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技術 高Mn鋼およびその製造方法

出願人 JFEスチール株式会社
発明者 仲道治郎植田圭治泉大地中島孝一
出願日 2018年4月4日 (2年10ヶ月経過) 出願番号 2018-072660
公開日 2019年10月24日 (1年3ヶ月経過) 公開番号 2019-183203
状態 特許登録済
技術分野 鋼の加工熱処理
主要キーワード 遅延領域 資材置き場 脱酸プロセス 厚み中心 極低温環境 基地相 加工変形 矯正作業
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2019年10月24日)のものです。
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図面 (1)

課題

母材および溶接熱影響部の低温靭性に優れた高Mn鋼において、さらに優れた延性を与えるための方途について提案する。

解決手段

C:0.10〜0.70%、Si:0.05〜1.0%、Mn:15〜30%、P:0.030%以下、S:0.0070%以下、Al:0.01〜0.07%、Cr:2.5〜7.0%、N:0.0050〜0.0500%およびO:0.0050%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物成分組成を有し、かつ、オーステナイト基地相とし、面積率で50%以上80%以下の微細結晶域が残存するミクロ組織とし、該ミクロ組織のCr炭化物量を0.04%以下とする。

概要

背景

液化ガス貯槽用構造物熱間圧延鋼板を用いる場合、使用環境極低温となるため、鋼板は高強度であることに加えて、極低温での靱性に優れることも要求される。例えば、液化天然ガス貯槽に熱間圧延鋼板を使用する場合は、液化天然ガスの沸点:−164℃以下で優れた靱性が確保されている必要がある。鋼材低温靱性が劣ると、極低温貯槽用構造物としての安全性を維持できなくなる可能性があるため、適用される鋼材に対する低温靱性の向上に対する要求は強い。

この要求に対して、従来、極低温で脆性を示さないオーステナイトを鋼板の組織とするオーステナイト系ステンレス鋼や9%Ni鋼、もしくは5000系アルミニウム合金が使用されてきた。しかしながら、合金コスト製造コストが高いことから、安価で極低温靱性に優れる鋼材に対する要望がある。

そこで、従来の極低温用鋼代わる新たな鋼材として、比較的安価なオーステナイト安定化元素であるMnを多量に添加した高Mn鋼極低温環境構造用鋼として使用することが、例えば特許文献1に提案されている。

特許文献1には、オーステナイト粒径を適切なサイズに制御して結晶粒界に生成する炭化物破壊の起点や亀裂の伝播経路となることを回避する技術が提案されている。また、特許文献2では、Mnの偏析を一定以上に抑えることで、低温靱性が向上する技術が提案されている。

概要

母材および溶接熱影響部の低温靭性に優れた高Mn鋼において、さらに優れた延性を与えるための方途について提案する。C:0.10〜0.70%、Si:0.05〜1.0%、Mn:15〜30%、P:0.030%以下、S:0.0070%以下、Al:0.01〜0.07%、Cr:2.5〜7.0%、N:0.0050〜0.0500%およびO:0.0050%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物成分組成を有し、かつ、オーステナイトを基地相とし、面積率で50%以上80%以下の微細結晶域が残存するミクロ組織とし、該ミクロ組織のCr炭化物量を0.04%以下とする。なし

目的

本発明は、母材および溶接熱影響部の低温靭性に優れた高Mn鋼において、さらに優れた延性を与えるための方途について提案することを目的とする

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

質量%で、C:0.10〜0.70%、Si:0.05〜1.0%、Mn:15〜30%、P:0.030%以下、S:0.0070%以下、Al:0.01〜0.07%、Cr:2.5〜7.0%、N:0.0050〜0.0500%およびO:0.0050%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物成分組成を有し、かつ、オーステナイト基地相とし、面積率で50%以上80%以下の微細結晶域が残存するミクロ組織を有し、該ミクロ組織はCr炭化物量が0.04%以下である高Mn鋼

請求項2

前記成分組成は、さらに質量%で、Mo:2.0%以下、V:2.0%以下、W:2.0%以下、REM:0.0010〜0.0200%およびB:0.0005〜0.0020%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する請求項1に記載の高Mn鋼。

請求項3

請求項1または2に記載の成分組成を有する鋼素材を、1100℃以上1300℃以下の温度域に加熱し、仕上げ圧延終了温度が890℃以上980℃以下、かつ最終圧下率が13%以上17%以下となる熱間圧延を施し、該仕上圧延終了温度から650℃までの温度域における平均冷却速度が3℃/s以下の冷却処理を行う高Mn鋼の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、例えば液化ガス貯槽タンク等の、極低温環境で使用される構造用鋼に供して好適な、特に低温での靭性に優れた高Mn鋼およびその製造方法に関する。

背景技術

0002

液化ガス貯槽用構造物熱間圧延鋼板を用いる場合、使用環境極低温となるため、鋼板は高強度であることに加えて、極低温での靱性に優れることも要求される。例えば、液化天然ガス貯槽に熱間圧延鋼板を使用する場合は、液化天然ガスの沸点:−164℃以下で優れた靱性が確保されている必要がある。鋼材低温靱性が劣ると、極低温貯槽用構造物としての安全性を維持できなくなる可能性があるため、適用される鋼材に対する低温靱性の向上に対する要求は強い。

0003

この要求に対して、従来、極低温で脆性を示さないオーステナイトを鋼板の組織とするオーステナイト系ステンレス鋼や9%Ni鋼、もしくは5000系アルミニウム合金が使用されてきた。しかしながら、合金コスト製造コストが高いことから、安価で極低温靱性に優れる鋼材に対する要望がある。

0004

そこで、従来の極低温用鋼代わる新たな鋼材として、比較的安価なオーステナイト安定化元素であるMnを多量に添加した高Mn鋼を極低温環境の構造用鋼として使用することが、例えば特許文献1に提案されている。

0005

特許文献1には、オーステナイト粒径を適切なサイズに制御して結晶粒界に生成する炭化物破壊の起点や亀裂の伝播経路となることを回避する技術が提案されている。また、特許文献2では、Mnの偏析を一定以上に抑えることで、低温靱性が向上する技術が提案されている。

先行技術

0006

特開2016−196703号公報
特開2017−71817号公報

発明が解決しようとする課題

0007

上記に記載した液化ガス貯槽用構造物などの使途では、使用する鋼材に高い加工性を備える必要があるため、低温靭性に加えて延性を確保することが重要になる。この延性について特許文献1および2に記載の技術では何も検証されていない。また、特許文献1に記載の高Mn鋼材は、厚みが15〜50mm程度であるが、例えば用途によっては、15mm未満特には10mm以下の厚みが要求される。このような薄板を製造する際、特許文献1に例示された、熱間圧延の終了後に加速冷却を行う手法では、得られる鋼板に反りや歪が発生し易く、形状矯正などの余分な工程が必要になり生産性阻害される。また、特許文献2においては、偏析を緩和するために長時間の熱処理が必要になり、生産性の面で不利である。

0008

そこで、本発明は、母材および溶接熱影響部の低温靭性に優れた高Mn鋼において、さらに優れた延性を与えるための方途について提案することを目的とする。さらに、本発明は、かような高Mn鋼の薄板を反りや歪の発生なしに製造し得る方途について提案することを目的とする。
ここで、前記「低温靭性に優れた」とは、−196℃におけるシャルピー衝撃試験吸収エネルギーvE−196がハーフサイズシャルピー試験片で30J以上であることをいう。

課題を解決するための手段

0009

本発明者らは、上記課題を解決するため、高Mn鋼を対象に、鋼板の成分組成、製造方法を決定する各種要因に関して鋭意研究を行い、微細組織との関連について調査し、以下の知見を得るに到った。
まず、高Mn鋼は、極低温においても脆性破壊とならずに、破壊が生じる場合は結晶粒界から発生する。すなわち、結晶粒界の形状が靱性に大きく影響を与えることが判明した。特に、粒界には炭化物等が形成され、この炭化物の形成量分布および粒界の形態が靱性に大きな影響を与えることが分かった。また、組織中に形成される微細結晶域の形態が靱性に影響を与えることも分かった。

0010

この炭化物の形成抑制法として、鋼板を急速に冷却(以下、急冷ともいう)することは効果的な手段である。ただし、鋼板の厚みが10mm以下の薄物の場合、鋼板を急冷すると、熱歪による内部応力による板反りが発生することがある。特に、高Mn鋼の場合には、組織がオーステナイトであるため、フェライト鋼と比較すると板反りが大きくなる傾向がある。この板反りが発生した場合、冷却後の工程である表面平滑処理ライン等への板の挿入が困難になる。また、出荷するためには鋼板の反りを矯正する必要があり、製造ラインに新たな工程を追加しなくてはならないため、製造コストの上昇をまねくことになる。オーステナイト鋼の反りが大きくなる要因は、フェライト鋼と比較して熱伝導度が小さく温度分布が大きくなるためと推察されるが、詳細は不明である。

0011

ここで、実機において、鋼板の厚みと熱間圧延後の冷却における冷却速度とを変化させた場合に、鋼板の反りにより製造工程上の負荷が発生する状況についてまとめた結果を、表1に示す。この表1に示すように、冷却速度が3℃/sを超えると、板厚10mm以下の鋼板にて、工程上に問題が発生していることがわかった。

0012

なお、表1における評価基準である、製造工程上の負荷とは、各工程上の中間製品製品に対する、手入れや矯正等に要する負荷を意味する。そして、表1における、◎は前記の手入れや矯正等が不要であり、製造後の作業である、平坦矯正装置(レベラー)およびクーリングベッド等の資材置き場への移送オンラインで問題なく通過、搬送できた場合、○は製造チャンス毎にレベラーの開度を調整するような軽微平滑処理を実施して通板が可能になった場合、△は一旦オフラインでの個別作業にて軽度な矯正作業作業員が個別に判断しマニュアルによる加工変形矯正を実施)が必要になった場合、×は製造上、矯正も不可能で製品としての出荷自体に問題があった場合、である。

0013

0014

そこで、かように、炭化物抑制に効果的な急冷処理の適用が困難な場合に、炭化物が存在しても母相結晶粒形態を制御することで靱性を向上させ得る手法について検討を行った。すなわち、炭化物が存在する条件下での、母相結晶粒の形態と靱性との影響について鋭意検討を行った。その結果、微細な結晶粒からなる領域を形成することにより、破壊の起点の減少と破面伝播の抑制とが同時に実現されて靱性値が向上することを見出した。

0015

上記した靱性値の向上に寄与する組織について解析を行った結果、微細な結晶粒からなる領域(以下、微細結晶域とする)は、熱間圧延中に変形した結晶粒が一部回復そして再結晶を伴いながら微細化し、引き続いて行われる圧延により歪が導入された領域である。この領域については、組織が微細化しているために強度と靱性のバランスが優れていると考えられる。この微細結晶域を有する組織の作り込みは、成分調整に加えて、熱間圧延の温度および圧下率、さらに熱間圧延後の冷却条件の最適化により可能になることを見出した。特に、Cr添加により、理由は不明であるが、微細結晶域の制御が容易になることを見出した。

0016

一方で、微細結晶域の制御に寄与させるCrが、破壊の起点に析出していることを確認した。すなわち、最終の仕上圧延の条件によっては再結晶形態が変化し、母相組織の形態が変化すると共に、Crの拡散形態が変化してCr炭化物の形態にも差異が生じ、靱性値が変動することを観察した。ここに、Crの炭化物量を抑制することが重要であることを知見するに到った。そして、再結晶を制御することによって、Crの拡散が抑制されCrの炭化物量が減少されることを見出した。特に、仕上圧延の圧下率は微細結晶域の形態と炭化物の形成挙動に影響を与えるため、この仕上圧延の圧下率を制御し、粒界への炭化物形成を出来るだけ抑制することが重要になる。

0017

さらに、微細結晶域の形成は、粒界に形成される炭化物の形態を制御する上でも非常に重要になる。すなわち、仕上圧延終了温度を、890℃以上980℃以下とすること、その後の冷却を3℃/s以下の冷却速度で行うことによって、上記微細結晶域が形成され、強度と靱性を両立させ得ることを見出した。

0018

本発明は、以上の知見にさらに検討を加えてなされたものであり、その要旨は次のとおりである。
1.質量%で、
C:0.10〜0.70%、
Si:0.05〜1.0%、
Mn:15〜30%、
P:0.030%以下、
S:0.0070%以下、
Al:0.01〜0.07%、
Cr:2.5〜7.0%、
N:0.0050〜0.0500%および
O:0.0050%以下
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物の成分組成を有し、かつ、オーステナイトを基地相とし、面積率で50%以上80%以下の微細結晶域が残存するミクロ組織を有し、該ミクロ組織はCr炭化物量が0.04%以下である高Mn鋼。

0019

2.前記成分組成は、さらに質量%で、
Mo:2.0%以下、
V:2.0%以下、
W:2.0%以下、
REM:0.0010〜0.0200%および
B:0.0005〜0.0020%
のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する前記1に記載の高Mn鋼。

0020

3.前記1または2に記載の成分組成を有する鋼素材を、1100℃以上1300℃以下の温度域に加熱し、仕上げ圧延終了温度が890℃以上980℃以下、かつ最終圧下率が13%以上17%以下となる熱間圧延を施し、該仕上圧延終了温度から650℃までの温度域における平均冷却速度が3℃/s以下の冷却処理を行う高Mn鋼の製造方法。

発明の効果

0021

本発明によれば、低温靭性に優れた高Mn鋼を提供できる。この高Mn鋼を溶接する使途とした場合には、溶接後の母材および溶接熱影響部がともに低温靭性に優れるものとなる。したがって、本発明の高Mn鋼は、液化ガス貯槽用タンク等の、極低温環境で使用される鋼構造物の安全性や寿命の向上に大きく寄与し、産業上格段の効果を奏する。また、本発明の製造方法は、生産性の低下および製造コストの増大を引き起こすことなしに、前記低温靭性に優れた高Mn鋼を製造できるため、経済性に優れた製造手法を提供することができる。

図面の簡単な説明

0022

SEMによる組織写真である。

0023

以下、本発明の高Mn鋼について詳しく説明する。
[成分組成]
まず、本発明の高Mn鋼の成分組成とその限定理由について説明する。なお、成分組成における「%」表示は、特に断らない限り「質量%」を意味するものとする。
C:0.10〜0.70%
Cは、安価なオーステナイト安定化元素であり、オーステナイトを得るために重要な元素である。その効果を得るために、Cは0.10%以上の含有を必要とする。一方、0.70%を超えて含有すると、Cr炭化物が過度に生成され、低温靱性が低下する。このため、Cは0.10〜0.70%とする。好ましくは、0.20%以上0.60%以下とする。

0024

Si:0.05〜1.0%
Siは、脱酸剤として作用し、製鋼上必要であるだけでなく、鋼に固溶して固溶強化により鋼板を高強度化する効果を有する。このような効果を得るために、Siは0.05%以上の含有を必要とする。一方、1.0%を超えて含有すると、溶接性劣化する。このため、Siは0.05〜1.0%とする。好ましくは、0.07%以上0.5%以下とする。

0025

Mn:15〜30%
Mnは、比較的安価なオーステナイト安定化元素である。本発明では、強度と極低温靱性を両立するために重要な元素である。その効果を得るために、Mnは15%以上の含有を必要とする。一方、30%を超えて含有しても、極低温靱性を改善する効果が飽和し、合金コストの上昇を招く。また、溶接性、切断性が劣化する。さらに、偏析を助長し、応力腐食割れの発生を助長する。このため、Mnは15〜30%とする。好ましくは、18%以上28%以下とする。

0026

P:0.030%以下
Pは、0.030%を超えて含有すると、粒界に偏析し、応力腐食割れの発生起点となる。このため、0.030%を上限とし、可能なかぎり低減することが望ましい。したがって、Pは0.030%以下とする。好ましくは、0.028%以下、さらに好ましくは0.24%以下とする。勿論、0%であってもよい。なお、Pを0.002%未満に低減するには、精錬に多大のコストが必要となることから、経済性の観点からは0.002%以上であることが好ましい。

0027

S:0.0070%以下
Sは、母材の低温靭性や延性を劣化させるため、0.0070%を上限とし、可能なかぎり低減することが望ましい。したがって、Sは0.0070%以下とする。好ましくは0.0050%以下とする。勿論、0%であってもよい。なお、Sを0.0005%未満に低減するには、精錬に多大のコストが必要となることから、経済性の観点からは0.0005%以上であることが好ましい。

0028

Al:0.01〜0.07%
Alは、脱酸剤として作用し、鋼板の溶鋼脱酸プロセスに於いて、もっとも汎用的に使われる。このような効果を得るためには、Alは0.01%以上の含有を必要とする。一方、0.07%を超えて含有すると、溶接時に溶接金属部に混入して、溶接金属の靭性を劣化させるため、0.07%以下とする。好ましくは、0.02%以上0.06%以下である。

0029

Cr:2.5〜7.0%
Crは、適量の添加でオーステナイトを安定化させ、極低温靱性および母材強度の向上に有効な元素である。また、後述の微細結晶域を形成させるために効果的な元素である。このような効果を得るためには、Crを2.5%以上で含有する必要がある。一方、7.0%を超えて含有すると、Cr炭化物の生成により、低温靭性および耐応力腐食割れ性が低下する。このため、Crは2.5〜7.0%とする。好ましくは3.5%以上6.5%以下とする。

0030

N:0.0050〜0.0500%
Nは、オーステナイト安定化元素であり、極低温靱性向上に有効な元素である。このような効果を得るためには、Nは0.0050%以上の含有を必要とする。一方、0.0500%を超えて含有すると、窒化物または炭窒化物が粗大化し、靭性が低下する。このため、Nは0.0050〜0.0500%とする。好ましくは0.0060%以上0.0400%以下とする。

0031

O:0.0050%以下
Oは、酸化物の形成により極低温靱性を劣化させる。このため、Oは0.0050%の範囲とする。好ましくは、0.0045%以下である。勿論、0%であってもよい。なお、Oを0.0005%未満に低減するには、精錬に多大のコストが必要となることから、経済性の観点からは0.0005%以上であることが好ましい。

0032

上記した成分以外の残部は鉄および不可避的不純物である。ここでの不可避的不純物としては、Ca、Mg、Ti、Nb、Cuなどが挙げられ、合計で0.05%以下であれば許容できる。

0033

本発明では、強度および低温靱性をさらに向上させることを目的として、上記の必須元素に加えて、必要に応じて下記の元素を含有することができる。
Mo:2.0%以下、V:2.0%以下、W:2.0%以下、REM:0.0010〜0.0200%、B:0.0005〜0.0020の1種または2種以上を添加することができる。

0034

Mo、V、W:2.0%以下
Mo、VおよびWは、オーステナイトの安定化に寄与するとともに母材強度の向上に寄与する。このような効果を得るためには、Mo、VおよびWは0.001%以上で含有することが好ましい。一方、2.0%を超えて含有すると、粗大な炭窒化物が生成し、破壊の起点となることがある他、製造コストを圧迫する。このため、これらの合金元素を含有する場合は、その含有量は2.0%以下とする。好ましくは0.003%以上1.7%以下、より好ましくは1.5%以下とする。

0035

REM:0.0010〜0.0200%
REMは、介在物形態制御に有用な元素であり、必要に応じて含有できる。介在物の形態制御とは、展伸した硫化物系介在物を粒状の介在物とすることをいう。この介在物の形態制御を介して、延性、靭性および耐硫化物応力腐食割れ性を向上させる。このような効果を得るためには、REMは0.0010%以上含有することが好ましい。一方、過剰に含有させると、非金属介在物量が増加し、かえって延性、靭性、耐硫化物応力腐食割れ性が低下する場合がある。したがって、REM量は0.0015%以上0.0200%以下とすることが好ましい。

0036

B:0.0005〜0.0020%
Bは、粒界に偏析し、材料の粒界強度による靱性向上に寄与する。ただし、過剰に添加されると粗大な窒化物や炭化物を形成するために、添加量は、0.0005%以上0.0020%以下とすることが好ましい。

0037

次に、低温靱性を実現するための組織形態について説明する。
[オーステナイトを基地相とするミクロ組織]
鋼材の結晶構造体心立方構造(bcc)である場合、該鋼材は低温環境下で脆性破壊を起こす可能性があるため、低温環境下での使用には適していない。ここに、低温環境下での使用を想定したとき、鋼材の組織における基地相は、結晶構造が面心立方構造(fcc)であるオーステナイトであることが必須となる。なお、「オーステナイトを基地相とする」とは、オーステナイト相が面積率で90%以上であることを示し、100%であってもよい。一方、オーステナイト相以外の残部は、BCC構造フェライトまたはマルテンサイト相や、介在物や析出物にて構成されることになるが、これらの比率は5%以下であることが好ましい。なお、オーステナイト分率については、EBSDによる観察やXRDによる解析および透磁率等によって決定することが出来る。

0038

[ミクロ組織形態]
本発明は、熱間圧延およびその後の冷却過程において、ミクロ組織制御、とりわけオーステナイト組織の制御を行うことにより、低温靱性の向上を実現するものである。そのためには、ミクロ組織の形態を制御することが重要である。特に、熱間圧延中や熱間圧延後およびその後の冷却過程において、熱間圧延中に変形した結晶粒が一部回復そして再結晶を伴いながら微細化し、引き続いて行われる圧延により歪が導入された領域、すなわち微細結晶域を適正に存在させることによって、破面の起点の減少と破面進展の抑制とをはかり、靱性を向上させることが肝要である。以下に、上記した各領域の形態について詳述する。

0039

[微細結晶域]
微細結晶域は、熱間圧延により歪が導入され結晶粒が微細化した領域であり、その後の冷却過程により一部回復や再結晶を生じているために内部に歪を含む領域である。この領域の認識の仕方については後述するが、該微細結晶域を含むように組織制御を行う。

0040

[微細結晶域の面積率:50%以上80%以下]
微細結晶域は、材料の強度−靱性バランスおよびCr炭化物の形成サイトとしても、その面積率を制御することは非常に重要になる。熱間圧延での歪導入により、その後の冷却過程での回復および再結晶が遅延している領域であり、内部に転位等を多く持った微細粒として形成されている。この領域の大きさとしては、50%以上の分率が必要である。この面積率が低くなると、ポリゴナルな粒(ポリゴナル領域)が増加し材料の強度が上昇するとともに、ポリゴナルな粒(ポリゴナル領域)に炭化物が形成されるため強度−靱性バランスが低減する。なお、この領域の面積が高くなると、材料の強度が上昇しすぎて靱性の低減をまねく虞があるため、80%以下とする。

0041

なお、鋼板の基地相(母相)を形成するオーステナイト相は、上記の微細結晶域およびポリゴナル領域で定義される。その他の組織として、介在物、析出物およびマルテンサイト相が形成されるが、これらは5%以下に抑制し、大部分のオーステナイト相は、上記微細結晶域およびポリゴナル領域として形成される必要がある。

0042

次いで、これらの領域の識別方法について以下に記載する。
上記した各領域については、SEM観察用試料調整方法を最適化することで認識が可能である。具体的には、コロイダルシリカ鏡面研磨を行った後に、イオンミリングにより表層イオンエッチングを行えば、微細結晶域の表層に微細な凹凸が形成されるため、5kV以下の低加速SEMによるインレンズ組織観察および反射電子像観察にて識別が可能となる。また、電解研磨を用いる鏡面研磨を行うことによっても、微細結晶域を識別することが可能である。このように、基地相(母相)にコントラスト差が発生する要因については、硬さや歪の違いや微量の元素分配等が考えられるが、詳細については不明である。解析は、上記に従って認識できた領域を画像処理により二値化し、面積率として定義する。

0043

また、組織評価によく用いられるEBSDでも、結晶粒の識別は可能であり、Image Quality−Mapを用いて、歪残存した領域(微細結晶域)とポリゴナル領域との識別を行うことが可能である。

0044

微細結晶域の形態としては、複数の粒からなり、個々の結晶粒の大きさが最大で10μm以下であり、それらが内部に歪を持った状態で存在している。図1に、その組織について、500倍および中心部の1000倍の反射電子像写真を示す。また、1000倍写真については、微細結晶域を囲み線ハッチングを行った同一視野の組織写真を同時に示す。このように、微結晶域については様々な形状を持っており、また、周辺の完全に回復したポリゴナル領域とは明確に識別することができる。

0045

上記を考慮し、SEM組織観察は、鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置(以下、1/4t部という)について1箇所あたり約300×500μmの視野について、適宜倍率を調整し(200倍〜5000倍)、同視野内の微細結晶域の面積を測定し、この視野での面積率を算出する。この作業を少なくとも10箇所において行って、その平均を算出し、微細結晶域の面積率とする。

0046

[Cr炭化物量:0.04%以下]
本発明は、Cr添加を前提としているため、熱間圧延後の冷却中にCr炭化物が形成される。このCr炭化物は粒界に優先して析出し、この析出物が材料の靱性を低下させる原因になるため、Crの析出を抑制し、Cr炭化物量を質量%で0.04%以下とする必要がある。ここで、Crの析出については、Cr含有量、仕上圧延の圧下率および熱間圧延後の冷却速度を調整することにより、Crの拡散形態を制御し、その量を抑制することができる。特に、再結晶を抑制することによって、Crの拡散は抑制されCrの炭化物量は減少される。また、Crは、微細結晶域に析出した場合の方が靱性への悪影響が少ないため、以下の圧延条件にて微細結晶域の形態調整を実施し、Crの析出量の調整を行う。なお、Crの析出量は、抽出残渣によって評価することができる。

0047

本発明に係る高Mn鋼は、上記した成分組成を有する溶鋼を、転炉電気炉等、公知の溶製方法で溶製することができる。また、真空脱ガス炉にて2次精錬を行ってもよい。その後、連続鋳造法あるいは造塊−分塊圧延法等、公知の鋳造方法により、所定寸法のスラブ等の鋼素材とすることが好ましい。

0048

さらに、上記鋼素材を低温靭性に優れた鋼材へと造りこむための製造条件について説明する。
[鋼素材加熱温度:1100℃以上1300℃以下]
鋼材のミクロ組織の結晶粒径を粗大にするために、熱間圧延前の加熱温度は1100℃以上とする。ただし、1300℃を超えると一部溶解が始まってしまう懸念があるため、加熱温度の上限は1300℃とする。ここでの温度制御は、鋼素材の表面温度を基準とする。

0049

[仕上圧延終了温度:890℃以上980℃以下]
仕上圧延終了温度およびその後の冷却条件は再結晶・回復遅延領域を制御する上で重要となる。まず、仕上圧延終了温度が890℃を超えると、仕上圧延中および仕上圧延後直ちに再結晶・回復が進行し、微細結晶域が少なくなりポリゴナルな結晶粒の形成が促進されて、強度低下および靱性の低下が問題となる。また、仕上圧延終了温度が980℃より低い場合には、再結晶・回復が抑制されて、再結晶によるポリゴナルな結晶粒の形成が抑制され、また、微細結晶域にも歪が多く導入されて強度が高くなり、それに伴い靱性が劣化する。

0050

最終圧延圧下率:13%以上17%以下]
最終圧延の圧下率は、その後の冷却での再結晶過程に影響を与えるため重要である。ここで、最終圧延とは仕上圧延の最終パスおよびその前の1パスを意味する。この最終圧延での圧下率が17%より高い場合には、材料に歪が多く導入されるためその後の冷却過程で歪誘起の再結晶が進行し、ポリゴナルな領域が増加する。また、圧下率が13%より低い場合には、下地の歪組織の再結晶は遅延して微細結晶域は残存するが、その内部の歪量が少なくなるために、材料の強度が低くなる。このため、適切は圧延条件としては、上記のように、仕上圧延終了温度を890℃以上980℃以下の範囲とし、該仕上圧延の最終圧延の圧下率を13%以上17%以下とする。

0051

[仕上圧延終了温度から650℃までの冷却速度:3℃/s以下]
再結晶・回復によるポリゴナルな結晶粒の形成と微細結晶域の形成とを両立させるためには、圧延終了温度から回復・再結晶の進行が顕著である650℃までの冷却を制御することは非常に重要である。このとき、冷却速度が速すぎると圧延後の組織が凍結されて、十分なポリゴナル粒の形成が生じずに靱性が劣化するため、冷却速度の上限を3℃/sとする。特に、薄物の場合には、前述のように板反りが発生して工程上の問題になるため、1.5℃/s以下の速度で冷却することが好ましい。なお、650℃未満の温度域での冷却は、基地相(母相)の再結晶・回復に影響を与えないため、冷却速度の規制は仕上げ圧延終了温度から650℃までの温度域とした。一方、650℃未満の温度域での冷却は、下記のように任意で行ってよい。

0052

ここで、冷却速度は、板厚により変化するため、水冷等により調整を適宜実施することが有利である。ここでの冷却処理は、鋼板の板厚中心温度を基準として行う。なお、該中心温度は、放射温度計で測定した鋼板表面温度から、伝熱計算により求めることができる。
また、冷却速度の下限については特に設定しないが、保温炉等を用いると炉のコストやプロセスコストおよび、製造時間上不利であるため、空冷の範囲内であればよい。

0053

[650℃未満の冷却について]
本発明は、粒界に炭化物が形成されるような状況においても、上記ポリゴナル領域と微細結晶域との組合せにより低温での靱性の向上を実現するものである。このため、650℃未満の冷却については、特に規定はしない。ただし、炭化物抑制は、靱性にとって効果的であり、しかも650℃未満の温度域からは上述の板反りの影響は低減されるために、炭化物形成を抑制する観点から10℃/s以上の急冷を行うことが望ましい。

0054

さらに、必要に応じて、前記冷却処理(650℃未満の冷却)を行ったのち、300℃以上650℃以下の温度域まで加熱して冷却する処理を追加してもよい。すなわち、鋼板の強度を調整する目的で焼き戻し処理を行っても良い。

0055

以下、本発明を実施例により詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
(1)鋼板
真空溶解により、表1に示す成分組成になる鋼スラブを作製した。次いで、得られた鋼スラブを加熱炉装入して1250℃に加熱後、仕上圧延終了温度を種々に変化させて熱間圧延を施し、該仕上圧延終了温度から650℃までの温度域での冷却速度を種々に変化させて冷却処理を行って、5〜10mm厚の鋼板を作製した。ここで、熱間圧延においては、鋼板の厚み中心部に熱電対を設置し、鋼板の温度をモニターリングし仕上圧延終了温度を測定した。この仕上圧延終了温度および仕上圧延終了温度から650℃までの温度域での冷却速度を、表2に示す。

0056

0057

0058

得られた鋼板について、引張試験特性および低温靭性を下記の要領で評価し、また組織について解析した。
(2)引張試験特性
得られた各鋼板より、JIS5号引張試験片採取し、JIS Z2241(1998年)の規定に準拠して引張試験を実施し、引張試験特性を調査した。本発明では、降伏強度400MPa以上および引張強度800MPa以上を引張特性に優れるものと判定した。さらに、伸び30%以上を延性に優れるものと判定した。

0059

(3)低温靭性
鋼板の表面から板厚の1/2の位置において、圧延方向と垂直な方向から、JIS Z2202(1998年)の規定に準拠して、ハーフサイズ(5mm)のシャルピーVノッチ試験片を採取し、JIS Z 2242(1998年)の規定に準拠して各鋼板について3本のシャルピー衝撃試験を実施し、−196℃での吸収エネルギーを求め、母材靭性を評価した。ここでは、3本の吸収エネルギー(vE−196)の平均値が30J以上を母材靭性に優れるものとした。

0060

(4)組織解析
組織解析については、電解放出およびインレンズ型検出器をもつ走査電子顕微鏡(FE-SEM)で組織観察を行った。すなわち、鋼板を樹脂埋め込みして作製した、サンプルについて、ダイヤモンド研磨およびコロイダルシリカにより鏡面研磨を行った後、Arイオンビームで表面のスパッタリングを実施した。組織観察は、加速電圧5kVで行い、微細結晶域の形態を評価し、その面積率を計算した。観察領域は、鋼板の表面から板厚の1/4の位置から1箇所あたり500×500μmの領域とし、この観察を10箇所で行って平均値とした。

0061

(5)Cr炭化物量
Cr炭化物量については、10%アセチルアセトン溶液にて析出物を電解抽出した後、抽出された析出物量をICP(高周波誘導結合プラズマ発光分光分析により測定し、測定した電解量を質量%に換算した。
以上により得られた評価および観察の結果を、表3に示す。

0062

表3に示すように、本発明に従う高Mn鋼は、上述の目標性能(母材の降伏強度が400MPa以上、低温靭性が吸収エネルギー(vE−196)の平均値で30J以上)を満足することが確認された。一方、本発明の範囲を外れる比較例は、降伏強度および低温靭性のいずれか1つ以上が、上述の目標性能を満足できていない。

実施例

0063

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