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技術 インペラ用冷間鍛造材及びその製造方法

出願人 日本軽金属株式会社
発明者 谷津倉政仁渡会武司宮浦完総
出願日 2018年7月20日 (2年5ヶ月経過) 出願番号 2018-136641
公開日 2020年1月23日 (11ヶ月経過) 公開番号 2020-012182
状態 未査定
技術分野 非鉄金属または合金の熱処理 鍛造
主要キーワード 押出棒材 素材径 平面近傍 母材結晶 押出棒 冷間鍛造材 シャフト穴 高温耐力
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2020年1月23日)のものです。
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図面 (14)

課題

室温から作動温度において十分な強度、耐力及び耐疲労特性を有し、特に、羽根部相当部位における組織微細かつ均質化された高強度のインペラ冷間鍛造材及びその効率的な製造方法を提供する。

解決手段

Cu及びMgを含有するアルミニウム合金製のインペラ用冷間鍛造材であって、羽根部相当部位における母材結晶粒の平均粒径が250μm以下であり、結晶粒径が700μm以上の粗大粒を含まないこと、を特徴とするインペラ用冷間鍛造材。羽根部相当部位における母材結晶粒の平均粒径は200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。

概要

背景

各種内燃機関に用いられるターボチャージャー等のインペラコンプレッサホイール)やローターは、円錐状をなす回転軸部の外周側に、複数の曲面状の薄い羽根部が渦巻の一部をなすように放射状に配置された構成を有しているのが一般的である。また、ターボチャージャーのインペラは150℃程度の温度で高速回転するため、高い高温強度及び剛性を有することが要求される。

加えて、インペラ及びローターはエネルギ損失を抑制するために軽量であることが必須であり、これらの素材にはアルミニウム合金汎用されている。特に、温度が上昇する場合には高温特性に優れた2000系アルミニウム合金が用いられているが、アルミニウム合金の組成のみでは要求される機械的性質を十分に満足することが困難な状況となっている。

これに対し、例えば、特許文献1(特開2016−87624号公報)においては、所定の成分組成のAl−Cu−Mg系アルミニウム合金からなる連続鋳造棒材を鍛造素材とし、素形材料が、羽根部相当部位を含んでコンプレッサホイールの外径形状より大きく、羽根部相当部位の外面が、回転中心軸線に沿った方向の一方から他方に向けて滑らかに拡径された傾斜面を有する形状とされ、しかも羽根部相当部位における外径側端部よりも外側に、コンプレッサホイールの最終製品に対する余肉部位となるフランジ部が延出されて、羽根部相当部位に、回転中心軸線の側からフランジ部に向かうメタルフローが形成されているターボコンプレッサホイール鍛造素形材、が提案されている。

上記特許文献1のターボコンプレッサホイール用鍛造素形材においては、とりわけコンプレッサホイールの回転中心軸線に沿った方向に対して直交する方向の強度が高く、その鍛造素形材を用いてターボチャージャーのコンプレッサホイールを製造すれば、全体的に常温強度、高温強度、剛性に優れると同時に、高速回転時の動バランスに優れ、しかも各部位についての、それぞれ異なる要求特性、望まれる特性に応じた最適な性能を有し、特に羽根部の強度、剛性が高いコンプレッサホイールを得ることができる、としている。

また、特許文献2(特開2000−119786号公報)においては、Al合金鍛造材を、Cu:1.5〜7.0%、Mg:0.01〜2.0%を含み残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金とし、溶体化処理後ミクロ組織がθ' 相および/またはΩ相を有するとともに、結晶粒径が500 μm以下の等軸再結晶粒からなり、1000hrクリープ破断強度を250N/mm2以上および高温耐力を280N/mm2以上とする高速動部品用アルミニウム合金冷間鍛造材、が提示されている。

上記特許文献2の高速動部品用アルミニウム合金冷間鍛造材においては、再結晶粒を500μm以下の略一定サイズとすることで、クリープ特性等の高温特性と被削性とを兼備させることができる、としている。

概要

室温から作動温度において十分な強度、耐力及び耐疲労特性を有し、特に、羽根部相当部位における組織微細かつ均質化された高強度のインペラ用冷間鍛造材及びその効率的な製造方法を提供する。Cu及びMgを含有するアルミニウム合金製のインペラ用冷間鍛造材であって、羽根部相当部位における母材結晶粒の平均粒径が250μm以下であり、結晶粒径が700μm以上の粗大粒を含まないこと、を特徴とするインペラ用冷間鍛造材。羽根部相当部位における母材結晶粒の平均粒径は200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。なし

目的

本発明の目的は、室温から作動温度において十分な強度、耐力及び耐疲労特性を有し、特に、羽根部相当部位における組織が微細かつ均質化された高強度のインペラ用冷間鍛造材及びその効率的な製造方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

Cu及びMgを含有するアルミニウム合金製のインペラ冷間鍛造材であって、羽根部相当部位における母材結晶粒の平均粒径が250μm以下であり、結晶粒径が700μm以上の粗大粒を含まないこと、を特徴とするインペラ用冷間鍛造材。

請求項2

Cu:2.2〜3.5質量%、Mg:1.4〜2.1質量%、Fe:0.9〜1.5質量%、Si:0.10〜0.25質量%、Ni:0.9〜1.5質量%、Ti:0.01〜0.15質量%、を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金からなること、を特徴とする請求項1に記載のインペラ用冷間鍛造材。

請求項3

Cu:5.0〜7.0質量%、Mg:0.05〜0.5質量%、Fe:0.05〜0.35質量%、Si:0.05〜0.25質量%、Ti:0.01〜0.15質量%、を含有し、更に、V:0.05〜0.20質量%、Mn:0.05〜0.70質量%、Cr:0.05〜0.35質量%、Zr:0.05〜0.25質量%、のうちの1種以上を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金からなること、を特徴とする請求項1に記載のインペラ用冷間鍛造材。

請求項4

前記羽根部相当部位における前記母材結晶粒の平均粒径が200μm以下であること、を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインペラ用冷間鍛造材。

請求項5

前記羽根部相当部位における前記母材結晶粒の平均粒径が100μm以下であること、を特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインペラ用冷間鍛造材。

請求項6

インペラの回転軸に直交する方向における引張強さ及び0.2%耐力が、それぞれ420MPa以上及び350MPa以上であること、を特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のインペラ用冷間鍛造材。

請求項7

円柱形状のアルミニウム合金素材の一方の端部を下型に当接させ、前記アルミニウム合金素材の他方の端部に上型を当接させつつ押圧する鍛造工程を有し、前記アルミニウム合金素材の直径Dが、前記他方の端部が当接する前記上型の内周面内径dよりも小さいこと、を特徴とするインペラ用冷間鍛造材の製造方法。

請求項8

前記直径Dを有する円の面積(A1)及び前記内径dを有する円の面積(A2)から求められる加工度:(A2−A1)/A1×100が30%以上となること、を特徴とする請求項7に記載のインペラ用冷間鍛造材の製造方法。

請求項9

前記アルミニウム合金が当接する前記上型の底面の外周に略円環状の凸部を形成し、前記凸部と前記底面の段差を1mm以上とすること、を特徴とする請求項7又は8に記載のインペラ用冷間鍛造部材の製造方法。

請求項10

前記アルミニウム合金素材が、Cu:2.2〜3.5質量%、Mg:1.4〜2.1質量%、Fe:0.9〜1.5質量%、Si:0.10〜0.25質量%、Ni:0.9〜1.5質量%、Ti:0.01〜0.15質量%、を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなること、を特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載のインペラ用冷間鍛造材の製造方法。

請求項11

前記アルミニウム合金素材が、Cu:5.0〜7.0質量%、Mg:0.05〜0.5質量%、Fe:0.05〜0.35質量%、Si:0.05〜0.25質量%、Ti:0.01〜0.15質量%、を含有し、更に、V:0.05〜0.20質量%、Mn:0.05〜0.70質量%、Cr:0.05〜0.35質量%、Zr:0.05〜0.25質量%、のうちの1種以上を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなること、を特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載のインペラ用冷間鍛造材の製造方法。

請求項12

前記鍛造工程の後に、溶体化処理工程、焼入れ工程及び時効熱処理工程を有し、前記溶体化処理工程における加熱温度を500〜540℃とし、前記焼入れ工程で80℃以下の温度まで水冷し、前記時効熱処理工程における加熱温度を180〜210℃とすること、を特徴とする請求項7〜11のいずれかに記載のインペラ用冷間鍛造材の製造方法。

技術分野

0001

本発明は各種インペラ及びローター等の回転体に加工されるアルミニウム合金製の冷間鍛造材及びその製造方法に関する。

背景技術

0002

各種内燃機関に用いられるターボチャージャー等のインペラ(コンプレッサホイール)やローターは、円錐状をなす回転軸部の外周側に、複数の曲面状の薄い羽根部が渦巻の一部をなすように放射状に配置された構成を有しているのが一般的である。また、ターボチャージャーのインペラは150℃程度の温度で高速回転するため、高い高温強度及び剛性を有することが要求される。

0003

加えて、インペラ及びローターはエネルギ損失を抑制するために軽量であることが必須であり、これらの素材にはアルミニウム合金が汎用されている。特に、温度が上昇する場合には高温特性に優れた2000系アルミニウム合金が用いられているが、アルミニウム合金の組成のみでは要求される機械的性質を十分に満足することが困難な状況となっている。

0004

これに対し、例えば、特許文献1(特開2016−87624号公報)においては、所定の成分組成のAl−Cu−Mg系アルミニウム合金からなる連続鋳造棒材を鍛造素材とし、素形材料が、羽根部相当部位を含んでコンプレッサホイールの外径形状より大きく、羽根部相当部位の外面が、回転中心軸線に沿った方向の一方から他方に向けて滑らかに拡径された傾斜面を有する形状とされ、しかも羽根部相当部位における外径側端部よりも外側に、コンプレッサホイールの最終製品に対する余肉部位となるフランジ部が延出されて、羽根部相当部位に、回転中心軸線の側からフランジ部に向かうメタルフローが形成されているターボコンプレッサホイール鍛造素形材、が提案されている。

0005

上記特許文献1のターボコンプレッサホイール用鍛造素形材においては、とりわけコンプレッサホイールの回転中心軸線に沿った方向に対して直交する方向の強度が高く、その鍛造素形材を用いてターボチャージャーのコンプレッサホイールを製造すれば、全体的に常温強度、高温強度、剛性に優れると同時に、高速回転時の動バランスに優れ、しかも各部位についての、それぞれ異なる要求特性、望まれる特性に応じた最適な性能を有し、特に羽根部の強度、剛性が高いコンプレッサホイールを得ることができる、としている。

0006

また、特許文献2(特開2000−119786号公報)においては、Al合金鍛造材を、Cu:1.5〜7.0%、Mg:0.01〜2.0%を含み残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金とし、溶体化処理後ミクロ組織がθ' 相および/またはΩ相を有するとともに、結晶粒径が500 μm以下の等軸再結晶粒からなり、1000hrクリープ破断強度を250N/mm2以上および高温耐力を280N/mm2以上とする高速動部品用アルミニウム合金冷間鍛造材、が提示されている。

0007

上記特許文献2の高速動部品用アルミニウム合金冷間鍛造材においては、再結晶粒を500μm以下の略一定サイズとすることで、クリープ特性等の高温特性と被削性とを兼備させることができる、としている。

先行技術

0008

特開2016−87624号公報
特開2000−119786号公報

発明が解決しようとする課題

0009

上記特許文献1のターボコンプレッサホイール用鍛造素形材及び上記特許文献2の高速動部品用アルミニウム合金冷間鍛造材では組成に加えて微細組織が制御されているが、各種インペラは室温から作動温度における十分な機械的性質(強度、耐力及び耐疲労特性)を有する必要があり、高性能化に向けては更なる高強度化が求められている。また、冷間鍛造では金型に接触した部位は流動が困難であり、結晶粒径が粗大な領域が形成してしまうケースがある。特に、インペラが高速回転する際には羽根部に大きな応力印加されることから、冷間鍛造材の羽根部相当部位における、結晶粒の粗大化による強度低下を避ける必要がある。

0010

以上のような従来技術における問題点に鑑み、本発明の目的は、室温から作動温度において十分な強度、耐力及び耐疲労特性を有し、特に、羽根部相当部位における組織微細かつ均質化された高強度のインペラ用冷間鍛造材及びその効率的な製造方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

0011

本発明者らは、上記目的を達成すべく、アルミニウム合金製冷間鍛造材の組成及び組織とその製造方法について鋭意研究を重ねた結果、一回の冷間鍛造工程でアルミニウム合金素材に十分な塑性変形を付与すること(加工度を大きくすること)等が極めて有効であることを見出し、本発明に到達した。

0012

即ち、本発明は、
Cu及びMgを含有するアルミニウム合金製のインペラ用冷間鍛造材であって、
羽根部相当部位における母材結晶粒の平均粒径が250μm以下であり、結晶粒径が 700μm以上の粗大粒を含まないこと、
を特徴とするインペラ用冷間鍛造材、を提供する。

0013

本発明のインペラ用冷間鍛造材においては、Cu及びMgの添加に起因する固溶強化及び析出強化(θ’相やS’相の析出)により、アルミニウム合金の常温及び高温における引張特性及びクリープ特性と高温耐力が改善されている。

0014

また、本発明のインペラ用冷間鍛造材においては、羽根部相当部位(最終的にインペラの羽根部となる部位)における母材結晶粒の平均粒径が250μm以下であり、結晶粒径が700μm以上の粗大粒を含まない。その結果、羽根部相当部位の強度、耐力及び耐疲労特性を担保することができ、高速回転するインペラを製造するための冷間鍛造材として好適に用いることができる。また、インペラが高速回転する際には羽根部に大きな応力が印加されることから、アルミニウム合金押出材の羽根部相当部位に粗大化した結晶粒が混在すると、インペラを最大限軽量化できる設計とすることができないが、本発明のインペラ用冷間鍛造材においては組織が微細かつ均質化されていることから、当該設計が容易である。

0015

一般的な冷間鍛造では金型に接触した部位は流動が生じ難いため、導入されるひずみの不足により結晶粒が粗大化し、その他の部位と比較して強度が低下する。例えば、アルミニウム合金製の素形材を上型及び下型に当接させた状態から冷間鍛造(密閉型鍛造又は半密閉型鍛造)すると、羽根部相当部位となる冷間鍛造材の外縁部に結晶粒が比較的大きな領域が形成されてしまう。

0016

これに対し、本発明のインペラ用冷間鍛造材においては、羽根部相当部位となる外縁部を含む全領域において十分なひずみが導入されており、羽根部相当部位において母材結晶粒の平均粒径が250μm以下であり、結晶粒径が700μm以上の粗大粒を含まない組織が形成されている。

0017

また、本発明のインペラ用冷間鍛造材においては、
Cu:2.2〜3.5質量%、
Mg:1.4〜2.1質量%、
Fe:0.9〜1.5質量%、
Si:0.10〜0.25質量%、
Ni:0.9〜1.5質量%、
Ti:0.01〜0.15質量%、を含有し、
残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金からなること、が好ましい。

0018

また、本発明のインペラ用冷間鍛造材においては、
Cu:5.0〜7.0質量%、
Mg:0.05〜0.5質量%、
Fe:0.05〜0.35質量%、
Si:0.05〜0.25質量%、
Ti:0.01〜0.15質量%、を含有し、
更に、
V :0.05〜0.20質量%、
Mn:0.05〜0.70質量%、
Cr:0.05〜0.35質量%、
Zr:0.05〜0.25質量%、のうちの1種以上を含有し、
残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金からなること、が好ましい。

0019

インペラ用冷間鍛造材がこれらの組成を有することで、Cu、Mg及びその他の添加に起因する固溶強化、析出強化及び晶出物による強化等により、アルミニウム合金の常温及び高温における引張特性及びクリープ特性や高温耐力等が改善されている。

0020

また、本発明のインペラ用冷間鍛造材においては、前記羽根部相当部位における前記母材結晶粒の平均粒径が200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。平均粒径を200μm以下とすることで、結晶粒微細化強化を確実に発現させることができ、100μm以下とすることで、インペラの羽根部に要求される強度、耐力及び耐疲労特性をより確実に得ることができる。

0021

また、本発明のインペラ用冷間鍛造材においては、インペラの回転軸に直交する方向における引張強さ及び0.2%耐力が、それぞれ420MPa以上及び350MPa以上であること、が好ましい。インペラの回転軸に直交する方向における引張強さ及び0.2%耐力をそれぞれ420MPa以上及び350MPa以上とすることで、インペラに十分な信頼性を付与することができる。

0022

また、本発明は、
円柱形状のアルミニウム合金素材の一方の端部を下型に当接させ、前記アルミニウム合金素材の他方の端部に上型を当接させつつ押圧する鍛造工程を有し、
前記アルミニウム合金素材の直径Dが、前記他方の端部が当接する前記上型の内周面内径dよりも小さいこと、
を特徴とするインペラ用冷間鍛造材の製造方法、も提供する。

0023

一般的なアルミニウム合金の冷間鍛造では、素材の直径を金型の内周面に略一致させる。この場合、当初から金型に接触している素材は殆ど流動せず、十分なひずみを導入することができない。その結果、当該領域の結晶粒はその他の領域の結晶粒と比較して粗大化し、強度や耐力が低下してしまう。これに対し、本発明のインペラ用冷間鍛造材の製造方法においては、アルミニウム合金素材の直径を金型の内径よりも小さくし、アルミニウム合金素材の全域に対して結晶粒微細化に必要なひずみを導入することを最大の特徴としている。

0024

即ち、一般的なアルミニウム合金の冷間鍛造で組織の均質化を図る場合、例えば、異なる金型を用いて複数回の冷間鍛造を施す必要があるが、本発明のインペラ用冷間鍛造材の製造方法においては、一回の冷間鍛造によって十分に均質化された微細組織を得ることができる。

0025

また、本発明のインペラ用冷間鍛造材の製造方法においては、前記直径Dを有する円の面積(A1)及び前記内径dを有する円の面積(A2)から求められる加工度:(A2−A1)/A1×100が30%以上となること、が好ましい。

0026

直径Dを有する円の面積(A1)及び内径dを有する円の面積(A2)から求められる加工度:(A2−A1)/A1×100を30%以上とすることで、アルミニウム合金素材の全域の結晶粒を微細化するために必要なひずみを確実に導入することができる。

0027

また、本発明のインペラ用冷間鍛造材の製造方法においては、前記アルミニウム合金が当接する前記上型の底面の外周に略円環状の凸部を形成し、前記凸部と前記底面の段差を1mm以上とすること、が好ましい。

0028

アルミニウム合金素材が当接する上型の底面が完全に平面の場合、当該平面近傍ではアルミニウム合金素材にひずみを導入することが困難であり、冷間鍛造材上部の結晶粒を均一に微細化することが困難である。これに対し、上型の底面に1mm以上の段差を設けることでアルミニウム合金素材に導入されるひずみを増加させることができ、冷間鍛造材上部にも均質な微細組織を形成させることができる。

0029

また、本発明のインペラ用冷間鍛造材の製造方法においては、前記アルミニウム合金素材が、
Cu:2.2〜3.5質量%、
Mg:1.4〜2.1質量%、
Fe:0.9〜1.5質量%、
Si:0.10〜0.25質量%、
Ni:0.9〜1.5質量%、
Ti:0.01〜0.15質量%、を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなること、が好ましい。

0030

また、本発明のインペラ用冷間鍛造材の製造方法においては、前記アルミニウム合金素材が、
Cu:5.0〜7.0質量%、
Mg:0.05〜0.5質量%、
Fe:0.05〜0.35質量%、
Si:0.05〜0.25質量%、
Ti:0.01〜0.15質量%、を含有し、
更に、
V :0.05〜0.20質量%、
Mn:0.05〜0.70質量%、
Cr:0.05〜0.35質量%、
Zr:0.05〜0.25質量%、のうちの1種以上を含有し、
残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金からなること、が好ましい。

0031

これらの組成を有するアルミニウム合金を用いることで、Cu、Mg及びその他の添加に起因する固溶強化、析出強化及び晶出物による強化等により、インペラの常温及び高温における引張特性及びクリープ特性や高温耐力等を改善することができる。

0032

また、本発明のインペラ用冷間鍛造材の製造方法においては、前記鍛造工程の後に、溶体化処理工程、焼入れ工程及び時効熱処理工程を有し、前記溶体化処理工程における加熱温度を500〜540℃とし、前記焼入れ工程における冷却は80℃以下の水冷とし、前記時効熱処理工程における加熱温度を180〜210℃とすること、が好ましい。

0033

時効熱処理の温度を180℃以上とすることで、析出強化を効率的に発現させることができ、210℃以下とすることで、析出物の粗大化等による強度、耐力及び耐疲労特性の低下を抑制することができる。また、溶体化処理の温度を500℃以上とすることで、Cu及びMg等の析出強化に寄与する固溶元素アルミニウム中に十分に固溶させることができ、540℃以下とすることで、局部的な融解による鍛造材の強度及び延性の低下を抑制することができる。また、Cu及びMg等の析出強化に寄与する固溶元素をアルミニウム中に十分に固溶させるには、当該条件で加熱後に速やかに冷却することが必要である。80℃を超えると、冷却水沸騰し易く、十分な冷却速度が安定して得られない。一方で、その効果は室温程度で飽和するので、それ以下に下げる必要はない。必要以上に温度を下げると、焼入れ歪残留し、切削加工時の加工精度を低下させるので20℃以上で冷却することが好ましい。

発明の効果

0034

本発明によれば、室温及び高温において十分な強度、耐力及び耐疲労特性を有し、特に、羽根部相当部位における組織が微細かつ均質化されたインペラ用冷間鍛造材及びその効率的な製造方法を提供することができる。

図面の簡単な説明

0035

代表的なインペラを概略的に示す斜視図である。
代表的なインペラを概略的に示す断面図である。
一般的なインペラ用冷間鍛造部材の断面の模式図である。
本発明のインペラ用冷間鍛造部材の断面の模式図である。
本発明のインペラ用冷間鍛造部材の製造方法における冷間鍛造工程の一例を示す模式図(冷間鍛造前)である。
本発明のインペラ用冷間鍛造部材の製造方法における冷間鍛造工程の一例を示す模式図(冷間鍛造後)である。
実施例1で得られたインペラ用アルミニウム合金鍛造材の断面の組織写真である。
実施例2で得られたインペラ用アルミニウム合金鍛造材の断面の組織写真である。
実施例3で得られたインペラ用アルミニウム合金鍛造材の断面の組織写真である。
比較例で得られたインペラ用アルミニウム合金鍛造材の断面の組織写真である。
据え込み鍛造用アルミニウム合金素材の形状及びサイズを示す概略図である。
据え込み鍛造前後の試験片外観写真である。
引張特性に及ぼす結晶粒径の影響を調べるために用いた引張試験片の概略図である。
結晶粒径と引張特性の関係を示すグラフである。

0036

以下、図面を参照しながら本発明のアルミニウム合金製のインペラ用冷間鍛造部材及びその製造方法についての代表的な実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。なお、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する場合がある。また、図面は、本発明を概念的に説明するためのものであるから、表された各構成要素の寸法やそれらの比は実際のものとは異なる場合もある。

0037

1.アルミニウム合金製インペラ用冷間鍛造部材
(1)組織
代表的なインペラを概略的に示す斜視図及び断面図を図1及び図2にそれぞれ示す。インペラ1は、インペラ1をローターと連結するためのシャフトを挿入するためのシャフト穴2を有し、略円錐状の回転軸部4の外周に、放射状にかつ渦巻の一部をなすように傾斜した複数の羽根部6を一体に形成した構造を有している。

0038

インペラ1の形状は、例えば、アルミニウム合金製のインペラ用冷間鍛造部材を加工することで得ることができる。この場合、インペラ1の結晶粒径及びその分布は、基本的にインペラ用冷間鍛造部材の状態を引き継ぐことになる。

0039

一般的なインペラ用冷間鍛造部材の断面の模式図を図3に、本発明のインペラ用冷間鍛造部材の断面の模式図を図4に、それぞれ示す。図3及び図4において、結晶粒が他の領域と比較して粗大化する領域を斜線で示している。一般的なインペラ用冷間鍛造部材10は、冷間鍛造時に金型に接触する外周近傍(特に上部)においてひずみが不足することから、当該領域の結晶粒径が他の領域と比較して顕著に粗大化してしまう。なお、冷間鍛造条件にも依存するが、中心及び表面においても比較的結晶粒が粗大となる領域が形成される。

0040

これに対し、本発明のインペラ用冷間鍛造部材12においては、外周近傍に結晶粒が粗大となる明確な領域が存在しない。中心部表面に比較的結晶粒が粗大化した領域が形成される場合があるが、当該領域はシャフト穴2として除去されるため、インペラ1の特性に影響を及ぼすことはない。

0041

ここで、インペラ1の羽根部6は軽量化を目的として薄肉化されることに加え、高速回転によって大きな遠心力が作用することから、高い強度及び剛性が要求される。特に、羽根部6の先端部にはより大きな遠心力が作用することから、当該領域に加工されるインペラ用冷間鍛造部材の最外周部は高強度化することが切望されているところ、本発明のインペラ用冷間鍛造部材12の外周は結晶粒が微細化されており(結晶粒が粗大化した領域が存在せず)、高い強度が付与されている。なお、図4において、最終的に羽根部6に加工される羽根部相当部位14をハッチング領域で示している。即ち、羽根部相当部位14における母材結晶粒の平均粒径は250μm以下であり、結晶粒径が700μm以上の粗大粒を含まない。

0042

本発明のインペラ用冷間鍛造部材12においては、羽根部相当部位14における母材結晶粒の平均粒径が200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。平均粒径を200μm以下とすることで、結晶粒微細化強化を確実に発現させることができ、100μm以下とすることで、インペラ1の羽根部6に要求される強度、耐力及び耐疲労特性をより確実に得ることができる。

0043

母材結晶粒の平均粒径を求める方法は特に限定されず、従来公知の種々の方法で測定すればよい。例えば、インペラ用冷間鍛造部材12を切断し、得られた断面試料光学顕微鏡又は走査型電子顕微鏡で観察し、母材結晶粒の粒径平均値を算出することで求めることができる。その他、走査型電子顕微鏡に付属している後方散乱電子回折測定装置(SEM−EBSD)により測定してもよい。なお、観察手法に応じて、断面試料には機械研磨バフ研磨電解研磨及びエッチング等を施せばよい。

0044

また、本発明のインペラ用冷間鍛造材12においては、インペラの回転軸(シャフト穴2の中心軸)に直交する方向における引張強さ及び0.2%耐力が、それぞれ420MPa以上及び350MPa以上であること、が好ましい。インペラの回転軸に直交する方向における引張強さ及び0.2%耐力をそれぞれ420MPa以上及び350MPa以上とすることで、インペラに十分な信頼性を付与することができる。なお、より好ましい引張強さ及び0.2%耐力はそれぞれ440MPa以上及び360MPa以上であり、最も好ましい引張強さ及び0.2%耐力はそれぞれ450MPa以上及び370MPa以上である。

0045

また、本発明のインペラ用冷間鍛造材12はCu及びMgを含有しており、Cu及びMgの添加に起因する固溶強化及び析出強化(θ’相やS’相の析出)等により、アルミニウム合金の常温及び高温における引張特性及びクリープ特性と高温耐力が改善されている。

0046

(2)組成
(2−1)組成1
インペラ用冷間鍛造材12は、Cu:2.2〜3.5質量%、Mg:1.4〜2.1質量%、Fe:0.9〜1.5質量%、Si:0.10〜0.25質量%、Ni:0.9〜1.5質量%、Ti:0.01〜0.15質量%、を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金からなることが好ましい。以下、各成分について詳細に説明する。

0047

Cu:2.2〜3.5質量%
CuはAl−Cu系析出物を形成し、機械的特性及び疲労強度を高める作用を有する。また、CuとMgの両者を添加し、熱処理することでAl2CuMg化合物を形成させ、強度を高めることができる。Cu添加量が2.2質量%未満では析出物量が不足し、目標強度が得られない。また、3.5質量%を超えて添加すると、鋳造時に形成されたAl2CuやAl2CuMg晶出物が粗大になり、溶体化処理時に固溶せず溶け残り、疲労強度や靭性が低下してしまう。

0048

Mg:1.4〜2.1質量%
MgはCuとともに添加することでAl2CuMg化合物を形成し、強度に寄与する。1.4質量%未満ではインペラに要求される十分な強度が得られない。また、2.1質量%を超えて添加するとAl−Cu−Mg晶出物が溶体化処理時に溶け残り、疲労強度や靭性を低下させる。加えて、MgはSiと共にMg−Si系析出物を形成し、機械的特性及び疲労強度を高める作用を有する。当該作用は1.4質量%以上で顕著となるが、2.1質量%を超えて添加しても、高度への寄与はほとんど期待できず、また、破壊の起点となる粗大な金属間化合物を形成し、靭性等の機械的特性を低下させる虞がある。

0049

Fe:0.9〜1.5質量%
分散粒子を形成させるのに有効な元素である。Al−Fe−(Ni)系化合物の晶出によってAlの再結晶化を抑制すると共に高温強度の向上に寄与するが、0.9質量%未満ではその効果が十分に得られない。しかし、過剰に添加すると、粗大な金属間化合物を形成させて靭性を低下させるため、添加量の上限を1.5質量%としている。

0050

Si:0.10〜0.25質量%
Siの添加によりAl2CuやAl2CuMgの析出密度が高まり、強度に寄与する。これらの作用は0.1質量%以上で顕著となり、0.25質量%を超えて添加するとAl−Si−Mg−Cu系の晶出物が形成され、疲労強度や靭性が低下する虞がある。

0051

Ni:0.9〜1.5質量%
Niは、高融点のAl−Ni系晶出物を形成し、200〜350℃付近における耐熱性及び高温強度を改善する。当該効果は0.9質量%以上の含有で顕著になるが、1.5質量%を超える多量のNiを含有させると、粗大な化合物を形成して靭性を低下させる。

0052

Ti:0.01〜0.15質量%
TiはBとの複合添加でAl−TiやTi−B系の化合物を形成し、鋳造組織を微細化し、鋳造割れを防止すると共に、添加元素の均質化を促進させる。これらの効果は0.01質量%未満では不十分であり、0.15質量%を超える量を添加するとその効果が飽和するだけでなく、Al‐Ti系の粗大な晶出物を形成し、靭性を低下させる。また、TiをAl中に固溶させることで強化相であるAl2CuやAl2CuMg析出物の高温下での成長を抑制し、高強度を安定して得ることができる。

0053

(2−2)組成2
インペラ用冷間鍛造材12は、Cu:5.0〜7.0質量%、Mg:0.05〜0.5質量%、Fe:0.05〜0.35質量%、Si:0.05〜0.25質量%、Ti:0.01〜0.15質量%、を含有し、更に、V :0.05〜0.20質量%、Mn:0.05〜0.70質量%、Cr:0.05〜0.35質量%、Zr:0.05〜0.25質量%、のうちの1種以上を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金からなること、が好ましい。以下、上記の組成1との差異を中心に、各成分について詳細に説明する。

0054

Cu:5.0〜7.0質量%
Mg:0.05〜0.5質量%
組成1と比較して、Cuの添加量を増加させ、Mgの添加量を減少させている。Cuの添加量を5.0質量%以上とすることでT6処理後にAl‐Cu系析出物を形成し、強度に寄与させることができる。一方で、7.0質量%を超えて添加すると、T6処理後にAl−Cu系晶出物が多く残存し、靭性を低下させる。Mgの添加量を0.05質量%以上添加することで、T6処理後にAl−Cu(‐Mg)系析出物の形成を促進し、強度に寄与することができるが、0.5質量%を超えて添加すると高温域でAl−Cu系析出物の成長を速めることから高温域での高強度を安定して得ることができない。

0055

Fe:0.05〜0.35質量%
Si:0.05〜0.25質量%
Ti:0.01〜0.15質量%
これらの添加元素の効果は組成1の場合と同様である。

0056

V :0.05〜0.20質量%
Mn:0.05〜0.70質量%
Cr:0.05〜0.35質量%
Zr:0.05〜0.25質量%
上記の元素を含有するアルミニウム合金では、均質化処理時に、Al−Fe(Mn、Cr)‐Si系やAl−Mg−Cr‐Mn系、Al‐Zr系、Al−V系の分散粒子が形成され、結晶粒界の移動を抑制し、再結晶化を抑制する、いわゆるピン止め効果を発現させ、強度に寄与することができる。

0057

2.アルミニウム合金製インペラ用冷間鍛造材の製造方法
本発明のインペラ用冷間鍛造部材の製造方法は、上記本発明のインペラ用冷間鍛造材の効果的かつ効率的な製造方法を提供するものである。

0058

本発明のインペラ用冷間鍛造部材の製造方法は、円柱形状のアルミニウム合金素材の一方の端部を下型に当接させ、アルミニウム合金素材の他方の端部に上型を当接させつつ押圧する鍛造工程を有し、アルミニウム合金素材の直径Dが、他方の端部が当接する上型の内周面の内径dよりも小さいこと、を特徴としている。

0059

本発明のインペラ用冷間鍛造部材の製造方法における冷間鍛造工程の一例を示す模式図を図5(冷間鍛造前)及び図6(冷間鍛造後)に示す。図5においては、円柱状のアルミニウム合金素材30を下型32に当接させ、上型34によって上側から圧縮する状況を示している。ここで、一般的なアルミニウム合金の冷間鍛造では、アルミニウム合金素材30の直径Dは上型34の内周面の内径dと略同一となっている。なお、下型32には鍛造品を排出するためのエジェクターアウトピン36が、上型34には鍛造品の貼り付きを防止するパンチノックアウトピン38が備わっている。

0060

これに対し、本発明のインペラ用冷間鍛造部材の製造方法においては、アルミニウム合金素材30の直径が上型34の内径dよりも小さくなっている。その結果、上型34による圧縮によりアルミニウム合金素材30が扁平すると共に上型34の内径dに押し付けられることで、アルミニウム合金素材30の外周近傍にも十分なひずみを導入することができる。

0061

ここで、アルミニウム合金素材30の直径Dを有する円の面積(A1)及び上型34の内径dを有する円の面積(A2)から求められる加工度:(A2−A1)/A1×100を30%以上とすることが好ましい。当該加工度を30%以上とすることで、アルミニウム合金素材30の全域(特に外周近傍)の結晶粒を微細化するために必要なひずみを確実に導入することができる。なお、より好ましい加工度は35%以上であり、最も好ましい加工度は50%以上である。

0062

また、本発明のインペラ用冷間鍛造材の製造方法においては、アルミニウム合金素材30が当接する上型34の底面の外周に略円環状の凸部を形成し、当該凸部と底面の段差を1mm以上とすること、が好ましい。

0063

アルミニウム合金素材30が当接する上型34の底面が完全に平面の場合、当該平面近傍ではアルミニウム合金素材30にひずみを導入することが困難であり、冷間鍛造材上部の結晶粒を均一に微細化することが困難である。これに対し、上型34の底面に1mm以上の段差を設けることでアルミニウム合金素材30に導入されるひずみを増加させることができ、冷間鍛造材上部にも均質な微細組織を形成させることができる。なお、底面の段差は1.3mm以上とすることがより好ましく、1.5mm以上とすることが最も好ましい。

0064

また、図6に示すように、パンチノックアウトピン38を後退させた状態で鍛造を施すことにより、アルミニウム合金素材30に導入されるひずみを増加させることができ、冷間鍛造材により均質な微細組織を形成させることができる。

0065

また、本発明のインペラ用冷間鍛造部材の製造方法においては、アルミニウム合金素材30が、
Cu:2.2〜3.5質量%、
Mg:1.4〜2.1質量%、
Fe:0.9〜1.5質量%、
Si:0.10〜0.25質量%、
Ni:0.9〜1.5質量%、
Ti:0.01〜0.15質量%、を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなること、が好ましい。

0066

また、本発明のインペラ用冷間鍛造部材の製造方法においては、アルミニウム合金素材30が、
Cu:5.0〜7.0質量%、
Mg:0.05〜0.5質量%、
Fe:0.05〜0.35質量%、
Si:0.05〜0.25質量%、
Ti:0.01〜0.15質量%、を含有し、
更に、
V :0.05〜0.20質量%、
Mn:0.05〜0.70質量%、
Cr:0.05〜0.35質量%、
Zr:0.05〜0.25質量%、のうちの1種以上を含有し、
残部がA1および不可避不純物からなるアルミニウム合金からなること、が好ましい。

0067

これらの各添加元素の効果等については本発明のインペラ用冷間鍛造部材に関して示した通りであるが、主として、Cu、Mg及びその他の添加に起因する固溶強化、析出強化及び晶出物による強化等により、インペラ用冷間鍛造材12の常温及び高温における引張特性及びクリープ特性や高温耐力等を改善することができる。

0068

また、本発明のインペラ用冷間鍛造部材の製造方法においては、鍛造工程の後に、溶体化処理工程、焼入れ工程及び時効熱処理工程を有し、溶体化処理工程における加熱温度を500〜540℃とし、焼入れ工程における冷却は80℃以下の水冷とし、時効熱処理工程における加熱温度を180〜210℃とすること、が好ましい。

0069

時効熱処理の温度を180℃以上とすることで、析出強化を効率的に発現させることができ、210℃以下とすることで、析出物の粗大化等による強度、耐力及び耐疲労特性の低下を抑制することができる。また、溶体化処理の温度を500℃以上とすることで、Cu及びMg等の析出強化に寄与する固溶元素をアルミニウム中に十分に固溶させることができ、540℃以下とすることで、局部的な融解による鍛造材の強度及び延性の低下を抑制することができる。

0070

以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれらのみに限定されるものではなく、種々の設計変更が可能であり、それら設計変更は全て本発明の技術的範囲に含まれる。

0071

≪実施例1≫
表1に記載の組成を有し、残部がAlと不可避不純物からなるアルミニウム合金をビレット温度360℃、押出速度3m/minの条件で押出加工し、直径32mmの押出棒材を得た。その後、当該押出棒材を415℃で2h保持した後、25℃/hの冷却速度で室温まで冷却し、素材径32mmの鍛造用アルミニウム合金素材を得た。なお、表1に記載の成分は質量%で示している。

0072

0073

鍛造最小径が39.5mmとなる鍛造型(上型)を用い、得られた鍛造用アルミニウム合金素材に対して1回の鍛造を施し、アルミニウム合金鍛造材を得た。当該鍛造においては、鍛造用アルミニウム合金素材の径が32mm、鍛造最小径が39.5mmであるから、加工度は52%となる。なお、鍛造用アルミニウム合金素材が当接する上型の底面の外周には略円環状の凸部を形成し、当該凸部と底面の段差を1.5mmとした。

0074

次いで、アルミニウム合金鍛造材を525℃で2h保持(溶体化処理)した後に25℃で水冷し、197℃で12h保持(時効処理)してインペラ用アルミニウム合金鍛造材を得た。得られたインペラ用アルミニウム合金鍛造材の断面の組織写真を図7に示す。切削加工後にインペラの羽根部となる羽根部相当部位(図4の羽根部相当部位14に対応する領域)の組織は微細かつ均質となっており、700μm以上の粗大な結晶粒は含まれていないことが分かる。

0075

図7に示すX方向及びY方向で交線法を用いて羽根部相当部位の平均結晶粒径を求めたところ、X方向で16μm、Y方向で15μmであった。また、段差を有する金型底面に当接したインペラ用アルミニウム合金鍛造材の上部近傍においても組織の微細化及び均質化が進んでいることが分かる。

0076

また、図7に示す点線枠の領域から平行部幅5mm、厚さ2mm、長さ20mmの引張試験片を切り出した。当該引張試験片について引張特性を評価したところ、引張強さ:448MPa、0.2%耐力:376MPa、伸び:8.4%であった。

0077

≪実施例2≫
押出棒材及び鍛造用アルミニウム合金素材の直径を34mmとし、上型底面と凸部の段差を1.35mmとした以外は実施例1と同様にしてインペラ用アルミニウム合金鍛造材を得た。当該鍛造においては、鍛造用アルミニウム合金素材の径が34mm、鍛造最小径が39.5mmであるから、加工度は35%となる。

0078

得られたインペラ用アルミニウム合金鍛造材の断面の組織写真を図8に示す。切削加工後にインペラの羽根部となる羽根部相当部位(図4の羽根部相当部位14に対応する領域)の組織は微細かつ均質となっており、700μm以上の粗大な結晶粒は含まれていないことが分かる。

0079

図8に示すX方向及びY方向で交線法を用いて羽根部相当部位の平均結晶粒径を求めたところ、X方向で16μm、Y方向で16μmであった。また、段差を有する金型底面に当接したインペラ用アルミニウム合金鍛造材の上部近傍においても組織の微細化及び均質化が進んでいることが分かる。なお、実施例1と比較すると段差が小さくなっているため、僅かに結晶粒が大きな状態となっている。

0080

≪実施例3≫
表2に記載の組成を有し、残部がAlと不可避不純物からなるアルミニウム合金をビレット温度360℃、押出速度6m/minの条件で押出加工し、直径36mmの押出棒材を得た。その後、当該押出棒材を415℃で2h保持した後、25℃/hの冷却速度で室温まで冷却し、素材径36mmの鍛造用アルミニウム合金素材を得た。なお、表2の成分は質量%で示している。

0081

0082

鍛造最小径が46mmとなる鍛造型(上型)を用い、得られた鍛造用アルミニウム合金素材に対して1回の鍛造を施し、アルミニウム合金鍛造材を得た。当該鍛造においては、鍛造用アルミニウム合金素材の径が36mm、鍛造最小径が46mmであるから、加工度は63%となる。なお、鍛造用アルミニウム合金素材が当接する上型の底面の外周には略円環状の凸部を形成し、当該凸部と底面の段差を1.5mmとした。

0083

次いで、アルミニウム合金鍛造材を530℃で2h保持(溶体化処理)した後に25℃で水冷し、180℃で6h保持(時効処理)してインペラ用アルミニウム合金鍛造材を得た。得られたインペラ用アルミニウム合金鍛造材の断面の組織写真を図9に示す。切削加工後にインペラの羽根部となる羽根部相当部位(図4の羽根部相当部位14に対応する領域)の組織は微細(250μm以下)かつ均質となっており、700μm以上の粗大な結晶粒は含まれていないことが分かる。また、段差を有する金型底面に当接したインペラ用アルミニウム合金鍛造材の上部近傍においても組織の微細化及び均質化が進んでいる。

0084

また、図9に示す点線枠の領域から平行部幅5mm、厚さ2mm、長さ20mmの引張試験片を切り出した。当該引張試験片について引張特性を評価したところ、引張強さ:455MPa、0.2%耐力:362MPa、伸び:12.1%であった。

0085

≪比較例≫
表1に示した合金成分ビレットから押出加工した直径39mmの押出棒鍛造用素材とし、上型底面と凸部の段差を取らず、フラットな状態で鍛造を実施した。なお、鍛造前の押出条件焼鈍条件および鍛造後のT6処理条件は実施例1と同様にしてインペラ用アルミニウム合金鍛造材を得た。当該鍛造においては、鍛造用アルミニウム合金素材の径が39mm、鍛造最小径が39.5mmであるから、鍛造用アルミニウム合金素材の径と鍛造最小径は略同一である(金型に鍛造用アルミニウム合金素材を挿入できる程度に、鍛造用アルミニウム合金素材の直径を鍛造最小径よりも僅かに小さくしている。なお、加工度は3%となる。)。

0086

得られたインペラ用アルミニウム合金鍛造材の断面の組織写真を図10に示す。切削加工後にインペラの羽根部となる羽根部相当部位(図4の羽根部相当部位14に対応する領域)には粗粒が含まれており、不均質な組織となっている。また、略平面状の金型底面に当接したインペラ用アルミニウム合金鍛造材の上部近傍において、組織の微細化及び均質化は進んでいない。

0087

図10に示すX方向及びY方向で交線法を用いて羽根部相当部位の平均結晶粒径を求めたところ、X方向で208μm、Y方向で2066μmであった。

0088

≪引張特性に及ぼす結晶粒径の影響≫
引張特性に及ぼす結晶粒径の影響を確認するために、表1に記載の組成を有するアルミニウム合金に関して種々の鍛造条件で据え込み鍛造を施した。具体的には、図11に示す形状及びサイズの鍛造用アルミニウム合金素材に対して、鍛造方向LT方向、両端面拘束とする冷間鍛造を施した。冷間鍛造前後の試験片外観を図12に示す。

0089

次いで、アルミニウム合金鍛造材を525℃で2h保持(溶体化処理)した後に水冷し、200℃で10h保持(時効処理)して評価用アルミニウム合金鍛造材を得た。評価用アルミニウム合金鍛造材中心部の組織観察によってL方向の平均結晶粒径を求めると共に、当該領域から図13に示す引張試験片を切り出して引張特性を評価した。得られた結果を図14に示す。

実施例

0090

結晶粒径が250μmより小さくなると引張強さが増加し、特に結晶粒径が100μmよりも小さくなると顕著な増加が認められる。加えて、結晶粒径が100μmよりも小さくなると、0.2%耐力も明確に増加することが分かる。

0091

1・・・インペラ、
2・・・シャフト穴、
4・・・回転軸部、
6・・・羽根部、
10・・・一般的なインペラ用冷間鍛造部材、
12・・・本発明のインペラ用冷間鍛造部材、
14・・・羽根部相当部位、
30・・・アルミニウム合金素材、
32・・・下型、
34・・・上型、
36・・・エジェクターアウトピン、
38・・・パンチノックアウトピン。

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