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技術 術後癒着の予防及び治療のための方法及び組成物

出願人 ザボードオブトラスティーズオブザレランドスタンフォードジュニアユニバーシティー
発明者 サイ,ジョナサンファーンホフ,ナサニエルシンハ,ラフルリンケビッチ,ユバルワイスマン,アービング,エル.
出願日 2017年5月1日 (3年7ヶ月経過) 出願番号 2018-556332
公開日 2019年6月6日 (1年6ヶ月経過) 公開番号 2019-514913
状態 不明
技術分野
  • -
主要キーワード 機械的摂動 ボタン周辺 指示対象物 破壊対象 癒着組織 段階的増加 存在検出 留意点
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課題・解決手段

本開示の態様は、癒着形成を減少させるための対象の治療方法を含み、その方法は、必要とする対象に、損傷した中皮細胞による癒着形成を標的とする薬剤投与することを含む。薬剤は、破壊対象の損傷した中皮細胞の標的化、癒着部位への炎症性マクロファージ動員、癒着部位への好中球動員の阻止、及び/または、損傷した中皮細胞において発現誘導される遺伝子産物の発現もしくは活性阻害を含め、損傷した中皮細胞による癒着の発生に関わる様々なチェックポイントで作用することができる。この方法を実施するための組成物及びキットも提供する。

概要

背景

癒着とは、物理的外傷(多くは手術に起因する)または主要な炎症性傷害腹膜炎、感染など)のいずれかによる腹膜への外傷の結果として発生する線維性組織である。癒着の多くは無症候性であるものの、その主要な後遺症として、腸閉塞女性不妊症子宮または子宮付近で起こる場合)、慢性疼痛、及び生活の質の低下が挙げられる。

米国国立衛生研究所によれば、腹部手術を受けた患者のうち93%超が癒着形成移行すると推定される。現在の推定では、腹部手術後の患者の最大20%は術後の癒着形成を理由に再入院すると示唆され、その医療費は米国だけで10億ドルを優に超えると予測されており、この額は多々あるがん匹敵する。癒着形成を防止する決定的な対策が未だに存在しないため、癒着は重大な医療負担であり、治療及び予防を目下の医療上の優先事項にすべきであるという見解優勢となっている。

炎症浸潤、及びフィブリン沈着フィブリン溶解との均衡に着目した癒着形成の病因に関する広範な研究が行われている。現在では、腹膜表面の損傷をきっかけに、サイトカインシグナル一団を通じて炎症細胞動員する複雑なカスケードが開始されると考えられている。細胞浸潤動態マッピングする綿密な研究が行われており、それによると多形核白血球(PMN)は、損傷の早期(6時間以内)から存在し、続いてマクロファージが参加し(72時間超継続)、後期に入ってT細胞及びB細胞が動員される。これらの細胞型のそれぞれが癒着形成に果たす役割探究されており、大半の研究は、PMN、マクロファージ、及びCD4+ T細胞がもつ炎症誘発性プロファイルの働きにより、癒着の重症度が悪化するという点で見解が一致している。

癒着過程の重要な誘導因子としての凝固カスケードの寄与について、数多くの研究がなされている。凝固カスケードは、免疫細胞の浸潤と同時に活性化される。トロンビンによってフィブリノーゲンフィブリンに変換され、フィブリンは中皮損傷の直後に器官の表面に堆積物を形成し、創傷治癒または癒着形成のためのフィブリン網を組織する。

現状の知見では、癒着を生じさせる程度の腹膜損傷または臓器損傷には、下層基底膜露出させる表面中皮の除去を要し(diZerega&Campeau;Richardson,1911;Schade&Williamson,1968;A.Suzuki,2015)、それが2つの剥皮表面間にフィブリン接着をもたらし、続いて線維芽細胞起源は不明)の蓄積が起こるといわれている。これらの観察は、従来のスナップショット式の組織学検査に依存するところが大きく、細胞型の同定が困難であるため、新たな浸潤線維芽細胞の起源が議論の対象となっている。可能性がある起源としては、表面下結合組織内での筋線維芽細胞化生間葉系幹細胞MSC)の拡大、未分化原始MSCの浸潤、または癒着の形成を導く腹腔下線維芽細胞による細胞外基質沈着がある(Cheong et al.;Ellis,Harrison,&Hugh,1965;Hellebrekers&Kooistra,2011;Lucas,Warejcka,Young,&Lee,1996;Raftery,1973)。

上記のパラダイムを支持する研究者らによれば、手術後の異なる時間に齧歯類モデルの腹腔に前述した線維芽細胞型を移植した結果、術後の癒着形成の増加を示したことから、この細胞型から癒着が生じるという見解が裏付けられたと主張している(Lucas et al.,1996)。他の研究者らは、摩擦がない界面を含む表面中皮の上皮特性が癒着形成に対する保護的役割を示すと指摘し、術後癒着を予防するための臨床的アプローチとして中皮細胞シートの使用も提案している(Inagaki,Inagaki,Kokudo,&Miyajima,2015)。

線維性疾患発症及び進行の研究(Rinkevich et al.,2012,2015)に使用することができる起源細胞が存在せず、腹部癒着に至る初期分子的及び細胞的な事象についてあまり知られていないため、強力な予防的治療または術後治療が開発されていない。そのため、現在の臨床治療では、予防的処置として、隣接する臓器間の接触を防止する物理的バリア(Liu,Li,Shu,Gray,&Prestwich,2005)、または高確率で癒着の再形成を招く方法ではあるが、医師による癒着臓器の外科的分離を必要とする癒着溶解(Ray,1998)が利用されている。

中皮は、哺乳動物躯幹漿液腔(胸膜腔囲心腔、及び腹腔)のすべて、及び種々の内臓器官の外面を覆う外側上皮単層である。中皮の主要な構造は扁平上皮であるが、その組織は、線維芽細胞型の特徴となる細胞学的及び生化学的な特徴も表しており(Michailova&Usunoff,2006)、それが中皮に顕著な細胞可塑性を与えている(Rinkevich et al.,2012)。例えば、中皮細胞がサイトカイン及び他のシグナル応答して、筋線維芽細胞表現型を呈し、癒着過程を悪化させるサイトカイン及び細胞外基質タンパク質分泌する可能性があることが示唆されている。最近の系譜追跡研究ではさらに、表面中皮の可塑性により、内部臓器及びその血管系に線維芽細胞型及び平滑筋細胞型を生成することが実証されている。

局所貧血、物理的外傷、出血、温度、化学的損傷、及び組織乾燥が癒着形成の発症要因であることを示唆するいくつかの異なった報告があるが、癒着の病因を制御する基本的な分子機構及び遺伝子機構は明確にされていない。本開示は、癒着形成の分子機構及び遺伝子機構について考察し、それにより、とりわけ、これらの知見に基づく治療的処置を提供する。

概要

本開示の態様は、癒着形成を減少させるための対象の治療方法を含み、その方法は、必要とする対象に、損傷した中皮細胞による癒着形成を標的とする薬剤投与することを含む。薬剤は、破壊対象の損傷した中皮細胞の標的化、癒着部位への炎症性マクロファージの動員、癒着部位への好中球動員の阻止、及び/または、損傷した中皮細胞において発現誘導される遺伝子産物の発現もしくは活性の阻害を含め、損傷した中皮細胞による癒着の発生に関わる様々なチェックポイントで作用することができる。この方法を実施するための組成物及びキットも提供する。

目的

本開示は、癒着形成の分子機構及び遺伝子機構について考察し、それにより、とりわけ、これらの知見に基づく治療的処置を提供する

効果

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請求項1

癒着形成を減少させるかまたは既に形成された癒着を減少させるための対象を治療する方法であって、必要とする対象に、損傷した中皮細胞による癒着形成を妨害する薬剤投与することを含む、方法。

請求項2

癒着形成を減少させるかまたは既に形成された癒着を減少させるための対象を治療する方法であって、必要とする対象に、顆粒球もしくは炎症性顆粒球を枯渇させることによって、または、顆粒球もしくは炎症性顆粒球の動員阻害することによって、癒着形成を妨害する薬剤を投与することを含む、方法。

請求項3

癒着形成を減少させるかまたは既に形成された癒着を減少させるための対象を治療する方法であって、必要とする対象に、マクロファージ及び炎症性単球のうちの一方または両方の動員を促進することによって癒着形成を妨害する薬剤を投与することを含む、方法。

請求項4

前記薬剤は、好中球の枯渇及び好中球動員の阻止のうちの一方または両方をもたらす、請求項1または2に記載の方法。

請求項5

前記薬剤は、Gr−1、CD66b、CD177、CXCR1、VAP1、CXCR2、及びCD10から選択される顆粒球マーカーに結合するポリペプチドである、請求項4に記載の方法。

請求項6

前記薬剤は抗体またはその結合断片である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。

請求項7

前記薬剤は、損傷した中皮細胞において発現誘導される遺伝子産物の発現または活性を阻害するか、または、損傷した中皮細胞において発現が誘導される遺伝子産物に選択的に結合する、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。

請求項8

前記遺伝子産物は好中球を動員または枯渇させる、請求項7に記載の方法。

請求項9

前記遺伝子産物はCXCケモカインである、請求項7または8に記載の方法。

請求項10

前記CXCケモカインは、CXCL1及びCXCL2からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。

請求項11

前記遺伝子産物は、低酸素誘導性因子1−アルファ(HIF−1α)である、請求項7に記載の方法。

請求項12

前記薬剤は、エキノマイシン、PX12、FM19G11、クリプトタンシノンケトミン、ボルテミブアクリフラビンメチル3−[[2−[4−(2−アダマンチルフェノキシアセチルアミノ]−4−ヒドロキシベンゾエートジメチルオキサイルグリシンDMOG)、ケモチン、YC−1、クリシン、ジメチル−ビスフェノールA、CL67、及び、それらの組み合わせからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。

請求項13

前記遺伝子産物は、ウロプラキン1B(UPK1B)である、請求項7に記載の方法。

請求項14

前記薬剤は、UPKB1に競合的に結合するか、または、UPKB1を標的とする、請求項1または13に記載の方法。

請求項15

前記薬剤は、マンノース、UPK1結合部分にコンジュゲートされたマンノース、抗UPKB1抗体もしくはその結合断片、または、UPKB1との結合のため選別された、ペプチドペプトイド、RNA、DNA、PNA、もしくはその他の遺伝子操作分子から選択される、請求項14に記載の方法。

請求項16

前記薬剤は、損傷した中皮細胞を標的として破壊または除去する、請求項1に記載の方法。

請求項17

癒着または癒着になる可能性が高い領域を画像化する方法であって、損傷した中皮細胞に選択的に発現する細胞マーカーに特異的な標識結合部分と個体とを接触させることと、前記標識結合部分を画像化することとを含む、方法。

請求項18

前記画像化はMRIまたはPETによる画像化である、請求項17に記載の方法。

請求項19

前記細胞マーカーはMSLN及びUPK1Bから選択される、請求項17または18に記載の方法。

請求項20

前記薬剤は、損傷した中皮細胞において発現が誘導される遺伝子産物に結合する、請求項1または13に記載の方法。

請求項21

前記遺伝子産物はメソテリンである、請求項20に記載の方法。

請求項22

前記薬剤は、抗メソテリン抗体またはそのメソテリン結合断片である、請求項21に記載の方法。

請求項23

前記薬剤は、癒着部位に炎症性マクロファージを動員する、請求項1または3に記載の方法。

請求項24

炎症性マクロファージ動員剤は、単球走化性タンパク質1(MCP−1)もしくはその炎症性マクロファージ動員部分、チオグリコレートPLGA、または、それらの組み合わせからなる群から選択される、請求項23に記載の方法。

請求項25

炎症性マクロファージ動員剤を手術前に投与することを含む、請求項23または24に記載の方法。

請求項26

損傷した中皮細胞の枯渇を達成する用量で、CD47とSIRPαとの結合を妨害する第2の薬剤を投与することをさらに含む、請求項1〜25のいずれかに記載の方法。

請求項27

前記第2の薬剤は、CD47に結合するポリペプチドである、請求項26に記載の方法。

請求項28

ポリペプチドは、抗CD47抗体シグナル調節タンパク質アルファ(SIRPα)ポリペプチド、いずれかのCD47結合断片、及び、それらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項26に記載の方法。

請求項29

前記癒着は腹部の癒着である、請求項1〜28のいずれかに記載の方法。

請求項30

前記癒着は術後癒着である、請求項1〜28のいずれかに記載の方法。

請求項31

薬剤が、対象に対して実施される外科的処置の前に投与される、請求項30に記載の方法。

請求項32

薬剤が、対象に対して実施される外科的処置の後に投与される、請求項30に記載の方法。

請求項33

(a)(i)癒着を減少させるために有効な量である、癒着形成を標的とする薬剤と、(ii)薬学的に許容される担体とを有する医薬組成物、及び、(b)前記医薬組成物を対象に投与する際の説明書を含む、請求項1〜32のいずれかに記載の方法で使用されるキット

請求項34

前記薬剤は、抗メソテリン抗体またはそのメソテリン結合断片、抗UPKB1抗体またはそのUPKB1結合断片、単球走化性タンパク質1(MCP−1)またはその炎症性マクロファージ動員部分、Gr−1、CD66b、CD177、CXCR1、VAP1、CXCR2、及びCD10から選択される顆粒球マーカーに特異的な抗体、チオグリコレート、PLGA、マンノースまたはそのUPKB1結合誘導体、ならびに、それらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項33に記載のキット。

請求項35

抗CD47抗体、シグナル調節タンパク質アルファ(SIRPα)ポリペプチド、またはいずれかのCD47結合断片をさらに含む、請求項33または34に記載のキット。

背景技術

0001

癒着とは、物理的外傷(多くは手術に起因する)または主要な炎症性傷害腹膜炎、感染など)のいずれかによる腹膜への外傷の結果として発生する線維性組織である。癒着の多くは無症候性であるものの、その主要な後遺症として、腸閉塞女性不妊症子宮または子宮付近で起こる場合)、慢性疼痛、及び生活の質の低下が挙げられる。

0002

米国国立衛生研究所によれば、腹部手術を受けた患者のうち93%超が癒着形成移行すると推定される。現在の推定では、腹部手術後の患者の最大20%は術後の癒着形成を理由に再入院すると示唆され、その医療費は米国だけで10億ドルを優に超えると予測されており、この額は多々あるがん匹敵する。癒着形成を防止する決定的な対策が未だに存在しないため、癒着は重大な医療負担であり、治療及び予防を目下の医療上の優先事項にすべきであるという見解優勢となっている。

0003

炎症浸潤、及びフィブリン沈着フィブリン溶解との均衡に着目した癒着形成の病因に関する広範な研究が行われている。現在では、腹膜表面の損傷をきっかけに、サイトカインシグナル一団を通じて炎症細胞動員する複雑なカスケードが開始されると考えられている。細胞浸潤動態マッピングする綿密な研究が行われており、それによると多形核白血球(PMN)は、損傷の早期(6時間以内)から存在し、続いてマクロファージが参加し(72時間超継続)、後期に入ってT細胞及びB細胞が動員される。これらの細胞型のそれぞれが癒着形成に果たす役割探究されており、大半の研究は、PMN、マクロファージ、及びCD4+ T細胞がもつ炎症誘発性プロファイルの働きにより、癒着の重症度が悪化するという点で見解が一致している。

0004

癒着過程の重要な誘導因子としての凝固カスケードの寄与について、数多くの研究がなされている。凝固カスケードは、免疫細胞の浸潤と同時に活性化される。トロンビンによってフィブリノーゲンフィブリンに変換され、フィブリンは中皮損傷の直後に器官の表面に堆積物を形成し、創傷治癒または癒着形成のためのフィブリン網を組織する。

0005

現状の知見では、癒着を生じさせる程度の腹膜損傷または臓器損傷には、下層基底膜露出させる表面中皮の除去を要し(diZerega&Campeau;Richardson,1911;Schade&Williamson,1968;A.Suzuki,2015)、それが2つの剥皮表面間にフィブリン接着をもたらし、続いて線維芽細胞起源は不明)の蓄積が起こるといわれている。これらの観察は、従来のスナップショット式の組織学検査に依存するところが大きく、細胞型の同定が困難であるため、新たな浸潤線維芽細胞の起源が議論の対象となっている。可能性がある起源としては、表面下結合組織内での筋線維芽細胞化生間葉系幹細胞MSC)の拡大、未分化原始MSCの浸潤、または癒着の形成を導く腹腔下線維芽細胞による細胞外基質沈着がある(Cheong et al.;Ellis,Harrison,&Hugh,1965;Hellebrekers&Kooistra,2011;Lucas,Warejcka,Young,&Lee,1996;Raftery,1973)。

0006

上記のパラダイムを支持する研究者らによれば、手術後の異なる時間に齧歯類モデルの腹腔に前述した線維芽細胞型を移植した結果、術後の癒着形成の増加を示したことから、この細胞型から癒着が生じるという見解が裏付けられたと主張している(Lucas et al.,1996)。他の研究者らは、摩擦がない界面を含む表面中皮の上皮特性が癒着形成に対する保護的役割を示すと指摘し、術後癒着を予防するための臨床的アプローチとして中皮細胞シートの使用も提案している(Inagaki,Inagaki,Kokudo,&Miyajima,2015)。

0007

線維性疾患発症及び進行の研究(Rinkevich et al.,2012,2015)に使用することができる起源細胞が存在せず、腹部癒着に至る初期分子的及び細胞的な事象についてあまり知られていないため、強力な予防的治療または術後治療が開発されていない。そのため、現在の臨床治療では、予防的処置として、隣接する臓器間の接触を防止する物理的バリア(Liu,Li,Shu,Gray,&Prestwich,2005)、または高確率で癒着の再形成を招く方法ではあるが、医師による癒着臓器の外科的分離を必要とする癒着溶解(Ray,1998)が利用されている。

0008

中皮は、哺乳動物躯幹漿液腔(胸膜腔囲心腔、及び腹腔)のすべて、及び種々の内臓器官の外面を覆う外側上皮単層である。中皮の主要な構造は扁平上皮であるが、その組織は、線維芽細胞型の特徴となる細胞学的及び生化学的な特徴も表しており(Michailova&Usunoff,2006)、それが中皮に顕著な細胞可塑性を与えている(Rinkevich et al.,2012)。例えば、中皮細胞がサイトカイン及び他のシグナル応答して、筋線維芽細胞表現型を呈し、癒着過程を悪化させるサイトカイン及び細胞外基質タンパク質分泌する可能性があることが示唆されている。最近の系譜追跡研究ではさらに、表面中皮の可塑性により、内部臓器及びその血管系に線維芽細胞型及び平滑筋細胞型を生成することが実証されている。

0009

局所貧血、物理的外傷、出血、温度、化学的損傷、及び組織乾燥が癒着形成の発症要因であることを示唆するいくつかの異なった報告があるが、癒着の病因を制御する基本的な分子機構及び遺伝子機構は明確にされていない。本開示は、癒着形成の分子機構及び遺伝子機構について考察し、それにより、とりわけ、これらの知見に基づく治療的処置を提供する。

0010

本開示は、表面中皮が癒着形成の起源となる組織であることを実証し、癒着が中皮細胞自体の肉眼的病理所見であることを示す。また、正常な中皮を癒着のプログラムへと導く分子の事象連鎖を示し、こうした経路の機能的妨害がin vivoでの癒着形成を抑制することを実証する。これらの結果から癒着形成の新たな病理学的理解を与え、癒着の病因を治療及び/または予防する新規治療法/治療手段を確立する。

0011

ある特定の実施形態では、本開示は、癒着形成を減少させるための対象の治療方法であって、それを必要とする対象に、損傷した中皮細胞による癒着形成を標的とする薬剤投与することを含む方法を提供する。ある特定の実施形態では、薬剤は、損傷した中皮細胞を標的とし、それを破壊する。ある特定の実施形態では、薬剤は、癒着部位に炎症性マクロファージを動員する。ある特定の実施形態では、薬剤は、癒着部位への好中球の動員を阻止する。ある特定の実施形態では、薬剤は、損傷した中皮細胞に発現誘導される遺伝子産物の発現または活性を阻害する。薬剤の非限定的な例として、抗メソテリン抗体またはそのメソテリン結合断片抗CD47抗体、シグナル調節タンパク質アルファ(SIRPα)ポリペプチド、またはいずれかのCD47結合断片、単球走化性タンパク質1(MCP−1)またはその炎症性マクロファージ動員部分、抗Gr−1抗体もしくはそのGr−1結合断片、または顆粒球枯渇関与する他のマーカーチオグリコレートPLGA、マンノース、またはUPKB1結合部分もしくはMSLN結合部分を含む、損傷した中皮に特異的な結合部分にコンジュゲートされたマンノース、及び、それらの任意の組み合わせが挙げられる。これには、損傷した中皮、例えばUPKB1、MSLNなどと結合させるために選抜された、ペプチドペプトイド、RNA、DNA、PNA、または他の遺伝子操作分子が含まれる。

0012

本出願人は、MSLN、UPK1Bなどを含むがこれらに限定されない、癒着形成時に損傷した中皮で選択的に発現する生物学的マーカーを同定した。マーカーは、損傷した中皮細胞を、例えばアポトーシス食作用壊死などにより除去または破壊するための標的となる。いくつかの実施形態では、特異的結合部分、例えば抗体またはその断片を個体に投与して、損傷した中皮細胞を除去することで、例えば癒着形成を阻止するか、進行中の癒着形成を減少させるか、または既存の癒着を減少させる。マーカーは、例えばPET、MRIなどによる損傷した中皮細胞の存在検出に有用なバイオマーカーである。いくつかの実施形態では、MSLNまたはUPK1Bを含むがこれらに限定されない、損傷した中皮細胞のマーカーに結合する抗体または他の特異的結合部分が、検出可能なマーカーで標識される。マーカーには、例えば、PETまたはMRIによる画像化に有用な部分を含んでもよい。標識抗体または他の特異的結合部分を、例えばivまたは他の送達系によって患者と接触させ、標識部分の存在を利用して、癒着形成に関与する細胞を画像化する。

図面の簡単な説明

0013

表面中皮は癒着誘導に応答して増殖する。パネルA:配置及び擦過の30分後、1時間後、2時間後、及び4時間後の虚血タン(B)のヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色は、腹膜中皮に近接して持続的に存在することを示す(矢印)。パネルB:配置及び擦過の1時間後、24時間後、72時間後、及び直後に虚血ボタンのメソテリン(MSLN)に対する免疫蛍光染色で確認し示された、中皮の持続的な存在、ならびに24時間後及び72時間後の単一細胞層からの潜在的な肥厚を示す。パネルC:癒着誘導7日後、中皮特異的マーカーMSLN及びポドプラニン(PDPN)の免疫蛍光染色は、肝臓(L)と腹膜(P)との間に完全に形成された一連の癒着を示す。パネルD:野生型及びRFP並体結合体からの癒着のPDPN及びF4/80に対する免疫蛍光染色を示す。パネルE:正常腹膜組織と癒着した腹膜組織の高倍率視野(0.75mm×1mm)(n=20)ごとに、中皮細胞(MSLN+)(上)及び二重陽性EdU+MSLN+中皮細胞(下)の数を計数した。正常な腹膜組織と比べ、癒着部位の方が有意に多い中皮細胞及び二重陽性細胞が観察された。パネルF:正常腹膜(P)のMSLN及びEdU(上)及び腹膜と大腸(I)との癒着(ADH)に対する免疫蛍光染色を示す。
表面中皮を虚血ボタンから切り離し、PDPN+LYVE1−CD31−CD45−表面表現型により精製した。
遺伝子発現によってクラスター化された、ボタン配置の直後、ならびに6時間後、12時間後、及び24時間後に精製した表面中皮のRNA配列決定のヒートマップを示す。上記のクラスターは代表的な遺伝子を表す。
遺伝子発現によってクラスター化された、ボタン配置の直後、ならびに6時間後、12時間後、及び24時間後に精製した表面中皮のRNA配列決定のヒートマップを示す。上記のクラスターは代表的な遺伝子を表す。
癒着誘導手術のそれぞれ6時間後及び12時間後に、転写物ベル対数倍率変化を算出して対照と比較し、ゲノムに見られた全遺伝子に対してプロットした。
癒着誘導手術の24時間後に、転写物レベルの対数倍率変化を算出して対照と比較し、ゲノムに見られた全遺伝子に対してプロットした。
癒着誘導の6時間後、12時間後、及び24時間後に、活性化表面中皮で上方制御または下方制御された遺伝子セットのヒートマップを示す。
RNA配列決定から得た、24時間の時間経過にわたる、中皮、線維芽細胞、または癒着分子ごとに分類した標的遺伝子発現レベル(FPKM)を示す。
誘導7日後の癒着組織の免疫蛍光染色による標的遺伝子の確認を示す。スケールバーはすべて100μmである。
パネルA:癒着スコア0は、虚血ボタン(B)に対する可視癒着がないことを示す。H&E及びHoechst染色ではほとんど増殖が見られず、ボタンはMSLN及びフィブロネクチンが陽性に染色される。パネルB:癒着スコア1は、H&E及びHoechst染色で、線維質の有核組織を伴う虚血ボタンに対してわずかな糸状癒着がある。糸状癒着はMSLN及びフィブロネクチンが陽性に染色される。パネルC:スコア2の癒着は、H&E及びHoescht染色で、虚血ボタンに対して臓器の1領域の直接的な癒着を示し、虚血ボタンの識別可能輪郭があり、MSLN、フィブロネクチン、及びF4/80が陽性に染色される。パネルD:癒着スコア3は、H&E及びHoescht染色で、識別可能な2領域をもつ虚血ボタンに対して1つの臓器の2つの非連続領域、または2つの臓器の2領域の直接的な癒着を示し、MSLN、フィブロネクチン、F4/80、汎コラーゲン、及びCD31が陽性に染色される。パネルE:癒着スコア4は、虚血ボタンに対して3つ以上の非連続領域の直接的な癒着を示す。臓器特異的な中皮は、H&E染色及びHoescht染色での同定が困難な場合が多く、癒着領域はMSLN、フィブロネクチン、F4/80、汎コラーゲン、CD31が染色される。パネルF:癒着スコア5は、H&E染色及びHoescht染色で、腹膜と臓器との癒着ならびに臓器間の浸潤性癒着をもつ完全に緻密化した腹部を示す。スケールバーはすべて100umである。
抗メソテリン抗体は癒着を分解する。パネルA:免疫蛍光染色は、腹腔内注射された抗MSLN抗体がin vivoでの癒着誘導の直後に、損傷した中皮表面に結合することを示す。パネルB:CD47は、癒着誘導の6時間後、12時間後、及び24時間後、ならびに正常状態で発現される。パネルC:誘導2週間後、ビヒクル対照を用いた処置後、癒着が存在する。パネルD:抗MSLN抗体単独での処置は、癒着の大幅な減少を示す。パネルE:抗MSLN抗体と抗CD47との併用は、癒着のクリアランスを改善する。
パネルF:コラーゲン、フィブロネクチン、CD31、F4/80、及びMSLNの免疫蛍光染色は、MSLN+細胞の除去を示している。
HIF1αのノックダウンは、十分に癒着を阻止する。パネルA:正常酸素条件でのin vitro中皮マクロファージの共培養物は、PDPNまたはHIF1Aが染色された。パネルB:低酸素(5%O2インキュベーター)でのin vitro中皮マクロファージの共培養物は、PDPNまたはHIF1Aが染色された。スケールバーは250umである。パネルC:免疫蛍光染色は、癒着が誘導の7日後にHIF1A+であることを示す。パネルD:免疫蛍光染色は、誘導及び小分子阻害剤による処置の7日後に、癒着がHIF1A−であることを示す。スケールバーはすべて100umである。
パネルE:Hif1α小分子阻害剤エキノマイシン及びPX12による処置は、Hif1αを下方制御することにより癒着形成の有意な減少を示す。
パネルF:癒着誘導後及びエキノマイシン処置後の24時間の時間経過中に、選別された標的遺伝子のRNA配列決定から得た発現レベルを示す。遺伝子発現によってクラスター化された、ボタン配置の直後、及び6時間後、12時間後、24時間後、ならびにエキノマイシン処置後に精製した表面中皮のRNA配列決定のヒートマップを示す。
ヒト腹膜癒着は共通して、類似する標的遺伝子発現をしている。パネルA:ヒト癒着組織のH&E染色を示す。パネルB:ヒト癒着組織のトリクローム染色を示す。パネルC:ヒト癒着組織の免疫蛍光染色及びin situハイブリダイゼーション染色を示す。特に記載がない限り、スケールバーはすべて100umである。
中皮のin vitro培養アッセイを示す。異なる酸素条件でマクロファージを使用した場合としない場合の中皮移植した培養物を示す。通常の酸素条件下、5%酸素インキュベーター内、及び100uMのCoCl2 下に共培養物を置いた。
HIF1A及びHIF1Aノックダウン後の中皮遺伝子標的を示す。HIF1A及び中皮標的遺伝子に関するRNA配列決定スクリーニングからの発現値を24時間の時間経過にわたって取得し、20ug/kgのエキノマイシン処置した試料と比較した。
パネルA:損傷した中皮細胞から得た、24時間の時間経過にわたるRNA配列決定結果は、炎症性ケモカイン及びサイトカインを含む複数の遺伝子セット及びプロセスの差次的発現を示す。パネルB:赤色蛍光タンパク質mCherryを構成的に発現するマウス(「TM7」)と野生型(非有色マウス)との並体結合実験において誘導された癒着の蛍光顕微鏡検査を示す。F4/80は緑色で示されている。パネルC:構成的mCherryマウス(TM7「ドナー」)から骨髄移植を受けている構成的シアン蛍光タンパク質(CFP)マウス(「宿主」)において誘導された癒着の蛍光顕微鏡検査を示す。F4/80は緑色で示されている。
パネルD:チオグリコレートまたはカタラーゼで(癒着誘導の24時間前に)前処置し、加えて癒着誘導手術後の3日間、MCP−1、抗GR−1抗体、またはその両方で処置したマウスの癒着スコアを示す。
癒着誘導手術の3日前に、PLGA、チオグリコレート、またはPBS対照それぞれで前処置したマウスの癒着スコアを示す。損傷の7日後にマウスを評価し、縫合部位(S)またはボタン(B)に形成される癒着を癒着重症度0〜5で評価した。

0014

定義
以下の説明では、細胞培養の分野で従来から使用されている用語がいくつか使用されている。本明細書及び特許請求の範囲の明確かつ一貫した理解、ならびにそのような用語に与えられるべき範囲を示すために以下の定義を記載する。

0015

本明細書で使用される核酸化学、生化学、遺伝学、及び分子生物学の用語及び記号は、本分野の標準的な論文及びテキスト、例えば、Kornberg and Baker,DNA Replication,Second Edition(W.H.Freeman,New York,1992);Lehninger,Biochemistry,Second Edition(Worth Publishers,New York,1975);Strachan and Read,Human Molecular Genetics,Second Edition(Wiley−Liss,New York,1999);Eckstein,editor,Oligonucleotides and Analogs:A Practical Approach(Oxford University Press,New York,1991);Gait,editor,Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach(IRL Press,Oxford,1984)などの用語に従う。

0016

本明細書で使用される場合、用語「治療薬」は、1種以上の「治療薬」または「薬物」を含む。用語「治療薬」または「薬物」は、本明細書で同義に使用することができ、薬学的に活性な化合物を含む。例として、抗生物質、小分子、タンパク質またはポリペプチド、ポリヌクレオチド、核酸、オリゴヌクレオチドリボザイムアンチセンスオリゴヌクレオチド、遺伝子/ベクター系アンチセンス核酸(RNAまたはDNA)、ウイルスベクターまたはウイルス由来ベクター、抗体、受容体アンタゴニスト転写リプレッサーなどが挙げられるが、これらに限定されない。ポリヌクレオチドは、治療用タンパク質または治療用ポリペプチドをコードするものであってよい。

0017

「ポリヌクレオチド」または「オリゴヌクレオチド」は同義に使用され、それぞれヌクレオチド単量体線状ポリマー、例えばデオキシリボヌクレオチド及び/またはリボヌクレオチドを意味する。

0018

用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」は、本明細書で同義に使用され、アミノ酸残基ポリマーを指す。この用語はまた、1つ以上のアミノ酸残基が、対応する天然アミノ酸人工的な化学的模倣体であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然アミノ酸ポリマー及び非天然アミノ酸ポリマーにも適用される。

0019

用語「アミノ酸」は、天然アミノ酸及び合成アミノ酸、ならびに天然アミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣体を指す。天然アミノ酸とは、遺伝暗号によってコードされるアミノ酸、ならびに後で修飾されたアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリンガンマカルボキシグルタミン酸、及びO−ホスホセリンである。アミノ酸類似体とは、天然アミノ酸と同じ基本化学構造を有する化合物、すなわち、アルファ炭素水素カルボキシル基アミノ基、及びR基が結合している化合物、例えば、ホモセリンノルロイシンメチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを指す。このような類似体は、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)または修飾されたペプチド主鎖を有するが、天然アミノ酸と同じ基本化学構造を保持する。アミノ酸模倣体とは、アミノ酸の一般化学構造とは異なる構造を有するが、天然アミノ酸と同様に機能する化合物を指す。

0020

用語「抗体」または「抗体部分」とは、エピトープ適合し、それを認識する特異的形状を有し、1つ以上の非共有結合相互作用により、分子構造とエピトープとの複合体が安定化される、任意のポリペプチド鎖をもつ分子構造を含むことを意図する。本発明で利用される抗体は、ポリクローナル抗体であっても、モノクローナル抗体であってもよい。ある特定の態様では、細胞培養または組換えによって複製でき、その抗原性を低下させるように修飾できるため、モノクローナル抗体が好ましい場合がある。ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体の産生は、当技術分野で周知されている。

0021

全免疫グロブリン(またはその組換え対応物)に加えて、エピトープ結合部位を含む免疫グロブリン断片(例えば、Fab’、F(ab’)2、または他の断片)は、本発明における抗体部分として有用であり、これを抗体の「結合断片」または「エピトープ結合断片」と呼ぶ場合がある。そのような抗体断片は、リシンペプシンパパイン、または他のプロテアーゼ切断によって全免疫グロブリンから生成することができる。「断片」または最小免疫グロブリンは、組換え免疫グロブリン技術を利用して設計することができる。例えば、本発明に使用される「Fv」免疫グロブリンは、ペプチドリンカー(例えばポリグリシン、またはアルファへリックスもしくはベータシートモチーフを形成しない他の配列)を介して可変軽鎖領域可変重鎖領域に連結することにより作製することができる。

0022

抗体には、遊離抗体及びそれから誘導される抗原結合断片、ならびにコンジュゲート、例えばPEG化抗体、薬物、放射性同位体、または毒素のコンジュゲートなどを含む。特異的エピトープまたはエピトープの組み合わせに対して指向性であるモノクローナル抗体は、マーカーを発現する細胞集団の標的化及び/または枯渇を可能にする。モノクローナル抗体を用いて、マーカー(複数可)を発現する細胞集団をスクリーニングする様々な技術を利用することができ、これには、抗体で被覆した磁気ビーズを用いた磁気分離固体マトリックス(すなわちプレート)に結合した抗体による「パニング」、及びフローサイトメトリー(例えば、米国特許第5,985,660号、及びMorrison et al.Cell,96:737−49(1999)を参照)を含む。これらの技術は、生検試料免疫組織化学において、またがん細胞により血液及び他の生体液に排出されたマーカーの存在を検出する際などに、細胞の特定の集団のスクリーニングを可能にする。

0023

このような抗体のヒト化型も本発明の範囲内である。ヒト化抗体は、抗原性が低いため、ヒトでのin vivo用途に特に有用である。

0024

用語「対象」、「個体」、及び「患者」は、本明細書で同義に使用され、治療について評価する哺乳動物及び/または治療される哺乳動物を指す。一実施形態では、哺乳動物はヒトである。用語「対象」、「個体」、及び「患者」は、癒着を有するか、またはそのリスクがある個体を包含するが、これらに限定されない。対象はヒトであってよいが、他の哺乳動物、特にヒト疾患の実験モデルとして有用な哺乳動物、例えばマウス、ラットなども含む。

0025

本明細書で使用される場合、「治療」、「治療する」などの用語は、対象(例えば、患者)で効果を得ることを目的として、薬剤を投与すること、または手順を実施することを指す。効果は、望ましくない病態、疾患、またはその症状を完全にもしくは部分的に予防する場合には予防的であり得、及び/または、望ましくない病態、疾患、及び/または疾患の症状の部分的もしくは完全な回復寛解、もしくは治癒に有効である場合には治療的であり得る。したがって、治療には、望ましくない病態、疾患、またはその症状の発症前、望ましくない病態、疾患、またはその症状の発症中、及び/または望ましくない病態、疾患、またはその症状の発症後の薬剤の投与を包含する。治療とは、治療の奏功、または望ましくない病態もしくは疾患の改善もしくは予防に関する何らかの兆候を指す場合があり、これには、任意の客観的または主観パラメーター、例えば、緩和、寛解、症状の減少、もしくは望ましくない病態を患者にとって忍容可能にすること、退化もしくは衰退速度の遅延、または退化の最終点での衰弱を軽減することを含む。症状の治療または改善は、医師による検査の結果を含む、客観的または主観的パラメーターに基づくものであり得る。したがって、用語「治療する」には、症状または望ましくない病態の発症を予防または遅延させる、緩和する、または停止もしくは阻害するための本開示の化合物または薬剤の投与を含む。用語「治療効果」とは、望ましくない病態、疾患、もしくは症状、またはそれらの副作用の軽減、解消、または予防を指す。

0026

「と併用して」、「併用療法」、及び「併用製品」とは、ある特定の実施形態において、第1の治療薬と第2の治療薬とを患者に同時投与することを指す。併用投与される場合、各成分は、同時に投与しても、または異なる時点に任意の順序で連続して投与してもよい。したがって、各成分は別々に、ただし所望の治療効果が得られる程度に時間を空けずに投与することができる。

0027

本明細書で使用される場合、用語「相関する」または「と相関する」及び同様の用語は、事象が数値データセットなどを含む場合に、2つの事象のインスタンス間での統計的関連性を指す。例えば、事象が数値を含む場合、正の相関(本明細書で「直接相関」とも呼ぶ)とは、一方が増加するにつれて他方も増加することを意味する。負の相関(本明細書で「逆相関」とも呼ぶ)とは、一方が増加するにつれて他方が減少することを意味する。

0028

用量単位」とは、治療される特定の個体に応じた単位用量として適する物理的な個別単位を指す。各単位には、必要とされる薬学的担体と混合されたとき、望ましい治療効果(複数可)を生じさせるように計算された活性化合物(複数可)の所定量を含有することができる。用量単位の内訳は、(a)活性化合物(複数可)固有の特徴及び達成される特定の治療効果(複数可)によって、ならびに(b)そのような活性化合物(複数可)を調剤する技術分野に固有の制限によって決定することができる。

0029

「薬学的に許容される賦形剤」とは、一般に安全で非毒性であり、望ましい医薬組成物の調製に有用な賦形剤を意味し、ヒト医薬用途に加え獣医学用途にも許容される賦形剤を含む。そのような賦形剤は、固体液体半固体、またはエアゾール組成物の場合には気体であってもよい。

0030

組成物担体希釈剤、及び試薬を指す場合、用語「薬学的に許容される」、「生理学的に許容される」、及びそれらの文法上の変形例は同義に使用され、物質が、組成物の投与に禁忌となるほど望ましくない生理学的影響を及ぼすことなくヒトに投与できることを表す。

0031

「治療有効量」とは、対象に投与されたときに対象の望ましくない病態、症状、または疾患の治療に十分に有効である量を意味する。有効量は、癒着を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、またはそれ以上減少させるために十分である。治療用抗体の用量は、例えば、約1mg/kg体重〜約100mg/kg体重であり得、手術直後または癒着形成をもたらすと予想される他の事象の直後に投与することも、あるいは既存の癒着を減少させるために投与することもできる。毎日、2日ごと、3日ごと、隔週、毎週などに投与を繰り返すことができる。

0032

実施形態の詳細な説明
上記で要約したように、本開示は、例えば、対象における癒着形成の予防、癒着形成の停止もしくは減少、及び/または定着した癒着の逆転もしくは解消を含む、対象における術後癒着の治療方法を提供する。そのような方法を実施するための組成物及びキットも提供する。

0033

本発明の態様を詳細に記載するにあたり、本発明は記載される特定の実施形態に限定されず、当然ながら、これらを変更できるものと理解すべきである。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で使用される用語は特定の実施形態の記載のみを目的としており、限定を意図しないものと理解されるべきである。

0034

ある範囲の数値が与えられるとき、文脈から特に明示されない限り、この範囲の上限と下限との間の各中間値、ならびにこの記載された範囲内の他のいずれの記載値または中間値も下限の単位の10分の1まで本発明に包含されるものと理解されるべきである。これよりも狭い範囲の上限と下限とは、その狭い範囲に独立して包含されてもよく、また記載された範囲に何らかの具体的な除外制限があることを条件として本発明内に包含される。記載された範囲が上限と下限との一方または両方を含む場合、その含まれる上限と下限との一方または両方を除外した範囲もまた本発明の範囲内に包含される。

0035

本明細書において、ある特定の範囲を用語「約」が先行する数値を用いて表す。用語「約」は、それが先行する正確な数に加え、その用語が先行する数に近似するかまたはそれとほぼ等しい数が文字通り許容されることを示す場合に本明細書で使用される。ある数字が、具体的に列挙された数字に近似するかまたはほぼ等しいか否かを判断する際、近似するかまたはほぼ等しい未列挙の数字が、それが提示される文脈において、具体的に列挙された数字と実質的な等価性を示す数字であり得る。

0036

特に定義しない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者に共通して理解されているものと同じ意味を有する。代表する例示的な方法及び材料を後述するが、本明細書に記載するものと同様または同等であるいかなる方法及び材料も本発明の実施または試験に使用することができる。

0037

本明細書で引用される刊行物及び特許はすべて、個別の刊行物または特許がそれぞれ具体的かつ個別に参照により本明細書に組み込まれると示されている場合と同様に、参照により本明細書に組み込まれ、引用されている刊行物と関連する方法及び/または材料を開示及び記載するために参照により本明細書に組み込まれる。いかなる刊行物の引用も、提出日に先立つその開示のためであり、本発明が先行発明を理由としてこのような刊行物に先行する権利を与えられないことを容認するものとはみなされない。さらに、記載された刊行物の日付は実際の出版日と異なる場合があり、それぞれ確認を要する場合がある。

0038

留意点として、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈によって特に明示されない限り、複数の指示対象物を包含する。さらに、任意の構成要素を除外するように特許請求の範囲を起草できることにも留意されたい。そのため、本記載は、特許請求の範囲の構成要素の列挙に関連して、「単独で」、「のみ」などのような排他的用語を使用する際、または「否定的」限定を使用する際の前提基準としての役割を果たすことを意図とする。

0039

本開示を読めば当業者には明らかであるように、本明細書に記載及び例示された個々の実施形態はそれぞれ、本発明の範囲または趣旨を逸脱せずに、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴と容易に分離できる、またはその特徴と組み合わせることができる別々の構成要素及び特徴を有している。列挙される方法はいずれも、列挙される事象の順序で実施しても、あるいは論理的に起こり得る他のいかなる順序で実施してもよい。

0040

本開示は、癒着(例えば術後癒着)形成を減少させるための対象の治療方法に関し、損傷した中皮細胞による癒着形成を標的とする薬剤を対象に投与することを含む。そのような治療方法を実施するように構成された組成物及びキットも提供する。この開示は、本発明者らによる、癒着の開始及び一因を担う初代細胞型としての表面中皮の同定に少なくとも部分的に基づいている(下記の実施例を参照)。我々は、損傷した中皮細胞による癒着形成過程にある複数の異なるチェックポイントのうちの1つ以上を標的にすることによって、対象の癒着形成を治療できることを実証する。

0041

ある特定の実施形態では、薬剤は、損傷した中皮細胞を標的とし、それを破壊する。例えば、薬剤は、損傷した中皮細胞で発現が誘導される遺伝子産物に結合することによって、損傷した中皮細胞を損傷していない中皮細胞と区別して排除することができる。これらの実施形態のいくつかにおいて、薬剤は、損傷した中皮細胞で発現するが、損傷していない中皮細胞では発現しない標的タンパク質に特異的である(例えば、特異的に結合する)。ある特定の実施形態では、この遺伝子産物は、メソテリン(MSLN)またはウロプラキン1B(UPK1B)である。その両方について以下でさらに詳細に考察する。

0042

実施例に記載するように、MSLNを標的とする薬剤を使用すると、術後癒着のクリアランスを増加させることができる。加えて、MSLNは胚中皮遺伝子であり、成人期には広く発現せずに、(本明細書に記載の)癒着及び腫瘍を顕著に排除するため、望ましい標的である。

0043

ある特定の実施形態では、薬剤は、MSLNに特異的に結合するポリペプチドである。例えば、ポリペプチドは、抗MSLN抗体またはそのMSLN結合断片であり得る。

0044

薬剤は、単独で、または他の薬剤、例えば免疫調節剤と併用して投与することができる。したがって、ある特定の実施形態では、方法はさらに、抗MSLN抗体を単独で、または他の免疫調節物質、例えば細胞除去を誘導する薬剤と組み合わせて投与することを含む。ある特定のこれらの実施形態では、第2の薬剤は、損傷した中皮細胞の枯渇を達成する用量で、損傷した中皮細胞においてCD47の活性を阻害する、例えばCD47に結合し、CD47のSIRPαとの結合を妨害するポリペプチドである。ある特定の実施形態では、ポリペプチドは、抗CD47抗体、シグナル調節タンパク質アルファ(SIRPα)ポリペプチド、いずれかのCD47結合断片、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。例えば、米国特許第US8,758,750号の表題「Synergistic anti−CD47 therapy for hematologic cancers」、米国特許第8,562,997号、米国特許第9,623,079号、米国特許出願公開第US2015/0071905号の表題「High Affinity Sirp−Alpha Reagents」を参照のこと。すべての文献の全体が参照により本明細書に組み込まれる。

0045

本明細書に示す実施例では、損傷した中皮細胞に誘導される遺伝子産物に特異的なポリペプチド(例えば、抗体)薬剤を使用すると、損傷した中皮細胞が除去されて臨床環境における癒着の減少をもたらすことを実証する。具体的には、抗MSLN抗体による細胞表面受容体MSLNの標的化は、誘導後の動物モデルにおいて癒着スコアの実質的な低下を示し、また動物に副作用をほとんどまたは全く示さないという理由から実現可能性を実証した。治療の有効性は、抗CD47を含むがこれに限定されない免疫アジュバントの使用によってさらに増加する。

0046

ある特定の実施形態では、薬剤は、癒着部位に炎症性マクロファージを(血中単球の動員を通じて)動員する。この動員は、臨床環境における癒着形成の減少をもたらす。

0047

実施例に記載するように、炎症性マクロファージ/単球の動員剤の使用は、対象における術後癒着の治療(例えば、予防または除去)に有効である。例えば、MCP−1の投与(例えば、腹腔内)は、誘導後の動物モデルにおいて癒着スコアの実質的な低下を示した。そのような投与は、動物にほとんどまたは全く副作用が現れないという理由から実現可能であることが実証された。

0048

MCP−1に加えて、対象に無菌性炎症を誘発する薬剤が、癒着形成の治療に使用されている。そのような薬剤の例として、チオグリコレート及びポリ乳酸グリコール酸共重合体PLGAが挙げられる。

0049

このように、炎症性マクロファージの動員は、単球走化性タンパク質1(MCP−1)もしくはその炎症性マクロファージ動員部分、チオグリコレート、PLGA、またはそれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない任意の利便な薬剤(複数可)を用いて達成することができる。

0050

ある特定の実施形態では、薬剤は好中球の動員を防止する。実施例に記載するように、血中好中球の排除/減少または潜在的な癒着部位への遊走の阻止は、臨床環境における癒着形成の減少をもたらす。したがって、血中好中球を排除/減少させる、及び/または潜在的な癒着部位へのそれらの遊走を阻止する任意の薬剤を対象に投与して、癒着を治療することができる。

0051

例えば、薬剤は、好中球及び他の炎症性顆粒球に発現するGr−1、CD66b、CD177、CXCR1、VAP1、CXCR2、及びCD10から選択される顆粒球マーカーに結合し、それらを排除/減少に至らせるか、または潜在的な癒着部位への遊走を阻害するポリペプチドであり得る。ある特定の実施形態では、薬剤は、ポリペプチド、例えば抗体またはその結合断片である。

0052

留意点として、炎症性マクロファージの動員を促進する1種以上の薬剤と、好中球の遊走を排除/減少させるまたは阻害する1種以上の薬剤とを組み合わせることができる。例えば、抗MSLN抗体及び抗顆粒球抗体を対象に投与して、癒着を治療することができる。

0053

ある特定の実施形態では、薬剤は、損傷した中皮細胞に発現が誘導される遺伝子産物、例えばMSLN、UPK1Bなどの発現または活性を阻害する。

0054

実施例に記載するように、損傷した中皮細胞に複数の遺伝子の発現を誘導し、これを利用して対象の癒着を治療することができる。いくつかの異なった薬剤を使用することができ、その各々が、異なる誘導遺伝子、及び/またはその遺伝子が調節する細胞経路もしくは細胞活性を標的とすることができる。薬剤は遺伝子発現を阻害することができ、例えばRNAi、shRNA、アンチセンスRNAなどの阻害性RNA薬剤である。薬剤は、遺伝子産物の活性を阻害して、例えば、遺伝子産物が関与するシグナル伝達経路において受容体リガンドまたはシグナル伝達分子との相互作用を阻止することができる。この記載に関して何ら限定を意図していない。

0055

例えば、低酸素誘導因子1アルファ(HIF−1α)の遺伝子は、中皮細胞損傷時に誘導される。HIF−1αの発現及び/または活性を阻害する薬剤を対象に投与することにより、対象における癒着を治療(例えば、予防、排除、または抑制)することができる。エキノマイシン、PX12、FM19G11、クリプトタンシノンケトミン、ボルテミブアクリフラビンメチル3−[[2−[4−(2−アダマンチルフェノキシアセチル]アミノ]−4−ヒドロキシベンゾエートジメチルオキサイルグリシンDMOG)、ケモチン、YC−1、クリシン、ジメチル−ビスフェノールA、CL67、及びそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない、HIF−1αの発現または活性を阻害する任意の薬剤を使用することができる。

0056

例えば、本明細書に示すように、エキノマイシンは、中皮細胞の増殖、活性化、及び細胞−細胞接触を阻害することによって、マウスモデルにおける癒着の形成を有意に減少させる。PX12、FM19G11、及びクリプトタンシノンを含む、HIF−1α活性を妨害する追加薬剤もまた、このマウスモデルにおいて癒着形成を減少させる。

0057

別の例として、ウロプラキン1B(UPK1B)の遺伝子が、中皮細胞損傷時に誘導される。UPK1Bの発現及び/または活性を阻害する薬剤を対象に投与することにより、対象における癒着を治療(例えば、予防、排除、または抑制)することができる。UPK1Bの発現または活性を阻害する任意の薬剤を使用することができる。加えて、UPK1B発現細胞を標的として破壊または除去する薬剤を使用することができる。ある特定の実施形態では、薬剤は、UPK1Bに特異的に結合するポリペプチドである。例えば、ポリペプチドは、抗UPK1B抗体またはそのUPK1B結合断片であり得る。薬剤は、単独で、または他の薬剤、例えば免疫調節剤と併用して投与することができる。したがって、ある特定の実施形態では、方法はさらに、抗UPK1B抗体を単独で、または他の免疫調節物質、例えば細胞除去を誘導する薬剤と組み合わせて投与することを含む。ある特定のこれらの実施形態では、第2の薬剤は、損傷した中皮細胞においてCD47の活性を阻害する、例えば(本明細書に記載の)CD47に結合するポリペプチドである。UPK1Bは胚中皮遺伝子であり、成人期には癒着(損傷した中皮)及び膀胱上皮を除いて広く発現しないため望ましい標的である。

0058

マンノースは、UPK1Bに競合的に結合し、同種受容体/リガンド(複数可)とのその相互作用を阻止する単純な単糖類である。本明細書の実施例に示すように、マンノースはUKP1Bに競合的に結合し、誘導後の動物モデルにおいて癒着スコアの実質的な低下をもたらす。したがって、ある特定の実施形態では、癒着を治療するために対象に投与される薬剤は、UPKB1に競合的に結合する。これらの薬剤として、例えば、マンノース、そのUPKB1結合誘導体(例えば、タンパク質コンジュゲート二量体三量体デンドリマーなど)、及び/または類似体、ならびにUPKB1に競合的に結合する他の薬剤、例えば、UPKB1が結合する天然受容体/リガンドドメインから誘導された、UPKB1に結合する可溶性ポリペプチドが挙げられる。

0059

別の例として、CXCケモカインを含む、いくつかの好中球動員遺伝子産物の発現が、損傷した中皮細胞に誘導される。例えば、CXCL1遺伝子及びCXCL2遺伝子は、損傷時に中皮細胞に誘導される。上記したように、好中球の動員は癒着形成の増強をもたらすため、そのような好中球動員遺伝子産物の発現及び/または活性を阻止すれば、対象における癒着形成が減少することになる。したがって、ある特定の実施形態では、好中球動員遺伝子産物の発現及び/または活性を阻害する薬剤を対象に投与して、癒着を治療することができる。ある特定の実施形態では、遺伝子産物は、CXCケモカイン、例えば、CXCL1、CXCL2、またはそれらの組み合わせである。薬剤は、CXCケモカインに結合して不活性化させる抗体もしくはその結合断片、またはCXCケモカインの発現を遮断する薬剤(例えば、阻害性RNA部分、例えば、siRNA、shRNAなど)であり得る。

0060

本明細書で提供される癒着治療方法を、癒着形成を促進し得る様々な病態のいずれか、例えば、術後損傷/外科的損傷(例えば、開腹手術または腹腔鏡手術)の対象の治療、及び/または炎症性傷害後の治療に使用することができる。薬剤は、例えば癒着の形成前に癒着予防を目的として、または癒着が形成もしくは開始された後に投与することができる。したがって、ある特定の実施形態では、癒着は、腹部の癒着、例えば腹部の術後癒着である。薬剤は、外科処置の前、間、または後に投与することができる。

0061

本開示によれば、本明細書に記載される癒着治療薬は、治療用途、例えばヒト治療に適した医薬組成物の状態で提供することができる。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、1種以上の本開示の治療要素またはその薬学的に許容される塩、エステル、もしくは溶媒和物を含む。いくつかの他の実施形態では、本開示の医薬組成物は、別の治療薬、例えば、抗炎症剤または癒着を治療するための追加薬剤と併用した、本開示の1種以上の治療要素を含む。

0062

本開示の治療要素は、活性治療薬及び他の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物として投与される場合が多い。好ましい形態は、意図された投与様式及び治療用途によって異なる。この組成物はまた、望まれる製剤に応じて、動物またはヒトへの投与に合わせた医薬組成物の製剤化に一般に使用されるビヒクルと定められている、薬学的に許容される非毒性担体または希釈剤も含み得る。希釈剤は、配合薬生物学的活性に影響を与えないように選択される。そのような希釈剤の例は、蒸留水リン酸緩衝生理食塩水リンゲル液デキストロース液、及びハンクス液である。加えて、医薬組成物または製剤はまた、他の担体、アジュバント、または非毒性、非治療的、非免疫学的安定剤などを含んでもよい。

0063

さらに他のいくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物はまた、代謝が遅い大型の巨大分子、例えばタンパク質、多糖類、例えばキトサンポリ乳酸、ポリグルコール酸及びコポリマー(例えば、ラテックス機能化セファロース商標)、アガロースセルロースなど)、ポリマー性アミノ酸、アミノ酸コポリマー、ならびに脂質凝集体(例えば、油滴またはリポソーム)を含んでもよい。

0064

上記したように、損傷した中皮細胞による癒着形成を標的とする薬剤を投与することによって、対象の癒着を治療するための方法を提供する。そのような方法には、治療を必要とする対象に、治療有効量または有効量の、本明細書に詳述するような1種以上の薬剤を投与することを含む。

0065

例えば癒着を治療するための本開示の治療要素の有効量は、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトであるか動物であるか、投与される他の薬剤、及び治療が予防的であるか治療的であるかを含む、多種多様な要因に応じて異なる。通常、患者はヒトであるが、非ヒト哺乳動物、例えばイヌネコウマなどのコンパニオンアニマルウサギ、マウス、ラットなどの実験用哺乳動物などを治療することもできる。治療用量滴定し、安全性及び有効性を最適化することができる。

0066

いくつかの実施形態では、治療用量は、宿主体重あたり約0.0001〜100mg/kg、より一般的には0.01〜5mg/kgの範囲であり得る。例えば、用量は、1mg/kg体重または10mg/kg体重、すなわち1〜10mg/kgの範囲内であり得る。例示的な治療計画は、2週間に1回または1か月に1回または3〜6か月に1回の投与を必要とする。本開示の治療要素は、複数回にわたって投与することができる。単回投与間の間隔は、毎週、毎月、または毎年であり得る。患者体内の治療要素の血中濃度を測定することによって示される間隔はまた、不規則であってもよい。あるいは、本開示の治療要素を持続放出製剤として投与することができ、その場合には低頻度の投与で十分である。用量及び頻度は、患者体内でのポリペプチドの半減期に応じて異なる。

0067

癒着治療のための組成物は、非経口局所静脈内、腫瘍内、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、腹腔内、鼻腔内、または筋肉内といった各手段によって投与することができる。一般的な投与経路は静脈内または腹腔内であるが、他の経路も等しく有効であり得る。

0068

一般的には、組成物は、溶液または懸濁液いずれかである注射液として調製され、液体ビヒクルでの溶液化または懸濁化に適する固体形態を注射前に調製してもよい。製剤はまた、上述したようなアジュバント効果増強のため、乳化されるか、またはポリ乳酸、ポリグリコール酸、またはコポリマーなどのリポソームまたは微粒子封入することができる。Langer,Science 249:1527,1990及びHanes,Advanced Drug Delivery Reviews 28:97−119,1997。本開示の薬剤は、活性成分持続放出またはパルス放出を可能にするような方法で製剤化できる、デポ注射またはインプラント製剤の形態で投与することができる。医薬組成物は一般に、滅菌され実質的に等張で、かつ米国食品医薬品局のGood Manufacturing Practice(GMP規制のすべてに完全に合致するように製剤化される。

0069

癒着治療薬の毒性は、細胞培養物または実験動物における標準の薬学的手順によって、例えばLD50(集団の50%致死量)またはLD100(集団の100%致死量)を測定することによって決定することができる。毒性と治療効果との用量比治療指数である。ヒトで使用した場合に非毒性である用量範囲を処方する際に、これらの細胞培養アッセイ及び動物試験から得たデータを利用することができる。本明細書に記載のタンパク質の用量は、ほとんどまたは全く毒性を有しない有効量を含む血中濃度の範囲内に収まることが好ましい。用いる剤形及び利用される投与経路に応じて、この範囲内で用量を変更することができる。正確な配合、投与経路、及び用量は、患者の病状を考慮して個々の医師が選択することができる。留意点として、本明細書に開示されるいくつかの癒着治療薬は、ヒトでの使用が認可されたものである。

0070

また、癒着治療薬またはその製剤及び使用説明書を含む製造物品(例えば、システムまたはキット)も本開示の範囲内である。キットにはさらに、少なくとも1つの追加試薬を含んでもよい。キットは通常、キット内容物の使用目的を示すラベルを含む。ラベルという用語には、キット表面に記載されているもしくはキットに付属する、またはそれ以外の方法でキットに添付される、あらゆる書面または記録資料を含む。

0071

したがって、本開示の態様は、(a)(i)(本明細書に記載されるような)癒着を減少させるために有効な量の、損傷した中皮細胞による癒着形成を標的とする薬剤と、(ii)薬学的に許容される担体とを有する医薬組成物、及び(b)外科手術を受けた対象または外科手術を受ける予定の対象に、この医薬組成物を投与する際の説明書を収容するキットを含む。いくつかの実施形態では、薬剤は、抗MSLN抗体またはそのMSLN結合断片、抗UPKB1抗体またはそのUPKB1結合断片、抗CD47抗体、SIRPαポリペプチド、またはいずれかのCD47結合断片、MCP−1またはその炎症性マクロファージ動員部分、抗Gr−1抗体またはそのGr−1結合断片、チオグリコレート、PLGA、マンノースまたはそのUPKB1結合誘導体、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。

0072

また、上記したような製造物品(例えば、システムまたはキット)、例えば、(a)(i)(本明細書に記載されるような)癒着を減少させるために有効な量の、損傷した中皮細胞による癒着形成を標的とする薬剤と、(ii)薬学的に許容される担体とを有する医薬組成物、及び(b)外科手術を受けた対象または外科手術を受ける予定の対象に、この医薬組成物を投与する際の説明書の組み合わせを含むキットの製造方法を提供する。いくつかの実施形態では、薬剤は、抗MSLN抗体またはそのMSLN結合断片、抗CD47抗体、SIRPαポリペプチド、またはいずれかのCD47結合断片、MCP−1またはその炎症性マクロファージ動員部分、抗Gr−1抗体またはそのGr−1結合断片、チオグリコレート、PLGA、マンノースまたはそのUPKB1結合誘導体、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。

0073

本方法を実施するための説明書は一般に、適切な記録媒体に記録される。例えば、説明書は、紙またはプラスチックなどの基材上に印刷することができる。したがって、説明書は、キット中に添付文書として存在しても、キットの容器またはその構成要素(すなわち、包装または副包装に付随する)のラベルに存在してもよい。他の実施形態では、説明書は、CD−ROMディスケットなどの適切なコンピューター読み取り記憶媒体収録された電子記憶データファイルとして存在する。さらに他の実施形態では、キット中に実際の説明書が存在していないが、遠隔情報源から、例えばインターネットを介して説明書を入手する手段が提供される。この実施形態の一例は、説明書を閲覧することができるウェブアドレス、及び/または説明書をそこからダウンロードできるウェブアドレスを含むキットである。説明書と同様に、この説明書を入手する手段も適切な基材に記録される。

0074

本発明について詳細に説明してきたが、本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、種々の変更及び改変がなされ得ることが当業者には明らかである。

0075

以下の実施例は、本発明の作製方法及び使用方法の完全な開示及び説明を当業者に提供するために記載し、発明者が発明とみなすものの範囲を限定することを意図せず、また以下の実験が、すべてまたは唯一の実施された実験であることを意味することも意図しない。使用した数字(例えば、量、温度など)に関しては正確性を確保するよう努めたが、一部の実験誤差及び偏差が考慮されるべきである。特に記載がない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧または大気圧付近である。

0076

本発明は、本発明者により見出されたまたは提案された特定の実施形態に関して、本発明の実施に好適な態様を含むものとして記載されている。本開示に照らして、本発明の意図する範囲から逸脱することなく、例示された特定の実施形態に多数の改変及び変更を加え得ることを当業者に理解される。例えば、コドン冗長性を理由に、タンパク質配列に影響を及ぼすことなく、基本となるDNA配列に変更を加えることができる。さらに、生物学的機能等価性を考慮して、種類または量に関して生物学的作用に影響を及ぼすことなく、タンパク質構造に変更を加えることができる。そのような変形例はすべて、添付の特許請求の範囲の範囲内に包含されることを意図する。

0077

腹膜癒着は、臓器同士または臓器と腹膜壁とをつなぐ線維組織であり、術後罹病及び感染性罹病の重大な原因である。広範な研究が行われており、癒着形成を促進する上で造血細胞、サイトカイン、及びフィブリン沈着が主要な役割を果たすことが示唆されている。しかしながら、初期の癒着形成を促進する分子病因の特徴は、あまり明らかにされていない。

0078

ここでは、癒着の開始及び一因を担う初代細胞型として表面中皮を同定している。中皮特異的染色及び増殖マーカーの時間経過は、中皮細胞の拡大により癒着が形成されることを示している。癒着誘導直後、短時間での活性化中皮細胞の単離及びRNA配列決定は、癒着の特異的表面マーカー表現型及び癒着形成の候補調節因子を示唆するものである。損傷した中皮に固有な表面受容体として、メソテリン(MSLN)及びウロプラキン1B(UPK1B)が同定された。初期調節因子として低酸素誘導因子1α(HIF1α)が同定され、機能阻害により癒着形成の有意な減少を示し、これが術後癒着を防止する新たな治療薬であることを示唆した。癒着誘導後のHIF1α欠損中皮細胞のさらなるRNA配列決定分析により、ウイルムス腫瘍1(WT1)及びUPK1Bなどの標的がHIF1aの下流にあり、HIF1aによって制御され、癒着過程に関与することが実証された。ヒト癒着組織の分析では、類似の遺伝子サインがヒト疾患に存在することを確認している。我々の研究結果は、損傷した中皮が癒着形成に果たす極めて重要な役割を顕著に示し、癒着の病態生理を細胞的及び分子的に解明するものである。

0079

実施例1
材料及び方法
癒着誘導
癒着誘導手術を、6〜10週齢の野生型B6(C57BL/6J(The Jackson Laboratory))マウスに行った。足趾ピンチ(toe−pinch)試験によって意識不明と判定されるまで、吸入イソフルランでマウスを麻酔した。腹部をベタダイン及びリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で消毒した。マウスの体長に沿って走る皮膚に左鎖骨中央切開を行った。同様の左鎖骨中央切開を腹膜の縦方向に沿って走る腹膜に行った。腹膜を静かに右に折り畳み、止血鉗子押さえた。腹膜の小片(約5mm径)をクランプし、4−0絹縫合糸(Ethicon、683G)で根元結紮することによって、腹膜壁の右半分に虚血ボタンを1つだけ配置した。ボタン(24回)ならびに隣接する肝臓、盲腸、及び小・大腸(7回)を、手術用ブラシで(所望する癒着重症度による)選択に応じて軽く擦過した。ピンポイントな出血を避けるため、繰り返し回数を少なくして軽くブラッシングした。腹膜を4−0絹縫合糸を使用して閉膜し、皮膚をステープル縫合した(EZ Clips、9mm、Braintree Scientific Inc)。マウスを加熱パッド上で回復させ、0.05〜0.1mg/kgのブプレノルフィンを注射した。マウスを注意深く経過観察し、罹病の兆候を7日間にわたり毎日モニタリングした後、安楽死させた。癒着した組織を切開して、スコア評価し、2%パラホルムアルデヒド中にて4℃で一晩固定した。

0080

癒着のスコア評価
機能試験において、上文に詳述された基準に基づき、表面積接触及び分子構造の両方を考慮して、癒着ごとに1つのスコアを割り当てる。ただし、留意すべき点として、上記した個々の基準で表される癒着の重症度は連続して存在する可能性が高いため、必ずしも表面積接触の量が分子の表現型を規定するとは限らず、また逆も同様である。実験によると、コラーゲンまたはマクロファージの関与がほとんどまたは全くない高表面積接触(スコア3または4)の癒着領域が観察された(F4/80−)。逆に、コラーゲン及びマクロファージの浸潤性が高い低表面積接触(スコア2)の癒着領域も観察された。この事例では、これが臨床転帰のより重要な指標であると予測されるため、表面積接触または関与する臓器数に基づいて癒着をスコア化する。

0081

組織学
組織を2%パラホルムアルデヒド中にて4℃で一晩固定し、optimal cutting temperatureコンパウンドO.C.T(Sakura)で包埋して凍結させるか、またはパラフィン包埋した。癒着臓器全体を10〜12umの凍結切片に切断し、免疫蛍光に備え保存した。パラフィン切片は5umに切断し、標準的なプロトコールに従ってヘマトキシリン/エオシン染色及びマッソントリクローム染色を行った。

0082

免疫蛍光
凍結切片に免疫蛍光試験を行った。凍結切片を室温で10分間解凍し、PBSで2回洗浄した。スライドを5%血清中にて室温で30分間ブロックした。続いて、PDPN(1:100、マウスモノクローナル、Abcam)、MSLN(1:200、ウサギモノクローナル、ABBIOTEC)、フィブロネクチン(1:100、ウサギモノクローナル、Abcam)、F4/80(1:100、ラットポリクローナル、Abcam)、CD31(1:100、ウサギモノクローナル、Abcam)、汎コラーゲン(1:100、ウサギポリクローナル、Abcam)、WT1(1:100、ウサギポリクローナル、Abcam)、CD44(1:100、ウサギモノクローナル、Abcam)、HIF1A(1:100、マウスモノクローナル)、及びS100A4(1:100、ウサギポリクローナル、Abcam)に対する一次抗体切片を4℃で一晩染色し、PBSで3回洗浄した。染色したスライドを、Alex Fluor 488、594、または647にコンジュゲートした二次抗体と室温で1〜2時間インキュベートした。染色をPBSTで1回、PBSで3回洗浄した後、Hoechst 33342(Life Technologies)で2分間核染色を行い、Fluoromount G(Southern Biotech)でマウントした。

0083

EdUパルスチェイス
癒着誘導後、0.025mgの5−エチニル−2’−デオキシウリジン(Life Technologies)を90%PBS及び10%エタノールに溶かしてマウスに皮下注射した。マウスを7日間追跡し、安楽死させた。癒着した組織を切開し、2%パラホルムアルデヒドで一晩固定し、O.C.T(Sakura)中で凍結して、12umの切片にした。EdU陽性細胞を、Click−iT EdU Imaging Kit(Life Technologies)で可視化した。

0084

フローサイトメトリー
前述した手順に従って、一部を変更した癒着誘導手術を野生型C57BL/6J(The Jackson Laboratory)に行った。2つの虚血ボタンを腹膜の両側に配置し、ボタンまたは腹部臓器の擦過は行わなかった。マウスを6時間、12時間、または24時間回復させ、安楽死させた。根元を切断することにより虚血ボタンを切開し、分離培地(DMEM(Life Technologies、10565−042)、50mg/mlコラゲナーゼIV(Worthington Biochemical)、20uM CaCl2 )に入れた。片刃ブレード(Razor Blade Company)を使用してボタンをホモジナイズし、分離培地中にて37℃で30分間インキュベートした。その結果生じた細胞懸濁液を100umフィルター濾過し、PBS中の2%ウシ胎児血清(FBS)を用いて回転洗浄した。細胞を1mlのACK細胞溶解緩衝液(Life Technologies)にて4℃で5分間処理し、回転洗浄した。細胞を1%ヤギ血清(Life Technologies)で10分間ブロックし、抗PDPN(BioLegend、8.1.1、1:100)、抗LYVE−1(eBioscience、ALY−7、1:100)、抗CD31(eBioscience、390、1:100)、及び抗CD45(BioLegend、30−F11、1:100)で4℃で30分間染色した。細胞を回転沈降させ、濾過して、PBS中2%FBS200ulに再懸濁させた。細胞をFACSAria(BD Bioscences)に通し、PDPN+LYVE1−CD31−CD45−細胞を直接750ulのTrizol LS(Life Technologies)に投入して選別した。

0085

RNAの配列決定及び分析
選別した中皮集団からの全RNAを、Trizol(ThermoFisher)を使用して製造業者推奨事項に従って単離した。容易にするため、RNA沈殿時の担体として線状ポリアクリルアミド(Sigma)を添加した。精製した全RNAを4単位のRQRNaseフリーDNase(Promega)で37℃で1時間処理して微量のゲノムDNAを除去した。RNeasyマイクロキット(QIAGEN)を使用してDNase処理した全RNAを精製した。Ovation RNA−Seq System V2(NuGEN)を使用して、10〜50ngの全RNAを投入物として使用し、cDNAを調製及び増幅した。増幅したcDNAを、全体積120ml、デューティサイクル10%、強度5、サイクルバースト100、合計時間2分の設定を用いてCovaris S2(Covaris)を使用して剪断した。剪断したcDNAをAgencourt Ampure XP(Beckman Coulter)を使用して精製し、cDNA断片>=400塩基対(bp)を得た。剪断及びサイズ選別したcDNA500ngを投入物として使用し、製造業者の推奨事項に従って、Illumina(New England BioLabs)用のNEBNext Ultra DNA Library Prepキットを使用してライブラリー調製した。得られたライブラリー(断片分布:300〜700bp、ピーク500〜550bp)を、HiSeq 4000(Illumina)を使用して配列決定し、2×150塩基対のペアエンドリードを得た。Skewer(ref)を使用して、ベースコール品質及びアダプター配列の存在を検出し、得られたリードをトリミングした。このようにして得られた高品質のリードをOLego(ref)を使用してマウスゲノムにアライメントし、発現したmRNAのレベルをcuffdiff2(ref)を使用して推定し、1kb単位、100万マッピングリードあたりの断片(fragments per kilo−base per million mapped reads:FPKM)として表した。

0086

抗体治療
野生型B6(C57BL/6J(The Jackson Laboratory))に癒着を誘導し、7日間回復させた。200ugのモノクローナル抗MSLN(B35)抗体を注射後7日目、10日目、及び13日目に腹腔内注射によって投与した。200ugのモノクローナル抗CD47(MIAP301)(BioXCell)を同じ頻度で腹腔内注射により同時投与した。最初の手術から17日後にマウスを安楽死させ、癒着の重症度をスコア評価した。B35抗MSLN抗体はA.Miyajimaから寄贈されたものである。

0087

in vitro中皮培養
野生型B6(C57BL/6J(The Jackson Laboratory))を安楽死させ、腎被膜及び腸から中皮を切除した。切除した中皮を小さい画分に切り分け、EmbryoMax 0.1%ゼラチン溶液(EmdMillipore)で30分間前処理した培養皿に入れ、10%ウシ胎児血清、1%ペニシリンストレプトマイシン、及び1%非必須アミノ酸を加えたダルベッコ改変イーグル培地(Life Technologies)中にて37℃で7日間培養した。中皮細胞を通常条件下または低酸素条件下(1%O2インキュベーターまたは100uMのCoCl2 )でマクロファージ(コンフルエントになるまで添加)と共培養した。

0088

初代骨髄由来マクロファージ(BMDM)の調製
初代BMDMを調製するために、BALB/cマウスを人道的に安楽死させ、70%エタノールで消毒した。脚に沿って切開を行い、筋肉を骨から剥離した。大腿骨及び脛骨を躯幹から分断し、PBSですすいだ。6mLシリンジ及び23ゲージ針を用いて骨をフラッシュし、骨髄を10mL RPMIに再懸濁した。懸濁液を1200rpmで5分間遠心分離し、そのペレットを5mLのACK溶解緩衝液(Invitrogen)に5分間再懸濁して血液細胞を除去した。懸濁液を70μmFalcon細胞ストレーナーに通して濾過し、再度遠心分離した。ペレットを40mLのマクロファージ培地(RPMI+10%FBS+10%ペニシリン/ストレプトマイシン+10ng/mL MCSF)に再懸濁し、4枚の10cmペトリ皿に入れた。4日目にマクロファージ培地を交換した。7日目にマクロファージを皿から取り除いて使用した。

0089

小分子阻害剤治療
前述したように、癒着誘導手術を4〜8週齢の野生型B6(C57BL/6J(The Jackson Laboratory))に行った。200mg/kgのクリプトタンシノン(Sigma Aldrich)、2mg/kgのFM19G11(Sigma Aldrich)、10ug/kgもしくは20ug/kgのエキノマイシン(Sigma Aldrich)、または25mg/kgのPX12(Sigma Aldrich)を、損傷直後、損傷の4時間後、及びそれ以降の7日間24時間ごとに投与した。

0090

並体結合
並体結合手術を、同齢(4〜6週齢)の雌野生型B6(C57BL/6J(The Jackson Laboratory))及びC57BL/Ka Rosa26 mRFP1マウスに行った。並体結合を受けるマウスは、手術10日前から1つのケージ一緒に収容した。足趾ピンチ試験によって意識不明と判定されるまで、吸入イソフルランでマウスを麻酔した。マウスの両横腹部を剃毛し、70%エタノールとベタダインとで清浄した。マウスを互いに横に並べ、隣接する側の肘関節から膝関節まで切開を行った。4−0縫合糸(Ethicon)を用いて肘関節及び膝関節を結紮し、隣接するマウスの弛緩した皮膚を一緒にステープルで縫合した。マウスを加熱パッド上で回復させ、0.05〜0.1mg/kgのブプレノルフィンを注射した。マウスを注意深く経過観察し、罹病の兆候を14日間にわたり毎日モニタリングした。14日後にステープルを取り外し、マウスの後眼窩から採血してキメラ現象について調べた。

0091

結果
癒着の重症度及び位置に一貫性がある癒着モデルを特定するために、炎症性化学物質の腹腔内(I.P.)注射、手術用ブラシ、サンドペーパー、または同様の器具を用いた盲腸及び腹膜の粗い擦過(Chung,2002;Wei et al.,2015)、腹膜及び腹部臓器の焼灼(Kosaka,Yoshimoto,Yoshimoto,Fujimoto,&Nakanishi,2008;T.Suzuki et al.,2015)、及び/または腹腔壁への虚血ボタンの配置(Cassidy,Sherburne,Heydrick,&Stucchi,2015)を含んだ現在公開されている齧歯類モデルを分析した。最終的なモデルは、癒着を開始させ、癒着の一因となる細胞源を癒着発症時に容易に同定して単離できるように、癒着が形成される位置を確実に予測できる必要がある。我々は、化学的方法、または臓器(腹膜、盲腸、肝臓)表面への局所的な擦過であっても一般的な擦過を用いると、腹部癒着の位置及び重症度を制御することが困難であることを見出した。癒着形成の位置は、おそらく腹膜炎が原因で予測不可能な場合が多い。焼灼は、罹病率が高く、癒着形成も不均一であった。

0092

確立したモデルのうち、虚血ボタンを1つだけ腹膜壁の右半分に配置すると(「材料及び方法」を参照)、ボタンと肝臓または腸との間に癒着が生じたが、罹病は最小限または皆無であった。必要に応じて、ボタンの軽い擦過に続いて隣接する腹部臓器の軽い擦過を適用することによって、癒着の重症度を制御できることを見出した。この癒着プロトコールを使用することで癒着部位を一貫して制御することができ、その結果、癒着形成細胞の位置及びその重症度を予測し、疾患進行中の表面中皮の変遷を詳細に調べることができた。

0093

手術後、マウスを回復させ、誘導後30分後、1時間後、2時間後、4時間後、24時間後、72時間後、及び7日後に安楽死させた。発達した異所性癒着を有する虚血ボタンをすべて切除して固定し、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)、または中皮表面受容
マーカー(Rinkevich et al.,2012)であるポドプラニン(PDPN)及びメソテリン(MSLN)で染色した。術後の全時点で擦過の有無にかかわらず、虚血ボタンに無傷細胞層はっきりと観察された(図1A、1B)。これは、中皮が露出されず、機械的ストレスまたは損傷後の収縮もないことを示している。術後4時間で中皮は細胞増殖を起こし、誘導後24時間で肥厚化を示し(図1B)、多細胞層になった。損傷部位には細胞増殖が局在したが、ボタンの両側に隣接する未損傷の中皮は正常な単細胞層形態を示した。誘導後7日目に局所的に顕著な癒着形成が生じ、PDPN及びMSLNの両方で癒着組織が強く染色され(図1C)、癒着病巣が下層の中皮細胞に由来し、中皮細胞からなることが示唆された。

0094

癒着病巣が表面中皮由来であり、循環細胞ではないことを確認するために、C57BL/6Jマウスと、赤色蛍光タンパク質(RFP)を構成的に発現するC57BL/Ka Rosa26 mRFP1マウスとの並体結合試験を行った(Ueno&Weissman,2006)。同齢(4〜6週齢)の雌マウスの血管系を結合し(「材料及び方法」を参照)、14日後に並体結合マウスが血液キメラ性を獲得したことを確認した。次いで、並体結合体の非有色野生型C57BL/6Jマウスに癒着を誘導し、7日後に癒着形成について調べた。並体結合癒着を切片化し、PDPNで染色して中皮細胞の寄与を確認した。PDPN+細胞は全癒着部位にわたって見られることが観察され、非有色であることがわかった。これは、癒着に寄与する中皮細胞が循環細胞ではなく局所起源に由来することを示している(図1D)。RFP+細胞は癒着部位全体に見られ、散在しており、多くのRFP+細胞もまたF4/80が陽性に染色され、循環単球由来のマクロファージが癒着部位に浸潤していることが示された。

0095

我々はまた、癒着誘導後に5−エチニル−2’−デオキシウリジン(EdU)パルスチェイス試験を行い、細胞増殖について調べた。癒着誘導後に0.025mgのEdUをマウスに腹腔内注射し、7日間回復させた後、安楽死させ、その癒着を切開して切片化し、EdU、PDPN、及びMSLNで染色した。対照マウス(癒着誘導を受けていない)及び癒着誘導後のマウス(n=16)において、中皮細胞(PDPN+またはMSLN+として規定)を複数の(n=20)高倍率(0.75mm×1mm視野)で計数した。対照マウスと比較した場合、癒着領域には中皮細胞の数が有意に多く、癒着での中皮細胞数が増加していることが示された(図1E、1F)。中皮の増殖を評価するために、0.75mm×1mm視野で二重陽性のEdU+MSLN+またはEdU+PDPN+細胞の数を計数した(n=20)。対照領域よりも癒着領域での二重陽性細胞の大幅な増加が見られ、癒着が主として損傷部位に既存する中皮細胞の拡大によるものであることが示された(図1E、1F)。

0096

癒着形成に至る中皮細胞の転写状況の変化をよく理解するために、中皮細胞表面表現型:PDPN+LYVE1−CD31−CD45−を用いた蛍光活性細胞選別(FACS)を用いることにより、癒着誘導から6時間後、12時間後、及び24時間後に誘導部位から中皮細胞を単離した(図2A)。適量の中皮細胞を得るために、1匹のC57BL/6Jマウスに4つのボタンを(腹膜壁の両側に2つずつ)配置した。マウス5匹(ボタン20)を1組で三連にし、3つのマウスコホートを損傷から6時間後、12時間後、または24時間後に犠牲死させた。手術を受けていないマウスから腹膜中皮細胞をFACSにより単離し、癒着プログラムの誘導に関連する転写変化の対照(t=0)基準点として使用した。プールした細胞からRNAを単離し、標準的な手順に従って配列決定した(「材料及び方法」を参照)。差次的に発現した遺伝子を24時間の時間経過にわたる発現パターンに基づいてクラスター化し、遺伝子セット濃縮分析(「材料及び方法」を参照)を実行して、癒着進行の最初の24時間に起こる全体的な転写状況を明らかにした(図2B、2C、2D)。

0097

差次的に発現した遺伝子が主に6つの発現パターンに広範にクラスター化され、6時間、12時間、及び24時間でピークに達するか、急降下し(図2B)、これが癒着病因の2つの主な事象と考えられる、開始及び進行に対応することを見出した。6時間後に最大または最小の発現を示す初期遺伝子は、癒着形成の過程及び開始の調節因子である可能性が高い。12時間でピークに達するか、急降下する中間遺伝子は、初期遺伝子に応答している可能性が高く、潜在的に癒着進行をもたらす可能性がある。24時間で増加または減少する後期遺伝子は、癒着の進行を制御する遺伝子である可能性が高い。

0098

6時間後、12時間後、及び24時間後の転写物の倍率変化も算出し、全ゲノムに対してプロットした(図2C)。閾値q<0.05を基準として有意に上方制御または下方制御された遺伝子を算出して、遺伝子同一性に対してプロットし、倍率変化の有意な順に並べた。驚くべきことに、24時間以内に約8000の遺伝子が損傷後の中皮に有意に差次的発現されたことが見出された。我々の時間経過の間に有意に上方制御及び下方制御される遺伝子の量は、最終分化マクロファージとB細胞との間に見られた変化、約XXXX(未発表データ)に匹敵する。これは、損傷した中皮細胞が損傷後最初の24時間で完全な形質転換を受けたことを示し、中皮に存在する未知多様性を示唆している。

0099

G0期の分析を利用した遺伝子セット濃縮分析(図2D)は、誘導の最初の6時間以内に、血管新生及び低酸素応答に関連する初期遺伝子が中皮細胞において上方制御されることを示す。炎症応答の特徴的メディエーターは、ケモカイン活性及び走化性活性、サイトカイン分泌、ならびにNFカッパB経路を含めて、24時間の全時間経過にわたって有意に上方制御された(図2D)。増殖などの基本的な細胞過程は、24時間にわたって上方制御され、我々のパルスチェイス実験を裏付けている。

0100

興味深いことに、細胞外領域及びコラーゲン組織に関連する遺伝子セットは、癒着誘導後の24時間の時間経過にわたって下方制御された。これらの遺伝子セットには、特異的遺伝子フィブロネクチン1(FN1)、及びCOL1A1、COL1A2、COL3A1を含む様々なコラーゲン(図2D)が含まれ、主要な転写再構成が中皮損傷の初期段階で起こることを示している。

0101

古典的発生経路もまた、この時間枠にわたって減少した。シグナル伝達経路Wnt、Hedgehog、BMP、及びHippoはすべて、癒着誘導後1日目に下方制御されることが判明したが、その重要性については未検討である。結論として、一般に癒着形成及び炎症に有意に寄与すると考えられる経路であるTGFファミリーは、中皮細胞において24時間にわたり下方制御されることが見出され(図2D)、TGFシグナル伝達の上方制御はin vivo中皮細胞では起こらないことが示された。

0102

最後に、特異的遺伝子の挙動直接分析を実施した。興味深いことに、胚発生期の中皮に発現する多くの特異的マーカーは、損傷後に上方制御され、特にメソテリン(MSLN)、ウロプラキン1B(UPK1B)、及びウイルムス腫瘍1(WT1)は、そのすべてが24時間後にピークに達し(図2E)、癒着形成の後期段階を調節できることを示唆した。損傷後の胚遺伝子の再発現は珍しいことではないが、増殖表現型を示唆している。我々はまた、特徴的な線維芽細胞遺伝子、具体的には線維芽細胞特異的タンパク質1(FSP1)としても知られるS100A4、及び平滑筋アクチン(ACTA2)が損傷後に上方制御されることも見出した。このことは、中皮が損傷後、さらに線維芽細胞様の表現型に分化されることを示唆している。最後に、注目すべき点として接着分子が上方制御されており、接着及び遊走が癒着形成に重要な役割を果たし得ることが示された。

0103

癒着プログラムの開始調節因子を同定するために、我々は癒着誘導の最初の6時間以内にピークに達し、その後すぐに一定または減少したままである転写因子を調べた。低酸素誘導因子1アルファ(HIF1A)の遺伝子発現プロファイルが、この傾向と一致した(図2B、図2E)。

0104

我々のRNA配列決定スクリーニングを検証するために、前述した野生型C57BL/6Jマウスに癒着を誘導し、手術の7日後に引き続き癒着を免疫染色し、遺伝子標的を調べた(図2F)。我々の標的の多くに強い発現が観察され、免疫蛍光分析及びin situハイブリダイゼーション分析は、表面中皮及びそれに誘導された癒着組織に対する我々のアプローチの特異性を実証している。PDPN、MSLN、及びHIF1Aなどのいくつかの標的は癒着組織全体に発現するが、WT1は癒着病巣の亜集団内で活性化され、中皮内及び癒着内で異質性を示す。

0105

これらの標的を機能的に調べるには、癒着の重症度を評価する方法がまず必要であった。以前の研究では、癒着の重症度をスコア評価するために、強度(癒着した臓器の分離が機械的に困難)及び/または癒着した臓器の数に焦点を当てて癒着を特性決定していた(Dinarvand,Hassanian,Weiler,&Rezaie,2015;Kosaka et al.,2008;Wang et al.,2014)。

0106

我々の癒着スコア評価の標準スキームでは、癒着表面積の範囲と癒着の分子構造との両方を考慮し、以下に示す一連の個別の基準を示す癒着の重症度によって癒着の重症度をスコア評価するための細胞及び分子に関する詳細なガイドを提供した。上記した方法を用いて野生型C57BL/6Jマウスに癒着を誘導した。その際、異なる強度及び範囲の擦過によって、一連の癒着重症度を誘導した。癒着をスコア評価するまで、各マウスを7日間回復させた。

0107

このスキームでは、スコア0の癒着は、2つの領域間に癒着がなく、ボタンに限定的な中皮の肥厚がある(図3A)。この領域はMSLN及びフィブロネクチンが陽性に染色されている(図3A)。癒着スコア0のマウスに罹病の兆候はなく、7日間の回復期間生存した(n=25)。癒着スコア1は、「糸状」の癒着を示し、弱い線維架橋で2つの癒着領域が接続されていた(図3B)。糸状領域及びその周辺領域は、MSLN及びフィブロネクチンに対して免疫陽性であった(図3B)。癒着スコア1のマウスの大半は罹病の兆候はなく、7日間の回復期間生存した(n=11)。

0108

スコア2以上の癒着はすべて、2つの組織間直接接触を1箇所だけ含む。癒着接触自体は弱く、通常は腹膜と腹部臓器との接触を伴っていた(図3C)。2つの癒着領域間にある癒着は、MSLN、フィブロネクチン、及びF4/80が陽性に染色され、ある程度のマクロファージ浸潤が起こっていることが示唆された(図3C)。癒着スコア2のマウスの大半は罹病の兆候はなく、7日間の回復期間生存した(n=12)。癒着スコア3は、通常は腹膜と2つの腹部臓器との間の3領域、または単一臓器の2つの異なる非連続領域の直接的な連続する接触を特徴とした(図3D)。癒着領域は、MSLN、フィブロネクチン、F4/80、汎コラーゲン、及びCD31が陽性に染色された(図3D)。癒着スコア3のマウスの大半はほとんど罹病の兆候はなく、7日間の回復期間生存した(n=9)。癒着スコア4は、通常は腹膜と3つの腹部臓器との間の4領域以上、または1つもしくは2つの臓器の複数の独立した領域の直接的な連続する接触を含んでいた(図3E)。癒着領域は、MSLN、フィブロネクチン、F4/80、汎コラーゲン、及びCD31が陽性に染色された(図3E)。癒着スコア4のマウスの大半はほとんど罹病の兆候を示さず、7日間の回復期間生存した(n=14)。癒着スコア5は、腹部臓器の完全な緻密化/被包化を特徴とした。大部分の臓器が、腹膜に加え、互いに単一の硬腫として癒着した(図3F)。癒着領域は、MSLN、フィブロネクチン、F4/80、コラーゲン、及びCD31が陽性に染色された(図3F)。癒着スコア5のマウスの大半は、明らかに罹病し、損傷後7日目の生存率は低かった(n=5)。

0109

予防経路を調べるにあたり、損傷後6時間で転写物の存在量が有意に増加したことから、当初HIF1A転写因子に着目した。まず、in vitroでHIF1Aが表面中皮に及ぼす潜在的な影響を分析した。初代中皮細胞を腎被膜及び腸から取り出し、前述したように培養ウェルに移した(Rinkevich et al.,2012)。7日後、中皮細胞がその組織移植片から出現し、培養皿上で増殖した。培養した中皮細胞を低酸素条件(5%O2 または100uMのCoCl2 存在下)で3日間インキュベートした。驚くべきことに、低酸素時と正常時との中皮にほとんど形態的な差異は見られなかった(図7)。対照的に、同じマウス由来のマクロファージと共培養された7日後の中皮移植片は、顕著な形態学的反応を示し(図5A、図5B)、高密度かつ線維細胞性になり、PDPN及びHIF1Aが陽性に染色された。線維細胞表現型は移植片付近に集中していたが、隣接する移植片に由来する中皮細胞はしばしば互いの方向に成長する。

0110

in vivoでのHIF1A経路の阻害が癒着形成を阻止できるかどうかを調べるために、癒着誘導を受けたマウスを、HIF1Aまたはそのすぐ下流のカスケードに対する小分子阻害物質で処置した。HIF1A活性を阻害する(Dat et al.,2007)クリプトタンシノン(Sigma Aldrich)、アルファサブユニットの標的を抑制する(Moreno−Manzano et al.,2010)FM19G11(Sigma Aldrich)、HIF1A DNA結合をブロックする(Kong et al.,2005)エキノマイシン(Sigma Aldrich)、及びHIF1A転写活性をブロックする(Kim,Coon,Baker,&Powis,2011)PX−12(Sigma Aldrich)を選択した。野生型C57BL/6Jマウスに癒着誘導を行い、(200mg/kg)のクリプトタンシノン、(2mg/kg)のFM19G11、または(10ug/kgもしくは20ug/kg)のエキノマイシン、または(25mg/kg)のPX12を、損傷直後、損傷の4時間後、及びそれ以降の7日間24時間ごとに注射した。マウスを7日後に安楽死させ、その癒着を画像化し、スコア評価した。対照癒着はPDPN、MSLN、及びHIF1Aが陽性であったが(図5C)、エキノマイシンまたはPX12で処置したマウスのボタン周辺の中皮はMSLN及びPDPNでのみ染色された(図5D)。さらに重要なことに、この領域の癒着が有意に減少し(図5E)、PX12(n=5)またはエキノマイシン(n=15)で処置したマウスの大部分が癒着を示さなかった(スコア0)。

0111

HIF1A阻害の下流での、損傷した中皮細胞の原因となる転写変化を広範に決定するために、4つの虚血ボタンの配置による癒着誘導の前及び直後に10匹の野生型C57BL/6Jマウスを(20ug/kg)のエキノマイシンで処置した。先の概説と同様の方法を用いて、損傷した中皮をボタンから切除し、そのRNAを選別して単離し、配列決定した。

0112

まず、既知のHIF1A標的、VEGFb及びトランスフェリン(TRF)がエキノマイシン処置後に下方制御されることを確認した(図8)。類似する分析を応用した結果、我々の最初の24時間の時間経過にわたって正常に上方制御された200を超える遺伝子が、HIF1Aの阻害により減少することを見出した。逆に、24時間の時間経過中に発現をほとんど示さないか、または減少した600を超える遺伝子は、HIF1A阻害によって上方制御された(図5F)。

0113

我々の最初の標的遺伝子の多く(図2E)は、エキノマイシン処置の影響を受けなかった。具体的には、ITGAM、ITGB1、及びITGB2は、HIF1A阻害後の遺伝子発現にほとんど差異を示さなかった(図8)。興味深いことに、PDPN、MSLN、及びS100A4はすべて、エキノマイシン処置後に発現が増加した(図5F)。

0114

しかし、我々の最初の標的スクリーニングから、UPK1B及びWT1は、それらの発現レベルがエキノマイシン処置後に有意に低下したため、HIF1A依存性であることが判明した(図5F)。したがって、これらの結果は、胚中皮遺伝子WT1及びUPK1Bが、癒着開始時のHIF1Aの標的であり、癒着形成を開始させる低酸素依存性経路を導くきっかけとなることを示唆している。

0115

癒着形成を阻止する、または定着後に癒着を減少させるための研究が数多く行われてきた。我々のRNA配列決定スクリーニングにより、予防的及び形成後両方の治療にとって可能性がある標的が得られた。我々は以前に、癒着が高度に細胞性であることを確認し、その結果、特異的標的指向性抗体を含む免疫療法アプローチを用いてこの細胞を排除することにより、癒着組織のクリアランスを誘導できるという仮説を立てた。MSLNは、成人においてごく限定的に発現する胚中皮表面分子であるが、中皮損傷及び癒着誘導時に再発現されるため、理想的な標的候補となる。マウスモノクローナル抗MSLN抗体は、癒着誘導及び抗体注射の直後に損傷部位に結合することが見出された(図4A)。

0116

我々及び他の研究者は先、一次標的に加えて免疫アジュバントの標的化が腫瘍クリアランスの有効性を大幅に増加させることを示した。具体的には、CD47は、一連の腫瘍範囲で高度に上方制御され、マクロファージ上のリガンドSIRP1αに結合することによって食作用を阻害する「don’t eat meシグナル」として働く表面受容体である。腫瘍特異的モノクローナル抗体の投与に加えて、CD47またはSIRP1αのいずれかを遮断することによるこの相互作用の阻害は、腫瘍負荷を大幅に減少させ、生存を増加させることが示されている(Chao et al.,2010;Chao,Weissman,&Majeti,2012;Jaiswal et al.,2009;Tseng et al.,2013)。観察によると、癒着誘導の前及び24時間後の中皮にCD47が高発現しており(図4B)、同様の治療計画が癒着クリアランスを誘導するために役立つ可能性があることを示した。

0117

MSLN抗体結合が癒着クリアランスを開始できるかどうかを調べるため、野生型C57BL/6Jマウスに癒着を誘導し、7日間マウスを回復させた。次に、200μgの抗CD47抗体を投与した場合としない場合で、200ugの抗MSLN抗体を癒着誘導後7日目、10日目、及び13日目に投与した。抗MSLNを単独で(図4D)使用すると、ビヒクル対照(図4C)と比較してボタン部位への癒着負荷の減少が見られ、また抗CD47と共に抗MSLNを使用するとさらに大幅な減少が見られた(図4E)。抗体で処置したマウスから切除したボタンの免疫組織学的分析は、コラーゲン、フィブロネクチン、及びCD31に染色を示したが、MSLN+細胞がなく(図4F)、これらの細胞とそこにある癒着組織とが除去されることを示唆している。これらの結果は、標的指向性抗体治療が癒着形成後の治療にとって可能性がある手段であることを示している。

0118

我々のデータは、癒着形成の発生に必要とされる、中皮細胞における潜在的な低酸素誘導経路を示している。しかし、マウスとヒトとでは系の多くで制御に違いがあるため、ヒトの癒着サンプルを入手して、我々の標的遺伝子がヒトの疾患組織で同様に発現するか否かを決定した。ヒト癒着を固定、切片化し、H&E及びトリクローム染色で染色したところ、同様の形態が観察された。すなわち、癒着は高度に細胞性であり、コラーゲン沈着のために強く染色された(図6A)。続いてPDPN、MSLN、HIF1A、S100A4、及びWT1による染色(図6B)及びUPK1B RNAのin situハイブリダイゼーションにより、我々の標的遺伝子の多くが実際にヒト中皮組織で発現することが示され、ヒトの癒着形成において同様の役割を果たし得ることが示唆される。

0119

考察
本研究を通じて、従来にない癒着形成の細胞性が解明されたと我々は考えている。現状の知見では腹部癒着の細胞起源に関してあいまいな部分も残っている。特異的染色及び増殖アッセイを利用して、表面中皮が腹部癒着の起源組織であり、また癒着形成の基本的機構が中皮細胞のプログラム、さらには潜在的に中皮細胞の部分細胞にも起源をもつことを発見した。

0120

配列決定研究ではまた、従来にない癒着プログラムの分子的解明を示した。癒着の起源組織に注目して、表面受容体パネルとフローサイトメトリー法との組み合わせを用い、in vivoで中皮細胞を単離した。その転写プログラムを保存し、RNA配列決定手法を使用して、ナイーブ表面中皮が癒着形成に至る分子事象の時間経過を含め、表面中皮のどのプログラムが癒着形成に寄与しているかを決定した。このようなプログラムのうち主たるものが低酸素誘導経路で、その阻害は癒着形成を十分に阻止する。しかしながら、血管新生の初期上方制御、様々なケモカイン発現の段階的増加、ならびに細胞外基質タンパク質及びコラーゲンの初期下方制御など、他の未検討なプログラムを無視すべきではない。これらのデータは、協調して癒着病理をもたらす中皮以外の器官系及び組織と関連する、癒着形成の基になる全体的な現象を示唆している。

0121

精製された中皮からのRNA配列決定データは、多様なシグナル伝達カスケードが誘導後に起こり、それをきっかけに癒着誘導に寄与する中皮内の経路の輪郭ができることを示している。我々が注目したのは、中皮応答が、胚中皮マーカーMSLN、ウロプラキン1B(UPK1B)、及びウイルムス腫瘍1(WT1)の再発現を特徴とすることである。損傷時または悪性化時に胚表現型が再発現されることが多いため、これはそれほど意外なことではない。損傷した中皮はまた、線維芽細胞遺伝子S100A4及びACTA2の発現を上方制御しており、in vivo染色及びin vitroでの結果と合わせて、線維芽様細胞となるのが中皮であることを示唆している。最後に、HIF1Aの発現は、癒着誘導プロトコールによって起こる低酸素環境を表し、その結果としてこれは外科手術中に行われる処置を模倣する。しかしながら、興味深い点は、HIF1Aの阻害が癒着形成に示す有意な効果である。小分子阻害剤であるエキノマイシン及び/またはPX12によるHIF1A経路の妨害は、癒着の形成及び頻度の劇的な低下をもたらすために十分であり、HIF1Aが癒着形成の病因に重要な役割を果たすことを示唆している。

0122

癒着形成におけるHIF1Aの役割を確定した研究は限られており、中皮がこのカスケードの重要な誘導因子であることを示唆したものはさらに少ない。HIF1A阻害を利用した癒着への対処について述べたグループ少数あるが、これらの研究は、RNA干渉(RNAi)及び/またはトランスジェニック動物モデルを使用する。知る限りでは、臨床治療用途としてはるかに適した治療選択肢である小分子阻害剤を使用したHIF1A阻害の有効性を実証したのは我々の研究が初めてである。本データでは、ペプチド抗生物質であるエキノマイシン、及び/またはPX12の使用を提案しているが、そのいずれもが臨床環境で容易に投与可能である。しかしながら、HIF1Aは一般的な転写因子であるため、より標的指向性の治療法を考案するには、この経路の解明に向け、多くの研究がなされる必要がある。in vivoモデルでは、癒着病因への中皮の寄与の根拠となる分子生物学を調べる機能的プラットフォームを得ることができる。

0123

我々はまた、in vivo癒着誘導手術の代用となるin vitro系も実証した。腎被膜及び腸からの中皮移植片を低酸素条件下でマクロファージと共培養することにより、細胞密度の増加及び線維化変化を特徴とする癒着様表現型を作製することができた。好中球及び単球などの他の造血細胞型を中皮細胞と共培養することができる。機械的摂動または化学的もしくは微生物的攻撃などの低酸素症以外のストレス因子も同様の反応を誘導し得る。in vitro系は、分子標的をスクリーニング及び同定するために有用であり、癒着病因に関する薬物発見のためのプラットフォームを提供することができる。

0124

我々は複数の癒着特異的分子を同定した。その多くは、損傷時及び他の少数の組織中に再発現される胚中皮遺伝子であり、形成後の治療の主要な標的となる。癒着特異的標的の同定により、既に形成された癒着の治療のために、抗体による免疫療法を治療法として利用できることを実証した。

0125

実施例2
好中球と単球の軸との癒着形成にへの寄与
24時間の時間経過にわたる損傷した中皮細胞から得たRNA配列決定結果を、先の実験から取得したところ(実施例1を参照)、炎症性ケモカイン及びサイトカインを含む複数の遺伝子セット及びプロセスの差次的発現を示した(図9A)。好中球及びマクロファージの特異的な動員シグナルであるCXCL1、CCL2、及びCXCL2は、6時間後すぐに上方制御され、最初の24時間にわたって増加を維持している。同時点からの腹膜洗浄により、腹膜に侵入する好中球及びマクロファージの数が増加していることが確認された。以前の研究では、好中球及びマクロファージが癒着の病因に応答して関与することは実証されたが、これらの造血細胞のどの部分細胞が重要な役割を果たすかを示す研究はほとんど行われていない。実施例1に前述するように、赤色蛍光タンパク質mCherryを構成的に発現するマウス(「TM7」)と野生型(非有色マウス)との並体結合実験では、癒着誘導により、野生型マウスの癒着部位に赤色F4/80+細胞の浸潤を示し、癒着に侵入するマクロファージが、血中単球または骨髄由来であることを示唆した(図9B)。構成的mCherryマウス(TM7「ドナー」)から骨髄移植を受けている構成的シアン蛍光タンパク質(CFP)マウス(「宿主」)における癒着誘導はまた、癒着部位に赤色F4/80+細胞を示し、ここでも癒着に侵入するマクロファージが、血中骨由来単球であることを示唆している(図9C)。癒着誘導の24時間前にチオグリコレートで処置したマウスは癒着の減少を示し、無菌性炎症が癒着形成に対して有益な効果を有し得ることを示している。マクロファージよりも好中球に選択的優位性をもたらす、カタラーゼによる癒着誘導24時間前の処置は、チオグリコレート処置と比較して癒着形成を悪化させる。既知の単球走化性物質であるMCP−1、及び血中好中球の枯渇をもたらす抗GR−1抗体による、癒着誘導手術後3日間の処置は、いずれも癒着形成を減少させる。抗GR−1とMCP1の併用は、癒着形成の減少において相加効果を有する(図9D)。

0126

実施例3
実施例1に記載したように、癒着誘導手術の3日前に、マウスをPLGA、チオグリコレート、またはPBS対照のいずれかで前処置した。損傷の7日後にマウスを評価し、縫合部位(S)またはボタン(B)に形成される癒着を癒着重症度0〜5で評価した。図10は、PLGAまたはチオグリコレートで前処置されたマウスが、縫合部位及びボタンの両方で癒着の重症度が有意に低下したことを示す。我々の結論では、PLGA単独、チオグリコレート単独、またはPLGAとチオグリコレートの併用による手術前の前処置は、対象における癒着の形成及び/または重症度を減少させる。

0127

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