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課題

イソチアゾリン系化合物のみでは効果が低い微生物バイオフィルムに対しても良好な抑制作用を有する、抗菌性に優れた廃インクが収容される廃インク収容部材を備えたインクジェット記録装置を提供する。

解決手段

第1色材及び第1抗菌剤のみを抗菌剤として含有する第1インクと、第1色材と異なる第2色材及び第2抗菌剤を含有する第2インクと、記録に用いられなかった第1インク及び第2インクを含む廃インクを収容する廃インク収容部材と、を備えたインクジェット記録装置である。第1抗菌剤が、イソチアゾリン系化合物であり、第2抗菌剤が、ジェミニ型級アンモニウム塩化合物グラミシジン系化合物、アルデヒド系化合物ニトリル系化合物、及びゼオライト担持された銀イオンからなる群より選ばれる少なくとも1種である。

概要

背景

インクジェット用の水性インクの主成分は水であるとともに、色材などのその他の成分は有機化合物であるため、菌類などの微生物が発生しやすい。菌類などの微生物が発生すると、インク劣化して粘度などの物性が変化したり、インクの構成成分の析出凝集により異物が発生したりして、吐出特性が低下する。このような課題に対し、インクに抗菌剤などの成分を配合し、微生物の発生を抑制することが行われている。

抗菌剤としては様々な成分が知られている。インクジェット用の水性インクには、抗菌スペクトルが広く、それ自体がインクの吐出性能を低下させにくいことから、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンをはじめとするイソチアゾリン系化合物などの抗菌剤が汎用されている(特許文献1参照)。しかし、イソチアゾリン系化合物は微生物の生育を抑制する防腐剤として作用する化合物であるため、殺菌作用が低い。また、イソチアゾリン系化合物は真菌には作用しにくいとともに、芽胞菌や微生物が産出するバイオフィルムには作用しないため、インクの劣化を十分に抑制することができない。微生物の発生などによって生ずるこれらの課題を解決すべく、例えば、複数の抗菌剤を含有するインクが提案されている(特許文献2参照)。

概要

イソチアゾリン系化合物のみでは効果が低い微生物やバイオフィルムに対しても良好な抑制作用を有する、抗菌性に優れた廃インクが収容される廃インク収容部材を備えたインクジェット記録装置を提供する。第1色材及び第1抗菌剤のみを抗菌剤として含有する第1インクと、第1色材と異なる第2色材及び第2抗菌剤を含有する第2インクと、記録に用いられなかった第1インク及び第2インクを含む廃インクを収容する廃インク収容部材と、を備えたインクジェット記録装置である。第1抗菌剤が、イソチアゾリン系化合物であり、第2抗菌剤が、ジェミニ型級アンモニウム塩系化合物、グラミシジン系化合物、アルデヒド系化合物ニトリル系化合物、及びゼオライト担持された銀イオンからなる群より選ばれる少なくとも1種である。

目的

本発明の目的は、イソチアゾリン系化合物のみでは効果が低い微生物やバイオフィルムに対しても良好な抑制作用を有する、抗菌性に優れた廃インクが収容される廃インク収容部材を備えたインクジェット記録装置を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
0件

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請求項1

第1色材及び第1抗菌剤のみを抗菌剤として含有する第1インクと、前記第1色材と異なる第2色材及び第2抗菌剤を含有する第2インクと、記録に用いられなかった前記第1インク及び前記第2インクを含む廃インクを収容する廃インク収容部材と、を備えたインクジェット記録装置であって、前記第1抗菌剤が、イソチアゾリン系化合物であり、前記第2抗菌剤が、ジェミニ型級アンモニウム塩化合物グラミシジン系化合物、アルデヒド系化合物ニトリル系化合物、及びゼオライト担持された銀イオンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とするインクジェット記録装置。

請求項2

前記第1色材が、自己分散顔料である請求項1に記載のインクジェット記録装置。

請求項3

前記第2色材が、染料である請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。

請求項4

前記第1インク中の前記第1抗菌剤の含有量(質量%)が、第1インク全質量を基準として、0.10質量%以上0.50質量%以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。

請求項5

前記第2インク中の前記第2抗菌剤の含有量(質量%)が、第2インク全質量を基準として、0.10質量%以上0.50質量%以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。

技術分野

0001

本発明は、インクジェット記録装置に関する。

背景技術

0002

インクジェット用の水性インクの主成分は水であるとともに、色材などのその他の成分は有機化合物であるため、菌類などの微生物が発生しやすい。菌類などの微生物が発生すると、インク劣化して粘度などの物性が変化したり、インクの構成成分の析出凝集により異物が発生したりして、吐出特性が低下する。このような課題に対し、インクに抗菌剤などの成分を配合し、微生物の発生を抑制することが行われている。

0003

抗菌剤としては様々な成分が知られている。インクジェット用の水性インクには、抗菌スペクトルが広く、それ自体がインクの吐出性能を低下させにくいことから、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンをはじめとするイソチアゾリン系化合物などの抗菌剤が汎用されている(特許文献1参照)。しかし、イソチアゾリン系化合物は微生物の生育を抑制する防腐剤として作用する化合物であるため、殺菌作用が低い。また、イソチアゾリン系化合物は真菌には作用しにくいとともに、芽胞菌や微生物が産出するバイオフィルムには作用しないため、インクの劣化を十分に抑制することができない。微生物の発生などによって生ずるこれらの課題を解決すべく、例えば、複数の抗菌剤を含有するインクが提案されている(特許文献2参照)。

先行技術

0004

特開昭62−265371号公報
特開2000−226545号公報

発明が解決しようとする課題

0005

しかし、特許文献2で提案された、イソチアゾリン系化合物と、フェノール系殺菌剤ピリジン系防黴剤とを併用したインクであっても、芽胞菌や、バイオフィルムで包含された微生物の発生を抑制するには不十分であった。さらに、黄色ブドウ球菌大腸菌緑膿菌への抗菌性も不十分であった。

0006

ところで、一般的なインクジェット記録装置は、各種信頼性を確保すべく、記録には用いられることなく、予備吐出吸引などのために排出されたインク(いわゆる「廃インク」)を収容する廃インク収容部材を備える。廃インク収容部材には交換可能なものもある。交換可能な廃インク収容部材は、収容された廃インクの量が一定量を超えた場合に交換される。しかし、一般的なインクジェット記録装置に配設される廃インク収容部材は、交換の手間を省くことを優先して、その他の部材の使用可期限まで交換されることなく廃インクを貯留するように構成されている。そして、このような廃インク収容部材の使用可能期限は、インクカートリッジに収容されたインクの使用可能期限よりもはるかに長い。しかも、インクカートリッジとは異なり、記録装置内における廃インク収容部材の設置環境は積極的に管理されていない場合がほとんどである。このため、廃インク収容部材の設置環境(温度や湿度)は過酷な場合が多く、特に水分が蒸発しやすいことから、廃インク収容部材に収容された廃インク中には微生物が発生しやすい。

0007

したがって、本発明の目的は、イソチアゾリン系化合物のみでは効果が低い微生物やバイオフィルムに対しても良好な抑制作用を有する、抗菌性に優れた廃インクが収容される廃インク収容部材を備えたインクジェット記録装置を提供することにある。

課題を解決するための手段

0008

上記の目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明によれば、第1色材及び第1抗菌剤のみを抗菌剤として含有する第1インクと、前記第1色材と異なる第2色材及び第2抗菌剤を含有する第2インクと、記録に用いられなかった前記第1インク及び前記第2インクを含む廃インクを収容する廃インク収容部材と、を備えたインクジェット記録装置であって、前記第1抗菌剤が、イソチアゾリン系化合物であり、前記第2抗菌剤が、ジェミニ型級アンモニウム塩系化合物、グラミシジン系化合物、アルデヒド系化合物ニトリル系化合物、及びゼオライト担持された銀イオンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とするインクジェット記録装置が提供される。

発明の効果

0009

本発明によれば、イソチアゾリン系化合物のみでは効果が低い微生物やバイオフィルムに対しても良好な抑制作用を有する、抗菌性に優れた廃インクが収容される廃インク収容部材を備えたインクジェット記録装置を提供することができる。

図面の簡単な説明

0010

本発明のインクジェット記録装置の一例を模式的に示す図であり、(a)はインクジェット記録装置の主要部の斜視図、(b)はヘッドカートリッジの斜視図である。

0011

以下に、好ましい実施の形態を挙げて、さらに本発明を詳細に説明する。本発明においては、化合物が塩である場合は、インク中では塩はイオン解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。また、インクジェット用の水性インクのことを、単に「インク」と記載することがある。物性値は、特に断りのない限り、常温(25℃)における値である。

0012

本発明者は、汎用の抗菌剤である1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン(イソチアゾリン系化合物)を含有するインクを保存して、微生物が発生及び増殖する過程について確認した。その結果、インクを短期間保存した時点において、黄色ブドウ球菌は抗菌剤の作用により増殖していない一方で、抗菌剤が効かない真菌が増殖したことがわかった。インクをさらに長期間保存したところ、真菌だけでなく、抗菌剤が有効であるはずの黄色ブドウ球菌も増殖した。本発明者は、増殖した黄色ブドウ球菌を単離し、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンの水溶液に添加して試料を調製した。そして、液体培地ガラス片を入れたシャーレに調製した試料を滴下し、撹拌しながら37℃で5日間保管した。保管後に取り出したガラス片を解析したところ、ガラス片上にバイオフィルムが形成されていることがわかった。以上の結果から、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンの存在下であっても、黄色ブドウ球菌は、形成されたバイオフィルムに内包される状態で生存していたと推測される。そして、時間経過により1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンの作用が弱まった時点でバイオフィルムから黄色ブドウ球菌が放出され、液体中で活性化したと考えられる。

0013

本発明者は、各種の抗菌剤についてさらに検討した。ここで、本発明における「抗菌剤」とは、微生物を死滅させうる物質又は微生物の増殖を抑制しうる物質を意味する。具体的には、防腐剤、殺菌剤除菌剤、又は防黴剤と呼ばれる化合物が「抗菌剤」の概念に含まれる。抗菌剤として用いうる化合物としては、イソチアゾリン系化合物の他に、フェノール系化合物オキサゾリン系化合物ピリジン系化合物イミダゾール系化合物チアゾール系化合物、4級アンモニウム塩系化合物、グラミシジン系化合物、アルデヒド系化合物、ニトリル系化合物、及び銀イオン系化合物などを挙げることができる。

0014

検討の結果、上記の抗菌剤のなかでも、特定の抗菌剤をイソチアゾリン系化合物と併用することが有用であることを見出した。特定の抗菌剤は、ジェミニ型4級アンモニウム塩系化合物、グラミシジン系化合物、アルデヒド系化合物、ニトリル系化合物、及びゼオライトに担持された銀イオンからなる群より選ばれる少なくとも1種である。これらの特定の抗菌剤は、抗菌スペクトルはさほど広くないものの、真菌や芽胞菌を殺菌可能であるとともに、バイオフィルムの形成を抑制する作用を示す。さらに、防腐剤としての作用を示すイソチアゾリン系化合物とは異なり、これらの特定の抗菌剤は殺菌剤としての作用を示す。このため、これらの特定の抗菌剤とイソチアゾリン系化合物を併用することで、廃インク収容部材における各種微生物の発生が有効に抑制されたインクジェット記録装置とすることができる。さらには、これらの化合物を併用することで、廃インク収容部材における耐性菌の発生を有効に抑制することが期待される。

0015

本発明者は、上記の特定の抗菌剤とイソチアゾリン系化合物を含有するインクを廃インク収容部材に収容してインクジェット記録装置に設置する評価を行った。そして、廃インク収容部材内のインク(廃インク)における微生物の増殖過程を経時的に観察した。その結果、廃インク収容部材に収容する前のインク自体は十分な抗菌作用を示す一方で、廃インク収容部材に貯留した状態の廃インクには微生物が増殖することが判明した。そこで、本発明者は、異なる色材及び異なる抗菌剤をそれぞれ含有する2種類のインク(第1インク及び第2インク)を調製してさらに検討した。その結果、調製した第1インク及び第2インクを含有する廃インクについては、廃インク収容部材に貯留した場合であっても優れた抗菌性を示すことが判明した。

0016

廃インクは長期放置されるため、水分が激しく蒸発する場合が多い。水分が蒸発して色材濃度が上昇すると、色材が凝集(固体化)するとともに、凝集した色材に抗菌剤が取り込まれる。廃インクの水分中に存在しているが、凝集した色材に取り込まれた抗菌剤は、各種の微生物(菌)が存在する廃インク中の水分側へと移行しにくくなり、抗菌作用が発揮されにくくなると考えられる。

0017

また、異なる色材をそれぞれ含有する2種のインクを混合すると、分子構造や物性の異なる2種の色材が凝集して凝集物が形成される。2種以上の色材が凝集して形成される凝集物は、単独の色材が凝集して形成される凝集物よりも嵩高くなる。すなわち、2種以上の色材が凝集して形成される凝集物には抗菌剤が緩く取り込まれる(パッキングされる)ため、取り込まれた抗菌剤は水分側にも移行しやすく、抗菌作用が発揮されると考えられる。

0018

ここで、2種の抗菌剤を含有するインクについて想定する。インク中の2種の抗菌剤は相互作用しやすいため、水分蒸発が進行しやすい廃インク中では局所的に強く相互作用する部分が生ずることになる。これに対して、2種の抗菌剤をそれぞれ含有する2種のインクを混合した廃インクの場合は、2種の抗菌剤が相互作用しにくくなり、抗菌作用が有効に発揮されると考えられる。イソチアゾリン系化合物を含有するインクに、イソチアゾリン系化合物以外の抗菌剤(その他の抗菌剤)をさらに含有させたとしても、イソチアゾリン系化合物とその他の抗菌剤は相互作用しにくい。これは、イソチアゾリン系化合物とその他の抗菌剤の構造の相違によるものと推測される。

0019

<インクジェット記録装置>
本発明のインクジェット記録装置は、第1インクと、第2インクと、記録に用いられなかった第1インク及び第2インクを含む廃インクを収容する廃インク収容部材とを備える。以下、インクジェット記録装置の詳細について説明する。

0020

図1は、本発明のインクジェット記録装置の一例を模式的に示す図であり、(a)はインクジェット記録装置の主要部の斜視図、(b)はヘッドカートリッジの斜視図である。インクジェット記録装置には、記録媒体32を搬送する搬送手段(不図示)、及びキャリッジシャフト34が設けられている。キャリッジシャフト34にはヘッドカートリッジ36が搭載可能となっている。ヘッドカートリッジ36は記録ヘッド38及び40を具備しており、インクカートリッジ42がセットされるように構成されている。ヘッドカートリッジ36がキャリッジシャフト34に沿って主走査方向に搬送される間に、記録ヘッド38及び40から記録媒体32に向かってインク(不図示)が吐出される。そして、記録媒体32が搬送手段(不図示)により副走査方向に搬送されることによって、記録媒体32に画像が記録される。

0021

インクジェット記録装置では、記録ヘッドの吐出口からインクを吐出して記録媒体に付与することで画像を記録する。但し、吐出口にインクなどが目詰まりしたり、液体成分の蒸発により流路内でインクが増粘したりすると、インクの正常な吐出が困難となる場合がある。インクの正常な吐出が困難となった場合には、記録ヘッドの吐出性能を回復するための回復操作が実施される。この回復動作としては、インクを予備吐出させる方法や、吸引キャップに接続された吸引ポンプを動作させることにより負圧を発生させ、記録ヘッドから強制的にインクを排出させる方法などがある。いずれの方法で吐出(排出)されたインクも画像の記録に寄与しないため、インクジェット記録装置に設けられた廃インク収容部材内に収容(貯留)される。廃インク収容部材としては、多孔質体積層体などの、従来のインクジェット記録装置に配設される一般的なものを用いることができる。

0022

<インク>
本発明のインクジェット記録装置は、第1インク及び第2インクを備える。第1インクは、第1色材及び第1抗菌剤のみを抗菌成分として含有する。第2インクは、第1色材と異なる第2色材及び第2抗菌剤を含有する。第1抗菌剤は、イソチアゾリン系化合物である。そして、第2抗菌剤は、ジェミニ型4級アンモニウム塩系化合物、グラミシジン系化合物、アルデヒド系化合物、ニトリル系化合物、及びゼオライトに担持された銀イオンからなる群より選ばれる少なくとも1種(以下、「特定の抗菌剤」とも記す)である。以下、インクを構成する各成分、インクの物性について説明する。

0023

(抗菌剤)
第1インクに用いる抗菌剤は、第1抗菌剤であるイソチアゾリン系化合物のみである。第2インクに用いる抗菌剤は、第2抗菌剤であるジェミニ型4級アンモニウム塩系化合物、グラミシジン系化合物、アルデヒド系化合物、ニトリル系化合物、及びゼオライトに担持された銀イオンからなる群より選ばれる少なくとも1種である。第2インクには、第2抗菌剤以外の抗菌剤(その他の抗菌剤)をさらに含有させることができる。その他の抗菌剤としては、フェノール系化合物、オキサゾリン系化合物、ピリジン系化合物、イミダゾール系化合物、チアゾール系化合物などを挙げることができる。

0024

〔第1抗菌剤:イソチアゾリン系化合物〕
イソチアゾリン系化合物は、チオール基の代謝阻害作用によって微生物の増殖を抑制する抗菌剤である。イソチアゾリン系化合物としては、例えば、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4,5−トリメチレン−4−イソチアゾリン−3オン、N−(n−ブチル)−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンなどを挙げることができる。1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンは、インクジェット用のインクの防腐剤として汎用されている。1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンは、例えば、プロキセルシリーズアビシア製、CRL、BDN、GXL、XL.2、TN、LVなど)として市販されている。

0025

第1インク中の第1抗菌剤の含有量(質量%)は、第1インク全質量を基準として、0.10質量%以上0.50質量%以下であることが好ましい。

0026

〔第2抗菌剤:特定の抗菌剤〕
第2抗菌剤として用いる特定の抗菌剤は、ジェミニ型4級アンモニウム塩系化合物、グラミシジン系化合物、アルデヒド系化合物、ニトリル系化合物、及びゼオライトに担持された銀イオンからなる群より選ばれる少なくとも1種である。第2インク中の第2抗菌剤の含有量(質量%)は、第2インク全質量を基準として、0.10質量%以上0.50質量%以下であることが好ましい。

0027

第2抗菌剤は、その他の一般的な抗菌剤と比較して、芽胞菌や真菌に対して高い殺菌作用を示すだけでなく、バイオフィルムの形成も抑制することができる。このため、第1抗菌剤を含有する第1インクと、第2抗菌剤を含有する第2インクとを含む廃インクを廃インク収容部材に収容することで、幅広い抗菌スペクトルとすることができる。

0028

抗菌剤として用いられる一般的な4級アンモニウム塩系化合物は、種々の菌類に対して高い殺菌作用を示すが、芽胞菌や真菌に対する殺菌性は必ずしも高いものではない。また、低温環境下やタンパク質共存下であると、殺菌作用が低下しやすい。これに対して、4級アンモニウム塩系化合物のなかでも、ジェミニ型4級アンモニウム塩系化合物は、芽胞菌や真菌に対して高い殺菌作用を示すだけでなく、バイオフィルムの形成も抑制することができる。このため、ジェミニ型4級アンモニウム塩系化合物をイソチアゾリン系化合物と併用することで、幅広い抗菌スペクトルとすることができる。

0029

ジェミニ型4級アンモニウム塩系化合物は、アンモニウムヘッドを2個有する対称型のアンモニウム塩である。なかでも、ブリッジ構造の異なるビス型4級アンモニウム塩がさらに効果的である。より具体的なジェミニ型4級アンモニウム塩系化合物としては、アミド型のN,N−テトラメチレンビス(1−ドデシル−4−カルバモイルピリジウムヨージド)、アンチアミド型の(1,4−テトラメチレンジカルボニルジアミンビス(1−デシルピリジニウムヨージド)、エステル型の(1,6−ヘキサメチレンジオキシジカルボニル)ビス(1−デシルピリジニウムヨージド)、チオエーテル型の(1,6−ヘキサメチレンジチオ)ビス(1−オクチピリジニウムヨージド)などを挙げることができる。

0030

抗菌剤として用いられるグラミシジン系化合物は、細菌や真菌に対して高い殺菌作用を示すとともに、バイオフィルムの形成を抑制することができる。グラミシジン系化合物は、グラミシジンの骨格を有するものであればよい。グラミシジン系化合物の具体例としては、グラミシジンS、グラミシジンA、及びグラミシジンBなどを挙げることができる。なかでも、環状ペプチド構造を有するグラミシジンSが好ましい。

0031

抗菌剤として用いられるアルデヒド系化合物は、主として医療用途で汎用であり、金属、ゴムプラスチックなどに対する腐食性を有しない。また、アルデヒド系化合物は有機物によっても効力が低下しにくく、真菌や芽胞菌に対する殺菌作用を示す。このため、アルデヒド系化合物とイソチアゾリン系化合物を併用することで、幅広い抗菌スペクトルとすることができる。

0033

抗菌剤として用いられるニトリル系化合物は、高い殺菌作用を示すだけでなく、即効性にも優れている。ニトリル系化合物の殺菌メカニズム細胞原形質破壊である。このため、バイオフィルムの形成を抑制することができる。したがって、ニトリル系化合物とイソチアゾリン系化合物を併用することで、幅広い抗菌スペクトルとすることができる。

0034

ニトリル系化合物としては、1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン、2,2−ジブロモ−3−ニトリルプロピオンアミド、2−ブロモ−2ブロモメチルグルタロニトリルなどを挙げることができる。

0035

抗菌剤として用いられる銀担持酸化チタンなどの銀担持無機系化合物は、銀イオンの作用で真菌や芽胞菌に対する高い殺菌効果を示すとともに、バイオフィルムの形成を抑制するといった特性を有する。但し、一般的な銀担持無機化合物を水性インクに含有させると銀イオンが容易に放出されて色材が塩析し、インクの保存安定性が低下する傾向にある。これに対して、銀イオン担持ゼオライト中の銀イオンはゼオライトの結晶骨格に化学的に結合し、銀イオンの状態で安定に保持されている。このため、水性インクに銀イオン担持ゼオライトを含有させると、銀イオンが系中に徐々に放出されるので、高い殺菌効果を維持した状態でインクの保存安定性を向上させることができる。さらに、銀イオン担持ゼオライトをイソチアゾリン系化合物と併用することで、幅広い抗菌スペクトルとすることができる。

0036

銀イオンを担持するゼオライトはA型(LTA)であることが、銀イオンとの親和性が高いために好ましい。銀イオン担持ゼオライトは、例えば、所望の結晶構造を有するゼオライトを水に加えて懸濁した状態で、硝酸銀塩化銀をさらに加えて撹拌処理することで調製することができる。硝酸銀や塩化銀の量を調整することで、得られる銀イオン担持ゼオライトに担持される銀イオンの量を制御することができる。銀イオン担持ゼオライトは、樹脂などの分散剤によってインク中に分散されていることが好ましい。すなわち、ゼオライトに担持された銀イオン(銀イオン担持ゼオライト)を第2インクに含有させる場合には、第2インクは、銀イオン担持ゼオライトを分散させる樹脂などの分散剤をさらに含有することが好ましい。銀イオン担持ゼオライト中の銀イオンの含有量(質量%)は、銀イオン担持ゼオライト全質量を基準として、1.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。

0037

(色材)
第1色材及び第2色材(以下、纏めて単に「色材」とも記す)としては、染料及び顔料のいずれをも用いることができる。インク中の色材の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.10質量%以上15.00質量%以下であることが好ましく、1.00質量%以上10.00質量%以下であることがさらに好ましい。

0038

染料としては、直接染料酸性染料塩基性染料分散染料食用染料などを挙げることができる。なかでも、アニオン性基を有する染料を用いることが好ましい。染料骨格の具体例としては、アゾ、トリフェニルメタンフタロシアニンアザフタロシアニンキサンテンアントラピリドンなどを挙げることができる。

0039

顔料としては、カーボンブラックなどの無機顔料;アゾ、フタロシアニン、キナクリドンイソインドリノンイミダゾロンジケトピロロピロールジオキサジンなどの有機顔料を挙げることができる。顔料の分散方式としては、分散剤として樹脂を用いる樹脂分散タイプの顔料、及び顔料の粒子表面に親水性基を導入した自己分散タイプの顔料(自己分散顔料)などを用いることができる。樹脂分散タイプの顔料としては、高分子分散剤を使用した樹脂分散型顔料、顔料の粒子の表面を樹脂で被覆したマイクロカプセル型顔料、及び顔料の粒子の表面に高分子を含む有機基が化学的に結合した樹脂結合型顔料などがある。なお、分散方法の異なる顔料を併用することもできる。

0040

第1インクに用いる第1色材は、自己分散顔料であることが好ましい。さらに、自己分散顔料を構成する顔料種は、カーボンブラックであることが好ましい。自己分散顔料及びカーボンブラックを用いた自己分散顔料は、その粒子表面にイソチアゾリン系化合物を吸着しやすい。このため、廃インク収容部材において第1インクと第2インクとが接触した際に、第2抗菌剤とイソチアゾリン系化合物との接触が抑制される。その結果、相互作用しにくくなり、本発明の効果がより発揮されやすくなる。

0041

第2インクに用いる第2色材は、染料であることが好ましい。第2インクに含有させる第2抗菌剤(特定の抗菌剤)は色材の凝集を促進しやすい。このため、第2色材として、顔料ではなく染料を用いることで、第2抗菌剤が色材の凝集物に取り込まれにくくなる。

0042

水性媒体
第1インク及び第2インク(以下、纏めて単に「インク」とも記す)は、水性媒体として少なくとも水を含有する水性のインクであることが好ましい。インクには、水及び水溶性有機溶剤混合溶媒である水性媒体を含有させることができる。水としては、脱イオン水イオン交換水を用いることが好ましい。水性インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.00質量%以上95.00質量%以下であることが好ましい。

0043

水溶性有機溶剤は、水溶性であれば特に限定はなく、アルコール多価アルコールポリグリコールグリコールエーテル含窒素極性溶媒含硫黄極性溶媒などを用いることができる。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.00質量%以上50.00質量%以下であることが好ましい。

0044

(その他の添加剤
インクには、必要に応じて、界面活性剤pH調整剤酸化防止剤還元防止剤蒸発促進剤、及びキレート化剤などの種々の添加剤を含有させてもよい。界面活性剤としては、アニオン性カチオン性ノニオン性などの界面活性剤を挙げることができる。インク中の界面活性剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.10質量%以上2.00質量%以下であることが好ましい。

0045

(インクの物性)
インクは、インクジェット方式に適用するインクジェット用のインクである。したがって、その物性値を適切に制御することが好ましい。具体的には、25℃におけるインクの表面張力は、20mN/m以上50mN/m以下であることが好ましい。また、25℃におけるインクの粘度は、1.0mPa・s以上5.0mPa・s以下であることが好ましい。25℃におけるインクのpHは、5.0以上10.0以下であることが好ましい。

0046

以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。

0047

顔料分散液の調製>
(顔料分散液1)
水5.5gに濃硫酸5.0gを溶かして得た溶液を5℃に冷却した状態とし、この状態で4−アミノフタル酸0.84gを加えた。この溶液の入った容器アイスバスに入れて溶液を撹拌し、液温を10℃以下に保った状態で、5℃の水9.0gに亜硝酸カリウム2.2gを溶かして得た溶液を加えた。15分撹拌後、カーボンブラック(商品名「ブラックパールズ1100」、キャボット製)6.0gを撹拌下で加え、さらに15分間撹拌してスラリーを得た。得られたスラリーをろ紙(商品名「標準用濾紙No.2」、アドバンテック製)でろ過して粒子を得た。得られた粒子を十分に水冷した後、110℃のオーブンで乾燥させた。イオン交換法によりカリウムイオンアンモニウムイオン置換した後、顔料の含有量が16.0%となるように調整して、顔料分散液1を得た。顔料分散液1中の顔料は、粒子表面に−C6H3−(COONH4)2基が結合した自己分散顔料である。

0048

(顔料分散液2)
顔料(カーボンブラック)16.0部、樹脂分散剤の水溶液40.0部、及び純水44.0部を混合した。樹脂分散剤の水溶液としては、酸価100mgKOH/gのスチレンアクリル酸共重合体を、その酸価に対して等モル量の水酸化カリウム中和し、イオン交換水に溶解させた、樹脂(固形分)の含有量が10.0%の水溶液を用いた。混合物バッチ式縦型サンドミルアイメックス製)に入れ、0.3mm径ジルコニアビーズ150.0部を充填し、水冷しながら5時間分散した。その後、遠心分離により粗大粒子を除去して、顔料の含有量が16.0%、樹脂(固形分)の含有量が4.0%である顔料分散液2を得た。

0049

(顔料分散液3)
顔料をC.I.ピグメントブルー15:3に変えたこと以外は顔料分散液2の調製と同様の手順で、顔料の含有量が16.0%、樹脂(固形分)の含有量が4.0%である顔料分散液3を得た。

0050

<ゼオライトに担持された銀イオンの水分散液の調製>
(銀イオン担持ゼオライトの水分散液1)
A型ゼオライト(商品名「ゼオラム」、東ソー製)20.0部に水100.0部を加えて懸濁させた後、硝酸銀水溶液を加えて室温で24時間撹拌した。吸引ろ過して固層を分離し、純水で十分に洗浄した後、100℃で24時間乾燥させた。乾燥物粉砕機粉砕し、さらに100℃で12時間乾燥させて、銀イオン担持ゼオライトを得た。原子吸光光度法により測定した銀イオン担持ゼオライトの銀イオンの含有量は、5.0%であった。得られた銀イオン担持ゼオライト16.0部、樹脂分散剤の水溶液40.0部、及び純水44.0部を混合して混合物を得た。樹脂分散剤の水溶液としては、酸価100mgKOH/gのスチレン−アクリル酸共重合体を酸価と等モルの水酸化カリウムで中和してイオン交換水に溶解させた、樹脂(固形分)の含有量が10.0%の水溶液を用いた。得られた混合物をバッチ式縦型サンドミル(アイメックス製)に入れ、0.3mm径のジルコニアビーズ150.0部を充填した。水冷しながら5時間分散した後、遠心分離して粗大粒子を除去してから濃縮した。これにより、銀イオン担持ゼオライト(銀イオンの含有量:5.0%)の含有量が20.0%である銀イオン担持ゼオライトの水分散液1を得た。

0051

<インクの調製>
表1−1及び1−2の上段に示す各成分(単位:%)を混合して十分に撹拌した後、ポアサイズ2.5μmのミクロフィルター(富士フイルム製)で加圧ろ過して、各インクを調製した。表1−1及び1−2中の「アセチレノールE100」は、川研ファインケミカル製の界面活性剤(アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物)の商品名である。表1−1及び1−2の下段には、インクの特性を示した。

0052

0053

0054

<評価>
(抗菌性の評価)
表2に示す種類のインクをそれぞれインクカートリッジに充填した。このインクカートリッジを、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出する、積層体で構成された廃インク収容部材を備えたインクジェット記録装置(商品名「PIXUS MG5230」、キヤノン製)にセットした。MBkインクポジションに第1インクをセットし、Cyanインクのポジションに第2インクをセットした。本実施例においては、1/600インチ×1/600インチの単位領域に28ngのインクを付与して記録したベタ画像を「記録デューティが100%である」と定義する。上記のインクジェット記録装置を用いて、記録媒体(普通紙、商品名「PBPAPERGF−500」、キヤノン製)に、以下の手順で画像を記録した。

0055

まず、記録デューティが5%である5cm×5cmの第1インクのベタ画像を記録した後、プリンタドライバより吸引回復操作を1回行った。次いで、記録デューティが5%である5cm×5cmの第2インクのベタ画像を記録した後、プリンタドライバより吸引回復操作を1回行った。このサイクルを20回繰り返した。記録装置を25℃の環境に6ヶ月間放置した後、廃インク収容部材から廃インクを回収した。(1)総細菌数測定器具(商品名「サンアイバイオチェッカーTTC」、三石油製)と、(2)寒天培地(商品名「SCDLP寒天培地『ダイゴ』」、和光純薬工業製)の2つに、回収した廃インク1mLをそれぞれ塗布して試料とした。(2)の寒天培地は添加された抗菌剤を不活化して微生物の増殖を可能にする特性を有するものであり、抗菌剤を含有する組成物中の生菌数を測定するために利用した。試料を37℃の環境下に10日間放置した後、コロニーの有無を確認した。結果を表2に示す。表2中、1〜4個のコロニーが検出された場合には「微検出」、5個以上のコロニーが検出された場合には「検出」、としてそれぞれ表記した。また、「ND」は、微生物が検出されなかったことを意味する。

0056

(保存安定性の評価)
上記で得られたインクをテフロン登録商標)容器にそれぞれ入れ、80℃で2週間放置した。放置後のインクの状態(変化)を目視で観察し、以下に示す評価基準にしたがってインクの保存安定性を評価した。結果を表2に示す。
A:第1及び第2インクのいずれにも、凝集物の発生及び増粘は認められなかった。
B:第1及び第2インクのいずれかで、多少の凝集物の発生又は多少の増粘が認められた。

実施例

0057

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