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技術 合金部材の製造方法

出願人 日立金属株式会社
発明者 藤枝正白鳥浩史桑原孝介大沼篤彦
出願日 2019年5月16日 (1年7ヶ月経過) 出願番号 2019-093036
公開日 2019年10月17日 (1年2ヶ月経過) 公開番号 2019-178427
状態 未査定
技術分野 金属質粉又はその懸濁液の製造 粉末冶金 プラスチック等のその他の成形、複合成形(変更なし)
主要キーワード ディフラクションパターン 角柱材 複雑形状物 混合エントロピー 造形材 孔食発生電位 ガルバノメーターミラー スライス形状
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図面 (8)

課題

高機械的強度高耐食性を有するハイエントロピー合金を用い、合金組成微細組織均質性に優れ、かつ形状制御性に優れた合金部材、その製造方法、および該合金部材を用いた製造物を提供する。

解決手段

本発明に係る合金部材は、Co、Cr、Fe、Ni、Tiの各元素をそれぞれ5原子%以上35原子%以下の範囲で含み、かつMoを0原子%超8原子%以下の範囲で含み、残部が不可避不純物からなる化学組成を有し、母相結晶中に平均粒径100 nm以下の極小粒子分散析出していることを特徴とする。

概要

背景

近年、従来の合金(例えば、1〜3種類の主要成分元素複数種副成分元素微量添加した合金)の技術思想とは一線を画した新しい技術思想の合金として、ハイエントロピー合金(High Entropy Alloy:HEA)が提唱されている。HEAとは、5種類以上の主要金属元素(それぞれ5〜35原子%)から構成された合金と定義されており、次のような特徴が発現することが知られている。

例えば、(a)ギブス自由エネルギー式における混合エントロピー項が負に増大することに起因する混合状態の安定化、(b)複雑な微細構造による拡散遅延、(c)構成原子サイズ差に起因する高格子歪みに起因する高硬度化機械的特性温度依存性低下、(d)多種元素共存による複合影響(カクテル効果とも言う)による耐食性の向上などを挙げることができる。

例えば、特許文献1(特開2002-173732)には、複数種類の金属元素をキャスティングあるいは合成してなるハイエントロピー多元合金において、該合金が5種類から11種類の主要金属元素を含有し、各種類の主要金属元素のモル数が合金総モル数の5%から30%とされたことを特徴とするハイエントロピー多元合金が開示されている。また、前記主要金属元素は、アルミニウムチタンバナジウムクロム、鉄、コバルトニッケル、銅、ジルコニウムモリブデンパラジウム、銀を含む金属元素群より選択されることが記載されている。

特許文献1によると、キャスト状態において、従来のカーボンスチールや合金カーボンスチールよりも高い硬度、高い耐熱性および高い耐食性を兼ね備えたハイエントロピー多元合金を提供できるとされている。

概要

高機械的強度高耐食性を有するハイエントロピー合金を用い、合金組成微細組織均質性に優れ、かつ形状制御性に優れた合金部材、その製造方法、および該合金部材を用いた製造物を提供する。本発明に係る合金部材は、Co、Cr、Fe、Ni、Tiの各元素をそれぞれ5原子%以上35原子%以下の範囲で含み、かつMoを0原子%超8原子%以下の範囲で含み、残部が不可避不純物からなる化学組成を有し、母相結晶中に平均粒径100 nm以下の極小粒子分散析出していることを特徴とする。B

目的

これは、HEA部材を実用化し商用化する上での大きな障害であり、解決すべき課題である

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

合金部材であって、Co、Cr、Fe、Ni、Tiの各元素をそれぞれ5原子%以上35原子%以下の範囲で含み、かつMoを0原子%超8原子%以下の範囲で含み、残部が不可避不純物からなる化学組成を有し、母相結晶粒中に、平均粒径100nm以下の極小粒子分散析出していることを特徴とする合金部材。

請求項2

請求項1に記載の合金部材において、前記母相結晶粒の平均結晶粒径が100μm以下であることを特徴とする合金部材。

請求項3

請求項1又は2に記載の合金部材において、前記極小粒子は、前記Ni成分と前記Ti成分とが前記母相結晶よりも濃化している結晶性粒子であることを特徴とする合金部材。

請求項4

請求項1〜3のいずれか一項に記載の合金部材において、前記化学組成は、前記Coを20原子%以上35原子%以下で、前記Crを10原子%以上25原子%以下で、前記Feを10原子%以上25原子%以下で、前記Niを15原子%以上30原子%以下で、前記Tiを5原子%以上15原子%以下で含むことを特徴とする合金部材。

請求項5

請求項1〜3のいずれか一項に記載の合金部材において、前記化学組成は、前記Coを25原子%以上33原子%以下で、前記Crを15原子%以上23原子%以下で、前記Feを15原子%以上23原子%以下で、前記Niを17原子%以上28原子%以下で、前記Tiを5原子%以上10原子%以下で、前記Moを1原子%以上7原子%以下で含むことを特徴とする合金部材。

請求項6

請求項5に記載の合金部材において、前記化学組成は、前記Coを25原子%以上30原子%未満で、前記Crを15原子%以上20原子%未満で、前記Feを15原子%以上20原子%未満で、前記Niを23原子%以上28原子%以下で、前記Tiを7原子%以上10原子%以下で、前記Moを1原子%以上7原子%以下で含むことを特徴とする合金部材。

請求項7

請求項5に記載の合金部材において、前記化学組成は、前記Coを30原子%以上33原子%以下で、前記Crを20原子%以上23原子%以下で、前記Feを20原子%以上23原子%以下で、前記Niを17原子%以上23原子%未満で、前記Tiを5原子%以上7原子%未満で、前記Moを1原子%以上3原子%以下で含むことを特徴とする合金部材。

請求項8

請求項1〜7のいずれか一項に記載の合金部材において、引張強さが1100 MPa以上であり、破断伸びが10%以上であることを特徴とする合金部材。

請求項9

請求項1〜8のいずれか一項に記載の合金部材において、前記母相結晶は、形状が柱状晶であり、その結晶構造が単純立方晶及び面心立方晶の少なくとも一方を含むことを特徴とする合金部材。

請求項10

請求項1〜8のいずれか一項に記載の合金部材において、前記母相結晶は、形状が等軸晶であり、その結晶構造が単純立方晶及び面心立方晶の少なくとも一方を含むことを特徴とする合金部材。

請求項11

Co、Cr、Fe、Ni、Tiの各元素をそれぞれ5原子%以上35原子%以下の範囲で含み、かつMoを0原子%超8原子%以下の範囲で含む合金組成となるように、合金原料を混合し、溶解して溶湯を形成する原料混合溶解工程と、前記溶湯から合金粉末を形成するアトマイズ工程と、前記合金粉末を用いた金属粉末積層造形法により所望形状を有する合金積層造形体を形成する積層造形工程と、を有することを特徴とする合金部材の製造方法。

請求項12

Co、Cr、Fe、Ni、Tiの各元素をそれぞれ5原子%以上35原子%以下の範囲で含み、かつMoを0原子%超8原子%以下の範囲で含むように、合金の原料を混合・溶解して溶湯を形成する原料混合溶解工程と、前記溶湯から合金粉末を形成するアトマイズ工程と、前記合金粉末を用いた金属粉末積層造形法により所望形状を有する合金積層造形体を形成する積層造形工程と、前記合金積層造形体に対して1080℃以上1180℃以下の温度範囲で擬溶体化熱処理を施す擬溶体化熱処理工程と、を有することを特徴とする合金部材の製造方法。

請求項13

請求項12に記載の合金部材の製造方法であって、前記擬溶体化熱処理工程は、前記温度範囲で保持した後、水冷または空冷する工程であることを特徴とする合金部材の製造方法。

請求項14

請求項12又は13に記載の合金部材の製造方法であって、前記擬溶体化熱処理工程の後に500℃超900℃未満の温度範囲で時効処理を施す時効処理工程を有することを特徴とする合金部材の製造方法。

請求項15

請求項11〜14のいずれか一項に記載の合金部材の製造方法であって、前記積層造形工程における金属粉末積層造形法に使用する熱源レーザであることを特徴とする合金部材の製造方法。

請求項16

合金部材を用いた製造物であって、前記合金部材が、請求項1〜10のいずれか一項に記載の合金部材であり、前記製造物が、流体機械インペラであることを特徴とする合金部材を用いた製造物。

請求項17

請求項16に記載の前記インペラを組み込んでいることを特徴とする遠心圧縮機

技術分野

0001

本発明は、ハイエントロピー合金を用いて粉末積層造形法により作製した合金部材および該合金部材の製造方法、ならびに該合金部材を用いた製造物に関するものである。

背景技術

0002

近年、従来の合金(例えば、1〜3種類の主要成分元素複数種副成分元素微量添加した合金)の技術思想とは一線を画した新しい技術思想の合金として、ハイエントロピー合金(High Entropy Alloy:HEA)が提唱されている。HEAとは、5種類以上の主要金属元素(それぞれ5〜35原子%)から構成された合金と定義されており、次のような特徴が発現することが知られている。

0003

例えば、(a)ギブス自由エネルギー式における混合エントロピー項が負に増大することに起因する混合状態の安定化、(b)複雑な微細構造による拡散遅延、(c)構成原子サイズ差に起因する高格子歪みに起因する高硬度化機械的特性温度依存性低下、(d)多種元素共存による複合影響(カクテル効果とも言う)による耐食性の向上などを挙げることができる。

0004

例えば、特許文献1(特開2002-173732)には、複数種類の金属元素をキャスティングあるいは合成してなるハイエントロピー多元合金において、該合金が5種類から11種類の主要金属元素を含有し、各種類の主要金属元素のモル数が合金総モル数の5%から30%とされたことを特徴とするハイエントロピー多元合金が開示されている。また、前記主要金属元素は、アルミニウムチタンバナジウムクロム、鉄、コバルトニッケル、銅、ジルコニウムモリブデンパラジウム、銀を含む金属元素群より選択されることが記載されている。

0005

特許文献1によると、キャスト状態において、従来のカーボンスチールや合金カーボンスチールよりも高い硬度、高い耐熱性および高い耐食性を兼ね備えたハイエントロピー多元合金を提供できるとされている。

先行技術

0006

特開2002−173732号公報

発明が解決しようとする課題

0007

しかしながら、本発明者等がHEAについて種々研究したところ、HEAは、合金組成の複雑さに起因して鍛造時の元素偏析組織が生じ易く、均質インゴットを得ることが難しいものであった。合金部材における元素偏析や組織斑は、部位による特性のばらつきにつながり、特に延性等の機械的強度劣化し、耐食性が低下するなどの解決すべき課題がある。

0008

また、HEAは、高硬度で焼き戻し軟化抵抗性を有するが故に難加工性であり、機械加工により所望形状部材を作製することが難しいという問題があった。これは、HEA部材を実用化し商用化する上での大きな障害であり、解決すべき課題である。

0009

一方、前述したように、HEAは従来合金では得られない魅力的な特徴を有していることから、合金組成・微細組織均質性に優れ、かつ形状制御性に優れるHEA部材、およびその製造方法の開発が強く求められている。

0010

したがって、本発明の目的は、上記要求を満たすべく、高機械的特性、且つ高耐食性を有するハイエントロピー合金(HEA)を用い、合金組成と微細組織それぞれの均質性に優れ、かつ形状制御性に優れた合金部材、その製造方法、および該合金部材を用いた製造物を提供することにある。

課題を解決するための手段

0011

(I)本発明の一態様は、ハイエントロピー合金を用いた合金部材であって、
Co(コバルト)、Cr(クロム)、Fe(鉄)、Ni(ニッケル)、Ti(チタン)の各元素をそれぞれ5原子%以上35原子%以下の範囲で含み、かつMo(モリブデン)を0原子%超8原子%以下の範囲で含み、残部が不可避不純物からなる化学組成を有し、母相結晶粒中に、平均粒径100 nm以下の極小粒子分散析出していることを特徴とする合金部材を提供する。

0012

(II)本発明の他の一態様は、上記の合金部材の製造方法であって、
前記合金の原料を混合し、溶解して溶湯を形成する原料混合溶解工程と、
前記溶湯から合金粉末を形成するアトマイズ工程と、
前記合金粉末を用いた金属粉末積層造形法により所望形状を有する合金積層造形体を形成する積層造形工程と、を有することを特徴とする合金部材の製造方法を提供する。

0013

(III)本発明の他の一態様は、上記の合金部材の製造方法であって、
前記合金の原料を混合し、溶解して溶湯を形成する原料混合溶解工程と、
前記溶湯から合金粉末を形成するアトマイズ工程と、
前記合金粉末を用いた金属粉末積層造形法により所望形状を有する合金積層造形体を形成する積層造形工程と、
前記合金積層造形体に対して1080℃以上1180℃以下の温度範囲で擬溶体化熱処理を施す擬溶体化熱処理工程と、を有することを特徴とする合金部材の製造方法を提供する。

0014

(IV)本発明の更に他の一態様は、上記の合金部材を用いた製造物であって、
前記製造物が、流体機械インペラであることを特徴とする合金部材を用いた製造物を提供する。
本明細書は本願の優先権基礎となる日本国特許出願番号2017-154657号の開示内容包含する。

発明の効果

0015

本発明によれば、高機械的特性、且つ高耐食性を有するハイエントロピー合金を用い、合金組成と微細組織それぞれの均質性に優れ、かつ形状制御性に優れた合金部材、その製造方法、および該合金部材を用いた製造物を提供することができる。

図面の簡単な説明

0016

本発明に係る合金部材の製造方法の一例を示す工程図である。
レーザビーム溶融法粉末積層造形装置の構成および積層造形方法の例を示す断面模式図である。
本発明に係る擬溶体化合造形体の微細組織の一例を示す高角散乱環状暗視野走査透過型電子顕微鏡像(HAADF-STEM像)である。
本発明に係る擬溶体化合金造形体の微細組織の一例を示す高角散乱環状暗視野走査透過型電子顕微鏡像(HAADF-STEM像)である。
本発明に係る擬溶体化合金造形体の微細組織の一例を示す高角散乱環状暗視野走査透過型電子顕微鏡像(HAADF-STEM像)である。
本発明に係る合金部材を用いた製造物の一例であり、流体機械のインペラを示す写真である。
本発明に係る合金部材を用いた製造物の他の一例であり、本発明のインペラが組み込まれた遠心圧縮機を示す断面模式図である。

0017

本発明は、前述した合金部材(I)において、以下のような改良や変更を加えることができる。
(i)前記母相結晶粒は、平均結晶粒径が100μm以下である。
(ii)前記極小粒子は、前記Ni成分と前記Ti成分とが前記母相結晶よりも濃化している結晶性粒子である。
(iii)前記化学組成は、前記Coを20原子%以上35原子%以下で、前記Crを10原子%以上25原子%以下で、前記Feを10原子%以上25原子%以下で、前記Niを15原子%以上30原子%以下で、前記Tiを5原子%以上15原子%以下で含む。
(iv)前記化学組成は、前記Coを25原子%以上33原子%以下で、前記Crを15原子%以上23原子%以下で、前記Feを15原子%以上23原子%以下で、前記Niを17原子%以上28原子%以下で、前記Tiを5原子%以上10原子%以下で、前記Moを1原子%以上7原子%以下で含む。
(v)前記化学組成は、前記Coを25原子%以上30原子%未満で、前記Crを15原子%以上20原子%未満で、前記Feを15原子%以上20原子%未満で、前記Niを23原子%以上28原子%以下で、前記Tiを7原子%以上10原子%以下で、前記Moを1原子%以上7原子%以下で含む。
(vi)前記化学組成は、前記Coを30原子%以上33原子%以下で、前記Crを20原子%以上23原子%以下で、前記Feを20原子%以上23原子%以下で、前記Niを17原子%以上23原子%未満で、前記Tiを5原子%以上7原子%未満で、前記Moを1原子%以上3原子%以下で含む。
(vii)引張強さが1100MPa以上であり、破断伸びが10%以上である。なお、引張強さの上限は特に限定されるものではないが、例えば1500MPaとすることができる。また、破断伸びの上限も特に限定されるものではないが、例えば40%とすることができる。
(viii)前記母相結晶は、形状が柱状晶であり、その結晶構造が単純立方晶及び面心立方晶の少なくとも一方を含む。
(ix)前記母相結晶は、形状が等軸晶であり、その結晶構造が単純立方晶及び面心立方晶の少なくとも一方を含む。

0018

本発明は、前述した合金部材の製造方法(III)において、以下のような改良や変更を加えることができる。
(x)前記擬溶体化熱処理工程は、前記温度範囲で保持した後、水冷または空冷する工程である。

0019

本発明は、前述した合金部材の製造方法(II)及び(III)において、以下のような改良や変更を加えることができる。
(xi)前記積層造形工程における金属粉末積層造形法に使用する熱源は、レーザ光である。

0020

本発明は、前述した合金部材を用いた製造物(IV)において、以下のような改良や変更を加えることができる。
(xii)前記製造物は、前記インペラを組み込んだ遠心圧縮機である。

0021

(本発明の基本思想)
前述したように、ハイエントロピー合金(HEA)は、従来合金では得られない魅力的な特徴(例えば、高硬度、焼き戻し軟化抵抗性)を有しているが、難加工性であり、所望の形状部材を作製することが難しいという問題があった。

0022

本発明者等は、HEAとしての特徴を犠牲にすることなく、形状制御性や延性に優れるHEA部材を開発すべく、合金組成と形状制御方法について鋭意研究を重ねた。その結果、Co-Cr-Fe-Ni-Ti-Mo系合金の粉末を用いた電子ビーム積層造形法により合金積層造形体を形成することで、従来の普通鍛造HEA部材よりも形状制御性や延性に優れるHEA部材を得られる可能性が見出された。

0023

具体的には、ニアネットシェイプのHEA部材が得られるとともに、該HEA部材は良好な機械的特性(例えば、3%以上の破断伸び、1000 MPa以上の引張強さ)を有することが分かった。しかしながら、HEA部材およびそれを用いた機械装置における実用耐久性長期信頼性の観点からは、当該HEA部材は、より優れた延性(例えば、10%以上の破断伸び)を有することが望ましい。

0024

そこで、本発明者等は、望ましい特性を有するHEA部材を実現するために、製造方法と微細組織と機械的特性との関係について更に詳細な調査、研究を重ねた。その結果、レーザ積層造形法により合金積層造形体を形成することで、電子ビーム積層造形法により造形したHEA部材よりも形状制御性や延性に優れるHEA部材を得られることを見出した。

0025

さらに、レーザ積層造形後の造形体に対して所定の熱処理を施すことにより、母相結晶粒中にナノスケールの極小粒子が分散析出した微細組織が得られ、機械的強度の向上と延性の大幅な向上とが図られることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものである。

0026

以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながらHEA部材の製造手順に沿って説明する。ただし、本発明は、ここで取り挙げた実施形態に限定されるものではなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜組み合わせや改良が可能である。

0027

[HEA部材の製造方法]
図1は、本発明に係る合金部材の製造方法の一例を示す工程図である。図1に示したように、本発明の製造方法は、原料混合溶解工程とアトマイズ工程と積層造形工程と取出工程、更には、擬溶体化熱処理工程とを有する。以下、本発明の実施形態をより具体的に説明する。

0028

(原料混合溶解工程)
図1に示したように、まず、所望のHEA組成(Co-Cr-Fe-Ni-Ti-Mo)となるように原料を混合し、溶解して溶湯10を形成する原料混合溶解工程を行う。原料の混合方法溶解方法特段の限定はなく、高強度、且つ高耐食性合金の製造における従前の方法を利用できる。例えば、溶解方法として真空溶解を好適に利用できる。また、真空炭素脱酸法などを併用して、溶湯10を精錬することが好ましい。

0029

本発明のHEA組成は、主要成分としてCo、Cr、Fe、Ni、Tiの5元素をそれぞれ5原子%以上35原子%以下の範囲で含み、副成分としてMoを0原子%超8原子%以下の範囲で含み、残部が不可避不純物からなるものである。

0030

より具体的には、Co成分は、20原子%以上35原子%以下が好ましく、25原子%以上33原子%以下がより好ましい。Cr成分は、10原子%以上25原子%以下が好ましく、15原子%以上23原子%以下がより好ましい。Fe成分は、10原子%以上25原子%以下が好ましく、15原子%以上23原子%以下がより好ましい。Ni成分は、15原子%以上30原子%以下が好ましく、17原子%以上28原子%以下がより好ましい。Ti成分は、5原子%以上15原子%以下が好ましく、5原子%以上10原子%以下がより好ましい。Mo成分は、0原子%超8原子%以下が好ましく、1原子%以上7原子%以下がより好ましい。これらの組成範囲に制御することにより、延性の向上と機械的強度の向上とを両立することができる。言い換えると、各成分がそれぞれの好ましい組成範囲を外れると、望ましい特性の達成が困難になる。

0031

上記組成範囲の中で、機械的強度の向上をより優先する場合、Co成分は25原子%以上30原子%未満がより好ましく、Cr成分は15原子%以上20原子%未満がより好ましく、Fe成分は15原子%以上20原子%未満がより好ましく、Ni成分は23原子%以上28原子%以下がより好ましく、Ti成分は7原子%以上10原子%以下がより好ましく、Mo成分は1原子%以上7原子%以下がより好ましい。

0032

また、上記組成範囲の中で、延性の向上をより優先する場合、Co成分は30原子%以上33原子%以下がより好ましく、Cr成分は20原子%以上23原子%以下がより好ましく、Fe成分は20原子%以上23原子%以下がより好ましく、Ni成分は17原子%以上23原子%未満がより好ましく、Ti成分は5原子%以上7原子%未満がより好ましく、Mo成分は1原子%以上3原子%以下がより好ましい。

0033

(アトマイズ工程)
次に、溶湯10から合金粉末20を形成するアトマイズ工程を行う。アトマイズ方法に特段の限定はなく、従前の方法を利用できる。例えば、ガスアトマイズ法遠心アトマイズ法を好ましく用いることができる。

0034

合金粉末20の平均粒径は、ハンドリング性充填性の観点から、10μm以上200μm以下が好ましく、10μm以上50μm以下がより好ましい。平均粒径が10μm未満になると、次工程の積層造形工程において合金粉末20が舞い上がり易くなり、合金積層造形体の形状精度が低下する要因となる。一方、平均粒径が200μm超になると、次工程の積層造形工程において合金積層造形体の表面粗さが増加したり合金粉末20の溶融が不十分になったりする要因となる。

0035

(積層造形工程)
次に、上記で用意した合金粉末20を用いた金属粉末積層造形法により、所望形状を有する合金積層造形体101を形成する積層造形工程を行う。焼結ではなく溶融して凝固することによってニアネットシェイプの金属部材を造形する金属粉末積層造形法の適用により、鍛造材と同等以上の硬度とともに、複雑形状を有する三次元部材を作製することができる。積層造形方法としては、選択的レーザ溶融(Selective Laser Melting:SLM)法を用いた金属粉末積層造形法を好適に利用できる。

0036

SLM法による積層造形工程を説明する。図2は、SLM法の粉末積層造形装置100の構成を示す模式図である。造形しようとする合金積層造形体101の1層厚さ分(例えば、約20〜50μm)でステージ102を下降させる。ステージ102上面上のベースプレート103上にパウダー供給用コンテナ104から合金粉末105を供給し、リコータ160により合金粉末105を平坦化して粉末床107(層状粉末)を形成する。

0037

次に、造形しようとする合金積層造形体101の3D-CADデータから変換された2Dスライスデータに基づいて、レーザ発振器108から出力されるレーザ109をガルバノメーターミラー110を通してベースプレート103上の未溶融の粉末へ照射し、微小溶融池を形成すると共に、微小溶融池を移動させ逐次凝固させることにより、2Dスライス形状凝固層112を形成する。なお、未溶融粉末回収用コンテナ111に回収される。この操作を繰り返して積層することにより、合金積層造形体101を製作する。

0038

取出工程後の合金積層造形体101から微細組織観察用試料採取し、電子顕微鏡を用いて、該試料の微細組織を観察した。その結果、合金積層造形体101の母相は、微細な柱状晶(平均幅50μm以下)が合金積層造形体101の積層方向に沿って林立した組織(いわゆる、急冷凝固組織)を有していた。

0039

(擬溶体化熱処理工程)
適宜、上記の合金積層造形体101に対して、安定な温度で加熱保持後急冷する熱処理を行うことができる。本熱処理の温度は、1080〜1180℃の範囲が好ましく、1100〜1140℃がより好ましい。1080℃未満では、金属間化合物相針状結晶析出してしまい、1180℃を超えると結晶粒径が粗大化してしまう。なお、本願では、合金の固溶限が明確ではないこと、および最終生成物である合金部材には平均粒径100 nm以下の極小粒子が分散析出していることから、上述のような熱処理を擬溶体化熱処理と呼んでいる。

0040

また、当該温度領域で適当な時間保持した後、急冷(例えば、空冷や水冷)することが好ましい。特に、金属間化合物相が粒成長し易い温度領域(例えば、900〜800℃の温度範囲)を素早く通過させる(例えば、10℃/s以上の速度で冷却する)ことにより、ナノスケールの極小粒子が母相結晶中に分散析出した微細組織を有する擬溶体化合金造形体が得られる。また、擬溶体化合金造形体をさらに金属間化合物相が粒成長し易い温度領域(例えば、900〜800℃の温度範囲)よりも低い温度、例えば500℃超900℃未満にて保持する時効処理工程を施すことで、擬溶体化合金造形体中のナノスケールの極小粒子を増加させ、より強度を改善することも可能である。

0041

分散析出する極小粒子の平均粒径は、100 nm以下が好ましく、20 nm以上80nm以下がより好ましい。極小粒子の平均粒径が20 nm以上80nm以下である場合、延性および耐食性に優れるとともに、機械強度を高めることが可能となる。極小粒子の平均粒径が100 nm超になると、機械的特性が急激に低下する。

0042

[HEA部材]
図3は高倍のHAADF(High Angle Annular Dark Field)像と元素マッピング像およびディフラクションパターンである。ディフラクションパターンでは、擬溶体化熱処理を施した造形材で認められた微細な規則相に起因するサテライトパターンが認められたが、元素マッピング像からはその存在は確認できなかった。このことから、造形材における凝固速度が著しく大きく、規則相がSTEM-EDXの検出限界を超えるほど極小であると推察される。

0043

次に、擬溶体化合金造形体の微細組織をより詳細に調査するために、STEM-EDXを用いて微細組織観察を行った。

0044

図4Aは、溶体化処理(水冷)を施した造形材のSTEM-EDXによるHAADF像と元素マッピング像およびディフラクションパターンである。ディフラクションパターンに規則相に起因するサテライトスポットが認められる。さらに、元素マッピング像から直径20 nm弱のNiとTiが濃化した微粒子が存在していた。

0045

図4Bは、溶体化処理(空冷)を施した造形材のSTEM-EDXによるHAADF像と元素マッピング像およびディフラクションパターンである。ディフラクションパターンに現れているサテライトスポット強度は図4Aで示した水冷材の場合よりも高くなっている。また、NiとTiが濃化した微粒子径は水冷材に比べて3倍以上も大きく、直径70nm程度であった。

0046

[HEA部材を用いた製造物]
図5は、本発明に係るHEA部材を用いた製造物の一例であり、流体機械のインペラを示す写真である。本発明のHEA製造物は金属粉末積層造形法により製造されることから、図5に示したような複雑形状物でも容易に造形することができる。また、本発明のHEA部材を用いたインペラは、高い機械的特性と高い耐食性とを兼ね備えることから、厳しい稼働環境下でも優れた耐久性を示すことができる。

0047

図6は、本発明に係るHEA部材を用いた製造物の他の一例であり、本発明のインペラが組み込まれた遠心圧縮機を示す断面模式図である。厳しい稼働環境下でも優れた耐久性を示す本発明のインペラを使用することにより、遠心圧縮機の長期信頼性の向上に寄与することができる。

0048

以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。

0049

実験1]
(HEA粉末P1〜P6の用意)
表1に示す名目組成で原料を混合し、真空溶解法により溶解して溶湯を形成する原料混合溶解工程を行った。次に、ガスアトマイズ法により、溶湯から合金粉末を形成するアトマイズ工程を行った。次に、得られた合金粉末に対して、ふるいによる分級を行って粒径45μm以下に選別してHEA粉末P1〜P6を用意した。

0050

0051

[実験2]
(擬溶体化造形体のHEA部材M1S-SW,M1S-SAの作製)
実験1で用意したHEA粉末P1に対し、図2に示したような粉末積層造形装置(EOS社製EOSINTM280)を用いて、積層造形工程の手順に沿ってSLM法による合金積層造形体(25mm×25mm×高さ70mmの角柱材、高さ方向が積層方向)を造形した。

0052

積層造形工程の後、合金積層造形体のHEA部材M1Sを取り出した。

0053

取出工程の後、HEA部材M1Sに対して擬溶体化熱処理(大気中、1120℃の温度で3時間保持した後、急冷)を施して、擬溶体化造形体のHEA部材M1S-Sを作製した。このとき、急冷方法として、炉から取り出した高温のHEA部材を室温の精製水に浸漬して水冷を行った試料をHEA部材M1S-SWとし、同じく高温のHEA部材をセラミックス板の上に置いて空冷を行った試料をHEA部材M1S-SAとした。

0054

(擬溶体化造形体のHEA部材M2S-SW,M2S-SA〜M6S-SW,M6S-SAの作製)
HEA粉末P2〜P6に対し、上記と同様にして積層造形工程と取出工程と擬溶体化熱処理工程とを行って、擬溶体化造形体のHEA部材M2S-SW〜M6S-SW,M2S-SA〜M6S-SAを作製した。

0055

[実験3]
(合金積層造形体のHEA部材M1S〜M6Sの作製)
実験1で用意したHEA粉末P1〜P6に対し、上記と同様にして積層造形工程と取出工程とを行って、合金積層造形体のHEA部材M1S〜M6Sを作製した。これら合金積層造形体は、擬溶体化熱処理工程を行っていない試料であり、擬溶体化熱処理の影響を確認するための基準試料となる。

0056

(普通鍛造材のHEA部材M1F〜M4Fの作製)
実験1で用意したHEA粉末P1〜P4に対し、銅製の水冷鋳型を用いたアーク溶解法により、インゴット(幅14mm×長さ80mm×高さ20mmの角柱材)を鍛造して、普通鍛造材のHEA部材M1F〜M4Fを作製した。鍛造時の元素偏析や組織斑をできるだけ抑制するため、5回以上繰り返し溶解を行った。その後、大気中で950℃で15分間加熱保持後、圧下率:30%、圧下速度:30mm/sの条件でプレス加工による熱間鍛造工程を2回繰り返した。なお、熱間鍛造後の冷却は空冷とした。これら普通鍛造材は、積層造形工程を行っていない試料であり、金属粉末積層造形の影響を確認するための基準試料となる。

0057

(擬溶体化造形体のHEA部材M1S-SW-Aの作製)
母相結晶中に分散析出した極小粒子の制御を意図して、実験2で用意したHEA部材M1S-SWに対して、さらに時効処理(大気中、600℃、700℃、800℃で1時間保持した後、空冷)を施した擬溶体化造形体のHEA部材M1S-SW-A600、M1S-SW-A700、M1S-SW-A800を得た。また、比較例として時効処理条件を大気中、500℃、900℃で1時間保持とした擬溶体化造形体のHEA部材M1S-SW-A500、M1S-SW-A900を作製した。

0058

[実験4]
(HEA部材の微細組織観察)
上記で作製した各HEA部材から微細組織観察用の試験片を採取し、光学顕微鏡、各種電子顕微鏡(SEM、TEM、STEM-EDX)およびX線回折(XRD)装置を用いて、微細組織観察を行った。各HEA部材の作製仕様と共に、微細組織観察結果を表2に示す。

0059

0060

表2に示したように、母相組織に関しては、普通鍛造材のHEA部材M1F〜M4Fは、平均粒径約150μmの等軸晶からなる組織を有していた。XRD測定の結果、当該等軸晶の結晶構造は、単純立方晶(SC)と面心立方晶(FCC)との混合であった(言い換えると、明確にFCCを含んでいた)。

0061

合金積層造形体のHEA部材M1S〜M4Sの母相組織は、微細な柱状晶(平均粒径40μm以下)が積層造形体の積層方向に沿って林立した組織(いわゆる局所急冷凝固組織)を有していた。XRD測定の結果、当該柱状晶の結晶構造は、単純立方晶(SC)と面心立方晶(FCC)との混合であった(言い換えると、明確にFCCを含んでいた)。なお、ここでいう柱状晶とは結晶粒の長軸長さの短軸長さに対する比が2以上の結晶と定義する。

0062

擬溶体化造形体のHEA部材の母相組織は、結晶形状が等軸晶からなるが、その平均粒径は擬溶体化熱処理の急冷方法や時効処理の有無によって若干の差異が見られた。具体的には、急冷方法として水冷した試料(M1S-SW〜M6S-SW)は、母相結晶の平均粒径が約60μmであった。急冷方法として空冷した試料(M1S-SA〜M6S-SA)は、母相結晶の平均粒径が約80μmであった。擬溶体化熱処理後に時効処理を行った試料(M1S-SW-A500,A600,A700)は、母相結晶の平均粒径がM1S-SWと同じ約60μmであった。また、擬溶体化熱処理後に時効処理を行った試料(M1S-SW-A800)は、母相結晶の平均粒径が約80μmであった。さらに、擬溶体化熱処理後に時効処理を行った試料(M1S-SW-A900)は、母相結晶の平均粒径が約100μmであった。XRD測定の結果、これら等軸晶の結晶構造は、いずれも単純立方晶(SC)と面心立方晶(FCC)との混合であった(言い換えると、明確にFCCを含んでいた)。また、これら母相結晶の中に平均粒径100nm以下の微粒子が生じたことをTEM、STEM-EDX によって確認し、さらに、この微粒子ではNi成分とTi成分とが母相結晶よりも濃化していることを確認した。

0063

[実験5]
(HEA部材の機械的特性および耐食性の測定)
上記で作製した各HEA部材から引張試験用の試験片(平行部直径:4 mm、平行部長さ:20 mm)を採取した。なお、合金積層造形体および擬溶体化合金造形体のHEA部材は、試験片長手方向が積層造形方向と一致するように採取した。

0064

各試験片に対して、材料万能試験機を用いて室温引張試験を行い(JIS Z 2241に準拠ひずみ速度:5×10-5s-1)、引張強さと破断伸びとを測定した。引張試験の測定結果は、5測定のうちの最大値最小値とを除いた3測定の平均値として求めた。引張強さの評価は、1100MPa以上を「合格」と判定し、1100MPa未満を「不合格」と判定した。また、破断伸びの評価は、10%以上を「合格」と判定し、10%未満を「不合格」と判定した。結果を後述する表3に示す。

0065

また、上記で作製した各HEA部材から孔食試験用分極試験片(縦15 mm×横15 mm×厚さ2 mm)を採取した。孔食試験は、各分極試験片に対してJIS G 0577に準拠して行った。具体的には、「試験面積:1 cm2、分極試験片にすきま腐食防止電極を装着、参照電極飽和銀塩化銀電極試験溶液アルゴンガス脱気した3.5%塩化ナトリウム水溶液試験温度:80℃、電位掃引速度:20mV/min」の条件下で分極試験片のアノード分極曲線を測定して、電流密度100μA/cm2に対応する孔食発生電位を求めた。孔食発生電位の評価は、0.50 V以上を「合格」と判定し、0.50 V未満を「不合格」と判定した。孔食試験の結果を表3に併記する。

0066

0067

表3に示したように、積層造形工程を行っていない試料である普通鍛造材のHEA部材M1F〜M4Fは、引張強さが1100MPa未満かつ破断伸びが10%未満であり、機械的特性が不合格であった。積層造形工程を行ったが、擬溶体化熱処理工程を行っていない試料である合金積層造形体のHEA部材M1S〜M3S、M5S〜M6Sは、1100MPa以上の引張強さを有し、且つ破断伸びが10%以上であり、良好な機械的特性を示すことが実証された。

0068

合金組成(Mo量)が本発明の規定を外れるHEA粉末P4を用いて作製したHEA部材は、製造方法に依らず機械的特性が不合格であった。この結果から、8原子%超のMo添加が好ましくないことが確認された。

0069

また、擬溶体化熱処理後に時効処理を施すことによって微小粒子成長を図ったHEA部材M1S-SW-A600、M1S-SW-A700、M1S-SW-A800はそれぞれ析出物の平均粒径が時効処理を施さないM1S-SWよりも大きくなり、破断伸びを10%以上に保持しつつ、引張強さを改善した。一方で、擬溶体化熱処理後の時効処理温度を500℃としたHEA部材M1S-SW-A500の特性は時効処理を施さないH1S-SWと同等であり、時効処理温度を900℃としたHEA部材M1S-SW-A900(極小粒子の平均粒径100nm超)は、機械的特性が著しく低下した。この結果から、母相結晶中に分散析出する極小粒子の平均粒径は、100 nm以下が好ましいことが確認された。

0070

擬溶体化合金造形体のHEA部材M1S-SW〜M3S-SW,M1S-SA〜M3S-SA、およびM5S-SW〜M6S-SW,M5S-SA〜M6S-SAは、1100MPa以上の引張強さと10%以上の破断伸びとを示し、良好な機械的特性を有していることが実証された。

0071

より詳細に見ると、Ni成分とTi成分との含有率が相対的に低いHEA粉末P6を用いて作製したHEA部材M6S-SW,M6S-SAは、25%以上の破断伸びが得られ、延性が特に優れることが確認された。また、HEA粉末P6に比してNi成分とTi成分との含有率が高いHEA粉末P1〜P3,P5を用いて作製したHEA部材M1S-SW,M1S-SA〜M3S-SW,M3S-SAおよびM5S-SW,M5S-SAは、1200MPa以上の引張強さが得られ、機械的強度が特に優れることが確認された。

0072

一方、耐食性に関しては、いずれのHEA部材も0.50 V vs. Ag/AgCl以上の孔食発生電位を示し、製造方法や微細組織に依らず、優れた耐食性を有することが確認された。言い換えると、本発明のHEA部材は、その元素の組み合わせ自体(Co-Cr-Fe-Ni-Ti-Mo)によって、優れた耐食性を有すると考えられる。なお、本発明の実施例である擬溶体化合金造形体のHEA部材は、他のHEA部材よりも高い孔食発生電位を示したことから、より高い耐食性を有することが期待される。

0073

[実験6]
(HEA部材を用いた製造物の作製・検査
擬溶体化合金造形体のHEA部材M1E-SWの製造方法と同様の手順により、図5に示したインペラを作製した。得られたインペラに対して、X線CTスキャンによる内部欠陥検査と、寸法測定とを行った。その結果、機械的特性に悪影響を及ぼすような内部欠陥は認められず、設計寸法に対する変形も認められなかった。本実験から、本発明の有効性が確認された。

実施例

0074

上述した実施形態や実施例は、本発明の理解を助けるために説明したものであり、本発明は、記載した具体的な構成のみに限定されるものではない。例えば、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。すなわち、本発明は、本明細書の実施形態や実施例の構成の一部について、削除したり、他の構成に置換したり、また他の構成の追加をすることが可能である。

0075

10…溶湯、20…合金粉末、100…SLM粉末積層造形装置、101…合金積層造形体、102…ステージ、103…ベースプレート、104…パウダー供給用コンテナ、105…合金粉末、160…リコータ、107…粉末床(層状粉末)、108…レーザ発振器、109…レーザ、110…ガルバノメーターミラー、111…未溶融粉末回収用コンテナ、112…2Dスライス形状の凝固層
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。

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