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技術 計数方法および放射線検出装置

出願人 株式会社トクヤマ
発明者 油谷真人福田健太郎
出願日 2016年7月22日 (3年9ヶ月経過) 出願番号 2016-144371
公開日 2019年9月12日 (7ヶ月経過) 公開番号 2019-152436
状態 未査定
技術分野 放射線治療装置
主要キーワード 縦軸スケール デジタルデータ処理装置 計数誤差 低線量率 中性子線量 パイルアップ現象 積算線量 計数精度
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2019年9月12日)のものです。
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図面 (19)

課題

計数率が低い状況から高い状況まで広い範囲にわたって精度良く放射線等を計数する計数方法を提供する。

解決手段

波高弁別閾値を設定し、該波高弁別閾値を超える信号の頻度を計数する方法であって、計数の目的成分波高分布スペクトルピークを示す場合において、前記ピークについてガウス関数フィッティングして求められる(μ−0.4σ)〜(μ+0.6σ)の範囲から選ばれる任意の値を前記波高弁別閾値とする計数方法であり、また、当該計数方法により信号処理する放射線検出装置である。本発明の計数方法および放射線検出装置によれば、パイルアップ計数値に与える誤差を小さくすることが可能であり、放射線線量率が低い状況から高い状況まで広い範囲にわたって精度良く放射線等を計数することが可能である。

概要

背景

シンチレータ半導体などの放射線検出素子波高弁別回路を組み合わせた放射線検出装置では、放射線検出素子が検出した放射線エネルギーに対応したパルス信号を得てその波高値読み取り、当該波高値が波高弁別閾値を超えたパルス信号を計数することにより線量率を求める方法が広く一般に行われている。

例えば、中性子線線量率を求める中性子検出装置の場合には、バックグラウンドノイズとなるγ線を計数しない波高値を波高弁別閾値とする必要がある。波高弁別閾値を最適化する方法としては、特許文献1に記載されたように、波高分布スペクトルで示されたピークについてガウス関数フィッティングして求められるμ(波高値の平均値)およびσ(波高値の標準偏差)を基準として設定する方法がある。

概要

計数率が低い状況から高い状況まで広い範囲にわたって精度良く放射線等を計数する計数方法を提供する。波高弁別閾値を設定し、該波高弁別閾値を超える信号の頻度を計数する方法であって、計数の目的成分が波高分布スペクトルでピークを示す場合において、前記ピークについてガウス関数をフィッティングして求められる(μ−0.4σ)〜(μ+0.6σ)の範囲から選ばれる任意の値を前記波高弁別閾値とする計数方法であり、また、当該計数方法により信号処理する放射線検出装置である。本発明の計数方法および放射線検出装置によれば、パイルアップ計数値に与える誤差を小さくすることが可能であり、放射線線量率が低い状況から高い状況まで広い範囲にわたって精度良く放射線等を計数することが可能である。

目的

1つとしては、パルス減衰時間が短くなるように回路構成を工夫することである

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

この技術が所属する分野

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請求項1

波高弁別閾値を設定し、該波高弁別閾値を超える信号の頻度計数する方法であって、計数の目的成分波高分布スペクトルピークを示す場合において、前記ピークについてガウス関数フィッティングして求められる(μ−0.4σ)〜(μ+0.6σ)の範囲から選ばれる任意の値を前記波高弁別閾値とする計数方法

請求項2

シンチレータ光検出器波高弁別回路を組み合わせて用いる放射線検出装置であって、前記波高弁別回路は、前記光検出器の信号を増幅する増幅器と、前記増幅器のアナログ信号出力デジタル信号に変換するAD変換器と、前記AD変換器のデジタル信号出力信号処理するデジタルデータ処理装置と、を備える波高弁別回路であって、当該波高弁別回路において請求項1記載の計数方法により信号処理する放射線検出装置。

請求項3

シンチレータが、LiCaxSr1−xAlF6結晶(xは0〜1)である請求項2に記載の放射線検出装置。

請求項4

シンチレータが検出する放射線加速器中性子である請求項2又は3の何れか一項に記載の放射線検出装置。

請求項5

シンチレータが検出する放射線がホウ素中性子捕捉療法用の中性子である請求項2〜4の何れか一項に記載の放射線検出装置。

技術分野

0001

本発明は、放射線等の計数方法および放射線検出装置に関する。詳しくは、高計数率条件下でも精度良く放射線等を計数する方法および放射線検出装置に関する。

背景技術

0002

シンチレータ半導体などの放射線検出素子波高弁別回路を組み合わせた放射線検出装置では、放射線検出素子が検出した放射線のエネルギーに対応したパルス信号を得てその波高値読み取り、当該波高値が波高弁別閾値を超えたパルス信号を計数することにより線量率を求める方法が広く一般に行われている。

0003

例えば、中性子線線量率を求める中性子検出装置の場合には、バックグラウンドノイズとなるγ線を計数しない波高値を波高弁別閾値とする必要がある。波高弁別閾値を最適化する方法としては、特許文献1に記載されたように、波高分布スペクトルで示されたピークについてガウス関数フィッティングして求められるμ(波高値の平均値)およびσ(波高値の標準偏差)を基準として設定する方法がある。

先行技術

0004

先WO2014−192321
特許第5611357号
特開2015−227854
特開2012−136667
特開2013−167467
先WO2015−128905
特表2001−524217

発明が解決しようとする課題

0005

例えば、がん放射線治療において放射線検出素子が曝される環境は、非常に高い放射線線量率となる場合がある。このような高線量率環境においては、特許文献2や特許文献3に記載されたように、或るパルスの測定直後に次のパルスが入射すること(所謂パイルアップ現象)により信号波形が重なってしまって計数ロスを起こし、計数精度が低下する問題がある。

0006

特許文献2や特許文献3では、AD変換器によりパルスをデジタル化させ、パイルアップした複数のパルスを分離して計数すると共に、ベースライン変動による波高値の変化を補正する方法が開示されている。しかし、実施の形態によってはパイルアップした複数のパルスを分離できず、計数ロスする場合があった。2つのパルス(2回の放射線検出事象)が1つのパルス(1回の放射線検出事象)として処理された放射線検出事象がある場合の波高分布スペクトルは、例えば図1のようになり、第1ピークの約2倍の波高値に第2ピークが観測される。なお、パイルアップが無い状態の波高分布スペクトルは図2に示したように第2ピークが観測されない。

0007

そして、さらにパイルアップの頻度が増える場合(線量率がより高かったり、検出素子感度がより高かったりする場合)には、3つのパルスを1つのパルスとして処理してしまう放射線検出事象の存在によって、図3の波高分布スペクトルのように、第1ピークの約3倍の波高値に第3ピークが観測されることもあった。

0008

このように複数のパルスが1つのパルスとして処理された際には、計数ロスを生じて計数精度が低下してしまう。そのため、放射線検出素子の小型化などによって放射線検出感度を下げて、パイルアップの頻度を減らす必要がある。しかし、放射線検出感度を下げることで他の問題を生じることもあるため、多方面からのアプローチが必要となる。

0009

1つとしては、特許文献4に記載されたように、パルスの減衰時間蛍光寿命)が短い放射線検出素子を用いることである。

0010

1つとしては、パルスの減衰時間が短くなるように回路構成を工夫することである(例えば、時定数が短い増幅器アンプ)を用いたり、微分回路を用いたりする)。

0011

1つとしては、AD変換器を高速化して、デジタルデータのサンプリング点を増やすことである。

0012

しかしながら、このようなアプローチによっても、パイルアップによって計数精度が低下する問題を解決できない場合もあった。

課題を解決するための手段

0013

上記課題に鑑み、本発明者らは鋭意検討を行い、波高弁別閾値を最適化するという、上述のアプローチとは全く異なる方法によって、パイルアップによる計数精度の低下を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。

0014

即ち本発明は、波高弁別閾値を設定し、該波高弁別閾値を超える信号の頻度を計数する方法であって、計数の目的成分が波高分布スペクトルでピークを示す場合において、前記ピークについてガウス関数をフィッティングして求められる(μ−0.4σ)〜(μ+0.6σ)の範囲から選ばれる任意の値を前記波高弁別閾値とすることを特徴とする計数方法および放射線検出装置である。

発明の効果

0015

本発明によれば、パイルアップによる計数精度の低下を抑制でき、放射線計数率が低い状況から高い状況まで広い範囲にわたって精度良く放射線を計数することが可能である。

図面の簡単な説明

0016

Eu:LiCaAlF6結晶を用いた中性子検出装置によって加速器中性子を計数した際に得られた波高分布スペクトル。
Eu:LiCaAlF6結晶を用いた中性子検出装置によって加速器中性子を計数した際に得られた波高分布スペクトル。
Eu:LiCaAlF6結晶を用いた中性子検出装置によって加速器中性子を計数した際に得られた波高分布スペクトル。
本発明の放射線検出装置の概略図。
パイルアップが与える影響を説明するための信号波形図。
波高分布スペクトルの生成方法を説明する図(シミュレーション)。
パイルアップした場合に示される波高分布スペクトル(シミュレーション)。
パイルアップした場合に示される波高分布スペクトルについて解析した波高弁別閾値以上の計数値(シミュレーション)。
パイルアップが計数値に与える誤差のシミュレーション結果。
実施例1において最もパイルアップした状況における計数誤差実測値シミュレーション値の比較。
波高弁別閾値をμ付近に設定することによりパイルアップが計数値に与える誤差を小さくできることを説明する図。
実施例で用いた中性子検出装置の概略図。
実施例1で得られた中性子計数率および加速器電流値時系列グラフ
実施例1における加速器電流値と中性子計数率の関係を示すグラフ
比較例1で得られた中性子計数率および加速器電流値の時系列グラフ。
比較例1における加速器電流値と中性子計数率の関係を示すグラフ。
比較例2で得られた中性子計数率および加速器電流値の時系列グラフ。
比較例2における加速器電流値と中性子計数率の関係を示すグラフ。

0017

本発明を実施するための装置の一例である放射線検出装置の概略図を図4に示す。放射線検出装置は、放射線の入射によってパルス状の電気信号を出力する放射線検出素子1と波高弁別回路2を組み合わせたものによって、その目的を達成できる。シンチレータのように、直接電気信号を出力せず放射線の入射によって光を発する媒体を用いる場合は、当該シンチレータ3と、シンチレータ3の発する光を電気信号へ変換させる装置4を組み合わせることによって、放射線検出素子1とすることができる。シンチレータの発する光を電気信号へ変換させる装置4として、光電子増倍管フォトダイオードアバランシェフォトダイオードガイガーモードアバランシェフォトダイオード等の光検出器が一般的に用いられる。

0018

波高弁別回路2は、放射線検出素子1から出力されるパルスの波高値を解析し、波高弁別閾値を超えたパルスを計数できるものであれば良く、パルスをアナログデータ処理によって読み取るものと、パルスをデジタルデータ処理によって読み取るものと、どちらにおいても本発明を適用できる。

0019

本発明の実施例で用いた波高弁別回路2は、増幅器(アナログアンプ)、AD変換器、デジタルデータ処理装置表示装置などで構成された、デジタルデータ処理によってパルスを読み取るものである。以下、デジタルデータ処理によってパルスを読み取る装置を例として記述する。

0020

前記の実施形態によれば、放射線検出素子1が放射線を検出した際に発するパルスはアナログアンプにより時間軸に沿って拡大して増幅され、増幅されたパルス信号はAD変換器によって或る一定のサンプリング間隔でデジタルデータに変換され、当該デジタルデータをデジタルデータ処理装置によって読み取る。そして、コンピュータソフトウェア表示モニタなどで構成される表示装置に、波高分布スペクトルや波高弁別閾値を超えた計数値などが表示される。

0021

図5は、パイルアップの影響を概念的に説明するためのアナログアンプによって増幅されたパルスの信号波形図であり、図中の各点は、実線で示したアナログ信号上に一定時間間隔でデジタル化させた場合に得られる離散値を示している。

0022

図5(a)は、パイルアップしていない場合である。この場合、デジタルデータ処理装置は、「波高値(Pulse Height)Hに相当する事象が2回」として計数する。

0023

一方、図5(b)は、パイルアップした場合である。本来は「波高値Hに相当する事象が3回」と計数されるべきところだが、第1パルスの直後に別の放射線が入射して第2パルスが立ち上がっており、デジタルデータの離散値で見ると信号値が上昇し続けているため、第1パルスと第2パルスは分離して認識されず、「H”(≒2H)に相当する事象が1回」と計数される。

0024

また、第3パルスはベースラインシフトによって「H’(<H)に相当する事象が1回」と計数される。本発明が解決しようとする問題は、第1パルスと第2パルスについて生じる計数ロスである。以降の説明では、便宜上、第1パルスと第2パルスのように複数のパルスを分離して計数できなかった場合をパイルアップしたとして取り扱い、第3パルスのように直前のパルスから分離して計数できたものはパイルアップしていないものとして取り扱う。なお、第3パルスについて波高値が小値化する問題は、波高弁別閾値を超える波高値として処理されるべきパルスが、波高弁別閾値未満の波高値まで小値化してしまうと計数ロスとなる。この計数ロスについては、後述するガウスフィッティング活用し、波高値の小値化に合わせて波高弁別閾値を調整することによっても計数ロスを軽減できる。

0025

上述のパイルアップが計数値に与える誤差をシミュレーションするため、まず、パイルアップしていない場合と、パイルアップしている場合との、それぞれで示される波高分布スペクトルを、下記式(1)のガウス関数を用いて生成した。式(1)のガウス関数における最大計数Nは、平均波高値μにおいて示される計数である。波高分布スペクトルの生成方法を説明する図を図6に示す。

0026

図2で示したパイルアップが無い状態の波高分布ピークのμおよびσを参考に、パイルアップしていない第1ピークのμおよびσをそれぞれμ1=200ch、σ1=26chとした。2個のパルスがパイルアップして現れる第2ピークはμ2=400ch、σ2=52ch、3個のパルスがパイルアップして現れる第3ピークはμ3=600ch、σ3=78chとした。式(1)を用いた独立したデータとして第1〜第3ピークを生成した後、波高値毎に計数を足し合わせて1つの波高分布スペクトルとしている。なお、図1図3の波高分布スペクトルのように、計数の目的成分とは異なる放射線種によって低波高値側にノイズ成分が観測され目的成分のピークと一部重なる場合もあるが、当該シミュレーションでこのようなノイズ成分を考慮する必要はないため無視した。

0027

パイルアップ率を0%、10%、20%、30%として、前述の方法で生成した波高分布スペクトルを図7に示す。パイルアップ率0%の波高分布スペクトルは、第1ピークしか持たないデータである。各波高分布スペクトルの0〜1023chまでの合計計数は、第2ピークの計数を2倍、第3ピークの計数を3倍として計算すれば一致するようにしている。

0028

次に、波高弁別閾値(Threshold)をμ+Xσとし、Xを−3〜+3の範囲で変化させた場合の波高弁別閾値以上の計数を波高分布スペクトルから求めた。その結果を図8に示す。さらに、図8の結果から、パイルアップ0%の場合の波高弁別閾値以上の計数に対するパイルアップ率10%、20%、30%の計数誤差をそれぞれ求めた。その結果を図9に示す。これら図8および図9の結果から、Xが小さいほど計数ロスによるマイナスの誤差が大きくなり、Xが大きいほど過剰な計数によるプラスの誤差が大きくなるが、μに近い波高弁別閾値(すなわちX=0付近)ではパイルアップによる計数誤差を生じ難いことが解る。

0029

また、最適な波高弁別閾値を実測値に基づいて設定するため、実施例1について、最もパイルアップしていない状況(加速器電流は5.7μA、波高分布スペクトルは図2)に対する、最もパイルアップしている状況(加速器電流は379.6μA、波高分布スペクトルは図3)の計数誤差を解析した。図2及び図3のそれぞれの第1ピークについて、ガウス関数をフィッティングしてμ及びσを求め、得られたμ及びσを基に波高弁別閾値μ+Xσを設定し、前記シミュレーションと同様の方法で計数誤差を求めた結果を図10に示す(ただし、図2および図3の波高分布スペクトルを得た際の線量率差を考慮する必要があるため、線量率差は加速器電流差と同じ傾向を示すものと見做し、図2および図3の計数を各加速器電流値によって規格化した)。また、図3の波高分布スペクトルの解析により、該波高分布スペクトルのパイルアップ率は25%程度であることが判った。図10には、パイルアップ率を25%とした場合の計数誤差のシミュレーション値を併せて示す。

0030

図10に示したパイルアップによる計数誤差は、シミュレーションと実測で多少のずれが生じている。これは、シミュレーションではパイルアップによる波高値の小値化を考慮していないのに対し、実測ではパイルアップによる波高値の小値化が生じているためと考えられる。このように、シミュレーションと実測では多少のずれを生じるものの、実測においても、μに近い波高弁別閾値(すなわちX=0付近)はパイルアップによる計数ロスの影響を受け難いことが解る。また、実測において波高値の小値化が生じる場合には、波高弁別閾値をμよりもやや高めに設定することが最適であることが分かる。

0031

ここで、図11を用いて、波高弁別閾値をμ付近に設定することによってパイルアップによる計数誤差を小さくできる原理を説明する。

0032

まず、図11(a)を用いて、パルス2個のパイルアップのみを考慮して説明する。パイルアップしていない第1ピークの合計計数をNs、パルス2個がパイルアップした第2ピークの合計計数をNdとした場合、放射線検出素子が検出した放射線の数はNs+2Ndであることが理論的に言える。

0033

ここで、一般には、全ての事象を計数できるように例えばT1の辺りに閾値を設定するが、該T1を波高弁別閾値とした場合に得られる閾値以上の計数はNs+Ndとなり、理論値Ns+2Ndと比較するとNdのマイナス誤差を生じ、特にパイルアップが顕著に生じてNdが増大すると、計数誤差も甚大となる。これに対して、本発明の計数方法は、第1ピークのμの近傍に波高弁別閾値を設定することによって、計数誤差を低減することを特徴とする。例えば、第1ピークのμ(T2)を波高弁別閾値とした場合に得られる閾値以上の計数は1/2Ns+Ndとなり、理論値Ns+2Ndと比較するとちょうど半分を計数することになる。換言すれば、第1ピークのμを波高弁別閾値として得られた計数を2倍すれば、理論値通りの計数を得ることができる。このとき、上記第1ピークのμを波高弁別閾値として得られる計数は、パイルアップの程度にかかわらず、常に理論値の半分であるため、本発明の計数方法によれば、パイルアップによる計数誤差を生じない。

0034

次に、図11(b)を用いて、パルス2個のパイルアップとパルス3個のパイルアップを考慮して説明する。パイルアップしていない第1ピークの合計計数をNs、パルス2個がパイルアップした第2ピークの合計計数をNd、パルス3個がパイルアップした第3ピークの合計計数をNtとした場合、放射線検出素子が検出した放射線の数はNs+2Nd+3Ntであることが理論的に言える。全ての事象を計数できるT1を波高弁別閾値とした場合に得られる閾値以上の計数はNs+Nd+Ntとなり、理論値Ns+2Nd+3Ntと比較するとNd+2Ntのマイナス誤差を生じてしまう。一方、第1ピークのμ(T2)を波高弁別閾値とした場合に得られる閾値以上の計数は1/2Ns+Nd+Ntとなる。理論値の半分の値である1/2Ns+Nd+3/2Ntと比較すると1/2Ntのマイナス誤差が生じてしまうが、閾値をT1とした場合よりも誤差を格段に小さくできる。

0035

μに近い波高弁別閾値を設定することによって、パイルアップによる計数誤差を低減する本発明の計数方法は、上記説明した理論に基づいてなされたものであって、図9に示したシミュレーション結果も本発明の妥当性を示すものである。

0036

なお、前述のシミュレーションはパルス2個のパイルアップとパルス3個のパイルアップを考慮したものであり、閾値μ+0σにおいて若干のマイナス誤差が生じていることもこの理論と一致している。なお、このマイナス誤差が生じる原因である第3ピークの計数Ntは、第1ピークの計数Nsより十分に小さいため、パイルアップによって生じる計数誤差への寄与度が小さい結果となっている。さらに、パルス4個以上がパイルアップした第4、第5、第6…ピークが観測される可能性もあるが、パイルアップによって生じる計数誤差への寄与度は第3ピークよりさらに小さくなるため、ほとんどの用途において問題にはならない。

0037

本発明によれば、波高弁別閾値を設定し、該波高弁別閾値を超える信号の頻度を計数する方法であって、計数の目的成分が波高分布スペクトルでピークを示す場合において、前記ピークについてガウス関数をフィッティングして求められる(μ−0.4σ)〜(μ+0.6σ)の範囲から選ばれる任意の値を前記波高弁別閾値とする計数方法を採用することにより、パイルアップによる計数精度の低下を抑えることができる。

0038

計数の目的成分とは、計数の対象とする事象のことであり、特に限定されるものではない。例えば、中性子の線量率や積算線量などを提供できる中性子検出装置であれば、中性子の入射事象が計数の目的成分となる。放射線の種類はX線α線、γ線、中性子など多種多様であるが、2種類以上の放射線を検出する放射線検出装置でも良く、その際に本発明の波高弁別閾値を適用するのは、
検出する放射線のうち何れか1種類についてでも良く、2種類以上の放射線についてでも良い。

0039

さらに、計数の目的成分とは、放射線の入射事象に限定されるものではなく、紫外線可視光線赤外線マイクロ波などの電磁波を検出する場合にも適用でき、様々な分野への応用が可能である。

0040

本発明の計数方法は、計数の目的成分が波高分布スペクトルでピークを示す場合に適用できる。例えば、中性子検出装置について、横軸に波高値をとり、縦軸に各波高値を示した事象の頻度を示した波高分布スペクトルにおいて、中性子を検出した事象が波高分布スペクトルでピークを示せば、当該ピークについてガウス関数をフィッティングして求められる(μ−0.4σ)〜(μ+0.6σ)の範囲から選ばれる任意の値を前記閾値とし、閾値を越えた事象を計数することにより適用できる。中性子を検出した事象が波高分布スペクトルでピークを示さない場合には、本発明の計数方法は適用できない。

0041

中性子の検出によってピークを形成できる形態の一例として、特許文献5に記載されたEu:LiCaAlF6結晶(中性子シンチレータ)と光検出器と波高弁別回路を組み合わせる方法がある。

0042

波高分布ピークの形状については特に限定されず、およそガウス分布に従った形状であれば問題なく本発明の効果が得られる。後述の方法によりガウス関数をフィッティングして得られるμと、波高分布スペクトルで計数の目的成分が示すピークにおいて、最大の計数を示す波高値Pが一致しているほど高い計数精度が期待できることは統計学的に当然のことであるが、0.9μ≦P≦1.1μの範囲で一致していれば、特に精度の良い計数が可能である。

0043

なお、前記ピークについてガウス関数をフィッティングする前に、波高分布スペクトルに対してベースライン補正ピーク分離スムージング等の処理を予め施しても良い。

0044

本発明の波高弁別閾値を決定するための基準となるμおよびσは、計数の目的成分によって示される波高分布ピークのうち、パイルアップしていない第1ピークについて式(1)のガウス関数をフィッティングすることにより求められる値であり、2個のパルスがパイルアップした第2ピークや3個のパルスがパイルアップした第3ピークについて求められる値とは無関係である。以下に記載するμ、σとは、前記第1ピークについて求められるμ、σのことである。

0045

ガウス関数をフィッティングする際に用いる波高分布スペクトルのデータ範囲は、波高分布スペクトルで計数の目的成分が示すピークにおいて、最大計数を示す波高値(以下、該波高値をPで表す)を基準として、0.75P〜1.25Pが好適であるが、計数の目的成分とは異なる成分によるノイズの計数がμ、σの解析値に影響する場合には、下限値及び/又は上限値を狭めても良い。逆に、μ、σの解析値に影響するノイズが無ければ、ガウス関数をフィッティングする際に用いるデータ範囲を広げても良い。例えば、ガウス関数をフィッティングする際に用いる波高分布スペクトルのデータ範囲を0.75P〜3Pとしても良い。ここで、第2ピークが現われる場合には、当該第2ピークの計数はフィッティングを行う上ではノイズとなるが、パイルアップによって現われる第2ピークの計数は第1ピークの計数よりも十分に小さいため、当該ノイズがμ、σの解析値に与える影響は限定的である。なお、ガウス関数のフィッティングには最小二乗法を用いることが好ましく、μ、σと併せて最大計数Nに関してもフィッティングする方が好ましい。

0046

前記説明から理解される通り、本発明の計数方法の本質は、μの近傍に波高弁別閾値を設定することによって、パイルアップによる計数誤差を低減することである。そして、上述のガウス関数をフィッティングして求められる(μ−0.4σ)〜(μ+0.6σ)の範囲から選ばれる任意の値を前記波高弁別閾値とする方法は、μの近傍に適切に波高弁別閾値を設定するための指標を与えるものである。

0047

本発明において、波高弁別閾値を設定するための回路の簡略化や解析時間の短縮等を目的として、ガウス関数をフィッティングする方法による解析を行わなくとも、例えば、以下に記載した方法によっても本発明に準ずる波高弁別閾値を決定できる。

0048

なお、以下に記載した方法によって決定されたいずれの波高弁別閾値も、ガウス関数をフィッティングすれば、該フィッティングから求められる(μ−0.4σ)〜(μ+0.6σ)の範囲に包含される。

0049

第1のガウス関数をフィッティングする方法による解析を必要としない波高弁別閾値の決定方法は、波高値Pにおいて最大計数N’を示す波高分布ピークについて、下記式(2)によって求められる計数nに最も近い計数を示す波高値を波高弁別閾値とする方法である。

0050

式(2)は、式(1)のガウス関数における任意の波高値χに波高弁別閾値μ+Xσを代入して、計数nをXの関数として表したものである。すなわち、波高弁別閾値をP以下とする場合には、−0.4〜0.0の範囲から選ばれる任意の値をXとし、式(2)によって求められる計数nに最も近い計数を示しているP以下の波高値を波高弁別閾値とすれば良く、波高弁別閾値をP以上とする場合には、0.0〜0.6の範囲から選ばれる任意の値をXとし、式(2)によって求められる計数nに最も近い計数を示しているP以上の波高値を波高弁別閾値とすれば良い。

0051

第2のガウス関数をフィッティングする方法による解析を必要としない波高弁別閾値の決定方法は、標準偏差σに代わって、半値幅FWHMを基準として波高弁別閾値を決定する方法である。ガウス分布において、μと波高値Pは同じであり、標準偏差σと半値幅FWHMの間には下記式(3)の関係がある。

0052

したがって、(μ−0.4σ)〜(μ+0.6σ)の範囲は、(P−0.28FWHM)〜(P+0.42FWHM)と同等の範囲であるため、当該波高値Pと半値幅FWHMを解析することによっても本発明に準ずる波高弁別閾値を決定できる。

0053

第3のガウスフィッティングによる解析を必要としない波高弁別閾値の決定方法は、波高分布ピークの最大計数を示す波高値Pを波高分布スペクトルの見た目から判断して、該波高値P付近の波高値を波高弁別閾値とする方法である。

0054

以上、第1〜第3のガウスフィッティングによる解析を必要としない波高弁別閾値の決定方法を例示したが、これらとも異なる方法によって波高弁別閾値を決定しても良く、何らかの方法により決定した波高弁別閾値が、ガウスフィッティングにより解析した(μ−0.4σ)〜(μ+0.6σ)の範囲に包含されていれば、本発明の効果が発揮される。

0055

本発明の計数方法において、計数の目的成分よりも高波高値側のノイズを除去する目的で、本発明の波高弁別閾値(TA)と併せて、高波高値側に他の波高弁別閾値(TB)を設けて、TA以上かつTB以下のパルスを計数しても良い。その場合、第2ピークおよび第3ピークの計数をロスさせないための閾値TBは、好ましくは3μ以上であり、さらに好ましくは5μ以上である。また、第1目的成分を計数するための波高弁別閾値を設定すると共に、第2目的成分を計数するための波高弁別閾値を別に設定しても良い。

0056

本発明によれば、(μ−0.4σ)〜(μ+0.6σ)の範囲から選ばれる任意の値を波高弁別閾値として設定することにより、パイルアップによる計数精度の低下を抑えることができる。図10に示したパイルアップによる計数誤差の実測値によれば、当該波高弁別閾値を超えたパルス信号を計数する場合、パイルアップによって生じる計数誤差をおよそ±10%以下に抑えることができ、斯様な計数誤差であればほとんどの用途において、精度の高い計測を実現できる。

0057

ただし、パイルアップの頻度や前記パイルアップによる波高値の小値化の程度によっては±10%を超える誤差を生じる可能性もあるが、図9を用いて説明した理論によれば、本発明の範囲を逸脱した波高弁別閾値とする場合に較べて格段に優れた計数精度が実現できる。図10に示したパイルアップによる計数誤差の実測値によれば、波高弁別閾値を(μ+0.3σ)より低い波高値とする場合、波高弁別閾値を低くするほどパイルアップによる計数ロスが影響してマイナス側に計数誤差が拡大しやすく、波高弁別閾値を(μ+0.3σ)より高い波高値とする場合、波高弁別閾値を高くするほど第2ピークや第3ピークの計数増が影響してプラス側に計数誤差が拡大しやすい。

0058

より好ましい波高弁別閾値は(μ+0.0σ)〜(μ+0.5σ)の範囲から選ばれる任意の値であり、さらに好ましい波高弁別閾値は(μ+0.2σ)〜(μ+0.4σ)の範囲から選ばれる任意の値であり、それぞれ約±5%、±3%の計数誤差に抑えられる。

0059

本発明の計数方法は、シンチレータ3と光検出器4と波高弁別回路2を組み合わせた放射線検出装置において好適に採用できる。

0060

本発明は、シンチレータ3と光検出器4と波高弁別回路2を組み合わせて用いる放射線検出装置であって、前記波高弁別回路2は、前記光検出器4の信号を増幅する増幅器と、前記増幅器のアナログ信号出力デジタル信号に変換するAD変換器と、前記AD変換器のデジタル信号出力信号処理するデジタルデータ処理装置と、を備える波高弁別回路であって、当該波高弁別回路において前記計数方法により信号処理する放射線検出装置を提供する。

0061

前記波高弁別回路2としては、特許文献2や特許文献3に記載されたように、前記光検出器の信号を増幅する増幅器と、前記増幅器のアナログ信号出力をデジタル信号に変換するAD変換器と、前記AD変換器のデジタル信号出力を信号処理するデジタルデータ処理装置と、を備えるものが好ましい。デジタルデータ処理によってパルス信号を読み取る波高弁別回路であれば、アナログデータ処理によってパルス信号を読み取る波高弁別回路に較べて、前記パイルアップによる波高値の小値化を軽減するための回路構成を低コストで実現できると共に、波高値の補正処理などが容易に可能となる。パイルアップによる波高値の小値化を軽減することによって、本発明の効果をより高い確度で得ることができる。

0062

本発明において、前記デジタルデータ処理装置には、所定の時間間隔で波高分布スペクトルを作成し、作成した波高分布スペクトルにおいて計数の目的成分が示すピークについてガウス関数をフィッティングし、求められたμおよびσを基準とした波高弁別閾値を逐次設定する機能を実装することが好ましい。かかる機能を実装することによって、前記パイルアップによる波高値の小値化に追従して波高弁別閾値を自動更新することができ、該小値化に起因する計数誤差の増大を防ぐことができる。

0063

なお、パイルアップによる波高値の小値化が小さい波高弁別回路を用いる場合であれば、ガウス関数をフィッティングする機能や波高弁別閾値を逐次設定する機能を実装せず、本発明に準ずる波高弁別閾値を予め解析し、計数の開始から終了まで該波高弁別閾値に基づいて計数しても良い。

0064

増幅器は、前置増幅器プリアンプ)や波形整形増幅器(シェイピングアンプ)などが適用でき、これらの組合せであっても良い。また、微分回路を組み合せた回路構成であっても良い。特許文献2や特許文献3に記載された回路構成の他には、特許文献6や特許文献7に記載された回路構成なども好適である。

0065

シンチレータ3は、Eu、Ce、Tl、Na等の賦活剤を含むLiCaAlF6結晶、LiSrAlF6結晶、LiF/CaF2共晶体、LiF/SaF2共晶体、NaI結晶、Bi4Ge3O12結晶、Gd3Al2Ga3O12結晶、CeF3結晶等の無機シンチレータ、また、アントラセンスチルベンジフェニルオキサゾール等の有機蛍光体からなる有機シンチレータ、また、前記有機蛍光体を含有するポリスチレンポリビニルトルエンポリエチレンテレフタレート等のプラスチックシンチレータ、また、前記有機蛍光体を含有するトルエンキシレン等の液体シンチレータ、また、ヘリウムアルゴンキセノンクリプトン等の気体シンチレータ等を用途に応じて何ら制限なく用いることができる。

0066

本発明において、シンチレータ3がLiCaxSr1−xAlF6結晶(xは0〜1)であることが好ましい。具体的には、EuやCeなどの添加物を賦活剤として含む、LiCaAlF6結晶やLiSrAlF6結晶を好適に用いることができる。これらのシンチレータ結晶は中性子シンチレータであり、当該シンチレータ結晶に含まれるLi−6は、中性子と反応してα線及びトリチウムを生じ、当該α線及びトリチウムによってシンチレータ結晶に4.8MeVのエネルギーを与える。そして、当該シンチレータ結晶に含まれる賦活剤によって、与えられたエネルギーに相当する光が発せられる。該LiCaAlF6結晶や該LiSrAlF6結晶は、中性子を検出した事象によって、0.95μ≦P≦1.05μの精度でガウス分布と一致するピークを示すことができるため、本発明の放射線検出装置に用いるシンチレータとして特に好適である。

0067

本発明の実施例で用いたEu:LiCaAlF6結晶等の、Euを賦活剤として含むLiCaxSr1−xAlF6結晶は、特に発光量が高く、信号/雑音比の高い計測が可能なため本発明に好適に用いることができる。なお、該Euを賦活剤として含むLiCaxSr1−xAlF6結晶は、蛍光寿命が1.6μsecであり、一般的なシンチレータ材料の中では蛍光寿命が長いため、パイルアップを生じやすいが、本発明の計数方法を適用することによって、パイルアップを生じても精度良く計数することが可能となる。

0068

一方、Ceを賦活剤として含むLiCaxSr1−xAlF6結晶は、特に蛍光寿命が数十nsecと短いため本発明に好適に用いることができる。当該Ce:LiCaAlF6結晶やCe:LiSrAlF6結晶等のCeを賦活剤として含むLiCaxSr1−xAlF6結晶は、本来蛍光寿命が短く、パイルアップを起こしにくいため、本発明の計数方法を適用すれば極めて高い計数率での計測を実現できる。

0069

Li−6を含む中性子シンチレータの中性子感度の調整は、シンチレータサイズの調整、及びLi−6同位体比の調整によって可能である。Liの安定な同位体であるLi−6、Li−7の比を調整したものとしては、Li−6を濃縮したもの、天然比のもの、Li−7を濃縮したものがあり、Li−6同位体比が高いほど中性子感度が高くなる。また、これらの混合によって中性子感度を調整しても良い。上記のようにして中性子感度を調整することによって、計数の対象とする線量率に応じた放射線検出装置を提供できる。

0070

本発明において、シンチレータ3の光を光検出器4まで伝搬する手段は特に限定されず、シンチレータ3と光検出器4を図4(b)に示したように直接的に接続しても良く、図12に示したように光ファイバ5などのライトガイドを用いて間接的に接続しても良い。シンチレータ3と光検出器4を直接的に接続する場合には、光検出器4をシンチレータ3と共に放射線場曝すことになるため、光検出器4に放射線が入射することにより観測されるノイズの影響で計数精度が低下したり、光検出器4が故障したりする可能性がある。そのため、高線量率環境下で放射線を計数する場合には、計数の対象とする高線量率環境下にシンチレータ3を設置し、光検出器4を充分に線量率が低い遠方に設置し、該シンチレータ3と光検出器4を光ファイバ5などのライトガイドを用いて間接的に接続することが好ましい。

0071

高線量率となる放射線場としてはがんの放射線治療装置が挙げられ、中でも、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)用の放射線治療装置では、中性子線量率が1×109n/cm2/sec程度と非常に高くなることが知られている。従来は、原子炉中性子を利用したBNCT治療が行われていたが、近年では、サイクロトロン加速器や静電加速器によっても高線量率の中性子が得られるようになっており、病院にも設置可能な加速器BNCT治療装置が開発されている。

0072

本発明の計数方法および放射線検出装置は、様々な放射線場で好適に利用可能であり、前記加速器中性子の検出に特に適している。特に、非常に高い中性子線量率となるホウ素中性子捕捉療法用の中性子の検出に適している。

0073

ホウ素中性子捕捉療法用の中性子を検出する場合において、本発明を実施する最良の形態は、中性子シンチレータ3と光検出器4と波高弁別回路2を組み合わせた放射線検出装置であって、中性子シンチレータ3としてEu:LiCaAlF6結晶、Ce:LiCaAlF6結晶、Eu:LiSrAlF6結晶、Ce:LiSrAlF6結晶の何れかを用い、当該中性子シンチレータ3と光検出器4の間を光ファイバ5によって接続して成るものである。

0074

かかる態様において、中性子シンチレータ3から光ファイバ5への光の伝搬効率を高めるため、中性子シンチレータ3と光ファイバ5の先端を光学接着することが好ましい。光学接着する方法は特に制限されないが、シンチレータ3の発光波長における透過率が良く、且つ、耐放射線性が良い有機接着剤無機接着剤を用いる方法、又は、光ファイバ5の先端部を一時的に融解させてシンチレータ3を融着する方法が好ましい。また、中性子シンチレータ3から光ファイバ5への集光効率を高めるため、中性子シンチレータ3の周囲を反射材で覆うことが好ましい。反射材は特に制限されないが、テトラフルオロエチレンポリエチレン酸化チタン硫酸バリウムなどの白色物質が好ましい。なお、光ファイバ5は石英ファイバプラスチックファイバなどを用いることができ、開口数(NA)が大きく、伝送損失が小さいものが好ましい。具体的には、NA0.45以上、伝送損失200dB/km以下が好ましい。NAが大きく、伝送損失が小さいものを用いることによって、光検出器4まで十分な光量を伝搬させることができれば、中性子を検出した事象によって、0.95μ≦P≦1.05μの精度でガウス分布と一致するピークが形成されるため、特に好ましい。

0075

前記の形態であれば、光検出器4を高線量率環境下に配置する必要がなく、波高分布スペクトルにおいて、シンチレータ3が中性子を検出した事象として認められるピークを形成することが可能である。また、当該ピークについて、ガウス関数をフィッティングして求められる(μ−0.4σ)〜(μ+0.6σ)の範囲から選ばれる任意の値を波高弁別閾値とし、当該波高弁別閾値を超えた事象を計数すれば、パイルアップによる計数精度の低下が小さく、低線量率から高線量率まで広い範囲にわたって精度良く中性子を計数可能な放射線検出装置を提供できる。

0076

以下、具体的な実験例を挙げて本発明の実施態様をより詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。

0077

実施例1
まず、中性子シンチレータ3と光電子増倍管4と波高弁別回路2を組み合わせた中性子検出装置を下記の通り製作した。製作した中性子検出装置は図12に概略図を示すものである。

0078

中性子シンチレータ3は、Li−6同位体比を95%に濃縮したLi原料を用いて製造されたEu:LiCaAlF6結晶を用いた。0.6mm×0.6mm×0.6mmに加工したEu:LiCaAlF6結晶を、コア径φ1mm・長さ10mの石英光ファイバ5の先端(逆端を後端とする)へエポキシ接着剤を用いて光学接着した。石英光ファイバ5は、NAが0.48であり、Eu:LiCaAlF6結晶の発光波長(370nm)における伝送損失が100dB/kmのものを用いた。なお、Eu:LiCaAlF6結晶3と石英光ファイバ5との光学接着面は、それぞれ光学研磨を施した。さらに、Eu:LiCaAlF6結晶3を硫酸バリウムからなる反射材で覆うことにより光ファイバへの集光効率改善を図り、光ファイバ5を遮光材料被覆することにより室内光が入射しないようにした。

0079

Eu:LiCaAlF6結晶3を接着した石英光ファイバ5の後端を光電子増倍管4へ光学的に接続した。光電子増倍管4は波高弁別回路2へ電気的に接続した。

0080

波高弁別回路2は、光電子増倍管の信号を増幅する増幅器と、増幅器のアナログ信号出力をデジタル信号に変換するAD変換器と、AD変換器のデジタル信号出力を信号処理するデジタルデータ処理装置と、デジタルデータ処理の結果を表示する表示装置と、を備えるものを用いた。

0081

表示装置は、コンピュータとソフトウェア、モニタを備えるものを用いた。モニタには、波高分布スペクトルや波高弁別閾値を超えたパルスの計数値などを表示できるようにした。

0082

なお、前記デジタルデータ処理装置には、10秒毎に波高分布スペクトルを作成し、作成した波高分布スペクトルにおいて計数の目的成分が示すピークについてガウス関数をフィッティングし、求められたμおよびσを基準とした波高弁別閾値を逐次設定する機能を実装した。本実施例では、パイルアップの頻度が高まるに連れ波高分布ピークが徐々に低波高値側へシフトし、パイルアップの頻度が最も多い状況では、パイルアップの頻度が最も少ない状況に対してμが約14%低下したが、波高弁別閾値はその時点でのピーク位置に合わせて自動更新されるため、波高値の小値化による計数ロスは軽微であった。

0083

次に、製作した中性子検出装置を用いて、下記に記載した方法の通り、加速器中性子を計数し、パイルアップが計数値に与えた誤差を解析した。

0084

静電加速器を用いた中性子発生装置中性子照射口付近に、中性子減速材としてポリエチレンブロックを配置し、当該ポリエチレンブロックに設けた挿入孔へEu:LiCaAlF6結晶3を接着した石英光ファイバ5の先端を挿入して固定した。光電子増倍管4および波高弁別回路2は、石英光ファイバ5を伸ばすことにより、中性子照射口から遠ざけて配置した。

0085

静電加速器によって中性子を発生させ、中性子検出装置によって当該中性子を検出した。検出した中性子のパルスを解析し、波高弁別閾値を超えたパルスを1秒毎に計数して単位時間あたりの中性子計数率[cps]を得た。実施例1における波高弁別閾値は、(μ+0.3σ)とした。なお、得られた中性子計数率[cps]に中性子線量率へ換算するための係数を乗じることにより、中性子線量率[n/cm2/sec]を求めることができる。該加速器の最大出力における該検出素子を配置させた環境の中性子線量率は、約1×107n/cm2/secであった。

0086

実施例1において得られた計数率[cps]の経時変化図13に示す(左縦軸)。図13には、加速器の電流値[μA]も併せて示しており(右縦軸)、当該電流値は、実施例1における加速器出力履歴を現わしている。図13の右縦軸スケールは、6kcps以下を示している部分の中性子計数率について、加速器電流値が中性子計数率とグラフ上で重なるように調整している。なお、加速器電流値が最も低い約5μAの際の波高分布スペクトルは、図2のようにパイルアップが少ないものであり、約45μA、約380μAの際の波高分布スペクトルはそれぞれ図1図3のようなものであり、加速器電流値が高いほど、即ち中性子線量率が高いほどパイルアップの頻度が増えることがわかる。

0087

図13のデータについて、加速器電流値が安定している期間毎に、加速器電流値と中性子計数率の平均値を算出して比較したグラフを図14に示す。図14回帰直線は、中性子計数率が低くパイルアップの影響が小さい部分(約1kcps〜5kcpsの4点)から求めたものである。回帰直線から期待される中性子計数率に対する実際に得られた中性子計数率の誤差は、表1に示した通りであり、最大で−2.1%の誤差しかなく良好な結果だった。

0088

比較例1
実施例1と同一の中性子検出装置を用いて、波高弁別閾値を(μ−1.0σ)とした以外は、実施例1と同様にして加速器中性子を計数した。

0089

比較例1において得られた中性子計数率および加速器電流値について、実施例1と同様の方法で解析した結果を図15および図16に示す。図15において、中性子計数率が40kcpsを超えた部分では、中性子計数率が加速器電流値と較べて顕著に低くなっているが、これはパイルアップによって計数ロスが生じた結果を示すものである。各加速器電流値における中性子計数率の回帰直線との差は、表1に示した通りであり、−10%を超える計数誤差を生じていた。

0090

比較例2
実施例1と同一の中性子検出装置を用いて、波高弁別閾値を(μ+0.7σ)とした以外は、実施例1と同様にして加速器中性子を計数した。

0091

比較例2において得られた中性子計数率および加速器電流値について、実施例1と同様の方法で解析した結果を図17および図18に示す。図17において、中性子計数率が15kcpsを超えた部分では、中性子計数率が加速器電流値と較べて顕著に高くなっているが、これはパイルアップによる第2ピークや第3ピークの計数増が影響した結果を示すものである。各加速器電流値における中性子計数率の回帰直線との差は、表1に示した通りであり、+10%を超える計数誤差を生じていた。

実施例

0092

以上の実施例では、パイルアップの頻度が高くなる高計数率条件下においても、本発明の計数方法を採用することによって、パイルアップによる計数精度の低下を抑えることが可能である結果を示した。Li−6同位体比を天然比とし、サイズを0.3mm×0.3mm×0.2mmへ小型化したEu:LiCaAlF6結晶を中性子シンチレータ3として用いれば、本実施例で製作した中性子検出装置の1/100以下の中性子感度とできるため、該Eu:LiCaAlF6結晶を用いた中性子検出装置であれば、BNCT治療における中性子線量率1×109n/cm2/secにおいても精度良く中性子の計数が可能である。

0093

1:放射線検出素子
2:波高弁別回路
3:シンチレータ
4:光検出器
5:光ファイバ

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