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技術 非調質鋼およびその製造方法

出願人 JFEスチール株式会社
発明者 安藤佳祐岩本隆西村公宏
出願日 2018年2月28日 (2年8ヶ月経過) 出願番号 2018-035698
公開日 2019年9月12日 (1年1ヶ月経過) 公開番号 2019-151866
状態 未査定
技術分野 鋼の加工熱処理
主要キーワード 丸棒鋼 疲労限度 弾性歪み 非整合 輸送機械 熱間加工温度域 調査内容 限界冷却速度
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2019年9月12日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (2)

課題

強度−靭性バランスに優れる機械構造用部品を安定して作製するための素材に適した、非調質鋼を提供する。

解決手段

C:0.10〜0.25%、Si:0.10〜1.00%、Mn:0.30〜3.00%、P:0.050%以下、S:0.005〜0.150%、Cr:0.10〜2.50%、Al:0.010〜0.080%、Ti:0.25〜0.60%および N:0.0070%以下を、次式(1)で定義されるT1が3.0以下、かつ次式(2)で定義されるT2が1620〜1750となる範囲で含有し、残部はFeおよび不可避不純物成分組成とし、ベイナイト相面積率が70%以上の組織とする。 T1=(C /12)/(Ti/48) ・・・・(1) T2=−7430/[Log(C×Ti)−3.23] ・・・・(2) ここで、各元素記号は該元素含有量(質量%)を示す。

概要

背景

自動車をはじめとして、輸送機械建設機械に用いられる構造部品には、機械構造用炭素鋼機械構造用合金鋼焼入れ焼戻し調質鋼だけでなく、焼入れ焼戻しによらず鋼の化学成分や組織の調整によって強度を確保した非調質鋼が用いられている。

このような用途に用いられる非調質鋼は、V やNbを添加したフェライトパーライト二層組織が一般的であり、調質鋼に比べると、引張強度を同程度にした場合には、降伏強度絞り値および衝撃値が低く、一方降伏強度を同程度とした場合には、引張強度すなわち硬度過度に上昇し、切削性が低下することが指摘されていた。

上記の背景の下、特許文献1および特許文献2には、高強度で高降伏比、かつ高靱性な非調質鋼を得るために、フェライト、ベイニティックフェライト疑似マルテンサイトを有する組織をそなえた鋼材を、冷間加工後、600℃ 以下で時効処理し、CuおよびTi-Nb系炭化物析出させる技術が開示されている。

しかしながら、実際の製造において、上記したような複数の組織の比率厳格に制御することは極めて難しい。さらに、多量のCu添加による析出強化を利用する場合には高温割れ防止のために高価なNiを多量に添加する必要があるため、大量消費される構造部品としては適当ではないという問題もあった。

また、特許文献3には、強度、靭性に加え、被削性にも優れたベイナイト型非調質鋼を得るため、MnSよりも切削加工時の潤滑効果の大きい、Ti炭硫化物を適切なサイズ、清浄度コントロールさせる技術が開示されている。しかしながら、本発明者らの調査によれば、TiおよびCの添加量バランス熱間加工時の加熱および冷却の条件次第では、分散粒子によるピン止め力が低下し、オーステナイト粒が粗大化する結果、靭性が低下する場合のあることが知見された。

概要

強度−靭性バランスに優れる機械構造用部品を安定して作製するための素材に適した、非調質鋼を提供する。C:0.10〜0.25%、Si:0.10〜1.00%、Mn:0.30〜3.00%、P:0.050%以下、S:0.005〜0.150%、Cr:0.10〜2.50%、Al:0.010〜0.080%、Ti:0.25〜0.60%および N:0.0070%以下を、次式(1)で定義されるT1が3.0以下、かつ次式(2)で定義されるT2が1620〜1750となる範囲で含有し、残部はFeおよび不可避不純物成分組成とし、ベイナイト相面積率が70%以上の組織とする。 T1=(C /12)/(Ti/48) ・・・・(1) T2=−7430/[Log(C×Ti)−3.23] ・・・・(2) ここで、各元素記号は該元素含有量(質量%)を示す。なし

目的

本発明は、上述した従来技術の問題を解決し、強度−靭性バランスに優れる機械構造用部品を安定して作製するための素材に適した、非調質鋼およびその製造方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

質量%で、C:0.10〜0.25%、Si:0.10〜1.00%、Mn:0.30〜3.00%、P:0.050%以下、S:0.005〜0.150%、Cr:0.10〜2.50%、Al:0.010〜0.080%、Ti:0.25〜0.60%およびN:0.0070%以下を、次式(1)で定義されるT1が3.0以下、かつ次式(2)で定義されるT2が1620〜1750となる範囲で含有し、残部はFeおよび不可避不純物成分組成を有し、ベイナイト相面積率が70%以上の組織を有する非調質鋼。T1=(C /12)/(Ti/48)・・・・(1)T2=−7430/[Log(C×Ti)−3.23]・・・・(2)ここで、各元素記号は該元素含有量(質量%)を示す。

請求項2

前記成分組成は、さらに、質量%でMo:1.0%以下、Nb:0.3%以下、V:0.3%以下、W:0.3%以下およびB:0.0100%以下のうちから選んだ1種以上を含む請求項1に記載の非調質鋼。

請求項3

前記成分組成は、さらに、質量%でCu:1.0%以下およびNi:1.0%以下のうちから選んだ1種以上を含む請求項1または2に記載の非調質鋼。

請求項4

質量%で、C:0.10〜0.25%、Si:0.10〜1.00%、Mn:0.30〜3.00%、P:0.050%以下、S:0.005〜0.150%、Cr:0.10〜2.50%、Al:0.010〜0.080%、Ti:0.25〜0.60%およびN:0.0070%以下を、次式(1)で定義されるT1が3.0以下、かつ次式(2)で定義されるT2が1620〜1750となる範囲で含有し、残部はFeおよび不可避不純物の成分組成を有する鋼材に、加熱温度が1300℃以下および仕上温度が850℃以上1300℃以下の熱間加工を施し、次いで700〜550℃の温度域を0.5℃/s以上で冷却する非調質鋼の製造方法。T1=(C /12)/(Ti/48)・・・・(1)T2=−7430/[Log(C×Ti)−3.23]・・・・(2)ここで、各元素記号は該元素の含有量(質量%)を示す。

請求項5

前記成分組成は、さらに、質量%でMo:1.0%以下、Nb:0.3%以下、V:0.3%以下、W:0.3%以下およびB:0.0100%以下のうちから選んだ1種以上を含む請求項4に記載の非調質鋼の製造方法。

請求項6

前記成分組成は、さらに、質量%でCu:1.0%以下およびNi:1.0%以下のうちから選んだ1種以上を含む請求項4または5に記載の非調質鋼の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、熱間圧延ままの非調質材であっても調質材と同等以上の引張強度靭性バランスを有する非調質鋼、特に自動車および各種産業機械で使用される機械構造用部品として好適な非調質鋼に関するものである。

背景技術

0002

自動車をはじめとして、輸送機械建設機械に用いられる構造部品には、機械構造用炭素鋼機械構造用合金鋼焼入れ焼戻し調質鋼だけでなく、焼入れ焼戻しによらず鋼の化学成分や組織の調整によって強度を確保した非調質鋼が用いられている。

0003

このような用途に用いられる非調質鋼は、V やNbを添加したフェライトパーライト二層組織が一般的であり、調質鋼に比べると、引張強度を同程度にした場合には、降伏強度絞り値および衝撃値が低く、一方降伏強度を同程度とした場合には、引張強度すなわち硬度過度に上昇し、切削性が低下することが指摘されていた。

0004

上記の背景の下、特許文献1および特許文献2には、高強度で高降伏比、かつ高靱性な非調質鋼を得るために、フェライト、ベイニティックフェライト疑似マルテンサイトを有する組織をそなえた鋼材を、冷間加工後、600℃ 以下で時効処理し、CuおよびTi-Nb系炭化物析出させる技術が開示されている。

0005

しかしながら、実際の製造において、上記したような複数の組織の比率厳格に制御することは極めて難しい。さらに、多量のCu添加による析出強化を利用する場合には高温割れ防止のために高価なNiを多量に添加する必要があるため、大量消費される構造部品としては適当ではないという問題もあった。

0006

また、特許文献3には、強度、靭性に加え、被削性にも優れたベイナイト型非調質鋼を得るため、MnSよりも切削加工時の潤滑効果の大きい、Ti炭硫化物を適切なサイズ、清浄度コントロールさせる技術が開示されている。しかしながら、本発明者らの調査によれば、TiおよびCの添加量のバランスや熱間加工時の加熱および冷却の条件次第では、分散粒子によるピン止め力が低下し、オーステナイト粒が粗大化する結果、靭性が低下する場合のあることが知見された。

先行技術

0007

特開2001−123224号公報
特開2001−131680号公報
特許第3489655号公報

発明が解決しようとする課題

0008

本発明は、上述した従来技術の問題を解決し、強度−靭性バランスに優れる機械構造用部品を安定して作製するための素材に適した、非調質鋼およびその製造方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0009

本発明者らは、上記課題を解決するため、熱間加工後の強度並びに靭性に及ぼす、成分および組織の影響について鋭意検討を行った。その結果、以下のa)〜c)の事項見出すに到った。
a)熱間加工後の鋼組織面積率で70%以上のベイナイトにすることにより、優れた強度−靭性バランスを得ることができる。
b)靭性の向上には、上記a)のベイナイト組織化に加え、該組織中の固溶C量を減少させることが効果的である。そのため、炭化物形成により、固溶C量を減少せしめるTiを、鋼材中のC含有量に応じた、所定量以上で添加する必要がある。
c)熱間加工の加熱時に未固溶となるTi炭化物量を増やせば、該析出物によるピンニング効果が発揮され、非調質ままで微細なベイナイト組織を得ることができる。一方で、TiとCを過剰に添加すると、オーステナイト粒が顕著に微細化し、焼入れ性が低下するため、上記a)で述べた所望のベイナイト組織を得ることが困難となる。また、未固溶のTi炭化物量が少ない場合、オーステナイト粒が粗大化するため、微細ベイナイト組織に比べて靭性が劣位になる。そのため、安定的に優れた強度−靭性バランスを得るためには、CとTiの含有量を厳密に制御する必要がある。

0010

本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、その要旨構成は以下のとおりである。
1.質量%で、
C:0.10〜0.25%、
Si:0.10〜1.00%、
Mn:0.30〜3.00%、
P:0.050%以下、
S:0.005〜0.150%、
Cr:0.10〜2.50%、
Al:0.010〜0.080%、
Ti:0.25〜0.60%および
N:0.0070%以下
を、次式(1)で定義されるT1が3.0以下、かつ次式(2)で定義されるT2が1620〜1750となる範囲で含有し、残部はFeおよび不可避不純物成分組成を有し、ベイナイト相の面積率が70%以上の組織を有する非調質鋼。
T1=(C /12)/(Ti/48) ・・・・(1)
T2=−7430/[Log(C×Ti)−3.23] ・・・・(2)
ここで、各元素記号は該元素の含有量(質量%)を示す。

0011

2.前記成分組成は、さらに、質量%で
Mo:1.0%以下、
Nb:0.3%以下、
V:0.3%以下、
W:0.3%以下および
B:0.0100%以下
のうちから選んだ1種以上を含む前記1に記載の非調質鋼。

0012

3.前記成分組成は、さらに、質量%で
Cu:1.0%以下および
Ni:1.0%以下
のうちから選んだ1種以上を含む前記1または2に記載の非調質鋼。

0013

4.質量%で、
C:0.10〜0.25%、
Si:0.10〜1.00%、
Mn:0.30〜3.00%、
P:0.050%以下、
S:0.005〜0.150%、
Cr:0.10〜2.50%、
Al:0.010〜0.080%、
Ti:0.25〜0.60%および
N:0.0070%以下
を、次式(1)で定義されるT1が3.0以下、かつ次式(2)で定義されるT2が1620〜1750となる範囲で含有し、残部はFeおよび不可避不純物の成分組成を有する鋼材に、加熱温度が1300℃以下および仕上温度が850℃以上1300℃以下の熱間加工を施し、次いで700〜550℃の温度域を0.5℃/s以上で冷却する非調質鋼の製造方法。
T1=(C /12)/(Ti/48) ・・・・(1)
T2=−7430/[Log(C×Ti)−3.23] ・・・・(2)
ここで、各元素記号は該元素の含有量(質量%)を示す。

0014

5.前記成分組成は、さらに、質量%で
Mo:1.0%以下、
Nb:0.3%以下、
V:0.3%以下、
W:0.3%以下および
B:0.0100%以下
のうちから選んだ1種以上を含む前記4に記載の非調質鋼の製造方法。

0015

6.前記成分組成は、さらに、質量%で
Cu:1.0%以下および
Ni:1.0%以下
のうちから選んだ1種以上を含む前記4または5に記載の非調質鋼の製造方法。

発明の効果

0016

本発明によれば、強度−靭性バランスに優れた機械構造用部品を、安定的に作製するための素材に適した、非調質鋼およびその製造方法を提供することができる。すなわち、輸送機械や建設機械に用いられる各種構造部品を、本発明鋼を用いて作製した場合に、非調質ままで高強度および靭性に優れた部品を量産することが可能になる。

図面の簡単な説明

0017

回転曲げ疲労試験片の形状を示す図である。
強度−靭性バランスを発明例と比較例とで比較するためのグラフである。

0018

まず、本発明において、鋼の成分組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。なお、成分に関する「%」表示は、特に断らない限り質量%を意味するものとする。
C:0.10〜0.25%
Cは、Tiと共に熱間加工時の加熱温度で安定に存在するTi炭化物を形成するため、組織の微細化に有効な元素である。また、ベイナイト相の生成ならびに強度向上にも寄与するため、0.10%以上の添加を必要とする。一方、C含有量が0.25%を超えると、固溶C量の増加によりベイナイト相の靭性が低下するため、C量は0.25%以下とする。好ましくは0.14%以上0.22%以下の範囲である。

0019

Si:0.10〜1.00%
Siは、脱酸だけでなく、ベイナイト相の生成に有効なために、0.10%以上で添加する。一方、Si 量が1.00%を超えると、フェライト相およびベイナイト相に固溶し、その固溶硬化により、靭性および機械加工性劣化させるため、Si量は1.00%以下とする。好ましくは0.10%以上0.50%以下の範囲である。

0020

Mn:0.30〜3.00%
Mnは、ベイナイト相の生成ならびに強度向上に有効なために添加する。しかしながら、Mn量が0.30%未満では、ベイナイト相の生成量が少なくなり、靭性確保が困難となる。したがって、Mn量は0.30%以上で添加する。一方、3.00%を超えると焼入れ性が顕著に向上し、靭性に悪影響を及ぼす島状マルテンサイト等の硬質層が形成されるため、Mn量は3.00%以下とする。好ましくは0.80%以上2.00%以下の範囲である。

0021

P:0.050%以下
Pは、結晶粒界偏析し、靭性および疲労強度を低下させるため、低いほど望ましい。具体的には、0.050%を超えると、上記弊害が現れるため、P量は0.050%以下とした。一方、0.003%未満に低減するには多大な製造コストを要することから、コストの観点からは、0.003%を下限とすることが好ましい。

0022

S:0.005%〜0.150%
Sは、Mnと硫化物を形成し、被削性を向上させる作用を有する。そのためには、0.005%以上で含有させる。一方、過剰な添加は、部品の疲労強度および靭性を低下させるため、上限を0.150%とした。好ましくは0.010%以上0.060%以下の範囲である。

0023

Cr:0.10〜2.50%
Crは、ベイナイト相の生成ならびに強度向上に有効なため添加する。しかしながら、Cr量が0.10%未満の場合、ベイナイト相の生成量が少なくなり、靭性確保が困難となる。したがって、Cr量は0.10%以上とする。一方、2.50%を超えると焼入れ性が顕著に向上し、靭性に悪影響を及ぼす島状マルテンサイト等の硬質層が形成されるため、Cr量は2.50%以下とする。好ましくは、0.50%以上1.50%以下の範囲である。

0024

Al:0.010〜0.080%
Alは、脱酸に必要な元素であるが、0.010%未満ではその効果が十分に得られない。一方、0.080%を超えると、その効果が飽和するとともに連続鋳造時ノズル詰まりの発生や、アルミナクラスター介在物発現により靭性や疲労強度の低下を招く。従って、Al量は0.010〜0.080%の範囲に限定した。好ましくは0.020〜0.050%の範囲である。

0025

Ti:0.25〜0.60%
Tiは、Cと共に熱間加工時の加熱温度で安定に存在するTi炭化物を形成するため、組織の微細化に有効な元素である。このような効果を発揮させるためには、0.25%以上の添加が必要である。一方、その効果は0.60%で飽和し、かつ0.60%を超える添加はコスト増をまねく。従って、Ti量は0.25〜0.60%の範囲に限定した。好ましくは0.30〜0.50%の範囲である。

0026

N:0.0070%以下
Nは、Tiと結合してTiNを形成し、オーステナイト結晶粒の微細化に寄与する元素である。しかし、TiNの形成により、熱間加工温度でのオーステナイト粒微細化に寄与するTi炭化物量が減少してしまうだけでなく、過剰に添加すると凝固時の鋼塊気泡が発生したり、鍛造性の劣化を招くため、上限を0.0070%とする。好ましくは0.0020〜0.0070%の範囲である。

0027

本発明では、各々の元素が単に上記の範囲を満足するだけでは不十分であり、次式(1)で定義されるT1が3.0以下、かつ次式(2)で定義されるT2が1620〜1750となる範囲を満足させることが重要である。
T1=(C /12)/(Ti/48) ・・・・(1)
T2=−7430/[Log(C×Ti)−3.23] ・・・・(2)
ここで、各元素記号は該元素の含有量(質量%)を示す。

0028

すなわち、ベイナイト組織からなる非調質鋼の靭性は、固溶C量の増加に伴い低下するため、炭化物形成を通して固溶C量を減少せしめるTiについて、鋼材中のC添加量に応じた、所定量以上を添加する必要がある。ここで、上記したT1はベイナイト組織中の固溶C量を表すパラメータであり、T1が3.0を超えると固溶C量が増加してしまうため、靭性の向上効果が得られなくなる。そのため、T1は3.0以下とする。

0029

次に、熱間加工の加熱時に未固溶となるTi炭化物量を増やせば、該析出物によるピンニング効果が発揮され、非調質ままで微細なベイナイト組織を得ることができる。ここで、上記したT2は、微細化に寄与するTi炭化物の必要量を表すパラメータであり、T2が1620以下の場合、Ti炭化物量が不足し、ピンニング力が低下するため、オーステナイト粒が粗大化し、靭性が低下してしまう。一方、T2が1750を超えると、オーステナイト粒が顕著に微細化し、焼入れ性が低下するため、面積率で70%以上のベイナイト組織を得ることが困難となる。そのため、T2は1620〜1750とする。

0030

本発明における鋼中成分は、上記成分を含み、残部はFeおよび不可避不純物である。さらに、本発明の作用効果を損なわない範囲にて、他の特性付与等を目的として、以下の選択成分を添加することが出来る。

0031

Mo:1.0%以下
Moは、焼入れ性および靭性を向上させるため、添加することができる。添加する場合は、0.05%以上とすることが好ましい。一方、その効果は1.0%を超えると飽和し、かつ1.0%を超えて添加するとコスト増になるため、上限を1.0%とすることが好ましい。より好ましくは、0.10〜0.50%の範囲である。

0032

Nb:0.3%以下
Nbは、結晶粒を微細化し、粒界強化して靭性および疲労強度の向上に寄与する。そのためには、0.05%以上で添加することが好ましい。一方、その効果は0.3%を超えると飽和し、かつコスト増をまねくため、上限を0.3%とすることが好ましい。より好ましくは、0.10〜0.20%の範囲である。

0033

V:0.3%以下
Vは、Nbと同じく炭窒化物形成元素であり、結晶粒を微細化し、粒界を強化して靭性および疲労強度の向上に寄与する。そのためには、0.05%以上で添加することが好ましい。一方、その効果は0.3%を超えると飽和し、かつコスト増をまねくため、上限を0.3%とすることが好ましい。より好ましくは、0.10〜0.20%の範囲である。

0034

W: 0.3%以下
Wは、Tiと共に析出物を形成して靭性および疲労強度の向上に寄与する。そのためには、0.05%以上で添加することが好ましい。一方、その効果は0.3%を超えると飽和し、かつコスト増をまねくため、上限を0.3%とすることが好ましい。より好ましくは、0.10〜0.20%の範囲である。

0035

B:0.0100%以下
Bは、微量の添加により焼入れ性を確保するのに有効な元素であり、そのためには0.0005%以上で添加することが好ましい。一方、0.0100%を超えて添加しても、上記の効果が飽和する。よって、上限は0.0100%とすることが好ましい。より好ましくは、0.0010〜0.0040%の範囲である。

0036

Cu:1.0%以下
Cuは、焼入性の向上に寄与するとともに、靱性の向上に有用な元素である。これらの効果を得るためには、Cuは0.01%以上とすることが好ましい。一方、Cu含有量が1.0%を超えると、圧延材表面肌荒れてしまい、疵として残存する懸念がある。そこで、上限は1.0%とすることが好ましい。より好ましくは、0.10〜0.50%の範囲である。

0037

Ni:1.0%以下
Niは、焼入性の向上に寄与するとともに、靱性の向上に有用な元素である。これらの効果を得るためには、Niは0.01%以上とすることが好ましい。一方、1.0%を超えて含有されても、上記の効果が飽和する。よって、上限は1.0%とすることが好ましい。より好ましくは、0.10〜0.50%の範囲である。

0038

次に、本発明における非調質鋼の鋼組織を前記の範囲に限定した理由を説明する。
ベイナイト相:組織全体に対する面積率で70%以上
本発明では、ベイナイト相を組織全体に対する面積率で70%以上とすることが重要である。本発明では、熱間加工温度域におけるオーステナイト粒のピンニングに、当該温度域で未固溶となるTi炭化物を活用する。該析出物は非整合で存在することから、弾性歪みエネルギー(整合歪み)が小さく、析出物起因の靭性低下リスクを最小限に抑制することが可能となる。一方で、熱間加工後の冷却過程において、微細なTi炭化物が析出すると、靭性向上の観点からは不利となる。この点、ベイナイト変態過程は、フェライト−パーライト変態過程に比べ、母相中にTi炭化物が生成し難い。したがって、本発明の非調質鋼の鋼組織はベイナイト相を主体とする。具体的には、ベイナイト相を組織全体に対する面積率で70%以上とする。好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。また100%であってもよい。なお、ベイナイト相以外の組織としては、フェライト相、パーライト相またはマルテンサイト相等が考えられるが、これらの組織は少ないほど好ましいのは言うまでもない。

0039

ここに、各相の面積率は、次のようにして求めることができる。すなわち、得られた非調質鋼から試験片採取し、圧延方向に平行な垂直断面(L断面)について、研磨後ナイタールで腐食し、光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、L断面組織観察(400倍の光学顕微鏡組織観察)により相の種類を同定し、各相の面積率を求める。なお、島状マルテンサイトは光学顕微鏡では判定が困難であることから、SEMを用いて観察する。島状マルテンサイトは SEMにより、白く浮き立った部分として観察されるため、少なくとも5視野ミクロ組織写真画像処理することによって、それらの面積率の平均値から算出することができる。

0040

次に、本発明の製造条件について説明する。
すなわち、上記した成分組成を有する鋼材を加熱後、仕上温度が850℃以上1300℃以下の熱間加工を施し、次いで700〜550℃の温度域を0.5℃/s以上で冷却することによって、非調質鋼を製造する。以下、製造工程毎要件について説明する。
[鋼材加熱温度:1300℃以下]
熱間加工に先立つ鋼材加熱を、1300℃超えとした場合、組織の微細化に寄与するTi炭化物量の確保が困難となるため、該加熱温度は1300℃以下とする。一方、下限については、次工程の熱間加工における仕上温度を確保するために、900℃以上とすることが望ましい。なお、加熱に供する鋼材は、鋼片であっても、熱間圧延や熱間鍛造を経た鋼片や棒鋼であってもよい。

0041

[熱間加工における仕上温度:850℃以上1300℃以下]
この仕上げ温度が850℃未満ではフェライト組織が生成するため、母相を面積率で70%以上のベイナイト組織とするためには不利である。また、圧延荷重が高くなって、圧延材の真円度も悪化する。このため、仕上温度を850℃以上とする。また、仕上温度を1300℃超えとした場合、組織微細化に寄与するTi炭化物量の確保が困難となるため、仕上温度の上限は、1300℃とする。

0042

なお、熱間加工としては、熱間鍛造および熱間圧延のいずれか一方または両方を適用することができ、本発明の非調質鋼を用いる部材の形状に応じて適宜選択使用すればよい。なお、熱間加工として熱間圧延と熱間鍛造の両方を行う場合は、最終の熱間加工について、上記の加熱温度および仕上温度の条件を適用すればよい。

0043

[冷却:700〜550℃の温度域を0.5℃/s以上]
熱間加工後に微細析出物が析出して靭性が損なわれないよう、上述したベイナイト組織を得るためには、熱間加工後の冷却速度を規定する必要がある。すなわち、微細析出物の析出温度範囲である700〜550℃の温度域を、微細析出物が得られる限界冷却速度(0.5℃/s)以上で冷却する必要がある。

0044

以下、実施例に従って、本発明の構成および作用効果をより具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲内にて適宜変更することも可能であり、これらは何れも本発明の技術的範囲に含まれる。
表1に示す成分組成の鋼(No.1〜43)を150kg真空溶解炉にて溶製し、連続鋳造して得た鋼材を1250℃に加熱したのち、仕上温度が1050℃の熱間圧延を行い、その後1℃/sで室温まで冷却し50mmφの丸棒鋼とした。得られた丸棒鋼をさらに、種々の温度で加熱後、1150℃にて仕上げ圧下率40%の熱間鍛造を行って30mmφの棒鋼に仕上げたのち、1.2℃/sまたは0.1℃/s(表2参照)で室温まで冷却した。
ここで、表1中に示す鋼No.1〜23は成分組成が本発明を満足する発明鋼であり、鋼No.24〜43は成分組成が本発明を満足しない比較鋼であり、表2中のNo.44〜46は、鍛造後の冷却速度、熱間鍛造前の加熱温度および熱間鍛造の仕上げ温度のいずれかが本発明の規定値から外れた比較例である。

0045

0046

得られた棒鋼に対して、組織観察、引張試験シャルピー衝撃試験および小野式回転曲げ疲労試験を実施した。以下にそれぞれの調査内容について詳細に説明する。

0047

組織観察
組織観察は、熱間鍛造により得られた直径30mmφの棒鋼から試験片を採取し、鍛造方向に平行な垂直断面(L断面)について、研磨後ナイタールで腐食し、光学顕微鏡およびSEMを用い、断面組織観察により相の種類を同定し、各相の面積率を求めた。

0048

引張試験
引張試験はJIS4号引張試験片を30mmφの棒鋼中心部から採取し、引張強度を調査した。

0049

シャルピー衝撃試験
シャルピー衝撃試験はJIS3号試験片を30mmφの棒鋼中心部から採取し、室温での衝撃値を評価した。

0050

回転曲げ疲労特性
直径30mmφの棒鋼から、図1に示す平行部直径6mmの試験片を採取した。得られた試験片に対して、小野式回転曲げ疲労試験機を用い、回転数:3000rpmで実施し、107回を疲労限度として、回転曲げ疲労強度を測定した。

0051

表2および図2に上記調査の結果を示す。本発明例(No.1〜23)は、比較例(No.24〜46)に対し、優れた強度−靭性バランスを有することが認められた。

実施例

0052

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