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技術 超音波画像化装置、超音波画像化方法、超音波画像化プログラム、及び超音波CT装置

出願人 国立大学法人東京大学
発明者 東隆高木周井本遥
出願日 2016年12月1日 (3年7ヶ月経過) 出願番号 2016-234424
公開日 2020年2月13日 (4ヶ月経過) 公開番号 2020-022523
状態 未査定
技術分野 超音波診断装置
主要キーワード リング円周 理想温度 総和記号 温度関数 緩和パラメータ グリッド番号 温度分布曲線 初期温度分布
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (15)

課題

水と脂肪を含む被検体温度検知低コストで実現する、超音波画像化装置の提供。

解決手段

本発明に係る超音波画像化装置は、水と脂肪を含む被検体を、温度検知をする、超音波画像化装置であって、被検体が有する複数の部位それぞれにおける水の含有比率と脂肪の含有比率とに基づいて、複数の部位それぞれの音速温度依存特性を取得する、温度依存特性取得手段と、被検体を貫く複数の経路それぞれを超音波が経る複数の第1到達時間の測定値を取得する、第1到達時間取得手段と、複数の第1到達時間の測定値と、複数の部位それぞれの音速の温度依存特性と、に基づいて、複数の部位それぞれの温度を決定する、温度決定手段と、を備える。

概要

背景

検体温度検知する装置が実現されている。第1の例は、サーモグラフィである。被検体が生体である場合に、被検体から放射される赤外線を検出して温度に換算する。

第2の例は、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置である。MRI装置が測定する緩和パラメータ緩和時間T1及びT2)やプロトン共鳴周波数(Proton Resonance Frequency:PRF)などが温度依存性を有することを利用して、温度算出することができる。

概要

水と脂肪を含む被検体の温度検知を低コストで実現する、超音波画像化装置の提供。本発明に係る超音波画像化装置は、水と脂肪を含む被検体を、温度検知をする、超音波画像化装置であって、被検体が有する複数の部位それぞれにおける水の含有比率と脂肪の含有比率とに基づいて、複数の部位それぞれの音速温度依存特性を取得する、温度依存特性取得手段と、被検体を貫く複数の経路それぞれを超音波が経る複数の第1到達時間の測定値を取得する、第1到達時間取得手段と、複数の第1到達時間の測定値と、複数の部位それぞれの音速の温度依存特性と、に基づいて、複数の部位それぞれの温度を決定する、温度決定手段と、を備える。

目的

本発明は、かかる課題を鑑みてなされたものであり、水と脂肪を含む被検体の温度検知を低コストで実現する、超音波画像化装置、超音波画像化方法超音波画像化プログラム、及び超音波CT装置の提供を目的とする

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

水と脂肪を含む被検体を、温度検知をする、超音波画像化装置であって、前記被検体が有する複数の部位それぞれにおける水の含有比率と脂肪の含有比率とに基づいて、前記複数の部位それぞれの音速温度依存特性を取得する、温度依存特性取得手段と、前記被検体を貫く複数の経路それぞれを超音波が経る複数の第1到達時間の測定値を取得する、第1到達時間取得手段と、前記第1到達時間取得手段が取得する前記複数の第1到達時間の測定値と、前記複数部位温度依存特性取得手段が取得する前記複数の部位それぞれの前記音速の温度依存特性と、に基づいて、前記複数の部位それぞれの温度を決定する、温度決定手段と、を備える、超音波画像化装置。

請求項2

請求項1に記載の超音波画像化装置であって、前記複数部位温度依存特性取得手段は、前記複数の第1測定時間の測定値が測定される温度環境とは異なる温度環境下において測定される複数の第2測定時間の測定値に基づいて、前記複数の部位それぞれの音速を算出し、前記複数の部位それぞれの音速に基づいて、前記水の含有比率と、前記脂肪の含有比率を算出し、前記複数の部位それぞれの前記音速の依存性を算出する、ことを特徴とする、超音波画像化装置。

請求項3

請求項1又は2に記載の超音波画像化装置であって、前記被検体の前記複数の部位を含む計算領域の複数のグリッドそれぞれにおける音速に起因する因子遅延因子とするとき、前記温度決定手段は、ある経路における前記第1到達時間の測定値と、前記計算領域の前記複数のグリッドのうち該経路を貫く複数の経路上グリッドそれぞれに仮定される遅延因子に基づく到達時間と、が到達時間差を有する場合に、該到達時間差を低減するように、前記複数の経路上グリッドそれぞれの温度を補正する、温度補正手段を、備えることを特徴とする、超音波画像化装置。

請求項4

請求項3に記載の超音波画像化装置であって、前記温度補正手段は、該到達時間差がゼロとなるように、前記複数の経路上グリッドそれぞれの温度を補正する、ことを特徴とする、超音波画像化装置。

請求項5

請求項3又は4に記載の超音波画像化装置であって、前記温度補正手段は、前記複数の経路上グリッドに共通する温度変化分により補正する、ことを特徴とする、超音波画像化装置。

請求項6

請求項3又は4に記載の超音波画像化装置であって、前記温度補正手段は、前記複数の経路上グリッドそれぞれの温度を補正する温度変化分の符号を、前記仮定される遅延因子の温度微分値の符号と、前記到達時間差の符号と、に基づいて決定する、ことを特徴とする、超音波画像化装置。

請求項7

請求項6に記載の超音波画像化装置であって、前記温度補正手段は、前記複数の経路上グリッドそれぞれの温度を補正する前記温度変化分の絶対値を、前記複数の経路上部位において共通する値とする、ことを特徴とする、超音波画像化装置。

請求項8

請求項6又は7に記載の超音波画像化装置であって、前記温度補正手段は、前記複数の経路上グリッドそれぞれの温度を補正する前記温度変化分の符号を、前記仮定される遅延因子の温度微分値の符号と、前記到達時間差の符号とが同じ場合は正と、異なる場合は負と、決定する、ことを特徴とする、超音波画像化装置。

請求項9

請求項1乃至8のいずれかに記載の超音波画像化装置と、前記複数の第1到達時間を測定する超音波測定部と、を備える、超音波CT装置。

請求項10

請求項9に記載の超音波CT装置であって、前記超音波測定部は、被検体を含む測定領域のうち少なくとも一部の領域を温度変化させる温度調整機能、を備える、ことを特徴とする、超音波CT装置。

請求項11

水と脂肪を含む被検体を、温度検知をする、超音波画像化方法であって、前記被検体が有する複数の部位それぞれにおける水の含有比率と脂肪の含有比率とに基づいて、前記複数の部位それぞれの音速の温度依存特性を取得する、温度依存特性取得ステップと、前記被検体を貫く複数の経路それぞれを超音波が経る複数の第1到達時間の測定値を取得する、第1到達時間取得ステップと、前記第1到達時間取得ステップが取得する前記複数の第1到達時間の測定値と、前記複数部位温度依存特性取得ステップが取得する前記複数の部位それぞれの前記音速の温度依存特性と、に基づいて、前記複数の部位それぞれの温度を決定する、温度決定ステップと、を備える、超音波画像化方法。

請求項12

コンピュータを、水と脂肪を含む被検体を、温度検知をするために、前記被検体が有する複数の部位それぞれにおける水の含有比率と脂肪の含有比率とに基づいて、前記複数の部位それぞれの音速の温度依存特性を取得する、温度依存特性取得手段、前記被検体を貫く複数の経路それぞれを超音波が経る複数の第1到達時間の測定値を取得する、第1到達時間取得手段、前記第1到達時間取得手段が取得する前記複数の第1到達時間の測定値と、前記複数部位温度依存特性取得手段が取得する前記複数の部位それぞれの前記音速の温度依存特性と、に基づいて、前記複数の部位それぞれの温度を決定する、温度決定手段、として機能させるための、超音波画像化プログラム

技術分野

0001

本発明は、超音波画像化装置超音波画像化方法超音波画像化プログラム、及び超音波CT装置に関し、特に、水と脂肪を含む被検体温度検知に関する。

背景技術

0002

被検体を温度検知する装置が実現されている。第1の例は、サーモグラフィである。被検体が生体である場合に、被検体から放射される赤外線を検出して温度に換算する。

0003

第2の例は、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置である。MRI装置が測定する緩和パラメータ緩和時間T1及びT2)やプロトン共鳴周波数(Proton Resonance Frequency:PRF)などが温度依存性を有することを利用して、温度算出することができる。

先行技術

0004

Duric N, Littrup P, Poulo L, et al.、"Detection of breast cancer with ultrasound tomography: First results with the Computed Ultrasound Risk Evaluation (CURE) prototype, results with the Computed Ultrasound Risk Evaluation (CURE) prototype"、Medical Physics,、2007年、vol.34、773−785頁。

発明が解決しようとする課題

0005

しかしながら、従来の温度検知する装置には、以下の問題がある。第1の例であるサーモグラフィには、生体に対する赤外線の侵入深さ(Penetration Depth)は比較的短く、生体の表面付近における温度分布の測定に限定されるという問題がある。

0006

第2の例であるMRI装置は大型であり、導入コスト撮像コストが高いという問題がある。さらに、強磁場下で撮像を行う必要であるなど、被検体を温度モニタリングする上で、影響をを受け得る要因を含んでいる。

0007

また、第3の例として、X線CT(X-ray Computer Tomography)装置も考えられる。X線CT装置では、線形減衰係数を用いて温度変化を算出する手法が考えられるが、線形減衰係数の温度への感度が低く、温度分解能限界が生じ、実用化には至っていない。

0008

さらに、第4の例として、反射超音波によるCT装置も考えられる。しかしながら、一般に、被検体のエコー輝度と温度の相関係数微小であり、定量的な温度算出は困難である。また、音速変化に起因するエコーシフトに着目して温度を算出する試みもあるが、取得した信号のエコーシフトから音速変化した場所を特定することが難しいため、実用化に至っていない。

0009

本発明は、かかる課題を鑑みてなされたものであり、水と脂肪を含む被検体の温度検知を低コストで実現する、超音波画像化装置、超音波画像化方法、超音波画像化プログラム、及び超音波CT装置の提供を目的とする。

課題を解決するための手段

0010

(1)上記課題を解決するために、本発明に係る超音波画像化装置は、水と脂肪を含む被検体を、温度検知をする、超音波画像化装置であって、前記被検体が有する複数の部位それぞれにおける水の含有比率と脂肪の含有比率とに基づいて、前記複数の部位それぞれの音速の温度依存特性を取得する、温度依存特性取得手段と、前記被検体を貫く複数の経路それぞれを超音波が経る複数の第1到達時間の測定値を取得する、第1到達時間取得手段と、前記第1到達時間取得手段が取得する前記複数の第1到達時間の測定値と、前記複数部位温度依存特性取得手段が取得する前記複数の部位それぞれの前記音速の温度依存特性と、に基づいて、前記複数の部位それぞれの温度を決定する、温度決定手段と、を備える。

0011

(2)上記(1)に記載の超音波画像化装置であって、前記複数部位温度依存特性取得手段は、前記複数の第1測定時間の測定値が測定される温度環境とは異なる温度環境下において測定される複数の第2測定時間の測定値に基づいて、前記複数の部位それぞれの音速を算出し、前記複数の部位それぞれの音速に基づいて、前記水の含有比率と、前記脂肪の含有比率を算出し、前記複数の部位それぞれの前記音速の依存性を算出してもよい。

0012

(3)上記(1)又は(2)に記載の超音波画像化装置であって、前記被検体の前記複数の部位を含む計算領域の複数のグリッドそれぞれにおける音速に起因する因子遅延因子とするとき、前記温度決定手段は、ある経路における前記第1到達時間の測定値と、前記計算領域の前記複数のグリッドのうち該経路を貫く複数の経路上グリッドそれぞれに仮定される遅延因子に基づく到達時間と、が到達時間差を有する場合に、該到達時間差を低減するように、前記複数の経路上グリッドそれぞれの温度を補正する、温度補正手段を、備えてもよい。

0013

(4)上記(3)に記載の超音波画像化装置であって、前記温度補正手段は、該到達時間差がゼロとなるように、前記複数の経路上グリッドそれぞれの温度を補正してもよい。

0014

(5)上記(3)又は(4)に記載の超音波画像化装置であって、前記温度補正手段は、前記複数の経路上グリッドに共通する温度変化分により補正してもよい。

0015

(6)上記(3)又は(4)に記載の超音波画像化装置であって、前記温度補正手段は、前記複数の経路上グリッドそれぞれの温度を補正する温度変化分の符号を、前記仮定される遅延因子の温度微分値の符号と、前記到達時間差の符号と、に基づいて決定してもよい。

0016

(7)上記(6)に記載の超音波画像化装置であって、前記温度補正手段は、前記複数の経路上グリッドそれぞれの温度を補正する前記温度変化分の絶対値を、前記複数の経路上部位において共通する値としてもよい。

0017

(8)上記(6)又は(7)に記載の超音波画像化装置であって、前記温度補正手段は、前記複数の経路上グリッドそれぞれの温度を補正する前記温度変化分の符号を、前記仮定される遅延因子の温度微分値の符号と、前記到達時間差の符号とが同じ場合は正と、異なる場合は負と、決定してもよい。

0018

(9)本発明に係る超音波CT装置は、上記(1)乃至(8)のいずれかに記載の超音波画像化装置と、前記複数の第1到達時間を測定する超音波測定部と、を備える、超音波CT装置であってもよい。

0019

(10)上記(9)に記載の超音波CT装置であって、前記超音波測定部は、被検体を含む測定領域のうち少なくとも一部の領域を温度変化させる温度調整機能、を備えていてもよい。

0020

(11)本発明に係る超音波画像化方法は、水と脂肪を含む被検体を、温度検知をする、超音波画像化方法であって、前記被検体が有する複数の部位それぞれにおける水の含有比率と脂肪の含有比率とに基づいて、前記複数の部位それぞれの音速の温度依存特性を取得する、温度依存特性取得ステップと、前記被検体を貫く複数の経路それぞれを超音波が経る複数の第1到達時間の測定値を取得する、第1到達時間取得ステップと、前記第1到達時間取得ステップが取得する前記複数の第1到達時間の測定値と、前記複数部位温度依存特性取得ステップが取得する前記複数の部位それぞれの前記音速の温度依存特性と、に基づいて、前記複数の部位それぞれの温度を決定する、温度決定ステップと、を備えていてもよい。

0021

(12)本発明に係る超音波画像化プログラムは、コンピュータを、水と脂肪を含む被検体を、温度検知をするために、前記被検体が有する複数の部位それぞれにおける水の含有比率と脂肪の含有比率とに基づいて、前記複数の部位それぞれの音速の温度依存特性を取得する、温度依存特性取得手段、前記被検体を貫く複数の経路それぞれを超音波が経る複数の第1到達時間の測定値を取得する、第1到達時間取得手段、前記第1到達時間取得手段が取得する前記複数の第1到達時間の測定値と、前記複数部位温度依存特性取得手段が取得する前記複数の部位それぞれの前記音速の温度依存特性と、に基づいて、前記複数の部位それぞれの温度を決定する、温度決定手段、として機能させるための、超音波画像化プログラムであってもよい。

発明の効果

0022

本発明により、水と脂肪を含む被検体の温度検知を低コストで実現する、超音波画像化装置、超音波画像化方法、超音波画像化プログラム、及び超音波CT装置が提供される。

図面の簡単な説明

0023

本発明の第1の実施形態に係る超音波CT装置の構成を示すブロック図である。
本発明の第1の実施形態に係る超音波測定部2の主要部の構成を示す図である。
本発明の第1の実施形態に係る超音波画像化プログラムのフローチャートである。
本発明の第1の実施形態に係る計算領域を示す模式図である。
本発明の第1の実施形態に係る温度依存特性取得ステップのフローチャートである。
SART法を説明する図である。
T−SART法を説明する図である。
本発明の第2の実施形態に係る温度決定ステップのフローチャートである。
次元超平面におけるSART法及びT−SART法における補正ベクトルの向きを示す図である。
2次元超平面における修正T−SART法における補正ベクトルの向きを示す図である。
本発明の第1の実施形態に係る超音波CT装置による測定結果の例を示す図である。
本発明の第2及び第3の実施形態に係る超音波画像化装置において設定される被検体のモデルを示す図である。
本発明の第2の実施形態に係る超音波画像化装置の計算結果を示す図である。
本発明の第3の実施形態に係る超音波画像化装置の計算結果を示す図である。

実施例

0024

以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、寸法、形状等について模式的に表す場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。

0025

[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る超音波CT装置1の構成を示すブロック図である。当該実施形態に係る超音波CT装置1は、超音波測定部2と、超音波画像化装置3とを備え、超音波画像化装置3は、制御部4と、入力装置5と、表示装置6と、を備える。制御部4は、CPU部11と、記憶部12と、情報入力部13と、情報出力部14と、を備えている。制御部4は、一般に用いられるコンピュータによって実現され、図示しないが、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)をさらに備えており、ROMやRAMはコンピュータの内部メモリを構成している。記憶部12は記録媒体であり、半導体メモリハードディスク、又は、その他の任意の記録媒体によって構成されていてもよい。ここで、記憶部12は、コンピュータの内部に設置されているが、コンピュータの外部に設置されていてもよい。また、記憶部12は、1つの単体であっても、複数の記録媒体であってもよい。情報入力部13は入力装置5に接続されるインターフェイスなどであり、ユーザが入力装置5に入力する情報を入力装置5から取得する。情報出力部14は表示装置6に接続されるインターフェイスなどであり、表示装置6に表示させる情報を表示装置6へ出力する。なお、入力装置5は、キーボードマウスタッチパネルなどによって実現され、表示装置6は、一般に用いられるディスプレイなどにより実現される。超音波画像化装置3の制御部4は、以下に説明する超音波画像化方法の各ステップを実行する手段をそれぞれ備えている。また、当該実施形態に係る超音波画像化プログラム31は、コンピュータを、各手段として機能させるためのプログラムである。なお、制御部4のCPU部11及び記憶部12の詳細については後述する。

0026

当該実施形態に係る超音波CT装置1の超音波測定部2について説明する。超音波測定部2の主な構成は、例えば非特許文献1に開示されている。非特許文献1に記載の診断装置は、透過超音波によるCT装置である。超音波とは、人間の可聴域(20Hz〜20kHz)を超える高い周波数の音波である。ここで用いられる超音波の周波数は1MHz以上20MHz以下が望ましい。当該診断装置は、リングアレイトランスデューサを有しており、リングアレイトランスデューサのリングアレイには、複数の送信用振動子及び複数の受信用検出素子がそれぞれリング状に並んでいる。リングアレイは,水槽内において上下動するレール上に固定されており、ステッピングモータによりリングアレイを上下に制御することができる。これにより、被検体(ここでは、乳房)を貫く複数の経路を超音速が経る到達時間それぞれを測定する。患者ベッドに寝そべり,被検体である乳房を水槽中に挿入するだけでよく、マンモグラフィのように圧迫されることがない.

0027

図2は、当該実施形態に係る超音波測定部2の主要部の構成を示す図である。超音波測定部2は、リングアレイトランスデューサ21と、スイッチング回路22(1024 to 256 multiplexer)と、超音波制御システム23と、測定制御部24と、を備える。リングアレイトランスデューサ21は、1024素子から成るリング型振動子であり、4個の送受信プローブ25を備えている。各送受信プローブ25は、リングの1/4を構成する凹面型形状をしており、256個の短冊圧電素子を含んでいる。各短冊型圧電素子は送信と受信の用途を兼ねるのが通例である。リングの内部に、被検体100が配置される。一般に用いられる超音波診断プローブコンベックス型探触子)と同様の製造工程により製造される。つまり、コンベックス型探触子ではその工程の途中において、開口の真ん中が出っ張るように曲げ行程が入るが、当該実施形態に係るリングアレイトランスデューサ21では、開口の真ん中が凹むように曲げる行程を行う。ここで、共振周波数は2MHzであるが、これに限定されることはないのは言うまでもない。

0028

スイッチング回路22は以下の動作によりデータ収集を行う。4個の送受信プローブ25それぞれが信号を送信し、その際に、4個の送受信プローブ25すべてがその信号を受信し、その遅延時間を取得する。すなわち、まず、1個目の送受信プローブ25の送信用振動子(1〜256)が順に信号を発信し、4個の送受信プローブ25の受信用検出素子(1〜1024)がその信号を受信する。同様に、2個目の送受信プローブ25の送信用振動子(257〜512)が順に信号を発信し、4個の送受信プローブ25の受信用検出素子(1〜1024)がその信号を受信する。さらに、3個目の送受信プローブ25の送信用振動子(513〜768)が順に信号を発信し、4個の送受信プローブ25の受信用検出素子(1〜1024)がその信号を受信する。最後に、4個目の送受信プローブ25の送信用振動子(769〜1024)が順に信号を発信し、4個の送受信プローブ25の受信用検出素子(1〜1024)がその信号を受信する。

0029

測定制御部24が、超音波制御システム23を制御することにより、リングアレイトランスデューサ21の1周分のデータ収集が終了すると1/10秒から秒オーダーの一定時間休止するシーケンスを繰り返し行い、計3回のデータ収集を行っている。

0030

さらに、各送受信プローブ25は、発熱体26を備えている。ここで、発熱体26は、例えば、高密度焦点式超音波治療法(HIFU:High Intensity Focused Ultrasound)を施す場合には、超音波発振器となる。HIFUでは、複数の経路より発振される超音波を収束させて、患部に対して集中的に照射する。また、発熱体26は、複数のマイクロヒータであってもよい。各マイクロヒータの径は例えば1.6mmであり、被検体100を加熱する際には、各送受信プローブから延伸させて、被検体100(又は媒質)のうち加熱させたい領域に接続させる。かかる径のマイクロヒータであれば、他の測定領域へ与える影響を抑制しつつ、加熱目標とする狭い領域を高温に加熱することができる。発熱体26は、超音波制御システム23及び測定制御部24と、接続されている。超音波制御システム23は、サーモスタット機能を有しており、測定制御部24が、超音波制御システム23を制御することにより、所望の条件に対応して、被検体100(又は媒質)に所望の加熱を施すことができる。なお、ここでは、送受信プローブ25は発熱体26を備えるとしたが、加熱を目的とした発熱体に限定されることはなく、冷却を目的とした冷却体であってもよい。目的に応じて、被検体を含む測定領域のうち少なくとも一部の領域を、加熱又は冷却する、すなわち、温度変化させる、温度調整機構を、超音波測定部2が備えているのが望ましい。

0031

以下に、当該実施形態に係る超音波画像化装置3について説明する。図1に示す通り、記憶部12には、超音波画像化プログラム31が記憶されている。さらに、記憶部12は、情報記憶部32を備えている。超音波画像化装置3において、記憶部12に記憶される超音波画像化プログラム31が起動する。当該実施形態に係る超音波画像化装置3は、水と脂肪を含む被検体100を、温度検知する。

0032

図3は、当該実施形態に係る超音波画像化プログラム31のフローチャートである。超音波画像化プログラム31は、超音波測定部2より取得する測定データに基づいて、被検体100の温度検知を行う。制御部4のCPU部11は、温度依存特性取得手段41と、第1到達時間取得手段42と、温度決定手段43と、を備える。温度依存特性取得手段41は、第2到達時間取得手段45と、基準温度音速決定手段46と、温度依存特性算出手段47と、を備える。

0033

[温度依存特性取得ステップ:S1]
被検体100が有する複数の部位それぞれにおける水の含有比率と脂肪の含有比率とに基づいて、複数の部位それぞれの音速の温度依存特性を取得する(S1:温度依存特性取得ステップ)。本ステップにおいて、被検体100が有する複数の部位(ピクセル)それぞれにおける水の含有比率及び脂肪の含有比率とを取得するが、その詳細については後述する。

0034

脂肪及び水の音速の温度依存特性は、それぞれ、1次及び5次の温度関数として近似される。ここで、音速(m/s)をSOSとし、脂肪の音速をSOSfとすると、脂肪の音速SOSfは次に示す数式1で近似される。

0035

0036

ここで、C0=1506.9,C1=−3.3である。また、水の音速をSOSwとすると、水の音速SOSwは次に示す数式2で近似される。

0037

0038

ここで、D0=1402.39,D1=5.0371,D2=−5.8085×10−2,D3=3.3420×10−4,D4=−1.4780×10−6,D5=3.1464×10−9である。また、被検体100が生体である場合に、被検体100には、水と脂肪以外の物質が含まれている。水と脂肪とは、音速の温度依存特性が20℃〜80℃の領域で互いに大きく異なっており、混合比により音速の温度依存特性が大きく変動する。また、他の物質(組織)の音速の温度依存特性は、一般には、水のように温度上昇に対して音速が増大するか、脂肪のように温度上昇に対して音速が低下するかの二種類のいずれかの特性に大別できる。それゆえ、被検体100を複数の部位(複数のピクセル)に分類し、各部位における水の含有比率と脂肪の含有比率とに基づいて、各部位の音速の温度依存特性を決定する。当該実施形態において、実効的でかつ簡便な手法として、各部位を水と脂肪のみの混合物に近似する。混合物全体に対する脂肪及び水の含有比率(重量比率)をそれぞれ及びRf及びRwとすると、混合物(各部位)の音速SOSmixは、次に示す数式3で示される。

0039

0040

ここで、各部位を水と脂肪のみの混合物と近似しているので、Rf+Rw=1である。なお、数式3に示す通り、各部位を水と脂肪のみの混合物とし、水の含有比率と脂肪の含有比率とにより、各部位の音速の温度依存特性を取得する。しかし、水と脂肪のみならず、他の物質をさらに考慮してもよい。すなわち、各部位における水の含有比率と脂肪の含有比率とに基づくことに加えて、他の物質の含有比率にさらに基づいて、各部位の音速の温度依存特性を取得してもよい。

0041

[第1到達時間取得ステップ:S2]
被検体を貫く複数の経路それぞれを超音波が経る複数の第1到達時間の測定値を取得する(S2:第1到達時間取得ステップ)。超音波測定部2が複数の第1到達時間を測定し、該第1到達時間の測定値を超音波測定部2より取得する。また、情報記憶部32に複数の第1到達時間の測定値が記録されており、該第1到達時間の測定値を情報記憶部32より取得してもよい。

0042

図4は、当該実施形態に係る計算領域(測定領域)を示す模式図である。円周上には、送信素子及び受信素子が配置されており、円周内には、生体である被検体100が配置される。被検体100を含む領域が計算領域であり、計算領域を複数(N個)のグリッド(ピクセル)に分割する。リング円周上にある複数の送信素子それぞれから出射される超音波が円周上にある複数の受信素子それぞれに到達する複数(M本)の経路を決定する。計算領域上に被検体100が配置されており、被検体100上に分類される複数のグリッドがそれぞれ被検体100の複数の部位となり、当該複数の経路は、被検体100を貫く経路を複数含んでいる。

0043

測定は未知温度状態で実行される。例えば、被検体100が乳房であり、乳房が腫瘍を含んでおり、腫瘍細胞を40℃以上に加熱するハイパーサーミア温熱治療)を乳房に施術する場合である。超音波測定部2のリングアレイトランスデューサ21を用いて、当該複数(M本)の経路それぞれを超音波が経る複数(M個)の到達時間が測定され、当該複数(M個)の到達時間の測定値が取得される。未知の温度状態で測定される複数の到達時間が複数の第1測定時間である。図4には、4本の経路l,l+1,n,n+1が例示されており、それぞれの到達時間(s)がPl,Pl+1,Pn,Pn+1として示されている。

0044

[温度決定ステップ:S3]
第1到達時間取得ステップが取得する複数の第1到達時間の測定値と、複数部位温度依存特性取得ステップが取得する複数の部位それぞれの音速の温度依存特性と、に基づいて、複数の部位それぞれの温度を決定する(S3:温度決定ステップ)。

0045

i番目(iは1〜Mの整数)の経路を貫くj番目(jは1〜Nの整数)のグリッドのセグメント重み関数Wi,jとして定義すると、経路とグリッドが定義されれば、重み関数Wi,jは求まるので既知の値として取り扱うことができる。また、j番目のグリッドにおける音速に起因する因子を遅延因子fj(以下、スローネス(s))と記す)とする。スローネスfjは、1グリッドのサイズ(長さ)を音速SOSで除した値であり、超音波の1グリッドの通過時間である。重み関数Wi,jとスローネスfjの積であるWi,jfjは、i番目の経路におけるj番目のグリッドの通過時間である。よって、Wi,jfjの和がi番目の経路を超音波が経る到達時間Pi(s)である。到達時間Piは、次に示す数式4で示される。

0046

0047

数式4に示す重み関数Wi,jは、i番目の経路上にないグリッドに対してWi,j=0となる。対して、i番目の経路が貫くグリッドの重み関数Wi,jは正の値を持つ。例えば、図4に示すl番目の経路が貫くグリッドにはA〜Jが付されており、重み関数Wl,A〜Jは、グリッドを通過する長さに応じた重み(寄与度)の値となる。例えばグリッドの1辺の長さを1とすると、重み関数Wi,jは0から√2の間の値を持つ。

0048

複数(M本)の経路から測定される複数(M個)の第1到達時間Pi(iは1〜Mの整数)に係る数式4により、M個の連立1次方程式が得られる。未知数方程式の数の関係から、M≧N2であれば、解として各グリッド(ピクセル)のスローネスfjの値を決定することができる。スローネスfjについて逐次的な近似解を計算により求める手法(音速再構成法)は周知であり、例えば、ART(Algebraic Reconstruction Technique)法やSIRT(Simultaneous Iterative Reconstruction Technique)法、SART(Simultaneous Algebraic Reconstruction Technique)法、C−SART(Curved-ray SART)法がある。

0049

各部位のスローネスfjの値が決定されると、各部位におけるスローネスfjの値と数式3に示す音速の温度依存特性に基づいて、被検体100の各部位の温度が決定され、被検体100の温度検知(温度モニタリング)がなされる。さらに、各部位の温度を画像化することにより、被検体100の断面の温度検知結果を表示することができる。

0050

以上、当該実施形態に係る超音波画像化プログラム31について説明した。当該実施形態に係る超音波画像化プログラム31の主な特徴は、被検体100の複数の部位それぞれの音速の温度依存特性を、複数の部位それぞれの水の含有比率と脂肪の含有比率とに基づいて決定することにある。温度依存特性取得ステップ(ステップS1)において、複数の部位それぞれの水の含有比率と脂肪の含有比率を決定する方法は多々あり得るが、以下に当該実施形態に係る温度依存特性取得ステップ(ステップS1)の詳細を説明する。

0051

図5は、当該実施形態に係る温度依存特性取得ステップ(ステップS1)のフローチャートである。

0052

[第2到達時間取得ステップ:sa]
複数の第1測定時間の測定値が測定される温度環境とは異なる温度環境下において測定される、被検体を貫く複数の経路それぞれを超音波が経る複数の第2測定時間の測定値を取得する(sa:第2到達時間取得ステップ)。超音波測定部2が複数の第2到達時間を測定し、該第2到達時間の測定値を超音波測定部2より取得する。また、情報記憶部32に複数の第2到達時間の測定値が記録されており、該第2到達時間の測定値を情報記憶部32より取得してもよい。

0053

ステップsaは、測定される温度環境下が異なる点を除いて、ステップS2(第1到達時間取得ステップ)と同じである。ステップS2では、測定は未知の温度状態で実行されているのに対して、ステップsaでは、既知の基準温度Ts環境下で実行される。被検体100が乳房である場合、被検体100を十分に冷やして温度分布が抑制される温度環境下である。ここでは、基準温度Tsを25℃としているが、被検体が人体の一部である場合、基準温度Tsを20℃以上30℃以下とするのが望ましい。また、体内深部対応と体表温度は一般的に異なるが、体表からの距離の関数として温度勾配を設定することも有効である。かかる温度環境下では、被検体100の温度分布はほぼ一定とみなすことができる。既知の基準温度Ts環境下で、超音波測定部2のリングアレイトランスデューサ21を用いて、当該複数(M本)の経路それぞれを超音波が経る複数(M個)の到達時間が測定され、当該複数(M個)の到達時間の測定値が取得される。既知の基準温度Ts環境下で測定される複数の到達時間が複数の第2測定時間である。

0054

[基準温度音速決定ステップ:sb]
第2到達時間取得ステップが取得する複数の第2到達時間の測定値に基づいて、複数の部位それぞれの音速を決定する(sb:基準温度音速決定ステップ)。ステップS3(温度決定ステップ)において、複数の第1到達時間に係る数式4からなる連立1次方程式より、各グリッド(ピクセル)のスローネスfjの値を決定するのに対して、ステップsbでは、複数の第2到達時間に係る数式4からなる連立1次方程式より、各グリッド(ピクセル)のスローネスfjの値を決定する。被検体100の複数の部位それぞれにおけるスローネスの値又は音速の値を決定する。

0055

[温度依存特性算出ステップ:sc]
基準温度音速決定ステップが決定する被検体の複数の部位それぞれのスローネスの値又は音速の値に基づいて、被検体の複数の部位それぞれの音速の温度依存特性を算出する(sc:温度依存特性算出ステップ)。既知の基準温度Tsにおける水の音速SOSw及び脂肪の音速SOSfを数式3に代入し、各部位が水と脂肪のみの混合物と近似(Rf+Rw=1)する。それにより、複数の部位それぞれにおける水の含有比率Rw及び脂肪の含有比率Rfを決定する。決定される水の含有比率Rw及び脂肪の含有比率Rfに基づいて、数式3より、被検体100の複数の部位それぞれにおける音速の温度依存特性が算出される。

0056

なお、計算領域(測定領域)における被検体100以外の領域には、水など既知の媒質が充填されていることが考えられる。これら領域における音速の温度依存特性が情報記憶部32に記憶されており、これら領域における音速の温度依存特性を情報記憶部32より取得すればよい。また、情報記憶部32に被検体100の複数の部位それぞれにおける音速の温度依存特性が記憶されており、複数の部位それぞれにおける音速の温度依存特性を情報記憶部32より取得してもよい。

0057

以上、当該実施形態に係る温度依存特性取得ステップ(ステップS1)について説明した。当該実施形態に係る温度依存特性取得ステップでは、当該実施形態に係る超音波測定部2を用いる測定により、被検体100の複数の部位それぞれの水の含有比率Rw及び脂肪の含有比率Rfが決定される。複数の第2到達時間の測定は、複数の第1到達時間の測定とは、異なる温度環境下(基準温度Ts)で実行されるが、それ以外については共通の条件下で測定することができるので、複数の部位(複数のグリッド)それぞれの音速の温度依存特性を高い精度で決定することに加えて、同じ装置(超音波測定部2)を用いて測定ができるので、測定時間の低減、装置を準備するコストの低減など、格別な効果を奏する。

0058

しかしながら、複数部位温度依存特性取得ステップは、当該実施形態に限定されることがない。他の測定により、水の含有比率Rw及び脂肪の含有比率Rfが決定されてもよい。例えば、MRI装置により測定により、水の含有比率Rw及び脂肪の含有比率Rfを決定し、決定される水の含有比率Rw及び脂肪の含有比率Rfに基づいて、被検体の複数の部位それぞれの音速の温度依存特性を決定してもよい。

0059

また、温度計測は、一般的にリアルタイムに行うことが望ましい。これは集束超音波治療の例のように外部から温度変化を与えるときに、本発明に基づいた手法によって温度分布計測を行うことが、外部温度制御手段にフィードバックする情報を与え、高精度制御に寄与できる可能性があり、フィードバックするにはリアルタイムに温度を算出する必要があるためである。ステップS1のプロセスは、温度変化を行う前なので再構成時間に時間を要しても格段の不都合は生じない。一方、ステップS2からステップS3に関するプロセスに関してはリアルタイムのフィードバックを考えると高速な再構成が望まれる。これを実現する方法として、以下の手法も有用である。すなわち、第1到達時間分布の再構成を行うのではなく、第1到達時間分布と第2到達時間分布の差に対して、再構成を行う手法である。一般に、生体中における脂肪と水の分布は、温度分布より複雑な空間分布をとる。これは、熱が一定の熱伝導率で周囲に拡散するために、不連続な分布をとることが少ないが、例えば乳癌撮像の場合、乳腺と脂肪が混在する形状は、互いの領域が断続的に混ざり合った複雑な解剖学的な構造をとることが多いためである。音速分布の複雑さは、ART法、SART法やC−SART法におけるイテレーション回数を増大させるため、演算コストが大きい。一方、第1到達時間分布と第2到達時間分布の差を計算することにより、温度分布が反映された音速分布を取得する場合、集束超音波治療など温度変化においては、温温度分布は局所に留まるため、イテレーションの回数を低減できる。

0060

[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る超音波CT装置1は、超音波画像化装置3に備えられる温度決定手段43の構成が異なることを除いて、第1の実施形態に係る超音波CT装置1と同じ構成を有している。当該実施形態に係る温度決定手段43は、温度補正手段48を備える。

0061

発明者らは、SART法に温度分布を考慮させたT−SART(Temperature considering SART)法を考案し、当該実施形態に係る音速再構成法として採用している。以下、T−SART法について説明するが、その前に、SART法について説明する。SART法では、各計算ステップにおいて、次に示す数式5を用いた修正を行っている。

0062

0063

ここで、添え字のi,j,kはそれぞれ、経路番号グリッド番号(ピクセル番号)、及び計算ステップ数を表している。また、g,a,w,pはそれぞれ、輝度値、重み関数、ハミング窓関数を考慮した重み関数、及び投影データを表している。ここでは、音速の再構成を行っているので、輝度値は各グリッドの通過時間、すなわちスローネスfであり、投影データは到達時間P(第1到達時間)である。なお、ここでは、音速不均質が存在しない系との「到達時間差」から、音速不均質が存在しない系における「スローネス差」を算出することにより、モデルの修正を行っている。それゆえ、ここでは、正確に言えば、到達時間とは「音速不均質が存在しない系との到達時間差」を、スローネスとは「音速不均質が存在しない系とのスローネス差」をそれぞれ意味している。

0064

図6Aは、SART法を説明する図である。数式5に示す通り、SART法では、以下の修正をしていると解釈できる。まず、ある1本の経路に注目し、実際の到達時間(pi)と現在のモデルにおける到達時間(a・g)との差分(到達時間差)を算出する。そして、その差分を各グリッドの持つ経路に対する重み関数(wi,j)を乗算して、均等に分配し修正量(数式5の右辺の第2項の分子にある総和記号Σのかっこの中)を用いてモデルを修正する。図6Aに示す通り、仮定される輝度値(スローネス)分布に対して、当該経路(i番目の経路)上の複数のグリッドそれぞれに共通する輝度値変化分(修正量)により、到達時間差がゼロとなるように、輝度値(スローネス)分布を補正し、補正される輝度値(スローネス)分布に基づいて、当該経路上の複数のグリッドの温度分布を修正する。

0065

SART法では、経路上のスローネスを経路に沿って等しく修正しているので、音速の温度依存特性の変化率が微小となっている領域における温度算出誤差が大きくなる。それゆえ、特に、被検体を水と脂肪の混合物とするモデルにおいては、各部位の温度依存特性が上に凸となり対象とする温度付近極大値を持つ関数となりうるので、再構成中の音速がかかる温度依存特性と交点を持たない場合もありうるので、小さな音速誤差が大きな温度誤差を引き起こす可能性がある。

0066

これに対して、T−SART法では、温度分布から音速算出を行うので、初期条件として、複数のグリッドの温度分布の初期値Tj(0)を設定することとなる。各計算ステップにおける輝度値gj(k)(ここでは、スローネス)は音速の逆数であるため、温度Tj(k)の関数として表される。なお、輝度値gj(k)と温度Tj(k)は一対一対応するので、複数のグリッドの温度分布の初期値Tj(0)を設定すれば、輝度値分布の初期値gj(0)を設定する必要はない。輝度値gl(k)は、次に示す数式6で示される。

0067

0068

さらに、数式1乃至3、及び水と脂肪のみの混合物と近似(Rf+Rw=1)により、数式6は、以下に示す数式7で表される。

0069

0070

T−SART法では数式7を用いて、温度を補正することにより、輝度値gj(スローネス)の値を変動させる。T−SART法では、SART法と同様に、超音波の各経路に注目する。そして、i番目の経路上すべての温度を均等にdtiだけ変化させる。

0071

ここで、変数zi,jを、i番目の経路上にj番目のグリッドがある場合に1となり、i番目の経路上にj番目のグリッドがない場合に0となる関数と定義する。i番目の経路における補正後の温度分布は、次に示す数式8で表される。

0072

0073

そして、温度補正後の輝度値は、次に示す数式9で表される。

0074

0075

経路上に温度補正を与える場合の輝度値(スローネス)は、数式8及び数式9により算出される。そのために、数式8に示すi番目の経路に与える補正温度量dtiの算出が重要となる。T−SART法では、i番目の経路を経る超音波の到達時間が、実際の到達時間と等しくなるように、i番目の経路の温度を補正している。そのための条件は、次に示す数式10で定義される。

0076

0077

図6Bは、T−SART法を説明する図である。仮定される温度分布に対して、i番目の経路上の複数のグリッドそれぞれに共通する温度変化分(修正量)により、到達時間差がゼロとなるように、温度分布を補正し、補正される温度分布に基づいて、当該経路上の複数のグリッドの輝度値(スローネス)分布を修正する。

0078

数式8乃至10を連立することにより、投影データpiと算出する変化温度dtiについての関係式が得られる。しかしながら、実際には、変化温度dtiを直接解くことは困難ンであり、当該実施形態において、以下のような探索法を用いて算出している。

0079

まず、補正温度の探索幅ddtを設定し、探索方向を決定するために、dti=0を数式9に代入して、輝度値G(Tj(k))を算出する。そして、次に示す数式11により与えられる投影データ(Pi)との到達時間差dPi(Tj(k))を算出する。

0080

0081

次に、温度の探索幅ddtだけ変動させるdti=ddtにおける輝度値G(Tj(k)+zi,j・ddt)を算出し、同様に、到達時間差dP(Tj(k)+zi,j・ddt)を求める。

0082

ここで、修正することにより、到達時間差の絶対値が減少するのであれば、すなわち、|dP(Tj(k))|>|dP(Tj(k)+zi,j・ddt)|であれば、探索方向が正しいとする。反対に、到達時間差の絶対値が増大するのであれば、すなわち、|dP(Tj(k))|<|dP(Tj(k)+zi,j・ddt)|であれば、ddt=−ddtとして、探索方向を反対方向へ修正する。探索方向が決定すれば、dtiを、0,ddt,2・ddt,3・ddt…と、探索幅だけ温度を変動させながら、到達時間を計算する。反復計算終了条件として、ここでは、連続する補正温度における到達時間差dP(Tj(k)+zi,j・n・ddt)とdP(Tj(k)+zi,j・(n+1)・ddt)とが、正負の符号が反転することとしている(nは1以上の整数)。正負の符号が反転するということは、補正温度n・ddtと、補正温度(n+1)・ddtとの間に、数式10を満たす補正温度が存在すると考えられる。例えば、補正温度n・ddtと、補正温度(n+1)・ddtとのうち、到達温度差の絶対値が小さい方の補正温度を採用すればよい。

0083

なお、反復計算の終了条件は、上記条件に限定されることはなく、他に、相対残差を利用する方法も考えられる。また、dtiの探索法はこれらに限定されることはなく、他の方法を用いてもよい。

0084

以上の方法により、全ての経路における補正値を計算する。そして、SART法と同様に、T−SART法では全ての経路において算出した補正値を平均化して、次に示す数式12を用いてモデルを修正する。なお、補正値の分配には、ハミング窓関数を導入して、データ密度是正を行っている。

0085

0086

図7は、当該実施形態に係る温度決定ステップ(ステップS3)のフローチャートである。説明したT−SART法に基づくステップS3について、以下に説明する。

0087

初期温度条件設定ステップ:ta]
被検体の複数の部位を含む計算領域の複数グリッドそれぞれにおける温度の初期条件を設定する(ta:初期温度条件設定ステップ)。ここで、複数のグリッドの温度分布の初期値Tj(0)を設定するが、温度分布の初期値Tj(0)は、例えば、所定の温度(一様分布)としてよい。

0088

[温度補正ステップ:tb]
ある経路(i番目の経路:iは1〜Mの整数)における第1到達時間の測定値と、計算機領域の複数のグリッドのうち該経路を貫く複数の経路上グリッドそれぞれに仮定される遅延因子に基づく到達時間と、が到達時間差を有する場合に、到達時間差を低減するように、複数の経路上グリッドそれぞれの温度を補正する(tb:温度補正ステップ)。ここでは、到達時間差がゼロとなるように複数の経路上グリッドそれぞれの温度を補正するのが望ましい。さらに、複数の経路上グリッドに共通する温度変化分により補正するのが望ましい。複数の経路上グリッドとは、計算機領域の複数のグリッドのうち、該経路を貫く複数のグリッドであり、図4に示すl番目の経路の場合、複数の経路上グリッドは、A〜Jである。ステップtbをすべて(M本)の経路について繰り返す。

0089

ステップtbでは、i番目の経路を貫く複数の経路上グリッドの温度分布Tj(k)を、到達時間差dPiがゼロとなるように、複数の経路上グリッドに共通する温度変化分dtiにより補正している。温度変化分dtiの決定方法については、すでに説明している通りである。その1例を示す。(i)所定の値を有する温度の探索幅ddtを設定する。(ii)経路上グリッドの温度分布を(Tj(k)+ddt)に変動させる。(iii)温度分布(Tj(k)+ddt)における輝度値G(Tj(k)+ddt)を算出する(数式9参照)。ここで、温度依存特性取得ステップ(ステップS1)が取得する被検体100の複数の部位それぞれの音速の温度依存特性に基づいて、温度分布(Tj(k)+ddt)における輝度値gj(k)(スローネス)を計算する。(iv)到達時間差dPi(Tj(k)+ddt)を算出する(数式11参照)。(v)到達時間差の増減により、ddtの符号を決定する。前述の通り、到達時間差の絶対値が減少するのであれば、ddtの符号を維持し、増大するのであれば、ddtの符号を反転させ(ddt=−ddt)、探索方向を決定する。(vi)決定された探索方向により、温度分布(Tj(k)+n・ddt)に対して(nは1以上の整数)、上記(ii)〜(iv)を、到達時間差dPiの符号が反転するまで繰り返す。(vii)本計算ステップ(k)における補正のための温度変化分dtiを決定する。

0090

[計算結果判定ステップ:tc]
k番目(kは1以上の整数)の計算ステップの結果を判定する(tc:計算結果判定ステップ)。1番目(k=1)の計算ステップにおいては、自動的に2番目(k=2)の計算ステップへ移行する。k番目(k≧2の整数)においては、k番目の計算結果と、(k−1)番目の計算結果と、の差分に基づいて、収束性を判断する。十分に収束していると判断される場合には、ステップS3を終了する。十分には収束していないと判断される場合には、k=k+1として、k+1番目の計算ステップへ移行する。

0091

以上の計算により、複数(M本)の経路の到達時間差dPiを最小化する、輝度値(スローネス)分布が取得され、かかる輝度値分布を与える温度分布が取得される。

0092

当該実施形態では、経路上グリッドの輝度値(スローネス)分布を直接補正するSART法と異なり、到達時間差を低減させるように、経路上グリッドの温度分布を補正している。計算を簡便にすることにより、各径路における補正のための温度変化分を経路上グリッドにおいて共通する値を用いている。しかし、共通する値を用いることは計算時間の短縮のために望ましいものの、この方法に限定されることがないのは言うまでもない。経路上グリッドの温度分布を補正することにより、到達時間差を低減させるのであれば、経路上グリッドにおいて共通する値により、温度分布を補正することに限定されることはない。

0093

なお、温度分布の補正により到達時間差を低減させている理由に関して以下に補足的な説明を行う。第2到達時間取得から基準温度音速を求める工程において、断層像再構成には必ず一定の空間解像度の限界が存在する。このため脂肪と水の混合比の空間分布においては、混合比の変化が急峻な領域において、混合比の推定精度が低下する。推定精度の低下に伴い、音速の温度依存特性が、本来の温度依存特性からずれてしまう。このずれの結果が温度推定誤差を誘発する。一方、温度分布は熱拡散の影響で常に境界がなだらかとなる(周囲に比べて、著しく熱伝導率の小さい領域が存在すると、その部分のみ熱拡散効率が低下するため、温度の空間勾配が大きくなる。しかし、生体中の組織において、著しく熱伝導率が小さい領域は存在することは想定する必要がない)。このため脂肪・水の混合比の空間的な連続性よりは、温度分布の方が空間的な連続性を仮定する理由が存在する。よって、温度分布の補正により到達時間差を低減させることが妥当となる。

0094

また前記の例では基準温度音速やMRIから脂肪・水混合比率を求める例に関して説明を行った。それ以外の方法として、2つの基準温度を用いて、この温度変化の間に音速が正に変化する領域と、負に変化する領域に二分して、それぞれを脂肪領域水領域とすることも可能である。この場合は、解像度が十分に高い場合には、画素毎に水に類似した音速の温度依存性をもつ領域と、脂肪に類似した音速の温度依存性をもつ領域に二分化する。

0095

[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態に係る超音波CT装置1は、超音波画像化装置3に備えられる温度決定手段48の構成が異なることを除いて、第2の実施形態に係る超音波CT装置1と同じ構成を有している。第2の実施形態に係る温度決定手段48では、収束性に問題が発生する場合があり得る。当該実施形態に係る温度決定手段48では、収束性を考慮して、補正のための温度変化分を決定している。

0096

最初に、T−SART法の収束性について考察する。数式8より、補正後の輝度値(スローネス)は、次に示す数式13に近似される。

0097

0098

また、数式10及び数式13により、補正温度dtiを満たす条件式が次に示す数式14が得られる。

0099

0100

ここで、zi,jとai,jの関係を用いて、数式14を整理すると、補正温度の条件式として、次に示す数式15が得られる。

0101

0102

ただし、到達時間差dPiは数式11を満たしている。なお、数式15は、あくまでi番目の経路(1つの経路)における補正温度を算出するための条件式であり、dPi及びdtiはスカラー量であることに留意する。数式15の左辺は、現在のモデルにおける超音波の到達時間と実測の到達時間の差を意味し、数式15の右辺は、補正温度dtiが与えられた場合に変化する到達時間の変化分を意味している。両者が等しくなるように、温度を補正することにより、i番目の経路を経る超音波の到達時間を実測値と等しくなるように調整する。数式15に示す通り、補正温度dtiの(正負の)符号は、dPi及びaiT(dG/dt)の符号に依存して決定される。それゆえ、輝度値の微分値dG/dTの符号が重要となる。

0103

理想的な輝度値分布(スローネス分布)をgjidealとすると、dPiは次に示す数式16で近似される。

0104

0105

前述の通り、輝度値(スローネス)と温度とは一対一対応をするため、系に設定される理想的な温度分布Tjidealを用いると、数式16より次に示す数式17が導出される。

0106

0107

さらに、現在のモデルと理想的な温度分布の差をdTj(k)とすると、数式17は次に示す数式18に置き換えられる。

0108

0109

さらに、数式18は次に示す数式19に近似される。

0110

0111

数式19は、各グリッド(ピクセル)における輝度値(スローネス)の温度微分値に理想温度との差分を乗算し、経路に沿う線積分を意味している。i番目の経路がリング外周上の一点より始まり、被検体が配置される中心部分を貫き、リング外周上の該一点とは反対側にある他の一点に至る経路であるとする。例えば、計算領域の外周付近において輝度値の温度微分dG/dTの符号は負であり、計算領域の中心付近においては、輝度値の温度微分dG/dTの符号は正である場合を考える。そして、i番目の経路における実測値との到達時間差dPiが正の値として算出されているとする。

0112

i番目の経路における線積分において、外周付近におけるdG/dTの絶対値が中心付近におけるdG/dTの絶対値より大きかったり、dG/dTが負である領域がdG/dTが正である領域より長かったりすれば、数式11より、T−SART法における(i番目の経路上の複数のグリッドすべてに共通の)補正温度dtiが負となり得る。かかる場合であっても、i番目の経路上のすべてグリッドにおいてdTj(k)の符号がすべて正であることもあり得る。中心部分のdTj(k)の値が外周付近のdTj(k)の値より大きい場合に、数式19の両辺が正となり得る。この場合、実際の補正温度dTj(k)は、i番目の経路上のすべてのグリッドにおいて正の値であるにもかかわらず、T−SART法における補正温度dtiは負となり、補正温度が本来の温度差と逆に算出され、収束性が悪くなる場合が生じる。

0113

当該実施形態において、収束性を考慮したT−SART法(以下、修正T−SART法)を採用している。T−SART法では、輝度値(スローネス)の温度微分dG/dTの符号にかかわらず、補正温度をi番目の経路上の複数のグリッドすべてに共通の補正温度dtiとしている。これに対して、修正T−SART法では、複数のグリッドそれぞれにおいて、輝度値(スローネス)の温度微分dG/dTの符号の符号に応じて、補正温度の符号を決定している。

0114

T−SART法では、補正温度をi番目の経路上の複数のグリッドすべてに共通の補正温度dtiとしている。しかし、一般に、補正温度をグリッド(ピクセル)に応じて異なるとしてよいので、j番目のグリッドにおける補正温度をdti,jとする。この場合、数式10は、次に示す数式20に書き換えられる。

0115

0116

数20に示すjを、i番目の経路上のグリッドに限定すれば、数式20は次に示す数式21に書き換えられる。

0117

0118

計算を簡単にするために、i番目の経路における補正温度の絶対値は等しいとして、次に示す数式22を条件として設定する。

0119

0120

ここで、Ciはi番目の経路に対する定数である。各グリッド(ピクセル)における補正温度dti,jの符号を、輝度値(スローネス)の温度微分の符号に応じて決定する。次に示す数式23の通り、到達時間差dPiが正であれば、(dG/dT)dti,jが正となるように、dti,jの符号を決定する。

0121

0122

次に示す数式24の通り、到達時間差dPiが負であれば、(dG/dT)dti,jが負となるように、dti,jの符号を決定する。

0123

0124

説明を簡単にするために、修正T−SART法を、2次元超平面を用いて以下に説明する。グリッドの数を2(jは1か2の整数)とすると、投影データpi(到達時間)と輝度値gj(スローネス)は、ωijは重み関数として、以下に示す数式25で表される。

0125

0126

図8は、2次元超平面におけるSART法及びT−SART法における補正ベクトルの向きを示す図である。2次元超平面において、数式25に示す2式は、それぞれ直線l及び直線mで表すことができる。ART法やSART法では、ある投影に対する解を意味する直線へ、垂線の足を延ばすようにモデルの修正を行っている。すなわち、輝度値(スローネス)の補正ベクトルは、図8破線で示す通り、直線に直交する向きを有する。

0127

これに対して、T−SART法では、各径路において温度を均等に補正しており、補正ベクトルの各成分であるΔG1(dT)とΔG2(dT)との符号により、2次元超平面は、ΔG1(dT)とΔG2(dT)との符号が(正,正)となる領域1、(正,負)となる領域2、(負,負)となる領域3、及び(負,正)領域4の4つの領域に分類される。このうち、図8実線で示す通り、補正ベクトルが領域1及び領域3となる場合には、良好な収束性を有すると考えらるが、補正ベクトルが領域2及び領域4となる場合には、収束性に問題が生じうると考えられる。

0128

図9は、2次元超平面における修正T−SART法における補正ベクトルの向きを示す図である。参考のために、SART法及びT−SART法における補正ベクトルの向きを併せて示している。前述の通り、SART法における補正ベクトルは、図にV1で示す通り、直線lと直交する向きを有する。T−SART法では、グリッド1とグリッド2の補正温度は等しい(ここではともにC1とする)ので、図にV2で示す向きを有する。これに対して、修正T−SART法では、輝度値(スローネス)の温度微分の符号に応じて、補正する温度変化分の符号を変化させるので、図9に示す場合では、補正する温度変化分の符号が互いに異なっている。それゆえ、補正ベクトルは図にV3で示す向きを有する。

0129

以下に、当該実施形態に係る温度決定ステップ(ステップS3)を説明する。当該実施形態に係るステップS3は、図7に示すフローチャートの通りであるが、温度補正ステップ(ステップtb)の構成が、第2の実施形態と異なっている。当該実施形態では、第2の実施形態と同様に、到達時間差を低減するよう、さらに望むべくは、到達時間差をゼロとなるように、複数の経路上グリッドそれぞれの温度を補正している。しかしながら、当該実施形態では、複数の経路上グリッドそれぞれの温度を補正する温度変化分の符号を、仮定される遅延因子の温度微分値の符号と、到達時間差の符号と、に基づいて決定している。複数の経路上グリッドそれぞれの温度を補正する温度変化分の絶対値を、複数の経路上部位において共通する値とするのが、望ましい。複数の経路上グリッドそれぞれの温度を補正する温度変化分の符号を、仮定される遅延因子の温度微分値の符号と、到達時間差の符号とが同じ場合は正と、異なる場合は負と、決定するのが、さらに望ましい。

0130

当該実施形態では、温度補正ステップ(ステップtb)において、複数のグリッドにおける温度変化分の絶対値を共通の値としている。それゆえ、ステップtbにおいて、各グリッドにおける温度変化分の符号を決定し、当該共通する値を算出する。前述の通り、各グリッドにおける温度変化分の符号は、数式23及び24により決定される。当該共通する値の算出は、第2の実施形態における温度変化分の決定方法に類似している。

0131

以下に、当該実施形態に係る温度補正ステップ(ステップtb)の1例を示す。(i)所定の値を有する温度の探索幅ddtを設定する(第2の実施形態と同様)。(ii)経路上グリッドの温度分布を(Tj(k)+ddt)に変動させる(第2の実施形態と同様)。(iii)温度分布(Tj(k)+ddt)における輝度値G(Tj(k)+ddt)を算出する(第2の実施形態と同様)。(iv)各経路上グリッドにおいて、輝度値(スローネス)の温度微分値dG/dTの符号と、到達時間差dPiの符号と、に基づいて、温度変化分の符号を決定する(数式23及び24参照)。(v)各経路上グリッドにおいて決定される温度変化分の符号に基づいて、到達時間差dPiを算出する。(vi)温度分布(Tj(k)±n・ddt)に対して(nは1以上の整数、各径路上グリッドにおける符号は±のいずれか)、上記(ii)、(iii)、及び(v)を、到達時間差dPiの符号が反転するまで繰り返す。(vii)本計算ステップ(k)における補正のための温度変化分の絶対値Ciを決定する。

0132

当該実施形態において、各径路上グリッドにおける補正のための温度変化分の絶対値を、複数の経路上グリッドにおいて共通の値としたが、これに限定されることはない。また、各経路上グリッドにおける補正のための温度変化分の符号を、数式23及び24により決定しているが、複数の経路上グリッドにおける温度変化分の符号を、すべて数式23及び24により決定していなくてもよい。収束性の方向性を決定するの十分な程度に、複数の経路上グリッドの一部における温度変化分の符号を決定すればよい。具体的に一部とは、複数の経路上グリッドのうち、7割以上の経路上グリッドであるのが望ましい。また、当該実施形態では、数式23及び24に基づく収束性を、T−SART法に適用しているが、これに限定されることはなく、輝度値の温度微分値を用いる、他の音速再構成法に適用してもよい。

0133

以上、本発明の実施形態に係る超音波画像化装置、超音波画像化方法、超音波画像化プログラム、及び超音波CT装置について、説明した。以下に、本発明の実施形態による測定結果及び計算結果を以下に示す。

0134

図10は、本発明の第1の実施形態に係る超音波CT装置1による測定結果の例を示す図である。図10は、被検体100の測定データより、音速分布を画像化したものである。ここで、被検体100にアクリルアミドゲルを用いており、超音波により小さな領域を高温に加温するHIFUを模して、発熱体26としてマイクロヒータを用いている。被検体100の中心部を集中的に加熱し、内部発熱によって温度が上昇する非定常温度条件となっており、図10は、加熱開始から2分後の被検体100の状態を示している。なお、被検体100及び媒質(水)の加熱前の温度は20℃である。サンプリングレートを10MHzとし、サンプル間隔時間を0.1μsとしている。図10に示す通り、加熱の中心部の音速が1550m/s近くまで速くなっており、マイクロヒータから離れるにつれて、音速が遅くなっており、媒質(水)においては、音速は定状態の1482m/s付近である。

0135

図11Aは、本発明の第2及び第3の実施形態に係る超音波画像化装置3において設定される被検体100のモデルを示す図である。図11Aに示すように、被検体100は細胞であり、ここでは簡単のために、脂肪の含有比率が一定とし、被検体100の直径を20mmと設定している。被検体100の周囲の媒質は水である(脂肪の含有比率は0)。

0136

図11Bは、本発明の第2の実施形態に係る超音波画像化装置3の計算結果を示す図である。図11Bは、図11Aに示す経路iの温度分布について、100回のイテレーション(計算ステップ数)を施した計算結果である。当該実施形態に係るT−SART法による計算結果である温度分布曲線を、設定されるモデルの温度分布とともに示している。なお、図11Bに示す被検体100は、脂肪の含有比率を20%としている。すなわち、脂肪と水の重量比は1:4である。被検体100がかかる混合物である場合、水のスローネスの温度依存性も、被検体100のスローネスの温度依存性も、ともにdG/dT>0であり、計算結果は、モデルの温度分布と、実用的なレベルの一致をみている。

0137

図11Cは、本発明の第3の実施形態に係る超音波画像化装置3の計算結果を示す図である。図11Cは、図11Aに示す経路iの温度分布について、50回のイテレーション(計算ステップ数)を施した計算結果である。当該実施形態に係る修正T−SART法による計算結果である温度分布曲線を、設定されるモデル温度分布とともに示している。なお、図11Cに示す被検体100は、脂肪の含有比率を60%としている。すなわち、脂肪と水の重量比は3:2である。被検体100がかかる混合物である場合、水のスローネスの温度依存性はdG/dT>0であるのに対して、被検体100のスローネスの温度依存性はもdG/dT<0である。かかる場合、T−SART法では、収束性に問題が発生し得るが、収束性を考慮した当該実施形態に係る修正T−SART法では、計算結果は、実用的なレベルの一致をみている。なお、被検体100と媒質(水)との境界においては、温度の不連続な飛び(ジャンプ)がみられている。以上、本発明の実施形態による測定結果及び計算結果を示した。

0138

本発明は、上記実施形態に限定されることはなく、超音波画像化に広く適用することが出来る。上記実施形態において、2次元画像化を例として、各グリッドをピクセル(画素)としているが、これに限定されることはなく、3次元画像化としてもよい。この場合、各グリッドはボクセルとなる。

0139

なお、本発明の実施形態に係る超音波画像化装置で検出する温度変化について、主に超音波治療の例について説明を行った。しかしながら、温度検知をする例はこれに限定されることはなく、例えば以下の2つの例がある。これらの例を含めて本発明の手法を広く適用することができる。

0140

癌をイメージングする際に、癌と他の部位の代謝量相違可視化することで、腫瘍、特に転移の結果形成された腫瘤の存在が可視化出来ることが知られている。これは一般的にはフッ素放射性同位元素ラベリングしたブドウ糖造影剤として使う方法として、PET(Positron Emission Tomography)として実用化されている。代謝が活発な部位は発熱も多いため、温度分布上に差異が生じることが既に知られている。また、温度変化を与えた時に、代謝量が異なる部位のみ、温度変化の履歴が異なることも知られている。例えばある領域の生体組織の温度を下げた時には、代謝が多い部位のみ温度変化に遅れが生じ、温度を下げるのを止めた時には、代謝が多い部位から早く温度が回復することが知られている。このことを使うと、PETのように放射性同位元素を用いることなく、体外から腫瘍の存在が疑われる領域に温度変化を導入するのみで、代謝が異なる領域を可視化することが出来る。この代謝異常領域の可視化のために、T−SART法に基づいた温度分布計測を行うことが可能である。この場合、治療モニタリングの例と異なり、初期温度分布が一定という仮定が妥当でない場合もあるため、正確な温度を求めるのは困難である。しかし、目的は代謝量が周囲の正常組織の代謝量に比べて相対的に異なる領域の描出にあるので、必ずしも正確な温度を定量的に算出する必要はない。図2装置構成に、温度変更機構組込むことで、上記のコンセプトを実現することが出来る。

0141

血流のイメージングにおいても、温度計測は有用である。観察領域のみ温度をTROIに下げた場合に、温度を下げていない領域(温度T0)から温度T0の血流が流入する。この結果観察領域において、TROI−T0の温度差が生じるため、もし温度分布を可視化することが出来れば、血流の様子を可視化することが出来る。これはあたかも熱的なエネルギーを用いた造影剤として扱うことが出来る。一般の医療用の造影剤では、本来生体中に存在しない物質を導入するため、造影剤撮像が終了した後でも、一定時間体外から投与した化学物質が体内に残留することになる。しかし、熱的な造影剤を用いた場合は、温度差が著しく大きく無い場合は、生体に作用を与えることなく、造影効果が時間と共に消失するので、生体安全性上の観点からはメリットが大きい。

0142

さらに、また温度変化以外に音速分布変化から診断を行う例についても、以下の1つの例がある。これらの例に関しても本発明の手法を広く適用することが可能である。温度変化以外の音速分布の変化を診断に行う例として、抗癌剤治療のモニタリングが想定される。超音波CTは三次元データを無被曝に計測可能であるために、抗癌剤治療の際の、抗癌剤効果をモニタリングする点においても有用である。抗癌剤の効果が有効である時には、腫瘍のサイズ変化観測できる。すなわち、週や月の時間オーダーで音速分布が変化することになる。この場合は温度変化の場合と異なり、経時変化を追跡する時間が極めて長期化するために、撮像位置の変化等を補正するレジストレーション位置補正が必要となる。その癌の変化に関しては、変化前後の音速分布図の差分を取る方法以外に、本発明で実施しているような、再構成前に変化を抽出することも、変化に対して感度を上げるためには有益である。

0143

1超音波CT装置、2超音波測定部、3超音波画像化装置、4 制御部、5入力装置、6表示装置、11 CPU部、12 記憶部、13情報入力部、14情報出力部、21リングアレイトランスデューサ、22スイッチング回路、23 超音波制御システム、24測定制御部、25送受信プローブ、26発熱体、31超音波画像化プログラム、32情報記憶部、41温度依存特性取得手段、42 第1到達時間取得手段、43 温度決定手段、45 第2到達時間取得手段、46基準温度音速決定手段、47 温度依存特性算出手段、48温度補正手段。

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