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技術 CLDN18.2及びCD3に対する抗体コンストラクト

出願人 アムジェンリサーチ(ミュニック)ゲゼルシャフトミットベシュレンクテルハフツングアムジエン・インコーポレーテツド
発明者 クリストフ・ダールホフクラウディア・ブルーメルヨハンネス・ブロージートビアス・ラウムエリーザベト・ナールボルトタラ・アーベッドソンアーウィン・チェンサンドラ・ロスジュリー・ベーリス
出願日 2019年8月5日 (1年3ヶ月経過) 出願番号 2019-143907
公開日 2020年2月6日 (9ヶ月経過) 公開番号 2020-018298
状態 未査定
技術分野 ペプチド又は蛋白質 化合物または医薬の治療活性 抗原、抗体含有医薬:生体内診断剤 微生物による化合物の製造 微生物、その培養処理 突然変異または遺伝子工学
主要キーワード 比較構造 境界範囲 受容状態 クレーム要素 スクイージ ギャップ計 評価シート 置換範囲
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図面 (11)

課題

CLDN18.2及びCD3に対する抗体コンストラクトを提供する。

解決手段

本発明は、クローディン18.2(CLDN18.2)に結合するドメインと、CD3に結合する別のドメインとを含む抗体コンストラクトに関する。更に、本発明は、この抗体コンストラクトをコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含むベクター及び前記ポリヌクレオチド又はベクターで形質転換又はトランスフェクトされた宿主細胞を提供する。更に、本発明は、本発明の抗体コンストラクトを作製する方法、前記抗体コンストラクトの医学的使用及び前記抗体コンストラクトを含むキットを提供する。

概要

背景

クローディンは、上皮タイトジャンクションの重要な構造的及び機能的成分であり、細胞透過性を調節し、イオン恒常性を維持し、細胞接着及び極性支え役割を果たす。クローディンは、細胞膜内で又は細胞膜を越えて多量体化することにより防護壁を形成する22〜27kDの4回膜貫通型タンパク質である。既報告の24個のクローディンタンパク質は、その組織局在特異性及び他のタンパク質とのその相互作用が異なっている。

クローディン18(CLDN18)は、当初、転写因子T/EBP/NKX2.1の標的遺伝子として同定された。他のクローディンファミリーメンバーとのその相同性と一致して、CLDN18は、マウス及びヒトの細胞タイトジャンクションに局在することが確認された。CLDN18は、選択的スプライシングによって生成される2つのアイソフォーム:正常に特異的に発現するCLDN18.1及び胃粘膜分化型細胞に発現するCLDN18.2をコードすることが示された。

CLDN18.2は、2つの細胞外ループを含む261アミノ酸タンパク質であり、CLDN18.1と92%の配列同一性を有する。第2の細胞外ループと異なり、CLDN18.2の第1の細胞外ループは、CLDN18.1と8アミノ酸の差を有する。他のファミリーメンバーとのCLDN18.2の相同性は、より限られたものであり、CLDN1、CLDN6及びCLDN7との全体的同一性は、29〜34%である。

CLDN18.2は、胃がん膵がん食道がんムチン卵巣がん及び非小細胞肺がんを含め、幾つかの腫瘍型に発現する。胃がんにおけるCLDN18.2発現は、浸潤深部及び転移部位を含むが、しかし、これらの状況では、絶対的CLDN18レベルが低下することが報告される。複数の腫瘍型でのCLDN18.2の発現は、正常組織発現が主にの分化型細胞に限定されることと併せて、CLDN18.2を胃がん及び他の対象疾患の治療標的として考えることにつながっている。

胃がん及び胃食道がんは、依然として医療ニーズがありながらも未だ対処されていない疾患であり、毎年世界で少なくとも140万件の新規症例及び110万件の死亡例が報告されている(Lordick and Janjigian,Nat Rev Cancer 2016)。典型的な第一選択治療には、手術並びに白金及びフルオロピリミジン化合物を含む併用化学療法が関わる。このレジメンによってクオリティオブライフが向上し、生存中央値で8〜10ヵ月延びる可能性があり得るものの、5年生存率は、依然として低い。

ターゲット療法は、代替的治療戦略を提供する。化学療法との併用でHer2陽性胃がん及び胃食道がんの第一選択治療として抗Her2モノクローナル抗体トラスツズマブ承認されている(Bang et al.,The Lancet 2010)。化学療法後に進行した胃がん及び胃食道がんの治療のために抗VEGFR2抗体ラムシルマブが承認されている(Fuchs et al.,The Lancet 2014)。これらの標的化薬剤により、化学療法単独と比較して生存率が更に上昇するが、その有効性は、標的発現の不均一さ及び耐性機構によって制限されている。

近年、免疫チェックポイント療法が特定の状況で活性を実証している。ペンブロリズマブは、胃がんを含めた高頻度マイクロサテライト不安定性MSI−H)腫瘍の治療(Le et al.,Science 2017)及び2次以上の化学療法ライン後に進行した切除不能な進行又は再発胃がんの治療(Fuchs et al.,J Clin Oncol 2017)のために米国で承認された。ニボルマブは、化学療法後に進行した切除不能な進行又は再発胃がんの治療のために日本で承認された(Kang et al.,The Lancet,2017)。これらの試験において完全奏効を示したのは、任意抽出集団における患者の僅か1〜2%及びMSI−H(高頻度マイクロサテライト不安定性)集団の60%(胃及び胃食道全症例の9%)であった。従って、より大きい患者集団持続的奏効をもたらす潜在的能力のある新規療法がなおも必要とされている。

膵がんは、利用可能な療法に対する奏効性が胃がん又は胃食道がんよりも更に低いことが分かっている。毎年世界で膵がんによる少なくとも338,000症例及び331,000死亡例が報告されており、生存期間中央値は、6ヵ月である(Ilic and Ilic,World J Gastroenterol 2016)。外科切除の候補となるのは、僅か20〜30%の患者である。これまで、ゲムシタビンが第一選択療法と考えられてきたが、最近になって併用化学療法レジメン、フォフィノックス5−フルオロウラシルロイコボリンオキサリプラチンイリノテカン)及びゲムシタビンとnab−パクリタキセルは、ゲムシタビン治療単独と比べて全生存を約2〜5ヵ月上昇させることが示された(Uccello et al.,Curr Oncol 2018)。第二選択療法では、典型的には他の化学療法併用が用いられる。進行膵がんにおける幾つかのターゲット療法及び免疫療法薬剤が評価されているが、成功は限られている。膵腫瘍は、この奏効性の欠如に至らしめる線維形成及び免疫抑制性免疫浸潤によって特徴付けられる。この免疫抑制環境を克服し、生存を延長させる潜在的能力のある新規療法が必要とされている。

T細胞上のCD3に結合する1つのドメインと、標的細胞上に発現するタンパク質に結合する1つのドメインとを含む二特異性抗体コンストラクトは、T細胞を標的細胞に直接結び付けてT細胞リダイレクト溶解を誘導する。この作用機序は、それが、共刺激活性化シグナルとは独立に任意のCD3陽性T細胞で機能し得る点で化学療法、ターゲット療法及び他の免疫療法と異なる(Klinger et al.,Immunol Reviews 2016)。胃がん、胃食道がん及び膵がんの細胞表面上におけるCLDN18.2の発現は、CLDN18.2×CD3抗体コンストラクトによるこれらの腫瘍型のターゲティングに向けた基礎を提供する。更に、CLDN18.2×CD3抗体コンストラクトは、ムチン性卵巣がん、結腸直腸がん及び非小細胞肺がんを含め、CLDN18.2を発現する更なる腫瘍型を標的とする潜在的能力を有する。

概要

CLDN18.2及びCD3に対する抗体コンストラクトを提供する。 本発明は、クローディン18.2(CLDN18.2)に結合するドメインと、CD3に結合する別のドメインとを含む抗体コンストラクトに関する。更に、本発明は、この抗体コンストラクトをコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含むベクター及び前記ポリヌクレオチド又はベクターで形質転換又はトランスフェクトされた宿主細胞を提供する。更に、本発明は、本発明の抗体コンストラクトを作製する方法、前記抗体コンストラクトの医学的使用及び前記抗体コンストラクトを含むキットを提供する。

目的

本発明は、この抗体コンストラクトをコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含むベクター及び前記ポリヌクレオチド又はベクターで形質転換又はトランスフェクトされた宿主細胞を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

標的細胞の表面上のCLDN18.2に結合する第1のドメインと、・T細胞の表面上のヒトCD3に結合する第2のドメインとを含む抗体コンストラクトであって、前記第1のドメインは、標的細胞の表面上のCLDN18.2に結合するドメインであって、a)配列番号121に示されるCDR−H1、配列番号122に示されるCDR−H2及び配列番号123に示されるCDR−H3を含むVH領域、並びに配列番号124に示されるCDR−L1、配列番号125に示されるCDR−L2及び配列番号126に示されるCDR−L3を含むVL領域;b)配列番号133に示されるCDR−H1、配列番号134に示されるCDR−H2及び配列番号135に示されるCDR−H3を含むVH領域、並びに配列番号136に示されるCDR−L1、配列番号137に示されるCDR−L2及び配列番号138に示されるCDR−L3を含むVL領域;c)配列番号127に示されるVH領域及び配列番号128に示されるVL領域;又はd)配列番号139に示されるVH領域及び配列番号140に示されるVL領域を含むドメインを含む抗体又は抗体コンストラクトと同じCLDN18.2のエピトープに結合する、抗体コンストラクト。

請求項2

前記第2のドメインは、ヒトCD3ε、及びコモンマーモセット(Callithrixjacchus)又はリスザル(Saimirisciureus)CD3εに結合する、請求項1に記載の抗体コンストラクト。

請求項3

a)前記抗体コンストラクトは、単鎖抗体コンストラクトであり、b)前記第1のドメインは、scFvのフォーマットであり、c)前記第2のドメインは、scFvのフォーマットであり、d)前記第1のドメイン及び前記第2のドメインは、リンカーを介して接続されており、及び/又はe)前記抗体コンストラクトは、延長された血清半減期をもたらすドメインを含む、請求項1又は2に記載の抗体コンストラクト。

請求項4

前記第1のドメインは、CLDN18.1、CLDN1、CLDN2、CLDN3、CLDN4、CLDN6及び/又はCLDN9に結合しないか又は有意に結合しない、請求項1〜3のいずれか一項に記載の抗体コンストラクト。

請求項5

前記第1のドメインは、a)配列番号121に示されるCDR−H1、配列番号122に示されるCDR−H2及び配列番号123に示されるCDR−H3、配列番号124に示されるCDR−L1、配列番号125に示されるCDR−L2及び配列番号126に示されるCDR−L3;及びb)配列番号133に示されるCDR−H1、配列番号134に示されるCDR−H2及び配列番号135に示されるCDR−H3、並びに配列番号136に示されるCDR−L1、配列番号137に示されるCDR−L2及び配列番号138に示されるCDR−L3からなる群から選択されるCDR−H1、CDR−H2及びCDR−H3を含むVH領域、並びにCDR−L1、CDR−L2及びCDR−L3を含むVL領域を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の抗体コンストラクト。

請求項6

前記第1のドメインは、配列番号127又は配列番号139に示されるアミノ酸配列を有するVH領域を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の抗体コンストラクト。

請求項7

前記第1のドメインは、配列番号128又は配列番号140に示されるアミノ酸配列を有するVL領域を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の抗体コンストラクト。

請求項8

前記第1のドメインは、配列番号127及び配列番号128、又は配列番号139及び配列番号140に示されるアミノ酸配列を有するVH領域及びVL領域を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の抗体コンストラクト。

請求項9

前記第1のドメインは、配列番号129又は配列番号141に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の抗体コンストラクト。

請求項10

配列番号131、配列番号132、配列番号143及び配列番号144に示されるアミノ酸配列の群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むか又は前記ポリペプチドからなる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の抗体コンストラクト。

請求項11

請求項1〜10のいずれか一項に記載の抗体コンストラクトをコードするポリヌクレオチド

請求項12

請求項11に記載のポリヌクレオチドを含むベクター

請求項13

請求項11に記載のポリヌクレオチド又は請求項12に記載のベクターで形質転換又はトランスフェクトされた宿主細胞

請求項14

請求項1〜10のいずれか一項に記載の抗体コンストラクトを作製する方法であって、前記抗体コンストラクトの発現許容する条件下において、請求項13に記載の宿主細胞を培養することと、前記作製された抗体コンストラクトを培養物から回収することとを含む方法。

請求項15

請求項1〜10のいずれか一項に記載の抗体コンストラクト又は請求項14に記載の方法によって作製される抗体コンストラクトを含む医薬組成物

請求項16

疾患、好ましくは新生物の予防、治療又は改善における使用のための、請求項1〜10のいずれか一項に記載の抗体コンストラクト又は請求項14に記載の方法によって作製される抗体コンストラクト。

請求項17

前記疾患又は新生物は、消化管がん卵巣がん及び肺がんからなる群から選択される、請求項16に記載の抗体コンストラクト。

請求項18

前記消化管がんは、胃がん食道がん胃食道がん膵がん及び結腸直腸がんからなる群から選択される、請求項17に記載の抗体コンストラクト。

請求項19

請求項1〜10のいずれか一項に記載の抗体コンストラクト、請求項14に記載の方法によって作製される抗体コンストラクト、請求項11に記載のポリヌクレオチド、請求項12に記載のベクター及び/又は請求項13に記載の宿主細胞を含むキット

技術分野

0001

本発明は、クローディン18.2(CLDN18.2)に結合するドメインと、CD3に結合する別のドメインとを含む抗体コンストラクトに関する。更に、本発明は、この抗体コンストラクトをコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含むベクター及び前記ポリヌクレオチド又はベクターで形質転換又はトランスフェクトされた宿主細胞を提供する。更に、本発明は、本発明の抗体コンストラクトを作製する方法、前記抗体コンストラクトの医学的使用及び前記抗体コンストラクトを含むキットを提供する。

背景技術

0002

クローディンは、上皮タイトジャンクションの重要な構造的及び機能的成分であり、細胞透過性を調節し、イオン恒常性を維持し、細胞接着及び極性支え役割を果たす。クローディンは、細胞膜内で又は細胞膜を越えて多量体化することにより防護壁を形成する22〜27kDの4回膜貫通型タンパク質である。既報告の24個のクローディンタンパク質は、その組織局在特異性及び他のタンパク質とのその相互作用が異なっている。

0003

クローディン18(CLDN18)は、当初、転写因子T/EBP/NKX2.1の標的遺伝子として同定された。他のクローディンファミリーメンバーとのその相同性と一致して、CLDN18は、マウス及びヒトの細胞タイトジャンクションに局在することが確認された。CLDN18は、選択的スプライシングによって生成される2つのアイソフォーム:正常に特異的に発現するCLDN18.1及び胃粘膜分化型細胞に発現するCLDN18.2をコードすることが示された。

0004

CLDN18.2は、2つの細胞外ループを含む261アミノ酸タンパク質であり、CLDN18.1と92%の配列同一性を有する。第2の細胞外ループと異なり、CLDN18.2の第1の細胞外ループは、CLDN18.1と8アミノ酸の差を有する。他のファミリーメンバーとのCLDN18.2の相同性は、より限られたものであり、CLDN1、CLDN6及びCLDN7との全体的同一性は、29〜34%である。

0005

CLDN18.2は、胃がん膵がん食道がんムチン卵巣がん及び非小細胞肺がんを含め、幾つかの腫瘍型に発現する。胃がんにおけるCLDN18.2発現は、浸潤深部及び転移部位を含むが、しかし、これらの状況では、絶対的CLDN18レベルが低下することが報告される。複数の腫瘍型でのCLDN18.2の発現は、正常組織発現が主にの分化型細胞に限定されることと併せて、CLDN18.2を胃がん及び他の対象疾患の治療標的として考えることにつながっている。

0006

胃がん及び胃食道がんは、依然として医療ニーズがありながらも未だ対処されていない疾患であり、毎年世界で少なくとも140万件の新規症例及び110万件の死亡例が報告されている(Lordick and Janjigian,Nat Rev Cancer 2016)。典型的な第一選択治療には、手術並びに白金及びフルオロピリミジン化合物を含む併用化学療法が関わる。このレジメンによってクオリティオブライフが向上し、生存中央値で8〜10ヵ月延びる可能性があり得るものの、5年生存率は、依然として低い。

0007

ターゲット療法は、代替的治療戦略を提供する。化学療法との併用でHer2陽性胃がん及び胃食道がんの第一選択治療として抗Her2モノクローナル抗体トラスツズマブ承認されている(Bang et al.,The Lancet 2010)。化学療法後に進行した胃がん及び胃食道がんの治療のために抗VEGFR2抗体ラムシルマブが承認されている(Fuchs et al.,The Lancet 2014)。これらの標的化薬剤により、化学療法単独と比較して生存率が更に上昇するが、その有効性は、標的発現の不均一さ及び耐性機構によって制限されている。

0008

近年、免疫チェックポイント療法が特定の状況で活性を実証している。ペンブロリズマブは、胃がんを含めた高頻度マイクロサテライト不安定性MSI−H)腫瘍の治療(Le et al.,Science 2017)及び2次以上の化学療法ライン後に進行した切除不能な進行又は再発胃がんの治療(Fuchs et al.,J Clin Oncol 2017)のために米国で承認された。ニボルマブは、化学療法後に進行した切除不能な進行又は再発胃がんの治療のために日本で承認された(Kang et al.,The Lancet,2017)。これらの試験において完全奏効を示したのは、任意抽出集団における患者の僅か1〜2%及びMSI−H(高頻度マイクロサテライト不安定性)集団の60%(胃及び胃食道全症例の9%)であった。従って、より大きい患者集団持続的奏効をもたらす潜在的能力のある新規療法がなおも必要とされている。

0009

膵がんは、利用可能な療法に対する奏効性が胃がん又は胃食道がんよりも更に低いことが分かっている。毎年世界で膵がんによる少なくとも338,000症例及び331,000死亡例が報告されており、生存期間中央値は、6ヵ月である(Ilic and Ilic,World J Gastroenterol 2016)。外科切除の候補となるのは、僅か20〜30%の患者である。これまで、ゲムシタビンが第一選択療法と考えられてきたが、最近になって併用化学療法レジメン、フォフィノックス5−フルオロウラシルロイコボリンオキサリプラチンイリノテカン)及びゲムシタビンとnab−パクリタキセルは、ゲムシタビン治療単独と比べて全生存を約2〜5ヵ月上昇させることが示された(Uccello et al.,Curr Oncol 2018)。第二選択療法では、典型的には他の化学療法併用が用いられる。進行膵がんにおける幾つかのターゲット療法及び免疫療法薬剤が評価されているが、成功は限られている。膵腫瘍は、この奏効性の欠如に至らしめる線維形成及び免疫抑制性免疫浸潤によって特徴付けられる。この免疫抑制環境を克服し、生存を延長させる潜在的能力のある新規療法が必要とされている。

0010

T細胞上のCD3に結合する1つのドメインと、標的細胞上に発現するタンパク質に結合する1つのドメインとを含む二特異性抗体コンストラクトは、T細胞を標的細胞に直接結び付けてT細胞リダイレクト溶解を誘導する。この作用機序は、それが、共刺激活性化シグナルとは独立に任意のCD3陽性T細胞で機能し得る点で化学療法、ターゲット療法及び他の免疫療法と異なる(Klinger et al.,Immunol Reviews 2016)。胃がん、胃食道がん及び膵がんの細胞表面上におけるCLDN18.2の発現は、CLDN18.2×CD3抗体コンストラクトによるこれらの腫瘍型のターゲティングに向けた基礎を提供する。更に、CLDN18.2×CD3抗体コンストラクトは、ムチン性卵巣がん、結腸直腸がん及び非小細胞肺がんを含め、CLDN18.2を発現する更なる腫瘍型を標的とする潜在的能力を有する。

先行技術

0011

Lordick and Janjigian,Nat Rev Cancer 2016
Bang et al.,The Lancet 2010
Fuchs et al.,The Lancet 2014
Le et al.,Science 2017
Fuchs et al.,J Clin Oncol 2017
Kang et al.,The Lancet,2017
Ilic and Ilic,World J Gastroenterol 2016
Uccello et al.,Curr Oncol 2018
Klinger et al.,Immunol Reviews 2016

課題を解決するための手段

0012

このように、一態様において、本発明は、標的細胞の表面上のCLDN18.2に結合する第1のドメインと、T細胞の表面上のCD3に結合する第2のドメインとを含む抗体コンストラクトを提供する。

0013

また、
(1)本発明の抗体コンストラクトの第1のドメインは、CLDN18.2の第1の細胞外ループ(ループ1)に結合し;
(2)本発明の抗体コンストラクトの第1のドメインは、標的細胞の表面上のCLDN18.2に結合するドメインであって、
a)配列番号121に示されるとおりのCDR−H1、配列番号122に示されるとおりのCDR−H2及び配列番号123に示されるとおりのCDR−H3を含むVH領域、並びに配列番号124に示されるとおりのCDR−L1、配列番号125に示されるとおりのCDR−L2及び配列番号126に示されるとおりのCDR−L3を含むVL領域
b)配列番号133に示されるとおりのCDR−H1、配列番号134に示されるとおりのCDR−H2及び配列番号135に示されるとおりのCDR−H3を含むVH領域、並びに配列番号136に示されるとおりのCDR−L1、配列番号137に示されるとおりのCDR−L2及び配列番号138に示されるとおりのCDR−L3を含むVL領域;
c)配列番号127に示されるとおりのVH領域及び配列番号128に示されるとおりのVL領域;又は
d)配列番号139に示されるとおりのVH領域及び配列番号140に示されるとおりのVL領域
を含むドメインを含む抗体又は抗体コンストラクトと同じCLDN18.2のエピトープに結合し;
(3)本発明の抗体コンストラクトは、標的細胞の表面上のCLDN18.2に結合するドメインであって、
a)配列番号121に示されるとおりのCDR−H1、配列番号122に示されるとおりのCDR−H2及び配列番号123に示されるとおりのCDR−H3を含むVH領域、並びに配列番号124に示されるとおりのCDR−L1、配列番号125に示されるとおりのCDR−L2及び配列番号126に示されるとおりのCDR−L3を含むVL領域;
b)配列番号133に示されるとおりのCDR−H1、配列番号134に示されるとおりのCDR−H2及び配列番号135に示されるとおりのCDR−H3を含むVH領域、並びに配列番号136に示されるとおりのCDR−L1、配列番号137に示されるとおりのCDR−L2及び配列番号138に示されるとおりのCDR−L3を含むVL領域;
c)配列番号127に示されるとおりのVH領域及び配列番号128に示されるとおりのVL領域;又は
d)配列番号139に示されるとおりのVH領域及び配列番号140に示されるとおりのVL領域
を含むドメインを含む抗体又は抗体コンストラクトと結合に関して競合し;
(4)本発明の抗体コンストラクトの第1のドメインは、配列番号22に示されるとおりのアミノ酸配列を有する標的細胞の表面上のCLDN18.2突然変異体に結合し、任意選択で、配列番号24に示されるとおりのアミノ酸配列を有する標的細胞の表面上のCLDN18.2突然変異体にも結合するが、配列番号23に示されるとおりのアミノ酸配列を有する標的細胞の表面上のCLDN18.2突然変異体に結合せず;
(5)本発明の抗体コンストラクトの第1のドメインは、配列番号14に示されるとおりのアミノ酸配列を有する標的細胞の表面上のCLDN18.2突然変異体及び/又はアミノ酸配列、配列番号15を有する標的細胞の表面上のCLDN18.2突然変異体に結合し、任意選択で、配列番号11、12、13、16、17、19、20及び21に示されるものからなる群から選択されるアミノ酸配列を有する標的細胞の表面上の1つ以上のCLDN18.2突然変異体にも結合するが、配列番号18に示されるとおりのアミノ酸配列を有する標的細胞の表面上のCLDN18.2突然変異体に結合せず;
(6)本発明の抗体コンストラクトの第1のドメインは、標的細胞の表面上のヒトCLDN18.2に結合し、ここで、ヒトCLDN18.2の56位のGlu(E)は、第1のドメインの結合に必須であり、ヒトCLDN18.2の42位のAla(A)及び/又は45位のAsn(N)は、第1のドメインの結合に必須でなく;及び/又は
(7)本発明の抗体コンストラクトの第1のドメインは、配列番号266に示されるとおりのアミノ酸配列を含むが、配列番号265に示されるとおりのアミノ酸配列を含まず、任意選択で、配列番号267に示されるとおりのアミノ酸配列も含まないCLDN18.2のエピトープに結合する
ことも想定される。

0014

有利には、本発明の抗体コンストラクトによって認識されるCLDN18.2のエピトープのターゲティングは(実施例2も参照されたい)、以下の利益を提供する:
(1)CLDN18.1に対するCLDN18.2×CD3抗体コンストラクトの選択性(実施例6を参照されたい)、及び
(2)CLDN18.2×CD3抗体コンストラクトの予想外に高い細胞傷害能(実施例7.4を参照されたい)。

0015

用語「抗体コンストラクト」は、その構造及び/又は機能が抗体、例えば完全長免疫グロブリン分子の構造及び/又は機能をベースとする分子を指す。従って、抗体コンストラクトは、その標的又は抗原免疫特異的に結合し、且つ/又は抗体コンストラクトは、抗体の重鎖可変領域(VH)及び/又は軽鎖可変領域(VL)を含むか、又はそれに由来するドメインを含む。本発明に係る抗体コンストラクトは、免疫特異的標的結合を可能にする抗体の最小限の構造要件を含む。この最小限の要件は、例えば、少なくとも3つの軽鎖CDR(即ちVL領域のCDR1、CDR2及びCDR3)及び/又は3つの重鎖CDR(即ちVH領域のCDR1、CDR2及びCDR3)、好ましくは6つ全てのCDRの存在によって定義付けられ得る。従って、抗体コンストラクトは、いずれか一方又は両方の結合ドメインにおける3つ又は6つのCDRの存在によって特徴付けられ得、当業者は、結合ドメイン内でそれらのCDRがいずれの箇所に(どのような順序で)位置するかを分かっている。

0016

本発明に係る「抗体」の定義は、ラクダ科動物抗体及びバイオテクノロジー又はプロテインエンジニアリングの方法又はプロセスによって作成される他の免疫グロブリンも含め、完全長抗体を含む。こうした完全長抗体は、例えば、モノクローナル組換えキメラ脱免疫化ヒト化及びヒト抗体並びにマウス、ハムスターウサギラットヤギ又は非ヒト霊長類などの他の種からの抗体であり得る。

0017

本発明の「抗体コンストラクト」は、それが天然に存在するとおりの完全長免疫グロブリンの構造を有し得る。例えば、抗体コンストラクトは、(少なくとも)2つの完全長抗体重鎖と2つの完全長抗体軽鎖とを含み得る。しかしながら、本発明に係る抗体コンストラクトが、CLDN18.2に結合する1つのドメインと、CD3に結合する別のドメインとを含むことを考えれば、これは、天然に存在せず、天然に存在する産物とその機能が著しく異なる。従って、本発明の抗体コンストラクトは、特異性が異なる少なくとも2つの個別の結合ドメインを含む人工ハイブリッド」分子である。

0018

本発明の「抗体コンストラクト」は、VH、VHH、VL、(s)dAb、Fv、軽鎖(VL−CL)、Fd(VH−CH1)、重鎖、Fab、Fab’、F(ab’)2又は「rIgG」(重鎖と軽鎖とからなる「半抗体」)など、完全長抗体の断片も含み得る。本発明に係る抗体コンストラクトは、抗体変異体又は抗体誘導体とも称される抗体の修飾断片も含み得る。例としては、限定されないが、scFv、di−scFv又はbi(s)−scFv、scFv−Fc、scFv−ジッパー、scFab、Fab2、Fab3、ダイアボディ単鎖ダイアボディ、タンデムダイアボディ(Tandab)、タンデムdi−scFv、タンデムtri−scFv、以下のとおりの構造:(VH−VL−CH3)2、(scFv−CH3)2、((scFv)2−CH3+CH3)、((scFv)2−CH3)又は(scFv−CH3−scFv)2によって例示される「ミニボディ」、トリアディ又はテトラボディなどのマルチボディ及び他の可変領域又はドメインと無関係に抗原又は標的に特異的に結合する、VHH、VH又はVLであり得る1つのみの可変領域を含むナノボディ又はシングル可変ドメイン抗体などのシングルドメイン抗体が挙げられる。本発明に係る抗体コンストラクトの更なる可能なフォーマットは、クロスボディ、マキシボディ、ヘテロFcコンストラクト、モノFcコンストラクト及びscFcコンストラクトである。これらのフォーマットの例については、本明細書で以下に記載する。

0019

更に、用語「抗体コンストラクト」の定義には、2、3つ又はそれを超える抗原構造に異なる結合ドメインを介して特異的に結合する二価及び多価/多原子価コンストラクト並びに二特異性及び多特異性/多重特異性コンストラクトが含まれる。抗体コンストラクトは、特異性よりも大きい結合価を有することもあり、例えば、それが第1の標的(Cldn18.2)に対して2つの結合ドメインを有し、第2の標的(CD3)に対して1つの結合ドメインを有する場合又はその逆の場合であり、この場合、コンストラクトは、三価であり且つ二特異性である。一般に、用語「二特異性」には、抗体コンストラクトがCldn18.2及びCD3など、(少なくとも)2つの異なる抗原に結合するという意味が含まれる。

0020

更に、用語「抗体コンストラクト」の定義には、1つのポリペプチド鎖のみからなる分子が含まれると共に、2、3、4つ又はそれを超えるポリペプチド鎖からなる分子も含まれ、これらの鎖は、同じであるか(ホモ二量体ホモ三量体又はホモオリゴマー)又は異なり得る(ヘテロ二量体ヘテロ三量体又はヘテロオリゴマー)。上記に特定した抗体及びその断片、変異体誘導体並びにそれに由来する抗体コンストラクトの例は、とりわけ、Harlow and Lane,Antibodies:A laboratory manual,CSHLPress(1988);Kontermann and Duebel,Antibody Engineering,Springer,2nd ed.2010;及びLittle,Recombinant Antibodies for Immunotherapy,Cambridge University Press 2009に記載されている。

0021

用語「結合ドメイン」又は「〜に結合するドメイン」は、本発明に関連して、標的又は抗原(ここでは、第1のドメインの場合にCLDN18.2及び第2のドメインの場合にCD3)上のエピトープに免疫特異的に結合する/それと相互作用する/それを認識する抗体コンストラクトのドメインを特徴付ける。第1のドメインの構造及び機能(CLDN18.2への結合)並びにまた好ましくは第2のドメインの構造及び/又は機能(CD3への結合)は、抗体、例えば完全長免疫グロブリン分子の構造及び/又は機能をベースとする。従って、「結合ドメイン」又は「〜に結合するドメイン」は、免疫特異的標的結合を可能にする抗体の最小限の構造要件を含み得る。第1のドメインのこの最小限の構造要件は、例えば、少なくとも3つの軽鎖CDR(即ちVL領域のCDR1、CDR2及びCDR3)及び/又は3つの重鎖CDR(即ちVH領域のCDR1、CDR2及びCDR3)、好ましくは6つ全てのCDRの存在によって定義付けられ得る。第2のドメインも、免疫特異的標的結合を可能にする抗体のこの最小限の構造要件を含むことが想定される。より好ましくは、第2のドメインも少なくとも3つの軽鎖CDR(即ちVL領域のCDR1、CDR2及びCDR3)及び/又は3つの重鎖CDR(即ちVH領域のCDR1、CDR2及びCDR3)、好ましくは6つ全てのCDRを含む。「〜に結合するドメイン」(又は「結合ドメイン」)は、典型的には抗体軽鎖可変領域(VL)と抗体重鎖可変領域(VH)とを含み得る。しかしながら、それが両方を含む必要はなく、VH又はVLの一方のみを含み得る。Fd断片は、例えば、インタクト抗原結合ドメインの一部の抗原結合機能を保持していることが多い。

0022

「〜に結合するドメイン」(又は「結合ドメイン」)のフォーマットの例としては、限定されないが、完全長抗体、完全長抗体の断片(VH、VHH、VLなど)、(s)dAb、Fv、軽鎖(VL−CL)、Fd(VH−CH1)、重鎖、Fab、Fab’、F(ab’)2又は「rIgG」(「半抗体」)、抗体変異体又は誘導体、例えばscFv、di−scFv又はbi(s)−scFv、scFv−Fc、scFv−ジッパー、scFab、Fab2、Fab3、ダイアボディ、単鎖ダイアボディ、タンデムダイアボディ(Tandab)、タンデムdi−scFv、タンデムtri−scFv、(VH−VL−CH3)2、(scFv−CH3)2、((scFv)2−CH3+CH3)、((scFv)2−CH3)又は(scFv−CH3−scFv)2などのフォーマットから選択される「ミニボディ」、トリアボディ又はテトラボディなどのマルチボディ及びVHH、VH又はVLであり得る1つのみの可変領域を含むナノボディ又はシングル可変ドメイン抗体などのシングルドメイン抗体が挙げられる。「〜に結合するドメイン」(又は「結合ドメイン」)のフォーマットの更なる例としては、(1)VL、VH、CL及びCH1を含む抗体断片又は変異体(Fabなど);(2)2つの連結したFab断片を含む抗体断片又は変異体(F(ab’)2など);(3)VH及びCH1を含む抗体断片又は変異体(Fdなど);(4)VL及びCLを含む抗体断片又は変異体(軽鎖など);(5)VL及びVHを含む抗体断片又は変異体(Fvなど);(6)dAb断片(Ward et al.,(1989)Nature 341:544−546)、これは、VHドメインを有する;(7)重鎖及び/又は軽鎖の少なくとも3つの単離されたCDRを含む抗体変異体;及び(8)単鎖Fv(scFv)が挙げられる。本発明に係る抗体コンストラクト又は結合ドメインの実施形態の例は、例えば、国際公開第00/006605号パンフレット、国際公開第2005/040220号パンフレット、国際公開第2008/119567号パンフレット、国際公開第2010/037838号パンフレット、国際公開第2013/026837号パンフレット、国際公開第2013/026833号パンフレット、米国特許出願公開第2014/0308285号明細書、米国特許出願公開第2014/0302037号明細書、国際公開第2014/144722号パンフレット、国際公開第2014/151910号パンフレット及び国際公開第2015/048272号パンフレットに記載されている。

0023

本発明の抗体コンストラクトについて、
a)抗体コンストラクトは、単鎖ポリペプチド又は単鎖抗体コンストラクトであり、
b)第1のドメインは、scFvのフォーマットであり、
c)第2のドメインは、scFvのフォーマットであり、
d)第1のドメイン及び第2のドメインは、リンカー、好ましくはペプチドリンカー、より好ましくはグリシンセリンリンカーを介して接続されており、及び/又は
e)抗体コンストラクトは、Fcベースのドメインなど、延長された血清半減期をもたらすドメインを含む
ことが想定される。

0024

本発明の抗体コンストラクトは、好ましくは、「インビトロ生成抗体コンストラクト」及び/又は「組換え抗体コンストラクト」である。本発明との関連において、用語「インビトロ生成」は、結合ドメイン又は可変領域(例えば、少なくとも1つのCDR)の全て又は一部がタンパク質チップ上の非免疫細胞選択、例えばインビトロファージディスプレイ又は候補アミノ酸配列をその抗原への結合能力に関して試験することのできる任意の他の方法で生成されている上記の定義に従う抗体コンストラクトを指す。従って、この用語は、好ましくは、単に動物免疫細胞におけるゲノム再編成によって生成された配列を除外する。抗体コンストラクトの第1及び/又は第2のドメインは、既存の(モノクローナル)抗体からのCDR配列足場グラフトすることによるよりむしろ、ファージディスプレイ又はライブラリスクリーニング方法によって作製されるか又はそれによって入手可能であることが想定される。「組換え抗体コンストラクト」は、(とりわけ)組換えDNA技術又は遺伝子工学を用いて生成又は作製された抗体コンストラクトである。

0025

本発明の抗体コンストラクトは、モノクローナルであることが想定される。本明細書で使用されるとき、「モノクローナル」(mAb)と称される抗体又は抗体コンストラクトは、実質的に均一な抗体/抗体コンストラクトの集団から入手され、即ち、集団中に含まれる個々の抗体/抗体コンストラクトは、微量で存在し得る天然に起こる可能な突然変異及び/又は翻訳後修飾(例えば、異性化アミド化)を除けば(詳細にはそのアミノ酸配列の点で)同一である。モノクローナル抗体/抗体コンストラクトは、高度に特異的であり、抗原内の単一のエピトープを対象とし、これは、典型的には異なる決定基(又はエピトープ)を対象とする異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物対照的である。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ培養によって合成され、従って他の免疫グロブリンによる汚染を受けない点で有利である。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体集団から入手されるものとしての抗体/抗体コンストラクトの性質を指し示し、いずれかの特定の方法による抗体の作製が必要なものと解釈されてはならない。

0026

モノクローナル抗体の調製には、連続細胞株培養物によって作製される抗体を提供する任意の技法を用いることができる。例えば、使用されるモノクローナル抗体は、Koehler et al.,Nature,256:495(1975)によって最初に記載されたハイブリドーマ方法によって作られ得、又は組換えDNA方法(例えば、米国特許第4,816,567号明細書を参照されたい)によって作られ得る。ヒトモノクローナル抗体を作製する更なる技法の例としては、トリオーマ技法、ヒトB細胞ハイブリドーマ技法(Kozbor,Immunology Today 4(1983),72)及びEBV−ハイブリドーマ技法(Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.(1985),77−96)が挙げられる。

0027

次に、ハイブリドーマは、酵素結合免疫吸着アッセイELISA)及び表面プラズモン共鳴(BIACORE(商標))分析などの標準方法を用いてスクリーニングして、特定の抗原に免疫特異的に結合する抗体を作製する1つ以上のハイブリドーマを同定することができる。免疫原としては、任意の形態の関連抗原、例えば組換え抗原、天然に存在する形態、その任意の変異体又は断片並びにその抗原ペプチドを使用し得る。BIAcore(商標)システムで利用されているとおりの表面プラズモン共鳴を用いると、標的抗原のエピトープに結合するファージ抗体/抗体コンストラクトの効率を増加させることができる(Schier,Human Antibodies Hybridomas 7(1996),97−105;Malmborg,J.Immunol.Methods183(1995),7−13)。

0028

抗体コンストラクト又は結合ドメインを作製する別の例示的方法としては、タンパク質発現ライブラリ、例えばファージディスプレイ又はリボソームディスプレイライブラリのスクリーニングが挙げられる。ファージディスプレイについては、例えば、Ladner et al.、米国特許第5,223,409号明細書;Smith(1985)Science 228:1315−1317、Clackson et al.,Nature,352:624−628(1991)及びMarks et al.,J.Mol.Biol.,222:581−597(1991)に記載されている。

0029

ディスプレイライブラリの使用に加えて、関連抗原を使用して非ヒト動物、例えばげっ歯類(マウス、ハムスター、ウサギ又はラットなど)を免疫化することができる。一実施形態において、非ヒト動物は、ヒト免疫グロブリン遺伝子の少なくとも一部を含む。例えば、ヒトIg(免疫グロブリン)遺伝子座の大型断片を有するマウス抗体産生が欠損したマウス系統をエンジニアリングすることが可能である。ハイブリドーマ技術を用いて、所望の特異性を有する遺伝子に由来する抗原特異的モノクローナル抗体を作製し、選択し得る。例えば、Xenomouse(商標)、Green et al.(1994)Nature Genetics 7:13−21、米国特許出願公開第2003−0070185号明細書、国際公開第96/34096号パンフレット及び国際公開第96/33735号パンフレットを参照されたい。

0030

モノクローナル抗体は、非ヒト動物から入手し、次に当該技術分野において公知の組換えDNA技法を用いて修飾する、例えばヒト化する、脱免疫化する、キメラにするなども行うことができる。修飾された抗体コンストラクト又は結合ドメインの例としては、非ヒト抗体/抗体コンストラクトのヒト化変異体、「親和性成熟」抗体コンストラクト又は結合ドメイン(例えば、Hawkins et al.J.Mol.Biol.254,889−896(1992)及びLowman et al.,Biochemistry 30,10832−10837(1991)を参照されたい)及び改変されたエフェクター機能を有する抗体変異体又は突然変異体(例えば、米国特許第5,648,260号明細書、Kontermann and Duebel(2010),loc.cit.及びLittle(2009),loc.cit.を参照されたい)が挙げられる。

0031

免疫学では、親和性成熟は、免疫応答過程でB細胞が抗原親和性の増加した抗体を産生するプロセスである。同じ抗原への曝露が繰り返されると、宿主は、連続してより高い親和性の抗体を産生することになる。天然のプロトタイプと同様に、インビトロ親和性成熟は、突然変異と選択の原理に基づく。インビトロ親和性成熟は、抗体、抗体断片、抗体変異体、抗体コンストラクト又は結合ドメインの最適化に成功裏に用いられている。放射線化学的突然変異原又はエラープローンPCRを用いてCDR内部にランダム突然変異が導入される。加えて、チェインシャッフリングにより遺伝的多様性を増加させることができる。通常、ファージディスプレイなどのディスプレイ方法を用いた2又は3ラウンドの突然変異及び選択により、低ナノモル濃度範囲の親和性の抗体、抗体断片、抗体変異体、抗体コンストラクト又は結合ドメインが得られる。

0032

本発明の抗体コンストラクト又は結合ドメインの好ましい種類のアミノ酸置換変異には、親抗体構造(例えば、ヒト化抗体又はヒト抗体構造)の超可変領域内の1つ以上の残基を置換することが関わる。概して、結果として得られた、更なる開発のために選択された1つ又は複数の変異体は、その生成の元になった親抗体構造と比べて向上した生物学的特性を有することになる。かかる置換変異体好都合生成方法には、ファージディスプレイを用いた親和性成熟が関わる。簡潔に言えば、超可変領域の幾つかの部位(例えば、6〜7部位)を突然変異させて、各部位に可能な全てのアミノ酸置換を生成する。このように生成された変異体を、各粒子内にパッケージングされたM13の遺伝子III産物との融合物として繊維状ファージ粒子から一価方式で提示させる。次に、ファージに提示された変異体を、本明細書に開示されるとおりその生物学的活性(例えば、結合親和性)に関してスクリーニングする。抗原結合に大きく寄与する候補超可変領域部位(修飾候補)を同定するため、アラニンスキャニング突然変異誘発も実施し得る。代わりに又は加えて、抗原と抗体コンストラクト又は結合ドメインとの間の複合体の結晶構造解析は、結合ドメインとその特異的抗原との間の接触点の同定に有益であり得る。かかる接触残基及び隣接残基は、本明細書に詳述する技法による置換の候補である。かかる変異体が生成されたら、変異体のパネルを本明細書に記載されるとおりのスクリーニングに供し、1つ以上の関連アッセイにおいて優れた特性を有する抗体、その抗原結合断片、抗体コンストラクト又は結合ドメインを更なる開発のために選択し得る。

0033

本発明の抗体コンストラクト及び結合ドメインは、特に、重鎖及び/又は軽鎖の一部分が、特定の種に由来する抗体又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同である一方、残りの鎖が、別の種に由来する抗体又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体並びに所望の生物学的活性を呈する限り、かかる抗体の断片又は変異体の対応する配列と同一又は相同である「キメラ」バージョンを含む(米国特許第4,816,567号明細書;Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851−6855(1984))。本明細書における目的のキメラ抗体コンストラクト又は結合ドメインには、非ヒト霊長類(例えば、旧世界ザル類人猿等)に由来する可変ドメイン抗原結合配列とヒト定常領域配列とを含む「霊長類化」抗体コンストラクトが含まれる。キメラ抗体又は抗体コンストラクトを作製する種々の手法が記載されている。例えば、Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.ScL U.S.A.81:6851,1985;Takeda et al.,Nature 314:452,1985、Cabilly et al.,米国特許第4,816,567号明細書;Boss et al.,米国特許第4,816,397号明細書;Tanaguchi et al.,欧州特許第0171496号明細書;欧州特許第0173494号明細書;及び英国特許第2177096号明細書を参照されたい。

0034

抗体、抗体コンストラクト、抗体断片、抗体変異体又は結合ドメインは、例えば、国際公開第98/52976号パンフレット又は国際公開第00/34317号パンフレットに開示される方法を用いて、ヒトT細胞エピトープの特異的欠失(「脱免疫化」と呼ばれる方法)によっても修飾され得る。簡潔に言えば、MHCクラスIIに結合するペプチドに関して抗体、抗体コンストラクト又は結合ドメインの重鎖及び軽鎖可変領域を分析することができる。これらのペプチドは、潜在的T細胞エピトープに相当する(例えば、国際公開第98/52976号パンフレット及び国際公開第00/34317号パンフレットに定義されるとおり)。潜在的T細胞エピトープの検出のため、「ペプチドスレッディング」と称されるコンピュータモデリング手法を適用することができ、加えて、国際公開第98/52976号パンフレット及び国際公開第00/34317号パンフレットに記載されるとおり、VH及びVL配列に存在するモチーフに関してヒトMHCクラスII結合ペプチドデータベース検索することができる。これらのモチーフは、18個の主要MHCクラスIl DRアロタイプのいずれかに結合し、従って潜在的T細胞エピトープを成す。検出された潜在的T細胞エピトープは、可変ドメイン又は可変領域内の少数アミノ酸残基の置換によって又は好ましくは単一アミノ酸置換によって除去することができる。典型的には、保存的置換が行われる。多くの場合、限定されないが、ヒト生殖細胞系列抗体配列においてある位置に共通するアミノ酸を使用し得る。ヒト生殖系列配列については、例えば、Tomlinson,et al.(1992)J.MoI.Biol.227:776−798;Cook,G.P.et al.(1995)Immunol.Today Vol.16(5):237−242;及びTomlinson et al.(1995)EMBO J.14:14:4628−4638に開示されている。V BASEディレクトリ(www2.mrc−lmb.cam.ac.uk/vbase/list2.php)は、ヒト免疫グロブリン可変領域配列の包括的な要覧を提供する(編纂者Tomlinson,LA.et al.MRC Centre for Protein Engineering,Cambridge,UK)。これらの配列は、例えば、フレームワーク領域及びCDRのヒト配列供給源として使用することができる。コンセンサスヒトフレームワーク領域も、例えば、米国特許第6,300,064号明細書に記載されるとおり使用することができる。

0035

「ヒト化」抗体、その変異体又は断片、抗体コンストラクト及び結合ドメインは、主としてヒト配列の免疫グロブリンをベースとし、これは、非ヒト免疫グロブリンに由来する1つ又は複数の最小限の配列を含有する。ほとんどの場合、ヒト化抗体、その変異体又は断片、抗体コンストラクト及び結合ドメインは、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)をベースとし、超可変領域又はCDRからの残基は、所望の特異性、親和性、能力及び/又は生物学的活性を有するげっ歯類(例えば、マウス、ハムスター、ラット又はウサギ)などの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域又はCDR残基に置き換えられている。一部の例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基に置き換えられる。更に、本明細書で使用されるとおりの「ヒト化」抗体、その変異体又は断片、抗体コンストラクト及び結合ドメインは、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見られない残基も含み得る。これらの修飾は、抗体性能を更に改良し、最適化するために行われる。ヒト化抗体、その変異体又は断片、抗体コンストラクト及び結合ドメインは、免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部分(Fcなど)、典型的にはヒト免疫グロブリンのものも含み得る。更なる詳細については、Jones et al.,Nature,321:522−525(1986);Reichmann et al.,Nature,332:323−329(1988);及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.,2:593−596(1992)を参照されたい。

0036

ヒト化抗体、その変異体又は断片、抗体コンストラクト及び結合ドメインは、抗原結合に直接関わらない(Fv)可変領域の配列をヒト(Fv)可変領域からの均等な配列に置き換えることにより作成され得る。かかる分子の例示的作成方法は、Morrison(1985)Science 229:1202−1207により;Oi et al.(1986)BioTechniques 4:214により;及び米国特許第5,585,089号明細書;米国特許第5,693,761号明細書;米国特許第5,693,762号明細書;米国特許第5,859,205号明細書;及び米国特許第6,407,213号明細書により提供される。これらの方法は、重鎖又は軽鎖の少なくとも一方からの免疫グロブリン(Fv)可変領域の全て又は一部をコードする核酸配列を単離すること、操作すること、及び発現させることを含む。かかる核酸は、上記に記載したとおり、所定の標的に対する抗体を産生するハイブリドーマ及び他の供給源から入手され得る。次に、ヒト化抗体、その変異体又は断片、抗体コンストラクト又は結合ドメインをコードする組換えDNAを適切な発現ベクタークローニングすることができる。

0037

ヒト化抗体、その変異体又は断片、抗体コンストラクト及び結合ドメインは、ヒト重鎖及び軽鎖遺伝子を発現するが、内因性マウス免疫グロブリン重鎖及び軽鎖遺伝子の発現能を有しないマウスなど、トランスジェニック動物を使用しても作製され得る。Winterは、本明細書に記載されるヒト化分子の調製に用い得る例示的CDRグラフト方法について記載している(米国特許第5,225,539号明細書)。特定のヒト配列のCDRの全てが非ヒトCDRの少なくとも一部分に置き換えら得るか、又はCDRの一部のみが非ヒトCDRに置き換えられ得る。ヒト化分子が所定の抗原に結合するのに必要な数のCDRを置き換えるのみで十分である。

0038

ヒト化抗体、その変異体又は断片、抗体コンストラクト又は結合ドメインは、保存的置換、コンセンサス配列置換、生殖細胞系列置換及び/又は復帰突然変異の導入によって最適化することができる。かかる改変された免疫グロブリン分子は、当該技術分野において公知の幾つかの技法のいずれによって作られ得る(例えば、Teng et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,80:7308−7312,1983;Kozbor et al.,Immunology Today,4:7279,1983;Olsson et al.,Meth.Enzymol.,92:3−16,1982及び欧州特許第239 400号明細書)。

0039

ヒト抗マウス抗体(HAMA)反応のため、この業界では、キメラ又は他のヒト化抗体/抗体コンストラクトが調製されるようになった。しかしながら、特に抗体又は抗体コンストラクトの慢性又は多用量利用において、ある種のヒト抗キメラ抗体(HACA)反応が観察されるであろうことが予想される。従って、HAMA又はHACA反応の懸念及び/又は効果を払拭するため、CLDN18.2に対するヒト結合ドメイン及び/又はCD3に対するヒト結合ドメインを含む抗体コンストラクトを提供することが望ましいであろう。

0040

従って、一実施形態によれば、抗体コンストラクト、第1の結合ドメイン及び/又は第2の結合ドメインは、「ヒト」である。用語「ヒト抗体」、「ヒト抗体コンストラクト」及び「ヒト結合ドメイン」には、例えば、Kabat et al.(1991)(loc.cit.)により記載されるものを含め、当該技術分野において公知のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に実質的に対応する可変及び定常領域又はドメインなどの抗体由来領域を有するそれぞれ抗体、抗体コンストラクト及び結合ドメインが含まれる。本発明のヒト抗体コンストラクト又は結合ドメインは、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでランダム又は部位特異的突然変異誘発により導入されるか、又はインビボ体細胞突然変異により導入された突然変異)を例えばCDR、詳細にはCDR3に含み得る。ヒト抗体コンストラクト又は結合ドメインは、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基に置き換えられた少なくとも1、2、3、4、5つ又はそれを超える位置を有し得る。本明細書で使用されるとおりのヒト抗体、抗体コンストラクト及び結合ドメインの定義は、Xenomouseなどの技術又はシステムを用いて誘導し得るもののように、抗体の人工的及び/又は遺伝的に改変されていないヒト配列のみを含む完全ヒト抗体、抗体コンストラクト及び結合ドメインも企図する。

0041

少なくとも1つのヒト結合ドメインを含む抗体コンストラクトは、非ヒト、例えばげっ歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスター又はウサギ)可変及び/又は定常領域を有する抗体又は抗体コンストラクトに関連する問題の一部を回避する。かかるげっ歯類由来のタンパク質の存在は、抗体若しくは抗体コンストラクトの急速なクリアランスにつながることもあり、又は患者による抗体若しくは抗体コンストラクトに対する免疫応答の発生につながることもある。げっ歯類由来の抗体コンストラクトの使用を回避するため、げっ歯類が完全ヒト抗体を産生するようにげっ歯類にヒト抗体機能を導入してヒト化又は完全ヒト抗体コンストラクトを作成することができる。

0042

YACにメガベースサイズのヒト遺伝子座をクローニング及び再構築し、そのYACをマウス生殖細胞系列に導入可能であることにより、極めて大きい又は大雑把にのみマッピングされる遺伝子座の機能的構成要素解明し、且つ有用なヒト疾患モデルを作成する強力な手法が得られる。更に、マウス遺伝子座をそのヒト均等物に置換するためのかかる技術を用いれば、発生中のヒト遺伝子産物の発現及び調節、他のシステムとのそのコミュニケーション及び疾患の誘導及び進行におけるその関与に関してユニークな洞察を得ることができるであろう。

0043

かかる戦略の実際上重要な適用は、マウス体液性免疫系の「ヒト化」である。内因性Ig遺伝子が不活性化されているマウスにヒト免疫グロブリン(Ig)遺伝子座を導入することにより、抗体のプログラム化された発現及びアセンブリの根底にある機構並びにB細胞発生におけるその役割を研究する機会がもたらされる。更に、かかる戦略であれば、完全ヒトモノクローナル抗体(mAb)の作製に理想的な供給源−ヒト疾患における抗体療法の有望さの実現に向けた重要なマイルストーンがもたらされ得る。完全ヒト抗体又はそれに由来する抗体コンストラクトは、マウス又はマウス誘導体化mAbに固有免疫原性反応及びアレルギー反応を最小限に抑え、従って投与された抗体/抗体コンストラクトの有効性及び安全性が高まることが期待される。完全ヒト抗体又は抗体コンストラクトの使用は、反復的な化合物投与が必要な慢性及び再発性ヒト疾患、例えば炎症、自己免疫及びがんの治療において実質的な利点をもたらすことを期待できる。

0044

この目標に向けた1つの手法は、マウス抗体産生が欠損したマウス系統をヒトIg遺伝子座の大型断片でエンジニアリングすることであり、かかるマウスであればマウス抗体の非存在下で大きいレパートリーのヒト抗体を産生し得ることを見越したものであった。大型ヒトIg断片であれば、大きい可変遺伝子多様性並びに抗体産生及び発現の適切な調節を維持し得る。マウスの抗体多様化及び選択機構並びにヒトタンパク質に対する免疫寛容の欠如を利用することにより、こうしたマウス系統で再現されたヒト抗体レパートリーは、ヒト抗原を含め、任意の目的抗原に対して高親和性抗体をもたらすはずである。ハイブリドーマ技術を用いれば、所望の特異性を備える抗原特異的ヒトmAbを容易に作製及び選択することができるであろう。この一般的な戦略は、最初のXenoMouseマウス系統の作成に関連して実証された(Green et al. Nature Genetics 7:13−21(1994)を参照されたい)。このXenoMouse系統は、コア可変領域配列及び定常領域配列を含有した、ヒト重鎖遺伝子座及びκ軽鎖遺伝子座のそれぞれ245kb及び190kbサイズの生殖細胞系列配置断片を含有する酵母人工染色体(YAC)でエンジニアリングされた。ヒトIgを含有するYACは、抗体の再配列及び発現の両方についてマウスシステム適合性があることが分かり、不活性化されたマウスIg遺伝子の置換能を有した。これは、B細胞発生を誘導し、完全ヒト抗体の成人様ヒトレパートリーを産生し、且つ抗原特異的ヒトmAbを作成するその能力によって実証された。これらの結果は、より多数のV遺伝子、追加的な調節エレメント及びヒトIg定常領域を含有するヒトIg遺伝子座のより大きい部分を導入すれば、感染及び免疫化に対するヒト体液性応答特有の実質的に完全なレパートリーが再現され得ることも示唆した。Green et al.の研究は、それぞれヒト重鎖遺伝子座及びκ軽鎖遺伝子座のメガベースサイズの生殖細胞系列配置YAC断片を導入することによる約80%超のヒト抗体レパートリーの導入にまで拡張された。Mendez et al.Nature Genetics 15:146−156(1997)及び米国特許出願第08/759,620号明細書を参照されたい。

0045

XenoMouseモデルの作製については、米国特許出願第07/466,008号明細書、同第07/610,515号明細書、同第07/919,297号明細書、同第07/922,649号明細書、同第08/031,801号明細書、同第08/112,848号明細書、同第08/234,145号明細書、同第08/376,279号明細書、同第08/430,938号明細書、同第08/464,584号明細書、同第08/464,582号明細書、同第08/463,191号明細書、同第08/462,837号明細書、同第08/486,853号明細書、同第08/486,857号明細書、同第08/486,859号明細書、同第08/462,513号明細書、同第08/724,752号明細書及び同第08/759,620号明細書;及び米国特許第6,162,963号明細書;同第6,150,584号明細書;同第6,114,598号明細書;同第6,075,181号明細書及び同第5,939,598号明細書並びに日本国特許第3 068 180 B2号公報、同第3 068 506 B2号公報及び同第3 068 507 B2号公報に更に考察及び詳説されている。Mendez et al.Nature Genetics 15:146−156(1997)及びGreen and Jakobovits J.Exp.Med.188:483−495(1998)、欧州特許第0 463 151 B1号明細書、国際公開第94/02602号パンフレット、国際公開第96/34096号パンフレット、国際公開第98/24893号パンフレット、国際公開第00/76310号パンフレット及び国際公開第03/47336号パンフレットも参照されたい。

0046

代替的な手法において、GenPharm International,Inc.を含めた他の研究者らは、「ミニ遺伝子座」手法を利用している。ミニ遺伝子座手法では、Ig遺伝子座からのピース(個々の遺伝子)を含めることにより外因性Ig遺伝子座が模倣される。従って、1つ以上のVH遺伝子、1つ以上のDH遺伝子、1つ以上のJH遺伝子、μ定常領域及び第2の定常領域(好ましくはγ定常領域)が動物への挿入用コンストラクトとして形成される。この手法については、Surani et al.に対する米国特許第5,545,807号明細書及び各々Lonberg and Kayに対する米国特許第5,545,806号明細書;同第5,625,825号明細書;同第5,625,126号明細書;同第5,633,425号明細書;同第5,661,016号明細書;同第5,770,429号明細書;同第5,789,650号明細書;同第5,814,318号明細書;同第5,877,397号明細書;同第5,874,299号明細書;及び同第6,255,458号明細書、Krimpenfort and Bernsに対する米国特許第5,591,669号明細書及び同第6,023,010号明細書、Berns et al.に対する米国特許第5,612,205号明細書;同第5,721,367号明細書;及び同第5,789,215号明細書、及びChoi and Dunnに対する米国特許第5,643,763号明細書、及びGenPharm Internationalの米国特許出願第07/574,748号明細書、同第07/575,962号明細書、同第07/810,279号明細書、同第07/853,408号明細書、同第07/904,068号明細書、同第07/990,860号明細書、同第08/053,131号明細書、同第08/096,762号明細書、同第08/155,301号明細書、同第08/161,739号明細書、同第08/165,699号明細書、同第08/209,741号明細書に記載されている。欧州特許第0 546 073 B1号明細書、国際公開第92/03918号パンフレット、国際公開第92/22645号パンフレット、国際公開第92/22647号パンフレット、国際公開第92/22670号パンフレット、国際公開第93/12227号パンフレット、国際公開第94/00569号パンフレット、国際公開第94/25585号パンフレット、国際公開第96/14436号パンフレット、国際公開第97/13852号パンフレット及び国際公開第98/24884号パンフレット及び米国特許第5,981,175号明細書も参照されたい。更に、Taylor et al.(1992)、Chen et al.(1993)、Tuaillon et al.(1993)、Choi et al.(1993)、Lonberg et al.(1994)、Taylor et al.(1994)及びTuaillon et al.(1995)、Fishwild et al.(1996)を参照されたい。

0047

Kirinもマウスからのヒト抗体の作成を実証しており、ここでは、マイクロセル融合によって大型の染色体ピース又は染色体全体が導入されている。欧州特許出願第773 288号明細書及び同第843 961号明細書を参照されたい。Xenerex Biosciencesは、ヒト抗体の潜在的作成技術を開発中である。この技術では、SCIDマウスがヒトリンパ細胞、例えばB細胞及び/又はT細胞で再構成される。次に、マウスは、抗原で免疫化され、その抗原に対して免疫応答を生じ得る。米国特許第5,476,996号明細書;同第5,698,767号明細書;及び同第5,958,765号明細書を参照されたい。

0048

一部の実施形態において、本発明の抗体コンストラクトは、「単離された」又は「実質的に純粋な」抗体コンストラクトである。「単離された」又は「実質的に純粋な」は、本明細書に開示される抗体コンストラクトの記載に使用されるとき、その産生環境の成分から同定、分離及び/又は回収されている抗体コンストラクトを意味する。好ましくは、抗体コンストラクトは、その産生環境からの他の全ての成分との関連を含まないか又は実質的に含まない。組換えトランスフェクト細胞から生じるものなど、その産生環境の夾雑成分は、抗体コンストラクトの診断又は治療使用を妨げ得る材料であり、酵素ホルモン及び他のタンパク質性又は非タンパク質性化合物を挙げることができる。単離された又は実質的に純粋な抗体コンストラクトは、状況に応じて、所与試料における全タンパク質/ポリペプチド含量の5重量%〜99.9重量%を占め得ることが理解される。所望の抗体コンストラクトは、誘導性プロモーター又は高発現プロモーターを使用することにより大幅に高い濃度で産生され得る。この定義には、当該技術分野において公知の多様な生物及び/又は宿主細胞における抗体コンストラクトの産生が含まれる。特定の実施形態において、抗体コンストラクトは、(1)スピニングカップシークエネーターを用いることによりN末端又は内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、又は(2)クマシーブルー又は好ましくは銀染色法を用いた非還元又は還元条件下でのSDS−PAGEによって均一になるまで精製されることになる。しかしながら、通常、単離された抗体コンストラクトは、少なくとも1つの精製工程によって調製されることになる。

0049

一実施形態によれば、抗体コンストラクト全体及び/又は結合ドメインは、1つ以上のポリペプチドの形態又はタンパク質の形態である。タンパク質性の部分に加えて、かかるポリペプチド又はタンパク質は、非タンパク質性の部分(例えば、化学的リンカー又は化学的架橋剤、例えばグルタルアルデヒド)を含み得る。

0050

ペプチドは、共有結合性ペプチド(アミド)結合によって連結されたアミノ酸単量体短鎖である。従って、ペプチドは、広範な化学的クラスの生物学的オリゴマー及びポリマー分類される。ペプチド又はポリペプチド鎖の一部であるアミノ酸は、「残基」と称され、連続番号が付され得る。環状ペプチドを除く全てのペプチドは、ペプチドの一端にN末端残基を有し、他端にC末端残基を有する。オリゴペプチドは、ごく少数のアミノ酸からなる(通常、2〜20個)。ポリペプチドは、より長い連続した非分岐ペプチド鎖である。ペプチドは、タンパク質とサイズを基準として区別され、独断的な基準として約50アミノ酸以下を含むものと理解され得る。タンパク質は、通常、生物学的に機能的な方法で配置された1つ以上のポリペプチドからなる。ペプチドとポリペプチド及びタンパク質に適用される実験技法の態様(例えば、電気泳動法クロマトグラフィー等の詳細)が異なるが、ペプチドをポリペプチド及びタンパク質と区別するサイズ境界は、絶対的ではない。従って、本発明との関連において、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、同義的に使用され得、用語「ポリペプチド」が好ましいことが多い。

0051

ポリペプチドは、二量体三量体及び更に高次のオリゴマーなど、2つ以上のポリペプチド分子からなる多量体を更に形成し得る。かかる二量体、三量体等を形成するポリペプチド分子は、同一であっても又は同一でなくてもよい。このため、高次のかかる多量体の対応する構造は、ホモ二量体又はヘテロ二量体、ホモ三量体又はヘテロ三量体等と称される。ヘテロ多量体の例は、その天然に存在する形態で2つの同一の軽鎖ポリペプチド鎖と2つの同一の重鎖ポリペプチド鎖とからなる抗体又は免疫グロブリン分子である。用語「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、天然の修飾ペプチド/ポリペプチド/タンパク質も指し、ここで、修飾は、例えば、グリコシル化アセチル化リン酸化などの翻訳後修飾により達成される。「ペプチド」、「ポリペプチド」又は「タンパク質」は、本明細書において言及されるとき、ペグ化など、化学的にも修飾され得る。かかる修飾は、当該技術分野において周知であり、本明細書において以下に記載する。

0052

用語「〜に(特異的又は免疫特異的に)結合する」、「〜を(特異的又は免疫特異的に)認識する」又は「〜と(特異的又は免疫特異的に)反応する」は、本発明によれば、抗体コンストラクト又は結合ドメインが、標的分子(抗原)、ここでは、それぞれCLDN18.2及びCD3上の所与のエピトープと相互作用するか又は(免疫)特異的に相互作用することを意味する。この相互作用又は会合は、代替的物質非標的分子)と比べて特定の標的上のエピトープに対してより高頻度に、より迅速に、より長い持続期間で、より高い親和性で又は前述の何らかの組み合わせで起こる。しかしながら、異なる種における相同タンパク質間の配列類似性のため、その標的(ヒト標的など)に免疫特異的に結合する抗体コンストラクト又は結合ドメインは、異なる種(非ヒト霊長類など)からの相同標的分子と交差反応し得る。従って、用語「特異的/免疫特異的結合」は、抗体コンストラクト又は結合ドメインによる2つ以上の種におけるエピトープ又は構造的に関連性のあるエピトープへの結合を含み得る。

0053

本発明との関連において、用語「エピトープ」は、結合ドメインによって認識される/免疫特異的に認識される抗原の一部又は領域を指す。「エピトープ」は、抗原性であり、従って、用語のエピトープは、時に「抗原構造」又は「抗原決定基」とも称される。結合ドメインのうち、エピトープに結合する部分は、パラトープと呼ばれる。特異的結合は、結合ドメイン及び抗原のアミノ酸配列における特異的モチーフによって達成されると考えられる。従って、結合は、その一次、二次及び/又は三次構造の結果として且つ前記構造の潜在的な二次修飾の結果として実現する。パラトープがその抗原決定基と特異的に相互作用すると、前記部位が抗原に単純に結合し得る。ある場合には、代わりに又は加えて、特異的相互作用により、例えば抗原のコンホメーション変化の誘導、抗原のオリゴマー形成等に起因してシグナル惹起され得る。

0054

タンパク質抗原のエピトープは、その構造及びパラトープとの相互作用に基づいて2つのカテゴリー、立体エピトープと線状エピトープとに分類される。立体エピトープは、抗原のアミノ酸配列の不連続なセクションで構成される。こうしたエピトープは、抗原の三次元表面特徴及び形状又は三次構造(折り畳み)に基づいてパラトープと相互作用する。エピトープのコンホメーション決定方法としては、限定されないが、X線結晶学、二次元核磁気共鳴(2D−NMR)分光法及び部位特異的スピン標識及び電子常磁性共鳴EPR)分光法が挙げられる。対照的に、線状エピトープは、その一次構造に基づいてパラトープと相互作用する。線状エピトープは、抗原からの連続アミノ酸配列によって形成され、典型的には、ユニーク配列に少なくとも3又は少なくとも4及びより通常には少なくとも5、又は少なくとも6、又は少なくとも7、例えば約8〜約10アミノ酸を含む。

0055

CLDN18.2エピトープマッピング方法を以下に記載する:ヒトCLDN18.2タンパク質の細胞外ループ内の予め定義付けられた領域(連続アミノ酸ストレッチ)をCLDN18.2パラログ(ヒトCLDN6又はヒトCLDN9など、但し使用するパラログと結合ドメインとが交差反応性でない限り、他のパラログも企図可能である)の対応する領域に交換/置換する。これらのヒトCLDN18.2/パラログキメラを宿主細胞(CHO細胞など)の表面上に発現させる。抗体又は抗体コンストラクトの結合をFACS分析で試験することができる。抗体又は抗体コンストラクトによるキメラ分子への結合が完全になくなったとき又は大幅な結合の低下が観察されたとき、このキメラ分子から取り除かれたヒトCLDN18.2の領域が免疫特異的エピトープ−パラトープ認識に関連すると結論付けることができる。前記結合の低下は、ヒト(野生型)CLDN18.2への結合と比較して好ましくは少なくとも10%、20%、30%、40%又は50%;より好ましくは少なくとも60%、70%又は80%及び最も好ましくは90%、95%又は更に100%(ここでは、ヒトCLDN18.2への結合を100%とする)である。或いは、上述のエピトープマッピング分析は、CLDN18.2の配列、具体的には細胞外ループ1又はループ2の配列に1つ以上の点突然変異を導入することにより修正され得る。これらの点突然変異は、例えば、CLDN18.2とその近縁パラログCLDN18.1との違いを反映し得る。例えば、突然変異は、Q29M、N37D、A42S、N45Q、Q47E、E56Q、G65P及びL69Iからなる群から選択することができる。実施例1及び2を参照されたい。

0056

抗体コンストラクト又は結合ドメインによる認識に対する標的抗原の特定の残基の寄与を決定する更なる方法は、アラニンスキャニングであり(例えば、Morrison KL&Weiss GA.Curr Opin Chem Biol.2001 Jun;5(3):302−7を参照されたい)、ここでは、分析する各残基が例えば部位特異的突然変異誘発によってアラニンに置き換えられる。アラニンが使用されるのは、そのバルキーでない、化学的に不活性なメチル官能基が理由であり、それにも関わらず、他のアミノ酸の多くが有する二次構造優先性を模倣するためである。時に、突然変異残基のサイズの保存が所望される場合、バリン又はロイシンなどのバルキーなアミノ酸が使用され得る。

0057

結合ドメインと標的抗原のエピトープとの間の相互作用は、結合ドメインがエピトープ/標的抗原(ここでは、それぞれCLDN18.2及びCD3)に対して認識可能な又は有意な親和性を呈し、概して標的抗原(ここでは、CLDN18.2/CD3)以外のタンパク質又は抗原に対して − 上記で考察した他の種由来の相同標的との交差反応性があったとしても − 有意な親和性を呈しないことを含意する。「有意な親和性」としては、≦10−6Mの親和性(解離定数、KD)での結合が挙げられる。好ましくは、結合は、結合親和性が≦10−7M、≦10−8M、≦10−9M、≦10−10M又は更に≦10−11M若しくは≦10−12Mのとき、特異的と見なされる。結合ドメイン(免疫)が標的と特異的に反応又は結合するかどうかは、例えば、その所望の標的タンパク質又は抗原に対する前記結合ドメインの親和性を非標的タンパク質又は抗原(ここでは、それぞれCLDN18.2又はCD3以外のタンパク質)に対する前記結合ドメインの親和性と比較することにより、容易に試験することができる。好ましくは、本発明の抗体コンストラクトは、それぞれCLDN18.2又はCD3以外のタンパク質又は抗原に有意に結合しない(即ち、第1のドメインは、CLDN18.2以外のタンパク質に結合せず、第2のドメインは、CD3以外のタンパク質に結合しない)− 但し、別の標的に対する任意の更なる1つ又は複数の結合ドメインが本発明の抗体コンストラクトに意図的に導入される場合を除き、その場合、その結合ドメインのその特異的標的への結合も本発明によって提供される。

0058

CLDN18.2(例えば、ヒトCLDN18.2)に対する第1のドメインの親和性は、≦100nM、≦90nM、≦80nM、≦70nM、≦60nM、≦50nM、≦40nM、≦30nM又は≦20nMであることが想定される。これらの値は、好ましくは、スキャッチャードアッセイなど、細胞ベースのアッセイで測定される。実施例4を参照されたい。他の親和性決定方法も周知である。更に、CD3(例えば、ヒトCD3)に対する第2のドメインの親和性は、≦100nM、≦90nM、≦80nM、≦70nM、≦60nM、≦50nM、≦40nM、≦30nM、≦20nM又は≦10nMであることが想定される。これらの値は、好ましくは、Biacoreアッセイなど、表面プラズモン共鳴アッセイで測定される。実施例3を参照されたい。

0059

用語「有意に結合しない」は、本発明の抗体コンストラクト又は結合ドメインがCLDN18.2又はCD3以外のタンパク質又は抗原に対し、前記タンパク質又は抗原が細胞の表面上に発現するときに結合しないことを意味する。従って、抗体コンストラクトは、CLDN18.2又はCD3以外のタンパク質又は抗原と(前記タンパク質又は抗原が細胞の表面上に発現するときに)≦30%、好ましくは≦20%、より好ましくは≦10%、特に好ましくは≦9%、≦8%、≦7%、≦6%、≦5%、≦4%、≦3%、≦2%又は≦1%の反応性(ここでは、それぞれCLDN18.2又はCD3への結合を100%とする)を示す。「反応性」は、例えば、親和性値(上記を参照されたい)で表すことができる。

0060

本発明の抗体コンストラクト(及びより具体的にはその第1のドメイン)は、CLDN18.2パラログ、より具体的にはヒトCLDN18.2パラログ及び/又はマカクカニクイザルCLDN18.2パラログに結合しないか又は有意に結合しないことが想定される。また、抗体コンストラクトが標的細胞の表面上の(ヒト又はマカク/カニクイザル)CLDN18.2パラログに結合しないか又は有意に結合しないことも想定される。CLDN18.2パラログとしては、− 限定されないが − CLDN18.1、CLDN1、CLDN2、CLDN3、CLDN4、CLDN6及びCLDN9が挙げられる。一実施形態によれば、CLDN18.2のヒトパラログは、配列番号2〜10に示されるとおりの配列を有する。実施例6及び図6を参照されたい。従って、本発明の抗体コンストラクトの第1のドメインは、CLDN18.1、CLDN1、CLDN2、CLDN3、CLDN4、CLDN6及び/又はCLDN9(標的細胞の表面上)に結合しないか又は有意に結合しないことが想定される。

0061

本発明の抗体コンストラクトの第1のドメインは、標的細胞の表面上のCLDN18.2に結合する。「標的細胞」は、その表面上にCLDN18.2を発現する任意の原核細胞又は真核細胞であり得る。好ましくは、標的細胞は、特定のCLDN18.2発現がん若しくは腫瘍細胞又はCLDN18.2陽性新生物の細胞など、ヒト又は動物の体の一部の細胞である。用語「表面上」は、本発明との関連において、抗体コンストラクトの第1のドメインが、第1のCLDN18.2細胞外ループ(CLDN18.2ECL1)内、第2のCLDN18.2細胞外ループ(CLDN18.2 ECL2)内に含まれるか、又は両方のループの組み合わせの範囲内に含まれるエピトープに特異的に結合することを意味するものと理解される。従って、本発明の抗体コンストラクトの第1のドメインは、CLDN18.2、好ましくはヒトCLDN18.2の細胞外ループに結合することが想定される。細胞外ループは、第1のループ又は第2のループであり得る。また、両方のループが結合に寄与することも想定される。この場合、一方のループ(第1のループなど)は、抗体コンストラクトの主要な結合パートナーに相当し、他方のループ(第2のループなど)は、例えば、安定化パートナーとして結合に寄与するが、結合に絶対的に不可欠というわけではない可能性がある。従って、本発明に係る第1のドメインは、天然に発現する細胞又は細胞株(ヒト胃がん株SNU−601、SNU−620又はまたSNU−16、NUGC、NUG−C4、GSU又はIM95など)及び/又はCLDN18.2で形質転換又は(安定に/一過性に)トランスフェクトされた細胞又は細胞株によってCLDN18.2が発現されると、それに結合し得る。一実施形態において、第1のドメインは、スキャッチャードなどの細胞ベースの結合アッセイにおいてCLDN18.2が標的分子として使用されるとき、CLDN18.2に結合する(例えば、実施例4を参照されたい)。更に、抗体コンストラクト/その第1のドメインが標的細胞の表面上のヒトCLDN18.2に結合することが想定される。ヒトCLDN18.2の好ましいアミノ酸配列は、配列番号1に示される。

0062

本発明に係る抗体コンストラクト(及びより具体的には前記抗体コンストラクトの第1のドメイン)は、CLDN18.2の第1の細胞外ループ(ECL1、ループ1)に結合することが想定される。これは、第2の細胞外ループも、程度は低いながらパラトープ−エピトープ相互作用部位に寄与することを必ずしも除外しない。用語「CLDN18.2 ECL」(ECL=細胞外ループ)は、CLDN18.2のうち、CLDN18.2の膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを本質的に含まない部分を指す。本発明のCLDN18.2ポリペプチドについて同定される膜貫通ドメインは、当該技術分野においてそのタイプの疎水性ドメインの同定に日常的に用いられる基準に準じて同定されることが理解される。膜貫通ドメインの正確な境界は、本明細書において具体的に言及されるドメインのいずれかの末端において最も高い可能性として約5アミノ酸以下だけ変わり得る。好ましいヒトCLDN18.2 ECL1は、配列番号2に示され、好ましいヒトCLDN18.2 ECL2は、配列番号3に示される。

0063

本発明は、
・本発明の抗体コンストラクトの第1のドメインが、標的細胞の表面上のCLDN18.2に結合するドメインであって、
a)配列番号121に示されるとおりのCDR−H1、配列番号122に示されるとおりのCDR−H2及び配列番号123に示されるとおりのCDR−H3を含むVH領域、並びに配列番号124に示されるとおりのCDR−L1、配列番号125に示されるとおりのCDR−L2及び配列番号126に示されるとおりのCDR−L3を含むVL領域;
b)配列番号133に示されるとおりのCDR−H1、配列番号134に示されるとおりのCDR−H2及び配列番号135に示されるとおりのCDR−H3を含むVH領域、並びに配列番号136に示されるとおりのCDR−L1、配列番号137に示されるとおりのCDR−L2及び配列番号138に示されるとおりのCDR−L3を含むVL領域;
c)配列番号127に示されるとおりのVH領域及び配列番号128に示されるとおりのVL領域;又は
d)配列番号139に示されるとおりのVH領域及び配列番号140に示されるとおりのVL領域
を含むドメインを含む抗体又は抗体コンストラクトと同じCLDN18.2のエピトープに結合し;
・本発明の抗体コンストラクトが、標的細胞の表面上のCLDN18.2に結合するドメインであって、
a)配列番号121に示されるとおりのCDR−H1、配列番号122に示されるとおりのCDR−H2及び配列番号123に示されるとおりのCDR−H3を含むVH領域、並びに配列番号124に示されるとおりのCDR−L1、配列番号125に示されるとおりのCDR−L2及び配列番号126に示されるとおりのCDR−L3を含むVL領域;
b)配列番号133に示されるとおりのCDR−H1、配列番号134に示されるとおりのCDR−H2及び配列番号135に示されるとおりのCDR−H3を含むVH領域、並びに配列番号136に示されるとおりのCDR−L1、配列番号137に示されるとおりのCDR−L2及び配列番号138に示されるとおりのCDR−L3を含むVL領域;
c)配列番号127に示されるとおりのVH領域及び配列番号128に示されるとおりのVL領域;又は
d)配列番号139に示されるとおりのVH領域及び配列番号140に示されるとおりのVL領域
を含むドメインを含む抗体又は抗体コンストラクトと結合に関して競合し;
・本発明の抗体コンストラクトの第1のドメインが、配列番号22に示されるとおりのアミノ酸配列を有する標的細胞の表面上のCLDN18.2突然変異体に結合し、任意選択で、配列番号24に示されるとおりのアミノ酸配列を有する標的細胞の表面上のCLDN18.2突然変異体にも結合するが、配列番号23に示されるとおりのアミノ酸配列を有する標的細胞の表面上のCLDN18.2突然変異体に結合せず;
・本発明の抗体コンストラクトの第1のドメインが、配列番号14に示されるとおりのアミノ酸配列を有する標的細胞の表面上のCLDN18.2突然変異体及び/又はアミノ酸配列、配列番号15を有する標的細胞の表面上のCLDN18.2突然変異体に結合し、任意選択で、配列番号11、12、13、16、17、19、20及び21に示されるものからなる群から選択されるアミノ酸配列を有する標的細胞の表面上の1つ以上のCLDN18.2突然変異体にも結合するが、配列番号18に示されるとおりのアミノ酸配列を有する標的細胞の表面上のCLDN18.2突然変異体に結合せず;
・本発明の抗体コンストラクトの第1のドメインが標的細胞の表面上のヒトCLDN18.2に結合し、ここで、第1のドメインの結合にヒトCLDN18.2の56位のGlu(E)が必須であり、ヒトCLDN18.2の42位のAla(A)及び/又は45位のAsn(N)が必須でなく;及び/又は
・本発明の抗体コンストラクトの第1のドメインが、配列番号266に示されるとおりのアミノ酸配列を含むが、配列番号265に示されるとおりのアミノ酸配列を含まず、任意選択で配列番号267に示されるとおりのアミノ酸配列も含まないCLDN18.2のエピトープに結合する
ことを更に提供する。

0064

他の抗CLDN18.2結合体(CL−3、CL−4)も、エピトープマッピング時のそのCLDN18.2結合特異性に関して分析した(実施例2を参照されたい)。これらのCLDN18.2×CD3抗体コンストラクトは、異なるエピトープ特異性を有することが分かったと同時に、本発明の抗体コンストラクトと比較して大幅に低い細胞傷害能を有することが示された。実施例7.4において、本発明の抗体コンストラクトは、2桁ピコモル濃度範囲のEC50値を示す一方、比較コンストラクトは、CLDN18.2に対して同様の親和性を有するにも関わらず、3桁〜5桁にまで至るピコモル濃度範囲のEC50値を示したことが実証された。後者の範囲の細胞傷害活性を示す抗体コンストラクトは、患者の免疫系、より具体的にはT細胞の細胞傷害活性をがん細胞に対して仕向けることに治療的に使用するには十分に強力でない可能性がある。他方では、本発明に係る抗体コンストラクトは、極めて好ましいエピトープ−活性関係を示し、従って強力な抗体コンストラクト媒介性細胞傷害活性が裏付けられる。

0065

抗体、抗体コンストラクト又は結合ドメインが別の所与の抗体、抗体コンストラクト又は結合ドメインと標的細胞の表面上のCLDN18.2の同じエピトープに結合するか否かは、本明細書に記載されるとおりの種々の分析、例えば本明細書において上記又は実施例1及び2に記載されるとおり、キメラ又は突然変異CLDN18.2分子でのエピトープマッピングにより測定することができる。アラニンスキャニングなど、他のエピトープ決定方法が本明細書に記載される。

0066

抗体又は抗体コンストラクトが別の所与の抗体又は抗体コンストラクトと標的細胞の表面上の抗原(CLDN18.2など)への結合に関して競合するか否かは、競合ELISAなどの競合アッセイで測定することができる。アビジンカップリングされたマイクロパーティクルビーズ)も使用することができる。アビジンでコートされたELISAプレートと同様に、ビオチン化タンパク質と反応すると、これらのビーズの各々は、そこでアッセイを実施し得る基質として使用することができる。抗原をビーズにコーティングし、次に第1の抗体でプレコーティングする。二次抗体を加え、任意の更なる結合を決定する。フローサイトメトリー読み取りを行う。好ましくは、CLDN18.2を天然に発現する細胞又はCLDN18.2で安定に若しくは一過性に形質転換した細胞のいずれかを使用して、細胞ベースの競合アッセイを用いる。用語「結合に関して競合する」は、これに関連して、上記に開示されるアッセイのいずれか1つ、好ましくは細胞ベースのアッセイによって決定したとき、2つの試験抗体間に少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%の競合が起こることを意味する。当然ながら、CD3などの他の標的についても同じ分析を適用することができる。

0067

競合的抗体結合アッセイは、2つの抗体/抗体コンストラクトと細胞表面結合抗原との競合的結合を決定するアッセイを含む。一般的な方法は、2つの抗体/抗体コンストラクトA及びBによる細胞の表面上の同じ抗原への結合を検出することを目標とし、
a)細胞を抗体/抗体コンストラクトAとプレインキュベートすることにより細胞表面抗原遮断し、続いて標識した抗体/抗体コンストラクトBを最大下で添加するステップ、及びAの非存在下における結合と比較したBの結合を検出するステップ;
b)最大下量の標識抗体/抗体コンストラクトBの存在下における抗体/抗体コンストラクトAのタイトレーションステップ(即ち種々の量を添加するステップ)、及びBの結合に対する効果を検出するステップ;又は
c)両方の抗体/抗体コンストラクトが最大濃度で併せてインキュベートされるAとBとの共タイトレーションステップ、及び全結合量がA又はBのいずれか一方単独の結合量と等しいか又はそれを上回るかどうかを検出するステップ、即ち抗体/抗体コンストラクトの添加順序又は相対量の影響を受け得ない方法
を含み得る。

0068

2つの抗体/抗体コンストラクトA及びBが細胞表面結合抗原に関して競合するとき、これらの抗体は、非常に多くの場合に遮断アッセイにおいて抗体の添加順序とは無関係に互いに競合することになる。換言すれば、アッセイがいずれの方向で行われる場合にも競合が検出される。しかしながら、常にそうとは限らず、ある状況下では、抗体の添加順序又はアッセイの方向が生成されるシグナルに効果を及ぼし得る。これは、潜在的に競合する抗体/抗体コンストラクトの親和性又はアビディティの差に起因し得る。添加順序が生成されるシグナルに大きい効果を及ぼす場合、少なくとも一方の順序で競合が検出されたならば、それらの2つの抗体/抗体コンストラクトは、確かに競合すると結論付けられる。

0069

一実施形態によれば、本発明の抗体コンストラクトの第1のドメインが標的細胞の表面上のヒトCLDN18.2に結合し、ここで、ヒトCLDN18.2の56位のGlu(E)は、第1のドメインの結合に必須であり、ヒトCLDN18.2の42位のAla(A)及び/又は45位のAsn(N)は、第1のドメインの結合に必須でない。これに関連して、用語「〜は結合に必須である」とは、抗体コンストラクトによるCLDN18.2への結合が起こるために指定のアミノ酸(56位のGlu)が必要であることを意味する。56位のアミノ酸Gluが例えばGlnに交換された場合(→E56Q)、抗体コンストラクトの結合は、消失するか又は大幅に低下する(図4、「P6」と表示された列を参照されたい)。用語「〜は結合に必須でない」とは、抗体コンストラクトによるCLDN18.2への結合が起こるために指定のアミノ酸(42位のAla及び/又は45位のAsn)が必要でないことを意味する。42位のアミノ酸Ala及び/又は45位のAsnが例えば42位においてSer(→A42S)及び/又は45位においてGln(→N45Q)に交換されても、抗体コンストラクトの結合は、低下しないか又は大幅には低下しない(図4、「P3」及び「P4」と表示された列を参照されたい)。

0070

一実施形態によれば、本発明の抗体コンストラクトの第1のドメインは、
a)配列番号121に示されるとおりのCDR−H1、配列番号122に示されるとおりのCDR−H2及び配列番号123に示されるとおりのCDR−H3、配列番号124に示されるとおりのCDR−L1、配列番号125に示されるとおりのCDR−L2及び配列番号126に示されるとおりのCDR−L3;及び
b)配列番号133に示されるとおりのCDR−H1、配列番号134に示されるとおりのCDR−H2及び配列番号135に示されるとおりのCDR−H3、並びに配列番号136に示されるとおりのCDR−L1、配列番号137に示されるとおりのCDR−L2及び配列番号138に示されるとおりのCDR−L3
からなる群から選択されるCDR−H1、CDR−H2及びCDR−H3を含むVH領域、並びにCDR−L1、CDR−L2及びCDR−L3を含むVL領域を含む。

0071

本発明との関連において、用語「可変」は、抗体又は免疫グロブリンドメインのうち、その配列において可変性を呈し、且つ特定の抗体の特異性及び結合親和性の決定に関わる一部分(即ち1つ又は複数の「可変領域」)を指す。通常、重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)とが一緒になって対を成し、単一の抗原結合部位を形成する。

0072

可変性は、抗体の可変領域全体にわたって均一に分布せず、重鎖及び軽鎖可変領域の各々のサブドメインに集中している。これらのサブドメインは、「超可変領域」又は「相補性決定領域」(CDR)と呼ばれる。可変領域のうち、より保存性の高い(即ち超可変性でない)部分は、「フレームワーク」(FR)領域と呼ばれ、6つのCDRが抗原結合表面を形成するための三次元空間における足場を提供する。天然に存在する抗体重鎖及び軽鎖の可変領域は、主としてβシート配置をとる4つのFR領域(FR1、FR2、FR3及びFR4)をそれぞれ含む。FR領域は、可変重鎖又は軽鎖内でCDRと一緒になって以下の配列を形成する:FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4。各鎖の超可変領域は、フレームワーク領域によってごく近接して一体に保持され、通常、他方の鎖の超可変領域と一緒になって抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,loc.cit.を参照されたい)。

0073

用語「CDR」及びその複数形「CDRs」は、そのうちの3つが軽鎖可変領域の結合特性を構成し(CDR−L1、CDR−L2及びCDR−L3)、3つが重鎖可変領域の結合特性を構成する(CDR−H1、CDR−H2及びCDR−H3)相補性決定領域を指す。CDRは、抗体(又は抗体コンストラクト又は結合ドメイン)による抗原との特異的相互作用に関与する残基の大半を含有し、従って抗体分子機能的活性に寄与する。CDRは、抗原特異性の主要な決定基である。

0074

CDR境界及び長さの正確な定義は、異なる分類及び付番方式に依存する。従って、CDRは、本明細書に記載される付番方式を含め、Kabat、Chothia、コンタクト又は任意の他の境界定義によって参照され得る。異なる境界にも関わらず、これらの方式の各々は、可変配列内においていわゆる「超可変領域」を構成するものがある程度重複している。従って、これらの方式によるCDR定義は、長さ及び隣接フレームワーク領域に対する境界範囲が異なり得る。例えば、Kabat(異種間配列可変性に基づく手法)、Chothia(抗原抗体複合体結晶学的研究に基づく手法)及び/又はMacCallum(Kabat et al.,loc.cit.;Chothia et al.,J.MoI.Biol,1987,196:901−917;及びMacCallum et al.,J.MoI.Biol,1996,262:732)を参照されたい。抗原結合部位の特徴付けのためのなおも別の標準は、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって用いられるAbM定義である。例えば、Protein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domains.Antibody Engineering Lab Manual(Ed.:Duebel,S.and Kontermann,R.,Springer−Verlag,Heidelberg)を参照されたい。2つの残基同定技法が、重複する領域ながら同一ではない領域を定義する限り、それらを組み合わせてハイブリッドCDRを定義することができる。しかしながら、いわゆるKabat方式に従う付番が好ましい。

0075

典型的には、CDRは、カノニカル構造として分類することのできるループ構造を形成する。用語「カノニカル構造」は、抗原結合(CDR)ループがとる主鎖コンホメーションを指す。比較構造研究から、6つの抗原結合ループのうちの5つは、限られたレパートリーのコンホメーションのみが利用可能であることが分かっている。各カノニカル構造は、ポリペプチド骨格ねじれ角によって特徴付けることができる。従って、抗体間の対応するループは、ループのほとんどの部分でアミノ酸配列可変性が高いにも関わらず、極めて類似した三次元構造を有し得る(Chothia and Lesk,J.MoI.Biol.,1987,196:901;Chothia et al.,Nature,1989,342:877;Martin and Thornton,J.MoI.Biol,1996,263:800)。更に、とられるループ構造と、その周囲のアミノ酸配列との間に関係がある。特定のカノニカルクラスのコンホメーションは、ループの長さ及びループ内並びに保存されたフレームワーク内(即ちループ外)で重要な位置に存在するアミノ酸残基によって決まる。従って、これらの重要なアミノ酸残基の存在に基づいて特定のカノニカルクラスへの割り当てを行うことができる。

0076

用語「カノニカル構造」は、例えば、Kabat(Kabat et al.,loc.cit.)によって列挙されたとおりの、抗体の線状配列に関する考慮事項も含み得る。Kabat付番スキーム(方式)は、一貫した方法での抗体可変領域のアミノ酸残基の付番に広く採用されている標準であり、本明細書の他の部分でも言及されるとおり、本発明において適用される好ましいスキームである。追加の構造的考慮事項も用いて抗体のカノニカル構造を決定することができる。例えば、Kabat付番によっては完全に反映されない差異は、Chothia et al.の付番方式によって記述し、且つ/又は他の技法、例えば結晶学及び二次元又は三次元コンピュータモデリングによって明らかにすることができる。従って、所与の抗体配列は、あるカノニカルクラスに分けられ得、それにより、数ある中でも特に適切なクラス配列の同定が可能になる(例えば、ライブラリに種々のカノニカル構造を含める要望に基づく)。抗体アミノ酸配列のKabat付番及びChothia et al.,loc.cit.により記載されるとおりの構造的考慮事項並びに抗体構造のカノニカルな側面を解釈する上でのこれらの含意するところは、文献に記載されている。種々のクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び三次元配置は、当該技術分野において周知である。抗体構造のレビューについては、Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,eds.Harlow et al.,1988を参照されたい。

0077

軽鎖のCDR3及び特に重鎖のCDR3は、軽鎖及び重鎖可変領域内で抗原結合における最も重要な決定基を構成し得る。一部の抗体又は抗体コンストラクト/結合ドメインでは、重鎖CDR3が抗原と抗体との間の主要な接触範囲を構成するように見える。CDR3単独を変異させるインビトロ選択スキームを用いると、抗体又は抗体コンストラクト/結合ドメインの結合特性を変えるか、又はいずれの残基が抗原の結合に寄与するかを決定することができる。従って、CDR3は、典型的には抗体結合部位内における分子多様性の最大の供給源である。例えば、CDR−H3は、僅か2アミノ酸残基ほどであることも又は26アミノ酸より長いこともある。

0078

古典的完全長抗体又は免疫グロブリンでは、各軽(L)鎖は、1つの共有結合性ジスルフィド結合によって重(H)鎖に連結される一方、2つのH鎖は、H鎖アイソタイプに応じた1つ以上のジスルフィド結合によって互いに連結される。VHに最も近い重鎖定常(CH)ドメインは、通常、CH1と称される。定常(「C」)ドメインは、抗原結合に直接的に関与しないが、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)及び補体活性化補体依存性細胞傷害、CDC)など、様々なエフェクター機能を呈する。抗体のFc領域は、Fc受容体と呼ばれる細胞表面受容体及び補体系の一部のタンパク質と相互作用する古典的抗体の「テール」領域である。IgG、IgA及びIgD抗体アイソタイプでは、Fc領域は、抗体の2つの重鎖の第2及び第3の定常ドメイン(CH2及びCH3)に由来する2つの同一のタンパク質断片で構成される。IgM及びIgEFc領域は、各ポリペプチド鎖に3つの重鎖定常ドメイン(CH2、CH3及びCH4)を含有する。Fc領域は、1つ以上のジスルフィド及び非共有結合性相互作用によって一体に保持されたいわゆる「ヒンジ」領域の一部も含有する。天然に存在するIgGのFc領域は、高度に保存されたN−グリコシル化部位担持している。Fc断片のグリコシル化は、Fc受容体媒介活性に必須である。

0079

ADCCは、膜表面抗原特異抗体が結合した標的細胞を免疫系のエフェクター細胞が能動的に溶解する細胞媒介性免疫防御機構である。ADCCには、典型的にはIgG抗体と相互作用するナチュラルキラー(NK)細胞であることが古典的に公知の免疫エフェクター細胞が必要である。しかしながら、ADCCは、マクロファージ好中球及び好酸球によっても媒介され得る。ADCCは、Fc受容体を発現するエフェクター細胞がFc部分を発現する抗体によって活性化されることを伴う。例えば、NK細胞の表面上の最も一般的なFc受容体は、CD16又はFcγRIIIと呼ばれる。Fc受容体がIgGのFc領域に結合すると、NK細胞は、細胞傷害性因子を放出し、標的細胞の死滅が引き起こされる。同様に、好酸球のFc受容体(FceRI)は、IgEを認識することになる。対照的に、CDCでは、補体系の分子「C1q」が抗体Fc領域に結合し、この結合が補体カスケードを惹起して、それが古典経路補体活性化の結果としての標的細胞の表面における膜侵襲複合体(MAC)の形成につながる。治療用抗体又は抗体コンストラクトでは、Fcアイソタイプのエンジニアリング、Fc遺伝子突然変異又はFcグリコシル化プロファイル修飾によってADCC及びCDCの両方を調節することができる。

0080

アセンブリ及び体細胞突然変異後の抗体遺伝子の配列に高度なばらつきがあり、これらのばらつきのある遺伝子は、1010個の異なる抗体分子をコードすると推定される(Immunoglobulin Genes,2nd ed.,eds.Jonio et al.,Academic Press,San Diego,CA,1995)。従って、免疫系は、免疫グロブリンのレパートリーを提供する。用語「レパートリー」は、少なくとも1つの免疫グロブリンをコードする少なくとも1つの配列に全体的に又は部分的に由来する少なくとも1つのヌクレオチド配列を指す。この1つ又は複数の配列は、重鎖のV、D及びJセグメント並びに軽鎖のV及びJセグメントのインビボでの再編成によって生成され得る。或いは、1つ又は複数の配列は、いずれの再編成が起こるか、例えばインビトロ刺激に応じて細胞から生成されることもある。或いは、1つ又は複数の配列の一部又は全ては、DNAスプライシングヌクレオチド合成、突然変異誘発及び他の方法によって得ることができ、例えば米国特許第5,565,332号明細書を参照されたい。レパートリーは、1つの配列のみを含み得るか、又は遺伝的に多様なコレクションのものを含め、複数の配列を含み得る。

0081

抗体コンストラクトは、第1のドメイン内にシステインクランプを有することが想定される。このシステインクランプは、コンストラクトの安定性を向上させるために導入され得る。例えば、米国特許出願公開第2016/0193295号明細書を参照されたい。

0082

本発明の一実施形態において、本発明の抗体コンストラクトの第1のドメインは、配列番号127又は配列番号139に示されるとおりのアミノ酸配列を有するVH領域を含む。更なる実施形態において、本発明の抗体コンストラクトの第1のドメインは、配列番号128又は配列番号140に示されるとおりのアミノ酸配列を有するVL領域を含む。別の実施形態において、本発明の抗体コンストラクトの第1のドメインは、配列番号127+128(VH+VL)又は配列番号139+140(VH+VL)に示されるとおりのアミノ酸配列を有するVH領域及びVL領域を含む。更に別の実施形態において、本発明の抗体コンストラクトの第1のドメインは、配列番号129又は配列番号141に示されるとおりのアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。

0083

本明細書において上記に記載されるとおり、本発明は、抗体コンストラクトが、(scFv)2、scFvシングルドメインmAb、ダイアボディ及び前述のフォーマットのいずれかのオリゴマーからなる群から選択されるフォーマットである実施形態を提供する。用語「フォーマットである」は、コンストラクトが本明細書に記載されるとおり、例えば他の部分への付加又は融合によって更に修飾され得ることを除外しない。本発明の抗体コンストラクトの一実施形態によれば、第1及び/又は第2のドメインは、scFvのフォーマットである。scFvでは、VH領域及びVL領域は、VH−VL又はVL−VHの順序(N末端からC末端に)で配置される。第1及び/又は第2の結合ドメインのVH領域及びVL領域は、リンカー、好ましくはペプチドリンカーを介して接続されることが想定される。第1及び/又は第2のドメインの一実施形態によれば、VH領域がリンカーのN末端側に位置し、VL領域がリンカーのC末端側に位置する。換言すれば、第1及び/又は第2のドメインの一実施形態において、scFvは、N末端からC末端に、VH−リンカー−VLを含む。更に、抗体コンストラクトの第1のドメイン及び第2のドメインがリンカー、好ましくはペプチドリンカーを介して接続されることが想定される。抗体コンストラクトは、例えば、(N末端からC末端に)第1のドメイン−リンカー−第2のドメインの順序でドメインを含み得る。逆の順序(第2のドメイン−リンカー−第1のドメイン)も可能である。

0084

リンカーは、好ましくは、ペプチドリンカー、より好ましくは短鎖ペプチドリンカーである。本発明において、「ペプチドリンカー」は、抗体コンストラクトの1つのドメインのアミノ酸配列を別の(可変及び/又は結合)ドメイン(例えば、可変ドメイン又は結合ドメイン)と接続するアミノ酸配列を含む。かかるペプチドリンカーの必須の技術的特徴は、それがいかなる重合活性も含まないことである。好適なペプチドリンカーの中には、米国特許第4,751,180号明細書及び同第4,935,233号明細書又は国際公開第88/09344号パンフレットに記載されるものがある。ペプチドリンカーは、本発明の抗体コンストラクトに他のドメイン又はモジュール又は領域(半減期延長ドメインなど)を付加するためにも使用することができる。有用なペプチドリンカーの例は、配列番号155〜168に示される。これに関連して、「短鎖」リンカーは、2〜50アミノ酸、好ましくは3〜35、4〜30、5〜25、6〜20又は6〜17アミノ酸を有する。1つの結合ドメインの2つの可変領域間のリンカーは、2つの結合ドメイン間のリンカーと異なる長さを有し得る(例えば、それより長いものであり得る)。例えば、1つの結合ドメインの2つの可変領域間のリンカーは、7〜15アミノ酸、好ましくは9〜13の長さを有し得、2つの結合ドメイン間のリンカーは、3〜10アミノ酸、好ましくは4〜8の長さを有し得る。更に、ペプチドリンカーは、配列番号156及び158〜168に示されるものなど、グリシン/セリンリンカーであることが想定される。グリシン/セリンリンカーのアミノ酸の大部分は、グリシン及びセリンから選択される。

0085

リンカーが使用される場合、そのリンカーは、好ましくは、第1及び第2のドメインの各々が、互いに独立に、その差異のある結合特異性を保持し得ることを確実にするのに十分な長さ及び配列である。抗体コンストラクトにおいて少なくとも2つの結合ドメイン(又は1つの結合ドメインを形成する2つの可変領域)を接続するペプチドリンカーについては、ごく少数のアミノ酸残基のみ、例えば12アミノ酸残基以下を含むペプチドリンカーが想定される。従って、12、11、10、9、8、7、6又は5アミノ酸残基のペプチドリンカーが好ましい。5アミノ酸未満の想定されるペプチドリンカーは、4、3、2又は1アミノ酸を含み、ここでは、Glyリッチリンカーが好ましい。前記「ペプチドリンカー」との関連において「単一アミノ酸」リンカーは、Glyである。ペプチドリンカーの別の実施形態は、アミノ酸配列Gly−Gly−Gly−Gly−Ser、即ちGly4Ser(配列番号156)又はそのポリマー、即ち(Gly4Ser)x(式中、xは、1以上の整数(例えば、2又は3)である)によって特徴付けられる。使用可能なリンカーは、配列番号155〜163に示される。前記ペプチドリンカーの特徴は、当該技術分野において公知であり、例えばDall’Acqua et al.(Biochem.(1998)37,9266−9273)、Cheadle et al.(Mol Immunol(1992)29,21−30)及びRaag and Whitlow(FASEB(1995)9(1),73−80)に記載されている。いかなる二次構造も促進しないペプチドリンカーが好ましい。前記ドメインの互いの連結は、例えば、遺伝子工学によって提供されることができる。融合した且つ作動可能に連結した二特異性単鎖コンストラクトを調製して、それを哺乳類細胞又は細菌で発現させる方法は、当該技術分野において周知である(例えば、国際公開第99/54440号パンフレット又はSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,2001)。

0086

本発明の一実施形態によれば、本発明の抗体コンストラクトは、「単鎖抗体コンストラクト」である。また、第1又は第2のいずれか一方又は両方の結合ドメインが「単鎖Fv」(scFv)のフォーマットであり得ることも想定される。Fv断片の2つのドメインVL及びVHは、別個の遺伝子によってコードされるが、それらは、組換え方法を用いて人工リンカーによって − 前述のとおり −つなぎ合わせることができ、VL及びVH領域が対になって一価分子を形成する単一のタンパク質鎖としてそれらが構成されることがリンカーによって可能になる。例えば、Huston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci USA 85:5879−5883を参照されたい。このような抗体断片は、当業者に公知の従来技術を用いて得られ、断片は、完全長抗体又はIgGと同じように機能に関して評価される。従って、単鎖可変断片(scFv)は、通常、短鎖リンカーペプチドで接続された、免疫グロブリンの重鎖(VH)及び軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質である。リンカーは、通常、可動性のためグリシンリッチであると共に溶解度のためにセリン又は同様にスレオニンリッチであり、VHのN末端をVLのC末端に接続するか又はその逆のいずれかであり得る。このタンパク質は、定常領域の除去及びリンカーの導入にも関わらず、元の免疫グロブリンの特異性を保持している。

0087

二特異性単鎖分子は、当該技術分野において公知であり、国際公開第99/54440号パンフレット、Mack,J.Immunol.(1997),158,3965−3970、Mack,PNAS,(1995),92,7021−7025、Kufer,Cancer Immunol.Immunother.,(1997),45,193−197、Loeffler,Blood,(2000),95,6,2098−2103、Bruehl,Immunol.,(2001),166,2420−2426、Kipriyanov,J.Mol.Biol.,(1999),293,41−56に記載されている。単鎖抗体コンストラクトの作製について記載される技法(とりわけ、米国特許第4,946,778号明細書、Kontermann and Duebel(2010),loc.cit.及びLittle(2009),loc.cit.を参照されたい)は、選択された1つ又は複数の標的を特異的に認識する単鎖抗体コンストラクトの作製に採用することができる。

0088

フォーマット(scFv)2を有する二価(二原子価)とも称される)又は二特異性単鎖可変断片(bi−scFv又はdi−scFv)は、2つのscFv分子を(例えば、前述のとおりのリンカーで)連結することによりエンジニアリングし得る。連結は、2つのVH領域と2つのVL領域とを有する単一ポリペプチド鎖を作製してタンデムscFvを生じさせることにより行われ得る(例えば、Kufer P.et al.,(2004)Trendsin Biotechnology 22(5):238−244を参照されたい)。別の可能性は、2つの可変領域が一体に折り畳まれるには短か過ぎるため(例えば、約5アミノ酸)、強制的にscFvを二量化させるリンカーペプチドを含むscFv分子の作成である。この場合、結合ドメイン(標的抗原CLDN18.2又はCD3のいずれかに結合する)のVH及びVLは、ペプチドリンカーによって直接接続されない。従って、CD3結合ドメインのVHがCLDN18.2結合ドメインのVLにペプチドリンカーを介して例えば融合し得、CLDN18.2結合ドメインのVHがかかるペプチドリンカーを介してCD3結合ドメインのVLに融合する。このタイプは、ダイアボディとして公知である(例えば、Hollinger,Philipp et al.,(July 1993)Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 90(14):6444−8.を参照されたい)。

0089

「シングルドメイン抗体」と称される抗体コンストラクトは、他の可変領域とは無関係に、特異的抗原に選択的に結合することが可能な1つの(単量体)抗体可変領域を含む。最初のシングルドメイン抗体は、ラクダ科動物に見られる重鎖抗体からエンジニアリングされたものであり、これは、VHH断片と呼ばれる。軟骨魚類も、それからVNAR断片と呼ばれるシングルドメイン抗体を得ることのできる重鎖抗体(IgNAR)を有する。代替的な手法は、共通の免疫グロブリンからの二量体可変領域を単量体に分割し、従ってVH又はVLをシングルドメインAbとして得ることである。現在、シングルドメイン抗体に関する研究のほとんどは、重鎖可変領域をベースとしているが、軽鎖に由来するナノボディも標的エピトープに特異的に結合することが示された。シングルドメイン抗体の例は、sdAb、ナノボディ又はシングル可変ドメイン抗体と呼ばれる。従って、(シングルドメインmAb)2は、VH、VL、VHH及びVNARを含む群から個別に選択される(少なくとも)2つのシングルドメインモノクローナル抗体コンストラクトで構成されたモノクローナル抗体コンストラクトである。リンカーは、好ましくは、ペプチドリンカーの形態である。同様に、「scFvシングルドメインmAb」は、上記に記載したとおりの少なくとも1つのシングルドメイン抗体と、上記に記載したとおりの1つのscFv分子とで構成されたモノクローナル抗体コンストラクトである。この場合もやはり、リンカーは、好ましくは、ペプチドリンカーの形態である。

0090

また、本発明の抗体コンストラクトは、標的分子CLDN18.2及びCD3に結合するその機能に加えて更なる機能を有することも想定される。このフォーマットでは、抗体コンストラクトは、CLDN18.2結合を通じて標的細胞を標的化し、CD3結合を通じて細胞傷害性T細胞活性を媒介し、且つ血清半減期を亢進又は延長させる手段又はドメイン、エフェクター細胞の動員を通じてADCCを媒介する完全に機能性の又は修飾されたFc定常ドメイン、標識(蛍光等)、毒素又は放射性核種などの療法用薬剤など、更なる機能を提供することにより、三機能又は多機能抗体コンストラクトであり得る。

0091

本発明の抗体コンストラクトの血清半減期を延長させる手段又はドメインの例としては、抗体コンストラクトに融合されるか又は他の方法で付加されたペプチド、タンパク質又はタンパク質のドメインが挙げられる。ペプチド、タンパク質又はタンパク質ドメインの群には、血清アルブミンなど、人体において好ましい薬物動態プロファイルで他のタンパク質に結合するペプチドが含まれる(国際公開第2009/127691号パンフレットを参照されたい)。かかる半減期延長ペプチドの代替的な概念には、新生児Fc受容体(FcRn、国際公開第2007/098420号パンフレットを参照されたい)に結合するペプチドが含まれ、これも本発明の抗体コンストラクトに使用することができる。タンパク質の大型ドメイン又は完全なタンパク質を付加する概念には、ヒト血清アルブミン、ヒト血清アルブミンの変異体又は突然変異体(国際公開第2011/051489号パンフレット、国際公開第2012/059486号パンフレット、国際公開第2012/150319号パンフレット、国際公開第2013/135896号パンフレット、国際公開第2014/072481号パンフレット、国際公開第2013/075066号パンフレットを参照されたい)又はそのドメインの融合並びに免疫グロブリン定常領域(Fcドメイン)及びその変異体の融合が含まれる。Fcドメインのかかる変異体は、Fcベースのドメインと呼ばれ、例えば二量体又は多量体の所望の対形成を可能にするため、Fc受容体結合を消失させる(例えば、それによりADCC又はCDCを回避する)ために又は他の理由で最適化/修飾され得る。人体における物質又は分子の半減期を延長させるための当該技術分野において公知の更なる概念は、そうした分子(本発明の抗体コンストラクトなど)のペグ化である。

0092

一実施形態において、本発明に係る抗体コンストラクトは、例えば、コンストラクトの血清半減期の延長を目的として、融合パートナー(タンパク質、ポリペプチド又はペプチドなど)と(例えば、ペプチド結合で)連結される。こうした融合パートナーは、ヒト血清アルブミン(「HSA」又は「HALB」)並びにその配列変異体、HSAに結合するペプチド、FcRnに結合するペプチド(「FcRn BP」)又は(抗体由来の)Fc領域を含むコンストラクトから選択することができる。これらの融合パートナーの例示的配列は、配列番号170〜232に示される。一般に、融合パートナーは、本発明に係る抗体コンストラクトのN末端又はC末端に直接(例えば、ペプチド結合で)又は(GGGGS)n(式中、「n」は、2以上の整数、例えば2又は3又は4である)などのペプチドリンカーを介するかのいずれかで連結され得る。好適なペプチドリンカーは、配列番号155〜163に示される。

0093

従って、本発明に係る抗体コンストラクトは、
(a)N末端からC末端に以下の順序で、
・配列番号129及び配列番号141からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;ここで、これらの配列内に含まれる、配列番号163を有するペプチドリンカーは、配列番号155〜162及び164〜168のいずれか1つに置き換えることができる;
・配列番号155〜163からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドリンカー;及び
・配列番号36、45、54、63、72、81、90、99、108、117、120、246、247、248、249、250、251、252、253、254及び255からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;ここで、これらの配列内に含まれる、配列番号163を有するペプチドリンカーは、配列番号155〜162及び164〜168のいずれか1つに置き換えることができる;及び
・任意選択で、例えば配列番号169、269、270又は271から選択されるHisタグ
を含むポリペプチド;
(b)N末端からC末端に以下の順序で、
・配列番号129及び配列番号141からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;ここで、これらの配列内に含まれる、配列番号163を有するペプチドリンカーは、配列番号155〜162及び164〜168のいずれか1つに置き換えることができる;
・配列番号155〜163からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドリンカー;
・配列番号36、45、54、63、72、81、90、99、108、117、120、246、247、248、249、250、251、252、253、254及び255からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;ここで、これらの配列内に含まれる、配列番号163を有するペプチドリンカーは、配列番号155〜162及び164〜168のいずれか1つに置き換えることができる;
・任意選択で、配列番号155〜163からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドリンカー;
・配列番号170及び176〜205からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;及び
・任意選択で、例えば配列番号169、269、270又は271から選択されるHisタグ
を含むポリペプチド;
(c)N末端からC末端に以下の順序で、
・アミノ酸配列QRFVTGHFGGLX1PANG(配列番号171)(式中、X1は、Y又はHである)を有するポリペプチド;及び
・配列番号129及び配列番号141からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;ここで、これらの配列内に含まれる、配列番号163を有するペプチドリンカーは、配列番号155〜162及び164〜168のいずれか1つに置き換えることができる;
・配列番号155〜163からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドリンカー;
・配列番号36、45、54、63、72、81、90、99、108、117、120、246、247、248、249、250、251、252、253、254及び255からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;ここで、これらの配列内に含まれる、配列番号163を有するペプチドリンカーは、配列番号155〜162及び164〜168のいずれか1つに置き換えることができる;
・配列番号173又は配列番号175に示されるとおりのアミノ酸配列を有するポリペプチド;及び
・任意選択で、例えば配列番号169、269、270又は271から選択されるHisタグ
を含むポリペプチド;
(d)N末端からC末端に以下の順序で、
・配列番号34、配列番号43、配列番号52、配列番号61、配列番号70、配列番号79、配列番号88、配列番号97、配列番号106、配列番号115及び配列番号118からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;
・配列番号162に示されるアミノ酸配列を有するペプチドリンカー;
・配列番号128及び配列番号140からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、それに続くC末端のセリン残基
・配列番号206に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド
を含むポリペプチド;及び
N末端からC末端に以下の順序で、
・配列番号127及び配列番号139からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;
・配列番号162に示されるアミノ酸配列を有するペプチドリンカー;
・配列番号35、配列番号44、配列番号53、配列番号62、配列番号71、配列番号80、配列番号89、配列番号98、配列番号107、配列番号116及び配列番号119からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;それに続くC末端のセリン残基;及び
・配列番号207に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド
を含むポリペプチド;
(e)N末端からC末端に以下の順序で、
・配列番号34、配列番号43、配列番号52、配列番号61、配列番号70、配列番号79、配列番号88、配列番号97、配列番号106、配列番号115及び配列番号118からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;
・配列番号162に示されるアミノ酸配列を有するペプチドリンカー;
・配列番号128及び配列番号140からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;及び
・配列番号208に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド
を含むポリペプチド;及び
N末端からC末端に以下の順序で、
・配列番号127及び配列番号139からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;
・配列番号162に示されるアミノ酸配列を有するペプチドリンカー;
・配列番号35、配列番号44、配列番号53、配列番号62、配列番号71、配列番号80、配列番号89、配列番号98、配列番号107、配列番号116及び配列番号119からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、それに続くC末端のセリン残基;及び
・配列番号209に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド
を含むポリペプチド;
(f)N末端からC末端に以下の順序で、
・配列番号129及び配列番号141からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;ここで、これらの配列内に含まれる、配列番号163を有するペプチドリンカーは、配列番号155〜162及び164〜168のいずれか1つに置き換えることができる;
・配列番号155〜163からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドリンカー;
・配列番号36、45、54、63、72、81、90、99、108、117、120、246、247、248、249、250、251、252、253、254及び255からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;ここで、これらの配列内に含まれる、配列番号163を有するペプチドリンカーは、配列番号155〜162及び164〜168のいずれか1つに置き換えることができる;
・配列番号210に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;及び
配列番号211に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド
を含むポリペプチド;
(g)N末端からC末端に以下の順序で、
・配列番号129及び配列番号141からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;ここで、これらの配列内に含まれる、配列番号163を有するペプチドリンカーは、配列番号155〜162及び164〜168のいずれか1つに置き換えることができる;及び
・配列番号212に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド
を含むポリペプチド;及び
N末端から開始して以下の順序で、
・配列番号36、45、54、63、72、81、90、99、108、117、120、246、247、248、249、250、251、252、253、254及び255からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;ここで、これらの配列内に含まれる、配列番号163を有するペプチドリンカーは、配列番号155〜162及び164〜168のいずれか1つに置き換えることができる;及び
・配列番号213に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド
を含むポリペプチド;
(h)N末端からC末端に以下の順序で、
・配列番号129及び配列番号141からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;ここで、これらの配列内に含まれる、配列番号163を有するペプチドリンカーは、配列番号155〜162及び164〜168のいずれか1つに置き換えることができる;及び
・配列番号214に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド
を含むポリペプチド;及び
N末端から開始して以下の順序で、
・配列番号36、45、54、63、72、81、90、99、108、117、120、246、247、248、249、250、251、252、253、254及び255からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;ここで、これらの配列内に含まれる、配列番号163を有するペプチドリンカーは、配列番号155〜162及び164〜168のいずれか1つに置き換えることができる;及び
・配列番号215に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド
を含むポリペプチド;
又は
(i)N末端からC末端に以下の順序で、
・配列番号129及び配列番号141からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;ここで、これらの配列内に含まれる、配列番号163を有するペプチドリンカーは、配列番号155〜162及び164〜168のいずれか1つに置き換えることができる;
・配列番号155〜163からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドリンカー;
・配列番号36、45、54、63、72、81、90、99、108、117、120、246、247、248、249、250、251、252、253、254及び255からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;ここで、これらの配列内に含まれる、配列番号163を有するペプチドリンカーは、配列番号155〜162及び164〜168のいずれか1つに置き換えることができる;及び
・配列番号216に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド
を含むポリペプチド
を含むことが想定される。

0094

別の実施形態によれば、本発明の抗体コンストラクトは、ヒンジ、CH2及びCH3ドメインを各々含む2つのポリペプチド単量体を含む第3のドメインを(第1及び第2のドメインに加えて)含み、ここで、前記2つのポリペプチド単量体は、ペプチドリンカーを介して互いに融合している。前記第3のドメインは、N末端からC末端に順番に、ヒンジ−CH2−CH3−リンカー−ヒンジ−CH2−CH3を含むことが想定される。前記第3のドメインに使用することのできるアミノ酸配列は、配列番号225〜232に示される。前記ポリペプチド単量体の各々は、配列番号217〜224からなる群から選択されるアミノ酸配列又はそれらの配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有し得る。別の実施形態において、本発明の抗体コンストラクトの第1及び第2のドメインは、配列番号155、156、157、158、159、160、161、162又は163からなる群から例えば選択されるペプチドリンカーを介して第3のドメインに融合される。

0095

本発明によれば、「ヒンジ」は、IgGヒンジ領域である。この領域は、Kabat付番を用いた類推によって同定することができ、例えばKabat位置223〜243を参照されたい。上記によれば、「ヒンジ」としての最小限の要件は、Kabat付番に基づくとき、D231〜P243のIgG1配列ストレッチに対応するアミノ酸残基である。用語「CH2」及び「CH3」は、免疫グロブリン重鎖定常領域2及び3を指す。これらの領域も同様にKabat付番を用いた類推によって同定することができ、例えばCH2についてKabat位置244〜360及びCH3についてKabat位置361〜478を参照されたい。免疫グロブリン間には、そのIgG1Fc領域、IgG2 Fc領域、IgG3 Fc領域、IgG4 Fc領域、IgMFc領域、IgAFc領域、IgDFc領域及びIgEFc領域に関して幾らかのばらつきがあることが理解される(例えば、Padlan,Molecular Immunology,31(3),169−217(1993)を参照されたい)。用語のFc領域は、IgA、IgD及びIgGの最後の2つの重鎖定常領域並びにIgE及びIgMの最後の3つの重鎖定常領域を指す。Fc領域は、これらのドメインのN末端側にある可動性ヒンジも含み得る。IgA及びIgMについて、Fc領域は、J鎖を含み得る。IgGについて、Fc領域は、免疫グロブリンドメインCH2及びCH3並びに最初の2つのドメインとCH2との間のヒンジを含む。免疫グロブリンのFc領域の境界は、様々であり得るが、機能性ヒンジ、CH2及びCH3ドメインを含むヒトIgG重鎖Fc部分の例は、例えば、IgG4について、それぞれ(ヒンジドメインの)残基D231〜(CH3ドメインのC末端の)P476又はD231〜L476(ここで、付番は、Kabatに基づく)を含むものと定義し得る。

0096

従って、本発明の抗体コンストラクトは、N末端からC末端に順番に、
(a)第1のドメイン;
(b)配列番号156、162及び163からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドリンカー;
(c)第2のドメイン;
(d)配列番号155、156、158、159、160、162及び163からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドリンカー;
(e)第3のドメインの第1のポリペプチド単量体(ヒンジ、CH2及びCH3ドメインを含む);
(f)配列番号165、166、167及び168からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドリンカー;及び
(g)第3のドメインの第2のポリペプチド単量体(ヒンジ、CH2及びCH3ドメインを含む)
を含み得る。

0097

また、本発明の抗体コンストラクトは、N末端からC末端に順番に、
・配列番号129及び配列番号141からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する第1のドメイン;ここで、これらの配列内に含まれる、配列番号163を有するペプチドリンカーは、配列番号155〜162及び164〜168のいずれか1つに置き換えることができる;
・配列番号156、162及び163からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドリンカー;
・配列番号36、45、54、63、72、81、90、99、108、117、120、246、247、248、249、250、251、252、253、254及び255からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する第2のドメイン;ここで、これらの配列内に含まれる、配列番号163を有するペプチドリンカーは、配列番号155〜162及び164〜168のいずれか1つに置き換えることができる;
・配列番号155、156、158、159、160、162及び163からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドリンカー;及び
・配列番号225〜232からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する第3のドメイン
を含むことも想定される。

0098

従って、一実施形態において、本発明の抗体コンストラクトは、配列番号131、配列番号132、配列番号143又は配列番号144に示されるものの群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むか又はそれからなる。

0099

抗体コンストラクトの共有結合修飾も本発明の範囲内に含まれ、これは、必ずしもというわけではないが、概して翻訳後に行われる。例えば、抗体コンストラクトの特定のアミノ酸残基を、選択の側鎖又はN末端若しくはC末端残基との反応能を有する有機誘導体化剤と反応させることにより、抗体コンストラクトの幾つかのタイプの共有結合修飾が分子に導入される。二官能性薬剤による誘導体化は、種々の方法で用いられる水不溶性支持体マトリックス又は表面に本発明の抗体コンストラクトを架橋結合するのに有用である。高頻度でグルタミニル及びアスパラギニル残基が脱アミド化され、それぞれ対応するグルタミル及びアスパルチル残基にされる。或いは、これらの残基は、弱酸性条件下で脱アミド化される。これらの残基のいずれの形態も本発明の範囲内に含まれる。他の修飾としては、プロリン及びリジンヒドロキシル化セリル又はスレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニン及びヒスチジン側鎖のα−アミノ基のメチル化(T.E.Creighton,Proteins:Structure and Molecular Properties,W.H.Freeman&Co.,San Francisco,1983,pp.79−86)、N末端アミンのアセチル化及び任意のC末端カルボキシル基のアミド化が挙げられる。

0100

本発明の範囲内に含まれる抗体コンストラクトの別のタイプの共有結合修飾は、タンパク質のグリコシル化パターンの改変を含む。当該技術分野において公知のとおり、グリコシル化パターンは、タンパク質の配列(例えば、特定のグリコシル化アミノ酸残基の存在又は非存在、以下で考察する)又はタンパク質が産生される宿主細胞若しくは生物の両方に依存し得る。特定の発現システムを以下で考察する。ポリペプチドのグリコシル化は、典型的にはN結合型又はO結合型のいずれかである。N結合型は、アスパラギン残基の側鎖への糖質部分の付加を指す。トリペプチド配列のアスパラギン−X−セリン及びアスパラギン−X−スレオニン(ここで、Xは、プロリンを除く任意のアミノ酸である)は、アスパラギン側鎖への糖質部分の酵素的付加の際の認識配列である。従って、ポリペプチドにこれらのトリペプチド配列のいずれかが存在すると、潜在的なグリコシル化部位が作り出される。O結合型グリコシル化は、ヒドロキシアミノ酸、5−ヒドロキシプロリン又は5−ヒドロキシリジンも使用し得るが、最も一般的にはセリン又はスレオニンへの糖類N−アセチルガラクトサミンガラクトース又はキシロースの1つの付加を指す。

0101

抗体コンストラクトへのグリコシル化部位の付加は、好都合には、上述のトリペプチド配列の1つ以上が含まれるようにアミノ酸配列を改変することにより達成される(N結合型グリコシル化部位について)。この改変は、出発配列に対する1つ以上のセリン又はスレオニン残基の付加又はそれによる置換によっても行われ得る(O結合型グリコシル化部位について)。容易にするため、抗体コンストラクトのアミノ酸配列は、DNAレベルでの変更を通じて、特にポリペプチドをコードするDNAを予め選択された塩基で突然変異させて、所望のアミノ酸に翻訳されることになるコドンを生じさせることにより改変され得る。

0102

抗体コンストラクト上の糖質部分の数を増やす別の手段は、タンパク質へのグリコシドの化学的又は酵素的カップリングによるものである。このような手順は、N結合型及びO結合型グリコシル化に際してグリコシル化能力を有する宿主細胞におけるタンパク質の産生が必要ない点で有利である。用いるカップリングモードに依存して、1つ又は複数の糖は、(a)アルギニン及びヒスチジン、(b)遊離カルボキシル基、(c)システインのものなどの遊離スルフヒドリル基、(d)セリン、スレオニン又はヒドロキシプロリンのものなどの遊離ヒドロキシル基、(e)フェニルアラニンチロシン又はトリプトファンのものなどの芳香族残基、又は(f)グルタミンアミド基に付加され得る。これらの方法は、国際公開第87/05330号パンフレット及びAplin and Wriston,1981,CRCCrit.Rev.Biochem.,pp.259−306に記載されている。

0103

出発抗体コンストラクト上に存在する糖質部分の除去は、化学的又は酵素的に達成され得る。化学的脱グリコシル化は、タンパク質を化合物トリフルオロメタンスルホン酸又は均等な化合物に曝露する必要がある。この処理により、連結糖(N−アセチルグルコサミン又はN−アセチルガラクトサミン)を除くほとんど又は全ての糖類に切断が生じる一方、ポリペプチドは。インタクトなまま残る。化学的脱グリコシル化については、Hakimuddin et al.,1987,Arch.Biochem.Biophys.259:52及びEdge et al.,1981,Anal.Biochem.118:131により記載されている。ポリペプチド上の糖質部分の酵素的切断は、Thotakura et al.,1987,Meth.Enzymol.138:350により記載されるとおり、種々のエンド及びエキソグリコシダーゼの使用によって実現することができる。潜在的なグリコシル化部位におけるグリコシル化は、Duskin et al.,1982,J.Biol.Chem.257:3105により記載されるとおり、化合物ツニカマイシンの使用によって防止し得る。ツニカマイシンは、タンパク質−N−グリコシド連結の形成を阻止する。

0104

抗体コンストラクトの他の修飾も本明細書において企図される。例えば、抗体コンストラクトの別のタイプの共有結合修飾は、米国特許第4,640,835号明細書;同第4,496,689号明細書;同第4,301,144号明細書;同第4,670,417号明細書;同第4,791,192号明細書又は同第4,179,337号明細書に示される方法で抗体コンストラクトをポリオール類を含めた様々な非タンパク質性ポリマーに連結することを含む。加えて、例えばポリエチレングリコール(PEG)などのポリマーの付加を促進するため、当該技術分野において公知のとおり、抗体コンストラクト内の様々な位置にアミノ酸置換が作られ得る。

0105

一部の実施形態において、本発明の抗体コンストラクトの共有結合修飾は、1つ以上の標識の付加を含む。標識基は、立体障害の可能性を低減するため様々な長さのスペーサーアームを介して抗体コンストラクトにカップリングされ得る。様々なタンパク質標識方法が当該技術分野において公知であり、本発明の実施に用いることができる。用語「標識」又は「標識基」は、任意の検出可能標識を指す。一般に、標識は、それを検出するアッセイに応じて種々のクラスに分けられる − 限定されないが、以下の例が挙げられる:
a)同位体標識、これは、ラジオアイソトープ又は放射性核種などの放射性同位体又は重同位体(例えば、3H、14C、15N、35S、89Zr、90Y、99Tc、111In、125I、131I)であり得る
b)磁性標識(例えば、磁性粒子
c)酸化還元活性のある部分
d)蛍光群(例えば、FITCローダミンランタニド蛍光体)、化学発光群及び「小分子」蛍光又はタンパク質性蛍光のいずれかであり得るフルオロフォアなどの光学色素(限定されないが、発色団、蛍光体及びフルオロフォアを含む)
e)酵素群(例えば、西ワサビペルオキシダーゼβ−ガラクトシダーゼルシフェラーゼアルカリホスファターゼ
f)ビオチン化
g)二次レポーター(例えば、ロイシンジッパーペア配列、二次抗体のための結合部位金属結合ドメインエピトープタグ等)によって認識される所定のポリペプチドエピトープ。

0106

蛍光標識」は、その固有の蛍光特性を用いて検出し得る任意の分子を意味する。好適な蛍光標識としては、限定されないが、フルオレセイン、ローダミン、テトラメチルローダミン、エオシンエリスロシンクマリンメチルクマリン類、ピレンマラカイトグリーンスチルベンルシファーイエロー、Cascade BlueJ、テキサスレッド、IAEDANS、EDANS、BODIPYFL、LC Red 640、Cy 5、Cy 5.5、LC Red 705、オレゴングリーン、Alexa−Fluor色素(Alexa Fluor 350、Alexa Fluor 430、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 660、Alexa Fluor 680)、Cascade Blue、Cascade Yellow及びR−フィコエリトリン(PE)(Molecular Probes、Eugene、OR)、FITC、ローダミン及びテキサスレッド(Pierce、Rockford、IL)、Cy5、Cy5.5、Cy7(Amersham Life Science、Pittsburgh、PA)が挙げられる。フルオロフォアを含めた好適な光学色素がMolecular Probes Handbook by Richard P.Hauglandに記載されている。

0107

好適なタンパク質性蛍光標識としては、限定されないが、ウミシイタケ属(Renilla)、プティロサルクス属(Ptilosarcus)又はオワンクラゲ属(Aequorea)GFP種(Chalfie et al.,1994,Science 263:802−805)、EGFP(Clontech Laboratories,Inc.、Genbank(登録商標)受託番号U55762)を含めた緑色蛍光タンパク質青色蛍光タンパク質(BFP、Quantum Biotechnologies,Inc. 1801 de Maisonneuve Blvd.West,8th Floor,Montreal,Quebec,Canada H3H 1J9;Stauber,1998,Biotechniques 24:462−471;Heim et al.,1996,Curr.Biol.6:178−182)、高感度黄色蛍光タンパク質(EYFP、Clontech Laboratories,Inc.)、ルシフェラーゼ(Ichiki et al.,1993,J.Immunol.150:5408−5417)、βガラクトシダーゼ(Nolan et al.,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:2603−2607)及びウミシイタケ属(Renilla)(国際公開第92/15673号パンフレット、国際公開第95/07463号パンフレット、国際公開第98/14605号パンフレット、国際公開第98/26277号パンフレット、国際公開第99/49019号パンフレット、米国特許第5,292,658号明細書;同第5,418,155号明細書;同第5,683,888号明細書;同第5,741,668号明細書;同第5,777,079号明細書;同第5,804,387号明細書;同第5,874,304号明細書;同第5,876,995号明細書;同第5,925,558号明細書)も挙げられる。

0108

ロイシンジッパードメインは、それが存在するタンパク質のオリゴマー形成を促進するペプチドである。ロイシンジッパーは、当初、幾つかのDNA結合タンパク質に同定されたものであり(Landschulz et al.,1988,Science 240:1759)、以来、種々の異なるタンパク質に見付け出されてきた。公知のロイシンジッパーの中には、天然に存在するペプチド及び二量化又は三量化するその誘導体がある。可溶性オリゴマータンパク質の作製に好適なロイシンジッパードメインの例がPCT出願の国際公開第94/10308号パンフレットに記載されており、且つ肺サーファクタントタンパク質D(SPD)に由来するロイシンジッパーがHoppe et al.,1994,FEBSLetters 344:191に記載されている。それに融合した異種タンパク質の安定三量化を可能にする修飾ロイシンジッパーの使用がFanslow et al.,1994,Semin.Immunol.6:267−78に記載されている。

0109

本発明の抗体コンストラクトは、例えば、分子の分離に役立つか、又は分子の適合薬物動態プロファイルに関係する追加的なドメインも含み得る。抗体コンストラクトの分離に役立つドメインは、分離方法、例えば分離カラムにおいて捕捉することのできるペプチドモチーフ又は二次的に導入された部分から選択され得る。かかる追加的なドメインの非限定的な実施形態は、Mycタグ、HATタグ、HAタグ、TAPタグ、GSTタグ、キチン結合ドメイン(CBDタグ)、マルトース結合タンパク質(MBPタグ)、Flagタグ、Strepタグ及びその変異体(例えば、StrepIIタグ)及びHisタグとして知られるペプチドモチーフを含む。同定されたCDRによって特徴付けられる本明細書に開示される抗体コンストラクトの全ては、概して、分子のアミノ酸配列における連続したHis残基、例えば5個のHis残基(配列番号269)又は6個のHis残基(ヘキサヒスチジン、配列番号169)の繰り返しとして知られるHisタグドメインを含み得る。Hisタグは、例えば、抗体コンストラクトのN末端又はC末端に位置し得る。一実施形態では、本発明に係る抗体コンストラクトのC末端にペプチド結合によってヘキサヒスチジンタグ(HHHHHH)が連結される。

0110

また、本発明の抗体コンストラクトは、配列番号130及び142に示されるものからなる群から選択されるアミノ酸配列を有し、且つそのN末端又はそのC末端でタンパク質精製タグに好ましくはペプチド結合(アミド結合)によって連結されるポリペプチドを含むか又はそれからなることも想定される。ポリペプチドのC末端におけるタンパク質精製タグの連結が好ましい。タンパク質精製タグは、短鎖ペプチドであることが想定される。例えば、短鎖ペプチドの長さは、2〜30アミノ酸、4〜25アミノ酸、5〜20アミノ酸又は6〜19アミノ酸であり得る。タンパク質精製タグの例としては、限定されないが、AU1エピトープ(例えば、配列番号272に示されるとおり)、AU5エピトープ(例えば、配列番号273に示されるとおり)、T7タグ(例えば、配列番号274に示されるとおり)、V5タグ(例えば、配列番号275に示されるとおり)、Bタグ(例えば、配列番号276に示されるとおり)、E2エピトープ(例えば、配列番号277に示されるとおり)、FLAGエピトープ/FLAGタグ(例えば、配列番号278に示されるとおり)、Glu−Gluタグ(例えば、配列番号279又は280に示されるとおり)、HAタグ、ヒスチジンアフィニティータグ(例えば、配列番号281に示されるとおり)、HSVエピトープ(例えば、配列番号282に示されるとおり)、KT3エピトープ(例えば、配列番号283に示されるとおり)、Mycエピトープ(例えば、配列番号284に示されるとおり)、ポリアルギニンタグ(5〜6個のArg残基)、ポリアスパルテートタグ(5〜16個のAsp残基)、ポリヒスチジンタグ(2〜10個のHis残基、通常6個のHis残基、例えば配列番号169及び269〜271を参照されたい)、ポリフェニルアラニンタグ(通常11個のPhe残基)、S1タグ(例えば、配列番号285に示されるとおり)、Sタグ(例えば、配列番号286に示されるとおり)、Strepタグ(例えば、配列番号287又は288に示されるとおり)、ユニバーサルタグ(例えば、配列番号289に示されるとおり)、VSV−G(例えば、配列番号290に示されるとおり)、プロテインC(例えば、配列番号291に示されるとおり)及びプロテインAが挙げられる。ヒスチジンタグ、特に6×Hisタグ(配列番号169)が好ましい。従って、本発明の抗体コンストラクトは、配列番号130及び142に示されるものからなる群から選択されるアミノ酸配列を有し、且つそのC末端でペプチド結合によって6×Hisタグに連結されるポリペプチドからなることが更に想定される。本発明の抗体コンストラクトの実施形態は、配列番号131又は配列番号143に示されるとおりのアミノ酸配列を有する。

0111

T細胞又はTリンパ球は、細胞媒介性免疫において中心的な役割を果たすリンパ球一種(それ自体白血球細胞の一種)である。T細胞のサブセットが幾つかあり、各々が異なる機能を有する。T細胞は、細胞表面上のT細胞受容体(TCR)の存在によってB細胞及びNK細胞などの他のリンパ球と区別することができる。TCRは、主要組織適合遺伝子複合体MHC)分子に結合した抗原の認識に関与し、2つの異なるタンパク質鎖で構成される。T細胞の95%において、TCRは、アルファ(α)鎖とベータ(β)鎖とからなる。TCRが抗原ペプチド及びMHC(ペプチド/MHC複合体)と会合すると、関連する酵素、共受容体特殊化したアダプター分子及び活性化した又は放出された転写因子によって媒介される一連生化学イベントを通じてTリンパ球が活性化される。

0112

本発明の抗体コンストラクトは、T細胞の表面上のCD3に結合するドメインを含む。「CD3」(分化クラスター3)は、4つの鎖で構成されるT細胞共受容体である。哺乳類では、CD3タンパク質複合体は、CD3γ(ガンマ)鎖、CD3δ(デルタ)鎖及び2つのCD3ε(イプシロン)鎖を含有する。これらの4つの鎖がT細胞受容体(TCR)及びいわゆるζゼータ)鎖と結び付いて「T細胞受容体複合体」を形成し、Tリンパ球において活性化シグナルを生成する。CD3γ(ガンマ)、CD3δ(デルタ)及びCD3ε(イプシロン)鎖は、免疫グロブリンスーパーファミリーの高度に関連性のある細胞表面タンパク質であり、各々が単一の細胞外免疫グロブリンドメインを含有する。CD3分子の細胞内テールは、免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)として知られる単一の保存モチーフを含有し、これは、TCRのシグナル伝達能に必須である。CD3ε分子は、ヒトでは11番染色体に存在するCD3E遺伝子によってコードされるポリペプチドである。

0113

T細胞上のCD3及び標的細胞上の標的タンパク質に結合する抗体コンストラクトによるT細胞の動員を介してリダイレクトされた標的細胞の溶解には、概して、細胞溶解性シナプス形成並びにパーフォリン及びグランザイム送達が関わる。会合したT細胞は、一連の標的細胞溶解能力を有し、ペプチド抗原プロセシング及び提示又はクローナルなT細胞分化を妨げる免疫エスケープ機構の影響を受けない。例えば、国際公開第2007/042261号パンフレットを参照されたい。

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