図面 (/)

技術 有機ハイドライド製造装置、有機ハイドライドの製造方法およびエネルギー輸送方法

出願人 JXTGエネルギー株式会社
発明者 松岡孝司橋本康嗣佐藤康司
出願日 2018年3月1日 (2年2ヶ月経過) 出願番号 2018-036731
公開日 2019年9月12日 (7ヶ月経過) 公開番号 2019-151876
状態 未査定
技術分野 非金属・化合物の電解製造;そのための装置 1,4-ジアジン系化合物 触媒 水素、水、水素化物
主要キーワード 板ばね構造 溝状流路 シリンダーポンプ エネルギーキャリア 参照電極電位 電解特性 電解合成法 硫酸添加量
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2019年9月12日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (8)

課題

新たな有機ハイドライドの製造技術を提供する。

解決手段

有機ハイドライド製造装置10は、プロトン伝導性を有する電解質膜110と、電解質膜110の一方の側に設けられ、プロトンピラジン類水素化する還元極120と、電解質膜110の前記一方の側とは反対側に設けられ、水を酸化してプロトンを生成する酸化極150とを備える。有機ハイドライド製造装置10は、ピラジン類を電気化学還元反応により水素化して有機ハイドライドとしてのピペラジン類を生成する。

概要

背景

近年、火力発電で得られるエネルギーに比べて生成過程での二酸化炭素排出量を抑制することができる新エネルギーとして、太陽光風力水力地熱発電等で得られる再生可能エネルギーの普及が望まれている。しかしながら、再生可能エネルギーは、その出力変動、特に中長周期での出力変動の緩和が求められる。また、再生可能エネルギーは、大規模輸送が比較的困難である。これに対し、再生可能エネルギーから得られる電力化学エネルギーに変換することが有効である。電力を直接化学エネルギーに変換するプロセスとしては、電気化学システムが挙げられる。電気化学システムの一例である二次電池、いわゆる蓄電池は、電力を化学エネルギーに変換して貯蔵するデバイスであり、広く用いられている。

再生可能エネルギーを基盤とする電気化学システムとしては、大規模な太陽光発電システム風力発電システムを世界の適地に設置し、これにより得られる再生可能エネルギーを、輸送に適したエネルギーキャリアに変換して国内に輸送し、国内でエネルギーを消費するシステムが有望である。エネルギーキャリアとしては、液体水素が考えられる。しかしながら、水素常温常圧気体であるため、輸送や貯蔵には特殊なタンカーが必要となる。

このような状況の中、液体水素に代わるエネルギーキャリアとして、有機ハイドライド有機ケミカルハイドライド)が注目されている。有機ハイドライドとしては、シクロヘキサンメチルシクロヘキサンデカリン等の環式有機化合物が挙げられる。有機ハイドライドは、一般に常温常圧で液体であるため、取り扱いが容易である。また、有機ハイドライドは、電気化学的に水素付加及び脱水素することができる。このため、有機ハイドライドをエネルギーキャリアとして用いれば、液体水素に比べて簡単に輸送、貯蔵することができる。特に、石油と似た性状の液体を有機ハイドライドとして選択した場合には、比較的大規模なエネルギー供給システムとの親和性に優れるため、エネルギー供給システムの末端にまで容易に配送することができるという利点がある。

従来、有機ハイドライドの製造方法としては、再生可能エネルギーでの水電解により水素を製造し、水素化反応器中で被水素化物(有機ハイドライドの脱水素化体)に水素を付加して有機ハイドライドを製造する方法が知られている。

これに対し、電解合成法によれば、被水素化物に直接水素を付加することができるため、水素化反応装置水素タンクなどが不要となり、有機ハイドライドの製造工程を簡略化することができる。また、電解合成法では水素が中間体として介在しないため、理論的投入エネルギーが減少し、エネルギー効率が高まる。また、規模によらず効率損失が少なく、さらに有機ハイドライド製造装置起動停止に対する追従性にも優れる。このような有機ハイドライドの製造技術に関して、例えば特許文献1には、水からプロトンを生成するアノードと、不飽和結合を有する有機化合物を水素化するカソードとを備える有機ハイドライド製造装置が開示されている。

概要

新たな有機ハイドライドの製造技術を提供する。有機ハイドライド製造装置10は、プロトン伝導性を有する電解質膜110と、電解質膜110の一方の側に設けられ、プロトンでピラジン類を水素化する還元極120と、電解質膜110の前記一方の側とは反対側に設けられ、水を酸化してプロトンを生成する酸化極150とを備える。有機ハイドライド製造装置10は、ピラジン類を電気化学還元反応により水素化して有機ハイドライドとしてのピペラジン類を生成する。

目的

近年、火力発電で得られるエネルギーに比べて生成過程での二酸化炭素排出量を抑制することができる新エネルギーとして、太陽光、風力、水力、地熱発電等で得られる再生可能エネルギーの普及が望まれている

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

この技術が所属する分野

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

プロトン伝導性を有する電解質膜と、前記電解質膜の一方の側に設けられ、プロトンピラジン類水素化する還元極と、前記電解質膜の前記一方の側とは反対側に設けられ、水を酸化してプロトンを生成する酸化極と、を備え、ピラジン類を電気化学還元反応により水素化して有機ハイドライドとしてのピペラジン類を生成することを特徴とする有機ハイドライド製造装置

請求項2

前記ピラジン類は、ピラジンおよび2,5−ジメチルピラジンからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の有機ハイドライド製造装置。

請求項3

前記還元極にプロトン伝導性物質を供給する供給部をさらに備える請求項1または2に記載の有機ハイドライド製造装置。

請求項4

前記供給部は、前記ピラジン類とともに前記プロトン伝導性物質を前記還元極に供給する請求項3に記載の有機ハイドライド製造装置。

請求項5

前記供給部は、前記水とともに前記プロトン伝導性物質を前記酸化極に供給し、前記プロトン伝導性物質は、前記電解質膜を通過して前記還元極に至る請求項3に記載の有機ハイドライド製造装置。

請求項6

前記プロトン伝導性物質は、硫酸硝酸塩酸、フッ酸、ギ酸および酢酸からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項3乃至5のいずれか1項に記載の有機ハイドライド製造装置。

請求項7

前記プロトン伝導性物質の供給量は、プロトン換算で前記ピラジン類の窒素モル数に対して10モル%以上100モル%以下である請求項3乃至6のいずれか1項に記載の有機ハイドライド製造装置。

請求項8

プロトン伝導性を有する電解質膜の一方の側に設けられた還元極にピラジン類を供給し、前記電解質膜の他方の側に設けられた酸化極に水を供給し、前記酸化極において前記水を酸化してプロトンを生成し、電気化学還元反応によって前記プロトンで前記ピラジン類を水素化して有機ハイドライドとしてのピペラジン類を生成することを含むことを特徴とする有機ハイドライドの製造方法。

請求項9

電気化学還元反応によってピラジン類を水素化して有機ハイドライドとしてのピペラジン類を生成し、前記ピペラジン類を輸送し、前記ピペラジン類を触媒反応によって脱水素化して水素を取り出すことを含むことを特徴とするエネルギー輸送方法。

技術分野

0001

本発明は、有機ハイドライド製造装置有機ハイドライドの製造方法およびエネルギー輸送方法に関する。

背景技術

0002

近年、火力発電で得られるエネルギーに比べて生成過程での二酸化炭素排出量を抑制することができる新エネルギーとして、太陽光風力水力地熱発電等で得られる再生可能エネルギーの普及が望まれている。しかしながら、再生可能エネルギーは、その出力変動、特に中長周期での出力変動の緩和が求められる。また、再生可能エネルギーは、大規模輸送が比較的困難である。これに対し、再生可能エネルギーから得られる電力化学エネルギーに変換することが有効である。電力を直接化学エネルギーに変換するプロセスとしては、電気化学システムが挙げられる。電気化学システムの一例である二次電池、いわゆる蓄電池は、電力を化学エネルギーに変換して貯蔵するデバイスであり、広く用いられている。

0003

再生可能エネルギーを基盤とする電気化学システムとしては、大規模な太陽光発電システム風力発電システムを世界の適地に設置し、これにより得られる再生可能エネルギーを、輸送に適したエネルギーキャリアに変換して国内に輸送し、国内でエネルギーを消費するシステムが有望である。エネルギーキャリアとしては、液体水素が考えられる。しかしながら、水素常温常圧気体であるため、輸送や貯蔵には特殊なタンカーが必要となる。

0004

このような状況の中、液体水素に代わるエネルギーキャリアとして、有機ハイドライド(有機ケミカルハイドライド)が注目されている。有機ハイドライドとしては、シクロヘキサンメチルシクロヘキサンデカリン等の環式有機化合物が挙げられる。有機ハイドライドは、一般に常温常圧で液体であるため、取り扱いが容易である。また、有機ハイドライドは、電気化学的に水素付加及び脱水素することができる。このため、有機ハイドライドをエネルギーキャリアとして用いれば、液体水素に比べて簡単に輸送、貯蔵することができる。特に、石油と似た性状の液体を有機ハイドライドとして選択した場合には、比較的大規模なエネルギー供給システムとの親和性に優れるため、エネルギー供給システムの末端にまで容易に配送することができるという利点がある。

0005

従来、有機ハイドライドの製造方法としては、再生可能エネルギーでの水電解により水素を製造し、水素化反応器中で被水素化物(有機ハイドライドの脱水素化体)に水素を付加して有機ハイドライドを製造する方法が知られている。

0006

これに対し、電解合成法によれば、被水素化物に直接水素を付加することができるため、水素化反応装置水素タンクなどが不要となり、有機ハイドライドの製造工程を簡略化することができる。また、電解合成法では水素が中間体として介在しないため、理論的投入エネルギーが減少し、エネルギー効率が高まる。また、規模によらず効率損失が少なく、さらに有機ハイドライド製造装置の起動停止に対する追従性にも優れる。このような有機ハイドライドの製造技術に関して、例えば特許文献1には、水からプロトンを生成するアノードと、不飽和結合を有する有機化合物を水素化するカソードとを備える有機ハイドライド製造装置が開示されている。

先行技術

0007

国際公開第2012/091128号

発明が解決しようとする課題

0008

従来は、水素化効率の観点から、有機ハイドライドの脱水素化体としてもっぱらベンゼントルエンなどの芳香族炭化水素化合物を用いることが検討されていた。本発明者らは、有機ハイドライドの製造技術について鋭意検討を重ねた結果、これまで十分な検討がなされてこなかった化合物を用いた新たな有機ハイドライドの製造技術に想到した。

0009

本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、新たな有機ハイドライドの製造技術を提供することにある。

課題を解決するための手段

0010

本発明のある態様は、有機ハイドライド製造装置である。当該装置は、プロトン伝導性を有する電解質膜と、電解質膜の一方の側に設けられ、プロトンでピラジン類を水素化する還元極と、電解質膜の前記一方の側とは反対側に設けられ、水を酸化してプロトンを生成する酸化極とを備える。当該装置は、ピラジン類を電気化学還元反応により水素化して有機ハイドライドとしてのピペラジン類を生成する。

0011

また、本発明の他の態様は、有機ハイドライドの製造方法である。当該方法は、プロトン伝導性を有する電解質膜の一方の側に設けられた還元極にピラジン類を供給し、電解質膜の他方の側に設けられた酸化極に水を供給し、酸化極において水を酸化してプロトンを生成し、電気化学還元反応によってプロトンでピラジン類を水素化して有機ハイドライドとしてのピペラジン類を生成することを含む。

0012

また、本発明のさらに他の態様は、エネルギー輸送方法である。当該方法は、電気化学還元反応によってピラジン類を水素化して有機ハイドライドとしてのピペラジン類を生成し、ピペラジン類を輸送し、ピペラジン類を触媒反応によって脱水素化して水素を取り出すことを含む。

発明の効果

0013

本発明によれば、新たな有機ハイドライドの製造技術を提供することができる。

図面の簡単な説明

0014

実施の形態に係る有機ハイドライド製造装置の概略構造を示す断面図である。
電解セルの概略構造を示す断面図である。
各実施例および各比較例における電流密度を示すグラフである。
電解セルの電位と電流密度との関係を示すグラフである。
電解セルの電位と電流密度との関係を示すグラフである。
硫酸添加量と電流密度との関係を示すグラフである。
図7(A)は、2,5−ジメチルピラジン電解還元における電流密度の経時変化を示すグラフである。図7(B)は、2,5−ジメチルピラジンの電解還元によって得られる生成物の種類、収率およびファラデー効率を示す図である。

0015

以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、同一の部材であっても、各図面間で縮尺等が若干相違する場合もあり得る。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、特に言及がない限り、いかなる順序重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。

0016

図1は、実施の形態に係る有機ハイドライド製造装置の概略構造を示す断面図である。なお、図1では、電解セルが備えるセパレータの図示を省略し、膜電極接合体の構造を簡略化している。有機ハイドライド製造装置10(電気化学還元装置)は、主な構成として、電解セル100、電力制御部20、有機物貯蔵槽30、分離槽36、水貯蔵槽40および制御部60を備える。

0017

電力制御部20は、例えば、電力源出力電圧を所定の電圧に変換するDC/DCコンバータである。電力制御部20の正極出力端子は、電解セル100の酸化極150(アノード、プロトン生成極)に接続される。電力制御部20の負極出力端子は、電解セル100の還元極120(カソード)に接続される。これにより、電解セル100の酸化極150と還元極120との間に所定の電圧が印加される。

0018

なお、電力制御部20には、正および負極の電位検知の目的で参照極が設けられてもよい。この場合、参照極入力端子は、電解セル100の電解質膜110に設けられる参照電極(図示せず)に接続される。参照電極は、還元極120および酸化極150から電気的に隔離される。参照電極は、参照電極電位に保持される。本願における参照電極電位は、可逆水素電極(RHE)に対する電位を意味するものとする(参照電極電位=0V)。なお、参照電極電位は、Ag/AgCl電極に対する電位であってもよい(参照電極電位=0.199V)。

0019

還元極120と酸化極150との間を流れる電流は、電流検出部(図示せず)によって検出される。電流検出部は、例えば従来公知の電流計で構成される。電流検出部で検出された電流値は、制御部60に入力され、制御部60による電力制御部20の制御に用いられる。参照電極と還元極120との間の電位差は、電圧検出部(図示せず)によって検出される。電圧検出部は、例えば従来公知の電圧計で構成される。電圧検出部で検出された電位差の値は制御部60に入力され、制御部60による電力制御部20の制御に用いられる。

0020

制御部60は、酸化極150または還元極120の電位が所望の電位となるように、電力制御部20の正極出力端子および負極出力端子の出力を制御する。制御部60は、ハードウェア構成としてはコンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子回路で実現され、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現される。このことは、当業者には当然に理解されるところである。電力源は、好ましくは太陽光、風力、水力、地熱発電等で得られる再生可能エネルギーであるが、特にこれに限定されず、通常の系統電力であってもよい。

0021

有機物貯蔵槽30には、電解セル100での電気化学還元反応により水素化される被水素化物、つまり有機ハイドライドの脱水素化体が貯蔵される。有機ハイドライドは、水素化反応脱水素反応を可逆的に起こすことにより、水素を添加/脱離できる有機化合物である。本実施の形態で用いられる有機ハイドライドの脱水素化体は、ピラジン類である。したがって、有機ハイドライドはピペラジン類である。好ましくは、ピラジン類は、ピラジンおよび2,5−ジメチルピラジンからなる群から選択される少なくとも1種である。これらは単独で用いられても、組み合わせて用いられてもよい。

0022

有機物貯蔵槽30に貯蔵されたピラジン類は、第1液体供給装置32によって電解セル100の還元極120に供給される。有機物貯蔵槽30と第1液体供給装置32とは、還元極120にピラジン類を供給する第1供給部33を構成する。第1液体供給装置32としては、例えば、ギアポンプあるいはシリンダーポンプ等の各種ポンプ、または自然流下式装置等を用いることができる。

0023

還元極120と有機物貯蔵槽30との間には、循環経路34が設けられる。循環経路34は、ピラジン類の流れにおける還元極120の上流側で有機物貯蔵槽30と還元極120とをつなぐ往路部34aと、ピラジン類の流れにおける還元極120の下流側で還元極120と有機物貯蔵槽30とをつなぐ復路部34bとを含む。往路部34aの途中には、第1液体供給装置32が設けられる。

0024

電解セル100においてピラジン類が核水素化されて、有機ハイドライドとしてのピペラジン類が生成される。電解セル100で生成されるピペラジン類と、未反応のピラジン類とは、循環経路34の復路部34bを経て分離槽36に到達する。分離槽36において、ピペラジン類およびピラジン類の混合物から、水素ガス等が分離される。分離されたガスは、分解触媒38を経て系外に排出される。その後、ピペラジン類およびピラジン類は、有機物貯蔵槽30に戻される。

0025

水貯蔵槽40には、例えばイオン交換水、純水、あるいはこれらに硫酸、硝酸塩酸、フッ酸等の酸を加えた水溶液等(以下では適宜、「アノード液」という)が貯蔵される。水貯蔵槽40に貯蔵されたアノード液は、第2液体供給装置42によって電解セル100の酸化極150に供給される。水貯蔵槽40と第2液体供給装置42とは、酸化極150に水を供給する第2供給部43を構成する。第2液体供給装置42としては、例えばギアポンプあるいはシリンダーポンプ等の各種ポンプ、または自然流下式装置等を用いることができる。

0026

酸化極150と水貯蔵槽40との間には、循環経路44が設けられる。循環経路44は、アノード液の流れにおける酸化極150の上流側で水貯蔵槽40と酸化極150とをつなぐ往路部44aと、アノード液の流れにおける酸化極150の下流側で酸化極150と水貯蔵槽40とをつなぐ復路部44bとを含む。往路部44aの途中には、第2液体供給装置42が設けられる。

0027

電解セル100において未反応のアノード液は、循環経路44の復路部44bを経て水貯蔵槽40に戻される。水貯蔵槽40には気水分離部(図示せず)が設けられ、電解セル100におけるアノード液の電気分解によって生じる酸素等のガスは、気水分離部によってアノード液から分離されて、分解触媒46を経て系外に排出される。

0028

図2は、電解セルの概略構造を示す断面図である。電解セル100は、膜電極接合体102と、膜電極接合体102を挟む一対のセパレータ170a,170bと、を備える。膜電極接合体102は、電解質膜110、還元極120および酸化極150を有する。

0029

[電解質膜]
電解質膜110は、プロトン伝導性を有する材料(アイオノマー)で形成される。電解質膜110は、プロトンを選択的に伝導する。プロトン伝導性を有する材料としては、ナフィオン登録商標)、フレミオン(登録商標)などのパーフルオロスルホン酸ポリマーが挙げられる。電解質膜110の面積抵抗、即ち幾何面積当たりのイオン移動抵抗は、特に限定されないが、例えば2000mΩ・cm2以下である。

0030

電解質膜110には、多孔性PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の補強材が混合されてもよい。補強材を導入することで、イオン交換容量の増加に伴う電解質膜110の寸法安定性の低下を抑制することができる。これにより、電解質膜110の耐久性を向上させることができる。また、電解質膜110の表面は、所定の無機物層被覆等によって親水化してもよい。

0031

[還元極]
還元極120は、電解質膜110の一方の側に設けられる。本実施の形態では、還元極120は電解質膜110の一方の主表面に接するように設けられている。還元極120は、還元極触媒層122と、還元極触媒層122を収容する還元極室124とを備える。また、還元極120は、スペーサ126、マイクロポーラス層128、拡散層130、流路部132、還元極室入口134および還元極室出口136を備える。なお、マイクロポーラス層128および拡散層130は、適宜省略することができる。

0032

還元極触媒層122は、還元極室124内で電解質膜110の一方の主表面に接する。還元極触媒層122は、プロトンでピラジン類を水素化するための還元触媒を含む。還元触媒としては、例えばPt、Ru、Pd、Irおよびこれらの少なくとも1種を含む合金からなる群から選択される金属粒子を用いることができる。還元触媒は、市販品を用いてもよいし、公知の方法に従って合成したものを用いてもよい。

0033

また、還元触媒は、Pt、Ru、Pd、Irの少なくとも1つからなる第1の触媒金属貴金属)と、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mo、Ru、Sn、W、Re、Pb、Biから選択される1種または2種以上の第2の触媒金属とを含む金属組成物で構成されてもよい。金属組成物の形態としては、第1の触媒金属と第2の触媒金属との合金、あるいは第1の触媒金属と第2の触媒金属からなる金属間化合物などが挙げられる。

0034

還元触媒は、電子伝導性材料で構成される触媒担体によって担持される。還元触媒を触媒担体に担持させることで、還元極触媒層122の表面積を拡大することができる。また、還元触媒の凝集を抑制することができる。触媒担体としては、例えば多孔性カーボンメソポーラスカーボンなど)、多孔性金属多孔性金属酸化物のいずれかを主成分として含有する電子伝導性材料を挙げることができる。

0035

多孔性カーボンとしては、例えばケッチェンブラック(登録商標)、アセチレンブラックファーネスブラックバルカン(登録商標)などのカーボンブラックが挙げられる。多孔性金属としては、例えばPtブラック、Pdブラック、フラクタル状に析出させたPt金属などが挙げられる。多孔性金属酸化物としては、例えばTi、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wの酸化物が挙げられる。また、触媒担体には、Ti、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wなどの金属の窒化物炭化物酸窒化物炭窒化物部分酸化した炭窒化物といった、多孔性の金属化合物も用いることができる。

0036

還元触媒を担持した状態の触媒担体は、アイオノマーで被覆される。これにより、還元極120のイオン伝導性を向上させることができる。アイオノマーとしては、例えばナフィオン(登録商標)、フレミオン(登録商標)などのパーフルオロスルホン酸ポリマー等を挙げることができる。還元極触媒層122に含まれるアイオノマーは、還元触媒を部分的に被覆していることが好ましい。これによれば、還元極触媒層122における電気化学反応に必要な3要素(ピラジン類、プロトン、電子)を効率的に反応場に供給することができる。還元極触媒層の厚さは、例えば1〜100μmである。

0037

還元極室124は、電解質膜110と、セパレータ170aと、電解質膜110およびセパレータ170aの間に配置される枠状のスペーサ126とで画成される。還元極室124には、還元極触媒層122だけでなく、マイクロポーラス層128、拡散層130および流路部132が収容される。

0038

マイクロポーラス層128は、還元極触媒層122に隣接して配置される。より具体的には、マイクロポーラス層128は、還元極触媒層122の電解質膜110とは反対側の主表面に接するように設けられる。拡散層130は、マイクロポーラス層128に隣接して配置される。より具体的には、拡散層130は、マイクロポーラス層128の還元極触媒層122とは反対側の主表面に接するように設けられる。

0039

拡散層130は、流路部132から供給されるピラジン類を還元極触媒層122に均一に拡散させる機能を担う。拡散層130を構成する材料は、ピラジン類に対して親和性が高いことが好ましい。拡散層130を構成する材料としては、例えば多孔性導電基材や繊維焼結体等が例示される。これらは、ガスおよび液の供給や除去に適した多孔性を有し、且つ十分な電導性を保つことができるため好ましい。拡散層130の厚さは、例えば10〜5000μmである。拡散層130を構成する材料のより具体的な例としては、カーボンの織布(カーボンクロス)、カーボンの不織布、カーボンペーパー等を挙げることができる。

0040

マイクロポーラス層128は、ピラジン類の、還元極触媒層122の面方向への拡散を促す機能を有する。マイクロポーラス層128は、例えば導電性粉末撥水剤とを混練して得られるペースト状の混練物を、拡散層130の表面に塗布し、乾燥させることで形成することができる。導電性粉末としては、例えばバルカン(登録商標)等の導電性カーボンを用いることができる。撥水剤としては、例えば四フッ化エチレン樹脂(PTFE)などのフッ素系樹脂を用いることができる。導電性粉末と撥水剤の割合は、所望の導電性および撥水性が得られる範囲内で適宜定められる。なお、マイクロポーラス層128は、拡散層130と同様にカーボンクロスやカーボンペーパー等で構成することもできる。マイクロポーラス層128の厚さは、例えば1〜50μmである。

0041

流路部132は、拡散層130に隣接して配置される。より具体的には、流路部132は、拡散層130のマイクロポーラス層128とは反対側の主表面に接するように設けられる。流路部132は、板状の本体部132aの主表面に溝132bが設けられた構造を有する。溝132bは、ピラジン類の流路を構成する。本体部132aは、導電性材料からなる。流路部132は、還元極室124内で、還元極触媒層122、マイクロポーラス層128および拡散層130の位置決めをする支持体としても機能する。

0042

スペーサ126は、ピラジン類およびピペラジン類が還元極室124の外へ漏洩することを防ぐシール材を兼ね、好ましくは電子的に絶縁性を有する。スペーサ126を構成する材料としては、例えば4フッ化エチレン樹脂が挙げられる。また、スペーサ126には、還元極室124の内外を連通する、還元極室入口134および還元極室出口136が配置される。

0043

還元極室入口134は、還元極室124の鉛直方向下方に配置される。還元極室入口134は、一端が流路部132の流路に接続され、他端が往路部34aに接続される。還元極室124の外部から供給されるピラジン類は、還元極室入口134を介して還元極室124内に導入される。還元極室124に導入されたピラジン類は、流路部132の溝132b、拡散層130およびマイクロポーラス層128を経由して還元極触媒層122に供給される。

0044

還元極室出口136は、還元極室124の鉛直方向上方に配置される。還元極室出口136は、一端が流路部132の流路に接続され、他端が復路部34bに接続される。還元極室124内のピペラジン類と未反応のピラジン類とは、還元極室出口136を介して還元極室124の外部に排出される。

0045

セパレータ170aは、電解セル100において還元極120側に配置される。本実施の形態では、セパレータ170aは、流路部132の拡散層130とは反対側の主表面に積層される。セパレータ170aを構成する材料としては、例えばSUS、Ti等の金属が挙げられる。

0046

[酸化極]
酸化極150は、電解質膜110の一方の側とは反対側、すなわち還元極120とは反対側に設けられる。本実施の形態では、酸化極150は電解質膜110の他方の主表面に接するように設けられる。酸化極150は、酸化極触媒層152と、酸化極触媒層152を収容する酸化極室154とを備える。また、酸化極150は、スペーサ156、支持用弾性体158、酸化極室入口160および酸化極室出口162を備える。

0047

酸化極触媒層152は、酸化極室154内において、電解質膜110の他方の主表面に接している。酸化極触媒層152は、アノード液中の水を酸化してプロトンを生成するための酸化触媒を含む。酸化極触媒層152に含まれる触媒としては、例えばRu、Rh、Pd、Ir、Ptおよびこれらの少なくとも1つを含む合金からなる群から選択される金属粒子を用いることができる。

0048

酸化触媒は、電子伝導性を有する金属基材分散担持、またはコーティングされてもよい。金属基材は、例えばTi、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Nb、Mo、Ta、Wなどの金属、あるいはこれらを主成分とする合金などで構成される。また、金属基材は、金属繊維繊維径:例えば10〜30μm)、メッシュメッシュ径:例えば500〜1000μm)、金属多孔体の焼結体、発泡成型体フォーム)、エキスパンドメタル等の形態をとり得る。基材の厚さは、例えば50〜1000μmである。

0049

酸化極室154は、電解質膜110と、セパレータ170bと、電解質膜110およびセパレータ170bの間に配置される枠状のスペーサ156とで画成される。酸化極室154には、酸化極触媒層152だけでなく、支持用弾性体158が収容される。また、スペーサ156には、酸化極室154の内外を連通する、酸化極室入口160および酸化極室出口162が配置される。

0050

支持用弾性体158は、酸化極触媒層152に隣接して配置される。より具体的には、支持用弾性体158は、酸化極触媒層152の電解質膜110とは反対側の主表面に接するように設けられる。支持用弾性体158は、酸化極触媒層152を電解質膜110に付勢する機能を有する。酸化極触媒層152を電解質膜110に押し付けることで、電解セル100の電解特性を向上させることができる。支持用弾性体158は、板ばね構造コイル構造等の弾性体構造を有する導電性部材で構成される。また、支持用弾性体158は、耐酸性を有することが好ましい。支持用弾性体158を構成する材料としては、例えばチタンまたはチタン合金が挙げられる。

0051

酸化極室入口160は、酸化極室154の鉛直方向下方に配置される。酸化極室入口160は、一端が酸化極室154内に接続され、他端が往路部44aに接続される。酸化極室154の外部から供給されるアノード液は、酸化極室入口160を介して酸化極室154内に導入される。酸化極室154に導入されたアノード液は、直にまたは支持用弾性体158を介して酸化極触媒層152に供給される。

0052

酸化極室出口162は、酸化極室154の鉛直方向上方に配置される。酸化極室出口162は、一端が酸化極室154内に接続され、他端が復路部44bに接続される。酸化極室154内の酸素ガスと未反応のアノード液とは、酸化極室出口162を介して酸化極室154の外部に排出される。

0053

セパレータ170bは、電解セル100において酸化極150側に配置される。本実施の形態では、セパレータ170bは、支持用弾性体158の酸化極触媒層152とは反対側の主表面に積層される。セパレータ170bを構成する材料は、セパレータ170aと同様である。

0054

上述した構造を備える有機ハイドライド製造装置10は、被水素化物としてのピラジン類(PYR)を電気化学還元反応により水素化して、有機ハイドライドとしてのピペラジン類(PPR)を生成する。電解セル100の各電極で起こる反応は、以下の通りである。
<酸化極での電極反応
2H2O→O2+4H++4e−
<還元極での電極反応>
PYR+4H++4e−→PPR
<全反応>
PYR+2H2O→PPR+O2

0055

すなわち、酸化極150での電極反応と、還元極120での電極反応とが並行して進行する。そして、酸化極150における水の電気分解により生じたプロトン(H+)が、電解質膜110を介して還元極120に供給される。還元極120に供給されたプロトンは、還元極120においてピラジン類の核水素化に用いられる。これにより、ピラジン類が水素化されて、ピペラジン類が生成される。したがって、本実施の形態に係る有機ハイドライド製造装置10によれば、水の電気分解とピラジン類の水添反応とを1ステップで行うことができる。

0056

なお、酸化極150には、アノード液に代えて、水素ガスが供給されてもよい。この場合、酸化極150は、水素ガスからプロトンと電子を生成する。酸化極150に水素ガスが供給される場合、酸化極150の電位は0V(vs.RHE)となる。したがって、酸化極150を参照電極の代わりとして用いることができる。

0057

従来、有機ハイドライドの生成効率の観点から、有機ハイドライドの脱水素化体としては、もっぱらベンゼンやトルエンなどの芳香族炭化水素化合物を用いることが検討されていた。ピリジンキノリンピロール芳香族含有イミン類等の含窒素化合物についても、有機ハイドライドの脱水素化体として使用可能ではあった。しかしながら、含窒素化合物は芳香族炭化水素化合物に比べて電解還元しにくく、したがって有機ハイドライドの生成効率が劣るため、実用化に向けた検討が不十分であった。

0058

本発明者らは、含窒素化合物について鋭意検討を重ねた結果、ピラジンや2,5−ジメチルピラジン等のピラジン類は、他の含窒素化合物に比べて還元反応において高い電流密度が得られることを見出した。つまり、ピラジン類は他の含窒素化合物に比べて、電極面積・時間当たりに水素化できる量が高く、水素化効率が高い。また、本発明者らは、ピラジン類が水素化効率と脱水素化効率とのバランスが取れた化合物であり、且つ高い水素含有率を有することを見出した。つまり、ベンゼンやトルエンは、水素化効率が高い反面、有機ハイドライドから脱水素化する際に高いエネルギーが必要であった。つまり、脱水素化効率が低かった。これに対し、ピラジン類は、他の含窒素化合物に比べて水素含有率や水素化効率が高いことに加え、芳香族炭化水素化合物に比べて脱水素化効率が高いという特徴を有する。

0059

また、ピラジン類をピペラジン類に変換する場合、還元極120にプロトン伝導性物質を供給することで、大きな電流密度を得ることができる。その際の電流密度は、還元時の電流密度が非常に大きいトルエンを上回る。プロトン伝導性物質は、還元極120にプロトンを供給する化合物であり、言い換えればプロトン含有物質である。プロトン伝導性物質としては、ピラジン類を中和することができ且つ還元極120における還元電位に対して安定な酸を使用することができる。好ましくは、プロトン伝導性物質は、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸、ギ酸および酢酸からなる群から選択される少なくとも1種の酸を含む。一例として、プロトン伝導性物質は、酸水溶液の形態で還元極120に供給される。

0060

ピラジン類は塩基性である。一方、電解質膜110は、酸性のアイオノマー(プロトン伝導体)で構成される。また、還元極120中に含まれるアイオノマーも酸性である。このため、ピラジン類が電解質膜110や還元極120中のアイオノマーに接触すると、電解質膜110や還元極120中のアイオノマーにおけるプロトン伝導性が低下してしまう。より具体的には、塩基性のピラジン類が電解質膜110や還元極120中のアイオノマーにおける酸性末端基に結合することで、電解質膜110や還元極120中のアイオノマーにおけるプロトン伝導性が低下する。これにより、電解質膜110や還元極120中のアイオノマーにおけるイオン移動抵抗が増加し、その結果、ピラジン類を還元する際の電流密度が低下する。

0061

これに対し、還元極120にプロトン伝導性物質を供給して、ピラジン類とプロトン伝導性物質との混合状態を形成することで、ピラジン類の塩基性部分である窒素(N)にプロトンを付与することができる。したがって、ピラジン類が電解質膜110や還元極120中のアイオノマーの酸性末端基に結合することを抑制することができる。つまり、酸性の電解質膜110や還元極120中のアイオノマーを塩基性のピラジン類から保護することができる。これにより、ピラジン類によって電解質膜110や還元極120中のアイオノマーのプロトン伝導性が低下することを抑制することができ、還元極120におけるピラジン類の還元反応を進行させることができる。この結果、トルエンを上回る電流密度を得ることができる。

0062

したがって、本実施の形態の有機ハイドライド製造装置10は、還元極120にプロトン伝導性物質を供給する供給部をさらに備える。還元極120にプロトン伝導性物質を供給する方法としては、往路部34aを経由する第1経路と、酸化極150を経由する第2経路とが考えられる。

0063

第1経路が選択される場合、供給部は、ピラジン類とともにプロトン伝導性物質を還元極120に供給する。このときの供給部は、第1供給部33で構成することができる。例えば、ピラジン類とプロトン伝導性物質との混合物が有機物貯蔵槽30に収容され、第1供給部33によって当該混合物が還元極120に供給される。なお、供給部が還元極室124内に直にプロトン伝導性物質を供給し、還元極室124内でプロトン伝導性物質とピラジン類とが混合される構造であってもよい。この場合、供給部は、各種ポンプまたは自然流下式装置等で構成することができる。

0064

第2経路が選択される場合、供給部は、水とともにプロトン伝導性物質を酸化極150に供給する。このときの供給部は、第2供給部43で構成することができる。例えば、水とプロトン伝導性物質との混合物が水貯蔵槽40に収容される。上述のように、アノード液は水に酸を加えた水溶液であり得る。したがって、アノード液自体が、水とプロトン伝導性物質の混合物に相当する。そして、第2供給部43によって当該混合物が酸化極150に供給される。酸化極150に供給されたプロトン伝導性物質は、電解質膜110を通過して還元極120に至る。

0065

つまり、第2経路は、プロトンとともに酸化極150側の物質が電解質膜110を通過するクロスオーバーを利用して、プロトン伝導性物質を還元極120に供給する経路である。なお、供給部が酸化極室154内に直にプロトン伝導性物質を供給する構造であってもよい。この場合、供給部は、各種ポンプまたは自然流下式装置等で構成することができる。

0066

第2経路が選択される場合、電解質膜110を薄膜化することで、酸化極150から還元極120へのプロトン伝導性物質の移動を促進させることができる。このときの電解質膜110の厚さは、好ましくは5〜40μmである。電解質膜110の厚さを40μm以下にすることで、酸化極150から還元極120へのプロトン伝導性物質の移動を促進させることができる。また、電解質膜110の厚さを5μm以上にすることで、還元極120から酸化極150へのピラジン類の過剰な移動を抑制することができる。これにより、ピラジン類の吸着、酸化による酸化極150の劣化を抑制することができる。

0067

また、電解質膜110のイオン交換容量(IEC)を高めることでも、酸化極150から還元極120へのプロトン伝導性物質の移動を促進させることができる。このときの電解質膜110のIECは、好ましくは0.5〜4meq/gである。

0068

好ましくは、還元極120に供給されるプロトン伝導性物質の量は、プロトン伝導性物質により還元極120に放出されるプロトン換算で、ピラジン類の窒素のモル数に対して10モル%以上100モル%以下である。

0069

理論上、ピラジン類中のNのモル数に相当するプロトンを添加することで、Nのすべてにプロトンを付加することができ、ピラジン類が電解質膜110に与える影響を完全に排除することができる。一方で、プロトン伝導性物質はエネルギーキャリアではない。このため、余剰なプロトン伝導性物質の添加は、有機ハイドライド製造装置10によって製造される有機ハイドライド含有液エネルギー密度の低下につながる。したがって、プロトン伝導性物質の量は、供給プロトン量が100モル%以下となる量とすることが好ましい。一方、プロトン伝導性物質の量を、供給プロトン量が10モル%以上となる量とすることで、プロトン伝導性物質の添加による電流密度向上効果を、より確実に発揮することができる。

0070

なお、トルエンは非水溶性である。このため、酸水溶液が還元極120に存在すると、還元極触媒層122においてトルエンの拡散が阻害されてしまう。トルエンの拡散阻害は、電流密度の低下や、電圧の上昇、水素の発生につながる。一方、ピラジン類は水溶性である。このため、酸水溶液によってピラジン類の拡散が阻害されることはない。したがって、有機ハイドライドの脱水素化体としてピラジン類を用いる場合には、拡散阻害による電流密度の低下や、電圧の上昇、水素の発生を懸念することなく、酸水溶液を還元極120に供給することができる。

0071

[有機ハイドライドの製造方法]
本実施の形態に係る有機ハイドライドの製造方法では、プロトン伝導性を有する電解質膜110の一方の側に設けられた還元極120にピラジン類が供給される。また、電解質膜110の他方の側に設けられた酸化極150にアノード液が供給される。そして、酸化極150においてアノード液中の水が酸化されてプロトンが生成される。生成されたプロトンは、電解質膜110を通って還元極120に移動する。還元極120では、電気化学還元反応によってプロトンでピラジン類が水素化され、これにより有機ハイドライドとしてのピペラジン類が生成される。

0072

[エネルギー輸送方法]
本実施の形態に係るエネルギー輸送方法は、電気化学還元反応によってピラジン類を水素化して有機ハイドライドとしてのピペラジン類を生成し、ピペラジン類を生成した場所から他の場所に輸送し、輸送した先で、ピペラジン類を触媒反応によって脱水素化して水素を取り出すことを含む。ピペラジン類は、従来公知の方法で脱水素化することができる。これにより、大規模な再生可能エネルギー生成システムを世界の適地に設置し、得られた再生可能エネルギーを用いてピペラジン類を生成し、ピペラジン類を国内に輸送して水素を取り出すエネルギー供給システムを構築することができる。

0073

ピペラジン類の多くは、水素含有率が高く且つ脱水素化効率が高い。ピペラジン類の水素含有率は、2〜8wt%である。このため、ピラジン類をエネルギーキャリアとして用いることで、全体として効率の高いエネルギー供給システムを実現することができる。ピペラジン類の水素含有率は、輸送効率の観点から5wt%以上であることが好ましい。このようなピペラジン類としては、ピペラジン(水素含有率7.0wt%)、2,5−ジメチルピペラジン(水素含有率5.3wt%)、ペルヒドロ−N−エチルカルバゾール(水素含有率wt5.8%)、2,6−ジメチルデカヒドロ−1,5−ナフチリジン(水素含有率6.0wt%)、テトラデカヒドロフェナジン(tetradecahydrophenazine)(水素含有率7.3wt%)などが挙げられる。これらの中で、ピペラジンおよび2,5−ジメチルピペラジンは、電気化学還元反応によって容易に合成可能である。また、脱水素化も低温且つ低エネルギー投入量で進行する。このため、エネルギーキャリアとして好適である。

0074

以上説明したように、本実施の形態に係る有機ハイドライド製造装置10は、プロトン伝導性を有する電解質膜110と、プロトンでピラジン類を水素化する還元極120と、水を酸化してプロトンを生成する酸化極150とを備える。ピラジン類は、ピラジンおよび2,5−ジメチルピラジンからなる群から選択される少なくとも1種である。有機ハイドライド製造装置10は、ピラジン類を電気化学還元反応により水素化して有機ハイドライドとしてのピペラジン類を生成する。また、本実施の形態に係る有機ハイドライドの製造方法は、還元極120にピラジン類を供給し、酸化極150に水を供給し、酸化極150において水を酸化してプロトンを生成し、電気化学還元反応によってプロトンでピラジン類を水素化して有機ハイドライドとしてのピペラジン類を生成することを含む。これにより、新たな有機ハイドライドの製造技術を提供することができる。

0075

また、ピラジン類は、他の含窒素化合物に比べて高い水素化効率を有する。また、これまで有機ハイドライドとして検討されてきたシクロヘキサンやメチルシクロヘキサンに比べて、ピラジン類の脱水素化に要する理論エネルギーが小さいため、脱水素時に投入するエネルギーを削減することができる。このため、ピラジン類によれば、高い脱水素化効率を達成することができる。したがって、ピラジン類は、水素化効率と脱水素化効率とのバランスが取れたエネルギーキャリアである。また、シクロヘキサンやメチルシクロヘキサンでは、99%以上の脱水素率を得ようとした場合、脱水素反応時の反応温度は350℃以上となる。このため、高い反応温度に耐え得る反応器配管熱媒等が必要であった。これに対し、ピラジン類では、250℃以下の反応温度での脱水素反応で、同じ脱水素率を得ることができる。よって、反応器、配管、熱媒等のコストダウンを図ることができる。したがって、本実施の形態によれば、より効率の高いエネルギー供給システムを構築することができる。

0076

また、有機ハイドライド製造装置10は、還元極120にプロトン伝導性物質を供給する供給部を備える。好ましくは、プロトン伝導性物質は、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸、ギ酸および酢酸からなる群から選択される少なくとも1種を含む。これにより、ピラジン類を還元する際の電流密度を向上させることができる。すなわち、ピラジン類の水素化効率を向上させることができる。

0077

供給部は、ピラジン類とともにプロトン伝導性物質を還元極120に供給する。例えば、ピラジン類とプロトン伝導性物質とが予め混合されて有機物貯蔵槽30に収容され、第1供給部33によって混合物が還元極120に供給される。あるいは、供給部は、水とともにプロトン伝導性物質を酸化極150に供給する。例えば、水とプロトン伝導性物質とが予め混合されて水貯蔵槽40に収容され、第2供給部43によって混合物が酸化極150に供給される。酸化極150に供給されたプロトン伝導性物質は、電解質膜110を通過して還元極120に至る。これにより、プロトン伝導性物質を輸送する新たな構造を追加することなく、還元極120にプロトン伝導性物質を供給することができる。

0078

好ましくは、プロトン伝導性物質の供給量は、プロトン換算でピラジン類の窒素のモル数に対して10モル%以上100モル%以下である。これにより、プロトン伝導性物質の添加による電流密度向上効果をより確実に発揮することができるとともに、有機ハイドライド含有液のエネルギー密度の低下を抑制することができる。

0079

また、本実施の形態に係るエネルギー輸送方法は、電気化学還元反応によってピラジン類を水素化して有機ハイドライドとしてのピペラジン類を生成し、ピペラジン類を輸送し、ピペラジン類を触媒反応によって脱水素化して水素を取り出すことを含む。ピラジン類は、水素化効率と脱水素化効率とのバランスが取れた化合物である。また、ピペラジン類は水素含有率の高い有機ハイドライドである。したがって、エネルギーの貯蔵、輸送にピラジン類−ピペラジン類を利用することで、優れた貯蔵、輸送効率を達成することができる。このため、全体として効率の高いエネルギー供給システムを実現することができる。

0080

本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうるものである。

0081

以下、本発明の実施例を説明するが、これら実施例は、本発明を好適に説明するための例示に過ぎず、なんら本発明を限定するものではない。

0082

試験1)
一般的な厚さ(50μm)の電解質膜を用いて各種の基質に電解還元を施し、その際の電流密度を測定した。

0083

(実施例1−1)
まず、PtRu/C触媒TEC61E54E(Pt23質量%、Ru27質量%、田中貴金属工業株式会社製)の粉末に、5%ナフィオン(登録商標)分散液(デュポン社製)を添加し、適宜溶媒を用いて還元極触媒層用触媒インクを調製した。触媒インクのナフィオン/カーボン比は0.8とした。また、電解質膜として、ナフィオン(登録商標)NRE212CS(厚さ50μm、デュポン社製)を用意した。得られた触媒インクを電解質膜の一方の主表面にスプレー塗布した。触媒インクは、PtとRuの合計質量が電極面積あたり0.5mg/cm2となるように塗布した。その後、塗膜を80℃で乾燥させて触媒インク中の溶媒成分を除去し、電解質膜の一方の主表面に還元極触媒層を形成した。

0084

また、PtCo/C触媒TEC36F52(Pt49質量%、Co3質量%、田中貴金属工業株式会社製)の粉末に、5%ナフィオン(登録商標)分散液(デュポン社製)を添加し、適宜溶媒を用いて酸化極触媒層用の触媒インクを調製した。触媒インクのナフィオン/カーボン比は0.75とした。この触媒インクを、電解質膜の他方の主表面にスプレー塗布した。触媒インクは、PtとCoの合計質量が電極面積あたり0.5mg/cm2となるように塗布した。その後、塗膜を80℃で乾燥させて触媒インク中の溶媒成分を除去し、電解質膜の他方の主表面に酸化極触媒層を形成した。

0085

還元極触媒層および酸化極触媒層のそれぞれの表面上に、MPL(マイクロポーラス層)付きGDL(ガス拡散層)(商品名:SIGRACET GDL 35BC、SGLカーボン社製)を積層した。得られた積層体に温度120℃及び圧力1MPaでのホットプレスを実施した。この積層体の両主表面に、溝状流路を有するセパレータを積層した。溝状流路付きセパレータは、チタン製でサーペンタイン流路(深さ1mm、流路幅1mm、リブ幅1mm)が設けられたものを用いた。また、酸化極側に可逆水素電極(RHE:Reversive Hydrogen Electrode)を設置した。以上の工程により、実施例1−1の電解セルを得た。全ての測定は、可逆水素電極に対する電位を用いて制御した。

0086

この電解セルの還元極側に、ピラジンを流通させた。また、酸化極側に、1M硫酸水溶液を流通させた。ピラジンおよび1M硫酸水溶液の流量は、それぞれ20cc/分とした。そして、温度50℃、電位−0.35V vs.RHEで定電位電解を実施し、還元極に流れる電流密度を測定した。結果を図3に示す。

0087

(実施例1−2)
還元極側に2,5−ジメチルピラジンを流通させた点を除いて、実施例1−1と同様に電解セルの作製、定電位電解、および電流密度の測定を実施した。結果を図3に示す。

0088

(比較例1−1)
還元極側にピロールを流通させた点を除いて、実施例1−1と同様に電解セルの作製、定電位電解、および電流密度の測定を実施した。結果を図3に示す。

0089

(比較例1−2)
還元極側に1,2−ジフェニルエタンイミンを流通させた点を除いて、実施例1−1と同様に電解セルの作製、定電位電解、および電流密度の測定を実施した。結果を図3に示す。

0090

(比較例1−3)
還元極側にトルエンを流通させた点を除いて、実施例1−1と同様に電解セルの作製、定電位電解、および電流密度の測定を実施した。結果を図3に示す。

0091

(試験2)
酸化極側にプロトン伝導性物質としての硫酸水溶液を流通させ、また膜厚の薄い(25μm)電解質膜を用いて各種の基質に電解還元を施し、その際の電流密度を測定した。

0092

(実施例2−1)
電解質膜として、ナフィオン(登録商標)NRE211CS(厚さ25μm、デュポン社製)を用いた点を除いて、実施例1−1と同様に電解セルの作製、定電位電解、および電流密度の測定を実施した。結果を図3に示す。

0093

(実施例2−2)
還元極側に2,5−ジメチルピラジンを流通させた点を除いて、実施例2−1と同様に電解セルの作製、定電位電解、および電流密度の測定を実施した。結果を図3に示す。

0094

(比較例2−1)
還元極側にピロールを流通させた点を除いて、実施例2−1と同様に電解セルの作製、定電位電解、および電流密度の測定を実施した。結果を図3に示す。

0095

(比較例2−2)
還元極側に1,2−ジフェニルエタンイミンを流通させた点を除いて、実施例2−1と同様に電解セルの作製、定電位電解、および電流密度の測定を実施した。結果を図3に示す。

0096

(比較例2−3)
還元極側にトルエンを流通させた点を除いて、実施例2−1と同様に電解セルの作製、定電位電解、および電流密度の測定を実施した。結果を図3に示す。

0097

(試験3)
還元極側に、基質に加えてプロトン伝導性物質としての硫酸水溶液を流通させて各種の基質に電解還元を施し、その際の電流密度を測定した。

0098

(実施例3−1)
還元極側に、ピラジンと硫酸との混合液を流通させた点を除いて、実施例1−1と同様に電解セルの作製、定電位電解、および電流密度の測定を実施した。硫酸混合液において、ピラジンのNと硫酸由来のH+とのモル比を1:1(H+のモル数/Nのモル数=1)とした。結果を図3に示す。

0099

(実施例3−2)
還元極側に2,5−ジメチルピラジンと硫酸水溶液との混合物を流通させた点を除いて、実施例3−1と同様に電解セルの作製、定電位電解、および電流密度の測定を実施した。結果を図3に示す。

0100

(比較例3−1)
還元極側にピロールと硫酸との混合液を流通させた点を除いて、実施例3−1と同様に電解セルの作製、定電位電解、および電流密度の測定を実施した。結果を図3に示す。

0101

(比較例3−2)
還元極側に1,2−ジフェニルエタンイミンと硫酸との混合液を流通させた点を除いて、実施例3−1と同様に電解セルの作製、定電位電解、および電流密度の測定を実施した。結果を図3に示す。

0102

(比較例3−3)
還元極側にトルエンと硫酸との混合液を流通させた点を除いて、実施例3−1と同様に電解セルの作製、定電位電解、および電流密度の測定を実施した。結果を図3に示す。

0103

図3は、各実施例および各比較例における電流密度を示すグラフである。実施例1−1と比較例1−1,1−2との対比、および実施例1−2と比較例1−1,1−2との対比から、ピラジン類であるピラジンおよび2,5−ジメチルピラジンでは、ピロールや1,2−ジフェニルエタンイミンの3〜4倍の電流密度が得られることが確認された。つまり、ピラジン類は、他の含窒素化合物に比べて水素化効率が高いことが確認された。

0104

また、実施例1−1と実施例2−1,3−1との対比、および実施例1−2と実施例2−2,3−2との対比から、還元極にプロトン伝導性物質が供給されることで、ピラジン類の還元反応が促進されることが確認された。また、実施例2−1,2−2から、電解質膜の薄膜化によってプロトン伝導性物質のクロスオーバーが促進され、これによりピラジン類の還元反応が促進されることが裏付けられた。また、実施例3−1,3−2から、還元極に直に(電解質膜を介さずに)プロトン伝導性物質が供給されることで、ピラジン類の還元反応がより一層促進されることが裏付けられた。さらに、実施例3−1,3−2と比較例1−3,2−3,3−3との対比から、プロトン伝導性物質の供給によってトルエンを上回る電流密度が得られることが確認された。

0105

(試験4)
種々の反応温度で2,5−ジメチルピラジンの電解還元を実施し、その際の電流密度を測定した。具体的には、まず実施例1−1と同じ電解セルを用意した。そして、電解セルの還元極側に2,5−ジメチルピラジン(100質量%)を流通させ、酸化極側に1M硫酸水溶液を流通させた。2,5−ジメチルピラジンおよび1M硫酸水溶液の流量は、それぞれ20cc/分とした。そして、反応温度を50℃、80℃および90℃のそれぞれに設定し、酸化極を参照電極として、リニアスイープボルタンメトリー測定により還元極の各電位に対する電流密度を測定した。リニアスイープボルタンメトリー測定における走査速度は、1mV/秒とした。結果を図4に示す。

0106

図4は、電解セルの電位と電流密度との関係を示すグラフである。図4において、破線aが50℃での電流密度であり、一点鎖線bが80℃での電流密度であり、実線cが90℃での電流密度である。図4に示すように、反応温度の上昇にともなって、電流密度が増加することが確認された。また、反応温度50℃では−1.10V近傍以降で、反応温度80℃および90℃では−0.40V近傍以降で、それぞれ副生成物である水素ガスの発生が確認された。

0107

硫酸水溶液中での水素発生電位が−0V付近であり、トルエン電解セルにおける水素発生電位が−0.2V付近であることを考慮すると、ピラジン類の水素発生電位が極めて低いことが分かる。このことから、ピラジン類のNが、触媒であるPt上(もしくはPt合金上)に強く吸着することで、水素発生遅れたと推測される。水素発生電位の低下により、ピラジン類を還元する際に競争的な水素発生が起こりにくくなる。このため、ピラジン類を還元する際の電流効率が向上する。また、この効果は、電極触媒の電流効率劣化の抑制にもつながる。したがって、ピラジン類の還元は、水素発生電位と還元電位とが近いトルエンの還元等に比べて、電解セルの耐久性向上にもつながると推測される。

0108

(試験5)
2,5−ジメチルピラジンにプロトン伝導性物質としての硫酸を添加した場合の電流密度を測定した。具体的には、まず実施例1−1と同じ電解セルを用意した。そして、電解セルの還元極側に、2,5−ジメチルピラジン9.2質量%と1M硫酸水溶液90.8質量%との混合液を流通させ、酸化極側に1M硫酸水溶液を流通させた。混合液における2,5−ジメチルピラジンのNと1M硫酸水溶液由来のH+とのモル比は1:1である。混合液および1M硫酸水溶液の流量は、それぞれ20cc/分とした。そして、温度を50℃に設定し、酸化極を参照電極として、リニアスイープボルタンメトリー測定により還元極の各電位に対する電流密度を測定した。リニアスイープボルタンメトリー測定における走査速度は、1mV/秒とした。結果を図5に示す。

0109

図5は、電解セルの電位と電流密度との関係を示すグラフである。なお、図5には、参考として試験4における反応温度90℃の結果も示す。図5において、実線cが90℃(硫酸添加なし)での電流密度であり、二点鎖線dが2,5−ジメチルピラジンに硫酸を添加したときの電流密度である。図5に示すように、2,5−ジメチルピラジンに硫酸を添加すると、電流密度が著しく増加することが確認された。また、副生成物である水素ガスは発生しなかった。これにより、還元極へのプロトン伝導性物質の供給によって、有機ハイドライドの生成効率が著しく向上することが確認された。

0110

(試験6)
硫酸添加量を変化させた際の電流密度の変化を測定した。具体的には、まず実施例1−1と同じ電解セルを用意した。そして、電解セルの還元極側に、ピラジンと1M硫酸水溶液とを様々な比率で混合した混合液、および2,5−ジメチルピラジンと1M硫酸水溶液とを様々な比率で混合した混合液を流通させ、酸化極側に1M硫酸水溶液を流通させた。混合液および1M硫酸水溶液の流量は、それぞれ20cc/分とした。そして、温度50℃、電位−0.35V vs.RHEで定電位電解を実施し、電流密度を測定した。結果を図6に示す。

0111

図6は、硫酸の添加量と電流密度との関係を示すグラフである。図6では、硫酸添加量の尺度として、ピラジンまたは2,5−ジメチルピラジンのNのモル数に対する1M硫酸水溶液のH+のモル数の割合(以下では適宜、H+/Nとする)を横軸に設定した。図6に示すように、ピラジンと2,5−ジメチルピラジンのいずれにおいても、H+/Nが10%以上で50A/cm2以上の電流密度が得られた。また、H+/Nが100%、つまりNのモル数とH+のモル数が1:1となるまでは、硫酸添加量の増加にともなって電流密度が増加した。H+/Nが100%を超えると、電流密度に変化はなかった。

0112

このことから、プロトン伝導性物質の添加量は、プロトン換算でピラジン類の窒素のモル数に対して10モル%以上100モル%以下が好ましいことが確認された。H+/Nを10%以上とすることで、プロトン伝導性物質の添加による電流密度の向上効果をより確実に得ることができる。また、H+/Nを100%以下とすることで、余剰なプロトン伝導性物質の添加を回避して、エネルギー密度の低下を抑制することができる。なお、本発明者らは、硫酸以外の他のプロトン伝導性物質をピラジンおよび2,5−ジメチルピラジンに添加しても、同様の結果が得られることを確認している。

0113

(試験7)
2,5−ジメチルピラジンの電解還元によって得られる生成物の同定および定量を実施した。具体的には、まず実施例1−1と同じ電解セルを用意した。そして、電解セルの還元極側に、2,5−ジメチルピラジン9.2質量%と1M硫酸水溶液90.8質量%との混合液(NとH+とのモル比1:1)を流通させ、酸化極側に1M硫酸水溶液を流通させた。混合液および1M硫酸水溶液の流量は、それぞれ20cc/分とした。そして、温度50℃、電位−0.2V vs.RHEでの定電位電解を120分間実施し、電流密度を測定した。結果を図7(A)に示す。

0114

また、定電位電解を実施した後の混合液について、ガスクロマトグラフ質量分析装置GC−MS)(製品名:JMS−T100 GCV、JEOL社製)を用いて、生成物を同定した。また、ガスクロマトグラフ水素イオン検出器(GC−FID)(製品名:GC−2025、島津製作所製)を用いて、各生成物を定量した。結果を図7(B)に示す。

0115

図7(A)は、2,5−ジメチルピラジンの電解還元における電流密度の経時変化を示すグラフである。図7(B)は、2,5−ジメチルピラジンの電解還元によって得られる生成物の種類、収率およびファラデー効率を示す図である。なお、図7(B)における収率(mol%)は、基質である2,5−ジメチルピラジンのモル数に対する割合である。

0116

図7(A)に示すように、2,5−ジメチルピラジンの定電位電解では、電流密度は電解初期に若干増加し、その後は漸次減少した。また、試験5でも確認しているが、水素の発生は認められなかった。

実施例

0117

また、図7(B)に示すように、2,5−ジメチルピラジンの電解還元によって、完全水素化体である2,5−ジメチルピペラジンのトランス体およびシス体が生成された。また、それ以外にも、2,5−ジメチルピラジンの部分水素化体であるジヒドロ−2,5−ジメチルピラジンやテトラヒドロ−2,5−ジメチルピラジンも生成された。特にジヒドロ−2,5−ジメチルピラジンの収率が高かった。また、その他の化合物として、ジヒドロ−2,5−ジメチルピラジンの2量化体と推定される化合物も生成された。生成物全体の収率は78%近くであり、非常に高い転化率、つまり非常に高い有機ハイドライドの生成効率であった。

0118

10有機ハイドライド製造装置、 102膜電極接合体、 110電解質膜、 120還元極、 122 還元極触媒層、 150酸化極、 152 酸化極触媒層。

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

関連する公募課題

該当するデータがありません

ページトップへ

技術視点だけで見ていませんか?

この技術の活用可能性がある分野

分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

関連する挑戦したい社会課題一覧

この 技術と関連する公募課題

該当するデータがありません

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ