図面 (/)
課題
解決手段
概要
背景
ロケットエンジンターボポンプなどの高速回転軸では、危険速度での強制振動や自励振動など、軸振動が問題になることが多い。
ジェットエンジンなどでは、回転軸の振動減衰装置として、スクイーズフィルムダンパという、潤滑油の粘性を用いて振動減衰効果を得るものが採用されている。
しかしながら、オイルレス機器や、極低温下で運転されるロケットエンジンターボポンプなどでは、潤滑油を用いることができない。
そこで、従来、ロケットエンジンターボポンプなどの高速回転軸の振動減衰装置として、回転軸と、機器ハウジングとの間に、リング状のワイヤーメッシュを配置し、回転軸の振動によって生じた力により、リング状のワイヤーメッシュを変形させて、ワイヤー間で生じる摩擦により、振動エネルギーを散逸させて、回転軸の振動を減衰させるワイヤーメッシュダンパと呼ばれている振動減衰装置が、特許文献1に開示されている。
この特許文献1に紹介されているワイヤーメッシュダンパは、回転軸に減衰力を直接作用させることはできるものの、ワイヤーメッシュをリング状に圧縮させて減衰作用を得るため、装置ごとにワイヤーメッシュの配置や形状が異なり易く、減衰性能にばらつきが生じるという問題がある。
また、非特許文献1には、ワイヤーメッシュダンパと同様、極低温下で作動する機器やオイルフリー機器を対象とした振動減衰装置として、球状粒子をダンパ要素にすることが紹介されている。
この非特許文献1に紹介されている球状粒子をダンパ要素にした振動減衰装置は、概ね、図7に示すような構造である。
図7に示すように、球状粒子20をダンパ要素にした振動減衰装置21は、回転機械における回転軸22を支持する軸受23の外面に、間隔をあけて配置される回転機械の機器ハウジング24と、この機器ハウジング24の内周面と軸受23の外面との間に配置された、機器ハウジング24に対して半径方向に変位可能な内筒25と、この内筒25の外周面と機器ハウジング24の内周面との間に設けられた、振動摩擦により制振作用を生じる球状粒子20を充填した収容空間26と、この収容空間26の軸方向の端部に配置された、収容空間26内に充填された球状粒子20に対して軸方向の予圧(予荷重)を与える予圧リング27と、を備えている。
この球状粒子20をダンパ要素にした振動減衰装置21は、回転機械における回転軸22にラジアル方向の軸振動が発生すると、軸受23を介して内筒25に半径方向の変位が生じ、その変位によって収容空間26内の球状粒子20が流動し、この流動により、球状粒子20どうし、球状粒子20と内筒25との間、球状粒子20と機器ハウジング24との間で摩擦が発生し、この摩擦によって振動エネルギーが散逸し、ダンパとしての役割を果たす。
球状粒子20をダンパ要素にした場合、その特性に影響を及ぼすと考えられるパラメータは、球状粒子20の粒子直径、内筒25の外径、機器ハウジング24の内径、収容空間26の長さ、予圧リング27による予荷重、球状粒子20の粒子材料、球状粒子20どうし、および機器との摩擦係数(表面材質で管理)であり、これらは工業的に特性管理が可能であり、ワイヤーメッシュダンパに比べて品質安定性の向上が期待できる。
上記した非特許文献1に開示された構造の振動減衰装置は、効果的に高い減衰性能を得るためには、予荷重を大きくすることが必要と考えられる。これは、球状粒子を収容した収容空間内において、球状粒子20に対して軸方向に与える予荷重を大きくすると、球状粒子が密接して圧力がかかり、球状粒子間の摩擦力が大きくなることで、減衰効果が大きくすることができるからである。
概要
軸受等の周辺部品に大きな負荷がかからないダンパ剛性の大きさで、高い減衰性能が得られる軸受の振動減衰装置を提供する。機器ハウジング3に対して半径方向に変位可能な内筒4と、内筒4の外周面と機器ハウジング3の内周面との間に設けられた、振動摩擦により制振作用を生じる球状粒子6を充填する収容空間7と、収容空間7内に充填された球状粒子6に対して軸方向の予荷重を与える予圧リング13bとを備える軸受の振動減衰装置1において、 前記軸受の剛性をKb、収容空間の体積をVb、予荷重をFpとした時、 Fp<(Kb・Vb)/(1.6×104)を満たす予荷重Fpを予圧リング13bに与える。
目的
効果
実績
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この技術が所属する分野
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請求項1
回転機械における回転軸を支持する軸受の外面に、間隔をあけて配置される機器ハウジングと、この機器ハウジングの内周面と軸受の外面との間に隙間をあけて配置された、機器ハウジングに対して半径方向に変位可能な内筒と、この内筒の外周面と機器ハウジングの内周面との間に設けられた、振動摩擦により制振作用を生じる球状粒子を充填する収容空間と、この収容空間の軸方向の側方に配置された、収容空間内に充填された球状粒子に対して軸方向の予荷重を与える予圧リングとを備える軸受の振動減衰装置において、前記軸受の剛性をKb、収容空間の体積をVb、予荷重をFpとした時、Fp<(Kb・Vb)/(1.6×104)…(1)を満たす予荷重Fpを予圧リングに与えることを特徴とする軸受の振動減衰装置。
請求項2
前記内筒と機器ハウジングとをばね部材を介して結合することを特徴とする請求項1に記載の軸受の振動減衰装置。
請求項3
前記球状粒子を充填する収容空間の軸方向の両側に、機器ハウジングの内周面と内筒の外周面との間に設けられた隙間から前記球状粒子の摩耗粉の流出を防止する耐粉塵シールを設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の軸受の振動減衰装置。
請求項4
請求項5
前記空気抜き用流路に耐粉塵フィルタを設置したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の軸受の振動減衰装置。
請求項6
前記球状粒子がSUS440CまたはSi3N4からなる請求項1〜5のいずれかに記載の軸受の振動減衰装置。
請求項7
前記球状粒子がすべて同一サイズである請求項6に記載の軸受の振動減衰装置。
請求項8
前記球状粒子が異なるサイズの組み合わせからなる請求項6に記載の軸受の振動減衰装置。
技術分野
背景技術
0005
そこで、従来、ロケットエンジンターボポンプなどの高速回転軸の振動減衰装置として、回転軸と、機器ハウジングとの間に、リング状のワイヤーメッシュを配置し、回転軸の振動によって生じた力により、リング状のワイヤーメッシュを変形させて、ワイヤー間で生じる摩擦により、振動エネルギーを散逸させて、回転軸の振動を減衰させるワイヤーメッシュダンパと呼ばれている振動減衰装置が、特許文献1に開示されている。
0006
この特許文献1に紹介されているワイヤーメッシュダンパは、回転軸に減衰力を直接作用させることはできるものの、ワイヤーメッシュをリング状に圧縮させて減衰作用を得るため、装置ごとにワイヤーメッシュの配置や形状が異なり易く、減衰性能にばらつきが生じるという問題がある。
0008
この非特許文献1に紹介されている球状粒子をダンパ要素にした振動減衰装置は、概ね、図7に示すような構造である。
0009
図7に示すように、球状粒子20をダンパ要素にした振動減衰装置21は、回転機械における回転軸22を支持する軸受23の外面に、間隔をあけて配置される回転機械の機器ハウジング24と、この機器ハウジング24の内周面と軸受23の外面との間に配置された、機器ハウジング24に対して半径方向に変位可能な内筒25と、この内筒25の外周面と機器ハウジング24の内周面との間に設けられた、振動摩擦により制振作用を生じる球状粒子20を充填した収容空間26と、この収容空間26の軸方向の端部に配置された、収容空間26内に充填された球状粒子20に対して軸方向の予圧(予荷重)を与える予圧リング27と、を備えている。
0010
この球状粒子20をダンパ要素にした振動減衰装置21は、回転機械における回転軸22にラジアル方向の軸振動が発生すると、軸受23を介して内筒25に半径方向の変位が生じ、その変位によって収容空間26内の球状粒子20が流動し、この流動により、球状粒子20どうし、球状粒子20と内筒25との間、球状粒子20と機器ハウジング24との間で摩擦が発生し、この摩擦によって振動エネルギーが散逸し、ダンパとしての役割を果たす。
0011
球状粒子20をダンパ要素にした場合、その特性に影響を及ぼすと考えられるパラメータは、球状粒子20の粒子直径、内筒25の外径、機器ハウジング24の内径、収容空間26の長さ、予圧リング27による予荷重、球状粒子20の粒子材料、球状粒子20どうし、および機器との摩擦係数(表面材質で管理)であり、これらは工業的に特性管理が可能であり、ワイヤーメッシュダンパに比べて品質安定性の向上が期待できる。
0012
上記した非特許文献1に開示された構造の振動減衰装置は、効果的に高い減衰性能を得るためには、予荷重を大きくすることが必要と考えられる。これは、球状粒子を収容した収容空間内において、球状粒子20に対して軸方向に与える予荷重を大きくすると、球状粒子が密接して圧力がかかり、球状粒子間の摩擦力が大きくなることで、減衰効果が大きくすることができるからである。
0013
特開平3−41211号公報
先行技術
発明が解決しようとする課題
0015
上記した非特許文献1に開示された構造の振動減衰装置においては、効果的に高い減衰性能を得るためには予荷重を大きくする必要がある。本発明者等は、上記構造の軸受の振動減衰装置において、与える予荷重を検討したところ、予荷重を大きくするとダンパとしての剛性(以下、ダンパ剛性という。)が大きくなるということが分かった。ダンパ剛性が大きくなると、振動が発生した場合に、減衰効果を発揮する前に軸受等の周辺部品に大きな負荷がかかって、部品の損傷を招く虞がある。
0016
そこで、この発明は、軸受等の周辺部品に大きな負荷がかからないダンパ剛性の大きさで、高い減衰性能が得られる軸受の振動減衰装置を提供しようとするものである。
課題を解決するための手段
0017
本発明者等は、軸支持剛性に対するダンパ剛性と軸受剛性との関係について、鋭意検討したところ、ダンパ剛性と軸受剛性によって軸支持剛性に影響があることは分かった。そして、ダンパ剛性と軸受剛性の関係により、ダンパ機能を果たさなくなる領域があることが分かった。
0018
このことから、ダンパの機能を果たすためには、ダンパ剛性と軸受剛性との間には所定の比率があることが分かった。
0019
次に、本発明者等は、上記した構造の軸受の振動減衰装置において、球状粒子を充填する収容空間の体積当たりに与える予荷重を種々変化させて、そのときのダンパ剛性を求め、予荷重とダンパ剛性の関係を検討した。この結果、予荷重は所定の値以下にすることが良いことが分かった。
0021
この発明は、かかる知見に基づいてなされたものであり、回転機械における回転軸を支持する軸受の外面に、間隔をあけて配置される機器ハウジングと、この機器ハウジングの内周面と軸受の外面との間に隙間をあけて配置された、機器ハウジングに対して半径方向に変位可能な内筒と、この内筒の外周面と機器ハウジングの内周面との間に設けられた、振動摩擦により制振作用を生じる球状粒子を充填する収容空間と、この収容空間の軸方向の側方に配置された、収容空間内に充填された球状粒子に対して軸方向の予荷重を与える予圧リングとを備える軸受の振動減衰装置において、
前記軸受の剛性をKb、収容空間の体積をVb、予荷重をFpとした時、
Fp<(Kb・Vb)/(1.6×104)…(1)
を満たす予荷重Fpを予圧リングに与えることを特徴とする。
0022
前記内筒と機器ハウジングとをばね部材を介して結合することが好ましい。
0023
ばね部材介して結合することで、前記内筒を機器ハウジングの軸に一致させることができる。
0027
前記空気抜き用流路により、前記収容空間内部の空気を外部環境に放出し、外部環境から前記収容空間内部に極低温気体または極低温液体と流入させる。これにより、空気と極低温気体または極低温液体と置換することがすることができ、前記収容空間の内部に存在する空気に含まれる水分の凝固により、粒子間の動きが抑制されることを防止し、極低温環境でも粒子の動きを発生させ、減衰特性を得ることができる。
0028
この空気抜き用流路に耐粉塵フィルタを設置しておくことが好ましい。
前記耐粉塵フィルタを形成する材質としては、メタ型全芳香族ポリアミドまたはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる不織布とすることが好ましい、前記不織布により前記球状粒子の摩耗粉の流出防止ができ、かつ、前記耐粉塵フィルタが前記空気抜き用流路に設置された状態のまま、前記収容空間内部の空気を外部環境に放出し、外部環境から前記収容空間内部に極低温気体または極低温液体と流入させることができる。
0029
前記耐粉塵フィルタを形成する材質としては、SUS304、SUS316などのオーステナイト系ステンレスなどを用いた多孔質焼結金属とすることができる。オーステナイト系ステンレスにより異物の形状に合わせて、メッシュの形状および寸法を選択することができる。
0030
前記球状粒子は、SUS440CまたはSi3N4などからなるものを使用することができ、すべて同一サイズであるもの、または、異なるサイズのものを組み合わせて使用してもよい。
発明の効果
0031
以上のように、この発明に係る軸受の振動減衰装置では、予荷重を上記の式(1)を満たす範囲に設定することにより、ダンパ剛性が軸受剛性に対して大きくなりすぎずに、減数効果を大きくして、周辺部品の損傷することなく、軸受の振動減衰装置を使用することができる。
図面の簡単な説明
0032
この発明に適用される球状粒子をダンパ要素にした振動減衰装置の構成を示す概略断面図である。
図1の球状粒子を充填した収容空間部分の拡大図である。
図1の振動減衰装置の機器ハウジングと内筒との関係を示す斜視図である。
機器ハウジングと回転軸との間のダンパ剛性と軸受剛性の関係を線形ばねとして解析した説明図である。
軸支持剛性に対するダンパ剛性と軸受剛性との影響度をシミュレーションした特性図である。
予荷重とダンパ剛性との関係をシミュレーションした特性図である。
非特許文献1に紹介されている球状粒子をダンパ要素にした振動減衰装置の概略図である。
実施例
0033
まず、この発明が適用される球状粒子をダンパ要素にした振動減衰装置1の構成について添付図面に基づいて説明する。
0034
回転機械における回転軸2は、円筒形の機器ハウジング3の内周面に、内筒4と軸受5を介して回転可能に支持されている。この発明においては、軸受5として、内輪5aと、外輪5bと、内輪5aと外輪5bの間に収容される転動体5cとからなる転がり軸受を使用している。
0035
前記機器ハウジング3の内周面と内筒4の外周面との間には、ダンパ要素である球状粒子6を収容する収容空間7が設けられている。
0036
前記機器ハウジング3および内筒4を形成する材質としては、ニッケル合金、SUS304、SUS304L、SUS316、SUS16L、SUS316LNなどを使用することができる。
0037
内筒4の軸方向の一端には、内筒4を機器ハウジング3に対して半径方向に変位可能に支持し、内筒4を機器ハウジング3の軸に一致させるように弾性支持する内筒支持用ばね8が周方向に等間隔で設けられている。
0038
内筒支持用ばね8は、図1および図3に示すように、機器ハウジング3の軸方向の外方に延びる突出片8aと、この突出片8aの外方端から半径方向の外径側に屈曲する屈曲片8bと、この屈曲片8bの外径端から軸方向に折り返された折返し片8cとからなるコ字形をしており、折返し片8cの端部が機器ハウジング3の外径部に係合している。
0039
機器ハウジング3の内周面の一端には、収容空間7の一方の端面を形成する内向きフランジ3aが形成され、この内向きフランジ3aの内周面と、内筒4の外周面との間には、内筒4の半径方向の変位を可能にする隙間aを設けており、この隙間aはダンパ要素である球状粒子6が漏れ出さない大きさに設定されている。
0040
前記内筒支持用ばね8が係合する機器ハウジング3の内向きフランジ3aと軸方向反対側の外周面には、半径方向の外径に向かって突出する固定フランジ3bが形成され、この固定フランジ3bに、前記収容空間7の他方の端面を形成するリング板9がボルト10によって固定されている。
0041
前記収容空間7の軸方向の両端には、軸方向に移動しない一対の固定リング11a、11bが配置されている。この一対の固定リング11a、11bの内周面と内筒4の外周面との間には、内筒4の半径方向の変位を可能にする隙間bを設けており、この隙間bはダンパ要素である球状粒子6が漏れ出さない大きさに設定されている。
0042
この一対の固定リング11a、11bの一方の固定リング11bの前記収容空間7側には、予荷重用ばね13aを介して予圧リング13bが軸方向に移動可能に設けられている。この予圧リング13bの内周面と内筒4の外周面との間にも、内筒4の半径方向の変位を可能にする隙間cを設けており、この隙間cはダンパ要素である球状粒子6が漏れ出さない大きさに設定されている。
0043
前記収容空間7には、球状粒子6が充填されている。球状粒子6としては、例えば、粒子直径が1mm程度の鋼球(SUS440C)やセラミック球(Si3N4)などを使用することができる。前記球状粒子6は、すべて同一サイズでもよいし、異なるサイズの組み合わせでもよい。
0044
前記収容空間7に設けられた固定リング11a、11bの軸方向の外方には、収容空間7に充填した球状粒子6の摩擦によって発生する摩耗粉が外部に漏れださないように、耐粉塵シール12a、12bを設置している。
0046
上記した予荷重用ばね13aにより与える予荷重を大きくすることにより、減衰効果を大きくすることができる。この予荷重を大きくすることで、球状粒子6が圧縮された状態となり、摩擦力が増え、減衰効果が増す。しかし、予荷重を大きくするとダンパ剛性も大きくなることは解析的に分かっている。一方、ダンパ剛性が大きすぎると、振動が生じた際に、ダンパの内筒4と機器ハウジング3間に十分な変位が生じる前に、軸受5等の周辺部品にも大きな負荷が生じてしまうため、周辺部品を損傷する虞がある。そこで、後述するように、この発明では、予荷重を周辺機器に損傷を与える虞がない大きさのダンパ剛性にして、減衰効果が大きくて使用できる範囲に設定したものである。
0047
ところで、ロケットエンジンターボポンプは、燃焼器に推進剤を圧送する回転機械であり、推進剤として主に液体酸素および液体水素を使用するため、回転軸2の軸受5の近傍は極低温環境になる。このような、極低温で使用される機器の場合、極低温環境にする前に、球状粒子6を充填した収容空間7内の空気に含まれる水分が凍らないように、収容空間7内の空気を、推進剤のガス(例えば、水素ガス、酸素ガス)で置換しておくことが望ましい。
0048
ところが、前記収容空間7を、前記のように、耐粉塵シール12a、12bによって密封すると、前記収容空間7内に充填された球状粒子6間の空気抜きができないため、前記収容空間7内を推進剤のガスで置換することができない。
0049
このため、図1に示す形態では、前記収容空間7の内部と外部環境とを繋ぐ空気抜き用流路14を機器ハウジング3とリング板9との間に設置している。
0050
また、前記空気抜き用流路14の出口に耐粉塵フィルタを設置することが好ましい。
0051
次に、球状粒子6をダンパ要素にした振動減衰装置の作用について説明する。
0052
図1の矢印X1に示すように、振動によって軸変位が生じた場合、加振力は軸受5を通じて、内筒4を矢印X2に示すように、半径方向に変動させる。この内筒4の変動により、内筒4と機器ハウジング3との間の収容空間7に充填された球状粒子6が流動し、球状粒子6どうし、球状粒子6と内筒4間、球状粒子6と機器ハウジング3との間でそれぞれ摩擦が生じ、この摩擦によって振動エネルギーが散逸し、振動が減衰される。
0053
本発明者等は、上記した図1の構造の振動減衰装置1において、軸支持剛性に対するダンパ剛性と軸受剛性との関係について鋭意検討した。軸受5の外輪5bと機器ハウジング3の内周面との間の剛性は、図4に示すように、直列に接続した線形ばねの関係と見なすことができる。
0054
直列に接続した線形ばねと考えた場合、軸支持剛性は、下記の式(3)に示す関係となる。
0055
0056
上記において、Ksは軸支持剛性、Kcはダンパ剛性、Kbは軸受剛性である。
0057
上記式(3)に基づき、軸支持剛性Ksに対するダンパ剛性Kcと軸受剛性Kbの関係をシミュレーションにより求めた。この関係を図5に示す。
0058
図5において、縦軸は、軸支持剛性Ksと軸受剛性Kbとの比の値、横軸は、ダンパ剛性Kcと軸受剛性Kbとの比の値である。この図5より、ダンパ剛性Kcと軸受剛性Kbによって軸支持剛性Ksに影響があることが分かる。
0059
そして、この図5からダンパ剛性Kcと軸受剛性Kbとの比が100を超えると、軸受剛性Kbが支配的になり、ダンパ効果が期待できない、このことから軸受剛性Kbがダンパ剛性Kcの100倍未満、即ち、100・Kb<Kcの関係を満たすと良いことが分かった。
0060
次に、本発明者等は、上記した構造の振動減衰装置1において、収容空間7の空間体積当たりに与える予荷重(N/mm3)を種々変化させて、そのときのダンパ剛性Kcを求めるシミュレーションを行い、予荷重とダンパ剛性Kcの関係を検討した。この結果を図6に示す。ここで、予荷重をFp(N)、粒子充填部の体積をVb(mm3)とする。
0062
そして、図5により、ダンパ剛性Kcが軸受剛性Kbの100倍未満がよいため、予荷重Fpは下記の数式(4)を満足する値であれば、ダンパ剛性Kcが大きくなりすぎることなく、減衰効果が大きな軸受の振動減衰装置1が得られる。
0063
Fp<(Kb・Vb)/(1.6×104)…(4)
0064
上記した範囲の予荷重Fpを収容空間7に充填された球状粒子6に与えるようにすればよい。
0065
上記の範囲を満足する予荷重Fpの範囲で、予荷重Fpを大きくすれば、効果的に高い減衰性能を得られると共に、ダンパ剛性Kcも周辺部品を損傷するほどの大きさなることはない。
0066
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
0067
1 :振動減衰装置
2 :回転軸
3 :機器ハウジング
4 :内筒
5 :軸受
6 :球状粒子
7 :収容空間
8 :内筒支持用ばね
9 :リング板
10 :ボルト
11a、11b :固定リング
12a、12b :耐粉塵シール
13a :予荷重用ばね
13b :予圧リング
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