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課題

動植物細胞及び/又は組織を、特に三次元或いは浮遊状態にて培養するための培地組成物と当該培地組成物を用いた動植物細胞及び/又は組織の培養方法を提供すること。

解決手段

本発明は、不定形構造体液体培地中で形成し、当該構造体が当該溶液中にて均一に分散し、当該溶液の粘度を実質的に高めること無く細胞及び/又は組織を実質的に保持することで、その沈降を防ぐ効果を有する培地組成物を用いて、細胞及び/又は組織を浮遊状態にて培養させることを特徴とする細胞及び/又は組織の培養方法等を提供する。

概要

背景

近年、動物植物体内で異なった役割を果たしている様々な器官組織、及び細胞生体外にて増殖或いは維持させるための技術が発展してきている。これらの器官、組織を生体外にて増殖或いは維持することは、それぞれ器官培養組織培養と呼ばれており、器官、組織から分離された細胞を生体外にて増殖、分化或いは維持することは細胞培養と呼ばれている。細胞培養は、分離した細胞を培地中で生体外にて増殖、分化或いは維持する技術であり、生体内の各種器官、組織、細胞の機能及び構造を詳細に解析するために不可欠なものとなっている。また、当該技術により培養された細胞及び/又は組織は、化学物質医薬品等薬効及び毒性評価や、酵素細胞増殖因子、抗体等の有用物質大量生産、疾患や欠損により失われた器官、組織、細胞を補う再生医療、植物の品種改良遺伝子組み換え作物の作成等様々な分野で利用されている。

動物由来の細胞は、その性状から浮遊細胞接着細胞に大きく2分される。浮遊細胞は、生育・増殖に足場を必要としない細胞であり、接着細胞は、生育・増殖に足場を必要とする細胞であるが、生体を構成する大部分の細胞は後者の接着細胞である。接着細胞の培養方法としては、単層培養、分散培養、包埋培養、マイクロキャリア培養、及びスフェア培養等が知られている。

単層培養は、ガラス或いは種々の表面処理を行った合成高分子材料から成る培養容器や、フィーダー細胞と呼ばれる補助的な細胞を足場として目的の細胞を単層状に培養する方法であり、最も一般的に普及している。例えば、ポリスチレンに対して種々の表面処理(プラズマ処理コロナ処理等)を施したもの、コラーゲンフィブロネクチンポリリジンなどの細胞接着因子コーティングしたもの、或いはフィーダー細胞を予め播種したもの等、種々の形状又は性状の培養容器を用いた培養方法が開発されている。しかしながら、単層培養は、その二次元培養環境が生体内での環境と全く異なるために細胞が生体内で有している特異的な機能を長期間維持することができない、生体内と同様な組織を再構築する事ができない、一定面積当たり細胞数が制限されるため細胞の大量培養には向かない、等が問題となっている(特許文献1)。また、フィーダー細胞上にて目的の細胞を培養する方法は、フィーダー細胞と目的の細胞との分離が問題となる場合がある(非特許文献1)。

分散培養は、培地中に細胞を播いた後、細胞の付着を阻害する表面処理を施した培養容器中にて、その培養液撹拌し続けることにより細胞の培養容器への接着を阻害し、浮遊状態で接着細胞を培養する方法である。しかしながら、当該方法で培養される接着細胞は足場への接着ができないため、細胞増殖のために足場への接着を必須とする細胞には応用できない。また、せん断力で常時破砕されることにより本来の細胞機能を発揮できないため、機能を有する細胞を大量に培養することができない場合がある(非特許文献2)。

包埋培養は、寒天メチルセルロース、コラーゲン、ゼラチンフィブリンアガロースアルギン酸塩等の固形或いは半固体ゲル基材の中に細胞を埋め込み、固定させて培養する方法である。当該方法は、細胞を生体内に近い形で三次元的に培養することを可能とし、ゲル基材そのものが細胞の増殖や分化を促進する場合もあるため単層培養や分散培養と比較して、細胞の機能を維持したまま細胞を高密度に培養することが可能である(特許文献2、3)。更に、これらのゲル基材を細胞に埋め込んだ状態で大きさ100〜300μmのマイクロカプセルを作成し、当該マイクロカプセルを分散させながら水溶液培地で細胞を培養する方法も開発されている(非特許文献3)。しかしながら、これらの方法は、ゲル基材が可視光を透過しない場合は培養細胞継時的な観察ができない、ゲル基材を含む培地やマイクロカプセルは粘度が高いため当該培地中から細胞を回収するために酵素処理(例えば、コラーゲンゲルの場合はコラゲナーゼ処理)等の煩雑かつ細胞に障害を与える操作を必要とする、長期間培養する際に必要な培地交換が困難である等の問題を有している。近年、熱やせん断力などの処理によりゲル基材から細胞回収が可能となる技術が開発されているが、熱やせん断力等は細胞機能に悪影響を与えることがある上に、当該ゲル基材の生体に対する安全性については未だ明らかにはなっていない(特許文献4、5、非特許文献4、5、6、7)。また、小さくカットした果実野菜等の粒状食品を均一に分散、浮遊させ、その沈殿や浮上を防ぐためのゾル状食品食品分野にて開発されているが、当該ゾル状食品は分散させた粒状食品を回収することは考慮しておらず、細胞や組織を浮遊状態で培養できるかどうかの検討もなされていない(特許文献6)。

マイクロキャリア培養は、水よりも僅かに重い微粒子(以下、マイクロキャリアともいう)の表面上に細胞を単層に増殖させ、当該微粒子をフラスコ等の培養容器内で撹拌し、浮遊状態での培養を行うものである。通常、当該方法で用いるマイクロキャリアは、直径100〜300μm、表面積3000〜6000cm2/g、比重1.03〜1.05の球状粒子であり、デキストラン、ゼラチン、アルギン酸あるいはポリスチレン等の素材により構成されている。マイクロキャリアの表面には細胞が付着しやすいように、コラーゲン、ゼラチンまたはジメチルアミノエチル等の荷電基を付与することもできる。当該方法は、培養面積を極めて増大させることが可能になるため、細胞の大量培養に応用されている(特許文献7、8)。しかしながら、全てのマイクロキャリアで目的とする細胞をほぼ均一に付着させることは困難であり、また、撹拌中のせん断力により細胞がマイクロキャリアから脱離する、細胞が障害を受ける等が問題となっている(非特許文献8)。

スフェア培養は、目的の細胞が、数十〜数百個から成る凝集塊(以下、スフェアともいう)を形成させた後、当該凝集塊を培地中で静置或いは振とうして培養する方法である。スフェアは、細胞密度が高く、生体内環境に近い細胞−細胞間相互作用及び細胞構造体が再構築されており、単層培養、分散培養法よりも細胞機能を長期的に維持したまま培養できることが知られている(非特許文献9、10)。しかしながら、スフェア培養は、スフェアのサイズが大きすぎる場合、スフェア内部の栄養分の供給と老廃物の排出が困難となるため、大きなスフェアを形成させることができない。また、形成したスフェアは培養容器の底面において分散状態で培養する必要があるため、一定体積あたりのスフェア数を増やすことが困難であり、大量培養には向かない。さらに、スフェアの作成方法としては、懸滴培養、細胞非接着表面での培養、マイクロウェル内での培養、回転培養、細胞の足場を利用した培養、遠心力や超音波電場・磁場による凝集などが知られているが、これらの方法は操作が煩雑、スフェアの回収が困難、サイズの制御と大量生産が困難、細胞に対する影響が不明、特殊な専用容器や装置が必要である等が問題となっている(特許文献9)。

一方、植物に関しても細胞、細胞壁を除去したプロトプラストあるいは植物の葉、、根、成長点、種子、花粉などの器官、組織、カルス無菌の状態で培養して増やすことができる。このような植物の組織や細胞の培養技術を用いて、植物の品種改良や有用物質生産も可能となっている。植物の細胞や組織を短期間で大量に増殖させるための手法として、植物細胞や組織を液体培地懸濁培養する方法が知られている(非特許文献11)。それらの良好な増殖を達成するためには、十分な酸素の供給と均一な混合状態の維持、さらに細胞の破損を防ぐ等が重要である。培養液への酸素の供給と細胞や組織の懸濁は、通気機械的攪拌とを組み合わせて行なわれる場合と、通気のみにより行なわれる場合とがあるが、前者は、攪拌による細胞や組織の破損が原因で増殖不良を招く場合があり、一方、後者は細胞や組織のせん断は少ないが、高密度培養では均一な混合状態を維持することが困難となる場合があるため、細胞や組織が沈降して増殖効率が低下する等の問題がある。

さらに、抗がん剤研究開発或いはがん治療における適切な抗がん剤の選択のために、候補薬剤或いは抗がん剤を含有する培養液中でがん細胞を生体外で培養することにより、がん細胞に対する薬剤抗がん活性を評価することが行われている。しかし、既存の抗がん活性の評価方法では、生体外での評価結果と実際の臨床効果に乖離がある等の問題が存在する。当該問題を改善するため、体内環境をできるだけ再現した細胞培養条件にて活性評価を行う手法が開発されてきた。例えば、軟寒天、コラーゲンゲル、ハイドロゲル等の支持体にてがん細胞を包埋することにより、培養容器への接着を阻害した環境でがん細胞を培養し、抗がん剤の評価を行う方法が開発されている(特許文献10、非特許文献12、13)。また、培養容器表面を細胞接着の阻害材料にてコーティングすることや、表面に特殊な加工を施すことにより細胞接着を阻害してがん細胞を凝集させた状態にて培養(スフェア培養)し、抗がん活性の評価を行う方法が開発されている(特許文献11、12)。

しかしながら、これらのがん細胞培養法は、培養容器の作成過程及び細胞培養の操作が煩雑である、コラーゲン等の支持体から細胞を回収して抗がん活性を評価する際の操作が煩雑である、支持体が動物由来の成分である際には高価であるためにその供給が制限される場合がある、細胞凝集塊(スフェア)同士の会合が生じてその大きさが過剰になり細胞生存率や再現性が低くなる等の様々な問題がある。その上、抗がん剤のスクリーニングを実施する際には、簡便かつ均一で、大量のサンプルを処理できる、再現性の高いがん細胞の培養方法が求められている。

加えて、医薬品候補剤或いは医薬品を含有する培養液中で肝細胞を生体外で培養することにより、肝細胞に対する医薬品候補剤或いは医薬品の各種活性を評価することが行われている。しかし、肝細胞を生体外で培養すると本来生体内で有している機能が失われる場合があるため、既存の肝細胞の培養方法では、医薬品候補剤或いは医薬品の正確な評価ができない、多数のサンプルの評価が困難である等の問題が存在した。当該問題を克服するため、体内環境をできるだけ再現した細胞培養条件にて活性評価を行う手法が開発されてきた。例えば、コラーゲン、ラミニンマトリゲル登録商標)等の細胞外マトリックス上にて肝細胞を培養し、肝細胞の機能を維持する方法が開発されている(特許文献13、非特許文献14、15)。また、培養容器表面を細胞接着の阻害材料にてコーティングする、容器表面に特殊な加工を施すことにより細胞接着を阻害する、培養容器を振動させる等の処理により肝細胞の凝集塊(スフェア)を形成させ、肝細胞の機能を維持する方法が開発されている(特許文献14、15、非特許文献16、17)。

しかしながら、これらの肝細胞培養法は、培養容器の作成過程及び細胞培養の操作が煩雑である、コラーゲン等の支持体から細胞を回収して肝細胞機能を評価する際の操作が煩雑である、支持体が動物由来の成分であると高価である故その供給が制限される場合がある、細胞凝集塊(スフェア)同士の会合が生じてその大きさが過剰になるために細胞生存率や再現性が低くなる等の様々な問題がある。その上、医薬品候補剤或いは医薬品のスクリーニングを実施する際には、簡便かつ均一で、大量のサンプルを処理できる、再現性の高い肝細胞の培養方法が求められている。

概要

動植物細胞及び/又は組織を、特に三次元或いは浮遊状態にて培養するための培地組成物と当該培地組成物を用いた動植物細胞及び/又は組織の培養方法を提供すること。本発明は、不定形構造体液体培地中で形成し、当該構造体が当該溶液中にて均一に分散し、当該溶液の粘度を実質的に高めること無く細胞及び/又は組織を実質的に保持することで、その沈降を防ぐ効果を有する培地組成物を用いて、細胞及び/又は組織を浮遊状態にて培養させることを特徴とする細胞及び/又は組織の培養方法等を提供する。

目的

本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、動植物細胞及び/又は組織を、特に三次元或いは浮遊状態にて培養するための培地組成物と当該培地組成物を用いた動植物細胞及び/又は組織の培養方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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請求項1

細胞または組織を浮遊させて培養できる構造体を含有することを特徴とする培地組成物

請求項2

培養時の培地組成物の交換処理及び培養終了後において細胞または組織の回収が可能である請求項1記載の培地組成物。

請求項3

培地組成物からの細胞または組織の回収の際に、温度変化化学処理酵素処理せん断力のいずれも必要としない請求項1記載の培地組成物。

請求項4

粘度が、8mPa・s以下であることを特徴とする請求項1記載の培地組成物。

請求項5

前記構造体の大きさが、フィルター濾過した場合、孔径が0.2μm乃至200μmのフィルターを通過するものであることを特徴とする請求項1記載の培地組成物。

請求項6

前記構造体が高分子化合物を含有することを特徴とする請求項1記載の培地組成物。

請求項7

前記高分子化合物が、アニオン性官能基を有する高分子化合物を含有することを特徴とする請求項6記載の培地組成物。

請求項8

前記高分子化合物が、多糖類であることを特徴とする請求項6記載の培地組成物。

請求項9

前記アニオン性官能基が、カルボキシ基スルホ基およびリン酸基からなる群から少なくとも1種選択されることを特徴とする請求項7記載の培地組成物。

請求項10

前記多糖類が、ヒアルロン酸ジェランガム脱アシル化ジェランガムラムザンガムダイユータンガムキサンタンガムカラギーナンフコイダンペクチンペクチン酸、ペクチニン酸、ヘパラン硫酸ヘパリンヘパリチン硫酸ケラト硫酸コンドロイチン硫酸デルタマン硫酸、ラムナン硫酸及びそれらの塩からなる群から少なくとも1種選択されることを特徴とする請求項8に記載の培地組成物。

請求項11

前記多糖類が、ヒアルロン酸、脱アシル化ジェランガム、ダイユータンガム、キサンタンガム、カラギーナン及びそれらの塩からなる群から少なくとも1種選択されることを特徴とする請求項10に記載の培地組成物。

請求項12

前記多糖類が、脱アシル化ジェランガムまたはその塩であることを特徴とする請求項10又は11に記載の培地組成物。

請求項13

前記脱アシル化ジェランガムまたはその塩の培地組成物に対する最終濃度が、0.001〜1.0%(重量/容量)であることを特徴とする請求項12に記載の培地組成物。

請求項14

さらに、脱アシル化ジェランガムまたはその塩以外の多糖類を含有することを特徴とする請求項13に記載の培地組成物。

請求項15

前記多糖類が、キサンタンガム、アルギン酸、カラギーナン、ダイユータンガム及びそれらの塩からなる群から少なくとも1種選択されることを特徴とする請求項14に記載の培地組成物。

請求項16

前記多糖類が、メチルセルロースローカストビーンガム及びそれらの塩からなる群から少なくとも1種選択されることを特徴とする請求項14に記載の培地組成物。

請求項17

さらに、金属イオンを含有することを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項に記載の培地組成物。

請求項18

前記金属イオンが、2価の金属イオンであることを特徴とする請求項17記載の培地組成物。

請求項19

前記金属イオンが、カルシウムイオンマグネシウムイオン亜鉛イオン鉄イオンおよび銅イオンからなる群から少なくとも1種選択されることを特徴とする請求項18記載の培地組成物。

請求項20

前記金属イオンが、カルシウムイオンであることを特徴とする請求項19記載の培地組成物。

請求項21

さらに、カルシウムイオン以外の金属イオンを含有することを特徴とする請求項20に記載の培地組成物。

請求項22

前記金属イオンが、マグネシウムイオン、ナトリウムイオンおよびカリウムイオンからなる群から少なくとも1種選択されることを特徴とする請求項21記載の培地組成物。

請求項23

さらに、細胞外マトリックス及び/又は細胞接着分子を含有することを特徴とする請求項1乃至22のいずれか1項に記載の培地組成物。

請求項24

前記細胞外マトリックスが、コラーゲン、ヒアルロン酸およびプロテオグリカンからなる群から少なくとも1種選択されることを特徴とする請求項23に記載の培地組成物。

請求項25

前記細胞接着分子が、カドヘリンラミニンフィブロネクチンおよびビトロネクチンからなる群から少なくとも1種選択されることを特徴とする請求項23に記載の培地組成物。

請求項26

細胞培養用である、請求項1乃至25のいずれか1項に記載の培地組成物。

請求項27

前記細胞が、接着細胞または浮遊細胞であることを特徴とする請求項26に記載の培地組成物。

請求項28

前記接着細胞が、マイクロキャリアに付着した状態であることを特徴とする請求項27に記載の培地組成物。

請求項29

前記接着細胞が、担体包埋した状態であることを特徴とする請求項27に記載の培地組成物。

請求項30

前記接着細胞が、スフェアであることを特徴とする請求項27に記載の培地組成物。

請求項31

前記接着細胞が、多能性幹細胞がん細胞及び肝細胞からなる群から選択されることを特徴とする請求項27に記載の培地組成物。

請求項32

請求項1乃至31のいずれか1項に記載の培地組成物と、細胞又は組織とを含む、細胞又は組織培養物

請求項33

請求項1乃至31のいずれか1項に記載の培地組成物中で細胞または組織を培養することを特徴とする、細胞又は組織の培養方法

請求項34

前記細胞が、多能性幹細胞、がん細胞、肝細胞からなる群から選択されることを特徴とする請求項33に記載の培養方法。

請求項35

請求項32の培養物から細胞または組織を分離することを特徴とする、細胞又は組織の回収方法

請求項36

前記分離が、ろ過、遠心または磁性分離で行われることを特徴とする請求項34に記載の回収方法。

請求項37

請求項1乃至31のいずれか1項に記載の培地組成物中で接着細胞を培養することを特徴とするスフェアの製造方法。

請求項38

抗がん剤スクリーニング方法であって、(a)被験物質の存在下及び非存在下、請求項1乃至31のいずれか1項に記載の培地組成物中でがん細胞を培養する工程、及び(b)がん細胞の増殖の変化を測定する工程、を含むことを特徴とする方法。

請求項39

さらに、被験物質の非存在下の場合と比べて、がん細胞の増殖を抑制する物質候補物質として選択する工程を含むことを特徴とする、請求項38に記載の方法。

請求項40

肝細胞に作用する医薬品候補物質の活性を評価する方法であって、(a)被験物質の存在下及び非存在下、請求項1乃至31のいずれか1項に記載の培地組成物中で肝細胞を培養する工程、及び(b)肝細胞の生理学的機能の変化を測定する工程、を含むことを特徴とする方法。

請求項41

さらに、被験物質の非存在下の場合と比べて、肝細胞の生理学的機能を抑制又は増加する物質を選択する工程を含むことを特徴とする、請求項40に記載の方法。

請求項42

肝細胞に作用する医薬品候補物質の薬効又は毒性を評価する方法であって、(a)被験物質の存在下及び非存在下、請求項1乃至31のいずれか1項に記載の培地組成物中で肝細胞を培養する工程、及び(b)肝細胞の生理学的機能の変化を解析する工程、を含むことを特徴とする方法。

請求項43

細胞または組織を浮遊させて培養することができる培地組成物を調製するための培地添加剤であって、高分子化合物が溶媒中に溶解または分散していることを特徴とする培地添加剤。

請求項44

滅菌された状態であることを特徴とする請求項43に記載の培地添加剤。

請求項45

前記高分子化合物がアニオン性官能基を有する高分子化合物である、請求項43又は44に記載の培地添加剤。

請求項46

前記高分子化合物が脱アシル化ジェランガム又はその塩である、請求項43又は44に記載の培地添加剤。

請求項47

細胞または組織を浮遊させて培養することが出来る培地組成物の製造方法であって、高分子化合物と培地を混合することを特徴とする培地組成物の製造方法。

請求項48

請求項43乃至46のいずれか1項に記載の培地添加剤と培地とを混合することを特徴とする請求項41に記載の培地組成物の製造方法。

請求項49

前記培地が溶媒中に溶解または分散していることを特徴とする請求項48に記載の培地組成物の製造方法。

請求項50

前記高分子化合物がアニオン性官能基を有する高分子化合物である、請求項47に記載の培地組成物の製造方法。

請求項51

前記高分子化合物が脱アシル化ジェランガムまたはその塩である、請求項50に記載の培地組成物の製造方法。

請求項52

前記高分子化合物と培地を、水と混合することを特徴とする請求項47に記載の培地組成物の製造方法。

請求項53

水と混合した後、80〜130℃で加熱することを特徴とする請求項52に記載の培地組成物の製造方法。

請求項54

100〜125℃で加熱することを特徴とする請求項53に記載の培地組成物の製造方法。

請求項55

ろ過滅菌することを特徴とする請求項47に記載の培地組成物の製造方法。

請求項56

前記ろ過滅菌が0.1〜0.5μmのフィルターを通過させることを特徴とする請求項55に記載の培地組成物の製造方法。

請求項57

脱アシル化ジェランガム若しくはその塩、又はダイユータンガム若しくはその塩を含むがん細胞用培地添加剤。

請求項58

がん細胞の培養において、がん細胞の増殖を促進する、請求項57に記載の添加剤

請求項59

抗がん剤の抗がん活性を評価するために用いられる、請求項57に記載の添加剤。

請求項60

請求項57乃至59のいずれか1項に記載の添加剤を含有してなるがん細胞用培地組成物。

請求項61

がん細胞の培養方法であって、請求項57乃至59のいずれか1項に記載の添加剤の存在下又は請求項60に記載の培地組成物中で、該がん細胞を培養することを特徴とする、方法。

請求項62

がん細胞に対する抗がん剤の活性評価方法であって、請求項57乃至59のいずれか1項に記載の添加剤の存在下又は請求項60に記載の培地組成物中で、該がん細胞を培養することを特徴とする、方法。

請求項63

該がん細胞が該がん細胞用培地組成物中において細胞凝集塊を形成していることを特徴とする、請求項61又は62に記載の方法。

請求項64

該がん細胞を培養する際の培養容器ががん細胞の付着を抑制することを特徴とする、請求項61又は62に記載の方法。

請求項65

脱アシル化ジェランガム若しくはその塩、又はダイユータンガム若しくはその塩を含む肝細胞用培地添加剤。

請求項66

肝細胞の培養において、肝細胞数の減少を抑制する、請求項65に記載の添加剤。

請求項67

医薬品及び医薬品候補剤の肝細胞に対する効果を評価するために用いられる、請求項65に記載の添加剤。

請求項68

請求項65乃至67のいずれか1項に記載の添加剤を含有してなる肝細胞用培地組成物。

請求項69

肝細胞に対する医薬品及び医薬品候補剤の活性評価方法であって、請求項65乃至67のいずれか1項に記載の添加剤の存在下又は請求項68に記載の培地組成物中で、該肝細胞を培養することを特徴とする、方法。

請求項70

該肝細胞が該肝細胞用培地組成物中において細胞凝集塊を形成していることを特徴とする、請求項69に記載の方法。

請求項71

該肝細胞を培養する際の培養容器が肝細胞の付着を抑制することを特徴とする、請求項69に記載の方法。

技術分野

0001

本発明は、細胞又は組織を浮遊させることを可能とする構造体を含有する培地組成物、及び当該培地組成物を用いることを特徴とする細胞又は組織の培養方法に関する。本発明の培地組成物及びそれを用いた細胞培養方法は、動植物細胞及び/又は組織を特に浮遊状態にて培養する際に好適に利用することができる。

背景技術

0002

近年、動物植物体内で異なった役割を果たしている様々な器官、組織、及び細胞を生体外にて増殖或いは維持させるための技術が発展してきている。これらの器官、組織を生体外にて増殖或いは維持することは、それぞれ器官培養組織培養と呼ばれており、器官、組織から分離された細胞を生体外にて増殖、分化或いは維持することは細胞培養と呼ばれている。細胞培養は、分離した細胞を培地中で生体外にて増殖、分化或いは維持する技術であり、生体内の各種器官、組織、細胞の機能及び構造を詳細に解析するために不可欠なものとなっている。また、当該技術により培養された細胞及び/又は組織は、化学物質医薬品等薬効及び毒性評価や、酵素細胞増殖因子、抗体等の有用物質大量生産、疾患や欠損により失われた器官、組織、細胞を補う再生医療、植物の品種改良遺伝子組み換え作物の作成等様々な分野で利用されている。

0003

動物由来の細胞は、その性状から浮遊細胞接着細胞に大きく2分される。浮遊細胞は、生育・増殖に足場を必要としない細胞であり、接着細胞は、生育・増殖に足場を必要とする細胞であるが、生体を構成する大部分の細胞は後者の接着細胞である。接着細胞の培養方法としては、単層培養、分散培養、包埋培養、マイクロキャリア培養、及びスフェア培養等が知られている。

0004

単層培養は、ガラス或いは種々の表面処理を行った合成高分子材料から成る培養容器や、フィーダー細胞と呼ばれる補助的な細胞を足場として目的の細胞を単層状に培養する方法であり、最も一般的に普及している。例えば、ポリスチレンに対して種々の表面処理(プラズマ処理コロナ処理等)を施したもの、コラーゲンフィブロネクチンポリリジンなどの細胞接着因子コーティングしたもの、或いはフィーダー細胞を予め播種したもの等、種々の形状又は性状の培養容器を用いた培養方法が開発されている。しかしながら、単層培養は、その二次元培養環境が生体内での環境と全く異なるために細胞が生体内で有している特異的な機能を長期間維持することができない、生体内と同様な組織を再構築する事ができない、一定面積当たり細胞数が制限されるため細胞の大量培養には向かない、等が問題となっている(特許文献1)。また、フィーダー細胞上にて目的の細胞を培養する方法は、フィーダー細胞と目的の細胞との分離が問題となる場合がある(非特許文献1)。

0005

分散培養は、培地中に細胞を播いた後、細胞の付着を阻害する表面処理を施した培養容器中にて、その培養液撹拌し続けることにより細胞の培養容器への接着を阻害し、浮遊状態で接着細胞を培養する方法である。しかしながら、当該方法で培養される接着細胞は足場への接着ができないため、細胞増殖のために足場への接着を必須とする細胞には応用できない。また、せん断力で常時破砕されることにより本来の細胞機能を発揮できないため、機能を有する細胞を大量に培養することができない場合がある(非特許文献2)。

0006

包埋培養は、寒天メチルセルロース、コラーゲン、ゼラチンフィブリンアガロースアルギン酸塩等の固形或いは半固体ゲル基材の中に細胞を埋め込み、固定させて培養する方法である。当該方法は、細胞を生体内に近い形で三次元的に培養することを可能とし、ゲル基材そのものが細胞の増殖や分化を促進する場合もあるため単層培養や分散培養と比較して、細胞の機能を維持したまま細胞を高密度に培養することが可能である(特許文献2、3)。更に、これらのゲル基材を細胞に埋め込んだ状態で大きさ100〜300μmのマイクロカプセルを作成し、当該マイクロカプセルを分散させながら水溶液培地で細胞を培養する方法も開発されている(非特許文献3)。しかしながら、これらの方法は、ゲル基材が可視光を透過しない場合は培養細胞継時的な観察ができない、ゲル基材を含む培地やマイクロカプセルは粘度が高いため当該培地中から細胞を回収するために酵素処理(例えば、コラーゲンゲルの場合はコラゲナーゼ処理)等の煩雑かつ細胞に障害を与える操作を必要とする、長期間培養する際に必要な培地交換が困難である等の問題を有している。近年、熱やせん断力などの処理によりゲル基材から細胞回収が可能となる技術が開発されているが、熱やせん断力等は細胞機能に悪影響を与えることがある上に、当該ゲル基材の生体に対する安全性については未だ明らかにはなっていない(特許文献4、5、非特許文献4、5、6、7)。また、小さくカットした果実野菜等の粒状食品を均一に分散、浮遊させ、その沈殿や浮上を防ぐためのゾル状食品食品分野にて開発されているが、当該ゾル状食品は分散させた粒状食品を回収することは考慮しておらず、細胞や組織を浮遊状態で培養できるかどうかの検討もなされていない(特許文献6)。

0007

マイクロキャリア培養は、水よりも僅かに重い微粒子(以下、マイクロキャリアともいう)の表面上に細胞を単層に増殖させ、当該微粒子をフラスコ等の培養容器内で撹拌し、浮遊状態での培養を行うものである。通常、当該方法で用いるマイクロキャリアは、直径100〜300μm、表面積3000〜6000cm2/g、比重1.03〜1.05の球状粒子であり、デキストラン、ゼラチン、アルギン酸あるいはポリスチレン等の素材により構成されている。マイクロキャリアの表面には細胞が付着しやすいように、コラーゲン、ゼラチンまたはジメチルアミノエチル等の荷電基を付与することもできる。当該方法は、培養面積を極めて増大させることが可能になるため、細胞の大量培養に応用されている(特許文献7、8)。しかしながら、全てのマイクロキャリアで目的とする細胞をほぼ均一に付着させることは困難であり、また、撹拌中のせん断力により細胞がマイクロキャリアから脱離する、細胞が障害を受ける等が問題となっている(非特許文献8)。

0008

スフェア培養は、目的の細胞が、数十〜数百個から成る凝集塊(以下、スフェアともいう)を形成させた後、当該凝集塊を培地中で静置或いは振とうして培養する方法である。スフェアは、細胞密度が高く、生体内環境に近い細胞−細胞間相互作用及び細胞構造体が再構築されており、単層培養、分散培養法よりも細胞機能を長期的に維持したまま培養できることが知られている(非特許文献9、10)。しかしながら、スフェア培養は、スフェアのサイズが大きすぎる場合、スフェア内部の栄養分の供給と老廃物の排出が困難となるため、大きなスフェアを形成させることができない。また、形成したスフェアは培養容器の底面において分散状態で培養する必要があるため、一定体積あたりのスフェア数を増やすことが困難であり、大量培養には向かない。さらに、スフェアの作成方法としては、懸滴培養、細胞非接着表面での培養、マイクロウェル内での培養、回転培養、細胞の足場を利用した培養、遠心力や超音波電場・磁場による凝集などが知られているが、これらの方法は操作が煩雑、スフェアの回収が困難、サイズの制御と大量生産が困難、細胞に対する影響が不明、特殊な専用容器や装置が必要である等が問題となっている(特許文献9)。

0009

一方、植物に関しても細胞、細胞壁を除去したプロトプラストあるいは植物の葉、、根、成長点、種子、花粉などの器官、組織、カルス無菌の状態で培養して増やすことができる。このような植物の組織や細胞の培養技術を用いて、植物の品種改良や有用物質生産も可能となっている。植物の細胞や組織を短期間で大量に増殖させるための手法として、植物細胞や組織を液体培地懸濁培養する方法が知られている(非特許文献11)。それらの良好な増殖を達成するためには、十分な酸素の供給と均一な混合状態の維持、さらに細胞の破損を防ぐ等が重要である。培養液への酸素の供給と細胞や組織の懸濁は、通気機械的攪拌とを組み合わせて行なわれる場合と、通気のみにより行なわれる場合とがあるが、前者は、攪拌による細胞や組織の破損が原因で増殖不良を招く場合があり、一方、後者は細胞や組織のせん断は少ないが、高密度培養では均一な混合状態を維持することが困難となる場合があるため、細胞や組織が沈降して増殖効率が低下する等の問題がある。

0010

さらに、抗がん剤研究開発或いはがん治療における適切な抗がん剤の選択のために、候補薬剤或いは抗がん剤を含有する培養液中でがん細胞を生体外で培養することにより、がん細胞に対する薬剤抗がん活性を評価することが行われている。しかし、既存の抗がん活性の評価方法では、生体外での評価結果と実際の臨床効果に乖離がある等の問題が存在する。当該問題を改善するため、体内環境をできるだけ再現した細胞培養条件にて活性評価を行う手法が開発されてきた。例えば、軟寒天、コラーゲンゲル、ハイドロゲル等の支持体にてがん細胞を包埋することにより、培養容器への接着を阻害した環境でがん細胞を培養し、抗がん剤の評価を行う方法が開発されている(特許文献10、非特許文献12、13)。また、培養容器表面を細胞接着の阻害材料にてコーティングすることや、表面に特殊な加工を施すことにより細胞接着を阻害してがん細胞を凝集させた状態にて培養(スフェア培養)し、抗がん活性の評価を行う方法が開発されている(特許文献11、12)。

0011

しかしながら、これらのがん細胞培養法は、培養容器の作成過程及び細胞培養の操作が煩雑である、コラーゲン等の支持体から細胞を回収して抗がん活性を評価する際の操作が煩雑である、支持体が動物由来の成分である際には高価であるためにその供給が制限される場合がある、細胞凝集塊(スフェア)同士の会合が生じてその大きさが過剰になり細胞生存率や再現性が低くなる等の様々な問題がある。その上、抗がん剤のスクリーニングを実施する際には、簡便かつ均一で、大量のサンプルを処理できる、再現性の高いがん細胞の培養方法が求められている。

0012

加えて、医薬品候補剤或いは医薬品を含有する培養液中で肝細胞を生体外で培養することにより、肝細胞に対する医薬品候補剤或いは医薬品の各種活性を評価することが行われている。しかし、肝細胞を生体外で培養すると本来生体内で有している機能が失われる場合があるため、既存の肝細胞の培養方法では、医薬品候補剤或いは医薬品の正確な評価ができない、多数のサンプルの評価が困難である等の問題が存在した。当該問題を克服するため、体内環境をできるだけ再現した細胞培養条件にて活性評価を行う手法が開発されてきた。例えば、コラーゲン、ラミニンマトリゲル登録商標)等の細胞外マトリックス上にて肝細胞を培養し、肝細胞の機能を維持する方法が開発されている(特許文献13、非特許文献14、15)。また、培養容器表面を細胞接着の阻害材料にてコーティングする、容器表面に特殊な加工を施すことにより細胞接着を阻害する、培養容器を振動させる等の処理により肝細胞の凝集塊(スフェア)を形成させ、肝細胞の機能を維持する方法が開発されている(特許文献14、15、非特許文献16、17)。

0013

しかしながら、これらの肝細胞培養法は、培養容器の作成過程及び細胞培養の操作が煩雑である、コラーゲン等の支持体から細胞を回収して肝細胞機能を評価する際の操作が煩雑である、支持体が動物由来の成分であると高価である故その供給が制限される場合がある、細胞凝集塊(スフェア)同士の会合が生じてその大きさが過剰になるために細胞生存率や再現性が低くなる等の様々な問題がある。その上、医薬品候補剤或いは医薬品のスクリーニングを実施する際には、簡便かつ均一で、大量のサンプルを処理できる、再現性の高い肝細胞の培養方法が求められている。

0014

特開2001−128660号公報
特開昭62−171680号公報
特開昭63−209581号公報
特開2009−29967号公報
特開2005−60570号公報
特開平8−23893号公報
特開2004−236553号公報
国際公開第2010/059775号
特開2012−65555号公報
特開2008−11797号公報
特開2008−61609号公報
特開2012−249547号公報
国際公開第2005/028639号
国際公開第2010/079602号
特開2009−50194号公報

先行技術

0015

Klimanskayaら,Lancet 2005,365:1636−1641
Kingら,Curr Opin Chem Biol. 2007,11:394−398
Muruaら,J.of Controlled Release 2008,132:76−83
Mendes, Chemical Society Reviews 2008,37:2512−2529
Moonら,Chemical Society Reviews2012,41:4860−4883
Pekら,Nature Nanotechnol. 2008,3:671−675
Liuら,Soft Matter 2011,7:5430−5436
Leungら,Tissue Engineering 2011,17:165−172
Stahlら,Biochem.Biophys.Res.Comm. 2004,322:684−692
Linら,Biotechnol J. 2008,3:1172−1184
Weathersら,Appl Microbiol Biotechnol 2010,85:1339−1351
Takamuraら,Int.J.Cancer 2002,98:450−455
Yangら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1979,76:3401−3405
Bissellら,J. Clin. Invest.1987,79:801−812
LeCluyseら,Critical Reviews in Toxicology 2012,42:501−548
Brophyら,Hepatology 2009,49:578−586
Franziskaら,World J Hepatol 2010,2:1−7

発明が解決しようとする課題

0016

本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、動植物細胞及び/又は組織を、特に三次元或いは浮遊状態にて培養するための培地組成物と当該培地組成物を用いた動植物細胞及び/又は組織の培養方法を提供することにある。
また、本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、がん細胞の細胞凝集塊(スフェア)を、三次元環境にて培養するための培地組成物と当該培地組成物を用いたがん細胞の試験方法を提供することにある。
あるいは、本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、肝細胞の細胞凝集塊(スフェア)を、三次元環境にて培養するための培地組成物と当該培地組成物を用いたがん細胞の試験方法を提供することにある。
さらに、本発明の目的は、がん細胞の培養において、がん細胞の増殖を促進する培地添加剤を提供すること、及び、肝細胞の培養において、肝細胞数の減少を抑制する培地添加剤を提供することにある。

課題を解決するための手段

0017

本発明者らは、各種化合物及びそれらを含有する液体培地における細胞及び/又は組織の浮遊効果について鋭意研究した結果、当該液体培地中の粘度を実質的に高めることなく細胞及び/又は組織を浮遊状態で均一に分散させることができる構造体の発見成功した。当該構造体を少なくとも含む培地組成物を用いると、浮遊状態を維持したまま、細胞及び/又は組織が増殖、分化或いは維持できることを見出した。更に、当該培地組成物から、培養した細胞及び/又は組織を容易に回収することができることも見出し、本発明を完成させるに至った。
また、本発明者らは、各種化合物及びそれらを含有する液体培地のがん細胞凝集塊(スフェア)に対する効果について鋭意研究した結果、当該スフェア同士の会合を防ぎ、均一に分散させることができる培地組成物の発見に成功した。当該培地組成物を用いると当該スフェアを生存率高く培養することが可能であり、がん細胞に対する抗がん剤の活性を効率的かつ感度よく評価できることを見出した。更に、当該培地組成物から、培養したスフェアを容易に回収して評価することができることも見出し、本発明を完成させるに至った。
あるいは、本発明者らは、各種化合物及びそれらを含有する液体培地の肝細胞凝集塊(スフェア)に対する効果について鋭意研究した結果、当該スフェア同士の会合を防ぎ、均一に分散させることができる培地組成物の発見に成功した。当該培地組成物を用いると当該スフェアを生存率高く、肝細胞としての機能を維持したまま培養することが可能であり、肝細胞に対する医薬品候補剤或いは医薬品の効果を効率的かつ感度よく評価できることを見出した。更に、当該培地組成物から、培養したスフェアを容易に回収して評価することができることも見出し、本発明を完成させるに至った。
さらに、本発明者らは、がん細胞を含む培地に、脱アシル化ジェランガムまたはその塩を添加したところ、がん細胞の増殖が大きく促進されることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
加えて、本発明者らは、肝細胞を含む培地に、脱アシル化ジェランガムまたはその塩を添加したところ、肝細胞数の減少が抑制されることを見いだし、本発明を完成させるに至った。

0018

すなわち、本発明は下記のとおりである:

0019

(1)細胞または組織を浮遊させて培養できる構造体を含有することを特徴とする培地組成物。
(2)培養時の培地組成物の交換処理及び培養終了後において細胞または組織の回収が可能である(1)記載の培地組成物。
(3)培地組成物からの細胞または組織の回収の際に、温度変化化学処理、酵素処理、せん断力のいずれも必要としない(1)記載の培地組成物。
(4)粘度が、8mPa・s以下であることを特徴とする(1)記載の培地組成物。
(5)前記構造体の大きさが、フィルター濾過した場合、孔径が0.2μm乃至200μmのフィルターを通過するものであることを特徴とする(1)記載の培地組成物。
(6)前記構造体が高分子化合物を含有することを特徴とする(1)記載の培地組成物。(7)前記高分子化合物が、アニオン性官能基を有する高分子化合物を含有することを特徴とする(6)記載の培地組成物。
(8)前記高分子化合物が、多糖類であることを特徴とする(6)記載の培地組成物。
(9)前記アニオン性官能基が、カルボキシ基スルホ基およびリン酸基からなる群から少なくとも1種選択されることを特徴とする(7)記載の培地組成物。
(10)前記多糖類が、ヒアルロン酸ジェランガム、脱アシル化ジェランガム、ラムザンガムダイユータンガムキサンタンガムカラギーナンフコイダンペクチンペクチン酸、ペクチニン酸、ヘパラン硫酸ヘパリンヘパリチン硫酸ケラト硫酸コンドロイチン硫酸デルタマン硫酸、ラムナン硫酸及びそれらの塩からなる群から少なくとも1種選択されることを特徴とする(8)に記載の培地組成物。
(11)前記多糖類が、ヒアルロン酸、脱アシル化ジェランガム、ダイユータンガム、キサンタンガム、カラギーナン及びそれらの塩からなる群から少なくとも1種選択されることを特徴とする(10)に記載の培地組成物。
(12)前記多糖類が、脱アシル化ジェランガムまたはその塩であることを特徴とする(10)又は(11)に記載の培地組成物。
(13)前記脱アシル化ジェランガムまたはその塩の培地組成物に対する最終濃度が、0.001〜1.0%(重量/容量)であることを特徴とする(12)に記載の培地組成物。
(14)さらに、脱アシル化ジェランガムまたはその塩以外の多糖類を含有することを特徴とする(13)に記載の培地組成物。
(15)前記多糖類が、キサンタンガム、アルギン酸、カラギーナン、ダイユータンガム及びそれらの塩からなる群から少なくとも1種選択されることを特徴とする(14)に記載の培地組成物。
(16)前記多糖類が、メチルセルロース、ローカストビーンガム及びそれらの塩からなる群から少なくとも1種選択されることを特徴とする(14)に記載の培地組成物。
(17)さらに、金属イオンを含有することを特徴とする(1)乃至(16)のいずれか1項に記載の培地組成物。
(18)前記金属イオンが、2価の金属イオンであることを特徴とする(17)記載の培地組成物。
(19)前記金属イオンが、カルシウムイオンマグネシウムイオン亜鉛イオン鉄イオンおよび銅イオンからなる群から少なくとも1種選択されることを特徴とする(18)記載の培地組成物。
(20)前記金属イオンが、カルシウムイオンであることを特徴とする(19)記載の培地組成物。
(21)さらに、カルシウムイオン以外の金属イオンを含有することを特徴とする(20)に記載の培地組成物。
(22)前記金属イオンが、マグネシウムイオン、ナトリウムイオンおよびカリウムイオンからなる群から少なくとも1種選択されることを特徴とする(21)記載の培地組成物。
(23)さらに、細胞外マトリックス及び/又は細胞接着分子を含有することを特徴とする(1)乃至(22)のいずれか1項に記載の培地組成物。
(24)前記細胞外マトリックスが、コラーゲン、ヒアルロン酸およびプロテオグリカンからなる群から少なくとも1種選択されることを特徴とする(23)に記載の培地組成物。
(25)前記細胞接着分子が、カドヘリン、ラミニン、フィブロネクチンおよびビトロネクチンからなる群から少なくとも1種選択されることを特徴とする(23)に記載の培地組成物。
(26)細胞培養用である、(1)乃至(25)のいずれか1項に記載の培地組成物。
(27)前記細胞が、接着細胞または浮遊細胞であることを特徴とする(26)に記載の培地組成物。
(28)前記接着細胞が、マイクロキャリアに付着した状態であることを特徴とする(27)に記載の培地組成物。
(29)前記接着細胞が、担体に包埋した状態であることを特徴とする(27)に記載の培地組成物。
(30)前記接着細胞が、スフェアであることを特徴とする(27)に記載の培地組成物。
(31)前記接着細胞が、多能性幹細胞、がん細胞及び肝細胞からなる群から選択されることを特徴とする(27)に記載の培地組成物。
(32)(1)乃至(31)のいずれか1項に記載の培地組成物と、細胞又は組織とを含む、細胞又は組織培養物
(33)(1)乃至(31)のいずれか1項に記載の培地組成物中で細胞または組織を培養することを特徴とする、細胞又は組織の培養方法。
(34)前記細胞が、多能性幹細胞、がん細胞、肝細胞からなる群から選択されることを特徴とする(33)に記載の培養方法。
(35)(32)の培養物から細胞または組織を分離することを特徴とする、細胞又は組織の回収方法
(36)前記分離が、ろ過、遠心または磁性分離で行われることを特徴とする(35)に記載の回収方法。
(37)(1)乃至(31)のいずれか1項に記載の培地組成物中で接着細胞を培養することを特徴とするスフェアの製造方法。
(38)抗がん剤をスクリーニングする方法であって、
(a)被験物質の存在下及び非存在下、請求項1乃至31のいずれか1項に記載の培地組成物中でがん細胞を培養する工程、及び
(b)がん細胞の増殖の変化を解析する工程、を含むことを特徴とする方法。
(39)さらに、被験物質の非存在下の場合と比べて、がん細胞の増殖を抑制する物質を候補物質として選択する工程を含むことを特徴とする、(38)に記載の方法。
(40)肝細胞に作用する医薬品候補物質をスクリーニングする方法であって、
(a)被験物質の存在下及び非存在下、請求項1乃至31のいずれか1項に記載の培地組成物中で肝細胞を培養する工程、及び
(b)肝細胞の生理学的機能の変化を解析する工程、を含むことを特徴とする方法。
(41)さらに、被験物質の非存在下の場合と比べて、肝細胞の生理学的機能を抑制又は増加する物質を候補物質として選択する工程を含むことを特徴とする、(40)に記載の方法。
(42)肝細胞に作用する医薬品候補物質の薬効又は毒性を評価する方法であって、
(a)被験物質の存在下及び非存在下、請求項1乃至31のいずれか1項に記載の培地組成物中で肝細胞を培養する工程、及び
(b)肝細胞の生理学的機能の変化を解析する工程、を含むことを特徴とする方法。
(43)細胞または組織を浮遊させて培養することができる培地組成物を調製するための培地添加剤であって、高分子化合物が溶媒中に溶解または分散していることを特徴とする培地添加剤。
(44)滅菌された状態であることを特徴とする(43)に記載の培地添加剤。
(45)前記高分子化合物がアニオン性官能基を有する高分子化合物である、(43)又は(44)に記載の培地添加剤。
(46)前記高分子化合物が脱アシル化ジェランガムまたはその塩である、(43)又は(44)に記載の培地添加剤。
(47)細胞または組織を浮遊させて培養することが出来る培地組成物の製造方法であって、高分子化合物と培地を混合することを特徴とする培地組成物の製造方法。
(48)(43)乃至(46)のいずれか1項に記載の培地添加剤と培地とを混合することを特徴とする(47)に記載の培地組成物の製造方法。
(49)前記培地が溶媒中に溶解または分散していることを特徴とする(48)に記載の培地組成物の製造方法。
(50)前記高分子化合物がアニオン性官能基を有する高分子化合物である、(47)に記載の培地組成物の製造方法。
(51)前記高分子化合物が脱アシル化ジェランガムまたはその塩である、(50)に記載の培地組成物の製造方法。
(52)前記高分子化合物と培地を、水と混合することを特徴とする(47)に記載の培地組成物の製造方法。
(53)水と混合した後、80〜130℃で加熱することを特徴とする(52)に記載の培地組成物の製造方法。
(54)100〜125℃で加熱することを特徴とする(53)に記載の培地組成物の製造方法。
(55)ろ過滅菌することを特徴とする(47)に記載の培地組成物の製造方法。
(56)前記ろ過滅菌が0.1〜0.5μmのフィルターを通過させることを特徴とする(55)に記載の培地組成物の製造方法。
(57)脱アシル化ジェランガム若しくはその塩、又はダイユータンガム若しくはその塩を含むがん細胞用培地添加剤。
(58)がん細胞の培養において、がん細胞の増殖を促進する、(57)に記載の添加剤
(59)抗がん剤の抗がん活性を評価するために用いられる、(57)に記載の添加剤。(60)(57)乃至(59)のいずれか1項に記載の添加剤を含有してなるがん細胞用培地組成物。
(61)がん細胞の培養方法であって、(57)乃至(59)のいずれか1項に記載の添加剤の存在下又は(60)に記載の培地組成物中で、該がん細胞を培養することを特徴とする、方法。
(62)がん細胞に対する抗がん剤の活性評価方法であって、(57)乃至(59)のいずれか1項に記載の添加剤の存在下又は(60)に記載の培地組成物中で、該がん細胞を培養することを特徴とする、方法。
(63)該がん細胞が該がん細胞用培地組成物中において細胞凝集塊を形成していることを特徴とする、(61)又は(62)に記載の方法。
(64)該がん細胞を培養する際の培養容器ががん細胞の付着を抑制することを特徴とする、(61)又は(62)に記載の方法。
(65)脱アシル化ジェランガム若しくはその塩、又はダイユータンガム若しくはその塩を含む肝細胞用培地添加剤。
(66)肝細胞の培養において、肝細胞数の減少を抑制する、(65)に記載の添加剤。(67)医薬品及び医薬品候補剤の肝細胞に対する効果を評価するために用いられる、(65)に記載の添加剤。
(68)(65)乃至(67)のいずれか1項に記載の添加剤を含有してなる肝細胞用培地組成物。
(69)肝細胞に対する医薬品及び医薬品候補剤の活性評価方法であって、(65)乃至(67)のいずれか1項に記載の添加剤の存在下又は(68)に記載の培地組成物中で、該肝細胞を培養することを特徴とする、方法。
(70)該肝細胞が該肝細胞用培地組成物中において細胞凝集塊を形成していることを特徴とする、(69)に記載の方法。
(71)該肝細胞を培養する際の培養容器が肝細胞の付着を抑制することを特徴とする、(69)に記載の方法。

発明の効果

0020

本発明は、特定の化合物(以下、特定化合物ともいう)、特にアニオン性官能基を有する高分子化合物の構造体を含む培地組成物を提供する。当該培地組成物を用いると、細胞や組織の障害や機能喪失を引き起こすリスクのある振とうや回転等の操作を伴わずに細胞及び/又は組織を浮遊状態にて培養することができる。更に、当該培地組成物を用いると、培養の際、容易に培地を交換することができる上に、培養した細胞及び/又は組織を容易に回収することもできる。本発明は、当該培養方法を、動物生体或いは植物体から採取した細胞及び/又は組織に適用し、目的の細胞及び/又は組織をその機能を損なうことなく大量に調製することができる。そして、当該培養方法で得られる細胞及び/又は組織は、化学物質、医薬品等の薬効及び毒性評価や、酵素、細胞増殖因子、抗体等の有用物質の大量生産、疾患や欠損により失われた器官、組織、細胞を補う再生医療等を実施する際に利用することができる。特に、脱アシル化ジェランガムから作製される培地組成物が優れており、以下の特徴を有している。性能を発現させるための濃度が極めて低いので(1桁程度低い)、培地成分に与える影響が最低限に抑えられる。また、水に溶解させる際にダマになりにくいので、大量に製造する際にも、トラブルが起こりにくい。さらに、性能を発現する濃度域での、粘度が低いので、細胞及び/又は組織の回収等の操作性が極めて良好である。
また、本発明の培地組成物を用いると、がん細胞の凝集塊(スフェア)同士の会合が抑制され、当該スフェアを分散状態にて培養することができるために、がん細胞の増殖を促進することができる。更に、当該培地組成物を用いると、抗がん剤の評価を実施する際に、容易に抗がん剤を培地に添加することができる上に、細胞増殖を評価するための検出試薬を容易に添加することができる。また、培養したがん細胞を回収することができるため、回収した細胞の機能評価を容易に実施することもできる。本発明は、当該培養方法で得られるがん細胞を用いて化学物質、抗がん剤等の薬効評価やスクリーニングを実施する際に好適に利用することができる。
本発明の培地組成物で培養すると、二次元培養における非生体内的環境からの影響が少ないことと細胞同士の接着のみが起こるため、がん化を促進するHB−EGF(ヘパリン結合性上皮成長因子増殖因子)の感受性ががん細胞で高まり、その下流におけるEGF受容体阻害剤に対する感受性を高めることができる。さらにがん細胞足場非依存的な増殖に対する重要なシグナル伝達経路であるMEK阻害剤およびAkt阻害剤に対する感受性も高めることができる。
あるいは、本発明の培地組成物を用いると、肝細胞の凝集塊(スフェア)同士の会合が抑制され、当該スフェアを分散状態にて培養することができるために、肝細胞の生存と細胞機能を生体外で維持することができる。更に、当該培地組成物を用いると、医薬品候補剤或いは医薬品の評価を実施する際に、容易に医薬品候補剤或いは医薬品を培地に添加することができる上に、細胞機能を評価するための検出試薬を容易に添加することができる。また、培養した肝細胞を回収することができるため、回収した細胞の機能評価を容易に実施することもできる。本発明は、当該培養方法で得られる肝細胞を用いて化学物質、医薬品候補剤或いは医薬品等の薬効及び毒性評価やスクリーニングを実施する際に好適に利用することができる。
さらに、本発明の脱アシル化ジェランガムまたはその塩を含む培地添加剤は、がん細胞の培養において、がん細胞の増殖を大きく促進することができる。
加えて、本発明の脱アシル化ジェランガムまたはその塩を含む培地添加剤は、肝細胞の培養において、肝細胞数の減少を抑制することができる。

図面の簡単な説明

0021

本発明の培地組成物でHepG2細胞のスフェアを培養したところ、スフェアが均一に分散され、かつ浮遊状態にて培養できることを示す図である。
本発明の培地組成物でHeLa細胞のスフェアを培養したところ、スフェアが均一に分散され、かつ浮遊状態にて培養できることを示す図である。
本発明の培地組成物でHeLa細胞のスフェアを培養し、本スフェアを顕微鏡観察したところ、既存の培地に比べてスフェア同士の会合が抑えられることを示す図である。
本発明の培地組成物で多能性幹細胞を培養したところ、当該細胞に対する毒性が見られないことを示す図である。
本発明の培地組成物で多能性幹細胞のスフェアを培養したところ、スフェアが均一に分散され、かつ浮遊状態にあることを示す図である。
本発明の培地組成物で多能性幹細胞のスフェアを培養したところ、多能性幹細胞が効率よく増殖することを示す図である。
本発明の培地組成物で培養した多能性幹細胞は、未分化性を維持していることを示す図である。
本発明の培地組成物で浮遊静置培養した多能性幹細胞は、正常核型を保持していることを示す図である。
本発明の培地組成物で培養した多能性幹細胞は、未分化性を維持していることを示す図である。
本発明の培地組成物でHepG2細胞を付着させたマイクロキャリアを培養したところ、HepG2細胞がマイクロキャリア上で増殖できることを示す図である。
本発明の培地組成物にHeLa細胞のスフェアを添加した際に、スフェアが均一に分散され、かつ浮遊状態にあることを示す図である。
本発明の培地組成物によりHeLa細胞のスフェアが形成されることを示す図である。
本発明の構造体の一態様であるフィルムを示す図である。培地組成物に対する脱アシル化ジェランガムの濃度は、0.02%(重量/容量)。
本発明の培地組成物によりHepG2細胞のスフェアが形成されることを示す図である。
HepG2細胞を付着させたラミニンコートGEMを本発明の培地組成物で培養した際の浮遊状態を示す図である。
HepG2細胞を包埋したアルギン酸ビーズを本発明の培地組成物で培養した際の浮遊状態を示す図である。
HepG2細胞を包埋したコラーゲンゲルカプセルを本発明の培地組成物で培養した際の浮遊状態を示す図である。
本発明の培地組成物でイネ由来カルスを培養した際の浮遊状態を示す図である。
本発明の培地組成物でHeLa細胞のスフェアを培養したところ、スフェアが均一に分散され、かつ浮遊状態にて培養できることを示す図である。
本発明の培地組成物でA549細胞及びHCT116細胞のスフェアを培養したところ、スフェアが均一に分散され、かつ浮遊状態にて培養できることを示す図である。
本発明の培地組成物でヒト初代肝細胞を培養したところ、スフェアを形成し培養できることを示す図である。
本発明の培地組成物でカニクイザル初代肝細胞を培養したところ、スフェアを形成し培養できることを示す図である。
本発明の培地組成物でMCF−7細胞を5日間培養した後のMCF−7細胞の凝集塊を示す図である。
本発明の培地組成物でA375細胞およびMNNG/HOS細胞を4日間培養した後の凝集塊を示す図である。
本発明の培地組成物でMIAPaCa−2細胞を6日間培養した後の凝集塊を示す図である。

0022

以下、更に詳細に本発明を説明する。
本明細書において用いる用語につき、以下の通り定義する。

0023

本発明における細胞とは、動物或いは植物を構成する最も基本的な単位であり、その要素として細胞膜の内部に細胞質と各種の細胞小器官をもつものである。この際、DNAを内包する核は、細胞内部に含まれても含まれなくてもよい。例えば、本発明における動物由来の細胞には、精子卵子などの生殖細胞、生体を構成する体細胞幹細胞(多能性幹細胞等)、前駆細胞、生体から分離された癌細胞、生体から分離され不死化能を獲得して体外で安定して維持される細胞(細胞株)、生体から分離され人為的に遺伝子改変が成された細胞、生体から分離され人為的に核が交換された細胞等が含まれる。生体を構成する体細胞の例としては、以下に限定されるものではないが、線維芽細胞骨髄細胞Bリンパ球Tリンパ球好中球赤血球血小板マクロファージ単球骨細胞、骨髄細胞、周皮細胞樹状細胞ケラチノサイト脂肪細胞間葉細胞上皮細胞表皮細胞内皮細胞血管内皮細胞肝実質細胞軟骨細胞卵丘細胞神経系細胞グリア細胞ニューロンオリゴデンドロサイトマイクログリア星状膠細胞心臓細胞食道細胞筋肉細胞(たとえば、平滑筋細胞または骨格筋細胞)、膵臓ベータ細胞メラニン細胞造血前駆細胞(例えば、臍帯血由来のCD34陽性細胞)、及び単核細胞等が含まれる。当該体細胞は、例えば皮膚、腎臓脾臓副腎肝臓卵巣、膵臓、子宮結腸小腸大腸膀胱前立腺精巣胸腺筋肉結合組織、骨、軟骨血管組織、血液(臍帯血を含む)、骨髄心臓、眼、脳または神経組織などの任意の組織から採取される細胞が含まれる。幹細胞とは、自分自身を複製する能力と他の複数系統の細胞に分化する能力を兼ね備えた細胞であり、その例としては、以下に限定されるものではないが、胚性幹細胞ES細胞)、胚性腫瘍細胞胚性生殖幹細胞人工多能性幹細胞iPS細胞)、神経幹細胞造血幹細胞間葉系幹細胞肝幹細胞幹細胞、筋幹細胞、生殖幹細胞、腸幹細胞、癌幹細胞毛包幹細胞などが含まれる。多能性幹細胞としては、前記幹細胞のうち、ES細胞、胚性生殖幹細胞、iPS細胞が挙げられる。前駆細胞とは、前記幹細胞から特定の体細胞や生殖細胞に分化する途中の段階にある細胞である。癌細胞とは、体細胞から派生して無限増殖能を獲得した細胞である。細胞株とは、生体外での人為的な操作により無限の増殖能を獲得した細胞である。

0024

がん組織の例としては、以下に限定されるものではないが、胃がん食道がん大腸がん、結腸がん、直腸がん、膵臓がん乳がん卵巣がん前立腺がん扁平上皮細胞がん、基底細胞がん、腺がん、骨髄がん、腎細胞がん尿管がん、肝がん胆管がん子宮頚がん子宮内膜がん精巣がん小細胞肺がん非小細胞肺がん膀胱がん上皮がん頭蓋咽頭がん喉頭がん、舌がん繊維肉腫粘膜肉腫脂肪肉腫軟骨肉腫骨原性肉腫脊索腫血管肉腫リンパ管肉腫リンパ管内皮肉腫、滑膜腫中皮腫ユーイング腫瘍平滑筋肉腫横紋筋肉腫精上皮腫ウィルムス腫瘍神経膠腫星状細胞腫、骨髄種、髄膜腫黒色腫神経芽細胞腫髄芽腫網膜芽細胞腫悪性リンパ腫、がん患者由来の血液等の組織が挙げられる。がん細胞株の例としては、以下に限定されるものではないが、ヒト乳がん細胞株としてHBC−4、BSY−1、BSY−2、MCF−7、MCF−7/ADR RES、HS578T、MDA−MB−231、MDA−MB−435、MDA−N、BT−549、T47D、ヒト子宮頸がん細胞株としてHeLa、ヒト肺がん細胞株としてA549、EKVX、HOP−62、HOP−92、NCI−H23、NCI−H226、NCI−H322M、NCI−H460、NCI−H522、DMS273、DMS114、ヒト大腸がん細胞株としてCaco−2、COLO−205、HCC−2998、HCT−15、HCT−116、HT−29、KM−12、SW−620、WiDr、ヒト前立腺がん細胞株としてDU−145、PC−3、LNCaP、ヒト中枢神経系がん細胞株としてU251、SF−295、SF−539、SF−268、SNB−75、SNB−78、SNB−19、ヒト卵巣がん細胞株としてOVCAR−3、OVCAR−4、OVCAR−5、OVCAR−8、SK−OV−3、IGROV−1、ヒト腎がん細胞株としてRXF−631L、ACHN、UO−31、SN−12C、A498、CAKI−1、RXF−393L、786−0、TK−10、ヒト胃がん細胞株としてMKN45、MKN28、St−4、MKN−1、MKN−7、MKN−74、皮膚がん細胞株としてLOX−IMVI、LOX、MALME−3M、SK−MEL−2、SK−MEL−5、SK−MEL−28、UACC−62、UACC−257、M14、白血病細胞株としてCCRF−CRM、K562、MOLT−4、HL−60TB、RPMI8226、SR、UT7/TPO、Jurkat、ヒト上皮様癌細胞株として、A431、ヒトメラノーマ細胞株としてA375、ヒト骨肉腫細胞株として、MNNG/HOS、ヒト膵臓癌細胞株として、MIAPaCa−2等が挙げられる。細胞株の例としては、以下に限定されるものではないが、HEK293(ヒト胎児腎細胞)、MDCK、MDBK、BHK、C−33A、AE−1、3D9、Ns0/1、NIH3T3、PC12、S2、Sf9、Sf21、High Five(登録商標)、Vero等が含まれる。

0025

本発明における肝細胞とは、肝臓組織から採取された初代肝細胞のほか、生体外での培養に最適化した条件で継代培養され確立された肝細胞株、及び肝臓以外の組織由来の細胞、iPS細胞やES細胞等の多能性幹細胞、間葉系幹細胞、末梢血由来幹細胞、骨髄幹細胞脂肪幹細胞、肝幹細胞、肝前駆細胞等から生体外にて分化誘導された肝細胞等が挙げられる。肝臓組織は、ヒト、ラットマウスモルモットハムスターウサギブタウシウマイヌネコ、或いはサル等から採取された肝臓であり、正常な肝臓だけでなくがん化した肝臓であってもよい。初代肝細胞は、これらの肝臓からコラゲナーゼを用いた灌流法により分離し、採取することができるが、株式会社プライマリーセル、日本ベクトン・ディキンソン株式会社、タカラバイオ株式会社、北海道システムサイエンス株式会社、ロンジャパン株式会社、株式会社ベリタス、ライフテクノロジーズジャパン株式会社等の試薬会社から購入したものであってもよい。購入する肝細胞は、凍結された状態或いはコラーゲン等の担体に付着した状態でありうる。肝細胞株の例としては、以下に限定されるものではないが、HepG2、Hep3B、HepaRG(登録商標)、JHH7、HLF、HLEPLC/PRF/5、WRL68、HB611、SK−HEP−1、HuH−4、HuH−7等が挙げられる。

0026

本発明における肝細胞の機能とは、特に制限されないが、CYP1A1、CYP1A2、CYP2A6、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP2E1、CYP3A4、CYP3A5等のシトクロムP450(CYPともいう)活性の発現並びに本酵素による医薬品等の代謝、グルクロン酸グルタチオン、硫酸、グリシン等による医薬品等の抱合アルブミンアポリポ蛋白質トロンボポイエチン等の有用蛋白質生産ビリルビン分泌尿素の合成、胆汁酸脂肪酸の合成、トランスポーターによる医薬品等の輸送等が含まれる。本発明における実施形態では、肝細胞は上記の機能の内、チトクロムP450の活性、アルブミンの生産及び/又はトランスポーターによる医薬品等の輸送(例えばCarboxydichlorofluorescein diacetate、Tetraethylammonium Bromide、Taurocholate、Rosvastatinの取り込みやCarboxydichlorofluoresceinの排泄)を維持していることが好ましい。

0027

本発明における医薬品には、医療の用に供される物質全てが含まれる。医薬品候補剤とは、医薬品の候補として探索或いは開発研究がなされている物質であり、合成化合物、蛋白質、核酸、糖類、天然物等が挙げられる。

0028

本発明における抗がん剤とは、がん細胞に直接的に作用してがん細胞の増殖や機能を抑制する薬剤の他、がん細胞に直接的には作用しないが、生体内の免疫細胞又はその他の薬剤との協働的な作用により、がん細胞の増殖又は機能を抑制する、又はがん細胞を死滅させる薬剤も含まれる。この様な抗がん剤の例としては、特に制限されないが、アルキル化剤白金誘導体、5FU系抗がん剤に代表される代謝拮抗剤トポイソメラーゼ阻害剤微小管阻害剤エピルビシンに代表される抗がん抗生物質ゲフィチニブトラスツズマブセツキシマブエルロチニブパニツムマブラパチニブテムシロリムスエベロリムスイピリムマブバンデタニブクリゾチニブ、ルキソリニブトラメチニブに代表される分子標的薬などが挙げられる。分子標的薬の標的分子としては、特に制限されないが、各種キナーゼ、Her2、EGFR上皮成長因子受容体)、PI3K(ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ)、mTOR(哺乳類ラパマイシン標的タンパク質)、Akt、CDK(サイクリン依存キナーゼ)、VEGFR(血管内皮細胞増殖因子受容体)、PDGFR(血小板由来成長因子受容体)、FGFR(線維芽細胞成長因子受容体)、c−Met、Raf、p38MAPK、CTLA−4、ALK、JAK、MEK(MAPK/ERKキナーゼ)、Hsp90、ヒストンデアセチラーゼ等が挙げられる。更に、この様な効果を有する薬剤の候補となる合成化合物、蛋白質、核酸、糖類、天然物等も本発明における抗がん剤に含まれる。

0029

本発明における植物由来の細胞には、植物体の各組織から分離した細胞が含まれ、当該細胞から細胞壁を人為的に除いたプロトプラストも含まれる。

0030

本発明における組織とは、何種類かの異なった性質や機能を有する細胞が一定の様式で集合した構造の単位であり、動物の組織の例としては、上皮組織、結合組織、筋組織、神経組織等が含まれる。植物の組織の例としては、分裂組織表皮組織同化組織葉肉組織、通道組織機械組織柔組織脱分化した細胞塊(カルス)等が含まれる。

0031

細胞及び/又は組織を本発明の方法で培養するに際し、培養する細胞及び/又は組織は、前記に記載した細胞及び/又は組織から任意に選択して培養することができる。細胞及び/又は組織は、動物或いは植物体より直接採取することができる。細胞及び/又は組織は、特定の処理を施すことにより動物或いは植物体から誘導させたり、成長させたり、または形質転換させた後に採取してもよい。この際、当該処理は生体内であっても生体外であってもよい。動物としては、例えば昆虫魚類両生類爬虫類鳥類、汎甲殻類六脚類、哺乳類等が挙げられる。哺乳動物の例としては、限定されるものではないが、ラット、マウス、ウサギ、モルモット、リス、ハムスター、ハタネズミカモノハシイルカクジラ、イヌ、ネコ、ヤギ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ゾウコモンマーモセットリスザルアカゲザルチンパンジーおよびヒトが挙げられる。植物としては、採取した細胞及び/又は組織が液体培養可能なものであれば、特に限定はない。例えば、生薬類(例えば、サポニンアルカロイド類ベルベリンスコポリン植物ステロール等)を生産する植物(例えば、薬用人参ニチニチソウヒヨスオウレンベラドンナ等)や、化粧品食品原料となる色素多糖体(例えば、アントシアニンベニバナ色素アカネ色素サフラン色素、フラボン類等)を生産する植物(例えば、ブルーベリー紅花セイヨウアカネ、サフラン等)、或いは医薬品原体を生産する植物、飼料又は食品となる植物(イネ、トウモロコシコムギ又はオオムギ等)などがあげられるが、それらに限定されない。

0032

本発明における細胞及び/又は組織の浮遊とは、培養容器に対して細胞及び/又は組織が接着しない状態(非接着)であることをいう。さらに、本発明において、細胞及び/又は組織を増殖、分化或いは維持させる際、液体培地組成物に対する外部からの圧力や振動或いは当該組成物中での振とう、回転操作等を伴わずに細胞及び/又は組織が当該液体培地組成物中で均一に分散し尚且つ浮遊状態にある状態を「浮遊静置」といい、当該状態で細胞及び/又は組織を培養することを「浮遊静置培養」という。また、「浮遊静置」において浮遊させることのできる期間としては、少なくとも5〜60分、1時間〜24時間、1日〜21日、が含まれるが、浮遊状態を保つ限りこれらの期間に限定されない。

0033

本発明の培地組成物は、細胞または組織を浮遊させて培養できる(好ましくは浮遊静置培養できる)構造体と培地を含有する組成物である。
本発明の培地組成物は、好ましくは、培養時の培地組成物の交換処理及び培養終了後において、培地組成物からの細胞または組織の回収が可能である組成物であり、より好ましくは、培地組成物からの細胞または組織の回収の際に、温度変化、化学処理、酵素処理、せん断力のいずれも必要としない組成物である。
本発明における構造体とは、特定化合物から形成されたもので、細胞及び/又は組織を均一に浮遊させる効果を示すものである。より詳細には、高分子化合物がイオンを介して集合したもの、あるいは、高分子化合物が三次元のネットワークを形成したもの等が含まれる。また、多糖類が金属イオンを介してマイクロゲルを形成することは公知であり(例えば、特開2004−129596号公報)、本発明の構造体には、一態様として当該マイクロゲルも含まれる。
また、高分子化合物がイオンを介して集合したものとしては、その一態様としてフィルム状の構造体が挙げられる。当該フィルムを図13に例示する。
本発明における構造体の大きさは、フィルターで濾過した場合、孔径が0.2μm乃至200μmのフィルターを通過するものが好ましい。当該孔径の下限としては、より好ましくは、1μmを超えるものであり、安定に細胞または組織を浮遊させることを考慮すると、さらに好ましくは5μmを超えるものである。当該孔径の上限としては、より好ましくは、100μm以下のもの、細胞または組織の大きさを考慮すると、さらに好ましくは70μm以下のものである。
本発明における特定化合物とは、特定化合物を液体培地と混合した際、不定形な構造体を形成し、当該構造体が当該液体中で均一に分散し、当該液体の粘度を実質的に高めること無く細胞及び/又は組織を実質的に保持し、その沈降を防ぐ効果を有するものである。「液体の粘度を実質的に高めない」とは、液体の粘度が8mPa・sを上回らないことを意味する。この際の当該液体の粘度(すなわち、本発明の培地組成物の粘度)は、8mPa・s以下であり、好ましくは4mPa・s以下であり、より好ましくは2mPa・s以下である。さらに、当該構造体を液体培地中に形成し、当該液体の粘度を実質的に高めること無く細胞及び/又は組織を均一に浮遊させる(好ましくは浮遊静置させる)効果を示すものであれば、特定化合物の化学構造分子量、物性等は何ら制限されない。
構造体を含む液体の粘度は、例えば後述の実施例に記載の方法で測定することができる。具体的には37℃条件下でE型粘度計(東機産業株式会社製、TV−22型粘度計、機種:TVE−22L、コーンロータ標準ロータ1°34´×R24、回転数100rpm)を用いて測定することができる。

0034

本発明に用いる特定化合物の例としては、特に制限されるものではないが、高分子化合物が挙げられ、好ましくはアニオン性官能基を有する高分子化合物が挙げられる。
アニオン性の官能基としては、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基及びそれらの塩が挙げられ、カルボキシ基またはその塩が好ましい。
本発明に用いる高分子化合物は、前記アニオン性の官能基の群より選択される1種又は2種以上を有するものを使用できる。
本発明に用いる高分子化合物の好ましい具体例としては、特に制限されるものではないが、単糖類(例えば、トリオーステトロースペントースヘキソースヘプトース等)が10個以上重合した多糖類が挙げられ、より好ましくは、アニオン性の官能基を有する酸性多糖類が挙げられる。ここにいう酸性多糖類とは、その構造中にアニオン性の官能基を有すれば特に制限されないが、例えば、ウロン酸(例えば、グルクロン酸、イズロン酸ガラクツロン酸マンヌロン酸)を有する多糖類、構造中の一部に硫酸基又はリン酸基を有する多糖類、或いはその両方の構造を持つ多糖類であって、天然から得られる多糖類のみならず、微生物により産生された多糖類、遺伝子工学的に産生された多糖類、或いは酵素を用いて人工的に合成された多糖類も含まれる。より具体的には、ヒアルロン酸、ジェランガム、脱アシル化ジェランガム(以下、DAGという場合もある)、ラムザンガム、ダイユータンガム、キサンタンガム、カラギーナン、ザンタンガムヘキスロン酸、フコイダン、ペクチン、ペクチン酸、ペクチニン酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ヘパリチン硫酸、ケラト硫酸、コンドロイチン硫酸、デルタマン硫酸、ラムナン硫酸及びそれらの塩からなる群より1種又は2種以上から構成されるものが例示される。多糖類は、好ましくは、ヒアルロン酸、DAG、ダイユータンガム、キサンタンガム、カラギーナン又はそれらの塩であり、低濃度の使用で細胞又は組織を浮遊させることができ、かつ細胞又は組織の回収のしやすさを考慮すると、最も好ましくは、DAGである。
ここでいう塩とは、例えば、リチウムナトリウムカリウムといったアルカリ金属の塩、カルシウムバリウムマグネシウムといったアルカリ土類金属の塩又はアルミニウム亜鉛、銅、鉄、アンモニウム有機塩基及びアミノ酸等の塩が挙げられる。
これらの高分子化合物(多糖類等)の重量平均分子量は、好ましくは10,000乃至50,000,000であり、より好ましくは100,000乃至20,000,000、更に好ましくは1,000,000乃至10,000,000である。例えば、当該分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるプルラン換算で測定できる。
さらに、後述の実施例で記載するように、DAGはリン酸化したものを使用することもできる。当該リン酸化は公知の手法で行うことができる。

0035

本発明においては、上記多糖類を複数種(好ましくは2種)組み合わせて使用することができる。多糖類の組み合わせの種類は、上述の構造体を液体培地中に形成し、当該液体培地の粘度を実質的に高めること無く細胞及び/又は組織を均一に浮遊させる(好ましくは浮遊静置させる)ことのできるものあれば特に限定されないが、好ましくは、当該組合せは少なくともDAG又はその塩を含む。即ち、好適な多糖類の組合せには、DAG又はその塩、及びDAG又はその塩以外の多糖類(例、キサンタンガム、アルギン酸、カラギーナン、ダイユータンガム、メチルセルロース、ローカストビーンガム又はそれらの塩)が含まれる。具体的な多糖類の組み合わせとしては、DAGとラムザンガム、DAGとダイユータンガム、DAGとキサンタンガム、DAGとカラギーナン、DAGとザンタンガム、DAGとローカストビーンガム、DAGとκ−カラギーナン、DAGとアルギン酸ナトリウム、DAGとメチルセルロース等が挙げられるが、これらに限定されない。

0036

本発明に用いる特定化合物の更に好ましい具体例としては、ヒアルロン酸、脱アシル化ジェランガム、ダイユータンガム、カラギーナン及びキサンタンガム及びそれらの塩が挙げられ、培地組成物の粘度を低くできる点と細胞または組織の回収のしやすさの点を考慮すると、最も好ましい例としては脱アシル化ジェランガムまたはその塩が挙げられる。
本発明における脱アシル化ジェランガムとは、1−3結合したグルコース、1−4結合したグルクロン酸、1−4結合したグルコース及び1—4結合したラムノースの4分子の糖を構成単位とする直鎖状高分子多糖類であり、以下の一般式(I)において、R1、R2が共に水素原子であり、nは2以上の整数で表わされる多糖類である。ただし、R1がグリセリル基を、R2がアセチル基を含んでいてもよいが、アセチル基及びグリセリル基の含有量は、好ましくは10%以下であり、より好ましくは1%以下である。
本発明における構造体は特定化合物により様々な形態となるが、脱アシル化ジェランガムの場合について記載すると、脱アシル化ジェランガムは、液体培地と混合した際に、液体培地中の金属イオン(例えば、カルシウムイオン)を取り込み、当該金属イオンを介した不定形な構造体を形成し、細胞及び/又は組織を浮遊させる。脱アシル化ジェランガムから調製される本発明の培地組成物の粘度は、8mPa・s以下であり、好ましくは4mPa・s以下であり、細胞または組織の回収のしやすさの点を考慮すると、より好ましくは2mPa・s以下である。

0037

0038

本発明における特定化合物は、化学合成法でも得ることができるが、当該化合物が天然物である場合は、当該化合物を含有している各種植物、各種動物、各種微生物から慣用技術を用いて抽出及び分離精製することにより得るのが好適である。その抽出においては、水や超臨界ガスを用いると当該化合物を効率よく抽出できる。例えば、ジェランガムの製造方法としては、発酵培地生産微生物を培養し、菌体外に生産された粘膜物を通常の精製方法にて回収し、乾燥、粉砕等の工程後、粉末状にすればよい。また、脱アシル化ジェランガムの場合は、粘膜物を回収する際にアルカリ処理を施し、1−3結合したグルコース残基に結合したグリセリル基とアセチル基を脱アシル化した後に回収すればよい。精製方法としては、例えば、液−液抽出分別沈澱結晶化、各種のイオン交換クロマトグラフィーセファデックスLH−20等を用いたゲル濾過クロマトグラフィー活性炭シリカゲル等による吸着クロマトグラフィーもしくは薄層クロマトグラフィーによる活性物質吸脱着処理、あるいは逆相カラムを用いた高速液体クロマトグラフィー等を単独あるいは任意の順序に組み合わせ、また反復して用いることにより、不純物を除き精製することができる。ジェランガムの生産微生物の例としては、これに限定されるものではないが、スフィンゴモナスエロディア(Sphingomonas elodea)及び当該微生物の遺伝子を改変した微生物が挙げられる。
そして、脱アシル化ジェランガムの場合、市販のもの、例えば、三晶株式会社製「KECOGEL(シーピー・ケルコ社の登録商標)CG−LA」、三栄源エフエフアイ株式会社製「ケルコゲル(シーピー・ケルコ社の登録商標)」等を使用することができる。また、ネイティブ型ジェランガムとして、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製「ケルコゲル(シーピー・ケルコ社の登録商標)HT」等を使用することができる。

0039

培地中での特定化合物の濃度は、特定化合物の種類に依存し、特定化合物が上述の構造体を液体培地中に形成し、当該液体培地の粘度を実質的に高めること無く細胞及び/又は組織を均一に浮遊させる(好ましくは浮遊静置させる)ことのできる範囲で、適宜設定することができるが、通常0.0005%乃至1.0%(重量/容量)、好ましくは0.001%乃至0.4%(重量/容量)、より好ましくは0.005%乃至0.1%(重量/容量)、さらに好ましくは0.005%乃至0.05%(重量/容量)となるようにすれば良い。例えば、脱アシル化ジェランガムの場合、0.001%乃至1.0%(重量/容量)、好ましくは0.003%乃至0.5%(重量/容量)、より好ましくは0.005%乃至0.1%(重量/容量)、更に好ましくは0.01%乃至0.05%(重量/容量)、最も好ましくは、0.01%乃至0.03%(重量/容量)培地中に添加すれば良い。キサンタンガムの場合、0.001%乃至5.0%(重量/容量)、好ましくは0.01%乃至1.0%(重量/容量)、より好ましくは0.05%乃至0.5%(重量/容量)、最も好ましくは、0.1%乃至0.2%(重量/容量)培地中に添加すれば良い。κ−カラギーナンおよびローカストビーンガム混合系の場合、0.001%乃至5.0%(重量/容量)、好ましくは0.005%乃至1.0%(重量/容量)、より好ましくは0.01%乃至0.1%(重量/容量)、最も好ましくは、0.03%乃至0.05%(重量/容量)培地中に添加すれば良い。ネイティブ型ジェランガムの場合、0.05%乃至1.0%(重量/容量)、好ましくは、0.05%乃至0.1%(重量/容量)培地中に添加すれば良い。

0040

上記多糖類を複数種(好ましくは2種)組み合わせて使用する場合、当該多糖類の濃度は、当該多糖類の組み合わせが上述の構造体を液体培地中に形成し、当該液体培地の粘度を実質的に高めること無く細胞及び/又は組織を均一に浮遊させる(好ましくは浮遊静置させる)ことのできる範囲で、適宜設定することができる。例えば、DAG又はその塩と、DAG又はその塩以外の多糖類との組合せを用いる場合、DAG又はその塩の濃度としては0.005〜0.02%(重量/容量)、好ましくは0.01〜0.02%(重量/容量)が例示され、DAG又はその塩以外の多糖類の濃度としては、0.005〜0.4%(重量/容量)、好ましくは0.1〜0.4%(重量/容量)が例示される。具体的な濃度範囲の組合せとしては、以下が例示される。
DAG又はその塩:0.005〜0.02%(好ましくは0.01〜0.02%)(重量/容量)
DAG以外の多糖類
キサンタンガム:0.1〜0.4%(重量/容量)
アルギン酸ナトリウム:0.1〜0.4%(重量/容量)
ローカトビーンガム:0.1〜0.4%(重量/容量)
メチルセルロース:0.1〜0.4%(重量/容量)(好ましくは0.2〜0.4%(重量/容量))
カラギーナン:0.05〜0.1%(重量/容量)
ダイユータンガム:0.05〜0.1%(重量/容量)

0041

なお該濃度は、以下の式で算出できる。
濃度(%)=特定化合物の重量(g)/培地組成物の容量(ml)×100

0042

前記化合物は、化学合成法によってさらに別の誘導体に変えることもでき、そのようにして得た当該誘導体も、本発明において有効に使用できる。具体的には、脱アシル化ジェランガムの場合、その一般式(I)で表される化合物のR1及び/又はR2に当たる水酸基を、C1−3アルコキシ基、C1−3アルキルスルホニル基、グルコースあるいはフルクトースなどの単糖残基スクロースラクトースなどのオリゴ糖残基、グリシン、アルギニンなどのアミノ酸残基などに置換した誘導体も本発明に使用できる。また、1−ethyl−3−(3−di−methylaminopropyl)carbodiimide(EDC)等のクロスリンカーを用いて当該化合物を架橋することもできる。

0043

本発明に使用される特定化合物或いはその塩は製造条件により任意の結晶形として存在することができ、任意の水和物として存在することができるが、これら結晶形や水和物及びそれらの混合物も本発明の範囲に含有される。また、アセトンエタノールテトラヒドロフランなどの有機溶媒を含む溶媒和物として存在することもあるが、これらの形態はいずれも本発明の範囲に含有される。

0044

本発明に使用される特定化合物は、環内或いは環外異性化により生成する互変異性体幾何異性体、互変異性体若しくは幾何異性体の混合物、又はそれらの混合物の形で存在しもよい。本発明の化合物は、異性化により生じるか否かに拘わらず、不斉中心を有する場合は、分割された光学異性体或いはそれらを任意の比率で含む混合物の形で存在してよい。

0045

本発明の培地組成物には、金属イオン、例えば2価の金属イオン(カルシウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、鉄イオンおよび銅イオン等)が存在してもよく、好ましくはカルシウムイオンを含有する。当該金属イオンは、例えばカルシウムイオンとマグネシウムイオン、カルシウムイオンと亜鉛イオン、カルシウムイオンと鉄イオン、カルシウムイオンと銅イオンのように、2種類以上を組み合わせて使用することができる。当業者は適宜その組み合わせを決定することができる。一態様において、培地組成物に金属イオンが含まれることにより、高分子化合物が金属イオンを介して集合し、高分子化合物が三次元ネットワークを形成することにより(例えば、多糖類が金属イオンを介してマイクロゲルを形成することにより)本発明の構造体が形成される。金属イオンの濃度は、特定化合物が上述の構造体を液体培地中に形成し、当該液体培地の粘度を実質的に高めること無く細胞及び/又は組織を均一に浮遊させる(好ましくは浮遊静置させる)ことのできる範囲で、適宜設定することができる。塩濃度は0.1mM及至300mMで、好ましくは、0.5mM及至100mMであるが、これらに限定されない。当該金属イオンは、培地と共に混合する、あるいは、塩溶液別途調製しておき、培地に添加してもよい。また本発明の培地組成物には、後述の細胞外マトリックス、接着分子等を含んでもよい。
本発明は、当該培地組成物を用いて、細胞又は組織を増殖させる培養方法、得られる細胞又は組織を、例えばろ過、遠心又は磁性分離により、回収する方法、当該培地組成物を用いて、スフェアを製造する方法も含む。

0046

本発明で用いる特定化合物から構成された構造体は、細胞及び/又は組織を生体外で培養した時に、当該細胞及び/又は組織を、当該特定化合物の構造体を含有する液体中で浮遊させる効果(好ましくは浮遊静置させる効果)を示すものである。当該浮遊効果により、単層培養に比べて、一定体積あたりの細胞及び/又は組織を増やして培養することが可能である。また、従来の浮遊培養方法において回転や振とう操作を伴う場合、細胞及び/又は組織に対するせん断力が働くため、細胞及び/又は組織の増殖率回収率が低い、或いは細胞の機能が損なわれてしまう場合があるが、本発明の特定化合物の構造体を含有する培地組成物を用いることにより振とう等の操作を行わずに細胞及び/又は組織を均一に分散することができるため、目的とする細胞及び/又は組織を細胞機能の損失無く容易かつ大量に取得することができる。また、従来のゲル基材を含む培地において細胞及び/又は組織を浮遊培養する際、細胞及び/又は組織の観察や回収が困難であったり、回収の際にその機能を損なったりする場合があるが、本発明の特定化合物の構造体を含有する培地組成物を用いることにより、細胞及び/又は組織を浮遊培養し、その機能を損なうこと無く観察し、回収することができる。また、従来のゲル基材を含む培地は、粘度が高く培地の交換が困難である場合があるが、本発明の特定化合物の構造体を含有する培地組成物は、低粘度であるためピペットポンプ等を用いて容易に培地を交換することができる。

0047

本発明の方法により培養されたヒト由来の細胞及び/又は組織は、疾患や障害を有する患者に対し治療目的にて移植することができる。この際、治療の対象とする疾患や障害の種類、前処置方法並びに細胞移植方法は、当事者により適宜選択される。移植された細胞のレシピエントへの生着と疾患や障害からの回復や、移植に伴う副作用の有無、治療の効果は、移植治療における一般的な方法により適宜検査され、判断することができる。

0048

さらに、本発明の方法により細胞及び/又は組織が効率よく増殖されるため、本発明における特定化合物及びその構造体を含有する培地組成物は細胞の研究用試薬として用いることができる。例えば、細胞や組織の分化や増殖を調節する因子解明する際、細胞と目的の因子を共存させて培養した時の細胞の数や種類、細胞表面分化マーカー発現遺伝子の変化を解析するが、この際に本発明の培地組成物を用いることにより解析対象となる細胞の数を効率よく増幅するだけでなく、効率よく回収することができる。目的とする因子を解明する際の培養条件培養装置、培地の種類、本発明化合物の種類、特定化合物の含量、添加物の種類、添加物の含量、培養期間、培養温度などは、本明細書に記載した範囲から当事者により適宜選択される。培養により増殖或いは出現した細胞は、当該分野にて標準的な顕微鏡を用いて観察することができる。この際、培養した細胞について特異的抗体を用いて染色してもよい。目的の因子により変化した発現遺伝子は、培養した細胞からDNA(デオキシリボ核酸)或いはRNA(リボ核酸)を抽出しサザンブロッティング法、ノーザンブロッティング法、RTPCR法などによって検出することができる。また、細胞表面分化マーカーは、特異的抗体を用いてELISAフローサイトメトリーにより検出し、目的の因子による分化や増殖に対する効果を観察することができる。

0049

本発明の培養方法を用いて細胞及び/又は組織を培養する際には、細胞の培養に一般的に用いられるシャーレ、フラスコ、プラスチックバックテフロン(登録商標)バックディッシュ、ペトリデッシュ、組織培養用ディッシュ、マルチディッシュ、マイクロプレートマイクロウエルプレートマルチプレートマルチウエルプレートチャンバースライド細胞培養フラスコスピナーフラスコチューブトレイ培養バックローラーボトル等の培養器材を用いて培養することが可能である。これらの培養器材の材質は特に制限されないが、例えば、ガラス、ポリ塩化ビニルエチルセルロースアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレートポリカーボネートポリスルホンポリウレタンポリエステルポリアミド、ポリスチレン、ポリプロピレンポリエチレンポリブタジエンポリエチレンビニルアセテートコポリマー、ポリ(ブタジエンスチレン)コポリマー、ポリ(ブタジエン−アクリロニトリル)コポリマー、ポリ(エチレン−エチルアクリレート)コポリマー、ポリ(エチレン−メタアクリレート)コポリマー、ポリクロロプレンスチロール樹脂クロロスルフォン化ポリエチレンエチレン酢酸ビニルアクリル系ブロックコポリマー等のプラスチック等が挙げられる。これらのプラスチックは、酸素や二酸化炭素等のガス透過性に優れるだけでなく、工業的に成形加工性に優れ、各種の滅菌処理に耐えうるものであり、かつ培養器材内部の様子を観察することができる透明性の材質であることが好ましい。ここで、滅菌処理を施す方法は特に制限はなく、例えば、放射線滅菌エチレンオキサイドガス滅菌オートクレーブ滅菌等が挙げられる。また、これらのプラスチックに対して種々の表面処理(例えば、プラズマ処理、コロナ処理等)を施してもよい。更に、これらの培養器材に対しては、予め細胞外マトリックスや細胞接着分子などをコーティングしてもよい。このようなコーティング材料としては、コラーゲンI乃至XIX、ゼラチン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン−1乃至12、ニトジェン、テネイシントロンボスポンジンフォンビルブランド(von Willebrand)因子、オステオポンチンフィブリノーゲン、各種エラスチン、各種プロテオグリカン、各種カドヘリン、デスモコリンデスモグレイン、各種インテグリン、E−セレクチン、P−セレクチン、L−セレクチン、免疫グロブリン、ヒアルロン酸、スーパーファミリー、マトリゲル、ポリ−D−リジンポリ−L−リジンキチンキトサンセファロースアルギン酸ゲル、ハイドロゲル、さらにこれらの切断断片などが挙げられる。これらのコーティング材料は、遺伝子組換え技術によりアミノ酸配列を人為的に改変させたものも使用することできる。また、細胞及び/又は組織の培養器材に対する接着を阻害するためのコーティング材料を用いることもできる。このようなコーティング材料としては、シリコン、ポリ(2−ヒドロキシメチルメタクリレート)、ポリ(2−メトキシメチルアクリレート)、ポリ(2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミドメビオールジェル(登録商標)等が挙げられるが、これらに限られるわけではない。

0050

細胞及び/又は組織の培養は、機械的な制御下のもと閉鎖環境下で細胞播種、培地交換、細胞画像取得、培養細胞回収を自動で実行し、pH、温度、酸素濃度などを制御しながら、高密度での培養が可能なバイオリアクター自動培養装置によって行うこともできる。これら装置を用いて培養の途中に新しい培地を補給し、要求する物質を過不足なく細胞及び/又は組織に供給する手法として、流加培養連続培養及び灌流培養があるが、いずれの手法も本発明の培養方法に用いることができる。また、バイオリアクターや自動培養装置に用いられる培養容器には、開閉が容易で外界との接触面積が大きい開放系培養容器(例えば蓋を有する培養容器)と、開閉が容易ではなく外界との接触面積の小さい閉鎖系培養容器(例えばカートリッジ型培養容器)があるが、いずれの培養容器も本発明の培養方法に用いることができる。

0051

本発明における特定化合物を用いて細胞及び/又は組織を培養する際には、細胞及び/又は組織を培養する際に用いられる培地と特定化合物を混合して培地組成物を調製することができる。このような培地の組成による分類では天然培地半合成培地合成培地、また、形状による分類では半固形培地、液体培地、粉末培地(以下、粉培地という場合もある)などが挙げられる。細胞及び/又は組織が動物由来である場合、動物細胞の培養に用いられる培地であればいずれも用いることができる。このような培地としては、例えばダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagles’s Medium;DMEM)、ハムF12培地(Ham’s Nutrient Mixture F12)、DMEM/F12培地、マッコイ5A培地(McCoy’s 5A medium)、イーグルMEM培地(Eagles’s Minimum Essential Medium;EMEM)、αMEM培地(alpha Modified Eagles’s Minimum Essential Medium;αMEM)、MEM培地(Minimum Essential Medium)、RPMI1640培地、イスコフ改変ダルベッコ培地(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium;IMDM)、MCDB131培地、ウィリアム培地E、IPL41培地、Fischer‘s培地、StemPro34(インビトロジェン社製)、X−VIVO 10(ケンブレクス社製)、X−VIVO 15(ケンブレックス社製)、HPGM(ケンブレックス社製)、StemSpan H3000(ステムセルテクノロジー社製)、StemSpanSFEM(ステムセルテクノロジー社製)、StemlineII(シグマアルドリッチ社製)、QBSF−60(クオリティバイオロジカル社製)、StemProhESCSFM(インビトロジェン社製)、Essential8(登録商標)培地(ギブコ社製)、mTeSR1或いは2培地(ステムセルテクノロジー社製)、リプFF或いはリプロFF2(リプロセル社製)、PSGro hESC/iPSC培地(システムバイオサイエンス社製)、NutriStem(登録商標)培地(バイオロジカルインダストリーズ社製)、CSTI−7培地(細胞科学研究所社製)、MesenPRO RS培地(ギブコ社製)、MF−Medium(登録商標)間葉系幹細胞増殖培地東洋紡株式会社製)、Sf−900II(インビトロジェン社製)、Opti−Pro(インビトロジェン社製)、などが挙げられる。

0052

がん細胞の培養に用いられる培地には、上記培地に、細胞接着因子を含むことが可能であり、その例としては、マトリゲル、コラーゲンゲル、ゼラチン、ポリ−L−リジン、ポリ−D−リジン、ラミニン、フィブロネクチンが挙げられる。これらの細胞接着因子は、2種類以上を組み合わせて添加することもできる。また更に、がん細胞スフェアの培養に用いられる培地に対してグァーガムタマリンドガムアルギン酸プロピレングリコールエステル、ローカストビーンガム、アラビアガムタラガム、タマリンドガム、メチルセルロース等の増粘剤を更に混合することができる。

0053

肝細胞の培養に用いられる培地としては、上記培地に加えて、HepatoZYME−SFM(ライフテクノロジーズ社製)、HCM(登録商標)−肝細胞培養培地BulletKit(登録商標、ロンザ社製)、HBM(登録商標)−肝細胞基本培地(ロンザ社製)、HMM(登録商標)−肝細胞メンテナンス培地(ロンザ社製)、変法ランフォード培地(日水製薬株式会社製)、ISOM’s培地、肝細胞増殖培地(タカラバイオ株式会社製)、肝細胞維持培地(タカラバイオ株式会社製)、肝細胞基本培地(タカラバイオ株式会社製)、活性維持スーパー培地(In Vitro ADMET Laboratories社製)などが挙げられる。これらの培地には細胞接着因子を含むことが可能であり、その例としては、マトリゲル、コラーゲンゲル、ゼラチン、ポリ−L−リジン、ポリ−D−リジン、ラミニン、フィブロネクチンが挙げられる。これらの細胞接着因子は、2種類以上を組み合わせて添加することもできる。また更に、がん細胞又は肝細胞のスフェアの培養に用いられる培地に対してグァーガム、タマリンドガム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ローカストビーンガム、アラビアガム、タラガム、タマリンドガム、メチルセルロース等の増粘剤を更に混合することができる。

0054

細胞及び/又は組織が植物由来である場合、植物組織培養通常用いられるムラシゲ・スクーグ(MS)培地、リンマイヤー・スクーグ(LS)培地、ホワイト培地、ガンボーグB5培地、ニッチェ培地、ヘラー培地、モーレル培地等の基本培地、或いは、これら培地成分を至適濃度に修正した修正培地(例えば、アンモニア態窒素濃度を半分にする等)に、オーキシン類及び必要に応じてサイトカイニン類等の植物生長調節物質植物ホルモン)を適当な濃度で添加した培地が培地として挙げられる。これらの培地には、必要に応じて、カゼイン分解酵素、コーンスティープリカービタミン類等をさらに補充することができる。オーキシン類としては、例えば、3−インドール酢酸(IAA)、3−インドール酪酸(IBA)、1−ナフタレン酢酸(NAA)、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)等が挙げられるが、それらに限定されない。オーキシン類は、例えば、約0.1〜約10ppmの濃度で培地に添加され得る。サイトカイニン類としては、例えば、カイネチンベンジルアデニン(BA)、ゼアチン等が挙げられるが、それらに限定されない。サイトカイニン類は、例えば、約0.1〜約10ppmの濃度で培地に添加され得る。

0055

上記の培地には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、塩素、各種アミノ酸、各種ビタミン、抗生物質、血清、脂肪酸、糖などを当業者は目的に応じて自由に添加してもよい。動物由来の細胞及び/又は組織培養の際には、当業者は目的に応じてその他の化学成分あるいは生体成分一種類以上組み合わせて添加することもできる。
動物由来の細胞及び/又は組織の培地に添加される成分としては、ウシ胎児血清ヒト血清ウマ血清インシュリントランスフェリンラクトフェリンコレステロールエタノールアミン亜セレン酸ナトリウムモノチオグリセロール2−メルカプトエタノールウシ血清アルブミンピルビン酸ナトリウムポリエチレングリコール、各種ビタミン、各種アミノ酸、寒天、アガロース、コラーゲン、メチルセルロース、各種サイトカイン、各種ホルモン、各種増殖因子、各種細胞マトリックスや各種細胞接着分子などが挙げられる。培地に添加されるサイトカインとしては、例えばインターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−3(IL−3)、インターロイキン−4(IL−4)、インターロイキン−5(IL−5)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−7(IL−7)、インターロイキン−8(IL−8)、インターロイキン−9(IL−9)、インターロイキン−10(IL−10)、インターロイキン−11(IL−11)、インターロイキン−12(IL−12)、インターロイキン−13(IL−13)、インターロイキン−14(IL−14)、インターロイキン−15(IL−15)、インターロイキン−18(IL−18)、インターロイキン−21(IL−21)、インターフェロン−α(IFN−α)、インターフェロン−β(IFN−β)、インターフェロン−γ(IFN−γ)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、単球コロニー刺激因子(M−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子GM−CSF)、幹細胞因子(SCF)、flk2/flt3リガンドFL)、白血病細胞阻害因子(LIF)、オンコスタチンM(OM)、エリスロポエチン(EPO)、トロンボポエチン(TPO)などが挙げられるが、これらに限られるわけではない。
培地に添加されるホルモンとしては、メラトニンセロトニンチロキシントリヨードチロニンエピネフリンノルエピネフリンドーパミン抗ミュラー管ホルモンアディポネクチン副腎皮質刺激ホルモンアンギオテンシノゲン及びアンギオテンシン抗利尿ホルモン心房ナトリウム利尿性ペプチドカルシトニンコレシストキニンコルチコトロピン放出ホルモンエリスロポイエチン卵胞刺激ホルモンガストリングレリングルカゴンゴナドトロピン放出ホルモン成長ホルモン放出ホルモンヒト絨毛性ゴナドトロピンヒト胎盤ラクトゲン成長ホルモンインヒビンインスリンインスリン様成長因子レプチン黄体形成ホルモンメラニン細胞刺激ホルモンオキシトシン副甲状腺ホルモンプロラクチンセクレチンソマトスタチン、トロンボポイエチン、甲状腺刺激ホルモンチロトロピン放出ホルモン、コルチゾールアルドステロンテストステロンデヒドロエピアンドロステロンアンドロステンジオンジヒドロテストステロンエストラジオールエストロンエストリオールプロゲステロンカルシトリオールカルシジオールプロスタグランジンロイコトリエンプロスタサイクリントロンボキサンプロラクチン放出ホルモンリポトロピン、脳ナトリウム利尿ペプチド神経ペプチドY、ヒスタミンエンドセリン膵臓ポリペプチドレニン、及びエンケファリンが挙げられるが、これらに限られるわけではない。
培地に添加される増殖因子としては、トランスフォーミング成長因子−α(TGF−α)、トランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)、マクロファージ炎症蛋白質−1α(MIP−1α)、上皮細胞増殖因子(EGF)、繊維芽細胞増殖因子−1、2、3、4、5、6、7、8、又は9(FGF−1、2、3、4、5、6、7、8、9)、神経細胞増殖因子(NGF)肝細胞増殖因子HGF)、白血病阻止因子(LIF)、プロテアーゼネキシンI、プロテアーゼネキシンII、血小板由来成長因子(PDGF)、コリン作動性分化因子CDF)、ケモカインNotchリガンド(Delta1など)、Wnt蛋白質、アンジオポエチン様蛋白質2、3、5または7(Angpt2、3、5、7)、インスリン様成長因子(IGF)、インスリン様成長因子結合蛋白質(IGFBP)、プレイオトロフィン(Pleiotrophin)などが挙げられるが、これらに限られるわけではない。
また、遺伝子組替え技術によりこれらのサイトカインや増殖因子のアミノ酸配列を人為的に改変させたものも添加させることもできる。その例としては、IL−6/可溶性IL−6受容体複合体あるいはHyper IL−6(IL−6と可溶性IL−6受容体との融合タンパク質)などが挙げられる。
各種細胞外マトリックスや各種細胞接着分子の例としては、コラーゲンI乃至XIX、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン−1乃至12、ニトジェン、テネイシン,トロンボスポンジン,フォンビルブランド(von Willebrand)因子、オステオポンチン、フィブリノーゲン、各種エラスチン、各種プロテオグリカン、各種カドヘリン、デスモコリン、デスモグレイン、各種インテグリン、E−セレクチン、P−セレクチン、L−セレクチン、免疫グロブリンスーパーファミリー、マトリゲル、ポリ−D−リジン、ポリ−L−リジン、キチン、キトサン、セファロース、ヒアルロン酸、アルギン酸ゲル、各種ハイドロゲル、さらにこれらの切断断片などが挙げられる。

0056

培地に添加される抗生物質の例としては、サルファ製剤、ペニシリンフェネチシリンメチシリンオキサシリンクロキサシリンジクロキサシリンフルクロキサシリンナフシリンアンピシリン、ペニシリン、アモキシシリンシクラシリンカルベニシリンチカルシリンピペラシリン、アズロシリン、メクズロシリン、メシリナム、アンジノシリン、セファロスポリン及びその誘導体、オキソリン酸アミフロサシン、テマフロキサシン、ナリジクス酸ピロミド酸、シプロフロキサンシノキサシンノルフロキサシン、パーフロキサシン、ロザキサシン、オフロキサシンエノキサシンピペミド酸スルバクタムクラブリン酸、β-ブロモペニシラン酸、β-クロロペニシラン酸、6-アセチルメチレン-ペニシラン酸、セフォキサゾール、スルタンピシリン、アディノシリン及びスルバクタムのホルムアルデヒドフードラートエステルタゾバクタムアズトレオナムスルファゼチン、イソスルファゼチン、ノルカディシン、m-カルボキシフェニルフェニルアセトアミドホスホン酸メチルクロルテトラサイクリンオキシテトラサイクリンテトラサイクリンデメクロサイクリンドキシサイクリンメタサイクリン、並びにミノサイクリンが挙げられる。

0057

本発明における特定化合物を上記の培地に添加する場合には、まず適切な溶媒にて当該特定化合物を用時溶解または分散させる(これを、培地添加剤とする。)。その後、培地中での特定化合物濃度として、上に詳述したように、当該液体培地の粘度を実質的に高めること無く細胞及び/又は組織を均一に浮遊させる(好ましくは浮遊静置させる)ことのできる濃度、例えば0.0005%乃至1.0%(重量/容量)、好ましくは0.001%乃至0.4%(重量/容量)、より好ましくは0.005%乃至0.1%(重量/容量)、さらに好ましくは0.005%乃至0.05%(重量/容量)となるように、当該培地添加剤を培地中に添加すれば良い。例えば、脱アシル化ジェランガムの場合、0.001%乃至1.0%(重量/容量)、好ましくは0.003%乃至0.5%(重量/容量)、より好ましくは0.005%乃至0.1%(重量/容量)、最も好ましくは、0.01%乃至0.03%(重量/容量)培地中に添加すれば良い。また、別の局面では、脱アシル化ジェランガムの場合、0.0005%乃至1.0%(重量/容量)、好ましくは0.001%乃至0.5%(重量/容量)、より好ましくは0.003%乃至0.1%(重量/容量)、最も好ましくは、0.005%乃至0.03%(重量/容量)培地中に添加すれば良い。キサンタンガムの場合、0.001%乃至5.0%(重量/容量)、好ましくは0.01%乃至1.0%(重量/容量)、より好ましくは0.05%乃至0.5%(重量/容量)、最も好ましくは、0.1%乃至0.2%(重量/容量)培地中に添加すれば良い。κ−カラギーナンおよびローカストビーンガム混合系の場合、0.001%乃至5.0%(重量/容量)、好ましくは0.005%乃至1.0%(重量/容量)、より好ましくは0.01%乃至0.1%、最も好ましくは、0.03%乃至0.05%(重量/容量)培地中に添加すれば良い。脱アシル化ジェランガムとダイユータンガムの混合系の場合、0.001%乃至1.0%(重量/容量)、最も好ましくは、0.005%乃至0.01%(重量/容量)培地中に添加すれば良い。脱アシル化ジェランガムとメチルセルロースの混合系の場合、0.001%乃至1.0%(重量/容量)、最も好ましくは、0.005%乃至0.2%(重量/容量)培地中に添加すれば良い。脱アシル化ジェランガムとローカストビーンガムの混合系の場合、0.001%乃至1.0%(重量/容量)、最も好ましくは、0.01%乃至0.1% (重量/容量)培地中に添加すれば良い。脱ア
シル化ジェランガムとアルギン酸ナトリウムの混合系の場合、0.001%乃至1.0%(重量/容量)、最も好ましくは、0.01%乃至0.1%(重量/容量)培地中に添加すれば良い。脱アシル化ジェランガムとキサンタンガムの混合系の場合、0.001%乃至1.0%(重量/容量)、最も好ましくは、0.01%乃至0.1%(重量/容量)培地中に添加すれば良い。脱アシル化ジェランガムとκ−カラギーナンの混合系の場合、0.001%乃至1.0%(重量/容量)、最も好ましくは、0.01%乃至0.1%(重量/容量)培地中に添加すれば良い。なお該濃度は、以下の式で算出できる。
濃度(%)=特定化合物の重量(g)/培地組成物の容量(ml)×100

0058

ここで、培地添加剤に用いる適切な溶媒の例としては、水、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、エタノール、ブタノールプロパノールグリセリンプロピレングリコールブチレングリコール等の各種アルコールなどの水性溶媒が挙げられるが、これらに限られるわけではない。この際、特定化合物濃度は0.001%乃至5.0%(重量/容量)、好ましくは0.01%乃至1.0%(重量/容量)、より好ましくは0.1%乃至0.6%(重量/容量)とすることが望ましい。その際、当該特定化合物の効果を高めたり、使用する際の濃度を下げたりするような添加物を更に添加することもできる。この様な添加剤の例として、グァーガム、タマリンドガム、アルギン酸プロピレンコールエステル、ローカストビーンガム、アラビアガム、タラガム、タマリンドガム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アガロース、タマリンドシードガムプルラン等の多糖類を1種以上混合することができる。また、当該特定化合物を培養の際に担体表面上に固定化或いは、担体内部に担持して使用することもできる。当該特定化合物は、提供時あるいは保存時に任意の形状であり得る。当該特定化合物は、錠剤丸剤カプセル剤顆粒剤のような製剤化された固体、適切な溶媒並びに溶解剤で溶解した溶液あるいは懸濁液のような液体、又は基板単体に結合させた状態であり得る。製剤化される際の添加物としては、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤乳糖ブドウ糖ショ糖マンニット等の賦形剤ステアリン酸マグネシウムタルク等の滑沢剤ポリビニルアルコールヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン等の結合剤脂肪酸エステル等の界面活性剤;グリセリン等の可塑剤等が挙げられる。これらの添加物は上記のものに限定されることはなく、当業者が利用可能であれば自由に選択することができる。また、本発明における特定化合物は、必要に応じて滅菌処理を施してもよい。滅菌方法は特に制限はなく、例えば、放射線滅菌、エチレンオキサイドガス滅菌、オートクレーブ滅菌、フィルター滅菌等が挙げられる。フィルター滅菌(以下、ろ過滅菌という場合もある)を行う際のフィルター部分の材質は特に制限されないが、例えば、グラスファイバーナイロン、PES(ポリエーテルスルホン)、親水性PVDFポリフッ化ビニリデン)、セルロース混合エステルセルロースアセテートポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。フィルターの細孔の大きさは特に制限されないが、好ましくは、0.1μm乃至10μm、より好ましくは、0.1μm乃至1μm、最も好ましくは、0.1μm乃至0.5μmである。これらの滅菌処理は、特定化合物が固形でも溶液の状態でもよい。

0059

上記調製により特定化合物の溶液又は分散液を液体培地に添加することにより、液体培地中に上記構造体が形成され、本発明の培地組成物を得ることができる。培地には通常、高分子化合物がイオンを介して集合、あるいは、高分子化合物が三次元のネットワークを形成するのに十分な濃度の金属イオンが含まれるので、本発明の特定化合物の溶液又は分散液を液体培地に添加するのみで、本発明の培地組成物を得ることができる。あるいは、培地添加剤(特定化合物の溶液又は分散液)に培地を添加してもよい。さらに、本発明の培地組成物は、特定化合物と培地成分とを、水性溶媒(例えばイオン交換水超純水等を含む水)中で混合して調製することもできる。混合の態様としては、(1)液体培地と培地添加剤(溶液)とを混合する、(2)液体培地に上記高分子化合物(粉末等の固体)を混合する、(3)培地添加剤(溶液)に粉末培地を混合する、(4)粉末培地及び上記高分子化合物(粉末等の固体)を水性溶媒と混合する、等が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の培地組成物における特定化合物の分布が不均一になるのを防ぐために、(1)若しくは(4)又は(1)若しくは(3)の態様が好ましい。
特定化合物を溶媒(例、水、液体培地等の水性溶媒)へ溶解する、または、特定化合物及び粉末培地を溶媒へ溶解する際、溶解促進のため、当該混合液を加熱するのが好ましい。加熱する温度としては、例えば80℃〜130℃、好ましくは加熱滅菌されるような100℃〜125℃(例、121℃)が挙げられる。加熱後、得られた特定化合物の溶液を室温まで冷却する。当該溶液に、上述の金属イオンを添加することにより(例えば、当該溶液を液体培地へ添加することにより)、当該特定化合物から構成された上記構造体が形成される。或いは、特定化合物を、上述の金属イオンを含む溶媒(例、水、液体培地等の水性溶媒)へ溶解する際に、加熱(例えば80℃〜130℃、好ましくは100℃〜125℃(例、121℃))し、得られた溶液を室温まで冷却することによっても、当該特定化合物から構成された上記構造体が形成される。

0060

本発明の培地組成物の調製方法を例示するが、本発明はこれによって限定されるものではない。特定化合物をイオン交換水あるいは超純水に添加する。そして、当該特定化合物を溶解できる温度(例えば、60℃以上、80℃以上、90℃以上)で加熱しながら撹拌して透明な状態になるまで溶解させる。溶解後、撹拌しながら放冷し、滅菌(例えば、121℃にて20分でのオートクレーブ滅菌)を行う。室温に戻した後、静置培養に使用する任意の培地を撹拌(例えば、ホモミキサー等)しながら、当該培地に前記滅菌後の水溶液を添加し、当該培地と均一になるように混合する。本水溶液と培地の混合方法は特に制限はなく、例えばピペッティング等の手動での混合、マグネチックスターラーメカニカルスターラー、ホモミキサー、ホモジナイザー等の機器を用いた混合が挙げられる。また、混合後に本発明の培地組成物をフィルターにてろ過してもよい。ろ過処理をする際に用いるフィルターの細孔の大きさは、5μm乃至100μm、好ましくは5μm乃至70μm、より好ましくは10μm乃至70μmである。

0061

あるいは、粉末培地及び上記高分子化合物(粉末等の固体)を水性溶媒と混合し、上記温度で加熱することで本発明の培地組成物を調製する。
例えば、脱アシル化ジェランガムを調製する場合、0.1%乃至1%(重量/容量)、好ましくは0.2%乃至0.5%(重量/容量)、より好ましくは0.3%乃至0.4%(重量/容量)となるようにイオン交換水あるいは超純水に脱アシル化ジェランガムを添加する。また、別の局面では、脱アシル化ジェランガムを調製する場合、0.1%乃至1%(重量/容量)、好ましくは0.2%乃至0.8%(重量/容量)、より好ましくは0.3%乃至0.6%(重量/容量)となるようにイオン交換水あるいは超純水に脱アシル化ジェランガムを添加する。
そして、前記脱アシル化ジェランガムを溶解できる温度であれば何度でもよいが、60℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上(例、80〜130℃)に加熱しながら撹拌することにより透明な状態になるまで溶解させる。溶解後、撹拌しながら放冷し、例えば121℃にて20分間オートクレーブ滅菌を行う。室温に戻した後に、例えばDMEM/F12培地をホモミキサー等で攪拌しながら、当該培地に本水溶液を所望の最終濃度となるように添加し(例えば終濃度が0.015%の場合は0.3%水溶液:培地の比率は1:19)、均一に混合させる。本水溶液と培地の混合方法は特に制限はなく、例えばピペッティング等の手動での混合、マグネチックスターラーやメカニカルスターラー、ホモミキサー、ホモジナイザー等の機器を用いた混合が挙げられる。また、混合後に本発明の培地組成物をフィルターにてろ過してもよい。ろ過処理をする際に用いるフィルターの細孔の大きさは、5μm乃至100μm、好ましくは5μm乃至70μm、より好ましくは10μm乃至70μmである。
さらに、本発明の培地組成物は調製後、遠心処理により構造体を沈降させることができる。

0062

本発明の方法で培養する細胞及び/又は組織の形態や状態は、当業者が任意に選択することができる。その好ましい具体例としては、特に制限されるものではないが、細胞及び/又は組織が単独で培地組成物中に分散した状態、細胞及び/又は組織が担体表面上に接着した状態、細胞及び/又は組織が担体内部に包埋した状態、複数個の細胞が集合し細胞塊(スフェア)を形成した状態、或いは2種以上の細胞が集合して細胞塊(スフェア)を形成した状態等が、より好ましくは細胞及び/又は組織が担体表面上に接着した状態、細胞及び/又は組織が担体内部に包埋した状態、複数個の細胞が集合し細胞塊(スフェア)を形成した状態、或いは2種以上の細胞が集合して細胞塊(スフェア)を形成した状態が、さらに好ましくは細胞及び/又は組織が担体表面上に接着した状態、複数個の細胞が集合し細胞塊(スフェア)を形成した状態、或いは2種以上の細胞が集合して細胞塊(スフェア)を形成した状態が挙げられる。これらの状態の内、細胞塊(スフェア)を形成した状態は、生体内環境に近い細胞−細胞間相互作用及び細胞構造体が再構築されており、細胞機能を長期的に維持したまま培養でき、また細胞の回収が比較的容易であるため、本発明の方法で培養する最も好ましい状態として挙げることができる。

0063

細胞及び/又は組織を表面上に担持させる担体としては、種々の高分子から構成されたマイクロキャリアやガラスビーズセラミックスビーズポリスチレンビーズデキストランビーズ等が挙げられる。当該高分子の例としては、ビニル樹脂ウレタン樹脂エポキシ樹脂、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレートポリエステル、ポリアミド、ポリイミドシリコン樹脂フェノール樹脂メラミン樹脂ユリア樹脂アニリン樹脂アイオノマー樹脂、ポリカーボネート、コラーゲン、デキストラン、ゼラチン、セルロース、アルギン酸塩及びこれらの混合物等が使用できる。当該担体は、細胞の接着を高める、或いは細胞からの物質の放出を高める化合物でコートされてもよい。この様なコーティング材料の例としては、ポリ(モノステアロイルグリセリドコハク酸)、ポリ−D,L−ラクチド−コ−グリコリドヒアルロン酸ナトリウム、n−イソプロピルアクリルアミド、コラーゲンI乃至XIX、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン−1乃至12、ニトジェン、テネイシン,トロンボスポンジン,フォンビルブランド(von Willebrand)因子、オステオポンチン、フィブリノーゲン、各種エラスチン、各種プロテオグリカン、各種カドヘリン、デスモコリン、デスモグレイン、各種インテグリン、E−セレクチン、P−セレクチン、L−セレクチン、免疫グロブリンスーパーファミリー、マトリゲル、ポリ−D−リジン、ポリ−L−リジン、キチン、キトサン、セファロース、アルギン酸ゲル、各種ハイドロゲル、さらにこれらの切断断片などが挙げられる。この際、2種以上のコーティング材料を組みわせても良い。また更に、細胞及び/又は組織を表面上に担持した担体の培養に用いられる培地に対して、グァーガム、タマリンドガム、ローカストビーンガム、アラビアガム、タラガム、タマリンドガム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アガロース、タマリンドシードガム、プルラン等の多糖類を1種以上混合することができる。また、当該担体は、磁性体材料、例えばフェライトを含有していてもよい。当該担体の直径は数10μmから数100μm、より好ましくは100μmから200μmであり、その比重は、1に近いことが好ましく、より好ましくは0.9〜1.2、特に好ましくは約1.0である。当該担体の例としては、これに限られるものではないが、Cytodex 1(登録商標)、Cytodex 3(登録商標)、Cytoline1(登録商標)、Cytoline2(登録商標)、Cytopore1(登録商標)、Cytopore2(登録商標)、(以上、GE Healthcare Life Sciences)、Biosilon(登録商標)(NUNC)、Cultispher−G(登録商標)、Cultispher−S(登録商標)(以上、Thermo SCIENTIFIC)、HILLEXCT(登録商標)、ProNectinF−COATED(登録商標)、及びHILLEXII(登録商標)(SoloHillEngineering)、GEM(登録商標)(Global Eukaryotic Microcarrier)等が挙げられる。当該担体は、必要に応じて滅菌処理を施してもよい。滅菌方法は特に制限はなく、例えば、放射線滅菌、エチレンオキサイドガス滅菌、オートクレーブ滅菌及び乾熱滅菌等が挙げられる。当該担体を用いて動物細胞を培養する方法としては特に制限はなく、通常の流動層型培養槽又は充填層型培養槽を用いる培養方法等を用いることができる。この際、細胞及び/又は組織を表面上に担持させた担体は、本発明の特定化合物の構造体を含有する培地組成物を用いることにより振とう等の操作を行わずに均一に分散することができるため、目的とする細胞及び/又は組織を細胞機能の損失無く培養することができる。本法により培養された細胞及び/又は組織は、培養後に担体に担持させたまま遠心やろ過処理を行うことにより、回収することができる。この際、用いた液体培地を加えた後、遠心やろ過処理を行ってもよい。例えば、遠心する際の重力加速度(G)は、50G乃至1000G、より好ましくは、100G乃至500Gであり、ろ過処理をする際に用いるフィルターの細孔の大きさは10μm乃至100μmであるが、これらに制限されることは無い。また、担体中にフェライト等の磁性を有する材料を内包させておけば、磁力により培養した担体を回収することができる。本法により培養された細胞及び/又は組織は、各種キレート剤熱処理や酵素を用いて担体から剥離することにより回収することができる。

0064

細胞及び/又は組織を担体内部に包埋する際、種々の高分子から構成された材料を当該担体として選択することができる。この様な高分子の例としては、コラーゲン、ゼラチン、アルギン酸塩、キトサン、アガロース、ポリグリコール酸ポリ乳酸フィブリン接着剤、ポリ乳酸・ポリグリコール酸共重合体、プロテオグリカン、グルコサミノグリカンポリウレタンフォーム等のスポンジ、DseA—3D(登録商標)、ポリN−置換アクリルアミド誘導体、ポリN−置換メタアクリルアミド誘導体およびこれらの共重合体、ポリビニルメチルエーテルポリプロピレンオキサイドポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール部分酢化物等の温度感受性高分子ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ニトロセルロース、セルロースブチレートポリエチレンオキシド、poly(2−hydroxyethylmethacrylate)/polycaprolactone等のハイドロゲルが挙げられる。また、これらの高分子を2種以上用いて細胞を包埋するための担体を作製することも可能である。更に、当該担体には、これらの高分子以外に生理活性物質を有していても良い。この生理活性物質の例としては、細胞増殖因子、分化誘導因子、細胞接着因子、抗体、酵素、サイトカイン、ホルモン、レクチン、又は細胞外マトリックス等が挙げられ、これらを複数含有させことも可能である。細胞接着因子の例としては、ポリ(モノステアロイルグリセリドココハク酸)、ポリ−D,L−ラクチド−コ−グリコリド、ヒアルロン酸ナトリウム、n−イソプロピルアクリルアミド、コラーゲンI乃至XIX、ゼラチン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン−1乃至12、ニトジェン、テネイシン,トロンボスポンジン,フォンビルブランド(von Willebrand)因子、オステオポンチン、フィブリノーゲン、各種エラスチン、各種プロテオグリカン、各種カドヘリン、デスモコリン、デスモグレイン、各種インテグリン、E−セレクチン、P−セレクチン、L−セレクチン、免疫グロブリンスーパーファミリー、マトリゲル、ポリ−D−リジン、ポリ−L−リジン、キチン、キトサン、セファロース、アルギン酸ゲル、各種ハイドロゲル、さらにこれらの切断断片などが挙げられる。この際、2種以上の細胞接着因子を組みわせても良い。また更に、細胞及び/又は組織を包埋した担体の培養に用いられる培地に対して、グァーガム、タマリンドガム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ローカストビーンガム、アラビアガム、タラガム、タマリンドガム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アガロース、タマリンドシードガム、プルラン等の増粘剤を1種以上混合することができる。
これらの担体に細胞及び/又は組織を包埋させる方法は特に制限されないが、例えば、細胞と前記高分子の混液シリンジ吸引し、25G〜19G程度の注射針を介して培地中に滴下する、あるいはマイクロピペットを用いて培地中に滴下するなどの方法を用いても良い。ここで形成されるビーズ状担体のサイズは、細胞と前記高分子混合液を滴下する際に用いる器具先端の形状により決定され、好ましくは数10μmから数1000μm、より好ましくは100μmから2000μmである。ビーズ状担体で培養できる細胞数は特に制限されないが、このビーズサイズに合わせて自由に選択すれば良い。例えば、直径約2000μmのビーズ状担体の場合、500万個までの細胞をこのサイズのビーズ状担体中に包埋することができる。また、細胞は担体内にて一つずつ分散していても、複数個の細胞が集合した細胞塊を形成していても良い。この際、細胞及び/又は組織を包埋させた担体は、本発明の特定化合物の構造体を含有する培地組成物を用いることにより撹拌等の操作を行わずに均一に分散することができるため、目的とする細胞及び/又は組織を細胞機能の損失無く培養することができる。本法により培養された細胞及び/又は組織は、培養後に担体に包埋した状態で遠心やろ過処理を行うことにより、回収することができる。この際、用いた液体培地を加えた後、遠心やろ過処理を行ってもよい。例えば、遠心する際の重力加速度(G)は、50G乃至1000G、より好ましくは、100G乃至500Gであり、ろ過処理をする際に用いるフィルターの細孔の大きさは10μm乃至100μmであるが、これらに制限されることは無い。本法により培養された細胞及び/又は組織は、各種キレート剤、熱や酵素等の処理を用いて担体を分解することにより分散させ、回収することができる。

0065

細胞凝集塊(スフェア)を形成させる方法は、特に制限は無く、当業者が適宜選択することができる。その例としては、細胞非接着表面を有する容器を用いた方法、ハンギングドロップ法旋回培養法、3次元スキャフォールド法、遠心法、電場や磁場による凝集を用いた方法等が挙げられる。例えば、細胞非接着表面を有する容器を用いた方法については、目的の細胞を、細胞接着を阻害する表面処理を施した培養容器中にて培養し、スフェアを形成させることができる。この細胞非接着性培養容器を使用する場合は、まず、目的の細胞を採取した後にその細胞浮遊液を調製し、当該培養容器中に播種して培養を行なう。一週間ほど培養を続けると、細胞は自発的にスフェアを形成する。このとき用いる細胞非接着性表面としては、一般に用いられるシャーレなどの培養容器の表面に、細胞接着を阻害する物質をコートしたものなどを用いることができる。このような物質としては、アガロース、寒天、ポリ−HEMA(ポリ−(2−ハイドロキシエチルメタクリレート)2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと他のモノマー(例えばブチルメタクリレート等)との共重合体、ポリ(2−メトキシメチルアクリレート)、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド、メビオールジェル(登録商標)などが挙げられるが、細胞毒性がなければ、これらに限定されるものではない。
また、細胞凝集塊(スフェア)を形成させる方法として、NATURE BIOTECHNOLOGY,VOL.28,NO.4,APRIL 2010,361−366、NATURE PROTOCOLS,VOL.6,NO.5,2011,689−700、NATURE PROTOCOLS,VOL.6,NO.5,2011,572−579、Stem Cell Research,7,2011,97−111、Stem Cell Rev and Rep,6,2010,248−259等に記載された方法を用いることもできる。
また、スフェアを形成させる培養の際に用いる培地中に、スフェアの形成を早める、或いはその維持を促進する成分を含有させることもできる。このような効果を有する成分の例としては、ジメチルスルホキシド、スーパーオキシドジムスターゼ、セルロプラスミンカタラーゼペルオキシダーゼL−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸リン酸エステルトコフェロールフラボノイド尿酸、ビリルビン、含セレン化合物、トランスフェリン、不飽和脂肪酸、アルブミン、テオフィリンフォルスコリン、グルカゴン、ヂブチルリルcAMPなどを挙げることができる。含セレン化合物としては、亜セレン酸ナトリウム、セレン酸ナトリウムジメチルセレニドセレン化水素セレノメチオニン、Se—メチルセレノシステインセレノシスタチオニンセレノシステイン、セレノホモシステインアデノシン−5’−ホスホセレン酸、Se—アデノシルセレノメチオニン、Y27632、Fasudil(HA1077)、H−1152、Wf−536等のROCK阻害剤が挙げられる。また、目的とするサイズの均一な細胞凝集塊を得るためには、使用する細胞非付着性培養容器上に、目的とする細胞凝集塊と同一径の複数の凹みを導入することもできる。これらの凹みが互いに接しているか、あるいは目的とする細胞凝集塊の直径の範囲内であれば、細胞を播種した際、播種した細胞は凹みと凹みの間で細胞凝集塊を形成することなく、確実に凹みの中でその容積に応じた大きさの細胞凝集塊を形成し、均一サイズの細胞凝集塊集団を得ることができる。この際の凹みの形状としては半球または円錐上が好ましい。
あるいは、細胞接着性を有する支持体を基にスフェアを形成させることもできる。この様な支持体の例としては、コラーゲン、ポリロタキサン、ポリ乳酸(PLA)、ポリ乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)、ハイドロゲル等を挙げることができる。
また、フィーダー細胞と共培養することにより、スフェアを形成させることもできる。スフェア形成を促進させるためのフィーダー細胞としては、如何なる接着性細胞でも用いることが可能であるが、好適には各種細胞に応じたフィーダー細胞が望ましい。限定されるものではないが、例えば肝臓や軟骨由来の細胞のスフェアを形成させる場合、そのフィーダー細胞の例としてはCOS−1細胞や血管内皮細胞が好適な細胞種として挙げられる。
さらに、本発明の特定化合物の構造体を含有する培養組成物を用いてスフェアを形成させることもできる。その際、当該特定化合物の濃度が、上に詳述したように、当該液体培地の粘度を実質的に高めること無く細胞及び/又は組織を均一に浮遊させる(好ましくは浮遊静置させる)ことのできる濃度、例えば0.0005%乃至1.0%(重量/容量)、好ましくは0.001%乃至0.3%(重量/容量)、より好ましくは0.005%乃至0.1%(重量/容量)、さらに好ましくは0.01%乃至0.05%(重量/容量)となるように、当該特定化合物をスフェア形成の際に用いる培地中に添加すれば良い。また、別の局面では、当該特定化合物の濃度が、上に詳述したように、当該液体培地の粘度を実質的に高めること無く細胞及び/又は組織を均一に浮遊させる(好ましくは浮遊静置させる)ことのできる濃度、例えば0.0005%乃至1.0%(重量/容量)、好ましくは0.001%乃至0.3%(重量/容量)、より好ましくは0.003%乃至0.1%(重量/容量)、さらに好ましくは0.005%乃至0.05%(重量/容量)となるように、当該特定化合物をスフェア形成の際に用いる培地中に添加すれば良い。
スフェアは、当該特定化合物の構造体を含む培地中に目的とする細胞を均一に分散させ、3日間乃至10日間静置して培養することにより調製される。ここで調製されたスフェアは、遠心やろ過処理を行うことにより、回収することができる。例えば、遠心する際の重力加速度(G)は、50G乃至1000G、より好ましくは、100G乃至500Gであり、ろ過処理をする際に用いるフィルターの細孔の大きさは10μm乃至100μmであるが、これらに制限されることは無い。また、目的とする細胞に特異的に結合する抗体を表面上にコーティングした磁性微粒子を用いて、磁力により培養したスフェアを回収することができる。この様な磁性微粒子の例としては、ダイナビーズ(ヴェリタス社製)、MACSマイクロビーズミルニーバイオテク社製)、BioMag(テクケミカル社製)等が挙げられる。
スフェアの大きさは、細胞種及び培養期間によって異なり特に限定されないが、球形状或いは楕円球形状であるとした際には20μm乃至1000μm、好ましくは40μm乃至500μm、より好ましくは50μm乃至300μm、最も好ましくは80μm乃至200μmの直径を有する。
このようなスフェアは、そのまま静置培養を続けることでも10日以上、好ましくは13日以上、さらに好ましくは30日以上の期間において増殖能を保持し得るが、さらに静置培養中に定期的に機械的分割を行うことで、またはさらに単細胞化処理と凝集を行うことで、実質的に無期限に増殖能を保持し得る。
スフェアの培養に用いられる培養容器は、一般的に動物細胞の培養が可能なものであれば特に限定されないが、例えば、フラスコ、ディッシュ、ペトリデッシュ、組織培養用ディッシュ、マルチディッシュ、マイクロプレート、マイクロウエルプレート、マルチプレート、マルチウエルプレート、チャンバースライド、細胞培養フラスコ、スピナーフラスコ、シャーレ、チューブ、トレイ、培養バック、ローラーボトル、EZ SPHERE(旭硝子社製)、スミロンセルタイトプレート(住友ベークライト社製)等が挙げられる。
これらの培養容器のうち、多数の抗がん剤の評価、医薬品候補化合物又は医薬品の評価を実施する際には、マイクロプレート、マイクロウエルプレート、マルチプレート、マルチウエルプレートが好適に用いられる。これらのプレートのウェル底形状は、特に制限されないが、平底、U字型、V字型のものを用いることが可能であり、好ましくはU字型のものが用いられる。これらの培養器材の材質は特に制限されないが、例えば、ガラス、ポリ塩化ビニル、セルロース系ポリマー、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン等のプラスチック等が挙げられる。

0066

スフェアの静置培養に用いられる培地は、細胞接着因子を含むことが可能であり、その例としては、マトリゲル、コラーゲンゲル、ゼラチン、ポリ−L−リジン、ポリ−D−リジン、ラミニン、フィブロネクチンが挙げられる。これらの細胞接着因子は、2種類以上を組み合わせて添加することもできる。また更に、スフェアの培養に用いられる培地に対してグァーガム、タマリンドガム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ローカストビーンガム、アラビアガム、タラガム、タマリンドガム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アガロース、タマリンドシードガム、プルラン等の増粘剤を更に混合することができる。
本発明の特定化合物の構造体を含有する培地組成物を用いることにより、振とう等の操作を行わずに均一に培養液中に分散することができるため、目的とする細胞及び/又は組織を細胞機能の損失無くスフェアとして培養することができる。本法により静置培養されたスフェアは、培養後に遠心やろ過処理を行うことにより、回収することができる。この際、用いた液体培地を加えた後、遠心やろ過処理を行ってもよい。例えば、遠心する際の重力加速度(G)は、50G乃至1000G、より好ましくは、100G乃至500Gであり、ろ過処理をする際に用いるフィルターの細孔の大きさは10μm乃至100μmであるが、これらに制限されることは無い。また、目的とする細胞に特異的に結合する抗体を表面上にコーティングした磁性微粒子を用いて、磁力により培養したスフェアを回収することができる。この様な磁性微粒子の例としては、ダイナビーズ(ヴェリタス社製)、MACSマイクロビーズ(ミルテニーバイオテク社製)、BioMag(テクノケミカル社製)等が挙げられる。回収されたスフェアは、更に各種キレート剤、熱、フィルターや酵素等の処理を用いて解すことにより単一な細胞として分散させることができる。細胞の回収や培地組成物の交換は、機械的な制御下のもと閉鎖環境下で実行が可能なバイオリアクターや自動培養装置を用いて遠心やろ過処理或いは磁気による回収処理を行うことにより達成することもできる。

0067

植物由来の細胞及び/又は組織を静置培養する際の方法として、分化していない植物細胞塊であるカルスを培養することができる。カルスの誘導は、使用する植物種についてそれぞれ公知の方法により行うことができる。例えば、分化した植物体の一部の組織(例えば、根、茎、葉の切片、種子、生長点、胚、花粉等)表面を、必要に応じて70%アルコールや1%次亜塩素酸ナトリウム溶液等を用いて滅菌した後、必要に応じてメス等を用いて適当な大きさの組織片(例えば、約1〜約5mm角の根切片)を切り出し、クリーンベンチ等を用いた無菌操作により、当該組織片を予め滅菌したカルス誘導培地に播種して適当な条件下で無菌培養する。ここで誘導されたカルスは、すぐに大量増殖のために液体培養に付されてもよいし、あるいは継代用培地で継代培養することにより種株として維持することもできる。継代培養は、液体培地及び固形培地のいずれを用いて行ってもよい。
本発明の培地組成物を用いて静置培養を開始する際に接種される植物細胞塊の量は、目的の細胞の増殖速度、培養様式(回分培養、流加培養、連続培養等)、培養期間などに応じて変動するが、例えば、カルス等の植物細胞塊を培養する場合、本発明の培地組成物に対する細胞塊の湿重量が4〜8(重量/容積(w/v))%、好ましくは5〜7(w/v)%となるように本発明の培地組成物に接種される。培養の際の植物細胞塊の粒径は1mm乃至40mm、好ましくは3mm乃至20mm、より好ましくは5mm乃至15mmである。ここで「粒径」とは、例えば植物細胞塊が球形である場合はその直径を意味し、楕円球形である場合にはその長径を意味し、その他の形状においても同様にとり得る最大長を意味する。

0068

細胞及び/又は組織を培養する際の温度は、動物細胞であれば通常25乃至39℃、好ましくは33乃至39℃である。CO2濃度は、通常、培養の雰囲気中、4乃至10体積%であり、4乃至6%体積が好ましい。培養期間は通常3乃至35日間であるが、培養の目的に合わせて自由に設定すればよい。植物細胞の培養温度は、通常20乃至30℃であり、光が必要であれば照度2000〜8000ルクス照度条件下にて培養すればよい。
培養期間は通常3乃至70日間であるが、培養の目的に合わせて自由に設定すればよい。

0069

本発明の方法で細胞及び/又は組織を培養する際には、本発明の培養組成物に対して別途調製した細胞及び/又は組織を添加し、均一に分散される様に混合すればよい。その際の混合方法は特に制限はなく、例えばピペッティング等の手動での混合、スターラー、ヴォルテックスミキサー、マイクロプレートミキサー、振とう機等の機器を用いた混合が挙げられる。混合後は培養液を静置状態にしてもよいし、必要に応じて培養液を回転、振とう或いは撹拌してもよい。その回転数と頻度は、当業者の目的に合わせて適宜設定すればよい。また、静置培養の期間において培地組成物の交換が必要となった際には、遠心やろ過処理を行うことにより細胞及び/又は組織と培地組成物を分離した後、新しい培地組成物を細胞及び/又は組織に添加すればよい。或いは、遠心やろ過処理を行うことにより細胞及び/又は組織を適宜濃縮した後、新しい培地組成物をこの濃縮液に添加すればよい。
例えば、遠心する際の重力加速度(G)は、50G乃至1000G、より好ましくは、100G乃至500Gであり、ろ過処理をする際に用いるフィルターの細孔の大きさは10μm乃至100μmであるが、これらに制限されることは無い。また、目的とする細胞に特異的に結合する抗体を表面上にコーティングした磁性微粒子を用いて、磁力により培養した細胞及び/又は組織を分離することができる。この様な磁性微粒子の例としては、ダイナビーズ(ヴェリタス社製)、MACSマイクロビーズ(ミルテニーバイオテク社製)、BioMag(テクノケミカル社製)、磁性ミクロスフェア(Polysciences Inc.製)等が挙げられる。これらの培地組成物の交換は、機械的な制御下のもと閉鎖環境下で実行が可能なバイオリアクターや自動培養装置によって行うこともできる。

0070

本発明の方法によりがん細胞が効率よく増殖されるため、本発明における特定化合物を含有する培地組成物は、がん細胞に対する抗がん剤の評価に用いることができる。例えば、がん細胞の増殖を阻害する抗がん剤を評価する際、がん細胞と抗がん剤を共存させて培養した時の細胞の数や種類、細胞表面分化マーカーや発現遺伝子の変化を解析するが、この際に本発明の培地組成物を用いることにより解析対象となる細胞の数を効率よく増幅するだけでなく、効率よく回収することができる。本発明においては、特に、脱アシル化ジェランガムまたはその塩を含むがん細胞用培地添加剤、該添加剤を含むがん細胞用培地組成物を、がん細胞の増殖、又は抗がん活性の評価等に使用することができる。その際の脱アシル化ジェランガムまたはその塩の濃度は、前述のとおりである。
そして、ダイユータンガムを使用しても、がん細胞が増殖されるが、がん細胞への増殖効果が格別に優れている点、並びに、低濃度で使用(前述の好ましい濃度)できることから培養液に気泡が発生しにくい点、及びがん細胞を回収しやすい点を考慮すると脱アシル化ジェランガムがより好ましい。

0071

より具体的な抗がん剤のスクリーニング方法としては、(a)被験物質の存在下及び非存在下、本発明の培地組成物中でがん細胞を培養する工程、及び(b)がん細胞の増殖の変化を解析する工程、を含む方法が挙げられる。当該方法はさらに、被験物質の非存在下の場合と比べて、がん細胞の増殖を抑制する物質を選択する工程、及び/又は、がん細胞を回収する工程を含むことができる。変化とは、がん細胞の増殖が増加又は減少することをいう。解析は上記方法を行うことができるが、これらに限定されない。

0072

抗がん剤の活性を評価する際の培養条件、培養器具、培養装置、培地の種類、特定合物の種類、特定化合物の含量、添加物の種類、添加物の含量、培養期間、培養温度、抗がん剤の種類、抗がん剤の含量などは、本明細書に記載した範囲から当事者が適宜決定し得る。培養により増殖或いは出現した細胞は、当該分野にて標準的な顕微鏡を用いて観察することができる。細胞数を測定する際には、コロニー形成法、クリスタルバイオレッド法、チミジン取り込み法、トリパンブルー染色法ATP(アデノシン3リン酸)測定法、3−(4,5−Dimethylthial−2−yl )−2,5−Diphenyltetrazalium Bromide(MTT)染色法、WST−1(登録商標)染色法、WST−8(登録商標)染色法、フローサイトメトリー法、細胞数自動測定装置を用いた方法などを用いることができる。これらの中では、WST−8(登録商標)染色法が最も好適に利用することができる。また、細胞に対する障害性を評価する際には、乳酸脱水素酵素LDH活性測定法、CytoTox−ONE(登録商標)法等を用いることができる。あるいは、培養した細胞について特異的抗体を用いて染色した後、細胞表面分化マーカーをELISAやフローサイトメトリーにより検出し、抗がん剤による増殖やアポトーシスに対する効果を観察することができる。さらに、抗がんにより発現が変化した遺伝子は、培養した細胞からDNA(デオキシリボ核酸)或いはRNA(リボ核酸)を抽出し、サザンブロッティング法、ノーザンブロッティング法、RT−PCR法などによって検出することができる。

0073

本発明の方法により肝細胞の生存及び機能が維持されるため、本発明における特定化合物を含有する培地組成物は、医薬品或いは医薬候補物質の肝細胞に対する各種効果を評価する際に用いることができる。例えば、肝細胞に対する医薬候補物質の毒性効果を評価する際、肝細胞と評価の対象とする被験物質を共存させて培養した時の細胞の数や種類、細胞表面分化マーカーや発現遺伝子の変化を解析する。この際、本発明の培地組成物を用いることにより解析対象となる肝細胞の生存と機能を維持するだけでなく、効率よく肝細胞を回収することができる。

0074

肝細胞に作用する医薬品候補物質をスクリーニングする方法としては、(a)被験物質の存在下及び非存在下、本発明の培地組成物中で肝細胞を培養する工程、及び(b)肝細胞の生理学的機能の変化を解析する工程、を含む方法が挙げられる。
肝細胞に作用する医薬品候補物質の薬効又は毒性を評価する方法としては、(a)被験物質の存在下及び非存在下、本発明の培地組成物中で肝細胞を培養する工程、及び(b)肝細胞の生理学的機能の変化を解析する工程、を含む方法が挙げられる。これらの方法はさらに、被験物質の非存在下の場合と比べて肝細胞の生理学的機能を抑制又は増加する物質を選択する工程、及び/又は、肝細胞を回収する工程を含むことができる。当該変化とは、肝細胞の生理学的機能(例えば、肝細胞増殖、シトクロムP450の酵素活性など)が増加又は減少することをいう。そして、肝細胞の生理学的機能が増加する場合、薬効又は毒性が低い、肝細胞の生理学的機能が低下する場合、薬効又は毒性が高い、等の評価を行うことができる。

0075

当該医薬候補物質の活性を評価する際の培養条件、培養器具、培養装置、培地の種類、特定合物の種類、特定化合物の含量、添加物の種類、添加物の含量、培養期間、培養温度、医薬品或いは医薬候補物質の種類又はその含量などは、本明細書に記載した範囲から当事者により適宜選択される。培養により維持或いは出現した細胞は、当該分野にて標準的な顕微鏡を用いて観察することができる。また、細胞数を測定する際には、コロニー形成法、クリスタルバイオレッド法、チミジン取り込み法、トリパンブルー染色法、ATP(アデノシン3リン酸)測定法、3−(4,5−Dimethylthial−2−yl)−2,5−Diphenyltetrazalium Bromide(MTT)染色法、WST−1(登録商標)染色法、WST−8(登録商標)染色法、フローサイトメトリー法、細胞数自動測定装置を用いた方法などを用いることができる。この中では、WST−8(登録商標)染色法が最も好適に利用することができる。また、細胞に対する障害性を評価する際には、乳酸脱水素酵素(LDH)活性測定法、CytoTox−ONE(登録商標)法等を用いることができる。また、培養した細胞について特異的抗体を用いて染色した後、細胞表面分化マーカーをELISA(Enzyme−linked immunosorbent assay)やフローサイトメトリーにより検出し、医薬品或いは医薬候補物質による増殖やアポトーシスに対する効果を観察することができる。医薬品或いは医薬候補物質により発現が変化した遺伝子は、培養した細胞からDNA(デオキシリボ核酸)或いはRNA(リボ核酸)を抽出しサザンブロッティング法、ノーザンブロッティング法、RT−PCR法などによって検出することができる。また、医薬品或いは医薬候補物質により発現が変化した蛋白質は、ELISA、ウェスタンブロッティング法、フローサイトメトリー法等によって検出することができる。更に、シトクロムP450の酵素活性は、当該酵素による基質構造変換活性を放射性同位体法、高速液体クロマトグラフィー法発光法、発色法等を用いることにより検出することができる。

0076

以下に本発明の培地組成物の分析例、試験例を実施例として具体的に述べることで、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。

0077

(分析例1:脱アシル化ジェランガムを含む培地の粘度測定及び細胞浮遊試験
脱アシル化ジェランガム含有培地の調製及び粘度測定
脱アシル化ジェランガム(KELCOGELCG−LA、三晶株式会社製)を0.4%(w/v)となるように純水に懸濁させた後、90℃にて加熱攪拌し溶解させた。本水溶液を攪拌しながら室温まで放冷し、121℃で20分オートクレーブ滅菌した。300mLトールビーカーに2倍濃度のDMEM/F−12培地(Aldrich社製)50mLと滅菌水47.5mLを入れ、室温でホモミキサー(3000rpm)で攪拌しながら脱アシル化ジェランガム水溶液2.5mLを添加し、そのまま1分攪拌を続けることで脱アシル化ジェランガム終濃度0.01%培地組成物を調製した。同様に終濃度が0.02、0.03、0.05%(w/v)となるよう脱アシル化ジェランガム水溶液を添加した培地組成物を調製した。本培地組成物の粘度は37℃条件下でE型粘度計(東機産業株式会社製、Viscometer TVE−22L、標準ロータ1°34´×R24)を用いて、回転数100rpmで5分間測定した。
脱アシル化ジェランガム含有培地の細胞浮遊試験
ヒト子宮頸癌細胞株HeLa(DSファーマバイオメディカル社製)を、10%(v/v)胎児ウシ血清を含むEMEM培地(WAKO社製)に250000個/mLとなるように懸濁し、本懸濁液10mLをEZ SPHERE(旭硝子社製)に播種した後、CO2インキュベーター(5%CO2)内で3日間培養した。ここで得られたスフェア(直径100〜200μm)の懸濁液10mLを遠心処理(200G、5分間)してスフェアを沈降させ、上清を除くことによりスフェア懸濁液1.0mLを調製した。引き続き、上記で調製した脱アシル化ジェランガム含有培地を1.5mLエッペンドルフチューブに1.0mLずつ入れ、更にHeLa細胞スフェア懸濁液10μLを加えた。タッピングにより細胞塊を分散させ、37℃でインキュベートし、1時間後の細胞の分散状態を目視にて観察した。

0078

(比較例)メチルセルロース、コラーゲン含有培地の調製
メチルセルロース含有培地の調製
200mLナスフラスコにDMEM/F−12培地(Aldrich社製)100mLを入れ、メチルセルロース(M0387、Aldrich社製)0.1gを加えた。氷浴にて冷却しながら攪拌し、メチルセルロースを溶解させた。本溶液を用いて終濃度が0.1、0.3、0.6、1.0%(w/v)となるようメチルセルロース水溶液を添加した培地組成物を調製した。
コラーゲン含有培地の調製
0.3%セルマトリックスタイプI−A(新田ゼラチン社製)6.5mLに10倍濃度のDMEM/F−12培地(Aldrich社製)1mL、再構成緩衝液(新田ゼラチン社製)1mL及び純水1.5mLを入れ、中にて撹拌しながら0.2%のコラーゲン含有培地を調製した。同様に、終濃度が0.01、0.05、0.1、0.2%(w/v)となるようコラーゲンを添加した培地組成物を調製した。
上記で調製した培地組成物についても脱アシル化ジェランガム含有培地と同様にHeLa細胞スフェアの浮遊試験および粘度測定を実施した。ただし、1.0%(w/v)メチルセルロースの粘度は、装置の測定範囲より50rpmにて測定した。

0079

0080

0081

0082

[試験例]
次に、本発明の培地組成物の細胞培養における有用性について、以下の試験例において具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。なお、CO2インキュベーターにおけるCO2の濃度(%)は、雰囲気中のCO2の体積%で示した。また、PBSリン酸緩衝生理食塩水シグマアルドリッチジャパン社製)を意味し、FBSは牛胎児血清(Biological Industries社製)を意味する。また、(w/v)は、1体積あたりの重量を表わす。

0083

(試験例1:単一の細胞を分散させた際の細胞増殖試験
脱アシル化ジェランガム(KELCOGELCG−LA、三晶株式会社製)を0.3%(w/v)となるように超純水(Milli−Q水)に懸濁した後、90℃にて加熱しながらの撹拌により溶解し、本水溶液を121℃で20分オートクレーブ滅菌した。本溶液を用いて10%(v/v)胎児ウシ血清及び10ng/mLのトロンボポエチン(WAKO社製)を含むIMDM培地(ギブコ社製)に終濃度0.015%(w/v)の脱アシル化ジェランガムを添加した培地組成物を調製した。引き続き、ヒト白血病細胞株UT7/TPOを、20000細胞/mLとなるように上記の脱アシル化ジェランガムを添加した培地組成物に播種した後、6ウェル平底マイクロプレート(コーニング社製)のウェルに1ウェル当たり5mLなるように分注した。同様に、ヒト子宮頸癌細胞株HeLa(DSファーマバイオメディカル社製)を、20000細胞/mLとなるように10%(v/v)胎児ウシ血清を含むEMEM培地(WAKO社製)に0.015%(w/v)の脱アシル化ジェランガム(KELCOGEL CG−LA、三晶株式会社製)を添加した培地組成物に播種した後、6ウェル平底マイクロプレート(コーニング社製)のウェルに1ウェル当たり5mLなるように分注した。これらの細胞懸濁液をCO2インキュベーター(5%CO2)内にて3日間静置状態で培養した。その後、培養液の一部を回収し、トリパンブルー染色液インヴィトロジェン社製)を同量添加した後、血球計算板エル販売株式会社製)にて生細胞の数を測定した。

0084

その結果、UT7/TPO細胞及びHeLa細胞は、本発明の培地組成物を用いることにより浮遊状態にて均一に培養することが可能であり、当該培地組成物で増殖することが確認された。浮遊静置培養3日間後のUT7/TPO細胞及びHeLa細胞の細胞数を表4に示す。

0085

0086

(試験例2:細胞株由来スフェアを培養した際の細胞増殖試験)
ヒト肝癌細胞株HepG2(DSファーマバイオメディカル社製)を、10%(v/v)胎児ウシ血清を含むDMEM培地(WAKO社製)に250000個/mLとなるように懸濁し、本懸濁液10mLをEZ SPHERE(旭硝子社製)に播種した後、CO2インキュベーター(5%CO2)内で7日間培養した。同様に、ヒト子宮頸癌細胞株HeLa(DSファーマバイオメディカル社製)を、10%(v/v)胎児ウシ血清を含むEMEM培地(WAKO社製)に250000個/mLとなるように懸濁し、本懸濁液10mLをEZ SPHERE(旭硝子社製)に播種した後、CO2インキュベーター(5%CO2)内で7日間培養した。ここで得られたそれぞれの細胞株のスフェア(直径100〜200μm)の懸濁液2.5mLを遠心処理(200G、5分間)してスフェアを沈降させ上清を除いた。引き続き、本スフェア(約800個)に上記培地10mLを添加して懸濁した後、平底チューブ(BM機器社製)に移した。同様に、上記培地に0.015%(w/v)の脱アシル化ジェランガム(KELCOGELCG−LA、三晶株式会社製)を添加した培地組成物を用いてスフェアの懸濁液を作成し、平底チューブ(BM機器社製)に移した。なお、0.015%(w/v)の脱アシル化ジェランガムを添加した培地組成物は、まず脱アシル化ジェランガム(KELCOGEL CG−LA、三晶株式会社製)を0.3%(w/v)となるように超純水(Milli−Q水)に懸濁した後、90℃にて加熱しながらの撹拌により溶解し、本水溶液を121℃で20分オートクレーブ滅菌した後、1/20希釈で10%(v/v)胎児ウシ血清を含むDMEM培地に添加することにより調製した。

0087

37℃で3日間、CO2インキュベーター(5%CO2)内で上記スフェア懸濁液を静置培養した後、2倍容量の培地を添加して遠心処理(200G、5分間)を行うことによりスフェアを沈降させ、上清を除いた。ここで、スフェアの一部を分取し、光学顕微鏡(OLMPUS社製、CK30−F100)にてその形状を観察した。引き続き、回収したスフェアをPBS10mLにて1回洗浄した後、1mLのトリプシンEDTAエチレンジアミン四酢酸)溶液(WAKO社製)を添加し、37℃で5分間保温した。上記培地を9mL添加した後、遠心処理(200G、5分間)により細胞を回収した。ここで得られた細胞懸濁液2mLの一部に対してトリパンブルー染色液(インヴィトロジェン社製)を同量添加した後、血球計算板(エルマ販売株式会社製)にて生細胞及び死細胞の数を測定した。

0088

その結果、HepG2細胞及びHeLa細胞のスフェアは本発明の培地組成物を用いることにより浮遊状態にて培養することが可能であり、当該培地組成物で効率良く細胞が増殖することが確認された。しかも、本発明の培地組成物は、既存の培地と比べて細胞を増殖させた際に死細胞の割合が少なく、細胞増殖の促進効果が優れていることが確認された。この際、既存の培地で培養したスフェアは培養容器の底面に沈降していた。更に、培養したスフェアの形状を光学顕微鏡にて観察したところ、本発明の培地組成物ではスフェア同士の会合が見られないのに対し、既存の培地ではスフェア同士の会合が観察された。
HepG2細胞及びHeLa細胞に関して、脱アシル化ジェランガムを含まない培地にて培養した際の細胞数を1としたときの相対的細胞数を表5に示す。また、脱アシル化ジェランガムを含まない培地で培養した際の死細胞率死細胞数生細胞数)を1としたときの相対的死細胞率を表6に示す。また、HepG2細胞及びHeLa細胞のスフェアを本発明の培地組成物で培養した際の浮遊状態を図1及び図2にそれぞれ示す。さらに、培養したHeLa細胞のスフェアの形状を図3に示す。

0089

0090

0091

(試験例3:ヒト多能性幹細胞接着培養における細胞増殖試験)
ヒト多能性幹細胞(hPSCs)は、通常フィーダー上やマトリゲルをコーティングした培養皿上に接着させる平面培養条件下で増殖維持される。脱アシル化ジェランガムのhPSCsに対する毒性を評価するために、マトリゲル(ベクトン・ディッキントン社製)を用いた平面培養条件下で、mTeSR培地(STEMCELLTechnologies社製)に0.000%乃至0.020% (w/v)の濃度となるように脱アシル化ジェランガムを添加し、hPSCsの増殖に対する影響を検討した。この際、ヒトiPS細胞として京都大学253G1株、ヒトES細胞株として京都大学KhES−1株を培養した。なお、上記濃度の脱アシル化ジェランガムを添加した培地組成物は、まず脱アシル化ジェランガム(KELCOGELCG−LA、三晶株式会社製)を0.3%(w/v)となるように超純水(Milli−Q水)に懸濁した後、90℃にて加熱しながらの撹拌により溶解し、本水溶液を121℃で20分オートクレーブ滅菌した後、所定の濃度となる様にmTeSR培地に添加することにより調製した。その結果、ヒトiPS細胞及びヒトES細胞共に、脱アシル化ジェランガムの添加培地においても、通常のmTeSR培地と同程度の細胞数を得ることができ、脱アシル化ジェランガムによる毒性は認められなかった。その結果を図4に示す。図4における培養後の細胞数は、マトリゲルコーティング培養皿にhPSCsを播種し、脱アシル化ジェランガムを含むmTeSR培地で5日間培養し、得られた細胞数を、脱アシル化ジェランガムを含まないmTeSR培地での細胞数を1として相対値で示した。

0092

(試験例4:ヒト多能性幹細胞のスフェア培養における脱アシル化ジェランガムの沈降抑制試験)
hPSCsは、ペトリ培養皿など低接着性の培養皿でスフェアを形成する。例えば、該スフェアは、NATURE BIOTECHNOLOGY,VOL.28,NO.4,APRIL 2010,361−366、NATURE PROTOCOLS,VOL.6,NO.5,2011,689−700、NATURE PROTOCOLS,VOL.6,NO.5,2011,572−579、Stem Cell Research,7,2011,97−111、Stem Cell Rev and Rep,6,2010,248−259に記載されたいずれの方法を用いても形成できる。フィーダー細胞(マウス胎児線維芽細胞)上で維持したhPSCs(京都大学253G1株或いは京都大学KhES−1株)を回収し、フィーダー細胞を自然沈降で除去した後、Rhoキナーゼ阻害剤のY−27632(10μM)を添加したmTeSR培地にhPSCsを再懸濁した。引き続き、一定のサイズのhPSCsコロニーをペトリ培養皿(BDファルコン社製)に播種し、37℃にてCO2インキュベーター(5%CO2)内で培養することによりスフェアを形成させた。培地交換は、Y−27632を含まないmTeSR培地で継代後1日目と3日目に行い、継代は5日毎にY−27632を含むmTeSR培地で行った。このようにして調製したhPSCsのスフェア(培養4日目)を、mTeSR培地に0.000%乃至0.020%(w/v)の脱アシル化ジェランガムを添加した培地組成物(試験例3と同様の方法にて調製)にて懸濁したのち、キュベットに移した。本キュベットを37℃にてCO2インキュベーター(5%CO2)内で一晩放置し、脱アシル化ジェランガムによるスフェアの沈降抑制効果について検討した。その結果を図5に示す。図5に示すように、脱アシル化ジェランガムの添加により全ての濃度域にてスフェアを培地中に三次元的に浮遊状態で保つことができた。一方、脱アシル化ジェランガムを添加していない既存の培地ではスフェアは培養容器の底面に沈降し、浮遊状態に出来ないことが分かった。また、脱アシル化ジェランガムの効果はヒトiPS細胞及びヒトES細胞で共通であった。以上の結果より、脱アシル化ジェランガムはhPSCsのスフェアを浮遊状態に保てることが示された。

0093

(試験例5:ヒト多能性幹細胞のスフェア培養における細胞増殖試験)
三次元的な浮遊状態でhPSCsがチューブ培養できるかを検討した。0.000%、0.015%或いは0.020%(w/v)の脱アシル化ジェランガムを含むmTeSR培地に対して、試験例4と同様な方法にて調製、継代したhPSCsスフェア(600乃至800個/3mL)を5mLのポリスチレンチューブ(BDファルコン社製)中 にそれぞれ同一のスフェア数となる様に播種し、37℃にて5日間CO2インキュベーター(5%CO2)内で培養した。培地交換は、3倍容量のDMEM/F−12培地(シグマ社製)を培養液に添加した後遠心処理(100G、3分間)によりスフェアを沈降させ、本スフェアに新たな培地を添加する形で、継代後1日目と3日目に行った。5日目に等量のDMEM/F−12培地(シグマ社製)を添加後、遠心処理(100G、3分間)によりスフェアを全て回収し、トリプシン−EDTA溶液(インビトロジェン社製) を用いて単細胞解離した後、ヌクレオカウンター(chemometec社製) にて細胞数を測定した。その結果、脱アシル化ジェランガムを含まない培地では、スフェアはチューブの底に沈み、大きな細胞塊となり増殖を示さなかったが、0.015%或いは0.020%(w/v)の脱アシル化ジェランガムを含む培地では三次元的な浮遊状態でスフェアのサイズは大きくなり、播種した細胞数を1とすると5日目には、約10倍の細胞数が得られ、細胞増殖が認められた。その結果を図6に示す。図6は播種した細胞数を1とした時に5日目の細胞数を相対的に示している。また、ヒトES細胞では、ポリスチレンチューブ中での培養5日目に3mLあたり3,000,000個の細胞数を実際に得ることができた(培地1000mLの場合には約1,000,000,000個の細胞数に相当する)。

0094

(試験例6:ヒト多能性幹細胞のスフェア培養における未分化性維持の確認試験
0.015%或いは0.020%(w/v)の脱アシル化ジェランガムを含むmTeSR培地にて浮遊静置培養したhPSCsスフェア細胞に関して、その未分化能の維持をフローサイトメトリーによる解析で検討した。ポリスチレンチューブ中にてスフェア状態でヒトES細胞(KhES−1)は3回継代した細胞、ヒトiPS細胞(253G1)については4回継代した細胞を回収した後、hPSCsの未分化性を示す表面マーカーであるSSEA4の抗体(#MAB4304、ミリポア社製)とTRA−1−60(#MAB4360、ミリポア社製)の抗体にて染色し、FACSCantoII(ベクトン・ディッキンソン社製)を用いて細胞の抗体染色の陽性率を評価した。その結果を図7に示す。図7に示すように、A:ヒトiPS細胞(253G1)、B:ヒトES細胞(KhES−1)共に、マトリゲル上で維持した細胞と同様、脱アシル化ジェランガムを含む添加培地で浮遊静置培養した細胞の90%以上が多能性幹細胞マーカーを発現していた。なお、ネガティブコントロールとして二次抗体のみの染色を実施した。以上のように、ヒトiPS細胞及びヒトES細胞共に、脱アシル化ジェランガムを含む添加培地で浮遊静置培養したhPSCsスフェアは未分化性を維持していることが判明した。

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