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図面 (20)

課題

解決手段

人工多能性幹細胞iPS細胞)の産生に関連した方法および組成物を開示する。例えば、人工多能性幹細胞は、ヒトCD34+血液始原細胞などのCD34+造血細胞またはT細胞から作製することができる。様々なiPS細胞系も提供する。特定の実施形態では、本発明は、T細胞受容体遺伝子再構成を含むゲノムを有する新規な人工多能性幹細胞を提供する。本方法では、T細胞の臨床的入手しやすい供給源、例えば、3mlの全血サンプルからiPS細胞を産生させることができ、造血細胞の動員が必要ない。

概要

背景

2.先行技術の説明
一般に、幹細胞は、一連成熟機能細胞を生じさせることができる未分化細胞である。例えば、造血幹細胞は、様々な種類の最終分化血液細胞のいずれも生じさせることができる。胚性ES細胞は、由来し、多能性であるため、あらゆる器官もしくは組織型、または少なくとも潜在的に完全な胚に発達する能力を有する。

一般にiPS細胞またはiPSCと略される人工多能性幹細胞は、非多能性細胞、典型的には成体体細胞から人工的に誘導されるある型の多能性幹細胞である。人工多能性幹細胞は、ある幹細胞遺伝子およびタンパク質発現クロマチンメチル化パターン倍加時間胚様体形成、奇形腫形成、生存可能キメラの形成、ならびに効能(potency)および分化能の点などから、多くの点で胚性幹細胞などの天然の多能性幹細胞と同一であると考えられるが、天然の多能性幹細胞に対するそれらの全範囲に亘る関連についてはなお評価中である。

iPS細胞は、2006年にマウスの細胞から初めて作製され(Takahashiら、2006)、そして2007年にヒトの細胞から作製された(Takahashiら、2007a;Yuら、2007)。これは、論争の的になっている胚を使用することなく、研究に重要であり、かつ治療用途を潜在的に有する多能性幹細胞を研究者入手可能にし得るため、幹細胞の研究における重大な進歩と言われている。

概要

リプログラミングT細胞および造血細胞の提供。人工多能性幹細胞(iPS細胞)の産生に関連した方法および組成物を開示する。例えば、人工多能性幹細胞は、ヒトCD34+血液始原細胞などのCD34+造血細胞またはT細胞から作製することができる。様々なiPS細胞系も提供する。特定の実施形態では、本発明は、T細胞受容体遺伝子再構成を含むゲノムを有する新規な人工多能性幹細胞を提供する。本方法では、T細胞の臨床的入手しやすい供給源、例えば、3mlの全血サンプルからiPS細胞を産生させることができ、造血細胞の動員が必要ない。なし

目的

ヒト細胞とすることができる胚性幹細胞と比較して、不完全なセットのT細胞受容体遺伝子のV、D、およびJセグメントを含むゲノムを有する人工多能性幹細胞を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

この技術が所属する分野

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請求項1

本願図面に記載された発明。

技術分野

0001

発明の背景
本願は、2009年6月5日に出願された米国仮特許出願第61/184,546号、および2009年9月4日に出願された米国仮特許出願第61/240,116号の優先権を主張し、これらの米国仮特許出願の全体の開示は、本明細書中に参考として援用される。

0002

1.発明の分野
本発明は、分子生物学および幹細胞の分野全般に関する。詳細には、本発明は、体細胞、特にT細胞および造血細胞に関する。

背景技術

0003

2.先行技術の説明
一般に、幹細胞は、一連成熟機能細胞を生じさせることができる未分化細胞である。例えば、造血幹細胞は、様々な種類の最終分化血液細胞のいずれも生じさせることができる。胚性ES)細胞は、由来し、多能性であるため、あらゆる器官もしくは組織型、または少なくとも潜在的に完全な胚に発達する能力を有する。

0004

一般にiPS細胞またはiPSCと略される人工多能性幹細胞は、非多能性細胞、典型的には成体の体細胞から人工的に誘導されるある型の多能性幹細胞である。人工多能性幹細胞は、ある幹細胞遺伝子およびタンパク質発現クロマチンメチル化パターン倍加時間胚様体形成、奇形腫形成、生存可能キメラの形成、ならびに効能(potency)および分化能の点などから、多くの点で胚性幹細胞などの天然の多能性幹細胞と同一であると考えられるが、天然の多能性幹細胞に対するそれらの全範囲に亘る関連についてはなお評価中である。

0005

iPS細胞は、2006年にマウスの細胞から初めて作製され(Takahashiら、2006)、そして2007年にヒトの細胞から作製された(Takahashiら、2007a;Yuら、2007)。これは、論争の的になっている胚を使用することなく、研究に重要であり、かつ治療用途を潜在的に有する多能性幹細胞を研究者入手可能にし得るため、幹細胞の研究における重大な進歩と言われている。

発明が解決しようとする課題

0006

ヒトでは、iPS細胞は、一般に皮膚線維芽細胞から作製される。しかしながら、皮膚生検の必要と線維芽細胞を増大させてin vitroで数回継代する必要があるため、患者固有の幹細胞の作製にとって扱いにくい供給源である。さらに、ヒト体細胞リプログラミングの以前の方法は、体細胞をヒト被験体から直接得るか、または人手のかかる細胞培養系で細胞を維持する必要があるため不便である。したがって、単純で便利、かつ入手が容易な代替の供給源から多能性幹細胞を誘導する方法の開発が要望されている。本発明の開発中に、本発明者らは、患者または健常な個体から血液を採取する、保存する、または移送する、例えば、中心の施設から1つ以上の遠隔地に供給することができるため、血液サンプルがこのような供給源であり得ると見なした。しかしながら、本発明者らが本願に想到するまで、このような臨床的に入手しやすい供給源からT細胞由来の多能性幹細胞の作製の報告がなされておらず、このことは、このような技術を開発する大きな必要性を実証している。

課題を解決するための手段

0007

発明の要旨
本発明は、リプログラミングによるT細胞および/または造血始原細胞由来の人工多能性幹細胞の作製における当技術分野での主な障害を解消する。本方法では、T細胞の臨床的に入手しやすい供給源、例えば、3mlの全血サンプルからiPS細胞を産生させることができ、造血細胞の動員が必要ない。他の実施形態では、造血細胞、例えば、ヒトまたは哺乳動物のCD34+、CD45+、CD43+造血前駆細胞を、血液サンプルから得て、iPS細胞に変換することができる。造血前駆細胞は、例えば、CD34+細胞の富化または非CD34+細胞系統枯渇によって、末梢血の血液サンプルから得ることができる。特定の実施形態では、CD34+造血細胞は、血液サンプルを得る前に被験体でCD34+造血始原細胞を動員することなく得た血液サンプル、例えば、冷蔵または凍結保存血液サンプルから得ることができる。このようにして、iPS細胞は、血液バンクで見られる末梢血サンプルを含め、様々な血液サンプルから作製することができる。

0008

したがって、T細胞および/または造血始原細胞から人工多能性幹細胞を作製する方法であって、(a)T細胞および/または造血始原細胞を含む細胞集団を得る工程と、(b)細胞集団のT細胞および/または造血始原細胞からiPS細胞を産生させてiPS細胞集団を得る工程と、を含む、方法が提供される。細胞集団の例示的な供給源には、限定されるものではないが、血液サンプル、血液成分、骨髄リンパ節胎児肝臓、または臍帯が含まれ得る。細胞集団の供給源には、血液サンプルまたは血液サンプル由来の細胞が含まれ得、この血液サンプルは、この血液サンプルを得る前に被験体で造血始原細胞を外部動員(例えば、造血成長因子の被験体への外部からの投与による)することなく被験体から得た。

0009

細胞集団は、凍結保存血液サンプルから得ることができ、細胞集団の供給源または細胞集団を凍結保存しても良い。凍結保存血液サンプルは、iPS細胞に上首尾にリプログラミングするためのT細胞の供給源として使用できることが実施例で実証された。

0010

本発明の特定の態様の具体的な利点は、少量の血液サンプルの使用により本発明の特定の態様を実施できることである。適量の血液サンプルは、約1〜約5ml、約1〜10ml、約1〜15ml、またはより具体的には約3mlであり得る。

0011

CD34+細胞のような造血幹始原細胞は、末梢血の供給源での富化のために、外部から加えられるG−CSFで誘導して末梢血中に動員することができる。非動員ドナーからの末梢血液細胞が上首尾のリプログラミングを達成できることが本発明の特定の態様で分かったため、外部から加えられる成長因子による骨髄細胞の動員が必要ない。したがって、具体的な態様では、細胞集団の供給源は、外部から加えられる1つ以上の造血成長因子、例えば、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)で細胞が動員されていない被験体とすることができる。本明細書で同義的に使用される用語「外部からの(extrinsic)」または「外部の(external)」は、生物体内を起源とする内因性因子によってある程度まで動員されたCD34+細胞の使用と対照的な、生物体の外部から動員作用物質を加えることを指す。

0012

リプログラミングに適したT細胞の集団を提供するために、T細胞を含む細胞集団を、例えば、抗CD3抗体の存在下などのin vitroで、またはin vivoでT細胞を活性化させる(したがって、特定の抗原、例えば、GP−100などの黒色腫癌抗原に対して特異的なTCRを有する)条件下で調製することができる。これには、当技術分野で公知の4量体ワクチン、および/またはin vitroでのペプチド刺激の使用も含まれ得る。細胞集団を1つ以上のサイトカイン(例えば、IL−2)と共にin vitroで培養して、その中でT細胞集団を増大させることもできる。T細胞は、ヒトT細胞とすることができる。具体的な態様では、T細胞は、CD4+、CD8+T細胞、またはこれらの組み合わせとしても良い。T細胞の例として、限定されるものではないが、Tヘルパー1(TH1)細胞、Tヘルパー2(TH2)細胞、TH17細胞、細胞傷害性T細胞調節性T細胞ナチュラルキラーT細胞、ナイーブT細胞、記憶T細胞、γδT細胞、および任意のT細胞が挙げられる。

0013

特定の態様では、細胞集団は、約80%〜約99%、約90%〜約99%、約97%〜約99%、または任意の中間の範囲のT細胞を含み、これらの範囲は、少なくとも、約、または多くとも、1×103、2×103、3×103、4×103、5×103、6×103、7×103、8×103、9×103、1×104、2×104、3×104、4×103、5×104、6×104、7×104、8×104、9×104、1×105、2×105、3×105、4×105、5×105、6×105、7×105、8×105、9×105、1×106、2×106のT細胞、またはその中に導き出せる任意の範囲に一致し得る。例えば、本発明者らは、1ウェル当たり僅か約1〜5×103個のT細胞を有する96ウェルプレートでのリプログラミングを実証した(図6A〜図6B)。

0014

造血前駆細胞の集団を提供するために、造血細胞を含む細胞集団を、CD34+細胞の富化または増大をもたらす条件下で調製することができる。具体的には、本発明は、リプログラミングのための十分なCD34+細胞を得るために骨髄細胞の動員が必要ないことを見出す。例えば、磁気活性化細胞選別(MACS)または蛍光活性化細胞選別(FACS)を用いてCD34+造血細胞を富化することができ、特定の実施形態では、インダイレクトCD34マイクロビーズキットまたはダイレクトCD34マイクロビーズキット(共にMiltenyi Biotec、Bergisch Gladbach、Germanyから入手可能である)をMACSと共に使用して、末梢血サンプルなどのサンプル由来のCD34+造血細胞を富化することができる。Gratwohlら(2002)に記載されている方法を含め、末梢血から動員されたCD34+造血始原細胞を得る別の方法も当技術分野で公知である。これにもかかわらず、特定の好ましい実施形態では、CD34+造血前駆細胞は、1つ以上の造血成長因子に曝露されていない被験体から得ることができ;したがって、CD34+造血前駆細胞は、血液バンクで典型的に見られる血液サンプルを含め、1つ以上の外部から加えられる成長因子によって動員されていないドナーの血液サンプルから有利に得ることができる。他の実施形態では、CD34+細胞は、成熟造血細胞、例えば、T細胞、B細胞NK細胞樹状細胞単球顆粒球、および/または赤血球系細胞の枯渇によってサンプル中で富化することができる。細胞系統の枯渇では、細胞懸濁液を、抗体(例えば、CD2、CD3、CD11b、CD14、CD15、CD16、CD19、CD56、CD123、CD235aの1つ以上)のカクテルと共にインキュベートし、次いでこのカクテルを用いて、上記の系統陽性細胞を除去することができる(例えば、Karanuら、2003)。系統細胞枯渇キット(Miltenyi Biotec、Bergisch Gladbach、Germany)も市販されており、この目的で使用することができる。特定の実施形態では、SCF、Flt3L、および/またはIL−3サイトカインの組み合わせを用いて、例えば、Akkinaら、(1996)に記載されている方法またはStemPro(商標)−34培地(Invitrogen、Carlsbad、CA、USAから入手可能)により、iPS細胞に変換する前にCD34+細胞を増大し、増殖させることができる。

0015

実質的にあらゆる造血始原細胞またはCD34+造血細胞を、本明細書に記載された方法によってiPS細胞にリプログラミングできることが本発明者らによって予測されている。特定の実施形態では、末梢血サンプルから得たまたは由来する造血前駆細胞を、本明細書に記載された方法によってiPS細胞に変換することができる。造血前駆細胞は、CD34およびCD45の両方、またはCD34、CD45、およびCD43を発現することができる。特定の場合には、ヒト胚性幹細胞(hESC)などの幹細胞から造血前駆細胞を作製するのが望ましいこともあり;これらの実施形態では、骨髄性前駆細胞で高度に富化されたCD34+、CD43+、およびCD45+造血細胞を、例えば、Choiら(2009)に記載されているようにhESCのOP9フィーダー細胞との共培養によって作製することができる。特定の場合には、造血前駆細胞は、CD34が陰性であり得(例えば、Guoら、2003);これにもかかわらず、これらの造血前駆細胞が、iPS細胞に分化できると予測されている。

0016

細胞集団のT細胞および/または造血始原細胞からiPS細胞を産生させるために、本方法は、1つ以上のリプログラミング因子をT細胞および/または造血始原細胞に導入する工程を含み得る。特定の態様では、リプログラミング因子は、Soxファミリータンパク質およびOctファミリータンパク質を含むリプログラミングタンパク質とすることができ、これらの各タンパク質の1つ以上を、細胞侵入のためのタンパク質形質導入ドメインに作用的に連結することができる。本発明のさらなる実施形態では、リプログラミング因子は、1つ以上の発現カセットによってコードすることができ、例えば、Soxファミリータンパク質およびOctファミリータンパク質を含み得る。SoxおよびOctは、ES細胞であることを指定する転写制御の階層の中心であると考えられる。例えば、Soxは、Sox1、Sox2、Sox3、Sox15、またはSox18、特にSox2とすることができ;Octは、Oct4とすることができる。Nanog、Lin28、Klf4、c−Myc、SV40ラージT抗原、またはEsrrbのような追加の因子リプログラミング効率を上げることができ;リプログラミング因子の特定のセットは、Sox2、Oct4、Nanog、および必要に応じてLin−28を含む;またはSox2、Oct4、Klf、および必要に応じてc−Mycを含むセットとすることができる。

0017

具体的な実施形態では、1つ以上の発現カセットは、1つ以上のポリシストロニック転写単位を含み得る。ポリシストロニック単位は、例えば、(i)少なくとも2つのリプログラミング遺伝子、例えば、Sox−Oct、c−Myc−Klf、またはNanog−Lin28;あるいは、(ii)選択可能なまたはスクリーニング可能なマーカーに連結されたリプログラミング遺伝子などの作動可能に連結されたコード領域の異なる組み合わせを含み得る。本発明者らが、1つのリプログラミング因子および蛍光マーカーを備えた4つの別個バイシストロニックベクター(このようなベクターマップ図10に示されている)を使用する代わりに、一切蛍光マーカーを備えていない、1つのベクターに付き2つのリプログラミング因子(Sox2とOct4、cMycとKlf4、またはNanogとLin28)を有するバイシストロニックベクター(ベクターマップが図11A図11Cに示されている)を使用することにより、これら前者のベクターを使用したリプログラミング効率が劇的に改善され、iPSコロニーが早めに出現する(第20〜24日目ではなくおよそ第10〜14日目)ことを見出したため、態様(i)が好ましいであろう。

0018

同じポリシストロニック転写単位で複数の遺伝子を共発現させるために、ポリシストロニック転写単位は、内部リボソーム侵入部位(IRES)または少なくとも1つのプロテアーゼ切断部位および/またはポリシストロニック転写のための自己切断ペプチドをコードする配列を含み得る。例えば、自己切断ペプチドは、ウイルス2Aペプチドである。

0019

なおさらなる実施形態では、1つ以上の発現カセットが、ウイルスベクターエピソームベクター、またはトランスポゾンからなる群から選択されるリプログラミングベクターに含められる。より具体的には、ベクターは、マウス白血病ウイルス(MLV)、モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)、Akv−MLV、SL−3−3−MLV、または別の密接に関連したウイルスなどのレトロウイルスベクターとすることができる。ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターとすることもできる。特定の態様では、転写調節要素は、ウイルス遺伝子の組み込みを媒介する末端反復領域LTR)を含み得る。

0020

代替の態様では、ベクターは、エピソームベクター、例えば、EBVベースとしたベクターまたはトランスポゾンをベースとしたベクターとすることができる。

0021

さらなる実施形態では、リプログラミング因子は、リポソームトランスフェクションヌクレオフェクションエレクトロポレーション粒子リン酸カルシウムポリカチオン、またはポリアニオン、あるいは外来性要素を細胞に導入するのに適した任意の方法によって導入することができる。

0022

一部のさらなる態様では、iPS細胞は、1つ以上の胚性幹細胞の特性、例えば、未分化形態、胚性幹細胞特異的マーカー、接着性、多能性、多系統分化能、または当技術分野で公知の任意の特性に基づいて選択することができる。例えば、これは、未分化形態に基づいて子孫細胞を選択するのに特に便利であり得る。胚性幹細胞特異的マーカーは、SSEA−3、SSEA−4、Tra−1−60またはTra−1−81、Tra−2−49/6E、GDF3、REX1、FGF4、ESG1、DPPA2、DPPA4、およびhTERTからなる群から選択される1つ以上の特異的マーカーとすることができる。この選択工程は、細胞が多能性の状態であって分化した状態に戻らないようにリプログラミング後の2つ以上の時点で利用することができる。iPS細胞はまた、便利な分離法にも利用できる表面への接着性が、T細胞および造血始原細胞とは異なっている。

0023

具体的な態様では、リプログラミングされた細胞は、細胞が多能性となるときに外部から導入された物質を抑制する(silence)ことができるため、発現カセットに含まれるベクター遺伝要素またはレポーター遺伝子などの導入された外来性要素の発現が実質的にないことに基づいてiPS細胞を選択することができる。したがって、組み込んでいるベクター遺伝要素、またはレポーターの発現、例えば蛍光の本質的な消失は、形態の特性に加えて、細胞がリプログラミングされたという指標である。例えば、レポーターの発現の抑制は、蛍光活性化細胞選別(FACS)、CATアッセイ、または導入されたレポーター遺伝子に基づいた発光アッセイによって選択することができる。外来性要素の「本質的な消失」または外来性要素を「本質的に含まない」は、iPS細胞集団の細胞の1%未満、0.5%未満、0.1%未満、0.05%未満、または任意の中間のパーセンテージが、外来性要素を含むことを意味する。iPS細胞集団は、組み込まれた外来性ウイルス要素を本質的に含み得ない。

0024

iPS細胞の臨床への適用のために、本方法は、iPS細胞を分化細胞、例えば、心筋細胞、造血細胞、筋細胞ニューロン、線維芽細胞、脾臓細胞肝細胞、または表皮細胞に分化させる工程をさらに含み得る。さらなる態様では、上記されたようにiPS細胞集団から分化した分化細胞、組織、または器官を開示することができる。このような組織には、神経、骨、消化管上皮筋肉軟骨、または心臓組織が含まれ得:このような器官には、脳、脊髄心臓肝臓腎臓、腸、または脾臓が含まれ得る。特定の態様では、このような分化細胞、組織、または器官は、組織の移植、薬物スクリーニング、または胚性幹細胞の代わりを探す開発的研究に使用することができる。

0025

なおさらなる態様では、上記の方法によって作製された人工多能性幹細胞も開示することができる。ヒト細胞とすることができる胚性幹細胞と比較して、不完全なセットのT細胞受容体遺伝子のV、D、およびJセグメントを含むゲノムを有する人工多能性幹細胞を提供することもできる。具体的な態様では、人工多能性幹細胞は、組み込まれた外来性ウイルス要素を本質的に含み得ない。

0026

本発明の方法および/または組成物に関連して説明される実施形態は、本明細書に記載される任意の他の方法または組成物に関して利用することができる。したがって、1つの方法または組成物に関する一実施形態は、本発明の他の方法および組成物にも適用することができる。

0027

本明細書で使用される、核酸に関する用語「コードする」または「コードしている」は、当業者が本発明を容易に理解できるように使用されるが、これらの用語はそれぞれ、「含む(comprise)」または「含む(comprising)」と同義的に使用することができる。

0028

本明細書で使用される「ある(a)」または「ある(an)」は、1つ以上を意味し得る。語「含む(comprising)」と共に請求項(複数可)で使用される場合、語「ある(a)」または「ある(an)」は、1つまたは2つ以上を意味し得る。

0029

請求項における用語「または(or)」の使用は、代替のみまたは代替が互いに排他的であると明確に述べられていない限り、「および/または」を意味するが、本開示は、代替のみおよび「および/または」を指す定義も支持する。本明細書で使用される「別の」は、少なくとも2番目以降を意味する。

0030

本出願の全体を通じて、用語「約」は、ある値が、その値を決定するために用いられるデバイスまたは方法に固有誤差のばらつき、または被試験物中に存在するばらつきを含むことを示すために使用される。

0031

本発明の他の目的、特徴、および利点は、以下の詳細な説明から明らかになる。しかしながら、詳細な説明および特定の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、この詳細な説明から本発明の趣旨および範囲内の様々な変更および改良が当業者に明らかになるため、単なる例示として与えられることを理解されたい。

0032

以下の図面は、本明細書の一部を構成し、本発明の特定の態様をさらに実証するために含められている。本発明は、本明細書に示される特定の実施形態の詳細な説明と共にこれらの図面の1つ以上を参照することによってより良く理解できる。
本発明の好ましい実施形態では、例えば以下が提供される:
項目1)
T細胞またはCD34+造血始原細胞から人工多能性幹細胞を作製する方法であって、
(a)T細胞またはCD34+造血始原細胞を含む細胞集団を入手する工程であって、前記CD34+造血始原細胞が、被験体に由来し、前記被験体の細胞が、外的に加えられる顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)で動員されていない、工程と、
(b)前記細胞集団の前記T細胞またはCD34+造血始原細胞からiPS細胞を産生させて、iPS細胞集団を提供する工程と、を含む、方法。
(項目2)
前記細胞集団の供給源が、血液サンプル、血液成分、骨髄、リンパ節、胎児肝臓、または臍帯である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記細胞集団の供給源が、約1〜約5mlの血液サンプルである、項目2に記載の方法。(項目4)
前記細胞集団の供給源が、約3mlの血液サンプルである、項目3に記載の方法。
(項目5)
T細胞を含む前記細胞集団の供給源が被験体であり、前記被験体の細胞が、外的に加えられるG−CSFで動員されていない、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記細胞集団が凍結保存されている、項目1に記載の方法。
(項目7)
T細胞を含む前記細胞集団を、前記T細胞を活性化させる条件下でin vitroまたin vivoで調製する、項目1に記載の方法。
(項目8)
T細胞を含む細胞集団を、抗CD3抗体の存在下で培養する、項目7に記載の方法。
(項目9)
T細胞またはCD34+造血始原細胞を含む前記細胞集団を1つ以上のサイトカインと共にin vitroで培養して、その中で前記T細胞またはCD34+造血始原細胞の細胞集団を増大させる、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記細胞集団がT細胞を含み、前記1つ以上のサイトカインがIL−2を含む、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記細胞集団がCD34+造血始原細胞を含み、前記1つ以上のサイトカインが、SCF、Flt3L、またはIL−3の少なくとも1つを含む、項目9に記載の方法。
(項目12)
前記T細胞がヒトT細胞である、項目1に記載の方法。
(項目13)
前記CD34+造血始原細胞が、ヒトCD34+造血始原細胞である、項目1に記載の方法。
(項目14)
前記T細胞が、CD4+T細胞またはCD8+T細胞である、項目1に記載の方法。
(項目15)
前記T細胞が、Tヘルパー1(TH1)細胞、Tヘルパー2(TH2)細胞、TH17細胞、細胞傷害性T細胞、調節性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、ナイーブT細胞、記憶T細胞、またはγδT細胞である、項目1に記載の方法。
(項目16)
前記細胞集団が、約90%〜約99%のT細胞を含む、項目1に記載の方法。
(項目17)
前記細胞集団が、約97%〜約99%のT細胞を含む、項目1に記載の方法。
(項目18)
前記細胞集団が、少なくとも1×103のT細胞を含む、項目1に記載の方法。
(項目19)
前記細胞集団が、少なくとも5×103のT細胞を含む、項目1に記載の方法。
(項目20)
前記細胞集団が、約1×106〜約2×106のT細胞を含む、項目1に記載の方法。
(項目21)
前記集団の前記T細胞またはCD34+造血始原細胞からiPS細胞を産生させる工程が、1つ以上のリプログラミング因子を前記T細胞またはCD34+造血始原細胞に導入する工程を含む、項目1に記載の方法。
(項目22)
前記リプログラミング因子が、Soxファミリータンパク質およびOctファミリータンパク質を含むリプログラミングタンパク質である、項目21に記載の方法。
(項目23)
1つ以上の前記リプログラミングタンパク質が、タンパク質形質導入ドメインに作用的に連結されている、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記リプログラミング因子が、1つ以上の発現カセットによってコードされ、Soxファミリータンパク質およびOctファミリータンパク質を含む、項目21に記載の方法。
(項目25)
前記1つ以上の発現カセットが、少なくとも1つのポリシストロニック転写単位を含む、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記ポリシストロニック転写単位が、少なくとも2つのリプログラミング遺伝子を含む、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記ポリシストロニック転写単位が、Sox遺伝子およびOct遺伝子を含む、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記ポリシストロニック転写単位が、cMyc遺伝子およびKlf4遺伝子を含む、項目26に記載の方法。
(項目29)
前記ポリシストロニック転写単位が、Nanog遺伝子およびLin28遺伝子を含む、項目26に記載の方法。
(項目30)
前記ポリシストロニック転写単位が、リプログラミング遺伝子および選択またはスクリーニングマーカーを含む、項目25に記載の方法。
(項目31)
前記ポリシストロニック転写単位が、内部リボソーム侵入部位(IRES)、または少なくとも1つのプロテアーゼ切断部位および/またはポリシストロニック転写のための自己切断ペプチドをコードする配列を含む、項目25に記載の方法。
(項目32)
前記1つ以上の発現カセットが、ウイルスベクター、エピソームベクター、またはトランスポゾンからなる群から選択されるリプログラミングベクターに含められている、項目24に記載の方法。
(項目33)
前記リプログラミングベクターが、レトロウイルスベクターである、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記Soxファミリータンパク質がSox2である、項目22または24のいずれかに記載の方法。
(項目35)
前記Octファミリータンパク質がOct4である、項目22または24のいずれかに記載の方法。
(項目36)
前記リプログラミングタンパク質が、Nanog、Lin28、c−Myc、Klf4、またはEsrrbをさらに含む、項目22または24のいずれかに記載の方法。
(項目37)
前記リプログラミングタンパク質が、Nanogをさらに含む、項目36に記載の方法。(項目38)
前記リプログラミングタンパク質が、Klf4およびc−Mycをさらに含む、項目36に記載の方法。
(項目39)
前記集団の前記T細胞またはCD34+造血始原細胞からiPS細胞を産生させる工程が、胚性幹細胞の1つ以上の特性について前記iPS細胞を選択する工程をさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目40)
前記特性が、接着性、未分化形態、胚性幹細胞特異的マーカー、または多能性である、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記特性が接着性である、項目40に記載の方法。
(項目42)
前記特性が未分化形態である、項目40に記載の方法。
(項目43)
前記方法が、前記iPS細胞を分化細胞に分化させる工程を含む、項目1に記載の方法。(項目44)
前記分化細胞が、心筋細胞、造血細胞、ニューロン、線維芽細胞、または表皮細胞を含む、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記iPS細胞集団が、組み込まれた外来性ウイルス要素を本質的に含まない、項目1に記載の方法。
(項目46)
項目1〜45のいずれか1項に記載の方法に従って産生させた人工多能性幹細胞。
(項目47)
胚性幹細胞と比較して、不完全なセットのT細胞受容体遺伝子のV、D、およびJセグメントを含むゲノムを含む人工多能性幹細胞。
(項目48)
前記人工多能性幹細胞がヒト細胞である、項目47に記載の人工多能性幹細胞。
(項目49)
前記人工多能性幹細胞が、組み込まれた外来性ウイルス要素を含まない、または組み込まれた外来性ウイルス要素を本質的に含まない、項目47に記載の人工多能性幹細胞。

図面の簡単な説明

0033

図1は、活性化T細胞で始まり、hESC様形態のiPSCコロニーをもたらすT細胞リプログラミングプロセスの概要を示す図である。T細胞およびiPSCコロニーの画像はそれぞれ、10倍および20倍の対物レンズを用いてOlympusIX71顕微鏡撮像した。
図2A〜図2Cは、ヒトT細胞由来人工多能性幹細胞の誘導および特徴付けを示すグラフである。(図2A)投入細胞供給源CD3表面発現フローサイトメトリー分析。(i)代表的なドナーにおけるPBMC集団からの第−3日目の非活性化PBMCおよび第0日目の活性化T細胞におけるCD3の表面発現。(ii)CD3+細胞の優先的な形質導入を実証するための、代表的なドナーでの形質導入から72時間後のゲートをかけた形質導入(GFP+)細胞集団におけるCD3発現。(iii)平均10のドナーVacutainer由来サンプルにおける上記の測定(i−ii)のヒストグラム表示。(図2B)代表的な白血球アフェレーシス(「TiPS L−2」)およびVacutainer(著作権)(「TiPS V−1」)によるTiPS系におけるhESC多能性マーカーOCT4、Tra−1−81、SSEA−3、およびSSEA−4のフローサイトメトリー分析。(図2C)T細胞受容体(TCR)β遺伝子座のV〜J領域内の保存された領域を標的とするマルチプレックスPCRプライマーを用いたTCRβ鎖再構成(rearrangement)の分析。多クローン性開始T細胞集団が、エレクトロフェログラムにおける有効な断片サイズの範囲内のアンプリコンピークベル型曲線によって表されている。線維芽細胞(非T細胞)iPS細胞(「Fib−iPS」)が、TCRβ遺伝子座における生殖系列の再構成がなく、陰性コントロールとして役立つ。クローンに由来するTiPS系(2つの白血球アフェレーシスによる系「TiPS L−1」および「TiPS L−2」とVacutainer(著作権)による系「TiPS V−2」からの代表的なデータ)は、規定サイズの1つの明確なピークを示している。DNA断片分析を、ABI3730 DNAアナライザーで行った。
図2A〜図2Cは、ヒトT細胞由来人工多能性幹細胞の誘導および特徴付けを示すグラフである。(図2A)投入細胞供給源CD3表面発現のフローサイトメトリー分析。(i)代表的なドナーにおけるPBMC集団からの第−3日目の非活性化PBMCおよび第0日目の活性化T細胞におけるCD3の表面発現。(ii)CD3+細胞の優先的な形質導入を実証するための、代表的なドナーでの形質導入から72時間後のゲートをかけた形質導入(GFP+)細胞集団におけるCD3発現。(iii)平均10のドナーVacutainer由来サンプルにおける上記の測定(i−ii)のヒストグラム表示。(図2B)代表的な白血球アフェレーシス(「TiPS L−2」)およびVacutainer(著作権)(「TiPS V−1」)によるTiPS系におけるhESC多能性マーカーOCT4、Tra−1−81、SSEA−3、およびSSEA−4のフローサイトメトリー分析。(図2C)T細胞受容体(TCR)β遺伝子座のV〜J領域内の保存された領域を標的とするマルチプレックスPCRプライマーを用いたTCRβ鎖再構成(rearrangement)の分析。多クローン性開始T細胞集団が、エレクトロフェログラムにおける有効な断片サイズの範囲内のアンプリコンのピークのベル型曲線によって表されている。線維芽細胞(非T細胞)iPS細胞(「Fib−iPS」)が、TCRβ遺伝子座における生殖系列の再構成がなく、陰性コントロールとして役立つ。クローンに由来するTiPS系(2つの白血球アフェレーシスによる系「TiPS L−1」および「TiPS L−2」とVacutainer(著作権)による系「TiPS V−2」からの代表的なデータ)は、規定サイズの1つの明確なピークを示している。DNA断片分析を、ABI 3730 DNAアナライザーで行った。
図2A〜図2Cは、ヒトT細胞由来人工多能性幹細胞の誘導および特徴付けを示すグラフである。(図2A)投入細胞供給源CD3表面発現のフローサイトメトリー分析。(i)代表的なドナーにおけるPBMC集団からの第−3日目の非活性化PBMCおよび第0日目の活性化T細胞におけるCD3の表面発現。(ii)CD3+細胞の優先的な形質導入を実証するための、代表的なドナーでの形質導入から72時間後のゲートをかけた形質導入(GFP+)細胞集団におけるCD3発現。(iii)平均10のドナーVacutainer由来サンプルにおける上記の測定(i−ii)のヒストグラム表示。(図2B)代表的な白血球アフェレーシス(「TiPS L−2」)およびVacutainer(著作権)(「TiPS V−1」)によるTiPS系におけるhESC多能性マーカーOCT4、Tra−1−81、SSEA−3、およびSSEA−4のフローサイトメトリー分析。(図2C)T細胞受容体(TCR)β遺伝子座のV〜J領域内の保存された領域を標的とするマルチプレックスPCRプライマーを用いたTCRβ鎖再構成(rearrangement)の分析。多クローン性開始T細胞集団が、エレクトロフェログラムにおける有効な断片サイズの範囲内のアンプリコンのピークのベル型曲線によって表されている。線維芽細胞(非T細胞)iPS細胞(「Fib−iPS」)が、TCRβ遺伝子座における生殖系列の再構成がなく、陰性コントロールとして役立つ。クローンに由来するTiPS系(2つの白血球アフェレーシスによる系「TiPS L−1」および「TiPS L−2」とVacutainer(著作権)による系「TiPS V−2」からの代表的なデータ)は、規定サイズの1つの明確なピークを示している。DNA断片分析を、ABI 3730 DNAアナライザーで行った。
図3A〜図3Dは、ヒトT細胞由来人工多能性幹細胞の特徴付けを示す画像およびグラフである。(図3A)hES細胞マーカー遺伝子DNMT38、LEFTB、NODAL、REX1、ESG1、TERT、GDF3、およびUTF1の発現についての代表的な白血球アフェレーシス(「TiPS L−1およびL−2」)およびVacutainer(著作権)(「TiPS V−2」)によるTiPS細胞系のRTPCR分析。GAPDHを、各サンプルの陽性負荷コントロールとして使用した。(図3B)ゲノムDNAのPCR分析により、導入遺伝子の組み込みを確認する。目的のリプログラミング遺伝子(「RG」)用の順方向プライマーおよびIRES用の逆方向プライマーを利用した。OCT4順方向および逆方向プライマーは、ベクターマップ示されているようにPCR反応の陽性コントロールとして使用した。(図3C)GAPDHを各サンプルの陽性コントロールとして使用した、TiPS細胞系のRT−PCR分析により、外来性導入遺伝子のサイレンシングが示されている。hESC系H1および線維芽細胞由来iPSC系(Fib−iPS)は、陽性細胞コントロールとして役立ち、活性化ドナーT細胞は、陰性細胞コントロールとして役立つ。(図3D)TiPSクローンが、フローサイトメトリー分析によって示されているようにヒト胚性幹細胞特異的多能性マーカーを発現した。
図3A〜図3Dは、ヒトT細胞由来人工多能性幹細胞の特徴付けを示す画像およびグラフである。(図3A)hES細胞マーカー遺伝子DNMT38、LEFTB、NODAL、REX1、ESG1、TERT、GDF3、およびUTF1の発現についての代表的な白血球アフェレーシス(「TiPS L−1およびL−2」)およびVacutainer(著作権)(「TiPS V−2」)によるTiPS細胞系のRT−PCR分析。GAPDHを、各サンプルの陽性負荷コントロールとして使用した。(図3B)ゲノムDNAのPCR分析により、導入遺伝子の組み込みを確認する。目的のリプログラミング遺伝子(「RG」)用の順方向プライマーおよびIRES用の逆方向プライマーを利用した。OCT4順方向および逆方向プライマーは、ベクターマップ示されているようにPCR反応の陽性コントロールとして使用した。(図3C)GAPDHを各サンプルの陽性コントロールとして使用した、TiPS細胞系のRT−PCR分析により、外来性導入遺伝子のサイレンシングが示されている。hESC系H1および線維芽細胞由来iPSC系(Fib−iPS)は、陽性細胞コントロールとして役立ち、活性化ドナーT細胞は、陰性細胞コントロールとして役立つ。(図3D)TiPSクローンが、フローサイトメトリー分析によって示されているようにヒト胚性幹細胞特異的多能性マーカーを発現した。
図4A〜図4Eは、TiPS細胞系のin vivoおよびin vitroでの分化能を示す画像およびグラフである。(図4A)奇形腫形成は、in vivoでの分化能を示している。SCID/ベージュマウスに注入されたTiPS細胞は、5〜12週間で奇形腫を形成した。ヘマトキシリンおよびエオシン染色は、胃腸または呼吸組織を表す杯細胞をもつ単層上皮内胚葉)、軟骨(中胚葉)、および網膜色素上皮外胚葉)を含む3つの一次胚葉からの誘導に一致する組織を示している。TiPS L−2細胞系の代表的な画像は、40倍の対物レンズを用いてOlympus IX71顕微鏡で撮像した。(図4B)in vitroでのニューロンへの分化。TiPS L−2細胞を凝集体としてニューロン分化に誘導し、次いでAlexa Fluor594二次抗体をもつニューロンマーカーβIIIチューブリンを染色した;細胞核は、Hoechst染色で対比染色した。画像は、20倍の対物レンズを用いて撮像した。コントラストを調整して、画像をImage Jソフトウエア統合した。(図4C)細胞凝集法によるTiPS細胞からの心臓誘導。細胞凝集体は、第14〜15日目に、拍動する心臓トロポニンT(cTNT)陽性心筋細胞を含む。代表的なサンプルのフローデータが示されている。画像は、10倍の対物レンズを用いて撮像した。(図4D)in vitroでの造血始原細胞への分化。2つのTiPS系での12日間の無血清胚様体(EB)分化プロトコルによって作製された造血始原細胞(HPC)を、hESC系(H1)および線維芽細胞由来iPSC系(Fib−iPS)と比較した。EBを単一細胞に分離して、CD34、CD45、CD43、CD31、CD41、およびCD235aに対する蛍光色素結合モノクローナル抗体で染色することによってフローサイトメトリーでHPCを定量した。(図4E)造血性クローン原性(CFU)アッセイを、EB分化して個別化した細胞をサイトカイン(SCF、G−CSF、GM−CSF、IL−3、IL−6、およびEPO)を含む無血清MethoCult培地に添加して行った。コロニーは、赤血球(CFU−E/BFU−E)、マクロファージ(CFU−M、データは示していない)、顆粒球(CFU−G、データは示していない)、顆粒球−マクロファージ(CFU−GM)、および顆粒球−赤血球−マクロファージ−巨核球(CFU−GEMM)として形態学的基準にしたがって14日間のインキュベーションの後にスコアを付けた。全CFUのカウント数も示す(CFU)。画像は、2倍の対物レンズを用いてOlympusCKX41顕微鏡で撮像した。
図4A〜図4Eは、TiPS細胞系のin vivoおよびin vitroでの分化能を示す画像およびグラフである。(図4A)奇形腫形成は、in vivoでの分化能を示している。SCID/ベージュマウスに注入されたTiPS細胞は、5〜12週間で奇形腫を形成した。ヘマトキシリンおよびエオシン染色は、胃腸または呼吸組織を表す杯細胞をもつ単層上皮(内胚葉)、軟骨(中胚葉)、および網膜色素上皮(外胚葉)を含む3つの一次胚葉からの誘導に一致する組織を示している。TiPS L−2細胞系の代表的な画像は、40倍の対物レンズを用いてOlympus IX71顕微鏡で撮像した。(図4B)in vitroでのニューロンへの分化。TiPS L−2細胞を凝集体としてニューロン分化に誘導し、次いでAlexa Fluor594二次抗体をもつニューロンマーカーβIIIチューブリンを染色した;細胞核は、Hoechst染色で対比染色した。画像は、20倍の対物レンズを用いて撮像した。コントラストを調整して、画像をImage Jソフトウエアで統合した。(図4C)細胞凝集法によるTiPS細胞からの心臓誘導。細胞凝集体は、第14〜15日目に、拍動する心臓トロポニンT(cTNT)陽性心筋細胞を含む。代表的なサンプルのフローデータが示されている。画像は、10倍の対物レンズを用いて撮像した。(図4D)in vitroでの造血始原細胞への分化。2つのTiPS系での12日間の無血清胚様体(EB)分化プロトコルによって作製された造血始原細胞(HPC)を、hESC系(H1)および線維芽細胞由来iPSC系(Fib−iPS)と比較した。EBを単一細胞に分離して、CD34、CD45、CD43、CD31、CD41、およびCD235aに対する蛍光色素結合モノクローナル抗体で染色することによってフローサイトメトリーでHPCを定量した。(図4E)造血性クローン原性(CFU)アッセイを、EB分化して個別化した細胞をサイトカイン(SCF、G−CSF、GM−CSF、IL−3、IL−6、およびEPO)を含む無血清MethoCult培地に添加して行った。コロニーは、赤血球(CFU−E/BFU−E)、マクロファージ(CFU−M、データは示していない)、顆粒球(CFU−G、データは示していない)、顆粒球−マクロファージ(CFU−GM)、および顆粒球−赤血球−マクロファージ−巨核球(CFU−GEMM)として形態学的基準にしたがって14日間のインキュベーションの後にスコアを付けた。全CFUのカウント数も示す(CFU)。画像は、2倍の対物レンズを用いてOlympus CKX41顕微鏡で撮像した。
図4A〜図4Eは、TiPS細胞系のin vivoおよびin vitroでの分化能を示す画像およびグラフである。(図4A)奇形腫形成は、in vivoでの分化能を示している。SCID/ベージュマウスに注入されたTiPS細胞は、5〜12週間で奇形腫を形成した。ヘマトキシリンおよびエオシン染色は、胃腸または呼吸組織を表す杯細胞をもつ単層上皮(内胚葉)、軟骨(中胚葉)、および網膜色素上皮(外胚葉)を含む3つの一次胚葉からの誘導に一致する組織を示している。TiPS L−2細胞系の代表的な画像は、40倍の対物レンズを用いてOlympus IX71顕微鏡で撮像した。(図4B)in vitroでのニューロンへの分化。TiPS L−2細胞を凝集体としてニューロン分化に誘導し、次いでAlexa Fluor594二次抗体をもつニューロンマーカーβIIIチューブリンを染色した;細胞核は、Hoechst染色で対比染色した。画像は、20倍の対物レンズを用いて撮像した。コントラストを調整して、画像をImage Jソフトウエアで統合した。(図4C)細胞凝集法によるTiPS細胞からの心臓誘導。細胞凝集体は、第14〜15日目に、拍動する心臓トロポニンT(cTNT)陽性心筋細胞を含む。代表的なサンプルのフローデータが示されている。画像は、10倍の対物レンズを用いて撮像した。(図4D)in vitroでの造血始原細胞への分化。2つのTiPS系での12日間の無血清胚様体(EB)分化プロトコルによって作製された造血始原細胞(HPC)を、hESC系(H1)および線維芽細胞由来iPSC系(Fib−iPS)と比較した。EBを単一細胞に分離して、CD34、CD45、CD43、CD31、CD41、およびCD235aに対する蛍光色素結合モノクローナル抗体で染色することによってフローサイトメトリーでHPCを定量した。(図4E)造血性クローン原性(CFU)アッセイを、EB分化して個別化した細胞をサイトカイン(SCF、G−CSF、GM−CSF、IL−3、IL−6、およびEPO)を含む無血清MethoCult培地に添加して行った。コロニーは、赤血球(CFU−E/BFU−E)、マクロファージ(CFU−M、データは示していない)、顆粒球(CFU−G、データは示していない)、顆粒球−マクロファージ(CFU−GM)、および顆粒球−赤血球−マクロファージ−巨核球(CFU−GEMM)として形態学的基準にしたがって14日間のインキュベーションの後にスコアを付けた。全CFUのカウント数も示す(CFU)。画像は、2倍の対物レンズを用いてOlympus CKX41顕微鏡で撮像した。
図4A〜図4Eは、TiPS細胞系のin vivoおよびin vitroでの分化能を示す画像およびグラフである。(図4A)奇形腫形成は、in vivoでの分化能を示している。SCID/ベージュマウスに注入されたTiPS細胞は、5〜12週間で奇形腫を形成した。ヘマトキシリンおよびエオシン染色は、胃腸または呼吸組織を表す杯細胞をもつ単層上皮(内胚葉)、軟骨(中胚葉)、および網膜色素上皮(外胚葉)を含む3つの一次胚葉からの誘導に一致する組織を示している。TiPS L−2細胞系の代表的な画像は、40倍の対物レンズを用いてOlympus IX71顕微鏡で撮像した。(図4B)in vitroでのニューロンへの分化。TiPS L−2細胞を凝集体としてニューロン分化に誘導し、次いでAlexa Fluor594二次抗体をもつニューロンマーカーβIIIチューブリンを染色した;細胞核は、Hoechst染色で対比染色した。画像は、20倍の対物レンズを用いて撮像した。コントラストを調整して、画像をImage Jソフトウエアで統合した。(図4C)細胞凝集法によるTiPS細胞からの心臓誘導。細胞凝集体は、第14〜15日目に、拍動する心臓トロポニンT(cTNT)陽性心筋細胞を含む。代表的なサンプルのフローデータが示されている。画像は、10倍の対物レンズを用いて撮像した。(図4D)in vitroでの造血始原細胞への分化。2つのTiPS系での12日間の無血清胚様体(EB)分化プロトコルによって作製された造血始原細胞(HPC)を、hESC系(H1)および線維芽細胞由来iPSC系(Fib−iPS)と比較した。EBを単一細胞に分離して、CD34、CD45、CD43、CD31、CD41、およびCD235aに対する蛍光色素結合モノクローナル抗体で染色することによってフローサイトメトリーでHPCを定量した。(図4E)造血性クローン原性(CFU)アッセイを、EB分化して個別化した細胞をサイトカイン(SCF、G−CSF、GM−CSF、IL−3、IL−6、およびEPO)を含む無血清MethoCult培地に添加して行った。コロニーは、赤血球(CFU−E/BFU−E)、マクロファージ(CFU−M、データは示していない)、顆粒球(CFU−G、データは示していない)、顆粒球−マクロファージ(CFU−GM)、および顆粒球−赤血球−マクロファージ−巨核球(CFU−GEMM)として形態学的基準にしたがって14日間のインキュベーションの後にスコアを付けた。全CFUのカウント数も示す(CFU)。画像は、2倍の対物レンズを用いてOlympus CKX41顕微鏡で撮像した。
図5は、iPSCクローンのトラッキングを示すグラフである。ゲノムDNAを奇形腫サンプルから単離して、TCRβ鎖再構成についてそれらの親細胞系と比較した。細胞系TiPS V−1の代表的なデータが示されている。誘導奇形腫は、親細胞系のクローン性再構成を有する。TCRβ遺伝子座のV〜J領域内の保存された領域を標的とするマルチプレックスプライマーを用いてPCR分析を行った。ABI 3730 DNAアナライザーでDNA断片分析を行った。バックグラウンド≦1000RFU。
図6A〜図6Bは、96−セル形式でのT細胞のリプログラミングを示す画像である。図6A。ドナーAのT細胞に、バイシストロニックベクターSO(Sox2およびOct4)およびCK(c−MycおよびKlf4)を感染させて、MEFにプレーティングする。iPS細胞コロニーを検出するために生細胞の抗Tra1−60標識化を行った。図6B。ドナーAのT細胞にバイシストロニックベクターSO(Sox2およびOct4)およびNL(NanogおよびLin28)を感染させ、MEFにプレーティングする。iPS細胞コロニーを検出するために生細胞の抗Tra1−60標識化を行った。投入細胞数を、出発材料におけるT細胞の数を表す「投入数」として示した。
図6A〜図6Bは、96−セル形式でのT細胞のリプログラミングを示す画像である。図6A。ドナーAのT細胞に、バイシストロニックベクターSO(Sox2およびOct4)およびCK(c−MycおよびKlf4)を感染させて、MEFにプレーティングする。iPS細胞コロニーを検出するために生細胞の抗Tra1−60標識化を行った。図6B。ドナーAのT細胞にバイシストロニックベクターSO(Sox2およびOct4)およびNL(NanogおよびLin28)を感染させ、MEFにプレーティングする。iPS細胞コロニーを検出するために生細胞の抗Tra1−60標識化を行った。投入細胞数を、出発材料におけるT細胞の数を表す「投入数」として示した。
図7は、DNAフィンガープリント法の結果を示す表である。短縦列反復(short tandem repeat)(STR)分析によると、TiPS細胞系は、分析された8つのSTR遺伝子座に渡って検出された15すべての対立遺伝子多型について、活性化された親T細胞と同一であることが示される。2つのTiPS系(TiPS L−1およびTiPS L−2)の代表的なデータが示されている。
図8は、アルカリホスファターゼAP)染色を示す画像である。TiPS系のTiPS L−1およびTiPS L−2はAP陽性である。画像は、HP Scanjet G3110コンピュータスキャナーで撮像した。
図9は、TiPS細胞系が正常な核型を示していることを示す図である。TiPS細胞系「TiPS L−1」および「TiPS L−2」は、MEFで6回継代生育させ、系「TiPS V−1」および「TiPS V−2」はそれぞれ、合計18回のうち8回および合計34回のうち30回マトリゲルで継代生育させた。細胞をGバンド分析したが、クローン異常は検出されなかった。
図10は、リプログラミング実験に使用されるMMLVレトロウイルス構築物のべクターマップを示す図である。「RG」は、リプログラミング遺伝子を指している。
図11A図11Cは、リプログラミングが改善されたリプログラミング実験に使用されるバイシストロニックMMLVレトロウイルス構築物のベクターマップを示す図である。図11Aは、MMLV−Oct4−IRES−Sox2(「Oct4−Sox2」と短縮される)のベクターマップである。図11Bは、MMLV−cMyc−IRES−Klf4(「cMyc−Klf4」と短縮される)のベクターマップである。図11Cは、MMLV−Nanog−IRES−Lin28(「Nanog−Lin28」と短縮される)のベクターマップである。
図11A図11Cは、リプログラミングが改善されたリプログラミング実験に使用されるバイシストロニックMMLVレトロウイルス構築物のベクターマップを示す図である。図11Aは、MMLV−Oct4−IRES−Sox2(「Oct4−Sox2」と短縮される)のベクターマップである。図11Bは、MMLV−cMyc−IRES−Klf4(「cMyc−Klf4」と短縮される)のベクターマップである。図11Cは、MMLV−Nanog−IRES−Lin28(「Nanog−Lin28」と短縮される)のベクターマップである。
図11A図11Cは、リプログラミングが改善されたリプログラミング実験に使用されるバイシストロニックMMLVレトロウイルス構築物のベクターマップを示す図である。図11Aは、MMLV−Oct4−IRES−Sox2(「Oct4−Sox2」と短縮される)のベクターマップである。図11Bは、MMLV−cMyc−IRES−Klf4(「cMyc−Klf4」と短縮される)のベクターマップである。図11Cは、MMLV−Nanog−IRES−Lin28(「Nanog−Lin28」と短縮される)のベクターマップである。

0034

I.はじめに
規定の因子、例えば、SOX2、OCT4、NANOG、およびLIN28、またはSOX2、OCT4、c−Myc、およびKLF4(Yuら、2007;Takahashiら、2007b)などのウイルスによる輸送によるin vitroでの体細胞の未分化多能性状態へのリプログラミングは、複数の細胞型を用いた患者固有のヒトiPSC細胞の作製の道を開いた(Lohら、2009;Aasenら、2008)。この前提は、遺伝子の一過性の発現によるiPSCの誘導によって、または適切な転写因子のタンパク質による形質導入によってさらに前進した(Yuら、2009;Zhouら、2009)。今日まで、ヒトにおけるiPSC研究の大部分は、細胞供給源として線維芽細胞に焦点を当ててきた。線維芽細胞は、市販されていることと遺伝子送達の容易さから出発材料として特定の利点を提供するが、侵襲性の皮膚生検が必要であり、かつ一次組織から安定した系を樹立するのが困難であるため、iPSC系の大量の臨床での誘導には最適以下である。非動員末梢血は、患者サンプルを入手しやすいため恐らくリプログラミングのための理想的な細胞供給源である(MaheraliおよびHochedlinger、2008)。加えて、生体ドナーおよび死亡したドナーからの多数の凍結血液サンプルが、世界中の生物保管施設(biorepository)に保存されている(Kleebergerら、1999)。

0035

本発明は、現在のリプログラミング技術のいくつかの大きな問題を、T細胞および/または造血前駆細胞から人工多能性幹細胞を作製することによって解消する。本発明によって見出されたように、より豊富で扱いやすい血液細胞供給源、Tリンパ球からのiPSCの誘導は、1mlの全血に等しい量から得ることができる。これらのT細胞由来iPSC(「TiPS」)は、hESCおよび線維芽細胞由来iPSC系と必須の特性を共有している。加えて、T細胞由来iPSCは、その特性であるT細胞レセプター(TCR)遺伝子再構成、すなわち、例えば、遺伝子トラッキングマーカーとして、またはヒトT細胞の発達を研究する再分化実験で利用できる特性を維持している。

0036

本発明の前に、本発明者らは、T細胞または造血始原細胞のリプログラミングが成功する可能性について、いくつかの理由から半信半疑であった。第1に、血液サンプル中のT細胞および/または造血前駆細胞が、リプログラミングにとって十分な量で存在するか否かが不確かであった。第2に、リプログラミングにおけるT細胞受容体遺伝子のV(D)Jの組換えによる起こり得る遺伝子消失の効果が研究されていなかった。第3に、これまでリプログラミングされた細胞型の殆どが接着細胞型である。T細胞は、非接着性であり、懸濁液で培養される。リプログラミングされるT細胞が、接着iPS細胞に適した接着培養条件へ移行できるかが本発明まで明らかでなかった。したがって、本発明の方法は、T細胞または造血前駆細胞からのiPS細胞の作製を初めて可能にするものである。T細胞は、様々な供給源、例えば、少量の血液サンプルから容易に得ることができる。同様に、造血前駆細胞、例えば、(CD34+/CD43+/CD45+/CD38−)または(CD34−、CD133+/CD38−)造血前駆細胞などは、末梢血液サンプルから富化することができる。

0037

本発明の特定の利点は、リプログラミングされた子孫細胞に維持され得るT細胞受容体の再構成され減少したV、D、J遺伝子セグメントにある。これは、T細胞由来iPS細胞の様々なクローン集団の固有の特性または「バーコード」としての役割を果たし、また、それらのiPS細胞をV(D)J組換えを受けていない多能性幹細胞と区別するのに役立つ。加えて、T細胞とiPS細胞との間の接着性の差異は、自動分別を有利にする。同様に、造血前駆細胞とiPS細胞との間の接着性の差異は、分別に利用することができる。リプログラミングされたT細胞または造血始原細胞を接着に適した培養条件に移す、例えば、照射(irradiated)マウス胎仔性線維芽細胞(MEF)をT細胞用の培養容器の底部に配置すると、T細胞または造血始原細胞に由来するiPS細胞は、底部に付着するが、T細胞および/または造血前駆細胞は、浮遊したままである。本発明のさらなる実施形態および利点を以下に記載する。

0038

II.定義
「リプログラミング」は、リプログラミングを行わない同じ条件下よりも、培養下またはin vivoで少なくとも1つの新たな細胞型の子孫を形成する、測定可能に増大した能力を細胞に付与するプロセスである。より具体的には、リプログラミングは、体細胞に多能性潜在能力を付与するプロセスである。これは、リプログラミングの前には新たな細胞型の表現型特性を有する子孫が本質的に形成できなくても、十分な増殖後に、測定可能な割合の子孫が新たな細胞型の表現型特性を有すること、別な方法では、新たな細胞型の特性を有する子孫の割合が、リプログラミングの前よりも測定可能な程度に多いことを意味する。特定の条件下で、新たな細胞型の特性をもつ子孫の割合は、少なくとも約1%、5%、25%、またはそれより多くであり得、この順序優先度増している。

0039

T細胞の「活性化因子」またはT細胞を活性化する条件は、T細胞を活性化する刺激物を指し、かつ抗原提示細胞または他の表面に提示され得る抗原と;特異性にかかわらず多くのT細胞受容体(TCR)複合体に結合し、かつレクチン、例えば、コンカナバリンA(Con−A)およびフィトヘマグルチニンPHA)、ならびにTCRまたはCD3タンパク質上の不変フレームワークエピトープに特異的に結合する抗体などの作用物質を含む多クローン性活性化因子と;かなりの数のT細胞を刺激し、かつ、例えば、ブドウ球菌エンテロトキシンなどのエンテロトキシンを含む超抗原と、を含む。

0040

用語「Tリンパ球」および「T細胞」は、同義的に使用され、1つ以上のMHC分子または1つ以上の非古典的MHC分子と共に抗原提示細胞またはマトリックスの表面に提示されたときに抗原を認識できるT細胞抗原受容体(TCR)を発現する細胞を指す。

0041

「CD4+T細胞」は、表面にCD4を発現するT細胞のサブセットを指し、細胞媒介免疫応答に関連している。CD4+T細胞は、刺激を受けた後の分泌プロフィールによって特徴付けられ、このような分泌プロフィールは、IFN−γ、TNF−α、IL−2、IL−4、およびIL−10などのサイトカインの分泌を含み得る。「CD4」は、当初はTリンパ球における分化抗原として定義された55−kDの糖タンパク質であるが、単球/マクロファージを含む他の細胞にも見られる。CD4抗原は、免疫グロブリンスーパー遺伝子ファミリーメンバーであり、MHC主要組織適合複合体クラスII拘束免疫応答における結合認識要素に関係している。Tリンパ球において、CD4抗原は、ヘルパー/インデューサーのサブセットを規定する。

0042

「CD8+T細胞」は、その表面にCD8を発現するT細胞のサブセットを指し、MHCクラスI拘束であり、細胞傷害性T細胞として機能する。「CD8」分子は、胸腺細胞および細胞傷害性Tリンパ球およびサプレッサーTリンパ球に見られる分化抗原である。CD8抗原は、免疫グロブリンスーパー遺伝子ファミリーのメンバーであり、主要組織適合複合体クラスI拘束相互作用における結合認識要素である。

0043

「造血始原細胞」または「造血前駆細胞」は、造血系統に関係付けられるが、さらに造血分化できる細胞を指し、造血幹細胞、多能性造血幹細胞(血球芽細胞)、骨髄性始原細胞、巨核球始原細胞、赤血球始原細胞、およびリンパ系始原細胞を含む。造血幹細胞(HSC)は、骨髄性(単球およびマクロファージ、好中球好塩基球好酸球、赤血球、巨核球/血小板、樹状細胞)およびリンパ系の系統(T細胞、B細胞、NK細胞)を含むすべての血液細胞型を生じさせる多能性幹細胞である。造血始原細胞は、CD34を発現し得る。造血始原細胞は、CD133を共発現し得、CD38発現に対して陰性であり得る。特定の実施形態では、特定のヒト造血細胞は、CD34を発現できないが、これらの細胞は、本明細書に開示される方法によってiPS細胞に変換することができる。造血前駆細胞には、CD34+/CD45+造血前駆細胞およびCD34+/CD45+/CD43+造血前駆細胞が含まれる。CD34+/CD43+/CD45+造血前駆細胞は、骨髄性始原細胞のために高度に富化することができる。造血細胞の様々な系統、例えば、CD34+/CD43+/CD45+造血前駆細胞などは、本明細書に開示される方法によってiPS細胞に変換することができる。造血細胞はまた、CD34−/CD133+/CD38−(始原造血前駆細胞)、CD43(+)CD235a(+)CD41a(+/−)(赤血球−巨核球形成(erythro−megakaryopoietic))、lin(−)CD34(+)CD43(+)CD45(−)(多能性)、およびlin(−)CD34(+)CD43(+)CD45(+)(骨髄性スキュー(myeloid−skewed))細胞、CD133+/ALDH+(アルデヒドデヒドロゲナーゼ(aldehydehehydrogenase))を含む始原造血細胞の様々なサブセットも含む(例えば、Hessら、2004;Christら、2007)。これらの始原造血細胞型または造血前駆細胞はいずれも、本明細書に記載されるようにiPS細胞に変換できると推測されている。

0044

「ベクター」または「構築物」(時には、遺伝子送達または遺伝子輸送「ビヒクル」と呼ばれる)は、in vitroまたはin vivoのいずれかで宿主細胞送達されるポリヌクレオチドを含む高分子または分子の複合体を指す。ベクターは、直鎖状分子であってもよく、または環状分子であってもよい。

0045

プラスミド」、ベクターの一般型は、染色体DNAとは別個に複製可能な、染色体DNAとは別個の染色体外DNA分子である。特定の場合には、プラスミドは、環状および二本鎖である。

0046

発現構築物」または「発現カセット」は、転写を誘導することができる核酸分子を意味する。発現構築物には、少なくとも、プロモーター、またはプロモーターに機能的に等価な構造物が含まれる。追加の要素、例えば、エンハンサーおよび/または転写終結シグナルなども含まれ得る。

0047

用語「外来性」は、細胞または生物におけるタンパク質、遺伝子、核酸、またはポリヌクレオチドに関連して使用される場合は、人工または天然の手段によって細胞または生物内に導入されたタンパク質、遺伝子、核酸、またはポリヌクレオチドを指し、または細胞に関しては、人工または天然の手段によって、単離されてから他の細胞または生物に導入された細胞を指す。外来性核酸は、異なる生物または細胞に由来し得、または生物もしくは細胞内で自然に発生する核酸の1つ以上の追加のコピーであり得る。外来性細胞は、異なる生物から得ても良いし、または同じ生物から得ても良い。限定されない例として、外来性核酸は、天然の細胞の染色体位置とは異なる染色体位置にある、または天然で見られる核酸配列とは異なる核酸配列によって他の方法で配置されている。

0048

本明細書で使用される用語「〜に対応する」は、ポリヌクレオチド配列参照ポリヌクレオチド配列のすべてまたは一部と相同(すなわち、厳密に進化的に関連していないが、同一である)であること、またはポリペプチド配列が参照ポリペプチド配列と同一であることを意味する。反対に、本明細書で使用される用語「相補的」は、相補的な配列が、参照ポリヌクレオチド配列のすべてまたは一部と相同であることを意味する。例示として、ヌクレオチド配列TATAC」は、参照配列「TATAC」に対応し、参照配列「GTATA」に相補的である。

0049

特定のタンパク質を「コード」する「遺伝子」、「ポリヌクレオチド」、「コード領域」、「配列」、「セグメント」、「断片」、または「導入遺伝子」は、適切な調節配列の制御下に置かれると、in vitroまたはin vivoで転写され、必要に応じて、遺伝子産物、例えば、ポリペプチド翻訳もされる核酸分子である。コード領域は、cDNA型、ゲノムDNA型、またはRNA型のいずれかで存在することができる。DNA型で存在する場合は、核酸分子は、一本鎖(すなわち、センス鎖)または二本鎖であり得る。コード領域の境界は、5’(アミノ)末端の開始コドンおよび3’(カルボキシ)末端の翻訳停止コドンによって決定されている。遺伝子には、限定されるものではないが、原核または真核mRNA由来のcDNA、原核または真核DNA由来のゲノムDNA配列、および合成DNA配列を含み得る。転写停止配列は、通常は、遺伝子配列の3’に位置する。

0050

用語「細胞」は、当技術分野におけるその最も広い意味で本明細書で使用され、多細胞生物の組織の構造単位であり、外部から細胞を隔離する膜構造物によって取り囲まれ、自己複製する能力を有し、かつ遺伝情報およびこれを発現させるための機構を有する生体を指す。本明細書で使用される細胞は、天然に存在する細胞または人工的に改変された細胞(例えば、融合細胞遺伝子改変細胞など)とすることができる。

0051

本明細書で使用される用語「幹細胞」は、自己複製能力および多能性を有する細胞を指す。典型的には、幹細胞は、傷害を受けた組織を再生することができる。本明細書の幹細胞は、限定されるものではないが、胚性幹(ES)細胞または組織幹細胞(組織特異的幹細胞または体性幹細胞とも呼ばれる)とすることができる。上記の能力を有し得る人工的に作製された細胞(例えば、本明細書で使用される融合細胞、またはリプログラミングされた細胞など)は、幹細胞とすることができる。

0052

「胚性幹(ES)細胞」は、初期胚に由来する多能性幹細胞である。ES細胞は、1981年に初めて樹立され、1989年からノックアウトマウスの作製にも利用されている。1998年に、ヒトES細胞が樹立され、現在は、再生医療利用可能になっている。

0053

組織幹細胞は、ES細胞とは異なり、分化能が制限されている。組織幹細胞は、組織の特定の位置に存在し、未分化細胞内構造物を有する。したがって、組織幹細胞の多能性は、典型的には低い。組織幹細胞は、高めの核/細胞質比を有し、細胞内小器官を殆ど有していない。大抵の組織幹細胞は、低い多能性、長い細胞周期、および個体の寿命を超えた増殖能を有する。組織幹細胞は、細胞が由来する部位、例えば、皮膚系消化系、骨髄系、および神経系などに基づいて分類される。皮膚系の組織幹細胞には、表皮幹細胞および毛包幹細胞などが含まれる。消化系の組織幹細胞には、(共通)幹細胞および肝幹細胞などが含まれる。骨髄系の組織幹細胞には、造血幹細胞および間葉幹細胞などが含まれる。神経系の組織幹細胞には、神経幹細胞および網膜幹細胞などが含まれる。

0054

一般にiPS細胞またはiPSCと略される「人工多能性幹細胞」は、非多能性細胞、典型的には成体の体細胞または最終分化した細胞、例えば、線維芽細胞、造血細胞、筋細胞、ニューロン、または表皮細胞などから、リプログラミング因子と呼ばれる特定の因子の導入によって人工的に作製されるある種の多能性幹細胞を指す。

0055

「多能性」は、1つ以上の組織または器官、または特に3つの胚葉:内胚葉(内側胃内壁、胃腸管)、中胚葉(筋肉、骨、血液、泌尿器)、または外胚葉(表皮組織および神経系)のいずれかを構成するすべての細胞に分化する潜在能力を有する幹細胞を指す。本明細書で使用される「多能性幹細胞」は、3つの胚葉のいずれかに由来する細胞、例えば、全能性細胞または人工多能性細胞の直系の子孫に分化できる細胞を指す。

0056

核酸分子に関して「作動可能に連結された」は、2つ以上の核酸分子(例えば、転写される核酸分子、プロモーター、およびエンハンサー要素)が、核酸分子の転写が可能となるように連結されていることを意味する。ペプチドおよび/またはポリペプチド分子に関して「作動可能に連結された」は、2つ以上のペプチドおよび/またはポリペプチド分子が、融合ポリペプチドの各ペプチドおよび/またはポリペプチド成分の少なくとも1つの特性を有する1本のポリペプチド鎖、すなわち融合ポリペプチドが得られるように連結されていることを意味する。融合ポリペプチドは特にキメラ、すなわち異種分子からなるキメラポリペプチドである。

0057

相同性」は、2つのポリヌクレオチド間または2つのポリペプチド間の同一性パーセントを指す。ある配列と別の配列との間の対応は、当技術分野で公知の技術によって決定することができる。例えば、相同性は、配列情報整列させて入手が容易なコンピュータプログラムを用いて2つのポリペプチド分子間の配列情報の直接的な比較によって決定することができる。別法では、相同性は、相同領域間で安定な二重鎖を形成する条件下でのポリヌクレオチドのハイブリダイゼーション、続く一本鎖特異的ヌクレアーゼ(複数可)を用いた消化、および消化された断片のサイズの決定によって決定することができる。2つのDNA配列または2つのポリペプチド配列が互いに「実質的に相同」とは、ヌクレオチドまたはアミノ酸それぞれの少なくとも約80%、詳細には少なくとも約90%、最も詳細には少なくとも約95%が、上記の方法を用いて決定されるように、所定長の分子に亘ってマッチする場合である。

0058

III.幹細胞の一般的な背景
本発明の特定の実施形態では、リプログラミング因子を体細胞に導入することによって体細胞、特にT細胞をリプログラミングする方法が開示される。これらの細胞の子孫は、以下に記載する様々な態様で胚性幹細胞と同一であり得るが、外来性遺伝要素を本質的に含まない。胚性幹細胞の特性を理解することが、人工多能性幹細胞の選択に役立ち得る。幹細胞のリプログラミングの研究から公知のリプログラミング因子を、これらの新規な方法に使用することができる。胚性幹細胞の使用に対する倫理的ハードルのために、これらの人工多能性幹細胞を、治療および研究用途として胚性幹細胞の代わりに潜在的に使用できることをさらに意図する。

0059

A.幹細胞
幹細胞は、すべてではないにしても殆どの多細胞生物で見られる細胞である。幹細胞は、有糸細胞分裂によって自身を再生する能力、および様々な特殊化した細胞型への分化によって特徴付けられる。広義の2種類の哺乳動物幹細胞は、胚盤胞で見られる胚性幹細胞および成体の組織で見られる成体幹細胞である。発達中の胚では、幹細胞は、特殊化した胚組織のすべてに分化することができる。成体生物では、幹細胞および始原細胞は、体の修復系として機能して、特殊化した細胞を補充するだけではなく、血液、皮膚、または腸組織などの再生器官の正常な代謝回転を維持する。

0060

幹細胞は、細胞培養によって増殖させて、筋肉または神経などの様々な組織の細胞に一致した特性を持つ特殊化した細胞に変換することができるため、幹細胞の医療への使用が提案されている。特に、胚性細胞系、治療用クローニングによって作製された自己胚性幹細胞、および臍帯血または骨髄由来の高度に柔軟な成体幹細胞が、有望な候補としてもてはやされている。最近になって、成体細胞の人工多能性幹細胞へのリプログラミングは、胚性幹細胞に取って代わる大きな潜在力を有する。

0061

B.胚性幹細胞
胚性幹細胞系(ES細胞系)は、胚盤胞または初期桑実期胚内細胞塊(ICM)の胚盤葉上層組織由来の細胞の培養物である。胚盤胞は、ヒトでは約4〜5日齢の初期胚であり、50〜150の細胞からなっている。ES細胞は、多能性であり、発達中に3つの主要な胚葉:外胚葉、内胚葉、および中胚葉のすべての誘導体を発生させる。言い換えれば、ES細胞は、特定の細胞型にとって十分かつ必要な刺激が与えられると、成体の体の200を超える細胞型のそれぞれに発達することができる。ES細胞は、胚外膜または胎盤に寄与しない。

0062

これまでの研究の殆どすべては、マウス胚性幹細胞(mES)またはヒト胚性幹細胞(hES)を用いて行われてきた。両方の幹細胞は、必須の幹細胞の特性を有するが、これらは、未分化状態を維持するためには全く異なる環境を必要とする。マウスES細胞は、ゼラチン層の上で成長することができ、白血病抑制因子(LIF)の存在を必要とする。ヒトES細胞は、マウス胎仔性線維芽細胞(MEF)のフィーダー層の上で成長することができ、しばしば、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGFまたはFGF−2)の存在を必要とする。最適な培養条件または遺伝子操作(Chambersら、2003)を用いなくても、胚性幹細胞は、急速に分化する。

0063

ヒト胚性幹細胞はまた、いくつかの転写因子および細胞表面タンパク質の存在によっても定義することができる。転写因子Oct4、Nanog、およびSox2は、分化および多能性の維持をもたらす遺伝子の抑制を保証するコア調節ネットワークを形成する(Boyerら、2005)。hES細胞を同定するために最も一般的に使用されている細胞表面抗原には、糖脂質SSEA3およびSSEA4ならびにケラタン硫酸抗原Tra−1−60およびTra−1−81が含まれる。

0064

20年にも及ぶ研究がなされても、胚性幹細胞を用いる認可された処置またはヒト治験は存在しない。多能性細胞であるES細胞は、正しい分化に特定のシグナルを必要とし、体内直接注入されると、ES細胞は、様々な種類の細胞に分化して奇形腫を引き起こす。移植片拒絶を回避しつつES細胞を使用可能な細胞に分化させることは、胚性幹細胞の研究者がなお直面するほんの僅かなハードルに過ぎない。多くの国々は、現在、ES細胞の研究または新規なES細胞系の作製を一時的に禁止している。胚性幹細胞は、その無制限の増殖と多能性を併せ持つ能力のため、傷害または疾患後の再生医療または組織置換のための理論的に可能な供給源のままである。しかし、これらの問題を回避する1つの方法は、直接的なリプログラミングによって体細胞に多能性の状態を誘導することである。

0065

IV.リプログラミング因子
iPS細胞の作製には、誘導のために使用されるリプログラミング因子が極めて重要である。以下の因子またはそれらの組合せは、本発明に開示される方法に使用することができる。特定の態様では、SoxおよびOct(特にOct3/4)をコードする核酸が、リプログラミングベクターに導入される。例えば、1つ以上のリプログラミングベクターは、Sox2、Oct4、Nanog、および必要に応じてLin28をコードする発現カセット、またはSox2、Oct4、Klf4、および必要に応じてc−Mycをコードする発現カセット、またはSox2、Oct4、および必要に応じてEsrrbをコードする発現カセット、またはSox2、Oct4、Nanog、Lin28、Klf4、c−Myc、および必要に応じてSV40ラージT抗原をコードする発現カセットを含み得る。これらのリプログラミング因子をコードする核酸は、同じ発現カセット、異なる発現カセット、同じリプログラミングベクター、または異なるリプログラミングベクターの中に含められ得る。

0066

Oct4およびSox遺伝子ファミリーの特定のメンバー(Sox1、Sox2、Sox3、およびSox15)は、存在しないと誘導を不可能にする誘導プロセスに関与する極めて重要な転写調節因子として同定された。しかし、Klfファミリーの特定のメンバー(Klf1、Klf2、Klf4、およびKlf5)、Mycファミリー(c−Myc、L−Myc、およびN−Myc)、Nanog、およびLin28を含むさらなる遺伝子が、誘導効率を上げることが確認された。

0067

Oct4(Pou5f1)は、八量体(「Oct」)転写因子のファミリーの1つであり、多能性の維持において極めて重要な役割を果たす。割球および胚性幹細胞などのOct4+細胞におけるOct4の非存在は、自発的な栄養膜細胞分化をもたらし、したがって、Oct4の存在は、胚性幹細胞の多能性および分化能を生じさせる。Oct4の類縁体、Oct1、およびOct6を含む「Oct」ファミリーの様々な他の遺伝子は、誘導を引き起こすことができないため、誘導プロセスに対するOct−4の排他性を実証している。

0068

Soxファミリーの遺伝子は、多能性幹細胞だけで発現されるOct4とは対照的に複能性幹細胞および単能性幹細胞に関連しているが、Oct4と同様に多能性の維持に関連している。Sox2は、リプログラミングの誘導のために使用された初めの遺伝子であり、Soxファミリーの他の遺伝子は、誘導プロセスでも働くことが見出された。Sox1は、Sox2と同様の効率でiPS細胞を産生し、遺伝子Sox3、Sox15、およびSox18も、低い効率であるがiPS細胞を産生する。

0069

胚性幹細胞では、Nanogは、Oct4およびSox2と共に、多能性の促進に必要である。したがって、Thomsonらが、因子の1つとしてNanogを用いてiPS細胞を作製することが可能であることを報告していたが、Yamanakaらが、Nanogが誘導に必須ではないことを報告したときは驚きであった。

0070

Lin28は、分化および増殖に関連した胚性幹細胞および胚性癌細胞で発現されるmRNA結合タンパク質である。Thomsonらは、Lin28は不要ではあるが、iPS作製における因子であることを実証した。

0071

Klfファミリーの遺伝子のうちのKlf4は、Yamanakaらによって初めに同定され、JaenischらによってマウスiPS細胞の作製のための因子として確認され、YamanakaらによってヒトiPS細胞の作製のための因子であることが実証された。しかしながら、Thompsonらは、Klf4は、ヒトiPS細胞の作製に不要であり、実際、ヒトiPS細胞を作製できなかったことを報告した。Klf2およびKlf4は、iPS細胞を作製可能な因子であることが判明し、関連遺伝子Klf1およびKlf5も、低い効率であるが同様にiPS細胞を作製することが可能であった。

0072

Mycファミリーの遺伝子は、癌に関与するプロトオンコジーンである。YamanakaらおよびJaenischらは、c−MycがマウスiPS細胞の作製に関与する因子であることを実証し、Yamanakaらは、c−MycがヒトiPS細胞の作製に関与する因子であることを実証した。しかしながら、ThomsonらおよびYamanakaらは、c−Mycは、ヒトiPS細胞の作製に不要であることを報告した。iPS細胞の誘導における「Myc」ファミリーの遺伝子の使用は、臨床治療ではiPS細胞の結末に問題があり、c−Myc誘導iPS細胞が移植されたマウスの25%が致命的な奇形腫を発症した。N−MycおよびL−Mycは、同様の効率でc−mycの代わりに誘導することが確認された。SV40ラージ抗原を用いて、c−Mycが発現されたときに起こり得る細胞傷害性を軽減または防止することができる。

0073

本発明に使用されるリプログラミングタンパク質は、ほぼ同じリプログラミング機能をもつタンパク質ホモログによって置換することができる。これらのホモログをコードする核酸も、リプログラミングに使用することができる。保存的アミノ酸置換、すなわち、例えば、極性酸性アミノ酸としてアスパラギン酸グルタミン酸;極性塩基性アミノ酸としてリシンアルギニンヒスチジン非極性または疎水性アミノ酸としてロイシンイソロイシンメチオニンバリンアラニングリシンプロリン;極性または非荷電親水性アミノ酸としてセリントレオニンが好ましい。保存的アミノ酸置換には、側鎖に基づいた群化も含まれる。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンであり、脂肪族−ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸群は、セリンおよびトレオニンであり;アミドを含む側鎖を有するアミノ酸群は、アスパラギンおよびグルタミンであり;芳香族側鎖を有するアミノ酸群は、フェニルアラニンチロシン、およびトリプトファンであり;塩基性側鎖を有するアミノ酸群は、リシン、アルギニン、およびヒスチジンであり;硫黄を含む側鎖を有するアミノ酸群は、システインおよびメチオニンである。例えば、ロイシンのイソロイシンまたはバリンでの置換、アスパルテートグルタメートでの置換、トレオニンのセリンでの置換、またはアミノ酸の構造的に関連したアミノ酸での同様の置換が、得られるポリペプチドの特性に大きな影響を与えないと予想するのは合理的である。アミノ酸の変化が機能的なポリペプチドをもたらすか否かは、そのポリペプチドの特定の活性をアッセイすることによって容易に決定することができる。

0074

V.T細胞および/または造血前駆細胞のリプログラミング
当技術分野で一般に使用される皮膚線維芽細胞に加えて、代替の供給源からiPS細胞を提供するために、T細胞を含む細胞集団をリプログラミングする方法を提供する。特定の実施形態では、リプログラミングのためにかなりの数のT細胞を提供するためにT細胞を活性化して増殖させる。

0075

A.T細胞
用語「T細胞」は、当技術分野で定義されるTリンパ球を指し、胸腺細胞、未成熟Tリンパ球、成熟Tリンパ球、休止Tリンパ球、または活性化Tリンパ球を含むものとする。T細胞は、CD4+T細胞、CD8+T細胞、CD4+CD8+T細胞、またはCD4−CD8−細胞とすることができる。T細胞はまた、Tヘルパー細胞、例えば、Tヘルパー1(TH1)またはTヘルパー2(TH2)細胞、またはTH17細胞、および細胞傷害性T細胞、調節性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、ナイーブT細胞、記憶T細胞、またはγδT細胞とすることもできる(Wilsonら、2009;Wynn、2005;Ladiら、2006)。少なくとも1つのマーカー、例えば、CD4などによって互いに異なるT細胞を、本明細書ではT細胞の「サブセット」と呼ぶ。

0076

ヘルパーT細胞エフェクターT細胞またはTh細胞)は、適応免疫系の「媒介者」である。活性化されると、ヘルパーT細胞は、急速に分裂して、免疫応答を調節または補助するサイトカインと呼ばれる低分子タンパク質を分泌する。サイズ、受け取られるサイトカインシグナルによって、これらの細胞は、TH1、TH2、TH3、TH17、THF、または異なるサイトカインを分泌する他のサブセットの1つに分化する。CD4+細胞は、MHCクラスIIに関連する。

0077

細胞傷害性T細胞(TC細胞、またはCTL)は、ウイルス感染細胞および腫瘍細胞破壊し、移植片拒絶にも関係している。これらの細胞は、その表面にCD8糖タンパク質を発現するため、CD8+T細胞(MHCクラスIに関連する)としても知られている。SLOBのT調節性CD4+CD25+FoxP3+細胞との相互作用により、これらの細胞は、アネルギー状態不活化され得、これにより実験的自己免疫性脳脊髄炎などの自己免疫疾患を防止する。

0078

記憶T細胞は、感染から回復した後に長期間生存する抗原特異的T細胞のサブセットである。記憶T細胞は、同種抗原に再び曝露されるとエフェクターT細胞をかなりの数まで迅速に増大させ、過去の感染に対する「記憶」を有する免疫系を提供する。記憶T細胞は、2つの亜型:中心記憶T細胞(TCM細胞)およびエフェクター記憶T細胞(TEM細胞)を含む。記憶細胞は、CD4+またはCD8+のいずれかであり得る。

0079

調節性T細胞(Treg細胞)は、以前はサプレッサーT細胞として知られており、免疫寛容の維持に極めて重要である。調節性T細胞は、従来のαβTCR発現CD4陽性細胞に類似している。調節性T細胞は、CD25タンパク質とFoxp3タンパク質の共発現によってさらに特徴付けることができる。調節性T細胞の主な役割は、免疫反応の終了に向けてT細胞媒介性免疫を停止することと、胸腺における陰性選択のプロセスから免れた自己反応性T細胞を抑制することである。自然発生のTreg細胞および適応Treg細胞を含む、CD4+調節性T細胞の2つの主なクラスが記載されている。自然発生のTreg細胞(CD4+CD25+FoxP3+Treg細胞としても知られる)は胸腺で発生するが、適応Treg細胞(Tr1細胞またはTh3細胞としても知られる)は、通常の免疫応答中に生じ得る。自然発生のTreg細胞は、FoxP3と呼ばれる細胞内分子の存在によって他のT細胞と区別することができる。FOXP3遺伝子の変異が、調節性T細胞の発生を防止して、致命的な自己免疫疾患IPEXを引き起こし得る。

0080

ナチュラルキラーT細胞(NK T細胞)は、CD16、CD56、CD161、CD94、CD158a、およびCD158bを含む、αβまたはγδTCRと様々なNK受容体との共発現によって特徴付けられる不均一なT細胞集団である。NK T細胞は、活性化後にかなりの数のサイトカインを迅速に分泌する能力を有する。NK T細胞クローンは、1型2型、または両方の型のサイトカインを分泌し、Th0細胞のTh1またはTh2細胞への分化に影響を及ぼし得る。NK T細胞は、マウスでは不変TCR Valpha14を発現し、ヒトでは不変TCR Valpha24を発現する細胞として記載された。近年、多様なTCRを発現するNK T細胞が、NK T細胞集団の1つを表すCD3+CD56+細胞としても認識された。NK T細胞は、CD4+CD8+、CD4−CD8−、CD4−CD8+、またはCD4+CD8−であり得る。

0081

γδT細胞(ガンマデルタT細胞)は、表面に特有のT細胞受容体(TCR)を有するT細胞の小さいサブセットを表す。T細胞の大部分は、αTCR鎖およびβTCR鎖と呼ばれる2つの糖タンパク質鎖からなるTCRを有する。しかしながら、γδT細胞では、TCRは、1つのγ鎖と1つのδ鎖からなる。T細胞のこの群は、αβT細胞よりも一般的ではないが(T細胞全体の5%)、上皮内リンパ球IEL)として知られるリンパ球の集団の中で、腸粘膜で最も豊富に見られる。γδT細胞を活性化する抗原分子は、まだあまり知られていない。しかしながら、γδT細胞は、MHC拘束されておらず、抗原提示細胞のMHC分子によって提示されるペプチドを必要とするのではなく、全タンパク質を認識できるようである。しかしながら、一部のγδT細胞は、MHCクラスIB分子を認識する。末梢血液中で主なγδT細胞集団を構成するヒトVγ9/Vδ2T細胞は、低分子の非ペプチド微生物代謝産物、HMB−PP、すなわちイソペンテニルピロリン酸前駆体に特異的かつ迅速に応答するという点で独特である。健常なドナー由来の末梢血中に見られ得るT細胞の推定パーセンテージは、次の通りである:CD3+=70.78%±4.71;CD3+CD4=38.97%±5.66;CD3+CD8=28.955%±7.43;CD3+CD56+=5.22%±1.74;CD3-CD56+=10
.305%±4.7;CD3+CD45RA=45.00%±7.19;CD3+CD45RO+=27.21%±7.34。

0082

T細胞は、T細胞の精製された集団とすることができ、別法では、T細胞は、異なる型の細胞、例えば、B細胞および/または他の末梢血細胞などの細胞集団に入れることができる。T細胞は、CD4+T細胞などのT細胞のサブセットの精製された集団とすることができ、またはT細胞は、異なるT細胞のサブセットを含むT細胞の集団とすることができる。本発明の別の実施形態では、T細胞は、長期間に亘って培養物中に維持されたT細胞クローンである。T細胞クローンは、様々な程度に形質転換することができる。具体的な実施形態では、T細胞は、培養物中で無制限に増殖するT細胞クローンである。

0083

本発明の好ましい実施形態では、T細胞は、一次T細胞である。用語「一次T細胞」は、長期間に亘って培養物中に維持されたT細胞に対して、個体から得たT細胞を含むものとする。したがって、一次T細胞は、特に、被験体から得た末梢血T細胞である。一次T細胞の集団は、殆どをT細胞の1つのサブセットから構成することができる。別法では、一次T細胞の集団は、T細胞の異なるサブセットから構成することができる。

0084

T細胞は、健常な個体からの予め保存された血液サンプルに由来しても良く、別法では、ある症状に陥っている個体に由来しても良い。この状態は、感染症、例えば、ウイルス感染細菌感染、もしくは任意の他の微生物による感染から生じる状態、または過剰増殖性疾患、例えば、黒色腫のようながんであり得る。具体的な実施形態では、T細胞は、ヒト免疫不全ウイルスHIV)に感染した個体に由来する。本発明のなお別の実施形態では、T細胞は、自己免疫疾患またはT細胞病態に罹患している被験体または罹患しやすい被験体に由来する。T細胞は、ヒト起源ネズミ起源、または任意の他の哺乳動物種起源とすることができる。

0085

B.造血始原細胞
造血幹細胞および造血始原細胞が医療用途においてかなりの将来性があるため、造血始原細胞の胚性幹細胞からの分化の改善された方法を試すために相当な研究が行われてきた。ヒト成人では、主に骨髄に存在する造血幹細胞が、血液系のあらゆる細胞に分化する、活発に分裂する造血(CD34+)始原細胞の不均一な集団を産生する。CD34+内皮細胞をiPS細胞に変換できると予測されるが、特定の実施形態では、内皮細胞ではない造血細胞を使用するのが望ましいことがある:例えば、場合によっては、CD31やVEカドヘリンを発現しない造血始原細胞または造血前駆細胞を使用するのが望ましいことがある。他のマーカー、例えば、CD43および/またはCD45マーカーも、造血始原細胞の同定を容易にするために使用することができる(例えば、Kadaja−Saarepuuら、2008;Vodyanikら、2006)。造血細胞は、CD43(+)CD235a(+)CD41a(+/−)(赤血球−巨核球形成)細胞、lin(−)CD34(+)CD43(+)CD45(−)(多能性)細胞、およびlin(−)CD34(+)CD43(+)CD45(+)(骨髄性スキュー)細胞を含む始原造血細胞の様々なサブセットを含む。ヒト成人では、造血始原細胞は、増殖して分化し、数千億の成熟血液細胞を毎日産生する。造血始原細胞は、臍帯血にも存在する。in vitroで、ヒト胚性幹細胞は、造血始原細胞に分化し得る。造血始原細胞はまた、末梢血のサンプルから増大または富化することができる。造血細胞は、ヒト起源、ネズミ起源、または任意の他の哺乳動物種起源であり得る。

0086

C.細胞集団の供給源
造血幹細胞(HSC)は、通常は骨髄に存在するが、末梢血でかなりの数のHSCを採取するために臨床的に使用される動員と呼ばれるプロセスで血液中強制的に移動させることができる。1つの動員剤の選択は、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)である。

0087

末梢血液中を循環するCD34+造血幹細胞または造血始原細胞は、非混乱状態(unperturbed state)で、または造血成長因子様G−CSFの外部投与後の動員後に、アフェレーシス技術によって収集することができる。動員後に収集される造血幹細胞または造血始原細胞の数は、非混乱状態でのアフェレーシス後に得られる数よりも多い。本発明の具体的な態様では、細胞集団の供給源は、造血幹細胞または造血始原細胞を富化する必要がないため、外的に加えられた因子によって細胞が動員されていない被験体である。

0088

本明細書に記載される方法に使用される細胞集団は、哺乳動物細胞、例えば、ヒト細胞、非ヒト霊長類細胞、げっ歯類細胞(例えば、マウスまたはラット)、ウシ細胞、ヒツジ(ovine)細胞、ブタ細胞ウマ細胞、ヒツジ(sheep)細胞、イヌ細胞、およびネコ細胞、またはこれらの混合物であり得る。非ヒト霊長類細胞には、アカゲザル細胞が含まれる。細胞は、動物、例えば、ヒト患者から得ることができ、または細胞は、細胞系から得ることができる。細胞を動物から得る場合は、細胞は、例えば、分離されていない細胞(すなわち、混合集団)などとして使用することができる;細胞は、例えば、形質転換によって初めに培養物中で樹立することができる;または細胞に、予備的な精製法を行っても良い。例えば、細胞集団は、細胞表面マーカーの発現に基づいて陽性選択または陰性選択によって処理しても良いし;in vitroまたはin vivoで1つ以上の抗原で刺激しても良いし;in vitroまたはin vivoで1つ以上の生物学的修飾物質で処理しても良いし;またはこれらの任意の組み合わせまたはこれらの全ての組み合わせで処理しても良い。例示的な実施形態では、細胞集団に、非T細胞および/または特定のT細胞サブセットの枯渇のために陰性選択を行う。陰性選択は、B細胞マーカー、例えば、CD19およびCD20;単球マーカーCD14;NK細胞マーカーCD56を含む、様々な分子の細胞表面の発現に基づいて行うことができる。別法では、細胞集団に、非CD34+造血細胞および/または特定の造血細胞のサブセットの枯渇のために陰性選択を行っても良い。陰性選択は、様々な分子、例えば、MACSまたはカラム分離によって他の細胞型の分離に使用することができる抗体(例えば、CD2、CD3、CD11b、CD14、CD15、CD16、CD19、CD56、CD123、およびCD235a)のカクテルなどの細胞表面の発現に基づいて行うことができる。

0089

細胞集団は、末梢血単核細胞(PBMC)、全血または混合集団を含有するその画分、脾臓細胞、骨髄性細胞腫瘍浸潤リンパ球、白血球アフェレーシスによって得られる細胞、生検組織、リンパ節、例えば、腫瘍からの流入リンパ節(lymph nodes draining from a tumor)を含む。適切なドナーは、免疫ドナー、非免疫(ナイーブ)ドナー、処置または未処置ドナーを含む。「処置」ドナーは、1つ以上の生物学的修飾物質に曝露されたドナーである。「未処置」ドナーは、1つ以上の生物学的修飾物質に曝露されていないドナーである。

0090

T細胞を含む細胞集団を得る方法は、当技術分野で周知である。例えば、末梢血単核細胞(PBMC)は、当技術分野で公知の方法に従って、記載されているように得ることができる。このような方法の例は、実施例に記載されており、Kimら(1992);Biswasら(1990);Biswasら(1991)によって説明されている。

0091

造血前駆細胞を細胞集団から得る方法も、当技術分野で周知である。造血前駆細胞は、様々なサイトカイン、例えば、hSCF、hFLT3、および/またはIL−3(Akkinaら、1996)を用いて増大させても良いし、またはMACSまたはFACSを用いてCD34+細胞を富化しても良い。上記のように、陰性選択技術を用いて、CD34+細胞を富化しても良い。

0092

また、被験体から細胞サンプルを得てから、望ましい細胞型を得るために細胞サンプルを富化することも可能である。例えば、PBMCおよび/またはCD34+造血細胞を、本明細書に記載されているように血液から単離することができる。向流遠心分離エラトリエーション)を用いて、T細胞をPBMCから富化することができる。細胞は、様々な技術、例えば、望ましい細胞型の細胞表面のエピトープに結合する抗体を用いた単離および/または活性化を用いて他の細胞から単離することもでき、例えば、ある種のT細胞単離キットは、抗体結合ビーズを用いて細胞を活性化させ、次いで同じビーズでカラム分離を行うことができる。使用できる別の方法には、受容体の結合によって細胞を活性化させずに、細胞表面マーカーに対する抗体を用いて特定の細胞型を選択的に富化する陰性選択が含まれる。

0093

骨髄細胞は、腸骨稜大腿骨脛骨脊柱肋骨、または他の髄腔から得ることができる。骨髄は、患者から採取し、様々な分離および洗浄手順によって単離することができる。骨髄細胞を単離するための公知の手順は、(a)骨髄懸濁液を3つの画分に遠心分離して中間画分またはバフィーコートを収集する工程と、(b)工程(a)のバフィーコート画分を分離用流体、通常はFicoll(Pharmacia Fine Chemicals ABの商標)でもう1回遠心分離し、骨髄細胞を含む中間画分を収集する工程と、(c)再輸血可能な骨髄細胞の回収のために工程(b)で収集した画分を洗浄する工程と、を含む。

0094

T細胞が富化された細胞集団を使用したい場合は、このような細胞集団を、連続流細胞分離装置(continuous flow cell separator)を用いた機械式アフェレーシスおよび白血球アフェレーシスによって混合細胞集団から得ることができる。例えば、T細胞は、Ficoll−Hypaque(商標)勾配を用いた分離、Percoll勾配を用いた分離、またはエラトリエーションを含む、任意の公知の方法によってバフィーコートから単離することができる。

0095

D.T細胞活性
特定の態様では、T細胞を、T細胞受容体に結合してT細胞活性化のシグナル伝達カスケードを作動させる作用物質によって活性化する。例えば、CD3抗体を使用することができる。T細胞をかなりの数に増大させてリプログラミングのための増殖状態にするために、IL−2などのサイトカインを用いることもできる。

0096

ナイーブT細胞は、分裂しないで何年も生存することができる。これらの休止小細胞は、クロマチンを凝縮させ、少量の細胞質であり、RNAまたはタンパク質を殆ど合成しない。活性化されると、これらの細胞は、細胞周期に再び入り、急速に分裂して、武装化エフェクターT細胞に分化する多数の子孫を産生するはずである。これらの細胞の増殖および分化は、活性化T細胞自体によって産生されるインターロイキン−2(IL−2)と呼ばれるサイトカインによって駆動される。

0097

必要な共刺激シグナルの存在下での特定の抗原との初めの遭遇により、T細胞が細胞周期のG1期に入り;同時に、T細胞は、IL−2受容体のα鎖と共にIL−2の合成も誘導する。IL−2受容体は、α、β、およびγの3つの鎖を有する。休止T細胞は、適度な親和性でIL−2に結合するβ鎖およびα鎖からなるこの受容体の形態を発現し、休止T細胞が、非常に濃度の高いIL−2に応答できるようになる。α鎖のβ鎖およびγ鎖との結合により、IL−2に対する非常に高い親和性をもつ受容体が産生され、休止T細胞が、非常に濃度の低いIL−2に応答できるようになる。次いで、IL−2の高親和性受容体への結合により、残りの細胞周期の進行が始まる。このように活性化されたT細胞は、数日間に亘って1日に2〜3回分裂することができ、1つの細胞が、すべてが同じ抗原受容体を有する数千の子孫からなるクローンを産生する。IL−2は、これらの細胞の武装化エフェクターT細胞への分化も促進する。

0098

活性化の特定の機序は、T細胞の異なる型間で僅かに異なるが、CD4+T細胞における「2シグナルモデル」が、大抵は当てはまる。CD4+T細胞の活性化は、APC上の主要組織適合複合体ペプチドおよびB7ファミリーメンバーのそれぞれによるT細胞上のT細胞受容体およびCD28の両方の結合によって生じる。T細胞受容体およびCD28の両方が、有効な免疫応答の生成に必要であり;CD28共刺激の非存在下では、T細胞受容体のシグナル伝達のみが、アネルギーとなる。CD28およびT細胞受容体の両方の下流のシグナル伝達経路は、多くのタンパク質が関与する。

0099

第1のシグナルは、別の細胞上の主要組織適合複合体(MHC)によって提示される短ペプチドへのT細胞受容体の結合によって生じる。これにより、確実にそのペプチドに特異的なTCRをもつT細胞のみが活性化される。パートナー細胞は、ナイーブ応答(naive response)の場合に通常は樹状細胞であるプロフェッショナル抗原提示細胞(APC)であるが、B細胞およびマクロファージも重要なAPCであり得る。MHCクラスI分子によってCD8+T細胞に提示されるペプチドは、アミノ酸8〜9の長さであり;MHCクラスII分子によってCD4+細胞に提示されるペプチドは、MHCクラスII分子の結合裂の末端が開いているため、より長い。

0100

第2のシグナルは、通常は病原体の産物であるが時には細胞の分解産物、例えば、壊死体または熱ショックタンパク質である比較的少数の刺激によってAPC上の表面受容体が誘導される共刺激から生じる。ナイーブT細胞によって構成的に発現される唯一の共刺激受容体がCD28であるため、これらの細胞の共刺激は、APC上のCD80およびCD86タンパク質から生じる。他の受容体、例えば、OX40およびICOSは、T細胞の活性化のときに発現されるが、これらの発現は、CD28に大きく依存する。第2のシグナルは、T細胞が抗原に応答するのを許可する。第2のシグナルがないと、T細胞は、アネルギーとなり、後に活性化するのがより困難になる。自己ペプチドは、通常は適切な共刺激で提示されないため、この機序は、自己に対する不適切な応答を防止する。

0101

特定の態様では、抗CD3および抗CD28の両方を、共刺激が関与するT細胞活性化に使用することができる。代替の態様では、プレート結合抗CD3などの抗CD3の架橋結合を利用することができる。可溶性抗CD3が、PBMC中のT細胞を活性化するために使用される場合は、可溶性抗CD3抗体が、PBMCのAPCに結合し得、抗体をT細胞に提示する。可溶性抗CD3抗体が単独で精製T細胞集団に使用される場合は、上記の理由から、アネルギーとなる。本発明の特定の実施形態は、抗CD3(OKT3)およびIL2の存在下でT細胞を培養する工程を含むが、これは、費用がかかり面倒なビーズまたはプレート結合抗体を使用する必要がないため有利で便利であり;OKT3およびIL2の添加後に、PBMCの細胞環境が、T細胞の活性化に役立つ。この結果、T細胞が、選択的な増大によってPBMC培養物中の他の細胞型を過密状態にする。

0102

T細胞受容体は、いくつかのタンパク質の複合体として存在する。実際のT細胞受容体は、2つの別個のペプチド鎖からなり、これらのペプチド鎖は、独立したT細胞受容体αおよびβ(TCRαおよびTCRβ)遺伝子から産生される。複合体中の他のタンパク質は、CD3タンパク質:CD3εγおよびCD3εδヘテロ二量体、ならびに合計6つのITAMモチーフを有する最も重要なCD3ζホモ二量体である。CD3ζ上のITAMモチーフは、Lckによってリン酸化され得、リン酸化されるとZAP−70を動員する。Lckおよび/またはZAP−70も、多くの他の分子、特にCD28、LAT、およびSLP−76上のチロシンをリン酸化することができ、これにより、これらのタンパク質の周囲でのシグナル伝達複合体の凝集を可能にする。

0103

リン酸化LATは、SLP−76を膜に動員し、そこでリン酸化LATが、PLCγ、VAV1、Itk、および場合によってはPI3Kを取り込むことができる。PLCγおよびPI3Kの両方は、膜の内側リーフレット上のPI(4,5)P2に作用して、活性な中間体ジアシルグリセロール(DAG)、イノシトール−1,4,5−三リン酸(inositol−1,4,5−trisphosphate)(IP3)、およびホスファチジルイノシトール(phosphatidlyinositol)−3,4,5−三リン酸(PIP3)を生成する。DAGは、T細胞中のある種のPKC、例えば、PKCθに結合し活性化するが、これは、転写因子NF−κBおよびAP−1を活性化するための重要なプロセスである。IP3は、PLCγによって膜から放出され、急速に拡散してER上の受容体を活性化し、これによりカルシウムの放出が誘導される。次いで、放出されたカルシウムが、カルシニュリンを活性化し、カルシニュリンがNFATを活性化し、これにより核へ移行する。NFATは、転写因子であり、遺伝子の多面発現性のセット、特にIL−2、すなわち活性化T細胞の長期の増殖を促進するサイトカインの転写を活性化する。

0104

本発明の方法によって、核酸分子を、活発に増殖している(すなわち、増大している)T細胞に導入する。T細胞は、様々な作用物質、例えば、一次活性化シグナルおよび共刺激シグナルをT細胞に供給する作用物質の組み合わせ物にT細胞を接触させることによって刺激して増大させることができる。T細胞を刺激して増大させるために使用できる作用物質は、当技術分野で周知であり、以下に記載する。刺激されて増殖するT細胞は、細胞の拡大、クランピング、および培養培地酸性化によって特徴付けられる。したがって、T細胞の増殖は、例えば、コールターカウンターなどを用いたT細胞のサイズの検査またはT細胞の体積の測定によって証明することができる。休止T細胞は、約6.8ミクロン平均直径を有する。T細胞を初めに活性化および刺激した後の、T細胞の平均直径は、第4日目までに12ミクロンを超えるまで増大し、概ね第6日目までに縮小し始める。さらに、T細胞の増殖は、当技術分野で公知の標準的な技術、例えば、トリチウム化チミジンの取り込みによって評価することができる。

0105

本発明の方法は、核酸分子を増殖中のT細胞に導入する前に、増殖中のT細胞を少なくとも1つの刺激剤に接触させる工程を含む。用語「刺激剤」は、T細胞にトランスフェクトした核酸分子に含まれる遺伝子の発現レベルが、T細胞を刺激剤に接触させたのちにT細胞に核酸分子を導入した場合のほうが、T細胞を刺激剤に接触させないで核酸分子を導入した場合よりも高くなるように、T細胞にシグナルを与える作用物質を含むものとする。

0106

本発明の具体的な実施形態では、刺激剤は、一次活性化シグナルをT細胞に与える作用物質である。用語「一次活性化シグナル」は、T細胞の活性化を誘導する、典型的にはTCR/CD3複合体によって引き起こされるシグナルを含むものとする。T細胞の活性化は、共刺激シグナルなどの二次シグナルを受け取るとT細胞の増殖および分化が誘導されるようなT細胞の改変を含むものとする。具体的な実施形態では、一次活性化シグナルは、T細胞受容体またはT細胞受容体に結合したCD3複合体に接触する作用物質によって与えられる。好ましい実施形態では、この作用物質は、CD3に対して反応性の抗体、例えば、モノクローナル抗体OKT3(American Type Culture Collection、Rockville、Mdから入手可能である;No.CRL8001)である。本発明の別の実施形態では、刺激剤は、T細胞上のCD2複合体を刺激する作用物質であり、例えば、T11.3+T11.1またはT11.3+T11.2(例えば、Meuerら、1984を参照されたい)などの抗体の組み合わせである。

0107

本方法の別の実施形態では、刺激剤は、IL−2などのリンホカインである。リンホカインは、特に、別の作用物質、例えば、T細胞を刺激するためにT細胞に一次活性化シグナルを与える作用物質と組み合わせて使用される。したがって、本発明の好ましい実施形態では、T細胞に一次活性化シグナルを与える作用物質(例えば、抗CD3抗体)とIL−2の有効量の組み合わせにT細胞を接触させた後に、T細胞に核酸分子をトランスフェクトして、核酸分子がT細胞で発現されるようにする。

0108

本発明の好ましい実施形態では、T細胞を、T細胞において一次活性化シグナルおよび共刺激シグナルの両方を刺激する作用物質の組み合わせで活性化する。用語「共刺激剤」は、一次活性化シグナルを受け取ったT細胞(例えば、活性化T細胞)が刺激されて増殖する、またはサイトカイン、例えば、IL−2、IL−4、またはインターフェロンγを分泌するように、T細胞に共刺激シグナルを与える作用物質を含むものとする。具体的な実施形態では、共刺激剤は、T細胞の表面のCD28またはCTLA4分子と相互作用する。より一層具体的な実施形態では、共刺激シグナルは、Bリンパ球抗原B7−1またはB7−2などのCD28またはCTLA4のリガンドである。用語「CD28の天然のリガンドの刺激形態」は、共刺激シグナルをT細胞に与えることができるB7−1およびB7−2分子、それらの断片、またはそれらの改変物を含むものとする。CD28の天然リガンドの刺激形態は、例えば、活性化末梢血リンパ球をCD28の天然リガンドの一形態と接触させて、標準的なT細胞増殖アッセイを行なうことによって特定することができる。したがって、CD28の天然リガンドの刺激形態は、T細胞の増殖を刺激することができる。CD28/CTLA4の天然リガンドの刺激形態は、例えば、国際公開第95/03408号に記載されている。

0109

核酸分子をT細胞に導入する前にT細胞を活性化するために使用できる他の作用物質には、T細胞活性化および/または共刺激に関与する1つ以上の細胞内シグナル伝達経路を刺激する作用物質が含まれる。本発明の具体的な実施形態では、刺激剤は、カルシウムイオノホア、例えば、イオノマイシンまたはA23187である。別法では、刺激剤は、プロテインキナーゼC、例えば、ホルボールエステルを刺激する作用物質とすることができる。好ましいホルボールエステルは、ホルボール−12,13−二酪酸である。本発明のより一層好ましい実施形態では、T細胞は、核酸分子でのトランスフェクションの前にカルシウムイオノホアとホルボールエステルとの組み合わせに接触させる。刺激剤は、プロテインチロシンキナーゼを活性化する作用物質とすることもできる。プロテインチロシンキナーゼを刺激する好ましい作用物質は、過バナジン酸塩である(O’Sheaら、1992)。

0110

本発明のなお別の実施形態では、刺激剤は、多クローン性活性化因子である。多クローン性活性化因子には、T細胞の形質膜で発現する糖タンパク質に結合する作用物質が含まれ、さらにレクチン、例えば、フィトヘマグルチニン(PHA)、コンカナバリン(ConA)、およびヤマゴボウマイトジェン(PWM)が含まれる。

0111

クローンに特定の活性化シグナルを与えることにより、T細胞集団におけるT細胞の特定のクローンのみを選択的にトランスフェクトすることが可能である。T細胞クローンの特定の活性化は、例えば、抗原提示細胞によって提示される特定の抗原を用いて達成することができる。

0112

使用できる他の刺激剤には、超抗原が含まれる。本明細書で定義される用語「超抗原」は、細菌エンテロトキシン、またはT細胞の増殖を刺激できる他の細菌タンパク質を含むものとする。超抗原には、ブドウ球菌エンテロトキシン(SE)、例えば、SEA、SEB、SEC、SED、およびSEEが含まれる。超抗原は、ウイルス起源、例えば、レトロウイルス超抗原とすることもできる。

0113

当技術分野で公知もしくは本明細書に記載されているT細胞刺激アッセイを用いて同定できる他の作用物質と組み合わせて、または単独でT細胞を刺激することができる別の作用物質も、本発明の範囲内である。核酸分子のT細胞への導入の前にT細胞を刺激するために、上記の作用物質の任意の組み合わせを使用することができる。

0114

刺激剤は、溶解して、または固体表面に結合させて使用することができる。固体表面は、例えば、組織培養皿またはビーズの表面とすることができる。刺激剤の性質によって、固体表面への結合は、当技術分野で周知の方法によって行うことができる。例えば、市販の架橋試薬(Pierce、Rockford Ill.)を用いて細胞表面に化学的に架橋結合する、または4℃で一晩インキュベートすることによってプラスチックに固定することができる。T細胞の刺激のためにいくつかの作用物質が使用される場合は、一部の作用物質を溶解した状態にすることができ、一部の作用物質を固体支持体に結合させることができる。好ましい実施形態では、T細胞を、固相結合抗CD3抗体と可溶性抗CD28抗体との組み合わせで刺激する。

0115

T細胞に添加される刺激剤(複数可)の具体的な用量は、刺激剤の種類によって異なる。典型的には、刺激剤は、当技術分野で記載されているように、T細胞を刺激して増殖させサイトカインを分泌させるために使用される用量と同じ用量で使用される。

0116

本発明の好ましい実施形態では、本発明の方法は、T細胞のトランスフェクションの後にin vitroでT細胞を刺激して増大させる工程さらに含む。T細胞を、IL−2の存在下で、実施例のセクションで記載されているようにin vitroで刺激して増大させることができる。具体的な実施形態では、T細胞は、抗CD3などの一次活性化シグナルを与える作用物質および抗CD28抗体などの共刺激シグナルを与える作用物質と共にインキュベートすることもできる。

0117

より一層好ましい実施形態では、T細胞は一次T細胞である。したがって、T細胞は、ある被験体から得て、本発明の方法によってトランスフェクトし、次いでin vitroで増大させることができる。本発明の別の実施形態では、トランスフェクトされて増大されたT細胞を被験体に再投与する。勾配遠心分離などによって、被験体に投与する前にT細胞をさらに精製することが好ましい場合もある。

0118

E.V(D)J組換え
本発明者らは、T細胞受容体でのV(D)J組換えがT細胞のリプログラミングを阻害しないことを見出した。T細胞由来のiPS細胞の特定の再構成は、特定の態様において、iPS細胞を追跡してiPS細胞の様々な集団を同定するための固有の「バーコード」として役立ち得る。さらなる態様では、V、D、J遺伝子セグメントの原型のセットを有する胚性幹細胞と比較して、V、D、J遺伝子セグメントの不完全なセットを有するiPS細胞を提供することもできる。これらのiPS細胞のV、D、J遺伝子セグメントの再構成は、クローン集団内では同じであり得るが、異なるクローン集団間では異なり得る。具体的な態様では、γ/δTCR+T細胞は、本方法でリプログラミングすることもできる。このT細胞集団の1つを起源とするiPSクローンは、生殖細胞系の構成に酷似したゲノムを有し得、したがって、例えば、より強健なレパートリーのT細胞また他の分化細胞に再分化できる場合があるため有利であり得る。

0119

V(D)J組換えは、脊椎動物で起こる遺伝子組み換えの機序であり、免疫系で重要な役割を持つ特定のタンパク質をコードする遺伝子のセグメントをランダムに選択して構築する。この部位特異的組換え反応は、細菌侵入者からの、ウイルス侵入者からの、および寄生生物侵入者からの、ならびに腫瘍細胞などの機能障害細胞からの多様な抗原の認識に必要な多様なレパートリーのT細胞受容体(TCR)および免疫グロブリン(Ig)分子を生成する。

0120

殆どのT細胞受容体は、α鎖およびβ鎖からなる。T細胞受容体遺伝子は、リンパ球の発生中に再構成されてその細胞に固有の抗原受容体を提供する複数のV、D、およびJ遺伝子を同様にT細胞受容体遺伝子のβ鎖に含む(かつVおよびJ遺伝子をT細胞受容体遺伝子のα鎖に含む)という点で免疫グロブリン遺伝子に類似している。

0121

T細胞の発生中に、T細胞受容体(TCR)鎖は、免疫グロブリンに関して記載された配列と本質的に同じ配列に順序付けられた組換えを受ける。DからJへの組換えは、TCRのβ鎖で初めに起こる。このプロセスは、Dβ1遺伝子セグメントの6つのJβ1セグメントの1つへの連結か、またはDβ2遺伝子セグメントの6つのJβ2セグメントの1つへの連結を伴い得る。DJ組換えの後に、(上記のように)VβからDβJβへの再構成が起こる。新たに形成された複合体におけるVβ−Dβ−Jβ遺伝子間のすべての遺伝子が除去されて、定常ドメイン遺伝子(Vβ−Dβ−Jβ−Cβ)を組み込む一次転写物が合成される。mRNAの転写は、あらゆる介在配列スプライシングし、TCRのCβ鎖の完全長のタンパク質の翻訳を可能にする。

0122

TCRのアルファ(α)鎖の再構成は、β鎖の再構成の後に起こり、Ig軽鎖に関して記載されたVからJへの再構成に類似している(上記を参照されたい)。β鎖およびα鎖の構築により、大部分のT細胞で発現されるαβ−TCRが形成される。

0123

VI.リプログラミング因子の発現および形質導入
本発明の特定の態様では、リプログラミング因子を、1つ以上のベクター、例えば、組み込み型ベクターまたはエピソームベクターに含まれる発現カセットから発現させる。さらなる態様では、リプログラミングタンパク質を、タンパク質形質導入によって体細胞に直接導入することができる(参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第61/172,079号を参照されたい)。

0124

A.組み込み型ベクター
iPS細胞は、本発明では、リプログラミングタンパク質をコードする特定の核酸または遺伝子の非多能性細胞、例えば、T細胞または造血前駆細胞へのトランスフェクションによって得ることができる。トランスフェクションは、典型的には、現行方式ではレトロウイルスなどの組み込み型ウイルスベクターによって達成される。トランスフェクトされた遺伝子は、マスター転写調節因子Oct4(Pouf51)およびSox2を含み得るが、他の遺伝子も誘導効率を高めることが示唆されている。臨界期の後、少数のトランスフェクトされた細胞が、多能性幹細胞に形態学的および生化学的に類似し始め、形態学的選択、倍加時間によって、またはレポーター遺伝子および抗生物質感染によって単離することができる。

0125

2007年11月に、2つの別個の研究チームの研究(Yuら、2007;Yamanakaら、2007)によって成人ヒト線維芽細胞からiPSを作製するという画期的な仕事を達成した。以前にマウスモデルで使用された同じ原理を用いて、Yamanakaは、レトロウイルス系を用いて同じ4つの中心的な遺伝子:Oct4、Sox2、Klf4、およびc−Mycでヒト線維芽細胞を多能性幹細胞に形質転換することに成功したが、c−Mycは発癌性である。トンソンおよび同僚らは、レンチウイルス系を用いてOct4、Sox2、NANOG、および異なる遺伝子LIN28を使用してc−Mycの使用を回避した。最近になって、繁殖力のあるマウスがiPS細胞から作製され、したがって、実質的にあらゆるまたはすべての分化細胞型を形成できるこれらの細胞の潜在能力が実証された(Bolandら、2009)。

0126

上記されたように、ヒト皮膚線維芽細胞からの多能性幹細胞の誘導は、リプログラミング遺伝子の異所性発現用のレトロウイルスまたはレンチウイルスベクターを用いて達成された。モロニーマウス白血病ウイルスなどの組換えレトロウイルスは、安定して宿主ゲノムに組み込む能力を有する。組換えレトロウイルスは、宿主ゲノムへの組み込みを可能にする逆転写酵素を含む。レンチウイルスは、レトロウイルスのサブクラスである。レンチウイルスは、非分裂細胞ならびに分裂細胞のゲノムに組み込む能力により、ベクターとして広く利用されている。RNAの形態のウイルスゲノムは、ウイルスが細胞に侵入すると逆転写されてDNAを産生し、そのDNAは次いでウイルスインテグラーゼ酵素によってランダムな位置でゲノムに挿入される。したがって、T細胞のリプログラミングの成功のために、実施例のセクションに示されているように、組み込みをベースとしたウイルス手法を用いることができる。

0127

B.エピソームベクター
これらのリプログラミング法は、染色体外で複製するベクター(すなわち、エピソームベクター)を使用することもでき、エピソームベクターは、エピソームとして複製して外来ベクターまたはウイルス要素を本質的に含まないiPS細胞を作製できるベクターである(参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第61/058,858号を参照されたい;Yuら、2009)。多数のDNAウイルス、例えば、アデノウイルスサル空胞形成ウイルス40(SV40)またはウシ・パピローマ・ウイルス(BPV)、または出芽酵母ARS(自己複製配列)含有プラスミドは、哺乳動物細胞おいて染色体外で、またはエピソームとして複製する。これらのエピソームプラスミドは、組み込みベクターに関連したこれらのすべての不都合(Bodeら、2001)が本質的にない。例えば、上記定義されたように、エプスタイン・バー・ウイルス(EBV)を含むリンパ球指向性ヘルペスウイルスをベースとしたものは、染色体外で複製し、体細胞にリプログラミング遺伝子を送達するのに役立ち得る。

0128

例えば、本発明に使用されるプラスミドをベースとする手法は、詳細が後述されるように、EBV要素をベースとした系の臨床実践場面での取り扱いやすさを損なうことなく、この系の複製および維持の成功に必要な強い要素を抽出することができる。必須のEBV要素は、OriPおよびEBNA−1またはそれらの変異体もしくは機能的等価物である。この系のさらなる利点は、これらの外来要素が、細胞に導入されてから時間が経つと消滅し、外来要素を本質的に含まない自立iPS細胞をもたらすことである。

0129

プラスミドまたはリポソームをベースとした染色体外ベクター、例えば、oriPをベースとしたベクター、および/またはEBNA−1の誘導体をコードするベクターの使用により、DNAの大きい断片が細胞に導入され、染色体外に維持され、細胞周期ごとに1回複製され、娘細胞に効率的に分割され、そして免疫応答を実質的に誘発しないことが可能となる。具体的には、OriPをベースとした発現ベクターの複製に必要な唯一のウイルスタンパク質であるEBNA−1は、MHCクラスI分子にその抗原の提示を必要とするプロセシングを回避する効率的な機序を発達させたため、細胞性免疫応答を誘発しない(Levitskayaら、1997)。さらに、EBNA−1は、トランスで作用してクローン化遺伝子の発現を促進することができ、一部の細胞系において最大100倍のクローン化遺伝子の発現を誘導する(Langle−Rouaultら、1998;Evansら、1997)。最後に、このようなoriPをベースとした発現ベクターの製造は低コストである。

0130

他の染色体外ベクターは、他のリンパ球指向性ヘルペスウイルスをベースとしたベクターを含む。リンパ球指向性ヘルペスウイルスは、リンパ芽球(例えば、ヒトBリンパ芽球)で複製し、そしてその自然の生活環の一部のためにプラスミドになるヘルペスウイルスである。単純ヘルペスウイルス(HSV)は、「リンパ球指向性」ヘルペスウイルスではない。例示的なリンパ球指向性ヘルペスウイルスには、限定されるものではないが、EBV、カポジ肉腫ヘルペスウイルス(KSHV);リスザルヘルペスウイルス(HS)およびマレック病ウイルス(MDV)が含まれる。また、酵母ARS、アデノウイルス、SV40、またはBPVなどの、エピソームをベースとしたベクターの他の供給源も意図している。

0131

ウイルス遺伝子送達の潜在的な問題を回避するために、今年、2つのグループが、ウイルスベクターを用いずにトランスポゾンをベースとした手法でヒト細胞に多能性をもたらすことに成功した共同研究について報告した(Woltjenら、2009;Kajiら、2009)。ウイルス由来2Aペプチド配列を用いてリプログラミング因子を含むポリシストロニックベクターを作製し、これをpiggyBacトランスポゾンベクターによって細胞に送達することによって、安定したiPS細胞がヒトおよびマウスの線維芽細胞の両方で作製された。次いで、樹立されたiPS細胞系では必要のない2A連結リプログラミング因子を除去した。これらの戦略は、本発明の特定の態様において、T細胞または造血前駆細胞のリプログラミングに同様に適用することができる。

0132

C.タンパク質形質導入
外来性遺伝子改変が標的細胞に導入されるのを回避する1つの可能な方法は、送達される遺伝子の転写に依存するのではなく、リプログラミングタンパク質を直接細胞に導入することである。以前の研究により、タンパク質形質導入を媒介する短ペプチド、例えば、HIVtatおよびポリアルギニンを様々なタンパク質に結合することによって、in
vitroおよびin vivoでこれらのタンパク質を細胞に送達できることが実証されている。近年の研究により、組換えリプログラミングタンパク質を直接送達することによって、マウス線維芽細胞を多能性幹細胞に完全にリプログラミングできることが実証された(Zhouら、2009)。タンパク質形質導入で細胞をリプログラミングする方法をさらに詳細にまとめたものが、参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第61/172,079号に開示されている。

0133

本発明の特定の態様では、タンパク質形質導入ドメインを用いて、リプログラミングタンパク質をT細胞に直接導入することができる。タンパク質形質導入を用いて、リプログラミングタンパク質の細胞への送達を増強することができる。例えば、HIVTatタンパク質に由来するTATタンパク質のある領域を標的タンパク質に融合して、標的タンパク質の細胞への侵入を可能にすることができる。これらの形質導入ドメインの融合を用いる利点は、タンパク質の侵入が、迅速で、濃度に依存し、様々な細胞型に働くようであるということである。

0134

本発明のさらなる態様では、核局在配列を用いて、リプログラミングタンパク質の核侵入を容易にすることもできる。核局在シグナル(NLS)は、様々なタンパク質について記載されている。核へのタンパク質輸送の機序は、核局在シグナルを含む標的タンパク質のカリオフリンのαサブユニットへの結合によるものである。これに続いて、標的タンパク質:カリオフェリン複合体が核孔を介して核へ輸送される。しかしながら、リプログラミングタンパク質は、しばしば、内因性核局在配列を有し得る転写因子である。したがって、核局在配列は、必ずしも必要ではない。

0135

リプログラミングタンパク質の体細胞への直接導入を本発明に使用することができるが、それは、タンパク質形質導入ドメイン(PTD)を含む融合タンパク質を作製することによって、またはリプログラミングタンパク質とPTDを各分子上の官能基を介して化学的に架橋結合することによって、PTDに作用的に連結したリプログラミングタンパク質を用いて行なわれる。

0136

標準的な組換え核酸法を用いて、本明細書で使用される1つ以上の形質導入可能なリプログラミングタンパク質を発現させることができる。一実施形態では、形質導入可能なタンパク質をコードする核酸配列を、例えば、転写および翻訳のための適切なシグナルおよびプロセシング配列ならびに調節配列を有する核酸発現ベクターにクローニングする。別の実施形態では、タンパク質は、自動有機合成法を用いて合成することができる。

0137

加えて、タンパク質の細胞への輸送にも役立ち得る数種の方法が存在し、これらの1つ以上の方法を、単独で使用するか、または、限定されるものではないが、微量注入、エレクトロポレーション、およびリポソームの使用を含むタンパク質形質導入ドメインを用いた方法と組み合わせて使用することができる。これらの方法の殆どは、精製したタンパク質調製物を必要とし得る。組換えタンパク質の精製は、しばしば、親和性タグの発現構築物への組み込みによって容易になり、その結果、精製工程が迅速かつ効率的になる。

0138

VII.ベクターの構築および送達
特定の実施形態では、リプログラミングベクターは、細胞内で、上記されたリプログラミング因子をコードする核酸配列に加えて追加の要素を含むように構築することができる。これらのベクター成分および送達方法の詳細は以下に開示される。

0139

A.ベクター
当業者であれば、標準的な組換え技術によってベクターを構築する十分な能力を備えているであろう(例えば、それぞれ参照により本明細書に組み入れられるManiatisら、1988、およびAusubelら、1994を参照されたい)。

0140

ベクターは、遺伝子送達および/または遺伝子発現をさらに調節する、または標的細胞に有利な特性を他の方法で付与する他の成分または機能性も含むことができる。このような他の成分には、例えば、細胞への結合または細胞を標的とすることに影響を与える成分(細胞型または組織特異的な結合を媒介する成分を含む);細胞によるベクター核酸の取り込みに影響を与える成分;取り込み後の細胞内のポリヌクレオチドの局在化に影響を与える成分(例えば、核局在化を媒介する作用物質);およびポリヌクレオチドの発現に影響を与える成分が含まれる。

0141

また、このような成分には、ベクターによって送達された核酸を取り込んで発現している細胞の検出または選択に使用することができる検出マーカーおよび/または選択マーカーなどのマーカーも含まれ得る。このような成分は、ベクターの天然の形体として提供することができる(例えば、結合および取り込みを媒介する成分または機能性を有する特定のウイルスベクターの使用)、またはベクターは、このような機能性を提供するように改変することができる。非常に様々なこのようなベクターは、当技術分野で公知であり、一般に入手可能である。ベクターが宿主細胞に維持されている場合は、ベクターは、自律構造物として有糸分裂の間に細胞によって安定的に複製されるか、宿主細胞のゲノム内に組み込まれるか、または宿主細胞の核もしくは細胞質内に維持されるかのいずれかであり得る。

0142

B.調節要素
ベクター内に含められる真核生物発現カセットは、特に、タンパク質コード配列、介在配列を含むスプライシングシグナル、および転写停止/ポリアデニル化配列に作動可能に連結された真核生物転写プロモーターを含む(5’から3’方向に)。

0143

i.プロモーター/エンハンサー
「プロモーター」は、転写の開始および速度が制御される核酸配列の領域である制御配列である。プロモーターは、調節タンパク質および分子がRNAポリメラーゼおよび他の転写因子などに結合して核酸配列の特異的な転写を開始することができる遺伝要素を含み得る。「作用的に配置された」、「作用的に連結された」、「制御下」および「転写制御下」は、プロモーターが、核酸配列に対して正確な機能位置および/または向きにあって、核酸配列の転写開始および/または発現を制御することを意味する。

0144

本発明のEBNA1をコードするベクターに使用するのに適したプロモーターは、EBNA1タンパク質をコードする発現カセットの発現を誘導して、EBNA1タンパク質を十分な定常状態のレベルにし、EBVoriPを含むベクターを安定的に維持するプロモーターである。プロモーターはまた、リプログラミング因子をコードする発現カセットの効率的な発現のためにも使用することができる。

0145

プロモーターは、一般に、RNA合成開始部位の位置を決定する機能を果たす配列を含む。この最もよく知られている例は、TATAボックスであるが、TATAボックスを有していない一部のプロモーター、例えば、哺乳動物末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ遺伝子のプロモーターおよびSV40後期遺伝子のプロモーターなどでは、開始部位自体の上にある別個の要素が、開始位置を決定するのを助ける。追加のプロモーター要素が、転写開始の頻度を調節する。典型的には、これらは、開始部位の30〜110塩基対上流の領域に位置するが、多数のプロモーターが、開始部位の下流の機能要素も含むことが示されている。コード配列をプロモーター「の制御下」に置くために、選択されたプロモーターの「下流」の(すなわち、3’側の)転写リーディングフレーム転写開始部位の5’末端の位置を決定する。「上流」プロモーターは、DNAの転写を刺激し、コードされたRNAの発現を促進する。

0146

プロモーター要素間の間隔は、柔軟である場合が多いため、要素が互いに対して逆になる、または移動してもプロモーター機能は保たれる。tkプロモーターでは、プロモーター要素間の間隔は、活性が低下し始めるまでに50塩基対まで広げることができる。プロモーターによって、個々の要素は、協働で、または独立して機能して、転写を活性化することができる。プロモーターは、核酸配列の転写活性化に関与するシス作用性調節配列と呼ばれる「エンハンサー」と共に使用しても良いし、しなくても良い。

0147

プロモーターは、核酸配列に自然に結合されたものであり得、コードセグメントおよび/またはエキソンの上流に位置する5’非コード配列を単離することによって得ることができる。このようなプロモーターは、「内因性」と呼ぶことができる。同様に、エンハンサーは、核酸配列の下流または上流のいずれかに位置しており、その核酸配列に自然に結合されたものであり得る。別法では、自然環境では通常は核酸配列に結合されていないプロモーターを指す組換えプロモーターまたは異種プロモーターの制御下にコード核酸セグメントを置くことによって一定の利点が得られる。組換えエンハンサーまたは異種エンハンサーもまた、自然環境では通常は核酸配列に結合していないエンハンサーを指す。このようなプロモーターまたはエンハンサーには、他の遺伝子のプロモーターまたはエンハンサー、および任意の他のウイルスまたは原核細胞もしくは真核細胞から単離されたプロモーターまたはエンハンサー、および「天然に存在し」ていない、すなわち異なる転写調節領域の異なる要素および/または発現を変更する変異を含むプロモーターまたはエンハンサーが含まれ得る。例えば、組換えDNAの構築に最も良く使用されるプロモーターには、β−ラクタマーゼペニシリナーゼ)プロモーター系、ラクトースプロモーター系、およびトリプトファン(trp)プロモーター系が含まれる。プロモーターおよびエンハンサーの核酸配列を合成的に作製するのに加えて、配列は、本明細書に開示される組成物に関連した、組換えクローニングおよび/またはPCR(商標)を含む核酸増幅技術を用いて作製することができる(それぞれ参照により本明細書に組み入れられる米国特許第4,683,202号および同第5,928,906号を参照されたい)。さらに、ミトコンドリアおよび葉緑体などの非核細胞小器官内での配列の転写および/または発現を誘導する制御配列も利用できるということが意図される。

0148

当然、発現のために選択される細胞小器官、細胞型、組織、器官、または生物におけるDNAセグメントの発現を効率的に誘導するプロモーターおよび/またはエンハンサーを利用することが重要である。分子生物学の当業者であれば、通常は、タンパク質の発現のためのプロモーター、エンハンサー、および細胞型の組合せの使用を知っている(例えば、参照により本明細書に組み入れられるSambrookら、1989を参照されたい)。利用されるプロモーターは、導入されるDNAセグメントの高レベルの発現を誘導する適切な条件下で、構成的、組織特異的、誘導性、および/または有用であり得、組換えタンパク質および/またはペプチドの大量生産などに有利である。プロモーターは、異種性または内因性であり得る。

0149

加えて、任意のプロモーター/エンハンサーの組合せ(例えば、ワールドワイドウエブ:epd.isb−sib.ch/にある真核生物プロモーターデータベースEPDBの通り)を使用しても発現を駆動することができる。T3、T7、またはSP6細胞質発現系の使用は、別の可能な実施形態である。適切な細菌ポリメラーゼが、送達複合体の一部としてまたは追加の遺伝子発現構築物として提供されると、真核細胞は、特定の細菌プロモーターによる細胞質転写を支持し得る。

0150

プロモーターの限定されない例として、初期または後期ウイルスプロモーター、例えば、SV40初期または後期プロモーターサイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)初期プロモーター:真核細胞プロモーター、例えば、βアクチンプロモーター(Ng、1989;Quitscheら、1989)、GADPHプロモーター(Alexanderら、1988;Ercolaniら、1988)、メタロチオネインプロモーター(Karinら、1989;Richardsら、1984);および連結応答要素プロモーター、例えば、サイクリックAMP応答要素プロモーター(cre)、血清応答要素プロモーター(sre)、ホルボールエステルプロモーター(TPA)、および最小TATAボックス近傍の応答要素プロモーター(tre)などが挙げられる。また、ヒト成長ホルモンプロモーター配列(例えば、Genbankに記載されているヒト成長ホルモン最小プロモーター受託番号X05244、ヌクレオチド283−341)またはマウス乳腺腫瘍プロモーター(ATCCから入手可能、カタログ番号ATCC45007)を使用することも可能である。具体例は、ホスホグリセリン酸キナーゼPGK)プロモーターでありえる。

0151

ii.プロテアーゼ切断部位/自己切断ペプチドおよび内部リボソーム結合部位
本発明による特定の態様では、マーカーまたはリプログラミングタンパク質をコードする遺伝子を、プロテアーゼ切断部位(すなわち、プロテーゼ認識部位を含む配列)または少なくとも1つの自己切断ペプチドをコードする配列(2つ以上存在し得る)によって互いに連結することができる。

0152

本発明の特定の実施形態によると、ポリシストロニックメッセージを構成する遺伝子を連結する配列(複数可)によってコードされる切断部位を切断できるプロテアーゼ(複数可)は、本発明のポリヌクレオチドによってコードされる。より具体的には、プロテアーゼ(複数可)をコードする遺伝子(複数可)は、少なくとも1つのポリシストロニックメッセージの一部である。

0153

適切なプロテアーゼ切断部位および自己切断ペプチドは、当業者には公知である(例えば、Ryanら、1997;Scymczakら、2004を参照されたい)。プロテアーゼ切断部位の好ましい例は、ポチウイルスNIaプロテアーゼ(例えば、タバコetchウイルスプロテアーゼ)、ポチウイルスHCプロテアーゼ、ポチウイルスP1(P35)プロテアーゼ、ビオウイルス(byovirus)Nlaプロテアーゼ、ビオウイルスRNA−2コードプロテアーゼ、アフトウイルスLプロテアーゼ、エンテロウイルス2Aプロテアーゼ、ライノウイルス2Aプロテアーゼ、ピコルナ3Cプロテアーゼ、コモウイルス24Kプロテアーゼ、ネポウイルス24Kプロテアーゼ、RTSV(イネツングロスフェリカルウイルス)3Ciikeプロテアーゼ、PY\IF(パースニップ黄斑ウイルス)3C様プロテアーゼ、トロンビン、因子Xa、およびエンテロキナーゼである。その高い切断厳密性により、TEV(タバコetchウイルス)プロテアーゼ切断部位を使用することができる。

0154

例示的な自己切断ペプチド(「シス作用加水分解要素」、CHYSELとも呼ばれ;deFelipe(2002)を参照されたい)は、ポチウイルスおよびカルジオウイルス2Aペプチドに由来する。特定の自己切断ペプチドは、FMDV(口蹄疫ウイルス)由来2Aペプチド、ウマ鼻炎Aウイルス、ゾーシーアシナウイルス(Thosea’ asigna virus)、およびブタテッショウウイルスから選択することができる。

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