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技術 ガラス組成物、ガラス繊維、ガラスクロスおよびガラス繊維の製造方法

出願人 日本板硝子株式会社ユニチカ株式会社ユニチカグラスファイバー株式会社
発明者 伊中禎之宮崎崇治名和慶東西中大介関田知喜
出願日 2019年3月27日 (1年3ヶ月経過) 出願番号 2019-059861
公開日 2019年9月26日 (9ヶ月経過) 公開番号 2019-163202
状態 未査定
技術分野 織物 ガラス組成物(第三版) 無機絶縁材料
主要キーワード 耐熱体 引出速度 引出量 ヒートクリーニング処理 高実装化 平均フィラメント径 ダイレクトメルト法 フィンガー間
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課題

本開示のガラス組成物低誘電率であって、このガラス組成物によれば、当該組成物から形成するガラス繊維繊維径が小さい場合あるいは形成するガラス成形体の厚さが小さい場合においても、当該ガラス繊維またはガラス成形体における失透の発生および泡の混入をより抑制できる。

解決手段

本開示のガラス組成物は、重量%で表示して、50≦SiO2≦54、25≦B2O3≦30、12≦Al2O3≦15、0.5≦MgO≦1.9、3.0≦CaO≦5.5、0≦ZnO≦3.5、0.1≦Li2O≦0.5および0.1≦Na2O≦0.3を含み、周波数MHzにおける誘電率が5.0未満である。

概要

背景

電子機器が備えるプリント回路板(printed circuit board)の一種に、樹脂ガラス繊維無機充填材、ならびに硬化剤および改質剤といったその他の必要な材料から構成される基板がある。また、電子部品実装される前のプリント配線板(printed wiring board)も、同様の構成を有しうる。以下、本明細書では、プリント回路板およびプリント配線板の両者を合わせて「プリント基板(printed board)」と呼ぶ。このようなプリント基板においてガラス繊維は、絶縁体耐熱体および当該基板の補強材として機能する。ガラス繊維は、例えば、複数のガラス繊維を引き揃えたガラス糸ガラスヤーン)を織物としたガラスクロスとして、プリント基板に含まれうる。近年、電子機器の小型化の要求と、高機能化のためのプリント基板の高実装化の要求とに応えるために、プリント基板の薄型化が進んでいる。これに伴い、プリント基板に使用するガラス繊維として、より繊維径の小さいガラス繊維が求められている。また、大容量のデータを高速伝送処理する要求が急激に高まっていることなどに伴い、プリント基板に使用するガラス繊維には低誘電率化が求められている状況にある。

プリント基板に使用される無機充填剤にもガラスが用いられることがある。典型的な例は、フレーク状ガラスである。フレーク状ガラスといったガラス成形体をプリント基板の無機充填剤に使用する場合、当該成形体には、プリント基板に用いられるガラス繊維と同様の特性、例えば、低誘電率化が要求される。また、プリント基板の薄型化に対応するためには、より薄肉化された、厚さの小さいガラス成形体としなければならない。

低誘電率ガラス組成物から構成されるガラス繊維が、例えば、特許文献1〜3に開示されている。特許文献2には、当該文献のガラス組成物がMgOを実質的に含まず、Li2O、Na2OおよびK2Oを実質的に含まず、TiO2を実質的に含まないことが記載されている(特許請求の範囲、段落0008)。

概要

本開示のガラス組成物は低誘電率であって、このガラス組成物によれば、当該組成物から形成するガラス繊維の繊維径が小さい場合あるいは形成するガラス成形体の厚さが小さい場合においても、当該ガラス繊維またはガラス成形体における失透の発生および泡の混入をより抑制できる。本開示のガラス組成物は、重量%で表示して、50≦SiO2≦54、25≦B2O3≦30、12≦Al2O3≦15、0.5≦MgO≦1.9、3.0≦CaO≦5.5、0≦ZnO≦3.5、0.1≦Li2O≦0.5および0.1≦Na2O≦0.3を含み、周波数MHzにおける誘電率が5.0未満である。なし

目的

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

重量%で表示して、50≦SiO2≦5425≦B2O3≦3012≦Al2O3≦150.5≦MgO≦1.93.0≦CaO≦5.50≦ZnO≦3.50.1≦Li2O≦0.50.1≦Na2O≦0.3を含み、周波数MHzにおける誘電率が5.0未満であるガラス組成物

請求項2

重量%で表示して、25≦B2O3≦28である請求項1に記載のガラス組成物。

請求項3

重量%で表示して、0.5≦MgO≦1.5である請求項1に記載のガラス組成物。

請求項4

重量%で表示して、25≦B2O3≦280.5≦MgO≦1.5である請求項1に記載のガラス組成物。

請求項5

重量%で表示して、25≦B2O3≦2714≦Al2O3≦15である請求項1に記載のガラス組成物。

請求項6

重量%で表示して、25≦B2O3≦26.6である請求項1に記載のガラス組成物。

請求項7

重量%で表示して、50≦SiO2≦52.5である請求項1に記載のガラス組成物。

請求項8

重量%で表示して、0.5≦MgO≦1.3である請求項1に記載のガラス組成物。

請求項9

重量%で表示して、0.5≦MgO≦1.0である請求項1に記載のガラス組成物。

請求項10

重量%で表示して、1.2≦MgO≦1.50.4≦Li2O+Na2O≦0.8である請求項1に記載のガラス組成物。

請求項11

重量%で表示して、1.5≦ZnO≦3.5である請求項1に記載のガラス組成物。

請求項12

ZnOを実質的に含まず、重量%で表示して、1.2≦MgO≦1.9である請求項1に記載のガラス組成物。

請求項13

MgOおよびCaOの含有率の合計が5.5重量%以上である請求項10に記載のガラス組成物。

請求項14

重量%で表示して、実質的に50≦SiO2≦5425≦B2O3≦3012≦Al2O3≦150.5≦MgO≦1.93.0≦CaO≦5.50≦ZnO≦3.50.1≦Li2O≦0.50.1≦Na2O≦0.3からなる請求項1に記載のガラス組成物。

請求項15

ガラス繊維用である請求項1に記載のガラス組成物。

請求項16

平均繊維径が3〜6μmのガラス繊維用である請求項1に記載のガラス組成物。

請求項17

請求項1〜16のいずれかに記載のガラス組成物から構成されるガラス繊維。

請求項18

平均繊維径が3〜6μmである請求項17に記載のガラス繊維。

請求項19

平均繊維径が3〜4.3μmである請求項17に記載のガラス繊維。

請求項20

強度が0.4N/tex以上である請求項17に記載のガラス繊維。

請求項21

請求項17に記載のガラス繊維から構成されるガラスクロス

請求項22

厚さが10〜20μmである請求項21に記載のガラスクロス。

請求項23

請求項1〜16のいずれかに記載のガラス組成物を1400℃以上の温度で熔融する工程を含み、平均繊維径が3〜6μmのガラス繊維を得る、ガラス繊維の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、ガラス組成物と、当該組成物により構成されるガラス繊維およびガラスクロスとに関する。また、本発明は、ガラス繊維の製造方法に関する。

背景技術

0002

電子機器が備えるプリント回路板(printed circuit board)の一種に、樹脂、ガラス繊維、無機充填材、ならびに硬化剤および改質剤といったその他の必要な材料から構成される基板がある。また、電子部品実装される前のプリント配線板(printed wiring board)も、同様の構成を有しうる。以下、本明細書では、プリント回路板およびプリント配線板の両者を合わせて「プリント基板(printed board)」と呼ぶ。このようなプリント基板においてガラス繊維は、絶縁体耐熱体および当該基板の補強材として機能する。ガラス繊維は、例えば、複数のガラス繊維を引き揃えたガラス糸ガラスヤーン)を織物としたガラスクロスとして、プリント基板に含まれうる。近年、電子機器の小型化の要求と、高機能化のためのプリント基板の高実装化の要求とに応えるために、プリント基板の薄型化が進んでいる。これに伴い、プリント基板に使用するガラス繊維として、より繊維径の小さいガラス繊維が求められている。また、大容量のデータを高速伝送処理する要求が急激に高まっていることなどに伴い、プリント基板に使用するガラス繊維には低誘電率化が求められている状況にある。

0003

プリント基板に使用される無機充填剤にもガラスが用いられることがある。典型的な例は、フレーク状ガラスである。フレーク状ガラスといったガラス成形体をプリント基板の無機充填剤に使用する場合、当該成形体には、プリント基板に用いられるガラス繊維と同様の特性、例えば、低誘電率化が要求される。また、プリント基板の薄型化に対応するためには、より薄肉化された、厚さの小さいガラス成形体としなければならない。

0004

低誘電率のガラス組成物から構成されるガラス繊維が、例えば、特許文献1〜3に開示されている。特許文献2には、当該文献のガラス組成物がMgOを実質的に含まず、Li2O、Na2OおよびK2Oを実質的に含まず、TiO2を実質的に含まないことが記載されている(特許請求の範囲、段落0008)。

先行技術

0005

特開昭62-226839号公報
特表2010-508226号公報
特開2009-286686号公報

発明が解決しようとする課題

0006

従来の低誘電率ガラス組成物では、ガラス繊維へ紡糸する際に、必ずしも失透の発生を十分に抑制できない。特に、繊維径の小さいガラス繊維を紡糸する際、およびガラス組成物を一度マーブルあるいは棒状といった成形体に成形し、当該成形体を再熔融してガラス繊維を紡糸する(典型的な例として、マーブルメルト法によりガラス繊維を製造する)際に、この傾向が強くなる。本発明者らの検討によれば、特許文献1に開示されているような繊維径の比較的大きなガラス繊維(繊維径にして8〜13μm)の紡糸ではガラス繊維の強度および紡糸時の糸切れに影響しないような微小結晶(失透)が、繊維径の小さいガラス繊維を紡糸する際に大きく影響することが判明した。また、この傾向について、繊維径の小さいガラス繊維を紡糸しようとする場合には熔融ガラス引出量を小さくしなければならない、すなわちガラス組成物を失透温度域に長時間滞留させなければならないことが原因の一つであり、再熔融して紡糸する際には再熔融時にガラス組成物が必ず失透温度域を通過することが原因の一つであると考えられる。なお、引出量の減少について、より具体的に、平均繊維径9μmのガラス繊維を紡糸する際の引出量に対する平均繊維径3μmのガラス繊維を紡糸する際の引出量の比は、32/92と非常に大きくなる。

0007

これに加えて、ガラス繊維、特にプリント基板に使用するガラス繊維、への泡の混入はできるだけ抑制することが望まれる。例えば、失透(失透部)および/または泡を含むガラス繊維は、糸切れを起こしやすい。糸切れはガラス繊維の製造性を低下させる。また、仮にガラス繊維とすることができた場合においても、繊維中に失透および/または泡が多く残留していると、当該繊維の使用時、例えばプリント基板への使用時、に十分な特性が得られなくなる。より具体的な例として、泡を含むガラス繊維がホローファイバーとしてプリント基板に使用された場合、スルーホール形成に用いる金属が繊維内に侵入して導通不良となり、プリント基板の信頼性を著しく低下させる。ガラス繊維、特にプリント基板に使用するガラス繊維、への失透の発生および泡の混入はできるだけ避けなければならない。

0008

薄肉化された厚さの小さいガラス成形体、例えばフレーク状ガラスについてもガラス繊維と同様であり、特にプリント基板に使用するガラス成形体への失透の発生および泡の混入はできるだけ避けなければならない。具体的に、フレーク状ガラスは、例えば国際公開第2012/026127号に開示されるブロー法により製造される。ブロー法では、熔融ガラスからガラスの風船を形成し、形成した風船を破砕することによってフレーク状ガラスを製造する。比較的厚さの大きな風船の形成において問題とならなかったような微小な結晶(失透)が、厚さの小さい風船の形成に大きく影響し、フレーク状ガラスを製造できない風船の割れにつながる。厚さの小さい風船の形成において熔融ガラスの引出量が小さくなり、失透が生じやすくなること、および再熔融により風船を形成する際に失透が生じやすいことは、繊維径の小さいガラス繊維の紡糸と同じである。また、熔融ガラスに泡が混入しているとフレーク状ガラスを製造できない風船の割れにつながる。そして、仮にフレーク状ガラスとすることができた場合においても、当該ガラス中に失透および/または泡が多く残留していると、当該ガラスの使用時、例えば、プリント基板への使用時、に十分な特性が得られなくなる。

0009

本発明の目的の一つは、低誘電率のガラス組成物であって、形成するガラス繊維の繊維径が小さい場合あるいは形成するガラス成形体の厚さが小さい場合においても、当該ガラス繊維またはガラス成形体における失透の発生および泡の混入をより抑制できるガラス組成物の提供である。

課題を解決するための手段

0010

本発明のガラス組成物は、重量%で表示して、50≦SiO2≦54、25≦B2O3≦30、12≦Al2O3≦15、0.5≦MgO≦1.9、3.0≦CaO≦5.5、0≦ZnO≦3.5、0.1≦Li2O≦0.5、および0.1≦Na2O≦0.3を含み、周波数MHzにおける誘電率が5.0未満であるガラス組成物である。

0011

本発明のガラス繊維は、上記本発明のガラス組成物から構成される。

0012

本発明のガラスクロスは、上記本発明のガラス繊維から構成される。

0013

本発明のガラス繊維の製造方法は、上記本発明のガラス組成物を1400℃以上の温度で熔融する工程を含み、平均繊維径が3〜6μmのガラス繊維を得る方法である。

発明の効果

0014

本発明によれば、低誘電率のガラス組成物であって、形成するガラス繊維の繊維径が小さい場合あるいは形成するガラス成形体の厚さが小さい場合においても、当該ガラス繊維またはガラス成形体における失透の発生および泡の混入をより抑制できるガラス組成物が達成される。

0015

[ガラス組成物]
本発明のガラス組成物は、重量%で表示して、
50≦SiO2≦54
25≦B2O3≦30
12≦Al2O3≦15
0.5≦MgO≦1.9
3.0≦CaO≦5.5
0≦ZnO≦3.5
0.1≦Li2O≦0.5
0.1≦Na2O≦0.3
を含み、
周波数1MHzにおける誘電率が5.0未満であるガラス組成物である。

0016

なお、「誘電率」とは、真空の誘電率との比である比誘電率を正確には意味するが、本明細書では慣用に従い、単に「誘電率」と表記する。本明細書における誘電率は、室温(25℃)での値である。

0017

本発明のガラス組成物について、組成の限定理由を説明する。以下の記述において、組成を示す「%」表示は、全て重量%である。なお、ガラス繊維を例に用いて説明するが、フレーク状ガラスといったガラス成形体についても同様である。例えば、「繊維径が小さいガラス」は、「厚さが小さいガラス成形体」またはより具体的に「厚さが小さいフレーク状ガラス」に対応する。

0018

(SiO2)
SiO2は、ガラスの網目構造を形成する必須成分である。SiO2は誘電率を下げる作用を有し、SiO2の含有率が50%未満では、ガラス組成物の周波数1MHzにおける誘電率を5.0未満とすることが困難となる。一方、当該含有率が54%を超えると、熔融時の粘性が高くなることで、ガラス繊維を製造する際に均質なガラス組成物とすることが困難となり、特にダイレクトメルト法においてこの傾向が強くなる。失透の発生および泡の混入に加えてガラス組成物の均質性が低いことも、ガラス繊維、特に繊維径が小さいガラス繊維の糸切れを誘発するし、低い均質性は、ガラス繊維として十分な特性が得られなくなることにつながる。熔融時の低い均質性は、熔融ガラスの組成が部分的に失透しやすい組成に振れたり、粘性が高く、脱泡性の低い組成に振れたりすることにもつながる。また、当該含有率が54%を超えると、熔融時の粘性が高くなることで熔融ガラスの脱泡性(泡抜け性)が低下し、形成したガラス繊維における泡の混入の抑制が不十分となって、特に繊維径の小さいガラス繊維の糸切れが誘発される。よって、SiO2の含有率を、50%以上54%以下とする。

0019

(B2O3)
B2O3は、ガラスの網目構造を形成する必須成分である。B2O3は誘電率を下げる作用を有するとともに、熔融時のガラス組成物の粘性を下げ、脱泡性(泡抜け性)を向上させ、形成したガラス繊維における泡の混入を抑制する作用を有する。一方、ガラス組成物の熔融時にB2O3は揮発する場合があるため、B2O3の含有率が過度に高くなると、ガラス繊維を製造する際に均質なガラス組成物とすることが困難となる。B2O3の含有率が25%未満では、周波数1MHzにおけるガラス組成物の誘電率を5.0未満とすることが困難となり、これに加えて、熔融時のガラス組成物の粘性が高くなることで、ガラス組成物として十分な均質性が得られないとともに、形成したガラス繊維における泡の混入の抑制が不十分となる。一方、当該含有率が30%を超えると、ガラス組成物の熔融時にB2O3が揮発する場合があり、この場合、ガラス組成物として十分な均質性が得られない。B2O3が揮発した領域では、相対的にSiO2およびAl2O3の含有率が増加することになり、なかでもAl2O3の含有率が顕著に増加した領域では、失透が生じやすくなる。また、当該含有率が30%を超えると、ガラス組成物が分相しやすくなり、ガラス組成物としての化学的耐久性が低下する。プリント基板にガラス繊維を使用する場合、特にガラス繊維の繊維径が小さいときには、高い化学的耐久性をガラス繊維が有することが望まれる。B2O3の含有率の上限は、これらの観点から、29.5%以下が好ましく、29%以下がより好ましく、28.5%以下がさらに好ましく、28%以下が特に好ましい。すなわち、B2O3の含有率は、25%以上29.5%以下でありうるし、25%以上29%以下でありうるし、25%以上28.5%以下でありうるし、25%以上28%以下でありうる。他の成分との含有率のバランスによっては、B2O3の含有率の下限が25%以上でありうるし、25%を超えることがありうる。

0020

(Al2O3)
Al2O3は、ガラスの網目構造を形成する必須成分である。Al2O3は、ガラス組成物の化学的耐久性を高める作用を有する一方で、熔融時のガラス組成物の粘性を高めるとともに、紡糸する際にガラス組成物の失透を起こりやすくする。Al2O3の含有率が12%未満では、ガラス組成物の化学的耐久性が低下する。また、当該含有率が12%未満では、他の網目成分であるSiO2およびB2O3の含有率の増加、特にSiO2の含有率の増加、が余儀なくされ、熔融時のガラス組成物の粘性が高くなることで、ガラス組成物として十分な均質性が得られないとともに、形成したガラス繊維における泡の混入の抑制が不十分となる。一方、当該含有率が15%を超えると、他の網目成分であるSiO2およびB2O3の含有率が低下することでガラス組成物の誘電率が上昇し、周波数1MHzにおける誘電率を5.0未満とすることが困難になる。また、当該含有率が15%を超えると、熔融時におけるガラス組成物の粘性が高くなり、ガラス組成物として十分な均質性が得られなくなるとともに、形成したガラス繊維における泡の混入の抑制が不十分となる。そしてさらに、ガラス組成物の失透が発生しやすくなる。

0021

(MgO)
MgOは、ガラス原料熔融性を向上させるとともに、熔融時のガラス組成物の粘性を下げる作用を有する必須成分である。一方、MgOは、ガラス組成物の誘電率を上昇させる。MgOの含有率が0.5%未満では、熔融時のガラス組成物の粘性が高くなることで、ガラス組成物として十分な均質性が得られないとともに、形成したガラス繊維における泡の混入の抑制が不十分となる。一方、当該含有率が1.9%を超えると、ガラス組成物の誘電率が上昇し、周波数1MHzにおける誘電率を5.0未満とすることが困難になる。MgOの含有率の上限は、これらの観点から、1.8%以下が好ましく、1.7%以下がより好ましく、1.6%以下がさらに好ましく、1.5%以下が特に好ましい。すなわち、MgOの含有率は、0.5%以上1.8%以下でありうるし、0.5%以上1.7%以下でありうるし、0.5%以上1.6%以下でありうるし、0.5%以上1.5%以下でありうる。他の成分とのバランスによっては、MgOの含有率の下限が1.5%以上でありうるし、1.5%を超えることがありうる。

0022

(CaO)
CaOは、MgOおよびZnOと同様に、ガラス原料の熔融性を向上させるとともに、熔融時のガラス組成物の粘性を下げる作用を有する必須成分である。CaOのこの作用は、MgOおよびZnOよりも大きい。一方、CaOは、ガラス組成物の誘電率を上昇させる。CaOの含有率が3.0%未満では、熔融時のガラス組成物の粘性が高くなることで、ガラス組成物として十分な均質性が得られないとともに、形成したガラス繊維における泡の混入の抑制が不十分となる。また、当該含有率が3.0%未満では、ガラス組成物が分相しやすくなる。一方、当該含有率が5.5%を超えると、ガラス組成物の誘電率が上昇し、周波数1MHzにおける誘電率を5.0未満とすることが困難になる。ただし、CaOは、MgOおよびZnOに比べて、ガラス組成物の誘電正接を増加させる程度が小さい。

0023

(ZnO)
ZnOは、ガラス原料の熔融性を向上させるとともに、熔融時のガラス組成物の粘性を下げる作用を有する任意成分である。一方、ZnOは、ガラス組成物の誘電率を上昇させる。ZnOの含有率が3.5%を超えると、ガラス組成物の誘電率が上昇し、周波数1MHzにおける誘電率を5.0未満とすることが困難になる。ZnOの含有率の下限は1.5%が好ましく、この場合、熔融時のガラス組成物の粘性の上昇が抑制され、ガラス組成物としての均質性が向上するとともに、形成したガラス繊維における泡の混入がより抑制される。他の成分とのバランスによっては、ZnOの含有率の上限が1.5%以下でありうるし、1.5%未満、さらには1.0%以下でありうる。ZnOを実質的に含有しないガラス組成物でもありうる。

0024

(CaO/(MgO+CaO+ZnO))
MgO、CaOおよびZnOについて、これらの成分の含有率の合計(MgO+CaO+ZnO)に対するCaOの含有率の比CaO/(MgO+CaO+ZnO)は、好ましくは0.31〜0.63であり、より好ましくは0.50〜0.63である。CaOの含有率の比を高めようとするとガラス組成物の誘電率は上昇するが、これらの範囲において、ガラス組成物の誘電率の上昇がより抑制される。

0025

(Li2O)
Li2Oは、ガラス原料の熔融性を向上させるとともに、熔融時のガラス組成物の粘性を下げる作用を有する必須成分である。一方、Li2Oは、ガラス組成物の誘電率および誘電正接を上昇させる。Li2Oの含有率が0.1%未満では、熔融時のガラス組成物の粘性が高くなることで、ガラス組成物として十分な均質性が得られないとともに、形成したガラス繊維における泡の混入の抑制が不十分となる。一方、当該含有率が0.5%を超えると、ガラス組成物の誘電率が上昇し、周波数1MHzにおける誘電率を5.0未満とすることが困難になる。

0026

(Na2O)
Na2Oは、Li2Oと同様に、ガラス原料の熔融性を向上させるとともに、熔融時のガラス組成物の粘性を下げる作用を有する必須成分である。一方、Na2Oは、ガラス組成物の誘電率および誘電正接を上昇させる。Na2Oの含有率が0.1%未満では、熔融時のガラス組成物の粘性が高くなることで、ガラス組成物として十分な均質性が得られないとともに、形成したガラス繊維における泡の混入の抑制が不十分となる。一方、当該含有率が0.3%を超えると、ガラス組成物の誘電率が上昇し、周波数1MHzにおける誘電率を5.0未満とすることが困難になる。

0027

(網目成分のバランス)
本発明のガラス組成物では、上述した各成分の含有率のバランスにより、低誘電率のガラス組成物であって、形成するガラス繊維の繊維径が小さい場合あるいは形成するガラス成形体の厚さが小さい場合においても、当該ガラス繊維またはガラス成形体における失透の発生および泡の混入をより抑制できる。このうち、網目成分であるSiO2、B2O3およびAl2O3について、重量%で表示して50≦SiO2≦54、25≦B2O3≦30、および12≦Al2O3≦15である、含有率のバランスが図られている。

0028

網目成分のバランスに関し、ある一つの形態では、B2O3およびAl2O3の含有率について重量%で表示して、25≦B2O3≦27、および14≦Al2O3≦15であることがより好ましい。この場合、形成したガラス繊維における泡の混入をより抑制できる。

0029

網目成分のバランスに関し、ある一つの形態では、B2O3の含有率について重量%で表示して、25≦B2O3≦26.6であることがより好ましい。また、このとき、Al2O3の含有率について重量%で表示して、14≦Al2O3≦15であることがさらに好ましい。この場合、形成したガラス繊維における泡の混入をより抑制できる。

0030

網目成分のバランスに関し、ある一つの形態では、SiO2の含有率について重量%で表示して、50≦SiO2≦52.5であることがより好ましい。このとき、B2O3および/またはAl2O3の含有率が上記好ましい範囲にあることがさらに好ましい。この場合、形成したガラス繊維における泡の混入をより抑制できる。

0031

修飾成分のバランス)
本発明のガラス組成物では、上述した好ましい範囲を含めて網目成分の含有率に関する上記バランスを確保した上で、さらに網目成分以外の修飾成分であるMgO、CaO、ZnO、Li2OおよびNa2Oについて、重量%で表示して、0.5≦MgO≦1.9、3.0≦CaO≦5.5、0≦ZnO≦3.5、0.1≦Li2O≦0.5、および0.1≦Na2O≦0.3の含有率のバランスが図られている。

0032

修飾成分のバランスに関し、ある一つの形態では、MgOの含有率について重量%で表示して、0.5≦MgO≦1.3であることがより好ましく、0.5≦MgO≦1.0であることがさらに好ましい。この場合、形成したガラス繊維における泡の混入をより抑制できる。

0033

修飾成分のバランスに関し、ある一つの形態では、MgOの含有率を限定する以外にも、MgOに加えてLi2OおよびNa2Oの含有率について重量%で表示して、1.2≦MgO≦1.5、および0.4≦Li2O+Na2O≦0.8であることがより好ましい。この場合にも、形成したガラス繊維における泡の混入をより抑制できる。

0034

修飾成分のバランスに関し、ZnOに着目してもよく、ある一つの形態では、ZnOの含有率について重量%で表示して、1.5≦ZnO≦3.5であることがより好ましい。この場合にも、形成したガラス繊維における泡の混入をより抑制できる。

0035

ZnOを実質的に含まないガラス組成物とした場合にも、形成したガラス繊維における泡の混入をより抑制できる。具体的に、ある一つの形態では、ZnOを実質的に含まず、MgOの含有率について重量%で表示して、1.2≦MgO≦1.9である、より好ましくは1.2≦MgO≦1.5である、さらに好ましくは1.3≦MgO≦1.5であるガラス組成物でありうる。このとき、MgOおよびCaOの含有率の合計が5.5%以上であることがさらに好ましい。

0036

本発明のガラス組成物は、本発明の効果が得られる限り、さらに下記の成分を含むことができる。

0037

(その他の成分)
本発明のガラス組成物は、その他の成分として、ZrO2、Fe2O3、SO2、La2O3、WO3、Nb2O5、Y2O3およびMoO3から選ばれる少なくとも1種を、それぞれ0%以上1%以下の含有率で含むことができる。

0038

本発明のガラス組成物は、添加物として、SnO2、As2O3およびSb2O3から選ばれる少なくとも1種を、それぞれ0%以上1%以下の含有率で含んでいてもよい。

0039

本発明のガラス組成物は、その他の成分として、Cr2O3、H2O、OH、H2、CO2、CO、He、Ne、ArおよびN2を、それぞれ0%以上0.1%以下の含有率で含むことができる。

0040

本発明のガラス組成物は、微量の貴金属元素を含有していてもよい。例えば、Pt、Rh、Osなどの貴金属元素を、それぞれ0%以上0.1%以下の含有率で含むことができる。

0041

本発明のガラス組成物は、上述した各成分から実質的になってもよい。その場合、ガラス組成物が含む各成分の含有率、ならびに各成分の含有率間のバランスは、好ましい範囲を含め、上述した数値範囲をとりうる。なお、本明細書において「実質的になる」とは、含有率にして0.1%未満の不純物、例えばガラス原料、ガラス組成物の製造装置、およびガラス組成物の成形装置などに由来する不純物、の含有を許容する趣旨である。

0042

このようなガラス組成物の一例は、重量%で表示して、実質的に、50≦SiO2≦54、25≦B2O3≦30、12≦Al2O3≦15、0.5≦MgO≦1.9、3.0≦CaO≦5.5、0≦ZnO≦3.5、0.1≦Li2O≦0.5、および0.1≦Na2O≦0.3からなり、周波数1MHzにおける誘電率が5.0未満であるガラス組成物である。

0043

また、他の例として、重量%で表示して、実質的に、50.0≦SiO2≦54.0、25.0≦B2O3≦30.0、12.0≦Al2O3≦15.0、0.50≦MgO≦1.90、3.00≦CaO≦5.50、0≦ZnO≦3.50、0.10≦Li2O≦0.50、および0.10≦Na2O≦0.30からなり、周波数1MHzにおける誘電率が5.0未満であるガラス組成物でありうる。

0044

また、他の例として、重量%で表示して、実質的に、50.0≦SiO2≦54.0、25.0≦B2O3≦28.0、12.0≦Al2O3≦15.0、0.50≦MgO≦1.50、3.00≦CaO≦5.50、0≦ZnO≦3.50、0.10≦Li2O≦0.50、および0.10≦Na2O≦0.30からなり、周波数1MHzにおける誘電率が5.0未満であるガラス組成物でありうる。

0045

また、他の例として、重量%で表示して、実質的に、50.0≦SiO2≦54.0、28.1≦B2O3≦30.0、12.0≦Al2O3≦15.0、0.50≦MgO≦1.90、3.00≦CaO≦5.50、0≦ZnO≦3.50、0.10≦Li2O≦0.50、および0.10≦Na2O≦0.30からなり、周波数1MHzにおける誘電率が5.0未満であるガラス組成物でありうる。

0046

また、他の例として、重量%で表示して、実質的に、50.0≦SiO2≦54.0、25.0≦B2O3≦30.0、12.0≦Al2O3≦15.0、1.51≦MgO≦1.90、3.00≦CaO≦5.50、0≦ZnO≦3.50、0.10≦Li2O≦0.50、および0.10≦Na2O≦0.30からなり、周波数1MHzにおける誘電率が5.0未満であるガラス組成物でありうる。

0047

また、他の例として、重量%で表示して、実質的に、50.0≦SiO2≦54.0、28.1≦B2O3≦30.0、12.0≦Al2O3≦15.0、1.51≦MgO≦1.90、3.00≦CaO≦5.50、0≦ZnO≦3.50、0.10≦Li2O≦0.50、および0.10≦Na2O≦0.30からなり、周波数1MHzにおける誘電率が5.0未満であるガラス組成物でありうる。

0048

また、他の例として、重量%で表示して、実質的に、50.0≦SiO2≦54.0、26.0≦B2O3≦30.0、12.0≦Al2O3≦15.0、1.20≦MgO≦1.90、3.50≦CaO≦5.00、0≦ZnO≦3.50、0.10≦Li2O≦0.50、および0.10≦Na2O≦0.30からなり、周波数1MHzにおける誘電率が5.0未満であるガラス組成物であり得る。

0049

また、他の例として、重量%で表示して、実質的に、50.0≦SiO2≦53.0、26.0≦B2O3≦29.0、14.0≦Al2O3≦15.0、1.40≦MgO≦1.90、4.50≦CaO≦5.00、0.10≦Li2O≦0.30、および0.10≦Na2O≦0.30からなり、比(CaO/(MgO+CaO+ZnO)が0.7〜0.8であって、周波数1MHzにおける誘電率が5.0未満であるガラス組成物であり得る。

0050

また、他の例として、重量%で表示して、実質的に、50.0≦SiO2≦52.0、27.0≦B2O3≦29.0、14.0≦Al2O3≦15.0、1.40≦MgO≦1.60、4.60≦CaO≦5.00、0.10≦Li2O≦0.30、および0.10≦Na2O≦0.30からなり、比(CaO/(MgO+CaO+ZnO)が0.70〜0.80であって、周波数1MHzにおける誘電率が5.0未満であるガラス組成物であり得る。

0051

本発明のガラス組成物は、F2を実質的に含まない組成物でありうる。特許文献2(特表2010-508226号公報)のガラス組成物では、実質的に2%までのF2を含ませることで、ガラス組成物の熔融性を向上させ、熔融時の粘性を低下させて、熔融中に発生する泡およびスカムの量を低減させることが試みられている。一方、本発明のガラス組成物では、F2を実質的に含まない組成物でありながら、上述した各成分の含有率のバランスによって、低誘電率のガラス組成物であって、形成するガラス繊維の繊維径が小さい場合あるいは形成するガラス成形体の厚さが小さい場合においても、当該ガラス繊維またはガラス成形体における失透の発生および泡の混入をより抑制できる。

0052

本発明のガラス組成物は、SrOおよび/またはBaOを実質的に含まない組成物でありうる。特許文献3(特開2009-286686号公報)のガラス組成物は、熔融時のガラス組成物の粘性を低下させることを目的として、SrOおよびBaOを含む。一方、本発明のガラス組成物では、SrOおよび/またはBaOを実質的に含まない組成物でありながら、上述した各成分の含有率のバランスによって、低誘電率のガラス組成物であって、形成するガラス繊維の繊維径が小さい場合あるいは形成するガラス成形体の厚さが小さい場合においても、当該ガラス繊維またはガラス成形体における失透の発生および泡の混入をより抑制できる。

0053

なお、従来のガラス組成物においてF2、SrOおよびBaOは、ガラス組成物の熔融性および脱泡性を向上させる一方でその誘電率を増大させる作用が強いアルカリ金属酸化物ならびにMgOおよびCaOの含有をできるだけ避けることを目的として、添加されていたと考えられる。しかし、F2、SrOおよびBaOは有害物として知られており、ガラス組成物における含有をできるだけ避けることが望まれる観点からも、F2、SrOおよびBaOを実質的に含まないとすることができる本発明のガラス組成物は有利である。例えば、F2をはじめとする有害物をガラス組成物が含む場合、当該組成物から構成されるガラス繊維を再利用する際、または廃棄する際には、有害物が周辺環境に流出しないよう特別の注意が必要となる。また、ガラス繊維を製造する際にも、有害物が環境に排出されないよう高価な回収設備の設置が余儀なくされる。

0054

本明細書において「実質的に含まない」とは、含有率にして0.1%未満を意味する。これは、例えばガラス原料、ガラス組成物の製造装置、およびガラス組成物の成形装置などに由来する不純物、の含有を許容する趣旨である。

0055

本発明のガラス組成物の誘電率は、周波数1MHzにおける値にして5.0未満である。本発明のガラス組成物の誘電率は、当該組成物の組成によっては、周波数1MHzにおける値にして4.9以下、さらには4.8以下となりうる。

0056

本発明のガラス組成物は、例えば、1150℃、1200℃および1250℃から選ばれる少なくとも1つの温度に2時間保持した場合にも失透が発生しないガラス組成物でありうるし、1150℃、1200℃および1250℃のいずれの温度に2時間保持した場合にも失透が発生しないガラス組成物でありうる。この場合、当該ガラス組成物、とりわけ後者のガラス組成物は、ガラス繊維、特に、繊維径の小さいガラス繊維への成形時(紡糸時)における失透の発生を抑制できる。また、これと同様に、厚さの小さいガラス成形体、例えば、厚さの小さいフレーク状ガラスへの成形時における失透の発生を抑制できる。なお、1150℃、1200℃および1250℃は、繊維径の小さいガラス繊維を紡糸することを想定した温度条件、具体的には熔融紡糸装置における繊維化過程でのガラス温度に対応している。また、これと同様に、1150℃、1200℃および1250℃は、厚さの小さいガラス成形体、例えば、厚さの小さいフレーク状ガラスを成形することを想定した温度条件、具体的には熔融成形装置における成形過程でのガラス温度に対応している。

0057

本発明のガラス組成物の用途は限定されない。用途の例は、ガラス繊維およびガラス成形体である。ガラス成形体の例は、フレーク状ガラスである。すなわち、本発明のガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物、ガラス成形体用ガラス組成物、またはフレーク状ガラス用ガラス組成物でありうる。

0058

本発明のガラス組成物は、形成するガラス繊維の繊維径が小さい場合においても当該ガラス繊維における失透の発生および泡の混入をより抑制できるガラス組成物である。ここで、「繊維径が小さいガラス繊維」とは、例えば、平均繊維径が3〜6μmのガラス繊維を意味する。すなわち、本発明のガラス組成物は、小繊維径ガラス繊維用ガラス組成物でありうるし、より具体的に、平均繊維径が3〜6μmのガラス繊維用ガラス組成物でありうる。また、上述のように、本発明のガラス組成物から製造したガラス繊維をプリント基板に使用する際に、本発明の効果はより顕著となる。この観点から本発明のガラス組成物は、プリント基板(プリント配線板、プリント回路板)に使用するガラス繊維用ガラス組成物でありうる。

0059

同様に、本発明のガラス組成物は、形成するガラス成形体、例えばフレーク状ガラスの厚さが小さい場合においても、当該ガラス成形体における失透の発生および泡の混入をより抑制できるガラス組成物である。ここで、「厚さが小さい」とは、例えば、0.1〜2.0μmを意味する。また、上述のように、本発明のガラス組成物から製造したガラス成形体(本発明のガラス組成物から構成されるガラス成形体)をプリント基板に使用する際に、本発明の効果はより顕著となる。この観点から本発明のガラス組成物は、プリント基板に使用するガラス成形体用ガラス組成物でありうる。

0060

プリント基板に使用することに着目すると、本発明のガラス組成物はプリント基板用ガラス組成物でありうる。

0061

[ガラス繊維]
本発明のガラス繊維は、本発明のガラス組成物により構成される。ガラス繊維の具体的な構成は特に限定されず、本発明のガラス組成物により構成される限り、従来のガラス繊維と同様の構成をとりうる。ただし、上述のように、本発明のガラス組成物が低誘電率のガラス組成物であって、形成するガラス繊維の繊維径が小さい場合においても当該ガラス繊維における失透の発生および泡の混入をより抑制できる組成物であることから、本発明のガラス繊維は繊維径の小さいガラス繊維でありうるし、このような繊維径の小さい低誘電率のガラス繊維が本発明のガラス繊維の一形態となる。

0062

本発明のガラス繊維は、平均繊維径が、例えば3〜6μm、ガラス組成物の組成によっては3〜4.6μm、さらには3〜4.3μmという繊維径の小さいガラス繊維でありうる。

0063

本発明のガラス繊維は、体積1cm3あたりに存在する泡の数が200cm-3以下のガラス繊維でありうるし、ガラス組成物の組成によっては、170cm-3以下、150cm-3以下、さらには130cm-3以下のガラス繊維でありうる。このとき、これらのガラス繊維の平均繊維径は、例えば3〜6μm、ガラス組成物の組成によっては、3〜4.6μm、さらには3〜4.3μmでありうる。

0064

本発明のガラス繊維は、周波数1MHzにおける誘電率の値が5.0未満、ガラス組成物の組成によっては、周波数1MHzにおける誘電率の値が4.9以下、さらには4.8以下という低誘電率のガラス繊維でありうる。

0065

これらに加えて、本発明のガラス組成物が、形成するガラス繊維の繊維径が小さい場合においても当該ガラス繊維における失透の発生および泡の混入をより抑制できる組成物であることから、本発明のガラス繊維はガラス長繊維フィラメント)でありうるし、より具体的に、上記のような繊維径の小さい、そしてさらに低誘電率のガラス長繊維でありうる。

0066

特許文献1(特開昭62-226839号公報)には、8〜13μmと、繊維径が比較的大きいガラス繊維を紡糸することのみが開示されている。特許文献1では、繊維径が小さいガラス繊維(例えば、平均繊維径3〜6μmのガラス繊維)の製造について、全く想定も考慮もされていない。特許文献1が具体的に開示するガラス組成物を用いて繊維径が小さいガラス繊維を製造する場合、微小な結晶(失透)が原因となる紡糸時の糸切れおよび強度の低下が発生する傾向がある。

0067

本発明のガラス繊維の用途は限定されない。用途は、例えばプリント基板であり、プリント基板に使用する場合、低誘電率であるとともに繊維径の小さいガラス繊維でありうるという特徴がより有利となる。

0068

本発明のガラス繊維は、ガラスヤーンとすることができる。このガラスヤーンは、本発明のガラス繊維、典型的にはガラス長繊維、を含む。このガラスヤーンは、本発明のガラス繊維以外のガラス繊維を含むこともできるが、上述した本発明のガラス繊維の特徴をより活かすためには、本発明のガラス繊維から構成されることが好ましい。

0069

ガラスヤーンの構成は、本発明のガラス繊維を含む限り限定されない。一例は、ガラス長繊維の本数(フィラメント本数)が30〜200のガラスヤーンである。ガラスヤーンの用途は、ガラス繊維の用途と同様に特に限定されない。用途は、例えばプリント基板である。プリント基板に使用する場合、フィラメント本数が例えば30〜100、30〜70、さらには30〜60のガラスヤーンとすることもできる。これらの場合、例えば、薄いガラスクロスをより容易かつ確実に形成でき、プリント基板の薄型化により確実に対応できる。

0070

別の一例は、番手が1〜6texのガラスヤーンであり、1〜3texのガラスヤーンとすることもできる。これらの場合、例えば、薄いガラスクロスをより容易かつ確実に形成でき、プリント基板の薄型化により確実に対応できる。

0071

また別の一例は、強度が0.4N/tex以上のガラスヤーンであり、0.6N/tex以上、さらには0.7N/tex以上のガラスヤーンとすることもできる。この強度は、ガラス繊維としての強度でもある。

0072

これら例示した構成を、任意の組み合わせで同時に満たすガラスヤーンでありうる。

0073

本発明のガラス繊維の製造方法は特に限定されず、本発明のガラス組成物を用いて公知の方法により製造できる。例えば、平均繊維径3〜6μm程度のガラス繊維を製造する場合、以下の方法の例を採用できる。すなわち、本発明のガラス組成物をガラス熔融投入し、熔融して熔融ガラスとした後、紡糸炉における耐熱性ブッシングの底部に設けられた多数の紡糸ノズルから熔融ガラスを引き出し、糸状に成形する方法である。これにより、本発明のガラス組成物により構成されるガラス繊維を製造できる。ガラス繊維は、ガラス長繊維(フィラメント)でありうる。熔融窯における熔融温度は、例えば1300〜1650℃であり、1400〜1650℃が好ましく、1500〜1650℃がより好ましい。これらの場合、形成するガラス繊維の繊維径が小さい場合においても当該ガラス繊維における微小な失透の発生および泡の混入をさらに抑制できるとともに、過度に紡糸張力が高くなることが防がれ、得られたガラス繊維の特性(例えば強度)および品質をより確実に確保できる。

0074

本発明のガラス組成物を使用するとともに上記好ましい熔融温度において当該組成物を熔融することによって、繊維径が小さいガラス繊維を形成する場合においても達成される上述したさらなる効果は、以下のような本発明者らの検討に基づく。繊維径が小さいガラス繊維を製造するためには、紡糸炉からの熔融ガラスの引出速度紡糸速度)を高めたり、紡糸ノズルの温度を低下させたりする手法が考えられる。しかし、前者の手法では、紡糸炉内で熔融ガラスの脱泡を促進させるためのガラス熔融時間を必ずしも十分に確保できないことがある。熔融時間を十分に確保できない場合、泡の混入による紡糸時の糸切れ、およびガラス繊維が得られる場合においても当該繊維の強度低下につながる。また、紡糸速度の上昇に伴って紡糸時に繊維に生じる張力(紡糸張力)が大きくなり、この点も、紡糸時の糸切れおよび得られたガラス繊維の強度低下、ならびに当該繊維の品質低下につながることがある。なお、紡糸張力が過度に大きくなったときのガラス繊維の品質低下は、例えば次のように引き起こされる。紡糸したガラス繊維の巻き取りには、コレットと呼ばれる巻き取り回転体装置、より具体的に、コレット本体の外周に、コレットの回転時にその径外方に向かって移動するとともに停止時にコレット本体側に沈み込む複数のフィンガーを備えた装置、が一般に使用される。ここで、紡糸張力が過度に大きくなると、巻き取ったガラス繊維にフィンガー間の窪みに起因する糸癖がつき、これがガラス繊維の品質低下となる。この品質低下は、例えば、当該ガラス繊維を用いたガラスクロスにおける外観不良および/または開繊不良となりうる。

0075

また、後者の手法では、熔融窯内の熔融温度も低下させる必要があり、熔融温度がガラス組成物の失透温度に近づくとともに、熔融ガラスの粘度が上昇して十分な脱泡性が確保できなくなることがある。また、紡糸張力も大きくなる。この結果、紡糸時の糸切れおよび得られたガラス繊維の強度低下、ならびに当該繊維の品質低下につながることがある。

0076

例えば特許文献1では、ガラス原料を1300〜1350℃の温度で熔融した後、8〜13μmと繊維径が比較的大きいガラス繊維を紡糸している。一方、本発明のガラス組成物を使用し、当該組成物を上記好ましい熔融温度において熔融することによって:本発明のガラス組成物により達成される上述した効果;紡糸炉内で熔融ガラスの脱泡を促進させるためのガラス熔融時間を十分に確保できるとともに、熔融ガラスの粘度を低下させて十分な脱泡性を確保できる;引出速度を高くした場合においても紡糸張力の過度の上昇を抑制できる;といった効果が達成される。これにより、形成するガラス繊維の繊維径が小さい場合においても当該ガラス繊維における微小な失透の発生および泡の混入をさらに抑制できるとともに、過度に紡糸張力が高くなることが防がれ、得られたガラス繊維の特性(例えば強度)および品質をより確実に確保できる。ガラス繊維の品質向上により、例えば、当該ガラス繊維を用いたガラスクロスにおける外観および/または開繊性が良好となる。

0077

これらの観点によれば、本明細書は、本発明のガラス組成物(または熔融により本発明のガラス組成物となるガラス原料)を、1400℃以上、好ましくは1400〜1650℃、より好ましくは1500〜1650℃の熔融温度で熔融して熔融ガラスを形成し、形成した熔融ガラスを紡糸してガラス繊維を得る、ガラス繊維の製造方法を開示する。このとき、繊維径の小さいガラス繊維、より具体的に、平均繊維径にして例えば3〜6μm、または3〜4.6μm、さらには3〜4.3μmのガラス繊維を形成できる。このガラス繊維は、その誘電率が、周波数1MHzにおける値にして5.0未満、または周波数1MHzにおける値にして4.9以下、さらには4.8以下という低誘電率のガラス繊維でありうる。このガラス繊維は長繊維でありうる。

0078

紡糸により形成されたガラス繊維の表面に集束剤を塗布し、複数のガラス繊維、例えば10〜120本のガラス繊維を束ねることにより、ガラスストランドを形成できる。このガラスストランドは、本発明のガラス繊維を含む。形成したガラスストランドは、高速で回転するコレット上のチューブ(例えば、紙管チューブ)に巻き取ってケーキとし、次に、ケーキの外層からストランド解舒して、撚り掛けながら風乾した後、ボビン等に巻き返し撚糸することによりガラスヤーンを形成できる。

0079

[ガラスクロス]
本発明のガラスクロスは、本発明のガラス繊維により構成される。ガラスクロスの具体的な構成は特に限定されず、本発明のガラス繊維を含む限り、従来のガラスクロスと同様の構成をとりうる。例えば、ガラスクロスの織組織は特に限定されず、平織朱子織綾織斜子織、畦織などの織組織をとりうる。例示した織組織のなかでは平織が好ましい。本発明のガラスクロスは、本発明のガラス繊維以外のガラス繊維を含んでいてもよいが、上述した各効果がより確実になることから、ガラス繊維として本発明のガラス繊維のみを含むことが好ましい。本発明のガラスクロスは、繊維径の小さい低誘電率のガラス繊維から構成されるガラスクロスでありうる。

0080

本発明のガラスクロスの厚さは、JIS R3420:2013の項目7.10.1の規定に従って測定される厚さにして、例えば20μm以下であり、ガラス繊維およびガラスクロスの構成によっては、10〜20μm、さらには10〜15μmでありうる。これらの厚さを有するガラスクロスを実現できることで、プリント基板の薄型化への対応がより確実となる。

0081

本発明のガラスクロスの質量は、JIS R3420:2013の項目7.2の規定に従って測定されるクロス質量にして、例えば20g/m2以下であり、ガラス繊維およびガラスクロスの構成によっては、8〜20g/m2、さらには8〜13g/m2でありうる。これらのクロス質量を有するガラスクロスを実現できることで、プリント基板の薄型化への対応がより確実となる。

0082

本発明のガラスクロスにおける単位長さ(25mm)あたりのガラス繊維の本数(織密度)は、経糸および緯糸ともに、例えば、長さ25mmあたり80〜130であり、ガラス繊維およびガラスクロスの構成によっては、80〜110、さらには90〜110でありうる。これらの織密度を有するガラスクロスでは、ガラスクロスの厚さを薄くすることと、経糸および緯糸交絡点を多くしてガラスクロスの目曲がりを生じ難くし、樹脂を含浸させたときのピンホールの発生を抑制することとを、より確実に両立できる。

0083

本発明のガラスクロスの通気度は、例えば、200cm3/(cm2・秒)以下であり、ガラス繊維およびガラスクロスの構成によっては、100〜200cm3/(cm2・秒)、さらには100〜150cm3/(cm2・秒)でありうる。これらの通気度を有するガラスクロスでは、ガラスクロスの厚さを薄くすることと、上記ピンホールの発生を抑制することとを、より確実に両立できる。なお、ガラスクロスがこのような通気度を有するように開繊させるためには、ガラス繊維の紡糸時に、本発明のガラス組成物または熔融により本発明のガラス組成物となるガラス原料を上述した1400℃以上、好ましくは1400〜1650℃の熔融温度で熔融させることが好ましい。

0084

本発明のガラスクロスの製造方法は限定されず、本発明のガラス繊維を用いて公知の方法により製造できる。その一例は、本発明のガラス繊維を含むガラスヤーンに対して整経工程および糊付工程を実施した後、これを経糸として、同じく本発明のガラス繊維を含むガラスヤーンの緯糸を打ち込む方法である。緯糸の打ち込みには、各種の織機、例えばジェット織機(より具体的な例は、エアージェット織機ウォータージェット織機)、スルザー織機、レピア織機、を使用できる。

0085

ガラスクロスは開繊処理されていてもよく、この場合、例えば、ガラスクロスの厚さをより薄くできる。開繊処理の具体的な方法は限定されず、例えば、水流の圧力による開繊、水(より具体的な例は、脱気水、イオン交換水脱イオン水電解陽イオン水、電解陰イオン水)などを媒体とした高周波振動による開繊、ロールなどを用いた加圧による開繊である。開繊処理は、ガラスクロスの織成と同時に実施しても、織成後に実施してもよい。また、ヒートクリーニング表面処理といった各種処理と同時に実施しても、当該処理の後に実施してもよい。

0086

織成したガラスクロスに集束剤などの物質が付着している場合、例えばヒートクリーニング処理といった当該物質を除去する処理をさらに実施することができる。このような処理を経たガラスクロスは、例えばプリント基板に使用する際に、マトリクス樹脂含浸性および当該樹脂との密着性が良好となる。当該処理の後に、または当該処理とは別に、織成したガラスクロスをシランカップリング剤などにより表面処理してもよい。表面処理は公知の手段で実施でき、例えば、シランカップリング剤をガラスクロスに含浸する方法、塗布する方法、スプレーする方法などにより表面処理できる。

0087

本発明のガラスクロスの用途は限定されない。用途は、例えば、プリント基板であり、プリント基板に使用する場合、低誘電率であるとともに繊維径の小さいガラス繊維から構成されるという特徴がより有利となる。

0088

以下、実施例により、本発明をより詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。

0089

(実施例1〜11、比較例1〜6)
最初に、以下の表1,2に示す各組成(成分の含有率の単位は重量%、ただし、比較例6については重量部)となるようにガラス原料を量し、均質な状態となるように混合して、ガラス原料混合バッチを作製した。次に、作製した混合バッチを白金ロジウムるつぼに投入し、1600℃に設定した間接加熱電気炉内で、大気雰囲気中にて3時間以上加熱して熔融ガラスとした。次に、得られた熔融ガラスを耐火性鋳型に流し出して鋳込み成形した後、得られた成形体を徐冷炉により室温まで徐冷処理して、評価に使用するガラス組成物試料とした。

0090

実施例1〜8で作製したガラス組成物の組成は、酸化物換算で、SiO2が50.4重量%以上53.6重量%以下の範囲、B2O3が25.5重量%以上27.5重量%以下の範囲、Al2O3が12.1重量%以上15.0重量%以下の範囲、Li2Oが0.18重量%以上0.45重量%以下の範囲、Na2Oが0.12重量%以上0.30重量%以下の範囲、MgOが0.91重量%以上1.36重量%以下の範囲、CaOが3.31重量%以上5.21重量%以下の範囲、ZnOが1.83重量%以上2.73重量%以下の範囲にある(表1参照)。

0091

実施例1〜9で作製したガラス組成物の組成は、酸化物換算で、SiO2が50.4重量%以上53.6重量%以下の範囲、B2O3が25.5重量%以上28.0重量%以下の範囲、Al2O3が12.1重量%以上15.0重量%以下の範囲、Li2Oが0.17重量%以上0.45重量%以下の範囲、Na2Oが0.12重量%以上0.30重量%以下の範囲、MgOが0.91重量%以上1.50重量%以下の範囲、CaOが3.31重量%以上5.21重量%以下の範囲、ZnOが0重量%以上2.73重量%以下の範囲にある(表1参照)。

0092

実施例1〜8,11で作製したガラス組成物の組成は、酸化物換算で、SiO2が50.4重量%以上53.6重量%以下の範囲、B2O3が25.5重量%以上27.5重量%以下の範囲、Al2O3が12.1重量%以上15.0重量%以下の範囲、Li2Oが0.18重量%以上0.45重量%以下の範囲、Na2Oが0.12重量%以上0.30重量%以下の範囲、MgOが0.91重量%以上1.82重量%以下の範囲、CaOが3.31重量%以上5.21重量%以下の範囲、ZnOが0重量%以上2.73重量%以下の範囲にある(表1参照)。

0093

実施例1〜11で作製したガラス組成物の組成は、酸化物換算で、SiO2が50.4重量%以上53.6重量%以下の範囲、B2O3が25.5重量%以上28.8重量%以下の範囲、Al2O3が12.1重量%以上15.0重量%以下の範囲、Li2Oが0.17重量%以上0.45重量%以下の範囲、Na2Oが0.12重量%以上0.30重量%以下の範囲、MgOが0.91重量%以上1.82重量%以下の範囲、CaOが3.31重量%以上5.21重量%以下の範囲、ZnOが0重量%以上2.73重量%以下の範囲にある(表1参照)。

0094

このようにして作製したガラス試料に対して、その泡数失透性および周波数1MHzにおける誘電率を以下の手順で評価した。

0095

[泡数]
作製したガラス試料のほぼ中央に5mm四方の枠を設け、当該枠内に見えるガラス試料中の泡の数を実体顕微鏡を用いて数倍に拡大して計測した。これとは別に、測定個所のガラス試料の厚さを測定し、測定した厚さを用いて上記計測した泡の数を体積1cm3当たりの泡の数に換算して、これをガラス試料に発生した泡数(単位:cm-3)とした。

0096

[失透性]
作製したガラス試料1〜2gを白金ロジウム板の上に載せ、1150℃、1200℃または1250℃に設定した電気炉内に2時間収容した後、炉より取り出して放冷した。放冷後のガラス試料の透明性を肉眼により確認し、白濁がみられた場合に失透が発生したと判定し、白濁が見られず透明性を保持していた場合に失透が発生しなかったと判定した。別途、平均繊維径3μmのガラス繊維を紡糸して確認したところ、このような繊維径の小さいガラス繊維を失透による糸切れを起こさずに紡糸できるガラス組成物は、上記電気炉での2時間の加熱温度にして1150℃、1200℃および1250℃から選ばれる少なくとも1つの加熱温度において失透が発生しなかったガラス組成物、特に、全ての加熱温度において失透が発生しなかったガラス組成物であった。このため、1150℃、1200℃および1250℃のいずれの加熱温度でも失透が発生しなかったガラス組成物を、繊維径の小さなガラス繊維の紡糸時においても特に失透の発生が抑制されるガラス組成物であると判断し、良(○)と評価した。一方、少なくとも1つの上記加熱温度で失透が発生したガラス組成物を可(△)と評価し、上記3つの全ての加熱温度で失透が発生したガラス組成物を、失透の発生が抑制されていないガラス組成物であると判断し、不可(×)と評価した。1150℃、1200℃および1250℃は、繊維径の小さいガラス繊維の紡糸工程におけるブッシング立ち上げ時の昇温過程およびガラスの繊維化過程の温度に対応している。

0097

[誘電率]
周波数1MHzにおける誘電率は、ASTMD150−87に準拠して測定した。測定温度は25℃とした。誘電率が小さい値であるほど、当該ガラス組成物から構成されるガラス繊維を含むプリント基板の誘電損失が小さくなる。

0098

0099

0100

表1,2から、以下の事項が確認できた。

0101

実施例1〜9,11のガラス組成物では、確認された泡の数が109cm-3から198cm-3の範囲内であるとともに、いずれのガラス組成物も、繊維径の小さいガラス繊維を紡糸することを想定した条件である1150℃、1200℃および1250℃の各温度での2時間の保持によっても白色結晶析出することなく、透明なガラスの状態を保持していた。また、実施例1〜9,11の各ガラス組成物の周波数1MHzにおける誘電率は4.7から4.9の範囲内であった。一方、比較例1〜6のガラス組成物では、確認された泡の数が270cm-3以上となるか、あるいは繊維径の小さいガラス繊維を紡糸することを想定した条件である1150℃、1200℃および1250℃のいずれの温度においても、2時間の保持によって白色結晶が析出した(失透が生じた)。また、比較例5のガラス組成物の周波数1MHzにおける誘電率は5.0以上であった。

0102

泡の混入が抑制されるとともに失透の発生が特に抑制された実施例1〜9,11のなかから、特に特徴的なガラス組成物について、より詳細に説明する。

0103

実施例1のガラス組成物は、B2O3の含有率が25.8重量%とかなり小さいが、Al2O3の含有率を14.3重量%、SiO2の含有率を52.2重量%とするとともに、MgOの含有率を0.91重量%とし、さらに、Li2Oの含有率を0.18重量%、Na2Oの含有率を0.12重量%、CaOの含有率を4.66重量%、ZnOの含有率を1.83重量%とすることにより、4.79という十分に低い誘電率を実現しながら、泡数122cm-3、繊維径の小さいガラス繊維を紡糸することを想定した全ての温度条件において失透発生せずという良好な特性を達成していた。

0104

実施例2のガラス組成物は、SiO2の含有率が51.4重量%、およびB2O3の含有率が25.5重量%と、双方の含有率ともに比較的小さいために周波数1MHzにおける誘電率が4.90と若干大きくなったが、Al2O3の含有率を15.0重量%とするとともに、MgOの含有率を1.27重量%としてLi2Oを0.42重量%、Na2Oを0.28重量%まで加え、さらに、CaOの含有率を3.55重量%、ZnOの含有率を2.58重量%とすることにより、泡数123cm-3、繊維径の小さいガラス繊維を紡糸することを想定した全ての温度条件において失透発生せずという良好な特性を達成していた。

0105

次に、比較例1〜6のなかから、特に特徴的なガラス組成物について、より詳細に説明する。

0106

比較例1のガラス組成物は、特許文献1(特開昭62-226839号公報)の実施例9に相当するガラス組成物である。この組成物は、特にAl2O3の含有率が大きいことが特徴であり、繊維径の小さいガラス繊維を紡糸することを想定した全ての温度条件において、失透が発生した。比較例1のガラス組成物を用いて平均繊維径3μmのガラス繊維の紡糸を試みたところ失透が発生し、発生した失透による糸切れが頻発してほとんど紡糸できなかった。

0107

比較例2のガラス組成物は、特許文献1の実施例5に相当するガラス組成物である。この組成物は、Al2O3の含有率が9.9重量%と小さく、B2O3の含有率が29.9重量%と大きく、SiO2の含有率が55.8重量%と大きいことが特徴的であり、繊維径の小さいガラス繊維を紡糸することを想定した全ての温度条件において失透こそ発生しなかったものの、熔融時の粘性が高くなったためか、熔融時のガラス組成物の均質性が低下するとともに、確認された泡の数が345cm-3と非常に大きくなった。比較例2のガラス組成物を用いて平均繊維径3μmのガラス繊維の紡糸を試みたところ、組成ムラが発生して糸切れが頻発し、ほとんど紡糸できなかった。また、わずかに得られたガラス繊維中には、多数の泡が観察された。

0108

比較例4のガラス組成物は、Al2O3の含有率が11.1重量%と小さいことが特徴的であり、繊維径の小さいガラス組成物を紡糸することを想定した全ての温度条件において失透こそ発生しなかったものの、SiO2の含有率が54.5重量%と大きいこともあって、熔融時の粘性が高くなったためか、確認された泡の数が270cm-3と非常に大きくなった。比較例4のガラス組成物を用いて平均繊維径3μmのガラス繊維の紡糸を試みたところ、紡糸こそ可能であったが、得られたガラス繊維中には多くのホローファイバーが観察された。

0109

比較例5のガラス組成物は、Al2O3の含有率が19.4重量%と大きく、繊維径の小さいガラス繊維を紡糸することを想定した全ての温度条件において失透が発生した。また、SiO2の含有率が48.9重量%と小さく、B2O3の含有率が24.0重量%と小さいこともあって、周波数1MHzにおける誘電率が5.07と5.0を超えた。このため、比較例5のガラス組成物から形成したガラス繊維およびガラスクロスは誘電損失が大きく、例えばこれらの繊維およびクロスをプリント基板に用いた場合に当該基板の伝送速度が低下する問題が生じると考えられる。

0110

比較例6のガラス組成物は、特許文献2(特表2010-508226公報)の実施例E5から、成分F2を除去した組成物である。この組成物は、SiO2の含有率が53.4重量部と比較的大きいとともに、MgO、Li2O、Na2O、K2OおよびTiO2を含まない。比較例6の組成物は、熔融時の粘性が高くなったためか、熔融時のガラス組成物の均質性が低下するとともに、確認された泡の数が271cm-3と非常に大きくなった。

0111

ここまでの実施例および比較例により、本発明のガラス組成物は、ガラス繊維として、とりわけ高密度実装を実現するプリント基板に使用される繊維径の小さいガラス繊維として用いることができるとともに、ガラス繊維の製造、特に、繊維径の小さいガラス繊維の製造においても紡糸性に優れ、高い製造効率によって安定した品位のガラス繊維を提供できることが確認できた。

0112

(実施例12)
実施例12では、実施例1で作製したガラス組成物のペレットからガラス繊維を製造した。具体的に、当該ペレットをガラス熔融窯に投入し、1550℃の熔融温度で熔融した後、紡糸炉における耐熱ブッシングの底部に設けられた多数のノズルから熔融ガラスを引き出し、集束剤を付与しながら、高速で回転するコレット上のチューブにガラスストランド(平均繊維径4.1μm、フィラメント数50本)を巻き取ってケーキを形成した。次に、形成したケーキの外層から順次ストランドを解舒して撚りを掛けながら風乾した後、ボビンに巻き返して撚糸することでガラスヤーン(番手1.7tex)を得た。得られたガラスヤーンのガラス組成は、実施例1のガラス組成物の組成と同一であった。

0113

次に、得られたガラスヤーンを経糸および緯糸としてエアージェット織機を用いて製織し、単位長さ(25mm)当たりの経糸の数(経糸密度、以下同じ)が95、単位長さ(25mm)当たりの緯糸の数(緯糸密度、以下同じ)が95である平織のガラスクロスを形成した。

0114

次に、形成したガラスクロスに付着している紡糸集束剤および製織集束剤を400℃、30時間の加熱により除去した後、集束剤除去後のガラスクロスに、表面処理剤としてシランカップリング剤を塗布した。次に、水流加工により開繊処理を実施して、実施例12のガラスクロスを得た。得られたガラスクロスの経糸密度は95、緯糸密度は95、厚さは15μm、質量は12.7g/m2であった。実施例12で作製したガラス繊維、ガラスヤーンおよびガラスクロスの評価結果を、以下の表3にまとめる。各評価項目評価法については後述する。

0115

(実施例13)
実施例1で作製したガラス組成物のペレットの代わりに実施例4で作製したガラス組成物のペレットを用いるとともに、熔融温度を1600℃とした以外は実施例12と同様にして、ガラスヤーンおよびガラスクロスを得た。得られたガラスヤーンの番手は1.7texであり、そのガラス組成は実施例4のガラス組成物の組成と同一であった。得られたガラスクロスの経糸密度は95、緯糸密度は95、厚さは15μm、質量は12.7g/m2であった。実施例13で作製したガラス繊維、ガラスヤーンおよびガラスクロスの評価結果を、以下の表3にまとめる。

0116

(比較例7)
実施例1で作製したガラス組成物のペレットの代わりに比較例1で作製したガラス組成物のペレットを用いるとともに、熔融温度を1600℃とした以外は実施例12と同様にして、ガラスヤーンおよびガラスクロスを得た。得られたガラスヤーンの番手は1.7texであり、そのガラス組成は比較例1のガラス組成物の組成と同一であった。得られたガラスクロスの経糸密度は95、緯糸密度は95、厚さは15μm、質量は12.7g/m2であった。比較例7で作製したガラス繊維、ガラスヤーンおよびガラスクロスの評価結果を、以下の表3にまとめる。

0117

実施例12,13および比較例7で作製したガラス繊維、ガラスヤーンおよびガラスクロスについて、各評価項目の評価法は次のとおりである。

0118

[ガラス繊維の紡糸操業性
ガラス繊維の紡糸操業性は、同一の紡糸速度および巻き時間(すなわち、糸切れがないときは同一長さ)としたときに、操業時間(12時間以上)内に紡糸時の糸切れなく所定の長さのケーキが採取できたと仮定したときの理想ケーキ数に対する、実際に糸切れなく採取できた所定の長さのケーキ数の比により評価した。評価は、下記の5段階にて実施し、「3」以上を合格とした。
5:上記比率が70%以上
4:上記比率が60%以上70%未満
3:上記比率が50%以上60%未満
2:上記比率が40%以上50%未満
1:上記比率が40%未満

0119

[ガラス繊維の平均繊維径(平均フィラメント径):μm]
ガラス繊維の平均繊維径は、次のように評価した。得られたガラスクロスを30cm角のサイズにカットしたものを2枚準備し、一方を経糸観察用、他方を緯糸観察用として、それぞれエポキシ樹脂(丸本ストルアス製、商品名3091)に包埋して硬化させた。次に、それぞれの硬化物を、経糸または緯糸が観察可能な程度に研磨し、その研磨面を走査型電子顕微鏡(SEM日本電子製、商品名JSM−6390A)により倍率500倍で観察した。このとき、経糸および緯糸のそれぞれについて無作為に20本選択し、選択した全てのガラス繊維の直径を測定してその平均値を算出し、これをガラス繊維の平均繊維径とした。

0120

[番手:tex]
ガラスヤーンの番手は、JIS R3420:2013の項目7.1に基づいて評価した。

0121

[強度:N/tex]
ガラスヤーンの強度は、次のように評価した。得られたガラスヤーンの引張強さを、JIS R3420:2013の項目7.4.3に従い、半径13mmの円形クランプを用い、試験速度を250mm/分、つかみ間隔を250mmとして求めた。次に、求めた引張強さを当該ガラスヤーンの番手で除することにより、ガラスヤーンの強度(単位:N/tex)とした。

0122

[ガラスクロスの厚さ:μm]
ガラスクロスの厚さは、JIS R3420:2013の項目7.10.1Aに基づいて評価した。

0123

[ガラスクロスの質量:g/m2]
ガラスクロスの質量は、JIS R3420:2013の項目7.2に基づいて評価した。

0124

[ガラスクロスの密度:単位長さ(25mm)当たりのガラス繊維の数]
ガラスクロスの密度(織密度)は、経糸および緯糸の各々について、JIS R3420:2013の項目7.9に基づいて評価した。

0125

[ガラスクロスの外観]
ガラスクロスの外観は、目視により、以下の基準により評価した。良(○)および優(◎)を合格とした。

0126

優(◎):ガラス糸にフィンガー間の窪みに起因する糸癖が原因の縞模様がなく、プリント基板用として全く問題ないレベルであった。

0127

良(○):ガラス糸にフィンガー間の窪みに起因する糸癖が原因の縞模様がやや見られたものの、プリント基板用として問題ないレベルであった。

0128

劣(▲):ガラス糸にフィンガー間の窪みに起因する糸癖が原因の縞模様が見られ、プリント基板用としてやや問題あるレベルであった。

0129

不可(×):ガラス糸にフィンガー間の窪みに起因する糸癖が原因の縞模様が多く、プリント基板用として問題あるレベルであった。

0130

[ガラスクロスの開繊性]
ガラスクロスの開繊性は、JIS R3420:2013の項目7.13に基づいて評価したガラスクロスの通気度(単位:cm3/(cm2・秒))により評価した。通気度が低いほど、ガラスクロスの開繊性が優れていることを示す。

0131

0132

表3に示すように、比較例7に比べて、実施例12,13ではガラス繊維の紡糸操業性が向上した。

実施例

0133

本発明は、その意図および本質的な特徴から逸脱しない限り、他の実施形態に適用しうる。この明細書に開示されている実施形態は、あらゆる点で説明的なものであってこれに限定されない。本発明の範囲は、上記説明ではなく添付したクレームによって示されており、クレームと均等な意味および範囲にあるすべての変更はそれに含まれる。

0134

本発明のガラス組成物は、ガラス繊維、例えばプリント基板用ガラス繊維、の製造に利用できる。また、本発明のガラス組成物は、ガラス成形体、例えばフレーク状ガラス、の製造に利用できる。フレーク状ガラスは、例えば、プリント基板の無機充填材として使用できる。

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