図面 (/)

技術 ホットスタンプ用亜鉛めっき鋼板およびその製造方法

出願人 株式会社神戸製鋼所
発明者 吉田貴敏鵜川洋輔
出願日 2018年3月2日 (2年2ヶ月経過) 出願番号 2018-037132
公開日 2019年9月12日 (7ヶ月経過) 公開番号 2019-151883
状態 未査定
技術分野 薄鋼板の熱処理 熱処理 物品の熱処理 溶融金属による被覆
主要キーワード 調整帯 保持帯 スクラバー処理 アミン系有機化合物 SS製 強度バラツキ アレニウス式 プレス成型性
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2019年9月12日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (0)

図面はありません

課題

不めっき合金化ムラといった外観不良の発生が抑制されるとともに、安定した品質ホットスタンプ成形品が得られる亜鉛めっき鋼板を提供すること。

解決手段

ホットスタンプ用亜鉛めっき鋼板は、素地鋼板と前記素地鋼板の表面に設けられためっき層とを備え、前記素地鋼板は、質量%で、C:0.10〜0.5%、Si:0.7〜2.5%、Mn:1.0〜3%、およびAl:0.01〜0.5%を含有し、残部が鉄および不可避的不純物であり、前記素地鋼板は、内部に厚さが1μm以上のSiおよびMnの少なくとも一つを含む酸化物からなる内部酸化層と、前記めっき層との界面から前記素地鋼板の内部方向に向かって厚さが20μm以下の脱炭層と、を有する。

概要

背景

自動車用部品は、一般に鋼板プレス成形して製造される。自動車部品用の鋼板としては、熱延後、酸洗された鋼板(以下、「熱延酸洗鋼板」という。)および冷延鋼板が用いられる。また、耐食性向上の観点から、これらの鋼板にめっきを施しためっき鋼板も使用される。めっき鋼板は、主に、亜鉛(Zn)系めっき鋼板アルミニウム(Al)系めっき鋼板に大別されるが、耐食性などを考慮し、亜鉛系めっき鋼板汎用されている。

近年では、自動車用部品の製造において高強度化と複雑な形状の両立が可能な技術として、鋼板(熱延酸洗鋼板、冷延鋼板、またはこれらを素地鋼板としためっき鋼板)を高温プレスして製造するホットスタンプが提案されている。ホットスタンプは、熱間成形ホットプレスなどとも呼ばれており、上記鋼板を、オーステナイトフェライト温度域以上(Ac1変態点以上)の高温に加熱し、プレス加工する方法である。ホットスタンプによれば、高強度でありながら、複雑な形状の自動車用部品が得られる。以下、鋼板のホットスタンプにより得られる部品を「ホットスタンプ成形品」ともいう。

ホットスタンプに用いられる鋼板として、Si、Mn等の元素を含有し、焼入れ性が良好であり、プレス時の生産性が比較的高いものが既に知られている。

しかし、この鋼板を溶融亜鉛めっき鋼板の素地鋼板として使用した場合、不めっき部分やめっきを合金化した際の合金化ムラ等の外観不良が発生するという問題がある。

これは、溶融めっきラインで素地鋼板にめっきを施す前に還元焼鈍を行った際に、SiおよびMnが拡散し、鋼板表面で濃化することに起因する。一般に鋼中に添加される元素のうち、SiおよびMnはFeに比べて酸化しやすい元素(易酸化性元素)であるため、濃化したSiおよびMnは選択的に酸化され、鋼板の表面にSiおよびMnの酸化物からなる皮膜が形成される。Si、Mn、およびこれらの酸化物は、溶融亜鉛との濡れ性が悪いため、SiおよびMnが表面で濃化した素地鋼板にめっきを施した場合、上記外観不良が発生する。

このような外観不良の発生を抑制とする技術として、特許文献1ではSi、Mn等の易酸化性元素が含まれるホットスタンプ用亜鉛めっき鋼板の素地鋼板を、Si、Mn等が表面に酸化物として析出しない温度域、または析出しても表面での濃化がごくわずかとなる温度域で還元焼鈍する技術が開示されている。

また、特許文献2では、C:0.1〜0.5質量%、Si:0.05〜0.5質量%、Mn:0.5〜3%をそれぞれ含有する鋼板に、亜鉛系めっきを施すことで、プレス成型性および塗装後の耐食性に優れた高強度ホットスタンプ鋼板を得る技術が開示されている。特許文献2に記載の鋼板では、不めっきや合金化ムラの原因となる鋼中のSi含有量を0.5質量%以下とすることで、鋼板表面におけるめっき性を確保し、合金化ムラの発生を抑制している。

特許文献3では、鋼板表面に厚さが10〜200μmの脱炭層を形成することによって、鋼板表面におけるクラックの発生を抑制するとともに、当該鋼板を用いて作製した亜鉛めっき鋼板において溶融金属脆化(Liquid Metal Embrittlement、LME)による粒界割れの発生を抑制する技術が開示されている。

概要

不めっきや合金化ムラといった外観不良の発生が抑制されるとともに、安定した品質のホットスタンプ成形品が得られる亜鉛めっき鋼板を提供すること。ホットスタンプ用亜鉛めっき鋼板は、素地鋼板と前記素地鋼板の表面に設けられためっき層とを備え、前記素地鋼板は、質量%で、C:0.10〜0.5%、Si:0.7〜2.5%、Mn:1.0〜3%、およびAl:0.01〜0.5%を含有し、残部が鉄および不可避的不純物であり、前記素地鋼板は、内部に厚さが1μm以上のSiおよびMnの少なくとも一つを含む酸化物からなる内部酸化層と、前記めっき層との界面から前記素地鋼板の内部方向に向かって厚さが20μm以下の脱炭層と、を有する。なし

目的

本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、外観性状がより良好であるとともに、安定した品質のホットスタンプ成形品が得られる亜鉛めっき鋼板を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

この技術が所属する分野

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

素地鋼板と前記素地鋼板の表面に設けられためっき層とを備え、前記素地鋼板は、質量%で、C:0.10〜0.5%、Si:0.7〜2.5%、Mn:1.0〜3%、およびAl:0.01〜0.5%を含有し、残部が鉄および不可避的不純物であり、前記素地鋼板は、内部に厚さが1μm以上のSiおよびMnの少なくとも一つの酸化物を含む内部酸化層と、前記めっき層との界面から前記素地鋼板の内部方向に向かって厚さが20μm以下の脱炭層と、を有することを特徴とするホットスタンプ亜鉛めっき鋼板

請求項2

前記素地鋼板は、さらに、Bを0.005%以下(0%を含まない)含むことを特徴とする請求項1に記載のホットスタンプ用亜鉛めっき鋼板。

請求項3

請求項1または2に記載のホットスタンプ用亜鉛めっき鋼板の製造方法であって、請求項1または2に記載の成分組成を満たす冷延鋼板を、露点が−20〜0℃の還元性雰囲気にて、500〜720℃で90〜400秒保持した後、めっきを施すことを特徴とするホットスタンプ用亜鉛めっき鋼板の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、ホットスタンプ亜鉛めっき鋼板とその製造方法に関する。

背景技術

0002

自動車用部品は、一般に鋼板プレス成形して製造される。自動車部品用の鋼板としては、熱延後、酸洗された鋼板(以下、「熱延酸洗鋼板」という。)および冷延鋼板が用いられる。また、耐食性向上の観点から、これらの鋼板にめっきを施しためっき鋼板も使用される。めっき鋼板は、主に、亜鉛(Zn)系めっき鋼板アルミニウム(Al)系めっき鋼板に大別されるが、耐食性などを考慮し、亜鉛系めっき鋼板汎用されている。

0003

近年では、自動車用部品の製造において高強度化と複雑な形状の両立が可能な技術として、鋼板(熱延酸洗鋼板、冷延鋼板、またはこれらを素地鋼板としためっき鋼板)を高温プレスして製造するホットスタンプが提案されている。ホットスタンプは、熱間成形ホットプレスなどとも呼ばれており、上記鋼板を、オーステナイトフェライト温度域以上(Ac1変態点以上)の高温に加熱し、プレス加工する方法である。ホットスタンプによれば、高強度でありながら、複雑な形状の自動車用部品が得られる。以下、鋼板のホットスタンプにより得られる部品を「ホットスタンプ成形品」ともいう。

0004

ホットスタンプに用いられる鋼板として、Si、Mn等の元素を含有し、焼入れ性が良好であり、プレス時の生産性が比較的高いものが既に知られている。

0005

しかし、この鋼板を溶融亜鉛めっき鋼板の素地鋼板として使用した場合、不めっき部分やめっきを合金化した際の合金化ムラ等の外観不良が発生するという問題がある。

0006

これは、溶融めっきラインで素地鋼板にめっきを施す前に還元焼鈍を行った際に、SiおよびMnが拡散し、鋼板表面で濃化することに起因する。一般に鋼中に添加される元素のうち、SiおよびMnはFeに比べて酸化しやすい元素(易酸化性元素)であるため、濃化したSiおよびMnは選択的に酸化され、鋼板の表面にSiおよびMnの酸化物からなる皮膜が形成される。Si、Mn、およびこれらの酸化物は、溶融亜鉛との濡れ性が悪いため、SiおよびMnが表面で濃化した素地鋼板にめっきを施した場合、上記外観不良が発生する。

0007

このような外観不良の発生を抑制とする技術として、特許文献1ではSi、Mn等の易酸化性元素が含まれるホットスタンプ用亜鉛めっき鋼板の素地鋼板を、Si、Mn等が表面に酸化物として析出しない温度域、または析出しても表面での濃化がごくわずかとなる温度域で還元焼鈍する技術が開示されている。

0008

また、特許文献2では、C:0.1〜0.5質量%、Si:0.05〜0.5質量%、Mn:0.5〜3%をそれぞれ含有する鋼板に、亜鉛系めっきを施すことで、プレス成型性および塗装後の耐食性に優れた高強度ホットスタンプ鋼板を得る技術が開示されている。特許文献2に記載の鋼板では、不めっきや合金化ムラの原因となる鋼中のSi含有量を0.5質量%以下とすることで、鋼板表面におけるめっき性を確保し、合金化ムラの発生を抑制している。

0009

特許文献3では、鋼板表面に厚さが10〜200μmの脱炭層を形成することによって、鋼板表面におけるクラックの発生を抑制するとともに、当該鋼板を用いて作製した亜鉛めっき鋼板において溶融金属脆化(Liquid Metal Embrittlement、LME)による粒界割れの発生を抑制する技術が開示されている。

先行技術

0010

特開2014−159624号公報
特開2007−56307号公報
特表2013−513725号公報

発明が解決しようとする課題

0011

しかしながら、本願発明者らがさらに検討したところ、特許文献1に記載の鋼板には外観性状に若干の改善の余地があった。

0012

特許文献2に記載の鋼板には、ホットスタンプの徐冷工程において焼戻しが進行し、ホットスタンプ成形品の強度が低下するという問題がある。また、Si含有量が0.5%以下と少ないため、残留オーステナイトが生成されにくく、ホットスタンプ成形品において良好な延性が得られにくいという問題がある。

0013

特許文献3に記載の鋼板では、脱炭層が存在するため、鋼板表面の強度が不安定になるという問題がある。さらに、脱炭層を厚さが均一になるように形成することは困難であり、鋼板の幅方向および長手方向における材質の安定性欠けるという問題がある。

0014

本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、外観性状がより良好であるとともに、安定した品質のホットスタンプ成形品が得られる亜鉛めっき鋼板を提供することにある。

課題を解決するための手段

0015

本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の発明により達成されることを見出した。

0016

本発明の一局面に係るホットスタンプ用亜鉛めっき鋼板は、素地鋼板と前記素地鋼板の表面に設けられためっき層とを備え、前記素地鋼板は、質量%で、C:0.10〜0.5%、Si:0.7〜2.5%、Mn:1.0〜3%、およびAl:0.01〜0.5%を含有し、残部が鉄および不可避的不純物であり、前記素地鋼板は、内部に厚さが1μm以上のSiおよびMnの少なくとも一つを含む酸化物を含む内部酸化層と、前記めっき層との界面から前記素地鋼板の内部方向に向かって厚さが20μm以下の脱炭層と、を有することを特徴とする。

0017

このような構成により、不めっきや合金化ムラといった外観不良の発生がより抑制されたホットスタンプ用亜鉛めっき鋼板を得ることができる。

0018

上記構成において、前記素地鋼板は、さらに、Bを0.005%以下(0%を含まない)含んでいてもよい。これにより、素地鋼板の焼入れ性を高め、ホットスタンプ用亜鉛めっき鋼板の強度を高めることができる。

0019

また、本発明の他の一局面に係るホットスタンプ用亜鉛めっき鋼板の製造方法は、前記ホットスタンプ用亜鉛めっき鋼板の製造方法であって、前記ホットスタンプ用亜鉛めっき鋼板の成分組成を満たす冷延鋼板を、露点が−20〜0℃の還元性雰囲気にて、500〜720℃で90〜400秒保持した後、めっきを施すことを特徴とする。

0020

このような構成により、上記ホットスタンプ用亜鉛めっき鋼板を得ることができる。

発明の効果

0021

本発明によれば、外観性状がより良好なホットスタンプ用亜鉛めっき鋼板を提供することができる。本発明のホットスタンプ用亜鉛めっき鋼板にホットスタンプを適用することにより、安定した品質のホットスタンプ成形品を得ることができる。

0022

また、本発明によれば、ホットスタンプ用亜鉛めっき鋼板を安定して得ることができる。

0023

特許文献1に記載のホットスタンプ用の鋼板を合金化溶融亜鉛めっき鋼板の素地鋼板として用いた場合、まれにではあるが合金化ムラが生じることがある。本発明者らは、その理由について検討したところ、当該鋼板はSi含有量が高く、表面および表面近傍に固溶Siが存在するため、めっきを施した後で合金化を行う際に鋼板側からめっき層側へのFeの拡散が抑制されることが原因であることを見出した。

0024

また、固溶Siに起因する合金化ムラの発生を抑制する方法について検討を重ねた。その結果、鋼板の還元焼鈍時に炉内の雰囲気水蒸気を添加すること、すなわち高露点雰囲気下で還元焼鈍することにより、鋼板の表面および表面近傍において、合金化ムラの原因である固溶Siが減少することを見出した。この固溶Siの減少は、Si、Mnが鋼板の内部で酸化され、内部酸化層を形成することによるものであり、このとき鋼板の表面ではSi、Mnの酸化物を含む酸化皮膜は形成されない。

0025

しかし、高露点雰囲気下で焼鈍を実施すると、鋼板の表面および表面近傍に炭素含有量が少なく、比較的引張強度に劣る層(以下「脱炭層」という。)が形成される。脱炭層は、炉内の水蒸気が鋼板の表面および表面近傍の炭素(C)原子と反応し、一酸化炭素(CO)が生成することにより形成される。

0026

本発明者らは脱炭層についても検討し、その結果、脱炭層を所定の厚さ以下とすることにより、亜鉛めっき鋼板およびこれを用いて製造したホットスタンプ成形品の強度に脱炭層が及ぼす影響を抑制できることを見出した。

0027

本発明者らは、これらの知見に基づき本発明を完成した。

0028

以下では、溶融亜鉛めっき鋼板(GI)と合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA)をまとめて「亜鉛めっき鋼板」ともいい、溶融亜鉛めっき層および合金化溶融亜鉛めっき層をまとめて「めっき層」ともいう。

0029

(亜鉛めっき鋼板の構成)
本発明の実施形態に係る亜鉛めっき鋼板は、素地鋼板の表面に亜鉛めっき層を有する。素地鋼板は内部酸化層および脱炭層を有する。

0030

(内部酸化層)
内部酸化層とは、素地鋼板の内部に形成される、SiおよびMnの少なくとも一つの酸化物を含む層である。内部酸化層は、高露点焼鈍により素地鋼板の表面近傍に形成され、素地鋼板の表面には現れない。

0031

本発明の実施形態に係る亜鉛めっき鋼板では、素地鋼板の内部酸化層の厚さは1.0μm以上とする。このような内部酸化層を形成することにより、亜鉛めっき鋼板における不めっきの発生を十分に抑制することができ、形成されためっき層と素地鋼板との密着性を十分に高いものとすることができる。すなわちめっき性を確保することができる。

0032

これは、このような内部酸化層を形成すると、素地鋼板の表面近傍でSiが酸化物となるため、素地鋼板の表面およびその近傍において固溶Siが減少することによるものである。固溶Siは、素地鋼板と亜鉛との濡れ性を低下させ、めっきの合金化を遅延させる働きを有し、めっき性を低下させる原因となる。

0033

本発明の実施形態に係る亜鉛めっき鋼板において、素地鋼板と亜鉛めっき層との界面からの内部酸化層の深さは1μm以上が好ましく、1.5μm以上がより好ましく、2μm以上がさらに好ましい。内部酸化層の深さとは、内部酸化層の当該界面に最も近い部分の深さをいう。内部酸化層の厚さは、2μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましい。

0034

(脱炭層)
脱炭層とは、高露点焼鈍によって素地鋼板の表面および表面近傍に形成される、炭素の含有量が減少した領域であり、亜鉛めっき鋼板では、めっき層と素地鋼板との界面から素地鋼板の内部方向に向かって当該界面の近傍に位置する。

0035

本実施形態では、脱炭層を、焼鈍により素地鋼板の表面および表面近傍に形成される層であって、炭素量が焼鈍前の素地鋼板の炭素含有量の80%以下である層とする。脱炭層は、素地鋼板の脱炭されていない部分よりも炭素の含有量が少ないため、引張強度が脱炭されていない部分よりも低くなる。

0036

脱炭層の厚さ、すなわち亜鉛めっき鋼板においてめっき層と素地鋼板の界面からの脱炭層の深さにばらつきがあると、亜鉛めっき鋼板の特性のばらつきにもつながる。そのため、本実施形態に係る亜鉛めっき鋼板では脱炭層の厚さは20μm以下とする。脱炭層の厚さは、15μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。脱炭層は形成されないことが最も好ましいため、脱炭層の厚さは0μmが最も好ましい。

0037

素地鋼板の脱炭層の厚さが20μm以下であれば、得られる亜鉛めっき鋼板において機械特性のばらつきを十分に低減することができる。

0038

また、亜鉛めっき鋼板のホットスタンプ時には、素地鋼板中のFeが素地鋼板とめっき層の界面を介してめっき層側に拡散する。ホットスタンプの条件にもよるが、素地鋼板の表面から10〜20μm程度の深さまでに位置するFeがめっき層に取り込まれる。そのため、ホットスタンプ前の亜鉛めっき鋼板において脱炭層の厚さが20μm以下であれば、ホットスタンプ成形品において脱炭層による強度への影響を抑制できる。

0039

内部酸化層と脱炭層とは、鋼板の表面から内部方向に向かって重複して存在してもよい。脱炭層の厚さは、後述する実施例に記載するように、グロー放電発光分析法(Glow Discharge Optical Emission Spectrometry、GDES)により、鋼板表面からの深さ方向(厚さ方向)における各元素の濃度のプロファイルを求めることにより、測定することができる。内部酸化層の深さおよび厚さは、鋼板断面の走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した写真により測定することができる。

0040

(素地鋼板の成分組成)
次に、本実施形態に係る亜鉛めっき鋼板を構成する素地鋼板の成分組成について説明する。下記成分組成における「%」はいずれも「質量%」を意味する。

0041

[C:0.10〜0.5%]
Cは、固溶強化元素として、ホットスタンプ成形品の高強度化に寄与する元素である。ホットスタンプ成形品を、例えば980MPa以上の高強度とするため、C含有量の下限を0.10%以上とする。C含有量の下限は、好ましくは0.13%以上、より好ましくは0.15%以上、さらに好ましくは0.17%以上である。

0042

一方、C含有量が過剰になると、ホットスタンプ成形品の溶接性が低下する。そのため、C含有量の上限を0.5%とする。C含有量の上限は、好ましくは0.40%以下、より好ましくは0.35%以下、さらに好ましくは0.30%以下である。

0043

[Si:0.7〜2.5%]
Siは、ホットスタンプ成形品のスポット溶接部の接合強度の向上に寄与する元素である。またSiは、ホットスタンプの徐冷工程における焼き戻しを防止してホットスタンプ成形品の強度を保つ効果を有している。さらにSiは、残留オーステナイトを生成してホットスタンプ成形品の延性向上にも寄与する元素である。これらの効果を有効に発揮させるため、Si含有量の下限を0.7%以上とする。Si含有量の下限は、好ましくは0.75%以上であり、より好ましくは0.80%以上、さらに好ましくは0.90%以上、よりさらに好ましくは1.0%以上である。

0044

一方、Si含有量が過剰になると、強度が高くなり過ぎて、熱延酸洗鋼板または冷延鋼板、すなわち素地鋼板製造時の圧延負荷が増大するほか、熱間圧延の際に素地鋼板表面にSiO2を含むスケールが過剰に発生し、めっき後の鋼板の表面性状が悪化する。そのため、Si含有量の上限を2.5%以下とする。Si含有量の上限は、好ましくは2.3%以下であり、より好ましくは2.1%以下である。

0045

[Mn:1.0〜3%]
Mnは、焼入れ性を高め、ホットスタンプ成形品の高強度バラツキを抑えるために有用な元素である。またMnは、後述するめっきの合金化処理において合金化を促進させ、めっき層中のFe濃度確保に寄与する元素でもある。このような効果を発揮させるため、Mn含有量の下限を、1.0%以上とする。Mn含有量の下限は、好ましくは1.2%以上、より好ましくは1.5%以上、さらに好ましくは1.7%以上である。

0046

一方、Mn含有量が過剰になると、強度が高くなり過ぎて素地鋼板製造時の圧延負荷が増大する。そのため、Mn含有量の上限を3%以下とする。Mn含有量の上限は、好ましくは2.8%以下、より好ましくは2.5%以下である。

0047

[Al:0.01〜0.5%]
Alは鋼の脱酸のために必要な元素である。そのため、Al含有量の下限を0.01%以上とする。Al含有量の下限は、好ましくは0.03%以上である。一方、Al含有量が過剰になると上記効果が飽和するだけでなく、アルミナ等の介在物が増加して加工性劣化する。そのため、Al含有量の上限を0.5%とする。Al含有量の上限は、好ましくは0.3%以下である。

0048

本実施形態に係る亜鉛めっき鋼板の素地鋼板は、上記成分を含み、残部が鉄(Fe)および不可避的不純物であるものが挙げられる。当該不可避的不純物としては、例えばP、S、Nなどが挙げられる。

0049

Pは、スポット溶接部の接合強度に悪影響を及ぼす元素である。P含有量が過剰であると、スポット溶接で形成されるナゲット最終凝固面に偏析してナゲットが脆化し、接合強度が低下する。そのためP含有量の上限は、0.02%以下とすることが好ましい。P含有量は、より好ましくは0.015%以下である。

0050

SもPと同様に、スポット溶接部の接合強度に悪影響を及ぼす元素である。S含有量が過剰であると、ナゲット内の粒界偏析による粒界破壊が助長され、接合強度が低下する。そのためS含有量の上限は、0.01%以下とすることが好ましい。S含有量は、より好ましくは0.008%以下である。

0051

Nは、Bと結合して固溶B量を減少させ、素地鋼板の焼入れ性に悪影響を与える。N含有量が過剰であると、窒化物の析出量が増大し、素地鋼板の靭性に悪影響を与える。そのためN含有量の上限は、0.01%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.008%以下である。なお、製鋼上のコスト等を考慮すると、通常の場合、N含有量は0.001%以上である。

0052

本発明では、上記成分のほか、さらにBを選択元素として必要に応じて含有させることができる。

0053

[B:0.005%以下(0%を含まない)]
Bは鋼材の焼入れ性を向上させる元素である。この効果を発揮させるには、Bを0.0003%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.0005%以上(さらに好ましくは0.0010%以上)とするのがよい。一方、Bが0.005%を超えると、ホットスタンプ成形品中に粗大なホウ化物が析出して当該成形品の靭性が劣化するため、好ましくは0.005%以下(より好ましくは0.004%以下)とする。

0054

(亜鉛めっき鋼板の製造方法)
本実施形態に係る亜鉛めっき鋼板は、例えば、所定成分の鋼を鋳造→加熱→熱間圧延→酸洗→必要に応じて冷間圧延溶融亜鉛めっき工程→必要に応じて合金化工程、の各工程を順に経て製造することができる。

0055

そして本実施形態では、後に詳述する通り、本実施形態で規定する内部酸化層および脱炭層を形成するため、溶融亜鉛めっき工程に含まれる焼鈍工程における、還元炉による焼鈍、すなわち還元性雰囲気下での熱処理での焼鈍条件を適切に制御する。

0056

以下、本実施形態に係る亜鉛めっき鋼板の製造方法を、工程順に説明する。

0057

まず、上記成分組成を満足する鋼を鋳造し、加熱する。加熱条件は特に限定されず、通常用いられる条件を適宜採用することができるが、おおむね、1100〜1300℃の温度で行うことが好ましい。

0058

次いで、鋳造された鋼を熱間圧延し、熱延鋼板を得る。熱間圧延条件は特に限定されず、通常用いられる条件を適宜採用することができる。好ましい条件は、おおむね、以下のとおりである。
仕上げ圧延温度(Finisher Delivery Temperature、FDT):800〜950℃
巻き取り温度(Coiling Temperature、CT):500〜700℃

0059

熱延鋼板の板厚の上限は3.5mm以下が好ましい。熱延鋼板の板厚の上限は、より好ましくは3.0mm以下、さらに好ましくは2.5mm以下である。熱延鋼板の板厚の下限は、好ましくは2.0mm以上である。

0060

熱延鋼板は、酸洗し、熱延酸洗鋼板を作製する。この酸洗工程では、酸洗により、少なくとも熱延スケールが除去できればよい。

0061

例えば熱間圧延時の巻き取り温度が高いコイルでは、熱延スケールと鋼板との界面近傍にSi、Mnの酸化物による粒界酸化層が形成していることがある。しかし、当該粒界酸化層が存在しても、めっき処理時に不めっきなどの悪影響を及ぼさない。そのため、酸洗工程において、必ずしも粒界酸化層まで除去する必要はない。

0062

ただし、外観、粗さなど、亜鉛めっき鋼板の表面性状安定化の観点からは、上記粒界酸化層をできるだけ除去することが好ましい。粒界酸化層の除去には、通常用いられる酸洗方法を適宜採用することができる。酸洗方法としては、例えば、80〜90℃に加熱した塩酸などを用い、20〜300秒酸洗する方法が挙げられる。このとき、塩酸中には適量の酸洗促進剤およびインヒビターの少なくとも一方を加えることが好ましい。酸洗促進剤には例えばメルカプト基を有する化合物を使用することができ、インヒビターには例えばアミン系有機化合物を使用することができる。

0063

熱延酸洗鋼板の好ましい厚さも、上記熱延鋼板と、おおむね同じである。

0064

熱延酸洗鋼板は、必要に応じて冷間圧延し、冷延鋼板としてもよい。本実施形態に係る亜鉛めっき鋼板は、特に、自動車の軽量化などを目的として自動車用部品に好適に用いられる。そのため、当該亜鉛めっき鋼板を構成する素地鋼板は、寸法精度や平坦度の観点から、冷延鋼板が好ましい。

0065

冷延率、すなわち冷間圧延における圧下率は、工場での生産性などを考慮すると、おおむね、20〜70%の範囲内に制御することが好ましい。冷延鋼板の板厚の上限は2.5mm以下が好ましい。冷延鋼板の板厚の上限は、より好ましくは2.0mm以下、さらに好ましくは1.8mm以下である。

0066

次いで、上記のようにして得られた熱延酸洗鋼板または冷延鋼板(以下、これらをまとめて「素地鋼板」ともいう。)を還元炉方式連続めっき工程に付す。

0067

一般に、還元炉方式の溶融亜鉛めっきラインで行われる工程は、前処理工程、焼鈍工程、めっき工程に分かれている。めっき工程では、必要に応じて合金化処理も行われる。

0068

溶融亜鉛めっきラインの焼鈍工程は、通常、還元炉と、冷却帯とから構成されている。本実施形態では、還元炉における焼鈍条件、特に還元性雰囲気の露点を適切に制御したところに最大の特徴がある。

0069

勿論、本実施形態に係る方法は、上記態様に限定する趣旨ではなく、例えば、上記溶融亜鉛めっきラインを、無酸化炉方式の連続焼鈍ラインにて行うこともできる。以下では、上記態様に基づき、説明する。

0070

まず、上記素地鋼板に前処理を行う。前処理は、素地鋼板の表面に付着したオイル(油脂)および汚れを除去するために通常行われるものであり、代表的には、アルカリ脱脂によって行われる。

0071

アルカリ脱脂に用いられる脱脂液に含まれるアルカリは、例えば苛性ソーダケイ酸塩またはこれらの混合物が好ましく用いられ、油脂などを水溶性石鹸として除去できるものであれば特に限定されない。また、脱脂性を向上させるために、電解洗浄スクラバー処理、脱脂液中への界面活性剤キレート剤添加処理を行うこともできる。

0072

本実施形態では、素地鋼板の表面が適切に脱脂されれば前処理の方法は限定されず、上述した処理を単独で行ってもよいし、どのように組み合わせてもよい。前処理としてアルカリ脱脂を行ったときは、素地鋼板に付着した脱脂液を落とすため、ホットリンス湯洗)する。湯洗後の素地鋼板はドライヤーなどで乾燥させる。

0073

次に、前処理された素地鋼板を還元炉に投入し、焼鈍する。すなわち、素地鋼板に還元性雰囲気下での熱処理を施す。このときの焼鈍条件は、還元性雰囲気の露点を−20〜0℃とする。また、焼鈍温度を500〜720℃とし、当該焼鈍温度での滞在時間、すなわち焼鈍時間を90〜400秒とする。上記温度範囲での焼鈍処理均熱処理とも呼び、この場合、焼鈍温度を均熱温度、焼鈍時間を均熱温度と呼ぶ。

0074

還元性雰囲気の露点の下限値は、好ましくは−15℃以上、より好ましくは−10℃以上である。

0075

還元性雰囲気の組成は、還元性であれば特に限定されないが、例えば、H2−N2混合ガスにおいてH2濃度を1〜30体積%とすることが好ましい。

0076

焼鈍温度の下限値は、好ましくは530℃以上、より好ましくは560℃以上、さらに好ましくは600℃以上である。焼鈍温度の上限値は、好ましくは700℃以下、より好ましくは680℃以下である。

0077

焼鈍時間の下限値は、好ましくは120秒以上、より好ましくは150秒以上である。焼鈍時間の上限値は、好ましくは270秒以下、より好ましくは240秒以下である。焼鈍時間は、素地鋼板が還元炉中を通過する速度(以下「ラインスピード」または略して「LS」ともいう。)によって制御することができる。

0078

なお、省エネルギーの観点から、還元炉に入れる前に、排ガスを用いた還元性雰囲気の予熱炉にて、前処理された素地鋼板を予熱してもよい。このときの予熱条件は、還元性雰囲気の露点が上記範囲であれば特に限定されない。

0079

上記の焼鈍条件は、(1)鋼板に内部酸化層を形成することで、固溶Siの素地鋼板の表面への濃化およびSiの濃化に伴う素地鋼板表面におけるSi系酸化物の生成を抑制し、不めっき、合金化ムラの発生を抑制すること、および(2)鋼板の表面に形成される脱炭層を低減し、亜鉛めっき鋼板およびホットスタンプ後の部品の機械的特性のばらつきを抑制すること、との観点から、多くの基礎実験によって決定されたものである。

0080

上記(1)の観点から、焼鈍時の還元性雰囲気の露点の上限・下限、焼鈍温度の上限・下限、焼鈍時間の上限・下限のそれぞれが、上記範囲を外れる場合は、不めっきが発生する。

0081

特に、還元性雰囲気の露点が低過ぎる場合、焼鈍温度が高過ぎる場合、または焼鈍時間が長すぎる場合には、Si系酸化物が表面に形成され易くなり、不めっきが発生し易くなる。

0082

一方、焼鈍温度が低過ぎる場合、または焼鈍時間が短過ぎる場合には、Fe系酸化物が残存し易くなり、この場合も不めっきが発生し易くなる。また、還元性雰囲気の露点が高過ぎる場合には、鋼板および炉内設備の酸化等の悪影響が発生するおそれがある。

0083

上記(2)の観点からは、焼鈍温度が高過ぎる場合、または焼鈍時間が長すぎる場合には、脱炭層が20μm以上となり易く、ホットスタンプ後の部品の機械的特性のばらつきも生じ易くなる。

0084

具体的に上記焼鈍条件は、不めっき、合金化ムラおよび機械的特性のばらつきが発生しないように、還元性雰囲気の露点と焼鈍時の温度と時間とのバランスによって適切に制御することが好ましい。例えば、還元性雰囲気の露点が低い場合は、焼鈍温度を低くすることまたは焼鈍時間を短くすることができ、一方、還元性雰囲気の露点が高い場合は、焼鈍温度を高くすることまたは焼鈍時間を長くすることもできる。

0085

なお、ホットスタンプ用途とは離れて、一般に、本実施形態のように多量のSiを含む鋼を亜鉛めっきする場合、不めっきの発生を防止するため、例えば、焼鈍工程の前にプレめっきを行う方法や、還元炉での還元焼鈍の前に酸化を行う酸化還元法を行う方法などが採用されている。しかし本実施形態では、以下に詳述するように適切な還元焼鈍を行った後にめっきを行うため、これらの方法は不要である。プレめっきを行う方法は、特別な設備の導入がコストアップに繋がる。また、酸化還元法で製造した場合、めっき層と素地鋼板との界面に形成される酸化物層がホットスタンプ加熱時のめっき層へのFeの拡散を阻害し、LMEを防止するために必要な加熱時間が長くなりプレス生産性が低下する。

0086

次に、還元炉を出た素地鋼板は、冷却帯で冷却される。通常、冷却帯は徐冷帯急冷帯調整帯で構成される。調整帯は保持帯とも呼ばれる。しかし、冷却方法は、不めっきが発生しないよう、通常用いられる条件で行えばよく、例えば、還元性雰囲気の気体を鋼板に吹き付けて冷却するなどの方法が挙げられる。

0087

このようにして連続焼鈍工程を行った後、亜鉛めっきを行う。詳細には、溶融亜鉛めっき工程により溶融亜鉛めっき鋼板(GI)を作製する。あるいは、上記GIを合金化し、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA)を作製してもよい。

0088

上記溶融亜鉛めっき工程は特に限定されず、通常、用いられる方法を採用することができる。例えば、溶融亜鉛めっき浴の温度は、430〜500℃程度に制御すればよい。溶融亜鉛めっき層の付着量(下記の合金化溶融亜鉛めっき層の付着量と同じ)は、耐食性確保の観点から、30g/m2以上とすることが好ましく、より好ましくは40g/m2以上であり、さらに好ましくは75g/m2超である。一方、本発明で規定のめっき層中のFe濃度を容易に実現する観点からは、溶融亜鉛めっき層(特に合金化溶融亜鉛めっき層)の付着量は少ない方が好ましい。よって、溶融亜鉛めっき層の付着量は、120g/m2以下とすることが好ましく、より好ましくは100g/m2以下である。

0089

上記合金化工程も特に限定されず、通常、用いられる方法を採用することができる。合金化工程では、めっき層中のFe濃度を高める。この観点から、合金化温度は、例えば500〜700℃程度に制御することが好ましい。合金化温度は、より好ましくは530℃以上、さらに好ましくは570℃以上、よりさらに好ましくは600℃以上である。一方、合金化温度が高過ぎると、めっき層中のFe濃度が高くなり過ぎるため、合金化温度は好ましくは680℃以下、より好ましくは650℃以下である。

0090

めっき工程後の工程も特に限定されず、通常、用いられる方法を採用することができる。通常、スキンパス処理、テンションレベラ処理、塗油等が行われるが、これらは必要に応じて通常用いられる条件で実施すればよく、不必要であれば実施しなくてもよい。

0091

前記再焼鈍の推奨される条件は次の通りである。すなわち、再焼鈍時の加熱温度(再焼鈍温度)は400℃以上が好ましく、より好ましくは450℃以上である。一方、亜鉛の蒸発を抑制する観点から、前記再焼鈍温度は750℃以下が好ましく、より好ましくは700℃以下である。

0092

また、上記再焼鈍温度で保持する時間(再焼鈍時間)は、加熱方法等によって適宜設定することができる。例えば炉加熱の場合、前記再焼鈍時間は1時間以上が好ましく、より好ましくは2時間以上である。誘導加熱の場合、前記再焼鈍時間は10秒以上が好ましい。一方、亜鉛の蒸発を抑制する観点から、前記再焼鈍時間は、前記炉加熱の場合、15時間以下が好ましく、より好ましくは10時間以下である。前記誘導加熱の場合、前記再焼鈍時間は、3分以下が好ましく、より好ましくは1分以下である。

0093

このようにして得られた亜鉛めっき鋼板(GIまたはGA)は、ホットスタンプ用鋼板として好適に用いられる。

0094

本実施形態では、ホットスタンプ工程を特に限定するものではなく、通常、用いられる方法を採用することができる。例えば、通常の方法に従って、上記鋼板をAc3変態点以上の温度に加熱してオーステナイト化した後、例えば、成形を完了した時点の温度、すなわち金型下死点位置に到達した時点での温度を約550℃以上とする方法が挙げられる。前記加熱の方法として、炉加熱、通電加熱、誘導加熱等を採用することができる。

0095

上記加熱の条件は、Ac3変態点以上の温度での保持時間(炉加熱の場合、在炉時間ともいう。通電加熱、誘導加熱の場合、加熱開始から終了までの時間をいう。)を、好ましくは30分以下、より好ましくは15分以下、さらに好ましくは7分以下に制御することにより、オーステナイトの粒成長が抑制され、熱間の絞り性、ホットスタンプ成形品の靭性などの特性が向上するようになる。
Ac3変態点以上の温度での保持時間の下限は特に限定されず、加熱中にAc3変態点以上に到達すればよい。

0096

本実施形態に係る亜鉛めっき鋼板を用いてホットスタンプ成形品を製造する場合、前記ホットスタンプ工程の他、部品の形状に応じて行う切削等、一般的に行われている工程および条件をさらに採用することができる。ホットスタンプ成形品としては、例えば自動車用シャーシ、いわゆる足回り部品補強部品等が挙げられる。

0097

以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。

0098

表1に記載の成分組成を有する鋼からなるスラブを、1200℃に加熱した後、表1に記載の仕上げ圧延温度(FDT)および巻取温度(CT)の条件での熱間圧延、酸洗工程によるデスケーリング処理、冷間圧延を順に行って冷延鋼板を得た。この冷延鋼板は、めっき鋼板の素地鋼板とする。

0099

0100

このようにして得られた各冷延鋼板を用い、以下の各項目を評価した。

0101

(内部酸化層の深さおよび厚さ)
上記冷延鋼板を切断し、10mm×20mmの試験片を得た。この試験片を支持基材内に埋め込み、断面を研磨した後にナイタールで軽くエッチングした後、当該断面におけるめっき層近傍をFE−SEM(SUPURA35、ZEISS製)で倍率1500倍にて反射電子像で観察した。そして、めっき合金層と素地鋼板との界面より素地鋼板側の、素地鋼板内部において、微小黒点として観察されるSiおよびMnの少なくとも一つの酸化物が分布している領域を内部酸化層とした。内部酸化層の平均厚さが1μm以上かつめっき合金層と素地鋼板との界面からの深さが1μm以上の場合を○(合格)、それ以外の場合を×(不合格)と評価した。この評価結果を後述の表3に示す。

0102

(脱炭層の厚さ)
脱炭層の厚さは、後述の方法により作成したモデル式から得られた数値に、均熱時間、均熱温度および雰囲気の露点の影響を加味して算出した。算出した脱炭層の厚さ(冷延鋼板表面からの深さ)が20μm以下の場合、機械的特性が確保できるものとみなし、○(合格)と評価し、20μmを超える場合を×(不合格)と評価した。この評価結果を後述の表3に示す。

0103

(モデル式の作成方法
上記冷延鋼板を切断し、100mm×200mmの試験片を得た。この試験片について、めっきシミュレータにて焼鈍温度、露点、時間を変化させて焼鈍処理を行った。露点および焼鈍温度は下記表2に示す通りとし、各露点および焼鈍温度について、焼鈍時間は0s、120sおよび240sとした。焼鈍後の試験片について、GDOESにより鋼板表面からの深さ方向(厚さ方向)における炭素濃度のプロファイルを求め、脱炭層の厚さを測定した。脱炭層の厚さは、試験片の表面から炭素濃度が焼鈍前の素地鋼板の炭素濃度の80%となる位置までの深さとした。

0104

0105

焼鈍時間と脱炭層の厚さとの関係は下記式(1)で表される。
X=Kt …(1)

0106

ここで、X:脱炭層厚さ(μm)、K:脱炭速度定数(μm/s)、t:焼鈍時間(s)である。

0107

上記式(1)から、横軸を焼鈍時間t、縦軸を測定した脱炭層厚さXとしてプロットして得られたグラフの傾きとして、各焼鈍温度および露点について脱炭速度定数Kを求めた。求めたKは表2に示した。

0108

また、脱炭速度定数と焼鈍温度との関係は、下記アレニウス式で表される。
K=Aexp(−E/RT

0109

ここで、K:脱炭速度定数(μm/s)、A:定数(μm/s)、E:定数(J/mol)、R:気体定数(8.31J/mol・K)、T:焼鈍温度(K)である。

0110

アレニウス式は下記式(2)のように変形することができる。
lnK=lnA+(−E/R)×1/T …(2)

0111

上記式(2)から、横軸に1/T(絶対温度で表した焼鈍温度の逆数)、縦軸にlnKを取り、表2に示す値をプロットして得られたグラフの傾きからE、切片からAを求めた。Eは露点に関わらず146kJ/molで一定であった。Aは下記式(3)で表される値であった。
A=2.49×105×DP+1.15×107 …(3)

0112

ここで、DP:露点(℃)である。

0113

上より、上記式(1)におけるKは下記式で表される値となった。このKを式(1)に代入して得られる式がモデル式である。
K=(2.49×105×DP+1.15×107)×exp((−146000/8.31)×1/T)

0114

なお、ラボ実験では、焼鈍温度が700℃以下の場合において、露点−10℃以上では露点の影響が見られなかったため、温度700℃以下かつ露点−10℃以上の場合は、DP=−10℃としてKを算出した。

0115

(めっき状態)
上記冷延鋼板を切断し、100mm×150mmの試験片を得た。この試験片を、60℃の3%オルソ珪酸ナトリウム中で20A、20秒間電解脱脂した後、水道水中で5秒間流水にて水洗した。このようにしてアルカリ脱脂した後、めっきシミュレータにて、焼鈍(均熱)を行った。表2には、均熱処理の条件として、均熱温度、還元性雰囲気の露点、およびラインスピード(LS)を示す。ラインスピードは、焼鈍炉を通過する試験片の速さである。還元性雰囲気は、H2ガスを5体積%含有し、残部がN2ガスからなる混合ガスとした。

0116

具体的には、上記還元性雰囲気にて、室温から均熱温度まで加熱し、表2に示す条件で均熱処理した後、当該均熱温度から460℃まで冷却した。次いで、Al含有量が0.1質量%、温度が460℃の亜鉛めっき浴でめっきし、ワイピングを行って溶融亜鉛めっき鋼板(GI)を得た。さらに合金化温度550℃、合金化時間20秒の合金化処理を行い、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA)を得た。

0117

上記GAについて、亜鉛めっき浴に浸漬した範囲(約100mm×120mm)の鋼板表面を目視で観察し、不めっきの面積率を求めるとともに、合金化ムラの有無を確認した。不めっきについては、不めっきの面積率が5%以下を○(合格)、5%超を×(不合格)と評価した。合金化ムラについては、Fe濃度が8%以上であった場合に○(合格)、Fe濃度が8%未満であった場合に×(不合格)と評価した。これらの結果を表3に示す。なお、No.17については内部酸化層の深さおよび厚さについて測定を行わなかった。

0118

0119

表3から、以下のように考察することができる。

0120

No.1、2、4〜6、8〜13、15、16では、還元性雰囲気下での均熱処理条件が、本発明の規定を満足しており、脱炭層の厚さ、不めっきの面積率、および合金化ムラのいずれについても評価が○であった。また、表3には示していないが、No.1〜16では内部酸化層の深さは1〜3μmであり、いずれも評価は○であった。

0121

No.3、No.7およびNo.14では、合金化ムラの評価が×であった。これは、還元性雰囲気の露点が−45℃と低く、内部酸化層が形成されなかったか、内部酸化層の厚さおよび深さが不十分であったためと考えられる。

0122

このうちNo.7およびNo.14では、不めっきの面積率の評価も×であった。これは、素地鋼板の表面にSi系酸化物が形成されたためと考えられる。

実施例

0123

No.17では、脱炭層の厚さの評価が×であった。これは、均熱温度が高過ぎたためと考えられる。

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

該当するデータがありません

関連する公募課題

該当するデータがありません

ページトップへ

技術視点だけで見ていませんか?

この技術の活用可能性がある分野

分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

  • 日本製鉄株式会社の「 熱処理鋼管」が 公開されました。( 2020/02/13)

    【課題】めっき層の有するAl含有量が多い場合であっても、3DQ工法を適用することが可能であり、かつ、優れた化成処理性を実現することが可能な、熱処理用鋼管、熱処理鋼管の製造方法、熱処理鋼管を提供すること... 詳細

  • 日本製鉄株式会社の「 熱間鍛造用継目無鋼管」が 公開されました。( 2020/02/06)

    【課題】焼準処理後において、高い強度及び高い硬さとともに、優れた低温靱性も得られる、熱間鍛造用継目無鋼管を提供する。【解決手段】本開示による熱間鍛造用継目無鋼管は、質量%で、C:0.25〜0.33%、... 詳細

  • JFEスチール株式会社の「 薄鋼板及びその製造方法」が 公開されました。( 2020/02/06)

    【課題】引張強さ:780MPa以上を有し、かつ良好な強度均質性と鋼板形状及び表面性状とを兼備する薄鋼板およびその製造方法を提供する。【解決手段】特定の成分組成と、フェライト面積率が0%以上90%以下、... 詳細

この 技術と関連性が強い技術

関連性が強い 技術一覧

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

該当するデータがありません

この 技術と関連する公募課題

該当するデータがありません

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ