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技術 多能性幹細胞を用いた免疫機能再建法

出願人 国立大学法人東京大学
発明者 中内啓光金子新西村聡修
出願日 2019年9月18日 (1年3ヶ月経過) 出願番号 2019-168931
公開日 2020年1月23日 (11ヶ月経過) 公開番号 2020-010704
状態 未査定
技術分野 動物,微生物物質含有医薬 化合物または医薬の治療活性 微生物、その培養処理
主要キーワード スポットイメージ サック状 アウトフレーム 宣伝物 再構成済み ウェブツール 対照データ リプログラミング
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (20)

課題

ヒトTリンパ球からiPS細胞樹立することに加え、さらに、樹立したiPS細胞を、元のヒトTリンパ球が有していたTCR遺伝子組み換え構造を保ったまま、機能的なTリンパ球へ分化誘導する方法の提供。

解決手段

ヒトT細胞からiPS細胞を誘導する工程と、該iPS細胞をT細胞に分化させる工程とを含む、ヒトT細胞を製造する方法、該方法によって製造されたT細胞を含有する医薬組成物、並びに該方法を利用する免疫細胞治療の方法。

概要

背景

様々な原因により生じる免疫機能低下において、免疫細胞等の補充や再生をすることができれば、疾患の病態改善や治療効果の向上などに極めて有効な手段となる。特に細胞性免疫を担うTリンパ球の機能補充や再生が強く求められているが、現在有効な治療方法確立されていない。免疫作用特異性を特徴とするが、この特異性をうまく利用することが困難なところに大きな原因がある。

近年の遺伝子操作技術の飛躍的な進歩により、抗原特異的なT細胞受容体(TCR)遺伝子を各種リンパ球系細胞遺伝子導入し、特異的免疫反応を補充や再生する試みがなされている(非特許文献1〜2)。これらの試みでは遺伝子導入細胞として骨髄前駆細胞であるCD34陽性細胞や、ナイーブTリンパ球などが用いられているが、これらは、Ex−vivoでの自己再生能が低い、遺伝子導入の効率が低い、遺伝子導入による分化の調節が困難である、など多くの課題を有している。

また、近年、胚性幹細胞ES細胞)及び人工多能性幹細胞誘導性多能性幹細胞iPS細胞)が、ヒトを含む多くの動物種より樹立されている。これらの多能性幹細胞は、多能性を維持したまま旺盛な分裂能力を保持するとともに、適切に分化誘導することにより、ほぼ全ての臓器に分化し得ることから、再生医療に最も有用な細胞供給源であると考えられている。特にiPS細胞は自己由来体細胞から樹立することが可能であることから、破壊して作るES細胞に比べ、倫理的社会的な問題が生じにくく、さらに自己由来であることから、再生医療や移植医療にとって最も大きな壁となる拒絶反応の回避も可能となる。

iPS細胞は体細胞を様々な方法で初期化することにより樹立できる。初期化されたiPS細胞は初期化に用いた遺伝子情報をそのまま引き継ぐことから、免疫系の細胞、特にBリンパ球やTリンパ球のように遺伝子を再構成し、終末分化したものにおいても初期化が可能であるかどうかは大きな興味の対象であった。そのような中、マウスBリンパ球からのiPS細胞の樹立は、Jaenisch等により2008年に報告され(非特許文献3)、マウスTリンパ球からのiPS細胞の樹立はYamanaka等により2009年に報告された(非特許文献4)。しかしながら、ヒトのTリンパ球からiPS細胞を樹立したという報告はない。

Tリンパ球を利用した免疫療法を実現するためには、ヒトのTリンパ球からiPS細胞を樹立することに加え、さらに、樹立したiPS細胞を、元のヒトTリンパ球が有していたTCR遺伝子組み換え構造を保ったまま、機能的なTリンパ球への分化を誘導することが必要であるが、このような技術は、いまだ確立されていない。

概要

ヒトTリンパ球からiPS細胞を樹立することに加え、さらに、樹立したiPS細胞を、元のヒトTリンパ球が有していたTCR遺伝子の組み換え構造を保ったまま、機能的なTリンパ球へ分化誘導する方法の提供。ヒトT細胞からiPS細胞を誘導する工程と、該iPS細胞をT細胞に分化させる工程とを含む、ヒトT細胞を製造する方法、該方法によって製造されたT細胞を含有する医薬組成物、並びに該方法を利用する免疫細胞治療の方法。なし

目的

本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ヒトTリンパ球からiPS細胞を樹立し、さらに、樹立したiPS細胞を、元のヒトTリンパ球が有していたTCR遺伝子の組み換え構造を保ったまま、機能的なTリンパ球へ分化誘導しうる方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

ヒトT細胞を製造する方法であって、ヒトT細胞からiPS細胞誘導する工程と、該iPS細胞をT細胞に分化させる工程とを含む、方法。

請求項2

前記ヒトT細胞は、CD4及びCD8からなる群から選択される少なくとも一の分子発現しているT細胞である、請求項1に記載の方法。

請求項3

iPS細胞へ誘導されるT細胞が抗原特異性を有する、請求項1又は2に記載の方法。

請求項4

iPS細胞へ誘導されるT細胞とiPS細胞から分化させるT細胞の抗原特異性が同一である、請求項3に記載の方法。

請求項5

請求項1から4のいずれかに記載の方法により製造されたヒトT細胞。

請求項6

請求項5に記載のヒトT細胞を含有する、医薬組成物

請求項7

ヒトより所望の抗原特異性を有するT細胞を単離する工程と、該所望の抗原特異性を有するT細胞からiPS細胞を誘導する工程と、該iPS細胞をT細胞に分化させる工程と、得られたiPS細胞由来T細胞をヒトの体内投与する工程とを含む、免疫細胞治療の方法。

技術分野

0001

本発明は、多能性幹細胞を用いた免疫機能再建法に関し、より詳しくは、ヒトT細胞を製造する方法、該方法によって製造されたT細胞を含有する医薬組成物、該方法を利用する免疫細胞治療の方法に関する。

背景技術

0002

様々な原因により生じる免疫機能低下において、免疫細胞等の補充や再生をすることができれば、疾患の病態改善や治療効果の向上などに極めて有効な手段となる。特に細胞性免疫を担うTリンパ球の機能補充や再生が強く求められているが、現在有効な治療方法確立されていない。免疫作用特異性を特徴とするが、この特異性をうまく利用することが困難なところに大きな原因がある。

0003

近年の遺伝子操作技術の飛躍的な進歩により、抗原特異的なT細胞受容体(TCR)遺伝子を各種リンパ球系細胞に遺伝子導入し、特異的免疫反応を補充や再生する試みがなされている(非特許文献1〜2)。これらの試みでは遺伝子導入細胞として骨髄前駆細胞であるCD34陽性細胞や、ナイーブTリンパ球などが用いられているが、これらは、Ex−vivoでの自己再生能が低い、遺伝子導入の効率が低い、遺伝子導入による分化の調節が困難である、など多くの課題を有している。

0004

また、近年、胚性幹細胞ES細胞)及び人工多能性幹細胞誘導性多能性幹細胞、iPS細胞)が、ヒトを含む多くの動物種より樹立されている。これらの多能性幹細胞は、多能性を維持したまま旺盛な分裂能力を保持するとともに、適切に分化誘導することにより、ほぼ全ての臓器に分化し得ることから、再生医療に最も有用な細胞供給源であると考えられている。特にiPS細胞は自己由来体細胞から樹立することが可能であることから、破壊して作るES細胞に比べ、倫理的社会的な問題が生じにくく、さらに自己由来であることから、再生医療や移植医療にとって最も大きな壁となる拒絶反応の回避も可能となる。

0005

iPS細胞は体細胞を様々な方法で初期化することにより樹立できる。初期化されたiPS細胞は初期化に用いた遺伝子情報をそのまま引き継ぐことから、免疫系の細胞、特にBリンパ球やTリンパ球のように遺伝子を再構成し、終末分化したものにおいても初期化が可能であるかどうかは大きな興味の対象であった。そのような中、マウスBリンパ球からのiPS細胞の樹立は、Jaenisch等により2008年に報告され(非特許文献3)、マウスTリンパ球からのiPS細胞の樹立はYamanaka等により2009年に報告された(非特許文献4)。しかしながら、ヒトのTリンパ球からiPS細胞を樹立したという報告はない。

0006

Tリンパ球を利用した免疫療法を実現するためには、ヒトのTリンパ球からiPS細胞を樹立することに加え、さらに、樹立したiPS細胞を、元のヒトTリンパ球が有していたTCR遺伝子組み換え構造を保ったまま、機能的なTリンパ球への分化を誘導することが必要であるが、このような技術は、いまだ確立されていない。

先行技術

0007

Gattinoni L.ら、Nature Reviews Immunology、2006年、6巻、383〜393ページ
Morgan R.ら、Science、2006年、314巻、126〜129ページ
Hanna J.ら、Cell、2008年、133巻、2号、250〜264ページ
Hong H.ら、Nature、2009年、460巻、1132〜1135ページ

発明が解決しようとする課題

0008

本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ヒトTリンパ球からiPS細胞を樹立し、さらに、樹立したiPS細胞を、元のヒトTリンパ球が有していたTCR遺伝子の組み換え構造を保ったまま、機能的なTリンパ球へ分化誘導しうる方法を提供することにある。さらなる本発明の目的は、こうして製造されたT細胞を含有する医薬組成物、並びにこうして製造されたT細胞を利用した免疫細胞治療の方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

0009

本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、元となったヒトTリンパ球と同じTCR再構成状態を維持したまま、ヒトT細胞からiPS細胞を樹立することに成功した。さらに、本発明者らは、こうして樹立したヒトT細胞由来のiPS細胞(TiPS細胞)から、元となったヒトTリンパ球と同じTCR再構成状態を維持したまま、サイトカイン産生能等を有する機能的なT細胞を分化誘導することに成功した。そして、このようにして得られたヒトT細胞を患者体内に移植することにより、理想的な免疫細胞治療を行うことが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。

0010

本発明は、より詳しくは、以下の発明を提供するものである。
(1)ヒトT細胞を製造する方法であって、ヒトT細胞からiPS細胞を誘導する工程と、該iPS細胞をT細胞に分化させる工程とを含む、方法。
(2)前記ヒトT細胞は、CD4及びCD8からなる群から選択される少なくとも一の分子発現しているT細胞である、(1)に記載の方法。
(3)iPS細胞へ誘導されるT細胞が抗原特異性を有する、(1)又は(2)に記載の方法。
(4)iPS細胞へ誘導されるT細胞とiPS細胞から分化させるT細胞の抗原特異性が同一である、(3)に記載の方法。
(5)(1)から(4)のいずれかに記載の方法により製造されたヒトT細胞。
(6)(5)に記載のヒトT細胞を含有する、医薬組成物。
(7)ヒトより所望の抗原特異性を有するT細胞を単離する工程と、
該所望の抗原特異性を有するT細胞からiPS細胞を誘導する工程と、
該iPS細胞をT細胞に分化させる工程と、
得られたiPS細胞由来T細胞をヒトの体内に投与する工程と
を含む、免疫細胞治療の方法。

発明の効果

0011

発生過程でTCRやBCR遺伝子塩基配列構造的な変化を獲得するリンパ球は、iPS細胞樹立のソースとしては極めて特異な細胞である。マウスT細胞やB細胞から再構成されたTCRを持ったiPS細胞が樹立可能であることが近年相次いで報告され、TCR再構成様式が核移植リプログラミングによっても失われることが無いことが示唆されていた。しかしながら、これらは全てマウスでの事例である。本発明によって、ヒト末梢血Tリンパ球からiPS細胞が得られることが初めて示され、さらに、少なくとも一つのインフレーム(in frame)TCR再構成を持つiPS細胞からT系譜細胞を誘導すると、そのTCRを持つヒトT系譜細胞がモノクローナル(monoclonal)に出
現することが初めて明らかになった。特にTCRα鎖β鎖とも一つのインフレーム(in
frame)再構成しか持たないiPSC(iPS細胞)からのT系譜細胞への誘導においては、出現したTCRはiPS細胞に保存された塩基配列と同一(identical)であり、完全にモノクローナル(monoclonal)であった。このことは、常に内在性TCRα鎖β鎖(特に対立形質排除(allelic exclusion)による制御が不完全なα鎖)の発現による阻害効果(interfere)を考慮しなければならないES細胞、CD34陽性造血幹細胞、あるいはナイーブT細胞へのTCR遺伝子導入法とは比較にならないほど効率よく、目的の抗原に対するモノクローナルTCRαβを持つT細胞を誘導できる事が示された。

0012

従って、本発明によれば、目的とする抗原に特異的なヒトTリンパ球を効率的に製造することが可能となる。そして、こうして製造されたヒトTリンパ球を利用することにより、再生医療や移植医療にとって最も大きな壁となる拒絶反応の問題の少ない、免疫細胞治療の方法を提供することが可能となる。

図面の簡単な説明

0013

末梢血Tリンパ球からのヒトiPS細胞の作製の概略を示す図である。なお、図中「Tapering」はヒトiPS細胞培地(hiPS medium 等)に徐々に置き換えていった期間を示す。
図1に示した方法によって形成されたT細胞由来のES細胞様コロニーを示す顕微鏡写真である。なお図中、上部はCD3 T細胞に山中3/4因子を導入することによって得られたコロニーを示し、下部は、左側から、Day6:MEF細胞に播き直した細胞、Day15:ES細胞様コロニーを形成している細胞、Day24:コロニー形成を完了した細胞を各々示す(Dayについては図1参照)。また、スケールバーは200μmを示す。
iPS細胞コロニーを免疫染色にて観察した結果を示す顕微鏡写真である。
T−iPS細胞、ヒトES細胞(KhES3)、末梢血由来CD3+細胞(PB CD3+)における多能性マーカーの発現をRTPCRによって分析した結果を示す電気泳動写真である。なお、ACTB(β−アクチン)及びGAPDHはローディングコントロールとして用いた。
末梢血CD3+T細胞における、3因子(3Factors、c−Mycを除く)又は4因子(4Factors、c−Mycを含む)による多能性状態への再プログラミング効率を示すグラフである。なお図中、縦軸は22日目(day22)の3×105個のTリンパ球に由来するALP陽性コロニー数を示す(3因子による結果は、mean±S.E.M=5.1±2.4[n=7]であり、4因子による結果は、mean±S.E.M=77.0±25.0[n=12]であった)。
オリゴヌクレオチドDNAマイクロアレイを用いた、網羅遺伝子発現パターンにおけるヒトT−iPS細胞(TkT3V1−7)と活性CD4Tリンパ球(PB CD4 T−cell)との比較結果(左側)、及び網羅的遺伝子発現パターンにおけるTkT3V1−7とヒトES細胞(KhES3)との比較結果(右側)を示す散布図である。なお、図中の平行な2本の線は対応のあるサンプル間で5倍の差があったことを示す。
T−iPS細胞の代表的な2例(TkT3V1−7及びTkT4V1−3)の核型(Karyotype)を示す顕微鏡写真である。なお、調べたT−iPS細胞の継代数は10であり、いずれにおいても染色体異常は認められなかった。
T−iPS細胞を注入してから8週間後のNOD−Scidマウスにおいて形成されたテラトーマの代表的なHE染色切片を示す顕微鏡写真である。三胚葉由来の組織外胚葉としては神経組織(neural tissue、神経板(neural plate))及び網膜細胞(retinocytes)、中胚葉としては軟骨(cartilage)及び筋細胞(myocytes)、内胚葉としては粘膜(gut−like mucosa)、及び分泌腺/管(glands/ducts))が存在していることを示す。
TCRγ鎖遺伝子再構成を検出するためのPCR分析の結果を示す電気泳動写真である。
TCRG再構成を検出するためのPCR分析の代表的な結果を示す電気泳動写真である。なお、再構成したTCRGは有効なサイズ範囲(約200bp)にあるPCRバンドによって同定した。
TCRB再構成を検出するためのPCR分析の代表的な結果を示す電気泳動写真である。なお図中「Tube A」及び「Tube B」のカラムにおけるPCR産物はV(D)J再構成していることを示す(有効なサイズ範囲:240〜285bp)。一方、「Tube C」のカラムにおけるPCR産物はDJ再構成していることを示す(有効なサイズ範囲:170〜210bp、及び285〜325bp)。
TkT3V1−7における、TCRA再構成を検出するためのPCR分析の代表的な結果を示す電気泳動写真である。
図11及び12に示したTkT3V1−7由来のPCR産物のシークエンス結果を示す図である。なお図中、TCRA遺伝子の片方アレルにおける機能的な(Productive)再構成を上部に示す。またTCRB遺伝子の片方のアレルにおける機能的な再構成(V(D)Jβ再構成)を中部に示す。TCRB遺伝子のもう片方のアレルにおける非機能的な(Unproductive)再構成(DJβ再構成)を下部に示す。
CD3+CD56-末梢血T細胞を先ずCD4発現サブセット及びCD8発現サブセットに分け、更にナイーブT細胞(Naive、CD45RA+CD62L+)、セントラルメモリーT細胞(Cemtral Memory、CD45RA-CD62L+)、エフェクターメモリーT細胞(Effector Memory、CD45RA-CD62L-)、またはターミナルエフェクターT細胞(Effector、CD45RA+CD62L-)に分類した結果を示す、散布図である。
MEF上に播き直した1×105個のT細胞サブセットから得られたALP+コロニー数に基づき、各々のT細胞サブセットにおける再プログラミング効率を評価した結果を示す、グラフである。なお図中、縦軸は独立した3回の実験におけるALP+コロニーのAverage number±S.D.を示す。
(a)は、OP9及びOP9−DL1ストローマ細胞層上での培養による、多能性細胞からT系譜細胞作製の概略を示す図、並びに各時点における細胞の様子を示す顕微鏡写真である。なお図中「Cytokine cocktail(サイトカインカクテル)」は、hIL−7、hFlt−3L、及びhSCFを添加したことを示す。(b)は、各多能性細胞から作製されたT系譜細胞について、フローサイトメトリーを用いて、CD45、CD3、CD4、CD8、及びTCRαβの発現を調べた結果を示す散布図である。なお図中「ES」はES細胞由来のT系譜細胞を示し、「skin iPS」は皮膚iPS細胞由来のT系譜細胞を示し、「T−iPS」はT−iPS細胞由来のT系譜細胞を示し、「PB」は末梢血(対照データ)を示す。
(a)は、OP9及びOP9−DL1ストローマ細胞層上での培養による、T−iPS細胞等の多能性細胞からT系譜細胞作製の概略を示す図である。すなわち、サイトカインを含有せずα−MEMベースとする必須培地にて、10〜14日間、照射OP9細胞層上にて多能性細胞を培養し、次いで、誘導した造血細胞をOP9−DL1細胞と共に3又は4週間、hIL−7、hFlt−3L、及びhSCF等を添加したαMEMをベースとする必須培地にて培養したことを示す図である。(b)は、各培養時点にて、培地中の浮遊細胞回収し、フローサイトメトリーを用いて、T系譜マーカー CD45、CD34、CD3、CD4、CD8、TCRαβの発現を調べ、独立した少なくとも3回の実験における代表的な結果を示す散布図である。なお、各散布図に示した数値は、各区分における細胞の割合(%)を示す。また、Bの最下部は、新鮮なPBMCを分析した結果(対照データ)を示す。
T系譜細胞マーカーの発現をフローサイトメトリーによって分析し、独立した少なくとも3回の実験における代表的な結果を示す散布図である。なお図中、各散布図に示した数値は各区分における細胞の割合(%)を示し、「HumanESC」はヒトES細胞(KhES3)における結果を示し、「CB−iPS」は臍帯血CD34陽性細胞由来iPS細胞(TkCB7−4)における結果を示し、「HDF−iPS」はヒト皮膚繊維芽細胞由来iPS細胞(TkDA4M)における結果を示し、「T−iPSC」はT−iPS細胞(TkT3V1‐7)における結果を示し、「PBMNC」は末梢血単核球細胞における結果を示す。
フローサイトメトリーによって評価した、CD3+T系譜細胞におけるCD4及びCD8の発現を示すグラフである。なお図中、縦軸は各多能性細胞由来のT系譜細胞におけるRelative distribution±S.D.を示す。また「Human ESC」はヒトES細胞における結果を示し、「CB−iPSC」は臍帯血CD34陽性細胞由来iPS細胞における結果を示し、「HDF−iPSC」はヒト皮膚繊維芽細胞由来iPS細胞における結果を示し、「T−iPSC」はT−iPS細胞における結果を示す。また、各細胞のカラムは左から順に「DN」、「CD8」、「CD4」、「DP」を示す。さらに「DN」はCD4-CD8-であることを示し、「CD4」はCD4+CD8-であることを示し、「CD8」はCD4-CD8+であることを示し、「DP」はCD4+CD8+であることを示す。
OKT−3及びhIL−2によるTCR刺激後の再分化T系譜細胞、及び無刺激の再分化T系譜細胞における、比例変化(Proportional change)及び形態変化(morphological change)を示す、グラフ及び顕微鏡写真である。
再分化T系譜細胞のサイトカイン産生プロファイルをフローサイトメトリーによって分析した結果を示す、散布図である。なお、分析した、再分化T系譜細胞(CD3+cells from TkT3V1−7)又はPBMNC(PB CD3、対照)は、hIL−1αとともにPMA/イオノマイシンによって一晩刺激し、抗体を用いて染色した。プロット図に示した数値は、サイトカイン産生細胞の割合(%)を示す。
再分化T系譜細胞(TiPS細胞由来のT系譜細胞)における、TCRβmRNAの配列とアミノ酸配列とを示す図である。
再分化T系譜細胞(TiPS細胞由来のT系譜細胞)における、TCRαmRNAの配列とアミノ酸配列とを示す図である。
SMARTによるcDNAライブラリー構築を介し、PCRによってTkT3V1−7のTCRを増幅し、得られたPCR産物を分析した結果を示す電気泳動の写真である。
図24に示した有効なサイズ範囲(約750bp)にあるPCR産物についてのシークエンシング解析の結果を示す図であり、全ての転写mRNAの配列はT−iPS細胞のゲノムの配列(図13参照)と完全に一致し、DJβ再構成アレルからの子孫は確認されなかったことを示す図である。なお、他のサンプルの詳細及び結果は表8及び9に示す。
フローサイトメトリーによってCD3の発現を評価した結果を示すグラフである。なお図中、縦軸はCD45+血球中のCD3+T系譜細胞の割合(各群3以上の独立した実験のAverages±S.D)を示す。また、「Human ESC」はヒトES細胞における結果を示し、「CB−iPSC」は臍帯血CD34陽性細胞由来iPS細胞における結果を示し、「HDF−iPSC」はヒト皮膚繊維芽細胞由来iPS細胞における結果を示し、「T−iPSC」はT−iPS細胞における結果を示す。さらに、**は他の全てのサンプルに対して、p<0.01であることを示す。
フローサイトメトリーによって評価したCD3の平均蛍光強度MFI、Mean fluorescence intensity)を示すグラフである。なお、縦軸は、CD−iPS及びHDF−iPSは各群2の、その他は各群3以上の独立した実験のAverages±S.Dを示し、「Human ESC」はヒトES細胞における結果を示し、「CB−iPSC」は臍帯血CD34陽性細胞由来iPS細胞における結果を示し、「HDF−iPSC」はヒト皮膚繊維芽細胞由来iPS細胞における結果を示し、「T−iPSC」はT−iPS細胞における結果を示し、「PB」は末梢血単核球細胞における結果を示す。
TCRG遺伝子の再構成、並びに該再構成状態を検出するためのプライマーの配列及び位置を示す概略図である。なお、ヒトTCRG遺伝子座染色体7q14上の135kbにわたっている。また、フォワードプライマー及びリバースプライマーは、Vγセグメント又はJγセグメントにおいて高い相同性を有する領域に各々を設計され、約200bpのPCRバンドを検出することによって、TCRG遺伝子の再構成を検出することができる。
TCRB遺伝子の再構成、並びに該再構成状態を検出するためのプライマーの配列及び位置を示す概略図である。なお、ヒトTCRB遺伝子座は染色体7q34上の685kbにわたっている。また、Vβ遺伝子セグメント及びJβ遺伝子セグメントにおいて、同じ保存領域にアニールすることができる、全てのVβプライマー及びJβプライマーとして、23個のVβプライマー、2個のDβプライマー、及び13個のJβプライマーが各々設計された。さらに、プライマーは3つのチューブ(tube)に分けられ、各々混合して分析に用いられた。すなわち、図中の「Tube A」、「Tube B」、及び「Tube C」はそのことを示している。また、Tube A及びTube Bに示したプライマーセットを用いて約270bpのPCRバンドを検出することによって、V(D)Jβ再構成を検出することができ、Tube Cに示したプライマーセットを用いて170〜210bp又は285〜325bpのPCRバンドを検出することによって、DJβ再構成を検出することができる。

0014

<ヒトT細胞を製造する方法>
本発明は、ヒトT細胞からiPS細胞を誘導する工程と、該iPS細胞をT細胞に分化させる工程とを含む、ヒトT細胞を製造する方法を提供する。

0015

−ヒトT細胞からiPS細胞を誘導する工程−
本発明においてT細胞を単離される「ヒト」としては、特に制限はない。健常人であっても、免疫機能が低下している人や、悪性腫瘍感染症自己免疫疾患などを患っている人であってもよい。本発明によって得られたT細胞を免疫細胞治療に用いる場合は、拒絶反応が起こらないという観点から、T細胞を単離されるヒトは、本発明によって得られたT細胞が投与されるヒトとHLAの型が一致していることが好ましく、本発明によって得られたT細胞が投与されるヒトと同一人であることがより好ましい。

0016

本発明において「T細胞」とは、表面にT細胞受容体(T cell receptor、TCR)と称される抗原受容体を発現している細胞を意味する。
本発明において「iPS細胞へ誘導されるヒトT細胞」及び「iPS細胞から分化させるヒトT細胞」としては特に制限はないが、好ましくはCD3を発現しており、且つCD4及びCD8からなる群から選択される少なくとも一の分子が発現しているT細胞である。このようなヒトT細胞としては、例えば、CD4陽性細胞であるヘルパー制御性T細胞、CD8陽性細胞である細胞傷害性T細胞、ナイーブT細胞(CD45RA+CD62
L+細胞)、セントラルメモリーT細胞(CD45RA-CD62L+細胞)、エフェクタ
ーメモリーT細胞(CD45RA-CD62L-細胞)、及びターミナルエフェクターT細胞(CD45RA+CD62L-細胞)が挙げられる。後述する免疫療法を実施する場合、iPS細胞から分化させるヒトT細胞は、iPS細胞へ誘導されるヒトT細胞と抗原特異性が同一であることが好ましい。なお、T細胞における抗原特異性は、抗原特異的な、再構成されたTCR遺伝子によりもたらされる。

0017

本発明において「iPS細胞へ誘導されるヒトT細胞」は、ヒトの組織から公知の手法により単離することができる。ヒトの組織としては、前記T細胞を含む組織であれば特に制限はないが、例えば、末梢血、リンパ節骨髄胸腺脾臓、臍帯血、病変部組織が挙げられる。これらの中では、ヒトに対する侵襲性が低く、調製が容易であるという観点から、末梢血、臍帯血が好ましい。ヒトT細胞を単離するための公知の手法としては、例えば、後述の実施例に示すようなCD4等の細胞表面マーカーに対する抗体と、セルソーターとを用いたフローサイトメトリーが挙げられる。また、サイトカインの分泌機能性分子の発現を指標に、所望のT細胞を単離することも出来る。かかる場合、例えば、T細胞は、Th1タイプかTh2タイプかで分泌されるサイトカインが異なるので、そのようなサイトカインを指標に選別して、所望のThタイプを有するT細胞を単離することができる。また、グランザイムパーフォリンなどの分泌又は産生を指標として、細胞傷害性キラー)T細胞を単離することが出来る。

0018

iPS細胞へ誘導されるヒトT細胞として「抗原特異性を有するヒトT細胞」を用いる場合、その単離においては、「所望の抗原特異性を有するT細胞」を含むヒトの組織より、所望の抗原を固定化したアフィニティカラム等を用いて精製する方法を採用することができる。また、所望の抗原を結合させたMHC主要組織適合遺伝子複合体)を4量体化させたもの(いわゆる「MHCテトラマー」)を用いて、ヒトの組織より「所望の抗原特異性を有するT細胞」を精製する方法も採用することができる。

0019

本発明における「iPS細胞」とは、人工多能性幹細胞(Induced pluripotent stem cell)又は誘導性多能性幹細胞とも称される細胞であり、前記T細胞に細胞初期化因子を導入することにより誘導することができる。「細胞初期化因子」は、前記T細胞に導入されることにより、単独で、又は他の分化多能性因子協働して該体細胞に分化多能性を付与できる因子であれば特に制限されることはないが、Oct3/4、c−Myc、Sox2、Klf4、Klf5、LIN28、Nanog、ECAT1、ESG1、Fbx15、ERas、ECAT7、ECAT8、Gdf3、Sox15、ECAT15−1、ECAT15−2、Fthl17、Sal14、Rex1、Utf1、Tcl1、Stella、β−catenin、Stat3及びGrb2からなる群から選択される少なくとも一種タンパク質であるであることが好ましい。さらにこれらのタンパク質の中では、少ない因子で効率良くiPS細胞を樹立できるという観点から、Oct3/4、c−Myc、Sox2及びKlf4(4因子)を前記体細胞に導入することがより好ましい。また、得られる多能性幹細胞の癌化リスクを低くするという観点から、c−Mycを除く、Oct3/4、Sox2及びKlf4(3因子)を前記体細胞に導入することがより好ましい。

0020

ヒトCD8陽性T細胞をiPS細胞に誘導する場合においては、iPS細胞への誘導効率をより高めるという観点から、OCT4、SOX2、KLF4、C−MYC、及びNANOGをヒトCD8陽性T細胞に導入することが好ましく、OCT4、SOX2、KLF4、C−MYC、NANOG、及びLIN28をヒトCD8陽性T細胞に導入することがより好ましい。

0021

また、本発明において「T細胞に細胞初期化因子を導入する」方法としては特に制限はなく、公知の手法を適宜選択して用いることができる。例えば、前記細胞初期化因子をタンパク質の形態にて前記T細胞に導入する場合においては、タンパク質導入試薬を用いる方法、タンパク質導入ドメイン(PTD)融合タンパク質を用いる方法、エレクトロポレーション法マイクロインジェクション法が挙げられる。また、前記細胞初期化因子をコードする核酸の形態にて前記T細胞に導入する場合においては、前記細胞初期化因子をコードする核酸(例えば、cDNA)を、T細胞で機能するプロモーターを含む適当な発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを感染、リポフェクション法、リポソーム法、エレ
トロポレーション法、リン酸カルシウム共沈殿法、DEAEデキストラン法、マイクロインジェクション法、エレクトロポレーション法にて細胞に導入することができる。

0022

本発明にかかる「発現ベクター」としては、例えば、レンチウィルスレトロウィルスアデノウィルスアデノ随伴ウィルスヘルペスウィルスなどのウィルスベクター動物細胞発現プラスミドが挙げられる。

0023

かかる発現ベクターにおいて使用されるプロモーターとしては、例えばSRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMVプロモーター、RSVプロモーター、HSV−TKプロモーターなどが挙げられる。また、かかるプロモータ−は薬剤(例えば、テトラサイクリン)の有無等によって、該プロモータ−の下流に挿入された遺伝子の発現を制御できるものであってもよい。発現ベクターは、さらに、プロモーターの他に、エンハンサーポリ付加シグナル選択マーカー遺伝子(例えば、ネオマイシン耐性遺伝子)、SV40複製起点等を含有していてもよい。

0024

また、「ヒトT細胞からiPS細胞を誘導する工程」においては、後述の実施例において示す通り、前記T細胞は、前記細胞初期化因子の導入前に、インターロイキン−2(IL−2)の存在下にて抗CD3抗体及び抗CD28抗体によって刺激して活性化することが好ましい。かかる刺激は、例えば、後述の実施例において示すように、培地中に、IL−2、抗CD3抗体及び抗CD28抗体を添加して前記T細胞を一定期間培養することによって行うことができる。また、抗CD3抗体及び抗CD28抗体は磁性ビーズ等が結合されているものであってもよく、さらにこれらの抗体を培地中に添加する代わりに、抗CD3抗体及び抗CD28抗体を表面に結合させた培養ディッシュ上で前記T細胞を一定期間培養することによって刺激を与えてもよい。さらにまた、ヒトT細胞が認識する抗原ペプチドフィーダー細胞とともに培地中に添加することによって刺激を与えても良い。

0025

かかる刺激を行うために、培地中に添加するIL−2の濃度としては特に制限はないが、1〜200ng/mlであることが好ましい。さらに、かかる刺激において培地中に添加する抗CD3抗体及び抗CD28抗体の濃度としては特に制限はないが、前記T細胞の培養量の1〜10倍量であることがであることが好ましい。また、かかる刺激において培養ディッシュの表面上に結合させた抗CD3抗体及び抗CD28抗体の濃度としては特に制限はないが、コーティングの際の濃度は抗CD3抗体では1〜100μg/ml、抗CD28抗体では0.1〜10μg/mlであることが好ましい。

0026

また、かかる刺激を行うための培養期間は、前記T細胞に対してかかる刺激を与えるのに十分な期間であって、前記細胞初期化因子の導入に必要な細胞数までT細胞を増殖しうる期間であれば特に制限はないが、通常2〜14日間であり、遺伝子導入効率の観点から、好ましくは2〜7日間である。さらに、遺伝子導入効率を上げるという観点から、レトロネクチンがコートしてある培養ディッシュ上にて培養することが好ましい。

0027

前記T細胞を培養し、IL−2や抗CD3抗体及び抗CD28抗体等を添加する培地としては、例えば、前記T細胞の培養に適した公知の培地(より具体的には、IL−2等のサイトカイン類ウシ胎児血清FCS)を含む、ロズウェルパーク記念研究所(RPMI)1640培地、最小必須培地(α−MEM)、ダルベッコ改変イーグル培地DMEM)、F12培地等)を用いることができる。培地には、IL−2、及び抗CD3抗体及び抗CD28抗体以外にも、培養に必要なアミノ酸(例えば、L−グルタミン)、抗生物質(例えば、ストレプトマイシンペニシリン)が添加してあっても良い。また、CD8陽性T細胞をiPS細胞に誘導する場合においては、アポトーシスを抑制するという 観点から、培地にIL−7、IL−15を添加することが好ましい。IL−7、IL−15の添加濃度としては特に制限はないが、1〜100ng/mlであることが好ましい。

0028

また、本発明における「T細胞に細胞初期化因子を導入する」際、又はその後の条件としては特に制限はないが、前記細胞初期化因子を導入した前記T細胞は、フィーダー細胞層上で培養するのが好ましい。かかるフィーダー細胞としては特に制限はないが、例えば、放射線の照射や抗生物質処理により細胞分裂を停止させたマウス胎児繊維芽細胞(MEF)、STO細胞、SNL細胞が挙げられる。

0029

さらに、前記T細胞からiPS細胞に誘導する過程において、細胞の分化を抑制するという観点から、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を前記T細胞に前記細胞初期化因子を導入する際、又はその後において、培地に添加しておくことが好ましい。

0030

また、iPS細胞の樹立効率をより高めるために、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤バルプロ酸(VPA)、トリコスタチンA、酪酸ナトリウム、MC 1293、M344等の低分子阻害剤、HDACに対するsiRNA等)、G9aヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤(BIX−01294等の低分子阻害剤、G9aに対するsiRNA等)、p53阻害剤(Pifithrin−α(PFT−α)等の低分子阻害剤、p53に対するsiRNA等)を、前記T細胞に前記細胞初期化因子を導入する際、又はその後において、培地に添加しておくことが好ましい。

0031

さらに、「T細胞に細胞初期化因子を導入する」際に、ウィルスベクターを用いる場合には、該ベクターが前記T細胞に結合し易くなるという観点から、硫酸プロタミンを培地に添加しておくことが好ましい。

0032

また、後述の実施例に示す通り、前記T細胞からiPS細胞への移行に合わせて、前記T細胞の培養に適した公知の培地から、iPS細胞の培養に適した培地に徐々に置換していきながら培養することが好ましい。かかるiPS細胞の培養に適した培地としては、公知の培地を適宜選択して用いることができ、例えば、ノックアウト血清代替物、L−グルタミン、非必須アミノ酸2−メルカプトエタノール、b−FGF等を含有する、ダルベッコ変法イーグル培地/F12培地(ヒトiPS細胞培地)が挙げられる。

0033

ヒトCD8陽性T細胞をiPS細胞に誘導する場合においては、後述の実施例に示すように、iPS細胞への誘導効率をより高めるという観点から、前記フィーダー細胞上に移し換えた後に、1〜1000μM ROCKinhibitorを更に添加した培地中、低酸素濃度条件(酸素濃度:例えば、5%)下にて培養することが好ましく、また1〜1000μM MEK inhibitor(例えば、PD0325901)及び1〜1000μM GSK3 inhibitor(例えば、CHIR99021)を後述のコロニー形成まで培地に添加しておくことが好ましい。

0034

このようにして前記T細胞から誘導したiPS細胞(以下、「TiPS細胞」とも称する)の選択は、公知の手法を適宜選択することによって行うことができる。かかる公知の手法としては、例えば、後述の実施例において示すようなES細胞/iPS細胞様コロニーの形態を顕微鏡下にて観察して選択する方法や、iPS細胞において特異的に発現することの知られている遺伝子(例えば、前記細胞初期化因子)の遺伝子座に薬剤耐性遺伝子レポーター遺伝子GFP遺伝子等)をターゲッティングした組換え型のT細胞を用い、薬剤耐性レポーター活性を指標として選択する方法が挙げられる。

0035

このようにして選択された細胞がiPS細胞であるということの確認は、例えば、後述の実施例において示すような、選択された細胞における未分化細胞特異的マーカー(ALP、SSEA−4、Tra−1−60、Tra−1−81等)の発現を免疫染色やRT−PCR等によって検出する方法や、選択された細胞をマウスに移植して、そのテラトーマ
形成を観察する方法により行うことができる。

0036

また、このようにして選択された細胞が前記T細胞由来であることの確認は、例えば、後述の実施例に示すように、TCR遺伝子再構成の状態をゲノムPCRによって検出することにより行うことができる。

0037

これらの細胞を選択して回収する時期は、コロニーの生育状態を観察しながら適宜決定することができ、概ね、前記細胞初期化因子を前記T細胞に導入してから14日〜28日である。

0038

−TiPS細胞をT細胞に分化させる工程−
前記のようにして得られたTiPS細胞をT細胞に分化させるためには、中胚葉系への分化を誘導し易くするという観点から、先ずはTiPS細胞をストローマ細胞上にて、サイトカインを含有せず、FCS等を含有するα−MEM培地中にて培養することが好ましい。用いるストローマ細胞としては、造血系への分化を誘導し易くするという観点から、放射線照射等の処理を施したOP9細胞、10T1/2細胞であることが好ましい。但し、TiPS細胞を効率良くCD34陽性造血幹細胞に誘導させる場合には、VEGF、SCF、TPO、SCF、及びFLT3L群から選択される少なくとも1のサイトカインを含有する培地中にて培養することが好ましく、VEGF、SCF、及びTPOを含有する培地中、又はVEGF、SCF、及びFLT3Lを含有する培地中にて培養することがより好ましい。培養期間としては、血球細胞等を含有する袋状の構造物(ES−sac(サック)とも称する)を形成するまでの期間であることが好ましく、TiPS細胞の培養を開始してから10〜14日間であることが好ましい。

0039

前記のようにして得られたサックに含有されている細胞(造血前駆細胞、CD34陽性細胞、血球細胞等)は、サイトカインやFCS等を含有するα−MEM培地中におけるストローマ細胞上で培養することが好ましい。なお、かかるサック状構造物の内部に存在する細胞は、物理的な手段、例えば、滅菌済み篩状器具(例えば、セルストレイナーなど)に通すことにより、分離することができる。この培養に用いるストローマ細胞としては、notchシグナルを介して、Tリンパ球への分化誘導を行うという観点から、放射線照射等の処理を施したOP9−DL1細胞、OP9−DL4細胞、10T1/2/DL4細胞であることが好ましい。培地に添加するサイトカインとしては、例えば、IL−7、FLT3L、VEGF、SCF、TPO、IL−2、IL−15,が挙げられる。これらの中では、初期T細胞の分化を助けるという観点から、IL−7及びFLT3Lが好ましい。TiPS細胞のNKT細胞への分化を抑制するという観点から、SCFは培地に含まれていないことが好ましい。IL−7の培地への添加濃度としては、CD3陽性CD56陰性のT系譜細胞が得られやすく、またCD4シングルポジティブ(SP)T細胞、又はCD8SPT細胞への分化が誘導され易いという観点から、0.1〜4ng/mlであることが好ましい。

0040

このように分化誘導された細胞が、TiPS細胞由来であり、また該TiPS細胞の元となったT細胞由来であることの確認は、例えば、後述の実施例に示すように、TCR遺伝子再構成の状態を、ゲノムPCRによって検出することにより行うことができる。

0041

このようにして得られたT細胞は、公知の手法を適宜選択して単離することができる。かかる公知の手法としては、例えば、後述の実施例に示すようなCD4等の細胞表面マーカーに対する抗体と、セルソーターとを用いたフローサイトメトリーが挙げられる。「所望の抗原特異性を有するT細胞」をヒトより単離する場合においては、所望の抗原を固定化したアフィニティカラム等を用いて精製する方法を採用することができる。また、所望の抗原を結合させたMHCテトラマーを用いて、「所望の抗原特異性を有するT細胞」を
精製する方法を採用することもできる。

0042

<ヒトT細胞、医薬組成物、免疫細胞治療の方法>
本発明の方法によって製造したヒトT細胞は、抗原特異的な免疫機能を有するため、例えば、腫瘍、感染症、自己免疫不全等の疾患の治療または予防のために用いることができる。

0043

従って、本発明は、本発明の方法によって製造したヒトT細胞、該ヒトT細胞を含む医薬組成物、並びに該ヒトT細胞を用いた免疫細胞治療の方法を提供する。

0044

本発明の医薬組成物は、本発明の方法によって製造したヒトT細胞を、公知の製剤学的方法により製剤化することにより調製することができる。例えば、カプセル剤液剤フィルムコーティング剤懸濁剤乳剤注射剤静脈注射剤、点滴注射剤等)、などとして、主に非経口的に使用することができる。

0045

これら製剤化においては、薬理学上許容される担体または媒体、具体的には、滅菌水生理食塩水植物油溶剤基剤乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、ベヒクル防腐剤結合剤希釈剤等張化剤無痛化剤増量剤崩壊剤緩衝剤コーティング剤滑沢剤着色剤溶解補助剤あるいはその他の添加剤等と適宜組み合わせることができる。また、前記疾患の治療または予防に用いられる公知の医薬組成物や免疫賦活剤等と併用してもよい。

0046

本発明の医薬組成物を投与する場合、その投与量は、対象の年齢、体重、症状、健康状態組成物の種類(医薬品、飲食品など)などに応じて、適宜選択される。

0047

本発明の組成物の製品(医薬品)またはその説明書は、免疫機能の低下を治療または予防するために用いられる旨の表示を付したものであり得る。ここで「製品または説明書に表示を付した」とは、製品の本体、容器包装などに表示を付したこと、あるいは製品の情報を開示する説明書、添付文書宣伝物、その他の印刷物などに表示を付したことを意味する。

0048

本発明の免疫細胞治療の方法は、ヒトより所望の抗原特異性を有するT細胞を単離する工程と、該所望の抗原特異性を有するT細胞からiPS細胞を誘導する工程と、該iPS細胞をT細胞に分化させる工程と、得られたiPS細胞由来T細胞をヒトの体内に投与する工程とを含む方法である。本発明の免疫細胞治療の方法を実施する場合、拒絶反応が起こらないという観点から、T細胞を単離されるヒトは、本発明によって得られたT細胞が投与されるヒトとHLAの型が一致していることが好ましく、本発明によって得られたT細胞が投与されるヒトと同一人であることがより好ましい。投与されるヒトT細胞は、本発明の方法により製造されたヒトT細胞をそのまま投与してもよく、また、上記の通り、製剤化された医薬組成物の形態で投与してもよい。

0049

以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、本実施例においては、下記材料を用いて、下記方法等に沿って行った。

0050

<フローサイトメトリー>
フローサイトリー分析は、MoFlo(Dako Cytomation社製)、FACSAria(登録商標、BD Bioscience社製)、又はFACSCantoII(登録商標、BD Bioscience社製)を用いて行った。得られたデータの分
析はFlowJoソフトウェア(Treestar社製)を用いて行った。また、フローサイトリー分析に用いた抗体は下記の通りである。
抗ヒトCD3−APC抗体(BD Bioscience社製)、抗ヒトCD4−FITC抗体(BD Bioscience社製)、抗ヒトCD8−PerCP/Cy5.5抗体(BD Bioscience社製)、抗ヒトCD56−PE抗体(BD Bioscience社製)、抗ヒトCD45RA−Pacific Blue抗体(Caltag
Laboratories社製)、抗ヒトCD62L−PE−Cy7抗体(Biolegend社製)、抗ヒトCD45−Alexa 405抗体(Molecular Probes−Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)、抗ヒトCD34−PE抗体(BD Bioscience社製)、抗ヒトCD38−PerCP/Cy5.5抗体(Biolegend社製)、抗ヒトCD1a−APC抗体(Biolegend社製)、抗ヒトCD5−PE/Cy7, −CD7−FITC抗体(Biolegend社製)、抗ヒトCD5−PE/Cy7抗体(Biolegend社製)、抗ヒトCD7−FITC抗体(Biolegend社製)、抗ヒトTCRαβ−FITC抗体(Biolegend社製)。さらに、フローサイトリー分析において、細胞は適切な濃度に調整した抗体カクテルと共に4℃にて30分間インキュベーションした後、リン酸緩衝生理食塩水にて洗浄した。また、死細胞を排除するため、ヨウ化プロピジウムを添加した。

0051

<レトロウィルスの調製>
ヒトOCT4、SOX2、KLF4、c−MYC、及びNANOG(山中因子、YFs)をコードするpMXsレトロウィルスベクターは、山中伸弥教授(京都大学iPS細胞研究所所属)より供与された。Gag−Pol遺伝子、及びTet−OFF制御のVSV−G偽型エンベロープ遺伝子を有する293GPGパッケージング細胞に、これらYFsを導入した。テトラサイクリンを除いた培地にてウィルスを誘導してから3日後に、これら細胞の培養上清毎日、全4回回収した。回収した培養上清は、0.45μm酢酸セルロースフィルターに通し、6000gにて16時間かけ遠心分離を行った。そして、得られた上清の濃度が0.5%になるようにα−MEM(α−最小必須培地)に懸濁し、使用するまで−80℃にて保存した。

0052

<T細胞の調製、レトロウィルス感染、及びiPS細胞の作製>
実験プロトコールは、東京大医科学研究所 ヒト倫理審査委員会承認を受けたものである(承認番号:20−6−0826)。また、全ての研究はヘルシンキ宣言に従って行った。

0053

末梢血単核細胞(PBMCs)は、健康な被験者由来の血液から、Ficoll密度勾配遠心(Ficoll−PaquePLUS(登録商標)、17−1440−02、GE Healthcare社製)にて単離し、MoFlo(DAKO Cytomation社製)にて精製した。T細胞はナチュラルキラーT(NKT)細胞のコンタミを避けるため、CD3+CD56-細胞集団ゲートとし、単離した。T細胞のサブセットは、更なるゲートを設定し、CD4(CD4+CD8-)、及びCD8(CD4-CD8+)コホートに分離した。CD4及び/又はCD8細胞は更に、ナイーブ(CD45RA+CD62
L+)、セントラルメモリー(CD45RA-CD62L+)、エフェクターメモリー(C
D45RA-CD62L-)、またはターミナルエフェクター(CD45RA+CD62L-)に分類した。

0054

このようにしてソートした細胞は、10%ウシ胎児血清(GIBCO−Invitrogen社製)、100U/mlペニシリン、100ng/mlストレプトマイシン、2mM L−グルタミン、及び20ng/mlヒトインターロイキン2(hIL−2、Novartis Vaccines&Diagnostics社製)を添加した、ロズ
ウェルパーク記念研究所培地(Roswell Park Memorial Institute、RPMI)1640培地(GIBCO−Invitrogen社製)にて最初培養した。そして、かかるT細胞の3倍量の抗CD3/CD28結合磁性ビーズ(Dynabeads(登録商標)、ClinExVivo(登録商標)CD3/CD28、Invitrogen社製)を添加することによって、これら細胞を活性化させた。なお、T細胞から誘導したiPS細胞(T−iPS細胞)の作製において、この活性化した日をday0と規定する(以下、図1参照)。いくつかの実験において、抗CD3/CD28結合磁性ビーズによって、PBMCsから磁気的に捕捉したCD3+細胞を単離すると
同時に刺激した。day2及びday3において、10μg/ml硫酸プロタミン(Sigma−Aldrich社製)を添加した、レトロネクチン(登録商標)コ—ティングプレート(Takara社製)上にて、スピキュレーション(spinoculation)によってレトロウィルスを細胞に感染させた(Kaneko,S.ら、Blood、2009年、113巻、1006〜1015ページ参照)。T細胞培養用の完全合成培地は毎日交換した。day6において、感染細胞を回収し、6cmディッシュ上の3×105個の照射MEF細胞層上に移した。その後4日間(day6〜day10)、培地の
半分量を毎日ヒトiPS細胞培地に交換した。なお、ヒトiPS細胞培地の組成は下記の通りである(Takayama,N.ら、Blood、2008年、111巻、5298〜5306ページ 参照)。

0055

20%ノックアウト血清代替物(Knockout Serum Replacement(登録商標)、GIBCO−Invitrogen社製)、200μM L−グルタミン(Invitrogen社製)、1%非必須アミノ酸(Invitrogen社製)、10μM2−メルカプトエタノール(GIBCO−Invitrogen社製)、及び5ng/ml b−FGF(Wako社製)を添加したダルベッコ変法イーグル培地/F12培地(Sigma−Aldrich社製)。

0056

またiPS細胞コロニーをピックアップする前に、前記ヒトiPS細胞培地に0.5mM VPA(HDAC阻害剤バルプロ酸)を添加した。day10において、VPA含有ヒトiPS細胞培地に全培地を交換した。ヒトES/iPS細胞様コロニーと同一視できるようになった際、およそday24において、それらコロニーを機械的に単離し、ピペッティングによって小塊解離し、新鮮なMEF細胞層上に播いた。ヒトES/iPS細胞様コロニーは、トリプシン溶液(0.25%トリプシン、1mM CaCl2、及び
20%ノックアウト血清代替物添加リン酸緩衝生理食塩水)を用いて、新鮮なMEF細胞層上に3〜4日毎に移した。

0057

染色体分析
染色体Gバンド分析は、日本遺伝子研究所に外注し、所定の方法に従って行った。

0058

アルカリフォスファタ—ゼ(ALP)染色、及び免疫細胞化学的染色>
ALP染色のため、ヒトES/iPS細胞様コロニーを氷冷固定液(90%メタノール、10%ホルムアルデヒド)にて固定し、ALP染色キット(Vector Laboratories社製)を用い、その製造会社の説明書に従って染色した。また、免疫細胞化学的染色のため、ヒトES/iPS細胞様コロニーを5%パラホルムアルデヒドにて固定し、0.1% TritonX−100にて透過処理を行った。

0059

そして、このように前処理したコロニーを一次抗体とともにインキュベートした。なお、用いた一次抗体、並びに希釈率は下記の通りである。
PE−conjugated anti−SSEA−4(FAB1435P、R&D Systems社製、希釈率:1/50)、anti−Tra−1−60(MAB4360、Millipore社製、希釈率:1/100)、anti−Tra−1−81(MA
B4381、Millipore社製、希釈率:1/100)。また、Tra−1−60及びTra−1−81の検出には、二次抗体としてAlexa Fluor 488−conjugated goat anti−mouse antibody (希釈率:1/500、A11029、Molecular Probes−Invitrogen社製)を用いた。さらに、核の対比染色は4’,6−diamidino−2−phenylindol(希釈率:1/1000、Roche Diagnostics社製)を用いて行った。また、顕微鏡写真は、蛍光顕微鏡Axio Observer.Z1(Carl Zeiss Japan社製)を用いて撮影した。

0060

<テラトーマ形成>
ヒトES/iPS細胞様コロニーを凝集させ、NOD−Scidマウスの左側の精巣髄質にMasaki,H.ら、Stem Cell Res、2007年、1巻、105〜115ページの記載に従って注入した。なお、注入細胞数はマウス1匹あたり、1.0×106個である。注入してから8週間後、精巣内に形成された腫瘍を切除し、5%パラ
ホルムアルデヒドにて固定し、パラフィン包埋した後、切片にした。そして、得られた切片をヘマトキシリンエオシン法にて染色し、光学顕微鏡にて、前記iPS細胞が三胚葉への分化能を有しているかどうかを調べた。

0061

<多能性遺伝子、及びT細胞関連遺伝子についての発現分析>
ES細胞、iPS細胞(クローニングしてから約50日目の細胞)、これらの子孫細胞、及び新鮮分離した末梢血CD3+T細胞から、RNeasy microキット(Q
iagen社製)を用いて、トータルRNAを抽出した。そして、得られたトータルRNAを鋳型とし、PrimeScriptII 1st Strand Synthesis キット(Takara社製)を用いて、逆転写反応を行った。
また、ハウスキーピング遺伝子(GAPDH又はACTB)については30サイクル、全ての多能性遺伝子又はT細胞関連遺伝子については35サイクルにて、ExTaq HS (Takara社製)を用いてPCR反応を行った。
なお、標的遺伝子、及び分析に用いたPCRプライマーの配列は表1及び表2に示す。

0062

0063

0064

マイクロアレイ分析>
ヒトES細胞(KhES3)、T細胞由来iPS細胞(TkT3V1−7)、及びCD3/CD28刺激CD3+CD4+CD8-細胞について、全ゲノム遺伝子発現解析を行
った。先ず、各細胞からトータルRNA(2μg)を抽出し、プローブ調製に供した。そして、蛍光標識した相補的RNAとWhole Human Genome Microarray 4x44K(G4112F、Agilent Technologies社製)とを、一色法にてハイブリダイズした(委託先:Takara Bio Inc)。次いで、アレイスキャンし、スポットイメージをAgilent Feature Extraction 装置(Agilent Technologies社製)にて検出した。そして、得られたシグナルデータは、GeneSpringソフトウェア(Agi
lent Technologies社製)を用いて分析した。また得られたデータの正規化には、Two normalization proceduresを適用した。すなわち、シグナル強度0.01未満は0.01とした。また、チップから得られた測定値の50thpercentileに各チップを正規化した。そして、全3サンプルにおいて、presentのフラグが付いた遺伝子(36275遺伝子)について分析を行った。

0065

<T−iPS細胞のゲノムDNAにおけるTCR再構成の検出>
約5×106個のT−iPS細胞から、QIAamp DNAキット(Qiagen社
製)を用いて、ゲノムDNAを抽出した。抽出したDNA(40ng)は、TCRG、TCRB、及びTCRA遺伝子再構成の各々PCRにて検出するために用いた。

0066

TCRGの再構成を検出するためのPCR(Benhattar,J.ら、Diagn
Mol Pathol、1995年、4巻、108〜112ページ参照)はExTaq HS (Takara社製)を用いて行った。PCRの反応条件は、95℃にて5分間、次いでアニーリング温度の比較的高い反応、すなわち95℃にて45秒間、65℃にて45秒間、72℃にて45秒間という反応を5サイクル、そしてアニーリング温度の比較的低い反応、すなわち95℃にて45秒間、55℃にて45秒間、72℃にて30秒間の反応を30サイクルとした。
TCRBの再構成を検出するため、PCR及びヘテロ二本鎖分析は、若干の改変を加えたBIOMED−2プロトコール(van Dongen,J.Leukemia、2003年、17巻、2257〜2317ページ 参照)に沿って行った。

0067

TCRAの再構成を検出するためのプライマーのコンストラクトはHan et al.(Han,M.ら、J Immunol、1999年、163巻、301〜311ページ参照)に基づく。PCRの反応条件は、95℃にて30秒間、68℃にて45秒間、72℃にて6分間という増幅反応を3サイクル、95℃にて30秒間、62℃にて45秒間、72℃にて6分間という増幅反応を15サイクル、95℃にて15秒間、62℃にて30秒間、72℃にて6分間という増幅反応を12サイクルとした。

0068

また、PCRはLATaq HS(Takara社製)により行った。そして、得られたPCR産物は、サイズに基づきゲルによって分画した。次いで、予想されたサイズ範囲内の主なバンドは切り出し、QIAquick gel extractionキット(Qiagen社製)を用いて精製し、シークエンスを行った。シークエンス反応においては、BigDye terminator キットv3.1(Applied Biosystems社製)をVα、Jα、Vβ、Dβ、又はJβプライマー一式と共に用いて、多面アプローチにて、PCRの増幅及び蛍光色素付加を行った。そして、得られた反応生成物ABIRISM3100自動シークエンサー(Applied Biosystems社製)にて分析した。

0069

なお、得られた結果は、TCRA又はTCRBの構築に関与する、V、D、及びJセグメントは、公開されている配列及びImMunoGeneTics(IMGTデータベース(http://www.cines.fr/)と比較し、v−questといったウェブツールを用いることによって同定した(Lefranc, M.P.「IMGT databases, web resources and tools for immunoglobulin and T cell receptor sequence analysis, http://imgt.cines.fr.」、Leukemia、2003年、17巻、260〜266ページ参照)。また、遺伝子断片(セグメント)の命名はIMGT命名法に従った。またTCR再構成の検出に用いたプライマー配列は表3〜4に示す。

0070

0071

0072

<T−iPS細胞からT系譜細胞(T−lineage Cells)への誘導>
T−iPS細胞又はその他の多能性幹細胞を、胚性幹細胞由来サック(ES−sac)様の構造をとるように、若干の変更を施したTakayama,N.ら、Blood、2008年、111巻、5298〜5306ページの記載に沿って、誘導した。

0073

多能性細胞は照射OP9細胞層上で、サイトカインは含有せずα−MEMをベースとする培地(20%ウシ胎児血清、100U/mlペニシリン、100ng/mlストレプトマイシン、及び2mM L−グルタミンを添加したαMEM)にて10〜14日間(約Day12)共培養した。

0074

サックに詰まっている浮遊細胞はOP9−DL1細胞層上に移し、αMEMをベースとし、10ng/ml hIL−7及びhFlt−3Lが添加された培地にて、Day40まで共培養した。なお多能性細胞をOP9細胞層上に移した日をDay0とする。培養培地は3日毎に交換した。OP9−DL1細胞層上に浮遊しており、CD45、CD3、及
びTCRαβを発現しているT系譜細胞は、毎週フローサイトメトリーにてソーティングし、遺伝子発現解析を行った。なお、OP9細胞及びOP9−DL1細胞は、ナシナルバイオリソースプロジェクト(日本)を通して、理研バイオリソースセンターから入手した。

0075

<TCR刺激に対する反応性、及びT−iPS細胞から再分化したT系譜細胞のサイトカイン発現プロファイル
T細胞への誘導の終わり(OP9−DL1細胞層上にて約4週間培養した後、Day40)に、浮遊細胞を回収し、30ng/ml OKT−3(Janssen Pharmaceutica社製)及び600IU/ml hIL−2(Novartis Vaccines & Diagnostics社製)にて刺激した。その5日後に細胞数を数え、CD3の発現を評価した。そして、顕微鏡写真を撮り、形態学的画像を得た。

0076

また、T系譜細胞のサイトカイン産生(発現)プロファイルは若干の変更を施したUckert,W.ら、Cancer Immunol Immunother、2008年、58巻、809〜822ページに記載の方法に沿って調べた。すなわち、1×105個
の浮遊細胞を、10ng/mlホルボール12−ミリスタート13−アセテ—ト(PMA、Sigma−Aldrich社製)、0.4μM A23187カルシウムイオノホア(イオノマイシン、Sigma−Aldrich社製)、及び20IU/ml hIL−1α(Peprotech社製)によって、12時間刺激した。さらに最後の3時間においては、タンパク質分泌阻害剤ブレフェルジンA(1mM、Sigma−Aldrich社製)を添加して培養した。

0077

かかる刺激後の細胞を、抗CD3結合磁性マイクロビーズ(Miltenyi Biotec社製)にて標識し、そして磁気カラム中に保持した。一方、細胞内染色キット(Inside stain kit、Miltenyi Biotec社製)を用い、製造会社の説明書に従って、固相細胞内染色(solid−state intracellular cytokine staining)をこれら細胞に施した。hIFN−γ及びhIL−2の細胞内レベルを測定した。

0078

<T−iPS細胞から誘導したT系譜細胞のmRNAにおけるTCR再構成の検出>
OP9−DL1細胞層上での培養を開始してから、14日目(day26)、21日目(day33)、及び28日目(day40)に、T−iPS細胞から誘導したCD3+
TCRαβ+T系譜細胞から、トータルRNAを抽出した。
そして、逆転写産物5’末端における乗り換え機構(switch mechanism at the 5’−end of the reverse transcript)に基づく方法(SMART法、Du,G.ら、J Immunol Methods、2006年、308巻、19〜35ページ参照)にて、Super SMART(登録商標)cDNAsynthesis kit(Clontech Laboratories社製)を用いて、製造会社の説明書に従って、cDNAを合成した。すなわち、3’SMART(登録商標)CDS primer及びSMART II A oligo(Super SMART(登録商標) cDNA synthesis kit)、並びにPrimeScript Reverse Transcriptase (Takara社製)を用いて、42℃にて90分間、逆転写反応を行った。また、二本鎖cDNAの合成及び増幅は、5’PCRPrimer II A(Super SMART(登録商標) cDNA synthesis kit)及びAdvantage2 PCR Kit(BD Clontech社製)に含まれている試薬類を用いて行った。なお、PCRの反応条件は、95℃にて5秒間、65℃にて5秒間、68℃にて3分間を20サイクルとした。

0079

そして、増幅したcDNAは、TCRA特異的増幅反応又はTCRB特異的増幅反応における鋳型として用いた。すなわち、フォワードプライマー(2nd 5’−SMART)及びリバースプライマーを用いて、94℃にて30秒間、55℃にて30秒間、72℃にて3分間という反応を25サイクル行い増幅した。なお、リバースプライマーとしては、TCRA増幅においては3’−TRACを、TCRB増幅においては3’−TRBCを用いた。そして得られたPCR産物はpGEM−T−Easyベクター(Promega, Madison社製)に挿入し、シークエンシングを行った。

0080

統計解析
本実施例における全ての統計解析は、エクセル(Microsoft社製)、Prism(Graphpad Software社製)、及びStatcel2(OMS Publishing社製)を用い、ANOVA又はスチューデントt検定にて行った。そして、P<0.05を有意とした。

0081

(実施例1)
<ヒト末梢血T細胞からのiPS細胞の樹立>
先ず、ヒト末梢血中のT細胞を用いて、図1に示すようにiPS細胞の樹立を行った。すなわち、健常人(年齢(24〜56)及び性別の異なる複数の健常人)の末梢血より、末梢血単核球(PBMC)又はCD3陽性細胞を単離し、CD3/CD28 ClinExVivoビーズにて刺激した。そして、hIL−2 20ng/mlを含有するRPMI1640+10%FBS+PSG(ペニシリン、ストレプトマイシン、及びL−グルタミン)で2日間培養し、VSV−GシュードタイプレトロウイルスウイルスベクターpMXOCT4、pMXSOX2、pMX KLF4、及びpMX c−MYCm、又はpMX OCT4、pMX SOX2、pMX KLF4を用いて遺伝子導入した。連続2日間の遺伝子導入操作後、分離日から6日目に6cmdishの照射MEF(マウス胎児繊維芽細胞)上に1×105個を撒き、連日半量ずつiPSメディウム(ヒト
iPS細胞培地)に置換していき、播種後4日間にT細胞メディウムから完全にiPSメディウムに置換した。分離11日後(播種5日後)ころより敷石様の細胞集ゾクを認め、数日の後(培養開始してから18〜24日後)にヒトES細胞様の外観を呈するようになった(図2:コロニー(ヒトES細胞様コロニー)の写真参照、)。それらの細胞はALP染色陽性、SSEA−4、TRA−1−60、TRA−1−81などの未分化マーカー陽性(図3:コロニーの染色写真 参照)であり、外来遺伝子サイレンシングとES細胞様遺伝子発現パターンを認めた(図4:電気泳動の写真 参照)。なお、c−MYCを導入した、及び導入しなかった3×105個の細胞から、各々アルカリフォスファター
ゼ(ALP)陽性ヒトES細胞様コロニーを、77±25(0.03%)及び5.1±2.4(0.001%)の割合にて得た(図5参照)。

0082

また、マイクロアレイ解析によって、CD3由来多能性細胞と、ヒトES細胞(KhES3)及び末梢血T細胞との発現遺伝子プロファイルを比較した。CD3由来iPS細胞における遺伝子発現の全体的なパターンは、ヒトES細胞におけるそれと類似しているが、T細胞におけるそれとは異なるものだった(図6参照)。

0083

さらに、細胞のカリオタイプ(核型)は正常で(図7:カリオタイプ解析写真参照)、NOD/SCIマウス精巣への移植によって3胚葉への分化を示す奇形腫(テラトーマ)を形成した(図8:テラトーマ形成病理所見参照)。
従って、ヒト末梢血T細胞から樹立したiPS細胞は多能性を有していることが明らかになった。

0084

(実施例2)
樹立されたiPS細胞がT細胞由来であることを確認するために、TCR遺伝子の再構
成を確認した。TCR遺伝子はTCRδ、TCRγ、TCRβの3群が(ほぼこの順番で)早期から再構成を始める。4因子由来の4クローン中2クローン、3因子由来の9クローン中6クローンでTCRγ遺伝子の再構成を認めた(図9:電気泳動参照)。それらのクローンのTCRβ遺伝子とTCRα遺伝子の再構成を解析したところ、全てのクローンでインフレーム(in frame)のTCRβ遺伝子とTCRα遺伝子の再構成を認めた(表5:TCRα鎖領域のインフレーム(in frame)遺伝子再構成、表6:TCRβ鎖領域のインフレーム(in frame)遺伝子再構成 参照)。それらの全ての再構成でTRAV24とTRBV11が特異的に用いられるNKT細胞タイプの組合わせは無く、末梢血T細胞由来のiPS細胞であることが確認された。なお、表5及び6において、「iPS Clone」は樹立したT細胞由来のiPS細胞株を示し、「Rearrangement」は再構成に用いられるセグメントの組み合わせを示し、「Sequence of junctional region」は結合領域の塩基配列を示す。

0085

0086

0087

(実施例3)
また、実施例2同様に、樹立されたiPS細胞がT細胞由来であることを確認するために、TCR遺伝子の再構成を確認した。すなわち、ヒトは4つのTCR遺伝子(TCRA、TCRB、TCRG、及びTCRD)を有しており、これらのDNA再構成は、胸腺における正常なTリンパ球の発達に関与していることが知られている。また、TCR遺伝子の再構成は、T系譜細胞に特異的な、不可逆的な遺伝的現象であり、この遺伝的現象によってT細胞は遺伝的な痕跡を与えられ、特徴付けられる。従って、これらの痕跡を調べる
ことにより、実施例1において得られたiPS細胞は、健常人ドナー成熟末梢Tリンパ球由来であるかどうか遡及的に確認することができる。

0088

先ず、Benhatter達やBIOMED−2コンソーシアムによって設計されたTCRプライマーセットを用いたPCR解析によって、TCRG又はTCRB再構成を検出した(図28及び29 参照、Benhattar,J.ら、Diagn Mol Pathol、1995年、4巻、108〜112ページ、van Dongen, J.J.、Leukemia、2003年、17巻、2257〜2317ページ 参照)。その結果、調べた全てのiPS細胞株において、TCRG又はTCRB再構成は同定され、調べた全てのiPS細胞株は末梢血Tリンパ球由来のものであることが確認された(図10及び11)。
また、TCRβ鎖はTCRα鎖と共にヘテロ二量体を形成しており、殆どの末梢血T細胞はTCRαβを発現している(Davis,M.M.ら、Nature、1998年、334巻、395〜402ページ 参照)。TCRG及びTCRBに対して、TCRA遺伝子座は複雑である。TCRA遺伝子座はTCRD遺伝子座を含んでいるだけでなく、103のVαセグメント、61のJαセグメント、及びCαセグメントを含む、1000kb以上にわたる領域である。そこで、ゲノムDNAにおけるTCRA遺伝子再構成を検出するために、Vαセグメントに対する34のフォワードプライマーと、Jαセグメントに対する12のリバースプライマーとのセットを設計した。なお、多重構造の解析にこれらを用いる際に、膨大なプライマーの組み合わせを実用できる程度にその数を絞った。そして、全てのJαプライマーは一つのチューブにて混合し、このJαプライマーミックスと、各Vαプライマーとを用いて、1つのサンプルに対して34のPCR反応を行った。その結果、この方法によって、TCRB再構成iPS細胞において、TCRA再構成を同定することができた(図12参照)。

0089

さらに、HLA−ペプチド複合体に対するTCRの結合性は、3タイプの相補性決定領域(CDR1、2、及び3)からなる抗原認識部位三次元構造によって必然的に決定される。これら3領域においては、様々なランダムヌクレオチド(N−ヌクレオチド又はP−ヌクレオチド)が挿入されているV(D)J結合領域に渡っているため、CDR3は最も分散可能(diversifiable)なものである。そこで、樹立したiPS細胞のゲノムのCDR3領域における、個々のTCR鎖をコードする配列を同定した。その結果、元のT細胞における機能的な再構成(Rearranged(Productive)、インフレームで結合しておりストップコドンがない構成)が保存されていることが明らかになり、全てのT−iPS細胞において、1アレル上に機能的なTCRA及びTCRB再構成を一つのみ有していることが明らかになった。もう片方のアレルにおいては、DJβ再構成を含む、完全な又は非機能的な再構成(intact又はRearranged(Unproductive))を有していることが明らかになった(表7、及び図13参照)。なお、表7において、「iPS Clone」は樹立したT細胞由来のiPS細胞株を示し、「Productivity」は、再構成したT細胞受容体が機能を有するか否か、すなわちβ受容体複合体を作り抗原を認識するか(機能的:Productive)、否か(非機能的:Unproductive)を示し、「Sequence of junctional region」は結合領域の塩基配列を示す。また、TRAV24及びTRBV11セグメントが特異的に確認されるヒトNKTリンパ球はなかった(Godfrey,D.I.ら、Semin Immunol、22巻、61〜67ページ参照)。したがって、CDR3配列に刻まれていたTCR産生能は変化することなく、一つの末梢血T細胞からiPS細胞が作製されたことが明らかになった。

0090

0091

(実施例4)
<CD4+リンパ球又はCD8+リンパ球からiPS細胞への再プログラミング>
末梢Tリンパ球は主に2つの機能的なサブセット、すなわちCD4+ヘルパー/制御性
細胞、及びCD8+細胞傷害性細胞に由来する。また、ウィルスによる遺伝子導入効率に
おいて、CD4+リンパ球とCD8+リンパ球との間に有意な差はないことが知られている(Berger,C.ら、Blood、2003年、101巻、476〜484ページ、Kaneko,S.ら、Blood、2009年、113巻、1006〜1015ページ
参照)。そこで、末梢Tリンパ球をCD4+T細胞とCD8+T細胞とに分け、iPS細
胞への再プログラミングを行い、由来するT細胞の違いによって、iPS細胞への再プログラミングの効率に差異があるのかどうかを調べた。なお、各細胞における誘導条件を下記に示す。

0092

<CD4+T細胞に対する誘導条件>
採血により得た末梢血単核球のCD3陽性CD56陰性CD4陽性T細胞分画(以下、CD4陽性T細胞)をフローサイトで分取し、抗CD3抗体、抗CD28抗体(ビーズ結合、固層化、培地への添加の別を問わない)で活性化させた。培地にはヒトIL−2を20ng/ml程度添加し、刺激から48〜96時間後にかけてレトロネクチンをコートした24穴プレート上で複数回の山中因子遺伝子導入を行った。その際に用いた山中因子はOCT4、SOX2、KLF4、及びC−MYC、又はOCT4、SOX2、及びKLF4である。最後の遺伝子導入から2日後以降を目安に、6cmディッシュ上の照射MEF上に1〜5x105の遺伝子導入T細胞を乗せた。なお、初日にフローサイトでCD4陽
性T細胞を分取して用いなかった場合は、このタイミングでフローサイトによりCD4陽性T細胞を分取してMEFに乗せた。乗せ換え翌日より4日間、半量ずつの培地を0.5μMバルプロ酸入りES細胞用培地に置換し、その後は連日又は一日おきに0.5μMバルプロ酸入りES細胞用培地を交換して培養を続けた。乗せ換え後10日前後より敷石様の細胞集簇を認め、数日のうちに完成したiPS細胞コロニーが観察された。

0093

<CD8+T細胞に対する誘導条件>
採血により得た末梢血単核球のCD3陽性CD56陰性CD8陽性T細胞分画(以下、CD8陽性T細胞)をフローサイトで分取し、抗CD3抗体、抗CD28抗体(ビーズ結合、固層化、培地への添加の別を問わない)で活性化させた。培地にはヒトIL−2を20ng/ml、IL−7を10ng/ml、IL−15を10ng/ml程度添加し、刺激から48〜96時間後にかけてレトロネクチンをコートした24穴プレート上で複数回の山中因子遺伝子導入を行う。その際に用いた山中因子はOCT4、SOX2、KLF4、C−MYC、NANOG、及びLIN28、又はOCT4、SOX2、KLF4、C−MYC、及びNANOGである。最後の遺伝子導入から2日後以降を目安に、6cmディッシュ上の照射MEF上に1〜5x105の遺伝子導入T細胞を乗せた。なお、初日にフ
ローサイトでCD8陽性T細胞を分取して用いなかった場合は、このタイミングでフローサイトによりCD8陽性T細胞を分取してMEFに乗せた。乗せ換え翌日より4日間、半量ずつの培地を0.5μMバルプロ酸入りES細胞用培地に置換し、その後は連日又は一日おきに0.5μMバルプロ酸入りES細胞用培地を交換して培養を続けた。乗せ換え後2週前後より敷石様の細胞集簇を認め、1〜2週のうちに完成したiPS細胞コロニーが観察された。

0094

上記誘導条件にて調べた結果、本実施例においては、NANOGを導入しない条件下におけるCD4+Tリンパ球からT−iPS細胞への誘導の成功率は、リプログラミング因
子 NANOGを更に導入する条件下におけるCD8+Tリンパ球からT−iPS細胞へ
の誘導の成功率の2倍であった。なお、本実施例において、CD4+Tリンパ球からはN
ANOGを導入せずに、7、8回の試行によってT−iPS細胞が得られる。

0095

また、図には示さないが、CD8+Tリンパ球からT−iPS細胞への誘導の際に、M
EF上への乗せ換え後に10μMのROCKinhibitor存在下に5%O2下の
低酸素培養、又は1μM MEK inhibitor(PD0325901)及び3μM GSK3 inhibitor (CHIR99021)をコロニー形成まで培地に添加することによって、T−iPS細胞への誘導効率が若干上昇する傾向にあることが確認された。

0096

前記結果を受け、さらに、CD4+Tリンパ球を更に、CD45RA及びCD62L/
CCR7の発現に基づき、ナイーブ(CD45RA+CD62L+)、セントラルメモリー(CD45RA−CD62L+)、エフェクターメモリー(CD45RA−CD62L−)、及びターミナルエフェクターT細胞(CD45RA+CD62L−)のサブセットに分け、iPS細胞への誘導(再プログラミング)を行った(Sallusto,F.ら、Nature、1999年、401巻、708〜712ページ参照、図14参照)。その結果、健常人ドナー3人における平均 再プログラミングの効率は、ナイーブT細胞においては0.0041%、セントラルメモリーT細胞においては0.017%、エフェクターメモリーT細胞においては0.0036%、ターミナルエフェクターT細胞においては0.0008%であり、特にセントラルメモリーT細胞より比較的良好にT−iPS細胞は樹立されることが明らかになった(図15参照)。なお、CD4+セントラル
メモリーT細胞の再プログラミング効率の高さは、抗CD3/CD28刺激に対する感受性を反映しているのかもしれない。

0097

(実施例5)
<TiPS細胞から分化したT系譜細胞の機能解析
ヒトES細胞から得たCD34陽性細胞をSCID−huマウスに移植することで移植されたヒト胎児胸腺内にT細胞系譜が分化誘導される(Galic,Zら、PNAS、2006年、103巻、31号、11742〜7ページ参照)。またin vivoではES細胞はOP9−DL1細胞によって、CD4/CD8 double positiveを主としたCD3陽性、TCR陽性細胞へと誘導される(Timmermansら、JI、2009年、182巻、6879〜6888ページ 参照)。

0098

そこで、得られたT細胞由来iPS細胞(T−iPS細胞)を用いて、T細胞への分化誘導を試みた。T細胞は発生過程でTCR遺伝子の組み換えを経た後には高頻度体細胞突然変異をおこさないので、T−iPS細胞から誘導したT細胞系譜は元のT−iPS細胞のTCR情報を保持し、対立アレル排除状態によってはモノクローナルなTCRをもつと予想した。しかしながら、T−iPS細胞からT細胞が誘導できるかどうか、また誘導したT細胞は機能的であるかどうか、TCRの再構成状態は、T−iPS細胞の元になったT細胞と同一であるかどうかについては不明であるため、これらの点について以下の通り調べた。

0099

先ず、樹立したT−iPS細胞よりTCRα鎖、TCRβ鎖とも片方のアレルがインフレーム(in frame)再構成を起こし、対側のアレルがα鎖においてはアウトフレーム(out frame)再構成、β鎖においてはDJ再構成で停止したクローンを選択し(TkT3V1−7)、T細胞系譜をin vitroで誘導した。IL−7、Flt3L(ヒトFMSチロシンキナーゼリガンド)またはSCF(ヒト幹細胞因子、hSCF)存在下にOP9上で培養されたT−iPS細胞はES−sac(サック)(Takayamaら、Blood、2008年、111巻、11号、5298〜5306ページ参照)様の構造物を形成して14日目までに内部にCD45陽性血液細胞を誘導した(図16の(a) 参照)。12〜14日目に血液細胞をOP9−DL1に乗せ換えて培地交換を3日おきに繰り返して培養を継続し、21日目および40日目にFACSでCD3陽性細胞を採取しT細胞関連遺伝子の発現を評価した。40日目のCD3陽性細胞はCD4/8陰性細胞が中心であるものの、一部にCD8の単独陽性細胞を認めた(図16の(b) 参照)。

0100

また、サックをOP9−DL1細胞層上に移した後、サックから出てきた浮遊細胞を回収し、フローサイトメトリーを用いて毎週分析した(図17の(a) 参照)。その結果、第1週において、大抵の浮遊細胞はCD45を弱く発現しおりいくらかの細胞において、CD34、CD7、及びCD1aは発現しており、一方CD3−TCRαβ複合体及びCD5を発現している細胞はなかった。第2週において、大抵の細胞においてCD45
の発現は亢進しており、いくらかの細胞において、CD3−TCRαβ複合体も発現し始めていた。第3週までに、CD34細胞は完全に消失しており、CD3−TCRαβ強陽性細胞は浮遊細胞の最も多い細胞群となっていた。なお、CD3+細胞においてTCRαβ-細胞はなかった(図17の(b) 参照)。また、第3週の後でさえ、大抵の再分化
CD3+TCRαβ+細胞は、共陰性(DN)ステージのものであったが、いくつかの細胞群においては、CD4のみ陽性な細胞(8.5±8.2%)及びCD8のみ陽性な細胞(15.5±15.9%)も検出された(図18及び図19参照)。

0101

一般に、胸腺細胞ステージでも、TCR発現T系譜細胞はTCR刺激に応答することができ、サイトカインを産生することもできることが知られている(Fischer,M.ら、J Immunol、1991年、146巻、3452〜3456ページ参照)。そこで、OKT−3及びIL−2にて前記浮遊細胞を刺激して、CD3発現細胞の活性化並びに数を調べた。すなわち、30ng/ml OKT−3及び600IU/ml hIL−2にて5日間、浮遊細胞を刺激した結果、CD3+細胞群は増加し、形態学的基準に
よってCD3発現細胞は活性化しているように見受けられた(図20参照)。しかし、実際のCD3+細胞は変わっていないことが確認された。

0102

また、誘導CD3+TCRαβ+細胞はT系譜細胞への分化誘導に機能的に寄与していることを明らかにするため、サイトカイン産生能を下記の通り評価した。すなわち、PMA及びカルシウムイオノフォア(イオノマイシン)によって刺激した結果、12.5%のT系譜細胞はIFN−γを産生し、1.0%のT系譜細胞はIL−2を産生し、6.2%のT系譜細胞はその両方を産生していることが明らかになった(図21参照)。従って、T−iPS細胞から誘導したCD3+TCRαβ+細胞は、形態学的にも機能的にもT系譜細胞への誘導に寄与していることが明らかになった。

0103

また、前述の通り、一般にTCR遺伝子は高頻度体細胞突然変異(somatic hyper−variable mutations)を受けないため、T−iPS細胞由来の再分化T系譜細胞は高頻度にT−iPS細胞の元となった細胞のゲノムにコードされているTCRαβが発現していることが予想される。しかしながら、TCRの再構成状態は、T−iPS細胞の元になったT細胞と同一であるかどうかについては不明であるため、この点について以下の通り調べた。

0104

その結果、誘導されたCD3細胞のTCR発現を解析するとTkT3V1−3、TkT3V1−7においては1種類のTCRβ鎖のみが出現しており、CDR3領域を中心とした配列は誘導前のiPS細胞と同一であった(図22参照)。TCRα鎖は多様性を認めるものの大半は再構成済みのα鎖由来であった(図23参照)。リプログラミングを受けたT細胞は再度T細胞へと誘導される際に、クローナルにTCRを発現することが明らかになった。

0105

また、ドナー2人由来の4 T−iPS細胞から再分化したCD3highTCRαβhighT系譜細胞を分析した。すなわち、これらの細胞のcDNAライブラリーをSMART−mediated reverse transcription reactionによって構築し(Du,G.,ら、J Immunol Methods、2006年、308巻、19〜35ページ参照)、TCR遺伝子を増幅した。そして、増幅したTCR遺伝子をクローニングベクターに挿入し、クローニングして分析した。

0106

その結果、分析したクローンの配列は、T−iPS細胞の分化前の細胞のゲノムにコードされていたTCR配列と一致した(図13、23、及び25 参照)。一方、殆どの転写産物は機能的な鎖(productive chain)由来であり、非機能的な鎖(unproductive chain)由来の転写産物も存在していた(表8 参照)
。しかし、機能的又は非機能的再構成由来の配列とは異なる転写産物は確認されなかった(表9 参照)。なお、表8において、「iPS Clone」は樹立したT細胞由来のiPS細胞株を示し、「Productivity」は、再構成したT細胞受容体が機能を有するか否か、すなわちβ受容体と複合体を作り抗原を認識するか(機能的:Productive)、否か(非機能的:Unproductive)を示し、「Sequence of junctional region」は結合領域の塩基配列を示す。また、表9において、「Productivity」は、再構成したT細胞受容体が機能を有するか否か、すなわちβ受容体と複合体を作り抗原を認識するか(機能的:Productive)、否か(非機能的:Unproductive)を示し、「No.of Sequenced Samples」は各TCR遺伝子において解析したサンプル数を示し、「Sequence allignment with T−iPSC‘s genome」は、解析したサンプルにおいて、再分化前のT−iPS細胞のゲノムと一致した数及び割合(Identical)、又は該ゲノムと異なった数及び割合(Different)を示す。

0107

0108

0109

さらに、他の多能性細胞からCD34陽性細胞への誘導と、本発明の方法とを比較した。その結果、ES細胞(ヒトES細胞、HumanESC)、皮膚由来iPS細胞(ヒト皮膚繊維芽細胞由来iPS細胞、HDF−iPS)、CD34陽性細胞由来iPS細胞(臍帯血CD34陽性細胞由来iPS細胞、CB−iPSC)、T−iPS細胞(T−i
PSC)のいずれにおいてもCD3陽性細胞が誘導されたが、T−iPS細胞は、皮膚細胞やCD34陽性細胞に由来するiPS、およびES細胞に比して明らかにT細胞へと誘導されやすいことが判明した(図16、17、26、及び27 参照)。

0110

(実施例6)
<ヒトT細胞より樹立したiPS細胞から機能的T細胞への誘導2>
複数ドナーのCD4T細胞又はCD8T細胞に由来するT−iPSCクローン(6クローン)を用いて、モノクローナルTCRを持つT細胞集団の誘導を試みた。すなわち、誘導開始日に3×105個のT−iPS細胞を10cmディッシュに敷き詰めた照射OP9
細胞又は10T1/2細胞に撒き、分化培地を用いて14日間程度共培養した。12〜14日目にかけて共培養中に袋状の構造物に入った血球細胞が出現した。なお、その際にサイトカインを併用しなくても血球細胞は出現したが、VEGFを添加するとCD34陽性造血幹細胞(以下CD34細胞)の回収が改善することが明らかになった。またVEGF、SCF、及びTPO、又はVEGF、SCF、及びFLT3Lを加えると、さらにCD34細胞の回収が改善するも明らかになった。なお、後述の通り、これらの傾向は最終産物であるT系譜細胞の回収にも反映された。

実施例

0111

また、12日〜14日目のいずれかに、それらのCD34細胞を含む血球細胞を10cmディッシュに敷き詰めた照射OP9/DL1細胞、OP9/DL4細胞、又は10T1/2/DL4細胞に3×105個まき、IL−7及びFlt3Lの存在下に20%FBS
含有α−MEM培地にて共培養した。なお、SCFはNK細胞への分化を強く促すため、使用しなかった。前述の通り、共培養2週目には一部、3週目には大部分の浮遊細胞がCD3陽性TCRαβ陽性のT系譜細胞になるが、それらの細胞はCD4とCD8の発現においてダブルネガティブ(DN)、ダブルポジティブ(DP)、シングルポジティブ(SP)を含み、一様の集団ではなかった(図17参照)。そこで、さらに詳細に検討した結果、DN、DP、CD4SP、CD8SPの構成はIL−7の濃度に依存することを見出した。具体的には、図には示さないが、IL−7非添加ではCD3陽性CD56陰性T細胞そのものが少なくて大部分はDNであった。IL−7 5〜10ng/mlではCD3陽性CD56陽性NKT様の細胞集団が出現し、やはり大部分はDNであった。一方、IL−7 1ng/mlではCD3陽性CD56陰性のT系譜細胞が大部分を占め、DNからDP、そしてCD4SP、CD8SPへの分化が確認された。また、これらのSP細胞を末梢血T細胞の分化マーカーで解析すると、CD8SPの80%程度はCD45RA+CD62L+ナイーブT細胞であり、CD4SPの大部分はCD45RA-CD62L+セントラルメモリーT細胞であったすなわち、エフェクターメモリー段階に進んでいたT細胞が、T−iPS細胞を介してナイーブT細胞(CD8SPの場合)やセントラルメモリーT細胞(CD4の場合)に若返りし得ることが示唆された。

0112

上記の通り、本発明のヒトTリンパ球の製造方法は、特に目的とする抗原に特異的であるヒトTリンパ球の製造、ひいては目的とする抗原に特異的であり、且つ所望のヒト組織適合性抗原(HLA)拘束性のCD4単独陽性細胞、またはCD8単独陽性細胞の製造に優れている。従って、本発明は、慢性難治性感染症や悪性腫瘍、又は自己免疫疾患等、種々の難病の治療又は予防等に大きく貢献しうるものである。

0113

列番号1〜109
<223>人工的に合成されたプライマーの塩基配列

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