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図面 (11)

課題

母相からなるセルの大きさを小さくすると共に高い電気抵抗率を有する物質によって構成されるセル境界相によって個々のセルを電気的に絶縁することにより渦電流損失を十分に低減することができる鉄基軟磁性材料の製造方法を提供する。

解決手段

鉄からなる第1元素と、銅からなる第2元素と、少なくとも硫黄を含むカルコゲンからなる第3元素と、前記第1元素と前記第2元素と前記第3元素との合計を100at%とする場合に2at%以下のチタン及び2at%以下の窒素と、を含有する鉄基軟磁性材料の製造方法において、当該鉄基軟磁性材料の溶湯冷却過程において、所定の中間温度までは徐冷し、それ以降は急冷する。これにより、鉄を主成分とする母相からなる微細なセルと金属の硫化物等を主成分とするセル境界相とを備える良好なセルウォール構造を達成する。上記に加えてアルミニウムを更に配合してもよい。

概要

背景

鉄基軟磁性材料は、例えばモータトランス及びリアクトル等のコアとして広く使用されている。コアに交流磁場印加すると渦電流が発生する。この渦電流に起因する電気エネルギー損失渦電流損失)を低減するためには、鉄を主成分とする母相が小さい領域(1つ又は複数の結晶粒によって構成されるセル)に分割されており且つ個々のセルが電気的に絶縁されていることが望ましい。このように個々のセル(母相)を電気的に絶縁するためには、高い電気抵抗率を有する物質によってセル境界相(粒界相)を形成させることが望ましい。このように個々のセルがセル境界相によって覆われている構造は「セルウォール構造」と称される。

そこで、当該技術分野においては、鉄を主成分とする母相からなるセルと、セルの境界に存在し且つ銅を含む硫化物等を主成分とするセル境界相と、を備えたセルウォール構造を有する鉄基軟磁性材料が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。これによれば、1400℃以下且つ1000℃以上の温度である急冷開始温度から10℃/秒以上の冷却速度にて溶湯急冷することにより、セル境界相におけるFeSの生成を抑制し、Cu2S及びCu5FeS4等の高い電気抵抗率を有する硫化物を膜状に生成させて渦電流損失を良好に低減することができる。

しかしながら、急冷開始温度よりも高い温度域における冷却速度が過度に速い場合、鉄の柱状晶デンドライト)が生成し成長する。その後、急冷開始温度以下の温度域において上記のように急冷しても柱状晶の結晶形態が維持される。また、鉄の初晶のための凝固核となるものが溶湯に添加されない場合、溶湯の冷却過程において過冷却が起こり、その後、過冷却状態が解消されると鉄の柱状晶が急速に生成し成長する。合金の構成成分の大部分又は全てが凝固し得る低い温度にまで過冷却状態が維持された後に凝固が開始する場合、セル(鉄相)及びセル境界相(硫化物相)等が同時且つ急速に凝固するため、連続的な硫化物の膜がセルの境界に晶出することができず、セルウォール構造が形成されない。一方、急冷開始温度よりも高い温度域における冷却速度が過度に遅い場合、成長した鉄の結晶同士が接合してセルが大きくなってしまう。これらの何れの場合においても、結果として交流磁場における渦電流損失が大きいという問題を生ずる。

また、鉄を主成分とする母相、並びにバナジウム及びクロムのうちの少なくともいずれか一方と鉄と硫黄とを含む粒界相を備え、母相が、その粒界に沿って、粒界相によって仕切られていることを特徴とする軟磁性材料において、粒界相が液相であり且つ母相が固相である温度に保持して急冷することにより、セルウォール構造を形成することが提案されている(例えば、特許文献2を参照)。

更に、金属軟磁性材構成元素から選ばれる少なくとも一種と、B、P、及びSのうち少なくとも一種と、から形成された高抵抗物質によって鉄の結晶粒からなるセルの境界を覆うことにより、高周波帯域において優れた直流重畳特性と低いコア損失特性とを有する鉄系の鋳造複合軟磁性材料を実現することが提案されている(例えば、特許文献3を参照)。この従来技術においては、組織制御のために溶解鋳造後の当該複合軟磁性材料を急冷した場合に高抵抗物質の分解温度より低い温度における更なる熱処理を施すことにより、急冷処理によって低下した鉄の結晶性を高めたり、高抵抗物質からなるセル境界相の連続性を改善したりすることが開示されている。

これらの従来技術によれば、高い電気抵抗率を有するセル境界相(粒界相)が分解されず液相の状態にあり且つセルを構成する母相が固相である温度に保持することによりセル境界相に生じた亀裂等の欠陥修復されてセル境界相の連続性が高まることが期待される。しかしながら、鉄基軟磁性材料の組成(例えば、Fe−Cu−Sの三元系等)及びセル境界相を液相の状態に保つ温度によっては、セル境界相を構成する高抵抗物質の母相に対する濡れ性が不十分であるために例えば球状に凝集し、セルウォール構造を形成することが困難となる場合がある。

加えて、Fe−Si又はFe−Coからなる金属強磁性体相がFeSからなる半導体相により分け隔てられたセルウォール構造を有する磁心材料において、900℃以上の温度域においては10℃/秒以下の冷却速度にて溶湯を徐冷して凝固させることによりセル境界相の連続性を高めることが提案されている(例えば、特許文献4を参照)。

しかしながら、900℃付近の温度まで10℃/秒以下の冷却速度にて溶湯を徐冷すると、鉄の結晶の成長する方向における液相中の鉄が結晶の成長に伴って消費されても、周囲の液相からの拡散による鉄の補充が間に合うため、鉄の結晶の成長する方向における液相中の鉄の濃度が十分に低下しない。即ち、鉄の結晶の成長方向における鉄の欠乏鉄濃度の低下)が不十分となる。その結果、成長した鉄の結晶同士が接合してセルが大きくなったり、鉄の結晶によって構成されたネットワーク鋳塊内に形成されたりして、交流磁場における渦電流損失が大きくなるという問題を生ずる。

概要

母相からなるセルの大きさを小さくすると共に高い電気抵抗率を有する物質によって構成されるセル境界相によって個々のセルを電気的に絶縁することにより渦電流損失を十分に低減することができる鉄基軟磁性材料の製造方法を提供する。鉄からなる第1元素と、銅からなる第2元素と、少なくとも硫黄を含むカルコゲンからなる第3元素と、前記第1元素と前記第2元素と前記第3元素との合計を100at%とする場合に2at%以下のチタン及び2at%以下の窒素と、を含有する鉄基軟磁性材料の製造方法において、当該鉄基軟磁性材料の溶湯の冷却過程において、所定の中間温度までは徐冷し、それ以降は急冷する。これにより、鉄を主成分とする母相からなる微細なセルと金属の硫化物等を主成分とするセル境界相とを備える良好なセルウォール構造を達成する。上記に加えてアルミニウムを更に配合してもよい。

目的

本発明は、母相からなるセルの大きさを小さくすると共に高い電気抵抗率を有する物質によって構成されるセル境界相によって個々のセルを電気的に絶縁することにより渦電流損失を十分に低減することができる鉄基軟磁性材料の製造方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

鉄(Fe)からなる第1元素と、銅(Cu)からなる第2元素と、少なくとも硫黄(S)を含むカルコゲン(Ch)からなる第3元素と、を含有し、且つ、鉄(Fe)を主成分とする母相からなるセルと、少なくとも前記第2元素を含む金属と前記第3元素とからなるカルコゲン化物を主成分として含み前記セルの境界に存在するセル境界相と、を含む構造を有する鉄基軟磁性材料であって、前記第1元素と前記第2元素と前記第3元素との合計を100at%とする場合、2at%以下のチタン(Ti)及び2at%以下の窒素(N)を更に含む、鉄基軟磁性材料の製造方法であって、前記第1元素と、前記第2元素と、前記第3元素、前記第3元素と前記第1元素とを含む化合物、前記第3元素と前記第2元素とを含む化合物及び前記第3元素と前記第2元素と前記第1元素とを含む化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種物質であるカルコゲン源と、チタン(Ti)及びチタン(Ti)を含む化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の物質であるチタン源と、を原材料として量する、第1工程と、前記第1工程において秤量された前記原材料を窒素(N2)と接触させつつ所定の温度である第1温度に加熱して熔解させることにより溶湯とする、第2工程と、前記第2工程において得られた前記溶湯を窒素(N2)と接触させつつ前記第1温度から1400℃よりも高く且つ1480℃よりも低い所定の温度である第2温度までの温度域である第1ゾーンにおいて所定の降温速度である第1速度にて冷却する、第3工程と、前記第3工程において前記第2温度まで冷却された前記溶湯を前記第2温度から前記第2温度よりも低い所定の温度である第3温度までの温度域である第2ゾーンにおいて前記第1速度よりも速い所定の降温速度である第2速度にて冷却することにより前記鉄基軟磁性材料を得る、第4工程と、を含む、鉄基軟磁性材料の製造方法。

請求項2

請求項1に記載の鉄基軟磁性材料の製造方法であって、前記第2温度は1420℃以上であり且つ1470℃以下である所定の温度である、鉄基軟磁性材料の製造方法。

請求項3

請求項1又は請求項2に記載の鉄基軟磁性材料の製造方法であって、前記第1速度は0.1℃/秒以上であり且つ10℃/秒以下である、鉄基軟磁性材料の製造方法。

請求項4

請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の鉄基軟磁性材料の製造方法であって、前記第3温度は1100℃であり、前記第2速度は50℃/秒以上であり且つ600℃/秒以下である、鉄基軟磁性材料の製造方法。

請求項5

請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の鉄基軟磁性材料の製造方法であって、前記第3工程において、前記窒素含有雰囲気中に前記溶湯を保持することにより前記溶湯を窒素(N2)と接触させる、鉄基軟磁性材料の製造方法。

請求項6

請求項5に記載の鉄基軟磁性材料の製造方法であって、前記窒素含有雰囲気は、窒素の圧力が1kPa以上であり且つ大気圧未満である窒素雰囲気又は窒素の分圧が1kPa以上であり且つ大気圧未満である窒素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気である、鉄基軟磁性材料の製造方法。

請求項7

請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の鉄基軟磁性材料の製造方法であって、前記第3工程において、窒素を含むガスを前記溶湯中に吹き込むことにより前記溶湯を窒素(N2)と接触させる、鉄基軟磁性材料の製造方法。

請求項8

請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載の鉄基軟磁性材料の製造方法であって、前記第3工程において、前記溶湯を撹拌及び/又は振動に付す、鉄基軟磁性材料の製造方法。

請求項9

請求項1乃至請求項8の何れか一項に記載の鉄基軟磁性材料の製造方法であって、前記母相内に窒化チタン(TiN)の析出物が分散している、鉄基軟磁性材料の製造方法。

請求項10

請求項1乃至請求項9の何れか一項に記載の鉄基軟磁性材料の製造方法であって、前記第1工程において、アルミニウム(Al)及びアルミニウム(Al)を含む化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の物質であるアルミニウム源を原材料として更に秤量する、鉄基軟磁性材料の製造方法。

請求項11

請求項10に記載の鉄基軟磁性材料の製造方法であって、前記母相内に窒化チタン(TiN)の析出物が分散しており、前記窒化チタン(TiN)の析出物がアルミニウム(Al)の酸化物を含む、鉄基軟磁性材料の製造方法。

請求項12

請求項1乃至請求項11の何れか一項に記載の鉄基軟磁性材料の製造方法であって、前記第1工程において、前記第1元素と前記第2元素と前記第3元素との合計を100at%とする場合、前記第1元素と前記第2元素と前記第3元素とのそれぞれの含有率の組み合わせが、前記第1元素、前記第2元素及び前記第3元素の原子濃度三元組成図において、第1元素91.9at%−第2元素7.1at%−第3元素1.0at%を表すA点、第1元素87.0at%−第2元素12.0at%−第3元素1.0at%を表すB点、第1元素75.0at%−第2元素20.0at%−第3元素5.0at%を表すC点、及び第1元素75.0at%−第2元素13.1at%−第3元素11.9at%を表すD点によって囲まれる領域である特定領域に対応する組み合わせであるように、前記第1元素と、前記第2元素と、前記カルコゲン源と、前記チタン源と、を前記原材料として秤量する、鉄基軟磁性材料の製造方法。

請求項13

請求項1乃至請求項12の何れか一項に記載の鉄基軟磁性材料の製造方法であって、前記第1元素は、鉄(Fe)の一部が、ニッケル(Ni)及び/又はコバルト(Co)によって置き換えられている、鉄基軟磁性材料の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、鉄基軟磁性材料の製造方法に関する。

背景技術

0002

鉄基軟磁性材料は、例えばモータトランス及びリアクトル等のコアとして広く使用されている。コアに交流磁場印加すると渦電流が発生する。この渦電流に起因する電気エネルギー損失渦電流損失)を低減するためには、鉄を主成分とする母相が小さい領域(1つ又は複数の結晶粒によって構成されるセル)に分割されており且つ個々のセルが電気的に絶縁されていることが望ましい。このように個々のセル(母相)を電気的に絶縁するためには、高い電気抵抗率を有する物質によってセル境界相(粒界相)を形成させることが望ましい。このように個々のセルがセル境界相によって覆われている構造は「セルウォール構造」と称される。

0003

そこで、当該技術分野においては、鉄を主成分とする母相からなるセルと、セルの境界に存在し且つ銅を含む硫化物等を主成分とするセル境界相と、を備えたセルウォール構造を有する鉄基軟磁性材料が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。これによれば、1400℃以下且つ1000℃以上の温度である急冷開始温度から10℃/秒以上の冷却速度にて溶湯急冷することにより、セル境界相におけるFeSの生成を抑制し、Cu2S及びCu5FeS4等の高い電気抵抗率を有する硫化物を膜状に生成させて渦電流損失を良好に低減することができる。

0004

しかしながら、急冷開始温度よりも高い温度域における冷却速度が過度に速い場合、鉄の柱状晶デンドライト)が生成し成長する。その後、急冷開始温度以下の温度域において上記のように急冷しても柱状晶の結晶形態が維持される。また、鉄の初晶のための凝固核となるものが溶湯に添加されない場合、溶湯の冷却過程において過冷却が起こり、その後、過冷却状態が解消されると鉄の柱状晶が急速に生成し成長する。合金の構成成分の大部分又は全てが凝固し得る低い温度にまで過冷却状態が維持された後に凝固が開始する場合、セル(鉄相)及びセル境界相(硫化物相)等が同時且つ急速に凝固するため、連続的な硫化物の膜がセルの境界に晶出することができず、セルウォール構造が形成されない。一方、急冷開始温度よりも高い温度域における冷却速度が過度に遅い場合、成長した鉄の結晶同士が接合してセルが大きくなってしまう。これらの何れの場合においても、結果として交流磁場における渦電流損失が大きいという問題を生ずる。

0005

また、鉄を主成分とする母相、並びにバナジウム及びクロムのうちの少なくともいずれか一方と鉄と硫黄とを含む粒界相を備え、母相が、その粒界に沿って、粒界相によって仕切られていることを特徴とする軟磁性材料において、粒界相が液相であり且つ母相が固相である温度に保持して急冷することにより、セルウォール構造を形成することが提案されている(例えば、特許文献2を参照)。

0006

更に、金属軟磁性材構成元素から選ばれる少なくとも一種と、B、P、及びSのうち少なくとも一種と、から形成された高抵抗物質によって鉄の結晶粒からなるセルの境界を覆うことにより、高周波帯域において優れた直流重畳特性と低いコア損失特性とを有する鉄系の鋳造複合軟磁性材料を実現することが提案されている(例えば、特許文献3を参照)。この従来技術においては、組織制御のために溶解鋳造後の当該複合軟磁性材料を急冷した場合に高抵抗物質の分解温度より低い温度における更なる熱処理を施すことにより、急冷処理によって低下した鉄の結晶性を高めたり、高抵抗物質からなるセル境界相の連続性を改善したりすることが開示されている。

0007

これらの従来技術によれば、高い電気抵抗率を有するセル境界相(粒界相)が分解されず液相の状態にあり且つセルを構成する母相が固相である温度に保持することによりセル境界相に生じた亀裂等の欠陥修復されてセル境界相の連続性が高まることが期待される。しかしながら、鉄基軟磁性材料の組成(例えば、Fe−Cu−Sの三元系等)及びセル境界相を液相の状態に保つ温度によっては、セル境界相を構成する高抵抗物質の母相に対する濡れ性が不十分であるために例えば球状に凝集し、セルウォール構造を形成することが困難となる場合がある。

0008

加えて、Fe−Si又はFe−Coからなる金属強磁性体相がFeSからなる半導体相により分け隔てられたセルウォール構造を有する磁心材料において、900℃以上の温度域においては10℃/秒以下の冷却速度にて溶湯を徐冷して凝固させることによりセル境界相の連続性を高めることが提案されている(例えば、特許文献4を参照)。

0009

しかしながら、900℃付近の温度まで10℃/秒以下の冷却速度にて溶湯を徐冷すると、鉄の結晶の成長する方向における液相中の鉄が結晶の成長に伴って消費されても、周囲の液相からの拡散による鉄の補充が間に合うため、鉄の結晶の成長する方向における液相中の鉄の濃度が十分に低下しない。即ち、鉄の結晶の成長方向における鉄の欠乏鉄濃度の低下)が不十分となる。その結果、成長した鉄の結晶同士が接合してセルが大きくなったり、鉄の結晶によって構成されたネットワーク鋳塊内に形成されたりして、交流磁場における渦電流損失が大きくなるという問題を生ずる。

先行技術

0010

特開2016−027621号公報
特開2014−049639号公報
特開2004−327762号公報
特開2005−347430号公報

発明が解決しようとする課題

0011

前述したように、金属の硫化物を主成分とするセル境界相を備えるセルウォール構造を有する鉄基軟磁性材料において、鉄を主成分とする1つ又は複数の結晶粒によって構成されるセル(母相)の大きさを小さくすると共に高い電気抵抗率を有する物質によって構成されるセル境界相によって個々のセルを電気的に絶縁することにより渦電流損失を確実に低減することができる技術は未だ確立されていない。

0012

本発明は、上記課題に対処するためになされたものである。即ち、本発明は、母相からなるセルの大きさを小さくすると共に高い電気抵抗率を有する物質によって構成されるセル境界相によって個々のセルを電気的に絶縁することにより渦電流損失を十分に低減することができる鉄基軟磁性材料の製造方法を提供することを1つの目的とする。

課題を解決するための手段

0013

そこで、本発明者は、鋭意研究の結果、鉄(Fe)を主成分とする母相からなるセルと金属の硫化物等を主成分とするセル境界相とを備えるセルウォール構造を有する鉄基軟磁性材料の原料として所定量のチタン(Ti)及び窒素(N)を更に配合すると共に、当該鉄基軟磁性材料の溶湯の冷却過程において、所定の中間温度までは徐冷し、それ以降は急冷することにより、個々のセルの大きさを小さくすると共にセル境界相連続性を高めて、渦電流損失を低減することができることを見出した。

0014

本発明に係る鉄基軟磁性材料の製造方法(以下、「本発明方法」と称される場合がある。)によって製造される鉄基軟磁性材料(以下、「本発明材料」と称される場合がある。)は、以下に列挙する第1元素乃至第3元素を含有する。
第1元素:鉄(Fe)。
第2元素:銅(Cu)。
第3元素:少なくとも硫黄(S)を含むカルコゲン(Ch)。

0015

更に、本発明材料は、セルとセル境界相とを含む構造である「セルウォール構造」を有する。セルは、鉄(Fe)を主成分とする母相からなる。セル境界相は、少なくとも前記第2元素を含む金属と前記第3元素とからなるカルコゲン化物を主成分として含み、前記セルの境界に存在する。加えて、本発明材料は、前記第1元素と前記第2元素と前記第3元素との合計を100at%とする場合、2at%以下のチタン(Ti)及び2at%以下の窒素(N)を更に含む。

0016

そして、本発明方法は、以下に列挙する第1工程乃至第4工程を含む。

0017

第1工程:前記第1元素と、前記第2元素と、カルコゲン源と、チタン源と、を原材料として量する。カルコゲン源は、前記第3元素、前記第3元素と前記第1元素とを含む化合物、前記第3元素と前記第2元素とを含む化合物及び前記第3元素と前記第2元素と前記第1元素とを含む化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の物質である。チタン源は、チタン(Ti)及びチタン(Ti)を含む化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の物質である。より具体的には、第1元素、第2元素、第3元素及びチタン(Ti)のそれぞれの配合率が所望の組み合わせとなるように、これらの原材料を秤量する。
第2工程:前記第1工程において秤量された前記原材料を窒素(N2)と接触させつつ所定の温度である第1温度に加熱して熔解させることにより溶湯とする。

0018

第3工程:前記第2工程において得られた前記溶湯を窒素(N2)と接触させつつ前記第1温度から第2温度までの温度域である第1ゾーンにおいて所定の降温速度である第1速度にて冷却する。第2温度は、1400℃よりも高く且つ1480℃よりも低い所定の温度である。
第4工程:前記第3工程において前記第2温度まで冷却された前記溶湯を前記第2温度から第3温度までの温度域である第2ゾーンにおいて第2速度にて冷却することにより前記鉄基軟磁性材料を得る。第3温度は、前記第2温度よりも低い所定の温度である。第2速度は、前記第1速度よりも速い所定の降温速度である。

発明の効果

0019

本発明によれば、母相からなるセルの大きさを小さくすると共に高い電気抵抗率を有する物質によって構成されるセル境界相によって個々のセルを電気的に絶縁することにより渦電流損失を十分に低減することができる鉄基軟磁性材料の製造方法を提供することができる。

0020

本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の各実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。

図面の簡単な説明

0021

本発明の第1実施形態に係る鉄基軟磁性材料の製造方法(第1方法)に含まれる各工程を示すためのフローチャートである。
第1方法の第2工程乃至第4工程における溶湯の温度変化を示す模式的なタイムチャートである。
第1方法の第2工程乃至第4工程の実行に伴ってセルウォール構造が生ずる様子を示す模式図である。
本発明の第3実施形態に係る鉄基軟磁性材料の製造方法(第3方法)における第1元素(Fe)、第2元素(Cu)及び第3元素(Ch)のそれぞれの含有率の組み合わせの範囲を示す三元組成図である。
本発明の実施例1に係る鉄基軟磁性材料(サンプルE1)の研磨断面の顕微鏡写真である。
本発明の実施例2に係る鉄基軟磁性材料(サンプルE2)の研磨断面の顕微鏡写真である。
比較例1に係る鉄基軟磁性材料(サンプルC1)の研磨断面の顕微鏡写真である。
比較例2に係る鉄基軟磁性材料(サンプルC2)の研磨断面の顕微鏡写真である。
比較例3に係る鉄基軟磁性材料(サンプルC3)の研磨断面の顕微鏡写真である。
比較例4に係る鉄基軟磁性材料(サンプルC4)の研磨断面の顕微鏡写真である。

0022

《第1実施形態》
以下、本発明の第1実施形態に係る鉄基軟磁性材料の製造方法(以下、「第1方法」と称される場合がある。)について説明する。

0023

〈構成〉
第1方法によって製造される鉄基軟磁性材料(以下、「第1材料」と称される場合がある。)は、以下に列挙する第1元素乃至第3元素を含有する。
第1元素:鉄(Fe)。
第2元素:銅(Cu)。
第3元素:少なくとも硫黄(S)を含むカルコゲン(Ch)。

0024

第1元素は、必ずしも純鉄に限定されず、鉄(Fe)以外の一種以上の元素を更に含有していてもよい。このような鉄(Fe)以外の元素の具体例としては、例えば、珪素(Si)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)及びニッケル(Ni)を挙げることができる。

0025

第2元素は、第3元素と化合してカルコゲン化物を生成し、渦電流損失を低減するのに十分に高い体積固有抵抗(電気抵抗率)を有するセル境界相を形成することができる金属元素である。具体的には、第1材料が含有する第2元素は銅(Cu)である。

0026

第3元素は、少なくとも硫黄(S)を含むカルコゲン(Ch)である。換言すれば、第1材料は、少なくとも硫黄(S)を第3元素として含み、酸素(O)、セレン(Se)及びテルル(Te)からなる群より選ばれる一種以上の元素を第3元素として更に含んでいてもよい。

0027

更に、第1材料は、セルとセル境界相とを含む構造である「セルウォール構造」を有する。セルは、鉄(Fe)を主成分とする母相からなる。セル境界相は、少なくとも前記第2元素を含む金属と少なくとも前記第3元素とからなるカルコゲン化物を主成分として含み、前記セルの境界に存在する。

0028

母相の主成分である「鉄」は必ずしも純鉄に限定されず、例えば、純鉄、鉄−珪素合金、鉄−コバルト合金、鉄−アルミニウム合金、鉄−珪素−アルミニウム合金、及び鉄−ニッケル合金からなる群より選択される少なくとも一種を母相の主成分とすることができる。更に、母相の主成分である「鉄」は、結果として得られる鉄基軟磁性材料の磁気特性に対する悪影響を及ぼさない限りにおいて、不純物を僅か(例えば、数百質量ppm未満)に含有していてもよい。

0029

セル境界相の主成分である「少なくとも第2元素を含む金属と少なくとも第3元素とからなるカルコゲン化物」は、例えば第2元素のカルコゲン化物及び第1元素及び第2元素の複合カルコゲン化物等、並びにこれらから第1元素及び/又は第2元素が欠損した分子式によって表されるカルコゲン化物からなる群より選択される少なくとも一種の物質である。このようなカルコゲン化物は高い電気抵抗率を有するので、渦電流損失の低減に有効である。

0030

加えて、第1材料は、前記第1元素と前記第2元素と前記第3元素との合計を100at%とする場合、2at%以下のチタン(Ti)及び2at%以下の窒素(N)を更に含む。好ましくは、第1材料におけるチタン(Ti)の含有率は、第1元素と第2元素と第3元素との合計を100at%とする場合、0.5at%以上であり且つ1.2at%以下である。

0031

そして、第1方法は、図1のフローチャートに示すように、以下に列挙する第1工程乃至第4工程を含む。

0032

第1工程(ステップS1):前記第1元素と、前記第2元素と、カルコゲン源と、チタン源と、を原材料として秤量する。カルコゲン源とは、前記第3元素、前記第3元素と前記第1元素とを含む化合物、前記第3元素と前記第2元素とを含む化合物及び前記第3元素と前記第2元素と前記第1元素とを含む化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の物質である。チタン源とは、チタン(Ti)及びチタン(Ti)を含む化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の物質である。より具体的には、第1元素、第2元素、第3元素及びチタン(Ti)のそれぞれの配合率が所望の組み合わせとなるように、これらの原材料を秤量する。

0033

後述する第2工程において各種原料を加熱して熔解させて溶湯を生成させる過程におけるカルコゲン(Ch)の蒸発を低減する観点からは、例えば、カルコゲン(Ch)そのもの(単体)ではなく、第1元素のカルコゲン化物、第2元素のカルコゲン化物、及び/又は第1元素及び第2元素の複合カルコゲン化物等をカルコゲン源として使用してもよい。この場合、当然のことながら、カルコゲン化物を構成する第1元素及び/又は第2元素もまた第1材料の主成分となる第1元素及び/又は第2元素として扱われる(配合率に算入される)。

0034

例えば、第3元素として硫黄(S)が採用される場合、カルコゲン源の具体例としては、例えば、硫黄(S)、硫化鉄(FeS)、硫化銅(Cu2S)、銅鉱(Cu5FeS4)及び黄銅鉱(CuFeS2)等を挙げることができる。チタン源の具体例としては、例えば、チタン(Ti)、鉄チタン(FeTi)、窒化チタン(TiN)及び酸化チタン(TiO2)等を挙げることができる。

0035

第2工程(ステップS2):前記第1工程において秤量された前記原材料を、例えばアルミナ製の坩堝等の容器に入れて、窒素(N2)と接触させつつ所定の温度である第1温度に加熱して熔解させることにより溶湯とする。

0036

この第2工程は、第1材料を構成する全ての原材料の秤量が完了した後(即ち、ステップS1の実行が完了した後)に実行される。これらの原材料を加熱するための具体的な手段は特に限定されないが、例えば、これらの原材料を収容する坩堝等の容器を溶解炉中に入れ、例えば赤外線ヒータ等の熱源を用いて加熱することができる。

0037

第1温度は、第1工程において秤量された全ての原材料を熔解させることができる温度である。具体的には、第1温度は、第1材料を構成する全ての原材料の配合率(組成)に対応する凝固点以上の温度として適宜定めることができる。より具体的には、第1温度は、例えば1590℃とすることができる。

0038

第3工程(ステップS3):前記第2工程において得られた前記溶湯を窒素(N2)と接触させつつ前記第1温度から第2温度までの温度域である第1ゾーンにおいて所定の降温速度である第1速度にて冷却する。第2温度は、1400℃よりも高く且つ1480℃よりも低い所定の温度である。

0039

この第3工程は、第1材料を構成する全ての原材料が第1温度に加熱され熔解されて溶湯となった後(即ち、ステップS1及びステップS2の実行が完了した後)に実行される。溶湯を冷却するための具体的な手法は特に限定されないが、例えば上述した赤外線ヒータ等の熱源への供給電力の低減及び/又は例えば窒素(N2)等の雰囲気ガスの流量の増大等により、所定の降温速度(第1速度)にて溶湯を冷却することができる。

0040

第1速度は、第1材料の組成において、十分な量の窒化チタン(TiN)が溶湯中に晶出し且つ粒子状の鉄(Fe)の等軸晶が晶出し成長するように定められる。好ましくは、第1速度は0.1℃/秒以上であり且つ10℃/秒以下である。これにより、溶湯中に晶出した窒化チタン(TiN)を核とする鉄(Fe)の等軸晶の晶出及び成長が促進される。

0041

更に、第2温度が1400℃以下であると、成長した鉄(Fe)の結晶粒同士が接合してセルが過度に大きくなったり、高抵抗物質としての硫化物相からなるセル境界相のセル(母相)に対する濡れ性が不十分であるために硫化物相が例えば球状に凝集してセルウォール構造を形成することが困難となったりする虞がある。これらの何れの場合においても、結果として交流磁場における渦電流損失が大きいという問題を生ずる。一方、第2温度が1480℃以上であると、後述する第4工程における急冷に伴って鉄(Fe)相が樹枝状の柱状晶として成長するため、セルにおける柱状晶の占める割合が高まり、結果として交流磁場における渦電流損失が大きいという問題を生ずる。即ち、第2温度は、セルを構成する鉄(Fe)の結晶粒同士の接合を低減し、セル境界相のセル(母相)に対する十分な濡れ性を確保し、鉄(Fe)の柱状晶の成長を低減することができる温度域に含まれる所定の温度として定義される。好ましくは、第2温度は1420℃以上であり且つ1470℃以下である所定の温度である。

0042

尚、第2工程において原材料を窒素(N2)と接触させるための具体的な方法及び第3工程において溶湯を窒素(N2)と接触させるための具体的な方法は特に限定されない。例えば、前記第2工程において、窒素(N2)を含む雰囲気である窒素含有雰囲気中に前記原材料を保持することにより前記原材料を窒素(N2)と接触させてもよい。また、前記第3工程において、前記窒素含有雰囲気中に前記溶湯を保持することにより前記溶湯を窒素(N2)と接触させてもよい。この場合、前記窒素含有雰囲気は、窒素(N2)の圧力が5kPa以上であり且つ大気圧以下である窒素雰囲気とすることができる。或いは、前記窒素含有雰囲気は、分圧が5kPa以上であり且つ大気圧以下である窒素(N2)と不活性ガス(例えば、アルゴン(Ar)等)との混合ガス雰囲気とすることができる。また、第2工程及び第3工程のみならず、第4工程もまた、窒素含有雰囲気において実行してもよい。

0043

或いは、前記第3工程において、上記のように窒素含有雰囲気中に溶湯を保持することに代えて、又は、窒素含有雰囲気中に溶湯を保持することに加えて、窒素を含むガスを前記溶湯中に吹き込むことにより前記溶湯を窒素(N2)と接触させてもよい。

0044

尚、上記のように第3工程において溶湯を窒素(N2)と接触させることにより、例えば、チタン源として採用された窒化チタン(TiN)の分解により溶湯中に生成した窒素(N)が溶湯から雰囲気中へと放出されることを抑制することができる。また、窒素含有雰囲気等から溶湯へと窒素(N)が供給され続けるので溶湯中の窒素濃度は溶湯の温度Tにおける飽和窒素濃度[N]に等しい。従って、以下に示す反応速度式からも明らかであるように、窒化チタン(TiN)の生成に伴う溶湯中のチタン濃度[Ti]の減少及び窒化チタン濃度[TiN]の増大により当該反応速度式の右辺左辺(K(T))よりも小さい値となるまで窒化チタン(TiN)の晶出が継続する。

0045

0046

ところで、第3工程において冷却される溶湯においては、溶湯の他の部分に比べて表面の温度が低いという温度斑が生じがちである。その結果、溶湯の表面近傍における窒素(N)の溶解度が低下して、溶湯の表面から気体としての窒素(N2)が雰囲気中へと排出される場合がある。このような温度斑は、第3工程における降温速度が速くなるほど大きくなる。従って、溶湯の表面からの窒素(N2)の排出を低減して窒化チタン(TiN)の晶出を促進する観点からは、第3工程における降温速度を遅くすることが望ましい。また、第3工程において冷却される溶湯の温度と雰囲気温度との差を小さくするように温度管理を実行することも有用である。

0047

尚、上記のように十分な量の窒化チタン(TiN)を溶湯中に晶出させる観点からは、前記第3工程において、前記溶湯を撹拌及び/又は振動に付すことが好ましい。これにより、第2工程において得られた溶湯と窒素(N2)との接触が促進され、母相における微細な等軸晶の成長の核となる窒化チタン(TiN)の生成が更に促進される。また、生成した窒化チタン(TiN)の析出物の溶湯内における分散が促進され、母相における微細な等軸晶の均一な成長に繋がる。好ましくは、結果として得られる鉄基軟磁性材料において、窒化チタン(TiN)の析出物が母相内に分散している。

0048

第4工程(ステップS4):前記第3工程において前記第2温度まで冷却された前記溶湯を前記第2温度から第3温度までの温度域である第2ゾーンにおいて第2速度にて冷却することにより前記鉄基軟磁性材料を得る。第3温度は、前記第2温度よりも低い所定の温度である。第2速度は、前記第1速度よりも速い所定の降温速度である。

0049

この第4工程は第1材料を構成する全ての原材料が第1温度に加熱され熔解されて溶湯となり更に窒素(N2)と接触しつつ第2温度まで冷却された後(即ち、ステップS1乃至ステップS3の実行が完了した後)に実行される。上記のように溶湯を冷却して溶湯を凝固させるための具体的な手法は特に限定されないが、例えば上述した赤外線ヒータ等の熱源への供給電力の低減及び/又は例えば窒素(N2)等の雰囲気ガスの流量の増大等により、所定の降温速度(第2速度)にて溶湯を冷却することができる。また、窒素(N2)等の雰囲気ガスに代えて或いは窒素(N2)等の雰囲気ガスに加えて、例えばヘリウムガス(He)等、高い冷却効率を呈する不活性ガスを雰囲気ガスとして採用してもよい。

0050

第2速度は、第1材料の組成において、鉄の結晶の成長方向における鉄の欠乏(鉄濃度の低下)が不十分となり成長した鉄の結晶同士が接合してセルが大きくなったり鉄の結晶によって構成されたネットワークが鋳塊内に形成されたりしないように定められる。換言すれば、鉄の結晶の成長する方向における液相中の鉄の消費に対して周囲の液相からの拡散による鉄の補充が間に合わない程度に第2速度を速めて(急冷して)、鉄の結晶の成長する方向における液相中の鉄の濃度を十分に低下させる(鉄の欠乏を生じさせる)必要がある。また、このように急冷することにより、セル(鉄を主成分とする母相)に対するセル境界相となる硫化物相(液相)の界面エネルギーに起因するセル境界相の連続性の低下によりセル同士が互いに接触してセルが大きくなる可能性を低減することもできる。このようにして、微細化されたセルがセル境界相によって分離・絶縁された構造(セルウォール構造)を良好に形成させることができる。好ましくは、第2速度は50℃/秒以上であり且つ600℃/秒以下である。

0051

また、第3温度は、第3温度へと冷却することにより、セル境界相となる硫化物相が液相から固相へと十分に変態してセルウォール構造が確立されるように定められる。典型的には、第3温度は1100℃である。第3温度未満の温度(例えば、室温等)へと鉄基軟磁性材料を冷却するときの降温温度等については特に限定されない。

0052

尚、上述した各工程における所定の降温速度である第1速度及び第2速度は、それぞれの降温過程において必ずしも一定である必要は無く、例えば、それぞれの降温過程の途中において、温度が一定に保たれる期間(保温期間)及び/又は降温速度が変化する期間(変速期間)等が設けられていてもよい。更に、上述した各工程の間及び/又は途中に保温期間が設けられていてもよい。

0053

〈セルの微細化メカニズム
ここで、鉄を主成分とする母相からなる個々のセルの大きさが第1方法によって小さくなる(微細化する)メカニズムについて詳しく説明する。図2は、第1方法の第2工程乃至第4工程における溶湯の温度変化を示す模式的なタイムチャートである。また、図3は、第1方法の第2工程乃至第4工程の実行に伴ってセルウォール構造が生ずる様子を示す模式図である。

0054

上述したように、第2工程においては、第1工程において秤量された第1元素と第2元素とカルコゲン源とチタン源とからなる原材料を、窒素(N2)と接触させつつ、第1温度に加熱して熔解させることにより溶湯とする。図2に示す例においては、第1温度は1590℃であり、5kPa以上であり且つ大気圧以下である圧力の窒素(N2)を含む窒素含有雰囲気中において第2工程が実行される。また、第1工程において溶湯の温度が第1温度(1590℃)に到達してから10分間に亘って溶湯の温度を一定に保つ保温期間が設けられている。これにより、図3の(a)に示すように、第1材料を構成する全ての原材料が確実に熔解されて溶湯(液相)となる。また、窒素含有雰囲気中において第2工程が実行されるので、溶湯中に窒素(N)が溶け込む。

0055

次に、第3工程においては、第2工程において得られた溶湯を、窒素(N2)と接触させつつ、第1温度から第2温度までの温度域(第1ゾーン)において第1速度にて冷却(徐冷)する。図2に示す例においては、第2温度は1420℃以上であり且つ1470℃以下である所定の温度である。また、第1速度は0.1℃/秒以上であり且つ10℃/秒以下である所定の降温速度に固定されている。更に、第3工程もまた、上述した第2工程と同様の窒素含有雰囲気中において実行される。これにより、図3の(b)に示すように十分な量の窒化チタン(TiN)が溶湯中に晶出し、図3の(c)に示すように粒子状の鉄(Fe)の等軸晶が窒化チタン(TiN)を核として晶出し、成長を始める。

0056

やがて溶湯の温度が第2温度に到達した時点においては、図3の(d)において矢印によって示すように、粒子状の鉄(Fe)の等軸晶が液相中の鉄(Fe)を消費しながら成長し続けている。従って、このまま溶湯を徐冷し続けると、前述したように、鉄の結晶の成長する方向における鉄の欠乏が不十分となり、成長した鉄の結晶同士が接合してセルが大きくなったり鉄の結晶によって構成されたネットワークが鋳塊内に形成されたりする。その結果、交流磁場における渦電流損失が大きくなるという問題を生ずる。

0057

そこで、次の第4工程においては、第3工程において第2温度まで冷却された溶湯を第2温度から第3温度までの温度域(第2ゾーン)において第2速度にて冷却(急冷)することにより鉄基軟磁性材料を得る。第3温度は第2温度よりも低い所定の温度である。また、第2速度は第1速度よりも速い所定の降温速度である。図2に示す例においては、第3温度は1100℃である。また、第2速度は50℃/秒以上であり且つ600℃/秒以下である所定の降温速度に固定されている。これにより、鉄の結晶の成長する方向における鉄の欠乏が生じ、図3の(e)に示すように、成長した鉄の結晶同士の接合が低減される。

0058

また、第4工程の開始時における溶湯の温度は第2温度である。第2温度は、前述したように、セルを構成する鉄(Fe)の結晶粒同士の接合を低減し、セル境界相のセル(母相)に対する十分な濡れ性を確保し、鉄(Fe)の柱状晶の成長を低減することができる温度域に含まれる所定の温度として定義される。第4工程においては、このような第2温度から溶湯が急冷される。従って、図3の(f)に示すように、主として等軸晶からなる鉄(Fe)の結晶粒によって構成されるセル(母相)が高抵抗物質である硫化物相からなるセル境界相によって覆われた良好なセルウォール構造が達成される。第4工程においては上記のように溶湯が急冷されるので、図3の(g)に示すように、良好なセルウォール構造が維持されたままセル境界相が液相から固相へと凝固する。即ち、良好なセルウォール構造が固定化される。

0059

尚、図2に示す例においては、第4工程もまた、上述した第2工程及び第3工程と同様に、窒素含有雰囲気中において実行される。しかしながら、第4工程は必ずしも窒素含有雰囲気中において実行される必要は無く、例えばアルゴン(Ar)及びヘリウム(He)等の不活性ガス雰囲気中において第4工程を実行してもよい。

0060

以上のようにして、第1方法によれば、鉄基軟磁性材料において、セルの微細化及びセル境界相の連続性の向上を達成することにより良好なセルウォール構造を形成させて、渦電流損失を十分に低減することができる。

0061

〈効果〉
以上説明してきたように、第1方法によれば、鉄からなる第1元素と、銅からなる第2元素と、少なくとも硫黄を含むカルコゲンからなる第3元素と、前記第1元素と前記第2元素と前記第3元素との合計を100at%とする場合に2at%以下のチタン及び2at%以下の窒素と、を含有する鉄基軟磁性材料において、母相からなるセルの大きさを小さくすると共に高い電気抵抗率を有する物質によって構成されるセル境界相によって個々のセルを電気的に絶縁することにより渦電流損失を十分に低減することができる。

0062

《第2実施形態》
以下、本発明の第2実施形態に係る鉄基軟磁性材料の製造方法(以下、「第2方法」と称される場合がある。)について説明する。

0063

〈構成〉
第2方法においては、前記第1工程において、上述した第1元素、第2元素、カルコゲン源及びチタン源に加えて、アルミニウム源を原材料として更に秤量する。アルミニウム源は、アルミニウム(Al)及びアルミニウム(Al)を含む化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の物質である。この点を除き、第2方法は、上述した第1方法と同様である。

0064

尚、第2方法によって製造される鉄基軟磁性材料の原材料にアルミニウム(Al)を添加するための具体的な手法は、上記のように必要な量のアルミニウム(Al)を含むアルミニウム源を秤量して添加する手法に限定されない。例えば、アルミナ(Al2O3)等のアルミニウム(Al)を含む材料によって形成された坩堝等の容器の中でアルミニウム源以外の原材料を熔解させることにより、当該容器を形成する材料から溶湯へとアルミニウム(Al)を供給してもよい。或いは、撹拌棒等によって当該容器の内壁摩擦することにより、当該容器を形成する材料の粉末摩耗粉)を溶湯中に混入させてもよい。

0065

〈効果〉
上記のように鉄基軟磁性材料の原材料がアルミニウム(Al)を含む場合、第3工程における溶湯の冷却時に、窒化チタン(TiN)の析出に先立ってアルミニウム(Al)の酸化物が析出する。そして、これらのアルミニウム(Al)の酸化物の析出物を核として、多数の微細な窒化チタン(TiN)が析出する。その結果、溶湯における母相の凝固時に、窒化チタン(TiN)の析出物を核として、より確実に母相の微細な等軸晶が成長し、当該母相からなる個々のセルの大きさが小さくなる。これにより、当該鉄基軟磁性材料における渦電流損失をより確実に低減することができる。

0066

尚、上記アルミニウム(Al)の酸化物を構成する酸素(O)は、当該鉄基軟磁性材料の原材料に敢えて添加する必要は無い。例えば、上述した第3元素としてのカルコゲン(Ch)に酸素(O)が含まれる場合は、当該酸素(O)の一部によってアルミニウム(Al)の酸化物を生成することができる。当該カルコゲン(Ch)に酸素(O)が含まれない場合であっても、例えば、母相の主成分である鉄(Fe)を始めとする他の原材料が不純物として微量(例えば、数百質量ppm未満)の酸素(O)を含有している場合は、当該酸素(O)の少なくとも一部によってアルミニウム(Al)の酸化物を生成することができる。或いは、例えばアルミナ(Al2O3)等のアルミニウム(Al)の酸化物をアルミニウム源として当該鉄基軟磁性材料の原材料に添加する場合は、当該酸化物を構成する酸素(O)によってアルミニウム(Al)の酸化物を生成することができる。

0067

好ましくは、第2方法によって製造される鉄基軟磁性材料において、前記母相内に窒化チタン(TiN)の析出物が分散しており、前記窒化チタン(TiN)の析出物がアルミニウム(Al)の酸化物を含む。

0068

尚、第2方法においても、第1方法に関して前述したように、第3工程において溶湯を撹拌(誘導加熱による撹拌を含む)及び/又は振動に付すことが好ましい。これにより、窒化チタン(TiN)の析出に先立って析出したアルミニウム(Al)の酸化物の溶湯内における分散が促進され、母相における微細な等軸晶の成長の核となる窒化チタン(TiN)の均一な析出に繋がる。また、前述したように、第2工程において得られた溶湯と窒素(N2)との接触が促進され、窒化チタン(TiN)の生成が更に促進される。更に、生成した窒化チタン(TiN)の析出物の溶湯内における分散が促進され、母相における微細な等軸晶の均一な成長に繋がる。

0069

《第3実施形態》
以下、本発明の第3実施形態に係る鉄基軟磁性材料の製造方法(以下、「第3方法」と称される場合がある。)について説明する。

0070

〈構成〉
上述したように、第1材料は、鉄(Fe)からなる第1元素と、銅(Cu)からなる第2元素と、少なくとも硫黄(S)を含むカルコゲン(Ch)からなる第3元素と、を含有する。

0071

第3方法においては、前記第1工程において、前記第1元素と前記第2元素と前記第3元素との合計を100at%とする場合、前記第1元素と前記第2元素と前記第3元素とのそれぞれの含有率の組み合わせが、図4の太い実線によって囲まれた領域に示すように、前記第1元素、前記第2元素及び前記第3元素の原子濃度の三元組成図における以下のA点乃至D点によって囲まれる領域である特定領域に対応する組み合わせであるように、前記第1元素と、前記第2元素と、前記カルコゲン源と、前記チタン源と、を前記原材料として秤量する。

0072

A点:第1元素91.9at%−第2元素7.1at%−第3元素1.0at%。
B点:第1元素87.0at%−第2元素12.0at%−第3元素1.0at%。
C点:第1元素75.0at%−第2元素20.0at%−第3元素5.0at%。
D点:第1元素75.0at%−第2元素13.1at%−第3元素11.9at%。

0073

上記三元組成図において、点Aと点Bとを結ぶ直線よりも第3元素の含有率を高くする(具体的には、1at%より多くする)ことにより、第2元素及び/又は第3元素の含有率を相対的に高めて、セル境界相を構成する原子の数を相対的に増やすことができる。その結果、渦電流損失の低減に十分な量のセルウォール構造を、第1材料において、より確実に形成することができる。一方、点Cと点Dとを結ぶ直線よりも第1元素の含有率を高くする(具体的には、75at%よりも多くする)ことにより、第1材料全体に占める磁性体部分である母相の比率を高めることができる。その結果、例えば、第1材料からなる鉄基軟磁性コアの全体としての最大磁化を大きくすることができる。

0074

また、点Bと点Cとを結ぶ直線よりも第3元素の含有率に対する第2元素の含有率を低くすることにより、低い電気抵抗率を有する銅基固溶体のセル境界相における生成を防ぐことができる。その結果、渦電流損失の低減に必要な高い電気抵抗率を有するセル境界相を備えるセルウォール構造を、第1材料において、より確実に形成することができる。一方、点Dと点Aとを結ぶ直線よりも第3元素の含有率に対する第2元素の含有率を高くすることにより、低い電気抵抗率を有する第1元素のカルコゲン化物(例えば、硫化鉄(FeS))のセル境界相における生成を防ぐことができる。その結果、渦電流損失の低減に必要な高い電気抵抗率を有するセル境界相を備えるセルウォール構造を、第1材料において、より確実に形成することができる。

0075

〈効果〉
上記のように、第3方法においては、鉄基軟磁性材料に含有される第1元素としての鉄(Fe)と、第2元素としての銅(Cu)と、第3元素としてのカルコゲン(Ch)とのそれぞれの含有率の組み合わせが、上記特定領域に対応する組み合わせとなる。その結果、高い電気抵抗率を有するセル境界相と磁性体部分である母相とをバランス良く含むセルウォール構造が形成され、軟磁性材料として良好な磁気特性を達成しつつ、渦電流損失を十分に低減することができる。

0076

《第4実施形態》
以下、本発明の第4実施形態に係る鉄基軟磁性材料の製造方法(以下、「第4方法」と称される場合がある。)について説明する。

0077

〈構成〉
上述したように、母相の主成分である「鉄」は必ずしも純鉄に限定されず、例えば、純鉄、鉄−珪素合金、鉄−コバルト合金、鉄−アルミニウム合金、鉄−珪素−アルミニウム合金、及び鉄−ニッケル合金からなる群より選択される少なくとも一種を母相の主成分とすることができる。これらの中でも、特に、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及び/又は珪素(Si)は、鉄の一部として鉄の組成に含まれていてもよい(固溶されていてもよい)。

0078

かかる観点から、第4方法において、前記第1元素は、鉄(Fe)に加えて、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及び/又は珪素(Si)を更に含んでいてもよい。

0079

〈効果〉
第4方法によれば、軟磁性材料として良好な磁気特性(例えば、高い比透磁率等)を達成しつつ、鉄を主成分とする母相からなるセルを微細化すると共に、高い体積固有抵抗(電気抵抗率)を有するセル境界相を形成して、より確実に渦電流損失を低減することができる。

0080

《鉄基軟磁性材料サンプルの製造》
先ず第1工程(S1)において、本発明の第3実施形態に係る鉄基軟磁性材料の製造方法(第3方法)に関する説明において上述した特定領域に該当する第1元素(Fe)90.0at%−第2元素(Cu)8.2at%−第3元素(S)1.8at%の三元組成となるように(図4の点Pを参照)、第1元素としての鉄(Fe)、第2元素としての銅(Cu)、及びカルコゲン源(硫黄源)としての硫化鉄(FeS)を秤量した。更に、これらの三元組成100at%に対してチタン(Ti)が1.2at%又は1.0at%となるように窒化チタン(TiN)を秤量した。次に、第2工程(S2)において、これらの原材料をアルミナ製の坩堝に入れ、赤外加熱炉内に設置し、大気圧(0.1MPa)又は0.025MPaの窒素(N2)雰囲気下において加熱して熔解させて、第1温度(T1=1590℃)において10分間保持することにより溶湯を得た。

0081

その後、以下に示す表1に列挙するように第1速度(V1)、第2温度(T2)、第2速度(V2)及び第3温度(T3)が様々に設定された各種冷却パターンに従って第3工程(S3)及び第4工程(S4)を実行することにより、実施例1及び実施例2並びに比較例1乃至比較例4に係る各種鉄基軟磁性材料サンプルを製造した。尚、何れのサンプルの製造方法の第3工程及び第4工程も、第2工程と同様の窒素雰囲気下において実行した。また、上述した各サンプルの組成、並びに第1工程における第1温度(T1)、第1温度の保持時間(HP)及び窒素(N2)の圧力についても表1に併せて列挙する。

0082

0083

表1に示すように、本発明に係る実施例1については、第3工程(S3)において0.5℃/秒の第1速度(V1)にて1420℃の第2温度(T2)まで溶湯を冷却し、続く第4工程(S4)において200℃/秒の第2速度(V2)にて1100℃の第3温度(T3)まで溶湯を冷却した。実施例2については、第3工程(S3)における第2温度(T2)が1470℃である点を除き、実施例1と同様である。実施例1及び実施例2の何れについても、全ての製造条件が本発明の構成要件を満たしている。

0084

一方、比較例1については、第3工程(S3)における溶湯の降温速度である第1速度(V1)が25℃/秒であり、本発明の構成要件としての第1速度(V1)の範囲の上限よりも著しく速い。また、比較例2については、第3工程(S3)における第2温度(T2)が700℃であり、本発明の構成要件としての第2温度(T2)の下限よりも著しく低い。比較例3については、第3工程(S3)における第2温度(T2)が1400℃であり、本発明の構成要件としての第2温度(T2)の下限よりも僅かに低い。比較例4については、第3工程(S3)における第2温度(T2)が1500℃であり、本発明の構成要件としての第2温度(T2)の上限よりも高い。

0085

尚、これ以降の説明において、上記のようにして製造された実施例1及び実施例2並びに比較例1乃至比較例4に係る各種鉄基軟磁性材料サンプルは、それぞれ「サンプルE1及びサンプルE2並びにサンプルC1乃至サンプルC4」と称される。

0086

《鉄基軟磁性材料サンプルのセルウォール構造》
上記のようにして製造されたサンプルE1及びE2並びにサンプルC1乃至C4の研磨断面の顕微鏡写真を図5乃至図10にそれぞれ示す。図5及び図6から明らかであるように、サンプルE1及びE2においては、鉄(Fe)を主成分とする母相(明るい部分)が微細なセルに分割されている(等軸晶の形成による粒状化が進んでいる)。また、高い電気抵抗率を有する硫化物によって構成されるセル境界相(粒界相)については、部分的には不連続な箇所も見受けられるものの、全体としては十分な厚み及び連続性が達成されている。即ち、全ての製造条件が本発明の構成要件を満たしているサンプルE1及びE2によれば、良好なセルウォール構造の形成により渦電流損失を十分に低減することができる。

0087

一方、第3工程(S3)において溶湯が急冷(V1=25℃/秒)されたサンプルC1においても、セル境界相は、部分的には不連続な箇所も見受けられるものの、全体としては十分な厚み及び連続性が達成されている。しかしながら、図7から明らかであるように、鉄(Fe)の柱状晶によって長い柱状のセルが形成されているため、渦電流損失を十分に低減することが困難である。

0088

また、サンプルC2については、図8から明らかであるように、第3工程(S3)において溶湯が急冷(V1=5℃/秒)された結果として、サンプルE1及びE2と同様に母相が微細なセルに分割されている。しかしながら、第3工程(S3)において過度に低い第2温度(T2=700℃)まで徐冷が継続されたため、セル境界相を構成する高抵抗物質のセル(母相)に対する濡れ性の不足に起因する凝集が起こり、良好なセルウォール構造が形成されなかった。

0089

更に、サンプルC3については、図9から明らかであるように、第3工程(S3)において僅かに低い第2温度(T2=1400℃)まで徐冷が継続されたため、サンプルC2に比べて軽度ではあるものの、セル境界相を構成する高抵抗物質のセル(母相)に対する濡れ性の不足に起因する凝集が起こり、良好なセルウォール構造が形成されなかった。

0090

加えて、サンプルC4については、図10から明らかであるように、第3工程(S3)における溶湯の徐冷が過度に高い第2温度(T2=1500℃)において終了されて次の第4工程における急冷へと切り替えられたため、第4工程における急冷に伴って鉄(Fe)相が樹枝状の柱状晶(デンドライト)として成長した。その結果、セルにおける柱状晶の占める割合が高く、交流磁場における渦電流損失を十分に低減することが困難である。

0091

《纏め》
各種鉄基軟磁性材料サンプルのセルウォール構造(CW)についての上記評価結果もまた表1に纏めて示されている。以上のように、全ての製造条件が本発明の構成要件を満たしているサンプルE1及びE2においては、鉄(Fe)の等軸晶の生成によるセルの微細化及び高い電気抵抗率を有する硫化物からなるセル境界相の連続性の確保により良好なセルウォール構造が形成され、渦電流損失を十分に低減することができることが確認された。一方、何れかの製造条件が本発明の構成要件を満たしていないサンプルC1乃至C4においては、鉄(Fe)の柱状晶の生成によるセルの大型化及び/又はセル境界相の連続性の低下により良好なセルウォール構造が形成されず、渦電流損失を十分に低減することが困難となることが確認された。

実施例

0092

以上、本発明を説明することを目的として、特定の構成を有する幾つかの実施形態及び実施例につき、時に添付図面を参照しながら説明してきたが、本発明の範囲は、これらの例示的な実施形態及び実施例に限定されると解釈されるべきではなく、特許請求の範囲及び明細書に記載された事項の範囲内で、適宜修正を加えることが可能であることは言うまでも無い。

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