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技術 リン酸肥料原料の製造方法

出願人 日本製鉄株式会社
発明者 坂元基紘田村鉄平
出願日 2018年3月5日 (2年9ヶ月経過) 出願番号 2018-038752
公開日 2019年9月12日 (1年3ヶ月経過) 公開番号 2019-151528
状態 未査定
技術分野 銑鉄の精製;鋳鉄の製造;転炉法以外の製鋼 肥料
主要キーワード ton添加 重量濃度比 有価元素 溶成リン肥 酸化鉄量 燐鉱石 植物生育用 追加装入
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (10)

課題

高P溶銑脱リンしてリン酸肥料原料を製造する際に、製造条件の制御をより緩和した肥料効果が高いリン酸肥料原料の製造方法を提供する。

解決手段

転炉もしくは取鍋において、C濃度が3.0〜5.0質量%、Si濃度が0.01〜0.40質量%、Mn濃度が0.01〜1.40質量%、P濃度が0.8〜4.0質量%の溶銑に対して、脱燐剤として、酸化マグネシウム炭酸マグネシウム、又は水酸化マグネシウムもしくはこれらの組合せの合計が、脱リン剤の全質量中で90質量%以上含まれているものを、MgO換算で合計5〜25kg/溶銑ton添加し、溶銑温度が1300〜1450℃の温度範囲で、酸素ガスもしく酸化鉄の形態で酸素を7kg/溶銑ton以上(MgO添加量kg/溶銑ton+11)kg/溶銑ton以下吹くもしくは添加する。

概要

背景

我が国は降水量が多いので、土壌からミネラル分が流出して、土壌が酸性化し易い。そのため、植物を生育させる際に使用するリン酸肥料には土壌中のリン酸濃度だけでなく、土壌pHも同時に増加させる塩基性リン酸肥料が広く使用されている。現在、塩基性リン酸肥料として、アルカリ分を多く含む溶成リン肥が利用されている。

現在、高炉から出銑された溶銑不純物として約0.1質量%のリンを含んでいるが、リンは、製鋼工程でフラックスを添加し酸素を吹き込むことで酸化除去されて、製鋼スラグとして排出されている。

特許文献1に示すように、製鋼スラグのリン酸濃度は1〜4質量%程度であり、リン酸肥料として十分な濃度ではないものの、製鋼スラグ中には、フラックス由来のCaO分や溶銑から酸化除去されたSiO2分が多量に含まれているので、ケイ酸リン酸肥料として利用されている。

しかし、現在でもリン酸肥料の原料であるリン鉱石の全量を輸入に依存している我が国では、製鋼スラグ中のリン酸分は有用なリン酸肥料資源として考えられており、特許文献2〜4に示すように、製鋼スラグ中のリン酸分を濃縮して高リン酸スラグを製造し、製鋼スラグからリン酸肥料を製造することが試みられている。

ところで、上記リン酸肥料を肥料として使用する際において肥料効果を高めるには、リン酸濃度だけではなく、リンの結晶状態鉱物相を制御する必要がある。例えば、上記溶成リン肥は、燐鉱石酸化マグネシウム融解し混合して、ジェット水流急冷して製造した肥料であり、リン含有鉱物相を、非晶質、即ち、ガラスにすることにより、肥料効果を高めている。なお、リン含有鉱物相とは、肥料中各鉱物相の中でリンが濃化した相を指すこととする。

特許文献5〜7には、リン含有鉱物相であるCa3(PO4)2−Ca2SiO4固溶体相、5CaO・SiO2・P2O5相、又は、7CaO・2SiO2・P2O5相(以下、「固溶体相」)、Ca3(PO4)2相(以下、「C3P相」)及びガラス相の中で、リン酸肥料としての肥料効果が最も高い相が固溶体相であるとし、その固溶体相が晶出するスラグの組成条件やその製造方法が開示されている。

概要

高P溶銑を脱リンしてリン酸肥料原料を製造する際に、製造条件の制御をより緩和した肥料効果が高いリン酸肥料原料の製造方法を提供する。転炉もしくは取鍋において、C濃度が3.0〜5.0質量%、Si濃度が0.01〜0.40質量%、Mn濃度が0.01〜1.40質量%、P濃度が0.8〜4.0質量%の溶銑に対して、脱燐剤として、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、又は水酸化マグネシウムもしくはこれらの組合せの合計が、脱リン剤の全質量中で90質量%以上含まれているものを、MgO換算で合計5〜25kg/溶銑ton添加し、溶銑温度が1300〜1450℃の温度範囲で、酸素ガスもしく酸化鉄の形態で酸素を7kg/溶銑ton以上(MgO添加量kg/溶銑ton+11)kg/溶銑ton以下吹くもしくは添加する。

目的

本発明は、上記の状況に鑑み、高P溶銑を脱リンしてリン酸肥料原料を製造する際に、製造条件の制御をより緩和した肥料効果が高いリン酸肥料原料の製造方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

転炉もしくは取鍋において、C濃度が3.0〜5.0質量%、Si濃度が0.01〜0.40質量%、Mn濃度が0.01〜1.40質量%、P濃度が0.8〜4.0質量%の溶銑に対して、脱燐剤として、酸化マグネシウム炭酸マグネシウム、又は水酸化マグネシウムもしくはこれらの組合せの合計が、脱リン剤の全質量中で90質量%以上含まれているものを、MgO換算で合計5〜25kg/溶銑ton添加し、溶銑温度が1300〜1450℃の温度範囲で、酸素ガスもしく酸化鉄の形態で酸素を7kg/溶銑ton以上(MgO添加量kg/溶銑ton+11)kg/溶銑ton以下吹くもしくは添加することにより脱リンし、その後冷却することにより、CaO、MgO、SiO2、P2O5、酸化鉄(Fe換算)、Al2O3及びMnOを合計で70質量%以上含有し、MgOが10質量%以上、P2O5が10質量%以上で、酸化鉄量がt.Feで40質量%以下、CaO/MgO質量比率が0.3以下で、かつMgO/P2O5質量比率が0.6以上であり、リン含有鉱物相としてMg3(PO4)2が晶出しているリン酸肥料原料を得ることを特徴とするリン酸肥料原料の製造方法。

請求項2

前記溶銑は、製鋼スラグを原料として電気炉炭材を添加し還元することにより製造された溶銑であることを特徴とする請求項1に記載のリン酸肥料原料の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、肥料効果の高いリン酸肥料原料の製造方法に関する。

背景技術

0002

我が国は降水量が多いので、土壌からミネラル分が流出して、土壌が酸性化し易い。そのため、植物を生育させる際に使用するリン酸肥料には土壌中のリン酸濃度だけでなく、土壌pHも同時に増加させる塩基性リン酸肥料が広く使用されている。現在、塩基性リン酸肥料として、アルカリ分を多く含む溶成リン肥が利用されている。

0003

現在、高炉から出銑された溶銑不純物として約0.1質量%のリンを含んでいるが、リンは、製鋼工程でフラックスを添加し酸素を吹き込むことで酸化除去されて、製鋼スラグとして排出されている。

0004

特許文献1に示すように、製鋼スラグのリン酸濃度は1〜4質量%程度であり、リン酸肥料として十分な濃度ではないものの、製鋼スラグ中には、フラックス由来のCaO分や溶銑から酸化除去されたSiO2分が多量に含まれているので、ケイ酸リン酸肥料として利用されている。

0005

しかし、現在でもリン酸肥料の原料であるリン鉱石の全量を輸入に依存している我が国では、製鋼スラグ中のリン酸分は有用なリン酸肥料資源として考えられており、特許文献2〜4に示すように、製鋼スラグ中のリン酸分を濃縮して高リン酸スラグを製造し、製鋼スラグからリン酸肥料を製造することが試みられている。

0006

ところで、上記リン酸肥料を肥料として使用する際において肥料効果を高めるには、リン酸濃度だけではなく、リンの結晶状態鉱物相を制御する必要がある。例えば、上記溶成リン肥は、燐鉱石酸化マグネシウム融解し混合して、ジェット水流急冷して製造した肥料であり、リン含有鉱物相を、非晶質、即ち、ガラスにすることにより、肥料効果を高めている。なお、リン含有鉱物相とは、肥料中各鉱物相の中でリンが濃化した相を指すこととする。

0007

特許文献5〜7には、リン含有鉱物相であるCa3(PO4)2−Ca2SiO4固溶体相、5CaO・SiO2・P2O5相、又は、7CaO・2SiO2・P2O5相(以下、「固溶体相」)、Ca3(PO4)2相(以下、「C3P相」)及びガラス相の中で、リン酸肥料としての肥料効果が最も高い相が固溶体相であるとし、その固溶体相が晶出するスラグの組成条件やその製造方法が開示されている。

先行技術

0008

特許第5105322号公報
特開平11−158526号公報
特開2009−132544号公報
特許第5594183号公報
特開2015−189591号公報
特開2016−74940号公報
特開2016−88757号公報

発明が解決しようとする課題

0009

特許文献5〜7に記載の方法では、製鋼スラグを原料としてリン酸肥料を製造する場合、一度製鋼スラグを電気炉ロータリーキルン還元することによりリン濃度が高い溶銑を製造し(以後、高P溶銑と呼ぶ)、その高P溶銑を等で脱リンすることにより、製鋼スラグよりリン酸濃度が高い脱リンスラグを製造している。また、さらに脱リン条件を制御することにより脱リンスラグの組成を特定の範囲に調整し、そして溶融状態の脱リンスラグを固化させる時の冷却速度を制御することにより、スラグ中で固溶体相を意図的に晶出させ、肥料効果の高いリン酸肥料を製造している。

0010

例えば、特許文献6及び7に記載の方法では、スラグ組成をCaOとSiO2との重量濃度比で表示する塩基度αが1.5以上3.0以下であり、P2O5が8質量%以上(−4α2+23α−4)質量%以下、酸化鉄をFe換算で5質量%以上25質量%以下の範囲に制御し、溶融状態から固化せる時の冷却速度を10℃/分以上にする事により固溶体相を晶出させ、肥料効果の高い肥料を製造している。

0011

しかし一方で、高P溶銑を脱リンした時に、塩基度αが1.5より小さかったり、塩基度αが3.0より大きかったり、塩基度αが1.5以上3.0以下であってもP2O5濃度が(−4α2+23α−4)超であったり、もしくは冷却速度が10℃/分未満であったりすると、肥料効果が急激に落ちるという問題がある。これは、スラグ中のP2O5濃度が(−4α2+23α−4)を超える、もしくは冷却速度が10℃/分未満になると、脱リンスラグ中のリン含有鉱物相が固溶体ではなく、肥料効果が低いリン含有鉱物相であるβ−Ca3(PO4)2が晶出し、その結果、肥料効果が急激に落ちる。そのため、肥料効果の高いスラグの品質を維持し、溶銑中のP濃度によらず再現性良くリン酸肥料を製造するためには高P溶銑の脱リン時に、スラグ組成や冷却速度を適切に制御しなければならず、条件の制御が厳しいという課題がある。

0012

そこで本発明は、上記の状況に鑑み、高P溶銑を脱リンしてリン酸肥料原料を製造する際に、製造条件の制御をより緩和した肥料効果が高いリン酸肥料原料の製造方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0013

本発明者は、上記目的を達成するため、高P溶銑に対して、脱リン試験を行って検討した結果、まず、
(1)高P溶銑の脱リンではMgOを主成分とした脱リン剤を利用することにより脱リンスラグ中でMg3(PO4)2を晶出させることが可能であること、
(2)脱リンスラグ中のリン含有鉱物相は、脱リン剤および酸素源の条件を制御すれば冷却速度に依存しないこと、を見出した。

0014

また、本発明者らは、脱リン試験により、さらに脱リン処理の条件を詳細に調べたところ、
(3)溶銑中のP濃度が0.8質量%以上になると、一般的には脱リン効果がないと言われている酸化マグネシウムでも十分に脱リン剤となり、酸素量を適正に制御すればスラグ中のリン酸濃度が10質量%以上になること、
(4)溶銑中のP濃度が高い場合にはスラグ中のリン酸濃度が高くなり、液相線温度固相線温度の高いMgO−Fe2O3系のフラックスでも、融点の低いP2O5自身が滓化促進効果をもち、脱リンを促進させること、を見いだした。

0015

上記の知見をもとにした本発明は以下の通りである。
(1)転炉もしくは取鍋において、C濃度が3.0〜5.0質量%、Si濃度が0.01〜0.40質量%、Mn濃度が0.01〜1.40質量%、P濃度が0.8〜4.0質量%の溶銑に対して、脱リン剤として、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、又は水酸化マグネシウムもしくはこれらの組合せの合計が、脱リン剤の全質量中で90質量%以上含まれているものを、MgO換算で合計5〜25kg/溶銑ton添加し、溶銑温度が1300〜1450℃の温度範囲で、酸素ガスもしく酸化鉄の形態で酸素を7kg/溶銑ton以上(MgO原単位kg/溶銑ton+11)kg/溶銑ton以下吹くもしくは添加することにより脱リンし、その後冷却することにより、CaO、MgO、SiO2、P2O5、酸化鉄(Fe換算)、Al2O3及びMnOを合計で70質量%以上含有し、MgOが10質量%以上、P2O5が10質量%以上で、酸化鉄量がt.Feで40質量%以下、CaO/MgO質量比率が0.3以下で、かつMgO/P2O5質量比率が0.6以上であり、リン含有鉱物相としてMg3(PO4)2が晶出しているリン酸肥料原料を得ることを特徴とするリン酸肥料原料の製造方法。
(2)前記溶銑は、製鋼スラグを原料として電気炉で炭材を添加し還元することにより製造された溶銑であることを特徴とする上記(1)に記載のリン酸肥料原料の製造方法。

発明の効果

0016

本発明によれば、高P溶銑の脱リンにより、肥料効果の高いリン酸肥料原料を製造することが可能である。

図面の簡単な説明

0017

製鋼工程においてリン酸肥料原料を製造する工程の一例を示す図である。
溶銑中P濃度とスラグ中のリン酸濃度との関係を示す図である。
MgO添加量酸素供給量との関係を示す図である。
酸素供給量とスラグ中のリン酸濃度及びt.Fe濃度との関係を示す図である。
MgO添加量とスラグ中のリン酸濃度及びt.Fe濃度との関係を示す図である。
溶銑中P濃度が0.8質量%の場合のMgO添加量とスラグ中のリン酸濃度との関係を示す図である。
高P溶銑を脱リン後の、スラグ中のMgO,P2O5濃度の関係を示す図である。
スラグ中CaO/MgO比とMg3(PO4)2、Ca3(PO4)2量との関係を示す図である。
スラグ中MgO/P2O5比とMg3(PO4)2量との関係を示す図である。

0018

本発明の製造方法は、転炉もしくは取鍋において、C濃度が3.0〜5.0質量%、Si濃度が0.01〜0.40質量%、Mn濃度が0.01〜1.40質量%、P濃度が0.8〜4.0質量%の溶銑に対して、脱リン剤として酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、又は水酸化マグネシウムもしくはこれらの組合せの合計が、脱リン剤の全質量中で90質量%以上含まれているものをMgO換算で合計5〜25kg/溶銑ton添加し、溶銑温度が1300〜1450℃の温度範囲で、酸素ガスもしく酸化鉄の形態で酸素を7kg/溶銑ton以上(MgO添加量kg/溶銑ton+11)kg/溶銑ton以下吹くもしくは添加することにより脱リンし、その後冷却することにより、CaO、MgO、SiO2、P2O5、酸化鉄(Fe換算)、Al2O3及びMnOを合計で70質量%以上含有し、MgOが10質量%以上、P2O5が10質量%以上で、酸化鉄量がt.Feで40質量%以下、CaOとMgOとの濃度の比率(CaO/MgO質量比率)が0.3以下で、かつMgOとP2O5との濃度の比率(MgO/P2O5質量比率)が0.6以上であり、リン含有鉱物相としてMg3(PO4)2が晶出しているリン酸肥料原料を製造することを特徴としている。

0019

ただし、酸化鉄の濃度は、試料中に酸化鉄として含まれるFeの濃度全量で表示することとし、以後、"t.Fe"と表示する。

0020

まず、植物生育用のリン酸肥料の原料(リン酸肥料原料)として使用可能なリン酸含有スラグの製造方法について、本発明に係る製造工程の前工程まで含めて全体概要を説明する。図1に、製鋼工程において、リン酸含有スラグを製造する工程の一例を示す。

0021

図1に示すように、製鋼工程においては、高炉で製造した溶銑であって、通常はリンを0.08〜0.15質量%含有する溶銑を転炉に移送し、溶銑の上にスラグを形成し、酸素源を吹き込んで、溶銑とスラグの反応で、溶銑の脱リン処理S01を行う。

0022

脱リン処理S01によって生成した転炉脱リンスラグ41を転炉から排出し、その後、転炉内の溶銑の上に、再度、スラグを形成し、酸素源を吹き込んで、脱炭処理S02を行う。脱炭処理S02で得られた溶鋼に2次精錬S03を施した後、連続鋳造S04で鋼片を製造する。

0023

脱リン処理S01の後、転炉から排出される転炉脱リンスラグ41には、溶銑中のリンが酸化したリン酸とともに、多量の鉄分を含んでいる。そこで、転炉脱リンスラグ41から鉄やリン等の有価元素回収するために、転炉脱リンスラグ41に還元・改質処理S11を施す。

0024

還元・改質処理S11においては、電気炉を用いて転炉脱リンスラグ41を溶融し、還元剤及び改質剤として、微粉炭、Al2O3源、SiO2源を添加して、リンを0.8〜4.0質量%と多く含有する高P溶銑42を製造する。

0025

そして、高P溶銑42に、必要に応じて脱Cr処理S12を施した後、還元改質処理S11で生成したスラグ、および脱Cr処理S12を施した場合にはその処理後のスラグを、可能な限り除滓する。その後に、MgO源である、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト煉瓦屑を原料として成分を調整したフラックスを添加し、酸素を吹き込む脱リン処理S13を施して、植物生育用のリン酸肥料の原料(リン酸肥料原料)として使用可能なリン酸含有スラグ50を製造する。このとき、リン酸含有スラグ50にMg3(PO4)2が晶出するように、添加するフラックスの組成および酸素供給量を制御する。この脱リン処理S13は、溶銑鍋または電気炉で行うことができる。

0026

なお、脱リン処理S13によって、リン含有濃度で0.1〜0.3質量%まで脱リンされた溶銑51は、高炉で生成された溶銑とともに転炉へ供給される。

0027

本発明においては、脱リン処理S13において、前述した組成の高P溶銑に対して、脱燐剤を所定量添加し、溶銑温度が1300〜1450℃の温度範囲で、酸素を所定の条件で供給することにより、前述した組成のリン酸含有スラグ50が製造される。

0028

さらに、リン酸含有スラグ50は冷却処理S14により冷却され、必要に応じて粉砕処理S15において、冷却されたリン酸含有スラグ50を粉砕し、リン酸肥料として効果を向上させたリン酸肥料原料60を製造する。なお、冷却条件は特に限定されるものではないため、急冷でも徐冷でもなんでもよい。

0029

以下では、脱P処理S13において、(1)原料である高P溶銑の成分を限定する理由、(2)脱リン剤として酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムを使用する理由、(3)酸素供給量を限定する理由、(4)MgO換算の添加量を限定する理由、(5)溶銑温度を限定する理由について説明する。また、リン酸含有スラグのリン含有鉱物相からMg3(PO4)2の晶出を促進するために、リン酸含有スラグにおいて、(6)成分組成の合計を限定する理由、(7)MgO、P2O5およびt.Fe濃度を限定する理由、(8)CaOとMgOとの濃度比を限定する理由、(9)MgOとP2O5との濃度比を限定する理由を説明する。

0030

[(1)高P溶銑の成分]
リン酸含有スラグの組成は、高P溶銑の組成に大きく影響を受けるため、MgOで脱リンを実施し、そのリン酸含有スラグの組成効果を高めるためには、高P溶銑の組成を制限する必要がある。

0031

リン酸含有スラグは、その脱リン処理を行った高P溶銑の組成に影響される。本発明では、「C濃度が3.0〜5.0質量%、Si濃度が0.01〜0.40質量%、Mn濃度が0.01〜1.40質量%、P濃度が0.8〜4.0質量%」の溶銑について検討し、その中でも本発明に適した成分範囲を本発明の対象とする。本発明は高P溶銑を脱リン処理してリン酸含有スラグを製造するため、対象とする溶銑成分入手が可能なものである必要があるからである。
また、発明により製造するスラグは、CaO、MgO、SiO2、P2O5、酸化鉄(Fe換算)、Al2O3及びMnOを合計で70質量%以上含有し、MgOが10質量%以上、P2O5が10質量%以上で、酸化鉄量がt.Feで40質量%以下、CaO/MgO質量比率が0.3以下で、かつMgO/P2O5質量比率が0.6以上のものである。このスラグが、リン酸肥料原料として優れていることは後述する。

0032

この検討は、先ず、上記した溶銑を対象として、高周波誘導炉を用いて実験することにより行った。
先ず溶銑15kgを高周波誘導炉に収容し、溶銑中のC濃度及び一般的な耐火物溶損抑制の観点から、脱リン処理時の一般的な処理温度である1300〜1450℃の範囲に溶銑温度を調整した後に、酸素と脱リン剤とを上方から添加した。脱リン剤の滓化を考えて、酸素供給量は脱リン剤の投入量に応じて変化させた。なお、底吹ガスはなしとした。

0033

高P溶銑中のC濃度は、3.0〜5.0質量%の範囲である。C濃度が低いと液相線温度が高くなる。また、脱P反応と同時に脱C反応も進行するため、脱リン処理時の処理温度である1300〜1450℃の範囲で常に溶銑が液相となるためには、3.0質量%以上の濃度が必要である。一方で、C濃度の上限は、飽和に近い5.0質量%程度で十分である。

0034

高P溶銑中のSi濃度は、0.40質量%以下とする。溶銑中のSiは脱P処理時に全て酸化されてSiO2となり、スラグ中に混入する。スラグ中のSiO2量が高いと脱P効果が落ちるため、Si濃度は0.40質量%以下に限定する必要がある。また、溶銑中には不可避的にSiが含まれることから実質的にSi濃度は0.01質量%以上とする。

0035

高P溶銑中のMnは、対象とするP濃度が0.8〜4.0質量%の溶銑を製造する際に付随して0.01質量%以上含有されるものである。溶銑中のMnも脱P処理時に酸化されるものであるが、脱リン反応に関しては添加酸素が溶銑中のFeと反応してスラグ中に生成する酸化鉄と同様な影響を及ぼすものである。溶銑のMn濃度が高いとスラグ中にMnOが多く含有されることになるが、FeO濃度が高いスラグと同様に、スラグ量が増えてしまう結果P2O5濃度が低下してしまうことと、リン酸肥料としての重量が増えてしまうという問題に繋がる。そこで、対象とするP濃度が0.8〜4.0質量%の溶銑を脱燐処理して、本発明に係る組成のスラグを製造する際に、許容できるMnの最高濃度を1.40質量%とする。このMn濃度の上限は、P濃度が0.8〜4.0質量%の溶銑を製造する際の原料を調整することにより、コントロールすることができる。

0036

高P溶銑中のP濃度は、0.8〜4.0質量%とする。P濃度をこの範囲に限定する理由について、以下の実験により確認した。
まず、脱リン剤としては、酸化マグネシウムを用い、溶銑中のC濃度が3.0〜5.0質量%、Si濃度が0.01〜0.4質量%、Mn濃度が0.01〜1.40質量%であって、P濃度が、それぞれ0.2、0.8、1.0、3.0質量%の溶銑に対して、MgOを15kg/溶銑ton一括で添加し、酸素は20kg/溶銑ton添加した。その時、脱リン実験をした時のスラグ中リン酸濃度と溶銑中P濃度との関係を図2に示す。

0037

図2に示すように、処理前の溶銑中のP濃度が0.2質量%の時では、全く脱P反応が進行しなかった。一方で、処理前の溶銑中P濃度が0.8質量%以上になると脱リン反応は容易に進行し、スラグ中P2O5濃度も10質量%以上となった。一般的なP濃度が0.1質量%程度の高炉溶銑では、MgOは脱リンにあまり影響しないと考えられているが、今回の実験で高P溶銑に対しては脱リン効果があることが確認された。

0038

その理由は二つあると考えられる。一つ目は、単純に溶銑中のP濃度が高炉溶銑に比べ高くなったことにより、Pが反応しやすくなり、CaOに比べて弱塩基性であるMgOでも脱リンが進行したためである。二つ目は、P2O5単体の融点が低いため、スラグ中のリン酸濃度が高くなると液相線温度が高くて滓化しにくいMgO−FeOx系フラックスでも、滓化が進行したためである。

0039

また、図2に示した例では、MgOを15kg/溶銑ton一括で添加したが、後で図6に示す実験によりMgOを25kg/溶銑ton添加した場合は、P濃度は0.8質量%が下限であることが確認された。以上の結果から、溶銑中のP濃度は0.8質量%以上とする。リン酸濃度が高いスラグを多量に得るためには、処理前の溶銑中P濃度が高い方が好ましく、1質量%以上であることが好ましい。また、溶銑中のP濃度の上限は、入手可能な範囲として4.0質量%とする。

0040

[(2)脱リン剤として酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムを使用する理由]
図2や後で示す図6により、溶銑中のP濃度が0.8質量%以上あれば、MgOを添加して脱リンしたときに生成するスラグ中のP2O5濃度が10質量%になることが分かった。但し、後で図8及び図9を用いて説明するように、リン酸肥料原料としてのリン酸含有スラグにおいて有用なMg3(PO4)2を多く含ませるためには、脱リン剤として添加するフラックスになるべく純度の高いMgOを用いる必要がある。
そこで、使用する脱リン剤は、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、又は炭酸マグネシウムもしくはこれらの組合せとする。そして、脱リン剤全体中において、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、又は炭酸マグネシウムもしくはこれらの組合せの合計は、90質量%以上にする必要がある。高P溶銑の脱リンによりリン含有鉱物相としてMg3(PO4)2を生成させるには、フラックスとしてMgOが必要であり、水酸化マグネシウムや炭酸マグネシウムは1200〜1400℃の高温で熱せられるとMgOとなるため、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムのフラックスは高温で全てMgOとなり、脱リン剤として有効に働くからである。

0041

[(3)酸素供給量を限定する理由]
酸素供給量は、MgO添加量に応じて適正に制御する必要がある。高P溶銑中のP濃度が高いため、発生するスラグ量は脱リン剤と酸素の添加量とで大凡決まる。但し、この時、MgOの添加量に関わらず酸素量が少なすぎると、主として溶銑中のSiが酸化された段階で反応が止まってしまい、十分な脱リン反応が進行しない。一方でMgO添加量に対して酸素量が多すぎると、脱リン反応が飽和し、過剰な酸素がFeOやMnOの生成、並びに脱炭に使用されてしまう。そのため適正な酸素供給量が存在する。

0042

ここで、MgOの原単位と酸素原単位との関係に応じて生成されるリン酸含有スラグの組成を調査した結果を、図3に示す。この調査では、C濃度が3.0〜5.0質量%、Si濃度が0.01〜0.40質量%、Mn濃度が0.01〜1.40質量%、P濃度が0.8〜4.0質量%の溶銑15kgを高周波誘導炉に収容し、脱リン剤として酸化マグネシウムを5〜25kg/溶銑ton添加し、溶銑温度が1300〜1450℃の温度範囲で、酸素源として酸化鉄を5〜40kg/溶銑ton添加した。図3において、P2O5濃度が10質量%以上かつt.Fe濃度が40質量%以下を「○」、P2O5濃度が10質量%未満の場合を「×」、P2O5濃度が10質量%以上でかつ、t.Fe濃度が40質量%超のものを「▲」で表記した。

0043

先ず、溶銑中のP濃度は、調査した範囲では有意な影響を及ぼさなかった。Si濃度が0.01〜0.40質量%、Mn濃度が0.01〜1.40質量%の条件でP濃度が0.8質量%以上あれば、MgO量と酸素量とに依存して生成されるスラグ組成に影響は現れないと言える。

0044

次に、酸素供給量が5kg/溶銑tonの場合は、MgOの添加量に関係なくP2O5濃度は10質量%未満であった。このように酸素供給量が少ないと、酸素は主として溶銑中Siとの反応に費やされてしまうほか、CやFe、Mnとも反応するので、スラグ中P2O5濃度が10質量%以上にまでは至らないのである。

0045

この状況は、例えばMgO添加量を15kg/溶銑tonとした場合の、酸素供給量に応じたP2O5濃度とt.Fe濃度との変化を示す、図4から理解される。MgO添加量が15kg/溶銑tonであれば、酸素により生成されるP2O5との反応には十分な量と言えるが、酸素供給量が5kg/溶銑tonではP2O5濃度は4質量%程度しか生成されなかった。この酸素供給量が10kg/溶銑tonになると、P2O5濃度は25質量%程度となっていたので、P2O5濃度が10質量%以上となるためには、おおよそ酸素供給量は7kg/溶銑ton以上は必要であったといえる。

0046

図4において、酸素供給量が15kg/溶銑tonまではP2O5濃度が上昇したものの、それを超えると却って低下し、代わりにt.Feの濃度が上昇した。t.Feはリン酸肥料原料においては必須成分では無い一方、その重さを増してしまい、さらには相対的にP2O5濃度を低下させてしまうので、40質量%以下とする。スラグ中MnO濃度は、t.Fe濃度が高い場合に高くなっているので、MnO濃度の管理もt.Fe濃度の管理で代表することができる。

0047

また、酸素供給量を20kg/溶銑tonにした場合のMgOの添加量が生成スラグ中のP2O5濃度及びt.Fe濃度に及ぼす影響を、図5に示す。図5において、MgOの添加量は5kg/溶銑tonでP2O5濃度が9質量%であったが、このときt.Feが50質量%を超えており、t.Feによって希釈されてしまったものである。したがって、図3に示したように、MgO添加量は5kg/溶銑ton以上とすることがP2O5:10%以上を得るために適当と分かるが、酸素供給量を適切に制約しないと、t.Fe濃度が高くなり過ぎてしまい、P2O5濃度が10質量%以上という目標を達成できない場合が生じるといえる。ここでMgOの添加量を増やしていくとP2O5濃度が上昇するが、MgOの添加量が20kg/溶銑ton程度以上ではP2O5濃度の上昇が止まる。これはMgOの添加量が増加したことに伴ってスラグ生成量が増加したために、溶銑中Pと酸化鉄との反応や、その反応で生成されるP2O5とMgOとの反応が進みにくくなったことが影響したと考えられる。したがって、MgOの添加量と酸素供給量との関係には、適切な範囲があることが理解される。

0048

以上の実験の結果、経験式から、図3に示すように、供給する酸素量は、7kg/溶銑ton以上(MgO添加量kg/溶銑ton+11)kg/溶銑ton以下とする。この範囲であれば、P2O5濃度が10質量%以上かつt.Fe濃度が40質量%以下のリン酸含有スラグを製造することができる。

0049

[(4)MgO換算の添加量を限定する理由]
脱リン剤であるMgOの添加量は5〜25kg/溶銑tonにする必要がある。ここで、脱リン剤は、前述したように酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、又は炭酸マグネシウムもしくはこれらの組合せの合計が、脱リン剤の全質量中で90質量%以上含まれているものであり、これらに含まれているMgO質量の合計添加量(MgO換算の添加量)をMgOの添加量とする。また、上述したように発生するスラグ量は、MgOの添加量と酸素量とによって決まる。そのため、MgOの添加量が少なすぎると、生成するリン酸含有スラグが少なくなるため、経済合理性がなりたたない。

0050

一方で、MgOの添加量が多すぎると、発生するスラグ量が多くなりすぎて、炉内から溢れるため、上限値がある。また、図2に示したように、処理前の溶銑中のP濃度が低い場合には、溶銑中のP濃度が高い場合に比べてスラグ中のP2O5濃度が低くなる。そのため、溶銑中P濃度が低い時に、さらにスラグ量が多くなると、相対的にスラグ中のリン酸濃度は低くなる。そのために、添加するMgO量も適正に制御する必要がある。

0051

図6は、溶銑中P濃度が0.8質量%の溶銑を使用した時の、MgO添加量と脱リン後のリン酸濃度との関係を示す図である。なお、酸素供給量は、前述した7kg/溶銑ton以上(MgO添加量kg/溶銑ton+11)kg/溶銑ton以下の範囲とした。図6に示すように、MgOの添加量が30kg/溶銑tonである場合はスラグ中P2O5濃度が10質量%未満に低下したため、溶銑中のP濃度=0.8質量%まで対象とする場合は、MgO添加量は25kg/溶銑ton以下にする必要がある。

0052

[(5)処理温度を限定する理由]
リン酸含有スラグを製造する際には、1300〜1450℃で脱リン処理を行う必要がある。

0053

本発明ではC濃度が3.0〜5.0質量%、Si濃度が0.01〜0.40質量%、Mn濃度が0.01〜1.40質量%、P濃度が0.8〜4.0質量%の溶銑を脱リン処理するため、溶銑の一部が凝固してしまうことを避けるために、脱リン処理中の溶銑温度は1300℃以上が必要である。さらに、溶銑温度が1300℃未満であると、スラグが完全に溶融しない場合があり、その場合、リン酸肥料としての肥料効果が発現しない。一方、溶銑温度が1450℃を超えると、脱リン反応平衡から脱リンが進み難くなって、スラグ中のリン酸濃度が低下してしまう他、加熱コストが嵩むし、処理容器の耐火物の損耗激しくなる。以上の理由から、溶銑温度が1300〜1450℃の範囲で脱リン処理を行う。

0054

以上のように高P溶銑の脱リンスラグは、その脱リン処理を行った高P溶銑の組成に影響される。本発明では、「C濃度が3.0〜5.0質量%、Si濃度が0.01〜0.40質量%、Mn濃度が0.01〜1.40質量%、P濃度が0.8〜4.0質量%」の溶銑である。
このような溶銑を対象として、脱リン剤として酸化マグネシウム等を90質量%以上含むものをMgO換算で合計5〜25kg/溶銑ton添加し、溶銑温度が1300〜1450℃の温度範囲で、酸素ガスもしく酸化鉄の形態で酸素を7kg/溶銑ton以上MgO添加量kg/溶銑ton+11)kg/溶銑ton以下吹くもしくは添加することによって、CaO、MgO、SiO2、P2O5、酸化鉄(Fe換算)、Al2O3及びMnOを合計で70質量%以上含有し、MgOが10質量%以上、P2O5が10質量%以上で、酸化鉄量がt.Feで40質量%以下、CaO/MgO質量比率が0.3以下で、かつMgO/P2O5質量比率が0.6以上であるリン酸含有スラグが生成される。
以下に、このスラグがリン酸肥料原料として適していることを説明する。

0055

[(6)スラグの成分組成の合計を限定する理由]
CaO、MgO、SiO2、P2O5、酸化鉄(Fe換算)、Al2O3及びMnO各成分の合計は、処理対象とする溶銑を製造した際のスラグが当該溶銑を脱リン処理する際にも一部残留する可能性があるため、その影響を多少受けるものの、そのスラグの主成分もCaO、SiO2、Al2O3であるため、各成分の合計は70質量%以上となるのが普通である。但し、脱リン剤には酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、又は水酸化マグネシウムもしくはこれらの組合せの合計が、脱リン剤の全質量中で90質量%以上含まれているものを用い、余計な成分を持ち込まないように留意しなければならない。各成分の合計が70質量%未満であると、上記成分以外の成分とリン酸とが化合物を形成して、目的のリン含有鉱物相を晶出できなくなるので、上記各成分の合計は70質量%以上とする。好ましくは80質量%以上である。

0056

[(7)MgO、P2O5およびt.Fe濃度を限定する理由]
リン酸肥料原料においては、P2O5の濃度が高い方が良い。しかし、高P溶銑の脱リン処理という特性上、適切なP2O5濃度の範囲が存在する。そこで、本発明ではP2O5濃度の下限を10質量%と規定した。図7に、C濃度が3.0〜5.0質量%、Si濃度が0.01〜0.40質量%、Mn濃度が0.01〜1.40質量%、P濃度が0.8〜4.0質量%の高P溶銑を、脱リン剤として、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、又は水酸化マグネシウムもしくはこれらの組合せの合計が、脱リン剤の全質量中で90質量%以上含まれているものを用いて、1400℃にて脱リンした時のスラグ中のMgO濃度とP2O5濃度との関係を示す。スラグ中のMgOの濃度を上昇させると、P2O5の濃度が上昇しており、P2O5が10質量%以上ではMgOが10質量%以上となっていた。以上の結果から、上述の製造方法で得られるリン酸含有スラグは、P2O5濃度が10質量%以上、かつMgO濃度は10質量%以上となることが分かる。

0057

また、リン酸含有スラグのt.Fe濃度についても、前述したようにt.Feはリン酸肥料原料においては必須成分では無いが、その重さを増してしまい、さらには相対的にP2O5濃度を低下させてしまうので、40質量%以下とする。この要件は、図3に示したように、MgOの添加量に応じて酸素の供給量を制限することにより達成される。具体的には、酸素の供給原単位(kg/溶銑ton)をMgOの添加原単位(kg/溶銑ton)+11(kg/溶銑ton)とすればよい。

0058

[(8)CaOとMgOとの濃度比を限定する理由]
CaOとMgOとの質量濃度の比率(以下、CaO/MgO質量比率)は、0.3以下にする必要がある。これは、CaOとMgOとではCaOの方がスラグ中のリン酸と化合物を形成しやすいからである。CaO/MgO比率が0.3を超えるとP2O5濃度によってはリン含有鉱物相として、β−Ca3(PO4)2が晶出し、狙いのリン含有鉱物相であるMg3(PO4)2相の晶出を制御することができないからである。好ましくは、0.1以下である。この条件も、処理対象とする高P溶銑を製造した際のスラグを、当該高P溶銑を脱リン処理する前に十分に排除し、使用する脱リン剤を、その全体中において、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、又は炭酸マグネシウムもしくはこれらの組合せの合計が90質量%以上のものを用いることによって、リン酸含有スラグ中に混入されるCaO量を抑えることができるため、特に困難無く達成される。

0059

図8に、C濃度が3.0〜5.0質量%、Si濃度が0.01〜0.40質量%、Mn濃度が0.01〜1.40質量%、P濃度が0.8〜4.0質量%の高P溶銑を、MgOとCaOとを含むフラックスを用いて脱リンした時に得られたスラグの、CaO/MgO比率とCa3(PO4)2とMg3(PO4)2との存在比を示す。CaO/MgO比率が0.3以下である場合は、スラグ中のCa3(PO4)2が存在せず、本発明の効果を十分に享受することができる目安となる20質量%以上のMg3(PO4)2が存在していることが分かる。一方で、CaO/MgO比率が0.3を超えるとβ−Ca3(PO4)2が晶出することがわかる。このため、CaO/MgO比率を0.3以下とする。好ましくは、0.1以下である。

0060

[(9)MgOとP2O5との濃度比を限定する理由]
MgOとP2O5との質量濃度の比率(以下、MgO/P2O5質量比率)は、0.6以上である。C濃度が3.0〜5.0質量%、Si濃度が0.01〜0.40質量%、Mn濃度が0.01〜1.40質量%、P濃度が0.8〜4.0質量%である高P溶銑に対して、脱リン剤として、その全体中において、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、又は炭酸マグネシウムもしくはこれらの組合せの合計が90質量%以上のものを用い、その中の酸化マグネシウム等をMgO換算で合計5〜25kg/溶銑ton添加し、溶銑温度が1300〜1450℃の温度範囲で、酸素ガスもしく酸化鉄の形態で酸素を7kg/溶銑ton以上(MgO添加量kg/溶銑ton+11)kg/溶銑ton以下吹くもしくは添加する。これにより、図9に示すように、MgO/P2O5質量比率は、0.6程度が下限となる。MgO/P2O5比率という指標は、小さいほどMgOによる脱リン効率が高い(MgOによるP2O5固定の比率が高い)ことを意味する。CaO/MgO質量比率を0.3以下と制限した条件下では、P2O5はMgOと反応する比率が高くなると考えられるが、MgO/P2O5質量比率が0.6程度までが、本発明におけるMgOのP2O5との結びつきの限界と分かった。

0061

一方、溶銑中P濃度が低かったり、処理温度が高かったり、脱リンに不利な条件で脱リン処理した場合には、MgO/P2O5質量比率が大きくなる。スラグ中にMg3(PO4)2が20質量%程度以上という条件が、本発明の効果を十分に享受することができる目安となることから、MgO/P2O5質量比率は1.6以下であることが好ましい。

0062

以上のような製造方法によって、上述した組成のリン酸含有スラグが得られる。そして、このリン酸含有スラグを冷却することによってリン含有鉱物相としてMg3(PO4)2が晶出し、上述したリン酸含有スラグと同様の組成のリン酸肥料原料が得られる。

0063

次に、リン酸肥料の効果をより効率的に得るために、リン酸肥料原料は150μm以下に粉砕されたものとすることが好ましい。150μmを超える粒径のものが含まれていると、大きい粒径のものは比表面積が小さくなり、全体的にP2O5による可溶性が低下してしまう。リン酸含有スラグを粉砕後、150μmの標準篩い分けすることが好ましい。

0064

以上のように本発明のリン酸肥料原料の製造方法では、特許文献5〜7に記載の固溶体相に比べて、P2O5の範囲が緩和されており、さらには冷却条件に拘束されないため、製造条件の自由度を高めることができる。

0065

以上、リン酸含有スラグの製造方法及びリン酸含有スラグについて説明したが、本発明は、上記説明に限定されることはなく、発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。

0066

なお、図1に示すリン酸含有スラグを製造する工程においては、転炉脱リンスラグから得た高P溶銑を脱リン処理してリン酸含有スラグを製造すると説明したが、リン酸含有スラグの製造は、この説明に限定されることはない。

0067

例えば、高炉で生成した溶銑にFe−Pを追加装入して高P溶銑を製造しそれを脱リン処理することで製造してもよい。また、生石灰、SiO2、P2O5、酸化鉄などを出発原料として、上記組成範囲に入るように混合した後、溶融して、リン酸含有スラグを製造してもよい。

0068

本発明の実施例について説明する。実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。

0069

先ず、前工程として、製鋼工程において転炉から排出された製鋼スラグを溶融状態(固相率25%以下)で、スラグ供給容器に流入させて、一旦貯留し、次いで、スラグ供給容器を、10分に1回の頻度傾動して、1回約8トンの熱間製鋼スラグを電気炉に流入させた。そして、電気炉に電力を供給しながら、副原料供給管からコークス粉を電気炉内に供給した。また、スラグ改質剤としてフライアッシュ:378kg/t−slag、ボーキサイト粉:47kg/t−slagを、副原料供給管から溶融スラグ層に連続的に供給した。そして、電気炉内の温度を制御して還元処理を行った。

0070

以上のような還元処理により、以下の表1に示すような溶銑A〜Kをそれぞれ約30トン得た。なお、溶銑Hについては、本発明に係る脱リン処理への影響を調査する目的で、溶銑中P濃度が未だ低い段階で還元処理を終えたものを製造した。

0071

0072

次に、前工程で製造された溶銑A〜Kを溶銑鍋に収容し、前工程で生成したスラグを溶銑表面が現れて除滓できなくなるまで除滓した後、溶銑温度が1350℃〜1450℃の温度範囲で、海水マグネシア(MgO:95質量%、CaO:1.3質量%、SiO2:2.7質量%)をMgO換算で合計5〜30kg/溶銑ton添加し、酸素を酸化鉄もしくは気体酸素の形態で5〜27kg/溶銑ton添加し、その後冷却することによりリン酸肥料原料を製造した。その結果を表2に示す。

0073

0074

実施例1〜7では、CaO、MgO、SiO2、P2O5、酸化鉄(Fe換算)、Al2O3及びMnOを合計で70質量%以上含有し、MgOが10質量%以上、P2O5が10質量%以上で、酸化鉄量がt.Feで40質量%以下、CaO/MgO比率が0.3以下で、かつMgO/P2O5質量比率が0.6以上のスラグを製造することができた。さらに、冷却後にリン含有鉱物相を調査したところ、Mg3(PO4)2がスラグ中の存在比で20質量%以上晶出していたことを確認した。なお、これらの実施例1〜7について可溶性リン酸濃度も評価したところ、すべて高位であり、肥料効果の高いものであった。

0075

ここで、可溶性リン酸とは、クエン酸アンモニウム溶液に溶解するリン酸分を指し、肥料効果のひとつの指標である。今までの検討の結果、可溶性リン酸は植物の成長と非常に良い相関が得られることが分かっていることから、肥料効果を判断する指標として、可溶性リン酸濃度を用いた。

0076

一方、比較例1は、溶銑のP濃度が0.8質量%未満であったためP2O5濃度が10質量%未満であった。
比較例2では、MgO添加量を30kg/溶銑tonと過剰に添加したため、相対的にP2O5濃度が10質量%未満となってしまった。
比較例3では、酸素供給量が7kg/溶銑ton未満であったため、脱リンがあまり進行せず、P2O5濃度は10質量%未満となった。
比較例4では、酸素供給量が27kg/溶銑tonであり、(MgO添加量kg/溶銑ton+11)kg/溶銑tonである、26kg/溶銑tonよりも多かった。そのため、t.Fe濃度が40質量%超となった。

実施例

0077

また、比較例1〜4について、冷却後にリン含有鉱物相を調査したところ、比較例1〜3はP2O5濃度が低かった。また、比較例4は、可溶性リン酸濃度も実施例と同程度であったが、相対的にリン酸肥料として不要なt.Feが多く含まれていることから重量が大きく、リン酸肥料の製品としては使用できないものであった。

0078

本発明によれば、P濃度及びMgO濃度が高く、リン酸肥料として肥料効果の高いリン酸肥料原料を提供することができる。よって、本発明は、鉄鋼産業及び植物育成産業において利用可能性が高いものである。

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