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技術 癌及び前癌病変に対する治療剤、治療方法、及び治療薬剤製造方法

出願人 ファミアナ・ヘルス・サイエンス・インク
発明者 沼田雅行ファン・ハンイアイディ・リ
出願日 2018年5月4日 (2年1ヶ月経過) 出願番号 2018-554579
公開日 2019年7月18日 (11ヶ月経過) 公開番号 2019-520310
状態 不明
技術分野
  • -
主要キーワード 大気中二酸化炭素 ハイドロキシ基 体表近傍 密閉装置 受診患者 熟練技術 ピリチオン化合物 冷却層
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (12)

課題・解決手段

本発明はピリチオン化合物薬理的に許容され得るピリチオン塩を使用する成分と方法を開示する。本発明は局所療法による皮膚癌治療子宮頚癌治療、その他の癌の治療、皮膚前癌病変からの皮膚癌発症の予防、パピローマウイルス感染症からの子宮頚癌発症の予防、パピローマウイルス感染症からその他の癌の発症の予防の方法を開示する。更に、本発明においてはピリチオン化合物の少なくとも一種類、EDTAアスコルビン酸アスコルビン酸塩のいずれか、アスコルビン酸誘導体のいずれか、ピリドキシン、ピリドキシン誘導体、薬理的に許容され得る緩衝剤を含む薬剤成分を開示する。薬剤成分のpHは4.5から6.4の間であるとする。

概要

背景

悪性腫瘍は全世界で主要な死因の一つである。国際がん研究機構が2012年に行った統計によると、全世界における年間癌発症者総数は2012年では1400万人以上であったが、これが2030年には2000万人以上にまで増加すると予想される。同様に全世界における年間癌死亡者総数は2012年においては800万人であったが、これが2030年には1300万人以上にまで増加すると予想される。

化学療法外科手術、及び放射線療法が、悪性腫瘍に対する最も一般的な治療戦略である。癌研究領域は顕著な進歩を遂げたものの、現在の治療法には数々の問題点があり、それらを改善する必要がある。一例として、伝統的化学療法の多くはDNA(デオキシリボ核酸)に化学損傷を与えて、癌細胞の高い増殖活性細胞分裂阻害することを目標に治療が行われる。DNAは癌細胞及び正常細胞共に有する遺伝情報青写真であるため、このような従来の化学療法はしばしば癌細胞以外の正常細胞にも損傷を与えて重篤副作用を引き起こす。その他の化学療法剤には、細胞構成タンパク質のうち細胞増殖や細胞分裂に関わるものを標的にしているものもあるが、これらの化学療法剤も骨髄や細胞分裂のさかんな腸管細胞等癌細胞以外の正常細胞に対して非特異的な毒性を発揮する。より最近になって、癌細胞のみに存在し正常細胞には存在しないような癌特異分子を標的にする治療薬が注目を集めてきた。細胞成長因子受容体阻害剤エルロチニブゲフィチニブが癌特異分子を標的にする治療剤の好例である。しかし、全ての癌細胞が十分なレベル成長因子受容体を持っているわけではない。また、癌特異分子標的療法に治療開始当初治療効果を奏した症例でも、抑制された成長因子受容体の働きを相補する他の機序が作動することでいずれは癌細胞が治療抵抗性を獲得する傾向がある。外科療法は孤立した悪性腫瘍を除去する上では効果的かもしれないが、再発外科手技によっておこる癌の他の身体部位への浸潤が大きな問題である。更に外科手術は、出血瘢痕形成感染症、正常臓器損傷を起こしうる。放射線療法も正常組織障害や二次発癌の危険があり、長期的な美容上の危険もある。化学療法は、特に経静脈的・経口的に行われた場合、先に述べた多くの重篤な副作用を起こし得る。新たな抗癌治療方法の開発が強く必要とされる。

悪性腫瘍は単なる癌細胞の寄せ集めではない。腫瘍細胞の周囲を取り囲む正常組織と正常細胞が独特の環境(時に「腫瘍微小環境」とも呼ばれる)を形成して癌細胞の増殖、浸潤、転移を促進するのである。酸は腫瘍微小環境の最も重要な要素の一つである。腫瘍微小環境は、腫瘍のない環境に比べて酸性度がより強い。腫瘍細胞から細胞外に放出された酸性代謝物が腫瘍微小環境の酸の根源であり、これが化学・射線療法治療効率の低下を来し、更には腫瘍の増殖及び浸潤を促進する。酸性環境悪性腫瘍治療魅力的な標的である。酸性環境で増殖する腫瘍細胞増殖を効率的に抑制する治療法は有望な新しい治療法になることが予想される。

それ自体は癌ではないが癌に進展する危険性が高い病態は「前癌病変」と呼ばれる。前癌病変に伴う持続的で制御不能炎症反応の結果、前癌病変部位では癌が発症する以前に酸性度の高い環境が形成される。酸性環境は、遺伝情報の変化と癌の発症を促進する(非特許文献1:Coussens and Werb, 2002)。いったん悪性腫瘍細胞が発生すると、酸性環境下で悪性腫瘍細胞が正常細胞に比べてより選択的に増殖するので、酸性化が更に亢進することになる。酸性環境下で悪性腫瘍が正常細胞よりも選択的に増殖すること以外に、過剰な酸によって免疫細胞活性が弱められることによっても癌化の可能性が高められる(非特許文献2:Lardner, 2001)。

日光角化症パピローマウイルス感染症は前癌病変の好例である。 日光角化症は過剰な紫外線暴露により引き起こされるざらざらした鱗片病変であり、米国の皮膚科外来受診患者の10パーセントを占める最も頻繁に診断される皮膚病の一つである。日光角化症はしばしば皮膚癌の原因となり、ある研究結果によると65パーセントの扁平上皮癌、36パーセントの基底細胞癌は日光角化症が原因で発症するとも言われている(非特許文献3:Criscione et al., 2009)。凍結手術抗癌化学療法剤経皮投与が日光角化症の主な治療法である。しかし、日光角化症は癌化する前は生命に影響を及ぼすような疾患ではない。癌化には10年かそれ以上の年月が必要であり、しばしば複数の日光角化症が同一患者出現し、どの日光角化症が侵襲性の癌に進展するのかを予想することは難しい。これらの事実が日光角化症の治療を難しくしている。

パピローマウイルス感染症は子宮頚部女性生殖器外表部、肛門陰茎及び口腔で起こる。世界保健機構(WHO)によると、パピローマウイルス感染症は性的接触によって伝染するウイルス感染症のうち最も頻度の高いものである(非特許文献4)。パピローマウイルス感染症は上記のこれらの部位に癌を引き起こすことが知られているが、特に子宮頸癌ではそのほぼ全例においてパピローマウイルス感染が関与している。子宮頚癌は女性の癌のうち4番目に多い癌であるが、全患者数の85パーセント以上を占める発展途上国においては女性の間で2番目に多い癌である。パピローマウイルスワクチンと癌スクリーニングによる早期診断によって先進国における子宮頸癌の頻度は顕著に低下したが、発展途上国でこれらの方法を採用することは社会的経済的問題のため困難である。より簡便で安価な方法が待ち望まれる。

最近行われた実験研究により、亜鉛ピリチオンが、免疫欠損マウスの皮下に移植されたヒトの口腔癌細胞(非特許文献5:Srivastava et al., 2015)及びヒトの白血病細胞白血球細胞由来悪性腫瘍)(非特許文献6:Tailler et al., 2012)の増殖を、効率的に抑えることが示唆された。どちらの研究も、癌細胞増殖を抑制する濃度において、ピリチオン宿主生体には副作用を起こさないことを明らかにした。同様に、低濃度の亜鉛ピリチオンは前立腺癌細胞を効果的に殺すのに対し、癌ではない細胞を殺すのにはこれより10倍高い濃度の亜鉛ピリチオンが必要であることが明らかにされた(非特許文献7:Carraway and Dobner, 2012)。しかし、これら先行技術は、癌の治療又は予防のための方法、或いは薬剤成分に関する情報を提供していない。

ピリチオンは、生体膜に組み込まれて、亜鉛を透過する小さな穴を形成する。癌細胞の重金属に対する毒性を利用して、亜鉛やその他の金属を癌治療に使う方法が知られている。例えば、特許文献1(米国特許出願公開第2011/0117210号明細書)は、亜鉛有機塩、亜鉛無機塩を癌治療に利用する方法を紹介している。特許文献2(米国特許第7,528,125号明細書)は、一連のピリチオンを化学的に修飾した新しい化合物を開示し、これを用いて亜鉛、銅、マンガン、鉄、その他金属化合物を腫瘍に投与する方法を開示した。更に、特許文献3(米国特許出願公開第2006/0040980号明細書)は抗癌薬剤、抗血管造成薬剤として亜鉛ピリチオンと亜鉛塩を併用する方法を開示した。より最近の実験研究では、更にこの技術とアイディアを発展させ、ピリチオン塩媒体として銅(非特許文献8:Liu et al., 2014)、カドミウム白金(非特許文献9:Zhao et al., 2016b)、ニッケル(非特許文献10:Zhao et al., 2016a)といった、より広範な重金属を白血病骨髄腫瘍骨髄腫肺癌肝臓癌に投与する方法を提唱している。これら先行技術から、ピリチオンによって生体膜に形成される穴を通過した重金属が、悪性腫瘍の殺細胞効果抗増殖作用を示すことを我々は学んだのである。

概要

本発明はピリチオン化合物薬理的に許容され得るピリチオン塩を使用する成分と方法を開示する。本発明は局所療法による皮膚癌治療、子宮頚癌治療、その他の癌の治療、皮膚前癌病変からの皮膚癌発症の予防、パピローマウイルス感染症からの子宮頚癌発症の予防、パピローマウイルス感染症からその他の癌の発症の予防の方法を開示する。更に、本発明においてはピリチオン化合物の少なくとも一種類、EDTAアスコルビン酸アスコルビン酸塩のいずれか、アスコルビン酸誘導体のいずれか、ピリドキシン、ピリドキシン誘導体、薬理的に許容され得る緩衝剤を含む薬剤成分を開示する。薬剤成分のpHは4.5から6.4の間であるとする。

目的

ある応用分野としては、日光角化症やその他皮膚の前癌病変からの皮膚癌の発症を予防することである

効果

実績

技術文献被引用数
- 件
牽制数
- 件

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請求項1

ピリチオンピリチオン塩ビタミンB6類、及びリン酸付加型ビタミンB6類から選択されるいずれか1種以上の有効成分を含有する、悪性腫瘍の予防及び/又は治療組成物

請求項2

ピリチオン、ピリチオン塩、ビタミンB6類、及びリン酸付加型ビタミンB6類から選択されるいずれか1種以上の有効成分を含有する、前癌病変に対する予防組成物

請求項3

前記有効成分は、ピリチオン及びピリチオン塩から選択されるいずれか1種以上であり、EDTA、及びEDTA塩アスコルビン酸アスコルビン酸塩、及びアスコルビン酸化合物から選択されるいずれか1種以上をさらに含有する、請求項1又は2に記載の組成物

請求項4

緩衝剤存在下でのpHが6.9以下である、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。

請求項5

ピリチオン、ピリチオン塩、ビタミンB6類、及びリン酸付加型ビタミンB6類から選択されるいずれか1種以上の有効成分を用いた悪性腫瘍の予防及び/又は治療方法

請求項6

ピリチオン、ピリチオン塩、ビタミンB6類、及びリン酸付加型ビタミンB6類から選択されるいずれか1種以上の有効成分を用いた前癌病変に対する予防方法

請求項7

前記有効成分は、ピリチオン及びピリチオン塩から選択されるいずれか1種以上であり、前記有効成分を、EDTA、及びEDTA塩、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩及びアスコルビン酸化合物から選択されるいずれか1種以上と共に用いる、請求項5又は6に記載の方法。

請求項8

前記有効成分をpH6.9以下の状態で用いる、請求項5から7のいずれかに記載の方法。

請求項9

悪性腫瘍の予防及び/又は治療のための薬剤の製造における、ピリチオン、ピリチオン塩、ビタミンB6類、及びリン酸付加型ビタミンB6類から選択されるいずれか1種以上の使用。

請求項10

前癌病変に対する予防のための薬剤の製造における、ピリチオン、ピリチオン塩、ビタミンB6類、及びリン酸付加型ビタミンB6類から選択されるいずれか1種以上の使用。

請求項11

前記ピリチオン及び前記ピリチオン塩から選択されるいずれか1種以上と、EDTA、及びEDTA塩、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩及びアスコルビン酸化合物から選択されるいずれか1種以上との併用である、請求項9又は10に記載の使用。

請求項12

pHが6.9以下である、請求項9から11のいずれかに記載の使用。

技術分野

0001

急速に増殖する癌細胞はその代謝の結果酸を産生し、放出された酸は癌周囲の環境を酸性化する。このことにより、癌を取り巻く環境は正常組織を取り巻く環境よりも高い酸性度を呈する。本発明は酸性環境下で発生し増殖する癌を治療又は予防するための薬剤処方及び治療・予防方法を開示する。

背景技術

0002

悪性腫瘍は全世界で主要な死因の一つである。国際がん研究機構が2012年に行った統計によると、全世界における年間癌発症者総数は2012年では1400万人以上であったが、これが2030年には2000万人以上にまで増加すると予想される。同様に全世界における年間癌死亡者総数は2012年においては800万人であったが、これが2030年には1300万人以上にまで増加すると予想される。

0003

化学療法外科手術、及び放射線療法が、悪性腫瘍に対する最も一般的な治療戦略である。癌研究領域は顕著な進歩を遂げたものの、現在の治療法には数々の問題点があり、それらを改善する必要がある。一例として、伝統的化学療法の多くはDNA(デオキシリボ核酸)に化学損傷を与えて、癌細胞の高い増殖活性細胞分裂阻害することを目標に治療が行われる。DNAは癌細胞及び正常細胞共に有する遺伝情報青写真であるため、このような従来の化学療法はしばしば癌細胞以外の正常細胞にも損傷を与えて重篤副作用を引き起こす。その他の化学療法剤には、細胞構成タンパク質のうち細胞増殖や細胞分裂に関わるものを標的にしているものもあるが、これらの化学療法剤も骨髄や細胞分裂のさかんな腸管細胞等癌細胞以外の正常細胞に対して非特異的な毒性を発揮する。より最近になって、癌細胞のみに存在し正常細胞には存在しないような癌特異分子を標的にする治療薬が注目を集めてきた。細胞成長因子受容体阻害剤エルロチニブゲフィチニブが癌特異分子を標的にする治療剤の好例である。しかし、全ての癌細胞が十分なレベル成長因子受容体を持っているわけではない。また、癌特異分子標的療法に治療開始当初治療効果を奏した症例でも、抑制された成長因子受容体の働きを相補する他の機序が作動することでいずれは癌細胞が治療抵抗性を獲得する傾向がある。外科療法は孤立した悪性腫瘍を除去する上では効果的かもしれないが、再発外科手技によっておこる癌の他の身体部位への浸潤が大きな問題である。更に外科手術は、出血瘢痕形成感染症、正常臓器損傷を起こしうる。放射線療法も正常組織障害や二次発癌の危険があり、長期的な美容上の危険もある。化学療法は、特に経静脈的・経口的に行われた場合、先に述べた多くの重篤な副作用を起こし得る。新たな抗癌治療方法の開発が強く必要とされる。

0004

悪性腫瘍は単なる癌細胞の寄せ集めではない。腫瘍細胞の周囲を取り囲む正常組織と正常細胞が独特の環境(時に「腫瘍微小環境」とも呼ばれる)を形成して癌細胞の増殖、浸潤、転移を促進するのである。酸は腫瘍微小環境の最も重要な要素の一つである。腫瘍微小環境は、腫瘍のない環境に比べて酸性度がより強い。腫瘍細胞から細胞外に放出された酸性代謝物が腫瘍微小環境の酸の根源であり、これが化学・射線療法治療効率の低下を来し、更には腫瘍の増殖及び浸潤を促進する。酸性環境は悪性腫瘍治療魅力的な標的である。酸性環境で増殖する腫瘍細胞増殖を効率的に抑制する治療法は有望な新しい治療法になることが予想される。

0005

それ自体は癌ではないが癌に進展する危険性が高い病態は「前癌病変」と呼ばれる。前癌病変に伴う持続的で制御不能炎症反応の結果、前癌病変部位では癌が発症する以前に酸性度の高い環境が形成される。酸性環境は、遺伝情報の変化と癌の発症を促進する(非特許文献1:Coussens and Werb, 2002)。いったん悪性腫瘍細胞が発生すると、酸性環境下で悪性腫瘍細胞が正常細胞に比べてより選択的に増殖するので、酸性化が更に亢進することになる。酸性環境下で悪性腫瘍が正常細胞よりも選択的に増殖すること以外に、過剰な酸によって免疫細胞活性が弱められることによっても癌化の可能性が高められる(非特許文献2:Lardner, 2001)。

0006

日光角化症パピローマウイルス感染症は前癌病変の好例である。 日光角化症は過剰な紫外線暴露により引き起こされるざらざらした鱗片病変であり、米国の皮膚科外来受診患者の10パーセントを占める最も頻繁に診断される皮膚病の一つである。日光角化症はしばしば皮膚癌の原因となり、ある研究結果によると65パーセントの扁平上皮癌、36パーセントの基底細胞癌は日光角化症が原因で発症するとも言われている(非特許文献3:Criscione et al., 2009)。凍結手術抗癌化学療法剤経皮投与が日光角化症の主な治療法である。しかし、日光角化症は癌化する前は生命に影響を及ぼすような疾患ではない。癌化には10年かそれ以上の年月が必要であり、しばしば複数の日光角化症が同一患者出現し、どの日光角化症が侵襲性の癌に進展するのかを予想することは難しい。これらの事実が日光角化症の治療を難しくしている。

0007

パピローマウイルス感染症は子宮頚部女性生殖器外表部、肛門陰茎及び口腔で起こる。世界保健機構(WHO)によると、パピローマウイルス感染症は性的接触によって伝染するウイルス感染症のうち最も頻度の高いものである(非特許文献4)。パピローマウイルス感染症は上記のこれらの部位に癌を引き起こすことが知られているが、特に子宮頸癌ではそのほぼ全例においてパピローマウイルス感染が関与している。子宮頚癌は女性の癌のうち4番目に多い癌であるが、全患者数の85パーセント以上を占める発展途上国においては女性の間で2番目に多い癌である。パピローマウイルスワクチンと癌スクリーニングによる早期診断によって先進国における子宮頸癌の頻度は顕著に低下したが、発展途上国でこれらの方法を採用することは社会的経済的問題のため困難である。より簡便で安価な方法が待ち望まれる。

0008

最近行われた実験研究により、亜鉛ピリチオンが、免疫欠損マウスの皮下に移植されたヒトの口腔癌細胞(非特許文献5:Srivastava et al., 2015)及びヒトの白血病細胞白血球細胞由来悪性腫瘍)(非特許文献6:Tailler et al., 2012)の増殖を、効率的に抑えることが示唆された。どちらの研究も、癌細胞増殖を抑制する濃度において、ピリチオン宿主生体には副作用を起こさないことを明らかにした。同様に、低濃度の亜鉛ピリチオンは前立腺癌細胞を効果的に殺すのに対し、癌ではない細胞を殺すのにはこれより10倍高い濃度の亜鉛ピリチオンが必要であることが明らかにされた(非特許文献7:Carraway and Dobner, 2012)。しかし、これら先行技術は、癌の治療又は予防のための方法、或いは薬剤成分に関する情報を提供していない。

0009

ピリチオンは、生体膜に組み込まれて、亜鉛を透過する小さな穴を形成する。癌細胞の重金属に対する毒性を利用して、亜鉛やその他の金属を癌治療に使う方法が知られている。例えば、特許文献1(米国特許出願公開第2011/0117210号明細書)は、亜鉛有機塩、亜鉛無機塩を癌治療に利用する方法を紹介している。特許文献2(米国特許第7,528,125号明細書)は、一連のピリチオンを化学的に修飾した新しい化合物を開示し、これを用いて亜鉛、銅、マンガン、鉄、その他金属化合物を腫瘍に投与する方法を開示した。更に、特許文献3(米国特許出願公開第2006/0040980号明細書)は抗癌薬剤、抗血管造成薬剤として亜鉛ピリチオンと亜鉛塩を併用する方法を開示した。より最近の実験研究では、更にこの技術とアイディアを発展させ、ピリチオン塩媒体として銅(非特許文献8:Liu et al., 2014)、カドミウム白金(非特許文献9:Zhao et al., 2016b)、ニッケル(非特許文献10:Zhao et al., 2016a)といった、より広範な重金属を白血病骨髄腫瘍骨髄腫肺癌肝臓癌に投与する方法を提唱している。これら先行技術から、ピリチオンによって生体膜に形成される穴を通過した重金属が、悪性腫瘍の殺細胞効果抗増殖作用を示すことを我々は学んだのである。

0010

米国特許出願公開第2011/0117210号明細書
米国特許第7,528,125号明細書
米国特許出願公開第2006/0040980号明細書

先行技術

0011

Coussens, L.M., and Werb, Z. (2002). Inflammation and cancer. Nature 420, 860-867.
Lardner, A. (2001). The effects of extracellular pH on immune function. Journal of leukocyte biology 69, 522-530.
Criscione, V.D., Weinstock, M.A., Naylor, M.F., Luque, C., Eide, M.J., and Bingham, S.F. (2009). Actinic keratoses. Cancer 115, 2523-2530.
"Human papillomavirus (HPV) and cervical cancer",世界保健機関ウェブサイト,2018年2月15日公開,http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs380/en/
Srivastava, G., Matta, A., Fu, G., Somasundaram, R.T., Datti, A., Walfish, P.G., and Ralhan, R. (2015). Anticancer activity of pyrithione zinc in oral cancer cells identified in small molecule screens and xenograft model: Implications for oral cancer therapy. Molecular oncology 9, 1720-1735.
Tailler, M., Senovilla, L., Lainey, E., Thepot, S., Metivier, D., Sebert, M., Baud, V., Billot, K., Fenaux, P., and Galluzzi, L. (2012). Antineoplastic activity of ouabain and pyrithione zinc in acute myeloid leukemia. Oncogene 31, 3536-3546.
Carraway, R.E., and Dobner, P.R. (2012). Zinc pyrithione inducesERK-andPKC-dependent necrosis distinct fromTPEN-induced apoptosis in prostate cancer cells. Biochimica et Biophysica Acta (BBA)-Molecular Cell Research 1823, 544-557.
Liu, N., Liu, C., Li, X., Liao, S., Song, W., Yang, C., Zhao, C., Huang, H., Guan, L., and Zhang, P. (2014). A novel proteasome inhibitor suppresses tumor growth via targeting both 19S proteasome deubiquitinases and 20S proteolytic peptidases. Scientific reports 4, 5240.
Zhao, C., Chen, X., Zang, D., Lan, X., Liao, S., Yang, C., Zhang, P., Wu, J., Li, X., and Liu, N. (2016b). Platinum-containing compound platinum pyrithione is stronger and safer than cisplatin in cancer therapy. Biochemical Pharmacology in press.
Zhao, C., Chen, X., Zang, D., Lan, X., Liao, S., Yang, C., Zhang, P., Wu, J., Li, X., and Liu, N. (2016a). A novel nickel complex works as a proteasomal deubiquitinase inhibitor for cancer therapy. Oncogene.

発明が解決しようとする課題

0012

酸性の腫瘍微小環境は、多くの抗癌化学療法剤に対する耐性の原因になることが知られている。また、前癌病変からの癌化を予防するために現在施行可能な方法は、効率、安全性、経費といった面で限界がある。

課題を解決するための手段

0013

本発明は、酸性度を用いて抗癌作用を増強して悪性腫瘍の治療と予防を行うための、薬剤成分とその方法を開示する。いくつかの実施形態においては、開示した治療方法と薬剤成分は、前癌病変部に散発的に発生しつつある癌細胞を殺すことで、前癌病変から癌への進行を予防することに用いられる。

0014

本発明のある側面として、亜鉛ピリチオン、ソディウムピリチオン、その他ピリチオン塩、又は塩を含まないピリチオンのいずれか一つ、或いはそれら複数、を皮膚、子宮頚部、、陰茎、肛門、その他の身体部位に発生した悪性腫瘍に対する治療を用途とする医薬品として製造し使用することを開示する。構成成分のpHは薬理的に許容され得るpH調整剤を用いて酸性に保たれる。本法は悪性腫瘍の酸性環境下での増殖を効率的に抑制する。別の側面として、本法は化学療法、放射線療法、外科療法などの既存の抗癌治療法と併用してもよい。

0015

今回の発明の別の側面として、ピリチオンに加えてキレート剤であるエチレンジアミン四酢酸EDTA)、EDTAカルシウム塩、EDTA二ナトリウム塩、EDTAアンモニウム塩、EDTA二カリウム塩、EDTA二ナトリウム塩、TEA−EDTA、EDTA四ナトリウム塩、EDTA四カリウム塩、EDTA三ナトリウム塩HEDTA、HEDTA三ナトリウム塩 及びその他のEDTA塩を含有する、癌或いは悪性腫瘍の治療、及び予防を用途とする医薬品の製造に用いることを開示する。これにより、亜鉛その他の金属に依存したキレート化されていないピリチオンによる抗癌作用という先行技術に立脚し、これに更に改善を加えることで、ピリチオンによる抗癌作用を更に有効なものにする。

0016

本発明の更に別の側面として、ピリチオンを用い、更に一般にビタミンB6と総称される所のピリドキシンピリドキサールピリドキサミン、及びこれらの5リン酸エステルをピリチオンと共に加えたものを悪性腫瘍の治療及び予防を用途とする薬剤の製造に用いることを開示する。これにより、悪性腫瘍の酸性環境下での増殖阻害効果を改善、促進する。

0017

本発明の更に別の側面として、ピリチオンを用い、更にL−アスコルビン酸ビタミンCとして知られる所のアスコルビン酸アスコルビン酸塩類のいずれか、アスコルビン酸由来の化合物のいずれか一種類、またはこれら二種類、或いはそれ以上の組み合わせたものをピリチオンと共に加えて、悪性腫瘍の治療及び予防を用途とする薬剤の製造に用いることを開示する。これにより、悪性腫瘍の酸性環境下での増殖阻害効果を改善、促進する。

0018

本発明の更に別の側面として、ピリチオンをパピローマウイルス感染症の生殖器感染や皮膚日光角化症などに代表される前癌病変からの癌発症を予防するための医薬品製造に使用することを開示する。

発明の効果

0019

本発明により、ピリチオンを主要原料とする抗癌剤成分が酸によって増強されることを利用して、効率的、簡便、安全、そして安価な癌細胞増殖抑制効果が可能になる。

0020

ピリチオンが癌細胞増殖を抑制するのに必要な濃度は、本願において開示された増強剤と薬剤成分の酸性を組み合わせた場合、先行技術によって知られている既存抗癌剤が癌細胞増殖を抑制するために必要な濃度に比べて100倍から1000倍低いことが見出された。これは今回開示する方法及び薬剤成分の有効性を明確に現している。更に、今回開示する治療方法、薬剤成分、医薬品製造への応用は、酸性腫瘍微小環境において成長する癌細胞を選択的に殺すという、既存技術においては達成し得なかった技術上の必要性を満たすものである。

0021

いくつかの実施形態において、酸性を有する処方が、体表近傍、或いは臓器表面近傍に生育する癌に対して局所投与される。局所投与法は全身投与法に比べて、ピリチオンを含有した処方を投与する上で、多くの点で より優れている。第一に、局所投与法は安全であることで、これは局所投与では処方薬剤が血液や健常臓器と接触する機会が少なく、健常組織に対する好ましくない影響が生じにくいためである。第二に、局所投与には高度の技術が必要とされず、有病者自身による投与も全身投与に比べて容易であることである。第三に、本発明において開示される局所投与のために至適化された酸性処方は、薬効成分を効果的に癌に到達させることができることである。更に、局所投与法は、酸性薬剤成分を全身の血液や健常臓器の酸性度に影響を与えることなく、癌組織に到達させられるという点でも有利である。注意を要するのは、血液及び全身を酸性にすると心不全が起きるということである。ある実施形態においては、ピリチオン(及び増強剤)の局所投与とある種の増強剤の全身投与(例えばビタミンB6の経口投与、ビタミンCの静脈注射)を組み合わせるが、このことによって更に治療効果が向上する。

0022

本件で開示されたピリチオン及びその他薬剤成分は、これまでに開示された大量生産技術によって産業用途に広範に使用されていることから、本件により開示される方法と薬剤成分を使って安価に医薬品を製造することが熟練技術により可能である。このことは、比較的経済発展が進んでいない国で医薬品を製造する際に特に有利である。

図面の簡単な説明

0023

図1は亜鉛ピリチオン(図中場合によっては“Pyz”と略記)とソディウムピリチオン(図中場合によっては“Pyn”と略記)の化学構造を示したものである。
図2は亜鉛ピリチオン(Pyz)を二種類の異なるpHを有する細胞培養液培地)中で処理したときに、ヒト脳腫瘍U87細胞、乳癌MDA−MB−231細胞、子宮頚癌HeLa細胞、及び大腸癌HT29細胞の生存に及ぼす効果を示したグラフである。細胞は、示された濃度の亜鉛ピリチオン存在又は非存在下37℃で3日間培養した。細胞生存率は、メチルチオリルジフェニルテトラゾリウムブロマイドMTT)アセイによって計測された。
図3はソディウムピリチオン(Pyn)を二種類の異なるpHを有する細胞培養液中で処理したときに、ヒト脳腫瘍U87細胞、乳癌MDA−MB−231細胞、子宮頚癌HeLa細胞、及び大腸癌HT29細胞の生存に及ぼす効果を示したグラフである。細胞は示された濃度のソディウムピリチオン存在下又は非存在下、37℃で3日間培養された。細胞生存率はMTTアセイによって計測された。
図4にソディウムピリチオン(Pyn)と亜鉛ピリチオン(Pyz)を、二種類の異なるpHを有する細胞培養液(培地)中で、HeLa細胞に処理したときに示す殺細胞効果をまとめた。細胞は、示された濃度のピリチオン存在下又は非存在下、37℃で3日間培養された。非生存細胞トリパンブルー染色法により計測された。
図5は亜鉛ピリチオンをスフェロイド三次元培養法で培養した脳腫瘍U87細胞に、二種類の異なるpHを有する細胞培養液(培地)中で処理したときに認められる酸誘導性抗増殖効果を示した写真である。
図6は亜鉛ピリチオン(Pyz)又はソディウムピリチオン(Pyn)を二種類の異なるpHを有する細胞培養液(培地)中で子宮頚癌HeLa細胞に処理したときに、スーパーオキシドミトコンドリア内蓄積した様子を示した写真である。
図7にエルロチニブ及びゲフィチニブを二種類の異なるpHを有する細胞培養液(培地)中で、脳腫瘍U87細胞、乳癌MDA−MB−231細胞、子宮頚癌HeLa細胞及び大腸癌HT29細胞に処理したときの生存率に及ぼす効果をまとめた。細胞生存率はMTTアセイによって計測された。
図8は亜鉛ピリチオンのヒト脳腫瘍U87細胞、子宮頚癌HeLa細胞、及び大腸癌HT29細胞に対する抗癌作用をエチレンアミン四酢酸(EDTA)が増強する効果をまとめたグラフである。細胞生存率はMTTアセイによって計測された。
図9は亜鉛ピリチオンがヒト子宮頚癌HeLa細胞に対して示す抗癌作用をピリドキシンが増強する効果をまとめたグラフである。細胞生存率はMTTアセイによって計測された。
図10はソディウムピリチオンと亜鉛ピリチオンが子宮頚癌HeLa細胞に対して示す抗癌作用をソディウムアスコルビン酸と3−o−エチルアスコルビン酸が増強する効果をまとめたグラフと写真である。細胞生存率は二次元培養法(図10A)とスフェロイド三次元培養法(図10B)で調べられた。
図11Aは亜鉛ピリチオン、3−o−エチルアスコルビン酸及びアスコルビルテトラアイパルミチン酸を含有した、或いは含有しない、薬剤処方の局所投与が免疫欠損マウス皮下に移植されたヒト皮膚癌細胞の増殖に及ぼす効果を示したグラフである。図11Bは亜鉛ピリチオン、3−o−エチルアスコルビン酸、及びアスコルビルテトラアイソパルミチン酸を含有する薬剤処方の経皮投与が、正常皮膚、肝臓腎臓に対して副作用を表さないことを示した写真である。

0024

定義
特に指定がない限り、「ピリチオン」と「ピリチオン化合物」は同義に使われ、ピリチオン及びピリチオンの塩のいずれかで、他の処方成分干渉することなく人体に投与可能なものを指す。ピリチオンは最も一般的には、亜鉛塩、又はナトリウム塩として商業的販路から入手されるが(図1参照)、ニッケル、白金といった他の塩の形態も知られている。ピリチオンは2−メルカプトピリジン−N−オキシド、1−ハイドロキシ−2−ピリジンチオン、1−ハイドロキシピリジン−2−チオン、オメジン、(2−ピリジルチオ)−N−オキシド、2−ピリヂンチオール−1−オキシドといった他の名称でも知られている。誘導体とは、類似の構造,機能を有する化合物を意味する。ピリチオンのナトリウム塩(ソディウムピリチオン)は商品に広範に使用されている。ソディウムピリチオンは一般的に2−クロロピリジン−N−オキシドと硫化水素ナトリウム水酸化ナトリウムと反応されることで合成され得る(例えば米国特許第3,159,640号明細書参照)。ピリチオンの亜鉛塩(亜鉛ピリチオン)は、ピリチオン酸(1−ハイドロキシ−2−ピリジンチオン)又はその水溶性塩と亜鉛塩(例えば硫酸亜鉛塩化亜鉛)とによって形成される亜鉛ピリチオン沈殿として合成され得る(例えば米国特許第2,809,971号明細書参照)。

0025

腫瘍とは、身体構成部分腫脹、として定義づけられる病理学用語である。腫瘍には癌のように無制限に増殖する悪性腫瘍と称されるタイプと、一般的に無害治癒可能な良性腫瘍と称されるタイプが存在する(ただし、ある種の癌は良性腫瘍から発生するものもある)。

0026

悪性腫瘍は無制限に細胞分裂をし、近隣組織への直接浸潤、及び転移と呼ばれる血液やリンパ系を介した遠隔組織への浸潤が可能な腫瘍である。癌とは厳密には皮膚や臓器の上皮細胞由来の悪性腫瘍の一群と理解される。これに対し、血液、骨、血管、軟骨筋肉支持組織、といった上皮細胞以外の細胞由来の悪性腫瘍は、厳密には癌からは除外される。例えば病理学的定義では、皮膚のメラノーマは非上皮細胞由来の悪性腫瘍であるから癌ではないことになる。しかし現実的には、悪性腫瘍、癌、ネオプレイジアという名称は広義には互換的に使われ、そのため、メラノーマはしばしば皮膚癌の一部と称される。ここでは「癌」という用語は広義に「悪性腫瘍」と互換性あると理解される。

0027

皮膚に認められる悪性腫瘍は、皮膚扁平上皮癌、皮膚メラノーマ悪性黒色腫)、皮膚腺癌、その他皮膚領域に発生又は皮膚に転移した悪性腫瘍を含む。癌腫カルシノーマ)とは上皮由来の悪性腫瘍を表す病理用語で、メラノーマ(悪性黒色腫)は非上皮細胞由来の悪性腫瘍である。別の分類法では、皮膚に発症する悪性腫瘍は、基底細胞癌、扁平上皮癌、メラノーマ(悪性黒色腫)を含むその他に分類される。

0028

子宮と膣に認められる悪性腫瘍とは、扁平上皮癌、扁平腺癌、その他悪性腫瘍、及び転移性腫瘍を指す。

0029

ここで使われる「治療」とは、好ましくない医学的状態からの改善、或いはそのような好ましくない状態が悪化することを防ぐことを目的に行われる有病者に対する医療行為を指す。「抗腫瘍効果」、「抗癌効果」、及び「抗ネオプレイジア効果」の各用語は互換的に使われ、腫瘍の増殖を遅延又は消退させ、腫瘍の大きさを縮小させ他の臓器への浸潤を防ぐことを意味する。ある側面においては、ある化合物が腫瘍の大きさを縮小させたときに、その化合物に効果が認められたと判断される。別の側面においては、ある化合物が癌に伴う症状を緩和することによって、その化合物に効果が認められたと判断される。更に別の側面においては、ある化合物が医学的検査によって腫瘍の負荷の減少を示唆する結果が得られることによって、その化合物に効果が認められたと判断される。医学的検査とは生化学検査腫瘍マーカー検査、画像診断病理組織検査を含む。また更に別の意味においては、ある化合物の投与によって有病者の生存期間延長を見ることによって、その化合物に有効性が認められたと判断される。

0030

経皮投与という用語は、ここではより広範に定義づけられ、局所投与という用語と互換的に使われる。局所投与は薬剤の体表からの薬剤投与、及び一般に上皮粘膜として知られている体内管内縁部からの薬剤投与に関わる全ての方法を総称する。

0031

賦形剤とは、有効薬剤成分と干渉することなくこれら有効成分の薬物キャリアとして働く有機無機化合物である。薬理的に許容され得る薬物キャリアは、水、ポリエチレングリコール(PEG)、塩溶液ラクトースアミロースアルコール油類脂肪酸ゼラチンケイ酸表面活性剤粘性パラフィン、ハイドロキシメチルセルロースポリビニルピロリドン潤滑剤、及びこれらに準じるものを含む。

0032

悪性腫瘍の治療方法及び治療薬剤成分
悪性腫瘍は、pH6.0から6.9の酸性細胞外環境を有し、時にはさらに低いpHを示すのに対して、非癌正常組織のpHは7.3から7.4である(Parks et al., 2013)。これまでに行われてきた実験研究では、プロトンポンプを阻害したり酸を作る酵素を阻害することによって、腫瘍環境の酸性度を緩和して腫瘍の増殖を抑制しようと試みてきた。しかし、腫瘍環境を酸性化するためのある一つのメカニズムを阻害しても、これらを相補するようなそれ以外のメカニズムがより活性化されるため、このような戦略では期待されたほどの治療効果は挙げられていない。本発明は、このような戦略とは異なり、腫瘍の酸性度を利用して癌細胞を効率的かつ選択的に殺す方法である。

0033

本発明者は、pH6.9及び6.4といった腫瘍微小環境で典型的な酸性度を有する細胞培地によって、抗癌作用が亢進するような薬剤をスクリーニングした。その結果驚くべきことに、ピリチオンの抗癌作用が酸性の細胞培地 によって劇的に亢進することが見出された(図1,2,3,4,5,6参照)。酸性環境下でのピリチオンの抗癌作用は子宮頚癌、脳腫瘍、大腸癌、乳癌、といった遺伝的背景の異なる癌細胞において認められたが、処方成分の酸性による抗癌作用の増強効果上皮成長因子受容体(Epidermal Growth Factor Receptor,EGFRチロシンキナーゼ特異的阻害剤であるゲフィチニブ及びエルロチニブにおいては認められなかった(図7)。

0034

本発明において、悪性腫瘍の治療または予防のためのピリチオンの局所投与法とその成分を開示する。薬剤処方は、ピリチオン、酸性環境下で増強作用を促す化学成分、及び薬効成分に干渉しない薬剤キャリア、により構成される。薬剤処方は、体表または体内臓器内腔表面に直接塗布される。局所投与は、体表面近傍或いは体内臓器内腔表面近傍に生育する悪性腫瘍細胞に治療薬剤を効率的に到達させる上で有効である。薬剤処方成分の酸性pHが腫瘍自体の酸性度と相まって、ピリチオンが効率的な殺腫瘍細胞効果を発揮する。処方成分のあるものは、静脈内注射皮下注射筋肉内注射吸入、経口的にも投与されてもよい。

0035

ある実施形態においては、薬剤処方成分のpHは最大6.9とするが、これはピリチオンの抗腫瘍効果はpH6.9であるときの方がpH7.4であるときに比べて顕著に薬効が高いからである(一例として図10を参照)。より好ましくは、薬剤処方成分のpHは最大6.4とするが、これはピリチオンの抗腫瘍効果がpH6.4であるときの方がpH6.9であるときに比べて顕著に薬効が高いからである(一例として図10を参照)。更に好ましくは、薬剤処方成分のpHは最大5.6とするが、これはpH5.5に調整されたピリチオンを含む薬剤調剤の局所投与によりマウスに移植されたヒト皮膚癌細胞の増殖を抑制したことからである(図11参照)。以前に開示された米国特許第6,455,076号明細書は、化粧品の有効成分の効率を促進する上での酸の重要性を認識している。この先行技術は更に、皮膚の刺激を防止する方法 を提示した。この先行技術によると、pH2.0相当の酸によって発生する皮膚刺激は防止可能である。この理由により、更なる実施形態として、本薬剤処方成分のpHは最低でも2.0以上とする。

0036

化合物のスクリーニングにより、EDTAが酸性条件での亜鉛ピリチオンの抗腫瘍効果を顕著に高めることが見出された(図8)。EDTAは、亜鉛やその他の重金属をある許容量の範囲内で除去し中和する働きをし、医薬品、化粧品、食品の安定剤として汎用されている。これはつまり、ピリチオンは亜鉛やその他の重金属が存在しなくても強力な抗腫瘍効果を発揮するということを意味し、ピリチオンを透過するような重金属が、抗腫瘍効果の上で重要であることを明らかにした先行技術(背景と関連技術参照)からは予測できなかったものである。ソディウムピリチオンが、亜鉛ピリチオンと同様に強力な酸性誘導性の抗癌作用を示す、という本願における発見図2図3を参照)とも鑑みて、亜鉛ピリチオンとソディウムピリチオンのどちらも悪性腫瘍治療に有効であることを意味する。本願で開示する、亜鉛(又は他のいかなる重金属)に依存しないピリチオンによる抗腫瘍効果は、長期投与による重金属の過剰摂取の危険を軽減するかもしれない。腫瘍治療における、亜鉛ピリチオン(又はその他いずれかの金属を付加したピリチオン)の使用、及びソディウムピリチオン(又はその他のいずれの金属を含まないピリチオン)の使用をここに開示する。

0037

化合物スクリーニングの結果、10から100μM濃度のピリドキシンと処方成分の酸性とを組み合わせることで、亜鉛ピリチオンによる抗癌作用を著しく増強することが見出された(図9)。更に、1mM濃度のピリドキシンの場合、処方成分の酸性と組み合わせることで、亜鉛ピリチオンによる抗癌作用を増強するのみならず、ピリチオンが存在しなくてもピリドキシン単独で酸依存性の抗癌作用を示すことが発見された。ピリドキシンはビタミンB6活性を有する化合物の一つで、その他のビタミンB6化合物としてはピリドキサール、ピリドキサミン、及びそれらの5位リン酸エステルを含む。ある実施形態においては、ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミン、それらの5位リン酸エステル、ピリドキシンジカプリレート、ピリドキシンダイパルミテート、これら誘導物のいずれかを亜鉛ピリチオン(又はその他いずれかの金属付加型ピリチオン)又はソディウムピリチオン(又は金属を含まないピリチオンのいずれか)と共に供給されるものとする。

0038

アスコルビン酸ナトリウムは、特に処方成分を酸性にすることと組み合わせることで、亜鉛ピリチオンによる抗癌作用を著しく増強することが見出された(図10)。アスコルビン酸ナトリウムはアスコルビン酸塩の一つで、アスコルビン酸同様の活性を示す。

0039

3−o−エチルアスコルビン酸はエチル基を有し、このエチル基がアスコルビン酸の3−ハイドロキシ基エーテル結合することによって化学的安定性は増強され、経皮的な吸収が容易に行われるようになる。3−o−エチルアスコルビン酸は、特に処方成分の酸性との組み合わせることで、亜鉛ピリチオンによる抗癌作用を著しく増強することが見出された(図10)。更に3−o−エチルアスコルビン酸は、特に処方成分を酸性にすることと組み合わせることで、ソディウムピリチオンによる抗癌作用を著しく増強することが見出された。

0040

アスコルビルテトラアイソパルミチン酸は脂溶性のアスコルビン酸誘導物質で、容易に経皮的に吸収されアスコルビン酸に変換される。このためアスコルビルテトラアイソパルミチン酸及び3-o-エチルアスコルビン酸はスキンケア商品に汎用される。低濃度の亜鉛ピリチオン(1μM)、3−o−エチルアスコルビン酸(3mM)及びアスコルビルテトラアイソパルミチン酸(2 mM)を含有する薬剤処方の局所投与により、マウスの皮膚に移植したヒト皮膚癌細胞の増殖を抑制することが見出された(図11)。

0041

当該局所薬剤処方に暴露された皮膚部位、肝臓、腎臓の組織検査において組織損傷、組織異常の所見は認められなかった(図11Bに示された顕微鏡写真)。更に、表にまとめられた結果が示すように、ピリチオンとアスコルビン酸誘導物質群を含有する薬剤成分の局所投与による血液異常は認められなかった。これらの知見を総括すると、今回開示する方法で重篤な副作用はおこらないことを示唆している。

0042

ある実施形態において、3−o−エチルアスコルビン酸、アスコルビルテトラアイソパルミチン酸(又はその他アスコルビン酸誘導物質のいずれか)、アスコルビン酸ナトリウム(又はその他アスコルビン酸塩のいずれか)、アスコルビン酸、又は上記を組み合わせたもの が亜鉛ピリチオン(又はその他いずれかの金属を付加したピリチオン)又はソディウムピリチオン(又はいずれの金属も含まないピリチオン)と共に局所投与されるものとする。

0043

体表や体内臓器の表面近傍の癌細胞、及び前癌病変部位への薬剤成分の直接投与は、薬理的に許容され得る塩を使って、クリーム軟膏ローションジェル固形スティック噴霧剤ドロップ点眼剤点鼻剤等)、或いは密閉装置の形態によって行われてもよい。これら薬剤処方は、水中油滴(O/W型)エマルジョン油中水滴(W/O型)エマルジョン、粘性溶液、又は水溶液であってもよい。ピリチオンや抗癌剤、ステロイド抗炎症剤等の薬剤活性物質を放出させるために、ピリチオンやその他の活性物質を含むリザーバーを覆う半透過性膜などの密閉装置を用いることも可能である。ピリチオンの局所投与用薬剤処方は、適当な賦形剤を用いた一般的な方法で調剤することが可能であり、賦形剤としては例えば、乳化剤界面活性剤増粘剤保湿剤スキンコンディショナー皮膚保護剤サンスクリーン剤、等が含まれてもよい。密閉式局所投与装置には、オプションとしてメチルハイドロキシパラベンプロピルハイドロキシパラベン、クロロクレゾール防腐剤細菌増殖抑制剤が含まれてもよい。

0044

薬剤成分は、体表面近傍の或いは体内臓器表面近傍の癌、或いは前癌病変部位に対して、薬理的に許容され得る塩を使って、針又はそれに準じる装置、高圧狭窄ジェット投与法、外部電解差の適用、超音波レーザービーム電磁波、放射線等を用いて投与してもよい。

0045

膣及び直腸への導入に対しては座薬を使用してもよい。座薬処方は、本願により開示された化合物と処方構成成分、及びココアバター、様々な分子量のポリプロピレングリコールグリセリン、グリセリン化ゼラチン等の適切な賦形剤を配合することによって調整されてもよい。これら賦形剤は室温では固体であるが体温によって溶解し、化合物と処方構成成分が直腸、膣、子宮頚部に放出される。

0046

ある実施形態において、体表又は体内構造の内縁部からの吸収を促進するために、先行技術に基づいて皮膚透過性亢進剤や溶解促進剤が処方に加えられてもよい(Williams and Barry, 2012)。皮膚透過性亢進剤は、オレイン酸ドコサヘキサエン酸エイコサペンタエン酸などの不飽和脂肪酸テルペンテルペノイドエッセンシャルオイル、アゾン、ピロリドンといったものを含む。溶解促進剤の例としては低濃度界面活性剤、サイクロデキストリンジメチルスルホキシドDMSO)等がある。

0047

0.00000317%重量濃度(100nM)の亜鉛ピリチオンは、酸と組み合わせることで、二次元培養による癌細胞増殖を抑制することが見出された(図2、3、6を参照)。先行技術によると、ピリチオンの経皮吸収効率は1%前後と言われている((Wedig et al., 1974)を参照)。このことから、ある実施形態において、ピリチオンを最低0.000317重量%含むものとする。三次元培養による癌細胞増殖を抑制するためには0.0000634%(2μM)のピリチオンが必要であることから(図5を参照)、より好ましくは最低0.00634重量%のピリチオンを含むものとする。1重量%の亜鉛ピリチオンを含むクリームが顕著な抗腫瘍効果を表した(図11)。このことから、更に好ましくは最低1%のピリチオンを含むものとする。ピリチオン5.5%を含む乳化液が安定であることが見出されたことから、別の実施形態としてピリチオンを最高5.5重量%含むものとする。

0048

ある実施形態においては、EDTAを亜鉛ピリチオンの抗癌作用を増強するために必要な最低濃度である0.0003重量%(10μM)(図8を参照)を最低濃度として含有するものとする。薬剤処方はEDTAを最大10から15重量%含有するものとするが、この濃度のEDTAは短期歯科治療に安全に使用できるからである(Lanigan and Yamarik, 2002)。更に好ましくは、薬剤処方は最大約2重量%のEDTAを含有するものとするが、この濃度がEDTAを化粧品成分として長期使用する際に適当である所の最大濃度であることによる。

0049

ある実施形態において、局所薬剤処方は最低0.00017重量%(10mM)のピリドキシンを含有するものとするが、この濃度が亜鉛ピリチオンの酸依存性抗腫瘍効果を促進するのに必要なピリドキシンの最低濃度であることによる(図9)。より好ましくは、当該薬剤処方は最低0.0017重量%(100μM)のピリドキシンを含有するものとするが、この濃度のピリドキシンが更に高い効力を発揮することによる。更に好ましくは、当該薬剤処方は最低0.017重量%(1mM)のピリドキシンを含有するものとするが、この濃度のピリドキシンは、亜鉛ピリチオン非存在下においても酸依存性抗腫瘍効果を発揮することによる。皮膚透過性、浸透性、化学的安定性等、その他の要因により、実際に期待される効果を発揮するためには更に高濃度のピリドキシンが必要とされると考えられる。例えば、先行技術が0.001% から15%のピリドキシンを含む化粧品の成分を開示された(米国特許出願公開第2006/0018860号明細書参照)。しかしながら、他の処方構成成分存在下では、10重量%或いはそれ以下の濃度のピリドキシンを含有する処方の方がより安定であることが分かった。このことにより、ある実施形態において、薬剤処方は10重量%あるいはそれ以下の濃度のピリドキシンを含有するものとする。脂溶性ピリドキシン誘導体であるピリドキシンジカプリレートやピリドキシンジパルミテートは体表から容易に吸収され、一旦吸収されると安定した活性を示す。ある実施形態において、ピリドキシンジカプリレート、ピリドキシンジパルミテート、又はその他ピリドキシン誘導体が最低0.00017重量%以上、好ましくは最低0.0017重量%以上、更に好ましくは最低0.017重量%以上含有するものとし、最大10重量%またはそれ以下の濃度で含有されるものとする。

0050

ある実施形態において、局所薬剤処方は最低0.04重量%(2mM)の3−o−エチルアスコルビン酸を含有するものとするが、これは2mMの3−o−エチルアスコルビン酸はピリチオンと酸の存在下で、癌細胞の二次元培養条件下での増殖を抑制するからである(図10参照)。より好ましくは、局所薬剤処方は最低0.2重量%(10mM)の3−o−エチルアスコルビン酸を含有するものとするが、これは10mMの3−o−エチルアスコルビン酸はピリチオンと酸の存在下で癌細胞の三次元培養条件下での増殖を抑制するからである(図10参照)。更に好ましくは、局所薬剤処方は、最低3重量%の3−o−エチルアスコルビン酸を含有するものとするが、これは3%の3−o−エチルアスコルビン酸はマウスに移植されたヒト皮膚癌細胞の増殖を、ピリチオンと酸の存在下で効率的に抑制するからである(図11参照)。3%の3−o−エチルアスコルビン酸と亜鉛ピリチオンの他に、当該処方は2重量%のアスコルビルテトラアイソパルミテートを含有している(実施例11参照)。このことから、更に好ましくは、最低3重量%濃度又はそれ以上の3−o−エチルアスコルビン酸、2重量% 濃度又はそれ以上のアスコルビルテトラアイソパルミテート、アスコルビルパルミテート、その他のアスコルビン酸誘導体のいずれか一つあるいは二つ以上の組み合わせを含有するものとする。本発明者は、20重量%以上の3−o−エチルアスコルビン酸を含有する処方は過敏性の皮膚に対してときに皮膚刺激を起こすことに気づいた。このことから、ある実施形態において、20%以下、より好ましくは10%以下のピリドキシンを含有するものとする。

0051

0.04重量%(約2mM)のアスコルビン酸ナトリウムをピリチオンと酸と共に二次元培養下で癌細胞に処理すると、癌細胞の増殖を抑制することが見出された(図10)。ある実施形態において、局所投与薬剤処方は0.04%かそれ以上の濃度のアスコルビン酸ナトリウム(又はその他いずれかのアスコルビン酸塩)、アスコルビン酸、又はアスコルビルテトラアイソパルミテート(又はその他いずれかのアスコルビン酸誘導体)を含有するものとする。30%アスコルビン酸ナトリウム又は15%アスコルビルテトラアイソパルミテートを含有する処方は安定で皮膚過敏性も示さなかった。このことから、ある実施形態においては、薬剤処方は30%かそれ以下の濃度、より好ましくは20%かそれ以下、更に好ましくは10%かそれ以下の濃度のアスコルビン酸ナトリウム(又はその他いずれかのアスコルビン酸塩)を含有するものとする。更に別の実施形態においては、薬剤処方は15%かそれ以下、より好ましくは10%かそれ以下、更に好ましくは、5%かそれ以下の濃度のアスコルビルテトラアイソパルミテート(又はその他のアスコルビン酸誘導体のいずれか)を含有するものとする。

0052

一日一回、ピリチオンを含有する処方をマウス皮膚へ局所投与することによって皮膚癌の増殖が抑制されることが見出された(図11)。このことから、ある実施形態においては、ピリチオンと増強剤を含有する薬剤処方を一日一回局所投与するものとする。既知の技術によると、亜鉛ピリチオンを局所投与した20時間後には、その34%しか皮膚投与領域に残存しない(Parekh et al., 1970)。更にこの先行技術は、投与間隔20時間以内でピリチオンの局所再投与が行われた場合、投与された皮膚領域のピリチオン残存濃度が増加することを明らかにした。これは一日一回以上の投与によりピリチオンの皮膚における有効濃度が増加することを意味する。別の実施形態において、ピリチオンと増強剤を含有する薬剤処方は一日二回局所投与されるものとする。更に別の実施形態において、ピリチオンと増強剤を含有する薬剤処方は一日三回局所投与されるものとする。ある実施形態において、薬剤は望ましい効果が得られるまで投与されるが、典型的には、ピリチオン薬剤処方は2か月から36か月の期間投与される。別の実施形態においては、各治療サイクルの間で、1日から4週間の休薬期間を設けるものとする。更に別の実施形態において、化学療法、放射線療法、外科療法がこの休薬期間に行われる。熟練技術者によって適当であると思われる場合、その他の投薬・休薬サイクル方式と治療期間が考慮されてもよい。

0053

ピリチオン局所投与の一例として、皮膚の悪性腫瘍の治療に応用される。

0054

ピリチオン局所投与の別の例として、子宮頚癌、膣癌、その他子宮頚部・膣部の悪性腫瘍の治療に応用される。

0055

ピリチオン局所投与は、体表から到達可能なその他の悪性腫瘍治療に応用できる。対象疾患は、頭頚部口腔内、肛門、直腸、前立腺乳腺、骨、筋肉、軟骨に生じた悪性腫瘍、これらの部位に転移した悪性腫瘍を含むが、それ以外の悪性腫瘍も対象になり得る。

0056

局所療法は薬剤成分を腫瘍の外表面から浸透させる。全身療法は薬剤成分を腫瘍に血流を供給する血管を介して腫瘍に供給する。これら二つの投与方法を組み合わせることによって薬剤成分の腫瘍内有効濃度が最大化される。経口及び静脈投与法はビタミン血清濃度を増加させるために広く使われる全身投与法である。

0057

経口投与されたピリドキシン600mgは0.3時間以内に速やかに全身循環入り、投与1.3時間後には血清濃度が25μMに達することが先行技術によって明らかにされた((Zempleni, 1995)を参照)。25μMという濃度は、ピリドキシンがピリチオン及び酸と共に投与されたときに抗癌作用を呈するのに必要な最低濃度である10μMよりも高い(図9)。これに対して、100mgのピリドキシンを経静脈注入というもう一つの汎用される方法で投与しても、6時間かかって達成されるピリドキシンの最高血清濃度は0.37μMに過ぎない。これらから、ある実施形態においては一日最低投与量600mgのピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミン、又はこれら化合物の5位リン酸化エステルの経口投与が、ピリチオンとピリドキシン(又はその誘導体)の局所投与と併用して行われる。先行技術により、一日1,000mgを超えるピリドキシンの大量摂取神経障害の危険性との関連が示された((Bender, 1999)を参照)。従って、別の実施形態において、一日最高投与量1000mg濃度を上限とするピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミン、又はこれら化合物の5位リン酸化エステルの経口投与をピリチオンとピリドキシン(又はその誘導体)の局所投与と併用して行われる。経口投与されたピリドキシンは、全身循環に入ると想定半減期1時間以内で速やかに分解されるので((Zempleni, 1995)を参照)、一日投与量を複数回に分割投与することが望ましい。別の実施形態において、ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミン、又はこれら化合物の5位リン酸化エステルを経口で一日二回、より好ましくは一日三回、更に好ましくは一日四回投与する。

0058

先行技術により、静脈投与により達成され得るアスコルビン酸の最大血清濃度は13,400μMであるのに対して、経口投与により達成され得るアスコルビン酸の最大血清濃度はわずか220μMであることが示されている((Padayatty et al., 2004)を参照)。これはアスコルビン酸を静脈投与することで、ピリチオンと酸の存在下で癌の増殖を抑制するのに必要な最低血清濃度(1から10mM)を達成できるのに対し、経口投与ではこの血清濃度に達しないことを表している(図10)。ある実施形態において、3−o−エチルアスコルビン酸(又はその他のアスコルビン酸誘導体のいずれか)、アスコルビン酸ナトリウム(又はその他のアスコルビン酸塩のいずれか)又はアスコルビン酸の静脈投与をピリチオンと3−o−エチルアスコルビン酸(又はその他のアスコルビン酸誘導体のいずれか)、アスコルビン酸ナトリウム(又はその他のアスコルビン酸塩のいずれか)又はアスコルビン酸のいずれか一つあるいはこれらの複数の組み合わせを含む局所投与と併用する。先行技術により、アスコルビン酸5gを静脈投与すると、アスコルビン酸血清濃度を2mMかそれ以上に上げられるが、3gまたは1gの静脈投与では同様の効果が得られないことが示された。このことから、ある実施形態において、最低5gのアスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム(又はその他のアスコルビン酸塩のいずれか)、又は3−o−エチルアスコルビン酸(又はその他のアスコルビン酸誘導体のいずれか)が静脈投与されるものとする。100gまでのアスコルビン酸の静脈投与は、血清アスコルビン酸濃度を上昇させるための安全で効果的な方法であることが知られている。このことから、ある実施形態において、最高100gのアスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム(又はその他のアスコルビン酸塩のいずれか)、又は3−o−エチルアスコルビン酸(又はその他のアスコルビン酸誘導体のいずれか)が静脈投与されるものとする。

0059

先行技術はまた、アスコルビン酸の一日投与量を複数回に分割して投与することが、体内の血清有効濃度を一定レベルに保つ上で有用であることを我々に教えた。例えば、100g、50g及び10gのアスコルビン酸の静脈内注入により血清アスコルビン酸濃度を2mM或いはそれ以上に保持する時間はそれぞれ約5.5時間、3.5時間及び1.3時間である。これは、50gアスコルビン酸を一日二回静脈内注入すること、或いは10gアスコルビン酸を一日五回静脈内注入することの方が、100gのアスコルビン酸を一日一回静脈内注入するよりも、血清アスコルビン酸濃度2mM以上に保つ上ではより効率的であることを意味する。このことから、ある実施形態においては、一回50gのアスコルビン酸ナトリウム(又はその他のアスコルビン酸塩のいずれか)、3−o−エチルアスコルビン酸(又はその他のアスコルビン酸誘導体のいずれか)又はアスコルビン酸を一日二回静脈内に注入する。また別の実施形態においては、一回10gのアスコルビン酸ナトリウム(又はその他のアスコルビン酸塩)又は3−o−エチルアスコルビン酸(又はその他のアスコルビン酸誘導体)を一日五回静脈内に注入する。別の実施形態においては、一回33gのアスコルビン酸、3−o−エチルアスコルビン酸(又はその他のアスコルビン酸誘導体)、又はアスコルビン酸ナトリウム(又はその他のアスコルビン酸塩)を一日三回静脈内に注入する。ある実施形態においては、各治療サイクル間で1日から4週間の休薬期間を設けるものとする。熟練技術者によって適当であると判断される場合その他の投薬・休薬サイクル方式と治療期間が考慮されてもよい。

0060

原則的にはピリチオン及びその他処方成分の標準濃度と投与プロトコールは、腫瘍増殖抑制と腫瘍退縮を目標として行われる。治療応用に当たって、ピリチオン及びその他処方成分の標準濃度と使用される投与プロトコールは、病状、悪性腫瘍の種類、年齢、治療を受ける有病者の体重、投与経路、その他、治療を行う臨床専門家の経験で決められる要因によって異なる。ピリチオン及びその他処方構成成分の標準濃度と投与プロトコールは、他の治療と併用される場合、併用される治療の種類、治療効果及び副作用の程度によっても異なる。悪性腫瘍の腫瘍退縮は腫瘍サイズによって判定され得る。治療終了後悪性腫瘍が再発しないことによっても腫瘍縮退と判断し得る。

0061

前癌病変から悪性腫瘍への進展を予防するための方法と薬剤成分

0062

皮膚及び子宮頚部の悪性腫瘍に独特な性質として、これらの臓器の悪性腫瘍が高頻度で非癌性炎症性病態から発症するということが挙げられる。このことは、皮膚及び子宮頚部における悪性腫瘍の発症は、しばしばこれら臓器の異常状態によって予測可能である、とも言える。前癌病変部位における持続的かつ制御不能な炎症によって引き起こされる酸性環境は、ここに新たに発生する悪性腫瘍の増殖をピリチオンを使って抑制するためには理想的である。本願では、更に新たな一面として、ピリチオンを含有する薬剤処方の局所投与を用いて、将来悪性腫瘍に進展する可能性が高い体表又は粘膜病変部からの癌の発症を予防する方法を開示する。開示する方法は、前癌病変部位の酸性pHとピリチオン処方自体の酸性pHを利用して、少数の悪性腫瘍細胞が目に見える大きさの腫瘍塊を形成する以前に縮退させる。

0063

ある応用分野としては、日光角化症やその他皮膚の前癌病変からの皮膚癌の発症を予防することである。

0064

別の応用分野としては、パピローマウイルス慢性感染から子宮頚癌、膣癌、肛門癌、陰茎癌、口腔内癌の発症を予防することである。

0065

局所投与は、薬理的に許容され得る塩類をクリーム、軟膏、ローション、ジェル、固形スティック、噴霧剤、密閉装置に含有させることで行ってもよい。これら薬剤処方は、水中油滴(O/W型)エマルジョン、油中水滴(W/O型)エマルジョン、粘性溶液、又は水溶液であってもよい。

0066

ある実施形態において、局所薬剤処方のpHは6.9かそれ以下とし、より望ましくは6.4かそれ以下、更に望ましくは5.6かそれ以下とする。前癌病変部位においては酸性環境が極度に強いことから、薬剤処方のpHは4.5かそれ以下であることが更に望ましい。更に別の実施形態において薬剤処方のpHは最低でも2.0以上とする。本願の動物実験に使われた薬剤処方には、20mMのクエン酸緩衝液が含有されている(実施例11参照)。ある実施形態において、pH安定性を増強するために、薬剤処方中最高100mM濃度のクエン酸緩衝液を含有するが、化学的安定性を保つためにより望ましい最高濃度は75mM、更に望ましい最高濃度は50mMとする。別の実施形態において、クエン酸緩衝液の最低濃度は5mM、より望ましくは7.5mM、更に望ましくは10mMとする。ある実施形態においては、リン酸緩衝液やその他の人体に安全な緩衝液を使う。

0067

ある実施形態において、皮膚からの吸収効率を上げるため皮膚透過性亢進剤と溶解促進剤を既知技術に則って処方に加える(((Williams and Barry, 2012)を参照)。皮膚透過性更新剤は、オレイン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸といった不飽和脂肪酸、テルペン、テルペノイド、エッセンシャルオイル、アゾン、ピロリドン等を含む。溶解促進剤の例としては、低濃度界面活性剤、サイクロデキストリン、ジメチルスルホキシド等がある。

0068

膣及び直腸への投与は座薬の形態を用いてもよい。座薬処方は本発明の薬効成分及び薬剤処方をココアバター、様々な分子量のポリエチレングリコール、グリセリン、グリセリン化ゼラチンなどの賦形剤を配合することによって作成できる。これら賦形剤は室温では固体であるが、体温によって溶解し、薬効成分及び薬剤処方が直腸、膣、子宮頚部に放出される。

0069

ある実施形態においては、局所投与薬剤処方は、亜鉛ピリチオン、ソディウムピリチオン、又はその他のピリチオン化合物を最低0.000317重量%、より望ましくは最低0.00634%、更に望ましくは最低1%含むものとする。別の実施形態として、薬剤処方は最大5.5重量% の亜鉛ピリチオン、ソディウムピリチオン、又はその他いずれかのピリチオン化合物を含有するものとする。

0070

ある実施形態において、0.0003重量%から15%、より望ましくは0.0003%から10%、更に望ましくは0.0003%から2%のEDTAを薬剤処方中に含有するものとする。

0071

ある実施形態において、局所投与薬剤処方は最低0.00017重量%、より望ましくは最低0.0017%、更に望ましくは最低0.017%のピリドキシンを含有するものとする。別の実施形態として、薬剤処方は最大10重量%以下、より望ましくは最大5%以下、更に望ましくは最大2.5%以下のピリドキシンを含有するものとする。脂溶性ピリドキシン誘導体であるピリドキシンジカプリレートやピリドキシンダイパルミテートは、体表から容易に吸収され、一旦吸収されると安定した活性を示す。ピリドキサミン、ピリドキサール5リン酸、及びピリドキサミン5リン酸はピリドキシンと似た生物活性を示す。脂溶性ピリドキシン誘導体であるピリドキシンジカプリレートやピリドキシンダイパルミテートは、皮膚から容易に吸収され、一旦吸収されると安定した活性を示す。ある実施形態において、薬剤処方中にこれら化合物を含有されるものとする。

0072

ある実施形態において、局所投与薬剤処方は最低0.04重量%以上、より望ましくは最低0.2%以上、更に望ましくは最低3%以上の3−o−エチルアスコルビン酸(又はその他のアスコルビン酸誘導体のいずれか)、アスコルビン酸ナトリウム(又はその他のアスコルビン酸塩のいずれか)又はアスコルビン酸を含有するものとする。更に望ましくは、局所投与薬剤処方は最低3%以上の3−o−エチルアスコルビン酸(又はその他のアスコルビン酸誘導体のいずれか)、アスコルビン酸ナトリウム(又はその他のアスコルビン酸塩のいずれか)又はアスコルビン酸に加えて、2%かそれ以上の濃度のアスコルビルテトラアイソパルミテート、アスコルビルパルミテート、その他の脂溶性アスコルビン酸誘導体のいずれか一つあるいは二つ以上の組み合わせを含有するものとする。ある実施形態において、20重量%以下、より望ましくは10%以下のピリドキシンを含有するものとする。

0073

ある実施形態において、ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミン、及びそれらの5位リン酸エステル経口投与を、一日に0.1mgから1g、より望ましくは一日10 mgから300mg、ピリチオン含有処方の局所投与と併用して行う。ある実施形態において、ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミン、及びそれらの5位リン酸エステルは一日一回経口投与される。別の実施形態において、ピリドキシン、ピリドキサミン、ピリドキサール、ピリドキサミン、及びそれらの5位リン酸エステルは一日三回8時間ごとに経口投与される。

0074

いくつかの実施形態において、3−o−エチルアスコルビン酸(又はその他のアスコルビン酸誘導体のいずれか)、アスコルビン酸ナトリウム(又はその他のアスコルビン酸塩のいずれか)又はアスコルビン酸の静脈投与と、ピリチオン及び3−o−エチルアスコルビン酸(又はその他のアスコルビン酸誘導体のいずれか)、アスコルビン酸ナトリウム(又はその他のアスコルビン酸塩のいずれか)又はアスコルビン酸のいずれか一種あるいは二種以上の組み合わせを含有する薬剤処方の局所投与と併用する。ある実施形態において、一日5gを最少投与量として、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム(又はその他のアスコルビン酸塩のいずれか)、又は3−o−エチルアスコルビン酸(又はその他のアスコルビン酸誘導体のいずれか)を静脈投与する。別の実施形態において、一日100gを最大投与量として、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム(又はその他のアスコルビン酸塩のいずれか)、又は3−o−エチルアスコルビン酸(又はその他のアスコルビン酸誘導体のいずれか)を静脈投与する。ある実施形態において局所薬剤処方は、最低0.04重量%、より望ましくは最低0.2%の、更に望ましくは最低3%の3−o−エチルアスコルビン酸を含有するものとする。更により望ましくは局所薬剤処方は、最低3%濃度以上の3−o−エチルアスコルビン酸と最低2%かそれ以上の濃度のアスコルビルテトラアイソパルミテート、アスコルビルパルミテート、その他の脂溶性アスコルビン酸誘導体のいずれか一つあるいは二つ以上の組み合わせを含有するものとする。別の実施形態として、局所薬剤処方は3−o−エチルアスコルビン酸を最大30%濃度以下、より望ましくは20%以下、更に望ましくは10%以下含有する。

0075

いくつかの実施形態において、3−o−エチルアスコルビン酸(又はその他のアスコルビン酸誘導体のいずれか)、アスコルビン酸ナトリウム(又はその他のアスコルビン酸塩のいずれか)又はアスコルビン酸静脈投与を、ピリチオンを含有する薬剤処方の局所投与と併用する。ある実施形態において、一日投与量が一日一回の注射で投与される。別の実施形態において一日投与量が一日二回の注射で投与される。更に別の実施形態において一日投与量が一日三回の注射で投与される。ある実施形態において、薬剤は望ましい効果が得られるまで投与される。別の実施形態においては、各治療サイクル間で1日から4週間の休薬期間を設けるものとする。熟練業者によって適当であると思われる場合その他の投薬・休薬サイクル方式と治療期間が考慮されてもよい。

0076

ピリチオンを含有する局所投与薬剤処方は一日一回、より望ましくは一日二回、更に望ましくは一日三回、体表面、生殖器又はその他臓器から投与され得る。ある実施形態において、ピリチオン含有局投与薬剤処方は毎日投与される。別の実施形態において、ピリチオン含有局所投与薬剤処方は週に三回投与される。ある実施形態において薬物投与期間は1週間から96週間、より好ましくは2週間から32週間、更に好ましくは2週間から16週間までとする。ある実施形態において、各投与サイクルの間に一日から4週間の休薬期間を設ける。その他熟練当業者によって適当と思われる投薬・休薬サイクル方式と治療期間が考慮されてもよい。

0077

治療期間中、投薬分量は医師によって厳密に監督される。投与期間と投与間隔は臨床試験前臨床試験によっても判断される。熟練当業者は年齢、体重、臨床状態等多くの要素からこれらを判断し得る。臨床状態は徴候、症状、及びルーチンで行われる医学的検査結果によって判断される。その他臨床診断法としては病理試験コルポスコピー(膣及び子宮頚部の特殊拡大鏡による検査)及び血清検査が含まれる。

0078

実施例1
細胞株と細胞試薬、大腸癌HT29細胞、乳癌MDA−MB−231細胞、脳腫瘍U87細胞、皮膚癌A2058細胞はアメリカタイプ培養コレクション(American Type Culture Collection、ATCC)から入手した。これらの細胞はトリプシン処理後、90%ダルベッコ変法培地(Dalbecco's Modified Eagle's Media 、DMEM)と10%ウシ胎仔血清(FBS)により構成される細胞培地に懸濁された。

0079

子宮頚癌HeLa細胞は10%DMSO存在下で実験に使用するまで液体窒素凍結保存された。実験の前に細胞は液体窒素から取り出され、ウシ胎仔血清(FBS)10%含有DMEM培地を用いて5%二酸化炭素を含む大気中で培養した。細胞密度が80%ほどになった所で、細胞はトリプシンで処理され1:4の比率希釈継代された。試験化合物に暴露されない細胞は、3.7g/L重炭酸ナトリウムを加えてpH7.3に調整したDMEM培地に、ウシ胎仔血清を10%加えて、5%二酸化炭素を含む大気中で培養された。ピリチオン及びその他の化合物が、pH及び濃度依存性に癌細胞増殖に及ぼす影響を調べるためには、DMEM培地に1,4−ピペラエタンサルフォ酸緩衝剤PIPES, pKa 6.1~7.5)を10mM濃度になるように添加しpH6.4に調整、DMEM培地に4−(2−ハイドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルフォン酸(HEPES, pKa 6.8~8.2)を10mM濃度になるように添加しpH7.4に調整された。PIPES(P6757, Lot#026K5416)、HEPES(H4034, Lot#087K54432)、ソディウムピリチオン(2−メルカプトピリジンN−オキシドソディウム,H3261, Lot#0655M4172V)、メチルチオゾリルジフェニル-テロラゾリウムブロマイド(MTT, M5655, Sigma)はシグマから購入した。亜鉛ピリチオン(PHR1401, Lot#LRAA8431)はフルカから購入した。エルロチニブ(#10483, Lot#0459700-31)とゲフィチニブ(sc-202166, Lot#A0616)はケイマン化学とサンクロースバイオテクノロジーからそれぞれ購入した。一般的な化学試薬は可能な限り純度の最も高いものを使用し、その他の試薬は特に指定のない限りシグマから購入した。

0080

実施例2
癌細胞に亜鉛ピリチオン(Pyz)をpH7.4及びpH 6.4条件下で処理したとき癌細胞生存率に及ぼす影響
悪性腫瘍は悪性腫瘍に特徴的なpH6.0から6.9という強い細胞外酸性を作り出すのに対し、正常組織の細胞外のpHは7.3から7.4である(Parks et al., 2013)。亜鉛ピリチオンを子宮頚癌HeLa細胞、脳腫瘍U87細胞、大腸癌HT29細胞、乳癌MDA−MB−231細胞の4種類の異なるヒト癌細胞に接触させると、これら細胞の生存率が著しく低下することが示された。pH6.4の酸性培地中で亜鉛ピリチオン処理したとき、pH7.4の培地で処理したときに比べてより顕著に細胞生存率低下を起こした。亜鉛ピリチオンの化学構造を図1に示した。

0081

癌細胞を96ウェル培養ディッシュの一ウェルあたり2,000個ずつ播種し、ウシ胎仔血清を10%含有するDMEM培地中、二酸化炭素を5%含有する大気中で37℃一晩培養した。ピリチオン及びその他の化合物のpH依存性抗癌作用を調べるために、pH=6.4 DMEM培地は、PIPESを10mM濃度になるように添加しpHを6.4に合わせることで調整した。pH=7.4 DMEM培地は、HEPESを10mM濃度になるように添加しpHを7.4に合わせることで調整した。PIPES(pKa 6.1~7.5)とHEPES(pKa 6.8~8.2)はそれぞれpH値を6.4と7.4に合わせるために用いられた。pH 6.4は腫瘍環境の酸性度をモデルする代表的なpH値として、pH 7.4は正常組織環境の酸性度をモデルする代表的なpH値として、それぞれ実験に採用された。細胞はpH=6.4 DMEM培地またはpH=7.4 DMEM培地中で異なる濃度の亜鉛ピリチオン存在下72時間37℃で培養した。実験は重炭酸塩が媒介する細胞膜を介したプロトン移動によるpH変動を最小限にするために、重炭酸塩を含まない培地と大気中の二酸化炭素を含まない条件で行われた。亜鉛ピリチオンに72時間暴露した後、一つのウェルあたり50μLのウシ胎仔血清を10%含有するDMEMに1mg/mLのMTTを新たに加えた培地に変えて、培養を継続した。2時間培養した後、20%SDS、2%酢酸、2.5%塩酸、及び50%DMFを以て構成成分とする細胞抽出液を一ウェルあたり培地容積と等量の50μL加えることで細胞を融解した。96ウェル培養ディッシュを振盪した後、37℃で4時間反応させて、570nmの吸光度を測定した。バックグラウンド減算後、薬剤非処理群計測値対照群とした相対的生存率を算出した。異なる条件群とそれぞれの対照群との統計的有意性はそれぞれスチューデントテストによって調べた。p−値が0.05以下であることを以て有意に異なると見なされた。

0082

癌細胞に50nM亜鉛ピリチオンを、pHを7.4に合わせた培養液(培地)中で72時間処理したとき、亜鉛ピリチオンで処理されていない細胞群との相対的な細胞生存率は約80−90%であった。対して、これらの癌細胞に50nM亜鉛ピリチオンを、pHを6.4に合わせた弱酸性の培養液(培地)中で72時間処理したとき、亜鉛ピリチオンで処理されていない細胞群との相対的な細胞生存率は約5−20%であった。例えば、ヒト子宮頚癌HeLa細胞に50nM亜鉛ピリチオンをpH7.4で処理したとき、亜鉛ピリチオン処理されなかった細胞群に対する相対的な生存率は87±9%であったのに対し、HeLa細胞に50nM亜鉛ピリチオンをpH6.4で処理したとき、亜鉛ピリチオン処理されなかった細胞群に対する相対的な生存率は5.3±1.6%(p<0.001)であった。これらの新たな知見は、酸性環境が亜鉛ピリチオンによる抗癌作用の効力を増強することを示す。結果は図2にまとめられた。0.05以下のP値を以て有意な差異とみなされる。

0083

実施例3
癌細胞にソディウムピリチオンをpH7.4及びpH6.4条件下で処理したとき癌細胞生存率に及ぼす影響
亜鉛ピリチオンまたはその他の重金属付加型ピリチオンが抗癌作用を示すことが示唆されている。一方、金属が付加されていないピリチオンにも抗炎症、抗感染作用があることが示唆されていた。これらのことから、抗癌治療の新しい方法を開発するために必要となる次の重要な問題は、酸によって増強される抗癌作用はピリチオンによるものなのか、それとも亜鉛によるものなのか、ということである。この疑問答えるために、ソディウムピリチオンの癌細胞増殖に及ぼす影響を調べた。

0084

本願において、ソディウムピリチオンをヒト子宮頚癌細胞(HeLa細胞)、脳腫瘍細胞(U87細胞)、大腸癌細胞(HT29細胞)、乳癌細胞(MDA−MB−231細胞)の4種類の異なる癌細胞に暴露すると、細胞生存率が顕著に低下することが示された。ソディウムピリチオンをpH6.4の酸性培地中で処理したとき、pH7.4の非酸性培地中で処理したときに比べて、より顕著な細胞生存率の低下を見た。

0085

癌細胞を96ウェル培養ディッシュの一ウェルあたり2,000個ずつ播種しウシ胎仔血清を10%含有するDMEM培地中で二酸化炭素を5%含む大気中37℃一晩培養した。ソディウムピリチオンのpH依存性抗癌作用を調べるために、pH =6.4 DMEM培地は、PIPESを10mM濃度になるように添加しpHを6.4に合わせることで調整した。pH=7.4 DMEM培地は、HEPESを10mM濃度になるように添加しpHを7.4に合わせることで調整した。細胞はpH=6.4 DMEM培地またはpH=7.4 DMEM培地中で、低い濃度から高い濃度まで異なる濃度のソディウムピリチオン存在下72時間37℃で培養した。実験は重炭酸塩が媒介する細胞膜を介したプロトン移動によるpH変動を最小限にするために、重炭酸塩を含まない培地を用いて、大気中に二酸化炭素を含まない条件で行われた。細胞をソディウムピリチオンに72時間暴露した後、MTTアセイは実施例2に準じて行われた。異なる実験条件群と対照群との統計的有意性は、スチューデントt−テストによって調べた。0.05以下のp−値を以て有意な差異と見なされる。

0086

癌細胞に100nMソディウムピリチオンを、pHを7.4に合わせた培地中で72時間処理したとき、ソディウムピリチオンで処理されていない細胞群に比べて相対的な細胞生存率は約75%であった。これらの癌細胞に100nMソディウムピリチオンをpH6.4酸性培地中で72時間処理したとき、ソディウムピリチオンで処理されていない細胞群と比べて相対的な細胞生存率は約5%から20%であった。例えば、ヒト子宮頚癌HeLa細胞に100nMの亜鉛ピリチオンをpH7.4又はpH6.4で処理したとき、ソディウムピリチオンで処理されていない細胞群と比べて相対的な生存率はそれぞれ90±9%と4.9±1.7%(p<0.001)であった。0.05以下のP値を以て有意な差異とみなされる。

0087

これらの新たな発見は酸性環境がソディウムピリチオンの抗癌作用の効力を増強したことを示す。結果は図3にまとめられた。

0088

実施例4
MTTアセイは細胞の代謝活性を検出することによって細胞生存率を計測する。トリパンブルーは死細胞統合性の失われた生体膜から細胞の内部に侵入することができる(しかし、生きている細胞の内部には侵入できない)。斯くしてトリパンブルーを使って死細胞のみを可視化できる。亜鉛ピリチオン(Pyz)又はソディウムピリチオン(Pyn)をpH7.4又はpH6.4でHeLa細胞に処理したときの殺細胞効果をトリパンブルー染色アセイで行った。Ctrは薬剤処理群と同濃度の溶媒のみを含み薬剤を含まない培地で処理された対照群細胞を示す。

0089

癌細胞を12ウェル培養ディッシュに一ウェルあたり20,000個ずつ播種し、ウシ胎仔血清を10%含有するDMEM培地中で二酸化炭素を5%含有する大気中、37℃一晩培養した。亜鉛ピリチオン及びソディウムピリチオンのpH依存性抗癌作用を調べるために、pH=7.4 DMEM培地はHEPESを10mM濃度になるよう添加しpHを7.4に合わせることで調整した。pH=6.4 DMEM培地はPIPESを10mM濃度になるよう添加しpHを6.4に合わせることで調整した。細胞はpH=6.4 DMEM培地またはpH=7.4 DMEM培地中で、低濃度から高濃度までの異なる濃度の亜鉛ピリチオン又はソディウムピリチオン存在下、72時間37℃で培養した。重炭酸塩が媒介する細胞膜を介したプロトン移動によるpH変動を最小限にするために、実験は培地中の重炭酸塩と大気中の二酸化炭素を含まない条件で行われた。細胞は亜鉛ピリチオン又はソディウムピリチオンに72時間暴露された後、懸濁回収され、トリパンブルーを0.4%含むPBS溶液が細胞懸濁液と等量添加された。記録写真上、細胞の総数とトリパンブルーで染色された細胞数を計測し、トリパンブルーで染色された細胞の比率を算出した。一つの条件に対して4枚の写真を撮り、トリパンブルーで染まった細胞の比率の平均とエラーバーで示された標準偏差をグラフに示した。結果は図4にまとめた通りである。

0090

トリパンブルーで染まらないことにより判定された細胞生存率は、MTTアセイで判定された細胞生存率とほぼ一致する。このことは、ピリチオンがpH 6.4培地中で処理されたときの方がピリチオンがpH 7.4培養液中で処理されたときよりも殺細胞効果に対する感受性が高いことを支持する。

0091

実施例5
亜鉛ピリチオンは、スフェロイド三次元培養した脳腫瘍細胞に抗増殖効果を及ぼす。

0092

細胞外基質であるコラーゲンジェルを培地に加え半浮遊状態で腫瘍細胞を培養したときに腫瘍塊が形成される。このような細胞外基質内に発生する腫瘍は「スフェロイド」と称され、三次元での腫瘍微小環境を再現するモデルとして使われる。スフェロイド培養法は、抗癌剤の効果を、実際の癌の複雑性を再現する三次元培養において解析することを可能にする(Friedrich et al., 2009)。多くの化合物の生体活性は腫瘍微小環境によって影響されるので、ピリチオンがスフェロイドの増殖に影響を与えるか、という問題は重要である。この疑問に答えるために、コラーゲンの存在下で作られた脳腫瘍U87細胞スフェロイドを酸性条件(pH6.4)又は中性条件(pH7.4)のもと作成し、37℃で3日間亜鉛ピリチオン処理を行い、スフェロイドの成長を測定した。

0093

1%の寒天溶液を60℃で加熱溶解し、等量の培養液(pH6.4DMEM培地に10%ウシ胎仔血清を添加したもの、又はpH7.4 DMEM培地にウシ胎仔血清10%添加したもの)を加えた混合物が、96ウェル培養プレートの一ウェルあたり50μlずつ移された。プレートは室温で30分寒天が固形化するまで冷却され、1,000個の細胞を50μlの培養液中に懸濁したものがそこに上層された。細胞は37℃で3日間培養され、寒天層の上に形成されたスフェロイドは、異なる濃度の亜鉛ピリチオン存在下又は非存在下で3日間培養された。1μM又は2μMの亜鉛ピリチオンをpH6.4の培養液で3日間処理したスフェロイドの大きさは、ピリチオンを含まないpH6.4の培養液で3日間で処理された対照群のスフェロイドの大きさに比べて顕著に小さかった。これとは好対照に、1μM又は2μMの亜鉛ピリチオンをpH7.4の培養液で3日間処理したスフェロイドの大きさは、ピリチオンを含まないpH7.4の培養液で3日間処理した対照群のスフェロイドの大きさに比べて違いはほぼ認められなかった。結果は図5にまとめられた。

0094

実施例6
酸により増強されるピリチオンの抗癌作用によって、ミトコンドリア内にスーパーオキシドの蓄積をおこす。

0095

過酸化水素やスーパーオキシドなどのフリーラジカル産生物質は、細胞代謝の過程で作られる。これら活性酸素種(ROS)は、未変換のまま放置されると細胞に即時性の危険を及ぼす。外的ストレス又は毒素によるミトコンドリア機能不全が活性酸素種の細胞内小器官内への蓄積を促進することがこれまでに示されている。ほとんどの正常組織では活性酸素種を中和してそれ以上の細胞障害の進展を阻止できるのに対し、癌細胞は細胞内活性酸素種の濃度増減に対してより敏感で、活性酸素種蓄積に対する耐性も低いことが示されている((Liou and Storz, 2010)を参照)。ピリチオンは光化学的にハイドロキシラディカルと(ピリジン−2−イルスルファニル基を分解することから((DeMatteo et al., 2005)を参照)、我々はピリチオンがミトコンドリア内のスーパーオキシド産生と除去に関与するかもしれないという仮説を立てた。これを検証するべく、癌細胞をピリチオンで2時間処理した後、ミトコンドリアのスーパーオキシドの濃度に応じて可視化する蛍光プローブを用いて解析した。

0096

HeLaヒト子宮頚癌細胞を8ウェルのガラス底チャンバスライドの一ウェルあたり4,000個ずつ播種し、ウシ胎仔血清(FBS)を10%濃度で含有するDMEM培地にて37℃で一晩培養された。ピリチオンを酸性又は中性の細胞外環境で処理したとき、ミトコンドリア内スーパーオキシド蓄積に如何なる影響を及ぼすか調べるために、細胞は亜鉛ピリチオン又はソディウムピリチオンを含む、又は含まない、pH=6.4又はpH=7.4のDMEM培地にて37℃2時間培養された 。細胞洗浄後、1.25 μM MitoSOXTM (M31008, Invitrogen) と 2.5 μM DRAQ5TM (#62254, Thermo Scientific)を含むpH7.4培地で37℃5分間処理された。MitoSOXTM はミトコンドリアのスーパーオキシド産生を定量的に測定するために、DRAQ5TM は核を蛍光染色して蛍光顕微鏡下で細胞を可視化するために、それぞれ使用された。5分後細胞はNaCl−生理食塩水緩衝液(150mM塩化ナトリウム,5mM塩化カリウム,2mM塩化カルシウム,1mM塩化マグネシウム,20mMHEPES,pH7.4)に浸潤された状態で共焦点顕微鏡にて観察された。

0097

スーパーオキシドのミトコンドリア内蓄積は癌細胞を殺す機序の一つである。ミトコンドリア内のスーパーオキシドを高感度かつ特異的に検出可能なMitoSOXTM を用いることによって、癌細胞に200nMの亜鉛ピリチオン又は400nMのソディウムピリチオンをpH6.4の酸性培地中で2時間処理したとき、劇的にスーパーオキシドがミトコンドリア内に蓄積することを確認できた(図6)。これに対し、癌細胞に200nMの亜鉛ピリチオン又は400nMのソディウムピリチオンをpH7.4の通常培地中で2時間処理したときには、スーパーオキシドのミトコンドリア内蓄積は確認できなかった(図6)。癌細胞をピリチオンを含有しないpH6.4の酸性培地に2時間暴露してもスーパーオキシドのミトコンドリア内蓄積は認められなかった。これらの結果から、ピリチオンを酸性環境下で癌細胞に接触させることがスーパーオキシドのミトコンドリア内蓄積を惹起されることが示唆される。

0098

実施例7
ゲフィチニブとエルロチニブによる抗癌作用は酸性培地によって増強されない。

0099

ゲフィチニブとエルロチニブは上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor;EGFR)チロシンキナーゼ阻害剤で、癌細胞の増殖を特異的に抑制することが可能で、これによって古典的抗癌化学療法剤とは異なる作用機序を提供する。ゲフィチニブ と エルロチニブ は肺癌や皮膚の悪性黒色腫(メラノーマ)等の悪性腫瘍治療に臨床で使われている。これら臨床で使われている分子標的治療剤の抗癌作用が、酸性によって増強されるか否かは知られていない。

0100

子宮頚癌HeLa細胞を96ウェルディッシュの一ウェルあたり2,000個ずつ播種し、ウシ胎仔血清(FBS)を10%濃度含有するDMEM培地中、二酸化炭素を5%含有する大気中にて37℃で一晩培養した。細胞に低濃度から高濃度まで濃度の異なるゲフィチニブ又はエルロチニブを、pH6.4 DMEM培地又はpH7.4 DMEM培地中で処理した。重炭酸塩による細胞膜を介したプロトン移動によるpH変動を最小限にするために、重炭酸塩を含まないpH=6.4又はpH=7.4 DMEM培地中で、大気中には二酸化炭素を含まない条件で実験が行われた。ゲフィチニブ又はエルロチニブを72時間暴露した後、実施例2に準じてMTTアセイが行われた。

0101

ピリチオンとは異なり、酸による抗癌作用の増強効果は、ゲフィチニブ又はエルロチニブでは認められなかった。一例として、HeLa細胞に20μMのゲフィチニブをpH7.4又はpH6.4に調整された培地中で72時間処理したとき、MTTアセイによって検出された細胞生存率はそれぞれ、54±16%、61±9%であった。別の例として、HeLa細胞に20μMのエルロチニブをpH7.4又はpH6.4に調整された培地中で72時間処理されたとき、MTTアセイによって検出された細胞生存率は、それぞれ39±8%、46±14%であった。ゲフィチニブとエルロチニブ による抗癌効果は酸性度によって影響されないという発見は、ピリチオンの抗癌作用の酸による増強効果の特異性を表している。結果は図7にまとめられた。

0102

実施例8
これまでの多くの研究が、亜鉛ピリチオンの抗癌作用は亜鉛によって起きることを示しているので、本願における、ソディウムピリチオンも亜鉛ピリチオン同様癌細胞の生存率を低下させるという発見は驚きであった。そこで本発明者は、先行技術によって既に開示されている、亜鉛を介した毒性以外に、亜鉛なしのピリチオンが癌細胞に対して毒性を有する可能性を更に探求した。これを調べるために、金属キレート剤EDTAが、亜鉛ピリチオンによる殺癌細胞効果へ及ぼす影響を調べた。

0103

子宮頚癌HeLa細胞、大腸癌HT29細胞、脳腫瘍U87細胞を96ウェルディッシュの一ウェルあたり2,000個ずつ播種し、ウシ胎仔血清(FBS)を10%含有するDMEM培地中、二酸化炭素を5%含有する大気中にて37℃で一晩培養した。大腸癌HT29細胞と脳腫瘍U87細胞は、異なる濃度の亜鉛ピリチオンでウシ胎仔血清を含まないpH=7.4 DMEM培地中で37℃、20時間処理されたのに対し、子宮頚癌HeLa細胞はこれとほぼ同等の効果が得られる72時間処理がなされた。実験によっては、亜鉛ピリチオンと共に、異なる濃度のEDTAが培地中に添加された。これらの実験が、ウシ胎仔血清のない条件で行われたのは、血清中に存在する金属や陽イオンがEDTAを不活化するという好ましくない事態を避けるためである。重炭酸もpH=7.4 DMEM培地から除外され、実験は大気中二酸化炭素非存在下において行われた。亜鉛ピリチオンとEDTAとの併用処理、亜鉛ピリチオン単独処理、或いはEDTA単独処理、が施された後、MTTアセイは実施例2に準じて行われた。

0104

図6に示したように、癌細胞への亜鉛ピリチオン処理をEDTAが存在する条件で行ったときの方が、より強く癌細胞の生存率を抑制することが見出された。一例として、脳腫瘍U87細胞に50nM亜鉛ピリチオンをウシ胎仔血清を含まない培地中で処理したときの細胞生存率は薬剤処理をされていない対照群のU87細胞の生存率の60±7%であった。50nMの亜鉛ピリチオンと共に10μMのEDTAを加えて処理したときの細胞生存率は30±4%まで低下し、20μMのEDTAを加えたときには更に19±11%まで低下した。これに対し、当該濃度のEDTAのみで処理された場合は10%以下の軽微な影響しか見られなかった。この驚くべき結果は、ピリチオンが亜鉛ピリチオンによる抗癌作用の重要な要素であり、EDTAによる亜鉛の除去によって抗癌作用が増強されることを示唆する。EDTA付加による増強作用は、EDTA付加によって亜鉛ピリチオンが抗癌作用に必要とされる濃度を更に下げることを意味し、実用応用へ向けた有用な状況を提供するものである。

0105

実施例9
亜鉛ピリチオン(Pyz)による抗癌作用は酸性条件下でピリドキシンによって増強される。

0106

子宮頚癌HeLa細胞を96ウェル培養ディッシュの一ウェルあたり2,000個ずつ播種し、ウシ胎仔血清(FBS)を10%濃度含有するDMEM培地中、二酸化炭素を5%含有する大気中にて37℃で一晩培養した。細胞に低濃度から高濃度までの異なる濃度の亜鉛ピリチオンをpH=6.9またはpH=7.4のウシ胎仔血清を含まないDMEM培地中で24時間培養した。ある実験においては、異なる濃度のピリドキシンが亜鉛ピリチオンと共に処理された。重炭酸塩が媒介する細胞膜を介したプロトン移動によるpH変動を最小限にするために、実験は重炭酸塩を含まないpH=6.9又はpH=7.4のDMEM培地で、大気中の二酸化炭素を含まない条件で行われた。細胞に亜鉛ピリチオンをピリドキシンと共に、或いは亜鉛ピリチオン単独で処理した後、pH=7.4培地中37℃で更に48時間培養した。MTTアセイは実施例2に準じて行われた。

0107

10μMと100μMのピリドキシン(図9においてB6と標識された)をpH=7.4の非酸性培地中で50nM亜鉛ピリチオンと共に処理しても細胞生存率に影響を及ぼさなかったのに対し、pH=6.9の酸性培地中で50nM亜鉛ピリチオンを10μMのピリドキシンと共に処理すると生存率は72±4%まで低下、100μMのピリドキシンと共に処理すると生存率は40±12%まで低下した(図9)。pH=6.4の酸性培地中で10μM或いは100μMのピリドキシンを50nM亜鉛ピリチオンと共に加えて処理すると、生存率は更に低下し、それぞれ1.4±0.6%、2.5±0.9%であった(図9)。10μM或いは100μM濃度のピリドキシンのみを酸性培地、或いは非酸性培地に加えても細胞の生存率には影響はなかった(図9)。これらの結果は、10μMと100μM濃度のピリドキシンが、亜鉛ピリチオンと酸との組み合わせによって生じる抗癌作用を増強することを示唆する。1mMのピリドキシンもまた、亜鉛ピリチオンと酸との組み合わせによる抗癌作用を増強した。1mMのピリドキシンを50nM亜鉛ピリチオンと共に加えてpH=7.4の非酸性培地中で処理すると、細胞生存率は71.5±13%であった。1mMのピリドキシンを50nM亜鉛ピリチオンと共に加えてpH=6.9の酸性培地中で処理すると細胞生存率は5.1±3%であった。1mMの ピリドキシンを50nM亜鉛ピリチオンと共に加えてpH=6. 4の酸性培地中で処理すると、細胞生存率は1.2±0.8%であった。これらの結果は、ピリドキシンとピリチオンと酸性を組み合わせることによって効率的な抗癌作用を現すことを示している。興味深いことに、1mMのピリドキシンを ピリチオン非存在下でpH=7.4、6.9及び6.4の培地に加えると、細胞生存率はそれぞれ72.9±8%、21.6±6%、及び28.4±3%になった。この結果は1mMの ピリドキシンにはピリチオンと酸との組み合わせによって生じる強力な抗癌作用の他に、1mMのピリチオンそのものにも中程度の酸性に依存する抗癌作用があることを示唆している。

0108

実施例10
亜鉛ピリチオン(Pyz)とソディウムピリチオン(Pyn)による抗癌作用は酸性条件下でアスコルビン酸ナトリウム、又は3−o−エチルアスコルビン酸によって増強される。

0109

子宮頚癌HeLa細胞を96ウェルディッシュの一ウェルあたり2,000個ずつ播種し、血清(FBS)を10%含有するDMEM培地中、二酸化炭素5%含有する大気中にて37℃一晩培養した。細胞に低濃度から高濃度まで異なる濃度の亜鉛ピリチオンをpH=6.4の血清(FBS)を含有しないDMEM、pH=6.9の血清(FBS)を含有しないDMEM、又はpH=7.4の血清(FBS)を含有しないDMEM培地中で24時間処理した。実験によっては、異なる濃度のアスコルビン酸ナトリウム又は3−o−エチルアスコルビン酸が亜鉛ピリチオンと共に培地中に加えられた。重炭酸塩が媒介する細胞膜を介したプロトン移動によるpH変動を最小限にするために、実験は重炭酸塩を含まない培地と大気中の二酸化炭素を含まない条件で行われた。細胞に亜鉛ピリチオンをアスコルビン酸ナトリウム又は3−o−エチルアスコルビン酸と共に、或いは亜鉛ピリチオンのみを処理した後、細胞はpH=7.4培地中37℃で更に48時間培養された。MTTアセイは実施例2に準じて行われた。

0110

2mM 3−o−エチルアスコルビン酸(AscE)をpHが6.9の培地に、5nM及び10nMの亜鉛ピリチオン(Pyz)と共に加えると、細胞生存率は薬剤で処理されていない対照群に比べてそれぞれ91±11%及び43±11%に減少することが見出された。2mM 3−o−エチルアスコルビン酸(AscE)をpH=6.4の培地中に、5nM及び10nMの亜鉛ピリチオン(Pyz)と共に加えると、細胞生存率は薬剤で処理されていない対照群に比べてそれぞれ22±10%及び11±10%に減少することが見出された。これに対して、10nM以下の濃度の亜鉛ピリチオンのみを加えても細胞生存率に影響は見られなかった(図10A)。また、2mM 3−o−エチルアスコルビン酸と10nM以下の濃度の亜鉛ピリチオンとを共にpH7.4の非酸性培地に加えても、細胞生存率は減少しなかった。これらの結果から3−o−エチルアスコルビン酸は亜鉛ピリチオンによる抗癌作用を酸依存的に増強することが示唆される。

0111

同様に、2mMの3−o−エチルアスコルビン酸(AscE)をpH6.9の酸性培地中に10nM及び20nMのソディウムピリチオン(Pyn)と共に加えると、細胞生存率は薬剤で処理されていない対照群に比べてそれぞれ96±5及び48±7%に減少する。2mMの3−o−エチルアスコルビン酸(AscE)をpH6.4の酸性培地中に10nM及び20nMのソディウムピリチオン(Pyn)と共に加えると、細胞生存率は薬剤で処理されていない対照群に比べてそれぞれ17±5%及び7±3%と更に顕著な減少を見た。これに対して、20nM或いはそれ以下の濃度のソディウムピリチオンのみを酸性培地に加えても、或いは非酸性培地中で2mM 3−o−エチルアスコルビン酸と20nM或いはそれ以下の濃度のソディウムピリチオンを共に加えても、細胞生存率減少は見られなかった。

0112

アスコルビン酸ナトリウム(AscNa)と酸の組み合わせによっても亜鉛ピリチオン(Pyz)による抗癌作用の亢進を見た。一例として、1mMのアスコルビン酸ナトリウムをpH=6.9の酸性培地中に10nMの亜鉛ピリチオンと共に加えると、細胞生存率は非処理対照群に比べて85±5%と中程度の低下を見たのに対し、1mMのアスコルビン酸ナトリウムと共に10nMの亜鉛ピリチオンをpH=6.4の酸性培地中に添加すると細胞生存率は非処理対照群に比べて46±5%と更に顕著に低下することが見出された(図10A)。1mMのアスコルビン酸ナトリウムと20nMの亜鉛ピリチオンを共にpHが6.9及び6.4の酸性培地に加えたときにも同様に、しかし更に顕著な効果が見られた。これに対して、10nM或いはそれ以下の濃度の亜鉛ピリチオン(Pyz)のみを酸性培地に加えても薬剤非処理対照群と比べて細胞生存率の有意な変化は見られず、亜鉛ピリチオン(Pyz)と1mMのアスコルビン酸ナトリウム(AscNa)を共にpH=7.4の非酸性培地に加えても、薬剤非処理対照群と比べて細胞生存率の有意な変化は見られなかった(図10A)。これらの結果からアスコルビン酸ナトリウムは亜鉛ピリチオンによる抗癌作用を酸依存的に増強することを示唆する。

0113

三次元培養された脳腫瘍細胞に対するピリチオンの抗癌作用が3−o−エチルアスコルビン酸によって増強されることが、スフェロイド培養法によって測定された。

0114

60℃で加熱溶解した1%のアガロース溶液と、等量の培地(pH7.4DMEM培地にウシ胎仔血清10%添加したもの)を混合後、この混合物が96ウェル培養プレートの一ウェルに対して50μlずつ分注された。プレートは室温で30分アガロースが固形化するまで冷却し、アガロース層の上に1,000個の細胞を含む50μlの培養液が上層され、1,500gで5分間遠心分離にかけられた。37℃で24時間培養された後、スフェロイドは異なる濃度の亜鉛ピリチオン、3−o−エチルアスコルビン酸、又は亜鉛ピリチオンと3−o−エチルアスコルビン酸を含む条件、或いはいずれの薬剤も含まない条件、で更に72時間培養された。その後、スフェロイドは別の96ウェルに移された。プレートは1,500gで5分間遠心分離にかけられ、ウェルの底にある細胞を攪拌することなく、薬剤溶液PBS入れ替えられた。プレートは再度1,500gで5分間遠心分離にかけられ、ウェルの底にある細胞を攪拌することなく、PBSが、0.1M pH=5.0酢酸ナトリウムと0.1重量%Triton X−100を含む緩衝液に5mM p−ニトロフェニルリン酸(#34045,サーモフィッシャーサイエンス株式会社)が実験直前に添加されたもの、に入れ替えられ、37℃2時間培養された。2時間後、反応を停止するために10モル濃度のNaOH溶液滴下され、450 nmの吸光度が測定された。

0115

500nM亜鉛ピリチオン(Pyz)のみで処理されたスフェロイドの生存率は、非処理スフェロイドに比べて88±8%まで低下した(図10B)。これに対し、亜鉛ピリチオン と共に、5mM又は10mMの3−o−エチルアスコルビン酸(AscE)が加えられると、細胞生存率は それぞれ76±4%、63±7%まで更に低下した。これらの結果は3−o−エチルアスコルビン酸が三次元培養において細胞増殖を抑制する効果を促進することを示唆している。更に、10mMの3−o−エチルアスコルビン酸が亜鉛ピリチオンと共に加えられたとき、三次元スフェロイド構造の脆弱化が起こり、スフェロイドの辺縁部から剥離した細胞群が散見された(図10Bの右側パネルを参照)。

0116

実施例11
亜鉛ピリチオン、3−o−エチルアスコルビン酸及びアスコルビルテトラアイソパルミチン酸を含有した処方の局所投与で、マウスの皮下に移植されたヒト皮膚癌細胞の増殖が抑制された。

0117

3−o−エチルアスコルビン酸及びアスコルビルテトラアイソパルミチン酸は皮膚から速やかに吸収されてアスコルビン酸に変換されるアスコルビン酸の誘導体である。亜鉛ピリチオン、3-o-エチルアスコルビン酸、アスコルビルテトラアイソパルミチン酸、或いはそれら複数の組み合わせを含有する薬剤処方の局所投与による抗癌効果が皮膚癌のマウス移植モデルで調べられた。

0118

生後週齢雄C57BL/6無胸腺マウス皮下に2.5×106個のヒト皮膚癌A2058細胞が移植された。移植2−3日後腫瘍の大きさが約3mm3になった所で、マウスは無作為的に5匹ずつ4つのグループに分けられ、クリーム形態の薬剤処方が一日一回、腫瘍直上の皮膚の部位に塗布された。第一のグループ(Pyz)は1%の亜鉛ピリチオンのみを含有するもの、第二のグループ(Asc)は3% 3−o−エチルアスコルビン酸と 2%アスコルビルテトラアイソパルミテートを含有するもの、第三のグループ(Pyz+Asc)は1%亜鉛ピリチオン及び、3% 3−o−エチルアスコルビン酸と2%アスコルビルテトラアイソパルミテートを含有するもの、そして第四のグループ(Vehicle)はキャリアのみを含有するもの、が局所投与された。処方構成成分は以下の通りである。

0119

グループ1に使われた処方成分
a)水層
グリセロール:5%
ポリソルベート20 :1%
クエン酸1モル濃度溶液:0.7%
クエン酸ナトリウム1モル濃度溶液:1.3%
亜鉛ピリチオン:1%
蒸留水:全容量を100%にするために必要な分量
b)油層
べへニルアルコール:3%
セタノール:3%
ステアリン酸グリセリル:1%
ステアリン酸:1%
ソルビタンステアレート:1%
パルミチン酸セチル:1%
ジメチコン:1%
c)冷却層
シクロメチコン:5%
d)pHをHCl又はNaOHにより5.5に調整

水層成分は適当な容器中にて完全に溶解するまで75℃で熱しながら攪拌された。油層成分は別の容器中にて完全に溶解するまで75℃で熱しながら攪拌された。油層成分は水層成分に加えられ、エマルジョン化するまで攪拌された。エマルジョンは50−55℃まで冷却後、完全に均一化するまで攪拌が続けられた。

0120

グループ2に使われた処方成分
a)水層
グリセロール:5%
ポリソルベート20 :1%
クエン酸1モル濃度溶液:0.7%
クエン酸ナトリウム1モル濃度溶液:1.3%
蒸留水:全容量を100%にするために必要な分量
b)油層
べへニルアルコール:3%
セタノール:3%
ステアリン酸グリセリル:1%
ステアリン酸:1%
ソルビタンステアレート:1%
パルミチン酸セチル:1%
ジメチコン:1%
c)冷却層
シクロメチコン:5%
3−o−エチルアスコルビン酸:3%
アスコルビルテトラアイソパルミテート:2%
d)pHをHCl又はNaOHにより5.5に調整

水層成分は適当な容器中にて完全に溶解するまで75℃で熱しながら攪拌された。油層成分は別の容器中にて完全に溶解するまで75℃で熱しながら攪拌された。油層成分は水層成分に加えられ、エマルジョン化するまで攪拌された。エマルジョンは50−55℃まで冷却後、完全に均一化するまで攪拌が続けられた。

0121

グループ3に使われた処方成分
a)水層
グリセロール:5%
ポリソルベート20 :1%
亜鉛ピリチオン:1%
クエン酸1モル濃度溶液:0.7%
クエン酸ナトリウム1モル濃度溶液:1.3%
蒸留水:全容量を100%にするために必要な分量
b)油層
べへニルアルコール:3%
セタノール:3%
ステアリン酸グリセリル:1%
ステアリン酸:1%
ソルビタンステアレート:1%
パルミチン酸セチル:1%
ジメチコン:1%
c)冷却層
シクロメチコン:5%
3−o−エチルアスコルビン酸:3%
アスコルビルテトラアイソパルミテート:2%
d)pHをHCl又はNaOHにより5.5に調整

水層成分は適当な容器中にて完全に溶解するまで75℃で熱しながら攪拌された。油層成分は別の容器中にて完全に溶解するまで75℃で熱しながら攪拌された。油層成分は水層成分に加えられ、エマルジョン化するまで攪拌された。エマルジョンは50−55℃まで冷却後、完全に均一化するまで攪拌が続けられた。

0122

グループ4に使われた処方成分
a)水層
グリセロール:5%
ポリソルベート20 :1%
クエン酸1モル濃度溶液:0.7%
クエン酸ナトリウム1モル濃度溶液:1.3%
蒸留水:全容量を100%にするために必要な分量
b)油層
べへニルアルコール:3%
セタノール:3%
ステアリン酸グリセリル:1%
ステアリン酸:1%
ソルビタンステアレート:1%
パルミチン酸セチル:1%
ジメチコン:1%
c)冷却層
シクロメチコン:5%
d)pHをHCl又はNaOHにより5.5に調整

水層成分は適当な容器中にて完全に溶解するまで75℃で熱しながら攪拌された。油層成分は別の容器中にて完全に溶解するまで75℃で熱しながら攪拌された。油層成分は水層成分に加えられ、エマルジョン化するまで攪拌された。エマルジョンは50−55℃まで冷却後、完全に均一化するまで攪拌が続けられた。

0123

腫瘍容積はa:腫瘍長径、b:腫瘍短径に基づいてab2/2の計算式によって算出され、それぞれの治療群の相対的腫瘍容積が計算されグラフ上に示された(図11A)。グラフの横軸は経皮投与後の日数を、縦軸は相対的腫瘍容積をそれぞれ示す。実験のエンドポイントにおいてグループ3マウスの腫瘍サイズの平均値は(図11Aにおける”Pyz+Asc”)他のグループのマウスの腫瘍サイズの平均値よりも小さかった。この結果からピリチオンとアスコルビン酸誘導体の双方を含む処方は腫瘍増殖を抑えるのに有効な方法であるが、ピリチオン単剤、或いはアスコルビン酸誘導体のみでは有効ではないことが示された。

0124

実験のエンドポイントにおいて、薬剤処方と接触したマウス皮膚領域、肝臓、腎臓の組織サンプルが通常用いられる方法によって作成された。切片ヘマトキシリンエオジン染色が施された。組織サンプルの顕微鏡写真は図11Bに示された。組織損傷、異常な細胞死、或いはその他副作用を示唆する所見は、グループ3(PyZ+Asc;ピリチオン、3−o−エチルアスコルビン酸、アスコルビルテトラアイソパルミテートを含有するクリーム処方で処理されたマウス)、及びグループ4(Vehicle;ピリチオン、3−o−エチルアスコルビン酸、アスコルビルテトラアイソパルミテートいずれも含有しないクリーム処方で処理されたマウス)においていずれも認められなかった。

0125

動物を処理する日に採血検査が行われ、その結果が表にまとめられた。平均赤血球ヘモグロビンMCH)低下、平均赤血球容積MCV)低下、血小板PLT)増加が全ての処方グループで、恐らくは移植された癌細胞のために認められたが、それ以外のすべての検査項目においては異常が認められなかった。アスコルビン酸のみを処方されたグループ(”Asc”)で若干の顆粒球%増加が見られたものの顆粒球数正常値であるため顆粒球%増加は有意とはみなされない。顆粒球%増加以外にはある処方グループに特異的な血液異常は認められなかった。Ref:正常値; GR:顆粒球数(1Lあたりの数); GR%:顆粒球(%); HCT:ヘマトクリット(%); HGB:ヘモグロビン(g/L); LY:リンパ球数; LY%:リンパ球(%); MCH:平均赤血球容積 (pg);MCHC:平均赤血球容積濃度(g/L); MO:単球数(1Lあたりの数); MO%:単球 (%); MPV:平均血小板容積(fL); PCT:プロカルシトニン(%); PDW:血小板分布幅(fL); PLT:血小板(g/L);RBC赤血球数(1Lあたりの数); RDW:赤血球分布幅(%); WBC:白血球数(1Lあたりの数)

0126

実施例

0127

引用文
非特許文献

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