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技術 半導体基板、窒化ガリウム単結晶及び窒化ガリウム単結晶の製造方法

出願人 デクセリアルズ株式会社
発明者 八木橋和弘秋山晋也
出願日 2018年9月27日 (1年5ヶ月経過) 出願番号 2018-182583
公開日 2019年9月12日 (6ヶ月経過) 公開番号 2019-151542
状態 未査定
技術分野 結晶、結晶のための後処理 半導体装置を構成する物質の液相成長
主要キーワード バスタブ形状 X線解析 縦横格子 窒化作用 結晶方位マップ 観察エリア 走査測定 コランダム構造
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (17)

課題

結晶欠陥がより低減された窒化ガリウム単結晶膜、それを含む半導体基板、及び窒化ガリウム単結晶の製造方法の提供。

解決手段

サファイア基板20と、結晶方向ランダムな窒化ガリウムで構成され、サファイア基板の上に設けられた中間層11と、窒化ガリウム単結晶で構成され、中間層の上に少なくとも1層以上設けられた半導体層10とを備える半導体基板1。また、窒化ガリウム単結晶の製造方法であって、金属ガリウム及び窒化鉄を、窒素雰囲気下で少なくとも窒化鉄と前記金属ガリウムとが反応する反応温度まで加熱するステップと、反応温度まで加熱後、反応温度の範囲内の温度に20時間以上保持するステップと、を含み、加熱された金属ガリウム及び窒化鉄の中には、サファイア基板が設けられ、窒化鉄は、一窒化四鉄、一窒化三鉄又は一窒化二鉄のいずれか1つ以上を含み、反応温度は、700〜1000℃である、窒化ガリウム単結晶の製造方法。

概要

背景

近年、青色発光ダイオード半導体レーザ、及び高耐圧・高周波電源IC(IntegratedCircuit)等を形成する半導体材料として、窒化ガリウム(GaN)が注目されている。

窒化ガリウムをサファイア基板等の上に単結晶薄膜として成膜させる場合、一般的には、ハイドライド気相エピタキシャル成長法、及び有機金属気相成長法などの気相成長法が用いられる。ハイドライド気相エピタキシャル成長法では、具体的には、アンモニアガス及び塩化ガリウム蒸気基板上にて反応させることが行われている。

このような気相成長法では、サファイア等の異種材料で形成された基板上に窒化ガリウム結晶成長させる。このため、基板と窒化ガリウムとの熱膨張係数の差、又は格子不整合緩和するために、下記の特許文献1及び2に開示されるように、バッファ層を設ける技術が知られている。

しかしながら、下記の特許文献1及び2に開示される技術を採用した場合でも、気相成長によって合成された窒化ガリウム結晶には、結晶欠陥が多数存在するため、デバイスに組み込んだ際に目的の特性を得ることが難しかった。また、気相成長法では、窒素源として高い反応性を有するアンモニアガスを用いるため、有害ガス除去設備が必要となり、かつ製造工程及び製造装置が複雑化しやすく、製造コストが高くなってしまう。

ここで、結晶欠陥が発生しにくい窒化ガリウム結晶の製造方法としては、下記の特許文献3に開示されるように、液相成長を用いて窒化ガリウム結晶を製造する方法が検討されている。このような方法では、液相からの結晶析出によって窒化ガリウム結晶を階段状に層状成長させることができるため、格子不整合が発生しにくく、窒化ガリウム結晶における結晶欠陥の発生を抑制することができると言われている。

概要

結晶欠陥がより低減された窒化ガリウムの単結晶膜、それを含む半導体基板、及び窒化ガリウム単結晶の製造方法の提供。サファイア基板20と、結晶方向ランダムな窒化ガリウムで構成され、サファイア基板の上に設けられた中間層11と、窒化ガリウム単結晶で構成され、中間層の上に少なくとも1層以上設けられた半導体層10とを備える半導体基板1。また、窒化ガリウム単結晶の製造方法であって、金属ガリウム及び窒化鉄を、窒素雰囲気下で少なくとも窒化鉄と前記金属ガリウムとが反応する反応温度まで加熱するステップと、反応温度まで加熱後、反応温度の範囲内の温度に20時間以上保持するステップと、を含み、加熱された金属ガリウム及び窒化鉄の中には、サファイア基板が設けられ、窒化鉄は、一窒化四鉄、一窒化三鉄又は一窒化二鉄のいずれか1つ以上を含み、反応温度は、700〜1000℃である、窒化ガリウム単結晶の製造方法。

目的

本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とする

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

サファイア基板と、結晶方向ランダム窒化ガリウムで構成され、前記サファイア基板の上に設けられた中間層と、窒化ガリウム単結晶で構成され、前記中間層の上に少なくとも1層以上設けられた半導体層と、を備える、半導体基板

請求項2

前記中間層及び前記半導体層を構成する窒化ガリウムのチルト幅は、0.05°以上0.4°以下である、請求項1に記載の半導体基板。

請求項3

前記中間層及び前記半導体層を構成する窒化ガリウムのツイスト幅は、0.1°以上0.7°以下である、請求項1に記載の半導体基板。

請求項4

前記サファイア基板の前記中間層が設けられる面の面方位は、c面又はa面である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体基板。

請求項5

前記中間層及び前記半導体層を構成する窒化ガリウムは、鉄原子を含み、前記窒化ガリウムの厚さ方向における前記鉄原子の濃度分布は、1.0×1016Atoms/cm3以上1.0×1022Atoms/cm3以下の範囲に含まれる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体基板。

請求項6

前記窒化ガリウムの厚さ方向における前記鉄原子の濃度分布は、前記窒化ガリウムの表面領域、及び前記サファイア基板との界面領域でより高く、前記表面領域及び前記界面領域の間の中間領域でより低い形状の分布を有する、請求項5に記載の半導体基板。

請求項7

前記界面領域での前記鉄原子の濃度の最高値は、前記中間領域での前記鉄原子の濃度の最低値の10倍以上である、請求項6に記載の半導体基板。

請求項8

前記表面領域での前記鉄原子の濃度の最高値は、前記中間領域での前記鉄原子の濃度の最低値の10倍以上である、請求項6又は7に記載の半導体基板。

請求項9

前記窒化ガリウムの厚さ方向において、任意の2点の前記中間領域の前記鉄原子の濃度差は、前記任意の2点のいずれか一方の前記鉄原子の濃度の50%以下である、請求項6〜8のいずれか一項に記載の半導体基板。

請求項10

前記窒化ガリウムの面内方向において、任意の2点の前記中間領域の前記鉄原子の濃度差は、前記任意の2点のいずれか一方の前記鉄原子の濃度の50%以下である、請求項6〜9のいずれか一項に記載の半導体基板。

請求項11

前記界面領域は、前記サファイア基板との界面から前記窒化ガリウムの厚さ方向に2μm以内の領域であり、前記表面領域は、前記窒化ガリウムの表面から前記窒化ガリウムの厚さ方向に1μm以内の領域である、請求項6〜10のいずれか一項に記載の半導体基板。

請求項12

結晶方向がランダムな窒化ガリウムで構成された中間層を介してサファイア基板の上に少なくとも1層以上設けられ、単結晶にて構成される、窒化ガリウム単結晶。

請求項13

前記中間層を構成する前記窒化ガリウム、及び前記窒化ガリウム単結晶のチルト幅は、0.05°以上0.4°以下である、請求項12に記載の窒化ガリウム単結晶。

請求項14

前記中間層を構成する前記窒化ガリウム、及び前記窒化ガリウム単結晶のツイスト幅は、0.1°以上0.7°以下である、請求項12に記載の窒化ガリウム単結晶。

請求項15

前記サファイア基板の前記中間層が設けられた側の面方位は、c面又はa面である、請求項12〜14のいずれか一項に記載の窒化ガリウム単結晶。

請求項16

請求項1〜11のいずれか一項に記載の半導体基板が備える窒化ガリウム単結晶、又は請求項12〜15のいずれか一項に記載の窒化ガリウム単結晶の製造方法であって、金属ガリウム及び窒化鉄を、窒素雰囲気下で少なくとも前記窒化鉄と前記金属ガリウムとが反応する反応温度まで加熱するステップと、前記金属ガリウム及び前記窒化鉄を前記反応温度まで加熱した後、前記金属ガリウム及び前記窒化鉄を前記反応温度の範囲内の温度に20時間以上保持するステップと、を含み、加熱された前記金属ガリウム及び前記窒化鉄の中には、前記サファイア基板が設けられ、前記窒化鉄は、一窒化四鉄、一窒化三鉄又は一窒化二鉄のいずれか1つ以上を含み、前記反応温度は、700℃超1000℃以下である、窒化ガリウム単結晶の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、半導体基板窒化ガリウム単結晶及び窒化ガリウム単結晶の製造方法に関する。

背景技術

0002

近年、青色発光ダイオード半導体レーザ、及び高耐圧・高周波電源IC(IntegratedCircuit)等を形成する半導体材料として、窒化ガリウム(GaN)が注目されている。

0003

窒化ガリウムをサファイア基板等の上に単結晶薄膜として成膜させる場合、一般的には、ハイドライド気相エピタキシャル成長法、及び有機金属気相成長法などの気相成長法が用いられる。ハイドライド気相エピタキシャル成長法では、具体的には、アンモニアガス及び塩化ガリウム蒸気基板上にて反応させることが行われている。

0004

このような気相成長法では、サファイア等の異種材料で形成された基板上に窒化ガリウム結晶成長させる。このため、基板と窒化ガリウムとの熱膨張係数の差、又は格子不整合緩和するために、下記の特許文献1及び2に開示されるように、バッファ層を設ける技術が知られている。

0005

しかしながら、下記の特許文献1及び2に開示される技術を採用した場合でも、気相成長によって合成された窒化ガリウム結晶には、結晶欠陥が多数存在するため、デバイスに組み込んだ際に目的の特性を得ることが難しかった。また、気相成長法では、窒素源として高い反応性を有するアンモニアガスを用いるため、有害ガス除去設備が必要となり、かつ製造工程及び製造装置が複雑化しやすく、製造コストが高くなってしまう。

0006

ここで、結晶欠陥が発生しにくい窒化ガリウム結晶の製造方法としては、下記の特許文献3に開示されるように、液相成長を用いて窒化ガリウム結晶を製造する方法が検討されている。このような方法では、液相からの結晶析出によって窒化ガリウム結晶を階段状に層状成長させることができるため、格子不整合が発生しにくく、窒化ガリウム結晶における結晶欠陥の発生を抑制することができると言われている。

先行技術

0007

特開平8−310900号公報
特開2000−269605号公報
特開2015−71529号公報

発明が解決しようとする課題

0008

しかし、特許文献3に開示される技術を採用した場合でも、結晶欠陥が十分に低減された窒化ガリウム結晶を形成することは依然として困難であった。

0009

そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、結晶欠陥がより低減された窒化ガリウム結晶を備える半導体基板、窒化ガリウム単結晶、及び窒化ガリウム単結晶の製造方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

0010

上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、サファイア基板と、結晶方向ランダムな窒化ガリウムで構成され、前記サファイア基板の上に設けられた中間層と、窒化ガリウム単結晶で構成され、前記中間層の上に少なくとも1層以上設けられた半導体層と、を備える、半導体基板が提供される。

0011

前記中間層及び前記半導体層を構成する窒化ガリウムのチルト幅は、0.05°以上0.4°以下であってもよい。

0012

前記中間層及び前記半導体層を構成する窒化ガリウムのツイスト幅は、0.1°以上0.7°以下であってもよい。

0013

前記サファイア基板の前記中間層が設けられる面の面方位は、c面又はa面であってもよい。

0014

前記中間層及び前記半導体層を構成する窒化ガリウムは、鉄原子を含み、前記窒化ガリウムの厚さ方向における前記鉄原子の濃度分布は、1.0×1016Atoms/cm3以上1.0×1022Atoms/cm3以下の範囲に含まれてもよい。

0015

前記窒化ガリウムの厚さ方向における前記鉄原子の濃度分布は、前記窒化ガリウムの表面領域、及び前記サファイア基板との界面領域でより高く、前記表面領域及び前記界面領域の間の中間領域でより低い形状の分布を有してもよい。

0016

前記界面領域での前記鉄原子の濃度の最高値は、前記中間領域での前記鉄原子の濃度の最低値の10倍以上であってもよい。

0017

前記表面領域での前記鉄原子の濃度の最高値は、前記中間領域での前記鉄原子の濃度の最低値の10倍以上であってもよい。

0018

前記窒化ガリウムの厚さ方向において、任意の2点の前記中間領域の前記鉄原子の濃度差は、前記任意の2点のいずれか一方の前記鉄原子の濃度の50%以下であってもよい。

0019

前記窒化ガリウムの面内方向において、任意の2点の前記中間領域の前記鉄原子の濃度差は、前記任意の2点のいずれか一方の前記鉄原子の濃度の50%以下であってもよい。

0020

前記界面領域は、前記サファイア基板との界面から前記窒化ガリウムの厚さ方向に2μm以内の領域であり、前記表面領域は、前記窒化ガリウムの表面から前記窒化ガリウムの厚さ方向に1μm以内の領域であってもよい。

0021

また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、結晶方向がランダムな窒化ガリウムで構成された中間層を介してサファイア基板の上に少なくとも1層以上設けられ、単結晶にて構成される、窒化ガリウム単結晶が提供される。

0022

前記中間層を構成する前記窒化ガリウム、及び前記窒化ガリウム単結晶のチルト幅は、0.05°以上0.4°以下であってもよい。

0023

前記中間層を構成する前記窒化ガリウム、及び前記窒化ガリウム単結晶のツイスト幅は、0.1°以上0.7°以下であってもよい。

0024

前記サファイア基板の前記中間層が設けられた側の面方位は、c面又はa面であってもよい。

0025

また、上記課題を解決するために、上記の半導体基板が備える窒化ガリウム単結晶、又は上記の窒化ガリウム単結晶の製造方法であって、金属ガリウム及び窒化鉄を、窒素雰囲気下で少なくとも前記窒化鉄と前記金属ガリウムとが反応する反応温度まで加熱するステップと、前記金属ガリウム及び前記窒化鉄を前記反応温度まで加熱した後、前記金属ガリウム及び前記窒化鉄を前記反応温度の範囲内の温度に20時間以上保持するステップと、を含み、加熱された前記金属ガリウム及び前記窒化鉄の中には、前記サファイア基板が設けられ、前記窒化鉄は、一窒化四鉄、一窒化三鉄又は一窒化二鉄のいずれか1つ以上を含み、前記反応温度は、700℃超1000℃以下である、窒化ガリウム単結晶の製造方法が提供される。

0026

上記構成により、異種材料であるサファイア基板と半導体層との間の格子不整合による結晶欠陥の発生を中間層によって抑制することが可能である。

発明の効果

0027

以上説明したように本発明によれば、結晶欠陥がより低減された窒化ガリウム結晶を提供することが可能である。

図面の簡単な説明

0028

本発明の一実施形態に係る半導体基板を厚み方向に切断した断面構成を説明する模式図である。
X線回折におけるチルト測定を模式的に説明する説明図である。
X線回折におけるツイスト測定を模式的に説明する説明図である。
本発明の一実施形態に係る窒化ガリウム単結晶の製造に用いる反応装置の構成を説明する模式図である。
図3で示した基板の保持具をより具体的に示す斜視図である。
実施例1に係る半導体基板のサファイア基板と中間層及び半導体層との界面付近の断面を観察したTEM明視野像である。
比較例1に係る半導体基板のサファイア基板と中間層及び半導体層との界面付近の断面を観察したTEM明視野像である。
実施例1に係る半導体基板の半導体層を構成する単結晶のチルト測定の結果である。
実施例1に係る半導体基板の半導体層を構成する単結晶のツイスト測定の結果である。
チルト幅及びツイスト幅の相関関係を示す散布図である。
面内分布の評価において、結晶面(0001)を主面とする2インチのサファイア基板での複数の測定点の配置を示す模式図である。
実施例1に係る試料観察エリア5μm×5μmにおけるAFM像である。
実施例1に係る試料のSEM像である。
実施例1に係る試料のEBSD法による解析結果をZ軸方向から見た逆極点図である。
実施例1にて得られた窒化ガリウム結晶のSIM測定結果を示すグラフ図である。
気相成長によってサファイア基板上に形成した窒化ガリウム結晶のSIMS測定結果を示すグラフ図である。

0029

以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。

0030

なお、以下の説明にて参照する各図面では、説明の便宜上、一部の構成部材の大きさを誇張して表現している場合がある。したがって、各図面において図示される構成部材同士の相対的な大きさは、必ずしも実際の構成部材同士の大小関係を正確に表現するものではない。また、以下の説明では、積層方向を上下方向と表現し、サファイア基板が存在する方向を下方向と表現する。

0031

<1.半導体基板>
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態に係る半導体基板の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る半導体基板を厚み方向に切断した断面構成を説明する模式図である。

0032

図1に示すように、半導体基板1は、サファイア基板20と、中間層11と、半導体層10と、を備える。このうち、中間層11及び半導体層10は、窒化ガリウムにて構成される。

0033

サファイア基板20は、例えば、単結晶サファイアにて構成された板状の支持体である。単結晶サファイアは、α−アルミナ(α−Al2O3)からなるコランダム構造結晶体であり、優れた機械的特性及び熱的特性化学的定性、並びに光透過性を有する。そのため、サファイア基板20は、例えば、青色発光ダイオード及び半導体レーザ等を製造するための基板として好適に用いることができる。サファイア基板20の厚みは、例えば、0.4mm程度であってもよい。

0034

なお、サファイア基板20は、中間層11が設けられる面の面方位がc面又はa面となることが好ましい。本実施形態に係る半導体基板1では、サファイア基板20のc面又はa面に中間層11及び半導体層10を積層することによって、窒化ガリウム結晶をよりエピタキシャルに成長させることができる。

0035

中間層11は、サファイア基板20の上に設けられ、結晶方位がランダムな窒化ガリウムにて構成される。中間層11は、サファイア基板20及び半導体層10の格子定数を調整することによって、半導体層10を構成する窒化ガリウム単結晶がより結晶欠陥が少なく、エピタキシャルに成長することを支援する。中間層11の厚みは、例えば、100nm以下であってもよい。

0036

半導体層10は、中間層11の上に設けられ、窒化ガリウム単結晶にて構成される。換言すると、半導体層10は、窒化ガリウムによる単結晶膜として中間層11の上に設けられる。例えば、半導体層10を構成する窒化ガリウム単結晶は、サファイア基板20の上にエピタキシャル成長して設けられる。半導体層10の厚みは、例えば、数μm程度であってもよい。

0037

なお、半導体層10は、中間層11の上に複数層設けられていてもよい。すなわち、半導体層10は、中間層11の上に2層以上積層されていてもよい。半導体層10の積層数の上限は、特に設けないが、半導体層10の積層数が過剰となった場合、半導体基板1が半導体層10の積層方向に反る可能性がある。そのため、半導体層10の積層数の上限は、例えば、10層としてもよい。

0038

<2.窒化ガリウム結晶の特性>
以下では、本実施形態に係る半導体基板1に設けられる中間層11及び半導体層10(すなわち、窒化ガリウム結晶)が備える第1の特性及び第2の特性について説明する。

0039

(第1の特性)
まず、図2A及び図2Bを参照して、窒化ガリウム結晶が備える第1の特性についてより詳細に説明する。

0040

本実施形態によれば、サファイア基板20の上に、結晶欠陥がより低減された窒化ガリウム単結晶にて構成される半導体層10を形成することができる。このような単結晶膜の結晶性の解析には、例えば、薄膜X線回折を用いることができる。なお、薄膜X線回折の測定は、例えば、リガク社製の全自動平型多目的X線解析装置「SmartLab 3XG」にて行うことができる。

0041

具体的には、結晶の積層方向の結晶性(すなわち、結晶の積層方向の結晶方位の揃い具合)を示す指標は、一般的にチルトと称され、図2Aに示すようなX線回折にて測定することができる。図2Aは、X線回折におけるチルト測定を模式的に説明する説明図である。

0042

図2Aに示すように、X線回折のチルト測定では、試料の表面に垂直な面内でX線の入射及び回折の検出が行われるアウトオブプレーンの配置で測定が行われる。このような測定は、試料の表面に対するX線の入射角及び出射角は等しくなるため対称反射測定とも称される。X線回折のチルト測定では、試料の表面に対して平行な格子面を測定する。具体的には、図2Aに示すように、平行ビーム法の光学系を用いて、検出器回折角(2θ)に固定し、試料をω軸周り揺動させる手法にて回折強度を測定する。X線回折のチルト測定では、このときの回折強度の変動から、試料である結晶の積層方向における配向軸方位分布を評価することができる。

0043

なお、試料に対するこのときのX線の侵入深さは、数十μm程度である。したがって、X線回折のチルト測定におけるピーク強度の値は、例えば、X線照射領域に存在する中間層11及び半導体層10(すなわち、窒化ガリウム結晶)の体積(平均厚さ)に依存すると推察される。

0044

また、結晶の面内方向の結晶性(すなわち、結晶の面内方向の結晶方位の揃い具合)を示す指標は、一般的にツイストと称され、図2Bに示すようなX線回折にて測定することができる。図2Bは、X線回折におけるツイスト測定を模式的に説明する説明図である。

0045

図2Bに示すように、X線回折のツイスト測定では、平行ビーム法の光学系を使用し、試料の表面の面内でX線の入射及び回折の検出が行われるインプレーンの配置で測定が行われる。X線回折のツイスト測定では、試料の表面すれすれにX線を入射させ、試料の表面に直交する格子面からの回折を測定する。具体的には、図2Bに示すように、測定対象である試料の格子面間隔からブラッグの式を用いて算出される2θχの値に検出器を固定し、試料を面内回転角φ軸周りに揺動させる手法にて回折強度を測定する。X線回折のツイスト測定では、このときの回折強度の変動から、試料である結晶の面内方向における配向軸の方位分布を評価することができる。

0046

また、ツイスト測定では、入射角度入射スリット幅及び長手制限スリット幅などの測定光学系の条件を統一し、X線の照射領域を合わせることで、ピーク強度の値を相対比較することができる。このような場合、ピーク強度の値は、例えば、X線照射領域に存在する中間層11及び半導体層10(すなわち、窒化ガリウム結晶)の体積(平均厚さ)に依存すると推察される。

0047

窒化ガリウムで構成された中間層11及び半導体層10は、異種材料で構成されたサファイア基板20の上にヘテロエピタキシャル成長にて形成されている。しかしながら、窒化ガリウムは、サファイアとは結晶構造が全く異なり、約16%程度の格子不整合(ミスマッチとも称される)が存在するため、界面付近で結晶構造が乱れやすい。そのため、サファイア基板20の上に設けられた中間層11及び半導体層10の結晶性又は結晶欠陥の程度を評価することは重要である。

0048

また、窒化ガリウム単結晶では、積層方向及び面内方向で成長異方性が大きく異なる。したがって、窒化ガリウム単結晶で構成された半導体層10の結晶性の評価は、結晶の積層方向及び面内方向を切り分けて精密な解析を行うことが重要である。

0049

上述したX線回折にて測定された、中間層11及び半導体層10を構成する窒化ガリウム結晶のチルトのピーク半値全幅(チルト幅とも称する)は、0.05°以上0.4°以下であり得る。また、中間層11及び半導体層10を構成する窒化ガリウム結晶のツイストのピークの半値全幅(ツイスト幅とも称する)は、0.1°以上0.7°以下であり得る。本実施形態に係る半導体基板1が備える中間層11及び半導体層10は、結晶性が高いことから、上述したチルト幅及びツイスト幅が小さくなり得る。

0050

また、本実施形態によれば、サファイア基板20の上に、窒化ガリウム単結晶にて構成され、結晶性の面内分布がより良好な半導体層10を形成することができる。なお、半導体層10の結晶性の面内分布については、X線回折を用いて、以下のように測定することができる。

0051

具体的には、図2Aに示したように、半導体層10の結晶性の面内分布は、試料の表面に垂直な面内でX線の入射及び回折の検出が行われるアウトオブプレーンの配置で測定が行われる。このような測定は、試料の表面に対するX線の入射角及び出射角は等しくなるため対称反射測定とも称される。ただし、半導体層10の面内分布の測定では、上記のチルト測定と異なり、微小集光光学系を使用し、回折角(2θ)及び試料軸(θ)を連動させて測定を行う。このような測定をサファイア基板20の複数点で行い、平均値及び標準偏差を算出し、各測定点における窒化ガリウムの(0002)面のピーク強度の標準偏差/平均値の値を算出することで、半導体層10の結晶性の面内ばらつきを評価することができる。

0052

後述する実施例で示すように、本実施形態に係る半導体基板1が備える中間層11及び半導体層10では、上記指標が低いことから、結晶性の面内分布が良好であることが理解できる。

0053

また、本実施形態によれば、サファイア基板20の上に、窒化ガリウム単結晶にて構成され、貫通転位が少ない半導体層10を形成することができる。なお、半導体層10の貫通転位密度については、エッチピット法を用いて、以下のように測定することができる。

0054

具体的には、半導体基板1を加熱した塩基性溶液等に浸漬した後、希釈された酸性溶液洗浄し、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)にて、半導体層10の表面を観察する。半導体層10の貫通転位は、熱アルカリによって浸食された穴部となるため、観察視野当たりの該穴部の個数計測することで、半導体層10の単位面積当たりの貫通転位密度を算出することができる。

0055

後述する実施例で示すように、本実施形態に係る半導体基板1が備える半導体層10では、貫通転位密度が極めて低く、一般的な気相成長による窒化ガリウム結晶と同等以上の品質となることを理解することができる。したがって、本実施形態に係る半導体基板1が備える半導体層10は、貫通転位が少なく、結晶欠陥が極めて少ないことを理解することができる。

0056

本実施形態によれば、サファイア基板20の上に、窒化ガリウム単結晶にて構成され、結晶方位のばらつきが少ない半導体層10を形成することができる。なお、半導体層10の結晶方位の面内分布については、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)の結晶方位解析機能を用いて、以下のように測定することができる。

0057

具体的には、SEMの結晶方位解析機能とは、電子後方散乱回折(Electron Back Scattered Diffraction pattern:EBSD)によって、試料のミクロ結晶組織を観察する機能である。例えば、SEM中で試料を大きく傾斜させて電子線を照射した場合、試料が結晶性であれば、試料内で電子線回折が生じる。この電子線回折に対して、菊池パターンと呼ばれる回折図形パターンを用いて方位指数付けを行うことで、結晶方位を求めることができる。さらに、試料に対して電子線を走査して菊池パターンをマッピングすることで、試料表面の結晶方位マップ又は結晶粒の情報を得ることができる。

0058

後述する実施例で示すように、本実施形態に係る半導体基板1が備える半導体層10では、半導体層10のほぼ全面が<0001>のc軸方向に配向している。したがって、本実施形態に係る半導体基板1が備える半導体層10は、結晶方位も一様にc軸方向に配向しており、良好な面内分布を有することを理解することができる。

0059

(第2の特性)
次に、窒化ガリウム結晶が備える第2の特性についてより詳細に説明する。

0060

本実施形態によれば、鉄原子がドープされ、かつ結晶欠陥が少ない窒化ガリウム結晶にて構成される中間層11及び半導体層10をサファイア基板20の上に形成することができる。

0061

窒化ガリウム結晶は、例えば、発光ダイオード、高周波電源用トランジスタ、又は高耐圧電源用トランジスタなどの次世代の機能性電子部品への適用が期待されている。このような電子部品への適用を考えた場合、窒化ガリウム結晶は、半絶縁性を有することが重要となる。そこで、窒化ガリウム結晶に鉄原子をドーピングすることで、半絶縁性を付与する技術が検討されている。

0062

例えば、熱拡散によって、窒化ガリウム結晶に鉄原子をドーピングする技術が検討されている。しかしながら、この方法は、バッチ処理であるため、スループットが低く、生産性が低い。また、この方法は、窒化ガリウム結晶にドーピングした鉄原子の量を定量的にモニタリングすることが困難であるため、窒化ガリウム結晶に均一に鉄原子をドーピングすることが困難である。さらに、この方法は、熱拡散された鉄原子によって、窒化ガリウム結晶に結晶欠陥を生じさせてしまうという課題があった。

0063

また、イオン打ち込みによって、窒化ガリウム結晶に鉄原子をドーピングする技術が検討されている。しかしながら、この方法は、イオンの打ち込みの深さ及び濃度が結晶方位に影響されてしまうため、窒化ガリウム結晶に鉄原子を均一にドーピングすることが困難である。また、この方法は、イオンの打ち込みによって、窒化ガリウム結晶に結晶欠陥を生じさせてしまうという課題があった。

0064

本実施形態に係る半導体基板1では、鉄原子を含む窒化鉄と金属ガリウムとを溶融した融液を用いて、中間層11及び半導体層10を構成する窒化ガリウム結晶を液相成長によって形成している。したがって、本実施形態によれば、結晶成長過程で自然と結晶中に鉄原子が取り込まれた窒化ガリウム結晶を均一に形成することができる。

0065

具体的には、中間層11及び半導体層10を構成する窒化ガリウム結晶は、1.0×1016Atoms/cm3以上1.0×1022Atoms/cm3以下の濃度で鉄原子を含んでもよい。

0066

ただし、半導体基板1に形成される窒化ガリウム結晶は、用途によって求められる絶縁性が異なる。そのため、半導体基板1に形成される窒化ガリウム結晶は、用途に応じて適切な濃度の鉄原子を含んでいてもよい。例えば、低抵抗用途の半導体基板1の窒化ガリウム結晶は、1.0×1016Atoms/cm3以上1.0×1019Atoms/cm3以下の濃度の鉄原子を含んでいてもよい。また、高抵抗用途の半導体基板1の窒化ガリウム結晶は、1.0×1017Atoms/cm3以上1.0×1022Atoms/cm3以下の濃度の鉄原子を含んでいてもよい。

0067

より具体的には、中間層11及び半導体層10を構成する窒化ガリウム結晶の鉄原子の濃度分布は、1.0×1016Atoms/cm3以上1.0×1022Atoms/cm3以下の範囲に含まれ、窒化ガリウム結晶の厚さ方向にバスタブ形状を有してもよい。

0068

バスタブ形状とは、中央部が平坦であり、かつ両端部が持ち上がった形状である。すなわち、窒化ガリウム結晶の鉄原子の濃度は、窒化ガリウム結晶の厚さ方向において、窒化ガリウム結晶の表面領域、及びサファイア基板20との界面領域で鉄原子の濃度が高くなり、表面領域及び界面領域の間の中間領域で鉄原子の濃度が低くなる分布を有してもよい。

0069

窒化ガリウム結晶の厚さ方向において、鉄原子の濃度分布がこのような形状を取る理由としては、以下の理由が考えられる。

0070

サファイア基板20との界面領域の窒化ガリウム結晶は、窒化ガリウム結晶の成長の初期段階である。したがって、サファイア基板20との界面領域の窒化ガリウム結晶は、サファイア基板20と窒化ガリウムとの結晶格子不整合を解消するために、より多くの鉄原子を結晶中に取り込むと考えられる。また、表面領域の窒化ガリウム結晶は、サファイア基板20の上の窒化ガリウム結晶の成長の起点となる。したがって、表面領域の窒化ガリウム結晶は、窒化ガリウム結晶の生成に伴って、窒化ガリウム結晶生成の触媒である鉄原子をより多く結晶中に取り込むと考えられる。一方、界面領域及び表面領域の間の中間領域の窒化ガリウム結晶は、一定の速度で結晶成長するため、略一定の濃度で鉄原子を結晶中に取り込むと考えられる。

0071

例えば、窒化ガリウム結晶の厚さ方向において、鉄原子の濃度分布は、サファイア基板20との界面領域の鉄原子の濃度の最高値が、中間領域での鉄原子の濃度の最低値の10倍以上となるような分布であってもよい。また、鉄原子の濃度分布は、窒化ガリウム結晶の表面領域での鉄原子の濃度の最高値が、中間領域での鉄原子の濃度の最低値の10倍以上となるような分布であってもよい。

0072

窒化鉄と金属ガリウムとを溶融した融液から液相成長にて窒化ガリウム結晶を成長させることで、半導体基板1の上に形成された窒化ガリウム結晶は、含有される鉄原子の濃度分布を上述した分布とすることができる。これによれば、半導体基板1の上に形成された窒化ガリウム結晶は、結晶欠陥を生成することなく、鉄原子を含有することができる。

0073

窒化ガリウム結晶における鉄原子の濃度は、例えば、液相成長時の融液に添加する窒化鉄の量にて制御することができる。具体的には、液相成長時の融液に添加する窒化鉄の量を増加させることで、窒化ガリウム結晶における鉄原子の濃度を全体的に増加させることができる。逆に、液相成長時の融液に添加する窒化鉄の量を減少させることで、窒化ガリウム結晶における鉄原子の濃度を全体的に減少させることができる。また、窒化ガリウム結晶における鉄原子の濃度は、液相成長時の窒化ガリウム結晶の成長速度を制御することで制御することができる。これは、窒化ガリウム結晶の成長速度を制御することで、窒化ガリウム結晶への鉄原子の取り込み速度、及び窒化ガリウム結晶からの不純物の排出速度を制御することができるためである。

0074

ここで、中間領域の窒化ガリウム結晶の鉄原子の濃度分布は、鉄原子が略一定で結晶中に取り込まれるため、高い均一性を有することになる。例えば、窒化ガリウム結晶の厚さ方向において、任意の2点の中間領域の鉄原子の濃度差は、任意の2点のいずれか一方の鉄原子の濃度の50%以下となり得る。すなわち、窒化ガリウム結晶の厚さ方向において、中間領域の窒化ガリウム結晶の鉄原子の濃度ばらつきは、界面領域又は表面領域の鉄原子の濃度の上昇と比較して極めて小さく、均一となる。

0075

また、本実施形態に係る半導体基板1では、窒化ガリウム結晶の面内方向においても、窒化ガリウム結晶の鉄原子の濃度分布は、高い均一性を有することになる。例えば、窒化ガリウム結晶の面内方向において、任意の2点の中間領域の鉄原子の濃度差は、任意の2点のいずれか一方の鉄原子の濃度の50%以下となり得る。すなわち、窒化ガリウム結晶の面内方向において、中間領域の窒化ガリウム結晶の鉄原子の濃度ばらつきは、窒化ガリウム結晶の厚さ方向と同様に、界面領域又は表面領域の鉄原子の濃度の上昇と比較して極めて小さく、均一となる。

0076

したがって、本実施形態によれば、鉄原子をドープした窒化ガリウム結晶にて構成される中間層11及び半導体層10を、結晶欠陥を生じさせずに形成することができる。また、本実施形態によれば、窒化ガリウム結晶の表面領域、及びサファイア基板20との界面領域の間の中間領域の窒化ガリウム結晶に略均一な濃度で鉄原子をドープすることができる。

0077

なお、窒化ガリウム結晶における界面領域とは、窒化ガリウム結晶の厚さ方向で窒化ガリウム結晶とサファイア基板20との界面における鉄原子濃度分布の上昇が収まり、略一定になるまでの領域を表す。窒化ガリウム結晶における界面領域は、例えば、サファイア基板20との界面から窒化ガリウム結晶の厚さ方向に2μm以内の領域であってもよい。また、窒化ガリウム結晶における表面領域とは、窒化ガリウム結晶の厚さ方向で窒化ガリウム結晶の表面における鉄原子濃度分布の上昇が収まり、略一定になるまでの領域を表す。窒化ガリウム結晶における表面領域は、例えば、窒化ガリウム結晶の表面から窒化ガリウム結晶の厚さ方向に1μm以内の領域であってもよい。

0078

<3.窒化ガリウム結晶の製造方法>
続いて、本発明の一実施形態に係る半導体基板が備える窒化ガリウム単結晶の製造方法について説明する。

0079

本実施形態に係る窒化ガリウム単結晶の製造方法は、金属ガリウムと窒化鉄とを加熱溶融し、窒化鉄の窒化作用を用いることで、サファイア基板20の上に中間層11を介して、窒化ガリウムの単結晶膜(半導体層10)を製造する方法である。上記の方法によれば、従来の液相成長と比較して、低圧(例えば、常圧)環境下にて、窒化ガリウム単結晶をサファイア基板の上に液相エピタキシャル成長させることができる。

0080

反応材料
まず、本実施形態に係る窒化ガリウム単結晶の製造方法にて用いられる反応材料について説明する。反応材料としては、金属ガリウム及び窒化鉄が用いられる。

0081

金属ガリウムは、高純度のものを使用することが好ましく、例えば、市販の純度99.99%以上のものを使用することができる。

0082

窒化鉄は、具体的には一窒化四鉄(Fe4N)、一窒化三鉄(Fe3N)、一窒化二鉄(Fe2N)又はこれらの2種以上の混合物を使用することができる。窒化鉄は、高純度のものを使用することが好ましく、例えば、市販の純度99.9%以上のものを使用することができる。

0083

窒化鉄中の鉄原子は、金属ガリウムと混合されて加熱されることにより、触媒として機能し、窒化鉄中の窒素原子又は融液中窒素分子から活性窒素を発生させる。発生した活性窒素は、金属ガリウムと反応することで、窒化ガリウム結晶を生成する。

0084

具体的には、窒化鉄として一窒化四鉄が使用される場合、窒化鉄及び金属ガリウムは、一窒化四鉄の窒化作用によって反応し、窒化ガリウムを生成する(反応式1)。

0085

Fe4N+13Ga→GaN+4FeGa3 ・・・反応式1

0086

また、窒素雰囲気中から融液中に溶解した窒化鉄及び金属ガリウムは、鉄原子が触媒として機能することで反応し、窒化ガリウムを生成する(反応式2)。

0087

2Ga+N2+Fe→2GaN+Fe ・・・反応式2

0088

なお、反応材料における窒化鉄の割合は、金属ガリウム及び窒化鉄の合計モル数に対して、2モル%以下であることが好ましい。窒化鉄の割合が2モル%を超える場合、窒化鉄中の鉄原子と、金属ガリウムとの合金形成量が増大し、反応材料を溶融した融液の粘度が増加することで、窒化ガリウム結晶の成長速度が低下するため好ましくない。

0089

(反応装置)
続いて、図3を参照して、本実施形態に係る窒化ガリウム単結晶の製造方法にて用いられる反応装置について説明する。図3は、窒化ガリウム単結晶の製造に用いる反応装置の構成を説明する模式図である。

0090

図3に示すように、反応装置100は、電気炉113と、電気炉113の側面に設けられたヒーター114と、ガス導入口131と、ガス排出口132と、引き上げ軸122と、引き上げ軸122及び電気炉113の間の気密性を確保するシール材123と、を備える。また、電気炉113の内部には、反応材料の原料融液110が投入された反応容器111を載置する架台112が設けられ、引き上げ軸122の一端には、窒化ガリウム結晶を成長させる基板140を保持する保持具120が設けられる。すなわち、反応装置100は、反応材料を溶融した原料融液110に浸漬された基板140上に窒化ガリウムの結晶膜をエピタキシャル成長させる装置である。

0091

電気炉113は、密閉された構造を有し、内部に反応容器111を収容する。例えば、電気炉113は、内径(直径)が約200mmであり、高さが約800mmである筒状構造であってもよい。また、ヒーター114は、電気炉113の長手方向の側面に配置され、電気炉113内部を加熱する。

0092

ガス導入口131は、電気炉113の下方に設けられ、電気炉113の内部に雰囲気ガス(例えば、窒素(N2)ガス)を導入する。また、ガス排出口132は、電気炉113の上方に設けられ、電気炉113の内部の雰囲気ガスを排出する。ガス導入口131及びガス排出口132により、電気炉113の内部の圧力は、ほぼ常圧(すなわち、大気圧)に保たれる。

0093

架台112は、反応容器111を支持する部材である。具体的には、架台112は、反応容器111がヒーター114によって均等に加熱されるように反応容器111を支持する。例えば、架台112の高さは、反応容器111がヒーター114の中央部に位置するような高さであってもよい。

0094

反応容器111は、反応材料が溶融した原料融液110を保持する容器である。反応容器111は、例えば、外径(直径)が約100mmであり、高さが約90mmであり、厚みが約5mmである円筒形状の容器であってもよい。反応容器111は、例えば、カーボンで構成されるが、1000℃付近高温で金属ガリウムと反応しない材質であれば、酸化アルミニウムなどの他の材料で構成されてもよい。

0095

原料融液110は、反応材料が溶融した液体である。具体的には、原料融液110は、反応材料である金属ガリウム及び窒化鉄をヒーター114によって加熱溶融した液体である。なお、反応材料である金属ガリウム及び窒化鉄の混合割合は、上述したように、金属ガリウム及び窒化鉄の総モル数に対して、窒化鉄のモル数が2%以下であることが好ましい。

0096

基板140は、表面に窒化ガリウムの結晶膜を積層可能な基板である。基板140は、具体的には、サファイア基板であってもよい。また、基板140は、いかなる形状であってもよいが、例えば、略平板形状略円板形状等であってもよい。

0097

シール材123は、引き上げ軸122と電気炉113との間に設けられ、電気炉113内の気密性を確保する。シール材123によって電気炉113の外部の大気が電気炉113内に流入することが防止されるため、電気炉113内は、ガス導入口131から導入されるガス雰囲気(例えば、窒素(N2)雰囲気)となる。

0098

引き上げ軸122は、基板140を原料融液110に浸漬し、また、基板140を原料融液110から引き上げる。具体的には、引き上げ軸122は、電気炉113の上面を貫通して設けられる。また、引き上げ軸122の電気炉113内の一端には、基板140を保持する保持具120が設けられる。したがって、引き上げ軸122を上下させることで、保持具120に保持された基板140を原料融液110に浸漬したり、引き上げたりすることができる。

0099

なお、引き上げ軸122は、軸を中心に回転可能に設けられてもよい。このような場合、引き上げ軸122を回転させることで、保持具120及び基板140を回転させ、原料融液110を撹拌することができる。これにより、原料融液110中の窒素濃度分布をより均一にすることができるため、基板140により均一な窒化ガリウムの単結晶膜を成長させることができる。

0100

保持具120は、複数のを備え、基板140を水平に保持する。基板140を水平に保持することにより、基板140に対する原料融液110の深さ方向の窒素濃度分布の影響を小さくすることができる。保持具120は、反応容器111と同様に、カーボンで構成されてもよいが、1000℃付近の高温でも金属ガリウムと反応しない材質であれば、酸化アルミニウムなどの他の材料で構成されてもよい。

0101

以上の構成により、反応装置100は、引き上げ軸122を上下させることによって基板140を原料融液110に浸漬させ、基板140上に窒化ガリウムの単結晶膜を成長させることができる。

0102

ここで、図4を参照して、保持具120のより具体的な形状について説明する。図4は、図3で示した基板140の保持具120をより具体的に示す斜視図である。

0103

図4に示すように、保持具120は、2本の柱状部材である支柱部126、127の両端をそれぞれ梁部124、125で連結した構造を有する。また、支柱部126、127と、梁部124、125とによって形成された空間内には、少なくとも1つ以上の棚板128が設けられる。棚板128は、支柱部126、127に対して垂直に設けられることで、基板140を水平に保持する。

0104

また、保持具120は、棚板128を複数備えていてもよい。このような場合、保持具120は、複数の基板140を同時に反応容器111中の原料融液110に浸漬し、複数の基板140に窒化ガリウムの結晶膜を合成することができる。なお、棚板128の各々の間隔は、例えば、10mm程度であればよい。

0105

以上の構成によれば、反応装置100は、基板140と結晶方位が揃った(すなわち、エピタキシャル成長した)窒化ガリウムの結晶膜を基板140の上に積層させることができる。

0106

(反応工程)
次に、本実施形態に係る窒化ガリウム単結晶の製造方法の流れについて説明する。

0107

まず、金属ガリウム及び窒化鉄の粉末を混合して上述の反応容器111に充填し、該反応容器111を電気炉113内に載置する。

0108

続いて、電気炉113内にガス導入口131から窒素ガスを導入し、電気炉113内を窒素雰囲気とした上で、ヒーター114によって反応容器111内の反応材料を加熱する。なお、ガス導入口131から電気炉113内に導入された窒素ガスは、ガス排出口132から排出されるため、電気炉113内は、ほぼ常圧に保たれる。

0109

ここで、反応容器111内の反応材料は、金属ガリウム及び窒化鉄が反応する反応温度まで少なくとも加熱される。このような反応温度は、具体的には、700℃超1000℃以下である。

0110

また、反応容器111内の反応材料は、基板140に窒化ガリウム単結晶を成長させている間は、前述の反応温度の範囲内の温度に20時間以上保持されることが好ましい。なお、温度を保持している間、反応材料の温度は、反応温度の範囲内(例えば、700℃超1000℃以下)に収まっていれば、一定である必要はなく、変動していてもよい。

0111

反応容器111内の反応材料が溶融し、原料融液110となった後、引き上げ軸122を操作することで、保持具120に保持された基板140を原料融液110中に浸漬する。これにより、原料融液110中に浸漬された基板140上に窒化ガリウムの均一な単結晶膜を成長させることができる。

0112

ただし、上記の工程にて得られた反応生成物には、鉄及びガリウム金属間化合物等の副生成物が含まれていることがある。そこで、窒化ガリウム結晶を析出させた基板140は、精製工程を経ることで副生成物が除去される。

0113

精製工程は、例えば、王水等の酸を用いた酸洗浄を用いることができる。これにより、鉄とガリウムとの金属間化合物等を酸に溶解させ、窒化ガリウム単結晶を精製することができる。

0114

以上の工程によれば、常圧等の低圧の窒素雰囲気下にて、液相成長により効率的に窒化ガリウム単結晶を製造することができる。

0115

以下では、実施例及び比較例を参照しながら、本実施形態に係る半導体基板、窒化ガリウム単結晶、及び窒化ガリウム単結晶の製造方法について具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は、あくまでも一例であって、本実施形態に係る半導体基板、窒化ガリウム単結晶及び窒化ガリウム単結晶の製造方法が下記の例に限定されるものではない。

0116

なお、以下の実施例及び比較例では、共通して、純度7Nの金属ガリウム(DOWAエレクトロニクス製)、及び純度99%以上の一窒化三鉄(高純度化学研究所製)を用いた。また、結晶成長基板として、直径が約2インチ、かつ厚みが0.4mm厚であり、窒化ガリウムの単結晶膜を積層させる面の面方位がそれぞれc面(0001)、a面(11−20)又はr面(1−102)であるサファイア基板(信光社製)をそれぞれ用いた。

0117

(実施例1)
まず、反応装置の内部に設置した反応容器に、金属ガリウム(Ga)及び一窒化三鉄(Fe3N)の各原料をGa:Fe3N=99.8mol%:0.2mol%の割合にて混合し、投入した。また、保持具の棚板には、半導体層を形成する面の面方位がc面(0001)のサファイア基板を載置した。

0118

続いて、以下の温度プロファイルによって、反応装置の内部温度を制御することで、金属ガリウムと一窒化三鉄とを反応させ、窒化ガリウム単結晶を製造した。

0119

具体的には、まず、反応装置の内部温度を200℃までマニュアル昇温した後、毎時100℃の割合で内部温度を700℃まで上昇させた。その後、反応装置の内部温度を20時間、700℃で保持した後、毎時100℃の割合で900℃まで上昇させ、900℃で40時間保持した。このとき、引き上げ軸を軸中心にして、保持具を毎分10回転の速度で回転させることで融液を攪拌した。その後、自然放熱によって反応容器の内部が室温に戻るまで自然冷却させた。取り出したサファイア基板を王水で洗浄することで、残存した金属ガリウム、又は鉄とガリウムとの金属間化合物などを除去した。

0120

なお、実施例1に係る半導体基板の断面を透過型電子顕微鏡(Tunnel Electron Microscope:TEM)等で確認したところ、サファイア基板の上に窒化ガリウム結晶で構成される中間層及び半導体層が形成されていることが確認された。その結果を図5Aに示す。図5Aは、実施例1に係る半導体基板のサファイア基板と中間層及び半導体層との界面付近の断面を観察したTEM明視野像である。

0121

図5Aでは、図に正対して右側のやや明るい領域がサファイア基板20であり、左側のやや暗い領域が窒化ガリウム結晶(中間層11及び半導体層10)である。図5Aに示すように、サファイア基板20と、窒化ガリウム結晶との界面には、格子の並びが乱れた中間層11がおよそ20nmの厚みで形成されていることが確認できる。

0122

続いて、実施例1に係る中間層半導体層(窒化ガリウム結晶膜)を積層したサファイア基板について、上述のチルト測定及びツイスト測定を行った。その測定結果を図6A及び図6Bに示す。

0123

図6Aは、実施例1に係る半導体基板の中間層及び半導体層を構成する窒化ガリウム結晶のチルト測定の結果である。チルト測定(ωスキャン)は、結晶の積層方向の結晶方位の変化又はばらつきを測定するものであり、ピークの幅が狭いほど結晶方位のばらつきが小さく、結晶性がよいことを示す。

0124

上述したリガク社製の全自動水平型多目的X線解析装置「SmartLab 3XG」を用いて、X線の入射及び回折検出が試料の表面に垂直な面で行われる配置にて、2θ=34.6°(窒化ガリウムの(0002)面の格子面間隔からブラッグの式を用いて算出される値)に検出器を配置してωスキャンによる測定を行った。なお、このときの試料に対するX線の侵入深さは、数十μm程度である。

0125

図6Aに示すように、ω=17.3度付近にピークが観測できた。また、該ピークの強度の半値全幅(チルト幅)は、0.13°であった。

0126

図6Bは、実施例1に係る半導体基板の中間層及び半導体層を構成する窒化ガリウム結晶のツイスト測定の結果である。ツイスト測定(φスキャン)は、結晶の面内方向の結晶方位の変化又はばらつきを測定するものであり、ピークの幅が狭いほど結晶方位のばらつきが小さく、結晶性がよいことを示す。

0127

上述したリガク社製の全自動水平型多目的X線解析装置「SmartLab 3XG」を用いて、X線の入射及び回折検出が試料の表面面内で行われる配置にて、試料表面に対してごく浅い角度でX線を入射した。なお、このときの試料に対するX線の侵入深さは、数μm程度である。ツイスト測定では、測定光学系の条件として、入射角度0.25°、入射スリット幅0.1mm、及び長手制限スリット幅5mmを用い、2θχ=57.91°(窒化ガリウム(11−20)面の格子面間隔からブラッグの式を用いて算出される値)に検出器を配置してφスキャンによる測定を行った。その結果、6回対称となる位置(面内回転で60°置き)に強度ピークが観測された。

0128

インプレーン測定であるツイスト測定では、φ軸が相対値となるため、ピークの最高点の位置をφ=0°として図示した。図6Bに示すように、ピークの強度の半値全幅(ツイスト幅)は、0.42°であった。また、ツイスト測定における窒化ガリウム(11−20)面の強度値は、7×104cpsであった。

0129

(実施例2)
温度プロファイルを以下の条件とした以外は、実施例1と同様の方法で、サファイア基板の上に窒化ガリウム単結晶を成長させた。

0130

具体的には、まず、反応装置の内部温度を200℃までマニュアルで昇温した後、毎時100℃の割合で内部温度を780℃まで上昇させた。次に、反応装置の内部温度を40時間、780℃で保持した。その後、自然放熱によって反応容器の内部が室温に戻るまで自然冷却させた。

0131

なお、実施例2に係る半導体基板の断面をSEM又はTEM等で確認したところ、実施例1と同様に、サファイア基板の上に窒化ガリウム結晶で構成される中間層及び半導体層が積層されていることが確認された(図示せず)。

0132

実施例2に係る中間層及び半導体層(窒化ガリウム結晶膜)を積層したサファイア基板について、実施例1と同様に、チルト測定及びツイスト測定を行った。その結果、チルト幅は、0.33°であり、ツイスト幅は0.66°であった。また、ツイスト測定における窒化ガリウム(11−20)面の強度値は、2×104cpsであった。

0133

(実施例3)
半導体層を形成する面の面方位がa面(11−20)のサファイア基板を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、サファイア基板の上に窒化ガリウム単結晶を成長させた。

0134

X線解析によれば、実施例3に係る中間層及び半導体層(窒化ガリウム結晶膜)を形成したサファイア基板では、サファイア基板の表面と平行に(0001)面の窒化ガリウム単結晶が成長していることが確認できた。

0135

なお、実施例3に係る半導体基板の断面をSEM又はTEM等で確認したところ、実施例1と同様に、サファイア基板の上に窒化ガリウム結晶で構成される中間層及び半導体層が積層されていることが確認された(図示せず)。

0136

実施例3に係る中間層及び半導体層(窒化ガリウム結晶膜)を形成したサファイア基板について、実施例1と同様に、チルト測定及びツイスト測定を行った。その結果、チルト幅は、0.15°であり、ツイスト幅は0.54°であった。また、ツイスト測定における窒化ガリウム(11−20)面の強度値は、5×104cpsであった。

0137

(比較例1)
温度プロファイルを以下の条件とした以外は、実施例1と同様の方法で、サファイア基板の上に窒化ガリウム単結晶を成長させた。

0138

具体的には、まず、反応装置の内部温度を200℃までマニュアルで昇温した後、毎時100℃の割合で内部温度を620℃まで上昇させた。次に、反応装置の内部温度を10時間、620℃で保持した後、毎時0.5℃の割合で680℃まで上昇させ、680℃で3時間保持した。その後、自然放熱によって反応容器の内部が室温に戻るまで自然冷却させた。

0139

なお、比較例1に係る半導体基板の断面をSEMで確認したところ、サファイア基板の上には、数μm〜数十μm程度の島状に離散的に窒化ガリウムの結晶粒が形成されていた(図示せず)。

0140

また、比較例1に係る半導体基板の断面をTEMで確認した結果を図5Bに示す。図5Bは、比較例1に係る半導体基板のサファイア基板と中間層及び半導体層との界面付近の断面を観察したTEM明視野像である。

0141

図5Bでは、図に正対して右側のやや明るい領域がサファイア基板20であり、左側のやや暗い領域が窒化ガリウム結晶(半導体層10)である。図5Bに示すように、比較例1に係る半導体基板の断面では、窒化ガリウム結晶は、多結晶状で結晶粒の方位がランダムになっていた。中間層11は、明瞭には確認されない、又は極めて薄膜となっており、サファイア基板20上には半導体層10のみが形成されていることが確認された。

0142

比較例1に係る半導体層(窒化ガリウム単結晶膜)を形成したサファイア基板について、実施例1と同様に、チルト測定及びツイスト測定を行った。その結果、チルト幅は、0.40°であり、ツイスト幅は1.18°であった。また、ツイスト測定における窒化ガリウム(11−20)面の強度値は、5×102cpsであった。

0143

(比較例2)
温度プロファイルを以下の条件とした以外は、実施例1と同様の方法で、サファイア基板の上に窒化ガリウム単結晶を成長させた。

0144

具体的には、まず、反応装置の内部温度を200℃までマニュアルで昇温した後、毎時100℃の割合で内部温度を700℃まで上昇させた。次に、反応装置の内部温度を40時間、700℃で保持した後、毎時100℃の割合で900℃まで上昇させ、900℃で3時間保持した。その後、自然放熱によって反応容器の内部が室温に戻るまで自然冷却させた。

0145

なお、比較例2に係る半導体基板の断面をSEM又はTEM等で確認したところ、比較例1と同様に、サファイア基板の上には、数μm〜数十μm程度の島状に、離散的に窒化ガリウム結晶粒が形成されていた。そのため、比較例2に係る半導体基板では、多結晶状で結晶粒の方位がランダムな窒化ガリウム結晶が形成されており、中間層が明瞭に確認されず、半導体層のみが形成されていることが確認された(図示せず)。

0146

比較例2に係る半導体層(窒化ガリウム結晶膜)を形成したサファイア基板について、実施例1と同様に、チルト測定及びツイスト測定を行った。その結果、チルト幅は、0.51°であり、ツイスト幅は0.59°であった。また、ツイスト測定における窒化ガリウム(11−20)面の強度値は、1×103cpsであった。

0147

(比較例3)
半導体層を形成する面の面方位がr面(1−102)のサファイア基板を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、サファイア基板の上に窒化ガリウム単結晶を成長させた。

0148

なお、比較例3に係る半導体基板の断面をSEM又はTEM等で確認したところ、比較例1と同様に、サファイア基板の上には、数μm〜数十μm程度の島状に、離散的に窒化ガリウム結晶粒が形成されていた。そのため、比較例3に係る半導体基板では、多結晶状で結晶粒の方位がランダムな窒化ガリウム結晶が形成されており、中間層が明瞭に確認されず、半導体層のみが形成されていることが確認された(図示せず)。

0149

X線解析によれば、比較例3に係る半導体層(窒化ガリウム結晶膜)を形成したサファイア基板では、X線回折強度が弱いものの、サファイア基板の表面と平行に(0001)面の窒化ガリウム単結晶が成長していることが確認できた。

0150

比較例3に係る半導体層(窒化ガリウム結晶膜)を形成したサファイア基板について、実施例1と同様に、チルト測定及びツイスト測定を行った。その結果、チルト幅は、0.69°であり、ツイスト幅は2°であった。また、ツイスト測定における窒化ガリウム(11−20)面の強度値は、3×102cpsであった。

0151

以上の実施例1〜3及び比較例1〜3で測定されたチルト幅及びツイスト幅の結果、ツイスト測定における窒化ガリウム(11−20)面の強度値をまとめて下記の表1及び図7に示す。図7は、チルト幅及びツイスト幅の相関関係を示す散布図である。

0152

0153

チルト幅は、結晶の積層方向の結晶性(積層方向の結晶方位の揃い具合)を示す指標であり、値が小さいほど結晶性が良好である。チルト幅は、概ね0.4°以下であれば良好と判断される。また、ツイスト幅は、結晶の面内方向の結晶性(面内方向の結晶方位の揃い具合)を示す指標であり、値が小さいほど結晶性が良好である。ツイスト幅は、概ね0.7°以下であれば良好と判断される。

0154

表1の結果を参照すると、実施例1〜3は、いずれもチルト幅及びツイスト幅が小さいため、積層方向及び面内方向共に、配向性及び結晶性が良好な単結晶が形成されていることがわかる。

0155

実施例1〜3及び比較例1〜3では、入射角度、入射スリット幅及び長手制限スリット幅などの測定光学系の条件を統一し、X線の照射領域を合わせているため、ピーク強度の値を相対比較することができる。したがって、ツイスト測定における窒化ガリウム(11−20)のピーク強度相対値が大きいほど、窒化ガリウム結晶膜の(11−20)面に配向している体積(平均厚さ)が大きいと推察される。

0156

これによれば、実施例1〜3は、チルト幅が0.13°〜0.33°、かつツイスト幅が0.42°〜0.66°の範囲となるため良好な結晶性を示すことがわかる。また、実施例1〜3は、ツイスト測定におけるピーク強度相対値が104cps以上であるため、十分な体積(厚み)の窒化ガリウムの結晶膜が形成できていることが推察される。

0157

一方、比較例1〜3では、チルト幅が0.40°〜0.69°、かつツイスト幅が0.59°〜2°の範囲となるため、チルト及びツイスト共に結晶方位のばらつきが大きいことがわかる。また、比較例1〜3は、ツイスト測定におけるピーク強度相対値が103cps以下であるため、十分な体積(厚み)の窒化ガリウムの結晶膜が形成できていないことが推察される。

0158

また、実施例1、3及び比較例3を比較すると、窒化ガリウム結晶を形成するサファイア基板の面の面方位が異なることによって、同じ温度プロファイル条件を用いた場合でも、形成される窒化ガリウムの結晶膜に違いが生じることがわかる。

0159

具体的には、窒化ガリウム結晶を形成するサファイア基板の面の面方位がc面(0001)、a面(11−20)、及びr面(1−102)のいずれの場合にも、サファイア基板の表面と平行に(0001)面の窒化ガリウムが形成されていた。

0160

ただし、実施例1、3のように、サファイア基板の面方位がc面(0001)及びa面(11−20)の場合、チルト幅及びツイスト幅が共に小さく、かつツイスト測定におけるピーク強度相対値も大きくなることがわかる。これから、実施例1、3では、積層方向及び面内方向共に、配向性及び結晶性が良好な単結晶が形成されており、かつ十分な体積(厚み)の窒化ガリウムの単結晶膜が形成できていることが推察される。

0161

一方、比較例3のように、サファイア基板の面方位がr面(1−102)の場合、チルト幅及びツイスト幅が共に大きく、かつツイスト測定におけるピーク強度相対値が小さくなることがわかる。これにより、比較例3では、チルト及びツイスト共に結晶方位のばらつきが大きく、かつ十分な体積(厚み)の窒化ガリウムの結晶膜が形成できていないことが推察される。

0162

(結晶性の面内分布の評価)
続いて、実施例1及び比較例2において、サファイア基板の上に形成された窒化ガリウムの単結晶膜(半導体層)の結晶性の面内分布を評価した。

0163

具体的には、X線回折において、試料の表面に垂直な面内でX線の入射及び回折の検出が行われるアウトオブプレーンの配置で測定を行った。ただし、試料水平型多目的X線回折装置UltimaIV−MAJ(リガク製)を使用し、微小部集光光学系CBO−f光学素子、及び微小部試料台アタッチメントを使用した。さらに、Cu管球を使用し、電圧40kV及び電流40mAの条件でX線を照射し、発散縦スリットは、2mmとした。なお、試料表面でのX線照射領域は、およそ長軸2.0×短軸1.5mmの楕円状の領域であった。

0164

上記の装置条件で、試料の表面に垂直な面内でX線の入射及び回折の検出が行われるアウトオブプレーンの配置で測定を行った。このような測定は、試料の表面に対するX線の入射角及び出射角は等しくなるため対称反射測定とも称される。なお、上述したチルト測定との相違点は、微小部集光光学系を使用し、回折角(2θ)と試料軸(θ)を連動させる手法である点である。これにより、2θ/θ走査測定で、2θを30.0°〜44.0°の範囲で0.02°ステップで走査して、計数時間0.5秒で測定し、2θ=34.6°付近に出現する窒化ガリウム(0002)の回折ピークの強度を求めた。

0165

以上の測定を、図8に示すような結晶面(0001)を主面とする2インチのサファイア基板において、複数点で行った。サファイア基板は、オリフラ面(OF面(11−20))に平行な方向にX線入射及び出射の方向が含まれるように配置した。

0166

図8に示す黒丸の位置のように測定点を設定し、10mm置きで縦横格子状に計13点で同様の測定を行った。さらに、各測定点で窒化ガリウムの(0002)面のピーク強度を求め、さらに13測定点での窒化ガリウムの(0002)面のピーク強度の平均値と、標準偏差とを求めた。実施例1及び比較例2に対する面内強度分布の測定結果として、上述した窒化ガリウムの(0002)面のピーク強度の平均値と、標準偏差/平均値の値(面内強度ばらつきを示す指標)とを下記の表2に示す。

0167

0168

表2の結果を参照すると、実施例1は、窒化ガリウムの(0002)面のピーク強度の標準偏差/平均値の値が29%と低く、面内強度のばらつきが小さいことがわかる。一方、比較例2は、窒化ガリウムの(0002)面のピーク強度の標準偏差/平均値の値が73%と高く、面内強度のばらつきが大きいことがわかる。

0169

(貫通転位密度の評価)
次に、実施例1において、十分な厚みかつ十分な面積平坦領域を有する窒化ガリウムの単結晶膜が得られたことから、エッチピット法を用いて、貫通転位密度を評価した。なお、比較例1〜3は、窒化ガリウムの単結晶膜が数μm〜数十μm程度の島状形態であり、十分な面積の平坦領域が確保できないため、貫通転位密度の評価を行うことができなかった。

0170

具体的には、まず、窒化ガリウムの単結晶膜を形成した後の実施例1に係る半導体基板から約10mm角四方の試料を切り出した。次に、86質量%の水酸化カリウム溶液、及び90質量%の水酸化ナトリウム溶液を1:1(mol比率)で混合したエッチング液を作製し、Zr製るつぼに投入して、Zr製るつぼごと箱型オーブンで500℃に加熱した。

0171

続いて、φ0.2mmのインコネルワイヤー巻き付けた試料を吊り下げて500℃に加熱したエッチング液に1分間浸漬した。その後、試料をエッチング液から取り出し、室温下で3分間静置した。次に、38質量%の塩酸を純水で1:1の質量比率で希釈した希塩酸に試料を1分間浸漬した後、純水で試料を1分間洗浄して乾燥させた。

0172

乾燥後の試料の窒化ガリウム単結晶の表面をAFM(Digital Instruments製Nano ScopeIIIa)にて観察した。その結果を図9に示す。図9は、実施例1に係る試料の観察エリア5μm×5μmにおけるAFM像である。

0173

図9に示すように、AFM像の黒い影の部分がエッチング液の熱アルカリによって浸食された穴部であり、貫通転位がある場所に対応する。観察視野中の上記穴部の個数を計測することによって、窒化ガリウムの単結晶膜の単位面積当たりの貫通転位の密度を算出することができる。実施例1に係る試料では、貫通転位密度は、3×108個/cm2と見積もることができた。このレベルの貫通転位密度は、一般的な気相成長にて形成された窒化ガリウムの単結晶膜と同等の品質レベルである。

0174

(結晶方位の分布評価)
続いて、実施例1において、SEMの電子線後方散乱回折(EBSD)法を用いて、結晶方位の分布を評価した。なお、比較例1〜3は、窒化ガリウムの単結晶膜が数μm〜数十μm程度の島状形態であり、十分な面積の平坦領域が確保できないため、結晶方位の分布の評価を行うことができなかった。

0175

具体的には、実施例1に係る試料をSEM(JEOL製SM−7100F)で観察しながら、電子線後方散乱回折(EBSD)法で解析することで、試料表面の結晶方位の分布、及び結晶粒の情報を得た。

0176

図10に実施例1に係る試料のSEM像を示す。SEM観察時の加速電圧は15kVとし、試料の傾斜角は70°で行った。試料の表面は研磨せず、窒化ガリウム単結晶の形成後のそのままの表面状態で観察したため、試料表面には、凹凸又は窪みが観察された。

0177

図11に実施例1に係る試料のEBSD法による解析結果をZ軸方向から見た逆極点図(Inverse Pole Figure Map:IPFマップ)を示す。IPFマップでは、結晶方位の方向を色分けで表しており、図11では、ほぼ全面が同じ色(001:c軸)であり、結晶が同じ方位に配向していることがわかる。図11において一部より暗い箇所は、カラー画像上では黒色で表されており、結晶相が同定できなかった箇所である。この箇所は、他の方向から見たIPFマップでも同じように黒色となっていため、表面の凹凸の影響でデータが欠落したものと推測される。

0178

図11に示すIPFマップでは、実施例1に係る試料では、異なる結晶方位に配向した領域、又は結晶粒界等が観測されなかった。したがって、ミクロな観点からも実施例1に係る半導体基板が備える窒化ガリウムの単結晶膜(半導体層)は、c軸方向に一様に配向した結晶薄膜であることが確認された。

0179

(鉄原子の濃度分布の評価)
次に、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)を用いて、実施例1にて得られた窒化ガリウム結晶の鉄原子の濃度分布を測定した。具体的には、SIMSを用いて、実施例1にて得られた窒化ガリウム結晶の厚さ方向の各原子の濃度分布を測定した。なお、鉄原子(Fe)については、窒化ガリウム結晶の面内方向で異なる3カ所でそれぞれ測定した。

0180

実施例1にて得られた窒化ガリウム結晶のSIMS測定結果を図12に示す。なお、図12横軸は、窒化ガリウム結晶の表面からの深さを示す。図12に示すように、実施例1にて得られた窒化ガリウム結晶では、鉄原子の濃度分布は、1.0×1016Atoms/cm3以上1.0×1022Atoms/cm3以下の範囲に収まっていることがわかる。

0181

また、実施例1にて得られた窒化ガリウム結晶では、鉄原子の濃度分布は、サファイア基板との界面領域、及び窒化ガリウム結晶の表面領域の濃度の方が、界面領域及び表面領域の間の中間領域の濃度よりも高いバスタブ形状を有していることがわかる。具体的には、サファイア基板との界面領域の鉄原子の濃度の最高値は、中間領域での鉄原子の濃度の最低値の10倍以上となっており、窒化ガリウム結晶の表面領域での鉄原子の濃度の最高値は、中間領域での鉄原子の濃度の最低値の10倍以上となっていることがわかる。

0182

さらに、実施例1にて得られた窒化ガリウム結晶では、窒化ガリウム結晶の厚さ方向において、中間領域の鉄原子の濃度が略同じとなっていることがわかる。具体的には、窒化ガリウム結晶の厚さ方向において、任意の2点の中間領域の鉄原子の濃度差は、任意の2点のいずれか一方の鉄原子の濃度の50%以下となっていることがわかる。したがって、実施例1によれば、中間領域に均一に鉄原子がドープされた窒化ガリウム結晶が製造されていることがわかる。

0183

また、実施例1にて得られた窒化ガリウム結晶では、窒化ガリウム結晶の面内方向に異なる3カ所で測定された鉄原子の濃度分布は、略同一となっている。具体的には、窒化ガリウム結晶の面内方向において、任意の2点の中間領域の鉄原子の濃度差は、任意の2点のいずれか一方の鉄原子の濃度の50%以下となっていることがわかる。したがって、実施例1によれば、面内方向に鉄原子の濃度が極めて均一な窒化ガリウム結晶が製造されていることがわかる。

0184

一方、気相成長によってサファイア基板上に形成した窒化ガリウム結晶(オステンド社製の市販品)のSIMS測定結果を図13に示す。なお、図13の横軸は、窒化ガリウム結晶の表面からの深さを示す。

0185

図13に示すように、気相成長によって形成した窒化ガリウム結晶では、鉄原子の濃度の測定値は、検出限界の5×1014Atoms/cm3近傍を示しており、実質的に鉄原子がドープされていないことがわかる。したがって、気相成長によって形成した窒化ガリウム結晶に鉄原子をドープする場合は、上述したように熱拡散法又はイオン打ち込み法を用いることになるため、鉄原子をドープした後の窒化ガリウム結晶に結晶欠陥を生じさせてしまうことがわかる。

0186

以上にて説明したように、本実施形態によれば、液相法を用いてサファイア基板の上に形成した窒化ガリウムについて、より結晶性に優れ、十分な厚みを有し、結晶性の面内分布も良好な単結晶膜を得ることが可能である。

実施例

0187

以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。

0188

1半導体基板
10半導体層
11 中間層
20サファイア基板
100反応装置
110原料融液
111反応容器
112架台
113電気炉
114ヒーター
120保持具
122引き上げ軸
123シール材
124、125 梁部
126、127支柱部
128棚板
131ガス導入口
132ガス排出口
140 基板

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