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概要
背景
従来から、汚れの性状により洗浄剤の主成分として、界面活性剤、無機アルカリ系洗浄剤、又は有機酸系洗浄剤が使用されている。尚、「洗剤」という用語は、界面活性剤を主成分とする場合に主に使用され、洗浄効果を発揮する成分を意味する洗浄剤と区別して使用される場合があるので、本明細書において、洗浄効果を発揮できる成分として「洗浄剤」という用語を使用する。
上記無機アルカリ系洗浄剤の成分として、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3、別名、重炭酸曹達、又は重曹、以下、重曹ということがある。)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、過炭酸ナトリウム(2Na2CO3・3H2O2)、セスキ炭酸ナトリウム(Na2CO3・NaHCO3)が知られている。これらの無機アルカリ系洗浄剤は、界面活性剤を含む洗剤と比較して、一般に衣類等の洗浄力には劣るものの、すすぎが容易で特有の洗浄効果も発揮できるので、家庭内のキッチン洗浄、洗濯、油の汚れ落とし、鍋のコゲ落とし、入浴剤等への使用が知られている。日本国内では江戸時代や、物資の不足した第二次大戦中に、植物灰の灰汁(あく)から該灰汁の主成分である炭酸カリウム(K2CO3)を抽出して洗濯に使用していた経緯がある。
重曹は他の無機アルカリ系洗浄剤と比較した特徴は、その水溶液のpH値が多少低い点と、水溶液への溶解度が相当に低い点等が挙げられる。
無機アルカリ系洗浄剤成分として使用される際、20℃において炭酸ナトリウムと炭酸カリウムの水溶液pHはそれぞれ約11.2〜11.6程度、過炭酸ナトリウムの水溶液pHは10〜11程度、セスキ炭酸ナトリウムの水溶液pHは9.6〜10程度であるのに対し、20℃における重曹水溶液のpHは、濃度1〜50g/水1リットル(L)でpH8.4〜8.0程度と相対的にも弱いアルカリ性である。重曹の水溶液は他の無機アルカリ系洗浄剤と比較してpHがより弱アルカリ性であるので取扱いが容易である。重曹は、自然界に存在する天然の素材で、河川や海への環境負荷が低いことから、30年〜40年ほど前から自然環境への意識の高まりにより、家庭内で、洗浄効果、消臭効果に着目したいろいろな使用方法が工夫されてきている。
一般に、アルカリ系洗浄剤は、皮脂、タンパク質汚れ、油汚れを落とすことができる。衣類に付着する皮脂は通常その大半がトリグリセリドと遊離脂肪酸成分で占められている。この皮脂汚れをアルカリ性洗浄剤で洗浄すると皮脂はケン化されてグリセリンと石ケンになり、衣類から脱離して水相に溶解する。また、衣類に付着する汗、垢、血液等の汚れ、肉と魚等の食品汚れはタンパク質成分からなっているが、該タンパク質は多くのL−アミノ酸が鎖状に多数連結してできた高分子化合物である。この汚れの高分子化合物はアルカリ性洗浄剤によりその連結が切断されるか又は弱められて、衣類の繊維から脱離して洗い流される。重曹は炭酸ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウムと比較して弱アルカリ性であるので、軽い汚れ落としには使用できるが、汚れがひどい場合には炭酸ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、又は界面活性剤を使用するのが望ましい。
重曹の特徴は、上記pHが比較的低い他に、他のアルカリ系洗浄剤と比較して水への溶解度が比較的低い点、粒子状態ではその表面が比較的柔らかく、被洗浄物の表面を傷つけづらい点、重曹微粒子は研磨作用を発揮できる点等を利用し、重曹を比較的少量の水に溶いてペースト状にして、被洗浄物の汚れ部分の表面に張り付け、その後スポンジ、ブラシ等で擦ることにより頑固な油汚れ等を取り除くことが可能になる。また、重曹を洗浄剤、研磨剤等に使用する場合、粉体状であると被洗浄物の表面に密着しづらいのでペースト状にすると被洗浄物の表面に付着し易くなる。
従って、重曹を洗浄剤等に利用する場合、重曹粉末を水溶液に完全に溶解した重曹水、又は重曹を少量の水と混合して得られる重曹ペーストのいずれかとして、その用途に合わせて使い分けすることが可能である。
下記特許文献1には、炭酸水素ナトリウム水性スラリーに少量の脂肪酸または脂肪酸塩が含まれる洗浄剤が開示され、下記特許文献2には、特定の平均粒子径と粒度分布を有する炭酸水素ナトリウム粒子と、脂肪酸または脂肪酸塩と、分散媒とを含むスラリーで、特定粘度のスクラブ性洗浄剤組成物が開示され、下記特許文献3には、炭酸水素ナトリウムと界面活性剤とを含み、且つ、該炭酸水素ナトリウムの少なくとも一部が、固体の状態で存在する洗浄剤組成物が開示されている。
一方、重曹は抗菌性を有していないことから、主成分として重曹が含まれる洗浄剤組成物に、保管時及び使用時にグラム陰性菌、グラム陽性菌等に対する抗菌性を付与するために、抗菌剤を含有させることが望ましい。
尚、「抗菌」という用語は、一般に菌の増殖を抑制、あるいは阻害するという意味に使用され、「殺菌」いう用語は一般に、菌を殺す、又は増殖を抑止するに意味使用されていることから、抗菌剤は殺菌剤と多少異なる意味合いもあるが、ほぼ同義語として扱われる場合も多い。しかし、「殺菌」という表現は、薬事法で洗剤や漂白剤などの「雑貨品」については使用できないことになっていることから、本明細書において、主として「抗菌」という用語を使用する。また、「除菌」は、一般に限られた空間中の微生物の数を減らし、清浄度を高める意味に使用されており、食品衛生法の省令では「ろ過等により、原水等に由来して当該食品中に存在し、かつ、発育し得る微生物を除去することをいう」と規定されている。
抗菌剤は、一般に無機系抗菌剤と有機系抗菌剤の二種類に分類される。無機系抗菌剤としては銀、銅、亜鉛化合物等の金属イオンの静菌作用を利用したもので、これらの中で効果に優れる銀イオンが主として使用されている。一方、有機系抗菌剤は更に天然系抗菌剤と合成系抗菌剤とに分けられ、天然系抗菌剤としては、カテキン、カラシ等の植物由来、キチン、キトサン等の動物・魚由来のものが知られている。合成系抗菌剤としては、ビグアナイド系、第四級アンモニウム塩系、ピリジニウム系、ピリジン系、キノリン系、ジスルフィド系、オキサゾリン系、トリアゾール系、ヒダントイン系、ピリチオン系、モルフォリン系、ジフェニルエーテル系が知られている。
下記特許文献4には、洗浄剤成分である炭酸水素ナトリウムに無機系抗菌剤である銀、銅、亜鉛イオン等を担持させた無機物系担体を配合した洗浄剤組成物が開示され、下記特許文献5には、重炭酸塩を含む洗浄剤成分に、無機系抗菌剤である金属イオンを担持させた無機物系担体と有機系抗菌剤であるカテキン類とを含有させた抗菌性洗浄剤が開示されている。
下記特許文献6には、アニオン界面活性剤に抗菌剤として、トリクロサン、ベンザルコニウム塩、又はベンゼトニウム塩を含有する水性毛髪洗浄剤が開示されている。下記特許文献7には、界面活性剤と4種のビニル単量体から得られる共重合体に、殺菌・抗菌効果を有する機能性成分として、塩化ベンザルコニウム、トリクロサン、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ヒノキチオール、トリクロロカルバニリドから選ばれる少なくとも一種を含有する衣料用液体洗浄剤組成物が開示されている。
下記特許文献8には、アミノ酸系界面活性剤又はアルキルエーテルカルボキシレートからなる界面活性剤と溶剤に、トリクロサン及びイソプロピルメチルフェノールを含有させた殺菌洗浄剤組成物が開示されている。
下記特許文献9の実施例には、洗浄剤成分として界面活性剤を含む洗剤組成物中に、分子末端に2個のピリジン環又はキノリン環を有し、かつこれらの環の窒素原子が第4級アンモニウム基となっている4種の抗菌剤(該抗菌剤の中の1つに、化学名:1,4-ビス(3,3’-(1-デシルピリジニウム)メチルオキシ)ブタンジブロマイド(以下、DPMBBと略記することがある)が含まれている)が試験液中でそれぞれ1質量%(1万質量ppm)の濃度に配合されていると、大腸菌に対して殺菌力を発揮したことが開示されている。下記特許文献10には、上記DPMBBが各種ウィルスの不活性化や防除に有効であることが開示されている。
下記非特許文献1には、合成系殺菌剤として、製剤化の際に問題となる低い水溶性、低い熱安定性、紫外線による分解性などの欠点を解消できる、ジェミニ型抗菌剤であるDPMBBを見出したことが開示されている。
下記非特許文献2には、種々の抗菌剤について、化学的性状、抗菌活性、毒性及び用途について解説され、上記DPMBBが(i)医環境殺菌剤、(ii)塗料の抗菌・抗カビ剤、(iii)医用光学機器の消毒剤、(iv)冷却水、除菌剤及び繊維の抗菌・抗カビ・抗ウィルス剤として使用できることが開示されている。
概要
環境に対する影響が少なく、短時間で優れた抗菌効果をもたらし、研磨作用も発揮可能な、ペースト状洗浄剤組成物を提供する。水溶液中に、洗浄剤成分である炭酸水素ナトリウム、及び抗菌剤(A)として化合物名1,4-ビス(3,3’-(1-デシルピリジニウム)メチルオキシ)ブタンジブロマイドを含むペースト状洗浄剤組成物であって、該ペースト状洗浄剤組成物中の炭酸水素ナトリウムの含有量が50〜85質量%、及び抗菌剤(A)の含有量が0.075質量%以上である、ことを特徴とするペースト状洗浄剤組成物。なし
目的
本発明は、環境に対する影響が少ない重曹を洗浄剤成分とし、洗浄後のすすぎが極めて容易で、かつ人体に対する安全性が高く、無刺激で、比較的短時間で優れた抗菌効果を発揮できる、ペースト状洗浄剤組成物を提供する
効果
実績
- 技術文献被引用数
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請求項1
水溶液中に、洗浄剤成分である炭酸水素ナトリウム、及び下記式で表される抗菌剤(A)が含有されているペースト状洗浄剤組成物であって、該ペースト状洗浄剤組成物中の炭酸水素ナトリウムの含有量が50〜85質量%、及び抗菌剤(A)の含有量が0.075質量%以上である、ことを特徴とするペースト状洗浄剤組成物。
請求項2
前記ペースト状洗浄剤組成物中の炭酸水素ナトリウムの含有量が55〜80質量%である、請求項1に記載のペースト状洗浄剤組成物。
請求項3
前記ペースト状洗浄剤組成物中の抗菌剤(A)の含有量が0.15〜0.40質量%である、請求項1又は2に記載のペースト状洗浄剤組成物。
請求項4
前記炭酸水素ナトリウムの含有量が55〜80質量%で、かつ抗菌剤(A)の含有量が0.15〜0.40質量%であるペースト状洗浄剤組成物中における、5分間での大腸菌と黄色ブドウ球菌の除菌率([(初期生菌数—5分後の生菌数)/初期生菌数]×100(%))がいずれも99%以上である、請求項1から3のいずれかに記載のペースト状洗浄剤組成物。
請求項5
技術分野
0001
本発明は、炭酸水素ナトリウムを洗浄剤成分とする、抗菌性を有するペースト状洗浄剤組成物に関する。
背景技術
0002
従来から、汚れの性状により洗浄剤の主成分として、界面活性剤、無機アルカリ系洗浄剤、又は有機酸系洗浄剤が使用されている。尚、「洗剤」という用語は、界面活性剤を主成分とする場合に主に使用され、洗浄効果を発揮する成分を意味する洗浄剤と区別して使用される場合があるので、本明細書において、洗浄効果を発揮できる成分として「洗浄剤」という用語を使用する。
上記無機アルカリ系洗浄剤の成分として、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3、別名、重炭酸曹達、又は重曹、以下、重曹ということがある。)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、過炭酸ナトリウム(2Na2CO3・3H2O2)、セスキ炭酸ナトリウム(Na2CO3・NaHCO3)が知られている。これらの無機アルカリ系洗浄剤は、界面活性剤を含む洗剤と比較して、一般に衣類等の洗浄力には劣るものの、すすぎが容易で特有の洗浄効果も発揮できるので、家庭内のキッチン洗浄、洗濯、油の汚れ落とし、鍋のコゲ落とし、入浴剤等への使用が知られている。日本国内では江戸時代や、物資の不足した第二次大戦中に、植物灰の灰汁(あく)から該灰汁の主成分である炭酸カリウム(K2CO3)を抽出して洗濯に使用していた経緯がある。
0003
重曹は他の無機アルカリ系洗浄剤と比較した特徴は、その水溶液のpH値が多少低い点と、水溶液への溶解度が相当に低い点等が挙げられる。
無機アルカリ系洗浄剤成分として使用される際、20℃において炭酸ナトリウムと炭酸カリウムの水溶液pHはそれぞれ約11.2〜11.6程度、過炭酸ナトリウムの水溶液pHは10〜11程度、セスキ炭酸ナトリウムの水溶液pHは9.6〜10程度であるのに対し、20℃における重曹水溶液のpHは、濃度1〜50g/水1リットル(L)でpH8.4〜8.0程度と相対的にも弱いアルカリ性である。重曹の水溶液は他の無機アルカリ系洗浄剤と比較してpHがより弱アルカリ性であるので取扱いが容易である。重曹は、自然界に存在する天然の素材で、河川や海への環境負荷が低いことから、30年〜40年ほど前から自然環境への意識の高まりにより、家庭内で、洗浄効果、消臭効果に着目したいろいろな使用方法が工夫されてきている。
0004
一般に、アルカリ系洗浄剤は、皮脂、タンパク質汚れ、油汚れを落とすことができる。衣類に付着する皮脂は通常その大半がトリグリセリドと遊離脂肪酸成分で占められている。この皮脂汚れをアルカリ性洗浄剤で洗浄すると皮脂はケン化されてグリセリンと石ケンになり、衣類から脱離して水相に溶解する。また、衣類に付着する汗、垢、血液等の汚れ、肉と魚等の食品汚れはタンパク質成分からなっているが、該タンパク質は多くのL−アミノ酸が鎖状に多数連結してできた高分子化合物である。この汚れの高分子化合物はアルカリ性洗浄剤によりその連結が切断されるか又は弱められて、衣類の繊維から脱離して洗い流される。重曹は炭酸ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウムと比較して弱アルカリ性であるので、軽い汚れ落としには使用できるが、汚れがひどい場合には炭酸ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、又は界面活性剤を使用するのが望ましい。
0005
重曹の特徴は、上記pHが比較的低い他に、他のアルカリ系洗浄剤と比較して水への溶解度が比較的低い点、粒子状態ではその表面が比較的柔らかく、被洗浄物の表面を傷つけづらい点、重曹微粒子は研磨作用を発揮できる点等を利用し、重曹を比較的少量の水に溶いてペースト状にして、被洗浄物の汚れ部分の表面に張り付け、その後スポンジ、ブラシ等で擦ることにより頑固な油汚れ等を取り除くことが可能になる。また、重曹を洗浄剤、研磨剤等に使用する場合、粉体状であると被洗浄物の表面に密着しづらいのでペースト状にすると被洗浄物の表面に付着し易くなる。
従って、重曹を洗浄剤等に利用する場合、重曹粉末を水溶液に完全に溶解した重曹水、又は重曹を少量の水と混合して得られる重曹ペーストのいずれかとして、その用途に合わせて使い分けすることが可能である。
0006
下記特許文献1には、炭酸水素ナトリウム水性スラリーに少量の脂肪酸または脂肪酸塩が含まれる洗浄剤が開示され、下記特許文献2には、特定の平均粒子径と粒度分布を有する炭酸水素ナトリウム粒子と、脂肪酸または脂肪酸塩と、分散媒とを含むスラリーで、特定粘度のスクラブ性洗浄剤組成物が開示され、下記特許文献3には、炭酸水素ナトリウムと界面活性剤とを含み、且つ、該炭酸水素ナトリウムの少なくとも一部が、固体の状態で存在する洗浄剤組成物が開示されている。
0007
一方、重曹は抗菌性を有していないことから、主成分として重曹が含まれる洗浄剤組成物に、保管時及び使用時にグラム陰性菌、グラム陽性菌等に対する抗菌性を付与するために、抗菌剤を含有させることが望ましい。
尚、「抗菌」という用語は、一般に菌の増殖を抑制、あるいは阻害するという意味に使用され、「殺菌」いう用語は一般に、菌を殺す、又は増殖を抑止するに意味使用されていることから、抗菌剤は殺菌剤と多少異なる意味合いもあるが、ほぼ同義語として扱われる場合も多い。しかし、「殺菌」という表現は、薬事法で洗剤や漂白剤などの「雑貨品」については使用できないことになっていることから、本明細書において、主として「抗菌」という用語を使用する。また、「除菌」は、一般に限られた空間中の微生物の数を減らし、清浄度を高める意味に使用されており、食品衛生法の省令では「ろ過等により、原水等に由来して当該食品中に存在し、かつ、発育し得る微生物を除去することをいう」と規定されている。
0008
抗菌剤は、一般に無機系抗菌剤と有機系抗菌剤の二種類に分類される。無機系抗菌剤としては銀、銅、亜鉛化合物等の金属イオンの静菌作用を利用したもので、これらの中で効果に優れる銀イオンが主として使用されている。一方、有機系抗菌剤は更に天然系抗菌剤と合成系抗菌剤とに分けられ、天然系抗菌剤としては、カテキン、カラシ等の植物由来、キチン、キトサン等の動物・魚由来のものが知られている。合成系抗菌剤としては、ビグアナイド系、第四級アンモニウム塩系、ピリジニウム系、ピリジン系、キノリン系、ジスルフィド系、オキサゾリン系、トリアゾール系、ヒダントイン系、ピリチオン系、モルフォリン系、ジフェニルエーテル系が知られている。
0009
下記特許文献4には、洗浄剤成分である炭酸水素ナトリウムに無機系抗菌剤である銀、銅、亜鉛イオン等を担持させた無機物系担体を配合した洗浄剤組成物が開示され、下記特許文献5には、重炭酸塩を含む洗浄剤成分に、無機系抗菌剤である金属イオンを担持させた無機物系担体と有機系抗菌剤であるカテキン類とを含有させた抗菌性洗浄剤が開示されている。
下記特許文献6には、アニオン界面活性剤に抗菌剤として、トリクロサン、ベンザルコニウム塩、又はベンゼトニウム塩を含有する水性毛髪洗浄剤が開示されている。下記特許文献7には、界面活性剤と4種のビニル単量体から得られる共重合体に、殺菌・抗菌効果を有する機能性成分として、塩化ベンザルコニウム、トリクロサン、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ヒノキチオール、トリクロロカルバニリドから選ばれる少なくとも一種を含有する衣料用液体洗浄剤組成物が開示されている。
0010
下記特許文献8には、アミノ酸系界面活性剤又はアルキルエーテルカルボキシレートからなる界面活性剤と溶剤に、トリクロサン及びイソプロピルメチルフェノールを含有させた殺菌洗浄剤組成物が開示されている。
下記特許文献9の実施例には、洗浄剤成分として界面活性剤を含む洗剤組成物中に、分子末端に2個のピリジン環又はキノリン環を有し、かつこれらの環の窒素原子が第4級アンモニウム基となっている4種の抗菌剤(該抗菌剤の中の1つに、化学名:1,4-ビス(3,3’-(1-デシルピリジニウム)メチルオキシ)ブタンジブロマイド(以下、DPMBBと略記することがある)が含まれている)が試験液中でそれぞれ1質量%(1万質量ppm)の濃度に配合されていると、大腸菌に対して殺菌力を発揮したことが開示されている。下記特許文献10には、上記DPMBBが各種ウィルスの不活性化や防除に有効であることが開示されている。
0011
下記非特許文献1には、合成系殺菌剤として、製剤化の際に問題となる低い水溶性、低い熱安定性、紫外線による分解性などの欠点を解消できる、ジェミニ型抗菌剤であるDPMBBを見出したことが開示されている。
下記非特許文献2には、種々の抗菌剤について、化学的性状、抗菌活性、毒性及び用途について解説され、上記DPMBBが(i)医環境殺菌剤、(ii)塗料の抗菌・抗カビ剤、(iii)医用光学機器の消毒剤、(iv)冷却水、除菌剤及び繊維の抗菌・抗カビ・抗ウィルス剤として使用できることが開示されている。
0012
特開2003−201115号公報
特開2003−212753号公報
特開2005−120245号公報
特開2002−348231号公報
特開2014−005358号公報
特開2010−235522号公報
特開2011−190368号公報
特開2014−114408号公報
特開2006−022140号公報
特許第5108334号公報
先行技術
0013
高麗寛紀著、「やさしい微生物制御の基礎[20]、薬剤微生物制御 その3」J. Antibact. Antifung. Agents Vol.45. No.10, pp.493-502 (2017)
高麗寛紀著、「やさしい微生物制御の基礎[17]、化学的微生物制御 その3」J. Antibact. Antifung. Agents Vol.45. No.4, pp.199-209 (2017)
発明が解決しようとする課題
0014
上記特許文献1から特許文献3のいずれにも、除菌性、または抗菌性を有するペースト状の洗浄剤組成物は開示されていない。また、上記特許文献4、5には洗浄剤に金属イオン、金属イオンとカテキンをそれぞれ抗菌剤に用いることが開示されているが、開示された金属イオン系抗菌剤は、金属イオンが担体である、ゼオライト等の三次元骨格構造体内で安定化しているので、洗浄剤水溶液中での均一分散性を考慮する必要があり、天然系の有機系抗菌剤はそれ自体では抗菌性が十分でないおそれがある。
上記特許文献6〜8には界面活性剤を主成分とする洗浄剤溶液が開示されているが、無機アルカリ系洗浄剤である、重曹を主成分とするペースト状の洗浄剤組成物に有効な合成系抗菌剤は開示されていない。
0015
上記特許文献9には界面活性剤を主成分とする洗剤中に上記DPMBBが比較的高濃度(1万質量ppm)に配合されていると抗菌性が発揮することが開示されている。また、上記特許文献10には上記DPMBBが水溶液又は水乳化体として抗菌活性を発揮できることが開示されている。従って、上記特許文献1〜10のいずれにおいても、無機アルカリ系洗浄剤成分である重曹を主成分とするペースト状の洗浄剤組成物に、低濃度の配合量で、かつ短時間で優れた抗菌効果を発揮する抗菌剤は未だ開示されていない。
0016
また、上記非特許文献1には、DPMBBが細菌と真菌に対して静菌活性と殺菌活性を示すこと、非特許文献2には、DPMBBを(i)医環境殺菌剤、(ii)塗料の抗菌・抗カビ剤、(iii)医用光学機器の消毒剤、(iv)冷却水、除菌剤及び繊維の抗菌・抗カビ・抗ウィルス剤として使用できることが開示されているが、非特許文献1、2のいずれにも、無機アルカリ系洗浄剤成分である重曹を主成分とするペースト状の洗浄剤組成物に低濃度の配合量でも短時間で優れた抗菌効果を発揮する抗菌剤を含有させることについては開示されていない。
0017
本発明は、環境に対する影響が少ない重曹を洗浄剤成分とし、洗浄後のすすぎが極めて容易で、かつ人体に対する安全性が高く、無刺激で、比較的短時間で優れた抗菌効果を発揮できる、ペースト状洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
0018
本発明者らは上記実情に鑑み鋭意検討した結果、重曹を洗浄剤成分とするペースト状洗浄剤組成物中に下記化学式で表される抗菌剤が少量含有されていると、弱アルカリ性においても比較的短時間で優れた抗菌効果が発揮されることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下の(1)〜(5)に記載の発明を要旨とする。
(1)水溶液中に、洗浄剤成分である炭酸水素ナトリウム、及び下記式で表される抗菌剤(A)が含有されているペースト状洗浄剤組成物であって、
該ペースト状洗浄剤組成物中の炭酸水素ナトリウムの含有量が50〜85質量%、及び抗菌剤(A)の含有量が0.075質量%以上である、ことを特徴とするペースト状洗浄剤組成物。
0019
0020
(2)前記ペースト状洗浄剤組成物中の炭酸水素ナトリウムの含有量が55〜80質量%である、前記(1)に記載のペースト状洗浄剤組成物。
(3)前記ペースト状洗浄剤組成物中の抗菌剤(A)の含有量が0.15〜0.40質量%である、前記(1)又は(2)に記載のペースト状洗浄剤組成物。
(4)前記炭酸水素ナトリウムの含有量が55〜80質量%で、かつ抗菌剤(A)の含有量が0.15〜0.40質量%であるペースト状洗浄剤組成物中における、5分間での大腸菌と黄色ブドウ球菌の除菌率([(初期生菌数—5分後の生菌数)/初期生菌数]×100(%))がいずれも99%以上である、前記(1)から(3)のいずれかに記載のペースト状洗浄剤組成物。
(5)前記ペースト状洗浄剤組成物中に更に起泡剤又は増粘剤が含有されている、前記(1)から(4)のいずれかに記載のペースト状洗浄剤組成物。
発明の効果
0021
本発明のペースト状洗浄剤組成物は、洗浄力を発揮する成分として環境に対する影響が少ない弱アルカリ性の重曹を使用するので、取扱いに優れていて研磨作用も有しており、洗浄後のすすぎが極めて容易である。また、本発明のペースト状洗浄剤組成物に、抗菌剤として分子内に2個のピリジニウム塩を有するジェミニ型のピリジニウム系抗菌剤であるDPMBBを含有させることにより、比較的少量でも短時間で優れた抗菌効果を発揮することが可能である。
また、上記非特許文献1に記載されている通り、ジェミニ型ピリジニウム系抗菌剤であるDPMBBは、水溶性、熱安定性及び持続性に優れているので、抗菌剤(A)としてDPMBBを含有する、本発明のペースト状洗浄剤組成物は、取扱いが容易で、熱安定性及び持続性に優れていることが期待できる。
0022
以下に、本発明のペースト状洗浄剤組成物について説明する。
本発明のペースト状洗浄剤組成物(以下、単に「ペースト状洗浄剤組成物」ということがある)は、水溶液中に、洗浄剤成分である炭酸水素ナトリウム、及び下記式で表される抗菌剤(A)が含有されているペースト状洗浄剤組成物であって、該ペースト状洗浄剤組成物中の炭酸水素ナトリウムの含有量が50〜85質量%、及び抗菌剤(A)の含有量が0.075質量%以上である、ことを特徴とする。
0023
0024
被洗浄物の汚れた箇所の表面を洗浄する際に重曹粉末を振りかけても汚れ表面に付着しづらいが、本発明のペースト状洗浄剤組成物は比較的汚れ表面に付着し易く、更に研磨作用も有するので汚れをより落とし易くなり、また、短時間で優れた抗菌作用を発揮することが可能である。
0025
(1)炭酸水素ナトリウム(重曹)について
重曹は分子式NaHCO3の白色粉体で、食品衛生法(食品添加物のみ適用)、薬事法(局方のみ適用)、飼料添加物規格でそれぞれ定められたグレードがある。
重曹の水溶液は、他のアルカリ系洗浄剤の炭酸ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウムと比較してより弱いアルカリ性であり、具体的には、20℃において、水1リットル(L)中の重曹濃度が1gでpH8.4、5gでpH8.4、10gでpH8.3、15gでpH8.2、20gでpH8.2、30gで8.1、40gで8.1と無機ナトリウム系洗浄剤の中で、最も弱いアルカリ性物質である。。このように弱アルカリ性であるので、水溶液のpHは排水基準(海域:5.0〜9.0以内、海域以外:5.8〜8.6以内)の範囲内であるので、そのまま排水として排出することができる。
0026
重曹は河川又は海水中に排出されても環境負荷が極めて少ないので、重曹、酢、石けん等身近にある安全な素材を使って掃除、洗濯当をする、いわゆるナチュラルクリーニングの材料として、重曹は使用することができる。
重曹の特徴は、上記pHが弱アルカリ性である他に、他の無機アルカリ系洗浄剤と比較して水への溶解度が低く、水100g中での溶解度が温度0℃で6.9g、15℃で8.8g、60℃で16.4gである(出典:化学大事典、発行:共立出版株式会社、1964年3月発行)。
このように重曹の水溶液への溶解度は比較的低いので、重曹を水溶液中に添加してスラリー状態を形成することが可能である。本発明のペースト状洗浄剤組成物に使用する重曹の平均粒子径は、50〜350μm程度が好ましい。平均粒子径が上記範囲未満では研磨性と流動性が低下するおそれがあり、上記範囲を超えると沈降によるスラリー安定性が低下すると共に、研磨性が低下するおそれがある。このような観点から、該平均粒子径は、70〜250μmがより好ましい。尚、上記平均粒子径は、レーザー回折・散乱法、篩振盪法等により測定することができる。
0027
また、本発明のペースト状洗浄剤組成物中の重曹の含有量は、重曹の水への溶解度、スラリー形成性、研磨作用等を考慮すると50質量%以上であり、55質量%以上が好ましく、スラリー状態の安定性、流動性を考慮すると85質量%以下であり、80質量%以下が好ましい。重曹を洗浄剤成分として使用する、本発明のペースト状洗浄剤組成物はそのアルカリ性と研磨性を考慮すると、酸性の汚れや、脂肪酸又は脂肪酸塩を含む油成分の汚れ落としに有効であり、また酸性の臭いを中和する消臭効果等を有する。
0028
(2)抗菌剤(A)について
本発明のペースト状洗浄剤組成物に使用する抗菌剤は、上記式で表される、分子内に2個のピリジニウム塩を有するジェミニ型の抗菌剤(A)(化合物名:1,4-ビス(3,3’-(1-デシルピリジニウム)メチルオキシ)ブタンジブロマイド(DPMBB))であり、該ペースト状洗浄剤組成物中に0.075質量%以上含有されている。
0029
重曹は抗菌性を有していないことから、重曹を主成分とする洗浄剤組成物に、使用時及び保管時に、その細胞壁の違いから分類されているグラム陰性菌、グラム陽性菌等に対する抗菌性を付与して、洗浄効果と抗菌効果を併せ持つペースト状洗浄剤組成物とすることが望ましい。
抗菌剤は、上記の通り、無機系抗菌剤と有機系抗菌剤の二種類に分類でき、有機系抗菌剤は更に天然系抗菌剤と合成系抗菌剤とに分けられる。これらの有機系抗菌剤は、微生物の生合成阻害、細胞構造破壊、生体物質(DNA、RNA等)損傷等の抗菌作用を発揮することが知られている。
0030
本発明のペースト状洗浄剤組成物に使用する抗菌剤としては、水溶液へ溶解性に優れ、比較的少量でも優れた抗菌効果を有し、無刺激で、かつ短時間で優れた抗菌効果を発揮できることが望ましい。無機系抗菌剤は分散性の問題があり、また、上記の通り有機系の天然系抗菌剤は高い抗菌性は期待しづらく、有機系の合成系抗菌剤を重曹を洗浄剤の主成分とするペースト状洗浄剤組成物に使用して上記要求を満足するものはこれまで知られていなかった。
0031
本発明者らは、重曹を洗浄剤の主成分とするペースト状洗浄剤組成物に含有させる抗菌剤として、ピリジニウム系抗菌剤である上記式に示す抗菌剤(A)を含有させると、比較的少量でも短時間で優れた抗菌効果を発揮できること見出した。
該抗菌剤(A)は、温度依存性、及び共存物質等の環境因子の影響が少なく熱安定性、加工性、無刺激で人体に対する安全性、持続性等に優れ、耐性菌が発現することなく、抗菌スペクトル性(殺菌可能な微生物の範囲)にも優れ、無刺激であるので(非特許文献1参照)、該抗菌剤(A)を含有する本発明のペースト状洗浄剤組成物もこのような効果を有することが期待できる。
0032
出願人は先の出願(特願2016−197157)で上記式に示す抗菌剤(A)は洗浄剤成分としてセスキ炭酸ナトリウムよりも弱いアルカリ性水溶液中では抗菌剤(A)の抗菌効果を十分に発揮できることを見出すことができなかったが、ペースト状洗浄剤組成物中での抗菌剤(A)の含有量を0.075質量%以上とすることにより、上記抗菌効果が顕著に発揮されることを見出した。
0033
尚、ピリジニウム系抗菌剤で抗菌作用を有するものとして、他に下記の3種が知られているが、いずれも水に微溶であることから本発明のペースト状洗浄剤組成物に抗菌剤として使用することはできない。
(i)セチルピリジニウムクロライド(別名:CPC)
(ii) 4,4’-(テトラメチレンジカルボニルジアミノ)ビス(1-デシルピリジニウムブロマイド(別名:TMBDB)
(iii)N,N’-ヘキサメチレンビス(4-カルボニル-1-デシルピリジニウムブロマイド)(別名:HBCDB)
0034
抗菌剤(A)は、白色結晶性粉末で、水に対する溶解度は20℃で589g/100g水と非常に高く、非特許文献2によると経口急性毒性は、LD50が300mg/kg(ラット)で、変異原性は陰性、皮膚感作性は陰性である。
本発明のペースト状洗浄剤組成物中の抗菌剤(A)の含有量は、0.075質量%以上、好ましくは0.15質量%以上で優れた抗菌効果を発揮する。一方、抗菌剤(A)の含有量の上限は抗菌効果からは特に限定されるものではないが、経済性等を考慮すると1.0質量%以下が好ましく、0.75質量%以下がより好ましく、0.40質量%以下が更に好ましい。
また、重曹の含有量が55〜80質量%で、かつ抗菌剤(A)の含有量が0.15〜0.40質量%であるペースト状洗浄剤組成物中において、1ミリリットル(mL)当たりの初期生菌数が2×10+5〜8×10+5程度のときに、5分間での大腸菌と黄色ブドウ球菌の除菌率([(初期生菌数—5分後の生菌数)/初期生菌数]×100(%))を、いずれも99%以上とすることが可能である。
0035
(3)増粘剤又は起泡剤について
本発明のペースト状洗浄剤組成物中には、傾斜面や垂直面から該ペースト状洗浄剤組成物がタレ落ちするのをより抑制して洗浄効果を高める等のために、増粘剤又は起泡剤を含有させることができる。増粘剤とは、ペースト状洗浄剤組成物の粘度を高め、タレ落ちを防いで洗浄効果を高める働きを持つ添加剤であり、一方、起泡剤とは液体に溶けて、泡を生じ易くさせると共に、生成した泡を安定に保つ物質で、ガスを発生させることにより発泡させるいわゆる発泡剤(気泡剤)とは一般には区別されている。
0036
本発明のペースト状洗浄剤組成物に増粘剤又は起泡剤を含有させる場合には、その含有量は該組成物中で0.02〜2.0質量%が望ましい。増粘剤又は起泡剤の含有量が前記0.02質量%以上で必要な増粘性又は起泡性が発揮され、一方、前記2.0質量%を超えても更なる増粘性又は起泡性の向上効果は期待できない。
増粘剤は起泡性をも有している場合が多いので、増粘剤と起泡剤の例示は共通する場合が多いことから、増粘剤又は起泡剤を有する添加剤として、グリセリン脂肪酸エステルモノグリセライド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル類、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、カラギナン、キサンタンガム、グァーガム、タマリンドガム、ペクチン、ローカストビーンガム、加工デンプン等の多糖類が挙げられる。
0037
(4)ペースト状洗浄剤組成物について
本発明のペースト状洗浄剤組成物は、重曹微粒子と抗菌剤(A)微粒子、又は重曹微粒子に抗菌剤(A)微粒子が所定割合配合された混合物を前述の濃度になるように水と混合して、水溶液中で重曹の分解が促進される70℃以下の温度で十分に撹拌することにより得ることができる。
抗菌剤(A)は、前記の通り水への溶解性が非常に高く、また本発明のペースト状洗浄剤組成物が優れた抗菌性を有していることから、本発明のペースト状洗浄剤組成物中で殆どの抗菌剤(A)は水相側に溶解していると理解される。
0038
本発明のペースト状洗浄剤組成物中に重曹微粒子と抗菌剤(A)微粒子が上記割合で含有されていると、スラリー状態を形成でき、保存中に重曹と水とに分離するのを抑制できるが、ペースト状洗浄剤組成物を形成する際には長期間保存することにならないように全体の配合量を考慮しておくことが望ましい。また、本発明のペースト状洗浄剤組成物は、直射日光を避けて、常温下で密閉容器に保存することが好ましい。
ペースト状洗浄剤組成物を被洗浄物の汚れ箇所に付着して放置すると、水に溶解した重曹が洗浄作用を発揮して汚れの分解が進み、その後に擦ると、水に溶解していない重曹粒子が研磨作用を発揮して汚れをより落とし易くできる。
本発明のペースト状洗浄剤組成物中の重曹微粒子は、優れた研磨作用を有し、かつその表面は柔らかいことから、被洗浄物の表面傷つきを抑制して、汚れを効果的に取り除くことができるので、ガラス製品、ナイフ・フォーク・スプーンなどのカトラリー、銀製品等の洗浄に使用することができる。また、本発明のペースト状洗浄剤組成物は、ペースト状であることから、液だれも少ないので付着性を考慮すると壁や扉等の壁面の掃除にも向いており、更にガスコンロに使用する焼き網、五徳等の複雑な構造、細かい構造の洗浄にも好適に使用することができる。
0039
本発明のペースト状洗浄剤組成物は、(i)シンク、キッチンカウンター、電子レンジ、ガスレンジ、IHヒーターのガラストップ、魚焼きグリル、蛇口、排水口等のキッチンまわり、(ii)フライパン、鍋、皿、(iii)レンジフード(換気扇)、(iv)食器棚の中と外側、(v)洗面所、(vi)トイレ、(vii)浴室、(viii)洗濯槽、(ix)冷蔵庫の下、(x)カーペット、フローリング等の軽い汚れ落としにも有用である。
重曹を洗浄剤成分とする、本発明のペースト状洗浄剤組成物は、環境と安全性への意識からその使用用途は今後増え続けることが期待される。また、該ペースト状洗浄剤組成物に、洗浄目的に応じて酢、クエン酸等の有機酸、石けん、精油を配合して使用することができる。
0040
以下に本発明を実施例と比較例により具体的に説明する。尚、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。本実施例、比較例で使用した試料、試験菌液の調製方法を以下に記載する。
(1)試料
(イ)ペースト状洗浄剤組成物の原料
洗浄効果を発揮する洗浄剤成分(以下、本実施例、比較例において洗浄剤ということがある)として、平均粒子径230μm(篩振盪法による測定値)の炭酸水素ナトリウム(重曹)を使用した。
(ロ)抗菌剤
抗菌剤として、下記の抗菌剤を使用した。
化合物名1,4-ビス(3,3’-(1-デシルピリジニウム)メチルオキシ)ブタンジブロマイド(DPMBB)、タマ化学工業(株)製、商品名:ハイジェニア(登録商標)
0041
(ハ)試験菌
抗菌効果の評価に広く使用されている下記の2種類の試験菌を用いた。
(i)大腸菌(Escherichia coli NBRC 3972)
(ii)黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC 13276)
0042
(2)試験菌液の調製
細菌は普通寒天培地に接種し、35℃で24時間培養した。培養後、滅菌生理食戦水を用いて108/ミリリットル(mL)に調製したものを試験菌液とした。
尚、下記の実施例、比較例において、サンプル数(n)は3としたが、測定値のバラツキを考慮して測定誤差が大きいと認められるものは除いて表1、2に示した。また、除菌率の値は本来、有効数字2桁であるが、比較のために、表1、2においては有効数字3桁で示した。
0043
[実施例1〜4]
(1)検体の作製
ペースト状洗浄剤組成物中の重曹濃度が75質量%、実施例1、2、3、4において上記抗菌剤(A)の濃度がそれぞれ0.075質量%、0.10質量%、0.15質量%、0.375質量%となる検体を作製した。
(2)試験菌液の接種および培養
検体10mLに、上記大腸菌、黄色ブドウ球菌がそれぞれ含まれる試験菌液をそれぞれ0.1mLずつ接種して、25℃で5分間培養した。
(3)生菌数測定
接種5分後に、試験試料の10倍希釈系列を、減菌生理食塩水を用いて作製し、これら希釈液を細菌SCDLP寒天培養地に接種し、35℃で48時間培養した。培養後、形成されたコロニーをカウントし、生菌数を換算した。菌体の抗菌試験結果を表1に示した。
0044
[実施例5]
ペースト状洗浄剤組成物中の重曹濃度を55質量%、上記抗菌剤(A)の濃度が0.220質量%となる検体を作製した。上記実施例1〜4に記載したと同様に、試験菌液の接種および培養し、生菌数測定を行った。菌体の抗菌試験結果を表1に示した。
0045
[実施例6]
ペースト状洗浄剤組成物中の重曹濃度を80質量%、上記抗菌剤(A)の濃度が0.096質量%となる検体を作製した。上記実施例1〜4に記載したと同様に、試験菌液の接種および培養し、生菌数測定を行った。菌体の抗菌試験結果を表1に示した。
0046
[比較例1、2]
(1)検体の作製
重曹濃度が75質量%の水溶液に、抗菌剤(A)を比較例1では0質量%、比較例2では0.025質量%とした以外は、上記実施例1〜4と同様に検体を作製した。
(2)試験菌液の接種および培養
検体10mLに、上記大腸菌、黄色ブドウ球菌が含まれる試験菌液をそれぞれ0.1mLずつ接種して、25℃で5分間培養した。
(3)生菌数測定
接種5分後に、試験試料の10倍希釈系列を、減菌生理食塩水を用いて作製し、これら希釈液を細菌SCDLP寒天培養地に接種し、35℃で48時間培養した。培養後、形成されたコロニーをカウントし、生菌数を換算した。検体の抗菌試験結果を表2に示した。
0047
実施例
0048
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