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技術 構造物を補強または補修する方法

出願人 積水化学工業株式会社
発明者 井上宏夫安井香織山下卓也
出願日 2018年3月13日 (2年9ヶ月経過) 出願番号 2018-045309
公開日 2019年9月19日 (1年3ヶ月経過) 公開番号 2019-157487
状態 未査定
技術分野 接着剤、接着方法 強化プラスチック材料 既存建築物への作業
主要キーワード DTA曲線 二液性樹脂 効果温度 断面拡大写真 補強対象物 ポリイソイミド樹脂 未硬化接着剤 向クロス
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2019年9月19日)のものです。
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図面 (5)

課題

強化繊維マトリックス樹脂とを含む補強材を用いて構造物補強または補修する方法であって、構造物の表面に、未硬化接着剤樹脂組成物層とマトリックス樹脂を含む補強層とが積層された状態で熱硬化を行う場合に、施工時間を短縮化しながらも、ボイドの発生を抑制することができる方法を提供する。

解決手段

本発明の構造物を補強又は補修する方法は、構造物の表面に、硬化温度ta(℃)の接着剤樹脂組成物の層を介して、強化繊維及びそれに含浸された硬化温度tb(℃)のマトリックス樹脂を含む補強層を積層する積層工程と;第一の加熱温度T1(℃)で加熱する第一加熱工程と;第二の加熱温度T2(℃)で加熱する第二加熱工程とを含み、ta(℃)、tb(℃)、T1(℃)、及びT2(℃)が以下の関係を満たす:(i)ta<tb;(ii)ta-20≦T1≦ta+60;及び(iii)T1+65≦T2。

概要

背景

従来、経年劣化により強度低下を生じたコンクリートおよび鋼構造物等の構造物の表面に、ガラス繊維アラミド繊維炭素繊維などで強化された樹脂シート補強材として貼り付けて、構造物を補修または補強することが行われてきた。

具体例として、炭素繊維で強化されたエポキシ樹脂からなる繊維強化樹脂を補強材として用いる補強工法が知られている。このような繊維強化樹脂が用いられる例として、特開昭63−14945号公報(特許文献1)に、高強度繊維帯状プリプレグコンクリート柱状体外周面にほぼ周方向に沿って均一に巻きつける、コンクリート柱状体の補強方法が記載されている。また、特開平1−197532号公報(特許文献2)には、炭素繊維と50〜150℃で硬化する熱硬化性マトリクス樹脂組成物とから構成されかつ構築物貼付後加熱することにより現場にて硬化される一枚または複数枚を積層して構成される現場硬化軟質炭素繊維強化プリプレグを用いた補強工法が記載されている。

概要

強化繊維マトリックス樹脂とを含む補強材を用いて構造物を補強または補修する方法であって、構造物の表面に、未硬化接着剤樹脂組成物層とマトリックス樹脂を含む補強層とが積層された状態で熱硬化を行う場合に、施工時間を短縮化しながらも、ボイドの発生を抑制することができる方法を提供する。本発明の構造物を補強又は補修する方法は、構造物の表面に、硬化温度ta(℃)の接着剤樹脂組成物の層を介して、強化繊維及びそれに含浸された硬化温度tb(℃)のマトリックス樹脂を含む補強層を積層する積層工程と;第一の加熱温度T1(℃)で加熱する第一加熱工程と;第二の加熱温度T2(℃)で加熱する第二加熱工程とを含み、ta(℃)、tb(℃)、T1(℃)、及びT2(℃)が以下の関係を満たす:(i)ta<tb;(ii)ta-20≦T1≦ta+60;及び(iii)T1+65≦T2。なし

目的

本発明の目的は、強化繊維とマトリックス樹脂とを含む補強材(プリプレグシート)を用いて構造物を補強または補修する方法であって、構造物の表面に、硬化温度が相対的に高いマトリックス樹脂を含む補強層と、硬化温度が相対的に低い未硬化樹脂組成物層とが積層された状態で熱硬化を行う場合に、施工時間を短縮化しながらも、当該未硬化樹脂組成物中の揮発成分の気化に起因するボイドの発生を抑制することができる方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

構造物の表面に、硬化温度ta(℃)の接着剤樹脂組成物の層を介して、強化繊維及び前記強化繊維に含浸された硬化温度tb(℃)のマトリックス樹脂を含む補強層を積層する積層工程と、第一の加熱温度T1(℃)で加熱する第一加熱工程と、第二の加熱温度T2(℃)で加熱する第二加熱工程とを含み、前記硬化温度ta(℃)、前記硬化温度tb(℃)、前記第一の加熱温度T1(℃)、及び前記第二の加熱温度T2(℃)が以下の関係:(i)ta<tb(ii)ta−20≦T1≦ta+60(iii)T1+65≦T2を有する、構造物を補強又は補修する方法。

請求項2

前記硬化温度tb(℃)と前記第二の加熱温度T2(℃)とが、以下の関係:(iv)tb−20≦T2≦tb+60を有する、請求項1に記載の構造物を補強又は補修する方法。

請求項3

前記樹脂組成物層沸点bp(℃)の揮発成分を含み、前記沸点bp(℃)と前記硬化温度ta(℃)とが以下の関係:(v)ta−20≦bp<ta+60を有する、請求項1又は2に記載の構造物を補強又は補修する方法。

請求項4

前記樹脂組成物層がエポキシ樹脂を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の構造物を補強又は補修する方法。

請求項5

前記マトリックス樹脂がエポキシ樹脂を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の構造物を補強又は補修する方法。

技術分野

0001

本発明は、構造物補強または補修する方法に関する。より具体的には、本発明は、強化繊維と当該強化繊維に含浸させられたマトリックス樹脂とを含むシート状の補強材(以下、プリプレグシートとも記載する。)を用いて建築物の構造物を補強または補修する方法に関する。

背景技術

0002

従来、経年劣化により強度低下を生じたコンクリートおよび鋼構造物等の構造物の表面に、ガラス繊維アラミド繊維炭素繊維などで強化された樹脂シートを補強材として貼り付けて、構造物を補修または補強することが行われてきた。

0003

具体例として、炭素繊維で強化されたエポキシ樹脂からなる繊維強化樹脂を補強材として用いる補強工法が知られている。このような繊維強化樹脂が用いられる例として、特開昭63−14945号公報(特許文献1)に、高強度繊維帯状プリプレグコンクリート柱状体外周面にほぼ周方向に沿って均一に巻きつける、コンクリート柱状体の補強方法が記載されている。また、特開平1−197532号公報(特許文献2)には、炭素繊維と50〜150℃で硬化する熱硬化性マトリクス樹脂組成物とから構成されかつ構築物貼付後加熱することにより現場にて硬化される一枚または複数枚を積層して構成される現場硬化軟質炭素繊維強化プリプレグを用いた補強工法が記載されている。

先行技術

0004

特開昭63−14945号公報
特開平1−197532号公報

発明が解決しようとする課題

0005

上記の特許文献1および特許文献2には、接着剤を用いてプリプレグシートを補強対象物に貼り付けてよいことが記載されているが、接着剤樹脂組成物を硬化させるタイミングとプリプレグシートを硬化させるタイミングとについては着眼されていない。

0006

プリプレグシートに含浸させられているマトリックス樹脂は、プリプレグ製過程繊維基材への含浸を可能にする低粘度化状態とするために加熱させられ、且つ、その後未硬化状態強化繊維基材中に保持された状態で保存される必要性から、不可避的に硬化温度が高い樹脂が選択される。このため、プリプレグシート中のマトリックス樹脂の硬化温度は、強化繊維を含まない接着剤樹脂組成物の硬化温度よりも高くなる傾向にある。

0007

つまり、接着剤樹脂組成物及びプリプレグシート(又は接着剤樹脂組成物が予め積層されたプリプレグシート)を用いて施工を行う場合、補強対象の表面に、硬化温度が相対的に低い接着剤樹脂組成物の層を介して、硬化温度が相対的に高いマトリックス樹脂を含む補強層が積層されることとなる。

0008

ここで、構造物を補強又は補修するための施工は、構造物が設置されている現場で行われることが通常であるため、構造物の供用等を考慮すると、施工時間はなるべく短縮されることが望ましい。プリプレグシートを貼り付けて、接着剤樹脂組成物の層の完全硬化を待った後にマトリックス樹脂を含む補強層を硬化させると、施工時間を冗長させる点で好ましくない。そこで、施工時間の短縮化のため接着剤樹脂組成物の層とマトリックス樹脂を含む補強層とを一度に硬化することが考えられる。しかしながら、熱硬化温度条件はマトリックス樹脂の硬化温度に基づいて設定されるため、硬化温度の低い接着剤樹脂組成物中に含まれる揮発性成分気化と当該接着剤樹脂組成物の急激な硬化とが同時に起こり、接着剤樹脂組成物がボイドを含んだ状態で硬化する。このようにボイドが生じた不均一な硬化物接着強度を十分に発揮することができないため、補強能又は補修能の低下をもたらす問題を生じさせる。つまり、従前、強化繊維とマトリックス樹脂とを含むプリプレグシートを用いて構造物を補強または補修する方法においては、施工時間の短縮化と、所望の補強能又は補修能の確保とが両立しないという特有の課題が存在することが見出された。

0009

そこで本発明の目的は、強化繊維とマトリックス樹脂とを含む補強材(プリプレグシート)を用いて構造物を補強または補修する方法であって、構造物の表面に、硬化温度が相対的に高いマトリックス樹脂を含む補強層と、硬化温度が相対的に低い未硬化樹脂組成物層とが積層された状態で熱硬化を行う場合に、施工時間を短縮化しながらも、当該未硬化樹脂組成物中の揮発成分の気化に起因するボイドの発生を抑制することができる方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

0010

上記の目的を達成するため、本発明は以下の発明を含む。
(1)
構造物の表面に、硬化温度ta(℃)の接着剤樹脂組成物の層を介して、強化繊維及び前記強化繊維に含浸された硬化温度tb(℃)のマトリックス樹脂を含む補強層を積層する積層工程と、
第一の加熱温度T1(℃)で加熱する第一加熱工程と、
第二の加熱温度T2(℃)で加熱する第二加熱工程とを含み、
前記硬化温度ta(℃)、前記硬化温度tb(℃)、前記第一の加熱温度T1(℃)、及び前記第二の加熱温度T2(℃)が以下の関係:
(i)ta<tb
(ii)ta−20≦T1≦ta+60
(iii)T1+65≦T2
を有する、構造物を補強又は補修する方法。
(2)
前記硬化温度tb(℃)と前記第二の加熱温度T2(℃)とが、以下の関係:
(iv)tb−20≦T2≦tb+60
を有する、(1)に記載の構造物を補強又は補修する方法。
(3)
前記樹脂組成物層沸点bp(℃)の揮発成分を含み、前記沸点bp(℃)と前記硬化温度ta(℃)とが以下の関係:
(v)ta−20≦bp≦ta+60
を有する、(1)又は(2)に記載の構造物を補強又は補修する方法。
(4)
前記樹脂組成物層がエポキシ樹脂を含む、(1)〜(3)のいずれかに記載の構造物を補強又は補修する方法。
(5)
前記マトリックス樹脂がエポキシ樹脂を含む、(1)〜(4)のいずれかに記載の構造物を補強又は補修する方法。

発明の効果

0011

本発明によれば、強化繊維とマトリックス樹脂とを含む補強材(プリプレグシート)を用いて構造物を補強または補修する方法であって、構造物の表面に、硬化温度が相対的に高いマトリックス樹脂を含む補強層と、硬化温度が相対的に低い未硬化樹脂組成物層とが積層された状態で熱硬化を行う場合に、施工時間を短縮しながらも、当該未硬化樹脂組成物中の揮発成分の気化に起因するボイドの発生を抑制することができる方法が提供される。

図面の簡単な説明

0012

本発明の方法における積層工程の一例を説明する模式的断面図である。
図1積層体を得る手順の例を説明する模式的断面図である。
図1の積層体を得る手順の他の例を説明する模式的断面図である。
実施例1で得られた鋼管補強体における接着剤樹脂組成物層の硬化物の断面拡大写真である。
比較例1で得られた鋼管の補強体における接着剤樹脂組成物層の硬化物の断面拡大写真である。

0013

[1.概要
本発明では、補強材を用いて構造物を補強または補修する。補強とは、施工対象である構造物の劣化度合いに関わらず、当該構造物の健全状態(非劣化状態)よりも向上された機械的特性を付与するための処理をいい、補修とは、対象物劣化による機械的特性の低下を健全状態(非劣化状態)同等に回復させるための処理をいう。図1および図2は、構造物を補強または補修する方法の例を説明する模式的断面図である。

0014

本発明の構造物を補強または補修する方法は、積層工程と第一加熱工程と第二加熱工程とを含む。積層工程において、硬化温度ta(℃)の接着剤樹脂組成物の層を介して、強化繊維及び当該強化繊維に含浸された硬化温度tb(℃)のマトリックス樹脂を含む補強層を積層し;第一加熱工程において、積層物を第一の加熱温度T1(℃)で加熱し、第二加熱工程において、積層物を第二の加熱温度T2(℃)で加熱する。以下において、第一加熱工程と第二加熱工程とを段階的に行うことを、二段階加熱を行うと記載する場合がある。

0015

接着剤樹脂組成物の硬化温度ta(℃)、マトリックス樹脂の硬化温度tb(℃)、第一の加熱温度T1(℃)、及び第二の加熱温度T2(℃)は、以下の関係を有する。
(i)ta<tb
(ii)ta−20≦T1≦ta+60
(iii)T1+65≦T2

0016

さらに、マトリックス樹脂の硬化温度tb(℃)と第二の加熱温度T2(℃)との関係、及び接着剤樹脂組成物の硬化温度ta(℃)と接着剤樹脂組成物に含まれる揮発性物質の沸点bpとの関係が、以下の関係を有していることが好ましい。
(iv)tb−20≦T2≦tb+60
(v)ta−20≦bp≦ta+60
以下、各工程について詳細に説明する。

0017

[2.積層工程]
積層工程では、図1に示すように、補強または補修の対象となる構造物900に、接着剤樹脂組成物の層110を介して、強化繊維及び当該強化繊維に含浸されたマトリックス樹脂を含む補強層120を積層する。

0018

[2−1.構造物]
構造物900としては、建築構造物建材支柱など)、及び配管などの構造物が挙げられる。構造物の材質は、金属であってもよいし、セメント硬化体であってもよい。金属としては、炭素鋼および鋳鋼などが挙げられる。セメント硬化体としては、モルタルおよびコンクリートなどが挙げられる。

0019

貼付対象となる構造物900の表面は、予め、表面削去(ケレン処理)して平滑化または粗化されていてもよいし、プライマー処理されていてもよい。ケレン処理としては、ワイヤーブラシディスクグラインダーサンドブラストおよびブリストルブラストによる処理が挙げられる。

0020

[2−2.積層手順]
具体的な積層手順の例としては、図2(a)に示すように、構造物900の表面に接着剤樹脂組成物を塗布し、接着剤樹脂組成物の層110を形成した後に、強化繊維及びマトリックス樹脂を含む補強材200(プリプレグシート)を貼り付けることにより、接着剤樹脂組成物の層110を介して補強層120を積層する方法が挙げられる。また、図2(b)に示すように、強化繊維及びマトリックス樹脂を含む補強材200の表面に接着剤樹脂組成物を塗布し、接着剤樹脂組成物の層110を形成した後に、構造物900の表面に貼り付けてもよい。

0021

具体的な積層手順の他の例としては、図3に示すように、構造物の900の表面に、強化繊維及びマトリックス樹脂を含む補強層120と接着剤樹脂組成物の層110とを有する補強材200aを貼り付けることにより、接着剤樹脂組成物の層110を介して補強層120を積層する方法も挙げられる。

0022

なお、補強層120は複数積層されていてもよい。さらにこの場合、一の補強層120と他の補強層120とは、接着剤樹脂組成物110を介して積層されてよい。図4に、補強層120が接着剤樹脂組成物110を介して積層された例(硬化後)を示す。図4の例においては、一の補強層の硬化体120’と他の補強層の硬化体120’とが接着剤樹脂組成物の硬化体110’を介して積層している。

0023

接着剤樹脂組成物は完全に硬化されていない未硬化樹脂である。構造物900と補強材120との間に接着剤樹脂組成物の層110を形成することで、構造物900表面に不陸がある場合であっても、補強材120の接着性が良好となる。積層後、より良好な接着性を得るために、ローラなどの押圧手段を用いて補強材120を構造物900に押し付ける操作を行うことができる。

0024

接着剤樹脂組成物の量としては特に限定されないが、例えば1kg/m2以上3kg/m2以下であってよい。

0025

[2−3.接着剤樹脂組成物の硬化温度]
接着剤樹脂組成物は、硬化温度ta(℃)を有する。本発明において硬化温度taは、熱重量・示差走査熱量計(TG−DTA)を使用して昇温速度15℃/分の条件で接着剤樹脂組成物の硬化反応に基づく発熱観測して得られるTG−DTA曲線のうち、DTA曲線の発熱ピーク曲線微分値が最大となる点における温度を指す。

0026

接着剤樹脂組成物は、後述のマトリックス樹脂の硬化温度tb(℃)との関係で、式(i)の関係、つまりta<tbを満たせばよい。本発明は、ta及びtbとの差が50℃以上、好ましくは60℃以上、より好ましくは65℃以上、さらに好ましくは70℃以上である場合に特に有用である。ta及びtbとの差の範囲の最大値は特に限定されないが、例えば、ta及びtbとの差は150℃以下であってよい。

0027

接着剤樹脂組成物は、常温硬化性樹脂であってもよいし熱硬化性樹脂であってもよい。硬化温度ta(℃)は、具体的には、施工時において塗布が容易となる程度に低粘度化させる観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上、一層好ましくは70℃以上であってよく、施工時において硬化時間の冗長化を防止し、且つ積層した補強層の位置ずれを生じさせる過度の低粘度化を防止する観点から、好ましくは110℃以下、より好ましくは100℃以下、さらに好ましくは90℃以下であってよい。

0028

[2−4.接着剤樹脂組成物の成分]
接着剤樹脂組成物は、一液性樹脂組成物であってもよいし、二液性樹脂組成物であってもよい。混合操作が不要であり作業時間の短縮の観点、および成分の均一性の観点からは、一液性樹脂組成物であることが好ましい。接着剤樹脂組成物は、揮発成分、完全硬化されていない硬化性樹脂(未硬化樹脂)および硬化剤を含む。さらに、接着剤樹脂組成物は、粘度調整剤を含んでよい。

0029

[2−4−1.揮発成分]
接着剤樹脂組成物は、揮発成分を含む。揮発成分は、二段階加熱を行わない場合のボイド源となる物質をいう。揮発成分は、接着剤樹脂組成物の硬化温度ta(℃)に近い沸点を有する。揮発成分の沸点bp(℃)が接着剤樹脂組成物の硬化温度ta(℃)に近いと、二段階加熱を行わない場合に揮発成分の揮発と接着剤樹脂組成物の硬化とのタイミングが同時となることによってボイドが生じ、接着剤樹脂組成物の硬化後の強度が十分に発揮されないが、本発明の二段階加熱によって、ボイドの発生を防止し、接着剤樹脂組成物の硬化後の強度を向上させることができる。

0030

本発明は、揮発成分の沸点bp(℃)が、式(v)の関係、つまり(v)ta−20≦bp≦ta+60を満たす場合に特に有用である。本発明の二段階加熱を行わずにマトリックス樹脂の硬化温度に基づいて層110と層120とを一度に加熱する場合、bp(℃)がta−20以上であると、揮発成分が揮発しきらないうちに接着剤樹脂組成物が硬化を始めるためボイドが生じやすく、bp(℃)がta+60以下であると、接着剤樹脂組成物が硬化しきらないうちに揮発成分が揮発を始めるためボイドが生じやすいためである。同様の観点で、本発明は、揮発成分の沸点bp(℃)が、好ましくはta−10≦bp≦ta+40、より好ましくはta≦bp≦ta+30、より好ましくはta+15≦bp≦ta+25を満たす場合にさらに有用である。

0031

揮発成分としては、接着剤樹脂組成物の硬化温度ta(℃)に近い沸点を有する限り特に限定されず、具体的には、接着剤樹脂組成物の保存時等に混入した水分、並びに接着剤樹脂組成物を構成する有機溶媒及び/又は揮発性モノマー等が挙げられる。この中でも、二段階加熱を行わない場合のボイド源となる揮発性物質としては、水分(bp(℃)が100)であることが多い。

0032

[2−4−2.硬化性樹脂]
硬化性樹脂としては特に限定されないが、たとえば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂フェノール樹脂ビニルエステル樹脂シアン酸エステル樹脂ウレタンアクリレート樹脂フェノキシ樹脂アルキド樹脂ウレタン樹脂マレイミド樹脂とシアン酸エステル樹脂の予備重合樹脂、ビスマレイミド樹脂アセチレン末端を有するポリイミド樹脂及びポリイソイミド樹脂、ナジック酸末端を有するポリイミド樹脂などがあげられる。これらの樹脂は、単独または複数種が組み合わされて使用されてよい。

0033

硬化性樹脂は、接着剤樹脂組成物の層110と補強層120との接着性の観点から、補強層120に含まれるマトリックス樹脂と同種であることが好ましい。つまり、接着剤樹脂組成物中の硬化性樹脂の主成分は、マトリックス樹脂中の硬化性樹脂の主成分と同種であることが好ましい。さらに、異素材である構造物900との接着性などの観点からはエポキシ樹脂を硬化性樹脂の主成分として含むことが好ましい。なお、硬化性樹脂の主成分とは、硬化性樹脂の51重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上を占める成分をいう。

0034

エポキシ樹脂は、エポキシ基を1官能以上、好ましくは2官能以上有するエポキシプレポリマー化合物である。具体的には、エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーおよびエポキシ基を有するポリマーの少なくともいずれかをいう。接着剤樹脂組成物は粘度調整剤によって増粘されてよいため、エポキシプレポリマー化合物は、モノマーまたはオリゴマーを少なくとも含むことが好ましく、モノマーまたはオリゴマーのみであってもよい。
さらに、エポキシプレポリマー化合物は、グリシジルエーテル型グリシジルアミン型、グリシジルエステル型、および脂環式エポキシ化合物が挙げられる。

0035

グリシジルエーテル型、グリシジルアミン型およびグリシジルエステル型のエポキシ化合物は、グリシジルアルキル基を有するハロゲン化物活性水素化合物(それぞれ、アルコールアミンカルボン酸)とから得ることができる。

0036

グリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物の臭化物、ビスフェノールA型エポキシ化合物の水素添加物ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物の臭化物、ビスフェノールF型エポキシ化合物の水素添加物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、o−,m−,p−クレゾールノボラック型エポキシ化合物フェノールノボラック型エポキシ化合物、ナフタレン環含有エポキシ化合物ビフェニル型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ジヒドロキシペンタジエン型エポキシ化合物、およびトリフェニルメタン型エポキシ化合物など、および、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテルブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどが挙げられる。

0037

グリシジルアミン型エポキシ化合物としては、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタントリグリシジルアミノフェノールテトラグリシジルキシレンジアミン、グリシジルアニリン、グリシジルo−トルイジンなどが挙げられる。
グリシジルエステル型エポキシ化合物としては、フタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステルダイマー酸ジグリシジルエステル、などが挙げられる。

0038

脂環式エポキシ化合物は、脂肪族環とエポキシ基を有する化合物であり、より具体的には、脂環エポキシ基(脂環を構成する隣接する2つの炭素原子酸素原子とで構成されるエポキシ基)を有する化合物、および脂肪族環に直接的または間接的に単結合したエポキシ基を有する化合物が挙げられる。

0039

脂環エポキシ基を有する化合物しては、2個の脂環エポキシ基が単結合または2価の連結基によって連結された化合物であることが好ましい。脂環エポキシ基としては、シクロヘキセンオキシド基が挙げられる。2価の連結基としては、2価の炭化水素基カルボニル基エーテル結合エステル結合カーボネート基アミド基、及びこれらが複数個連結した基が挙げられる。たとえば、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(たとえば(株)ダイセルセロサイド2021P)、ε−カプロラクトン変性3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(たとえば(株)ダイセル製セロキサイド2081)が好ましい。その他、脂環エポキシ基を有する化合物しては、1個の脂環エポキシ基を有する、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン(たとえば(株)ダイセル製セロキサイド2000)、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイドが挙げられる。

0040

脂肪族環に直接的または間接的に単結合したエポキシ基を有する化合物としては、エポキシノルボルネン(たとえば(株)ダイセル製セロキサイド3000)、2,2−ビスヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニルシクロヘキサン付加物(たとえば(株)ダイセル製EHPE3150)などが挙げられる。

0041

上述のエポキシ樹脂の中でも、樹脂組成物が柔らかく塗布性に優れる点、第一加熱工程における粘度の過度の低下を抑制することで、構造物900と補強層120との間における接着剤樹脂組成物の層110の介在性ひいては接着性をより良好に得る観点、及び/又は、積層工程の作業中における接着剤樹脂組成物の粘度の過度の上昇を抑制することで、樹脂組成物が柔らかく塗布性に優れ、補強材の貼り付け位置の微調整もより容易にする観点等から、グリシジルエーテル型エポキシ化合物が好ましい。

0042

[2−4−3.硬化剤]
硬化剤としては特に限定されず、接着剤樹脂組成物の組成物タイプ(一液性樹脂組成物であるか二液性樹脂組成物であるか)および硬化タイプ(熱硬化性であるか常温硬化性であるか)に応じて当業者が適宜選択することができる。したがって、硬化剤としては、高温硬化剤、中温硬化剤、および常温硬化剤を問わず、さらに潜在性硬化剤であるか否かも問わない。

0043

硬化剤の具体例としては、アミン系化合物酸無水物系化合物メルカプタン系化合物、およびその他の化合物が挙げられる。この中でも、樹脂組成物が柔らかく塗布性に優れる点、第一加熱工程における粘度の過度の低下を抑制することで、構造物900と補強層120との間における接着剤樹脂組成物の層110の介在性ひいては接着性をより良好に得る観点、及び/又は、積層工程の作業中における接着剤樹脂組成物の粘度の過度の上昇を抑制することで、樹脂組成物が柔らかく塗布性に優れ、補強材の貼り付け位置の微調整もより容易にする観点等から、好ましくはアミン系化合物が挙げられる。

0044

アミン系化合物としては、鎖状脂肪族ポリアミン(たとえば、テトラエチレンペンタミンジエチルアミノプロピルアミンなど)、環状脂肪族ポリアミン(たとえば、Araldit HY-964、メンセンジアミンイソフオロンジアミン、S Cure 211、S Cure 212など)、および脂肪芳香族アミン(たとえば、メタフェニレンジアミンジアミノジフェニルメタンジアミノジフェニルスルフォンなど)などの脂肪族ポリアミン;メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、およびジアミノジフェニルスルフォンなどの芳香族アミン;アミンアダクトポリアミンエポキシ樹脂アダクトなど)、およびケチミン(脂肪族ポリアミンとケトンとの反応物)などの変性アミン;ポリアミドアミン(ダイマー酸とポリアミンとの縮合物);ピペリジン、N,N-ジメチルピペラジントリエチレンジアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチルフェノール)、ベンジルジメチルアミン、および2−(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの三級または二級アミン;ならびに、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルミダゾリウムトリメリテート、エポキシ−イミダゾールアダクト、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-〔2’-メチルイミダゾリル−(1’)〕-エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸−イミダゾールアダクト、および2−フェニルイミダゾールなどのイミダゾール類などが挙げられる。この中でも、第一加熱工程における粘度の過度の低下を抑制することで、構造物900と補強層120との間における接着剤樹脂組成物の層110の介在性ひいては接着性をより良好に得る観点、及び/又は、積層工程の作業中における接着剤樹脂組成物の粘度の過度の上昇を抑制することで、樹脂組成物が柔らかく塗布性に優れ、補強材の貼り付け位置の微調整もより容易にする観点等から、好ましくは環状脂肪族ポリアミン及び/又はポリアミドアミン、より好ましくは環状脂肪族ポリアミン及びポリアミドアミンが挙げられる。

0045

酸無水物系化合物としては、芳香族酸無水物;環状脂肪族酸無水物(たとえば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、およびメチルヘキサヒドロ無水フタル酸など);および、脂肪族酸無水物脂肪族二塩基酸分子脱水縮合反応物)などが挙げられる。
メルカプタン系化合物としては、ポリスルフィド樹脂などが挙げられる

0046

その他の化合物としては、潜在性硬化剤として用いられるものが挙げられる。たとえば、三フッ化ホウ素アミン錯体ジシアンジアミド、および有機酸ヒドラジドカルボン酸エステルヒドラジンとの合成物)などが挙げられる。なお、上述したケチミンおよびイミダゾール類も潜在性硬化剤として用いられうる。

0047

[2−4−4.粘度調整剤]
粘度調整剤としては、増粘剤および充填材が挙げられる。
増粘剤は、温度上昇により増粘させる増粘剤であり、固形エポキシ樹脂は除外される。これによって、固形エポキシ樹脂のような硬化時の昇温による低粘度化に起因する樹脂流出を原因とした接着不良を防止することができる。具体的には、コアシェル型熱可塑性樹脂粒子、および塩化ビニル系樹脂の粒子などが挙げられる。

0048

コアシェル型熱可塑性樹脂粒子コア成分としては特に限定されないが、たとえば(メタアクリル酸エステルジエンおよびこれらと共重合可能単量体の中から選ばれる1種以上を単量体成分とする樹脂であってよい。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、エチル(メタ)アクリレートn−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−デシルメタクリレートイソブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、などが挙げられる。
ジエンとしては、ブタジエンイソプレン、1,3−ペンタジエン、シクロペンタジエンジシクロペンタジエンなどの共役ジエン系化合物、1,4−ヘキサジエンエチリデンノルボルネンなどの非共役ジエン系化合物などが挙げられる。
これらと共重合可能な単量体としては、スチレンα−メチルスチレンビニルトルエン、p−t−ブチルスチレン、クロロスチレンなどの芳香族ビニル化合物アクリルアミドN−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミドなどのアクリルアミド系化合物メタアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミド、などのメタクリルアミド系化合物およびグリシジルアクリレートグリシジルメタクリレートアリルグリシジルアクリレートなどが挙げられる。

0049

コアシェル型熱可塑性樹脂のシェル成分としては特に限定されないが、上記の単量体から選ばれる2種以上を単量体成分とする樹脂であってよい。シェル層には、N−置換アクリルアミド、(メタ)アクリル酸エステル系ラジカル重合可能な二重結合を少なくとも2つ以上有する架橋性単量体遊離カルボキシル基を有する単量体を共重合させることができる。これによって、硬化性樹脂に対し溶解性発現する構造となりやすい。
N−置換アクリルアミドとしては、例えば、N−アクリロイルピロリジン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ヘキシルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、N−ドデシルアクリルアミドなどが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステル系単量体とラジカル重合可能な二重結合を少なくとも2つ以上有する架橋性単量体としては、エチレングリコールジアクリレートブチレングリコールジアクリレートトリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートヘキサンジオールジアクリレート、オリゴエチレンジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、オリゴエチレンジメタクリレートジビニルベンゼンなどの芳香族ジビニル単量体トリメリット酸トリアリルトリアリルイソシアヌレートなどが挙げられる。
遊離カルボキシル基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸クロトン酸ケイヒ酸などの不飽和モノカルボン酸マレイン酸イタコン酸フマル酸シトラコン酸クロロマレイン酸などのジカルボン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチルマレイン酸モノブチル、フマル酸モノメチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチルなどの不飽和ジカルボン酸モノエステルなどが挙げられる。

0050

これらのコアシェル型熱可塑性樹脂中でも、コア成分およびシェル成分がともに(メタ)アクリル系重合体からなる特にポリ(メタ)アクリル酸エステル系有機微粒子が好ましい。

0051

塩化ビニル系樹脂としては特に限定されず、塩化ビニル単量体単独重合体の他、例えば、塩化ビニル単量体と塩化ビニル単量体以外の重合性単量体との共重合体、塩化ビニル系樹脂以外の重合体に塩化ビニル単量体または塩化ビニル系樹脂をグラフトさせたグラフト共重合体等が挙げられる。さらに、これらの塩化ビニル系樹脂を塩素化した塩素化塩化ビニル系樹脂も挙げられる。これら塩化ビニル系樹脂は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。

0052

塩化ビニル単量体と塩化ビニル単量体以外の重合性単量体との共重合体における重合性単量体としては特に限定されないが、炭素数2以上16以下のα−オレフィン(たとえば、エチレン、プロピレン、およびブチレン);炭素数2以上16以下の脂肪族カルボン酸ビニルエステル(たとえば、酢酸ビニルおよびプロピオン酸ビニル);炭素数2以上16以下のアルキルビニルエーテル(たとえば、ブチルビニルエーテルおよびセチルビニルエーテル);炭素数1以上16以下のアルキル(メタ)アクリレート(たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートおよびブチルアクリレート);アリール(メタ)アクリレート(たとえば、フェニルメタクリレート);芳香族ビニル(たとえば、スチレンおよびα−置換スチレン(たとえば、α−メチルスチレン));ハロゲン化ビニル(たとえば、塩化ビニリデンおよびフッ化ビニリデン);およびN−置換マレイミド(N−フェニルマレイミドおよびN−シクロヘキシルマレイミド)が挙げられる。

0053

塩化ビニル単量体または塩化ビニル系樹脂とともにグラフト共重合体を与える重合体としては、塩化ビニルモノマーグラフト重合可能な重合体であれば単独重合体および共重合体を問わず、いかなるものも含まれる。たとえば、α−オレフィンとビニルエステルとの共重合体(たとえば、エチレン−酢酸ビニル共重合体);α−オレフィンとビニルエステルと一酸化炭素との共重合体(たとえば、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体);α−オレフィンとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体(たとえば、エチレン−メチルメタクリレート共重合体およびエチレン−エチルアクリレート共重合体);α−オレフィンとアルキル(メタ)アクリレートと一酸化炭素との共重合体(たとえば、エチレン−ブチルアクリレート−一酸化炭素共重合体);異なる2種以上のα−オレフィンの共重合体(たとえば、エチレン−プロピレン共重合体);不飽和ニトリルとジエンとの共重合体(たとえば、アクリロニトリルブタジエン共重合体);ポリウレタン;および塩素化ポリオレフィン(たとえば、塩素化ポリエチレンおよび塩素化ポリプロピレン)が挙げられる。

0054

塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、特に限定されるものではないが、たとえば400以上1500以下、好ましくは600以上1300以下である。平均重合度が上記下限値以上であることにより、塩化ビニル系樹脂による好ましい物性(たとえば強靭性)を得やすく、適切な添加量で用途に適した粘着性を得やすい。平均重合度が上記上限値以下であることにより、硬化性樹脂に対し、相溶または膨潤の態様を少量の添加量にて容易に得ることができる。上述の特性は硬化性樹脂の組成に影響されるため、上記の範囲を超える平均重合度であっても、当業者によって適宜選択されてよい。

0055

増粘剤が粒子状であることにより、接着剤樹脂組成物の調製において硬化性樹脂との相溶状態または膨潤状態を得やすく、ハンドリング性にも優れる。これらの状態をより好ましく得る観点からは、増粘剤粒子の平均粒子径は、0.2μm以上200μm以下であってよい。なお、平均粒子径とは、レーザー光を用いた動的散乱法により測定された体積基準の50%累積分布径をいう。

0056

増粘剤の含量は特に限定されないが、上記の硬化性樹脂100重量部に対して、たとえば充填材を含ませない場合はたとえば10重量部以上50重量部未満、好ましくは15重量部以上35重量部未満であってよく、充填材を含ませる場合は、たとえば20重量部超30重量部未満、好ましくは22重量部以上28重量部以下であってよい。いずれの場合も、当該含量が上記下限値以上であることは、積層工程における作業性に優れる点で好ましく、上記上限値未満であることは、第一加熱工程における接着剤樹脂組成物の低粘度化抑制効果に優れる点で好ましい。

0058

充填材は、上記の増粘剤とともに用いられてよい。
この場合、充填材の量は上記の硬化性樹脂100重量部に対して1重量部以上30重量部以下、好ましくは2重量部以上20重量部以下であってよい。充填材の量が上記下限値以上であることは、積層工程における作業性および第一加熱工程における接着剤樹脂組成物の低粘度化抑制効果に優れる点で好ましく、上記上限値以下であることは、塗布工程における作業性に優れる点で好ましい。
特に、増粘剤の量が上記の硬化性樹脂100重量部に対して30重量部未満の場合は、第一加熱工程における接着剤樹脂組成物の低粘度化抑制効果をより良好に得る点で、充填材の量は10重量部超、好ましくは12重量部以上、さらに好ましくは13重量部以上であってよい。

0059

一方、増粘剤の量が上記の硬化性樹脂100重量部に対して30重量部以上の場合は、より良好な塗布性を得る観点から、充填材は実質的に含まなくてよい。

0060

[2−5.補強層]
補強層120は、強化繊維と、強化繊維に含浸されたマトリックス樹脂とを含んで構成される。

0061

[2−5−1.強化繊維]
強化繊維としては特に限定されず、PAN (ポリアクリロニトリル) 系炭素繊維およびピッチ系炭素繊維などの炭素繊維;スチール繊維などの金属繊維;ガラス繊維、セラミックス繊維ボロン繊維などの無機繊維;ならびに、アラミドポリエステルポリエチレンナイロンビニロンポリアセタールポリパラフェニレンベンズオキサゾール、高強度ポリプロピレンなどの有機繊維ケナフなどの天然繊維が挙げられる。これらの繊維は、単独または複数種を組み合わされて使用されてよい。比強度の観点からは、炭素繊維であることが好ましい。

0062

繊維の形態としては特に限定されず、たとえば、トウクロスチョップドファイバー連続繊維などの繊維の方向を一方向に引き揃えた形態;連続繊維を経緯にして織物とした形態;トウの方向を一方向に引き揃え横糸補助糸で保持した形態;繊維の方向を一方向に引き揃えた複数の繊維シートを、それぞれ繊維の方向が異なるように重ね補助糸でステッチして留めたマルチアキシャルワープニットの形態;および、繊維の不織布の形態などが挙げられる。

0063

繊維の目付は、例えば100g/m2以上600g/m2以下であってよい。目付が上記下限値以上であることは、補強または補修硬化を劣化度合いに応じて適切量を少ない施工処理回数で貼り付けることができる点で好ましく、上記上限値以下であることは、含浸性を良好に得るなどの点で好ましい。

0064

[2−5−2.マトリックス樹脂の硬化温度]
マトリックス樹脂は、硬化温度tb(℃)を有する。本発明において硬化温度tbは、熱重量示差走査熱量計(TG−DTA)を使用して昇温速度15℃/分の条件でマトリックス樹脂の硬化反応に基づく発熱を観測して得られるTG−DTA曲線のうち、DTA曲線の発熱ピーク曲線の微分値が最大となる点における温度を指す。

0065

マトリックス樹脂は、前述の接着剤樹脂組成物の硬化温度ta(℃)との関係で、式(i)の関係、つまりta<tbを満たせばよい。マトリックス樹脂は熱硬化性樹脂であり、具体的には、硬化温度tb(℃)は、具体的には、120℃以上、好ましくは130℃以上、より好ましくは140℃以上、さらに好ましくは150℃以上であってよく、230℃以下、好ましくは220℃以下であってよい。

0066

[2−5−3.マトリックス樹脂の成分]
マトリックス樹脂としての樹脂組成物は、未硬化樹脂を含む。具体的には、マトリックス樹脂としての樹脂組成物は、上述の接着剤樹脂組成物として例示したものが特に限定されることなく挙げられる。すなわち、マトリックス樹脂としての樹脂組成物は、完全硬化されていない硬化性樹脂(未硬化樹脂)および硬化剤を含み、さらに、粘度調整剤を含んでもよいし、揮発成分を含んでもよく、それぞれの成分は、上述の接着剤樹脂組成物の成分において例示したものが特に限定されることなく挙げられる。

0067

マトリックス樹脂としての樹脂組成物は、補強層120と接着剤樹脂組成物の層110との接着性の観点から、接着剤樹脂組成物に含まれる硬化性樹脂と同種であることが好ましい。つまり、マトリックス樹脂中の硬化性樹脂の主成分は、接着剤樹脂組成物中の硬化性樹脂の主成分と同種であることが好ましい。たとえば、接着剤樹脂組成物が硬化性樹脂の主成分としてエポキシ樹脂を含む場合は、マトリックス樹脂としての樹脂組成物にも硬化性樹脂の主成分としてエポキシ樹脂を選択することが好ましい。エポキシ樹脂としては、上述のものの中でも、第二加熱工程における粘度の過度の低下を抑制することで、強化繊維中でのマトリックス樹脂の保持性を良好に得る等の観点からグリシジルエーテル型エポキシ化合物が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ化合物がより好ましい。

0068

また、マトリックス樹脂中の硬化剤としては、上述の例示したものの中でも、補強材の保存性の観点から、潜在性硬化剤が好ましい。潜在性硬化剤としては、イミダゾール類及び/又はジシアンジアミドが好ましく、イミダゾール類及びジシアンジアミドがより好ましい。イミダゾール類としては、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾールが好ましい。粘度調整剤としては、第二加熱工程における粘度の過度の低下を抑制することで、強化繊維中でのマトリックス樹脂の保持性を良好に得る等の観点からコアシェル型熱可塑性樹脂が好ましく、コア成分およびシェル成分がともに(メタ)アクリル系重合体からなる特にポリ(メタ)アクリル酸エステル系有機微粒子がより好ましく、エポキシ基含有メチルポリメタクリレートがさらに好ましい。

0069

補強層120には、接着剤樹脂組成物の層110とは反対側にバリア層が積層されていてもよい。バリア層は、予め補強材(プリプレグシート)に積層されて設けられる。

0070

バリア性層を構成する物質は、層としてバリア機能を発揮するものであれば特に限定されるものではない。バリア性としては、紫外線バリア性二酸化炭素バリア性、酸素バリア性水蒸気バリア性などのガスバリア性が挙げられる。バリア性層は、単層構造であってもよいし、異なるバリア性を有する複数の層の積層構造であってもよい。

0071

バリア性層が紫外線バリア性を有する場合、アクリル系樹脂などの基材樹脂に、紫外線遮蔽剤を含ませることができる。紫外線遮蔽剤としては、一般的に顔料および紫外線吸収剤称呼されるものが挙げられる。

0072

顔料としては、フタロシアニン系、イソインドリノン系、ペリレン系、アゾ系、縮合アゾ系、キナクリドン系、アンスラキノン系、アニリンブラック系、トリフェニルメタン系、ジオキサジン系、酸化チタン系、酸化鉄系酸化クロム系、クロム酸鉛系、スピネル型焼成系、ジケトピロロピロール系、酸化マンガン酸化ビスマス複合塩系、酸化マンガン−イットリウム複合塩系、酸化鉄−酸化クロム複合塩系などの顔料が挙げられる。顔料は、1種または複数種の組み合わせで用いられてよい。

0073

紫外線吸収剤としては、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化セリウム、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム水酸化カルシウムカーボンブラックホワイトカーボンゼオライトグラファイトなどの無機系紫外線吸収剤;フェニルサレシレ−ト、p−tert−ブチルフェニルサリシレ−ト、p−オクチルフェニルサリシレ−トなどのサリチル酸系;2,4−ギヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系;2−(2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニルベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ルなどのベンゾトリアゾ−ル系;2−エチルへキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレ−ト、エチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレ−トなどのシアノアクリレ−ト系の有機系紫外線吸収剤が挙げられる。紫外線吸収剤は、1種または複数種の組み合わせで用いられてよい。

0074

バリア性層がガスバリア性を有する場合、バリア性層を構成する樹脂としては、ポリビニルアルコールPVA)、エチレンビニルアルコール共重合体EVOH)、ポリ塩化ビニリデン樹脂(PVDC)、及びポリアクリロニトリル(PAN)などのガスバリア性樹脂が挙げられる。

0075

[3.第一加熱工程]
第一加熱工程においては、積層工程で得られた積層物(つまり、構造物900に積層された、接着剤樹脂組成物の層110及び補強層120)を、第一の加熱温度T1(℃)で加熱する。第一加熱工程は、施工時間の短縮のため、接着剤樹脂組成物の層110が実質的に硬化されていないタイミングで行う。接着剤樹脂組成物110が実質的に硬化されていないとは、接着剤樹脂組成物が熱硬化性である場合の硬化反応が始まっていない状態と、接着剤樹脂組成物が常温硬化性である場合の、接着剤樹脂組成物の調製から積層工程および第一加熱工程の準備に費やした時間内で不可避的に一部のみ硬化が進行した状態とを含む。つまり、本発明では、接着剤樹脂組成物が常温硬化性であってもその完全硬化を待たずに第一加熱工程を行う。

0076

第一の加熱温度T1(℃)は、接着剤樹脂組成物の硬化温度ta(℃)との間で上記式(ii)の関係、つまりta−20≦T1≦ta+60を満たす。T1がta−20を下回ると、接着剤樹脂組成物の硬化が不十分なまま後述の第二加熱工程での温度条件に供された時に、未硬化の接着剤樹脂組成物の層110で揮発成分の気化と硬化性樹脂の硬化とが同時に起こることでボイドが発生し接着剤樹脂組成物の硬化後の強度が十分に発揮されない点、及び/又は、施工効率が悪くなる点で好ましくない。T1がta+60超であると、接着剤樹脂組成物の層110で揮発成分の気化と硬化性樹脂の硬化とが同時に起こることでボイドが発生し接着剤樹脂組成物の硬化後の強度が十分に発揮されない点で好ましくない。ボイドの抑制、接着剤樹脂組成物の硬化後の強度の向上及び/又は施工効率向上をより良好に得る観点からは、T1は、ta−15以上であることが好ましく、ta以上であることがより好ましく、ta+10以上であることがさらに好ましく、ta+15以上であることが一層好ましく、ta+55以下であることが好ましく、ta+40以下であることがより好ましく、ta+30以下であることがより好ましく、ta+25以下であることが一層好ましい。

0077

第一の加熱温度T1に供する時間は、T1に応じて適宜決定することができるため特に限定されないが、例えば1分以上15分以下、好ましくは2分以上10分以下、より好ましくは3分以上5分以下であってよい。当該時間が上記下限値以上であることは、接着剤樹脂組成物を確実に硬化させて、後述の第二加熱工程においてボイドの発生を抑制し及び/又は接着剤樹脂組成物の硬化後の強度を向上させる点で好ましく、上記上限値以下であることは、施工効率を向上させる点で好ましい。

0078

加熱方式は特に限定されないが、構造物900の形状に対する高い自由度を確保するために熱風および赤外線ヒーターなどの非接触加熱方式であることが好ましい。

0079

[4.第二加熱工程]
第二加熱工程においては、第一加熱工程で得られた積層物(つまり、構造物900に積層された、接着剤樹脂組成物の層110の硬化物及び補強層120)を、第二の加熱温度T2(℃)で加熱する。

0080

第二の加熱温度T2(℃)は、第一の加熱温度T1(℃)との間で上記式(iii)の関係、つまりT1+65≦T2を満たす限り特に限定されない。第二の加熱温度T2がこの範囲であれば、マトリックス樹脂の硬化不足を防止することができる。ボイドの抑制、接着剤樹脂組成物の硬化後の強度の向上、及び/又は施工効率向上をより良好に得る観点からは、好ましくは、T1+70≦T2を満たすことが好ましく、T1+80≦T2を満たすことがより好ましく、T1+90≦T2を満たすことがさらに好ましい。

0081

さらに、第二の加熱温度T2は、マトリックス樹脂の硬化温度tbとの間に、上記式(iv)の関係、つまりtb−20≦T2≦tb+60の関係を満たすことが好ましい。T2がtb−20以上であることは、硬化を確実に行う点及び/又は施工効率の点で好ましく、T2がtb+60以下であることは、マトリックス樹脂及び/又は強化繊維の変成を防ぐ点で好ましい。これらの効果をより良好に得る観点から、T2は、好ましくはtb−15以上、より好ましくはtb+10以上、さらに好ましくはtb+30以上、一層好ましくはtb+40以上、好ましくはtb+55以下、より好ましくはtb+50以下であってよい。より具体的には、T2は、マトリックス樹脂及び/又は強化繊維の変成を防ぐ点で220℃以下が好ましく、210℃以下がより好ましい。

0082

第二の加熱温度T2に供する時間は特に限定されないが、例えば10分以上50分以下、好ましくは15分以上30分以下であってよい。当該時間が上記下限値以上であることは、マトリックス樹脂を確実に硬化させる点で好ましく、上記上限値以下であることは、施工効率を向上させる点で好ましい。なお、加熱方式は第一加熱工程と同じものが用いられてよい。

0083

第二加熱工程によってマトリックス樹脂が完全に硬化し、これによって、構造物900は、表面に接着剤層(接着剤樹脂組成物の層110の完全硬化体)繊維強化樹脂(補強層120の完全硬化体)が強固に固着した状態で補強または補修される。

0084

以下、実施例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の発明に限定されるものではない。

0085

[実施例1]
エポキシ樹脂jER828(三菱化学(株)製)100重量部と、ジシアンジアミドDICY−7(三菱化学(株)製)7重量部と、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール2PHZ−PW(四国化成(株)製)3重量部と、増粘剤としてポリメタクリル酸エステル有機微粒子Zefiac F301(アイカ工業(株)製)30重量部を遊星ミキサー中で20℃、2000rpmで10分間撹拌および脱泡させ、マトリックス樹脂を調製した。マトリックス樹脂の硬化温度tbは、150℃であった。

0086

炭素繊維シートとして、一方向クロス(PAN系、300g/m2)を用い、40℃に加温した上述のマトリックス樹脂を収容した液槽中に浸漬させた。浸漬させた炭素繊維シートを、ロールを通しながら扱くことにより脱泡および樹脂含浸を行い、引き続いて液槽から引き上げドクターナイフにより表面に付着したマトリックス樹脂を除去した。

0087

その後、マトリックス樹脂を含浸させた炭素繊維シートを110℃環境下で30分静置して増粘を行った。これによって、強化繊維とマトリックス樹脂とを含んで構成される補強材(プリプレグシート)を得た。補強材の厚みは1.2mmであった。

0088

一方、エスダインジョイナーWG(積水フーラー(株)製)の主剤と硬化剤とを混合して接着剤樹脂組成物を得た。なお、主剤にはエポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)を含み、硬化剤にはポリアミドアミンおよび環状脂肪族ポリアミンを含む。接着剤樹脂組成物の硬化温度taは、80℃であった。また、当該接着剤樹脂組成物に含まれる揮発成分は、主に水(bpが100℃)であった。

0089

室温(20℃)条件下、接着剤樹脂組成物を1.4kg/m2となるように一の補強材(300mmx600mm)の表面に塗布して、気泡を巻き込まないように、Φ165mmのSTK鋼管に巻き付け、さらに別の補強材の表面に接着剤樹脂組成物を塗布し、鋼管に巻き付けられた一の補強材に積層した(積層工程)。接着剤樹脂組成物は、柔らかく、糸引きもなく補強材の表面に平滑な塗布層を形成することが容易であった。その後、25℃/分で80℃(第一の加熱温度T1)まで昇温し、その後、温度T1で5分間加熱した(第一加熱工程)。さらにその後、20℃/分で200℃(第二の加熱温度T2)まで昇温し、その後、温度T2で18.5分間加熱した(第二加熱工程)。これによって、補強材が接着させられた鋼管の補強体を得た。

0090

[実施例2]
第一の加熱工程における第一の加熱温度T1を90℃、加熱時間を4分とし、且つ、第二の加熱工程における加熱温度を18分とした以外は実施例1と同様にして鋼管の補強体を得た。

0091

[実施例3]
第一の加熱工程における第一の加熱温度T1を100℃、加熱時間を3分とし、且つ、第二の加熱工程における加熱温度を18分とした以外は実施例1と同様にして鋼管の補強体を得た。

0092

[実施例4]
第一の加熱工程における第一の加熱温度T1を100℃、加熱時間を3分とし、且つ、第二の加熱工程における第二の加熱温度T2を170℃、加熱時間を25分とした以外は実施例1と同様にして鋼管の補強体を得た。

0093

[実施例5]
第二の加熱工程における第二の加熱温度T2を220℃、加熱時間を17分とした以外は実施例1と同様にして鋼管の補強体を得た。

0094

[比較例1]
30℃/分で150℃まで昇温し、その後150℃で30分加熱した以外は実施例1と同様にして鋼管の補強体を得た。

0095

[比較例2]
第一の加熱工程における第一の加熱温度T1を55℃、加熱時間を20分とし、第二の加熱工程における加熱時間を18分とした以外は実施例1と同様にして鋼管の補強体を得た。

0096

[比較例3]
第二の加熱工程における第二の加熱温度T2を140℃、加熱時間を18分とした以外は実施例1と同様にして鋼管の補強体を得た。

0097

[比較例4]
第一の加熱工程を行う代わりに、接着剤樹脂組成物の層を常温(23℃)で完全硬化させ、第二の加熱工程における加熱温度を18分としたこと以外は実施例1と同様にして鋼管の補強体を得た。

0098

<硬化温度測定>
示差走査熱量計(Seiko Instruments Inc、TG/DTA320)を使用して、200ミリリットル/分の窒素気流下、25℃から230℃まで昇温速度15℃/分の条件で昇温し、樹脂の硬化反応に基づく発熱を観測してTG−DTA曲線を得た。得られたTG−DTA曲線のうちDTA曲線の発熱ピーク曲線の微分値が最大となる点における温度を硬化温度ta及び効果温度tbとして求めた。

0099

<施工時間>
積層工程終了直後から、第二加熱工程における加熱終了時点までの時間を求めた。

0100

<ボイドの確認>
鋼菅の補強体を切断して積層断面露出させ、接着剤樹脂組成物の硬化層の断面を顕微鏡倍率50倍)によって観察した。ボイドが認められなかった場合を〇、ボイドが認められた場合を×と評価した。また、未硬化部分があった場合においては判定無し(−)とした。実施例1による当該断面、及び比較例1による当該断面の顕微鏡写真を、それぞれ、図4及び図5に示す。図4に示すように、実施例1によると、接着剤樹脂組成物の硬化層110’にボイドは認められなかった。一方、図5に示すように、比較例1によると、補強層の硬化層120’と接着剤樹脂組成物の硬化層110’のうち、接着剤樹脂組成物の硬化層110’にボイドが認められた。なお、実施例2〜5及び比較例4においても、図4と同様に接着剤樹脂組成物の硬化層にはボイドが認められなかった。また、比較例2においても、図5と同様に接着剤樹脂組成物の硬化層にボイドが認められた。

0101

<未硬化部分及び変色の確認>
未硬化部分の有無は、打音検査と断面における粘着性の確認とにより行った。具体的には、鋼菅の補強体をハンマーで叩いた際に金属音がある、鋼菅の補強体を切断して積層断面を露出させた場合に、露出断面の補強層において粘着性のある部分が残っていない場合、未硬化部分が残っていないものとして〇と評価し、金属音がなく、露出断面の補強層において粘着性のある部分が残っている場合、未硬化部分が残っているものとして×と評価した。変色の有無は、外観観察により行った。具体的には、硬化後の補強材の表面が黄変していない場合、変色無しとして〇と評価し、黄変している場合、補強材の変成による変色が起こったものとして×と評価した。

0102

<補強材の接着性評価
得られた鋼板の補強体それぞれについて、引張試験機サンコーテクノ(株)製、テクノスターR10000ND)にて、鋼管と補強材(内側層)との間の垂直方向接着力(MPa)を測定した。

0103

実施例1から実施例5及び比較例1から比較例4の概要、ならびに施工時間、ボイド、未硬化部分、及び接着強度評価を下記表1に示す。

0104

0105

表1に示すように、接着剤樹脂組成物及びマトリックス樹脂が上記式(i)を満たす硬化温度を有する場合、比較例4のように、接着剤樹脂組成物が常温硬化樹脂である場合は、常温で接着剤樹脂組成物の層を完全に硬化させた後に補強層を硬化すれば、良好な接着強度により所望の補強性能を得ることができた。しかしながら、その施工時間が非常に長く、したがって施工効率は非常に悪かった。一方、比較例1のように、接着剤樹脂組成物の層と補強層とを一度に硬化すれば施工時間は短縮され、したがって施工効率は向上した。しかしながら、接着剤樹脂組成物の層にボイドが生じ、接着強度の低下により補強性能が低下した。これに対し、実施例1〜5のように、接着剤樹脂組成物の硬化温度、第一の加熱温度、及び第二の加熱温度が上記式(ii)及び(iii)を満たす条件で第一加熱工程及び第二加熱工程を行うことによって、良好な施工効率でありながらボイドの発生もなく、優れた接着強度による優れた補強性能を得ることができた。なお、比較例2及び比較例3のように、接着剤樹脂組成物の硬化温度、第一の加熱温度、及び第二の加熱温度が上記式(ii)及び(iii)の少なくともいずれかを満たさなければ、接着剤樹脂組成物の硬化層にボイドが生じたり、補強層におけるマトリックス樹脂に未硬化部分が生じたりすることで、所望の補強性を得ることはできなかった。

0106

なお、実施例1〜5において、接着剤樹脂組成物は、第一加熱工程における加熱によっても過度な低粘度化が生じず、補強材の積層位置をはみ出して重力方向へ接着剤樹脂組成物が流出することがなく、良好な介在性が得られた。また、マトリックス樹脂は、第二加熱工程における加熱によっても過度な低粘度化が生じず、強化繊維から流出することがなく、強化繊維における良好な保持性が得られた。

実施例

0107

本発明の好ましい実施形態は上記の通りであるが、本発明はそれらのみに限定されるものではなく、本発明の趣旨から逸脱することのない様々な実施形態が他になされる。

0108

110接着剤樹脂組成物の層
120補強層
200,200a補強材
900 構造物

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