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技術 分布光ファイバ振動計測装置および分布光ファイバ振動計測方法

出願人 日本電信電話株式会社
発明者 戸毛邦弘飯田大輔大野槙悟脇坂佳史真鍋哲也
出願日 2018年7月2日 (1年11ヶ月経過) 出願番号 2018-126186
公開日 2020年1月9日 (5ヶ月経過) 公開番号 2020-003464
状態 未査定
技術分野 機械的振動・音波の測定
主要キーワード アナログ信号回路 最大振動周波数 振動位置 測定行 演算処理ステップ 数値化処理 直流付近 任意区間
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図面 (12)

課題

分布光ファイバ振動計測装置において、フェーディング雑音の影響を低減することができ、高精度かつ高感度振動計測ができる分布光ファイバ振動計測装置を提供する。

解決手段

分布光ファイバ振動計測装置において、複数の被試験光ファイバの各地点で発生した後方散乱光試験光パルス光周波数とは異なる光周波数の別の光と干渉させて得られた2つの交流成分から位相定数差を求める位相定数差算出手段と、被試験光ファイバの各地点で発生した後方散乱光を前記別の光と干渉させて得られた2つの交流成分それぞれの振幅を比較して、各地点毎に振幅が大きい方の交流成分の位相データを選択して経時的に配列した位相分布データを作成する位相分布データ作成手段と、前記位相定数差と前記位相分布データから、被試験光ファイバの任意の2地点間の光路長差を特定し、振動計測する。

概要

背景

OTDR(Optical time−domain reflectometer)は、被試験光ファイバ試験光パルス送出し、被試験光ファイバからのレイリー後方散乱光(以後、単に後方散乱光と称する)を受信、解析することで被試験光ファイバの各地点における光の後方散乱光強度分布(以後、OTDR波形と称する)を測定する方法、装置である。

コヒーレント光を発する光源を用いたOTDRでは、試験光パルスが被試験光ファイバを伝搬する際、試験光パルスの時間内にランダムかつ多数存在する光ファイバ上の各散乱点からの個々の散乱光同士が互いに干渉した結果が信号として取り出されるため、被試験光ファイバの各地点における散乱光強度分布は被試験光ファイバの長さ方向に対してランダムに上下する(以下、フェーディングとする)ようなジグザグ波形となる。この波形は、コヒーレント光の光周波数や光ファイバの状態が変化しない限り、何度測定を行っても同じジグザグ波形が得られる。

一方で、光ファイバの一部に対して、気体液体固体等を通じて音波振動(以後、まとめて振動とする)が到達すると、光ファイバに極僅かな光路長の変化、すなわちひずみが生じ、該当部分の散乱光強度だけがランダムに変化することで、振動位置や変化の周期から振動周波数が測定される。

後方散乱光強度は振動に対してランダムに変化するため、光ファイバに加わる振動強度に対して、線形応答を示すものではない。これに対し、ヘテロダイン検波方式等を用いて後方散乱光の位相成分を直接取り出す方法では、被試験光ファイバ上の2地点間の位相差時間変化振動振幅と線形に近い関係を有するため、より精密に光ファイバに加わった振動振幅や振動周波数を求めることができるという特徴がある。

例えば、非特許文献1では、コヒーレント光を発する光源からの出力光光方向性結合器によって試験光局発光分岐させ、一方に周波数シフトを付与し、これらをバランス検波するヘテロダイン検波方式を用いた分布光ファイバ振動計測方法が提案されている。このヘテロダイン検波方式を用いた測定方法により、局発光と後方散乱光の干渉によって生じるビート信号電気信号として検出される。このビート信号の交流成分iAC(t)は、光源からのコヒーレント光の出力時間tおよび光角周波数(以下、角周波数を周波数と略記する)ω、周波数シフトΔωA、試験光パルスのパルス幅Wに対して、光ファイバ上に複数個散乱体が一次元に並んでいる一次元散乱モデルにおいて以下の(式1)で与えられる。

ここで、EL、ESはそれぞれ局発光および試験光の電界振幅、Nは被試験光ファイバの長さ方向に存在する散乱体の数、i(1≦i≦N)は散乱体の番号、aiは散乱体iの反射率τiは被試験光ファイバの入射端から散乱体iまでの往復伝搬遅延時間、θ(t)は試験光の初期位相、θFUT(τ)は被試験光ファイバに加わる振動によって生じる位相変化であり、測定対象である。また、θFUTの引数τは、被試験光ファイバの長さ方向の位置を被試験光ファイバ内の伝搬時間で表したものである。

交流成分はビート周波数と同じ周波数を有する正弦波電気信号とミキシングして数値化処理後に信号処理にてベースバンド信号に処理される。交流成分をヒルベルト変換または90度ハイブリッドなどの手段を用いてsin成分を作成して逆正接をとることで交流成分の位相成分が算出される。上記(式1)において、cos項の位相成分に着目すると、第2項ΔωAτiは光周波数や光ファイバ固有に関係する初期位相項であり、コヒーレント光の光周波数が変化しない限り、時間に対して一定の定数である。第3項θ(t−τi)−θ(t)は光源の位相雑音を意味するが、遅延時間τiが非常に近い光ファイバ上の2地点の位相差を算出するため、光源のコヒーレンス長に対して2地点の遅延時間差τが非常に小さい場合、最終的にはほぼ無視できる。

また、非特許文献2では、局発光を用いる代わりに試験光パルスの後段に周波数シフトされた別の試験光パルスを時間差を設けて入射し、これら複数の試験光パルスの後方散乱光同士の干渉をヘテロダイン検波する手法が提案されている。この手法では、光検波受信器で生じるビート信号の交流成分iAC(t)は、下記(式2)のように表される。

ここで、同様にcosの中の位相成分に着目すると、ωτi−(ω+ΔωA)τjが光周波数や光ファイバ固有に関係する初期位相項であり、コヒーレント光の光周波数が変化しない限り、時間に対して一定の定数となる。θ(t−τi)−θ(t−τj)は、光源の位相雑音を意味し、複数の試験光パルスに設けた時間差やパルス幅Wが光源のコヒーレンス長に対して遅延時間差|τi−τj|が非常に小さく、実際にはほぼ無視できる。

以上のように、前述のいずれの手法においても、ヘテロダイン検波されるビート信号の交流成分からθFUT(τ)と定数である光周波数や光ファイバ固有に関係する初期位相項の和が得られ、これを繰り返し測定行うことで得られる測定結果は、時間的に変化するθFUT(τ)と初期位相定数がオフセットされた形として得られる。したがって時間的に変化するθFUT(τ)のみの情報が抽出され、被試験光ファイバに加わった振動振幅や振動周波数等の解析が可能となる。

概要

分布光ファイバ振動計測装置において、フェーディング雑音の影響を低減することができ、高精度かつ高感度振動計測ができる分布光ファイバ振動計測装置を提供する。分布光ファイバ振動計測装置において、複数の被試験光ファイバの各地点で発生した後方散乱光を試験光パルスの光周波数とは異なる光周波数の別の光と干渉させて得られた2つの交流成分から位相定数差を求める位相定数差算出手段と、被試験光ファイバの各地点で発生した後方散乱光を前記別の光と干渉させて得られた2つの交流成分それぞれの振幅を比較して、各地点毎に振幅が大きい方の交流成分の位相データを選択して経時的に配列した位相分布データを作成する位相分布データ作成手段と、前記位相定数差と前記位相分布データから、被試験光ファイバの任意の2地点間の光路長差を特定し、振動を計測する。

目的

本発明は、上記従来の問題に鑑みなされたものであって、本発明の課題は、被試験光ファイバからの後方散乱光を受信、解析することにより、光ファイバの各位置に加わる音波あるいは振動を計測する分布光ファイバ振動計測装置において問題となるフェーディング雑音の影響を低減することができ、高精度かつ高感度な振動計測ができる分布光ファイバ振動計測装置を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

一体化された複数の被試験光ファイバのそれぞれに対して、第1の試験光パルス入射し、前記複数の被試験光ファイバの各地点で発生した第1の後方散乱光ヘテロダイン検波することにより前記被試験光ファイバの各位置に加わる振動計測する分布光ファイバ振動計測装置において、前記複数の被試験光ファイバの各地点で発生した前記第1の後方散乱光を前記第1の試験光パルスの光周波数とは異なる光周波数の別の光と干渉させて得られた2つの交流成分から位相定数差を求める位相定数差算出手段と、前記複数の被試験光ファイバの各地点で発生した前記第1の後方散乱光を前記別の光と干渉させて得られた2つの交流成分それぞれの振幅を比較して、各地点毎に振幅が大きい方の交流成分の位相データを選択して経時的に配列した位相分布データを作成する位相分布データ作成手段と、前記位相定数差と前記位相分布データから、前記被試験光ファイバの任意の2地点間の光路長差を特定することにより被試験光ファイバにおける振動を計測する振動計測手段とを備えることを特徴とする分布光ファイバ振動計測装置。

請求項2

前記別の光は、第2の後方散乱光であって、前記複数の被試験光ファイバに対して、前記第1の試験光パルスの光周波数とは異なる光周波数の第2の試験光パルスを、前記第1の試験光パルスとは所定間隔をもって入射させて発生した後方散乱光であることを特徴とする請求項1に記載の分布光ファイバ振動計測装置。

請求項3

第1の試験光パルスと、前記第1の試験光パルスの光周波数とは異なる光周波数の第2の試験光パルスとを被試験光ファイバに対して入射し、前記被試験光ファイバの各地点で発生した第1の後方散乱光および第2の後方散乱光をヘテロダイン検波することにより前記被試験光ファイバの各位置に加わる振動を計測する分布光ファイバ振動計測装置において、前記第1の後方散乱光および前記第2の後方散乱光をそれぞれ前記第1の試験光パルスおよび前記第2の試験光パルスの光周波数とは異なる光周波数の別の光と干渉させて得られた2つの交流成分から位相定数差を求める位相定数差算出手段と、前記第1の後方散乱光および前記第2の後方散乱光をそれぞれ前記別の光と干渉させて得られた2つの交流成分それぞれの振幅を比較して、各地点毎に振幅が大きい方の交流成分の位相データを選択して経時的に配列した位相分布データを作成する位相分布データ作成手段と、前記位相定数差と前記位相分布データから、前記被試験光ファイバの任意の2地点間の光路長差を特定することにより被試験光ファイバにおける振動を計測する振動計測手段とを備えることを特徴とする分布光ファイバ振動計測装置。

請求項4

前記別の光は、第3の後方散乱光および第4の後方散乱光であって、前記第1の試験光パルスおよび前記第2の試験光パルスの光周波数とは異なる光周波数の第3の試験光パルスおよび第4の試験光パルスを前記被試験光ファイバに前記第1の試験光パルスおよび前記第2の試験光パルスとは所定間隔をもって入射させて発生した後方散乱光であることを特徴とする請求項3に記載の分布光ファイバ振動計測装置。

請求項5

一体化された複数の被試験光ファイバのそれぞれに対して、第1の試験光パルスを入射し、前記複数の被試験光ファイバの各地点で発生した第1の後方散乱光をヘテロダイン検波することにより前記被試験光ファイバの各位置に加わる振動を計測する分布光ファイバ振動計測方法において、前記複数の被試験光ファイバの各地点で発生した前記第1の後方散乱光を前記第1の試験光パルスの光周波数とは異なる光周波数の別の光と干渉させて得られた2つの交流成分から位相定数差を求める位相定数差算出ステップと、前記複数の被試験光ファイバの各地点で発生した前記第1の後方散乱光を前記別の光と干渉させて得られた2つの交流成分それぞれの振幅を比較して、各地点毎に振幅が大きい方の交流成分の位相データを選択して経時的に配列した位相分布データを作成する位相分布データ作成ステップと、前記位相定数差と前記位相分布データから、前記被試験光ファイバの任意の2地点間の光路長差を特定することにより被試験光ファイバにおける振動を計測する振動計測ステップとを備えることを特徴とする分布光ファイバ振動計測方法。

請求項6

第1の試験光パルスと、前記第1の試験光パルスの光周波数とは異なる光周波数の第2の試験光パルスとを被試験光ファイバに対して入射し、前記被試験光ファイバの各地点で発生した第1の後方散乱光および第2の後方散乱光をヘテロダイン検波することにより前記被試験光ファイバの各位置に加わる振動を計測する分布光ファイバ振動計測方法において、前記第1の後方散乱光および前記第2の後方散乱光をそれぞれ前記第1の試験光パルスおよび前記第2の試験光パルスの光周波数とは異なる光周波数の別の光と干渉させて得られた2つの交流成分から位相定数差を求める位相定数差算出ステップと、前記第1の後方散乱光および前記第2の後方散乱光をそれぞれ前記別の光と干渉させて得られた2つの交流成分それぞれの振幅を比較して、各地点毎に振幅が大きい方の交流成分の位相データを選択して経時的に配列した位相分布データを作成する位相分布データ作成ステップと、前記位相定数差と前記位相分布データから、前記被試験光ファイバの任意の2地点間の光路長差を特定することにより被試験光ファイバにおける振動を計測する振動計測ステップとを備えることを特徴とする分布光ファイバ振動計測方法。

技術分野

0001

本発明は、光ファイバセンサとして用い、光ファイバの各位置に加わる音波あるいは振動計測する分布光ファイバ振動計測装置に関する。

背景技術

0002

OTDR(Optical time−domain reflectometer)は、被試験光ファイバ試験光パルス送出し、被試験光ファイバからのレイリー後方散乱光(以後、単に後方散乱光と称する)を受信、解析することで被試験光ファイバの各地点における光の後方散乱光強度分布(以後、OTDR波形と称する)を測定する方法、装置である。

0003

コヒーレント光を発する光源を用いたOTDRでは、試験光パルスが被試験光ファイバを伝搬する際、試験光パルスの時間内にランダムかつ多数存在する光ファイバ上の各散乱点からの個々の散乱光同士が互いに干渉した結果が信号として取り出されるため、被試験光ファイバの各地点における散乱光強度分布は被試験光ファイバの長さ方向に対してランダムに上下する(以下、フェーディングとする)ようなジグザグ波形となる。この波形は、コヒーレント光の光周波数や光ファイバの状態が変化しない限り、何度測定を行っても同じジグザグ波形が得られる。

0004

一方で、光ファイバの一部に対して、気体液体固体等を通じて音波や振動(以後、まとめて振動とする)が到達すると、光ファイバに極僅かな光路長の変化、すなわちひずみが生じ、該当部分の散乱光強度だけがランダムに変化することで、振動位置や変化の周期から振動周波数が測定される。

0005

後方散乱光強度は振動に対してランダムに変化するため、光ファイバに加わる振動強度に対して、線形応答を示すものではない。これに対し、ヘテロダイン検波方式等を用いて後方散乱光の位相成分を直接取り出す方法では、被試験光ファイバ上の2地点間の位相差時間変化振動振幅と線形に近い関係を有するため、より精密に光ファイバに加わった振動振幅や振動周波数を求めることができるという特徴がある。

0006

例えば、非特許文献1では、コヒーレント光を発する光源からの出力光光方向性結合器によって試験光局発光分岐させ、一方に周波数シフトを付与し、これらをバランス検波するヘテロダイン検波方式を用いた分布光ファイバ振動計測方法が提案されている。このヘテロダイン検波方式を用いた測定方法により、局発光と後方散乱光の干渉によって生じるビート信号電気信号として検出される。このビート信号の交流成分iAC(t)は、光源からのコヒーレント光の出力時間tおよび光角周波数(以下、角周波数を周波数と略記する)ω、周波数シフトΔωA、試験光パルスのパルス幅Wに対して、光ファイバ上に複数個散乱体が一次元に並んでいる一次元散乱モデルにおいて以下の(式1)で与えられる。

0007

0008

ここで、EL、ESはそれぞれ局発光および試験光の電界振幅、Nは被試験光ファイバの長さ方向に存在する散乱体の数、i(1≦i≦N)は散乱体の番号、aiは散乱体iの反射率τiは被試験光ファイバの入射端から散乱体iまでの往復伝搬遅延時間、θ(t)は試験光の初期位相、θFUT(τ)は被試験光ファイバに加わる振動によって生じる位相変化であり、測定対象である。また、θFUTの引数τは、被試験光ファイバの長さ方向の位置を被試験光ファイバ内の伝搬時間で表したものである。

0009

交流成分はビート周波数と同じ周波数を有する正弦波電気信号とミキシングして数値化処理後に信号処理にてベースバンド信号に処理される。交流成分をヒルベルト変換または90度ハイブリッドなどの手段を用いてsin成分を作成して逆正接をとることで交流成分の位相成分が算出される。上記(式1)において、cos項の位相成分に着目すると、第2項ΔωAτiは光周波数や光ファイバ固有に関係する初期位相項であり、コヒーレント光の光周波数が変化しない限り、時間に対して一定の定数である。第3項θ(t−τi)−θ(t)は光源の位相雑音を意味するが、遅延時間τiが非常に近い光ファイバ上の2地点の位相差を算出するため、光源のコヒーレンス長に対して2地点の遅延時間差τが非常に小さい場合、最終的にはほぼ無視できる。

0010

また、非特許文献2では、局発光を用いる代わりに試験光パルスの後段に周波数シフトされた別の試験光パルスを時間差を設けて入射し、これら複数の試験光パルスの後方散乱光同士の干渉をヘテロダイン検波する手法が提案されている。この手法では、光検波受信器で生じるビート信号の交流成分iAC(t)は、下記(式2)のように表される。

0011

0012

ここで、同様にcosの中の位相成分に着目すると、ωτi−(ω+ΔωA)τjが光周波数や光ファイバ固有に関係する初期位相項であり、コヒーレント光の光周波数が変化しない限り、時間に対して一定の定数となる。θ(t−τi)−θ(t−τj)は、光源の位相雑音を意味し、複数の試験光パルスに設けた時間差やパルス幅Wが光源のコヒーレンス長に対して遅延時間差|τi−τj|が非常に小さく、実際にはほぼ無視できる。

0013

以上のように、前述のいずれの手法においても、ヘテロダイン検波されるビート信号の交流成分からθFUT(τ)と定数である光周波数や光ファイバ固有に関係する初期位相項の和が得られ、これを繰り返し測定行うことで得られる測定結果は、時間的に変化するθFUT(τ)と初期位相定数がオフセットされた形として得られる。したがって時間的に変化するθFUT(τ)のみの情報が抽出され、被試験光ファイバに加わった振動振幅や振動周波数等の解析が可能となる。

先行技術

0014

G. Tu et al, “The development of an Φ-OTDRsystem for quantitative vibration measurement”, Photonics Technology letters, Vol.27, No.10, pp.1349-1352 (2015)
A. E. Alekseev et al, “A phase-sensitive optical time-domain reflectometer with dual-pulse diverse frequency probe signal”, Laser Physics, Vol.25, No.6 (2015)
K. Shimizu et al, “Characteristics and reduction of coherent fading noise in Rayleigh backscattering measurement for optical fibers and components”, Journal of Lightwave Technology, Vol.10, No.7, pp.982-987 (1992)

発明が解決しようとする課題

0015

しかしながら、非特許文献1および2のいずれの手段においても、前述のビート信号の交流成分が信号として扱われるが、図1に示すように、その元となる信号強度が被試験光ファイバの長さ方向に対してフェーディングにより大小を繰り返すために、信号強度が小さい部分については、光検出器雑音レベルに近い、あるいはそれを下回る場合があり、このような信号対雑音比が低い部分において算出される被試験光ファイバに加わる振動θFUT(τ)は、位相ノイズが大きく、例えば光検出器の雑音によって実際当該部分が振動していなくてもあたかも振動しているかのように検知されてしまうという問題がある。このようなフェーディングによって生じ、振動の誤検知の原因となる雑音は、フェーディング雑音と呼ばれている。

0016

フェーディングによるビート信号強度の大小は、光周波数や光ファイバ固有の状態によって一意的に決まるため、フェーディング雑音の発生は不可避である。フェーディングによる問題を解決するために、例えば非特許文献3に記載されているように、繰り返し入射する試験光パルスの光周波数を毎回変化させる手段もあるが、複数回のビート信号を平均化して用いることとなり、結果として振動の時間的サンプリング周波数を低下させてしまうという問題がある。

0017

本発明は、上記従来の問題に鑑みなされたものであって、本発明の課題は、被試験光ファイバからの後方散乱光を受信、解析することにより、光ファイバの各位置に加わる音波あるいは振動を計測する分布光ファイバ振動計測装置において問題となるフェーディング雑音の影響を低減することができ、高精度かつ高感度振動計測ができる分布光ファイバ振動計測装置を提供することにある。

課題を解決するための手段

0018

上記の課題を解決するために、一実施形態に記載の分布光ファイバ振動計測装置は、一体化された複数の被試験光ファイバのそれぞれに対して、第1の試験光パルスを入射し、前記複数の被試験光ファイバの各地点で発生した第1の後方散乱光をヘテロダイン検波することにより前記被試験光ファイバの各位置に加わる振動を計測する分布光ファイバ振動計測装置において、前記複数の被試験光ファイバの各地点で発生した前記第1の後方散乱光を前記第1の試験光パルスの光周波数とは異なる光周波数の別の光と干渉させて得られた2つの交流成分から位相定数差を求める位相定数差算出手段と、前記複数の被試験光ファイバの各地点で発生した前記第1の後方散乱光を前記別の光と干渉させて得られた2つの交流成分それぞれの振幅を比較して、各地点毎に振幅が大きい方の交流成分の位相データを選択して経時的に配列した位相分布データを作成する位相分布データ作成手段と、前記位相定数差と前記位相分布データから、前記被試験光ファイバの任意の2地点間の光路長差を特定することにより被試験光ファイバにおける振動を計測する振動計測手段とを備えることを特徴とする。

0019

他の一実施形態に記載の分布光ファイバ振動計測装置は、第1の試験光パルスと、前記第1の試験光パルスの光周波数とは異なる光周波数の第2の試験光パルスとを被試験光ファイバに対して入射し、前記被試験光ファイバの各地点で発生した第1の後方散乱光および第2の後方散乱光をヘテロダイン検波することにより前記被試験光ファイバの各位置に加わる振動を計測する分布光ファイバ振動計測装置において、前記第1の後方散乱光および前記第2の後方散乱光をそれぞれ前記第1の試験光パルスおよび前記第2の試験光パルスの光周波数とは異なる光周波数の別の光と干渉させて得られた2つの交流成分から位相定数差を求める位相定数差算出手段と、前記第1の後方散乱光および前記第2の後方散乱光をそれぞれ前記別の光と干渉させて得られた2つの交流成分それぞれの振幅を比較して、各地点毎に振幅が大きい方の交流成分の位相データを選択して経時的に配列した位相分布データを作成する位相分布データ作成手段と、前記位相定数差と前記位相分布データから、前記被試験光ファイバの任意の2地点間の光路長差を特定することにより被試験光ファイバにおける振動を計測する振動計測手段とを備えることを特徴とする。

0020

一実施形態に記載の分布光ファイバ振動計測方法は、一体化された複数の被試験光ファイバのそれぞれに対して、第1の試験光パルスを入射し、前記複数の被試験光ファイバの各地点で発生した第1の後方散乱光をヘテロダイン検波することにより前記被試験光ファイバの各位置に加わる振動を計測する分布光ファイバ振動計測方法において、前記複数の被試験光ファイバの各地点で発生した前記第1の後方散乱光を前記第1の試験光パルスの光周波数とは異なる光周波数の別の光と干渉させて得られた2つの交流成分から位相定数差を求める位相定数差算出ステップと、前記複数の被試験光ファイバの各地点で発生した前記第1の後方散乱光を前記別の光と干渉させて得られた2つの交流成分それぞれの振幅を比較して、各地点毎に振幅が大きい方の交流成分の位相データを選択して経時的に配列した位相分布データを作成する位相分布データ作成ステップと、前記位相定数差と前記位相分布データから、前記被試験光ファイバの任意の2地点間の光路長差を特定することにより被試験光ファイバにおける振動を計測する振動計測ステップとを備えることを特徴とする。

0021

他の一実施形態に記載の分布光ファイバ振動計測方法は、第1の試験光パルスと、前記第1の試験光パルスの光周波数とは異なる光周波数の第2の試験光パルスとを被試験光ファイバに対して入射し、前記被試験光ファイバの各地点で発生した第1の後方散乱光および第2の後方散乱光をヘテロダイン検波することにより前記被試験光ファイバの各位置に加わる振動を計測する分布光ファイバ振動計測方法において、前記第1の後方散乱光および前記第2の後方散乱光をそれぞれ前記第1の試験光パルスおよび前記第2の試験光パルスの光周波数とは異なる光周波数の別の光と干渉させて得られた2つの交流成分から位相定数差を求める位相定数差算出ステップと、前記第1の後方散乱光および前記第2の後方散乱光をそれぞれ前記別の光と干渉させて得られた2つの交流成分それぞれの振幅を比較して、各地点毎に振幅が大きい方の交流成分の位相データを選択して経時的に配列した位相分布データを作成する位相分布データ作成ステップと、前記位相定数差と前記位相分布データから、前記被試験光ファイバの任意の2地点間の光路長差を特定することにより被試験光ファイバにおける振動を計測する振動計測ステップとを備えることを特徴とする。

図面の簡単な説明

0022

本発明の第1の実施形態の分布光ファイバ振動計測装置を示すブロック構成図である。
本発明の第1の実施形態に係る試験光パルス送出シーケンスを示す図である。
本発明の第1の実施形態の分布光ファイバ振動計測装置を示すブロック構成図である。
本発明の第1の実施形態に係る試験光パルス送出シーケンスを示す図である。
本発明の第1の実施形態に係る演算処理装置における演算処理フローを示す図である。
本発明の第2の実施形態の分布光ファイバ振動計測装置を示すブロック構成図である。
本発明の第2の実施形態に係る試験光パルス送出シーケンスを示す図である。
本発明の第3の実施形態の分布光ファイバ振動計測装置を示すブロック構成図である。
本発明の第3の実施形態に係る試験光パルス送出シーケンスを示す図である。
本発明の第4の実施形態の分布光ファイバ振動計測装置を示すブロック構成図である。
本発明の第4の実施形態に係る試験光パルス送出シーケンスを示す図である。

実施例

0023

以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。

0024

実施形態で説明する分布光ファイバ振動計測装置は一体化された複数の被試験光ファイバのそれぞれに対して、光源からの光を周波数シフトさせた第1の試験光パルスを入射し、前記複数の被試験光ファイバの各地点で発生した第1の後方散乱光を、別の光と干渉させてヘテロダイン検波により前記被試験光ファイバの各位置に加わる振動を計測する分布光ファイバ振動計測装置において、前記複数の被試験光ファイバの各地点で発生した前記第1の後方散乱光を前記別の光と干渉させて得られた2つの交流成分から位相定数差を求める位相定数差算出手段と、前記複数の被試験光ファイバの各地点で発生した前記第1の後方散乱光を前記別の光と干渉させて得られた2つの交流成分それぞれの振幅を比較して、各地点毎に振幅が大きい方の交流成分の位相データを選択して経時的に配列した位相分布データを作成する位相分布データ作成手段と、前記位相定数差と前記位相分布データから、前記被試験光ファイバの任意の2地点間の光路長差を特定することにより被試験光ファイバにおける振動を計測する振動計測手段とを備える。

0025

また、実施形態で説明する分布光ファイバ振動計測装置は、光源からの光を、第1の周波数シフトさせた第1の試験光パルスと、第2の周波数シフトさせた第2の試験光パルスとを被試験光ファイバに対して入射し、前記被試験光ファイバの各地点で発生した第1の後方散乱光および第2の後方散乱光を、別の光と干渉させてヘテロダイン検波により前記被試験光ファイバの各位置に加わる振動を計測する分布光ファイバ振動計測装置において、前記第1の後方散乱光および第2の後方散乱光をそれぞれ前記別の光と干渉させて得られた2つの交流成分から位相定数差を求める位相定数差算出手段と、前記第1の後方散乱光および第2の後方散乱光をそれぞれ前記別の光と干渉させて得られた任意の2つの交流成分それぞれの振幅を比較して、各地点毎に振幅が大きい方の交流成分の位相データを選択して経時的に配列した位相分布データを作成する位相分布データ作成手段と、前記位相定数差と前記位相分布データから、前記被試験光ファイバの任意の2地点間の光路長差を特定することにより被試験光ファイバにおける振動を計測する振動計測手段とを備えることを特徴とする。

0026

この分布光ファイバ振動計測装置によれば、図2に示すように、2種類の信号のうちの信号強度の高いものを選択して採用することにより、信号対雑音比の高い信号を用いて振動検出ができるため、フェーディング雑音の影響が少なくなる。局発光と周波数シフトさせた試験光パルスの後方散乱光を利用し、局発光と後方散乱光の干渉をヘテロダイン検波する方式、あるいは、互いに周波数シフトした複数の試験光パルスを用いて後方散乱光同士の干渉をヘテロダイン検波する方式において、フェーディング雑音を低減した高精度かつ高感度な分布光ファイバ振動測定が可能となる。さらにこの分布光ファイバ振動計測装置によれば、フェーディング雑音にも関与し、低周波の振動を測定する際に雑音要因となる光周波数ドリフトによる雑音の低減にも寄与することができる。

0027

(第1の実施形態)
図3は第1の実施形態の分布光ファイバ振動計測装置を示すブロック構成図である。本実施形態の分布光ファイバ振動計測装置では、単一光源からの光を分岐して試験光と局発光として用い、2本の異なる被試験光ファイバに同時に試験光を入射して得られる後方散乱光を局発光と合波してヘテロダイン検波を行い、光検出手段から2つの電気信号の交流成分を取得する。

0028

コヒーレント光を発する光源1からの出力光は分岐素子2で2系統に分岐される。分岐された光の一方は局発光として用いられ、他方は試験光として光周波数制御手段3に入射される。この光周波数制御手段3は、試験光と局発光の間に周波数シフトΔωAを付与する。

0029

光周波数制御手段3からの試験光は光パルス化手段5で単一パルス化され、光増幅器6、分岐素子8を介して2本の被試験光ファイバ10に入射される。光パルス化手段5はパルス信号発生手段7からの駆動信号により駆動される。被試験光ファイバ10で発生した後方散乱光は光サーキュレータ9を介して、分岐素子11から供給される局発光と合波された後に、バランス型光受信手段12、13で電気信号に変換される。バランス型光受信手段12、13は、後方散乱光を局発光と合波してヘテロダイン検波を行い、2つの電気信号の交流成分を取得することができる。

0030

バランス型光受信手段12、13からの出力は、一部が分岐されてミキサ18でミキシングした後にフィルタ17を介して高周波成分を除去した後に、数値化手段14でデジタル信号に変換され、演算処理手段15にて信号処理される。また、バランス型光受信手段12、13の出力信号は、ミキサ18への入力と同様に数値化手段14に入力されており、数値化手段14でデジタル信号に変換され、演算処理手段15にて信号処理される。

0031

演算処理手段15で信号処理された結果は、表示手段16において適宜表示される。

0032

ここで、2本の被試験光ファイバは、受ける振動が同じになるように一体化されている必要がある。一体化とは、2本の被試験光ファイバの受ける振動が同じとなるように物理的に拘束された状態である。具体的には、例えば光ファイバテープのように同じ被覆樹脂バンドル化されているもしくはタイトケーブル化されていてもよく、あるいはマルチコア光ファイバのように複数の導波構造を有する光ファイバを用いてもよい。

0033

ここで、光周波数制御手段3は、具体的には駆動源となる駆動手段4からの電気信号に応じて光周波数を変化させる機能をもつ外部変調器であればよく、音響光学スイッチやLiNbO3を用いた位相変調器振幅変調器SSB−SC(搬送波抑圧単側波帯変調器がその機能を持つことは良く知られている。

0034

光パルス化手段5は、試験光をパルス化する機能があればよく、高速可変減衰器半導体光増幅器、音響光学スイッチなどがその機能を持つことは良く知られている。なお、光パルス化手段5は、音響光学スイッチを用いて、光周波数制御手段3の機能を兼ねることや、半導体光増幅器を用いて、光増幅器6の機能を兼ねることも可能である。

0035

図4は、本実施例に係る試験光パルスの送出シーケンスを示したものである。光源1からの光の光周波数はωであり、光周波数制御手段3によって周波数シフトされたω+ΔωAの光周波数を有する試験光パルスが、光パルス化手段5によりパルス幅Wで繰り返しパルス化され、光増幅器6で増幅され、分岐素子8で分岐された後、2本の被試験光ファイバ10へと送出されている。

0036

試験光パルスの繰り返し時間は、被試験光ファイバ10の最大長さの往復伝搬遅延時間と同じかそれよりも長く設定されている。

0037

ここで、2つのバランス型光受信手段12、13から出力されるビート電気信号の交流成分I1(t)とI2(t)は、光源からのコヒーレント光の出力時間tおよび光周波数ω、周波数シフトΔωA、試験光パルスのパルス幅Wに対して、それぞれ以下の(式3)、(式4)で与えられる。

0038

0039

0040

ここで、EL、ESはそれぞれ局発光および試験光の電界振幅、Nは被試験光ファイバの長さ方向に存在する散乱体の数、i(1≦i≦N)は散乱体の番号、ai、biは各散乱体iの反射率、τiは被試験光ファイバの入射端から散乱体iまでの往復伝搬遅延時間、θ(t)は試験光の初期位相、θFUT(τ)は被試験光ファイバに加わる振動によって生じる位相変化であり、測定対象である。R1(t)、R2(t)は各々の被試験光ファイバの後方散乱係数分布であり、ΔθL(t)は試験光パルスの出力時と局発光との干渉時における光の初期位相差、すなわちレーザの位相雑音を意味し、2本の被試験光ファイバの間で同じである。θFUT(τ)は前提条件により、同様に2本の被試験光ファイバの間で同じである。θ1およびθ2はそれぞれフェーディングによる位相定数であり、各被試験光ファイバの間でフェーディングによる干渉条件、つまり光ファイバを形成する散乱体が異なるため、互いに異なる定数となる。

0041

(式3)および(式4)の交流成分は、数値化手段14によりデジタル信号に変換され、演算処理手段15に入力される。なお、本実施形態では、交流成分の周波数はΔωAであり、2つのバランス型光受信手段12、13や数値化手段14は、ナイキストの定理より、2ΔωA以上の帯域が必要となる。

0042

2つのバランス型光受信手段12、13の後段の数値化手段14による処理の前において、分岐された各々の電気信号は、ミキサ18で合成される。この合成された交流信号である合成交流信号は、交流成分の積で与えられ、下記(式5)のようになる。

0043

0044

ここで、φ1,2=θ1−θ2である。合成交流信号のスペクトルは、(式5)を見てもわかるように、光周波数制御手段3で付与した周波数シフトΔωAの倍周波数を中心とする信号成分と直流付近に|θ1−θ2|の位相定数差に応じて振幅変調された信号成分から構成されていることがわかる。この直流成分は、ローパスフィルタ(フィルタ17)を用いて容易にΔωAの倍周波数を中心とする信号成分と分離可能である。

0045

次に、i(i=1,2)を交流成分の番号と置くと、(式3)および(式4)に示す2つの交流成分からその各々に対する振幅Ai(t)および位相Pi(t)は以下の(式6)、(式7)で与えられる。

0046

0047

0048

ここで、H{I(t)}は信号I(t)のヒルベルト変換を意味し、I(t)を90度位相シフトさせた直交信号である。同様に、合成交流信号の直流成分をヒルベルト変換することで、直流成分から位相定数差φ1,2を知ることが出来る。

0049

なお、上記の説明では、(式3)〜(式5)で表される電気信号から全てデジタル信号処理のヒルベルト変換によって振幅および位相を取得しているが、例えばバランス型光受信手段12、13の代わりに光90度ハイブリッドを用いてもよく、または、バランス型光受信手段12、13の後段において電気90度ハイブリッドによってアナログ信号回路により抽出される形態でもよい。

0050

また、(式5)で示された合成交流信号は、アナログ信号回路のミキシングの代わりにデジタル信号処理にて合成されてもよい。この場合、図3におけるミキサ18とフィルタ17は省略することができる。

0051

さらに、上記の説明では、合成交流信号の直流成分を用いたが、周波数シフトΔωAの倍周波数を中心とする信号成分をハイパスフィルタによって取り出し、この信号成分からΔωAのモニタリングが可能である。このことは、モニタリングしたΔωAを用いて、(式7)の処理に適用することで、固定の周波数シフトΔωAを前提とする代わりに、光周波数制御手段3において周波数ドリフトが存在し、ΔωAがゆるやかに変化する場合にその補償にも用いることができる。この場合には、(式5)の合成交流信号を正しく取得するために数値化手段14の帯域は4ΔωA以上が必要となることに注意が必要である。

0052

図5は、第1の実施形態に係る分布光ファイバ振動計測装置の演算処理手段における演算処理フローを示したものである。

0053

数値化手段14における電気信号のサンプリング(S301)後に、(式3)〜(式7)の処理によって、各交流成分毎に振幅と位相分布データが作成される(S302)とともに、合成交流成分から位相定数差φnの分布データが作成される(S304)。

0054

S302の処理の後、さらに、2つの交流成分の振幅を比較し、大きい方の交流成分を選択し、その位相データを経時的に配列化する(S303)。S303では、フェーディングにより、被試験光ファイバの各地点においてどちらが選択されるかはランダムであるが、選択により、より信号対雑音比が高い信号から位相データが作成される。

0055

S303、S304の処理後、被試験光ファイバの同じ地点、すなわち同じ往復伝搬遅延時間における位相の変化量Dn(t)を算出する(S305)。具体的には、1回前の試験光パルスを入射した際に、得られた位相との差分を計算するが、この際、(n−1)回目の入射で得られた位相の元データとなる交流成分とn回目の入射で得られた位相の交流成分が異なる場合には、それらの位相間にはS304で算出した位相定数差があるため、この位相定数差をさらに位相の変化量から相殺する処理を行う。なお、図5には、位相定数差φnとしてφ1,2=θ1−θ2を用いた場合の数式を示しているが、位相定数差φnとしてφ2,1=θ2−θ1を用いた場合には、φnを加減算する際の符号を逆にすればよい。こうして得られた位相変化量Dn(t)は、さらにS306において、被試験光ファイバの隣接する任意の2地点、すなわち微小な往復伝搬遅延時間差Δtを有する2つの位相変化量Dn(t)同士の差分が、任意区間における位相差変化ΔDn(t)として最終的に出力される。試験光パルスを繰り返し入射することで得られる位相差変化ΔDn(t)が被試験光ファイバの隣接する任意の2地点間の光路長差の時間変化、すなわちひずみ量の時間変化となり、これが振動に対応する。

0056

なお、本実施形態では、前記演算処理ステップとしてS305の処理の後S306の処理を実行する順序で説明をしたが、S306の処理の後にS305の処理を実行してもよい。具体的には、S303において信号対雑音比が高い位相データを配列化した後に、S306において任意の2地点の位相差を算出し、S305においてその位相差の時間変化を算出する方法である。これはS305およびS306のステップでは、位相および位相定数差の値を単純に減算計算しているに過ぎないことから容易に理解できる。

0057

以上のように、2つの異なる交流成分を2本の被試験光ファイバから取得することで、位相を算出する元信号となる交流成分が1回前の位相を算出する信号と異なる場合に発生する位相定数差を合成交流成分から求めて補償することにより、より信号対雑音比が高いデータを選択できるようになり、高精度な振動計測が可能となる。なお、本実施例では、2本の被試験光ファイバの場合について説明したが、複数の電気信号を取得する受信構成があれば、合成交流信号の組み合わせ数も同様に増やすことを前提として、2本以上の被試験光ファイバでも実施が可能である。

0058

(第2の実施形態)
図6は第2の実施形態の分布光ファイバ振動計測装置を示すブロック構成図である。本実施形態の分布光ファイバ振動計測装置は、試験光として、光周波数が異なり時間差を有する2つのパルスを被試験光ファイバに入射して得られる後方散乱光同士の干渉を光検波手段でヘテロダイン検波し、これを2本の異なる被試験光ファイバに対して行うことで2つの電気信号の交流成分を取得するものであり、第1の実施形態で用いた局発光は必要としないものである。すなわち、2つの電気信号の交流成分の取得手段が第1の実施形態と異なるものであって、以降はこの変更に伴う構成および信号処理の異なる点のみについて述べる。

0059

コヒーレント光を発する光源1からの出力光は試験光として光周波数制御手段3に入射される。この光周波数制御手段3は、所定の時間間隔で光周波数を2段階に変調する。この時の光周波数差はΔωAである。試験光に対して、光パルス化手段5で第1の光周波数ωおよび第2の光周波数ω+ΔωAを有する2つのパルスを形成し、光増幅器6および分岐素子8を介して2本の被試験光ファイバ10に入射する。

0060

前記被試験光ファイバ10で発生した後方散乱光は光サーキュレータ9を介して、光増幅器21および光増幅器22で前置増幅された後に、前記光増幅器21、22の自然放出光を除去するための光フィルタ23および24を介して、光検波手段25、26で電気信号に変換される。光検波手段25、26は、互いに光周波数が異なる2つの後方散乱光を合波してヘテロダイン検波を行い、光検波手段25、26から2つの電気信号の交流成分を取得することができる。

0061

光検波手段25、26の2つの出力の一部は分岐されてミキサ28に入力され、ミキサ28で合波された後、フィルタ27を介して高周波成分を除去した後に、数値化手段14でデジタル信号に変換され、演算処理手段15にて信号処理される。また、光検波手段25、26の2つの出力信号は、分岐されミキサ28へ入力すると同様に数値化手段14に入力されており、数値化手段14でデジタル信号に変換され、演算処理手段15にて信号処理される。

0062

図7は、本実施形態に係る試験光パルスの送出シーケンスを示したものである。光源1からの光の光周波数ωと、光周波数制御手段3によって周波数シフトされたω+ΔωAの光周波数を有する2つの試験光パルスが、所定の時間差tdを有して繰り返し送出されている。2つの試験光パルスのパルス幅はWで同じである。試験光パルスの繰り返し時間は、被試験光ファイバ10の最大長さの往復伝搬遅延時間と同じかそれよりも長く設定されている。

0063

ここで、光検波手段25、26から出力されるビート電気信号の交流成分I1(t)とI2(t)は、光源1からのコヒーレント光の出力時間tおよび光周波数ω、周波数シフトΔωA、試験光パルスのパルス幅Wに対して、それぞれ以下の(式8)、(式9)で与えられる。

0064

0065

0066

ここで、ESは試験光の電界振幅、Nは被試験光ファイバの長さ方向に存在する散乱体の数、i(1≦i≦N)は散乱体の番号、ai、biは各散乱体iの反射率、τiは被試験光ファイバの入射端から散乱体iまでの往復伝搬遅延時間、θ(t)は試験光の初期位相、θFUT(τ)は被試験光ファイバに加わる振動によって生じる位相変化であり、測定対象である。R1(t)、R2(t)は各々の被試験光ファイバの後方散乱係数分布であり、θFUT(τ)は前提条件により、同様に2本の被試験光ファイバの間で同じである。ここで、各々の被試験光ファイバに入射される2つの試験光パルスの時間差が、光源のコヒーレンス長よりも十分短い時、レーザの位相雑音を意味するθ(t−τi)−θ(t−τj)は非常に小さいため、無視できる。θ1およびθ2はそれぞれフェーディングによる位相定数であり、各被試験光ファイバの間でフェーディングによる干渉条件、つまり光ファイバを形成する散乱体が異なるため、互いに異なる定数となる。

0067

(式8)および(式9)を見て分かるように、各交流成分の式の形は、その位相項に着目すれば、レーザの位相雑音を意味する項がこの段階でほぼ無視可能であることを除いて、第1の実施形態の場合とほぼ同様と見ることができる。

0068

光検波手段25、26の後段において、分岐された各々の電気信号は、ミキサ28において合成された後、フィルタ27にて高周波成分を除去される。ミキサ28において合成された合成交流信号は、交流成分の積で与えられ、以下のようになる。

0069

0070

合成交流信号も同様に、その位相項に着目すれば、レーザの位相雑音を意味する項がこの段階でほぼ無視可能であることを除いて、第1の実施形態の場合と同様に扱うことができる。したがって、本実施形態の演算処理手段における演算処理フローは、図5を参照するに、S306の演算ステップが不要である以外は、第1の実施形態と同様である。これは、本実施形態では、各々の被試験光ファイバに入射される2つの周波数の異なる試験光パルスに時間差を設けているため、この時間差に該当する被試験光ファイバの任意区間の位相変化は、既に(式8)および(式9)で算出される各交流成分で信号θFUT(τ)として扱われているためである。

0071

以上のように、第1の実施形態と異なり、局発光の代わりに周波数の異なる試験光パルスを時間差を設けて入射して得られた複数の後方散乱光同士の干渉を交流成分として測定する本実施形態においても、精度よく振動計測が実施可能となる。

0072

(第3の実施形態)
図8は第3の実施形態の分布光ファイバ振動計測装置を示すブロック構成図である。本実施形態の分布光ファイバ振動計測装置は、光源からの光を分岐して試験光と局発光として用い、この局発光の周波数に対して複数の異なる値だけ周波数シフトした試験光(周波数多重化された試験光)を所定の時間間隔で生成し、1本の被試験光ファイバにこれらの試験光を入射して得られる後方散乱光を局発光と合波してヘテロダイン検波を行い、得られた電気信号を数値化処理した後に、デジタル信号処理を用いて周波数分離を行い、2つの交流成分を取得するものである。第1の実施形態および第2の実施形態と異なる点は、2本の被試験光ファイバや2つのバランス型光受信手段(または2つの光検波手段)を用いる代わりに周波数多重化された試験光をデジタル信号処理で分離する点にあって、以降はこの変更に伴う構成および信号処理の異なる点のみについて述べる。

0073

コヒーレント光を発する光源1からの出力光は分岐素子2で2系統に分岐される。分岐された光の一方は局発光として用いられ、他方は試験光として光周波数制御手段3に入射される。この光周波数制御手段3は、所定の時間間隔で光周波数を2段階に変調(異なる値だけ周波数シフト)する。試験光に対して、光パルス化手段5で光周波数ω+ω1を有する第1の試験光パルスおよび光周波数ω+ω2を有する第2の試験光パルスの2つを形成し、光増幅器6を介して被試験光ファイバ10に入射する。

0074

被試験光ファイバ10で発生した後方散乱光は光サーキュレータ9を介して、バランス型光受信手段12で電気信号に変換され、数値化手段14でデジタル信号に変換され、演算処理手段15にて信号処理される。バランス型光受信手段12は、1本の被試験光ファイバに試験光(第1の試験光パルスおよび第2の試験光パルス)を入射して得られる後方散乱光を局発光と合波してヘテロダイン検波を行い、電気信号に変換する。

0075

図9は、本実施形態に係る試験光パルスの送出シーケンスを示したものである。光源1から光周波数制御手段3によって周波数シフトされた光周波数ω+ω1と、ω+ω2の光周波数を有する2つの試験光パルスが、所定の時間差tdを有して繰り返し送出されている。2つの試験光パルス(第3の試験光パルス、第4の試験光パルス)のパルス幅はWで同じである。試験光パルスの繰り返し時間は、被試験光ファイバ10の最大長さの往復伝搬遅延時間と同じかそれよりも長く設定されている。

0076

ここで、バランス型光受信手段12から出力され、数値化手段14で数値化処理された後、演算処理手段15において、ビート電気信号をデジタルフィルタを採用して、ω1とω2のビート周波数を有する2つの信号に分離する。この時分離されて得られる2つの信号の交流成分I1(t)とI2(t)は、光源1からのコヒーレント光の出力時間tおよび光周波数ω、周波数シフトがω1およびω2、試験光パルスのパルス幅Wに対して、それぞれ以下の(式11)、(式12)で与えられる。

0077

0078

0079

ここで、EL、ESはそれぞれ局発光および試験光の電界振幅、Nは被試験光ファイバの長さ方向に存在する散乱体の数、i(1≦i≦N)は散乱体の番号、aiは散乱体iの反射率、τiは被試験光ファイバの入射端から散乱体iまでの往復伝搬遅延時間、θ(t)は試験光の初期位相、θFUT(τ)は被試験光ファイバに加わる振動によって生じる位相変化であり、測定対象である。R1(t)、R2(t)は各々ω1、ω2における被試験光ファイバの後方散乱係数分布である。ΔθL(t)は試験光パルスの出力時と局発光との干渉時における光の初期位相差であり、レーザの位相雑音を意味し、第1実施形態および第2の実施形態と同様、最終的には無視できる。

0080

ここで、本実施形態に係る2つの交流成分は、第1の試験光パルスによる後方散乱光と局発光の干渉と、時間的にtdだけ時間差を設けて入射された第2の試験光パルスによる後方散乱光と局発光の干渉の結果を意味しており、tdだけ時間的に異なる振動の影響、すなわちそれぞれθFUT(τ)とθFUT(τ−td)を含む信号となる。θ1およびθ2はそれぞれフェーディングによる位相定数であり、第1の試験光パルスと第2の試験光パルスの光周波数が異なることから、互いに異なる定数となる。

0081

今、測定可能な振動周波数をTとすると、td<<1/Tが成立する場合、すなわち振動周期に対して時間差tdが非常に小さい場合には、θFUT(τ)≒θFUT(τ−td)として扱うことができる。具体例として、測定可能な最大振動周波数を人間の可聴音域の上限である20kHz、td=200nsとすれば、振動周期50μsに対して、250分の1の時間差に対応することから、位相変化量に換算して最大でも約0.03radであり、これは無視できるほど小さいことが分かる。

0082

(式11)および(式12)に示す交流成分は、演算処理手段15においてデジタル信号処理により合成される。この合成交流信号は、交流成分I2(t)が入射時間差tdだけ時間シフトしていることを考慮しこれを補正し、さらにθFUT(τ)≒θFUT(τ−td)を用いて、以下のようになる。

0083

0084

(式13)で示す合成交流信号は、第1の試験光パルスおよび第2の試験光パルスに与えた光周波数シフトの和ω1+ω2の周波数成分と、差ω1−ω2の周波数成分から構成されていることが分かる。これらをローパスフィルタを用いて差ω1−ω2の周波数成分を抽出する。第1の実施形態および第2の実施形態と同様に、90度シフトした直交成分を用いて位相項を取り出し、第1の試験光パルスおよび第2の試験光パルスに与えた光周波数シフトω1およびω2は既知であるため、これを減算することで位相定数差φ1,2を知ることが出来、以降は第1の実施形態の場合と同様に扱うことができる。

0085

ここで、受信帯域の設計として、試験光パルスの信号帯域が2/Wであることを考慮すると、|ω1−ω2|≧1/Wとなるような条件で第1の試験光パルスおよび第2の試験光パルスの光周波数を設計する必要がある。また、バランス型光受信手段12および数値化手段14の帯域は、ナイキストの定理より、2(ω1+ω2)以上とする必要がある。

0086

以上のように、第1の実施形態と異なり、周波数多重された試験光を生成し、1本の被試験光ファイバに同時に異なる周波数の試験光を入射して得られる後方散乱光を局発光と合波してヘテロダイン検波を行い、1つの光検出手段(バランス型光受信手段12)からデジタル信号処理を用いて周波数分離を行い2つの交流信号を取得する本実施形態においても、精度よく振動計測が実施可能となる。

0087

なお、本実施形態においても、時間差tdが振動周期に比べて非常に小さい条件であれば、多重する周波数は2より多くてもよく、この場合、合成交流信号の組み合わせ数も同様に増やすことを前提にすれば、3以上の周波数多重でも実施が可能である。

0088

本実施形態によれば、2以上の被試験光ファイバや光検出手段を用いることが無く実施可能であるため、第1の実施形態や第2の実施形態と比較して構成を単純化することができ、経済的な装置を提供することが可能である。

0089

(第4の実施形態)
図10は第4の実施形態の分布光ファイバ振動計測装置を示すブロック構成図である。本実施形態の分布光ファイバ振動計測装置は、所定の時間間隔で周波数符号化した試験光を用い、被試験光ファイバに試験光を入射して得られる後方散乱光同士の干渉を光検波手段で受信し、数値化処理した後にデジタル信号処理により任意の2つの交流成分に周波数分離するものである。第3の実施形態との違いは、第3の実施形態の第1の試験光パルスおよび第2の試験光パルスに相当する信号がそれぞれ周波数多重され符号化された試験光パルスを用いている点である。すなわち、2つの電気信号の交流成分の取得手段が第3の実施形態と異なるものであって、以降はこの変更に伴う構成および信号処理の異なる点のみについて述べる。

0090

コヒーレント光を発する光源1からの出力光は試験光として光周波数制御手段3に入射される。この光周波数制御手段3は、所定の時間間隔で光周波数を4段階に変調する。試験光に対して、光パルス化手段5で4段階に変調された周波数成分を含む1つの試験光パルス(第3の試験光パルス、第4の試験光パルス、第5の試験光パルス、および第6の試験光パルスが連続して形成される1つの試験光パルス)を形成し、光増幅器6を介して被試験光ファイバ10に入射する。被試験光ファイバ10で発生した後方散乱光は光サーキュレータ9を介して、光増幅器30で前置増幅された後に、光増幅器30の自然放出光を除去するための光フィルタ31を介して、光検波手段32で電気信号に変換され、数値化手段14でデジタル信号に変換され、演算処理手段15にて信号処理される。

0091

図11は、本実施形態に係る試験光パルスの送出シーケンスを示したものである。光源1からの光は、所定の時間間隔WでωA、ωB、ωA+ω1、ωB+ω2の4段階に変調されている。試験光パルスの繰り返し時間は、被試験光ファイバ10の最大長さの往復伝搬遅延時間と同じかそれよりも長く設定されている。

0092

ここで、受信帯域の設計として、試験光パルスの各周波数成分の信号帯域が2/Wであることを考慮すると、|ω1−ω2|≧1/Wとなるような条件である必要がある。また、光検波手段32および数値化手段14の帯域は、ナイキストの定理より、2(ω1+ω2)以上とする必要がある。さらに、ωAとωBとの差は、光検波手段32および数値化手段14の受信帯域よりも大きい必要がある。このように設計することで、光検波手段32において、(ωAとωA+ω1との差周波成分である)ω1と(ωBとωB+ω2との差周波成分である)ω2のビート周波数成分が検出される。

0093

ここで、光検波手段32から出力され、数値化手段14で数値化処理された後、演算処理手段15において、ビート電気信号をデジタルフィルタを採用して、ω1とω2のビート周波数を有する2つの信号に分離を行う。この時分離された得られる2つの信号の交流成分I1(t)とI2(t)は、光源からの前記コヒーレント光の出力時間tに対して、それぞれ以下の(式14)、(式15)で与えられる。

0094

0095

0096

ここで、ESは試験光の電界振幅、Nは被試験光ファイバの長さ方向に存在する散乱体の数、i(1≦i≦N)は散乱体の番号、aiは散乱体iの反射率、τiは被試験光ファイバの入射端から散乱体iまでの往復伝搬遅延時間、θ(t)は試験光の初期位相、θFUT(τ)は被試験光ファイバに加わる振動によって生じる位相変化であり、測定対象である。R1(t)、R2(t)は各々ωA、ωBにおける被試験光ファイバの後方散乱係数分布である。ここで、被試験光ファイバに入射されるωAとωBの周波数成分の時間差Wが、光源のコヒーレンス長よりも十分短い時、レーザの位相雑音を意味するθ(t−τi)−θ(t−τj)およびθ(t−W−τi)−θ(t−W−τj)は非常に小さいため、無視できる。θ1およびθ2はそれぞれフェーディングによる位相定数であり、2組の試験光パルスの光周波数が異なることから、互いに異なる定数となる。

0097

今、測定可能な振動周波数をTとすると、W<<1/Tが成立する場合、すなわち振動周期に対して時間差Wが非常に小さい場合には、θFUT(τ)≒θFUT(τ−W)として扱うことができる。具体例として、測定可能な最大振動周波数を人間の可聴音域の上限である20kHz、W=200nsとすれば、振動周期50μsに対して、250分の1の時間差に対応することから、位相変化量に換算して最大でも約0.03radであり、これは無視できるほど小さいことが分かる。

0098

(式14)および(式15)に示す交流成分は、演算処理手段15においてデジタル信号処理により合成される。この合成交流信号は、交流成分i2(t)が入射時間差Wだけ時間シフトしていることを考慮しこれを補正し、さらにθFUT(τ)≒θFUT(τ−W)を用いて、下記(式16)のようになる。

0099

0100

(式16)で示す合成交流信号は、2組の試験光パルスに与えた光周波数シフトの和ω1+ω2の周波数成分と、差ω1−ω2の周波数成分から構成されていることが分かる。これらをローパスフィルタを用いて差ω1−ω2の周波数成分を抽出する。第1および第2の実施形態と同様に、90度シフトした直交成分を用いて位相項を取り出し、光周波数シフトω1およびω2は既知であるため、これを減算することで位相定数差φ1,2を知ることが出来、以降は第2の実施形態の場合と同様に扱うことができる。

0101

第1の実施形態から第4の実施形態で説明した分布光ファイバ振動計測装置によれば、取得手段は異なるものの、試験光パルスの光周波数、または被試験光ファイバ、あるいはその双方が異なる条件において、2つの交流成分を取得することで、その合成交流成分からフェーディングに由来する位相定数差を知ることができる。このことは、2つの交流成分の振幅を比較することにより信号対雑音比の高い交流成分を選択し、これを時間方向、すなわち試験光パルスの入射繰り返し毎に選択された交流成分の位相の時間変化を算出する際に、選択された交流成分そのものが変化したとしても、位相定数差の違いを補正することができ、2つの交流成分を用いてよりフェーディング雑音の影響を受けにくい高精度な振動計測が実施可能となる。

0102

また、後方散乱光の干渉から位相を算出する実施形態に記載の分布光ファイバ振動計測装置によれば、光源や光周波数制御手段における光周波数ドリフトが存在する場合、交流成分あるいは合成交流成分から位相を算出する過程、および時間に対する位相変化を算出する過程において、位相誤差を大きくする直接的な要因となるが、第1の実施形態の中で述べたように、合成交流成分の高周波成分を除去すること無くビート周波数をモニタリングする手段を講じることで、他の実施形態においても同様に、前記光周波数ドリフトを補正することも可能である。

0103

なお、第1の実施形態から第4の実施形態において、演算処理手段15は、コンピュータプログラムとによっても実現でき、プログラムを記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。

0104

また、上記実施形態例に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種種の発明を形成できる。例えば、実施形態例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除しても良い。更に、異なる実施形態例に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。

0105

1光源
2分岐素子
3光周波数制御手段
4 駆動手段
5光パルス化手段
6光増幅器
7パルス信号発生手段
8 分岐素子
9光サーキュレータ
10被試験光ファイバ
11 分岐素子
12、13バランス型光受信手段
14数値化手段
15演算処理手段
16 表示手段
17、27フィルタ
18、28ミキサ
23、24光フィルタ
25、26光検波手段
21、22、30 光増幅器
31 光フィルタ
32 光検波手段

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