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技術 操業予測装置、操業予測方法、及びコンピュータプログラム

出願人 日本製鉄株式会社
発明者 伊勢淳治塩谷政典橋本学奥田洋司
出願日 2018年3月6日 (2年1ヶ月経過) 出願番号 2018-039756
公開日 2019年9月12日 (7ヶ月経過) 公開番号 2019-153220
状態 未査定
技術分野 総合的工場管理 炭素鋼又は鋳鋼の製造 複合演算 学習型計算機
主要キーワード 可調整パラメータ 入力因子 左辺値 熱流動解析 外的基準 乱流モデル 初期値α 解析出力
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2019年9月12日)のものです。
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図面 (11)

課題

物理現象に従った予測結果が得られるようにする。

解決手段

取鍋における溶鋼熱流動を、FEMにより計算する際に入力する等価物性値の候補を導出する。そして、等価物性値の候補とSOMニューロンの値とを与えて前記計算を行い、SOMニューロンの値毎・等価物性値の候補毎の出鋼温度を導出する。そして、対象となるSOMニューロンとその近傍にあるSOMニューロンにおける出鋼温度の結果と、それらのSOMニューロンの値として含まれる出鋼温度と、の比較結果に基づき、当該対象となるSOMニューロンに対する等価物性値を候補の中から選択して当該対象となるSOMニューロンに対して設定する。

概要

背景

例えば、鋼材を製造するための製鋼プロセスの各工程における目標温度は、下工程からの要求によって決定される。すなわち、連続鋳造工程(CC)における鉄の凝固温度を起点として、下工程における溶鋼温度降下量を順次推定予測)することで、各工程における目標温度が決定される。ここで問題になるのは、各工程及び工程間における溶鋼温度の降下量の不確かさである。各工程における溶鋼温度の降下量は、様々な要因の影響を受け、同一の鋼種の鋼材を製造する場合であっても、各工程及び工程間における溶鋼温度の降下量は一定ではない。そのため、従来は、オペレータが自身の経験・知見を駆使しつつも、安全側(すなわち高温側)に製鋼プロセスの各工程の目標温度を設定せざるを得なかった。

そこで、操業実績データ活用して製鋼プロセスの各工程における目標温度を、階層型ニューラルネットワーク等の予測モデルを使ってパターン分類・予測することが考えられる。このような技術として特許文献1に記載の技術がある。特許文献1では、まず、転炉吹止温度終点挙動を、ニューラルネットワーク等を用いて大局的にグローバル推定した後、自己組織化マップモデル(Self-Organizing Maps)等を用いて、転炉吹練に関する操業条件を複数のグループクラスタリングする。そして、クラスタリングしたグループ毎に、推定した転炉の吹止温度の誤差を、ニューラルネットワーク等を用いて評価・学習し、グローバル推定した転炉の吹止温度を、同定した誤差を用いて修正する。

しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ニューラルネットワーク等の予測モデルの学習をする際に、操業実績データのみを学習用データとして用いているので、データ数が少ないことによる未学習部分の発生や過学習により、予測の精度が低下してしまう虞がある。一方で、学習用データをむやみに多くすると、計算の負荷が大きくなるばかりでなく、不適切な学習用データを採用してしまう虞がある。
そこで、本発明者らは、特許文献2において、階層型ニューラルネットワークとして構築された予測モデルの学習に用いる実績データを補間するデータを、自己組織化マップを用いて生成する技術を提案している。

概要

物理現象に従った予測結果が得られるようにする。取鍋における溶鋼熱流動を、FEMにより計算する際に入力する等価物性値の候補を導出する。そして、等価物性値の候補とSOMニューロンの値とを与えて前記計算を行い、SOMニューロンの値毎・等価物性値の候補毎の出鋼温度を導出する。そして、対象となるSOMニューロンとその近傍にあるSOMニューロンにおける出鋼温度の結果と、それらのSOMニューロンの値として含まれる出鋼温度と、の比較結果に基づき、当該対象となるSOMニューロンに対する等価物性値を候補の中から選択して当該対象となるSOMニューロンに対して設定する。

目的

本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、物理現象に従った予測結果が得られる操業予測装置等を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

製品又は半製品を製造するための操業条件である操業影響因子を用いて、該操業影響因子の影響を受けて決定される操業結果である操業結果因子予測する操業予測装置であって、過去の操業実績についての当該操業影響因子及び当該操業結果因子の値を含む複数の実績データから、当該複数の実績データを補間する補間データを生成する補間データ生成手段と、当該実績データ及び当該補間データの少なくともいずれかに対して物理現象表現した式に基づく計算を行うことで、前記計算の可調整パラメータ導出する可調整パラメータ導出手段と、前記可調整パラメータ導出手段により導出された前記可調整パラメータを用いて前記操業結果因子の予測値を導出する予測手段と、を有することを特徴とする操業予測装置。

請求項2

前記予測手段は、解析入力因子の入力を受けて、前記式に基づく計算を行うことにより、解析出力因子の値を導出する解析手段と、予測対象である操業についての前記解析入力因子と、前記可調整パラメータ導出手段により導出された前記可調整パラメータと、を前記解析手段に入力することによって得られる解析出力因子の値に基づいて、前記操業結果因子の予測値を導出する操業結果予測手段と、を更に有し、前記解析入力因子は、前記操業影響因子と、所与プロセス条件である第1の操業影響因子及び決定されるべきプロセス条件である前記操業結果因子と、の何れかであり、前記解析入力因子が、前記操業影響因子である場合には、前記解析出力因子は、当該操業影響因子の影響を受けて決定される操業結果である操業結果因子であり、前記解析入力因子が、前記第1の操業影響因子及び前記操業結果因子である場合には、前記解析出力因子は、当該第1の操業影響因子及び当該操業結果因子によって決まるプロセス値である第2の操業影響因子であり、且つ、前記補間データが生成される際に使用される前記操業影響因子は、前記第1の操業影響因子と前記第2の操業影響因子との双方を含むことを特徴とする、請求項1に記載の操業予測装置。

請求項3

前記解析手段は、前記可調整パラメータの複数の候補値と、前記複数の補間データに含まれる前記解析入力因子と、の入力を受けて、前記可調整パラメータの候補値毎に、各々の前記補間データについての前記解析出力因子を導出し、前記可調整パラメータ導出手段は、前記解析手段により導出された前記解析出力因子の値と、前記複数の補間データに含まれる、前記解析出力因子と同じデータ項目の値と、を比較した結果に基づいて、前記複数の可調整パラメータの候補値の1つを可調整パラメータとして選択することにより可調整パラメータを導出する可調整パラメータ選択手段を更に含むことを特徴とする、請求項2に記載の操業予測装置。

請求項4

前記補間データ生成手段は、前記操業影響因子および前記操業結果因子の値が設定されて自己組織化マップに配置されたSOMニューロンであって、前記実績データの値に最も近い値を有するSOMニューロンを勝者SOMニューロンとして決定することを、前記複数の実績データについて個別に行う勝者SOMニューロン決定手段と、前記勝者SOMニューロンの値と、前記自己組織化マップにおいて当該勝者SOMニューロンから所定の範囲内に位置しているSOMニューロンである近傍SOMニューロンの値と、を前記実績データの値に近づけるように修正して、前記自己組織化マップを学習することを、前記複数の実績データについて個別に行うSOM学習手段と、を有し、前記解析手段は、前記可調整パラメータの候補値の何れか1つと、前記SOM学習手段により学習された後の前記自己組織化マップに配置されている複数のSOMニューロンの何れか1つに設定されている前記解析入力因子と、の入力を受けて、前記可調整パラメータの候補値毎に、各々の前記SOMニューロンについての前記解析出力因子の値を導出し、前記可調整パラメータ選択手段は、前記解析手段により導出された前記解析出力因子と、前記複数のSOMニューロンに設定されている、前記解析出力因子と同じデータ項目の値と、を比較した結果に基づいて、前記複数の可調整パラメータの候補値の1つを可調整パラメータとして選択することを、前記SOM学習手段により学習された後の前記自己組織化マップに配置されている複数のSOMニューロンのそれぞれに対して行い、前記操業結果予測手段は、前記複数のSOMニューロンのそれぞれに対して前記可調整パラメータ選択手段により選択された前記可調整パラメータのうち、前記予測対象である操業についての前記解析入力因子に最も近い値が設定されている前記SOMニューロンに対して前記可調整パラメータ選択手段により選択された前記可調整パラメータを前記解析手段に入力して、前記解析出力因子の予測値を導出することを特徴とする、請求項3に記載の操業予測装置。

請求項5

前記可調整パラメータ選択手段は、前記SOM学習手段により学習された後の前記自己組織化マップに配置されている複数のSOMニューロンのうちの1つのSOMニューロン、及び当該1つのSOMニューロンから所定の範囲内に位置している第2の近傍SOMニューロンに対して、前記解析手段により導出された前記可調整パラメータの候補値毎の前記解析出力因子と、当該1つのSOMニューロン及び第2の近傍SOMニューロンに設定されている、前記解析出力因子と同じデータ項目の値との差分値の絶対値を、SOMニューロン毎に加算した総和を、前記可調整パラメータの候補値毎に導出する総和導出手段と、前記差分値の総和が最小値をとるときの前記可調整パラメータの候補値を可調整パラメータとして選択することを、前記複数のSOMニューロンのそれぞれに対して行う選択手段と、を有することを特徴とする、請求項4に記載の操業予測装置。

請求項6

前記可調整パラメータ導出手段は、前記補間データに加えて、前記実績データをも用いて、前記可調整パラメータを導出することを特徴とする、請求項2〜5の何れか1項に記載の操業予測装置。

請求項7

前記操業結果予測手段は、前記解析出力因子が前記操業結果因子である場合には、得られた前記解析出力因子の値を前記操業結果因子の予測値として、前記解析出力因子が前記第2の操業影響因子である場合には、予測対象である操業についての前記第1の操業影響因子と、前記操業結果因子についての複数の候補値とをそれぞれ入力して、前記第2の操業影響因子についての対応する複数の予測値を導出し、当該操業結果因子の複数の候補値と当該第2の操業影響因子の複数の予測値との補間計算の結果から、前記操業結果因子の予測値を導出することを特徴とする、請求項2〜6の何れか1項に記載の操業予測装置。

請求項8

自己組織化マップを用いて、前記補間データの生成を行うことを特徴とする、請求項1〜7の何れか1項に記載の操業予測装置。

請求項9

前記可調整パラメータは、前記式に不確かパラメータとして表される物性値である等価物性値であることを特徴とする、請求項1〜8の何れか1項に記載の操業予測装置。

請求項10

製品又は半製品を製造するための操業条件である操業影響因子を用いて該操業影響因子の影響を受けて決定される操業結果である操業結果因子を予測する操業予測方法であって、過去の操業実績についての当該操業影響因子及び当該操業結果因子の値を含む複数の実績データから、当該複数の実績データを補間する補間データを生成する補間データ生成工程と、当該実績データ及び当該補間データの少なくともいずれかに対して物理現象を表現した式に基づく計算を行うことで、前記計算の可調整パラメータを導出する可調整パラメータ導出工程と、前記可調整パラメータ導出工程により導出された前記可調整パラメータを用いて前記操業結果因子の予測値を導出する予測工程と、を有することを特徴とする操業予測方法。

請求項11

請求項1〜9の何れか1項に記載の操業予測装置の各手段としてコンピュータを機能させることを特徴とするコンピュータプログラム

技術分野

0001

本発明は、操業予測装置、操業予測方法、及びコンピュータプログラムに関し、特に、予測モデルを用いて操業の予測を行うために用いて好適なものである。

背景技術

0002

例えば、鋼材を製造するための製鋼プロセスの各工程における目標温度は、下工程からの要求によって決定される。すなわち、連続鋳造工程(CC)における鉄の凝固温度を起点として、下工程における溶鋼温度降下量を順次推定(予測)することで、各工程における目標温度が決定される。ここで問題になるのは、各工程及び工程間における溶鋼温度の降下量の不確かさである。各工程における溶鋼温度の降下量は、様々な要因の影響を受け、同一の鋼種の鋼材を製造する場合であっても、各工程及び工程間における溶鋼温度の降下量は一定ではない。そのため、従来は、オペレータが自身の経験・知見を駆使しつつも、安全側(すなわち高温側)に製鋼プロセスの各工程の目標温度を設定せざるを得なかった。

0003

そこで、操業実績データ活用して製鋼プロセスの各工程における目標温度を、階層型ニューラルネットワーク等の予測モデルを使ってパターン分類・予測することが考えられる。このような技術として特許文献1に記載の技術がある。特許文献1では、まず、転炉吹止温度終点挙動を、ニューラルネットワーク等を用いて大局的にグローバル推定した後、自己組織化マップモデル(Self-Organizing Maps)等を用いて、転炉吹練に関する操業条件を複数のグループクラスタリングする。そして、クラスタリングしたグループ毎に、推定した転炉の吹止温度の誤差を、ニューラルネットワーク等を用いて評価・学習し、グローバル推定した転炉の吹止温度を、同定した誤差を用いて修正する。

0004

しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ニューラルネットワーク等の予測モデルの学習をする際に、操業実績データのみを学習用データとして用いているので、データ数が少ないことによる未学習部分の発生や過学習により、予測の精度が低下してしまう虞がある。一方で、学習用データをむやみに多くすると、計算の負荷が大きくなるばかりでなく、不適切な学習用データを採用してしまう虞がある。
そこで、本発明者らは、特許文献2において、階層型ニューラルネットワークとして構築された予測モデルの学習に用いる実績データを補間するデータを、自己組織化マップを用いて生成する技術を提案している。

0005

特開2001−294928号公報
特願2012−226732号公報

先行技術

0006

T.Kohonen著、「Self-organizing maps」、Springer、1996年
Jormalainen, T. and Louhenkilpi, S., Steel research Int., Vol.77, pp.472-484, (2006).
Taggart, I.J., Camplin,, J.M. and Herbertson, J.G., CHEMECA'90, pp.199-206, (1990).
Koo, Y.S., Kang, T., Lee, I.R., Shin, Y.K., and Gal, H.Y., Steelmaking Conference Proceedings, pp.415-421, (1989).

発明が解決しようとする課題

0007

しかしながら、かかる技術では、階層型ニューラルネットワークを予測モデルとしているので、予測モデルがブラックボックスとなる。したがって、物理現象に従った予測結果が得られているかどうかが明らかでない。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、物理現象に従った予測結果が得られる操業予測装置等を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0008

本発明の操業予測装置は、製品又は半製品を製造するための操業条件である操業影響因子を用いて、該操業影響因子の影響を受けて決定される操業結果である操業結果因子を予測する操業予測装置であって、過去の操業実績についての当該操業影響因子及び当該操業結果因子の値を含む複数の実績データから、当該複数の実績データを補間する補間データを生成する補間データ生成手段と、当該実績データ及び当該補間データの少なくともいずれかに対して物理現象を表現した式に基づく計算を行うことで、前記計算の可調整パラメータ導出する可調整パラメータ導出手段と、前記可調整パラメータ導出手段により導出された前記可調整パラメータを用いて前記操業結果因子の予測値を導出する予測手段と、を有することを特徴とする。

0009

本発明の操業予測方法は、製品又は半製品を製造するための操業条件である操業影響因子を用いて該操業影響因子の影響を受けて決定される操業結果である操業結果因子を予測する操業予測方法であって、過去の操業実績についての当該操業影響因子及び当該操業結果因子の値を含む複数の実績データから、当該複数の実績データを補間する補間データを生成する補間データ生成工程と、当該実績データ及び当該補間データの少なくともいずれかに対して物理現象を表現した式に基づく計算を行うことで、前記計算の可調整パラメータを導出する可調整パラメータ導出工程と、前記可調整パラメータ導出工程により導出された前記可調整パラメータを用いて前記操業結果因子の予測値を導出する予測工程と、を有することを特徴とする。

0010

本発明のコンピュータプログラムは、前記操業予測装置の各手段としてコンピュータを機能させることを特徴とする。

発明の効果

0011

本発明によれば、物理現象に従った予測結果が得られる操業予測装置等を提供することができる。

図面の簡単な説明

0012

操業予測装置の機能的な構成の一例を示す図である。
SOMの概念の一例を示す図である。
SOMを使って生成する補間データの配置の一例を示す図である。
SOMを使って生成する補間データの数に合わせてSOMの設定パラメータを算出する方法の一例を説明する図である。
SOMによる学習(競合学習)の様子の一例を概念的に示す図である。
EMによる解析対象領域の一例を示す図である。
出鋼温度と吹止温度との関係の一例を示す図である。
SOMニューロン生成処理の一例を説明するフローチャートである。
等価物性値選択処理の一例を説明するフローチャートである。
操業結果予測処理の一例を説明するフローチャートである。

実施例

0013

以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。
図1は、操業予測装置100の機能的な構成の一例を示す図である。操業予測装置100は、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、及び各種のインターフェースを備えた情報処理装置(例えばPC)を用いることにより実現される。尚、本実施形態では、製鋼プロセスにおける転炉の吹止温度を操業結果因子とする場合を例に挙げて説明する。転炉の吹止温度は転炉における最高温度であり、ここで必要な温度を正確に予測することができれば、吹止温度が過剰に高く設定されている場合にそれを適切な値に下げることにより、製鋼プロセスにおける操業温度を下げることが可能となる。

0014

ここで、製鋼プロセスの一例を簡単に説明する。まず、製銑プロセスで得られた溶銑を転炉に装入する。次に、転炉により、溶銑中の燐や炭素等を取り除き(一次精錬を行い)、これにより出来上がった溶鋼を転炉から取鍋に移す。溶鋼を転炉から取鍋に移す作業を出鋼と呼ぶ。出鋼の際に、溶鋼と同時に、成分調整のための合金を併せて投入する。次に、取鍋内の溶鋼に含まれる水素窒素等の気体を取り除くと共に、成分調整のための合金を溶鋼に添加する二次精錬を行う。最後に、取鍋内の溶鋼を連続鋳造機(の鋳型)に流し込み、連続鋳造機により鋼片を製造する。

0015

次に、操業予測装置100が行う処理の概要を説明する。
本実施形態では、ナビエ・ストークス(Navier-Stokes)方程式のk-ε乱流モデルを、FEM(Finite Element Method;有限要素法)を用いて解いた結果に基づいて、要求された出鋼温度に対応する転炉の吹止温度を導出する。
ここで、出銑時の溶鋼の熱流動解析する際に入力される物性値には、測定できない物性値や、測定はできるものの実際には正確に測定できない物性値等が存在する。入力される物性値に誤差があると、導出した転炉の吹止温度にも誤差が生じる。

0016

そこで、本実施形態では、後述する実績データから構築した自己組織化マップ(SOM)を使用して、疎らに存在する実績データを補間する補間データを生成する。そして、補間データを用いて、前述したFEMの計算を行って算出した出鋼温度の予測値と、補間データに含まれる出鋼温度との差が最小となる物性値である等価物性値を導出し、導出した等価物性値を当該実績データと当該補間データの夫々の属性として設定する(物性値とは物理法則で定まる値であるのに対して、等価物性値はFEM計算結果が実績データと補間データとに合うように値を調整した物性値であり、真の物性値とは異なる。本実施形態では、転炉の吹止めから出鋼までの間における前述した不確かな物性値が、溶鋼の熱伝導率k、(取鍋を構成する)煉瓦基準温度Tb(取鍋が空のときの煉瓦の温度)、及び出銑時の化学反応による発熱量Shであるものとする。したがって、本実施形態では、これらの物性値が等価物性値として採用される。

0017

このようにして等価物性値の設定を行った後、前記実績データ及び前記補間データから、要求された出鋼温度・操業条件に最も合うものを抽出し、抽出したデータの属性を入力として前述したFEMの計算を行い、要求された出鋼温度に対応する転炉の吹止温度を計算(予測)する。ところで、転炉の吹止温度は、出鋼温度よりも時間的に前に得られるものである。FEMでは、時間を逆行させて計算することができない。そこで、本実施形態では、転炉の吹止温度が、前述したようにして抽出したデータの属性に含まれる転炉の吹止温度に対して所定の温度を加算及び減算した値のそれぞれを入力として、前述したFEMの計算を行い、それぞれの転炉の吹止温度を入力したときの出鋼温度を計算する。このようにして得られた転炉の吹止温度と出鋼温度から、按分によって、要求された出鋼温度に対応する転炉の吹止温度を計算する。
以上のような処理を行う操業予測装置100の各ブロックの詳細を説明する。

0018

データ取得部101)
データ取得部101は、データを外部から取得して記憶する。本実施形態では、データとして、実績データXjを取得する。実績データXjとは、後述するSOM学習部106にてSOMの学習に用いられる操業実績データである。本実施形態では、実績データXjとして、以下の(1)〜(37)の37次元の実績データを取得するものとする。

0019

(1)装入量合計(材料因子);転炉へ投入される溶銑の総量(重量)
(2)D01(材料因子);金属種D01の投入量(重量)
(3)D02(材料因子);金属種D02の投入量(重量)
(4)D03(材料因子);金属種D03の投入量(重量)
(5)D04(材料因子);金属種D04の投入量(重量)
(6)D05(材料因子);金属種D05の投入量(重量)
(7)D06(材料因子);金属種D06の投入量(重量)
(8)D07(材料因子);金属種D07の投入量(重量)
(9)D08(材料因子);金属種D08の投入量(重量)
(10)D09(材料因子);金属種D09の投入量(重量)
(11)D10(材料因子);金属種D10の投入量(重量)
(12)D合計(材料因子);金属種D01〜D10の投入量(重量)の合計

0020

(13)G01(材料因子);金属種G01の投入量(重量)
(14)G02(材料因子);金属種G02の投入量(重量)
(15)G03(材料因子);金属種G03の投入量(重量)
(16)G04(材料因子);金属種G04の投入量(重量)
(17)G05(材料因子);金属種G05の投入量(重量)
(18)G06(材料因子);金属種G06の投入量(重量)
(19)G合計(材料因子);金属種G01〜G10の投入量(重量)の合計

0021

(20)取鍋最終(温度因子);出鋼温度(転炉から取鍋に移されたときの溶鋼の温度)
(21)装入(鍋状因子);装入の処理にかかった時間
(22)NO(鍋状況因子);取鍋に固有の番号
(23)修理後回数(鍋状況因子);取鍋の耐火物を簡単に補修熱間補修)してからの取鍋の使用回数
(24)累計回数(鍋状況因子);大規模に取鍋の耐火物を補修(冷間補修)してからの取鍋の使用回数
(25)鍋下がり(鍋状況因子);取鍋に関する情報
(26)スラグ厚(鍋状況因子);取鍋に関する情報
(27)即時開孔(鍋状況因子);取鍋に関する情報
(28)AMEPA回数(鍋状況因子);取鍋に設置のスラグ検出器に関する情報
(29)AMEPA可否(鍋状況因子);取鍋に設置のスラグ検出器に関する情報
(30)空鍋時間(鍋状況因子);取鍋に関する情報(取鍋から溶鋼が連続鋳造機に流し込まれた後、当該取鍋に転炉から次の溶鋼が移されるまでの時間(すなわち、取鍋が空となっている時間))
(31)炉号(鍋状況因子);どの転炉を使用したかを示す情報
(32)炉代(鍋状況因子);使用している転炉の鍋に固有の番号
(33)炉回数(代)(鍋状況因子);溶鋼を出す孔(出鋼孔)の交換回数を示す情報(この孔は使用すると大きくなる)
(34)炉回数(回)(鍋状況因子);溶鋼を出す孔の交換後の使用回数を示す情報
(35)銑鉄(温度因子);溶銑の温度
(36)取鍋1(温度因子);出鋼温度(「取鍋最終」とは計測タイミングが異なる)
(37)吹止温度(操業結果因子);転炉の吹止温度

0022

ここで、(37)の操業結果因子は、予測対象である転炉の吹止温度であり、ここでは、転炉の吹き止めから出鋼完了までの温度降下量実績値に出鋼温度目標値を加えた温度が操業結果因子として設定される。操業結果因子として得られる吹止温度は、操業上の目標値として使用されるものである。(1)〜(19)の材料因子は、転炉へ投入される溶銑の総量と、製造している製品(鋼片)の成分(金属種)と、転炉吹き止め後に生じる溶鋼温度に与える製造条件の1つである「各金属種の投入量(ton/溶鋼量)」とを示す因子である。各金属種は、出鋼時と二次精錬時に投入(添加)されるが、材料因子として含まれる投入量は、出鋼時の投入量を示す。(21)〜(34)の鍋状況因子は、出鋼時に溶鋼を受ける器である取鍋の状況を示す因子である。(20)、(35)、(36)の温度因子は、吹き止め後の温度降下を示す因子である。予測を行う際には実績が存在しないので、温度因子として目標値を用いる。ここで、(1)〜(19)の材料因子、(21)〜(34)の鍋状況因子、及び(20)、(35)、(36)の温度因子は、溶鋼を製造するための操業条件であり、(37)の操業結果因子(操業結果として決まる因子)に影響を与えるので、操業影響因子と呼ばれる。
チャージ付随する実績データの中には、使用する二次精錬設備名や連続鋳造設備名等、出鋼過程に全く関係ないものが含まれる。そこで、本実施形態では、出鋼過程に関係する37次元の実績データを採用するようにした。ただし、採用する実績データは、37次元の実績データに限定されるものではない。

0023

データ取得部101は、例えば、通信インターフェースが上位のコンピュータから実績データXjの受信を行った後、又は、CPUが記憶媒体に記憶された実績データXjの読み出しを行った後、又は、オペレータによるユーザインターフェースの操作に基づいて入力された実績データXjの読み出しを行った後、CPUが実績データXjとをHDD等に記憶することによって実現される。
尚、実績データに含まれる因子は前述したものに限定されず、また、各因子の具体的な項目の内容及び数も前述したものに限定されない。

0024

(データ正規化部102)
データ正規化部102は、データ取得部101で取得された実績データXjの値を正規化する。データ正規化部102は、実績データXjの各因子の項目毎に予め設定されている最大値及び最小値を記憶媒体から読み出し、以下の(1)式の計算を行うことにより正規化値を算出する。
正規化値=(実績値−最小値)/(最大値−最小値) ・・・(1)

0025

(1)式において、「実績値」は、実績データXjの値である。また、「最大値」は、実績データXjの各項目において想定される最大値であり、「最小値」は、実績データXjの各項目において想定される最小値である。このように「最大値」及び「最小値」は、想定値であり、オペレータにより予め操業予測装置100に設定されるものである。ただし、「最大値」及び「最小値」を、それぞれ実績データXjの最大値及び最小値としてもよい。
(1)式の計算を行うことによって、実績データXjは0以上1以下の値のデータとなる。以降に説明する各ブロックで使用される実績データXjは、全て、データ正規化部102で正規化された実績データXjである。以下の説明では、必要に応じて「正規化した実績データ」を、それぞれ「実績データ」と称する。

0026

データ正規化部102は、例えば、CPUが、コンピュータプログラムに従って、HDD等から、実績データXjと、実績データXjの各項目の「最大値及び最小値」とを読み出して(1)式の計算を行い、その結果を、RAM等に記憶することによって実現される。

0027

(SOMパラメータ設定部103)
本実施形態では、後述するように、自己組織化マップ(Self-Organizing Maps)を用いて、等価物性値の導出に用いる「実績データの補間データ」を生成する。以下に、自己組織化マップの概要を説明する。尚、自己組織化マップの詳細については、非特許文献1等に記載されている。また、以下の説明では、必要に応じて「ニューラルネットワーク」を「NN」と称し、「自己組織化マップ」を「SOM」と称する。

0028

SOMとは、多次元ベクトルの形で表現されたデータの集合から各々のデータの類似性を見出し、類似するデータ同士を2次元平面上の近傍へマッピングしておくことで、多数の高次元データを分類し、その特徴を抽出するデータマイニング手法である。SOMは、教師無し競合学習のアルゴリズムを持つ階層型NNに相当する。ただし、SOMは、予測モデル構築に用いられる階層型NNとは別のNNである。SOMは、データに関する外的基準を与えることなく、高次元データをその特徴に応じて分類し、低次元のマップ上に視覚化できることが特徴である。

0029

図2は、SOMの概念の一例を示す図である。
図2に示すように、SOMは、入力層201と競合層202の2つの層からなる。
第1層は、n次元の入力層201(Xj=(Xj1,Xj2,・・・,Xjn)は(j=1,2,・・・,J;Jは実績データの数)である。前述したように本実施形態では、実績データは37次元のデータであるので、nは「37」となる。第2層は、例えば2次元の格子状に配置されたSOMニューロンからなる競合層202である。尚、ここで、「SOMニューロン」という呼称の「SOM」は、ニューラルネットワーク(NN)のニューロンと区別して説明するための都合上、付したものである。このように、SOMには、入力層201のSOMニューロンと競合層202のSOMニューロンとが存在するが、以降に説明するSOMの学習においては、競合層202のSOMニューロンが対象になるので、今後断り無しに「SOMニューロン」と言う場合には、競合層202のSOMニューロンを指すものとする。
SOMによる補間データの作成の考え方としては、複数の実績データXjを、競合層202のSOMニューロンのうちの1つにそれぞれ対応付けて、複数の実績データXjに対応付いたSOMニューロンの値(SOMニューロンの内部に保持している参照ベクトル)を実績データXjに近づくように修正を行う。これと同時に競合層202上で隣接する近傍のSOMニューロンに対しても同様に、SOMニューロンの値の修正量を減じて修正を行う。これを繰り返して得られる競合層202のSOMニューロンが、補間データを表すものとする。

0030

入力層201のSOMニューロンと競合層202のSOMニューロンとは、全て連結している。図2は、競合層202のSOMニューロンの1つであるiと、入力層201の各ニューロンとの結合を示す図であり、競合層202の全てのSOMニューロンiと入力層201の各SOMニューロンとの間に、同様の結合が存在する。競合層202のSOMニューロンiと入力層201との結合重み係数ベクトルを、参照ベクトル(mi(t)=(m1i,m2i,・・・,mni)、(i=1,2,・・・,I;Iは競合層202のニューロンの数))と呼ぶ。また、参照ベクトルは、SOMニューロンに設定する2つの設定項目のうちの1つであり、SOMニューロンの値とも呼ぶ。尚、tは、後述するSOMの学習の回数であり、初期値を0とし、学習が行われる度にインクリメントされる。以降のSOMの学習では、実績データXjを教師として、参照ベクトルを教師に近付けるように修正するように学習が行われる。

0031

SOMパラメータ設定部103は、競合層202(仮想空間)において、2次元の格子状にSOMニューロンを配置する。このときSOMニューロンに設定する2つの設定項目うちの1つである競合層202の仮想空間上の位置を示す座標が設定される。2次元の格子状にSOMニューロンを配置する場合、SOMニューロンの座標を(X1,X2)で表す。以降のSOMの学習では、競合層202の仮想空間上の位置を示す座標は、一度定められた座標から修正されない。実績データXjを教師として、参照ベクトルを教師に近付けるように修正するように学習が行われる。ここで配置されるSOMニューロンの数Iは、実績データのセット数J(前述した(1)〜(37)のデータのセットの数)よりも多くし、この条件の下で、隣接する2つの実績データXjの間を補間する補間データの数Pの2乗に比例する、具体的には、SOMニューロンの数Iが、以下の(2)式のようになるのが好ましい。
I=J×(P+1)2 ・・・(2)

0032

例えば、SOMニューロンを競合層202の2次元の仮想空間に格子状に配置した状況で、実績データXjを用いてSOMニューロンを十分学習した結果、実績データXjと見なせるSOMニューロン(仮に実績SOMニューロンと呼ぶ)と、補間データとなるSOMニューロン(仮に補間SOMニューロンと呼ぶ)とが競合層202(仮想空間上)で配置が均一となるように生成されたとする。

0033

図3は、SOMを使って生成する補間データの配置の一例を示す図である。
図3には、一例として、2個の実績SOMニューロン301の間に1個の補間SOMニューロン302が生成されるように配置した場合を示す(実際には必ずしもこのように配置されない)。2種類のSOMニューロン301、302が均一に生成されているので、4つのSOMニューロンを1単位として、全体はこの単位の繰り返し配置となっている(図3に示す領域303に含まれる4つのSOMニューロン301a、302a、302c、302dが1単位であり、図3では4単位分を示している)。この場合、1つの実績データXjに対して4倍(内訳は、実績SOMニューロン301が1、補間SOMニューロン302が3)のSOMニューロンを用意する必要がある。

0034

図4は、SOMを使って生成する補間データの数に合わせてSOMの設定パラメータ(SOMニューロンの数I)を算出する方法の一例を説明する図である。
具体的に、2個の実績SOMニューロン301の間にP個の補間SOMニューロン302を配置する場合のSOMニューロンの繰り返し配置の1単位分を図4に示す。1単位に含まれるSOMニューロン301、302の合計数は(1+P)2個あり、その内の1個が実績SOMニューロン301であり、それ以外は補間SOMニューロン302に相当する。つまり実績データXjの(1+P)2倍の個数のSOMニューロンを用意する必要がある。
本実施形態では、SOMパラメータ設定部103は、400×400個のSOMニューロン301、302を配置するものとする。実績データの数J=20000個に対して補間データの数P=1個としたので、SOMニューロンの数を20000×(1+1)2=80000個以上となるように、SOMニューロンを2次元の格子状に配置した。

0035

次に、SOMパラメータ設定部103は、競合層202で2次元の格子状に配置したSOMニューロンの参照ベクトルに対して初期値を設定する。すなわち、SOMパラメータ設定部103は、2次元の格子状に配置したSOMニューロンiと、37次元の入力層201とを、37次元の参照ベクトルの初期値(mi(0))で連結することを、2次元の格子状に配置したSOMニューロンiのそれぞれについて行う(図2を参照)。37次元の参照ベクトルの初期値は、例えば、乱数を用いることにより決定することができる。このSOMニューロンの値(37次元の参照ベクトル)は、実績データXjと対比されるデータとなる。

0036

図5は、SOMによる学習(競合学習)の様子の一例を概念的に示す図である。競合学習は、競合層202に配置したSOMニューロンの一部を選択し、参照ベクトルを実績データXjに合わせて修正を繰り返すことで行われる。図5に示す矢印付きの丸は、競合層202におけるSOMニューロンを示し、丸内の矢印は、当該SOMニューロンの値(参照ベクトル)を表す。概念としては、図5に示す例のように、SOMパラメータ設定部103によって、初期状態501が設定される。
SOMパラメータ設定部103は、例えば、CPUが、コンピュータプログラムに従って、SOMの初期状態の設定(SOMニューロンの配置(座標)と初期値の設定)を行い、その結果を、RAM等に記憶することにより実現される。

0037

(実績データ選択部104)
実績データ選択部104は、データ正規化部102で正規化された実績データXj(のセット)のうち、未選択の実績データXjを1つ選択する。
実績データ選択部104は、例えば、CPUが、コンピュータプログラムに従って、RAM等から実績データを読み出して、当該実績データをSOMの学習対象の実績データとしてRAM等に記憶することにより実現される。
勝者SOMニューロン決定部105)
勝者SOMニューロン決定部105は、実績データ選択部104で選択された実績データXjの値(ベクトル)と、2次元の格子状に配置されたSOMニューロンの値(参照ベクトル)とのユークリッド距離を算出する。そして、勝者SOMニューロン決定部105は、算出したユークリッド距離が最小となるSOMニューロンを勝者SOMニューロンとして決定する。概念としては、図5に示す例のように、初期状態501のSOMニューロンの中から、実績データ510と矢印の方向が最も近いSOMニューロン502を選択することを指し、実績データ510と最も近いということで選択されたことを例えて「勝者」と名付けている。

0038

具体的には、勝者SOMニューロン決定部105は、以下の(3)式の計算を行って勝者SOMニューロン502を決定する。
|Xj−mc(t)|=min|Xj−mi(t)| ・・・(3)
ここで、Xjは、j番目の37次元の実績データ(37次元の参照ベクトルに相当)であり、mi(t)は、SOMニューロンiの現在値(37次元の参照ベクトル)である。また、minは、最小を採用することを示し、cは勝者SOMニューロン502であることを示す。
尚、本実施形態では、SOMニューロンの数が160000個(=400×400)であるので(すなわちiが1〜160000をとり得るので)、(3)式の右辺の「Xj−mi(t)」の値は160000個得られる。
勝者SOMニューロン決定部105は、例えば、CPUが、コンピュータプログラムに従って、RAM等から、SOMの初期状態501と、SOMの学習対象の実績データとを読み出して(3)式の計算を行って勝者SOMニューロン502を決定し、決定した勝者SOMニューロン502の情報をRAM等に記憶することによって実現される。

0039

(SOM学習部106)
SOM学習部106は、勝者SOMニューロン決定部105により決定された勝者SOMニューロン502の値(参照ベクトル)と、競合層202上の配置で勝者SOMニューロン502に近い位置にある近傍SOMニューロンの値(参照ベクトル)とを、実績データ選択部104で選択された実績データXjの値(ベクトル)に近づける処理(学習処理)を、全ての実績データXjについて個別に行う。全ての実績データXjについて1度ずつ学習処理を行うことよって、学習回数を1回と数え、tを1だけ増加させる。概念としては、図5に示す例のように、勝者SOMニューロン502と近傍SOMニューロン503a〜503hの矢印の方向が、実績データ510の矢印の方向に近づくようにする(図5の「更新」と示されているSOMニューロン502と503a〜503hを含むハッチング箇所を参照)。

0040

本実施形態では、競合層202上の配置で勝者SOMニューロン502の座標に近いほど、参照ベクトルの修正量を大きくすると共に、SOMの学習の回数tが小さいほど、参照ベクトルの修正量を大きくするようにしている。具体的には、SOM学習部106は、以下の(4)式の計算を行って、SOMの学習を行う(勝者SOMニューロン502の値と近傍SOMニューロン503a〜503hの値とを修正する)。
mi(t+1)=mi(t)+hci(t)×|Xj−mi(t)| ・・・(4)

0041

(4)式において、mi(t)は、i番目の勝者SOMニューロン502の、学習回数tにおける値(参照ベクトル)、又は近傍SOMニューロン503の、学習回数tにおける値(参照ベクトル)である。Xjは、実績データ選択部104で選択されたj番目の実績データの値(ベクトル)である。また、mi(t+1)は、i番目の勝者SOMニューロン502の、学習回数t+1(すなわち更新後)における値(参照ベクトル)、又は近傍SOMニューロン503の、学習回数t+1における値(参照ベクトル)である。ここで、hci(t)は近傍関数と称されるものであり、例えば、以下の(5)式〜(7)式のように表される。近傍関数hci(t)は、SOMニューロンの値(参照ベクトル)と実績データの値(ベクトル)との差を小さくするための変更量を決める係数である。近傍関数hci(t)が1の場合には、1回の学習(修正)でSOMニューロンの値は実績データの値と一致することになる。

0042

hci(t)=α(t)×[(Rcut(t)−rci)/Rcut(t)] ・・・(5)
α(t)=α0×(1−t/T) ・・・(6)
Rcut(t)=Rcut0×(1−t/T) ・・・(7)
ここで、α(t)は学習率であり、その値は学習回数tに依存する。Rcut(t)は競合層202でSOMニューロンが配置されている仮想空間(2次元平面)上での距離を示す、カットオフ距離であり、その値は学習回数tに依存する(本実施形態では、このカットオフ距離Rcut(t)をSOMニューロンの座標を用いたマンハッタン距離で表す)。マンハッタン距離とは、2点の各座標の差の絶対値の総和を距離と定義するものである。
式で表すと、点a(座標(a1,a2))と点b(座標(b1,b2))の間のマンハッタン距離L(a,b)は以下の(8)式で表せる。

0043

0044

(8)式において、添字kはベクトルの各要素を表している。nは、競合層202上の仮想空間の次元数を表している。
勝者SOMニューロン502から、競合層202上の配置で、このカットオフ距離Rcut(t)内にあるSOMニューロンが近傍SOMニューロン503となる。また、(5)式のrciは、勝者SOMニューロン502と近傍SOMニューロン503との競合層202上での距離である(本実施形態では、この距離rciをマンハッタン距離で表す)。尚、勝者SOMニューロン502について(4)式の計算をする場合には、rciは0(ゼロ)になる。また、(6)式において、α0は学習率α(t)の初期値であり、(7)式において、Rcut0はカットオフ距離Rcut(t)の初期値であり、(6)式及び(7)式において、Tは総学習回数である。

0045

(5)式〜(7)式に示すように、本実施形態では、競合層202上の配置で、勝者SOMニューロン502から近い位置にある近傍SOMニューロン503であるほど学習量(参照ベクトルの修正量)が大きくなり、学習回数tが増加するほど学習量(参照ベクトルの修正量)が小さくなるようにしている。
本実施形態では、総学習回数Tは100であり、カットオフ距離Rcut(t)は、その初期値Rcut0をRcut0=24としたので、24から0まで学習回数tの増加と共に減少する関数である。学習率α(t)は、その初期値α0をα0=0.5としたので、0.5から0まで学習回数tの増加と共に減少する関数であるとする。
SOM学習部106は、例えば、CPUが、コンピュータプログラムに従って、RAM等から、勝者SOMニューロン502の情報と、SOMの状態(競合層202上の各SOMニューロン(座標と参照ベクトル))と、実績データXjとを読み出すと共に、HDD等から、総学習回数Tと、学習率の初期値α0と、カットオフ距離の初期値Rcut0を読み出して、(4)式〜(7)式の計算を行って勝者SOMニューロン502及び近傍SOMニューロン503の値(参照ベクトル)を更新し、更新後のSOMの状態の情報をRAM等に記憶することによって実現される。

0046

(SOM学習終了判定部107、SOM記憶部108)
SOM学習終了判定部107は、SOM学習部106によるSOMの学習を終了するか否かを判定する。例えば、SOM学習部106によるSOMの学習を総学習回数T実行すると、SOM学習終了判定部107は、SOM学習部106によるSOMの学習を終了すると判定することができる。また、勝者SOMニューロン502及び近傍SOMニューロン503について求めた(4)式の右辺第2項の値を加算し、加算値所定値を下回った場合には、勝者SOMニューロン502及び近傍SOMニューロン503の値(参照ベクトル)の修正量が小さくなったと判断し、SOM学習終了判定部107は、SOM学習部106によるSOMの学習を終了すると判定することができる。このように、SOM学習終了判定部107によるSOMの学習の終了判定の方法は、特に限定されるものではない。

0047

そして、SOM学習終了判定部107は、SOM学習部106によるSOMの学習を終了すると判定すると、そのときにSOM学習部106で学習されたSOMの状態(競合層202上の各SOMニューロン(座標と参照ベクトル))を、学習終了時のSOMニューロン(座標と参照ベクトル)としてSOM記憶部108に記憶する。
SOM学習終了判定部107は、例えば、CPUが、コンピュータプログラムに従って、前述した判定基準による判定を行うことによって実現される。また、SOM記憶部108は、例えば、RAM等を用いることによって実現される。
以上説明した処理により、SOMの学習と、SOMによる補間データの生成とが行われる。

0048

(等価物性値探索範囲設定部109)
前述したように本実施形態では、溶鋼の熱伝導率kと、煉瓦の基準温度Tbと、出銑時の化学反応による発熱量Shと、を等価物性値として採用する。
等価物性値探索範囲設定部109は、まず、これらの等価物性値の基準値を決定する。
溶鋼の熱伝導率の基準値として、例えば、理論的に定められている値を採用することができる。また、空鍋時間が長い程、煉瓦の温度は低下するので、煉瓦の基準温度の基準値として、例えば、空鍋時間をパラメータとして含む伝熱計算を行った結果から得られた値を採用することができる。また、溶鋼の比熱等によって出銑時の化学反応による発熱量を定めることができるので、出銑時の化学反応による発熱量の基準値として、例えば、溶鋼の比熱をパラメータとして含む発熱反応吸熱反応定式化した式の計算を行った結果から得られた値を採用することができる。

0049

次に、等価物性値探索範囲設定部109は、等価物性値の基準値の±x1[%]、±x2[%]、・・・、±xi[%]となる値を導出し、当該等価物性値の基準値と、当該等価物性値の基準値の±x1[%]、±x2[%]、・・・、xi[%]となる値と、を等価物性値の候補として決定する。このような等価物性値の候補の導出を、それぞれの等価物性値について個別に行う。ここで、前記「xi」の「i」は、1以上の整数であり、全ての等価物性値毎に異なる値であっても同じ値であってもよい。また、前記「x1、x2、・・・、xi」の値自体は、等価物性値毎に異なる値であっても同じ値であってもよい。前記「x1、x2、・・・、xi」の値は、予め設定されているものとする。

0050

本実施形態では、前記「xi」の「i」として「2」が設定されているものとする。この場合には、等価物性値の候補として、それぞれ5つの候補が導出される。すなわち、本実施形態では、溶鋼の熱伝導率の候補klと、煉瓦の基準温度の候補Tb-mと、出銑時の化学反応による発熱量の候補Sh-nがそれぞれ5つずつ導出される(l=m=n=1,2,3,4,5)。
後述するように、本実施形態では、このようにして得られた等価物性値の候補の何れかの中から、学習終了時のSOMニューロンのそれぞれの属性として与える等価物性値が探索される。したがって、前記「xi」の値が小さく、且つ、前記「xi」の「i」の値が大きいほど、学習終了時のSOMニューロンの属性として与えられる等価物性値の精度を高めることができる。ただし、このようにすると計算負荷が大きくなる。したがって、精度と計算負荷との兼ね合いから、「i」の値とそれぞれの「xi」の値とが決定される。

0051

等価物性値探索範囲設定部109は、例えば、CPUが、コンピュータプログラムに従って、等価物性値の基準値と、等価物性値の基準値の±xi[%]となる値とを、等価物性値の候補値として導出し、それらを示す情報をRAM等に記憶することにより実現される。

0052

熱流動解析部110)
熱流動解析部110は、学習終了時に、競合層202の仮想空間上の位置を示す座標(i,j)に配置されたSOMニューロンの値(参照ベクトル)のうち、吹止温度、空鍋時間、脱酸剤投入量、及び合金投入量のデータを読み出す。また、熱流動解析部110は、等価物性値探索範囲設定部109により設定された等価物性値の候補(溶鋼の熱伝導率の候補kl、煉瓦の基準温度の候補Tb-m、出銑時の化学反応による発熱量の候補Sh-n)のデータを読み出す。

0053

次に、熱流動解析部110は、読み出したデータを、ナビエ・ストークス方程式のk-ε乱流モデルに与え、当該ナビエ・ストークス方程式のk-ε乱流モデルを、FEMを使って解くことにより、出鋼温度TendI(i,j)(l,m,n)(前述した(20)取鍋最終(温度因子))を導出する。尚、ナビエ・ストークス方程式のk-ε乱流モデルとその解法については、例えば、非特許文献2〜4等に記載されているので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
熱流動解析部110は、このような出鋼温度TendI(i,j)(l,m,n)の導出を、学習終了時のSOMニューロンの値(参照ベクトル)毎・等価物性値毎に行う。

0054

本実施形態では、SOMニューロンの数は160000(=400×400)である。さらに、1つのSOMニューロンには、参照ベクトルが与えられている。また、3つの等価物性値の候補(溶鋼の熱伝導率の候補kl、煉瓦の基準温度の候補Tb-m、出銑時の化学反応による発熱量の候補Sh-n)としてそれぞれ5つの等価物性値の候補が得られている(前記「xi」の「i」として「2」が設定されている)ので、等価物性値の組み合わせは125(=5×5×5)である。したがって、熱流動解析部110は、最大で20000000(=1×160000×125)個の出鋼温度TendI(i,j)(l,m,n)を導出することになる。

0055

図6は、FEMによる解析対象領域の一例を示す図である。
図6(a)は、取鍋と溶鋼の3次元の領域をモデル化した図である。図6(a)では、取鍋の内部の様子が見えるように取鍋の一部の領域が切り出された状態を示している。また、図6に示す一点鎖線は取鍋の軸を示す。
図6(a)に示すように、取鍋は、鉄皮601と煉瓦602とを有する。取鍋の内部には、転炉から移された溶鋼603が存在する。溶鋼603の表面領域には、スラグ604が存在する。

0056

図6(b)の左図は、図6(a)に示すようにしてモデル化した取鍋の3次元の領域を、取鍋の軸を通るように切り出して4等分することにより得られた4つの領域の1つをFEMによる解析対象領域として示す図である。

0057

本実施形態では、図6(b)の右図に示すように、熱流動解析部110は、取鍋内の溶鋼の挙動が軸対称であるとして、取鍋の2次元軸対称の領域をFEMによる解析対象領域とする。図6(b)に示すFEMの解析対象領域内に示されている升目は、いわゆるメッシュ(要素及び節点)であり、FEMでは、このメッシュの単位で計算が行われる。
このようにすることにより、例えば、図6(b)の左図に示す解析対象領域に対しては15651個の要素を設定する必要があるのに対し、図6(b)の右図に示す解析対象領域に対しては1036個の要素を設定すればよくなる。したがって、図6(b)の右図に示す解析対象領域を用いると、図6(b)の左図に示す解析対象領域を用いた場合に比べ、計算時間を約1/99倍にすることができる。

0058

熱流動解析部110は、例えば、CPUが、コンピュータプログラムに従って、図6(b)の右図に示す解析対象領域の情報と、学習終了時のSOMニューロンの値(参照ベクトル)の情報と、等価物性値の候補の情報とを読み出して、SOMニューロンの値毎・等価物性値の候補毎の出鋼温度TendI(i,j)(l,m,n)を導出し、その結果をRAM等に記憶することにより実現される。

0059

(等価物性値選択部111)
等価物性値選択部111は、熱流動解析部110で導出された「SOMニューロンの値(参照ベクトル)毎・等価物性値の候補毎の出鋼温度TendI(i,j)(l,m,n)」と、SOMニューロンの値(参照ベクトル)に含まれる出鋼温度TendI(i,j)とに基づいて、学習終了時の各SOMニューロンに対する等価物性値を選択する。

0060

前述したように、参照ベクトルには、出鋼温度TendI(i,j)(l,m,n)を導出した際に使用した「吹止温度、空鍋時間、脱酸剤投入量、及び合金投入量」の他に、出鋼温度TendI(i,j)も含まれる。

0061

そこで、等価物性値選択部111は、SOMニューロン(参照ベクトル)毎に、等価物性値の全ての候補に対して、以下の(9)式、(10)式の計算を行って、(10)式の左辺値Jの値が最も小さくなる等価物性値を、対象となるSOMニューロンに対する等価物性値として選択する。

0062

0063

(10)式において、積算(Σ)の対象は、対象となるSOMニューロンにおけるものと、その近傍にあるSOMニューロンにおけるものである。
すなわち、対象となるSOMニューロンとその近傍のSOMニューロンに対して、FEMで計算した出鋼温度の予測値TendI(i,j)(l,m,n)と各SOMニューロンに紐付いている出鋼温度TendI(i,j)との誤差の和が最も小さくなる共通の等価物性値の候補を、対象となるSOMニューロンの等価物性値として選択する。

0064

ここで、SOMニューロンの値が相互に近いものしか含まれなければ、対象となるSOMニューロンの近傍にあるSOMニューロンの数を多くすればするほど(近傍となる範囲を広くすればするほど)、選択される等価物性値の信頼性が高まる。一方で、他のSOMニューロンの値と大きく異なる値を有するSOMニューロンを、対象となるSOMニューロンの近傍にあるSOMニューロンに含めると、選択される等価物性値の信頼性が低下する。このような観点から、対象となるSOMニューロンの近傍の範囲が予め定められる。
本実施形態では、学習終了時のSOMニューロンの値の類似度を色で表示したU-matrix値に基づいて、対象となるSOMニューロンを中心とする5行5列のマトリクス上にある24個のSOMニューロンを、対象となるSOMニューロンの近傍にあるSOMニューロンとして予め設定した。
本実施形態では、等価物性値の組み合わせは125(=5×5×5)である。したがって、1つのSOMニューロンに対し、3125(=5×5×125)個の出鋼温度TendI(i,j)(l,m,n)が導出される。

0065

等価物性値選択部111は、以上のようにして、対象となるSOMニューロンに対して等価物性値を選択すると、当該等価物性値を当該SOMニューロンに関連付けてSOM記憶部108に記憶する。以上のような等価物性値の選択と記憶を、学習終了時の全てのSOMニューロンについて行う。
以上により、SOM記憶部108には、SOMニューロン(参照ベクトル)に対し、等価物性値(溶鋼の熱伝導率k、煉瓦の基準温度Tb、出銑時の化学反応による発熱量Sh)が関連付けられて記憶される。
等価物性値選択部111は、例えば、CPUが、コンピュータプログラムに従って、SOMニューロンの値毎・等価物性値の候補毎の出鋼温度TendI(i,j)(l,m,n)と、SOMニューロンの値に含まれる出鋼温度TendI(i,j)と読み出して、(9)式、(10)式の計算を行うことにより、各SOMニューロンに対する等価物性値を導出し、その結果をRAM等に記憶することにより実現される。

0066

(操業条件取得部112)
操業条件取得部112は、操業に際し要求される出鋼温度と、操業条件とを、外部から取得して一時的に記憶する。操業条件には、少なくとも、空鍋時間、脱酸剤投入量、及び合金投入量が含まれる。尚、前述したように出鋼温度も操業条件に含まれるものであるが、出鋼温度とそれ以外の操業条件とを区別するために、操業条件取得部112で取得される操業条件には出鋼温度が含まれないものとして説明を行う。また、以下の説明では、「操業に際し要求される出鋼温度」を必要に応じて「要求出鋼温度」と称する。
操業条件取得部112は、例えば、通信インターフェースが上位のコンピュータから要求出鋼温度と操業条件の受信を行った後、又は、CPUが記憶媒体に記憶された要求出鋼温度と操業条件の読み出しを行った後、又は、オペレータによるユーザインターフェースの操作に基づいて入力された要求出鋼温度と操業条件の読み出しを行った後、CPUが要求出鋼温度と操業条件をRAM等に記憶することによって実現される。

0067

(SOMニューロン選択部113)
SOMニューロン選択部113は、操業条件取得部112により取得された操業条件の値により定まるベクトルと、SOM記憶部108に記憶されたSOMニューロンの値(参照ベクトル)とのユークリッド距離を算出する。そして、SOMニューロン選択部113は、算出したユークリッド距離が最小となるSOMニューロンを1つ選択する。SOMニューロンの選択は、勝者SOMニューロン決定部105で説明したのと同様の方法で行うことができるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
SOMニューロン選択部113は、例えば、CPUが、コンピュータプログラムに従って、SOMニューロンを選択し、選択したSOMニューロンをRAM等に記憶することによって実現される。

0068

(熱流動解析部114)
熱流動解析部114は、SOMニューロン選択部113で選択されたSOMニューロンに関連付けられている等価物性値をSOM記憶部108から読み出す。
次に、熱流動解析部114は、SOMニューロン選択部113で選択されたSOMニューロンの値(参照ベクトル)に含まれる吹止温度T0に対し所定の温度ΔT0を加算及び減算した2つの温度T0+ΔT0、T0−ΔT0を、計算に使用する吹止温度として導出する。
そして、熱流動解析部114は、操業条件取得部112により取得された操業条件(空鍋時間、脱酸剤投入量、及び合金投入量)と、当該SOMニューロンに関連付けられている等価物性値と、前述したようにして導出した2つの吹止温度の1つと、をナビエ・ストークス方程式のk-ε乱流モデルに与え、当該ナビエ・ストークス方程式のk-ε乱流モデルを、FEMを使って解くことにより、出鋼温度T〜endを導出する。
熱流動解析部114は、このような出鋼温度T〜endの導出を、吹止温度を異ならせて2回行うことにより、2つの出鋼温度T〜end+、T〜end-を導出する(ここでは、吹止温度T0+ΔT0から得られた出鋼温度をT〜end+と表記し、吹止温度T0−ΔT0から得られた出鋼温度をT〜end-と表記する)。

0069

熱流動解析部114においても、熱流動解析部110と同様に取鍋の2次元軸対称の領域をFEMによる解析対象領域とする。すなわち、熱流動解析部114と熱流動解析部110とは、入力されるデータの値が異なるだけであり、これらが行う処理の内容は同じである。
熱流動解析部114は、例えば、CPUが、コンピュータプログラムに従って、図6(b)の右図に示す解析対象領域の情報と、SOMニューロンの値(参照ベクトル)の情報と、操業条件の情報と、等価物性値の情報とを読み出して、2つの吹止温度T0+ΔT0、T0−ΔT0に対する2つの出鋼温度T〜end+、T〜end-を導出し、その結果をRAM等に記憶することにより実現される。

0070

(操業予測部115)
操業予測部115は、熱流動解析部114により導出された出鋼温度T〜end+、T〜end-と、当該出鋼温度T〜end+、T〜end-を導出する際に使用された吹止温度T0+ΔT0、T0−ΔT0と、から、按分によって、操業条件取得部112により取得された要求出鋼温度に対応する吹止温度Tendを操業結果因子の予測値として導出する。
図7は、出鋼温度と吹止温度との関係の一例を示す図である。
例えば、操業予測部115は、熱流動解析部114により導出された出鋼温度T〜end+、T〜end-と、当該出鋼温度T〜end+、T〜end-を導出する際に使用された吹止温度T0+ΔT0、T0−ΔT0と、から、出鋼温度と吹止温度との関係式701を1次関数として導出する。そして、操業予測部115は、この関係式701において、要求出鋼温度Tendに対応する吹止温度Tを導出する。
操業予測部115は、例えば、CPUが、コンピュータプログラムに従って、出鋼温度T〜end+、T〜end-と吹止温度T0+ΔT0、T0−ΔT0とを読み出して、要求出鋼温度Tendに対応する吹止温度Tを予測値として導出し、その結果をRAM等に記憶することにより実現される。

0071

(操業結果出力部116)
操業結果出力部116は、操業予測部115で予測された操業結果因子である吹止温度(の予測値)Tを出力する。操業結果出力部116は、例えば、吹止温度Tを、液晶ディスプレイ等の表示装置に表示したり、操業予測装置100に接続されたリムーバル記憶媒体に記憶したり、操業予測装置100内のHDD等に記憶したりすることができる。
操業結果出力部116は、例えば、CPUが、コンピュータプログラムに従って、吹止温度Tの情報を読み出して、表示データを生成したり、リムーバル記憶媒体やHDD等に記憶したりする処理を行うことにより実現される。

0072

動作フローチャート
次に、図8のフローチャートを参照しながら、SOMニューロンの学習を行う際の操業予測装置100の処理動作(SOMニューロン生成処理)の一例を説明する。
まず、ステップS801において、データ取得部101は、実績データXjを外部から取得する。
次に、ステップS802において、データ正規化部102は、ステップS801で取得された実績データXjの値を正規化する。
次に、ステップS803において、SOMパラメータ設定部103は、競合層202において、2次元の格子状にSOMニューロンを配置し、配置したSOMニューロンのそれぞれに対して初期値(mi(0))を設定する。

0073

次に、ステップS804において、実績データ選択部104は、ステップS802で正規化された実績データXj(のセット)のうち、未選択のものを1つ選択する。
次に、ステップS805において、勝者SOMニューロン決定部105は、ステップS804で選択された実績データXjの値(ベクトル)とユークリッド距離が最も近いSOMニューロンを勝者SOMニューロンと502して決定する。
次に、ステップS806において、SOM学習部106は、ステップS805で決定された勝者SOMニューロン502の値(参照ベクトル)と、競合層202上の座標位置で勝者SOMニューロン502に近い位置にある近傍SOMニューロン503の値(参照ベクトル)とを、ステップS804で選択された実績データXjの値(ベクトル)に近づけるように修正(学習)する。

0074

次に、ステップS807において、SOM学習終了判定部107は、SOMの学習を終了するか否かを判定する。判定基準の一例は前述した通りである。この判定の結果、SOMの学習を終了しない場合には、ステップS804に戻り、別の実績データが選択され、勝者SOMニューロン502の決定と、勝者SOMニューロン502及び近傍SOMニューロン503の修正とを行う。そして、SOMの学習を終了すると判定されると、ステップS808に進む。
ステップS808に進むと、SOM学習終了判定部107は、ステップS807でSOMの学習を終了すると判定されたときのSOMの状態(競合層202上の各SOMニューロン(座標と参照ベクトル))を、学習終了時のSOMニューロンの値(参照ベクトル)としてSOM記憶部108に記憶する。
そして、図8のフローチャートによる処理を終了する。

0075

次に、図9のフローチャートを参照しながら、学習後のSOMニューロンに対する等価物性値を選択する際の操業予測装置100の処理動作(等価物性値選択処理)の一例を説明する。
まず、ステップS901において、等価物性値探索範囲設定部109は、等価物性値(溶鋼の熱伝導率kと、煉瓦の基準温度Tbと、出銑時の化学反応による発熱量Sh)のそれぞれの基準値を決定する。
次に、ステップS902において、等価物性値探索範囲設定部109は、ステップS901で決定した等価物性値の基準値の±x1[%]、±x2[%]、・・・、±xi[%]となる値を導出し、当該等価物性値の基準値と、当該等価物性値の基準値の±x1[%]、±x2[%]、・・・、xi[%]となる値と、を等価物性値の候補として決定する。本実施形態では、3つの等価物性値を採用するので、これら3つの等価物性値のそれぞれについて候補が個別に決定される。

0076

次に、ステップS903において、熱流動解析部110は、図8のフローチャートによる処理で得られた学習終了時のSOMニューロンのうち、未選択のSOMニューロンを1つ選択する。
次に、ステップS904において、熱流動解析部110は、ステップS902で決定された等価物性値の候補の組み合わせのうち、未選択の組み合わせを1つ選択する。
次に、ステップS905において、熱流動解析部110は、ステップS903で選択されたSOMニューロンの参照ベクトルを読み出す。

0077

次に、ステップS906において、熱流動解析部110は、ステップS905で読み出したSOMニューロンの参照ベクトルのうち、吹止温度、空鍋時間、脱酸剤投入量、及び合金投入量と、ステップS904で選択した等価物性値と、を入力として熱流動解析を行い、出鋼温度TendI(i,j)(l,m,n)を導出する。

0078

次に、ステップS907において、熱流動解析部110は、ステップS902で決定された等価物性値の候補の組み合わせの全てを選択したか否かを判定する。この判定の結果、ステップS902で決定された等価物性値の候補の組み合わせの全てを選択していない場合には、ステップS904に戻る。ステップS902で決定された等価物性値の候補の組み合わせの全てが選択されるまで、ステップS904〜S907の処理を繰り返し行う。
そして、ステップS902で決定された等価物性値の候補の組み合わせの全てが選択されると、ステップS908に進む。

0079

ステップS908に進むと、熱流動解析部110は、図8のフローチャートによる処理で得られた学習終了時のSOMニューロンの全てを選択したか否かを判定する。この判定の結果、図8のフローチャートによる処理で得られた学習終了時のSOMニューロンの全てを選択していない場合には、ステップS903の処理に戻る。そして、図8のフローチャートによる処理で得られた学習終了時のSOMニューロンの全てを選択するまで、ステップS903〜S908の処理を繰り返し行う。

0080

そして、図8のフローチャートによる処理で得られた学習終了時のSOMニューロンの全てを選択したと判定されると、SOMニューロンの値(参照ベクトル、勝者実績データXc)毎・等価物性値(溶鋼の熱伝導率k、煉瓦の基準温度Tb、出銑時の化学反応による発熱量Sh)の候補毎の出鋼温度TendI(i,j)(l,m,n)が全て導出されたことになり、ステップS909に進む。
ステップS909に進むと、等価物性値選択部111は、図8のフローチャートによる処理で得られた学習終了時のSOMニューロンのうち、未選択のSOMニューロンを1つ選択する。
次に、ステップS910において、等価物性値選択部111は、ステップS909で選択されたSOMニューロンに対する等価物性値を選択する。
具体的に説明すると、まず、等価物性値選択部111は、ステップS909で選択されたSOMニューロンの近傍にあるSOMニューロンを選択する。そして、等価物性値選択部111は、ステップS909で選択されたSOMニューロンと、その近傍にあるSOMニューロンとに対してステップS906で導出された出鋼温度TendI(i,j)(l,m,n)と、それらのSOMニューロンの値(参照ベクトル)に含まれている出鋼温度TendI(i,j)とを、(9)式及び(10)式に代入し、(10)式の左辺値のJが最も小さくなる等価物性値の候補(の組み合わせ)を、ステップS909で選択されたSOMニューロンに対する等価物性値(の組み合わせ)として選択する。そして、等価物性値選択部111は、選択した等価物性値(の組み合わせ)を、ステップS909で選択されたSOMニューロンに関連付けてSOM記憶部108に記憶する。

0081

次に、ステップS911において、等価物性値選択部111は、図8のフローチャートによる処理で得られた学習終了時のSOMニューロンの全てを選択したか否かを判定する。この判定の結果、図8のフローチャートによる処理で得られた学習終了時のSOMニューロンの全てを選択していない場合には、ステップS909に戻る。そして、図8のフローチャートによる処理で得られた学習終了時のSOMニューロンの全てを選択するまで、ステップS909〜S911の処理を繰り返し行う。
そして、図8のフローチャートによる処理で得られた学習終了時のSOMニューロンの全てを選択したと判定されると、当該全てのSOMニューロンに対して等価物性値が選択されたことになるので、図9のフローチャートによる処理を終了する。

0082

次に、図10のフローチャートを参照しながら、操業結果因子である吹止温度Tを導出する際の操業予測装置100の処理動作(操業結果予測処理)の一例を説明する。
まず、ステップS1001において、操業条件取得部112は、要求出鋼温度Tendと操業条件とを外部から取得する。前述したように、操業条件には、空鍋時間、脱酸剤投入量、及び合金投入量が含まれる。
次に、ステップS1002において、SOMニューロン選択部113は、図6のフローチャートによる処理で得られた学習終了時のSOMニューロンのうち、当該SOMベクトルの値(参照ベクトル)と、ステップS1001で取得した操業条件の値により定まるベクトルとのユークリッド距離が最小となるSOMニューロンを1つ選択する。
次に、ステップS1003において、熱流動解析部114は、ステップS1002で選択されたSOMニューロンの値(参照ベクトル)に含まれる吹止温度T0に対し所定の温度ΔT0を加算及び減算した2つの温度T0+ΔT0、T0−ΔT0を、計算に使用する吹止温度として導出する。

0083

次に、ステップS1004において、熱流動解析部114は、ステップS1001で取得された操業条件(空鍋時間、脱酸剤投入量、及び合金投入量)と、ステップS1002で選択されたSOMニューロンに関連付けられている等価物性値と、ステップS1003で導出した吹止温度の1つと、を入力として、熱流動解析を行い、出鋼温度T〜endを導出する。
次に、ステップS1005において、熱流動解析部114は、ステップS1003で導出した吹止温度の全てについて、出鋼温度T〜endを導出したか否かを判定する。この判定の結果、ステップS1003で導出した吹止温度の全てについて、出鋼温度T〜endを導出していない場合には、ステップS1003に戻る。そして、ステップS1003で導出した吹止温度の全てについて、出鋼温度T〜endを導出するまで、ステップS1003〜S1005の処理を繰り返し行う。本実施形態では、2つの出鋼温度T〜end+、T〜end-が導出されるまで、ステップS1003〜S1005の処理を繰り返し行う。

0084

そして、ステップS1003で導出した吹止温度の全てについて、出鋼温度T〜endを導出すると、ステップS1006に進む。ステップS1006に進むと、操業予測部115は、ステップS1004で導出された出鋼温度T〜end+、T〜end-と、当該出鋼温度T〜end+、T〜end-を導出する際に使用された吹止温度T0+ΔT0、T0−ΔT0と、から、按分によって、ステップS1001で取得された要求出鋼温度Tendに対応する吹止温度TTendを導出する。
次に、ステップS1007において、操業結果出力部116は、ステップS1006で導出された吹止温度Tを出力する。
そして、図10のフローチャートによる処理を終了する。

0085

(実施例)
次に、本実施形態の実施例について説明する。
表1は、要求出鋼温度に対する吹止温度を示す。
本実施例では、実際の操業の結果から得られた1000個の操業実績データ(実績データXj)を使って、前述したようにしてSOMニューロンの学習(図8に示すSOMニューロン生成処理)と等価物性値の選択(図9に示す等価物性値選択処理)を行った。その後、SOMニューロンの学習と等価物性値の選択に使用してものとは異なる別の操業実績データを用いて吹止温度の予測(図10に示す操業結果予測処理)を行った。

0086

ここでは、操業実績データに含まれる出鋼温度を要求出鋼温度と仮定して、吹止温度の予測値を導出した。表1に示す要求出鋼温度と吹止温度(予測値)は、これらの値を示す。そして、吹止温度の予測値から、当該吹止温度の予測の際に使用した操業実績データに含まれる吹止温度を引いた値を調査した。表1に示す吹止温度(操業実績データ)と温度差は、これらの値を示す。

0087

0088

表1に示すように、吹止温度(操業実績データ)に対する吹止温度(予測値)の誤差は±15[℃]の範囲内であった。ここで、表1の結果から、以下の(11)式で示される決定定数R2の値は0.979であった。したがって、本実施形態で説明した方法を用いることにより、吹止温度を正確に予測することができることが分かる。
(11)式において、jは、1,2,・・・,Jの整数(Jは実績データの数)である。yjは、操業実績データにおける吹止温度の値である。y-は、操業実績データにおける吹止温度の値yjの平均値である。fjは、吹止温度の予測値である。

0089

0090

(まとめ)
以上のように本実施形態では、実績データに最も近いSOMニューロンを勝者SOMニューロンとし、勝者SOMニューロンの値とそのSOMニューロンの座標の近傍にある近傍SOMニューロンの値とを、実績データの値に近づけるように修正してSOMの学習を行う。
そして、ナビエ・ストークス方程式のk-ε乱流モデルに基づいて、取鍋における溶鋼の熱流動を、FEMにより計算する際に入力する等価物性値の候補を導出する。そして、等価物性値の候補とSOMニューロンの値とを与えて前記計算を行い、SOMニューロンの値毎・等価物性値の候補(の組み合わせ)毎の出鋼温度TendI(i,j)(l,m,n)を導出する。そして、対象となるSOMニューロンとその近傍にあるSOMニューロンにおける出鋼温度TendI(i,j)(l,m,n)の結果と、それらのSOMニューロンの値として含まれる出鋼温度と、の比較結果に基づき、当該対象となるSOMニューロンに対する等価物性値を候補の中から選択して当該対象となるSOMニューロンに対して設定する。
その後、吹止温度の予測に際して入力された操業条件に最も近い値を有するSOMニューロンを選択し、選択したSOMニューロンの値の中に含まれる吹止温度に所定の温度を加算及び減算した2つの温度を、入力する吹止温度として導出する。そして、これらの吹止温度と、選択したSOMニューロンに関連付けられている等価物性値と、操業条件と、を与えて前記計算を行い、出鋼温度を2つ導出し、導出した2つの出鋼温度T〜end+、T〜end-から按分により、要求出鋼温度Tendに対応する吹止温度(の予測値)Tendを導出する。

0091

したがって、階層型ニューラルネットワークのような統計モデルを予測モデルとせずに、物理現象に従った予測結果が得られる予測モデル(本実施形態の例ではナビエ・ストークス方程式のk-ε乱流モデル)に則って定式化された物理モデルを、予測モデルとして利用することができる。従って、予測モデルがブラックボックスにならない。よって、例えば、予測モデルによる予測が正しい場合には、物理現象を満足している計算が行われていることになる。一方、予測モデルによる予測が正しくない場合には、予測モデルの問題点を検証し、予測精度が上がるように予測モデルを改善することができる。

0092

また、測定できない物性値や、実際には正確に測定できない物性値等の物性値の誤差を等価物性値により補正(吸収)することができる。すなわち、予測モデルに与える物性値の精度を高めることができる。したがって、物理現象を満足する予測モデルによって、操業結果因子を正確に予測することができる。よって、燃料資源・時間等の削減が可能になる。

0093

(変形例)
<変形例1>
本実施形態では、出鋼温度と吹止温度との関係を1次関数として、2つの出鋼温度T〜end+、T〜end-から按分により吹止温度(の予測値)Tendを導出するようにした。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。出鋼温度と吹止温度との関係が1次関数ではなく、n次関数(nは2以上の整数)で表されるようにしてもよい。このようにした場合には、3つ以上の出鋼温度を導出することになる。
<変形例2>
また、本実施形態では、(9)式、(10)式の計算を行って、各SOMニューロンに対する等価物性値を選択した。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、(10)式では誤差ΔTendI(i,j)(l,m,n)の絶対値の総和を求めているが、誤差の二乗(=ΔTendI(i,j)(l,m,n)2)の総和が最小となる「等価物性値の候補」を、対象となるSOMニューロンに対する等価物性値として選択してもよい。

0094

<変形例3>
また、本実施形態では、SOMニューロン(参照ベクトル)を対象として等価物性値の選択のための計算を行うようにした。しかしながら、SOMの学習終了時のSOMニューロンのそれぞれに対し、値が最も近い実績データ(勝者実績データXc)も対象として等価物性値の選択のための計算を行うこともできる。
勝者実績データXcについては、例えば、以下のようにして得ることができる。
まず、学習終了時のSOMニューロンiを1つ指定して、指定したSOMニューロンiと、データ正規化部102で正規化された全ての実績データXjの値(ベクトル)とのユークリッド距離を算出する。

0095

次に、算出したユークリッド距離が最小となる実績データXjを、指定したSOMニューロンに対する勝者実績データXcとして決定する。この具体的な計算は、例えば、以下の(12)式のmi(t)を、学習終了時のSOMニューロンの値(参照ベクトル)とし、Xjを、実績データの値(ベクトル)とし、Xcを、勝者実績データの値(ベクトル)とすれば実現できる。尚、この勝者実績データの決定は、競合層202上のSOMニューロンのそれぞれについて個別に行われる。
|mi(t)−Xc|=min|mi(t)−Xj| ・・・(12)

0096

最後に、学習終了時のSOMニューロンのそれぞれと、当該SOMニューロンとユークリッド距離が最も近い勝者実績データXcの値とを相互に関連付けてSOM記憶部108に記憶する。
そして、このようにする場合、ステップS903で選択されたSOMニューロンに対して関連付けられている勝者実績データXcについてステップS906と同様の処理を行う。このようにすれば、等価物性値の精度をより一層向上させることができる。

0097

<変形例4>
また、本実施形態では、ステップS1004において、操業条件(空鍋時間、脱酸剤投入量、及び合金投入量)を用いるようにした。しかしながら、ステップS1002で選択されたSOMニューロンの値(参照ベクトル)に含まれる「空鍋時間、脱酸剤投入量、及び合金投入量」を操業条件として用いてもよい。

0098

<変形例5>
また、本実施形態では、解析モデル(ナビエ・ストークス方程式のk-ε乱流モデル)で導出される出鋼温度よりも時間的に早い段階で得られる因子(転炉の吹止温度)を予測の対象とした。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。このようにする場合の一例を変形例5として説明する。ここでは、出鋼温度を予測の対象とする。
まず、データ取得部101の説明において、例えば、段落[0021]の(37)の吹止温度は、操業結果因子ではなく、出鋼温度に影響を与えるものとして、操業影響因子となる。このように吹止温度を操業影響因子とした場合、(36)の取鍋1(出鋼温度)は、吹止温度の影響を受けるものであるので、操業結果因子となる。ただし、実績データXjに含まれるデータそのものは、本実施形態で説明したものと変わらない。したがって、データ正規化部102、SOMパラメータ設定部103、実績データ選択部104、勝者SOMニューロン決定部105、SOM学習部106、SOM学習終了判定部107、SOM記憶部108は本実施形態で説明したものと変わらない。

0099

また、吹止温度を操業影響因子とし、出鋼温度を操業結果因子とした場合でも、前述したナビエ・ストークス方程式のk-ε乱流モデルを用いることができる。ナビエ・ストークス方程式のk-ε乱流モデルにより出鋼温度が計算されるからである。したがって、等価物性値探索範囲設定部109、熱流動解析部110も本実施形態で説明したものと変わらない。ただし、本実施形態では、熱流動解析部110は、所与プロセス条件である操業影響因子(空鍋時間、脱酸剤投入量、及び合金投入量)と、操業結果因子である吹止温度と、を入力とし、当該所与のプロセス条件である操業影響因子と、当該操業結果因子とにより定まるプロセス値である操業影響因子である出鋼温度を出力とする。これに対し、本変形例では、熱流動解析部110は、操業影響因子(空鍋時間、脱酸剤投入量、合金投入量、及び吹止温度)を入力とし、操業結果因子の一つである出鋼温度を出力とする。

0100

熱流動解析部110では、SOMニューロンの値(参照ベクトル)毎・等価物性値の候補毎の出鋼温度TendI(i,j)(l,m,n)が導出されるので、本変形例においても、等価物性値選択部111は、(10)式の左辺値Jの値が最も小さくなる等価物性値を、対象となるSOMニューロンに対する等価物性値として選択することができる。すなわち、FEMで計算した出鋼温度の予測値TendI(i,j)(l,m,n)と各SOMニューロンに紐付いている出鋼温度TendI(i,j)との誤差の和が最も小さくなる共通の等価物性値の候補を、対象となるSOMニューロンの等価物性値として選択する。
また、本変形例では、操業結果因子は出鋼温度である。したがって、本変形例では、操業条件取得部112は、要求出鋼温度を取得せずに、操業に際し要求される吹止温度(目標値)と、空鍋時間、脱酸剤投入量、及び合金投入量とを操業条件として取得する。
そして、SOMニューロン選択部113は、これら取得した操業条件の値により定まるベクトルと、SOM記憶部108に記憶されたSOMニューロンの値(参照ベクトル)とのユークリッド距離を算出し、算出したユークリッド距離が最小となるSOMニューロンを1つ選択する。熱流動解析部114は、操業条件取得部112により取得された操業条件(空鍋時間、脱酸剤投入量、及び合金投入量、吹止温度T0)と、SOMニューロン選択部113で選択されたSOMニューロンに関連付けられている等価物性値と、をナビエ・ストークス方程式のk-ε乱流モデルに与えることにより、出鋼温度(操業結果因子)の予測値を導出する。このように本変形例では、図7を用いて説明した按分の処理は不要になる。

0101

<変形例6>
また、本実施形態では、製鋼プロセスを例に挙げて説明したが、他の操業プロセスにも本実施形態の手法を適用することができる。この場合、操業影響因子の中に等価物性値が含まれることもあり得る。この場合、各SOMニューロンに対する等価物性値を選択(設定)するに際しては、操業影響因子のうち、等価物性値と同じものについては使用しないことになる。また、操業の対象は溶鋼のような半製品に限定されず製品(最終製品)であってもよい。また、操業の対象等に応じて、FEMを用いずに、例えば、差分法フーリエ変換フーリエ級数といったその他の数値解析手法を用いてもよい。

0102

<変形例7>
また、本実施形態では、物理現象を表現した式として、ナビエ・ストークス方程式のk-ε乱流モデルを用い、ナビエ・ストークス方程式において可調整パラメータとして表される物性値(転炉の吹止めから出鋼までの間における前述した不確かな物性値)を可調整パラメータとして用いる(可調整パラメータの一例として等価物性値を用いる)場合を例に挙げて説明した。しかしながら、複数の実績データから、当該複数の実績データを補間する補間データを生成し、当該実績データ及び当該補間データの少なくともいずれかに対して物理現象を表現した式に基づく計算を行うことで、当該計算の可調整パラメータを導出し、導出した可調整パラメータを用いて操業結果因子の予測値を導出するようにしていれば、必ずしも本実施形態で説明したようにする必要はない。

0103

例えば、ナビエ・ストークス(Navier-Stokes)方程式のk-ε乱流モデルの近似式を用いてもよい。この近似式は、例えば、以下のようにして得ることができる。すなわち、ナビエ・ストークス(Navier-Stokes)方程式のk-ε乱流モデルを、変数(吹止温度、空鍋時間、脱酸剤投入量、合金投入量、溶鋼の熱伝導率、煉瓦の基準温度、出銑時の化学反応による発熱量等)の多数の組み合わせのそれぞれについて、FEMを使って解くことにより当該各組み合わせにおける出鋼温度を導出する。そして、その結果から、回帰分析等の手法により、出鋼温度と、各変数との関係を定める関数を導出し、導出した関数を、ナビエ・ストークス(Navier-Stokes)方程式のk-ε乱流モデルの近似式とすることができる。
また、予測対象に応じて種々の支配方程式を採用することができる。例えば、誘導加熱等、操業において電磁界における現象を予測対象とする場合には、支配方程式としてマックスウェルの方程式を採用することができる。
以上のように、物理現象を表現した式として、公知の種々の支配方程式を採用することができ、また、物理現象を表現した式は、支配方程式そのものに限定されず、近似式であってもよい。更に、物理現象を表現した式であれば、支配方程式や近似式でなくてもよい。

0104

また、可調整パラメータは、物理現象を表現した式において不確かなパラメータであれば、等価物性値(当該式において不確かな物性値)でなくてもよい。物理現象を表現した式において、製品又は半製品を製造するための設備の状態を表すパラメータ、操業条件を表すパラメータ、および操業結果を表すパラメータを含む場合には、それらの少なくとも何れか1つを可調整パラメータとすることができる。設備の状態、操業条件、操業結果にも、測定はできるものの測定しない場合、測定はできるものの実際には正確に測定できない場合、測定が困難である場合があるため正確に測定できない値が存在する(すなわち、不確かな値になることがある)からである。

0105

例えば、本実施形態で説明した例では、溶鋼の熱伝導率k、(取鍋を構成する)煉瓦の基準温度Tb(取鍋が空のときの煉瓦の温度)、及び出銑時の化学反応による発熱量Shに加えて又は代えて前述した(1)〜(19)の材料因子の値が反映されるパラメータ(操業条件)を可調整パラメータとして用いてもよい。また、(21)〜(24)の鍋状況因子の値が反映されるパラメータ(設備の状態)を可調整パラメータとしてもよい。また、(20)、(35)の温度因子の値が反映されるパラメータ(操業結果)を可調整パラメータとして用いてもよい。

0106

<請求項との関係>
以下に、請求項の記載と実施形態の記載との関係の一例を示す。尚、請求項の記載が、実施形態の記載に限定されないことは、前述した通りである。
(請求項1〜3、7〜9)
本実施形態では、例えば、転炉の吹止温度が操業結果因子の一例であり、空鍋時間、脱酸剤投入量、及び合金投入量が所与のプロセス条件である第1の操業影響因子の一例であり、出鋼温度がこれらによって決まるプロセス値である第2の操業影響因子の一例である。
また、前述した変形例5では、例えば、転炉の吹止温度、空鍋時間、脱酸剤投入量、及び合金投入量が操業影響因子の一例であり、出鋼温度が操業結果因子の一例である。
以上のように、本実施形態でも変形例5でも、解析入力因子は、例えば、転炉の吹止温度、空鍋時間、脱酸剤投入量、及び合金投入量であり、解析出力因子は、出鋼温度である。
物理現象を表現した式は、例えば、ナビエ・ストークス方程式のk-ε乱流モデルを用いることにより実現される。
補間データ生成手段は、例えば、データ正規化部102、SOMパラメータ設定部103、実績データ選択部104、勝者SOMニューロン決定部105、SOM学習部106、SOM学習終了判定部107、及びSOM記憶部108を用いることにより実現される。また、補間データ生成工程は、例えば、図8のステップS801〜S808の処理を実行することにより実現される。
解析手段は、例えば、熱流動解析部114(ナビエ・ストークス方程式のk-ε乱流モデル)を用いることにより実現される。ただし、前述したように本実施形態では、熱流動解析部114は、出鋼温度を第2の操業影響因子として導出するのに対し、変形例5では、熱流動解析部114は、出鋼温度を操業結果因子として導出する。
可調整パラメータ導出手段・可調整パラメータ選択手段は、例えば、等価物性値選択部111を用いることにより実現される。
操業結果予測手段は、例えば、操業条件取得部112、SOMニューロン選択部113、熱流動解析部114、及び操業予測部115を用いることにより実現される。ただし、変形例5では、操業条件取得部112は、要求出鋼温度を取得せずに、操業に際し要求される吹止温度と、空鍋時間、脱酸剤投入量、及び合金投入量とを操業条件として取得し、SOMニューロン選択部113は、これら取得した操業条件の値により定まるベクトルと、SOM記憶部108に記憶されたSOMニューロンの値(参照ベクトル)とのユークリッド距離を算出し、算出したユークリッド距離が最小となるSOMニューロンを1つ選択する。また、変形例5では、ステップS1005、S1006の処理は不要となり、ステップS1004で得られた出鋼温度が予測値としてステップS1007で出力されることになる。
すなわち、本実施形態では、ステップS1004で得られた複数の出鋼温度(解析出力因子)の値を、ステップS1006で按分処理することによって得られた転炉の吹止温度が予測値としてステップS1007で出力される。これに対し、変形例5では、ステップS1004で得られた出鋼温度(解析出力因子)が予測値としてそのままステップS1007で出力される。
(請求項4)
勝者SOMニューロン決定手段は、例えば、勝者SOMニューロン決定部105を用いることにより実現される。また、勝者SOMニューロン決定工程は、例えば、図8のステップS805の処理を実行することにより実現される。
SOM学習手段は、例えば、SOM学習部106を用いることにより実現される。また、SOM学習工程は、例えば、図8のステップS806の処理を実行することにより実現される。
(請求項5)
総和導出手段及び選択手段は、例えば、等価物性値選択部111を用いることにより実現される。また、総和導出工程及び選択工程は、例えば、図9のステップS910の処理を実行することにより実現される。
ここで、差分値の絶対値の総和は、(10)式の計算を行うことにより得られる。
(請求項6)
補間データに加えて、実績データをも用いることは、例えば、学習終了時のSOMニューロンのそれぞれと、当該SOMニューロンとユークリッド距離が最も近い勝者実績データXcの値とを相互に関連付けて記憶し、図9のステップS906と同様の処理を、ステップS905で読み出したSOMニューロン(参照ベクトル)に対応する勝者実績データXcについて行うことにより実現される。

0107

尚、以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び前記プログラム等のコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスクハードディスク光ディスク光磁気ディスクCD−ROM磁気テープ不揮発性メモリカード、ROM等を用いることができる。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。

0108

100操業予測装置
101データ取得部
102 データ正規化部
103 SOMパラメータ設定部
104学習用実績データ選択部
105勝者SOMニューロン決定部
106 SOM学習部
107 SOM学習終了判定部
108 SOM記憶部
109等価物性値探索範囲設定部
110熱流動解析部
111 等価物性値選択部
112操業条件取得部
113 SOMニューロン選択部
114 熱流動解析部
115 操業予測部
116操業結果出力部

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