましい。ここで系内の水分量とは脱水工程で仕込まれた水分量から系外に除去された水分量を差し引いた量である。

0056

(A−9)重合工程:PASを製造する際、上記脱水工程で調製した反応物と、ジハロゲン化芳香族化合物やモノハロゲン化化合物とを有機極性溶媒中で接触させて重合反応させる重合工程を行う。重合工程開始に際しては、望ましくは不活性ガス雰囲気下、100〜220℃、好ましくは130〜200℃の温度範囲で、ジハロゲン化芳香族化合物やモノハロゲン化化合物を加える。この段階で重合助剤を加えてもよい。これらの原料の仕込み順序は、順不同であってもよく、同時であってもさしつかえない。

0057

重合工程は200℃以上280℃未満の温度範囲で行うことが好ましいが、本発明の効果が得られる限り重合条件に制限はない。例えば、一定速度で昇温した後、245℃以上280℃未満の温度範囲で反応を一定時間継続する方法、200℃以上245℃未満の温度範囲において一定温度で一定時間反応を行った後に245℃以上280℃未満の温度範囲に昇温して反応を一定時間継続する方法、200℃以上245℃未満の温度範囲、中でも230℃以上245℃未満の温度範囲において一定温度で一定時間反応を行った後、245℃以上280℃未満の温度範囲に昇温して短時間で反応を完了させる方法などが挙げられる。なかでも、本発明のPAS樹脂組成物を得るために必要な高いカルボキシル量を有し、なおかつ揮発性成分が少ないPASを得るのに好ましい重合条件としては、有機極性溶媒中で、スルフィド化剤と所定量のジハロゲン化芳香族化合物やモノハロゲン化化合物を200℃以上280℃未満の温度範囲内で反応させてPASを得る際、 <工程1>230℃以上245℃未満の温度範囲内において、昇降温時間を含めた重合時間(T1a)が30分以上3.5時間未満であり、工程終了時点でのジハロゲン化芳香族化合物の転化率が70〜98モル%になるように反応させてPASのプレポリマーを生成させる工程、および <工程2>245℃以上280℃未満の温度範囲内において、昇降温時間を含めた重合時間(T2)が5分以上1時間未満で前記PASのプレポリマーを反応させてPASを得る工程、 を経る重合条件が挙げられる。以下、工程1および工程2について詳細に述べる。

0058

<工程1>
高いカルボキシル量を有し、なおかつ揮発性成分が少ないPASを得るには、低い温度でジハロゲン化芳香族化合物やモノハロゲン化化合物の転化率を十分上げた後に工程2を行うことが好ましい。しかし、重合温度230℃未満の反応では、反応速度が遅いため、ジハロゲン化芳香族化合物やモノハロゲン化化合物の転化率が上がりにくく、得られるPASの溶融粘度が低く、射出成形に好適な溶融流動性が得られにくい傾向にある。また、230℃未満のみの反応でジハロゲン化芳香族化合物の転化率を上げるには長時間の反応を要し、生産効率上好ましくない。そのため、工程1においては、比較的反応速度が高い230℃以上245℃未満の温度範囲で30分以上3.5時間未満、好ましくは40分以上3.5時間未満、より好ましくは1時間以上3時間未満、さらに好ましくは1.5時間以上3時間未満反応を行うのがよい。230℃以上245℃未満の温度範囲でジハロゲン化芳香族化合物の転化率を上げるため、230℃未満の温度範囲での重合時間を短時間にする方が生産効率上好ましい。200℃以上230℃未満の温度範囲での重合時間は2時間以内が好ましく、1時間以内がより好ましい時間として例示できる。さらに、工程1を含む200℃以上245℃未満の温度範囲内での昇降温時間を含めた重合時間(T1)は1.5時間以上4時間未満であることが好ましく、1.5時間以上3.5時間未満がより好ましく、2時間以上3.5時間以内がさらに好ましい。T1が1.5時間未満の場合、後記のジハロゲン化芳香族化合物の転化率が低くなり、工程2において未反応のスルフィド化剤がプレポリマーの分解を引き起こし、得られたPASを加熱溶融させたときの揮発性成分が増大する傾向にある。また、T1が4時間を超えると生産効率の低下につながる。

0059

かかる重合温度範囲内での平均昇温速度は0.1℃/分以上で行うことが望ましい。なお、前記の平均昇温速度とは、ある一定の温度t2(℃)からある一定の温度t1(℃)までの温度区間(ただしt2<t1とする)を昇温するのに要した時間m(分)から、下記式 平均昇温速度(℃/分)=[t1(℃)−t2(℃)]/m(分) で計算される平均速度である。従って、前述した平均昇温速度の範囲内であれば、必ずしも一定速度である必要はなく、定温区間があってもよいし、多段で昇温を行っても差し障り無く、一時的に負の昇温速度となる区間があってもよい。

0060

平均昇温速度は2.0℃/分以下がより好ましく1.5℃/分以下がさらに好ましい。平均昇温速度が高すぎると反応の制御が困難になる場合があり、また昇温するために、より大きなエネルギーが必要になる傾向がある。反応初期に激しい反応が起こる場合には240℃以下である程度反応を行った後に240℃を越える温度に昇温する方法で反応を行う方が好ましい傾向にある。

0061

工程1終了時のジハロゲン化芳香族化合物の転化率が70〜98モル%になるように反応させてPASのプレポリマーを生成させることが好ましく、より好ましくは75モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、いっそう好ましくは90モル%以上になるように反応させることが望ましい。かかる転化率が低い状態で工程2に移行すると、未反応のスルフィド化剤がプレポリマーの分解を引き起こし、得られたPASを加熱溶融させたときの揮発性成分量が増大する傾向にある。また、工程1での転化率が98モル%を超えるまで反応を行うと、長い重合時間が必要となるため生産効率の低下につながる。なお、ジハロゲン化芳香族化合物(以下DHAと略す)の転化率は、以下の式で算出した値である。DHA残存量は、通常、ガスクロマトグラフ法によって求めることができる。 (a)ジハロゲン化芳香族化合物をスルフィド化剤に対しモル比で過剰に添加した場合、転化率=[〔DHA仕込み量(モル)−DHA残存量(モル)〕/〔DHA仕込み量(モル)−DHA過剰量(モル)〕]×100% (b)上記(a)以外の場合、転化率=[〔DHA仕込み量(モル)−DHA残存量(モル)〕/〔DHA仕込み量(モル)〕]×100%。

0062

<工程2>
工程2の最終温度は275℃以下であることが好ましく、270℃以下がより好ましい。工程2を経ることなく工程1のみで重合を終了させた場合、または工程2の重合時間が極端に短い場合、得られるPASの溶融粘度が低くなり、成形品の強度が低下する傾向にある。また、カルボキシル基含有化合物反応率が低くなることでPASのカルボキシル基量が少なく、モノハロゲン化化合物を使用する場合は塩素量低減効果も小さい。また、後記するポリマー回収工程においてフラッシュ法を用いる場合、重合物の温度が低いとフラッシュエネルギーが小さくなるため、重合溶媒の気化熱が減少し効率的にフラッシュ回収できないという問題も生じる。工程2の最終温度が280℃以上に達すると、得られるPASの溶融粘度が高くなりすぎるとともに、反応器内圧の上昇が大きくなる傾向にあり、高い耐圧性能を有した反応器が必要となる場合があるため、経済的にも安全性の面でも好ましくない。また、重合温度が高温になるほど、PASに導入されたカルボキシル基が熱分解変性することにより、PASの機械物性が低下する傾向にある。

0063

工程2の重合時間(T2)は、5分以上1時間未満であることが好ましく、10分以上40分未満であることがより好ましく、10分以上30分未満であることがいっそう好ましい。有機極性溶媒中でスルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物やモノハロゲン化化合物をアルカリ金属水酸化物存在下で反応させると、NMPなどの有機極性溶媒とアルカリ金属水酸化物とが反応して、アルカリ金属アルキルアミノアルキルカルボキシレートが生成する副反応が進行する。工程2での重合時間(T2)が1時間以上であると、かかる副反応の進行が著しく、得られたPASを溶融加熱したときに副反応物由来の揮発性成分量が増大する傾向にある。また、長い重合時間は生産効率の低下やPASの溶融粘度増大を引き起こすという問題も生じると同時に、PASに導入されたカルボキシル基が熱分解や変性することにより、PASの機械物性が低下する傾向にある。また熱によるPASの主鎖分解、それに伴う機械物性の低下も引き起こす。

0064

なお、工程2での反応は一定温度で行う一段反応、段階的に温度を上げていく多段階反応、あるいは連続的に温度を変化させていく形式の反応のいずれでもかまわない。

0065

また、工程1の重合時間(T1a)と工程2の重合時間(T2)の比(T1a/T2)を0.5以上にすることが好ましい。かかる比が高いほど、工程1での重合時間を十分確保しジハロゲン化芳香族化合物やモノハロゲン化化合物の転化率を高めることができると同時に工程2での重合時間を短時間に抑えることができる。また、工程2のような高温での反応を短時間に抑えることでPASに導入されたカルボキシル基の熱分解や変性も抑制することができるため、高い機械物性や耐薬品性を発現することができる。そのため、T1a/T2は1以上がより好ましく、2以上がさらに好ましく、5以上がいっそう好ましい。T1a/T2の上限は特に制限されるものではないが、好ましい溶融流動性を備えたPASを得るうえで、25以下が好ましく、20以下がより好ましい。

0066

また、工程1を含む200℃以上245℃未満の温度範囲での重合時間(T1)と工程2の重合時間(T2)の比(T1/T2)を1.2以上にすることが好ましい。かかる比が高いほど、低い温度での重合時間を十分確保しジハロゲン化芳香族化合物やモノハロゲン化化合物の転化率を高めることができると同時に工程2での重合時間を短時間に抑えることができる。そのため、T1/T2は3以上がより好ましく、5以上がいっそう好ましい。T1/T2の上限は特に制限されるものではないが、好ましい溶融流動性を備えたPASを得るうえで、30以下が好ましく、25以下がより好ましい。

0067

さらに、工程1開始から工程2終了までの全反応時間(T1+T2)を5時間未満にすることが好ましく、4時間未満にすることがさらに好ましく、3.5時間未満にすることが一層好ましい。重合時間の長時間化は生産効率の低下につながるとともに、溶融時の揮発性成分量の増加や溶融流動性の悪化、カルボキシル基の熱分解や変性によるPASの機械物性の低下を引き起こす傾向にある。

0068

重合の際における雰囲気非酸化性雰囲気下が望ましく、窒素ヘリウムアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。特に、経済性および取扱いの容易さの面からは窒素が好ましい。反応圧力については、使用した原料および溶媒の種類や量、あるいは反応温度等に依存し一概に規定できないので、特に制限はない。

0069

重合反応工程を終えた段階でのPASへのカルボキシル基導入量は、FT−IRでのベンゼン環由来の吸収とカルボキシル基由来の吸収の比較による相対評価で評価することができる。

0070

PASにカルボキシル基を導入するために、重合工程にカルボキシル基含有ハロゲン化芳香族化合物を添加する場合、その化合物の化学式は、次式で表される。

0071

0072

ここで、Xはハロゲン基。Y1はハロゲン基またはカルボキシル基。Y2〜Y5は水素、アルキル基、アルコキシ基、フェニレン基、アミノ基、アミド基、エステル基、イミド基、アセトアミド基スルホンアミド基スルホン酸基、カルボキシル基、ヒドロキシル基チオール基シアノ基イソシアネート基アルデヒド基アセチル基無水物基エポキシ基シラノール基アルコキシシラン基、もしくはそれらの誘導体から選ばれた置換基であり、Y1がハロゲン基の場合、Y2〜Y5の少なくとも1つはカルボキシル基である。つまり、カルボキシル基含有ジハロゲン化芳香族化合物やカルボキシル基含有モノハロゲン化芳香族化合物であり、2種以上の化合物を混合して反応に用いてもよい。その反応量は、スルフィド化剤100モルに対し0.1モル以上20モル未満が好ましく、1.0モル以上6モル未満がさらに好ましく、1.5モル以上5モル未満が一層好ましい。ここで、反応量とは、重合工程終了後にサンプリングしたサンプル中に残存するカルボキシル基含有ハロゲン化芳香族化合物をガスクロマトグラフにて定量し、仕込量から残存量を差し引いた値のことである。該反応量が多いほどPASへのカルボキシル基の導入量が多く、高い機械物性や耐薬品性を発現することを意味している。スルフィド化剤100モルに対し反応量が20モル以上となると、得られるPASが低分子量となり、機械物性低下につながる。一方、反応量が0.1モル未満であると、得られるPASのカルボキシル基量が少ないがために機械物性の低下につながる。

0073

(A−10)ポリマー回収:PASを製造する際、重合工程終了後に、重合工程で得られたPAS成分および溶剤などを含む重合反応物からPASを回収する。回収方法としては、例えばフラッシュ法、すなわち重合反応物を高温高圧(通常250℃以上、0.8MPa以上)の状態から常圧もしくは減圧の雰囲気中へフラッシュさせ、溶媒回収と同時に重合体粉粒状にして回収する方法や、クエンチ法、すなわち重合反応物を高温高圧の状態から徐々に冷却して反応系内のPAS成分を析出させ、かつ70℃以上、好ましくは100℃以上の状態で濾別することでPAS成分を含む固体を回収する方法等が挙げられる。

0074

回収方法は、クエンチ法、フラッシュ法いずれかに限定されるものではないが、フラッシュ法は、溶媒回収と同時に固形物の回収が可能であること、回収時間が比較的短いこと、クエンチ法に比較して得られる回収物量が多いことなど、経済的に優れた回収方法であること、および、フラッシュ法にて得られたPASはクロロホルム抽出成分に代表されるようなオリゴマー成分を多く含むため、クエンチ法で得られたPASに比較して、溶融流動性の高いPASを簡便に得やすいことから、フラッシュ法が好ましい回収方法である。

0075

フラッシュ法では、高温高圧状態の重合反応物を常圧の雰囲気中へフラッシュしたときの溶媒の気化熱を利用して効率よく溶媒回収することができる。フラッシュさせるときの重合反応物の温度が低いと溶媒回収の効率が低下し生産性が悪化する。そのためフラッシュさせるときの重合反応物の温度は250℃以上が好ましく、255℃以上がより好ましい。フラッシュさせるときの雰囲気は、窒素または水蒸気などの雰囲気が好ましい。雰囲気の温度は150〜250℃が好ましく、重合反応物からの溶媒回収が不足する場合は、フラッシュ後に150〜250℃の窒素または水蒸気などの雰囲気下で加熱を継続してもよい。

0076

かかるフラッシュ法で得られたPASには重合副生物であるアルカリ金属ハロゲン化物やアルカリ金属有機物などのイオン性不純物を含まれているため、洗浄を行うことが好ましい。洗浄条件としては、かかるイオン性不純物を除去するに足る条件であれば特に限定されるものではない。洗浄液としては例えば水や有機溶媒を用いて洗浄する方法が挙げられる。簡便かつ安価である点、PAS中にオリゴマー成分を含有させて高い溶融流動性を持たせられる点で、水を用いた洗浄が好ましい方法として例示できる。水、酸または酸の水溶液、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の水溶液のいずれかの液体にPASを浸漬させる処理を1回以上行うことが好ましく、各洗浄処理の間にはポリマーと洗浄液を分離する濾過工程を経ることがより好ましい。

0077

酸または酸の水溶液にPASを浸漬させる場合は、処理後の洗浄液のpHが2〜8であることが好ましい。酸または酸の水溶液とは、有機酸無機酸または水に有機酸、無機酸等を添加して酸性にしたものである。使用する有機酸、無機酸としては、酢酸プロピオン酸塩酸硫酸リン酸蟻酸等が例示できる。酢酸または塩酸が好ましい。

0078

アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の水溶液にPASを浸漬させる場合、水溶液中のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の量はPASに対し、0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜0.7質量%がさらに好ましい。アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の水溶液とは、水にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等を添加して溶解させたものである。使用するアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩としては、上記有機酸のカルシウム塩カリウム塩ナトリウム塩マグネシウム塩等が例示できるが、これらに限定されるものではない。

0079

洗浄液でPASを洗浄する際の温度は80℃以上220℃以下が好ましく、イオン性不純物の少ないPASを得る点において150℃以上200℃以下がより好ましく、さらには180℃以上200℃以下がより好ましい。

0080

洗浄液に使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましく、PASと洗浄液の割合は、通常、洗浄液1リットルに対し、PAS10〜500gの範囲が好ましく選択される。

0081

いずれの洗浄液を用いても差し支えないが、酸で処理するとより高い溶融流動性が得られるため、好適な方法として例示できる。

0082

洗浄液は洗浄工程のいずれの段階で使用してもよいが、少量の洗浄液で効率的に洗浄を行うには、フラッシュ法にて回収した固形物を80℃以上220℃以下の熱水に浸漬および濾過する処理を数回行った後、150℃以上の酸または酸の水溶液にPASを浸漬させて処理する方法が好ましい。

0083

かくして得られたPASは、常圧下および/または減圧下で乾燥する。かかる乾燥温度としては、120〜280℃の範囲が好ましい。乾燥雰囲気は、窒素、ヘリウム、減圧下などの不活性雰囲気酸素、空気などの酸化性雰囲気、空気と窒素の混合雰囲気の何れでも良いが、溶融粘度の関係から不活性雰囲気が好ましい。乾燥時間は、0.5〜50時間が好ましい。

0084

得られたPASを、揮発性成分を除去するために、あるいは架橋高分子量化して好ましい溶融粘度に調整するために、酸素含有雰囲気下、130〜260℃の温度で0.1〜20時間処理することも可能である。

0085

(A−11)生成PAS:かくして得られたPASは、カルボキシル基含有量が35μmol/gを超え400μmol/g未満であることが必要である。カルボキシル基含有量は、40μmol/g以上が好ましく、45μmol/g以上がより好ましく、50μmol/g以上が一層好ましい範囲である。カルボキシル基含有量は、350μmol/g未満が好ましく、300μmol/g未満がより好ましく、250μmol/g未満が一層好ましい範囲である。本発明では、このような範囲のカルボキシル基含有量を有するPASと、充填材を配合して得られるPAS樹脂組成物が、従来にない優れた機械物性や耐薬品性を有することを見出したものである。PASのカルボキシル基含有量が35μmol/g以下であると強化繊維基材やマトリックス樹脂との相互作用が低下し、得られる樹脂組成物から作成した成形品の機械物性や耐薬品性向上効果が小さくなる。一方、PASのカルボキシル基含有量が400μmol/g以上であると、揮発性成分量が増大する傾向にあるとともに、ボイド増加による樹脂未含浸部が多くなるので好ましくない。また、カルボキシル基含有モノハロゲン化化合物を用いてPASの末端へカルボキシル基を導入する場合に、カルボキシル含有量が400μmol/g以上のPASを得るには、末端に多量のカルボキシル基を導入する必要が有る。すなわち、末端数が多くなるため、PASの分子量が低くなり、本発明に必要な重量平均分子量10000以上100000未満のPASを得るのが困難となる。

0086

本発明において、PASの重量平均分子量は10000以上100000未満が必要である。本発明では、通常のPASより多くカルボキシル基を含有するPASを用いることで、得られる成形品の機械物性や耐薬品性を飛躍的に向上させる。一方でPASの分子量が低いと、PAS自体の機械物性が大幅に低下するため、たとえカルボキシル基含有量が多いとしても、充填材を添加して得られる樹脂組成物から作成する成形品の機械物性や耐薬品性は低下する傾向にある。また、PASの分子量が高すぎると、溶融時の粘度が大幅に増大し、射出成形時に金型に樹脂組成物が入り込めず成形品が得られない傾向にある。PASの重量平均分子量は15000以上が好ましく、16000以上がより好ましく、17000以上がさらに好ましい。PASの重量平均分子量は80000未満が好ましく、60000未満がより好ましく、40000未満がさらに好ましい。

0087

本発明において、PASのメルトフローレート(MFR)は50以上1500以下が必要である。本発明では、PASのMFRが50未満もしくは1500超える場合、ポーラス状の熱可塑性樹脂層への2次加工が困難になるため、本発明のMFRの範囲に粘度制御するのが好ましい。本発明のMFRは、荷重5kg下で測定温度315.5℃、5分間滞留させたときのMFR(g/10分)をメルトインデクサー装置(東洋精機(株)製)にて測定したものである。

0088

また、PASの特性として、真空下320℃×2時間加熱溶融した際に揮発する揮発性成分量が1.0質量%以下であることが好ましい。PASに含まれる揮発性成分が多い場合、強化繊維積層体中のボイドが多くなり、耐衝撃性などの力学特性(特にCAIやILSSなど)が大幅に低下する問題が発生する要因となる。そのため揮発性成分量は少ないことが望まれており、0.9質量%以下がより好ましく、0.8質量%以下がいっそう好ましい。揮発性成分量は少ないことが好ましいため下限はないものの、通常、0.01質量%以上は発生する。

0089

なお、上記揮発性成分量とは、PASを真空下で加熱溶融した際に揮発する成分が冷却されて液化または固化した付着性成分の量を意味しており、PASを真空封入したガラスアンプル管状炉を用いて、上記条件で加熱することにより測定されるものである。

0090

PASを得る際、カルボキシル基含有モノハロゲン化化合物を重合時に添加する場合、PASの末端塩素の一部がカルボキシル基に置き換わるため、PASの塩素含有量が低減する傾向にある。電気電子部品分野では、環境に対する取り組みとして低ハロゲン化への動き活発化しており、塩素含有量の低いPASは環境負荷低減材料としての効果も有している。カルボキシル基含有モノハロゲン化化合物を用いた重合反応で得られるPASの塩素含有量は、3500ppm以下が好ましく、より好ましくは3000ppm以下、さらに好ましくは2500ppm以下である。

0091

PAS樹脂組成物に用いるPASとしては、2種以上のPASを併用することも可能である。2種以上のPASを併用した場合は、PAS樹脂組成物に含まれる全てのPASの平均のカルボキシル基含有量および重量平均分子量が本発明の特定の範囲内にあることが必要である。

0092

本発明で使用する樹脂材料13は、強化繊維基材11の1〜20重量%であることが好ましい。好ましくは2〜18重量%、より好ましくは3〜16重量%である。樹脂材料13が、前記範囲で配置されていることにより、強化繊維基材11の形態安定性がもたらされ、取扱性に優れた強化繊維基材11を得ることが可能となる。1重量%未満であると強化繊維基材11の取扱性が低下するだけでなく、力学特性(特にCAI)の向上効果が小さくなるため好ましくない。また20重量%を超えると、FRPにしたときの強化繊維体積含有率が低くなりすぎたり、FRPの耐熱性、耐薬品性や圧縮強度が低下する場合があるので好ましくない。

0093

本発明に使用する強化繊維糸条は、マルチフィラメント糸であってガラス繊維糸有機アラミド、PBO、PVA、PE等)繊維糸、炭素繊維(PAN系、ピッチ系等)糸等である。炭素繊維は比強度および比弾性率に優れ、殆ど吸水しないので、航空機構造材や自動車の強化繊維として好ましく用いられる。

0094

本発明に使用する強化繊維糸条は3,000〜50,000フィラメントであることが好ましく、取扱性の観点から12,000〜24,000フィラメントであるのが特に好ましい。強化繊維糸条の形態は特に限定されないが、糸条の幅や厚みの安定性に優れる無撚糸であることが好ましく、さらに繊維配向に優れる開繊糸であることが好ましい。

0095

ここで、本発明の強化繊維基材は[1]:強化繊維糸条、[2]:強化繊維糸条を並行に引き揃えてなる強化繊維糸条群、または[3]強化繊維糸条もしくは強化繊維糸条群で構成される強化繊維布帛、のうちいずれかより選ばれる強化繊維集合体からなることが重要である。

0096

まず、[1]:強化繊維糸条からなる強化繊維基材21は、例えば図2に例示する装置を使用して作成される。詳しくは、ボビン20から引き出された強化繊維糸条22は、開繊ユニット201により開繊幅規制ローラ202にて所望の幅に調整した後、あらかじめ所望の幅にスリットした網目状樹脂材料23と重ね合わせ、ヒーター203により加熱、プレスロール204により圧着することにより作成される。開繊ユニット201は振動ローラなどにより構成され、強化繊維糸条22の進行方向に対して直行する鉛直方向や水平方向に振動を加える機構を備える。また開繊ユニット201は、強化繊維糸条22表面に付着したサイジング剤軟化させるためのヒーター(図示せず)を備えていても良い。このとき、ボビン20から引き出された強化繊維糸条22の糸幅をw0とすると、開繊後の強化繊維糸条22の幅はw1(w0<w1)に拡幅され、その後幅規制ローラ202によって幅w2(w1>w2)に調整される。w2は強化繊維基材21に求められる目付に応じて調整することが好ましい。また強化繊維基材21の幅精度を向上させるため、プレスロール204は溝付き構造とすることが好ましい。

0097

かかる装置により作成された強化繊維基材21は、幅や目付の安定性が良く、また繊維配向にも優れるため、FRPの力学特性(特に圧縮強度)向上に寄与することができる。また網目状樹脂材料203は強化繊維糸条群の両面に配置すると、強化繊維基材21の形態安定性がさらに向上するため好ましい。

0098

次に、[2]:強化繊維糸条群からなる強化繊維基材21は、強化繊維糸条22からなる強化繊維基材の作成方法と同様に、例えば図2に例示する装置に複数のボビン20を掛け、複数の強化繊維糸条22を並行に引き揃えながら引き出すことにより作成される。ここで、並行に引き揃えるとは、隣接する強化繊維糸条22同士が、実質的に交差または交錯しない様に引き揃えることをいい、好ましくは、隣接する2本の強化繊維糸条を100mmの長さの範囲で直線に近似したとき、近似した直線が形成する角度が5°以下、さらに好ましくは2°以下となるよう引き揃えることである。ここで、強化繊維糸条22を直線に近似するとは、100mmの起点と終点とを結んで直線を形成することをいう。また隣接する強化繊維糸条22同士は、求められる強化繊維基材21の目付に応じて一定の間隔を隔てていてもよく、重なり合っていてもよい。一定の間隔を隔てる場合、間隔は強化繊維糸条22幅の200%以下であることが好ましく、重なり合っている場合は強化繊維糸条22幅の100%重なっていてもよい。このように並行に引き揃えながら引き出された強化繊維糸条群は、開繊ユニットを通過することにより、幅方向の目付を均一に分布させることが好ましい。また、かかる強化繊維糸条群から作られた強化繊維基材21は、必要であればスリットを行い、任意の幅に制御することも可能である。

0099

[3]強化繊維糸条もしくは強化繊維糸条群で構成される強化繊維布帛については後述する。

0100

また、強化繊維糸条22および強化繊維糸条群を使用した強化繊維基材21は、オートメーテッドファイバープレイスメントAFP)やオートメーテッドテープレイアップ(ATL)装置が好適に用いられる。かかる装置は強化繊維基材21の廃棄率削減や積層工程自動化を目的として使用されるが、配置後の幅や繊維配向などが厳しく求められるため、強化繊維基材21の形態安定性が重要になる。ここで本発明に用いる網目状樹脂材料23は網目状の形態をしているため、平面方向の繋がりにより幅安定性や形態安定性に優れるため、AFPやATLに好適に用いることができる。

0101

さらに本発明の強化繊維糸条群の別の態様としては、AFPやATLにより並行に引き揃え配置されたシート状のものも挙げられる。図3は本発明に用いられる強化繊維糸条群の一態様を示すものであり、強化繊維糸条32はAFPヘッド300によって供給され、並行に引き揃え配置される。かかる強化繊維糸条群31に、本発明のポーラス状樹脂材料(図示せず)を重ね合わせるように配置し、遠赤外ヒーターなどにより加熱接着することで、強化繊維基材を得ることができる。AFPやATLによって引き揃え配置されたシート状の強化繊維糸条群31は、繊維方向と交差する方向に拘束が無いため、搬送の際に強化繊維糸条群31の形態が崩れる問題がある。かかる問題に対し、網目状樹脂材料を配置し接着することで、繊維方向と交差する方向の拘束力が生まれ、搬送の問題を解決することができる。また、AFPやATLによって強化繊維糸条32を引き揃え配置する際の強化繊維糸条32同士の間隔は0.5〜2mmであることが好ましい。間隔が0.5mm未満の場合、RTM成形時の樹脂含浸性が十分でなくなることがある。また間隔が2mmを超えると、複数枚の強化繊維基材を積層した際に、上層の強化繊維が下層の強化繊維糸条32間に落ち込み、厚さ方向のうねりが発生し力学特性(特に圧縮強度)が低下することがある。

0102

次に[3]強化繊維糸条もしくは強化繊維糸条群で構成される強化繊維布帛としては、織物(一方向性、二方向性多軸)、編物、組物、一方向に引き揃えられたシート(一方向シート)、一方向シートを2層以上重ね合わせた多軸シート等が挙げられる。このような強化繊維集合体はステッチ糸結節糸、粗布、バインダー等の樹脂等による各種接合手段により複数のものを一体化したものであってもよい。特に輸送機器(特に航空機)の構造(特に一次構造)部材として用いる場合には、一方向シート、一方向性織物、または多軸シート(特にステッチ接合したもの)であるのが好ましい。

0103

図4は、本発明に用いる強化繊維布帛としての一方向性織物41の一態様を示す概略斜視図である。強化繊維糸条42および経補助糸43が強化繊維集合体41の長さ方向、つまりたて方向に配列し、よこ方向には強化繊維糸条42より細い緯補助糸44が配列し、経補助糸43と緯補助糸44が交錯し、図4に示す織組織を有する一方向性織物である。かかる補助糸43、44としては低収縮性のものであることが好ましく、例えば、ガラス繊維糸、アラミド繊維糸炭素繊維糸等が挙げられ、補助糸の繊度(単位長さあたりの重量)は強化繊維糸条の1/5以下であるのが好ましい。1/5を超えると、補助糸が太くなるので、補助糸によって強化繊維糸条がクリンプし、FRPにした際に若干強化繊維の強度低下をもたらす。一方、強化繊維集合体の形態安定性、製造安定性の面から、補助糸の繊度は強化繊維糸条の0.05%以上であるのが好ましい。上記範囲の繊度であると、強度低下を最小限にし、かつ成形の際に経補助糸によって形成される強化繊維糸条42の間隙樹脂流路となり、マトリックス樹脂の含浸が促進できるので好ましい。

0104

図5は、本発明に用いる強化繊維布帛としての二方向性織物51の一態様を示す概略斜視図である。強化繊維糸条52が二方向性織物51の長さ方向、つまりたて方向に配列し、よこ方向に強化繊維糸条53が配列し、たて糸52とよこ糸53が交錯し、図5に示す織組織を有する二方向性織物である。

0105

図6は、本発明に用いる強化繊維布帛としてのステッチ布帛61の一態様を示す概略斜視図である。ステッチ布帛61の下面から、まず長さ方向イに対して斜め方向に多数本の強化繊維糸条が並行に配列して+α°層62を構成し、次いで強化布帛の幅方向に多数本の強化繊維糸条が並行に配列して90°層63を構成し、次いで斜め方向に多数本の強化繊維糸条が並行に配列して−α°層64を構成し、次いで強化布帛の長さ方向に多数本の強化繊維糸条が並行に配列して0°層65を構成し、互いに配列方向が異なる4つの層が積層された状態で、ステッチ糸66でこれら4層が縫合一体化されている。縫合一体化にあたってのステッチ糸66が形成する縫い組織としては、例えば単環縫い、1/1のトリコット編みが挙げられる。ステッチ糸の材料としては、ポリエステル樹脂ポリアミド樹脂ポリエチレン樹脂ビニルアルコール樹脂ポリフェニレンサルファイド樹脂ポリアラミド樹脂、それらの組成物等から選ぶことができる。中でも、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂であると好ましい。布帛の賦型性の観点からは、スパンデックスポリウレタン弾性繊維)、ポリアミド樹脂またはポリエステル樹脂の加工糸であることが好ましい。ステッチ糸の繊度は強化繊維糸条のクリンプを抑制するために強化繊維糸条の1/5以下であることが好ましい。また強化繊維集合体の形態安定性、製造安定性の面から10dtex以上、より好ましくは30dtex以上であることが好ましい。さらに、後述するプリフォーミング工程での賦形性の観点から、ステッチ糸は伸縮性を有することが好ましい。なお、図6で、断面形状が楕円状に示されている強化繊維の集合体が1糸条で、この強化繊維糸条間にステッチ糸66が配列しているかに見えるが、ステッチ糸66は強化繊維糸条に対してはランダムに挿入され、楕円状に示されている強化繊維の集合体はステッチ糸66の拘束によって形成されているのである。

0106

ここで、図6に示した多軸ステッチ布帛61の強化繊維の構成は+α°層/90°層/−α°層/0°層の4層構成について説明したが、これに限定するものではない。たとえば0°層/90°層、+α°層/−α°層、0°層/+α°層などからなる2層、+α°層/0°層/−α°層、+α°層/−α°層/0°層などからなる3層、また、0°層/+α°層/0°層/−α°層/90°層/−α°層/0°層/+α°層/0°層のように、0°層が多く含まれるような、0°、+α°、−α°、90゜の4方向を含むものであってもよい。また、0°、+α°、−α°、90゜のいずれかを含むものであってもよい。なお、バイアス角α゜は、ステッチ布帛をFRPの長さ方向に積層し、強化繊維による剪断補強を効果的に行う観点から45゜が好ましい。

0107

本発明の強化繊維基材における好ましい1層当たりの目付は50〜800g/m2の範囲内である。より好ましくは100〜500g/m2、更に好ましくは120〜300g/m2の範囲内である。50g/m2未満であると所定のFRPの厚みを得るための積層枚数が増え、成形の作業性が悪く好ましくない。また、一層当たりの目付が小さいと、層内の強化繊維糸条と強化繊維糸条の間に隙間ができ、強化繊維体積含有率Vfが部分的に不均一となり、成形すると強化繊維体積含有率Vfが大きなところはFRPが厚くなり、また強化繊維体積含有率Vfが小さなところはFRPが薄くなり、表面が凸凹したFRPとなる。このような場合には、製織寸前やステッチ糸による一体化加工前に、または/および強化布帛加工後に強化繊維糸条を振動ローラやエアージェット噴射で薄く拡げると、強化布帛の全面にわたり強化繊維の体積比が均一となり、表面が平滑なFRPが得られるので好ましい。また、800g/m2を超えるとマトリックス樹脂の含浸性が悪くなるので好ましくない。

0108

次に、本発明の強化繊維積層体について説明する。本発明の強化繊維基材はFRP成形に先立って、所望とする厚みに達するまで複数枚積層を行い、強化繊維積層体を形成する。本発明において、強化繊維積層体の取扱性や形態安定性を付与するために熱融着やステッチにより一体化されていることが好ましい。

0109

また本発明の強化繊維積層体は、目的とする炭素繊維強化樹脂成形体の形態に合わせて、前記炭素繊維積層基材に対して賦形型治具等を用いて立体形状を付与し、形状固着したプリフォームとすることもできる。特に、成形型が立体形状である場合において、このようにすることによって、型締め時、あるいは、樹脂注入・含浸時の繊維乱れしわの発生を容易に抑制することができる。

0110

次に、本発明のFRPについて説明する。本発明のFRPは、上述の強化繊維積層体にマトリックス樹脂が含浸したものである。かかるマトリックス樹脂は必要に応じて固化(硬化または重合)される。かかるマトリックス樹脂の好ましい例としては、例えば、熱硬化性樹脂、RIM(Reaction Injection Molding)用熱可塑性樹脂等が挙げられるが、中でも注入成形に好適であるエポキシ樹脂、フェノール樹脂ビニルエステル樹脂不飽和ポリエステル樹脂シアネートエステル樹脂ビスマレイミド樹脂およびベンゾオキサジン樹脂から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。

0111

また、本発明のFRPは優れた力学特性を有し、かつ軽量であるため、その用途が航空機、自動車、船舶の輸送機器のいずれかにおける一次構造部材、二次構造部材、外装部材または内装部材であることが好ましい。

0112

次に、本発明の強化繊維基材を用いたFRPの成形方法について説明する。
本発明の強化繊維基材のうち、強化繊維糸条や強化繊維糸条群からなる強化繊維基材は、AFPやATL装置によって所望の形状に引き揃え配置される。

0113

かかる配置工程は、2次元平面形状で行われても良いし、3次元形状で行われても良い。2次元平面形状の場合は、1層毎に強化繊維基材を配置した後、ポーラス状の樹脂材料を配置・接着することで、1層毎の搬送が容易なシート状の強化繊維基材を作成することができ、別で用意している賦形用金型に、引き揃え配置された状態の形状を崩さず搬送することが可能となる。このとき配置する網目状の樹脂材料に少なくとも部分的に切れ込みが入っていると、後述するプリフォーミング工程での賦形性がより良好になるため好ましい。また搬送手段としては、静電気や吸引針刺しなどの方法による搬送手段を用いることができる。

0114

また1層毎に作成したシート状の強化繊維基材は、更に取扱性を良くするため、複数の層を重ね合わせて熱融着もしくはステッチにより一体化した強化繊維積層体としても良い。このとき、2層目以降のn層目の強化繊維基材の配置方向を、n−1層目の配置方向とは異なる方向とすることにより、布帛と同様に扱うことができる複数層の強化繊維積層体とすることができる。かかる強化繊維基材の一体化工程は、強化繊維基材が重なり合っている全面に行われてもよいし、部分的に行われていてもよい。全面で一体化されていると強化繊維基材の形態安定性に優れる。一方、部分的に一体化されていると、後述するプリフォーミング工程において成形品形状への賦形の際に変形がしやすい(すなわち賦形性が良い)。よって成形品形状の複雑さによって、これらを任意に使い分けることが好ましい。

0115

ここで、本発明の強化繊維基材は、(樹脂材料の付着していない)強化繊維糸条をAFPやATL装置によって所望の形状に引き揃え配置した強化繊維糸条群に、ポーラス状の樹脂材料を配置・接着したものも含むことができる。このことにより、耐衝撃性などの特性を有していない炭素繊維糸条に対しても耐衝撃性などの特性を付与することができる。

0116

更に、1層目の強化繊維基材を配置した後、同じ平面上で2層目以降の配置を繰り返しても良い。かかる配置工程ではAFPやATL装置のヘッド部分にヒーターを設け、強化繊維基材表面の樹脂材料を溶融しながら2層目以降の強化繊維基材を配置することにより、強化繊維基材の配置工程と一体化工程の一括化ができる。このとき、2層目以降のn層目の強化繊維基材の配置方向を、n−1層目の配置方向とは異なる方向とすることにより、布帛と同様に扱うことができる複数層の強化繊維積層体とすることができる。

0117

また本発明の強化繊維基材のうち、強化繊維集合体からなる強化繊維基材、および強化繊維糸条群の層間に樹脂材料を含む強化繊維積層体は、成形品形状に合わせて所望の形状にカットして用いられる。

0118

このように作成した強化繊維基材もしくは強化繊維積層体は、1層ずつ、もしくは複数層を所望の角度構成で積層したのち、プリフォーミング工程を実施しプリフォームを作成する。プリフォーミング工程は樹脂材料のガラス転移点〜ガラス転移点+30℃の範囲で加熱するのが望ましい。加熱温度が低いと樹脂材料が充分に軟化せずプリフォームの形態固定が成されないことがある。また加熱温度が高いと樹脂材料が強化繊維基材に浸透し、マトリックス樹脂の含浸性が悪くなることがある。

0119

本発明のFRPの成形は、所謂樹脂注入成形によって行われ、RTM(Resin Transfer Molding)成形やVaRTM(Vacuum assisted Resin Transfer Molding)成形が好ましく適用される。本発明の強化繊維基材の少なくとも片面に配置されたポーラス状の樹脂材料は、強化繊維基材内部の空気を排出する際の流路(エアパス)としての機能や、樹脂拡散媒体としての機能を発揮する。したがって成形品内部品質の向上や、樹脂注入工程の高速化が実現できる。また本発明の強化繊維基材の少なくとも片面に配置されたポーラスの樹脂材料は平面方向の繋がりがあるため、高圧で樹脂を注入した際の強化繊維基材の変形を防ぐことができる。

0120

本発明のFRPは、強化繊維体積含有率(Vf)が53〜65%の範囲であり、SACMA−SRM−2R−94に記載されている衝撃付与後の常温圧縮強度が200MPa以上であることが好ましい。なお、Vf(単位はvol%)とは、繊維強化樹脂において強化繊維が占める体積比率のことを指し、具体的には次式によって定義され、ここで用いた記号は下記に示すとおりである。
Vf=(W×100)/(ρ×T)
W:強化繊維基材1cm2当たりの強化繊維の重量(g/cm2)
ρ:強化繊維の密度(g/cm3)
T:繊維強化樹脂の厚さ(cm)

0121

繊維強化樹脂のVfが53〜65%の範囲であると、繊維強化樹脂の優れた力学特性を最大限に発現することができる。Vfが53%未満であると、軽量化効果に劣り、65%を超えると、上述の注入成形での成形が困難となるほか、力学特性(特に耐衝撃性)が低下する場合がある。すなわち、かかるVf範囲において、繊維強化樹脂のSACMA−SRM−2R−94に記載されている衝撃付与後の常温圧縮強度が200MPa以上であると、軽量化効果と力学特性とを共に満足する材料とすることができる。かかる要件を満たす繊維強化樹脂においては、その優れた力学特性と軽量化効果から、多岐の用途にわたって利用される。特に限定されないが、航空機、自動車、または、船舶等の輸送機器における一次構造部材、二次構造部材、外装部材、内装部材もしくはそれらの部品等に用いられ、その効果を最大限に発現する。

0122

なお、SACMAとは、Suppliers of Advanced Composite Materials Associationの略であり、SACMA−SRM−2R−94とは、ここが定める試験法規格である。衝撃付与後の常温圧縮強度とは、SACMA−SRM−2R−94に従って、Dry条件にて270インチポンド衝撃エネルギーにおいて測定されたものである。

0123

以下、実施例を用いて本発明を更に説明する。実施例および比較例に用いた原材料および成形方法は、次の通りである。なお、本発明はこれら実施例および比較例に限定されるものではない。

0124

[重量平均分子量]
PAS樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算で算出した。GPCの測定条件を以下に示す。
装置:SSC−7100(センシュー科学社製)
カラム名:shodexUT−806M
溶離液:1−クロロナフタレン
検出器示差屈折率検出器
カラム温度:210℃
プレ恒温槽温度:250℃
ポンプ恒温槽温度:50℃
検出器温度:210℃
流量:1.0mL/min
試料注入量:300μL(スラリー状:約0.2質量%)。

0125

[カルボキシル基含有量]
PAS樹脂のカルボキシル基含有量は、フーリエ変換赤外分光装置(以下FT−IRと略す)を用いて算出した。まず、標準物質として安息香酸をFT−IRにて測定し、ベンゼン環のC−H結合の吸収である3066cm−1のピーク吸収強度(b1)とカルボキシル基の吸収である1704cm−1のピークの吸収強度(c1)を読み取り、ベンゼン環1単位に対するカルボキシル基量(U1)、(U1)=(c1)/[(b1)/5]を求めた。次に、PAS樹脂を320℃にて1分間溶融プレスした後、急冷して得られた非晶フィルムのFT−IR測定を行った。3066cm−1の吸収強度(b2)と1704cm−1の吸収強度(c2)を読み取り、ベンゼン環1単位に対するカルボキシル基量(U2)、(U2)=(c2)/[(b2)/4]を求めた。PAS樹脂がPPS樹脂の場合、フェニレンスルフィド単位から構成されていることから、PPS樹脂1gに対するカルボキシル基含有量を以下の式から算出した。PPS樹脂のカルボキシル基含有量(μmol/g)=(U2)/(U1)/108.161×1000000

0126

[MFR(メルトフローレート)]
荷重5kg下で測定温度315.5℃、5分間滞留させたときのMFR(g/10分)をメルトインデクサー装置(東洋精機(株)にて測定した。

0127

[実施例1〕
<強化繊維糸条>
炭素繊維糸条として、PAN系炭素繊維、24,000フィラメント、引張強度:6.0GPa、引張弾性率:294GPaのものを用いた。

0128

<樹脂材料>ポリアリーレンスルフィド(PAS)
(PAS−1)
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8267.37g(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2957.21g(70.97モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11434.50g(115.50モル)、酢酸ナトリウム861.00g(10.5モル)、及びイオン交換水10500gを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14780.1gおよびNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。

0129

次に、p−ジクロロベンゼン10235.46g(69.63モル)、NMP9009.00g(91.00モル)を加え、反応容器を窒素ガス下密封し、240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で238℃まで昇温した。238℃で95分反応を行った後、0.8℃/分の速度で270℃まで昇温した。270℃で100分反応を行った後、1260g(70モル)の水を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後200℃まで1.0℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷した。

0130

内容物を取り出し、26300gのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別し、得られた粒子を31900gのNMPで洗浄、濾別した。これを、56000gのイオン交換水で数回洗浄、濾別した後、0.05重量%酢酸水溶液70000gで洗浄、濾別した。70000gのイオン交換水で洗浄、濾別した後、得られた含水PPS粒子を80℃で熱風乾燥し、120℃で減圧乾燥することで乾燥PPSを得た。GPC測定を行ったところ、重量平均分子量は38000でMFRは900であった。FT−IRを用いて官能基量を定量したところカルボン酸が40μmol/g含まれていることが分かった。

0131

<ポーラス状樹脂材料>
上記樹脂材料をメルトブロー装置により不織布化した。平均繊維径は5μm、目付は10g/m2であった。

0132

<マトリックス樹脂>
次の主液100重量部に、次の硬化液を39重量部加え、80℃にて均一に様に撹拌したエポキシ樹脂組成物とした。溶解度パラメータは11.0、80℃におけるE型粘度計による粘度:55mPa・s、1時間後の粘度:180mPa・s、180℃で2時間硬化後のガラス転移点:197℃、曲げ弾性率:3.3GPaであった。
主液:エポキシとして、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型エポキシ(“アラルダイト”(登録商標)MY−721、ハンツマン・ジャパン(株)製)40重量部、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(“EPON”(登録商標)825、三菱化学(株)製)35重量部、ジグリシジルアニリン(GAN、日本化薬(株)製)15重量部、および、トリグリシジルアミノフェノール型エポキシ樹脂(“jER”(登録商標)630、三菱化学(株)製)10重量部をそれぞれ計り取り、70℃で1時間攪拌して均一溶解させた。
硬化液:変性芳香族ポリアミン(“jERキュア”(登録商標)W、三菱化学(株)製)70重量部、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(三井化学ファイン(株)製)20重量部、および、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(“セイカキュア”S、セイカ(株)製)10重量部、それぞれ計り取り、100℃で1時間攪拌して均一にした後に70℃に降温して、硬化促進剤として、t−ブチルカテコールDICTBC、DIC(株)製)2重量部計り取り、更に70℃で30分間攪拌して均一溶解させた。

0133

<強化繊維基材>
図2に示す装置を使用して、幅1/4インチのテープ状強化繊維基材を作成した。強化繊維基材の目付は162g/m2であった。

0134

<強化繊維積層体>
かかる強化繊維基材はAFP装置で擬似等方積層[45/0/−45/90]3S(24層:ここで「3S」とは、[ ]内に示す配向角度順に積層したものと対称〔Symmetry〕配置となるように積層したものとを合わせて1組(4層×2=8層)とし、これを3組積層(8層×3=24層)した態様を示す。以下同じ。)の構成で平面状のプリフォーム型上に積層した後、バッグフィルムシーラントにて密閉して真空に減圧した状態で、90℃のオーブンで1時間加熱した。その後、オーブンから取り出し、プリフォーム型を室温まで冷却した後に放圧して強化繊維積層体を得た。

0135

<繊維強化樹脂>
得られた強化繊維積層体上に樹脂拡散媒体(アルミ金網)を積層し、平面状の成形金型バッグ材とでシーラントを用いて密閉することによりキャビティを形成し、80℃のオーブン中に入れた。強化繊維積層体の温度が80℃に達した後に密閉したキャビティを真空に減圧して、マトリックス樹脂を80℃に保ちながら大気圧との差圧のみで注入した。樹脂が含浸した後、減圧を続けながら180℃に昇温し、2時間放置して硬化させて脱型した。その後、アフターキュアを行って、FRP平板1を得た。得られたFRPのVfは60%、CAIは230MPa、ILSSは93MPaであった。

0136

〔実施例2〕
樹脂材料の配合比を変えて、官能基量のカルボン酸が120μmol/g、重量平均分子量40000、MFR=1000のPAS−2樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして、FRP平板2を作成した。得られたFRPのVfは62%、CAIは266MPa、ILSSは99MPaであった。尚、PA−2樹脂の具体的な製造方法は以下のとおりである。

0137

攪拌機および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム水溶液8.19kg(70.0モル)、96%水酸化ナトリウム3.02kg(75.6モル)、酢酸ナトリウム1.89kg(23.1モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)14.5kg(147モル)及びイオン交換水5.82kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら225℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、少量のNMPを含む水を系内から留去した後冷却を開始した。

0138

200℃まで冷却し、p−ジクロロベンゼン(p−DCB)10.1kg(69.3モル)、NMP8.74kg(88.2モル)を加えた後に反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで攪拌しながら200〜218℃を1.0℃/分、218〜234℃を0.56℃/分、234〜240℃を0.25℃/分、240〜276℃を8.0℃/分で昇温し、276℃で75分間加熱を行った。276℃で75分間加熱を行った後、4−クロロ安息香酸0.64kg(4.10モル)を投入し、276℃で120分間反応を行った。

0139

反応終了後、直ちにオートクレーブ底栓弁を開放し、内容物を攪拌機付装置にフラッシュさせ、重合時にしようしたNMPの95以上が揮発除去されるまで230℃の攪拌機付装置内で1.5時間乾固し、PPSと塩類を含む固形物を回収した。

0140

得られた回収物及びイオン交換水74リットルを攪拌機付オートクレーブに入れ、75℃で15分洗浄した後、フィルターでろ過しケークを得た。得られたケークを75℃のイオン交換水で15分洗浄、ろ過する操作を3回行った後、ケーク及びイオン交換水74リットル、酢酸0.4kgを攪拌機付オートクレーブに入れ、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、195℃まで昇温した。その後、オートクレーブを冷却し、内容物を取り出した。内容物をフィルターでろ過して得たケークを窒素気流下、120℃で乾燥することで乾燥PPSを得た。

0141

〔実施例3〕
ポーラス状樹脂材料が付着していない強化繊維糸条を、AFP装置を用いて2次元平面形状に引き揃えて強化繊維糸条群を作成し、その上にポーラス状樹脂材料を配置した後、遠赤外ヒーターで加熱して接着することにより、平面状強化繊維基材を作成した。強化繊維基材の目付は162g/m2であった。

0142

かかる強化繊維基材は1層ごとに搬送し、擬似等方積層[45/0/−45/90]3S(24層)の構成で平面状のプリフォーム型上に積層した以外は実施例1と同様にして、FRP平板3を作成した。得られたFRPのVfは59%、CAIは225MPa、ILSSは90MPaであった。

0143

〔実施例4〕
強化繊維糸条と補助糸(“ECE225 1/0 1Z”、ユニチカ(株)製)を用いて図4に示すような一方向性織物を作成し、その片側表面に網目状樹脂材料を配置した後、遠赤外ヒーターで加熱して接着することにより、接着した強化繊維基材を作成した。強化繊維基材の目付は190g/m2であった。

0144

かかる強化繊維基材を擬似等方積層[45/0/−45/90]3S(24層)の構成で平面状のプリフォーム型上に積層した以外は実施例1と同様にして、FRP平板4を作成した。得られたFRPのVfは56%、CAIは232MPa、ILSSは95MPaであった。

0145

〔実施例5〕
強化繊維糸条とステッチ糸(“Grilon(登録商標)K−140”75dtex、エムスケミー・ジャパン(株)製)を用いて、層間および最下層に網目状樹脂材料を配置した後、ステッチ糸で縫合することで[45/−45]の2層構成の強化繊維基材を作成した。強化繊維基材の目付は268g/m2であった。

0146

かかる強化繊維基材を擬似等方積層[45/−45/0/90]3S(24層)の構成で平面状のプリフォーム型上に積層した以外は実施例1と同様にして、FRP平板5を作成した。得られたFRPのVfは58%、CAIは231MPa、ILSSは93MPaであった。

0147

〔比較例1〕
樹脂材料の形態を粉末状にした以外は実施例3と同様にして、強化繊維基材を作成したが、AFPで引き揃えたシート状の強化繊維糸条群が運搬の際にばらばらになり、成形品を得ることが出来なかった。

0148

〔比較例2〕
樹脂材料として、官能基量のカルボン酸が20μmol/g、重量平均分子量70000、MFR=120のPAS−3樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして、FRP平板7を作成した。FRPのVfは51%、CAIは145MPa、ILSSは43MPaであった。

0149

尚、PA−2樹脂の具体的な製造方法は以下のとおりである。
撹拌機および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2.94kg(70.63モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11.45kg(115.50モル)、酢酸ナトリウム2.24kg(27.3モル)、及びイオン交換水5.50kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水9.77kgおよびNMP0.28kgを留出した後、反応容器を200℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。

0150

その後200℃まで冷却し、p−ジクロロベンゼン10.32kg(70.20モル)、NMP9.37kg(94.50モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら0.8℃/分の速度で200℃から235℃まで昇温し、235℃で40分反応した。その後0.8℃/分の速度で270℃まで昇温し、270℃で70分反応した後、270℃から250℃まで15分かけて冷却しながら水2.40kg(133モル)を圧入した。ついで250℃から220℃まで75分かけて徐々に冷却した後、室温近傍まで急冷し内容物を取り出した。

実施例

0151

内容物を約35リットルのNMPで希釈しスラリーとして85℃で30分撹拌後、80メッシュ金網(目開き0.175mm)で濾別して固形物を得た。得られた固形物を同様にNMP約35リットルで洗浄濾別した。得られた固形物を70リットルのイオン交換水で希釈し、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過して固形物を回収する操作を合計3回繰り返した。得られた固形物および酢酸32gを70リットルのイオン交換水で希釈し、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過し、更に得られた固形物を70リットルのイオン交換水で希釈し、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過して固形物を回収した。このようにして得られた固形物を窒素気流下、120℃で乾燥することにより、乾燥PPSを得た。

0152

本発明のFRPは優れた力学特性を有し、かつ軽量であるため、その用途が航空機、自動車、船舶の輸送機器のいずれかにおける一次構造部材、二次構造部材、外装部材または内装部材に限らず、風車ブレードロボットアームX線天板といった医療機器等の一般産業用途の部材にも好適である。

0153

11:強化繊維基材
12:強化繊維集合体
13:樹脂材料
20:ボビン
21:強化繊維基材
22:強化繊維糸条
23:網目状樹脂材料
201:開繊ユニット
202:幅規制ローラ
203:ヒーター
204:プレスロール
31:強化繊維糸条群
32:強化繊維糸条
300:AFPヘッド
41:一方向性織物
42:強化繊維糸条(経糸
43:補助糸(経糸)
44:補助糸(緯糸
51:二方向性織物
52:強化繊維糸条(経糸)
53:強化繊維糸条(緯糸)
61:ステッチ布帛
62:強化布帛を形成する+α°の強化繊維層
63:強化布帛を形成する90°の強化繊維層
64:強化布帛を形成する−α°の強化繊維層
65:強化布帛を形成する0°の強化繊維層
66:ステッチ糸

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