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技術 細胞又は組織の凍結保存用治具

出願人 三菱製紙株式会社
発明者 松澤篤史
出願日 2018年4月18日 (2年2ヶ月経過) 出願番号 2018-080155
公開日 2019年10月31日 (7ヶ月経過) 公開番号 2019-187244
状態 未査定
技術分野 農薬・動植物の保存 微生物・酵素関連装置 微生物、その培養処理 獣医用機器
主要キーワード スペースホルダ 樹脂射出成型 温度伝導 多孔性金属シート 冷却溶媒 焼結形成 非生物由来 バブルポイント試験
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (6)

課題

細胞又は組織凍結保存作業を容易にかつ確実に行うことが可能な、凍結保存用治具を提供する。

解決手段

細胞又は組織を載置する載置部の最表面に、ヒドロキシプロピルセルロースを含有する層を有することを特徴とする細胞又は組織の凍結保存用治具。

概要

背景

細胞又は組織の優れた保存技術は、様々な産業分野で求められている。例えば、胚移植技術においては、凍結保存し、受胚牛の発情周期に合わせて胚を融解し、移植することが行われている。また、ヒトの不妊治療においては、母体から卵子又は卵巣採取後、移植に適したタイミングに合わせるために凍結保存しておき、移植時に融解して用いることがなされている。

一般に、生体内から採取された細胞又は組織は、たとえ培養液の中であっても、次第に活性が失われていくことから、生体外での細胞又は組織の長期間の培養は好ましくない。そのため、生体活性を失わせずに長期間保存するための技術が重要である。優れた保存技術によって、採取された細胞又は組織をより正確に分析することが可能になる。また優れた保存技術によって、より高い生体活性を保ったまま細胞又は組織を移植に用いることが可能となり、移植後の生着率が向上することが望める。さらには、生体外で培養した培養皮膚、生体外で構築したいわゆる細胞シートのような移植のための人工の組織を、順次生産して保存しておき、必要な時に使用することも可能となり、医療の面だけではなく、産業面においても大きなメリットが期待できる。

細胞又は組織の保存方法として、例えば緩慢凍結法が知られている。この方法では、まず、例えばリン酸緩衝生理食塩水等の生理的溶液に耐凍剤を含有させることで得られた保存液に、細胞又は組織を浸漬する。該耐凍剤としては、グリセロールエチレングリコール等の化合物が用いられる。該保存液に、細胞又は組織を浸漬後、比較的遅い冷却速度(例えば0.3〜0.5℃/分の速度)で、−30〜−35℃まで冷却することにより、細胞内外又は組織内外の溶液が十分に冷却され、粘性が高くなる。このような状態で、該保存液中の細胞又は組織をさらに液体窒素の温度(−196℃)まで冷却すると、細胞内又は組織内さらには細胞周囲又は組織周囲の微少溶液がいずれも非結晶のまま固体となるガラス化が起こる。ガラス化により、細胞内外又は組織内外が固化すると、実質的に分子動きがなくなるので、ガラス化された細胞又は組織を液体窒素中に保存することで、半永久的に保存できると考えられる。

しかしながら、前記緩慢凍結法では、比較的遅い冷却速度で冷却する必要があるために、凍結保存のための操作に時間を要する。また、冷却速度を制御するための装置又は治具を必要とする問題がある。加えて、前記緩慢凍結法では、細胞外又は組織外の保存液中に氷晶が形成されるので、細胞又は組織が該氷晶により物理的に損害を受けるおそれがある。

前記緩慢凍結法での問題点を解決するための方法として、ガラス化凍結法が提案されている。ガラス化凍結法とは、グリセロール、エチレングリコール、DMSO(ジメチルスルホキシド)等の耐凍剤を多量に含む保存液の凝固点降下により、氷点下であっても氷晶ができにくくなる原理を用いたものである。この保存液を急速に液体窒素中で冷却させると、氷晶を生じさせないまま固化させることができる。このように固化することをガラス化凍結という。また、耐凍剤を多量に含む保存液は、ガラス化液呼称される。

前記ガラス化凍結法の具体的な操作としては、耐凍剤を多量に含む保存液に細胞又は組織を浸漬させ、その後、液体窒素の温度(−196℃)で冷却する。ガラス化凍結法は、このような簡便かつ迅速な工程であるために、凍結保存のための操作に長い時間を必要としない他、温度制御をするための装置又は治具を必要としないという利点がある。

ガラス化凍結法を用いると、原理的には、細胞又は組織の内外のいずれにも氷晶が生じないために凍結時及び融解時の細胞又は組織への物理的障害凍害)を回避することができるが、適切なガラス化凍結を成し得るためには、ガラス化に用いる保存液に含有される耐凍剤の濃度を高いものとしなければならない。一方で、保存液に含まれる高濃度の耐凍剤は細胞又は組織にとって化学的毒性が高いため、細胞への毒性の観点では、可能な限り濃度を低くすることが好ましい。低濃度の耐凍剤を含有する保存液でガラス化凍結を行うためには、凍結速度を速める必要があることが知られている。

上記した背景から、細胞又は組織の凍結保存においては、保存液に含まれる高濃度の耐凍剤に由来する毒性を回避する観点から、細胞又は組織が保存液に暴露される時間(つまりは凍結されるまでの時間)が短時間であることが好ましい。また、凍結速度を速くする観点から、細胞又は組織の凍結保存時には細胞又は組織の周囲に存在する保存液が少ない方が好ましい。細胞又は組織の周囲に存在する保存液が少ないほど、凍結対象の熱容量が少なくなり、細胞又は組織の凍結速度が速くなり、ガラス化凍結にとっては好ましいといえる。さらに、細胞又は組織の周囲に存在する保存液が少ないことは、凍結後の融解時においても、保存液が速やかに融解液中に希釈され、細胞又は組織中への再氷晶形成を抑制する観点で好ましい。さらには、融解時に融解液中に混入する耐凍剤の濃度を低くすることができるために、耐凍剤に由来する毒性の観点からも好ましい。

ガラス化凍結法を用いた細胞又は組織の凍結保存については、様々な方法で、様々な種類の細胞又は組織を用いた例が示されている。例えば、特許文献1では、動物又はヒトの生殖細胞又は体細胞へのガラス化凍結法の適用が、凍結保存及び融解後の生存率の点で、極めて有用であることが示されている。

ガラス化凍結法は、主にヒトの生殖細胞を用いて発展してきた技術であるが、最近では、iPS細胞ES細胞への応用も広く検討されている。また、非特許文献1では、ショウジョウバエの胚の保存にガラス化凍結法が有効であったことが示されている。さらに、特許文献2では、植物培養細胞や組織の保存において、ガラス化凍結法が有効であることが示されている。このように、ガラス化凍結法は広く様々な種の細胞及び組織の保存に有用であることが知られている。

特許文献3、特許文献4では、ヒトの不妊治療分野で使用されているいわゆるクライオトップ法という方法で、卵付着保持用ストリップとして短冊状の可撓性かつ無色透明フィルムを使用した卵凍結保存用具を使用して、顕微鏡観察下で該フィルム上に極少量の保存液と共に卵子又は胚を載置し、凍結保存する方法が提案されている。

特許文献5では、卵子又は胚を、耐凍剤を多量に含む保存液と共に保存液除去材の上に載置し、下部から吸引することで卵子又は胚の周囲に付着した余分な保存液を除き、優れた生存率で凍結保存させる方法が提案されている。なお、保存液除去材としては、金網、紙等の天然物合成樹脂からなるフィルム状物貫通孔を有したものが記載されている。また余分な保存液を除き、また細胞を載置する際の作業性を向上することが可能な凍結保存用治具として、例えば、特定のヘーズ値を有する保存液吸収体が特許文献6に記載され、更に特許文献7、特許文献8等には、保存液吸収体として多孔質焼結形成体や特定の屈折率を有する素材で形成された多孔質構造体を有するガラス化凍結保存用治具が記載されている。

細胞又は組織を載置する際の作業性を向上することが可能な凍結保存用治具についての記載は上述の通りであるが、細胞又は組織を剥離する際の作業性を向上することが可能な凍結保存用治具として、例えば、細胞又は組織を載置する載置部の最表面に水溶性高分子化合物を含有する層を有する細胞又は組織の凍結保存用治具が、特許文献9に記載されている。

概要

細胞又は組織の凍結保存作業を容易にかつ確実に行うことが可能な、凍結保存用治具を提供する。細胞又は組織を載置する載置部の最表面に、ヒドロキシプロピルセルロースを含有する層を有することを特徴とする細胞又は組織の凍結保存用治具。

目的

特許文献9では、細胞又は組織を凍結後に融解する際に、細胞又は組織が凍結保存用治具の載置部上に固着することを回避するために、その載置部上に水溶性高分子化合物を含有する層を形成する方法が提案されているが、凍結融解時の細胞又は組織の回収性の向上は恒久の課題であり、更なる改善が望まれていた

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
0件

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請求項1

細胞又は組織を載置する載置部の最表面に、ヒドロキシプロピルセルロースを含有する層を有することを特徴とする細胞又は組織の凍結保存治具

請求項2

該載置部が保存液吸収体を有し、該保存液吸収体上にヒドロキシプロピルセルロースを含有する層を有することを特徴とする、請求項1に記載の細胞又は組織の凍結保存用治具。

技術分野

0001

本発明は、細胞又は組織凍結保存する際に使用する、細胞又は組織の凍結保存用治具に関する。

背景技術

0002

細胞又は組織の優れた保存技術は、様々な産業分野で求められている。例えば、胚移植技術においては、を凍結保存し、受胚牛の発情周期に合わせて胚を融解し、移植することが行われている。また、ヒトの不妊治療においては、母体から卵子又は卵巣採取後、移植に適したタイミングに合わせるために凍結保存しておき、移植時に融解して用いることがなされている。

0003

一般に、生体内から採取された細胞又は組織は、たとえ培養液の中であっても、次第に活性が失われていくことから、生体外での細胞又は組織の長期間の培養は好ましくない。そのため、生体活性を失わせずに長期間保存するための技術が重要である。優れた保存技術によって、採取された細胞又は組織をより正確に分析することが可能になる。また優れた保存技術によって、より高い生体活性を保ったまま細胞又は組織を移植に用いることが可能となり、移植後の生着率が向上することが望める。さらには、生体外で培養した培養皮膚、生体外で構築したいわゆる細胞シートのような移植のための人工の組織を、順次生産して保存しておき、必要な時に使用することも可能となり、医療の面だけではなく、産業面においても大きなメリットが期待できる。

0004

細胞又は組織の保存方法として、例えば緩慢凍結法が知られている。この方法では、まず、例えばリン酸緩衝生理食塩水等の生理的溶液に耐凍剤を含有させることで得られた保存液に、細胞又は組織を浸漬する。該耐凍剤としては、グリセロールエチレングリコール等の化合物が用いられる。該保存液に、細胞又は組織を浸漬後、比較的遅い冷却速度(例えば0.3〜0.5℃/分の速度)で、−30〜−35℃まで冷却することにより、細胞内外又は組織内外の溶液が十分に冷却され、粘性が高くなる。このような状態で、該保存液中の細胞又は組織をさらに液体窒素の温度(−196℃)まで冷却すると、細胞内又は組織内さらには細胞周囲又は組織周囲の微少溶液がいずれも非結晶のまま固体となるガラス化が起こる。ガラス化により、細胞内外又は組織内外が固化すると、実質的に分子動きがなくなるので、ガラス化された細胞又は組織を液体窒素中に保存することで、半永久的に保存できると考えられる。

0005

しかしながら、前記緩慢凍結法では、比較的遅い冷却速度で冷却する必要があるために、凍結保存のための操作に時間を要する。また、冷却速度を制御するための装置又は治具を必要とする問題がある。加えて、前記緩慢凍結法では、細胞外又は組織外の保存液中に氷晶が形成されるので、細胞又は組織が該氷晶により物理的に損害を受けるおそれがある。

0006

前記緩慢凍結法での問題点を解決するための方法として、ガラス化凍結法が提案されている。ガラス化凍結法とは、グリセロール、エチレングリコール、DMSO(ジメチルスルホキシド)等の耐凍剤を多量に含む保存液の凝固点降下により、氷点下であっても氷晶ができにくくなる原理を用いたものである。この保存液を急速に液体窒素中で冷却させると、氷晶を生じさせないまま固化させることができる。このように固化することをガラス化凍結という。また、耐凍剤を多量に含む保存液は、ガラス化液呼称される。

0007

前記ガラス化凍結法の具体的な操作としては、耐凍剤を多量に含む保存液に細胞又は組織を浸漬させ、その後、液体窒素の温度(−196℃)で冷却する。ガラス化凍結法は、このような簡便かつ迅速な工程であるために、凍結保存のための操作に長い時間を必要としない他、温度制御をするための装置又は治具を必要としないという利点がある。

0008

ガラス化凍結法を用いると、原理的には、細胞又は組織の内外のいずれにも氷晶が生じないために凍結時及び融解時の細胞又は組織への物理的障害凍害)を回避することができるが、適切なガラス化凍結を成し得るためには、ガラス化に用いる保存液に含有される耐凍剤の濃度を高いものとしなければならない。一方で、保存液に含まれる高濃度の耐凍剤は細胞又は組織にとって化学的毒性が高いため、細胞への毒性の観点では、可能な限り濃度を低くすることが好ましい。低濃度の耐凍剤を含有する保存液でガラス化凍結を行うためには、凍結速度を速める必要があることが知られている。

0009

上記した背景から、細胞又は組織の凍結保存においては、保存液に含まれる高濃度の耐凍剤に由来する毒性を回避する観点から、細胞又は組織が保存液に暴露される時間(つまりは凍結されるまでの時間)が短時間であることが好ましい。また、凍結速度を速くする観点から、細胞又は組織の凍結保存時には細胞又は組織の周囲に存在する保存液が少ない方が好ましい。細胞又は組織の周囲に存在する保存液が少ないほど、凍結対象の熱容量が少なくなり、細胞又は組織の凍結速度が速くなり、ガラス化凍結にとっては好ましいといえる。さらに、細胞又は組織の周囲に存在する保存液が少ないことは、凍結後の融解時においても、保存液が速やかに融解液中に希釈され、細胞又は組織中への再氷晶形成を抑制する観点で好ましい。さらには、融解時に融解液中に混入する耐凍剤の濃度を低くすることができるために、耐凍剤に由来する毒性の観点からも好ましい。

0010

ガラス化凍結法を用いた細胞又は組織の凍結保存については、様々な方法で、様々な種類の細胞又は組織を用いた例が示されている。例えば、特許文献1では、動物又はヒトの生殖細胞又は体細胞へのガラス化凍結法の適用が、凍結保存及び融解後の生存率の点で、極めて有用であることが示されている。

0011

ガラス化凍結法は、主にヒトの生殖細胞を用いて発展してきた技術であるが、最近では、iPS細胞ES細胞への応用も広く検討されている。また、非特許文献1では、ショウジョウバエの胚の保存にガラス化凍結法が有効であったことが示されている。さらに、特許文献2では、植物培養細胞や組織の保存において、ガラス化凍結法が有効であることが示されている。このように、ガラス化凍結法は広く様々な種の細胞及び組織の保存に有用であることが知られている。

0012

特許文献3、特許文献4では、ヒトの不妊治療分野で使用されているいわゆるクライオトップ法という方法で、卵付着保持用ストリップとして短冊状の可撓性かつ無色透明フィルムを使用した卵凍結保存用具を使用して、顕微鏡観察下で該フィルム上に極少量の保存液と共に卵子又は胚を載置し、凍結保存する方法が提案されている。

0013

特許文献5では、卵子又は胚を、耐凍剤を多量に含む保存液と共に保存液除去材の上に載置し、下部から吸引することで卵子又は胚の周囲に付着した余分な保存液を除き、優れた生存率で凍結保存させる方法が提案されている。なお、保存液除去材としては、金網、紙等の天然物合成樹脂からなるフィルム状物貫通孔を有したものが記載されている。また余分な保存液を除き、また細胞を載置する際の作業性を向上することが可能な凍結保存用治具として、例えば、特定のヘーズ値を有する保存液吸収体が特許文献6に記載され、更に特許文献7、特許文献8等には、保存液吸収体として多孔質焼結形成体や特定の屈折率を有する素材で形成された多孔質構造体を有するガラス化凍結保存用治具が記載されている。

0014

細胞又は組織を載置する際の作業性を向上することが可能な凍結保存用治具についての記載は上述の通りであるが、細胞又は組織を剥離する際の作業性を向上することが可能な凍結保存用治具として、例えば、細胞又は組織を載置する載置部の最表面に水溶性高分子化合物を含有する層を有する細胞又は組織の凍結保存用治具が、特許文献9に記載されている。

0015

特許第3044323号公報
特開2008−5846号公報
特開2002−315573号公報
特開2006−271395号公報
国際公開第2011/070973号パンフレット
特開2014−183757号公報
特開2015−142523号公報
国際公開第2015/064380号パンフレット
特開2017−60457号公報

先行技術

0016

Steponkus et al.,Nature 345:170−172(1990)

発明が解決しようとする課題

0017

特許文献3、特許文献4では、卵子又は胚を載置するフィルムの幅を制限することにより、少ない量の保存液とともに卵子又は胚を凍結保存し、優れた生存率を得る方法が提案されている。しかしながら、卵子又は胚を凍結後に融解する際、凍結対象の状態等によって、しばしばフィルム上の卵子又は胚がフィルム表面に固着してしまい、これらを回収する際に高い技量が要求されるという問題があった。さらには、作業者が凍結に好ましい状態であるより少量の保存液で卵子又は胚を凍結保存するほど、凍結後に融解する際に、卵子又は胚がフィルム表面に固着する問題が顕著であった。

0018

特許文献5では、卵子又は胚の周囲に付着した余分な保存液を除くことにより、優れた生存率でこれらの生殖細胞を凍結保存させる方法が提案されている。しかしながら、特許文献3、特許文献4と同様に、凍結後に融解する際、卵子又は胚がフィルム上に固着してしまい、これらを回収する際にも高い技量が要求されるという問題があった。特許文献6〜8では、前述した特許文献5などのように、卵子又は胚の周囲に付着した余分な保存液を作業者が除く必要はなく、良好な作業性が得られるものの、保存液吸収体が保存液を吸収する際に、卵子又は胚が保存液吸収体にとりわけ強固に固着することから、卵子又は胚を回収する際に特に高い技量が要求されるという問題があった。

0019

特許文献9では、細胞又は組織を凍結後に融解する際に、細胞又は組織が凍結保存用治具の載置部上に固着することを回避するために、その載置部上に水溶性高分子化合物を含有する層を形成する方法が提案されているが、凍結融解時の細胞又は組織の回収性の向上は恒久の課題であり、更なる改善が望まれていた。

0020

本発明は、細胞又は組織の凍結保存作業を容易かつ確実に行うことが可能な、細胞又は組織の凍結保存用治具を提供することを主な課題とする。より具体的には、細胞又は組織をガラス化液に浸漬し、細胞又は組織をガラス化液と共に該ガラス化凍結保存用治具に載置して凍結保存した後、該細胞又は組織を融解する際に、細胞又は組織を容易に剥離、回収することができる凍結保存用治具を提供することを第一の課題とする。また、前記した細胞又は組織を容易に回収できることに加え、ガラス化液の優れた吸収性を有する凍結保存用治具を提供することを第二の課題とする。

課題を解決するための手段

0021

本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の構成を有する細胞又は組織の凍結保存用治具(本明細書中、「細胞又は組織の凍結保存用治具」を、単に「凍結保存用治具」ともいう)によって、上記課題を解決できることを見出した。

0022

(1)細胞又は組織を載置する載置部の最表面に、ヒドロキシプロピルセルロースを含有する層を有することを特徴とする細胞又は組織の凍結保存用治具。
(2)該載置部が保存液吸収体を有し、該保存液吸収体上にヒドロキシプロピルセルロースを含有する層を有することを特徴とする、上記(1)に記載の細胞又は組織の凍結保存用治具。

発明の効果

0023

上記(1)の発明によれば、細胞又は組織をガラス化液に浸漬し、細胞又は組織をガラス化液と共に該ガラス化凍結保存用治具に載置して凍結保存した後、該細胞又は組織を融解する際に、細胞又は組織を容易に回収することが可能な凍結保存用治具を提供することができる。さらに、上記(2)の発明によれば、前記した細胞又は組織を容易に剥離、回収できることに加え、ガラス化液の優れた吸収性を有する凍結保存用治具を提供することができる。

図面の簡単な説明

0024

図1は、本発明の細胞又は組織の凍結保存用治具の一例を示す全体図である。
図2は、図1中の載置部の断面構造概略図である。
図3は、図1に示した載置部が保存液吸収体を有する場合の断面構造概略図である。
図4は、図1に示した載置部が保存液吸収体を有する場合の別の一例を示す断面構造概略図である。
図5は、図1に示した載置部が保存液吸収体を有する場合の別の一例を示す断面構造概略図である。

0025

本発明の凍結保存用治具は、細胞又は組織を凍結保存する際に用いられるものである。本明細書中で細胞とは、単一の細胞のみならず、複数の細胞からなる生物細胞集団を含むものである。複数の細胞からなる細胞集団とは単一の種類の細胞から構成される細胞集団でも良いし、複数の種類の細胞から構成される細胞集団でも良い。また、組織とは、単一の種類の細胞から構成される組織でも良いし、複数の種類の細胞から構成される組織でも良く、細胞以外に細胞外マトリックスのような非細胞性物質を含むものでも良い。

0026

本発明の凍結保存用治具は、凍結保存作業に用いるものであり、好ましくはガラス化凍結保存作業に用いるものである。詳細には、本発明の凍結保存用治具は、細胞又は組織が載置された凍結保存用治具を液体窒素等の冷却溶媒に浸漬し凍結させるためのものである。また凍結保存用治具上に載置された細胞又は組織を融解する際には、細胞又は組織を凍結保存用治具と共に冷却媒体から取り出し、融解液中に浸漬させて融解する。本発明の凍結保存用治具を用いると、細胞又は組織を載置した際にこれを確実に保持することができ、また融解時には容易に細胞又は組織を回収できることから、細胞又は組織の凍結保存にかかる作業を容易にかつ確実に行うことができる。本発明の凍結保存用治具は、細胞又は組織の凍結保存用具、細胞又は組織の保存用具、細胞又は組織の凍結保存器具、細胞又は組織の保存用器具言い換えることができる。

0027

本発明の凍結保存用治具は、細胞又は組織を載置する載置部の最表面に、ヒドロキシプロピルセルロースを含有する層(以下、本発明の表面層あるいは単に表面層と記載)を有する。かかる表面層は融解液に対して可溶性であることが好ましい。ここで可溶性とは25℃の融解液に対する表面層の溶解度が0.2質量%以上であることを意味する。本発明の凍結保存用治具は上述の通り、凍結作業時に、保存液と共に細胞又は組織を凍結保存用治具の表面層上に載置した後に、冷却溶媒(例えば液体窒素)に浸漬、凍結し、融解時には凍結した細胞又は組織を凍結保存用治具と共に取り出し、融解液中に浸漬して融解するものである。本発明では、細胞又は組織を融解する際に、表面層の全体又は一部が融解液中に溶解することにより、細胞又は組織が凍結保存用治具の載置部に固着することなく、容易に剥離・回収することが可能となる。

0028

本発明の凍結保存用治具の載置部が保存液吸収体を有し、更に該載置部の最表面に本発明の表面層を有する場合には、上記効果に加えて、該保存液吸収体が余分な保存液を吸収するので、余分な保存液を除くためのその他の操作を特に必要とせず、作業性が格段に向上する。また、そのように操作された細胞又は組織は極少量の保存液に覆われており、凍結作業において速やかに凍結状態にすることができる。さらに、前記したガラス化凍結法においては、保存液が多量の耐凍剤を含有することによる化学的毒性が問題となるが、載置部が保存液吸収体を有する凍結保存用治具によれば、載置された細胞又は組織周辺のガラス化液が極少量となることで、細胞又は組織の生存率の向上が期待できる。

0029

以下に、本発明の凍結保存用治具の構成を説明する。

0030

本発明の凍結保存用治具は、細胞又は組織を載置する載置部の最表面にヒドロキシプロピルセルロースを含有する層を有する。ここで細胞又は組織を載置する載置部の最表面とは、細胞又は組織が保存液と共に載置される表面部分に相当する。本発明において載置部は、本発明の表面層を、各種樹脂フィルム、金属、ガラスゴム等の非吸収性支持体上や、保存液吸収体上に有することが好ましく、特に保存液吸収体上に本発明の表面層を有することが好ましい。なお、本発明において、該表面層は、細胞又は組織を載置する載置部全体において均一な層を形成していなくても良く、例えば海島状やストライプ状の層であっても良い。すなわち、本発明の表面層は、細胞又は組織を保存液と共に載置する箇所の最表面に存在することが重要であり、細胞又は組織が載置されない箇所においては、該表面層が存在していても、存在していなくても良い。

0031

ヒドロキシプロピルセルロースは、水溶性高分子化合物であり、ヒドロキシプロピルセルロースを含有する被膜層を最表面に有することで、融解時に、細胞又は組織が載置部に強固に固着することなく、容易に剥離・回収することが可能となる。本発明においては、様々な分子量のヒドロキシプロピルセルロースを用いることができるが、細胞又は組織の良好な剥離性が得られる観点から、ヒドロキシプロピルセルロースの分子量は、120,000以上が好ましい。また、これらのヒドロキシプロピルセルロースは、単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。ヒドロキシプロピルセルロースは、例えば、日本曹達(株)より市販されている各種グレード入手し、使用することができる。
なお、本明細書における分子量とは、平均分子量を表し、ゲル浸透クロマトグラフィー(所謂GPC法)を用いて測定される値を示す。

0032

本発明の凍結保存用治具が有するヒドロキシプロピルセルロースを含有する層には、他の水溶性高分子化合物を含有することができる。他の水溶性高分子化合物としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロースカルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体デンプンおよびその誘導体ゼラチンカゼインアルギン酸およびその塩、ポリビニルアルコールポリビニルピロリドンスチレンマレイン酸共重合体塩、スチレン・アクリル酸共重合体塩等が挙げられる。中でも、ポリビニルアルコール、アルギン酸およびその塩、ゼラチンは保存液に対する溶解性と適度な被膜形成作用が得られることから好ましく、ポリビニルアルコールは、非生物由来素材であり、かつ細胞又は組織に対しても低毒性であるため、特に好ましい。これらの水溶性高分子化合物は、単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。

0033

本発明の凍結保存用治具が有する表面層が他の水溶性高分子化合物を含有する場合、表面層が含有する水溶性高分子化合物全体に対するヒドロキシプロピルセルロースの含有量が10質量%以上であることが好ましく、より好ましくは15質量%以上である。

0034

本発明の凍結保存用治具が有するヒドロキシプロピルセルロースを含有する層には、上記した他の水溶性高分子化合物以外にも、無機微粒子や、グリセリン等の低分子化合物などを含有することができる。

0035

また、本発明の凍結保存用治具が有する表面層は、融解液に対する溶解度が10質量%を下回らない範囲で、架橋剤を含有することができる。

0036

本発明の凍結保存用治具が有する表面層の固形分量は、0.01〜100g/m2であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10g/m2である。表面層の固形分量が100g/m2を超える場合には、融解液中への成分の溶出・混入が多くなるおそれがあり、好ましくない。一方で、表面層の固形分量が0.01g/m2を下回る場合には、融解時に、細胞又は組織を容易に剥離する効果が得られない場合がある。

0037

本発明において載置部は、細胞又は組織を凍結保存する際に、これらを支持する目的で支持体を有し、該支持体上に表面層を有することが好ましい。かかる支持体(非吸収性支持体)としては、例えば、各種樹脂フィルム、金属、ガラス、ゴム等が挙げられる。このような支持体は1種類の素材からなるものでも良いし、2種類以上の素材からなるものでも良い。中でも樹脂フィルムは、取り扱いの観点で好適に用いられる。樹脂フィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂アクリル樹脂エポキシ樹脂シリコーン樹脂ポリカーボネート樹脂ジアセテート樹脂トリアセテート樹脂、ポリアクリレート樹脂ポリ塩化ビニル樹脂ポリスフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂ポリイミド樹脂ポリアミド樹脂ポリオレフィン樹脂環状ポリオレフィン樹脂等からなる樹脂フィルムが挙げられる。また支持体の全光線透過率が80%以上であると、載置部に載置した細胞又は組織を透過型顕微鏡を用いて容易に確認することができるため好ましい。また、ヘーズ値は50%以下であることが好ましい。さらに、温度伝導性に優れ、急速な凍結を可能にするという観点で金属製支持体も好適に用いることができる。金属製支持体の具体例としては、銅、銅合金アルミニウムアルミニウム合金、金、金合金、銀、銀合金、鉄、ステンレスなどを挙げることができる。上記した支持体の厚さは10μm〜10mmであることが好ましい。また、目的に応じて、支持体の表面をコロナ放電処理のような電気的な方法や、化学的な方法により易接着処理することもでき、さらには粗面化することもできる。さらに、支持体と表面層の間に別の層を一又は複数有していても良いし、支持体の裏側に、別の層を一又は複数有していても良い。また、表面層を支持体の表裏に設けることもできる。支持体は後述する保存液吸収体であっても良い。

0038

次に、本発明の凍結保存用治具が保存液吸収体上に、ヒドロキシプロピルセルロースを含有する表面層を有する場合について説明する。

0039

前述の通り、本発明の細胞又は組織の載置部が支持体として保存液吸収体を有する場合、細胞又は組織に付着した保存液の量が多くても保存液吸収体が保存液を除くことができるため、保存液の除去操作が不要となり作業性が格段に向上する。またそのように操作された細胞又は組織は極少量の保存液に覆われており、凍結作業する場合でも速やかに凍結状態にすることができる。さらに、前記したガラス化凍結法においてはグリセロール、エチレングリコール、DMSO(ジメチルスルホキシド)などの耐凍剤を多量に含む水溶液が保存液として利用され、この保存液には多量の耐凍剤による化学的毒性が存在するが、載置部が保存液吸収体を有する凍結保存用治具によれば、載置された細胞又は組織周辺のガラス化液が極少量となることで、細胞又は組織の生存率の向上が期待できる。したがって保存液吸収体上に該表面層を有する凍結保存用治具は、ガラス化凍結保存用治具として好適である。

0040

本発明において、載置部が保存液吸収体を有する場合には、該保存液吸収体が有する細孔を閉塞することなく、載置部の最表面に表面層を設けることが好ましい。また、保存液吸収体の吸収性が著しく低下しない範囲であれば、保存液吸収体の細孔内部に、表面層が存在することも可能である。

0041

本発明において、載置部が保存液吸収体を有する場合には、表面層の固形分量が多くなるほど、保存液吸収体が有する細孔が狭くなるために、保存液の吸収性は低下する傾向にある。一方、融解作業の際の細胞又は組織の剥離性は、表面層の固形分量が多くなるほど優位である。用いる保存液吸収体の厚み、細孔径空隙率によるが、載置部が保存液吸収体を有する場合における表面層の固形分量は、上記性能のバランスを考え、適宜調整でき、好ましくは0.1〜5g/m2である。

0042

本発明の凍結保存用治具が有する保存液吸収体としては、繊維からなるシート多孔性樹脂シート多孔性金属シート、および多孔性金属酸化物シート等の各種シートが挙げられる。本発明における「多孔性」とは、上記したシートが表面に気孔(細孔)を有する構造体であることを意味し、シート表面及び内部に連続的な気孔を有する構造体であることがより好ましい。また保存液吸収体(上記した各種シート)の厚みは10μm〜5mmであることが好ましく、より好ましくは20μm〜2.5mmである。保存液吸収体が、薄いシートである場合には、補強部材として前記した非吸収性支持体を用いることができる。

0043

本発明において、保存液吸収体として用いる繊維からなるシートとしては、紙又は不織布が例示され、紙はバインダーなどの結着剤成分の紙全体に占める割合が10質量%以下である紙が好ましく、より好ましくは5質量%以下であり、更に3質量%以下である紙が好ましい。これにより優れた保存液の吸収性が得られる。また、該紙に含まれる製紙用薬品の紙全体に占める割合は1質量%以下であることが好ましい。通常紙に含まれている製紙用薬品のうち、例えば蛍光増白剤染料カチオン系のサイズ剤などには細胞への影響が懸念される場合がある。

0044

繊維からなるシートが紙である場合、密度が0.1〜0.6g/cm3であり、坪量が10〜130g/m2の紙であることが好ましい。特に密度が0.12〜0.3g/cm3であり、坪量が10〜100g/m2である紙は、保存液の吸収性に優れ、さらには、透過型顕微鏡を用いて本体部上に載置した細胞又は組織を観察することができるような、細胞又は組織の視認性に優れた凍結保存用治具を提供することが可能となるため好ましい。

0045

繊維からなるシートが不織布である場合、該不織布が含有する繊維としては、セルロース繊維、セルロース繊維からなる再生繊維であるレーヨン繊維キュプラ繊維、さらにはセルロース繊維からの半合成繊維であるアセテート繊維ポリエステル繊維ナイロン繊維アクリル繊維ポリプロピレン繊維ポリエチレン繊維ポリ塩化ビニル繊維ビニリデン繊維、ポリウレタン繊維ビニロン繊維ガラス繊維絹繊維などが挙げられ、これら繊維を各種混合した不織布も用いることができる。中でもセルロース繊維、セルロース繊維由来の繊維でセルロース再生繊維であるレーヨン繊維やキュプラ繊維、更にはセルロース繊維からの半合成繊維であるアセテート繊維が好ましい。

0046

繊維からなるシートが不織布である場合、密度が0.1〜0.4g/cm3であり、坪量が10〜130g/m2の不織布であることが好ましい。特に密度が0.12〜0.3g/cm3であり、坪量が10〜100g/m2である不織布は、保存液の吸収性に優れ、さらには細胞又は組織の視認性に優れた凍結保存用治具を提供することが可能となるため好ましい。

0047

保存液吸収体として用いられる不織布においても前記した紙と同様に、バインダーなどの結着剤成分の不織布に占める割合が10質量%以下である不織布が好ましく、より好ましくは5質量%以下であり、更に3質量%以下である不織布が好ましい。特に結着剤を含有しない不織布が好ましい。

0048

不織布は紙と異なり様々な製造方法があるが、上記した結着剤成分が低減された不織布としては、スパンボンド法メルトブロー法で製造された不織布、更には湿式法又は乾式法で繊維を並べて後、水流交絡法又はニードルパンチ法で製造された不織布が好適に使用できる。また上記した通り、本発明において不織布が含有する好ましい繊維としては、セルロース繊維、セルロース繊維由来の繊維でセルロース再生繊維であるレーヨン繊維やキュプラ繊維、更にはセルロース繊維からの半合成繊維であるアセテート繊維が挙げられるが、これら繊維を用いて製造する場合は、湿式法、乾式法関わらず水流交絡法又はニードルパンチ法での製造方法が好適である。

0049

本発明において、保存液吸収体として用いる多孔性樹脂シートとしては、例えば特公昭42−13560号公報や、特開平08−283447号公報に記載される、少なくとも一軸方向に延伸し、樹脂の融点以上に加熱し焼結することで得た微細繊維状構造により多孔質構造を形成した樹脂シート、特開2009−235417号公報に記載される、乳化重合又は粉砕等の方法によって得られた熱可塑性樹脂固体粉末金型充填し、加熱、焼結して粉末粒子表面を融着させて冷却することにより、多孔質構造を形成した樹脂シート等が挙げられる。多孔性樹脂シートを保存液吸収体として用いた場合、保存液の吸収性に優れ、さらには細胞又は組織の視認性に優れた凍結保存用治具を提供することが可能となるため、好ましい。

0050

上記した多孔性樹脂シートを形成する樹脂としては、低密度ポリエチレン高密度ポリエチレン超高分子ポリエチレン等の各種ポリエチレンポリプロピレンポリメチルメタクリレートポリスチレンポリテトラフルオロエチレンポリビニルジフロライド等のフッ素樹脂エチレン酢酸ビニル共重合体ポリアミド、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエンアクリロニトリル三元共重合体ポリカーボネートポリ塩化ビニル等が挙げられる。中でもポリテトラフルオロエチレンやポリビニリデンジフロライド等のフッ素樹脂は、細胞又は組織をガラス化液と共に載置部に載置した場合、該多孔性樹脂シートの光透過性が高くなり、透過顕微鏡観察下での細胞又は組織の視認性が飛躍的に高まり、細胞又は組織の視認性にとりわけ優れた凍結保存用治具を提供することが可能となるため好適である。また多孔性樹脂シートとしては、理化学実験用途や研究用途として市販されている、濾過用メンブレンフィルターも使用できる。

0051

本発明において、保存液吸収体として用いる多孔性金属シートとしては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、金、金合金、銀、銀合金、錫、亜鉛、鉛、チタンニッケル、ステンレス等の金属からなる多孔性金属シートが挙げられる。また多孔性金属酸化物シートとしては、シリカアルミナジルコニウム石英ガラスなどの金属酸化物からなる多孔性金属酸化物シートを好ましく利用することができる。また多孔性金属シートおよび多孔性金属酸化物シートは、上記した金属および金属酸化物をそれぞれ2種類以上含有する多孔性シートであっても良い。中でも多孔性金属酸化物シートは、細胞又は組織の視認性に優れた凍結保存用治具を提供することが可能となるため、好ましい。

0052

本発明において、保存液吸収体として用いる多孔性金属シート、および多孔性金属酸化物シートの製造方法としては、一般に知られた方法を使用することができる。保存液吸収体が多孔性金属シートの場合には、粉末冶金法スペーサー法などの方法を使用することができる。また、樹脂射出成型と粉末冶金法を組み合わせた所謂パウダースペースホルダー法も好ましく使用できる。例えば、国際公開第2006/041118号パンフレットや特許第4578062号公報に記載された方法などを用いることができる。より具体的には、金属粉末スペーサーとなる樹脂を混合後、圧力をかけて成型した後、高温環境下焼成することで、金属粉末を焼き固め、スペーサーとなる樹脂を気化させて、多孔性金属シートを得ることができる。パウダースペースホルダー法等を用いる場合には、金属粉末とスペーサーとなる樹脂に加えて、樹脂のバインダーを混合することができる。また、金属粉末を高温で加熱した後に、ガス注入して空隙を作製する発泡溶融法ガス膨張法などの金属多孔質体の製造方法も使用することができる。さらには、発泡剤を用いて金属多孔質体を製造するスラリー発泡法のような製造方法も使用することができる。保存液吸収体が多孔性金属酸化物シートの場合には、例えば、特開2009−29692号公報や特開2002−160930号公報に記載された方法などを用いることができる。

0053

上記した多孔性樹脂シート、多孔性金属シート、および多孔性金属酸化物シート等の多孔質体の表面は、表面層との親和性を高めるために、親水化処理することもできる。親水化処理の方法としては、グラフト改質法非溶出性親水性物質を塗布することによるコーティング法コロナ放電プラズマ処理エキシマレーザー等の各種エネルギーを用いた一般的な表面改質方法を使用することができる。

0054

保存液吸収体が、上記した多孔性樹脂シート、多孔性金属シート、および多孔性金属酸化物シート等の多孔質体である場合には、該多孔質体の細孔径は、0.02〜130μmであることが好ましく、より好ましくは0.05〜60μmである。細孔径が0.02μm未満の場合、保存液の滴下時に保存液の吸収性能が十分でない場合がある。また、多孔性シートの製造が難しいという問題がある。一方、細孔径が130μmを超える場合、保存液の吸収性能が十分でない場合がある。なお、多孔質体の細孔径は、多孔性樹脂シートの場合には、バブルポイント試験により測定される最も大きい細孔の直径である。また多孔性金属シートおよび多孔性金属酸化物シートの場合には、該多孔質体の表面及び断面の画像観察から測定した平均細孔直径である。

0055

保存液吸収体の空隙率は20容量%以上であることが好ましく、より好ましくは30容量%以上である。また保存液吸収体が、上記した多孔性樹脂シート、多孔性金属シート、および多孔性金属酸化物シート等の多孔質体である場合、多孔質体の内部の気孔は、厚み方向のみならず、厚み方向に対して垂直な方向に対しても連続的な構造であることが好ましい。このような構造を有すると、多孔質体内部の気孔を有効に用いることができるために、保存液の高い吸収性能が得られる。保存液吸収体の厚み、多孔質体の空隙率は、用いる細胞又は組織の種類や細胞又は組織と共に滴下される保存液の滴下量等に応じて、適宜選択することができる。

0056

上記した空隙率とは、以下の式で定義される。ここで空隙容量Vは水銀ポロシメーター測定器名称Autopore II 9220製造者micromeritics instrument corporation)を用い測定・処理された、保存液吸収体における細孔半径3nmから400nmまでの累積細孔容積(ml/g)に、保存液吸収体の乾燥固形分量(g/平方メートル)を乗ずることで、単位面積(平方メートル)当たりの数値として求めることができる。また保存液吸収体の厚みTは保存液吸収体の断面を電子顕微鏡撮影し測長することで得ることができる。
P=(V/T)×100(%)
P:空隙率(%)
V:空隙容量(ml/m2)
T:厚み(μm)

0057

本発明において、載置部が保存液吸収体に加えて補強部材として非吸収性支持体を有する場合には、保存液吸収体と非吸収性支持体との間に、接着層を設けることができる。接着層としては、湿気硬化性接着物質に代表されるような瞬間接組成物ホットメルト接着組成物光硬化性接着組成物などを含有することが可能であり、例えば、ポリビニルアルコール、ヒドロキシセルロース、ポリビニルピロリドン、澱粉糊のような水溶性高分子化合物、酢酸ビニル系樹脂アクリル系樹脂エポキシ系樹脂ウレタン系樹脂エラストマー系樹脂シアノアクリレート系樹脂フッ素系樹脂シリコーン系樹脂ニトロセルロース系樹脂、ニトリルゴム系樹脂、スチレン—ブタジエン系樹脂ユリア系樹脂、スチレン系樹脂フェノール系樹脂ポリイミド系樹脂ポリアミド系樹脂ポリエステル系樹脂ビスマレイミド系樹脂、オレフィン系樹脂EVA系樹脂などの非水溶性樹脂を含有する組成物が好ましく利用できる。接着層は、一種類の樹脂を含有してもよいし、複数種類の樹脂を含有してもよい。接着層の固形分量は、0.01〜100g/m2の範囲が好ましく、更に0.1〜50g/m2の範囲がより好ましい。

0058

本発明の凍結保存用治具が有する載置部の面積は、細胞又は組織と共に滴下される保存液の滴下量等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、例えば、滴下する保存液1μLにつき1mm2以上とすることが好ましく、2〜400mm2とすることがより好ましい。また、同一の凍結保存用治具において、載置部が、非吸収性支持体上に保存液吸収体を複数有する形態である場合には、連続している1つの保存液吸収体部分が前記した面積であることが好ましい。

0059

以上、本発明の凍結保存用治具の載置部について説明してきた。本発明の凍結保存用治具は、載置部と共に把持部を有していても良い。把持部を有すると、凍結保存作業時及び融解作業時の作業性が良好となるため、好ましい。

0060

図1は本発明の細胞又は組織の凍結保存用治具の一例を示す全体図である。図1において凍結保存用治具6は、把持部1と載置部2から構成される。

0061

把持部1は耐液体窒素素材であることが好ましい。このような素材としては、例えばアルミ、鉄、銅、ステンレス合金などの各種金属ABS樹脂ポリプロピレン樹脂ポリエチレン樹脂、フッ素系樹脂や各種エンジニアプラスチック、更にはガラスなどを好適に用いることができる。図1中、把持部1は円柱形であるが、その形状は任意である。また、後述するように、細胞又は組織を直接液窒素に接触させないことを目的に、凍結前に細胞又は組織を付着させた載置部2にキャップを被せることがあるが、この場合、把持部1を、載置部2を有さない側から、載置部2を有する側に向かって、円柱の径が連続的に小さくなる形状とすることで、キャップを被せる際の作業性を向上させることも可能である。載置部2の形状は、ハンドリング上、短冊状又はシート状であることが好ましい。

0062

図1の把持部1と載置部2の接続方法について説明する。把持部1が樹脂の場合、例えば、成形加工する時にインサート成形により載置部2を把持部1に接続することができる。更に、把持部1に図示しない構造体挿入部を作製して接着剤にて載置部2を接続することができる。接着剤は様々なものが使用できるが、低温に強いシリコーン系フッ素系の接着剤が好適に用いることができる。

0063

図2は、図1中の載置部の断面構造概略図である。図2中、載置部2aは、支持体4上に表面層3を有する構造である。このような構造の載置部2aを得るためには、例えば、支持体上に、ヒドロキシプロピルセルロースを含有する塗布液スライドホッパー方式で塗布する方法や、ディップコーティングで塗布する方法などの製造方法を用いることができる。

0064

図3は、図1に示した載置部が保存液吸収体を有する場合の別の一例を示す断面構造概略図である。図3中、載置部2bは、保存液吸収体5と保存液吸収体5上に表面層3を有する構造である。このような構造の載置部2bを得るためには、例えば、前記した塗布液をスライドホッパー方式で塗布する製造方法を用いることができる。

0065

図4は、図1に示した載置部が保存液吸収体を有する場合の別の一例を示す断面構造概略図である。図4中、載置部2cは、保存液吸収体5の多孔体全体にわたって表面層3を有する構造である。このように、保存液吸収体上に表面層が存在する場合、表面層は保存液吸収体表面において連続した層を形成する必要はなく、保存液吸収体の孔表面に存在しても良い。この構造は、多孔体の細孔を閉塞しないため、凍結時のガラス化液の吸収性と融解時の細胞又は組織の剥離性を両立することができるため好ましい。この態様においても、微視的には載置部の最表面には本発明の表面が存在するので、図4は本発明の一例を示すものであるといえる。このような構造の載置部2cを得るためには、例えば、ディップコーティングで塗布する製造方法を用いることができる。

0066

図5は、図1に示した載置部が保存液吸収体を有する場合の別の一例を示す断面構造概略図である。図5中、載置部2dは、保存液吸収体5の多孔体全体にわたって表面層3を有する図4の形態に加えて、支持体4を有する。この構造の場合、例えば保存液吸収体5に用いる多孔体が自立性に乏しい場合であっても、凍結時・融解時の操作をより確実に行うことができる。

0067

本発明の、細胞又は組織の凍結保存用治具により、細胞又は組織を長期凍結保存する場合、前述の通り、細胞又は組織を外界遮断するためにキャップを被せる、又は該凍結保存用治具を任意の形状の容器に入れて密閉することも可能である。液体窒素が滅菌されておらず、細胞又は組織を直接液体窒素に接触させて凍結させる場合においては、凍結保存用治具が滅菌されていても滅菌状態保証できない場合がある。よって凍結前に細胞又は組織を付着させた載置部にキャップをして、又は凍結保存用治具を容器中に密閉して、細胞又は組織を直接液体窒素に接触させないで凍結させることがある。また、欧州など海外先進国では前記の様に液体窒素に直接接触させない凍結方法が主流である。このような理由からキャップ及び容器は耐液体窒素性のある素材である各種金属、各種樹脂、ガラス、セラミックなどで作製することが好ましい。形状としては特に限定されず、例えば、キャップは、鉛筆用のキャップのような半紡錘状又はドーム状等のキャップ、円柱状のストローキャップなど本体部と接触せず、細胞又は組織を外界と遮断できるような形状ならどのような形状でもよい。容器は、載置された細胞又は組織に接触せずに、凍結保存用治具を被包又は収納して密閉できるものであればよく、その形状は特に限定されない。

0068

本発明においては、本発明の効果を損なわない限り、凍結保存用治具をこのような載置部上の細胞又は組織を外界と遮断することができるキャップ又は容器と組み合わせて使用することができる。また、このようなキャップ又は容器と組み合わせて使用される凍結保存用治具も、本発明に包含される。

0069

本発明の凍結保存用治具は、例えば、クライオトップ法において好適に用いられるものである。また、従来のクライオトップ法は、通常、単一の細胞又は10個未満の少数の細胞の保存に用いられるが、本発明の凍結保存用治具は、より多くの細胞の保存(例えば、10〜1000000個の細胞の保存)においても好適に用いることができる。さらには、複数の細胞からなるシート状の細胞(所謂細胞シート)の保存にも好適に用いることができる。本発明の凍結保存用治具を用いると、細胞又は組織の凍結保存作業において、細胞又は組織を凍結後に融解する際に、細胞又は組織を容易に回収することができる。また、載置部が保存液吸収体を有することにより、上記した効果に加えて、細胞又は組織を凍結する際に、細胞又は組織の外周に付着した余分なガラス化液を吸収することから、細胞又は組織の凍結時及び融解時に細胞外のガラス化液による損傷を受けにくく、細胞又は組織を優れた生存率で凍結保存することができる。

0070

本発明の凍結保存用治具を用いて細胞又は組織を凍結保存する方法は特に限定されず、例えば、まず保存液に浸漬した細胞又は組織を保存液と共に載置部上に滴下し、該細胞又は該組織の周囲に付着している余分な保存液をピペットなどを用いて可能な限り除く。この時、該凍結保存用治具の載置部が保存液吸収体を有する場合には、上記操作は必要なく、自動的に余分な保存液が除かれる。次いで、前記細胞又は前記組織を載置部に保持させたまま液体窒素等の中に浸漬することにより、細胞又は組織を凍結することができる。この際、前記した載置部上の細胞又は組織を外界と遮断することができるキャップを載置部に装着して、又は凍結保存用治具を前記した容器に密閉して、液体窒素等の中に浸漬することもできる。保存液は、通常卵子、胚等の細胞の凍結のために使用されるものを使用でき、例えば、上述したリン酸緩衝生理食塩水等の生理的溶液に耐凍剤(グリセロール、エチレングリコール等)を含有させることで得られた保存液や、グリセロールやエチレングリコール、DMSO(ジメチルスルホキシド)などの各種耐凍剤を多量に(少なくとも保存液の全質量に対して10質量%以上、より好ましくは20質量%以上)含むガラス化液を使用できる。融解作業の際は、液体窒素等の冷却溶媒中から、該凍結保存用治具を取り出し、凍結された細胞又は組織を載せた載置部を融解液中に浸漬させ、その後、細胞又は組織を回収する。

0071

本発明の凍結保存用治具を用いて凍結保存することができる細胞として、例えば、哺乳類(例えば、人(ヒト)、牛、ウサギラットマウス等)の卵子、胚、精子等の生殖細胞;人工多能性幹細胞(iPS細胞)、胚性幹細胞(ES細胞)等の多能性幹細胞が挙げられる。また、初代培養細胞継代培養細胞、及び細胞株細胞等の培養細胞が挙げられる。また、細胞は、一又は複数の実施形態において、線維芽細胞ガン・肝ガン細胞等のガン由来細胞上皮細胞血管内皮細胞リンパ管内皮細胞神経細胞軟骨細胞組織幹細胞、及び免疫細胞等の接着性細胞が挙げられる。さらに、凍結保存することができる組織として、同種又は異種の細胞からなる組織、例えば、卵巣、皮膚、角膜上皮歯根膜心筋等の組織が挙げられる。本発明は、特にシート状構造を有する組織(例えば、細胞シート、皮膚組織など)の凍結保存に好適である。本発明の凍結保存用治具は、直接生体から採取した組織だけでなく、例えば、生体外で培養し増殖させた培養皮膚、生体外で構築したいわゆる細胞シート、特開2012−205516号公報で提案されている三次元構造を有する組織モデルのような人工の組織の凍結保存についても、好適に用いることができる。本発明の凍結保存用治具は、上記のような細胞又は組織の凍結保存用治具として好適に用いられる。

0072

以下に本発明を実施例によりさらに詳細に示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。

0073

(実施例1)
支持体として易接着処理されたPETフィルム(全光線透過率91%、ヘーズ値5.5%)を用い、該支持体上に、ヒドロキシプロピルセルロースである日本曹達(株)製セルニー登録商標)L(分子量140,000)の1質量%水溶液を乾燥時の固形分量が1g/m2になるように、スライドホッパー方式で塗布し、室温乾燥後、120℃で40時間加熱処理を行い、支持体上に表面層を有する図2に示す形態の載置部を作製した。この載置部を1.5mm×20mmの大きさ(30mm2)に裁断し、ABS樹脂製の把持部と接合させ、図1に示す形態で実施例1の凍結保存用治具を作製した。

0074

(比較例1)
実施例1の凍結保存用治具の作製において、PETフィルムをそのまま用いて載置部とした以外は同様にして、比較例1の凍結保存用治具を作製した。

0075

スフェアの調整>
細胞又は組織の剥離性の評価に用いるスフェアは以下のように調整した。マウス胚性線維芽細胞であるMEF細胞を培養シャーレ上で培養後、トリプシン処理により剥離、回収した。その後、住友ベークライト(株)製PrimeSurface(登録商標)96Uプレートに50細胞/ウェル細胞数播種し、浮遊培養することでスフェア形成誘導した。培養3日後に直径約100μmのスフェアを得た。

0076

<スフェアの凍結>
上記方法により調整したスフェアを回収し、平衡化液(7.5容量%DMSO(ジメチルスルホキシド)、7.5容量%エチレングルコール、14容量%ウシ胎児血清、71容量%Medium199培地)に約10分間浸漬させた後に、ガラス化液(15容量%DMSO、15容量%エチレングルコール、14容量%ウシ胎児血清、56容量%Medium199培地)に1分間浸漬させ、スフェアを実施例1及び比較例1の凍結保存用治具の載置部上にそれぞれ載置し、透過型顕微鏡観察下で余分なガラス化液をできるだけ除いた。その後、液体窒素中に浸漬し、スフェアをガラス化凍結させた。凍結させた凍結保存用治具は、融解するまで、液体窒素保存容器中で保管した。

0077

<細胞又は組織の剥離性の評価>
スフェアを載置した実施例1および比較例1の凍結保存用治具を液体窒素中からそれぞれ取り出し、温度37℃の融解液(Medium199培地に1Mスクロースを添加した溶液)に浸漬させた。融解液浸漬後60秒間は、凍結保存用治具上のスフェアの様子を透過型光学顕微鏡で観察しながら、スフェアが剥離する様子を評価した。融解液浸漬後60秒間で剥離しなかった場合は、60秒経過後に、デバイスをゆする又はピペットを用いたピペッティングによってスフェアの回収を試みた。これらの回収の作業性を以下の基準で評価した。これらの結果を表1の「細胞又は組織の剥離性の評価」の項目に示す。

0078

細胞又は組織の剥離性は以下の基準で評価した。
◎:凍結保存用治具を融解液に浸漬後、60秒以内に、スフェアが載置部から剥離し、容易に回収することができた。
○:凍結保存用治具を融解液に浸漬後、60秒経過後に、デバイスをゆすって、スフェアを載置部から剥離し、回収することができた。
△:凍結保存用治具を融解液に浸漬後、60秒経過後に、デバイスをゆすることではスフェアが剥離しなかったため、ピペッティングにより剥離し、回収することができた。
×:スフェアを回収することが容易にできないほどに固着しており、剥離できなかったか、回収の際にスフェアを構成する細胞がバラバラになってしまった。

0079

0080

表1の結果から、本発明の凍結保存用治具は、融解時に優れた剥離性を示すことが判る。

0081

(実施例2)
支持体としてPETフィルム(全光線透過率91%、ヘーズ値5.5%)を用い、該支持体上に接着層として、ヘンケルジャパン(株)製のホットメルトウレタン樹脂Purmelt(登録商標)QR 170−7141Pを乾燥時の固形分量30g/m2となるように塗布した。なお、接着層の塗布は載置部領域には行わず、周辺のみとした。接着層が完全硬化する前に、保存液吸収体として、アドバンテック東洋(株)製の親水化処理されたポリテトラフルオロエチレン多孔体(細孔径0.2μm、空隙率71%、厚み35μm)を貼り合わせた。このようにして得られた積層体を、ヒドロキシプロピルセルロースである日本曹達(株)製セルニーSL(分子量100,000)の2質量%水溶液に浸漬することで、ディップコーティングし、室温乾燥後、120℃で40時間加熱処理を行い、図5に示す形態の表面層を有する載置部を作製した。なお、表面層の固形分量は、1.6g/m2である。実施例1と同様に、この載置部を1.5mm×20mmの大きさに裁断し、その後ABS樹脂製の把持部と接合させ、図1に示す形態で実施例2の凍結保存用治具を作製した。

0082

(実施例3)
ヒドロキシプロピルセルロースである日本曹達(株)製セルニーL(分子量140,000)の1質量%水溶液を用いてディップコーティングを行った以外は、実施例2と同様にして、実施例3の凍結保存用治具を作製した。なお、実施例3の凍結保存用治具が有する表面層の固形分量は、1.2g/m2である。

0083

(実施例4)
ヒドロキシプロピルセルロースである日本曹達(株)製セルニーLの2質量%水溶液を用いてディップコーティングを行った以外は、実施例2と同様にして、実施例4の凍結保存用治具を作製した。なお、実施例4の凍結保存用治具が有する表面層の固形分量は、1.6g/m2である。

0084

(実施例5)
ヒドロキシプロピルセルロースである日本曹達(株)製セルニーH(分子量910,000)の2質量%水溶液を用いてディップコーティングを行った以外は、実施例2と同様にして、実施例5の凍結保存用治具を作製した。なお、実施例5の凍結保存用治具が有する表面層の固形分量は、1.6g/m2である。

0085

(実施例6)
ヒドロキシプロピルセルロースである日本曹達(株)製セルニーLとセルニーHをそれぞれ1.5質量%と0.5質量%含有する水溶液を用いてディップコーティングを行った以外は、実施例2と同様にして、実施例6の凍結保存用治具を作製した。なお、実施例6の凍結保存用治具が有する表面層の固形分量は、1.6g/m2である。

0086

(実施例7)
ヒドロキシプロピルセルロースである日本曹達(株)製セルニーLとポリビニルアルコールである日本合成化学工業(株)製のゴーセネックス(登録商標)WO−320R(ケン化度88.3mol%)をそれぞれ2質量%と1質量%含有する水溶液を用いてディップコーティングを行った以外は、実施例2と同様にして、実施例7の凍結保存用治具を作製した。なお、実施例7の凍結保存用治具が有する表面層の固形分量は、1.8g/m2である。

0087

(比較例2)
実施例2の凍結保存用治具の作製において、ディップコーティングを行わなかった以外は実施例2と同様にして、表面層を有さない比較例2の凍結保存用治具を作製した。

0088

<保存液の吸収性の評価>
先の実施例1と比較例1での凍結作業と同様の方法で、平衡化液、ガラス化液に順に浸漬させたスフェアを0.3μLのガラス化液と共に、実施例2〜7及び比較例2の凍結保存用治具が有する載置部上にオリジオ社製ストリッパーピペッターを用いて滴下した。滴下後のガラス化液の吸収の様子について透過型光学顕微鏡を用いて観察しながら、評価したところ、実施例2〜7及び比較例2の凍結保存用治具は、スフェア周辺の余分なガラス化液が数秒以内に吸収される、良好な吸収性を示した。

0089

<融解作業と剥離性の評価>
実施例2〜7及び比較例2の凍結保存用治具を用いた融解作業と剥離性の評価は、先の実施例1と比較例1の各凍結保存用治具と同様の方法にて評価した。この結果を表2の「細胞又は組織の剥離性の評価」の項目に示す。

0090

実施例

0091

表2の結果から、本発明の凍結保存用治具によって、融解時の優れた剥離性に加えて、ガラス化液の優れた吸収性が得られることが判る。

0092

本発明は、牛などの家畜や動物の胚移植や人工授精、人への人工授精などの他、iPS細胞、ES細胞、一般に用いられている培養細胞、生体から採取した検査用又は移植用の細胞又は組織、生体外で培養した細胞又は組織などの凍結保存に用いることができる。

0093

1把持部
2、2a〜2d 載置部
3表面層
4支持体
5保存液吸収体
6凍結保存用治具

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