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技術 ポリイソプレン系ゴムの分解能を有する放線菌、これを用いたゴム組成物分解方法及び、ポリイソプレン系ゴムの分解能を有するタンパク質

出願人 住友理工株式会社国立大学法人長岡技術科学大学
発明者 米山史紀勝山綾乃脇坂治田口武彦福田雅夫笠井大輔
出願日 2018年4月25日 (2年1ヶ月経過) 出願番号 2018-083626
公開日 2019年10月31日 (7ヶ月経過) 公開番号 2019-187306
状態 未査定
技術分野 酵素・酵素の調製 微生物、その培養処理 プラスチック廃棄物の分離・回収・処理 突然変異または遺伝子工学
主要キーワード ゴム性状 ポリイソプレン系ゴム シート表層 ゴム片 膨潤比 モノマー化 軟質ゴム ヒスチジンタグ融合タンパク質
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重要な関連分野

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図面 (7)

課題

高いポリイソプレン系ゴム分解能を有する放線菌、これを用いたゴム組成物分解方法及び、高いポリイソプレン系ゴムの分解能を有するタンパク質を提供する。

解決手段

放線菌は、ノカルディアファルシニカ(Nocardia farcinica)に属し、ポリイソプレン系ゴム分解能を有する放線菌である。

概要

背景

従来、天然ゴム合成ゴムからなる廃棄物を処理する手段として、微生物の利用が種々検討されている。例えば、主にゴムポリマー又は加硫したゴム分解能を有する微生物を自然界から選抜し、液体培地中ゴム組成物と培養することにより、当該ゴム組成物の分解を行うことが検討されている。

ゴムの分解能を有する微生物としては、グラム陽性放線菌に属するものが多いが、グラム陰性細菌白色腐朽菌等も分解能を有する種類としての報告がある。ゴム製品を含む廃棄物の分解方法は、ゴム製品を破砕してなる破砕ゴムを液体培地に添加して微生物を培養する方法が一般的である。その他にゴム分解能を有する微生物の培養液上清にゴムを添加するなどの方法も報告されている。なお、ゴムの分解は、培養前後でのゴム性状の変化を目視により確認したり、添加したゴムの培養前後での重量変化を検出したりすることで確認されている。また、電子顕微鏡を用いて、培養後のゴムの表面を観察してその変化を確認することも行われている。例えば、特許文献1には、土壌におけるスクリーニングにより取得したノカルディアタケデンシス(Nocardia takedensis)に属する放線菌株ポリイソプレン系ゴムの分解能を有することが開示されている。そして、当該放線菌株を分解対象のゴムとともに所定の条件下で培養することにより、分解対象のゴムの分解を促進している。

概要

高いポリイソプレン系ゴムの分解能を有する放線菌、これを用いたゴム組成物分解方法及び、高いポリイソプレン系ゴムの分解能を有するタンパク質を提供する。放線菌は、ノカルディア・ファルシニカ(Nocardia farcinica)に属し、ポリイソプレン系ゴム分解能を有する放線菌である。

目的

本発明によれば、高いポリイソプレン系ゴムの分解能を有する放線菌、これを用いたゴム組成物分解方法及び、高いポリイソプレン系ゴムの分解能を有するタンパク質を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

ノカルディアファルシニカ(Nocardia farcinica)に属する、ポリイソプレン系ゴム分解能を有する放線菌

請求項2

上記ノカルディア・ファルシニカ(Nocardia farcinica)に属する放線菌が、NBRC 15532株又はその変異株である、請求項1に記載のポリイソプレン系ゴム分解能を有する放線菌。

請求項3

ポリイソプレン系ゴムを含有し、トルエン膨潤法により算出される膨潤比が2.5以上で、かつ、100%モジュラスの値が5MPa以下であるゴム組成物を分解可能であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリイソプレン系ゴム分解能を有する放線菌。

請求項4

上記ポリイソプレン系ゴムの分解能は、培地容量をL、日数をdayとしたとき、10〜50mg/L/dayであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリイソプレン系ゴム分解能を有する放線菌。

請求項5

請求項1〜4のいずれか一項に記載のノカルディア・ファルシニカ(Nocardia farcinica)に属する放線菌を用いて、ポリイソプレン系ゴムを含有するゴム組成物を分解することを特徴とする、ゴム組成物分解方法

請求項6

上記ゴム組成物におけるポリイソプレン系ゴムの含有率が50〜100%であることを特徴とする、請求項5に記載のゴム組成物分解方法。

請求項7

ノカルディア・ファルシニカ(Nocardia farcinica)に属する放線菌に由来するタンパク質であること、又は該タンパク質のアミノ酸配列と80%以上同一のアミノ酸配列を有するタンパク質であることを特徴とする、ポリイソプレン系ゴム分解能を有するタンパク質。

請求項8

上記ノカルディア・ファルシニカ(Nocardia farcinica)に属する放線菌がNBRC 15532株又はその変異株であることを特徴とする、請求項7に記載のポリイソプレン系ゴム分解能を有するタンパク質。

請求項9

ポリイソプレン系ゴムを含有し、トルエン膨潤法により算出される膨潤比が2.5以上で、かつ、100%モジュラスの値が5MPa以下であるゴム組成物を分解可能であることを特徴とする、請求項7又は8に記載のポリイソプレン系ゴム分解能を有するタンパク質。

請求項10

上記ポリイソプレン系ゴムの分解能は、培地容量をL、日数をdayとしたとき、10〜50mg/L/dayであることを特徴とする、請求項7〜9のいずれか一項に記載のポリイソプレン系ゴム分解能を有するタンパク質。

技術分野

0001

本発明は、ポリイソプレン系ゴム分解能を有する放線菌、これを用いたゴム分解方法及び、ポリイソプレン系ゴムの分解能を有するタンパク質に関する。

背景技術

0002

従来、天然ゴム合成ゴムからなる廃棄物を処理する手段として、微生物の利用が種々検討されている。例えば、主にゴムポリマー又は加硫したゴムの分解能を有する微生物を自然界から選抜し、液体培地中ゴム組成物と培養することにより、当該ゴム組成物の分解を行うことが検討されている。

0003

ゴムの分解能を有する微生物としては、グラム陽性の放線菌に属するものが多いが、グラム陰性細菌白色腐朽菌等も分解能を有する種類としての報告がある。ゴム製品を含む廃棄物の分解方法は、ゴム製品を破砕してなる破砕ゴムを液体培地に添加して微生物を培養する方法が一般的である。その他にゴム分解能を有する微生物の培養液上清にゴムを添加するなどの方法も報告されている。なお、ゴムの分解は、培養前後でのゴム性状の変化を目視により確認したり、添加したゴムの培養前後での重量変化を検出したりすることで確認されている。また、電子顕微鏡を用いて、培養後のゴムの表面を観察してその変化を確認することも行われている。例えば、特許文献1には、土壌におけるスクリーニングにより取得したノカルディアタケデンシス(Nocardia takedensis)に属する放線菌株がポリイソプレン系ゴムの分解能を有することが開示されている。そして、当該放線菌株を分解対象のゴムとともに所定の条件下で培養することにより、分解対象のゴムの分解を促進している。

先行技術

0004

特許第5222610号公報

発明が解決しようとする課題

0005

しかしながら、自然界から単離したゴム分解能を有する微生物では、そのゴム分解能を向上させるために当該微生物の至適培養条件で培養することが考えられるが、必ずしも十分な分解能が得られるわけではない。そして、特許文献1に開示の放線菌株では、そのゴム分解能は実用性を鑑みると十分ではなく、より一層高いゴム分解能を呈することが求められている。

0006

また、ゴム分解に必要な遺伝子・タンパク質の解析について、グラム陰性のXanthomonas属細菌が有するRubber oxygenase(RoxA)や、Streptomyces属をはじめとするグラム陽性の放線菌のLatex-clearing protein(Lcp)などが報告されている。どちらもポリイソプレン不飽和結合酸素分子を付加するジオキシゲナーゼとして機能すると考えられている。精製タンパク質を用いてラテックス中のポリイソプレンを試験管内で反応させると、末端アルデヒドケト基を有したイソプレンオリゴマーが検出されることから、RoxA、Lcp共にポリイソプレンの酸化分解関与することが示唆されている。Lcpは遺伝子操作が一般的に困難な放線菌が有するため、破壊株が得られておらず、ゴム分解への寄与がいまだ明確ではない。そして、当該放線菌由来のLcpは、ゴム分解反応における基質特異性が低く、反応速度が遅いため、実用化に至っておらず、相当の改良を要する。

0007

また、自然界から単離した微生物を用いることに替えて、遺伝子組み換え法突然変異の誘発等を用いて、自然界から単離したゴム分解能を有する微生物を形質転換したものを用いることが考えられる。しかしながら、上述のごとく、放線菌は遺伝子操作が一般的に困難であり、本来の微生物を超越するゴム分解能を有する形質転換体はこれまでに報告されていない。

0008

本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、高いポリイソプレン系ゴムの分解能を有する放線菌、これを用いたゴム分解方法及び、高いポリイソプレン系ゴムの分解能を有するタンパク質を提供しようとするものである。

課題を解決するための手段

0009

本発明の第1の態様は、ノカルディア・ファルシニカ(Nocardia farcinica)に属する、ポリイソプレン系ゴム分解能を有する放線菌にある。

0010

本発明の第2の態様は、上記ノカルディア・ファルシニカ(Nocardia farcinica)に属する放線菌を用いて、ポリイソプレン系ゴムを含有するゴム組成物を分解することを特徴とする、ゴム組成物分解方法にある。

0011

本発明の第3の態様は、ノカルディア・ファルシニカ(Nocardia farcinica)に属する放線菌に由来するタンパク質であること、又は該タンパク質のアミノ酸配列と80%以上同一のアミノ酸配列を有するタンパク質であることを特徴とする、ポリイソプレン系ゴム分解能を有するタンパク質にある。

発明の効果

0012

本願発明者らは、上記第1の態様としてのノカルディア・ファルシニカ(Nocardia farcinica)に属する放線菌においては、ポリイソプレン系ゴム分解能が従来知られているものに比べて、飛躍的に高い菌株が存在することを見出した。当該高いポリイソプレン系ゴム分解能を有する放線菌を利用することにより、微生物を用いたゴム分解の実用化に寄与する。

0013

そして、上記第2の態様としてのノカルディア・ファルシニカ(Nocardia farcinica)に属する放線菌を用いてポリイソプレン系ゴムを含有するゴム組成物を分解するゴム組成物分解方法では、従来に比べて飛躍的に高いポリイソプレン系ゴム分解作用を奏する。これにより、当該ゴム組成物分解方法を実用化が可能となる。

0014

また、上記第3の態様としてのタンパク質は、ノカルディア・ファルシニカ(Nocardia farcinica)に属する放線菌に由来するポリイソプレン系ゴム分解能を有するタンパク質であり、又は該タンパク質のアミノ酸配列と80%以上同一のアミノ酸配列を有するポリイソプレン系ゴム分解能を有するタンパク質であるため、従来よりも飛躍的に高いポリイソプレン系ゴム分解能を有する。そのため、当該タンパク質を利用して、従来に比べて飛躍的に高いポリイソプレン系ゴム分解作用を奏するゴム分解方法を実用化することが可能となる。

0015

以上のごとく、本発明によれば、高いポリイソプレン系ゴムの分解能を有する放線菌、これを用いたゴム組成物分解方法及び、高いポリイソプレン系ゴムの分解能を有するタンパク質を提供することができる。

図面の簡単な説明

0016

実施形態1における、配列番号1の塩基配列を示す図。
実施形態1における、配列番号2のアミノ酸配列を示す図。
実施形態1における、SDS−PAGEの結果を示す図。
実施形態1における、評価試験1の結果を表した図。
実施形態1における、評価試験2の結果を表した図。
実施形態1における、ゴム分解の態様を表した図。

実施例

0017

上記ノカルディア・ファルシニカ(Nocardia farcinica)に属する放線菌が、NBRC 15532株又はその変異株であることが好ましい。この場合には、十分高いポリイソプレン系ゴム分解能を有する。

0018

上記放線菌は、ポリイソプレン系ゴムを含有し、トルエン膨潤法により算出される膨潤比が2.5以上で、かつ、100%モジュラスの値が5MPa以下であるゴム組成物を分解可能であることが好ましい。この場合には、当該ゴム組成物は軟質ゴム分類されるものであって種々の用途に広く利用されているため、かかるゴム組成物に対して高い分解能を有することにより高い実用性を呈することとなる。

0019

上記放線菌における上記ポリイソプレン系ゴムの分解能は、培地容量をL、日数をdayとしたとき、10〜50mg/L/dayであることが好ましい。この場合は、十分高い分解能を有するため高い実用性を呈することとなる。

0020

上記ゴム組成物分解方法において、上記ゴム組成物におけるポリイソプレン系ゴムの含有率が50〜100%w/wであることが好ましい。この場合には、幅広いゴム組成物を分解対象とすることができるため、高い実用性を呈することとなる。

0021

上記ポリイソプレン系ゴム分解能を有するタンパク質は、ノカルディア・ファルシニカ(Nocardia farcinica)に属する放線菌NBRC 15532株又はその変異株に由来するものであることが好ましい。この場合には、ポリイソプレン系ゴムに対して高い分解能を有するため高い実用性を呈することとなる。

0022

上記ポリイソプレン系ゴム分解能を有するタンパク質は、ポリイソプレン系ゴムを含有し、トルエン膨潤法により算出される膨潤比が2.5以上で、かつ、100%モジュラスの値が5MPa以下であるゴム組成物を分解可能であることが好ましい。この場合には、軟質ゴムに分類されるかかるゴム組成物に対して高い分解能を有することにより高い実用性を呈することとなる。

0023

上記ポリイソプレン系ゴム分解能を有するタンパク質における上記ポリイソプレン系ゴムの分解能は、培地容量をL、日数をdayとしたとき、10〜50mg/L/dayであることが好ましい。この場合は、十分高い分解能を有するため高い実用性を呈することとなる。

0024

なお、本願明細書において、「ポリイソプレン系ゴム」は、イソプレンをポリマー化してなる合成ゴムと、天然ゴムとを含むものとする。

0025

(実施形態1)
上記放線菌、ゴム分解タンパク質及びゴム組成物分解方法の実施形態について、図1図6を用いて説明する。

0026

(菌株)
本実施形態における放線菌は、ノカルディア・ファルシニカ(Nocardia farcinica)に属する放線菌であって、ポリイソプレン系ゴム分解能を有する。
また、本実施形態における放線菌の菌株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンターにおいて、NBRC(NITEBiological Resource Center)コレクションの一部として保存されたNBRC 15532株である。なお、当該菌株は、上記機構において上記微生物名と上記NBRC番号とを特定することにより分譲可能である。

0027

本願発明者らは、上記NBRCコレクションにおいて、ゴム分解能を有すると推定される放線菌の菌株を複数入手した。そして、それぞれのポリイソプレン系ゴム分解能を検出したところ、上記NBRC 15532株におけるポリイソプレン系ゴム分解能が跳びぬけて高いことを見出した。

0028

なお、本実施形態における放線菌はNBRC 15532株を所定の方法で変異させた変異株であってもよい。なお、当該変異株はNBRC 15532株と同程度又はそれ以上のポリイソプレン系ゴム分解能を有するものとする。

0029

(Nocardia farcinica由来Lcp遺伝子)
Streptomyces属放線菌は全ゲノム配列が決定されている。これに基づき、Nocardia farcinicaに属する放線菌から、Streptomyces属由来のLatex-clearing protein(Lcp)遺伝子と高い相同性を有する遺伝子を見つけ出した。該遺伝子をNocardia farcinica由来のLcp遺伝子とし、その塩基配列を図1及び配列番号1に示した。

0030

(Nocardia farcinica由来Lcpタンパク質)
本実施形態では、ポリイソプレン系ゴム分解能を有するタンパク質として、Nocardia farcinica由来Lcp遺伝子がコードするタンパク質をNocardia farcinica由来Lcpタンパク質として、図2及び配列番号2にそのアミノ酸配列を示した。そして、配列番号1のLcp遺伝子を大腸菌用の発現ベクターに連結して、ヒスチジンタグ融合タンパク質(His−tag融合Lcp)として大腸菌に過剰発現させて精製した。図3に示すようにSDS−PAGEにより、精製したHis−tag融合Lcpの存在を確認した。Lcpの平均分子量は約45kDaであった。なお、大腸菌培養時にLB培地とFe培地とそれぞれ用いたが、図3に示すように、His−tag融合Lcpの発現量に大きな差はなかった。なお、大腸菌に過剰発現させたHis−tag融合Lcpは、その多くが不溶性画分に存在していたが、一部は可溶性画分に存在しており、当該可溶性画分から精製可能である。

0031

精製したHis−tag融合Lcpは、pH7.0付近で可溶性が保たれていた。そして、精製His−tag融合Lcpを添加した培地でNocardia farcinicaを培養したところ、精製His−tag融合Lcpを添加していない培地で培養した場合に比べて、ゴム分解能が有為に上昇したことが確認できた。

0032

なお、本実施形態におけるポリイソプレン系ゴム分解能を有するタンパク質は、Nocardia farcinica由来Lcpタンパク質のアミノ酸配列と80%以上、より好ましくは90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。すなわち、Nocardia farcinica由来Lcpタンパク質のアミノ酸配列の一部に追加、置換、削除などの変異を導入することにより、Nocardia farcinica由来Lcpタンパク質のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質とすることができる。なお、当該変異が導入されたタンパク質は、Nocardia farcinica由来Lcpタンパク質と同程度又はそれ以上のポリイソプレン系ゴム分解能を有するものとする。

0033

(Lcp遺伝子破壊株の作成とゴム分解能の評価試験1)
本願発明者らは、近年の発展が目覚ましいゲノム編集技術を応用してNocardia farcinica NBRC 15532株においてLcp遺伝子を破壊したLcp遺伝子破壊株を作成した。そして、Nocardia farcinica NBRC 15532株(野生株)とLcp遺伝子破壊株とについて、ポリイソプレン系ゴム分解能の評価試験1を行った。試験方法は、ポリイソプレン系ゴムを含有し、トルエン膨潤法により算出される膨潤比が2.5以上で、かつ、100%モジュラスの値が5MPa以下のゴム組成物であるラテックスグローブシートを0.2g用意し、これを200mLのWx培地に添加した。そして、当該培地に37℃の温度環境エアーポンプにより通気を行うことにより、上記野生株とLcp遺伝子破壊株とをそれぞれ30日間、撹拌培養した。培養後、目視によりラテックスグローブのシートの変化を観察した。また、培養後、ラテックスグローブのシートから所定厚さの切片切り出してメチレンブルー染色し、SEM走査型電子顕微鏡)により観察した。
なお、Wx培地の組成は以下のとおりである。
<Wx培地>
KH2PO4 1.7 g/L
Na2HPO4 12H2O 9.8 g/L
(NH4)2SO4 1.0 g/L
MgSO4 7H2O 100 mg/L
FeSO4 7H2O 5 mg/L
MgO 10.75 mg/L
CaCO3 2.00 mg/L
FeSO4 7H2O 4.50 mg/L
ZnSO4 7H2O 1.44 mg/L
MnSO4 4H2O 1.12 mg/L
CuSO4 5H2O 0.25 mg/L
CoSO4 7H2O 0.28 mg/L
H3BO3 0.06 mg/L

0034

当該評価試験1によれば、野生株では、図4(a)に示すように、白色であったラテックスグローブのシートの表面に、培養後に黄色の若干盛り上がった状態の領域(例えば矢印Pで示す領域)が多数生じていた。また、図4(b)に示すSEM画像では、矢印で示すメチレンブルーにより染色された野生株のNocardia farcinicaの細胞が、ラテックスグローブのシートRの内部に入り込んでその一部と置き換わっていることが見て取れた。
一方、図4(c)に示すように、Lcp遺伝子破壊株では、矢印Qで示す領域を除いて、ラテックスグローブのシートの表面は白色のまま変化せず、野生株のように黄色の若干盛り上がった状態の領域は生じていなかった。また、図4(d)に示すSEM画像では、矢印で示すメチレンブルーにより染色されたLcp遺伝子破壊株のNocardia farcinicaの細胞は、ラテックスグローブのシートRの表面に付着しているにすぎず、シートRの内部には入り込んでいなかった。そして、Lcp遺伝子破壊株の数は図4(c)に示す野生株の場合と比べて、有意に少なかった。なお、図4(c)、図4(d)において、ラテックスグローブのシートRの厚さtは約200μmであり、当該シートRの切片の内部には切片の作成時に切片の一部がしわSが形成されている。そして、図4(c)、図4(d)における紙面上方がラテックスグローブの外側であり、紙面下方がラテックスグローブの内側である。

0035

上記評価試験1の結果から、野生株はそのゴム分解能によりラテックスグローブのシートを分解して増殖できたが、Lcp遺伝子破壊株ではゴム分解能が消失したためラテックスグローブのシートを分解できずに十分に増殖できなかったと考えられる。なお、図4(c)において矢印Qで示した領域は黄色の若干盛り上がった状態となっていたが、かかる部分にはわずかに混入した野生株の放線菌が増殖していたことがその遺伝子を確認することによりわかった。以上から、当該Lcp遺伝子破壊株において、Lcp遺伝子が破壊されたことが確認できた。

0036

(ポリイソプレン系ゴム分解の評価試験2)
次に、Nocardia farcinicaによるポリイソプレン系ゴム分解能に関する評価試験2について説明する。
試験例として、上記評価試験1と同様の条件でNocardia farcinica NBRC 15532株を30日間培養した。比較例1として未処理のラテックスグローブのシートを用意し、さらに比較例2としてStreptomyces属の放線菌を同様に培養した。

0037

試験例及び比較例2について、培養後、図5に示すように培地内のラテックスグローブのシートを目視によりその変化を観察した。また、培地の濁度OD660)を測定した。さらに、当該シートを熱分解してラテックスグローブの主成分であるポリイソプレンをモノマー化した後、ガスクロマトグラフィーによりモノマー化で生じたイソプレン量をシートの単位重量当たりピーク面積として検出した。また、培地に溶け出したイソプレン量も同様に測定した。比較例1の未処理のラテックスグローブのシートについても同様に検出した。検出結果を図5及び表1に示した。

0038

0039

図5(a)及び図5(b)に示すように、試験例の処理では、目視による変化の観察では、白色であったラテックスグローブのシートの全域は黄色状に変化していることが確認できた。また、図示しないが比較例2の処理でも、白色であったラテックスグローブのシートの一部が変改していることが確認できた。一方、未処理の比較例1ではラテックスグローブのシートに何ら変化はなかった。

0040

そして、表1に示すように、ガスクロマトグラフィーによるイソプレン量の測定では、未処理の比較例1に対して、比較例2では21.5%減少し、試験例では88.7%減少した。さらに試験例では培地中のイソプレン量は比較例1及び比較例2に比べて十分少なかった。これらの試験結果から、試験例では、ラテックスグローブの主成分であるポリイソプレン及びそのモノマーであるイソプレンが分解されているとともに、その分解能は比較例2に比べて十分高いことが示された。そして、試験例では、200mlの培地で0.2gのラテックスグローブのシートを30日間でほぼ分解することから、その分解能は33mg/L/dayと表すことができる。

0041

一方、従来技術を示す特許文献1(特許第5222610号公報)において、ノカルディア・タケデンシス(Nocardia takedensis)に帰属する放線菌におけるゴム分解能についての試験が開示されている。かかる開示における試験条件は以下の通りである。シリコーン栓付きガラス容器に準備した下記組成の培地に、アセトン抽出済みの天然ゴムラテックス手袋短冊状に切ったゴム片5g/Lを入れ、90℃で、オートクレーブ中滅菌処理した。これに同様の手袋ゴムを唯一炭素源として前培養したNocardia takedensisに帰属する放線菌における菌株5種と土壌から採取した不特定の放線菌について、菌液(108/100ml)を加え、40日間、30℃、50rpmで振盪培養し、121℃でオートクレーブ中で滅菌し、手袋ゴム片を取り出した。取り出した手袋ゴム片をアセトンで数回洗浄後、純水で洗浄し、充分に乾燥したことを確認後、重量測定を行った。
(培地の組成)
K2HPO4 8.0g
KH2PO4 1.0g
MgSO4 7H2O 0.2g
NaCl 0.1g
(NH4)2SO4 0.5g
Ca(NO3)2 0.1g
Metal Solution 10ml
Vitamin Solution 10ml
脱イオン水1000ml
pH 7.5

0042

特許文献1に開示のNocardia takedensisに帰属する放線菌における菌株5種と土壌から採取した不特定の放線菌によるゴム分解処理での重量減少は以下のとおりである。
BS−GS1株 :29%
BS−GS2株 :20%
BS−GS5株 :25%
BS−GS6株 :21%
BS−GS7株 :33%
土壌の不特定放線菌: 0%

0043

当該従来公報に開示の試験結果によれば、Nocardia takedensisに帰属する上記菌株によるゴム分解処理では、最もゴム分解量の多いBS−GS7株でもその減少率高々33%であった。さらに、当該従来公報における試験では、本願における上記試験の試験条件に比べて、培養期間が長く、その試験条件は比較的緩いものである。一方、本願の上記試験における試験例では、より厳しい試験条件下で、88.7%もの重量減少を示している。このことから、Nocardia farcinica NBRC 15532株は、従来公報に開示のNocardia takedensisに帰属する上記菌株におけるゴム分解能よりも格段に高いゴム分解能を有することが確認できた。なお、上記試験例では、ゴム分解能は33mg/L/dayであったが、例えば、当該分解能は10〜50mg/L/dayであってもよい。

0044

次に、Nocardia farcinica NBRC 15532株によるポリイソプレン系ゴムの分解態様についての評価を行った。評価は、まず、上記試験と同様にNocardia farcinica NBRC 15532株によるラテックスグローブのシートの分解処理を行った。そして、培養から10日後、20日後及び35日後にそれぞれ、ラテックスグローブのシートを取り出して光学顕微鏡及びSEM(走査型電子顕微鏡)によりその状態を観察した。なお、光学顕微鏡による観察においてはメチレンブルー染色を行った。図6(a)〜図6(c)に光学顕微鏡による観察結果を示し、図6(d)〜図6(f)にSEMによる観察結果を示した。

0045

光学顕微鏡による観察によれば、培養10日目では、図6(a)に示すように、メチレンブルー染色により濃く染色されたNocardia farcinicaの細胞は、矢印で示すようにラテックスグローブのシートの表面に付着するように存在していた。培養20日目では、図6(b)に示すように、矢印で示すNocardia farcinicaの細胞は、ラテックスグローブのシートの内部に入り込んでその一部と置き換わっていることが見て取れた。さらに、培養35日目では、図6(c)に示すように、矢印で示すNocardia farcinicaの細胞はさらにラテックスグローブのシートの内部に入り込んでその大半がNocardia farcinicaの細胞と置き換わっていることが見て取れた。

0046

また、SEMでの観察によれば、培養10日目では、図6(d)に示すように、ラテックスグローブのシートの表層が内部と比べて変化しており、シート表層のポリイソプレン系ゴムが分解されていることが推察された。培養20日目では、図6(e)に示すように、上述のごとく、シートの一部においてポリイソプレン系ゴムが分解されて、Nocardia farcinicaの細胞に置き換わっていることが推察された。そして、培養35日目では、図6(f)に示すように、シートの内側の大半のポリイソプレン系ゴムが分解されて、Nocardia farcinicaの細胞に置き換わっていることが推察された。以上のように、ラテックスグローブのシートの一部がNocardia farcinicaの細胞に置き換わった状態でポリイソプレン系ゴムが分解されていることが確認できた。

0047

次に、Nocardia farcinica NBRC 15532株によるゴム分解の基質特異性について、上述のようにラテックスグローブの主成分であるポリイソプレン系ゴムに対して非常に高い分解能を有することから、軟質ゴムに対して高い分解能を有することが推測される。なお、本明細書では、トルエン膨潤法により算出される膨潤比が2.5以上で、かつ、100%モジュラス(モジュラスM100)の値が5MPa以下であるものを軟質ゴムと定義し、これに該当しないものを硬質ゴムと定義する。硬質ゴムでは架橋密度が高いため、微生物による分解が阻害されることから、硬質ゴムに対しては分解能が低下する傾向がある。なお、トルエン膨潤法による膨潤比は、試験片トルエンに25℃、24時間浸漬させ、トルエン浸漬前の試験片の質量M0に対するトルエン浸漬後の試験片の質量M1の比(M1/M0)として表すことができる。また、100%モジュラスの値は、JIS K 6251:2010に準じた引張試験を実施することにより取得することができる。

0048

Nocardia farcinica NBRC 15532株及びLcpタンパク質は上記軟質ゴムに対して高い分解能を有するが、分解基質は上記軟質ゴムにおいて100%モジュラスの値が3.5MPa以下であることが好ましく、1.5MP以下であることがより好ましい。これにより、ゴム組成物における架橋密度がより低くなるため分解能が一層高まる。

0049

Lcpタンパク質は、ポリイソプレンにおいて、イソプレン鎖に酸素分子を添加し,イソプレン間のC−C結合を切断することでポリイソプレンを低分子化すると推察される。これにより、低分子化されたポリイソプレン又はイソプレンを菌体内に取り込みやすい大きさにして、菌体内で分解を行うものと推察される。すなわち、Lcpタンパク質による反応は、当該菌体がポリイソプレン系ゴムを分解する際の最初のステップとなっていると考えられる。

0050

次に、本例のNocardia farcinicaを用いたゴム組成物分解方法について説明する。当該ゴム組成物分解方法では所定の培養槽を用いて、Nocardia farcinicaが生育可能な培地に、分解対象となるゴム組成物を投入し、当該培地でNocardia farcinicaを培養する。Nocardia farcinicaは当該ゴム組成物を炭素源等として分解する。培地の組成は特に限定されず、公知の組成のものを適宜使用することができる。培養方法も特に限定されず、バッチ培養流加培養連続培養など公知の培養方法のいずれを採用してもよい。

0051

当該ゴム組成物分解方法において、ゴム組成物におけるポリイソプレン系ゴムの含有率は50〜100%w/wとすることができ、好ましくは60〜100%w/w、より好ましくは70〜100%w/wとすることができる。これにより、Nocardia farcinicaによる分解に適したゴム組成物となり、効率よくゴム組成物を分解することができる。なお、ゴム組成物が、イソプレンを含む2種以上のポリマーアロイ化してなる海島構造を有する場合には、ポリイソプレンが含有される海相又は島相において、ポリイソプレン系ゴムの含有率を上記の通りとすることが好ましい。

0052

次に、本例のNocardia farcinica由来Lcpタンパク質を用いたゴム組成物分解方法としては、精製Lcp、培養液上清、酵素粗抽出液無細胞タンパク質合成反応液を培養液に添加してゴム分解を促進させたり、ゴム分解の前処理として用いたりすることができる。また、Lcpタンパク質を大腸菌、ファージ酵母等の細胞表面に提示させてこれらの微生物を用いてゴム分解及びその前処理として使用することもできる。

0053

次に、本実施形態における作用効果について、詳述する。
本実施形態における第1の態様であるノカルディア・ファルシニカ(Nocardia farcinica)に属する放線菌では、そのポリイソプレン系ゴム分解能が従来知られているものに比べて、飛躍的に高い。当該放線菌を利用することにより、微生物を用いたゴム組成物の分解の実用化に寄与する。

0054

また、本例では、上記ノカルディア・ファルシニカ(Nocardia farcinica)に属する放線菌が、NBRC 15532株又はその変異株である。これにより、当該放線菌は、十分高いポリイソプレン系ゴム分解能を有するため、当該放線菌を用いたゴム組成物の分解の実用化に一層寄与する。

0055

また、本例では、上記放線菌は、ポリイソプレン系ゴムを含有し、トルエン膨潤法により算出される膨潤比が2.5以上で、かつ、100%モジュラスの値が5MPa以下であるゴム組成物を分解可能である。軟質ゴムに分類される当該ゴム組成物に対する分解能を有するため高い実用性を呈することとなる。

0056

また、本例では、上記放線菌における上記ポリイソプレン系ゴムの分解能は、培地容量をL、日数をdayとしたとき、10〜50mg/L/dayとすることができる。これにより、十分高い分解能を有するため高い実用性を呈することとなる。

0057

そして、本例における第2の態様としてのノカルディア・ファルシニカ(Nocardia farcinica)に属する放線菌を用いてポリイソプレン系ゴムを含有するゴム組成物を分解するゴム組成物分解方法では、従来に比べて飛躍的に高いポリイソプレン系ゴム分解作用を奏する。これにより、当該ゴム組成物分解方法の実用化が可能となる。

0058

また、本例のゴム組成物分解方法では、ゴム組成物におけるポリイソプレン系ゴムの含有率が50〜100%w/wである。これにより、幅広いゴム組成物を分解対象とすることができるため、高い実用性を呈することとなる。

0059

さらに、本例における第3の態様としてのタンパク質は、ノカルディア・ファルシニカ(Nocardia farcinica)に属する放線菌に由来するポリイソプレン系ゴム分解能を有するタンパク質であり、又は該タンパク質のアミノ酸配列と80%以上同一のアミノ酸配列を有するポリイソプレン系ゴム分解能を有するタンパク質である。これにより、当該タンパク質は従来よりも飛躍的に高いポリイソプレン系ゴム分解能を有するため、当該タンパク質を利用して、従来に比べて飛躍的に高いポリイソプレン系ゴム分解作用を奏するゴム分解方法を実用化することが可能となる。

0060

また、本例のポリイソプレン系ゴム分解能を有するタンパク質は、ノカルディア・ファルシニカ(Nocardia farcinica)に属する放線菌NBRC 15532株又はその変異株に由来するものである。これにより、ポリイソプレン系ゴムに対して高い分解能を有するため高い実用性を呈することとなる。

0061

また、本例のポリイソプレン系ゴム分解能を有するタンパク質は、ポリイソプレン系ゴムを含有し、トルエン膨潤法により算出される膨潤比が2.5以上で、かつ、100%モジュラスの値が5MPa以下であるゴム組成物を分解可能である。これにより、軟質ゴムに分類される当該ゴム組成物に対する分解能を有するため高い実用性を呈することとなる。

0062

また、本例のポリイソプレン系ゴム分解能を有するタンパク質における上記ポリイソプレン系ゴムの分解能は、培地容量をL、日数をdayとしたとき、10〜50mg/L/dayである。これにより、十分高い分解能を有するため高い実用性を呈することとなる。

0063

以上のごとく、本実施形態によれば、高いポリイソプレン系ゴムの分解能を有する放線菌、これを用いたゴム組成物分解方法及び、高いポリイソプレン系ゴムの分解能を有するタンパク質を提供することができる。

0064

本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。

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