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技術 フィルム状ソフトマテリアル、蛍光フィルム基材及びフィルム状ソフトマテリアルの製造方法、並びに応力計測方法

出願人 日本電信電話株式会社国立大学法人北海道大学
発明者 田中あや岡嶋孝治藤井裕紀松本悠暉廣野航平
出願日 2018年3月2日 (2年2ヶ月経過) 出願番号 2018-038070
公開日 2019年9月12日 (7ヶ月経過) 公開番号 2019-151747
状態 未査定
技術分野 付加系(共)重合体、後処理、化学変成 力の測定一般 発光性組成物 重合方法(一般) 染料
主要キーワード シール基板 応力計測 光照射終了後 デフォーカス光 変位マッピング 粒子画像流速測定法 蛍光フィルム 線形弾性
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2019年9月12日)のものです。
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図面 (12)

課題

細胞等の物体に発生する応力可視化および定量化が可能なフィルムソフトマテリアル及び蛍光フィルム基材、並びにそれらを用いる応力計測方法を提供する。

解決手段

高分子化合物からなる3次元網目構造を有し、該3次元網目構造の主骨格の側鎖に蛍光色素が導入されているフィルム状ソフトマテリアル11。フィルム状ソフトマテリアル上に細胞等の物体を接触させる工程と、フィルム状ソフトマテリアルの少なくも一部に、パターン状にエネルギー線照射して、高蛍光強度領域と、低蛍光強度領域との境目で蛍光強度に勾配または段差を生じさせる工程と、フィルム状ソフトマテリアルの蛍光強度分布変位を評価する工程と、を備える応力計測方法。

概要

背景

生体内細胞は、周囲の細胞外マトリクス(以下、ECMという。)を構成するタンパク質細胞膜上の膜タンパク質間で接着斑と呼ばれる接着点を形成している(非特許文献1)。接着斑は、細胞内の細胞骨格と結合しており、ECMと接着した細胞に発生する応力(以下、牽引力という。)が細胞内部に伝播することで細胞機能が制御される。ECMの組成および力学特性によって細胞に発生する牽引力が変化することが知られており、例えば、間葉系の幹細胞は、ECMの弾性率に応じて細胞の牽引力が変化し、その結果、分化後の細胞の性質が異なることが知られている。つまり、細胞牽引力が細胞機能と強い相関性があることがわかる。生体内のECMの性質は、外的損傷、疾病加齢などによって変化する。このようなECMの性質変化が細胞機能に与える影響は長期に及ぶため、細胞牽引力の変化を長期間安定に計測し、ECMの性質変化に応じた細胞機能の変化を評価することが期待される。また、再生医療の観点からも、組織再生の際に細胞の足場となる基材が必要となり、長期間にわたる組織再生過程において、その基材の特性が細胞の牽引力に与える影響を解明することは、基材の材料設計に重要となる。

細胞に発生する牽引力を定量的に検出する手法が、これまでにいくつか提案されている。例えば、コストや実用性の観点から、広く利用されている方法として、Wangらの方法が挙げられる(非特許文献2)。この方法は、ポリアクリルアミド等からなるフィルムゲルの内部に化学架橋によって直径が1μm以下の蛍光ビーズを内包させ、このゲル表面に接着した細胞に発生する牽引力を蛍光ビーズの変位から検出するものである。

概要

細胞等の物体に発生する応力の可視化および定量化が可能なフィルム状ソフトマテリアル及び蛍光フィルム基材、並びにそれらを用いる応力計測方法を提供する。高分子化合物からなる3次元網目構造を有し、該3次元網目構造の主骨格の側鎖に蛍光色素が導入されているフィルム状ソフトマテリアル11。フィルム状ソフトマテリアル上に細胞等の物体を接触させる工程と、フィルム状ソフトマテリアルの少なくも一部に、パターン状にエネルギー線照射して、高蛍光強度領域と、低蛍光強度領域との境目で蛍光強度に勾配または段差を生じさせる工程と、フィルム状ソフトマテリアルの蛍光強度分布の変位を評価する工程と、を備える応力計測方法。

目的

本発明では、細胞等の物体に発生する応力の可視化および定量化が可能なフィルム状ソフトマテリアル及び蛍光フィルム基材、並びにそれらを用いる応力計測方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

高分子化合物からなる3次元網目構造を有し、該3次元網目構造の主骨格の側鎖に蛍光色素が導入されているフィルムソフトマテリアル

請求項2

前記高分子化合物が、ポリアクリルアミド系樹脂を含む、請求項1に記載のフィルム状ソフトマテリアル。

請求項3

高蛍光強度領域と、該高蛍光強度領域よりも蛍光強度の低い低蛍光強度領域とを有し、該高蛍光強度領域と該低蛍光強度領域との境目で蛍光強度に勾配または段差が生じている、請求項1又は2に記載のフィルム状ソフトマテリアル。

請求項4

基材上に、請求項1〜3のいずれかに記載のフィルム状ソフトマテリアルを備える蛍光フィルム基材。

請求項5

請求項1〜3のいずれかに記載のフィルム状ソフトマテリアルを製造する方法であって、基板上で、重合性基を有する蛍光色素を含有し3次元網目構造を形成するモノマー液重合させる工程を有する、フィルム状ソフトマテリアルの製造方法。

請求項6

請求項3に記載のフィルム状ソフトマテリアルを製造する方法であって、基板上で、重合性基を有する蛍光色素を含有し3次元網目構造を形成するモノマー液を重合させてフィルム状ソフトマテリアル重合体を形成させる工程と前記フィルム状ソフトマテリアル重合体の少なくも一部に、パターン状にエネルギー線照射して、高蛍光強度領域と、低蛍光強度領域との境目で蛍光強度に勾配または段差を生じさせる工程と、を有する、フィルム状ソフトマテリアルの製造方法。

請求項7

請求項1又は2に記載のフィルム状ソフトマテリアルを用いる応力計測方法であって、前記フィルム状ソフトマテリアル上に細胞等の物体を接触させる工程と、前記フィルム状ソフトマテリアルの少なくも一部に、パターン状にエネルギー線を照射して、高蛍光強度領域と、低蛍光強度領域との境目で蛍光強度に勾配または段差を生じさせる工程と、前記フィルム状ソフトマテリアルの蛍光強度分布変位を評価する工程と、を有する応力計測方法。

請求項8

請求項3に記載のフィルム状ソフトマテリアルを用いる応力計測方法であって、前記フィルム状ソフトマテリアル上に細胞等の物体を接触させる工程と、前記フィルム状ソフトマテリアルの蛍光強度分布の変位を評価する工程と、を有する応力計測方法。

技術分野

0001

本発明は、フィルムソフトマテリアル蛍光フィルム基材及びフィルム状ソフトマテリアルの製造方法、並びにフィルム状ソフトマテリアルを用いる応力計測方法に関する。

背景技術

0002

生体内細胞は、周囲の細胞外マトリクス(以下、ECMという。)を構成するタンパク質細胞膜上の膜タンパク質間で接着斑と呼ばれる接着点を形成している(非特許文献1)。接着斑は、細胞内の細胞骨格と結合しており、ECMと接着した細胞に発生する応力(以下、牽引力という。)が細胞内部に伝播することで細胞機能が制御される。ECMの組成および力学特性によって細胞に発生する牽引力が変化することが知られており、例えば、間葉系の幹細胞は、ECMの弾性率に応じて細胞の牽引力が変化し、その結果、分化後の細胞の性質が異なることが知られている。つまり、細胞牽引力が細胞機能と強い相関性があることがわかる。生体内のECMの性質は、外的損傷、疾病加齢などによって変化する。このようなECMの性質変化が細胞機能に与える影響は長期に及ぶため、細胞牽引力の変化を長期間安定に計測し、ECMの性質変化に応じた細胞機能の変化を評価することが期待される。また、再生医療の観点からも、組織再生の際に細胞の足場となる基材が必要となり、長期間にわたる組織再生過程において、その基材の特性が細胞の牽引力に与える影響を解明することは、基材の材料設計に重要となる。

0003

細胞に発生する牽引力を定量的に検出する手法が、これまでにいくつか提案されている。例えば、コストや実用性の観点から、広く利用されている方法として、Wangらの方法が挙げられる(非特許文献2)。この方法は、ポリアクリルアミド等からなるフィルム状ゲルの内部に化学架橋によって直径が1μm以下の蛍光ビーズを内包させ、このゲル表面に接着した細胞に発生する牽引力を蛍光ビーズの変位から検出するものである。

先行技術

0004

Disher et al. 2009, Science, Vol.324, 2009, pp.1673-1677.
Dembo et al., Biophysical Journal. Vol.76, 1999, pp.2307-2316.

発明が解決しようとする課題

0005

しかし、非特許文献2で開示された方法では、表面に提示されるアクリレート基密度を精密に制御することは困難なため、蛍光ビーズ周囲の架橋密度は各蛍光ビーズによってばらつきが生じてしまうこと、蛍光ビーズ周辺とその他の領域では弾性率に差異が生じる可能性がある、といった課題があった。また、蛍光ビーズの表面にアミノ基やN−ヒドロキシスクシンイミドなどの活性エステル基を提示し、アミド結合エステル結合を介してアクリレート基を化学修飾するという煩雑な作業を行う必要がある。このような煩雑な操作を簡略化するために、蛍光ビーズをハイドロゲル内に化学架橋せずに埋包することも可能だが、その場合、蛍光ビーズがポリアクリルアミドゲル内で拡散運動することによる蛍光ビーズの揺らぎが、長期計測における牽引力計測の精度や再現性の低下の原因となっていた。

0006

そこで、本発明では、細胞等の物体に発生する応力の可視化および定量化が可能なフィルム状ソフトマテリアル及び蛍光フィルム基材、並びにそれらを用いる応力計測方法を提供する。

課題を解決するための手段

0007

本発明は、以下の態様を包含するものである。
[1]高分子化合物からなる3次元網目構造を有し、該3次元網目構造の主骨格の側鎖に蛍光色素が導入されているフィルム状ソフトマテリアル。
[2] 前記高分子化合物が、ポリアクリルアミド系樹脂を含む、[1]に記載のフィルム状ソフトマテリアル。
[3]高蛍光強度領域と、該高蛍光強度領域よりも蛍光強度の低い低蛍光強度領域とを有し、該高蛍光強度領域と該低蛍光強度領域との境目で蛍光強度に勾配または段差が生じている、[1]又は[2]に記載のフィルム状ソフトマテリアル。
[4]基材上に、[1]〜[3]のいずれかに記載のフィルム状ソフトマテリアルを備える蛍光フィルム基材。

0008

[5] [1]〜[3]のいずれかに記載のフィルム状ソフトマテリアルを製造する方法であって、
基板上で、重合性基を有する蛍光色素を含有し3次元網目構造を形成するモノマー液重合させる工程を有する、フィルム状ソフトマテリアルの製造方法。
[6] [3]に記載のフィルム状ソフトマテリアルを製造する方法であって、
基板上で、重合性基を有する蛍光色素を含有し3次元網目構造を形成するモノマー液を重合させてフィルム状ソフトマテリアル重合体を形成させる工程と、
前記フィルム状ソフトマテリアル重合体の少なくも一部に、パターン状にエネルギー線照射して、高蛍光強度領域と、低蛍光強度領域との境目で蛍光強度に勾配または段差を生じさせる工程と、を有する、フィルム状ソフトマテリアルの製造方法。
[7] [1]又は[2]に記載のフィルム状ソフトマテリアルを用いる応力計測方法であって、
前記フィルム状ソフトマテリアル上に細胞等の物体を接触させる工程と、
前記フィルム状ソフトマテリアルの少なくも一部に、パターン状にエネルギー線を照射して、高蛍光強度領域と、低蛍光強度領域との境目で蛍光強度に勾配または段差を生じさせる工程と、
前記フィルム状ソフトマテリアルの蛍光強度分布の変位を評価する工程と、を備える応力計測方法。
[8] [3]に記載のフィルム状ソフトマテリアルを用いる応力計測方法であって、
前記フィルム状ソフトマテリアル上に細胞等の物体を接触させる工程と、
前記フィルム状ソフトマテリアルの蛍光強度分布の変位を評価する工程と、を有する応力計測方法。

発明の効果

0009

本発明によれば、細胞等の物体に発生する応力の可視化および定量化が可能なフィルム状ソフトマテリアル及び蛍光フィルム基材、並びにそれらを用いる応力計測方法を提供できる。

図面の簡単な説明

0010

本発明の一実施形態のフィルム状ソフトマテリアル11、及び、フィルム状ソフトマテリアル11を備える蛍光フィルム基材1を示す概略断面図である。
本発明の一実施形態のフィルム状ソフトマテリアル11、及び、フィルム状ソフトマテリアル11を備える蛍光フィルム基材2を示す概略断面図である。
本発明の一実施形態のフィルム状ソフトマテリアル14、及び、フィルム状ソフトマテリアル14を備える蛍光フィルム基材3を示す概略断面図である。
本発明の一実施形態の応力計測方法を示す概略図である。
本発明の一実施形態のフィルム状ソフトマテリアルの製造に用いることのできる基板の模式図である。
本発明の一実施形態のフィルム状ソフトマテリアル11、及び蛍光フィルム基材2の製造手順を模式的に示す図である。
蛍光強度分布構造形成に用いるフォトマスクの例であって、(A)はその平面概略図であり、(B)はその断面概略図である。
本発明の一実施形態のフィルム状ソフトマテリアル14、及び蛍光フィルム基材3の製造手順を模式的に示す図である。
本発明の一実施形態のフィルム状ソフトマテリアルの蛍光強度分布の評価結果を表す。
本発明の一実施形態のフィルム状ソフトマテリアルのデフォーカス光による退色を、蛍光顕微鏡によって観察した結果を表す。
本発明の一実施形態のフィルム状ソフトマテリアルの、蛍光強度の変位分布の評価結果を表す。

0011

以下、本発明のフィルム状ソフトマテリアル、蛍光フィルム基材及びフィルム状ソフトマテリアルの製造方法、並びにフィルム状ソフトマテリアルを用いる応力計測方法の実施形態を、図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。

0012

≪フィルム状ソフトマテリアル及び蛍光フィルム基材≫
図1は、本実施形態のフィルム状ソフトマテリアル11、及び、フィルム状ソフトマテリアル11を備える蛍光フィルム基材1を示す概略断面図である。本実施形態のフィルム状ソフトマテリアル11は、高分子化合物からなる3次元網目構造を有し、該3次元網目構造の主骨格の側鎖に蛍光色素が導入されている。フィルム状ソフトマテリアル11は、形状を保持するため、基材12上に、フィルム状ソフトマテリアル11を備える蛍光フィルム基材1として用いることができる。

0013

本実施形態のフィルム状ソフトマテリアル11には蛍光色素が導入されているので、後述する応力計測方法により、細胞等の物体に発生する応力の可視化および定量化が可能である。また、本実施形態のフィルム状ソフトマテリアル11は、高分子化合物からなる3次元網目構造を有し、上述のように、蛍光色素が該3次元網目構造の主骨格の側鎖に、化学結合で修飾され導入されているため、従来の、フィルム状ソフトマテリアルの内部に化学架橋によって蛍光ビーズを内包させたものよりも、架橋密度変化の影響を少なくすることができ、架橋密度の局所的な違いによる弾性率のばらつきも小さくすることができる。さらに、本実施形態のフィルム状ソフトマテリアル11において、主骨格に導入される蛍光色素は、分子サイズが小さいため、良溶媒へフィルム状ソフトマテリアルを膨潤させることで、未反応の蛍光色素はフィルム状ソフトマテリアルから除去可能である。そのため、未架橋蛍光分子の拡散運動による、応力に依存しない揺らぎは生じないため、応力計測の精度や再現性が低下してしまう問題も解決でき、長期間安定な応力の計測が実現できる。

0014

本実施形態のフィルム状ソフトマテリアル11を構成する高分子化合物としては、3次元網目構造を有し、該3次元網目構造の主骨格の側鎖に蛍光色素を導入できるものであれば、種類は問わない。該高分子化合物として、例えば、ポリシリコーンなどのエラストマ、ポリアクリルアミドや多糖類などの水溶性高分子ゲル、親水性ゲルシリコーンを配合したシリコーンハイドロゲルコラーゲンなどのタンパク質から構成されるハイドロゲル、等が挙げられる。

0015

フィルム状ソフトマテリアル11を構成する高分子化合物は、生体適合性を有することが好ましい。エラストマの例としては、ポリシリコーン、ハイドロゲルの例としては、ポリアクリルアミドやポリヒドロキシエチルアクリレートなどの骨格アクリル系高分子デキストランアルギン酸などの水溶性多糖類、コラーゲンやフィブロネクチン等、およびそれらの誘導体のタンパク質から構成されるハイドロゲル、等が挙げられる。また、これらの構成分子複数種類混合しても良い。中でも高分子化合物が、ポリアクリルアミド系樹脂を含むことが好ましい。

0016

フィルム状ソフトマテリアル11の、基材12とは反対側の表面には、図2に示されるように、ポリ−D−リジン(PDL)等のタンパク質からなる細胞接着層13が設けられていることが好ましい。フィルム状ソフトマテリアル11の表面に設けられた細胞接着層13により、任意の細胞および組織が接着可能となる。タンパク質からなる細胞接着層13を設けるため、あらかじめフィルム状ソフトマテリアル11に、sulfosuccinimidyl 6-(4‘-azido-2’-nitrophenylamino)hexanoate(以下、sulfo−SANPAH)の溶液滴下して紫外線照射して、フィルム状ソフトマテリアル11のタンパク質親和性を高めておくことが好ましい。フィルム状ソフトマテリアルの、弾性率は限定されないが、生体組織の弾性率である100Pa〜1MPaとすることで、ECM力学特性を模倣することができる。

0017

フィルム状ソフトマテリアルは、図3に示すように、高蛍光強度領域32と、該領域32よりも蛍光強度の低い低蛍光強度領域31とを有し、該領域32と該領域31との境目で蛍光強度に勾配または段差が生じていることが好ましい。すなわち、フィルム状ソフトマテリアルには、蛍光強度分布を有することが好ましい。

0018

蛍光強度の勾配は、異なる蛍光強度を有する隣接した領域の境界で蛍光強度が連続的に変化していることをいい、蛍光強度の変化の傾きが大きいほど望ましく、蛍光顕微鏡で検出可能な蛍光強度分布の変化が生じていることが望ましい。
蛍光強度の段差は、隣接する蛍光強度が異なる高蛍光強度領域32と低蛍光強度領域31との間で、蛍光強度差が生じている境界をいい、その蛍光強度差が大きいことが望ましい。また、低蛍光強度領域31の蛍光強度が0に近いほどよい。高蛍光強度領域32と低蛍光強度領域31との間隔は、応力を検出しようとする物体のサイズ、および応力の大きさに応じて適宜調整して最適化することができる。

0019

≪フィルム状ソフトマテリアルの製造方法≫
本発明に係るフィルム状ソフトマテリアルの製造方法は、基板上で、重合性基を有する蛍光色素を含有し3次元網目構造を形成するモノマー液を重合させる工程を備える。本発明に係るフィルム状ソフトマテリアルの製造方法は、従来の、蛍光ビーズをハイドロゲルへ内包させる際の化学修飾過程の煩雑さがなく、簡便に調製することができ、架橋密度の不均一性、未反応の蛍光ビーズ由来の揺らぎから生じる問題も解決できる。重合させる工程で用いる基板を、そのまま、蛍光フィルム基材1の基材12とすることもでき、重合させる工程を経て得られたフィルム状ソフトマテリアル11を、別途準備した基材12に転写して、蛍光フィルム基材1とすることもできる。

0020

モノマー液は、重合性基を有する蛍光色素を含有し3次元網目構造を形成する。3次元網目構造を形成するために、モノマー液は、重合性基を有する蛍光色素及び二以上の重合性基を有する重合性化合物を含有することができる。

0021

フィルム状ソフトマテリアルを構成する高分子化合物の、3次元網目構造の主骨格の側鎖に蛍光色素を導入できする方法は特に限定されないが、シリコーン系エラストマの場合、プラチナ触媒を用いたヒドロシリル化を用いる方法が挙げられる。ポリアクリルアミドゲルのようにモノマー化学重合によって3次元網目構造を形成させる場合は、蛍光色素が化学修飾されたモノマーを用いる。

0022

フィルム状ソフトマテリアルの蛍光強度は、3次元網目構造を有する高分子化合物の重合の際に、3次元網目構造を形成するモノマー液中の重合性基を有する蛍光色素の混合比によって、容易に制御可能である。未反応の蛍光色素モノマーに関しても、分子サイズが高分子化合物の網目構造よりも小さな分子構造とすることで、作製したフィルム状ソフトマテリアルを良溶媒中で再膨潤させることで、フィルム状ソフトマテリアルから除去することが可能である。コラーゲン等のタンパク質の自己集合やアルギン酸やヒアルロン酸などの多糖類の架橋による3次元網目構造からなるフィルム状ソフトマテリアルの場合、3次元網目構造を形成する前にアミド結合やエステル結合などの化学結合を介した蛍光色素の化学修飾を行う。3次元網目構造の主骨格の側鎖に蛍光色素を導入する方法は、上述のように、煩雑な化学修飾を行う必要がなく、簡易である。また、未反応の蛍光色素はフィルム形成前および形成後、どちらであっても透析によって除去可能である。

0023

3次元網目構造の主骨格の側鎖に修飾する蛍光色素の導入率は限定されないが、主骨格のユニット単位に対し、0.01〜1モル%となることが好ましい。フィルム主骨格の側鎖へ導入する蛍光色素の種類は限定されないが、水溶性を有し、色素間での分子会合が起こらないものが好ましい。

0024

重合性基を有する蛍光色素として、好ましくは、シグマアルドリッチ社から販売されているフルオレセイン−O−アクリレート(式(1−A)。以下、FLアクリレート)などの蛍光修飾モノマーや、Polysciences社から販売されているNile Blue Acrylamide(式(1−F))、Methacryloxyethyl thiocarbamoyl rhodamine B(式(1−G))などの蛍光修飾モノマーが挙げられる(式(1−A)〜式(1−G))。

0025

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0027

0028

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0030

0031

0032

フィルム状ソフトマテリアルの調製方法は特に限定されないが、シリコーン系エラストマの場合、プラチナ触媒を用いたヒドロシリル化が挙げられる。アクリル系高分子の場合、アクリル基重合反応による化学架橋が挙げられる。多糖類及びタンパク質の場合、自己集合によるゲル化を用いてもよく、また、上記のカルボジイミドを用いてアクリル基を主骨格に修飾することによる化学架橋を用いても良い。

0033

重合反応の種類は特に限定されないが、例として、光重合開始剤を用いたラジカル重合が挙げられる。光照射により自らを構成する化学結合が生成される物質として、例えば光重合開始剤によって重合されるモノマー等の、高分子化合物の原材料が挙げられる。
光重合開始剤としては、水溶性の光重合開始剤が好ましく、下記式(2−A)で表されるリチウムフェニル−2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィネートLAP)、下記式(2−B)で表される2−ヒドロキシ−4’−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−メチルプロピオフェノン(Irgacure2959)、下記式(2−C)で表されるEosinY、下記式(2−D)で表されるN−ビニルピロリドン(NMP)、下記式(2−E)で表されるトリエタノールアミン(TEOA)が例示できる。

0034

0035

0036

0037

0038

0039

基板上で、重合性基を有する蛍光色素を含有し3次元網目構造を形成するモノマー液を重合させてフィルム状ソフトマテリアル重合体を形成させる工程の後に、前記フィルム状ソフトマテリアル重合体の少なくも一部に、パターン状にエネルギー線を照射して、高蛍光強度領域と、低蛍光強度領域との境目で蛍光強度に勾配または段差を生じさせる工程により、フィルム状ソフトマテリアルの蛍光強度に勾配または段差を形成することができる。

0040

フィルム状ソフトマテリアルの蛍光強度に勾配または段差を生じさせる方法としては、例えば、フォトマスクや液晶フィルムをフォトマスクとして用いて、高強度のエネルギー線を照射して退色させる方法、デジタルミラーデバイス等を用いて局所的にエネルギー線を照射して退色させる方法、レーザー光デフォーカスによる光の干渉によって退色させる方法が挙げられる。

0041

≪応力計測方法≫
本発明に係る応力計測方法は、前記フィルム状ソフトマテリアル14上に細胞等の物体14を接触させる工程(図4(A))と、前記フィルム状ソフトマテリアル14の蛍光強度分布の変位を評価する工程(図4(B))と、を備える(図4)。

0042

フィルム状ソフトマテリアルの蛍光強度に勾配または段差を生じさせるのは、細胞等の物体をフィルム状ソフトマテリアルに接触させる前後のどちらでもよい。本発明に係る応力計測方法は、前記フィルム状ソフトマテリアル上に細胞等の物体を接触させる工程と、前記フィルム状ソフトマテリアルの少なくも一部に、パターン状にエネルギー線を照射して、高蛍光強度領域と、低蛍光強度領域との境目で蛍光強度に勾配または段差を生じさせる工程と、前記フィルム状ソフトマテリアルの蛍光強度分布の変位を評価する工程と、を備えてもよい。

0043

応力を長期間安定に計測方法として、蛍光フィルムに任意の蛍光強度分布をもたせ、物体が発生した応力による変位量を定量化することが挙げられる。均一な蛍光強度分布を有する蛍光フィルムでは、蛍光強度分布の変位量を定量的に計測することが難しくなる。蛍光色素が導入されているフィルム状ソフトマテリアルに、エネルギー線照射により局所的な蛍光強度分布の勾配または段差を形成させることができ、これにより、蛍光強度分布の変位量を定量的に計測することが可能となる。

0044

蛍光強度分布の勾配または段差は、対象とする物体のサイズや発生する牽引力に応じて最適化することが好ましい。上述のように、蛍光色素が蛍光フィルムを構成するソフトマテリアルの主骨格の側鎖に化学結合で修飾されているため、架橋密度の局所的な違いによる弾性率のばらつきは無く、かつ、未反応の蛍光色素はフィルムから除去可能なため、蛍光分子の拡散運動による応力に依存しない揺らぎは生じないため、長期間安定な応力の計測が実現できる。

0045

このような蛍光色素が導入されているフィルム状ソフトマテリアルを培養基材として用いることにより、細胞・組織がECMの力学特性を認識して、牽引力として応答するメカニズムを解明するためのin vitroモデルとすることができる。また、組織損傷時にはECMの力学特性が変化すること、疾病や加齢に伴うECMの力学特性が細胞・組織機能に影響を与えていることが示唆されており、本発明のフィルム状ソフトマテリアルを培養基板とし、組織再生に最適な足場材料の力学特性をスクリーニングするための外傷・疾病のin vitroモデルすることが可能である。

0046

次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。

0047

弾性率測定方法
実施例で得られた各ゲルの弾性率は、下記方法により求めた。
ヒトの体液とほぼ等張に調整したPBS水溶液で膨潤した状態のフィルム状ソフトマテリアルについて原子間力顕微鏡を用い、温度25℃の測定条件で測定を行った。

0048

[実施例1]
<蛍光色素が導入されたフィルム状ゲル及び蛍光フィルム基材の作製>
3−(トリメチルシリルプロピルメタクリレート表面修飾されたガラス基板16(以下、シラン化ガラス基板)の両端に、図5で示すような、スペーサー17としてサランラップ登録商標)を配置した後、5質量%アクリルアミド、0.5質量%のビスアクリルアミド、0.05質量%FLアクリレート、光重合開始剤LAPを1mM含む水溶液(以下、モノマー液18)をシラン化ガラス基板中央に滴下した(図6(A))。このガラス基板16に、酸素プラズマ処理したカバーガラス(以下、シール基板19)を上面からのせ、モノマー液18をシラン化ガラス基板とシール基板で挟み込み、余分なモノマー液18をキムワイプで取り除いた。波長360nmのバンドパスフィルターを用い、10mW/cm2で10分間、モノマー液18へ光照射を行った(図6(B))。光照射終了後、得られたフィルム状ハイドロゲルを大過剰量のPBS溶液に浸漬し、未反応のモノマー液成分を除去した。カバーガラスを取り除き、蛍光色素が導入されたフィルム状ゲル表面の余分な溶液を取り除いた後、2mMのsulfosuccinimidyl 6-(4‘-azido-2’-nitrophenylamino)hexanoate(以下、sulfo−SANPAH)を100μl滴下して、波長360nmバンドパスフィルターを介して10分間光照射した(図6(C))。フィルム状ゲル表面のsulfo−SANPAH溶液を取り除いた後、0.1mg/mlのポリ−D−リジン(以下、PDL)溶液を100μl滴下して、室温で2時間静置した(図6(D))。フィルム状ゲル表面のPDL溶液を取り除き、大過剰のPBS溶液で一晩以上浸透させることで、18mm×18mmの、蛍光色素が導入されたフィルム状ゲルを備える蛍光フィルム基材2とした(図6(E))。フィルム状ソフトマテリアル11としての、このフィルム状ゲルの弾性率は、約3.5kPaであり、全体的におよそ均一であった。

0049

[実施例2]
<蛍光強度分布を有するフィルム状ゲル及び蛍光フィルム基材の作製1>
実施例1の方法で蛍光色素が導入されたフィルム状ソフトマテリアルを備える蛍光フィルム基材2を作製後、金またはクロムマスク21が光透過基板23上に設けられたフォトマスク24(図7。以下、フォトマスク。)を、蛍光フィルム基材2の基板16側に設置した。マスク21の大きさは62.5μm×62.5μmである。422nmハイパスフィルターを介してキセノン光源による光照射を行い(図8(G))、蛍光フィルム基材3を得た(図8(H))。10分間の光照射の後、蛍光顕微鏡による観察を行った(図9)。フィルム状ソフトマテリアル14としての、フィルム状ゲルにマスクパターンに応じて、光照射された領域は蛍光色素が退色して低蛍光強度領域となり、マスクされた領域は高蛍光強度領域となって、約125μmピッチの蛍光強度分布が形成され、隣接する領域間で蛍光強度に段差が生じることが示された。

0050

[実施例3]
<蛍光強度分布を有するフィルム状ゲル及び蛍光フィルム基材の作製2>
実施例1の方法で蛍光色素が導入されたフィルム状ソフトマテリアルを備える蛍光フィルム基材2を作製後、顕微鏡対物レンズを介して、488nmのレーザー光をデフォーカス光として照射した。そのときの蛍光顕微鏡による観察結果図10に示す。デフォーカス光の照射によって、任意の領域で高蛍光強度領域32と低蛍光強度領域31が形成され、隣接する領域間で蛍光強度に段差が生じることが示された。

実施例

0051

[実施例4]
<フィルムの変位量の計測方法および応力分布の計測方法>
応力分布の計測は、まず、粒子画像流速測定法(以下、PIV)を用いて、ゲルの変位分布を解析する。細胞牽引力のモデル系として、ガラスニードルでゲルを1.6μm変位させた。変位前後のゲルの蛍光顕微鏡による観察結果およびPIV解析結果を図11に示す。変位マッピングから、実際の変位方向および変位量と同等の解析結果を得た。次に、ゲルの変位分布から、線形弾性理論に基づく理論式数値的に解析することにより、応力分布を計算することができる。取得画像のPIV解析および応力分布の解析は、ImageJのプラグインを用いた。

0052

本発明のフィルム状ソフトマテリアル及び蛍光フィルム基材を用いる応力計測方法により、物体として細胞を用いる場合、細胞外環境の力学特性変化に対する組織応答のメカニズム解明、および、組織の疾患・損傷モデル等とするために求められる、細胞が発生する応力を長期間安定に計測することが可能となる。また、本発明のフィルム状ソフトマテリアル及び蛍光フィルム基材は、細胞培養用フィルム基材としても利用可能性がある。これまで明らかとなっていなかったECM力学特性に対する細胞・組織の認識・応答メカニズムの解明が期待できる。再生医療の観点からは、損傷・疾病モデルとすることで、組織再生に最適な足場材料の力学特性をスクリーニングできる。

0053

1、2、3・・・蛍光フィルム基材、11、14・・・フィルム状ソフトマテリアル,12・・・基材、13・・・細胞接着層、13’・・・PDL溶液、13”・・・sulfo−SANPAH溶液、15・・・物体,16・・・ガラス基板、17・・・スペーサー、18・・・モノマー液、19・・・シール基板、21・・・マスク、22・・・光透過エリア、23・・・光透過基板、31・・・低蛍光強度領域、32・・・高蛍光強度領域

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