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技術 低温靭性に優れる二相ステンレス鋼

出願人 日本冶金工業株式会社
発明者 渡邉隆之韋富高
出願日 2018年8月8日 (2年4ヶ月経過) 出願番号 2018-149215
公開日 2020年2月13日 (10ヶ月経過) 公開番号 2020-023736
状態 特許登録済
技術分野 溶融状態での鋼の処理
主要キーワード アンビリカル 活性態 許容内 海水環境 塩化物環境 単位面積中 二相ステンレス鋼 脱硫材
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重要な関連分野

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課題

有害な析出物であるAl窒化物Cr窒化物析出リスクの両者を抑制し、低温靭性に優れる二相ステンレス鋼を提供する。

解決手段

以下質量%にて、C:0.001〜0.030%、Si:0.05〜0.5%、S:0.002%以下、Ni:6〜7.5%、Cr:23〜26%、Mo:2〜4.0%、N:0.20〜0.40%、Al:0.005〜0.03%、Mn:0.05〜0.3%およびB:0.0001〜0.0050%を満たして含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつJIS Z2242に規定されている衝撃値の値が、−46±2℃において87.5J/cm2以上となるよう調整してなる二相ステンレス鋼。

概要

背景

二相ステンレス鋼は、鉄をベースとして、Cr、Mo、Ni、Nを含有する鋼種である。本合金の特徴として、特に海水環境等の塩化物環境に対する耐孔食性に優れ、また、重量に対する強度がオーステナイト系ステンレス鋼フェライト系ステンレス鋼よりも優れている。このため必要な強度を付与させる場合に薄肉とすることができ、製品の軽量化、小型化が容易に可能となる。さらに二相ステンレス鋼のNi含有量は8%以下程度と比較的低濃度なことから、比較的安価であり経済性に優れる。なおかつ溶接性も良好なため、海水環境、油井関連の構造物海水淡水化装置熱交換器、また近年では油井用アンビリカルチューブなどの、高い耐食性が求められる環境に用いる材料として広く使用される。

海底油井用途等において、極など緯度の高い施設地域に供される場合、材料が晒される環境の温度は氷点下に及ぶ場合がある。このため、ごく低温においても高い靭性を示すことが求められていた。

しかしながら、二相ステンレス鋼は、一般的なオーステナイト系ステンレス鋼に比べて相安定性に劣ることより、 Cr、Al、Nを主体とする硬く脆い窒化物析出し易い特徴を持つ。これらのAlN、Cr2Nに代表される窒化物が析出した場合、特に低温における材料の靭性を低下させ、また窒化物の周囲で耐食性に寄与するCr、Mo、Nが欠乏するため耐食性を低下させる。この特徴はAl、Nの増加とともに耐食性を向上させるために添加する元素であるCr、Moなどの含有量が多くなるほど顕著となる。

これらの窒化物は、二相ステンレス鋼において有害な金属間化合物としてよく知られるσ相に比べても短時間で析出し、特に肉厚が厚い材料の中心部や水冷が難しい溶接後の組織においては、水冷に準ずる高い冷却速度でも避けるのが難しい場合があった。

従って、これまでに様々な合金成分の提案、熱処理条件冷却条件の変更などを工夫し、組織制御をすることで、低温における靭性を確保するための提案がなされている。

例えば、特許文献1では、二相ステンレス鋼の継目無鋼管の製造方法において、フェライト単相となる温度から−300〜+100℃の範囲で熱間加工を行うことでフェライト相に歪を蓄積し、次いで外表面が1.0℃/sec以上の冷却速度でオーステナイトが析出する温度域に冷却、保持をすることで組織の微細化を図り、さらにその後に適切な固溶体化熱処理、あるいは焼入れ焼き戻し熱処理を施すことで、低温靭性に優れた継目無鋼管が得られるとしている。

また、特許文献2においては、Crの含有量を20〜25%にとどめ、かつ0.5〜2.0%のMnを含有させ、Nの溶解度を高めることによって低温靭性に優れる二相ステンレス交換を提供することが提案されている。

概要

有害な析出物であるAl窒化物、Cr窒化物の析出リスクの両者を抑制し、低温靭性に優れる二相ステンレス鋼を提供する。以下質量%にて、C:0.001〜0.030%、Si:0.05〜0.5%、S:0.002%以下、Ni:6〜7.5%、Cr:23〜26%、Mo:2〜4.0%、N:0.20〜0.40%、Al:0.005〜0.03%、Mn:0.05〜0.3%およびB:0.0001〜0.0050%を満たして含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつJIS Z2242に規定されている衝撃値の値が、−46±2℃において87.5J/cm2以上となるよう調整してなる二相ステンレス鋼。

目的

また、特許文献2においては、Crの含有量を20〜25%にとどめ、かつ0.5〜2.0%のMnを含有させ、Nの溶解度を高めることによって低温靭性に優れる二相ステンレス交換を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
0件

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請求項1

以下質量%にて、C:0.001〜0.030%、Si:0.05〜0.5%、S:0.002%以下、Ni:6〜7.5%、Cr:23〜26%、Mo:2〜4.0%、N:0.20〜0.40%、Al:0.005〜0.03%、Mn:0.05〜0.3%およびB:0.0001〜0.0050%を満たして含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつJISZ2242に規定されている衝撃値の値が、−46±2℃において87.5J/cm2以上となるよう調整してなることを特徴とする二相ステンレス鋼

請求項2

上記Al、N、Mo、Cr、Niの関係において、次式;[%Al]×[%N]≦(−22.78×[%Mo]−5×[%Cr]−3.611×[%Ni]+323)×10−4を満たし、かつ、Cr、Mo、N、Ni、Mnの関係式において、次式;([%Cr]+6.5534×[%Mo])2×[%N]≦−215.6×[%Ni] +1708.3×[%Mn]+2150を満たすことを特徴とする請求項1に記載の二相ステンレス鋼。

請求項3

金属組織において、1mm2の任意の視野中に存在する粒の長さが3μm以上のAl窒化物個数が200個以下であり、かつ、個々が0.1μm未満の間隔で長さ1μm以上に連続するCr窒化物延べ長さが2000μm以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の二相ステンレス鋼。

請求項4

W:0.01〜0.70%、Cu:0.01〜0.90%のうち1種類または2種類を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の二相ステンレス鋼。

技術分野

0001

本発明は、低温靭性に優れる高耐食二相ステンレス鋼に関し、具体的には、Al、N、Cr、Ni、Mo、Mnを適正範囲に制御した高耐食二相ステンレス鋼に関するものである。

背景技術

0002

二相ステンレス鋼は、鉄をベースとして、Cr、Mo、Ni、Nを含有する鋼種である。本合金の特徴として、特に海水環境等の塩化物環境に対する耐孔食性に優れ、また、重量に対する強度がオーステナイト系ステンレス鋼フェライト系ステンレス鋼よりも優れている。このため必要な強度を付与させる場合に薄肉とすることができ、製品の軽量化、小型化が容易に可能となる。さらに二相ステンレス鋼のNi含有量は8%以下程度と比較的低濃度なことから、比較的安価であり経済性に優れる。なおかつ溶接性も良好なため、海水環境、油井関連の構造物海水淡水化装置熱交換器、また近年では油井用アンビリカルチューブなどの、高い耐食性が求められる環境に用いる材料として広く使用される。

0003

海底油井用途等において、極など緯度の高い施設地域に供される場合、材料が晒される環境の温度は氷点下に及ぶ場合がある。このため、ごく低温においても高い靭性を示すことが求められていた。

0004

しかしながら、二相ステンレス鋼は、一般的なオーステナイト系ステンレス鋼に比べて相安定性に劣ることより、 Cr、Al、Nを主体とする硬く脆い窒化物析出し易い特徴を持つ。これらのAlN、Cr2Nに代表される窒化物が析出した場合、特に低温における材料の靭性を低下させ、また窒化物の周囲で耐食性に寄与するCr、Mo、Nが欠乏するため耐食性を低下させる。この特徴はAl、Nの増加とともに耐食性を向上させるために添加する元素であるCr、Moなどの含有量が多くなるほど顕著となる。

0005

これらの窒化物は、二相ステンレス鋼において有害な金属間化合物としてよく知られるσ相に比べても短時間で析出し、特に肉厚が厚い材料の中心部や水冷が難しい溶接後の組織においては、水冷に準ずる高い冷却速度でも避けるのが難しい場合があった。

0006

従って、これまでに様々な合金成分の提案、熱処理条件冷却条件の変更などを工夫し、組織制御をすることで、低温における靭性を確保するための提案がなされている。

0007

例えば、特許文献1では、二相ステンレス鋼の継目無鋼管の製造方法において、フェライト単相となる温度から−300〜+100℃の範囲で熱間加工を行うことでフェライト相に歪を蓄積し、次いで外表面が1.0℃/sec以上の冷却速度でオーステナイトが析出する温度域に冷却、保持をすることで組織の微細化を図り、さらにその後に適切な固溶体化熱処理、あるいは焼入れ焼き戻し熱処理を施すことで、低温靭性に優れた継目無鋼管が得られるとしている。

0008

また、特許文献2においては、Crの含有量を20〜25%にとどめ、かつ0.5〜2.0%のMnを含有させ、Nの溶解度を高めることによって低温靭性に優れる二相ステンレス交換を提供することが提案されている。

0009

特許第6008062号公報
特許第6303851号公報

0010

しかしながら、特許文献1に記載された技術では、AlまたはNを多く含有する場合、AlNの析出温度は著しく高まり、フェライト単相温度よりもAlNの析出温度が上回るようになり、上記熱間加工および冷却の温度制御のみでAlNの析出を回避することは難しい。

先行技術

0011

一方、特許文献2に記載された技術において、Mnは硬く脆い有害な金属間化合物であるσ相の析出を促進させる元素である。特にCr、Mo、Nを多く含有し、これらの含有量から[mass%Cr]+3.3[mass%Mo]+16[mass%N]として求まる耐孔食指数PRE(Pitting Resistance Equivalent)が40を上回る、一般にスーパー二相ステンレス鋼と称される高耐食二相ステンレス鋼において、Mnによるσ相の析出促進は顕著であるため、実用の製造工程あるいは加工、使用時においてはσ相の析出を完全に避けることは難しく、靭性を損なう、あるいは所定の耐食性を得られないリスクを有する問題があった。

発明が解決しようとする課題

0012

本発明は、上記のような問題に対してなされたものであり、有害な析出物であるAl窒化物、Cr窒化物の析出リスクの両者を抑制し、低温靭性に優れる二相ステンレス鋼を提供することが本発明の目的である。

課題を解決するための手段

0013

CrおよびMoは[Cr,Mo]2Nの構成元素であるため、これらの過度な添加はCr窒化物の析出を促進し、低温靭性を低下させる。またフェライト相あるいはオーステナイト相中に固溶するNi量を増加させると、靭性を向上させることができるが、過度なNiの添加は、鋼中のフェライト相率を減少させる。フェライト相中のNの固溶限は小さいため、フェライト相中に過飽和となるCrと結びつきCr窒化物を析出させ、低温靭性を低下させる。MnはNの溶解度を高めるため、Cr窒化物の析出を抑制するが、σ相の析出を促進するため、これによる靭性低下のリスクを高める。また、Mo、Cr、NiはAl窒化物の析出を促進し、これも低温靭性を低下させる。しかしながら、Ni、Cr、Mo、Nの元素は耐食性を高める基本的な元素であるため、極力これらを高濃度で含有しつつ、Cr窒化物、Al窒化物を抑制するように化学組成調和を取ることが望ましい。

0014

上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を重ねた。その結果、Ni:6〜7.5質量%、Cr:23〜26質量%、Mo:2〜4.0質量%、Mn:0.05〜0.3質量%の化学成分を基本とし、フェライト相とオーステナイト相を有する組織において、良好な低温靭性を得るためには、Al窒化物の個数およびCr窒化物の延べ長さを制限することが重要であることを見出した。さらに、発明者らは研究を重ね、Al窒化物、Cr窒化物の析出抑制においてAl、N、Cr、Mo、Mnの関係が適切となる範囲およびこれらの元素の関係性を見出した。さらに微量添加されるその他の元素の含有量についてもその範囲を特定した。

0015

本発明の高耐食二相ステンレス鋼は、上記の知見に基づいてなされたもので、以下質量%にて、C:0.001〜0.030%、Si:0.05〜0.5%、S:0.002%以下、Ni:6〜7.5%、Cr:23〜26%、Mo:2〜4.0%、N:0.20〜0.40%、Al:0.005〜0.03%、Mn:0.05〜0.3%およびB:0.0001〜0.0050%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、JIS Z2242に規定されている衝撃値の値が、−46±2℃において87.5J/cm2以上であることを特徴とする。

0016

本発明においては、さらに上記Al、N、Mo、Cr、Niの関係において、次式
[%Al]×[%N]≦(−22.78×[%Mo]−5×[%Cr]−3.611×[%Ni]+323)×10−4
を満たし、かつ、Cr、Mo、N、Ni、Mnの関係式において、次式:
([%Cr]+6.5534×[%Mo])2×[%N]≦−215.6×[%Ni]+1708.3×[%Mn]+2150
を満たして含有することを好ましい態様とする。

0017

また、本発明においては、金属組織において、1mm2の任意の視野中に存在する粒の長さが3μm以上のAl窒化物の個数が200個以下であり、かつ、個々が0.1μm未満の間隔で長さ1μm以上に連続するCr窒化物の延べ長さが2000μm以下であることを好ましい態様とする。

0018

さらに、本発明においては、W:0.01〜0.70%、Cu:0.01〜0.90%のうち1種類または2種類を含有することを好ましい態様とする。

図面の簡単な説明

0019

Cr窒化物およびAl窒化物の析出の様子を示す模式図である。

0020

以下、本発明における各元素の成分組成と、Al窒化物、Cr窒化物析出を抑制するためのAl、N、Cr、Mo、Mnの関係式、および単位面積中のAl窒化物個数、Cr窒化物の延べ長さについて説明する。

0021

本発明の二相ステンレス鋼は、以下に記載する各元素を各々記載した範囲で含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるものである。不可避的不純物とは、二相ステンレス鋼を工業的に製造する際において、種々の要因により混入するもので、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。なお本発明において、特に断りのない限り「%」は「質量%」を表す。

0022

C:0.001〜0.030%
Cはオーステナイト相を安定化させるために有効な元素であるが、炭化物を析出させ、耐孔食性を低下させる元素であるので、含有量の上限値は0.030%が好ましく、0.025%以下が特に好ましい。一方で、下限値は強度の低下を防止する点で0.001%以上が好ましい。

0023

Si:0.05〜0.5%
Siは、脱酸剤脱硫材として添加される元素である。またSiは湯の流動性を高めるため、溶接性を良好にする元素である。しかしSiを過剰に含有する場合σ相の析出を促進させる。従ってSiの含有量の上限値は、σ相などの金属間化合物の析出を抑える点から0.5%以下が好ましく、0.35%以下が特に好ましい。下限値は、脱酸剤としての効果を発揮する点で0.05%以上が好ましい.Siによる脱酸の効果を確実にし、また溶接時の湯の流動性を良好に保つため、より好ましい下限値は0.15%以上である。

0024

S:0.002%以下
Sは、鋼中に不可避的に混入する不純物元素であり、鋼の熱間加工性劣化させ、靭性を低下させる作用を有する。また硫化物を形成し、孔食の起点となるため耐食性に有害に作用する。そのためS含有量は極力少ない方が良く、上限値は0.002%が望ましい。より好ましくは0.0015%以下である。但しSは僅かの含有でも溶融時の湯の流動性を大きく高めることから溶接性を良好にする元素でもある。これよりSは特に限定しないが、良好な溶接性を得る点から0.0001%以上含有することが好ましい。なおSはAl、Siの添加により脱硫を行うことで、本発明の範囲に調整する。

0025

Mn:0.01〜0.30%
Mnはオーステナイト生成元素であるため、オーステナイト相とフェライト相の比率の調整に有効である。またMnはMnSの形成によりSを固着することで熱間加工性の向上に有効な元素である。さらにMnはNの溶解度を高める作用があるため、Cr2Nの析出抑制に有効である。このためMnは0.01%以上含有させる。これらの効果を確実に得るためには0.1%以上含有させることがより好ましい。しかし前述のとおり過度なMnの固溶はσ相の析出を促進し、これによる靭性および耐食性を低下させる。さらにMnを過度に含有する場合、ごく微量のSであってもMnSを形成し、孔食の起点となることで耐食性を劣化させる。従って Mnの含有量の上限値は、σ相の析出を抑えて靭性の低下を抑制し、また耐孔食性の低下を防止する点から0.3%以下である必要がある。好ましくは0.28%以下であり、0.25%以下が特に好ましい。

0026

Ni:6〜7.5%
Niは、オーステナイト生成元素であり、二相ステンレス鋼のフェライト相とオーステナイト相の相比を良好に保つ為に不可欠である。またNiは活性態域の溶解を抑制し、さらに窒素の溶解度を高めるため、耐食性に有効な元素である。そのため下限値はオーステナイト相、オーステナイト相のバランスを保ち、所定の耐食性を得るため6%以上が好ましい。但しNiを過度に含有する場合、σ相の析出を促進させ、靭性を劣化させると共に、オーステナイト相の比率が70%を超えて、二相ステンレス鋼として良好な相のバランスを保てなくなり、耐食性を劣化させる。また、フェライト相中のNの固溶限は小さいため、フェライト相中に過飽和となるCrと結びつきCr窒化物を析出させ、低温靭性を低下させる。したがってNiの含有量の上限値は7.5%が好ましい。より好ましい上限は7%以下である。

0027

Cr:23〜26%
Crはフェライト生成元素であり、また耐孔食性を向上させるために必須な元素である。しかし過度なCrの含有はCr窒化物の析出を促進し、低温靭性を低下させる。さらにCrはσ相の析出を促進し、これも靭性を劣化させる。このためCrの含有量の上限値は26%が好ましく、フェライト相の過度の増加を防止して二相組織を維持する点から25.8%以下が特に好ましい。一方、Crの含有量の下限値は、所定の耐孔食性を得る点から23%以上が好ましい。より好ましいCr含有量の範囲は、Crの含有による耐食性を維持し、かつフェライト相、オーステナイト相のバランスを良好に保つ点で24〜25.8%であり、25.0〜25.8%の範囲が特に好ましい。

0028

Mo:2〜4.0%
Moは、Cr、N等と同様に耐孔食性を向上させる元素である。但しMoを過度に含有する場合、[Cr,Mo]2Nとして、窒化物の析出を促進させる、さらにσ相の析出も促進し靭性を劣化させる。このためMoの含有量の上限値は4.0%が好ましく、下限値は必要な耐食性を得る点から3%以上が好ましい。さらに好ましいMoの範囲は3.2〜3.8%である。

0029

N:0.20〜0.40%
Nは、強力なオーステナイト生成元素であり、フェライト相とオーステナイト相とのバランスを適正にするために必要な元素である。また耐孔食性を大きく向上させる効果を有する。一方で、Nの含有量が過剰になると、Al窒化物、Cr窒化物を生成させることにより低温靭性の低下、耐食性の劣化などを生じさせる。また溶接時にブローホールを生じさせ易くするなど溶接性を劣化させる。従ってNの下限値は0.2%以上が好ましく、所定の耐食性を得る点から0.22%以上がより好ましい。また上限値は窒化物の生成を抑制する点から0.40%以下が好ましい。

0030

Al:0.005〜0.03%
AlはSiと同様に脱酸剤、脱硫材として添加される成分であり、Bの歩留を安定化させるために重要な元素である。しかしAlを過剰に含有する場合AlN等を析出させ、低温靭性の劣化を引き起こす。また窒化物周囲のフェライト相、オーステナイト相のN含有量を欠乏させることで耐食性の低下を生じる。従ってAlの含有量の上限値は、Al窒化物の析出を抑え、靭性の低下を防止する点から0.03%以下が好ましく、下限値は、脱酸剤としての効果を発揮する点で0.005%以上が好ましい。

0031

B:0.0001〜0.005%
Bはσ相の析出を強力に抑制し、耐脆化性に対して有効に作用する。またBはSに先駆けて粒界偏析し、Sの偏析による粒界強度の低下を抑制することで、熱間加工性を向上させる効果がある。このためBを0.0001%以上含有させることが好ましい。一方で過度なBの含有は硼化物を析出させ、靭性を低下させる。またBは溶接時において高温割れ感受性を高めるため、Bの上限値は0.005%が好ましい。

0032

[%Al]×[%N]≦(−22.78×[%Mo]−5×[%Cr]−3.611×[%Ni]+323)×10−4
上記に構成される各元素を各々所定の範囲で含有し,なおかつ上記に示されるAl窒化物析出に係る関係を満たすことで、Al窒化物の析出を抑制し、後述する単位面積あたりのAl窒化物の個数を満足する。

0033

([%Cr]+6.5534×[%Mo])2×[%N] ≦−215.6×[%Ni]+1708.3×[%Mn]+2150
同様に上記に構成される各元素を所定の範囲とし、上式に示されるCr窒化物析出に係る関係を満たすことで、Cr窒化物の析出を抑制し、後述する単位面積当たりのCr窒化物の延べ長さを満足する。

0034

1mm2視野中に存在する粒の長さが3μm以上のAl窒化物の個数:200個以下
Al窒化物は短柱状あるいは針状に成長するため、靭性に及ぼす影響は粒径よりも長手方向の大きさが支配的となる。二相ステンレス鋼の組織中に、長さ3μm以上となる大型のAl窒化物が多数析出すると低温靭性が低下し、特に1mm2視野中に存在するAl窒化物個数が200個を超えると低温靭性の低下が顕著となる。したがって1mm2視野中に存在する長さ3μm以上のAl窒化物の個数は200個以下とする。好ましくは150個以下とすることが望ましく、より好ましくは100個以下である。

0035

1mm2視野中に存在する、個々が0.1μm未満の間隔で長さ1μm以上に連続するCr窒化物の延べ長さ:2000μm以下
Cr窒化物は結晶粒界優先的に析出するため、粒界に占めるCr窒化物の延べ長さが靭性を低下させる支配的要因となる。Cr窒化物は初期において非常に微細であり、これらが成長、合体して連続するようになる。微細なCr窒化物同士が充分離れていれば靭性に大きく影響しないが、0.1μm未満の狭い間隔で1μm以上の長さに連続する場合、これも靭性を低下させる。したがって1mm2視野中に存在する、0.1μm未満の間隔で長さ1μm以上に連続するCr窒化物の延べ長さは2000μm以下とする。好ましくは1500μm以下とすることが望ましく、より好ましくは1000μm以下である。

0036

これら単位面積あたりのAlNとCr2Nの延べ長さを抑制することで、JIS Z2242に規定されている衝撃値の値が、−46℃において87.5J/cm2以上となる優れた低温靭性を示すようになる。

0037

このとき、Al窒化物とCr窒化物の抑制の関係式を同時に満たすことで、上述のAl窒化物の個数とCr窒化物の述べ長さが許容内に制限される。

0038

本発明では特に限定しないが、本発明の二相ステンレス鋼は以下の製法によることが好ましい。すなわち、まず、鉄屑、ステンレスフェロクロムフェロニッケル純ニッケルメタリッククロムなどの原料を、60トン電気炉で溶解した。その後、AODあるいはVOD工程において、酸素およびアルゴンを吹精し、脱炭精錬した。その後、生石灰蛍石、Al、Siを投入して脱硫、脱酸を行った。このときスラグ組成はCaO−Al2O3−SiO2−MgO−F系とした。このとき、脱硫を効率的に進行させる為に、CaO/Al2O3≧2、CaO/SiO2≧3を満足することが望ましい。AODまたはVOD精錬炉ライニングマグクロドロマイトが望ましい。このようにAOD精錬後、LF工程により成分調整温度調整を経た後に、連続鋳造機にて造塊し、スラブを製造する。その後、熱間圧延冷間圧延を経て、厚板あるいは薄板を得る。

0039

なお、連続鋳造機では、鋳型溶鋼表面のレベルであるメニスカスから3mの位置に電磁撹拌機を設置している。電磁撹拌により、凝固シェルより内側の未凝固溶鋼撹拌されて、凝固時に樹脂晶形成時にその前面に排出される元素を均質化することが可能である。特に、Al、N、Cr、Mo、Niはこの撹拌により、均質化して、Al窒化物、Cr窒化物の形成を抑制される効果がある。

0040

以下、実施例によってさらに本発明を詳細に説明する。但し本発明はその趣旨を超えない限り、これらの例に限定されるものではない。まず、鉄屑、ステンレス屑、フェロクロム、フェロニッケル、純ニッケル、メタリッククロムなどの原料を、60トンの電気炉で溶解した。その後、AOD工程において、酸素およびアルゴンを吹精し、脱炭精錬した。その後、生石灰、蛍石、Al、Siを投入して脱硫、脱酸を行った。このときスラグ組成はCaO−Al2O3−SiO2−MgO−F系とした。精錬後、LF工程を経た後に、連続鋳造機にて造塊し、表1に示す化学組成の発明例および比較例のスラブ(試料1〜24)を得た。連続鋳造機では、電磁撹拌により、凝固シェルより内側の未凝固溶鋼を撹拌し均質化する操作を行った。また、スラブのサイズは幅1200mm×厚み200mm×長さ7000mmであった。

0041

なお、これらにおいてC、S、N以外の化学成分は、蛍光X線分析により分析を行った。またNは不活性ガスインパルス加熱溶融法、C、Sは酸素気流燃焼赤外線吸収法により分析した。また、表中、下線を付した値は、好ましい範囲外であることを示す。

0042

0043

その後、常法に従って,熱間圧延にて圧延を行い板厚が5.5〜60mmの熱延鋼板を得た。低温靭性の評価はこの熱延鋼板に所定の固溶化熱処理を施した後、−46℃におけるシャルピー衝撃試験により行った。ここでの所定の固溶化熱処理とは、二相ステンレス鋼では、とても重要な処理である。すなわち、フェライト(α相)とオーステナイト(γ相)の相比を最良の特性が得られる比率に整える目的で行うものである。具体的には、1080℃にて、70分間熱処理を実施し、水冷して相比を固定するものであり、冷却速度は3℃/秒以上で行う。本実施例では、水冷にて冷却し、その冷却速度は4.5℃/秒であった。次いで、この熱延鋼板の組織観察により、Al窒化物およびCr窒化物の析出量を評価した。これらの方法を以下に示す。

0044

低温靭性試験方法
上記で得られた固溶化熱処理および水冷を行った板厚60mmの熱延鋼板より、試験片長さが熱延鋼板の圧延方向に対し平行になるよう、2mmVノッチを有した幅10mmのフルサイズ試験片を作製した。これをJIS Z2242 (2006)に従って−46±2℃における衝撃値を評価した。温度調整はドライアイスを浸したエタノール試料全体を浸漬させることにより行い所定の温度に達した後、5分以上保持した後に試験に供した。このとき衝撃値が87.5J/cm2以上となるものを良好として〇と評価し、87.5J/cm2を下回るものは不良として×と評価し、表2に示した。

0045

金属組織の評価方法
上記で得られた固溶化熱処理および水冷を行った熱延鋼板より、圧延方向に直交する断面について電解研磨を施し、電解放出型走査型電子顕微鏡による試料の組織観察と析出物の測定を行った。Al窒化物は、観察倍率が500倍にて評価し、Cr窒化物は、観察倍率が5000倍で評価した。図1に、試料の組織観察の際の画像の模式図を示す。γ相(符号1)とα相(符号2)との間の細線は粒界(符号3)を示し、黒点が析出したAl窒化物(符号4)を示し、粒界上の太線が析出したCr窒化物(符号5)を示す。

0046

試料1mm2あたりの長さ3μm以上のAl窒化物個数が200個を超え、かつ長さ1μm以上に連続するCr窒化物の延べ長さが2000μmを超える場合を不良として×と評価し、長さ3μm以上のAl窒化物の個数が200個以下であり、かつ長さ1μm以上に連続するCr窒化物の延べ長さが2000μm以下の両方を満たす場合を良好として○として評価し、これらのうちどちらかのみに該当する場合は△と評価し、表2に示した。

0047

表2にはまた、本発明におけるAl窒化物析出抑制の関係式である[%Al]×[%N]≦(−22.78×[%Mo]−5×[%Cr]−3.611×[%Ni]+323)×10−4 およびCr窒化物析出抑制の関係式である([%Cr]+6.5534×[%Mo])2×[%N]≦−215.6×[%Ni]+1708.3×[%Mn]+2150による判定を各々示し、関係を満たす場合を〇印、満たさない場合を×印で「Al窒化物関係式」および「Cr窒化物関係式」の欄にそれぞれ表し、さらに、これらの両者を共に満たす場合を○、いずれかを満たさない場合を×として「窒化物判定式」の欄に表している。

0048

0049

表2に示すように、各成分が本発明の範囲を満足する試料番号1〜13は、−46℃±2℃における衝撃値が87.5J/cm2以上であり、良好な低温靭性を示した。そのなかで、Al窒化物析出抑制の関係式を満たさない試料番号10では、試料1mm2あたりの長さ3μm以上のAl窒化物個数が200個を超えて析出した。また、Cr窒化物析出抑制の関係式を満たさない試料番号11〜13では、試料1mm2あたりに存在する長さ1μm以上に連続するCr窒化物の延べ長さが2000μmを超えていた。そのため、衝撃値の評価は〇であるものの、試料番号1〜9と比較して低い値であった。

0050

これに対し,本発明の成分を外れる試料番号14〜22では、いずれも衝撃値が80.0J/cm2を下回った。これらは、成分が発明の範囲を満たさない上、Al窒化物およびCr析出抑制の関係式のいずれかあるいは両方を満たしておらず、さらにAl窒化物あるいはCr窒化物が本発明による規定以上に析出した。

0051

比較例を詳細に説明すると、試料番号14〜16は、Al含有量が上限を超えたため、Al窒化物関係式を満たさずAl窒化物が多く発生し、低温靭性を悪化させた。

0052

試料番号17は、Al含有量が上限を超えたが、それ以上にNi含有量が上限を超えた影響により、Al窒化物関係式およびCr窒化物関係式を共に満たさずAl窒化物およびCr窒化物が多く発生し、低温靭性を悪化させた。

0053

試料番号18は、Mn含有量が下限を下回り、Mo含有量が上限を超えたため、Nの溶解度を下げてしまい、窒化物の析出が促進され、Al窒化物関係式およびCr窒化物関係式を共に満たさずAl窒化物およびCr窒化物が多く発生し、低温靭性を悪化させた。

0054

試料番号19は、Al含有量が上限を超えたため、Al窒化物関係式を満たさずAl窒化物が多く発生し、また、Mn含有量が下限を下回ったため、Cr窒化物関係式を満たさずCr窒化物が多く発生し、低温靭性を悪化させた。

0055

試料番号20は、Cr含有量が上限を超えたため、Cr窒化物関係式は満たしたものの、Al窒化物関係式を満たさずAl窒化物が多く発生し、低温靭性を悪化させた。

0056

試料番号21は、Mn含有量が上限を超えたため、Nの溶解度が上がり、窒化物が析出しにくい条件であるものの、Al含有量が上限を超えたため、Al窒化物関係式を満たさずAl窒化物が多く発生し、低温靭性を悪化させた。

実施例

0057

試料番号22は、Mn含有量が上限を超えたため、Nの溶解度が上がり、窒化物が析出しにくい条件であるものの、N含有量が上限を超えたため、Al窒化物関係式を満たさずAl窒化物が多く発生し、低温靭性を悪化させた。

0058

本発明の二相ステンレス鋼は、−46±2℃というごく低温の環境においても優れた靭性を発揮することができる。また優れた耐食性を有する為、硫化物を含むような厳しい腐食環境におけるアンビリカルチューブ、熱交換機用の溶接管をはじめとして、ラインパイプ石油化学、油井関連の構造部材として好適である。

0059

1:γ相
2:α相
3:粒界
4:Al窒化物
5:Cr窒化物

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