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課題・解決手段

修飾された免疫優性領域を有し、修飾された成熟切断部位を有するものを含む、ヘマグルチニンHAタンパク質修飾型、並びにそれらを含有するウイルス及びウイルス様粒子が開示される。

概要

背景

インフルエンザは、「インフル(flu)」として一般に知られ、ヒト又は人畜共通のインフルエンザウイルスの感染によって引き起こされる感染性呼吸器疾患である。インフルエンザのアウトブレイクは、毎年、「インフルシーズン」として一般に知られる各年の寒い月に発生する。インフルエンザ感染のほとんどの症状は軽症であるが、これらの毎年のエピデミックは、世界中で300万〜500万件の重度病気と50万人までの死亡を引き起こす(ワールドワイドウェブ上のwho.int/mediacentre/factsheets/fs211/en/の世界保健機関:Influenza(Seasonal))。各々の世紀において、インフルエンザウイルスが人口の大部分に感染し、世界中で顕著な罹患率死亡率をもたらす、複数のインフルエンザパンデミックが存在する。世界人口の3〜5%を殺した1918年のスペインかぜパンデミックは、歴史上最も致命的なパンデミックである。

ステムドメイン反応性抗体を誘発する現在の戦略
全てのインフルエンザウイルスに対する広域中和抗体(bNAb)の誘発は、インフルワクチン設計の究極の目的であった。単離したbNAbの大部分は、HAステムドメインの保存されたエピトープを認識する。しかしながら、自然のインフルエンザウイルス感染又は現在のインフルワクチンに誘発される抗体は、HA球状頭部ドメイン受容体結合部位を取り囲む抗原部位を、それらの抗原部位の免疫優性のために、主に認識する。それらの抗体は、インフルエンザウイルス系統間でのそれらの抗原部位の高変異性の結果、概して系統特異的である。したがって、現在のインフルワクチンは、インフルウイルスに対する普遍的な免疫を誘導しない。

ヘマグルチニン(HA)は、内在性膜糖タンパク質である。それは、インフルエンザウイルスの脂質二重層エンベロープ中の最も豊富タンパク質である。ビリオン表面上にHAが約500分子あると推定される。HAは、ウイルス宿主細胞への吸着及び侵入に必要とされる唯一のタンパク質である。それは宿主細胞受容体に結合し、ビリオン脂質エンベロープと宿主細胞膜との融合を可能にする。その宿主細胞受容体に結合する能力を通じて、HAがインフルエンザ系統の宿主範囲を決定する。

HAは、HA0と呼ばれる単鎖前駆体として小胞体中で合成される(Stevens,Jら、Science(2006)312:404〜410)。HA0前駆体は、そのN末端シグナルペプチドを、そのC末端に膜アンカー配列を有する。N末端シグナルペプチドは、HAが宿主細胞膜を横断して輸送され、宿主細胞膜に係留されるプロセスの最中に除去される。HAは、小胞体中の同一のサブユニット三量体に組み立てられ、次いで、ゴルジネットワークを介して細胞表面に移出される。HA0は、特異的な宿主トリプシン様プロテアーゼによって成熟切断部位(MCS)のC末端で切断され、2つのジスルフィド結合で連結されるポリペプチド、HA1及びHA2からなる成熟型に変換される。HA1は、HA0のより大きなN末端部分であり、HA2は、より小さなC末端部分である。HA2は、短いC末端細胞内尾部を有する膜貫通領域を有し、HAを膜に係留する。各々の成熟HAは、約45kDaのHA1と、約25kDaのHA2を含む、全部で約70kDaの分子量を有する。多くのインフルエンザの系統由来のHAの細胞外部分原子構造が決定されている。成熟HAの構造モデルを図1に示す。HA0又は成熟型のいずれかとしての全てのHAは、上に球状頭部を有する同じ全体的な三量体構造を有する。各々のHA単量体は、単一の短い親水性細胞質尾部を有するC末端膜貫通領域によって膜に係留される。

球状頭部ドメインは、全てHA1から作製され、免疫優性エピトープを含有する。ステムドメインは、ほぼHA2から作製され、免疫学的に亜優性である保存された領域を含有する。球状頭部ドメインは、そのコアにおいて、表面ループヘリックスを含む8ストランドβシート構造を有する。膜近位のステムドメインは、HA1とHA2の両方からの残基の三重コイルドコイル構造の左手スーパーヘリックスからなる。各々のHA単量体は、約13kDaの分子量の全炭水化物又はHAの全分子量の19%を有する複数のグリコシル化部位を有する。多くのグリコシル化は、膜表面近辺のステムドメイン中にある。HAはまた、細胞質尾部上のシステイン残基パルミトイル化によっても修飾される(Veit,Mら、J.Virol(1991)65:2491〜2500)。

球状頭部ドメインの免疫優性を回避するために、球状頭部ドメインを有さないHAステムドメインに基づいて免疫原が設計されている(除頭部HA)。これらの試みは、適切な三次元構造を有するそのような分子の産生の困難性のために大部分が失敗している(Krammer,F及びPalese,P.Curr Opin Virol(2013)3:521〜530;Eckert,D.M及びKay,M.S.、PNAS(2010)107:13563〜13564)。HA2それ自体は、その最も安定な融合後の低pH誘導立体構造へとフォールディングする可溶型として大腸菌(E.coli)において発現されている(Chen,Jら、PNAS(1995)92:12205〜12209)。HA2の低pH立体構造を不安定化させるよう設計された変異を組み込むことによって、H3のHAに基づいた別のHA2コンストラクト(HA6)が大腸菌において発現され、所望の中性pH融合前立体構造へと再フォールディングした(Bommakanti,Gら、PNAS(2010)107:13701〜13706)。HA6は、マウスにおいて非常に免疫原性であり、相同のインフルエンザAウイルスの感染に対してマウスを防御した。しかしながら、HA6免疫化マウスからの血清は、インビトロにおいてウイルスを中和できず、これは球状頭部ドメインを認識する抗体のウイルス中和活性を検出するのみのアッセイ限界によるものであり得る。HA2とステムドメイン中のHA1領域を有する別の「除頭部」HAステムドメインコンストラクトが記載されている(Steel,Jら、mBio(2010)1:e00018〜10)。免疫原は、相同のインフルエンザ接種に対してマウスを防御し、同じグループ由来の相同のHAに対して交差反応性である抗血清を誘発した。HA6と同様に、抗血清は、インビトロの中和活性を示さなかった。これらの設計は全て、免疫優性領域を排除することによるタンパク質最小化に基づく。

最近、構造に基づく合理的設計及びコンストラクトライブラリーの反復するbNAb選択によって、安定な三量体であるH1のHA幹のみの免疫原(除頭部ミニHA)が作製された(Impagliazzo,Aら、Science(2015)349:1301〜1306;Yassing,H.,Mら、Nat Med(2015)21:1065〜1070;特許出願WO2014/191435_A1)。これらの幹のみのミニHA免疫原は、予想通りのHAステムドメインに対する抗体を誘発した。これらのミニHA免疫原によって免疫されたマウス及びフェレットは、高病原性のH5ウイルスの致死性の接種から防御された。さらに、ミニHA免疫原はカニクイザルにおいてH5中和抗体を誘発した。これらのミニHA免疫原は、それらの特異的なbNAbsへの結合によって選択された。長期の反復するbNAb選択プロセスは、異なる型のbNAbに対して繰り返されることを必要とする。bNAbエピトープの立体構造は、これらのミニHA免疫原において保存されていたが、全体的な構造は天然HAのステムドメインとは異なっていた。これらの構造変化により、これらの除頭部ミニHA免疫原はインフルエンザウイルス又はインフルエンザウイルス様粒子(VLP)に組み立てられる可能性は低い。さらに、これらの除頭部ミニHA免疫原は、宿主細胞結合のための受容体結合部位を有さない。

ステムドメインに対する宿主の免疫応答を導くためにキメラHAが設計されている。パンデミックのH1N1感染によって誘導された多くの中和抗体は、複数のインフルエンザ系統のHAステムドメイン及び球状頭部ドメインにおけるエピトープに対して広域で交差反応性であった(Wrammert,Jら、J.Exp Med(2011)208:181〜193)。ヒトの中で循環性でないH5N1インフルエンザ系統由来のHA(グループ1のHA)による免疫は、グループ1循環性季節性系統に対するHA幹特異的応答を顕著に増加させた(Ellebedy,A.Hら、PNAS(2014)111:13133〜13138;Nachbagauer,Rら、J Virol(2014)88:13260〜13268;Whittle,J.R.Rら、J.Virol(2014)88:4047〜4057)。1957年、1968年、及び2009年におけるパンデミックのインフルエンザウイルス系統の各々の出現の後、ヒト集団において、既存の季節性ウイルス系統が新規のパンデミック系統によって置き換わった。

多様な球状頭部ドメインを有する新規のパンデミックのインフルエンザウイルス系統への曝露が、ステムドメインにおいて保存されたエピトープに対する親和性成熟したメモリー応答を導くと仮説が立てられた(Palese,P及びWang,T.T.、mBio(2011)2:e00150〜11)。この仮説を支持して、H6、H9、又はH5球状頭部ドメイン、及びH1ステムドメインの、操作された組換えキメラHAは、高力価の幹特異的中和抗体を生成した(Pica,Nら、PNAS(2012)109:2573〜2578;Krammer,Fら、J.Virol(2013)87:6542〜6550)。これらの場合において、H1のHAの球状頭部ドメインは、ヒト集団の大部分がナイーブである同じグループ1のHA由来のH6、H9、又はH5の球状頭部ドメインによって置換された。これらの置換は、HA1のシステイン52とシステイン277の間のH1のHA配列を、H6、H9、又はH5の対応する配列と置換することによって作製された。システイン52とシステイン277は、球状頭部ドメインとステムドメインの間のヒンジ領域においてジスルフィド結合を形成する。同様のキメラHAがH3ステムドメインを用いて作製され、グループ2インフルエンザ系統に対するワクチンを開発した(Krammer,Fら、J.Virol(2014)88:2340〜2343;Margine,Iら、J.Virol(2013)87:10435〜10446)。これらのキメラHAによって動物を免疫することは、ウイルスのそれぞれのグループに対する広域中和活性を有する幹特異的抗体を誘導した。ヒト集団は、循環性H1(グループ1)、H3(グループ2)、及びインフルエンザBウイルス系統に対する既存の免疫を有する。キメラHAによるワクチン接種は、循環性系統のHA及びキメラHAに共通のステムドメインに対する抗体レベルブーストする。ヒトがナイーブであるキメラHA上の新規球状頭部ドメインに対して、一次応答のみが誘導された。それに続く、同じステムドメインを有するが、異なる頭部ドメインを有する第2のキメラHAによるブーストは、幹特異的抗体レベルをさらに増加した。結果は、球状頭部ドメインにおける免疫優性エピトープに対する宿主の曝露の変化が、ステムドメインにおける免疫亜優性エピトープに対する広域の防御的免疫応答を増加させることができることを示唆する。

A/WSN/33(H1N1)ヘマグルチニンの抗原部位Bの6個のアミノ酸ループは、A/日本/57(H2N2)及びA/香/8/68(H3N2)由来のHAの相同の抗原部位B残基によって置換することができる(Li,Sら、J.Virol(1992)66:399〜404)。この置換は、HAの受容体結合機能干渉しない。これらのキメラHAを有する組換えインフルエンザウイルスは、MDCK(メイディンダービーイヌ腎臓上皮細胞細胞培養において複製された。A/WSN/33(H1N1)及びA/香港/8/68(H3N2)のキメラHAを有するウイルスは、A/WSN/33(H1N1)とA/香港/8/68(H3N2)の両方に対する抗体を誘導した。これらの結果は、HAの免疫優性抗原部位を、異なる系統由来の他のHAの相同の対応する免疫優性抗原部位によって置換することができることを示唆する。これらの置換は、生じるキメラHAの光源特異性を変化させる。

したがって、上述の段落において、1つのインフルエンザ系統における免疫優性エピトープは、別の系統由来の相同の免疫優性エピトープによって置換された。

別の戦略は、免疫優性エピトープを抑制し、宿主の免疫応答をステムドメインに向けさせることである。球状頭部ドメインにおける免疫優性抗原部位は、高グリコシル化のためのさらなるグリコシル化部位の導入によって、遮蔽することができる(Eggink,Dら、J.Virol(2014)88:699〜704、特許出願US2014/0004149_A1)。球状頭部ドメインの高グリコシル化は、幹反応性抗体の結合親和性を変化させなかった。高グリコシル化HAによるマウスの免疫は、高力価の幹反応性抗体、並びに異なる季節性ウイルスの接種における罹患率及び死亡率に対する防御を誘導した。特許出願US2013/0315929_A1は、球状頭部ドメインの免疫優性エピトープを、それらのエピトープのいくつかの残基をエピトープの一部である可能性の低い他のアミノ酸と置換することによって抑制する別の方法を開示した。結果は、球状頭部ドメインにおける免疫優性エピトープを遮蔽することが、ステムドメインにおける免疫亜優性エピトープに対する広域の防御的免疫応答を増加させることができることを示唆する。

外来エピトープを提示するための担体としてのHA
インフルエンザHAは、HIV−1エンベロープタンパク質のV3ループのエピトープのための担体として使用されている。HIV−1エンベロープタンパク質由来の12〜22の長さの残基の免疫優性エピトープペプチドの、部位A又は部位BのいずれかのHA免疫優性抗原部位への挿入は、球状頭部ドメイン中に個々のHIV−1エピトープを有するキメラHAを産生した。部位A及び部位Bの残基は全く除去されなかった。免疫原性HIV−1エピトープは、その部位に挿入された。キメラHAは、動物において、HIV−1のV3−ループエピトープに対する免疫応答を誘導した(Kalyan,N.Kら、Vaccine(1994)12:753〜760;米国特許U.S.5,591,823_A;Li,Sら、J.Virol(1993)67:6659〜6666)。非常に低い用量のキメラHAが、挿入されたエピトープに対して特異的な抗体を誘導するのに十分であったため、挿入されたエピトープの免疫原性はHAによって増強されるように見えた。これらの結果は、HA以外のタンパク質由来の免疫優性の外来エピトープを、HAの免疫優性抗原部位へと挿入できることを示唆する。挿入された外来の免疫優性エピトープを有するこれらのキメラHA分子は、挿入された外来の免疫優性エピトープに対する免疫応答を誘導できる。

概要

修飾された免疫優性領域を有し、修飾された成熟切断部位を有するものを含む、ヘマグルチニン(HA)タンパク質の修飾型、並びにそれらを含有するウイルス及びウイルス様粒子が開示される。

目的

これは、その天然の位置において免疫亜優性である挿入された代替エピトープのより成功した免疫原性形態を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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請求項1

インフルエンザA又はBの修飾ヘマグルチニンHAタンパク質であって、前記HAタンパク質の免疫優性領域が、保存された代替インフルエンザエピトープを、前記領域への挿入により含有するか、又は前記領域を前記インフルエンザの保存された代替エピトープ置換することにより含有する、修飾ヘマグルチニン(HA)タンパク質。

請求項2

生ウイルス若しくは弱毒ウイルス中に、又はウイルス様粒子(VLP)中に含有される、請求項1に記載の修飾HAタンパク質。

請求項3

生ウイルス中に含有され、動物プロテアーゼによって切断されない修飾された成熟切断部位(MCS)をさらに含む、請求項2に記載の修飾HAタンパク質。

請求項4

前記修飾されたMCSが、適切なプロテアーゼによって切断されている、請求項3に記載の修飾HAタンパク質。

請求項5

前記インフルエンザの代替エピトープが、インフルエンザHAタンパク質のステムドメイン由来のエピトープであるか、又はM2インフルエンザタンパク質のエピトープである、請求項1〜4のいずれかに記載の修飾HAタンパク質。

請求項6

前記HAタンパク質の1つ以上の免疫優性領域が、代替インフルエンザエピトープを含有するように修飾されている、請求項1〜4のいずれかに記載の修飾HAタンパク質。

請求項7

前記1つ以上の免疫優性領域の各々に含有される前記代替インフルエンザエピトープの少なくとも一部が互いに異なる、請求項6に記載の修飾HAタンパク質。

請求項8

請求項1〜4のいずれかに記載の修飾HAタンパク質を含むインフルワクチン

請求項9

動物のプロテアーゼによって切断されないMCSを含有するように修飾されているインフルエンザHAタンパク質を含む修飾インフルエンザウイルス

請求項10

前記MCSが、適切なプロテアーゼによって切断されている、請求項9に記載の修飾インフルエンザウイルス。

請求項11

前記HAタンパク質が、少なくとも1つの免疫優性領域中に異種免疫原エピトープをさらに含有する、請求項9に記載の修飾インフルエンザウイルス。

請求項12

前記異種免疫原エピトープが、腫瘍関連抗原のものであるか、又はインフルエンザ以外のウイルスのエピトープ若しくは代替インフルエンザエピトープである、請求項11に記載の修飾インフルエンザウイルス。

請求項13

前記HAタンパク質の1つ以上の免疫優性領域が、異種エピトープを含有するように修飾されている、請求項11に記載の修飾インフルエンザウイルス。

請求項14

前記1つ以上の免疫優性領域の各々に含有される前記異種エピトープの少なくとも一部が互いに異なる、請求項13に記載の修飾インフルエンザウイルス。

請求項15

動物のプロテアーゼによって切断されないMCSを含有し、かつ、少なくとも1つの免疫優性領域に挿入されているか、又は当該領域を置換する異種免疫原エピトープをさらに含有するように修飾されている、修飾HAタンパク質。

請求項16

前記MCSが適切なプロテアーゼによって切断されており、かつ/又は前記異種免疫原エピトープが、腫瘍関連抗原のものであるか、又はインフルエンザ以外のウイルスのエピトープ若しくは代替インフルエンザエピトープである、請求項15に記載の修飾HAタンパク質。

請求項17

インフルに対する抗体を生成する方法であって、非ヒト対象に請求項8に記載のインフルワクチンを投与することを含む方法。

請求項18

前記ワクチンを対象に投与することを含む、対象をインフルに対して防御する方法において使用するための、請求項8に記載のインフルワクチン。

請求項19

所望の抗原に対する抗体を生成する方法であって、請求項9〜14のいずれかに記載の修飾インフルエンザウイルスを対象に投与することを含む方法。

請求項20

インフルエンザHAタンパク質の少なくとも有効部分をコードする核酸であって、インフルエンザタンパク質の代替エピトープをコードするヌクレオチド配列が、前記HAタンパク質の免疫優性領域をコードするヌクレオチド配列に挿入されているか、又は前記HAタンパク質の免疫優性領域をコードするヌクレオチド配列を置換している、核酸。

請求項21

前記MCSをコードするヌクレオチド配列が、動物のプロテアーゼによって切断されないMCSをコードするように修飾されている、請求項20に記載の核酸。

請求項22

前記HAタンパク質の免疫優性領域をコードする1つ以上の領域が、代替インフルエンザエピトープをコードするヌクレオチド配列を含有するように修飾されている、請求項20に記載の核酸。

請求項23

前記HAタンパク質の免疫優性領域をコードする1つ以上の領域が、代替インフルエンザエピトープをコードするヌクレオチド配列を含有するように修飾されている、請求項21に記載の核酸。

請求項24

インフルエンザHAタンパク質の少なくとも有効部分をコードする核酸であって、MCSをコードするヌクレオチド配列が、動物のプロテアーゼによって切断されないMCSをコードするように修飾されている、核酸。

請求項25

異種エピトープをコードするヌクレオチド配列が、前記HAタンパク質の免疫優性領域をコードするヌクレオチド配列に挿入されているか、又は前記HAタンパク質の免疫優性領域をコードするヌクレオチド配列を置換している、請求項24に記載の核酸。

請求項26

前記HAタンパク質の免疫優性領域をコードする1つ以上の領域が、異種エピトープをコードするヌクレオチド配列を含有するように修飾されている、請求項25に記載の核酸。

請求項27

請求項20〜26のいずれかに記載のヌクレオチド配列をコードし、組換え宿主細胞において発現する核酸。

請求項28

請求項27に記載の核酸を含有する組換え宿主細胞。

請求項29

請求項1に記載の修飾HAタンパク質を調製する方法であって、インフルエンザタンパク質の代替エピトープをコードするヌクレオチド配列が前記HAタンパク質の免疫優性領域をコードするヌクレオチド配列に挿入されているか又は前記HAタンパク質の免疫優性領域をコードするヌクレオチド配列を置換している、インフルエンザHAタンパク質の少なくとも有効部分をコードする核酸を含む組換え宿主細胞を、前記核酸が発現する条件下で培養することと、修飾HAタンパク質を回収することとを含む方法。

請求項30

請求項3に記載の修飾HAタンパク質を調製する方法であって、インフルエンザタンパク質の代替エピトープをコードするヌクレオチド配列が前記HAタンパク質の免疫優性領域をコードするヌクレオチド配列に挿入されているか又は前記HAタンパク質の免疫優性領域をコードするヌクレオチド配列を置換しており、かつ、前記MCSをコードするヌクレオチド配列が動物のプロテアーゼによって切断されないMCSをコードするように修飾されている、インフルエンザHAタンパク質の少なくとも有効部分をコードする核酸を含む組換え宿主細胞を、前記核酸が発現する条件下で培養することと、修飾HAタンパク質を回収することとを含む方法。

請求項31

請求項9に記載の修飾インフルエンザウイルスを調製する方法であって、前記MCSをコードするヌクレオチド配列が動物のプロテアーゼによって切断されないMCSをコードするように修飾されている、インフルエンザHAタンパク質の少なくとも有効部分をコードする核酸を含む組換え宿主細胞を、前記核酸が発現する条件下で培養することと、修飾インフルエンザウイルスを回収することとを含む方法。

請求項32

請求項11に記載の修飾インフルエンザウイルスを調製する方法であって、前記MCSをコードするヌクレオチド配列が動物のプロテアーゼによって切断されないMCSをコードするように修飾され、かつ、前記HAタンパク質の免疫優性領域をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列が異種エピトープをコードするヌクレオチド配列を含有するように修飾されている、インフルエンザHAタンパク質の少なくとも有効部分をコードする核酸を含む組換え宿主細胞を、前記核酸が発現する条件下で培養することと、修飾インフルエンザウイルスを回収することとを含む方法。

請求項33

インフルエンザに対する抗体を生成する方法であって、非ヒト対象に請求項20〜27のいずれかに記載の核酸を投与することを含む方法。

請求項34

前記核酸を対象に投与することを含む、対象をインフルエンザに対して防御する方法において使用するための、請求項20〜27のいずれかに記載の核酸。

請求項35

所望の抗原に対する抗体を生成する方法であって、請求項20〜27のいずれかに記載の核酸を対象に投与することを含む方法。

技術分野

0001

関連出願の相互参照
本出願は、2016年2月3日出願の「Compositions of Influenza Hemagglutinin with Heterologous Epitopes and/or Altered Maturation Cleavage Sites and Methodsof Use Thereof」と題された米国仮特許出願第62/290,894号の優先権を主張し、その内容はその全てが参照により組み込まれる。

0002

配列表の参照による組み込み
本出願は、電子フォーマットでの配列表と共に出願される。配列表は、2017年1月30日に作成された173,061バイトのサイズの758252000140SeqList.TXTと題されるファイルとして提供される。配列表の電子フォーマット中の情報は、その全てが参照により組み込まれる。

0003

本発明は、免疫学及びウイルス学の分野のものである。より詳細には、改変された異種エピトープ及び/又は改変された成熟切断部位を有する組換えインフルエンザヘマグルチニンHAタンパク質組成物に関する。
(次の略語を適用する。HA、ヘマグルチニン;NA、ノイラミニダーゼ;NAb、中和抗体;bNAb、広域中和抗体;TEVタバコエッチウイルス;DNA、デオキシリボ核酸cDNA相補的DNA;RNA、リボ核酸kbキロベース;kDa、キロダルトンCHO細胞チャイニーズハムスター卵巣細胞HEK293細胞、ヒト胎児腎臓293細胞;VLPウイルス様粒子;BEVS、バキュロウイルス発現ベクター系;AcNPV、Autographa californica核多角体病ウイルス;BmNPV、Bombyx mori核多角体病ウイルス;TIPS、無力感染細胞の保存及びスケールアップ(Titerless Infected−cells Preservation and Scale up);BIIC、バキュロウイルス感染昆虫細胞PCRポリメラーゼ連鎖反応;FBSウシ胎仔血清;PDB、蛋白質構造データバンクワールドワイドウェブ上の(rcsb.org/pdb/home/home.do);MOI感染多重度;MCS、成熟切断部位;HPAI高病原性トリインフルエンザ;HI、HA阻害;WT、野生型;TIV、三価不活化インフルエンザワクチンPBSリン酸緩衝生理食塩水。)

背景技術

0004

インフルエンザは、「インフル(flu)」として一般に知られ、ヒト又は人畜共通のインフルエンザウイルスの感染によって引き起こされる感染性呼吸器疾患である。インフルエンザのアウトブレイクは、毎年、「インフルシーズン」として一般に知られる各年の寒い月に発生する。インフルエンザ感染のほとんどの症状は軽症であるが、これらの毎年のエピデミックは、世界中で300万〜500万件の重度病気と50万人までの死亡を引き起こす(ワールドワイドウェブ上のwho.int/mediacentre/factsheets/fs211/en/の世界保健機関:Influenza(Seasonal))。各々の世紀において、インフルエンザウイルスが人口の大部分に感染し、世界中で顕著な罹患率死亡率をもたらす、複数のインフルエンザパンデミックが存在する。世界人口の3〜5%を殺した1918年のスペインかぜパンデミックは、歴史上最も致命的なパンデミックである。

0005

ステムドメイン反応性抗体を誘発する現在の戦略
全てのインフルエンザウイルスに対する広域中和抗体(bNAb)の誘発は、インフルワクチン設計の究極の目的であった。単離したbNAbの大部分は、HAステムドメインの保存されたエピトープを認識する。しかしながら、自然のインフルエンザウイルス感染又は現在のインフルワクチンに誘発される抗体は、HA球状頭部ドメイン受容体結合部位を取り囲む抗原部位を、それらの抗原部位の免疫優性のために、主に認識する。それらの抗体は、インフルエンザウイルス系統間でのそれらの抗原部位の高変異性の結果、概して系統特異的である。したがって、現在のインフルワクチンは、インフルウイルスに対する普遍的な免疫を誘導しない。

0006

ヘマグルチニン(HA)は、内在性膜糖タンパク質である。それは、インフルエンザウイルスの脂質二重層エンベロープ中の最も豊富なタンパク質である。ビリオン表面上にHAが約500分子あると推定される。HAは、ウイルスの宿主細胞への吸着及び侵入に必要とされる唯一のタンパク質である。それは宿主細胞受容体に結合し、ビリオン脂質エンベロープと宿主細胞膜との融合を可能にする。その宿主細胞受容体に結合する能力を通じて、HAがインフルエンザ系統の宿主範囲を決定する。

0007

HAは、HA0と呼ばれる単鎖前駆体として小胞体中で合成される(Stevens,Jら、Science(2006)312:404〜410)。HA0前駆体は、そのN末端シグナルペプチドを、そのC末端に膜アンカー配列を有する。N末端シグナルペプチドは、HAが宿主細胞膜を横断して輸送され、宿主細胞膜に係留されるプロセスの最中に除去される。HAは、小胞体中の同一のサブユニット三量体に組み立てられ、次いで、ゴルジネットワークを介して細胞表面に移出される。HA0は、特異的な宿主トリプシン様プロテアーゼによって成熟切断部位(MCS)のC末端で切断され、2つのジスルフィド結合で連結されるポリペプチド、HA1及びHA2からなる成熟型に変換される。HA1は、HA0のより大きなN末端部分であり、HA2は、より小さなC末端部分である。HA2は、短いC末端細胞内尾部を有する膜貫通領域を有し、HAを膜に係留する。各々の成熟HAは、約45kDaのHA1と、約25kDaのHA2を含む、全部で約70kDaの分子量を有する。多くのインフルエンザの系統由来のHAの細胞外部分原子構造が決定されている。成熟HAの構造モデル図1に示す。HA0又は成熟型のいずれかとしての全てのHAは、上に球状頭部を有する同じ全体的な三量体構造を有する。各々のHA単量体は、単一の短い親水性細胞質尾部を有するC末端膜貫通領域によって膜に係留される。

0008

球状頭部ドメインは、全てHA1から作製され、免疫優性エピトープを含有する。ステムドメインは、ほぼHA2から作製され、免疫学的に亜優性である保存された領域を含有する。球状頭部ドメインは、そのコアにおいて、表面ループヘリックスを含む8ストランドβシート構造を有する。膜近位のステムドメインは、HA1とHA2の両方からの残基の三重コイルドコイル構造の左手スーパーヘリックスからなる。各々のHA単量体は、約13kDaの分子量の全炭水化物又はHAの全分子量の19%を有する複数のグリコシル化部位を有する。多くのグリコシル化は、膜表面近辺のステムドメイン中にある。HAはまた、細胞質尾部上のシステイン残基パルミトイル化によっても修飾される(Veit,Mら、J.Virol(1991)65:2491〜2500)。

0009

球状頭部ドメインの免疫優性を回避するために、球状頭部ドメインを有さないHAステムドメインに基づいて免疫原が設計されている(除頭部HA)。これらの試みは、適切な三次元構造を有するそのような分子の産生の困難性のために大部分が失敗している(Krammer,F及びPalese,P.Curr Opin Virol(2013)3:521〜530;Eckert,D.M及びKay,M.S.、PNAS(2010)107:13563〜13564)。HA2それ自体は、その最も安定な融合後の低pH誘導立体構造へとフォールディングする可溶型として大腸菌(E.coli)において発現されている(Chen,Jら、PNAS(1995)92:12205〜12209)。HA2の低pH立体構造を不安定化させるよう設計された変異を組み込むことによって、H3のHAに基づいた別のHA2コンストラクト(HA6)が大腸菌において発現され、所望の中性pH融合前立体構造へと再フォールディングした(Bommakanti,Gら、PNAS(2010)107:13701〜13706)。HA6は、マウスにおいて非常に免疫原性であり、相同のインフルエンザAウイルスの感染に対してマウスを防御した。しかしながら、HA6免疫化マウスからの血清は、インビトロにおいてウイルスを中和できず、これは球状頭部ドメインを認識する抗体のウイルス中和活性を検出するのみのアッセイ限界によるものであり得る。HA2とステムドメイン中のHA1領域を有する別の「除頭部」HAステムドメインコンストラクトが記載されている(Steel,Jら、mBio(2010)1:e00018〜10)。免疫原は、相同のインフルエンザ接種に対してマウスを防御し、同じグループ由来の相同のHAに対して交差反応性である抗血清を誘発した。HA6と同様に、抗血清は、インビトロの中和活性を示さなかった。これらの設計は全て、免疫優性領域を排除することによるタンパク質最小化に基づく。

0010

最近、構造に基づく合理的設計及びコンストラクトライブラリーの反復するbNAb選択によって、安定な三量体であるH1のHA幹のみの免疫原(除頭部ミニHA)が作製された(Impagliazzo,Aら、Science(2015)349:1301〜1306;Yassing,H.,Mら、Nat Med(2015)21:1065〜1070;特許出願WO2014/191435_A1)。これらの幹のみのミニHA免疫原は、予想通りのHAステムドメインに対する抗体を誘発した。これらのミニHA免疫原によって免疫されたマウス及びフェレットは、高病原性のH5ウイルスの致死性の接種から防御された。さらに、ミニHA免疫原はカニクイザルにおいてH5中和抗体を誘発した。これらのミニHA免疫原は、それらの特異的なbNAbsへの結合によって選択された。長期の反復するbNAb選択プロセスは、異なる型のbNAbに対して繰り返されることを必要とする。bNAbエピトープの立体構造は、これらのミニHA免疫原において保存されていたが、全体的な構造は天然HAのステムドメインとは異なっていた。これらの構造変化により、これらの除頭部ミニHA免疫原はインフルエンザウイルス又はインフルエンザウイルス様粒子(VLP)に組み立てられる可能性は低い。さらに、これらの除頭部ミニHA免疫原は、宿主細胞結合のための受容体結合部位を有さない。

0011

ステムドメインに対する宿主の免疫応答を導くためにキメラHAが設計されている。パンデミックのH1N1感染によって誘導された多くの中和抗体は、複数のインフルエンザ系統のHAステムドメイン及び球状頭部ドメインにおけるエピトープに対して広域で交差反応性であった(Wrammert,Jら、J.Exp Med(2011)208:181〜193)。ヒトの中で循環性でないH5N1インフルエンザ系統由来のHA(グループ1のHA)による免疫は、グループ1循環性季節性系統に対するHA幹特異的応答を顕著に増加させた(Ellebedy,A.Hら、PNAS(2014)111:13133〜13138;Nachbagauer,Rら、J Virol(2014)88:13260〜13268;Whittle,J.R.Rら、J.Virol(2014)88:4047〜4057)。1957年、1968年、及び2009年におけるパンデミックのインフルエンザウイルス系統の各々の出現の後、ヒト集団において、既存の季節性ウイルス系統が新規のパンデミック系統によって置き換わった。

0012

多様な球状頭部ドメインを有する新規のパンデミックのインフルエンザウイルス系統への曝露が、ステムドメインにおいて保存されたエピトープに対する親和性成熟したメモリー応答を導くと仮説が立てられた(Palese,P及びWang,T.T.、mBio(2011)2:e00150〜11)。この仮説を支持して、H6、H9、又はH5球状頭部ドメイン、及びH1ステムドメインの、操作された組換えキメラHAは、高力価の幹特異的中和抗体を生成した(Pica,Nら、PNAS(2012)109:2573〜2578;Krammer,Fら、J.Virol(2013)87:6542〜6550)。これらの場合において、H1のHAの球状頭部ドメインは、ヒト集団の大部分がナイーブである同じグループ1のHA由来のH6、H9、又はH5の球状頭部ドメインによって置換された。これらの置換は、HA1のシステイン52とシステイン277の間のH1のHA配列を、H6、H9、又はH5の対応する配列と置換することによって作製された。システイン52とシステイン277は、球状頭部ドメインとステムドメインの間のヒンジ領域においてジスルフィド結合を形成する。同様のキメラHAがH3ステムドメインを用いて作製され、グループ2インフルエンザ系統に対するワクチンを開発した(Krammer,Fら、J.Virol(2014)88:2340〜2343;Margine,Iら、J.Virol(2013)87:10435〜10446)。これらのキメラHAによって動物を免疫することは、ウイルスのそれぞれのグループに対する広域中和活性を有する幹特異的抗体を誘導した。ヒト集団は、循環性H1(グループ1)、H3(グループ2)、及びインフルエンザBウイルス系統に対する既存の免疫を有する。キメラHAによるワクチン接種は、循環性系統のHA及びキメラHAに共通のステムドメインに対する抗体レベルブーストする。ヒトがナイーブであるキメラHA上の新規球状頭部ドメインに対して、一次応答のみが誘導された。それに続く、同じステムドメインを有するが、異なる頭部ドメインを有する第2のキメラHAによるブーストは、幹特異的抗体レベルをさらに増加した。結果は、球状頭部ドメインにおける免疫優性エピトープに対する宿主の曝露の変化が、ステムドメインにおける免疫亜優性エピトープに対する広域の防御的免疫応答を増加させることができることを示唆する。

0013

A/WSN/33(H1N1)ヘマグルチニンの抗原部位Bの6個のアミノ酸ループは、A/日本/57(H2N2)及びA/香/8/68(H3N2)由来のHAの相同の抗原部位B残基によって置換することができる(Li,Sら、J.Virol(1992)66:399〜404)。この置換は、HAの受容体結合機能干渉しない。これらのキメラHAを有する組換えインフルエンザウイルスは、MDCK(メイディンダービーイヌ腎臓上皮細胞細胞培養において複製された。A/WSN/33(H1N1)及びA/香港/8/68(H3N2)のキメラHAを有するウイルスは、A/WSN/33(H1N1)とA/香港/8/68(H3N2)の両方に対する抗体を誘導した。これらの結果は、HAの免疫優性抗原部位を、異なる系統由来の他のHAの相同の対応する免疫優性抗原部位によって置換することができることを示唆する。これらの置換は、生じるキメラHAの光源特異性を変化させる。

0014

したがって、上述の段落において、1つのインフルエンザ系統における免疫優性エピトープは、別の系統由来の相同の免疫優性エピトープによって置換された。

0015

別の戦略は、免疫優性エピトープを抑制し、宿主の免疫応答をステムドメインに向けさせることである。球状頭部ドメインにおける免疫優性抗原部位は、高グリコシル化のためのさらなるグリコシル化部位の導入によって、遮蔽することができる(Eggink,Dら、J.Virol(2014)88:699〜704、特許出願US2014/0004149_A1)。球状頭部ドメインの高グリコシル化は、幹反応性抗体の結合親和性を変化させなかった。高グリコシル化HAによるマウスの免疫は、高力価の幹反応性抗体、並びに異なる季節性ウイルスの接種における罹患率及び死亡率に対する防御を誘導した。特許出願US2013/0315929_A1は、球状頭部ドメインの免疫優性エピトープを、それらのエピトープのいくつかの残基をエピトープの一部である可能性の低い他のアミノ酸と置換することによって抑制する別の方法を開示した。結果は、球状頭部ドメインにおける免疫優性エピトープを遮蔽することが、ステムドメインにおける免疫亜優性エピトープに対する広域の防御的免疫応答を増加させることができることを示唆する。

0016

外来エピトープを提示するための担体としてのHA
インフルエンザHAは、HIV−1エンベロープタンパク質のV3ループのエピトープのための担体として使用されている。HIV−1エンベロープタンパク質由来の12〜22の長さの残基の免疫優性エピトープペプチドの、部位A又は部位BのいずれかのHA免疫優性抗原部位への挿入は、球状頭部ドメイン中に個々のHIV−1エピトープを有するキメラHAを産生した。部位A及び部位Bの残基は全く除去されなかった。免疫原性HIV−1エピトープは、その部位に挿入された。キメラHAは、動物において、HIV−1のV3−ループエピトープに対する免疫応答を誘導した(Kalyan,N.Kら、Vaccine(1994)12:753〜760;米国特許U.S.5,591,823_A;Li,Sら、J.Virol(1993)67:6659〜6666)。非常に低い用量のキメラHAが、挿入されたエピトープに対して特異的な抗体を誘導するのに十分であったため、挿入されたエピトープの免疫原性はHAによって増強されるように見えた。これらの結果は、HA以外のタンパク質由来の免疫優性の外来エピトープを、HAの免疫優性抗原部位へと挿入できることを示唆する。挿入された外来の免疫優性エピトープを有するこれらのキメラHA分子は、挿入された外来の免疫優性エピトープに対する免疫応答を誘導できる。

発明が解決しようとする課題

0017

本発明は、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質の修飾型、それを含有するワクチン、ウイルス様粒子、及びウイルス、並びにその産生のための組換え方法及び物質に関する。概して、これらの修飾は、抗体の生成及び/又はHAタンパク質のステムドメイン中の成熟切断部位(MCS)の修飾のための、代替エピトープによる、HAタンパク質の球状頭部ドメインの免疫優性領域の置換を含む。MCSと融合ペプチドの間でHA0を切断してHA2の遊離N末端を生成することは、細胞侵入のために必須である。動物のプロテアーゼによる切断を防ぐためにMCSを改変することによって、MCSが既に切断されているウイルスのウイルスが増幅できる宿主細胞の感染を可能にするが、その子孫は感染しない。したがって、免疫優性部位を占めるものを含む任意のエピトープの存在は、子孫のウイルスによる宿主のさらなる感染なしに増幅する。

課題を解決するための手段

0018

一態様において、本発明は、修飾HA又はそれを含有するウイルス若しくはウイルス様粒子を含むインフルワクチンであって、HAタンパク質の免疫優性領域が、この領域に挿入されている、同じインフルエンザ系統又は別のインフルエンザ系統の保存された代替エピトープを含有する、インフルワクチンに関する。これは、その天然の位置において免疫亜優性である挿入された代替エピトープのより成功した免疫原性形態を提供する。代替エピトープは、他のHAの球状頭部ドメインに由来しないものである。典型的に、代替エピトープは、HAステムドメイン、又はM2のような非HAインフルエンザタンパク質に由来する。

0019

別の態様において、本発明は、動物のプロテアーゼによって切断されないMCSを含有するように修飾されている修飾インフルエンザウイルス(ワクチンとしてもまた使用できる)に関する。上述のように、これは、ウイルスの感染型を生じることなくウイルスの増幅を可能にする。そのようなウイルスは、1つ以上の免疫優性領域を、インフルエンザエピトープ、又は、例えば他のウイルス、細菌、若しくは腫瘍関連抗原に特徴的なエピトープを含む外来エピトープであってよい代替又は異種のエピトープで置換することによってさらに修飾できる。

0020

さらに他の態様において、本発明は、修飾HAタンパク質のタンパク質、ウイルス又はウイルス様粒子を調製するための組換え物質及び方法、並びにそれらのタンパク質、ウイルス様粒子又は修飾ウイルスを使用する抗体を生成する方法に関する。

図面の簡単な説明

0021

図1は、A/カリフォルニア/07/2009、ブタ起源インフルエンザAウイルスH1N1系統(PDB:3LZG)の成熟HAの細胞外部分のX線結晶構造を示す。この構造は、本発明におけるコンストラクト設計を導くのに使用する。このHAのペプチド配列は、親の野生型(WT)H1のHAコンストラクトを作製するのに使用する。図1Aは、1つのHA単量体をリボン描画とし、他の2つを骨格描画とするHA三量体を示す。膜に対する方向、球状頭部ドメインの位置、及びステムドメインが示される。HA1は明るい影のリボンとして示され、HA2は暗い影のリボンとして示される。図1Bは、HA1及びHA2の位置、並びにHA1及びHA2のN末端及びC末端を有する単一のHA単量体を示す。融合ペプチドは丸で囲まれる。
図2は、A/カリフォルニア/07/2009のH1のHA単量体に対してマッピングして、H3のHAの免疫優性抗原部位のおよその位置を示す。図2Aは、図1のようにリボン描画を示す。H3のHA免疫優性抗原部位A、B、C、D、及びEを暗い影で示す。図2Bは、膜から遠位の球状頭部ドメインの上の図2Aの上面図である。
図3は、A/カリフォルニア/07/2009のH1のHA単量体に対してマッピングして、H1のHAの免疫優性抗原部位のおよその位置を示す。図3Aは、図1のようにリボン描画を示す。H1のHA免疫優性抗原部位Ca1、Ca2、Cb、Sa、及びSbを暗い影で示す。図3Bは、膜から遠位の球状頭部ドメインの上部である図3Aの上面図である。これらの免疫優性抗原部位の多くは、矢印で示す宿主細胞受容体結合部位を取り囲む。
図4は、H1のHAコンストラクトの模式的な設計を示す。図4Aは、コンストラクトの核酸の特徴の模式図である。サブクローニングのための制限部位の位置は標識される。図4Bは、図4Aに示す核酸に対する相対割合におけるコンストラクトのタンパク質の特徴の模式図である。GP67ssは、N末端におけるGP67分泌シグナル(シグナルペプチド)を表す。HA1は、HAのHA1を表す。MCSは、HA1の一部であるHA成熟切断部位を表す。HA2は、HAのHA2を表す。TEVはTEV切断部位を表す。FoldonはFoldon配列を表す。Hisは、C末端における10−ヒスチジンタグ(10×His−tag)を表す。
図5は、HA球状頭部ドメインにおいて異種エピトープが配置される位置と改変された成熟切断部位が存在する位置を示す。親のコンストラクトペプチド配列(WT)を、H3(A/愛知/2/1968 H3N2)及びH1(A/プエルトリコ/8/1934 H1N1)のHAの配列とアラインする。各々の配列のアミノ酸の位置を、シグナル配列除去後の第1の残基を1位としてHA0ナンバリングに基づいて右側に標識する。成熟切断部位(MCS)を、矢印及び垂直線で示す。H3のHAの免疫優性抗原部位A、B、C、D、及びEをH3配列の上にマークする。免疫優性抗原部位Ca1、Ca2、Cb、Sa、及びSbをH1配列の下にマークする。WT中の下線を付した配列は、配列の下に示す相同のエピトープによって置換される。改変された成熟切断部位は、成熟切断部位(MCS)の下に示す。広域中和抗体(bNAb)に対する天然の免疫亜優性抗原部位、FI6、1C9、及びCR8020を配列の上の線によってそれぞれマークする。
図6は、球状頭部ドメインの免疫優性抗原部位に配置される複合CR8020エピトープを有するHA単量体のモデルを示す。HA単量体は図1のようにリボン描画で示す。複合CR8020エピトープによって置換される免疫優性抗原部位を暗い影で示す。ステムドメイン中の元の天然CR8020エピトープをまた暗い影で示す。図6Aは、CR8020Sa4のモデルを示す。図6Bは、CR8020Caのモデルを示す。
図7は、本発明に記載されるHAコンストラクトの発現データを示す。示したコンストラクトの組換えバキュロウイルスを感染させたSF9細胞の細胞培地採集し、Ni−NT樹脂(Niプルダウン)によって捕捉した。Ni−NTA樹脂を1×PBSで洗浄して結合しないタンパク質を除去した。Ni−NTA樹脂に結合したタンパク質をCoomassie(登録商標)染色を伴うSDS−PAGE(図7A、B、C、及びD)又は抗Hisウェスタンブロット図7E)で解析した。矢印は全長HA0を示す。
図8は、本発明で使用される精製HAコンストラクトを示す。示したコンストラクトの組換えバキュロウイルスを感染させたSF9細胞の細胞培地を採集し、Ni−NTA樹脂(Niプルダウン)によって捕捉した。Ni−NTA樹脂を1×PBSで洗浄した。結合したタンパク質をイミダゾール溶出し、Coomassie(登録商標)染色を伴うSDS−PAGEで解析した。矢印は全長HA0を示す。

0022

本発明は、HAタンパク質の修飾に関するため、上に提供されるものに加えてこのタンパク質及びその機能についてのさらなる記述は、有用であり得る。

0023

HA0のプロテアーゼ切断は、インフルエンザAウイルスの感染性に不可欠である。宿主におけるこれらのプロテアーゼの分布は、組織向性、及びそのために病原性の決定因子の一つである。単一の成熟切断部位を有するHAの大部分を切断するいくつかのトリプシン様プロテアーゼは、呼吸器系及びにおいて同定されている(Kido,Hら、J.Biol Chem(1992)267:13573〜13579;Peitsch,Cら、J.Virol(2014)88:282〜291;Zhirnov,O.,Pら、J.Virol(2002)76:8682〜8689)。これらのプロテアーゼはセリンプロテアーゼである。それらの1つは、ラット気管支上皮のClara細胞において最初に単離されたトリプシン様プロテアーゼClaraである。HA0を切断するこれらのプロテアーゼの狭い組織分布は、哺乳動物におけるインフルエンザウイルスの感染を呼吸器系及び肺に制限する。

0024

HA成熟に関与するプロテアーゼは未だよく分析されていない。トリプシンのように、これらのタンパク質は、アルギニン(R)又はリシン(K)のような塩基性残基のC末端側のペプチド結合を切断する。成熟切断部位(MCS)はHA1のC末端に位置し、MCSのC末端における切断は感染性に必須である。

0025

H5及びH7サブタイプの成熟切断部位における多塩基性配列は、フリン及びサブチリシン型プロテアーゼのような広範囲の細胞プロテアーゼによる切断感受性をもたらし、これは哺乳動物におけるこれらのウイルスの広範囲の組織向性及び高い病原性と相関する(Stieneke Grober,Aら、EMBO J(1992)11:2407〜2414;Maines,T.Rら、J.Virol(2005)79:11788〜11800)。多くの高病原性のトリインフルエンザ(HPAI)サブタイプは、H5及びH7である。ヒトにおけるHPAIアウトブレイクの際、報告された致死率は、パンデミック及び季節性のインフルエンザウイルスのものよりも高かった(Morens,D.Mら、Nature(2012)486:335〜340)。MCSにおけるこれらの多塩基性配列は、鳥類の複数の器官におけるウイルス複製ももたらし、これらの鳥類における高い死亡率を生じる。

0026

季節性インフルウイルス及び非病原性鳥類インフルエンザウイルスのHAは、呼吸器及び肺における特異的なプロテアーゼによって細胞外で切断され、これはそれらの組織向性を限定する。一方で、高病原性のウイルスのHAは、遍在的に存在するプロテアーゼによって細胞内で切断される。これらの高病原性のウイルスは、全身感染を引き起こす様々な組織において多サイクル複製する(Steinhauer,D.A.、Virus.Virol(1999)258:1〜20;Taubenberger,J.K.、PNAS(1998)95:9713〜9715)。ヒトインフルエンザウイルスの1918年のパンデミック系統はまた、幅広い細胞プロテアーゼを利用し、そのノイラミニダーゼ(NA)を使用してHA切断のためのプラスミノーゲン動員する(Goto,H及びKawaoka,Y.PNAS(1998)95:10224〜10228;Chaipan,Cら、J.Virol(2009)83:3200〜3211)。

0027

HA0の切断は、ビリオンの宿主細胞との融合に必須である、新規の遊離N末端を有するHA2を生成する。切断型は、受容体結合及び膜融合の完全な機能を有するHAの成熟型である。HA0は受容体に結合する能力を有するが、膜融合を媒介しない。HAの前駆体と成熟型の両方がビリオン表面に存在する。HA0のみを有するウイルスは、融合活性を有さず、感染を引き起こさない。

0028

HA2のN末端12残基は「融合ペプチド」と呼ばれる(Skehelら、Biochem Soc Trans(2001)29:623〜626)。融合ペプチドは、疎水性配列を有する。HA0において、MCS及び融合ペプチドは表面ループを形成する。切断後、新規に生成するN末端融合ペプチドは、HA三量体の境界面に挿入される。宿主細胞受容体への結合に続き、付着したインフルエンザビリオンは、宿主細胞によってエンドソームに取り込まれる。成熟HAの融合能は、エンドソームのpH、すなわち特定のインフルエンザウイルス系統に応じてpH5〜6において活性化される。低pHにおけるHA構造の大規模な変化は、融合ペプチドの細胞膜に向かう追放をもたらす。宿主エンドソーム膜への融合ペプチドの挿入は、周りを囲む宿主エンドソーム膜とHAのC末端膜係留領域を含有するウイルス膜との融合をもたらす。融合は、ウイルスRNAセグメントを宿主細胞の細胞質へと放出し、ウイルス複製が起きる宿主細胞核へと侵入させる。

0029

HAは、インフルエンザウイルス系統の宿主範囲を決定する。HAは、宿主細胞表面の糖タンパク質及び糖脂質末端シアル酸に結合する。ヒトインフルエンザウイルス系統由来のHAは、SAα2,6Galを末端とするシアリルオリゴ糖へとほとんど排他的に結合するが、一方でトリ及びウマインフルエンザ系統由来のHAは、SAα2,3Galに結合する。ヒトは主にSAα2,6Galシアリルオリゴ糖を有し、鳥類は主にSAα2,3Galシアリルオリゴ糖を有する。図3に概略的に示すように、HA上の宿主受容体結合部位は、排他的にHA1から作製される球状頭部ドメインに位置する。インフルエンザウイルスHAの受容体特異性は、良く分析されている。SAα2,6Gal又はSAα2,3Galの認識に関与するアミノ酸残基はマッピングされている。受容体結合ポケットにおける単一のアミノ酸残基置換が受容体結合特異性を変化させることが示されている(Rogers,G.Nら、Nature(1983)304:76〜78)。1918年のインフルエンザパンデミックウイルスの異なる単離系統は、HAの受容体結合部位における単一のアミノ酸置換の結果として異なる受容体結合特異性を有した(Glaser,Lら、J.Virol(2005)79:11533〜11536)。系統A/カロライナ/1/18のHAは、ヒト細胞受容体SAα2,6Galへと優先的に結合するが、一方で系統A/ニューヨーク/1/18のHAは、ヒト細胞受容体SAα2,6Galとトリ細胞受容体SAα2,3Galの両方に結合し、インフルエンザウイルスの宿主適応動的性質を明らかにする。

0030

HAの受容体結合部位における単一の変異は、トリからヒトへと受容体結合特異性を変化させるが、ヒトにおけるH5トリインフルエンザウイルス系統の効率的な伝染は、受容体結合部位外のHAにおけるいくつかの他の変化及び他のインフルエンザタンパク質における変化を必要とする(Imai,Mら、Nature(2012)486:420〜428;Herfst,Sら、Science(2012)336:1534〜1541;Chen,L−Mら、Virol(2012)422:105〜113;Russell,C.Aら、Science(2012)336:1541〜1547)。他の変化と共に、H5のHAにおけるわずか4個のアミノ酸置換は、呼吸飛沫を介したフェレット間の変異トリH5ウイルスの伝染を可能にするのに十分である。種を超えるインフルエンザウイルスの伝染の理解に加えて、これらの研究は、ユニバーサルインフルエンザワクチン候補を評価するのに使用できるような、非哺乳動物インフルエンザウイルスの哺乳動物における伝染を研究する実験手順確立した。

0031

抗インフル抗体及びHAの抗原部位の説明
インフルエンザウイルスの脂質二重層エンベロープの最も豊富なタンパク質として、HAはインフルエンザウイルスの主要な抗原であり、中和抗体の一次エピトープを保持する。ほとんどのヒト抗インフル抗体はHA及びNAに対するものである。ワクチン接種により誘発される60%のインフルエンザ反応性抗体は、HAに反応する(Wrammert,Jら、Nature(2008)453:667〜671)。HA反応抗体の大部分は、球状頭部ドメイン中の受容体結合部位を取り囲む抗原部位を認識する。これらの抗体のいくつかはウイルス中和抗体である。概して、これらの中和抗体(NAb)は、宿主細胞へのHA結合と干渉し、HA阻害(HI)活性を示す。概して、これらは、これらの抗原部位の高変異性のために系統特異性であり、したがって、大いに所望される広域中和活性を欠いている(Wang,T.T及びPalese,P.、Nat Struct Mol Biol(2009)16:233〜234)。

0032

インフルエンザウイルスの広範な感染は、ウイルスのその抗原特性を改変する能力の結果である。インフルエンザウイルスの抗原特性の変化は、エラーを起こしやすいウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼ複合体によるウイルスゲノム低忠実度複製の結果である。高い変異率は、抗原ドリフト、すなわちHAの抗原特性の漸進的変化をもたらす。抗原ドリフトは、全ての型のインフルエンザウイルスにおいて起きる。HA遺伝子の配列解析は、サイレント核酸配列変化はHA遺伝子全体にわたって広がるが、アミノ酸配列の変化の大部分はHA1に位置することを示す(Palese,P及びYoung,J.F.、Science(1982)215:1468〜1474)。HA2はHA1よりも保存されている。

0033

ウイルスゲノムのセグメント化された性質はまた、2種の異なる系統のウイルスが宿主に同時に共感染するときに、ウイルスゲノムセグメントの再構築をもたらす。ウイルスの新規系統は、抗原シフト、すなわちHAの抗原特性の突然の変化をもたらす、異なるウイルス表面タンパク質のこの再構築から出現する。抗原シフトは、インフルエンザAウイルスにのみ起こる。抗原ドリフト及び抗原シフトは、インフルエンザウイルスが、既存の抗体による中和から逃れることを可能にする。

0034

H3インフルエンザ
35年以上前に決定されたインフルエンザHAの最初の詳細な構造は、HAの抗体結合部位を明らかにし、抗原ドリフト及び抗原シフトの分子的な説明を提示する(Wilson,I.Aら、Nature(1981)289:366〜373;Wiley,D.Cら、Nature(1981)289:373〜378;Wiley,D.C及びSkehel,J.J.、Ann Rev Biochem(1987)6:365〜394)。

0035

抗原的に異なるウイルスのHA配列の比較は、H3のHA、すなわちグループ2サブタイプHAの球状頭部ドメインにおける免疫優性抗原部位を同定した。H3のHAの免疫優性抗原部位の記載は、他者によって実証された(Both,G.Wら、J.Virol(1983)48:52〜60)。HA構造におけるこれらの抗原部位のおよその位置は、図2に概略的に示す。これらの抗原部位の配列の位置は図5に示す。部位Aは、A/愛知/2/1968 H3N2系統のHAの133〜148の残基の表面ループに位置する(図5のH3のようにナンバリング)。140ループとして知られるこのループは、球状頭部ドメインから突出し、受容体結合ポケットの下部の縁上にある。部位Bは、球状頭部ドメインの頂部上に位置し、受容体結合ポケットの上部の縁に沿った187〜196の残基の表面αヘリックス及び155〜160の残基の近接表面ループを含む。部位CはCys52とCys277の間のジスルフィド結合を取り囲む。Cys52を中心とするループ(46〜55の残基)とCys277を中心とするループ(271〜280の残基)の交差が、球状頭部ドメインとステムドメインの間のヒンジにおける隆起を形成する。部位Dは、HA三量体のHA単量体サブユニット間の境界領域にある。それは、球状頭部ドメインのコアにおける8ストランドのβシート構造中の200〜214の残基の2つのβストランドを中心とする。他のβストランドのターンにおける残基は、部位Dの一部でもあり得る。部位Dは、HA三量体境界面において最も埋め込まれている。部位Dがいかに抗原部位として機能するかは明らかではない。部位Eは、球状頭部ドメインの側面において部位Aと部位Cの間に位置し、62〜63の残基の表面ループ、78〜83の残基、及び8ストランドβシートの端部上の119〜122の残基のβストランドから作製される。まとめると、部位Eのこれらの残基は、球状頭部ドメインの側部上の連続表面を形成する。1968年〜2003年の期間中に出現したインフルエンザウイルスのアミノ酸置換及び抗原特性の比較は、主要な抗原変化に関与する置換は、部位A及び部位Bに排他的に位置したことを示した(Smith,D.Jら、Science(2004)305:371〜376;Koel,B.Fら、Science(2013)342:976〜979)。部位C、D、及びEにおける置換は、小規模の抗原変化を引き起こすように見えた。結果は、ほとんどの系統特異的中和抗体が、球状頭部ドメインの受容体結合部位の辺縁にある部位A及び部位Bに結合することを示唆する。

0036

H1インフルエンザ
抗原的に異なる、ウイルス系統A/PR/8/34のグループ1のH1のHAの遺伝解析は、球状頭部ドメインにおける異なる抗原部位を同定し、Ca1、Ca2、Cb、Sa、及びSb部位と名付けた(Caton,A.Jら、Cell(1982)31:417〜427;Gerhard,Wら、Nature(1981)290:713〜717)。HA構造におけるこれらの抗原部位のおよその位置は、図3に概略的に示す。これらの抗原部位の配列の位置は図5に示す。Ca1部位は、8ストランドのβシート構造のβストランドのターンに位置する。165〜169の残基のターンの1つ(図5のH1のようにナンバリング)は表面に露出する。Ca1部位の207の残基は、H3のHAの部位Dに対応する2つのβストランドを接続するターンにある。H1のHAのCa1部位は、概してH3のHAの部位Dに対応する。Ca2部位はまた、一次構造において分離するが三次構造において一緒になる2つのセグメントから作製される。Ca2の1つのセグメントは、H3のHAの部位Aの位置に対応する136〜141の残基の表面ループ中にある。Ca2の別のセグメントは長い表面ループ上の220〜221の残基から作製される。Ca2部位は、HA単量体の球状頭部ドメインにおけるCa1の逆側にあるが、HA三量体の別のHA単量体のCa1部位に近接する。1つのHA単量体のCa1部位は、三量体構造の別のHA単量体のCa2部位と連続表面を形成する。Cb部位は、8ストランドのβシート構造に隣接する表面ループを形成する70〜75の残基の直鎖状エピトープである。それは、H3のHAの部位Eに対応する。部位Sa及びSbは、H3のHAの部位Bに対応するサブサイトみなすことができる。154〜163の残基の部位Saは、H3のHAの部位Bループに対応するループと重複する。Sa部位の別のセグメントは、124〜125の残基のターンに近接する。部位SbはH3のHAの部位Bのαヘリックスに対応し、主としてαヘリックスの188〜194の残基を有する。

0037

広域中和抗体及び保存エピトープ
天然インフルエンザウイルス感染又は三価不活化インフルエンザワクチン(TIV)によるワクチン接種もまた、膜近位のステムドメインに大部分が位置する保存HAエピトープに対する低レベルの抗体を誘発する(Ellebedy,A.Hら、PNAS(2014)111:13133〜13138)。これらの抗体は、インフルエンザウイルスの多くの系統間で保存されたエピトープを認識する。いくつかの系統に対する防御を提供するものは、広域中和抗体と呼ばれる(bNAb)。概して、これらのbNAbは、HA阻害活性を有さず、宿主細胞表面受容体に対するHAの結合を防がない。最初の系統間抗体であるC179は、20年以上前に分析されている(Okuno,Yら、J.Virol(1993)67:2552〜2558)。それは、H1とH2系統の間で保存されている、HA1の318〜322の残基の立体構造エピトープ(TGLRN)、及びHA2の47〜58の残基のエピトープ(GITNKVNSVIEK)を認識する。C179は、HAの融合活性を阻害し、したがって、ウイルス中和をもたらす。

0038

多くのbNAbが、インフルエンザウイルスに感染した患者において検出されるか、又は単離されている(Ekiert,D.C及びWilson,I.A.、Curr Opin Virol(2012)2:134〜141)。bNAbは、グループ1、グループ2、又はグループ1とグループ2の両方のインフルエンザAウイルスを中和することが実証されている。bNAbによって認識される抗原エピトープの多くは、同定され、分析されている。これらのエピトープは、HA配列の直鎖状セグメントかHA配列の複数の直鎖状セグメントを有する立体構造エピトープのいずれかである。bNAbに対するエピトープの多くは、HAタンパク質のより低変異性のステムドメインに位置する。これらのエピトープは、これに限定するものではないが、融合タンパク質及びMCS周辺のペプチド配列を含む。

0039

多くのbNAb及びそれらのエピトープは、構造的に分析されている。例えば、bNAbであるFI6は、MCS及びHA0中の融合ペプチドの残基を認識する(Corti,Dら、Science(2011)333:850〜856)。HAのペプチドマッピングは、FI6のエピトープとして、MCS及び融合ペプチドの大部分からなるRKKRGLFGAIAGFIE、並びにHA2におけるヘリックスコイルドコイルペプチドのKESTQKAIDGVTNKVNSである、2つのペプチドを同定した。提案されたFI6の中和メカニズムは、膜融合の阻害すること、及びプロテアーゼのHA0のMCSへのアクセス遮断することによりHA成熟の防止することである。別のbNAbであるF10は、HAの成熟型における融合ペプチド近辺の立体構造エピトープを認識する(Su,Jら、Nat Struct Mol Biol(2009)16:265〜273)。F10は、恐らく膜融合を防止することによって全てのグループ1インフルエンザAウイルスを阻害する。

0040

モノクローナルbNAbである1C9は、インビトロで細胞融合を阻害する(米国特許第8,540,995号;Prabhu,Nら、J.Virol(2009)83:2553〜2562)。1C9は、GLFGAIAGFの直鎖状エピトープ、すなわちHPAIであるH5N1のH5のHA2の融合ペプチドのN末端を認識する(免疫エピトープデータベースウェブアドレス:iedb.org/assay details.php?assayId=1599077)。1C9は、マウスにおいて高病原性トリインフルエンザ(HPAI)H5N1ウイルスによる感染に対する防御を示す。モノクローナルbNAbはまた、メモリーB細胞より単離されている(Hu,Wら、Virol(2013)435:320〜328)。これらのモノクローナル抗体のいくつかは、2009年のパンデミックH1N1インフルエンザウイルス由来のHA2のFIEGGWTGMVDGWYGYHHの直鎖状エピトープを認識する。このエピトープは、融合ペプチドの1C9エピトープに対してC末端側である。HA融合ペプチドの14残基の配列は、インフルエンザA及びBウイルスを超えて高度に保存されている。

0041

HA融合ペプチドの保存された性質は、ユニバーサルインフルエンザワクチンを開発するために調査された。切断の結合の両側におけるMCS及びHA2の融合ペプチドを含有し、HA1の最後の9アミノ酸残基を含むインフルエンザBウイルスのHA0の高度に保存された配列に基づいた、ペプチドコンジュゲートワクチンは、抗原的に異なる系統のインフルエンザBウイルスのウイルス系統による致死性の接種に対して防御的な免疫応答を誘発した(Bianchi,Eら、J.Virol(2005)79:7380〜7388)。

0042

モノクローナルbNAbであるCR6261は、HA2ヘリックスA及びステムドメインのHA1残基における高度に保存された領域を認識する(Ekiert,D.Cら、Science(2009)324:246〜251)。CR6261は、融合後の立体構造へのHAの転換を防止することによってグループ1インフルエンザウイルスを中和する。CR6261は、同じVH1−69生殖細胞系列抗体重鎖を使用するbNAbに属する。別のVH1−69モノクローナル抗体であるCR8020は、グループ2インフルエンザウイルスを中和する。CR8020は、膜に対して至近距離(約15〜20Å)のステムドメインの基部でHAに結合し、HIVのgp41サブユニット由来の膜近位外部領域MPER)を認識するHIVに対する抗体に類似する(Ekiert,D.Cら、Science(2011)333:843〜850)。CR8020エピトープの2つの主な構成要素は、融合ペプチドのC末端部分(H3のHA2の15〜19の残基、EGMID)、及びステムドメインの基部近辺の5ストランドβシートの最外部のストランド(H3のHA2の30〜36の残基、EGTQAA)からなる。これら2つの構成要素は、H3の一次構造において10残基離れている。HAのステムドメインに結合する大部分のbNAbは、インフルエンザAウイルスのHAのグループ1(H1、H2、H5、H6、H8、H9、H11、H12、H13、及びH16)又はグループ2(H3、H4、H7、H10、H14、及びH15)のいずれかを中和する。これらの抗体は、宿主細胞へのHAの結合を阻害しないが、ウイルス膜と宿主細胞膜の融合を防止できる。

0043

HA受容体結合部位は、球状頭部ドメインの頂部におけるポケットである(Wilson,I.Aら、Nature(1981)289:366〜373;Wiley,D.C及びSkehel,J.J.、Ann Rev Biochem(1987)56:365〜394)。このポケットは、多くのインフルエンザ系統を超えて高度に保存されているアミノ酸残基によって形成されている。ポケットの縁は、上述されるH3の部位A及び部位Bのような免疫優性抗原部位によって形成される。健常ヒト対象からのヒトモノクローナル抗体(mAb)のクローニングは、H1、H2、及びH3系統由来のHAの球状頭部ドメインにおける受容体結合部位の至近距離にある保存された残基を認識するbNAbを同定した(Krause,J.Cら、J.Virol(2011)85:10905〜10908;Krause,J.Cら、J.Virol(2012)86:6334〜6340)。構造研究は、これらのbNAbの少なくとも一部が受容体結合ポケットに対するシアル酸の相互作用模倣することを明らかにした(Whittle,J.R.Rら、PNAS(2011)108:14216〜14221;Ekiert,D.Cら、Nature(2012)489:526〜532)。

0044

幹反応性抗体は、自然感染においてまれであり、現在の季節性インフルワクチンによる免疫においてさらに少ない。これらの抗体のサブセットのみが中和抗体である。ステムドメインの保存された性質のため、中和抗体の大部分はbNAbである。現在、ヒト対象から作製された抗体ライブラリーからのクローニングは、これらのまれな広域中和幹反応性抗体を日常的に同定することができる(Kashyap,A.Kら、PNAS(2008)105:5986〜5991;Wrammert,Jら、Nature(2008)453:667〜671)。これらの幹反応性抗体のまれな出現は、これらのステムドメインのエピトープが免疫亜優性である一方で、大部分の抗体が導かれる球状頭部ドメインのエピトープが免疫優性であるという仮説を導く(Krammer,F及びPalese,P.、Nature Rev Drug Disc(2015)14:167〜182)。流行している季節性インフルワクチンに対する繰り返される曝露又は季節性インフルワクチンによる免疫は、球状頭部ドメインの免疫優性抗原部位に対する抗体の産生をもたらす。球状頭部ドメインの免疫優性エピトープの存在が、二次応答をステムドメインから離れさせる傾向をもたらすことが示唆されている(Russell,C.J.、N Engl J Med(2011)365:1541〜1542)。現在の系統に感染するか又はそれに対してワクチン接種した個体は、免疫学的にナイーブである者よりも、普遍的な応答を開始するのにより苦労する可能性がある。

0045

M2タンパク質及びそのエピトープ
M2は、ウイルスエンベロープホモ四量体プロトンチャネルを形成する1回膜貫通タンパク質である(Lamb.R.Aら、Cell(1985)40:627〜633;Pielak,R.M及びChou,J.J.、Biochim Biophys Acta.(2011)1808:522〜529)。それは、ウイルスエンベロープにおいて、HAと比べてはるかに低い存在量(1:10〜1:100の比のM2:HA)で存在する。M2プロトンチャネルの機能は、ウイルスタンパク質を宿主細胞のサイトゾルへと放出するためにウイルス内部のpHを調節すること、及び細胞表面へのHAの輸送のためにゴルジ体腔のpHを調節することに重要である。インフルエンザAウイルスM2(AM2)タンパク質は、M2eとして知られる1〜23の残基の細胞外N末端ドメイン、24〜46の残基の膜貫通(TM)ドメイン、及び47〜97の残基の細胞内C末端ドメインを含む97残基を有する。4つのM2分子からのTMドメインは、細胞侵入の間のウイルス膜を横断するpH、並びにウイルス構築及び退出の間の感染した細胞のトランスゴルジ膜を横断するpHを調節するpH感受性プロトンチャネルとして機能する4ヘリックスバンドルを形成する。大きな細胞質ドメインは、ビリオン内殻のM1タンパク質との会合を介して安定な四量体形成のために重要であり、ウイルス構築における役割を果たす。プロトンチャネル機能に必須であるTMドメインにおけるHXXXW配列モチーフを除いて、インフルエンザA、B、及びCウイルスのM2タンパク質は、配列相同性をほとんど全く共有しない。しかしながら、AM2の10個のN末端細胞外残基は、全てのインフルエンザAウイルスにおいて保存されている。

0046

インフルエンザAウイルスのM2(AM2)は、AM2プロトンチャネルを遮断する抗ウイルス薬アマンタジン及びリマンジンの標的である。プロトンチャネルの閉状態を安定化させる薬物リマンタジンは、チャネルドメインのC末端近辺の脂質に面したポケットに結合する。アマンタジンは、インフルエンザAウイルスに対するが、インフルエンザBウイルスに対してではない活性を有する抗ウイルス薬である。これらのチャネル遮断薬の使用は、AM2のチャネルドメインにおける変異の結果としての広範な薬物耐性のために、中止されている。これらの変異の多くは、野生型(WT)ウイルスよりも伝染しにくいいくらか弱毒化したウイルスを生じる。これらの薬物耐性変異は、薬物選択圧非存在下においてWTへと戻ることができる。

0047

M2タンパク質は、インフルエンザウイルスに感染した宿主細胞表面に豊富に発現している内在性膜タンパク質である(Lamb,R.Aら、Cell(1985)40:627〜633)。M2が、インフルエンザウイルスに応答する細胞傷害性Tリンパ球(CTL)のための細胞表面抗原であることが示唆された。インフルエンザAウイルスの感染は、M2に対する低力価の抗体を誘発するのみである(Feng,Jら、Virol J.(2006)3:102〜115)。M2eの高度な構造保存は、部分的に不十分なM2e特異的抗体応答の結果であり得、したがって、変化への圧力が存在しない可能性がある。抗M2抗体応答は、M2タンパク質に対する既存の抗体を有する個体の間でより強固であった(Zhong,Wら、J.Infect Dis(2014)209:986〜994)。2009年パンデミックH1N1インフルエンザAウイルスの感染の結果として誘導される抗M2抗体は、季節性インフルエンザAウイルスのM2タンパク質に対して交差反応性であった。抗M2e抗体によるマウスの処理は、疾患の進行を顕著に遅延させ、M2eエスケープ変異体の単離をもたらし、インフルエンザAウイルス感染に対するワクチンとしてM2eを使用する可能性を示唆した(Zharikova,Dら、J.Virol(2005)79:6644〜6654)。

0048

M2eとHAの融合に基づくDNAワクチンが記載されている(Park,K.Sら、Vaccine(2011)29:5481〜5487)。融合タンパク質は、互いの間の20残基のリンカーを介してHAタンパク質のN末端に位置する、1つのヒトM2eペプチドと1つのトリM2eペプチドとを有する。コードされたM2e−HA融合タンパク質の発現を確認した。M2e−HA融合DNAワクチンにより免疫されたマウスは、M2eに対する増強したT細胞応答を示し、異種トリインフルエンザウイルスの致死性接種からの完全な防御を示した。

0049

Mycobacterium tuberculosisのHSP70(mHSP70)タンパク質のC末端へと遺伝的に融合されたM2eの4つのタンデムリピートからなる組換え融合タンパク質は、マウスにおいて複数の系統のインフルエンザウイルスに対する防御を示した(Ebrahimi,S.Mら、Virology(2012)430:63〜72)。M2eペプチド、SLLTEVETPIRNEWGCRCNDSSDは、ワクチンとしての他のインフルエンザタンパク質及びインフルエンザBウイルスのM2eの相同体であるBM2からのペプチドと共にカチオン性リポソーム送達ビヒクルへとコンジュゲートされた(特許出願US2010/086584_A1)。ワクチンは、マウスにおいてM2eに対する免疫応答を誘発した。ワクチンを含有するM2eペプチドによりワクチン接種されたマウスは、致死性のインフルエンザウイルス接種から防御された。M2eのVLPを補充した不活化インフルエンザワクチンは、マウスにおいて、抗原的に異なるインフルエンザAウイルスに対する改善された、長期間にわたる交差防御を付与した(Song,J−Mら、PNAS(2011)108:757〜761)。

0050

免疫優性領域の修飾
本発明は、HAの球状頭部ドメインの免疫優性領域を代替エピトープによって置換するか、又はそこに代替エピトープを挿入することにより生じる、宿主免疫応答をこれらのエピトープに導くための、遺伝的に修飾された組換えインフルエンザヘマグルチニン(HA)遺伝子及びタンパク質を含む。これらのエピトープのいくつかはHAに対するbNAbによって認識される。本発明はまた、修飾MCSを有する修飾HAタンパク質及び遺伝子、並びにこれらの修飾の組合せに関する。

0051

一実施形態において、修飾組換えHAは、M2タンパク質の細胞外ドメイン(M2e)によって置換された球状頭部ドメインの免疫優性抗原部位を有するか、又はM2eが免疫優性抗原部位に挿入されている。

0052

HAタンパク質の三次元構造に導かれ、特定の表面ペプチド又は免疫優性領域のそのような表面ペプチドが、同じHAの他の領域の異種ペプチド若しくはいくつかの異種ペプチドによって、又は別のサブタイプ若しくは系統のインフルエンザウイルスのHA由来の異種ペプチド若しくはいくつかの異種ペプチドによって置換される。これらの異種ペプチドは、免疫優性領域に挿入されてもよい。さらに、HAの特定の表面ペプチド又は複数のペプチドは、HAに関連しない他のタンパク質由来の異種ペプチドによって置換されるか、又はそのようなペプチドがその中に挿入される。これらの異種ペプチドは、天然タンパク質又は人工的に設計されたもののいずれかである。それらは、既知の抗体によって認識されないものであり得る。

0053

HAの免疫優性領域は、HAの球状頭部ドメインの表面上にある。これらの修飾される表面領域は、表面露出ヘリックス、βストランド又はループである。これらの表面領域は、好ましくは、免疫優性抗原部位及びエピトープであるか、又はそのような抗原部位及びエピトープの一部であるか、又はそのような抗原部位及びエピトープに隣接する。

0054

いくつかの実施形態において、HA球状頭部ドメインの免疫優性領域は、HAに対するbNAbによって認識されるHAの免疫亜優性エピトープのペプチドによって置換される。他の実施形態において、HA球状頭部ドメインの免疫優性領域は、インフルエンザウイルスのグループを中和する抗体によって認識される免疫亜優性エピトープのペプチドによって置換される。これらの免疫亜優性エピトープは、HAステムドメインから選択されるか、又はHA融合ペプチド若しくはHA成熟切断部位を含む。

0055

本発明の組換え修飾HAタンパク質は、組換え野生型HAと同様のレベルで細胞培養において発現され、細胞培地へと分泌される。これらの設計は、これに限定されるものではないが、ヒトに感染するインフルエンザウイルス、並びに他の哺乳動物及び鳥類に感染するインフルエンザを含む、インフルエンザA、B、及びCウイルスの全ての系統の任意のインフルエンザHAに適用可能である。一実施形態において、これらの修飾HAタンパク質は、ヒト又は動物におけるインフルエンザウイルス感染に対するワクチンを作製するための免疫原として使用できる。

0056

これらの免疫優性領域を部位特異的変異導入によって変更してもよい。抗原部位の溶媒露出残基は、HAタンパク質の三次元構造によって同定される。抗原部位の溶媒露出残基又はいくつかの溶媒露出残基は、部位特異的変異導入によって変更するか、又はこれらの残基の特異的な変更を含有するペプチドと置換される。新規の部位は、元の部位と同じ二次構造を有する。

0057

異種エピトープによって置換された抗原部位を有する例示的HA
図3に示すHA構造に基づいて、HAのいくつかの位置を選択して、球状頭部ドメインの免疫優性抗原部位を例えばHAのステムドメイン由来の異種ペプチドによって置換することの実現可能性を示す。

0058

119〜122の残基のペプチドKTSS図5のWTのようにナンバリング)は、124〜125の残基のSa部位近辺の表面露出ヘリカル構造である。Sa部位は、HA三量体の球状頭部ドメインの側面上にあり、受容体結合部位から離れている。この部位における修飾は、受容体結合部位の変化を起こしにくく、そのため修飾HAによる宿主受容体結合に変化を起こしにくい。4残基ペプチドKTSSは、ステムドメインのbNAbエピトープによって置換される。H3のHAの部位Aに対応するCa2部位の137〜142の残基のHAGAKSは、主要な免疫優性部位である。153〜164の残基のKKGNSYPKSKSは、H3のHAの部位Bに対応するSa部位の表面ループである。このペプチドのN末端部分である153〜157の残基のKKGNSは、いくつかのコンストラクトにおいて置換されている。Sb部位の184〜195の残基のTSADQQSLYQNAは、HA球状頭部ドメインの頂部でヘリックスを形成する。

0059

Sa部位の表面ループ及びSb部位のヘリックスは、HAの球状頭部ドメインにおいて互いに近接し、H3の部位Bに対応する。Sa部位とSb部位は共に、ループ及びヘリックス構造を有する立体構造エピトープを提供できる。しかしながら、これらの部位が受容体結合部位近辺にあるため、これらのペプチドの置換は受容体結合部位を破壊する可能性がある。Ca2部位の213〜224の残基のEIAIRPKVRDQEは、2つのHA単量体間の境界面近辺のループである。このループは、H3のHAの部位Dに対応する、近接するHA単量体のβストランドとの接点を有する。ループの一部は表面露出である。Ca2部位はこのペプチド内に位置する。いくつかのコンストラクトにおいて、このペプチドは部分的に置換される。

0060

さらに、異種ペプチドは、図5に示す任意の他の抗原部位に又はその近辺に、及び図1図3に示す表面ループ又はヘリックスに又はその近辺に配置することができる。さらに、異種ペプチドは、抗原部位の残基の欠失が全くなく、これらの任意の位置に挿入することができる。

0061

bNAbであるCR8020エピトープはステムドメインに位置する。図5及び図6に示すように、CR8020エピトープは、ステムドメインの基部近辺の5ストランドβシートの最外部のβストランド(H3のHAのHA2の30〜36の残基、EGTGQAA、配列番号26)、及び融合ペプチドのC末端部分(H3のHAのHA2の15〜19の残基、EGMID、配列番号25)からなる2つの主な構成要素を有する。これらの2つの構成要素は、一次構造において、10アミノ酸残基によって分離されている。複合体CR8020エピトープEGMIDYEGTGQAA(配列番号27)は、2つのエピトープの構成要素がチロシン(Y)によって連結されるように設計される。この複合体CR8020エピトープは、免疫優性部位を置換するための異種ペプチドとして使用される。

0062

別のbNAb、1C9エピトープは、ステムドメインに存在するHA2のN末端における融合ペプチドである。GIFGAIAGFIEG(配列番号36)の修飾1C9エピトープペプチドは、免疫優性部位において提示されるためのペプチドとして設計された。I1C9と表されるこの修飾1C9ペプチドは、bNAbである1C9によって認識されるH5融合ペプチドの2位におけるロイシン(L)のイソロイシン(I)置換を有する。このI1C9融合ペプチドは、ブタH1のHA並びにいくつかのH6及びH9ウイルスのHAに存在する。このI1C9ペプチドは、異なる免疫優性部位に配置する。抗原部位にI1C9を位置のシフトを伴って有する複数のコンストラクトが作製された。

0063

bNAbであるFI6のエピトープは、HA前駆体HA0の三次元構造上の連続表面を形成するが、一次構造において分離している2つのペプチドを含有する立体構造エピトープである(図5)。1つのFI6エピトープペプチドRKKRGLFGAIAGFIEは、HA0の成熟切断部位及び融合ペプチドである。別のFI6ペプチドKESTQKAIDGVTNKVNSは、HA2におけるコイルドコイル構造を有する。これら2つのFI6エピトープペプチドを球状頭部ドメインに配置するコンストラクトが作製されている。FI6エピトープペプチドRKKRGLFGAIAGFIEを、153〜164の残基のSa部位に配置し、コイルドコイルFI6エピトープペプチドKESTQKAIDGVTNKVNSを、184〜195の残基のSb部位に配置する。別のコンストラクトにおいてFI6エピトープペプチドRKKRGLFGAIAGFIEをSa部位に配置するが、第2のFI6エピトープペプチドを有さない。

0064

多くのbNAbエピトープは分析されている。それらの任意のものは、上述のように、球状頭部ドメインの免疫優性抗原部位若しくは表面ループに、又はその近辺に配置することができる。

0065

他の実施形態において、異種ペプチドは、M2タンパク質の細胞外ドメインのペプチド(M2eペプチド)である。M2eペプチドは、インフルエンザAウイルスの間で保存され、低変異性である。インフルエンザAウイルスとインフルエンザBウイルスに由来するM2eペプチドは異なっているが、M2eペプチドはまた、インフルエンザBウイルスの間で保存され、低変異性である。

0066

いくつかの実施形態において、異種ペプチドは、部位特異的変異導入によって免疫優性抗原部位に特異的な変更をもたらす人工的に設計されたペプチドである。いくつかの実施形態において、人工ペプチドは、免疫優性抗原部位及び異種ペプチドの所望の特徴を組み合せる。いくつかの実施形態において、人工ペプチドは、bNAbとの相互作用のための残基、及びHA球状頭部ドメインの三次元構造の維持のための元の免疫優性抗原部位の残基を有する。これらの人工ペプチドは、HA三次元構造に基づいて合理的に設計されるか、又はランダムに生成したペプチドのライブラリーをスクリーニングをすることによるかのいずれかである。

0067

バキュロウイルス発現系又は哺乳動物発現系を使用して発現するための、M2eペプチドSLLTEVETPTRNGWECKCSDSをCa2部位又はSb部位のいずれかに配置するコンストラクトを作製している。M2eペプチドは、異なるインフルエンザ系統由来の配列の一致に基づいてさらに最適化できる。

0068

修飾された成熟切断部位を有するHA
本発明は、HA成熟切断部位(MCS)のプロテアーゼ感受性を変更して生じるHAを異なるクラスのプロテアーゼに感受性にし、かつ、インフルエンザウイルスの全ての系統の天然のHA成熟切断部位を切断するそれらのトリプシン様プロテアーゼに耐性にする実施形態を含む。改変されたMCSは、インフルエンザウイルスの既知の天然宿主に存在しない特異的なプロテアーゼによって認識されるように設計される。これは、生じるHAをインフルエンザウイルスの全ての天然宿主における成熟に耐性にする。この改変された成熟切断部位を認識するこの特異的プロテアーゼの存在において、これらの生じるHAは、切断されてHA1及びHA2を含有する成熟型になる。この特異的プロテーゼの存在下で生じるHAから作製される組換えインフルエンザウイルスは、成熟HAを形成し、天然のインフルエンザ宿主に感染するようになる。しかしながら、感染した天然宿主において複製したウイルス子孫は、天然宿主における適切なプロテアーゼの欠損により感染性ではない。

0069

H1のHA分子はしばしば、MCS中に単一の塩基性残基を有する。この単一の塩基性残基は通常、切断の結合に対してN末端側のアルギニン(R)残基である。H1のHAのMCSにおけるアルギニン(R)又はリシン(K)のような複数の塩基性残基の付加は、修飾HAを含有する組換えインフルエンザウイルスの感染性を増加する。多塩基性残基を含有するH5のMCSによる天然のH1のMCSの置換は、修飾HAを含有する組換えインフルエンザウイルスの感染性を増加する(Kong,W−pら、PNAS(2006)103:15987〜15991)。これらの多塩基性残基は、多くの細胞内トリプシン様プロテアーゼにより感受性である。いくつかの実施形態において、H1のHAのMCSは、H5のHAのMCS又は多塩基性残基と置換することによって修飾される。H1のHAのMCSはまた、HA1の最後の残基(アルギニン)とHA2の最初の残基(グリシン)の間に多塩基性残基を挿入することによって修飾される。

0070

改変されたMCS配列を有する遺伝的に修飾された組換えインフルエンザHA遺伝子及びタンパク質もさらに開示される。天然MCSは、別のHA由来のMCSの配列によって置換される。前記変更は、恐らくは生じるHAを未同定の宿主プロテアーゼによる成熟切断に対してより感受性にすることによって、より感染性の組換えインフルエンザウイルスをもたらすことが知られている異なるHA由来の別のMCSとHAの天然MCSの置換を含む。好ましい実施形態において、H1のHAの天然のMCSは、H5のHAのMCSによって置換されるか、又はアルギニン(R)及びリシン(K)の多塩基残基によって置換される。

0071

第Xa因子及びエンテロキナーゼのようないくつかの哺乳動物プロテアーゼは、切断の結合のN末端側に完全に位置する、それらのそれぞれの対応する切断認識部位を有する。それらの切断認識部位はまた、天然のHA成熟切断部位を置換するのに使用できる。天然HAの場合のように、これらのプロテアーゼ切断部位の切断の結合のC末端側はグリシン(G)である。トロンビン切断部位もまた、切断の結合のC末端側にグリシン(G)を有する。トロンビン切断の後、新規のN末端のグリシン(G)が生成される。全てのこれらのプロテアーゼは、多くの天然のインフルエンザ宿主中に存在する。しかしながら、これらのプロテアーゼは通常、組換えHA産生のために使用される細胞培地又は細胞株に存在しないか、又は痕跡量で存在するかのいずれかである。

0072

タバコエッチウイルス(TEV)のTEVプロテアーゼは、ENLYFQGの切断部位を認識し、グルタミン酸(Q)とグリシン(G)の間を切断する。TEVプロテアーゼによって生成される遊離N末端はグリシン(G)であり、HA成熟後のHA2のN末端の残基と同じである。天然HAのMCSと異なり、TEV切断部位には塩基性残基が存在しない。いくつかの実施形態において、HAのMCS全体が、TEV切断部位によって置換されるか、又はMCSのいくつかの残基がTEV切断部位によって置換されるか、又は例えば切断の結合のN末端側のアルギニン(R)のみがTEV切断部位によって置換される。TEV切断部位によって置換されるMCSを有するHAコンストラクトは、バキュロウイルス発現系又は哺乳動物発現系を使用して発現され、野生型HAと同じレベルで発現するコンストラクトが同定されている。

0073

修飾MCSを切断するTEVプロテアーゼの存在において、前記修飾HAは、成熟し、HA1及び融合ペプチドの天然N末端を有するHA2へと変換される。成熟修飾組換えHAは、対応する宿主細胞受容体に結合する能力を有し、膜融合する。TEVプロテアーゼの非存在において、新規の合成された前記修飾HAは、未切断のHA0前駆体として残る。融合ペプチドの遊離N末端の欠損は、前記HAの膜融合を防ぐ。感染した宿主細胞において産生される子孫のHAタンパク質は、宿主中のTEVプロテアーゼの欠損のためにHA0として残り、成熟機能型へとプロセシングされない。新規に作製されたHA0を有するウイルスは、膜融合の能力を有さず、したがって非感染性である。

0074

抗原部位と成熟切断部位の組合せ
HAの球状ドメインの抗原部位の変更及びHAのステムドメインのMCSの変更は、任意の種類の組合せであり得る。特定の異種ペプチドは、異なる改変された成熟切断部位を有するHAタンパク質の球状頭部ドメインの抗原部位へと導入できる。さらに、2つ以上の異種ペプチドを、異なる抗原部位で単一のHAタンパク質に導入することができる。一実施形態において、遺伝的に修飾された組換えインフルエンザHAは、HAの球状頭部ドメインの抗原部位を置換するM2eペプチド及びMCSとしてTEVプロテアーゼ部位を有する。別の実施形態において、遺伝的に修飾された組換えインフルエンザH1のHAは、HAの球状頭部ドメインの抗原部位を置換するM2eペプチド及びH1の天然のMCSの代わりにH5のMCSを有する。

0075

産生方法
修飾HAの産生のために、タンパク質は、内在性膜タンパク質ではなく、又は細胞膜若しくは細胞表面に付着せずに、細胞から細胞培地へと可溶型として分泌させる。いくつかの実施形態において、天然のHAシグナル配列を、昆虫細胞及び哺乳動物細胞における分泌のために使用する。他の実施形態において、天然のHAシグナル配列を、昆虫細胞における分泌のために昆虫細胞シグナル配列によって、又は哺乳動物細胞における分泌のために哺乳動物シグナル配列によって置換する。HA膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインの代わりに、プロテアーゼ切断部位をHA細胞外ドメインのC末端に配置し、その後にHA三量体の安定化のためのバクテリオファージT4フィブリチン由来の「foldon」配列、及び精製を促進するためのC末端Hisタグを配置する。組換えHAタンパク質は、シグナル配列の除去された全長の未切断の前駆体HA0として、又はHA2のN末端に野生型融合ペプチドを有するHA1及びHA2サブユニットを含有する成熟型としてのいずれかで作製される。好ましい実施形態において、最終的に精製された遺伝的に修飾されたHAは、野生型HAのように三量体を形成する。

0076

設計された組換えインフルエンザHAの遺伝子は新規遺伝子合成によって作製される。遺伝子合成技術は、よく確立されており、広範囲にレビューされている(Kosuri,S及びChurch,G.M.、Nat Methods(2014)11:499〜507)。10kb超の長さの遺伝子は、商業的供給者によって日常的に作製されている。遺伝子合成は、特定のHA配列を修飾する能力、及び発現宿主又は特定の遺伝的操作の必要性に応じたコドン最適化の機会を提供する。異なるコンストラクト間のHA断片の交換を促進するために、合成されたHA遺伝子の特定の位置に制限部位を設計する。シグナル配列並びにプロテーゼ部位、foldon配列、及びC末端Hisタグを有する合成されたHA遺伝子は、よく確立されたプロトコールによってバキュロウイルスゲノムへと組み込まれ、修飾HAタンパク質の発現がバキュロウイルスポリドリプロモーターによって導かれるようにする。他の実施形態において、HA遺伝子の同じセットは、哺乳動物細胞における発現のための哺乳動物発現ベクターにクローニングされる。

0077

いくつかの実施形態において、HAコンストラクトは、バキュロウイルスベクターを使用する昆虫細胞における発現のためにコドン最適化される。他の実施形態において、HAコンストラクトは、これに限定されるものではないが、CHO細胞(チャイニーズハムスター卵巣細胞)及びHEK293細胞(ヒト胎児腎臓293細胞)を含む哺乳動物細胞における発現のためにコドン最適化される。任意の生物のためのコドン最適化は、DNASTAR,Inc.(3801 Regent Street、Madison、WI 53705 USA)からのLasergeneソフトウェアパッケージのような市販のソフトウェア、OPTIMIZER(ワールドワイドウェブでgenomes.urv.es/OPTIMIZER/に位置する)のようなオンラインウェブサーバーを使用して、又はそれらの独自のアルゴリズムを使用する遺伝子合成サービス供給者によって日常的に実施される。コドン最適化は、G/C含量、潜在的なスプライス部位及びRNA不安定化配列要素の排除、並びに安定したRNA二次構造の回避を考慮する。コドンはまた、Codon Usage Database(ワールドワイドウェブでkazusa.or.jp/codon/に位置する)に基づいて手動で調整される。コドンの縮退のために、遺伝子配列は、コードされるアミノ酸配列を変化させずに変更できる。制限部位は、アミノ酸配列を変化させずにコドンを変更することによって特定の位置に導入される。これらの方法のいずれかを使用して、特定の生物に対するコドン最適化を含むか、又は含まない遺伝子配列は、コンピューターアルゴリズムを使用して、又は手動でタンパク質配列の逆翻訳によって日常的に生成される。

0078

他の実施形態は、TEVプロテアーゼ認識部位に変更したMCSを有する遺伝的に修飾されたHA遺伝子から組換え非感染性インフルエンザウイルスを、確立された細胞培養法を使用して作製する方法を含む。ヘルパーウイルスを使用することを含むか、又は含まずに、RNAセグメント又はクローニングされたcDNAを含むプラスミドからのインフルエンザウイルスの産生を可能にする逆遺伝学系が開発されている(Luytjes,Wら、Cell(1989)59:1107〜1113;Neumann,Gら、PNAS(1999)96:9345〜9350;Fodor,Eら、J.Virol(1999)73:9679〜9682;de Wit,Eら、J.Gen Virol(2007)88:1281〜1287)。感染性インフルエンザウイルスは、インフルエンザRNAセグメント又はインフルエンザRNAのcDNAを有するプラスミドによる哺乳動物細胞の一過性トランスフェクションによって作製される。細胞培地より単離されるこれらのウイルスは、ワクチンを作製するための生感染性インフルエンザウイルスを産生するために発育鶏卵に感染させるために使用される。インフルエンザRNAセグメントのいくつかは、外来遺伝子によって置換される。組換えインフルエンザAウイルスは、HAタンパク質を置換するインフルエンザCウイルスHEFタンパク質を使用して作製されている(Gao,Qら、J.Virol(2008)82:6419〜6426)。これらの実施形態において、修飾HAのcDNA又はRNAは、標準的な分子技法及び遺伝子合成によって作製される、他の7つのインフルエンザRNA又は他の7つのRNAセグメントのcDNAと共に哺乳動物細胞へと共トランスフェクションされる。確立された方法又は同様の方法を使用して、複数の同一の又は異なるHAタンパク質を単一のビリオンにパッケージすることができる(Uraki,Rら、J.Virol(2013)87:7874〜7881)。

0079

遺伝的に修飾されたHA遺伝子から組換え感染性インフルエンザウイルスを作製する方法は、上述のような確立された細胞培養法を使用する。これらの実施形態において、H5のHAのMCS又はMCSにおける多塩基性配列によって遺伝的に修飾されたHA遺伝子は、上述のような標準的な逆遺伝学系によって作製される、他の7つのインフルエンザRNA又は他の7つのRNAセグメントのcDNAと共に哺乳動物細胞へと共トランスフェクションされる。これらの修飾された成熟切断部位は、インフルエンザの天然宿主又は細胞培養におけるHA成熟の効率を高める(Kong,W−pら、PNAS(2006)103:15987〜15991)。成熟機能性HAタンパク質は、宿主細胞に結合して宿主細胞膜と融合する能力を有する。

0080

他の実施形態は、哺乳動物細胞において、昆虫細胞において、及び植物細胞において確立された細胞培養法を使用して遺伝的に修飾されたHA遺伝子から組換えインフルエンザウイルス様粒子(VLP)を作製する方法を含む(Chen,B.Jら、J.Virol(2007)81:7111〜7123;Smith,G.Eら、Vaccine(2013)31:4305〜4313;D’Aoust,M.Aら、Plant Biotech(2010)8:607〜619)。

0081

他の実施形態は、確立された方法を使用して、遺伝的に修飾されたHA遺伝子からDNAワクチンを作製する方法を含む(Jiang,Yら、Antiviral Res(2007)75:234〜241;Alexander,Jら、Vaccine(2010)28:664〜672;Rao,S.Sら、PLoS ONE(2010)5:e9812)。

0082

本明細書において開示される発現結果は、H1のHAのMCSは、生じるHAの発現に影響をもたらすことなく修飾できることを示す。H5のHAMCS又は多塩基性MCSを有するコンストラクトは、野生型のH1のHAと同じレベルで発現することを実証している。さらに、HAのMCSは、塩基性残基を全く含まないTEVプロテアーゼ切断部位によって置換される。TEVプロテアーゼ切断部位の位置を変化させることによって、野生型H1のHAと同じレベルで発現する、MCSとしてTEV切断部位を有するコンストラクトが作製されている。

0083

発現結果は、HA1の球状頭部ドメインにおける抗原部位の多くを、同じHA又は異なるHAのステムドメイン由来の異種ペプチドによって置換できることをさらに示す。コンストラクトのいくつかが野生型HAと同じレベルで発現する一方で、他のコンストラクトははるかに少なく発現する。異種ペプチドの性質及び球状頭部ドメインにおける異種ペプチドの位置が、各々の生じるHAコンストラクトの発現レベルに顕著な影響をもたらす。より多くのコンストラクトを作製して、最も最適な発現コンストラクトを同定するために同じ様式でそれらの発現について試験することができる。

0084

さらに、組換えHAは、HA球状頭部ドメインのある一定の免疫優性抗原部位のインフルエンザM2タンパク質由来のM2eエピトープによる置換によって作製される。おそらく、他のインフルエンザタンパク質の任意のエピトープが、HA球状頭部ドメインの免疫優性抗原部位を置換するための置換ペプチドとして役立ち得る。さらに、異種置換ペプチドが、インフルエンザウイルスに関連しない別のタンパク質由来であり得る。置換ペプチドの天然の構造的特徴を維持し、かつ宿主免疫系に置換ペプチドを提示することが可能であるHA球状頭部ドメインの特定の抗原部位が、置換ペプチドのために選択できる。

0085

バキュロウイルス発現系
約30年前のその導入(米国特許第4,745,051号;Summers,M.D及びSmith,G.E.、(1987)A Manual of Methodsfor Baculovirus Vectors and Insect Cell Culture Procedures. Texas Agricultural Experiment Station Bulletin No.1555)から、バキュロウイルス発現ベクター系(BEVS)は、細胞内タンパク質膜タンパク質、及び分泌タンパク質を含む、多くの異なる型のヒト及びウイルスタンパク質の発現に使用されている。BEVSはウイルス様粒子(VLP)を産生するのに使用されている。BEVSは、真核生物発現系であり、哺乳動物細胞に類似したタンパク質の翻訳後修飾を提供する昆虫細胞を宿主として使用する(The BaculovirusesのJarvis,D.L.、「Baculovirus Expression Vectors」、Miller,L.K編(1997)389〜420ページPlenum Press、New York)。Autographa californica核多角体病ウイルス(AcNPV)に基づくBEVSはよく確立されている。組換えバキュロウイルスを産生するための多くの市販のキット入手可能である。BEVSは、米国において流通する組換えワクチンを産生するために成功裏に使用されている。2つのFDA承認されたワクチン、子宮頸がんに対する非感染性ウイルス様粒子(VLP)の形態の組換えヒトパピローマウイルス二価(タイプ16及び18)ワクチンであるCervarix(商標)(特許出願WO2010/012780 A1)、並びにインフルエンザに対する、膜結合ヘマグルチニン前駆体(HA0)から作製される三価インフルエンザワクチンであるFlublok(登録商標)(米国特許第5,762,939(A)号及び米国特許第5,858,368(A)号)がBEVSを使用して産生されている。

0086

BEVSを使用して標的タンパク質を発現するために、標的タンパク質をコードする目的の遺伝子を、バキュロウイルスポリヘドリン遺伝子に隣接するバキュロウイルス配列を含有する大腸菌プラスミドであるトランスファーベクターへと最初にサブクローニングする。ポリヘドリンは、細胞培養におけるバキュロウイルス増殖に必要ではない、野生型バキュロウイルスにおいて豊富なウイルスタンパク質である。トランスファーベクターは大腸菌において増殖し、標準的な分子生物学的技法を使用して単離する(Sambrook,Jら、(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual、 Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor)。目的の遺伝子を有するトランスファーベクターを、大腸菌又は昆虫細胞のいずれかにおいてバキュロウイルスゲノムDNAと組み換えて、組換えバキュロウイルスゲノムを産生する。組換えバキュロウイルスゲノムは、組換えバキュロウイルスの産生及び標的タンパク質の発現を導く。元の方法は、トランスファーベクターのポリヘドリン遺伝子に隣接する同じ配列と昆虫細胞におけるウイルスゲノムDNAとの間の相同組換えに依拠する。単離したトランスファーベクターDNAは、バキュロウイルスゲノムDNAと共に昆虫細胞に共トランスフェクションされる。組換えバキュロウイルスは、ポリヘドリンの欠損のために選択される。ClontechからのBacPAK(商標)Baculovirus Expression System及びMilliporeからのBacMagic(商標)Systemのような現在の市販のキットは、組換えなしに生存可能なウイルスを産生しない直鎖状バキュロウイルスゲノムDNAを使用する。これらのキットは高効率かつ非組換えウイルスの少ない混入での組換えバキュロウイルスの産生を可能にする。ウイルスゲノムに対する組換えもまた、Geteway組換え反応を使用してインビトロで作製できる(BaculoDirect(商標)Baculovirus Expression System、Life Technologies)。組換えウイルスを作製する別の方法は、大腸菌における部位特異的転移を介する(Bac−to−Bac System、Life Technologies)。pFastBacに基づくトランスファーベクターは、大腸菌においてバクミド(バキュロウイルスのゲノムを含有する大きなプラスミド)を作製するトランスポゾンを含有する(米国特許第5,348,886号)。目的の遺伝子のバクミドへの組換えは、昆虫細胞へのバクミドのトランスフェクションの前に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって容易に確認できる。

0087

組換えバキュロウイルスは昆虫細胞培養において増殖する。少量のウイルスを昆虫細胞に感染させるために使用する。数日後、増幅したウイルスを含有する馴化培地ウイルスストックとして採集する。この増幅プロセスは、しばしば、大量のウイルスストックを生成するために数回繰り返される。ウイルスストックは、日常的に、数ヶ月、さらには数年間、冷蔵庫暗所保管される。5〜10%のウシ胎仔血清(FBS)のウイルスストックへの補充は、ウイルスストックを保存するために使用され、保存期間を延ばすと考えられている。ウイルスストックはしばしば、長期間の保管のために−70℃で凍結される。ウイルスはまた、増幅され、バキュロウイルス感染昆虫細胞(BIIC)として保管されている(Wasilko,D.Jら、Prot Exp Purif(2009)65:122〜132)。感染昆虫細胞は、それらが溶解する前にBIICストックとして採集され、標準的な細胞凍結手順に従って凍結される。BIICストックは、液体窒素中か、又は、−60℃〜−85℃の超低温長期間保管され、タンパク質発現のために昆虫細胞に感染させるウイルスストックとして使用される。凍結BIICストックは、液体形態のウイルスストックよりもより長い保管期間を提供する。

0088

BEVSに一般的に使用される昆虫細胞株は、ツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda)由来のSF9及びSF21細胞、並びにイラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)由来のHi5又はT.ni細胞である。カイコ(Bombyx mori)、ハチノスツヅリガ(Galleria mellonella)、及びマイマイガ(Lymantria dispar)の種由来の他の昆虫細胞もまた使用されている。SF9、SF21、及びHi5(又はT.ni)細胞は、無血清培地中の懸濁培養適応している。これらの細胞株及び培地は、多くの商業的供給源より入手可能である。これらの細胞株の細胞培養は、22〜28℃の温度範囲ガスの補充のない周囲大気中の振とうインキュベーター内で1又は2リットルまでの小容量で振とうフラスコ中で日常的に維持される。細胞培養は、撹拌タンクバイオリアクター又は一回使用バイオリアクターでスケールアップされる。バイオリアクター中の大規模昆虫細胞培養のための条件は、よく確立されている(WAVEBioreactor Systems−Cell culture procedures.GE Healthcare)。大規模昆虫細胞培養において細胞密度を増加させるために酸素の補充もまた日常的に使用される。

0089

標的タンパク質の発現を最適化するために特定の標的タンパク質の発現のための一連の条件が、ウイルス対細胞比及び感染後採集時間を変動させて異なる細胞株を使用して試験される。SF9、SF21、及びHi5(又はT.ni)細胞は、BEVSタンパク質発現のために使用される最も一般的な細胞株である。標的タンパク質は、細胞株の1つにおいて他においてよりもよりよく発現する可能性がある。いくつかの報告は、Hi5(又はT.ni)細胞が、ある分泌タンパク質のより多い発現をもたらすことを示す。感染多重度(MOI)として一般的に知られるウイルス対細胞比は、標的タンパク質発現のための最良の感染条件を決定するために試験される。培養サンプルは、感染後の様々な時点において採取される。細胞と馴化培地とは、遠心分離又はろ過によって分離される。タンパク質発現レベルは、標準的な方法によって決定される。培養は、細胞密度、細胞生存率、及び細胞サイズについてモニターされ、これらは、細胞増殖及び培養状態についての情報を提供する。グルコースレベル溶存酸素、及び培養物のpHは、培地中の栄養素消費に関してしばしばモニターされる。最良の標的タンパク質発現を導く条件は、タンパク質の大規模産生のために選択される。

0090

ウイルスストックの力価及びMOIの決定はウイルス増幅及びBEVSを使用するタンパク質発現のための感染条件を決定するために広く使用されるが、上述のTIPS法は、ウイルス増幅及びタンパク質発現のための最良の感染条件を決定するより迅速な方法を提供する。昆虫細胞は組換えバキュロウイルスによる感染後にサイズを増大する。細胞分裂もまた感染後停止する。組換えバキュロウイルスは感染後約48時間で細胞溶解を引き起こす。細胞分裂は、培養の細胞密度として細胞を計数することによりモニターされる。細胞溶解は、培養中の生細胞及び死細胞を計数することによる細胞生存率としてモニターされる。生存可能な細胞のサイズは細胞直径として測定される。細胞密度、細胞生存率、及び生存可能な細胞のサイズは、多数のモデルの細胞計数装置によって日常的に測定される。細胞密度及び細胞生存率はまた、血球計算板を使用して手動で測定できる。まとめると、細胞密度、細胞生存率、及び生存可能な細胞のサイズは、感染動態に関する情報を提供する。TIPS法は、特定のウイルスストックを使用する特定の標的タンパク質の発現のための最適な条件を決定するために感染動態を使用する。それは、MOI計算のためのウイルス力価の時間のかかる測定を排除する。一定したウイルス増幅及びタンパク質発現は、TIPS法を使用して日常的に達成される。

0091

昆虫細胞に加えて、組換えバキュロウイルスを感染した生昆虫が、多くの分泌タンパク質及び膜タンパク質を発現するのに使用されている。成熟HAは、タバコスズメガ(Heliothis virescens)の幼虫において発現されている(Kuroda,Kら、J.Virol(1989)63:1677〜1685)。

0092

カイコ核多角体病ウイルス(BmNPV)のような他の型のバキュロウイルスに基づく発現系もまた開発されている。BmNPVは、より狭い宿主範囲を有し、野外害虫として増殖することはない点でAcNPVより良好な生物学的安全性プロファイルを有し得る。BmNPVに基づくバキュロウイルス発現系は、細胞培養及びカイコの幼虫において機能性タンパク質を発現するのに使用されている(Maeda, Sら、Nature(1985)315:592〜594)。

0093

BEVSは、タンパク質複合体及びVLPを産生するために日常的に使用されている。複数のタンパク質の発現のために2つ以上の遺伝子が単一のベクターにクローニングされる。各々が単一のタンパク質の発現を導く2つ以上のウイルスストックが、タンパク質複合体又はVLPを産生するために昆虫細胞を共感染するのに使用される。インフルエンザVLPは、バキュロウイルス発現系を使用して作製されている(Bright,R.Aら、PLoS ONE(2008)3:e1501)。

0094

バキュロウイルス発現のためのHAトランスファーベクター
BEVSを使用して発現される遺伝子は一般的に、バキュロウイルス誘導昆虫細胞死の前にタンパク質発現を導くバキュロウイルスの強力な後期のプロモーターであるポリヘドリンプロモーターの制御下にある。他の初期又は後期プロモーターもまたタンパク質発現のために使用される。細胞培地に組換え標的タンパク質を昆虫細胞によって分泌させるために、シグナルペプチドをコードするDNAセグメントが目的の遺伝子の5’末端にインフレームで操作される。2つの昆虫細胞で一般的に使用されるシグナルペプチドは、ミツバチメリチンシグナル配列、又はAcNPVエンベロープ表面糖タンパク質GP67シグナル配列である。Signal Sequence Database(ワールドワイドウェブでsignalpeptide.de/index.phpに位置する)は、多くの他の考慮し得るシグナルペプチドを列挙する。分泌後、シグナルペプチドはシグナルペプチドをプロセシングする細胞プロテアーゼによって除去される。インフルエンザウイルスは昆虫ウイルスではないが、HAシグナルペプチドは、BEVSにおいて、組換えタンパク質の分泌又は膜挿入のための分泌シグナルペプチドとして使用されている。MKTIIALSYIFCLVFAのHAシグナルペプチドは、昆虫細胞における組換え膜貫通Gプロテイン共役受容体(GPCR)の発現に一般的に使用される(Rosenbaum,D.Mら、Science(2007)318:1266〜1273;Zou,Yら、PLoS One(2012)7:e46039)。HAは、その天然のシグナルペプチドを使用して昆虫細胞で発現されている。その特定の場合において、全発現は昆虫細胞シグナルペプチドを使用するものよりも低いが、発現したHAは、HA1及びHA2を含有する成熟型であった(米国特許第5,858,368(A)号)。HAシグナルペプチドは、HA間で保存されていない。例えば、上述のHAシグナルペプチドは、配列番号7のH1のHAシグナルペプチドとは異なる。HAシグナルペプチドの実験に基づく選択は、昆虫細胞におけるHA発現を改善する可能性がある。

0095

Bac−to−Bacシステム又はGatewayシステム(Life Technologies)を使用して相同組換えを介して組換えバキュロウイルスを作製するための市販のベクターは入手可能である。プロモーター及びシグナル配列のようなこれらのトランスファーベクターの特徴は、標準的な分子生物学的技法によってカスタマイズすることができる。現在では、トランスファーベクター全体を遺伝子合成によって完全に合成することができる。遺伝子合成は、特定の配列及び特徴を有するトランスファーベクターの設計を可能にする。

0096

BEVSを使用してインフルエンザHAを発現する方法は、実験室規模においてよく確立されている(Stevens,Jら、Science(2004)303:1866〜1870)。例えば、トランスファーベクターは、ポリヘドリンプロモーターの制御下に1918年インフルエンザウイルス由来のHAを含有する。1918年インフルエンザウイルスHA発現コンストラクトは、分泌のために、N末端のHAシグナルペプチドの代わりにGP67シグナルペプチドを有する。膜貫通ドメインの代わりに、トロンビン切断部位をHA細胞外ドメインのC末端に導入し、その後にHA三量体の安定化のためのバクテリオファージT4フィブリチン由来の「foldon」配列、及び精製を促進するためのC末端Hisタグを導入する。foldon配列及びHisタグは、トロンビン切断によって除去できる。HA発現トランスファーベクターの同様の設計が、インフルエンザの多くの系統に由来する異なるHAを発現するのに使用されている(Stevens,Jら、Science(2006)312:404〜410;Xu,Rら、Science(2010)328:357〜360;Whittle,J.R.Rら、PNAS(2011)108:14216〜14221)。

0097

foldonに加えて、他の三量体化ドメインを組換えHAの三量体を安定化させるのに使用できる。例えば、熱安定性HIV−1糖タンパク質41(gp41)三量体化ドメイン、又はGCN4ロイシンジッパー配列の31残基の最初の16残基が、短縮HAコンストラクトの三量体化を助けるのに使用される(Impagliazzo,Aら、Science(2015)349:1301〜1306;Yassing,H.Mら、Nat Med(2015)21:1065〜1070)。

0098

米国特許第5,762,939(A)号、米国特許第5,858,368(A)号、及び米国特許第6,245,532(B1)号に開示されるように、膜貫通ドメイン及び細胞内部ドメインを有するインフルエンザAとインフルエンザBとの両方のウイルス由来の組換えHA前駆体(HA0)が、商業的規模においてBEVSを使用して作製されている。これらの組換えHAタンパク質は、インフルエンザワクチンとしてFDAの承認を取得しているFlublok(登録商標)における成分である。Flublok(登録商標)中のHA0は、HAシグナルペプチドを置換するバキュロウイルスキチナーゼシグナルペプチド(61Kシグナルペプチドと呼ばれる)を使用して作製されている。組換えHAは、昆虫細胞の膜周縁に会合する。それは、界面活性剤を使用して膜より抽出され、さらに精製される。

0099

哺乳動物発現
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞及びヒト胎児腎臓293(HEK293)細胞が、組換えタンパク質の一過性トランスフェクション遺伝子発現のために一般的に使用される哺乳動物細胞宿主である。CHO細胞とHEK293細胞の両方は、懸濁細胞株及び接着細胞株を有する。これらの細胞は、FBSを含むか又は含まない培地において日常的に培養される。FBSを含まずに細胞を培養するとき、既知組成培地がしばしば使用される。全ての懸濁及び接着細胞株をHA又は他の分泌タンパク質を発現するのに使用できる。

0100

一過性トランスフェクションは、タンパク質発現のためにDNAを細胞に導入するためのよく確立された方法である。多くの市販のトランスフェクション試薬が入手可能である。バキュロウイルス発現のための発現最適化プロセスと同様に、標準的な方法を使用するタンパク質発現の解析のために、トランスフェクション後に培地サンプルを定期的に採取する。HAタンパク質は、HAコンストラクト中のHisタグ、又は多くが市販される抗HA抗体を使用するウェスタンブロットを介して、親和性捕捉によって容易に検出できる。タンパク質発現は通常、トランスフェクション後約48時間で開始し、トランスフェクション後数日にわたって増加し得る。標的タンパク質の発現を増加するために、トランスフェクション後にサプリメントをしばしば添加する。アフリカミドリザル腎組織由来線維芽細胞様細胞株であるCOS−1のような他の哺乳動物細胞株もまたHA発現に使用されている。インフルエンザVLPは、10個のインフルエンザウイルスがコードするタンパク質の全てのcDNAを含有する複数のプラスミドの共トランスフェクションによって産生されている(Mena,Iら、J.Virol(1996)70:5016〜5024;Chen,B.Jら、J.Virol(2007)81:7111〜7123)。

0101

哺乳動物細胞に遺伝子を送達する別の方法は、哺乳動物細胞へのバキュロウイルス遺伝子トランスファーのためのBacMamとして知られる組換えバキュロウイルスを使用する(Boyce,F.M及びBucher,N.L.、PNAS(1996)93:2348〜2352;Dukkipatia.Aら、Protein Expr Purif(2008)62:160〜170)。バキュロウイルスは、哺乳動物細胞におけるトランスジーン発現のためのバキュロウイルス発現ベクターに哺乳動物発現カセットを組み込むことによって修飾されている。組換えBacMamバキュロウイルスは、バキュロウイルス産生のための標準的な方法によって生成される。増幅した組換えBacMamバキュロウイルスウイルスストックは、タンパク質発現のためのCHO又はHEK293細胞に哺乳動物発現カセットの送達のために、CHO又はHEK293培養へと添加される。BacMamプラットフォームは、大量の哺乳動物細胞の形質導入を容易にする。

0102

哺乳動物細胞にトランスフェクトされた遺伝子発現ベクターは、標的タンパク質の発現のための安定細胞株を確立するために細胞染色体に組み込むことができる。安定なCHO細胞株は、モノクローナル抗体のような治療用生物製剤の産生のための最も一般的な宿主である。この技術は、治療用タンパク質及びワクチンの大規模産生によく適している。安定細胞株の確立のために、発現ベクターをトランスフェクションした細胞は、発現ベクター上の選択マーカーに基づいた選択に供される。標的遺伝子の複数のコピーがしばしば、安定細胞株のゲノムに組み込まれる。

0103

哺乳動物発現のためのHAベクター
哺乳動物発現のためのHA発現コンストラクトは、バキュロウイルス発現のためのものと同じ設計及びアミノ酸配列を有する。コドンはCHO細胞発現又はHEK293細胞発現のために最適化される。バキュロウイルスコドンはまた、哺乳動物細胞においてよく機能し、逆もまた真である。HAシグナルペプチドは、哺乳動物発現系において組換えタンパク質の分泌又は膜挿入のためのシグナルペプチドとして使用されている。他の一般的に使用される哺乳動物シグナルペプチドは、ヒトIL2シグナルペプチド、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)シグナルペプチド、及びSignal Sequence Database(ワールドワイドウェブでsignalpeptide.de/index.phpに位置する)に見られる他の多くのシグナルペプチドを含む。多くの哺乳動物発現ベクターが市販される。各々のベクターは通常、高レベル発現のためのエンハンサー−プロモーター、mRNA定性のためのポリアデニル化シグナル及び転写終結配列エピソーム複製のためのSV40起点、選択及び大腸菌における維持のための抗生剤耐性遺伝子及びpUC起点を有する。哺乳動物発現において一般的に使用されるプロモーターは、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、hEF1−HTLVプロモーター、伸長因子−1α(EF−1α)コアプロモーター、並びにヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)1型長い末端反復のRセグメント及びU5配列の一部(R−U5’)、又はMPromDb(ワールドワイドウェブでmpromdb.wistar.upenn.edu/に位置するMammalian Promoter Database)、又はEukaryotic Promoter Database(ワールドワイドウェブでepd.vital−it.ch/に位置するEPD)に見られる他のプロモーターを含む複合プロモーターを含む。トランスファーベクターはしばしば、安定な細胞株を生成するために別の選択マーカーを有する。

0104

次の実施例は、これに限定されるものではないが、本発明を例示するために提供される。

0105

組換えバキュロウイルス産生のためのH1のHAのトランスファーベクターの構築
この実施例において、本発明の修飾HAタンパク質を調製するために修飾することができる親プラスミドが記載される。このプラスミドの基本的な概要図4に示し、そこでは、バキュロウイルスにおける発現のための標準的なプラスミドへの挿入は、そのような挿入のための制限部位によって囲まれ、HAタンパク質のMCSの置換及びHAの球状頭部ドメインの免疫優性領域の置換を可能にする制限部位が存在する。コードされたタンパク質は、精製後に挿入されたプロテアーゼ切断部位のおかげで除去することのできる、精製のための10個のヒスチジン親和性タグ(10×Hisタグ)に融合する。このベクターはH1WTと呼ばれる。

0106

2009年インフルエンザワクチン産生としてWHOによって推奨される(ワールドワイドウェブでwho.int/csr/resources/publications/swineflu/vaccine_recommendations/en/において述べられるように)ブタ起源インフルエンザAウイルスH1N1系統であるA/カリフォルニア/07/2009のHA配列(配列番号1)を、異種ペプチドを組み込むための親配列として使用した。このHA配列はUniProt:C3W5X2の受託番号を有する。全てのコンストラクトは、図4に概略的に例示されるものと同じ設計を有する。N末端HAシグナルペプチド(配列番号7)は、GP67シグナルペプチドMVSAIVLYVLLAAAAHAFA(配列番号2)によって置換される。Stevens,Jら、Science(2006)312:404〜410によって最初に記載されたHAコンストラクトに基づいて、ILAIYSTVASSLVLVVSLGAISFWMCSの配列を有するC末端膜貫通(TM)ドメイン、及びHAのNGSLQRICIの配列を有する細胞内ドメインが、TEV切断部位(配列番号4)、後に続くfoldon(配列番号5)、及び10×Hisタグ(配列番号6)によって置換され、つまり、GAENLYFQGGSGYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFLGHHHHHHHHHH(配列番号3)となった。foldonは、組換えHAを安定化し、一方で10×Hisタグは、細胞培地からのHAの精製を促進する。foldon及び10×Hisタグは、HA配列とfoldon配列との間に位置するTEV切断部位を認識するTEVプロテアーゼによって除去できる。遺伝子は、バキュロウイルス発現のためにコドン最適化され、標準的な方法によって合成された(GENEWIZ、South Plainfield、NJ 07080、USA)。

0107

図4に概略的に示されるように、間隔を空けた特有の制限部位、ClaI部位、NsiI部位、及びBamHI部位が、配列変更及びスワッピングを促進するためにHA配列に導入された。生じるコンストラクト、「H1WT」と表されるGP67−H1WT−TEV−foldon−10His(配列番号9)は、NcoI部位とHindIII部位の間でpFastBacプラスミドにサブクローニングされた。ClaIとNsiIとの部位の間の配列は、球状頭部ドメインの免疫優性抗原部位の大部分をコードする。NsiIとBamHIとの部位の間の配列はMCSをコードする。H1WTコンストラクトの発現は、バキュロウイルスポリヘドリンプロモーターの制御下にある。生じるプラスミドは、A/カリフォルニア/07/2009の組換え野生型HAの発現のためのトランスファーベクターである。H1WTコンストラクトは、そこから遺伝的に修飾されたHAコンストラクトが作製される親コンストラクトである。

0108

異種ペプチドを有する遺伝的に修飾されたHAを作製するために、H1WTの野生型断片を、上述の制限部位を使用してHAに対する特定の変更をコードする合成DNA断片と置換した。MCSを修飾するために、H1WTのNsiI−BamHI断片を、改変された成熟切断部位をコードするDNA断片によって置換した。HA1球状頭部ドメインの抗原部位を変更するために、H1WTのClaI−NsiI断片を、異種ペプチドを有する改変抗原部位をコードするDNA断片によって置換した。成熟切断部位と抗原部位の異なる組合せを有するコンストラクトが、異なるプラスミドの制限断片の単純な交換によって作製された。生じるコンストラクトはDNAシークエンシングによって確認した。

0109

修飾された成熟切断部位を有するH1のHAコンストラクトの設計及び構築
この実施例において、MCSを囲むNsiIとBamHIとの制限部位の間のH1WTのセグメントが、このMCSを修飾する代替配列によって置換される。いくつかの例において、TEV切断部位が修飾されたMCSに含まれる。

0110

修飾された成熟切断部位は、実施例1に記載されるH1のHAのトランスファーベクターへと導入された。修飾された成熟切断部位を有するコンストラクトは表1に列挙する。

0111

0112

これらの修飾の位置は図5に例示する。

0113

コンストラクトH1H5cs(配列番号11)は、野生型のH1のHAのMCS(配列番号9)をH5のMCS(配列番号12)によって置換させる。コンストラクトH1R5cs(配列番号14)は、野生型のH1のMCSを5個のアルギニンによって置換させる。コンストラクトH1IR5cs(配列番号16)は、全ての天然のHA1残基を維持しつつHA1とHA2との配列の間に挿入された4個のアルギニンを有する。変更を有するNsiI−BamHI断片が合成され、野生型断片を置換するためにH1WTのNsiIとBamHIとの部位の間にサブクローニングされた。

0114

H1のHAのMCSが塩基性残基を全く含有しないTEV切断部位へと修飾できるかどうかを試験するために、H1のHAのMCSにおける残基の数を変更していくつかのコンストラクトが作製された。コンストラクトH1TEV1(配列番号18)は、H1のHAのMCSにおける7残基PSIQSRGを、ENLYFQGの7残基のTEV切断部位(配列番号4)によって置換させる。コンストラクトH1TEV2(配列番号20)は、H1のHAのMCSにおける8残基IPSIQSRGを、TEV切断部位を含有させるSPENLYFQGによって置換させる。コンストラクトH1TEV3(配列番号22)は、H1のHAのMCSにおける最後の3残基(QSR)を、TEV切断部位によって置換させる。

0115

球状頭部ドメインに異種エピトープを有するH1のHAコンストラクトの設計及び構築
この実施例において、基本プラスミド及び修飾MCSを有するプラスミドは、ClaIとNsiIとの部位の間で様々な免疫優性部位が異種エピトープと置換された代替ヌクレオチド配列によって修飾された。

0116

異種エピトープは実施例1及び実施例2に記載されるコンストラクトに導入された。異種エピトープは、HA球状頭部ドメインの免疫優性抗原部位近辺に挿入されるか、又はHA球状頭部ドメインの免疫優性抗原部位を置換した。修飾抗原部位を有するコンストラクトは表2に列挙する。

0117

0118

これらの修飾の位置は図5に例示する。

0119

13アミノ酸残基の複合CR8020エピトープペプチドは、抗原部位Ca2近辺の12残基EIAIRPKVRDQEの表面ループを置換した。複合CR8020エピトープペプチド置換を有するClaI−NsiI断片が合成され、H1H5csのClaIとNsiIとの部位の間にサブクローニングされ、H1H5cs−CR8020Ca(配列番号24)と表されるHAコンストラクトを生成した。H1TEV2−CR8020Ca(配列番号29)を作製するために、H1H5cs−CR8020CaのClaI−NsiI断片を単離して、H1TEV2のClaIとNsiIとの部位の間にサブクローニングした。

0120

コンストラクトH1TEV2−CR8020Sa3(配列番号31)は、球状頭部ドメインの頂部上のH3のHAの部位Bループに対応する、Sa部位の1つの残基KKGNSを置換する複合CR8020エピトープペプチドを有する。CR8020修飾を有するClaI−NsiI断片が合成され、H1TEV2のClaIとNsiIとの部位の間にサブクローニングされ、H1TEV2−CR8020Sa3と表されるHAコンストラクトを生成した。

0121

コンストラクトH1TEV2−CR8020Sa4(配列番号33)は、Sa部位の1つの近辺の残基KTSSのヘリカル構造を置換する複合CR8020エピトープペプチドを有する。この位置は、HA三量体の球状頭部ドメインの側面上にあり、受容体結合部位から離れている。そのような修飾は、受容体結合の変化を起こしにくい。CR8020修飾を有するClaI−NsiI断片が合成され、H1TEV2のClaIとNsiIとの部位の間にサブクローニングされ、H1TEV2−CR8020Sa4と表されるHAコンストラクトを生成した。

0122

コンストラクトCR8020Sa4及びCR8020CaのHA単量体のモデルを図6に示す。各々のHA単量体は、球状頭部ドメインの複合CR8020エピトープペプチド及びステムドメインの天然CR8020エピトープを有する。

0123

GIFGAIAGFIEGのI1C9エピトープペプチド(配列番号36)を有するいくつかのHAコンストラクトが作製された。1つのコンストラクトH1TEV2−I1C9Ca1(配列番号35)は、Ca2部位近辺の217〜224の残基のRPKVRDQEを置換するI1C9ペプチドを有する。別のコンストラクトH1H5cs−I1C9Ca(配列番号46)は、Ca2の213〜224の残基のより長いペプチドEIAIRPKVRDQEを置換するI1C9ペプチドを有する。他のコンストラクトは、H3のHAの部位Aに対応するCa2部位HAGAKS、Sa部位KKGNS、及びSa部位KTSSを個別に置換するI1C9ペプチドを有する。変更を有するClaI−NsiI断片の各々が合成され、H1TEV2のClaIとNsiIとの部位の間にサブクローニングされ、それぞれH1TEV2−I1C9Ca1(配列番号35)、H1TEV2−I1C9Ca2(配列番号38)、H1TEV2−1C9Sa3(配列番号40)、及びH1TEV2−I1C9Sa4(配列番号42)と表されるHAコンストラクトを生成した。I1C9Caの変更を有するClaI−NsiI断片が合成され、H1H5csのClaIとNsiIとの部位の間にサブクローニングされ、HAコンストラクトH1H5cs−I1C9Caを生成した。I1C9ペプチドはまた、同じ方法によって、H1H5cs−I1C9Sb(配列番号44)としてH1H5csコンストラクトのSb部位の残基TSADQQSLYQNAを置換した。Sb部位はH3のHAの部位Bヘリックスに対応する。

0124

ClaI−NsiI断片は、Sa部位に配置されるFI6エピトープペプチドRKKRGLFGAIAGFIE(配列番号49)、及びSb部位に配置されるコイルドコイルFI6エピトープペプチドKESTQKAIDGVTNKVNS(配列番号50)によって合成された遺伝子であった。このFI6置換を有するClaI−NsiI断片は、H1H5cs及びH1WTのClaIとNsiIとの部位の間にサブクローニングされ、それぞれコンストラクトH1H5cs−FI6Sab(配列番号48)、及びH1WT−FI6Sab(配列番号52)を生じた。別のClaI−NsiI断片は、Sa部位に配置されるFI6エピトープペプチドRKKRGLFGAIAGFIE(配列番号49)によって合成された遺伝子であった。この断片はH1TEV1のClaI−NsiI断片を置換して、コンストラクトH1TEV1−FI6Sa(配列番号54)を生成した。

0125

球状頭部ドメインの抗原部位にM2eペプチドを有するH1のHAコンストラクトの設計及び構築
この実施例において、同様に、ClaI−NsiI断片のヌクレオチド配列が、Ca2部位又はSb部位の部分がMe2ペプチドをコードするヌクレオチド配列によって置換されたヌクレオチド配列によって置換された。M2eペプチドを有するコンストラクトは表2に列挙する。これらの修飾の位置は図5に例示する。

0126

遺伝子合成は、Ca2部位のEIAIRPKVRDQEを置換するか、又はSb部位の残基TSADQQSLYQNAのヘリックスを置換する、M2eペプチド(配列番号57)を有するClaI−NsiI断片を生成した。M2eペプチドを有するHAコンストラクトは、H1H5csにおいて最初に作製され、そこでは、H1H5csのClaI−NsiI断片が個々のM2eペプチドを含有するClaI−NsiI断片と置換され、それぞれコンストラクトH1H5cs−M2eCa(配列番号56)、及びH1H5cs−M2eSb(配列番号59)を生じた。H1H5cs−M2eCaのClaI−NsiI断片をH1TEV2コンストラクトへと移送するために、H1H5cs−M2eCaのClaI−NsiI断片が単離され、H1TEV2のClaIとNsiIとの部位の間にサブクローニングされ、H1TEV2−M2eCa(配列番号61)と名付けられるコンストラクトを生じた。

0127

Bac−to−Bacバキュロウイルス発現系を使用する組換えバキュロウイルスの生成
この実施例は、実施例1〜4で調製されるコンストラクトに含有される発現系を含む昆虫細胞を調製する技法を記載する。

0128

組換えバキュロウイルスは、製造者取扱説明書に従って、コンストラクトのpFastBacに基づくトランスファーベクターから生成した(Bac−to−Bac Baculovirus Expression Systems、Life Technology、Carlsbad、CA、USA)。簡潔に、トランスファーベクターは大腸菌DH10Bac化学的コンピテント細胞へと形質転換された。組換えバクミドを有する白いコロニーがBlue−galを有するプレート上で選択された。バクミドDNAを、製造者の取扱説明書に従って標準的なアルカリ溶解ミニプレップ法によって単離した。組換えバクミドは、M13フォワード(−40)プライマーGTTTTCCCAGTCACGAC)及びM13リバースプライマー(CAGGAAACAGCTATGAC)を使用してPCRによって同定された。組換えバクミドは、約4kbのPCR産物をもたらした。

0129

12ウェルプレートに付着したSF9昆虫細胞に、Cellfectin(登録商標)試薬、他の市販のトランスフェクション試薬、又はポリエチレンイミン(PEI)を使用して組換えバクミドをトランスフェクトした。トランスフェクションの4〜7日後、又はSF9細胞がウイルス感染によって増大するとき、細胞培地をP0ウイルスストックとして採集した。各々のP0ウイルスストックは、ウイルスを増幅するために振とうフラスコ中で2×106細胞/mlの密度の50mlのSF9細胞を感染させるのに使用した。培養は、Cedex Cell Counter(Roche Diagnostics Corporatio、Indianapolis、IN、USA)を使用してモニターした。採集時間は、平均生存可能細胞サイズ及び細胞生存率によって決定した。感染後4〜5日において、平均生存可能細胞サイズが、未感染細胞よりも4〜7μm大きく、生存率が50〜70%の範囲であったとき、細胞を遠心分離によって除去し、細胞培養上清収集し、P1ウイルスストックとして暗所において4℃で保管した。しばしば、ウイルスストックは、滅菌を維持するために0.2μm滅菌フィルターによってろ過した。

0130

ウイルスストックのさらなる増幅のために、2×106細胞/mlの密度の500mlのSF9細胞を250μlのP1ウイルスストックで感染させた。培養は、Cedex Cell Counterを使用してモニターした。感染後4〜5日において、平均生存可能細胞サイズが、未感染細胞よりも4〜7μm大きく、生存率が50〜70%の範囲であったとき、細胞を遠心分離によって除去し、細胞培養上清を収集し、P2ウイルスストックとして暗所で4℃で保管した。しばしば、ウイルスストックは、滅菌を維持するために0.2μm滅菌フィルターによってろ過した。

0131

組換えHAタンパク質の発現。
この実施例は、実施例1〜4に記載される様々なコンストラクトの昆虫細胞での発現を実証する。特定のコンストラクトに応じて、様々なレベルの標的タンパク質発現が得られた。

0132

組換えHAの発現を検出するために、通常は実施例5で記載されるようなP1又はP2ウイルスストックである組換えバキュロウイルスストックで感染させたSF9細胞の細胞培地を収集して、組換えHAの10×Hisタグを介した親和性捕捉のためにNi−NTA樹脂(Qiagen、Germantown、MD USA)と共にインキュベートした。Ni−NTA樹脂のリン酸緩衝生理食塩水(1×PBS)による洗浄の後、Ni−NTA樹脂を、SDS−PAGE又は抗His抗体を使用するウェスタンブロットによる解析のために、還元剤の存在下又は非存在下でゲルローディング緩衝液によって煮沸した。Coomassie(登録商標)染色ゲル又は抗Hisウェスタンブロット上の約63kDaのタンパク質バンドは、分泌した組換えHA全長タンパク質の発現を示す。

0133

図7及び図8に示すように、親コンストラクトH1WTのH1のHAタンパク質の発現が予測通りに検出された。多塩基性残基、H1H5cs、H1R5cs、及びH1R5csの改変された成熟切断部位を有するHAタンパク質は、H1WTと同じレベルで発現した。H1のHAの成熟切断部位全体がTEV切断部位によって置換されたH1TEV1は、H1WTよりはるかに少なく発現した。成熟切断部位でより多くの天然残基を維持することによって、H1TEV2及びH1TEV3は、H1WTと比較して非常によく発現した(図7及び図8)。全ての置換が同じレベルで発現しなかった。コンストラクト中のTEV切断部位の位置を調整することによって、野生型HAのものの発現レベルを達成した。

0134

図7及び図8にさらに示すように、異なる免疫優性抗原部位における同じ免疫亜優性bNAbエピトープの配置が、異なる発現レベルを生じた。Sa部位(H1TEV2−CR8020Sa4)又はCa2部位(H1H5cs−CR8020Ca)のいずれかに複合CR8020エピトープペプチドがあるコンストラクトは、野生型HAと同じレベルで発現したが、一方でH1TEV2−CR8020Sa3コンストラクトは良好に発現しない。したがって、異種エピトープ配置の正確な位置が、生じるHAの発現に重要であり得る。免疫亜優性bNAbエピトープの性質は、同様に生じるHAタンパク質の発現レベルにも影響をもたらし得る。

0135

いくつかの抗原部位におけるI1C9エピトープの個々の配置はまた、生じるHAタンパク質の異なるレベルの発現を示した(図7及び図8)。コンストラクトH1H5cs−I1C9Caは、コンストラクトH1TEV2−I1C9Ca1よりも高い発現を示した。これら2つのコンストラクトにおけるI1C9エピトープペプチドによって置換される抗原部位におけるペプチド配列は少し異なる。MCSとしてTEV切断部位を有するこれらのコンストラクトと同様に、置換の位置が発現レベルに影響をもたらす。

0136

Ca2部位にM2eペプチドを有するコンストラクト、つまりH1H5cs−M2eCa及びH1TEV2−M2eCaは、成熟切断部位にもかかわらずH1WTと同様に良好な発現をもたらした(図7及び図8)。しかしながら、Sb部位にM2eペプチドを有するコンストラクトH1H5cs−M2eSbは良好に発現しなかった。Sb部位は、HAの適切なフォールディングに必要とされる可能性のあるヘリカル構造にある。

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