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課題
解決手段
概要
背景
概要
基板内部の少なくとも1つのプラグの内部における反応を誘導する好適な方法を提供すること。基板の第1流路へ搬送流体を導入する手段(ステップ)と、搬送流体に対して非混和性を持つ少なくとも2つの異なるプラグ流体を1つ以上のプラグ形成領域の第1流路へ導入する手段と、プラグ流体混合物を含む少なくとも1つのプラグを形成するために基板で流体の流れを誘発することを目的として第1流路に圧力を適用(加圧)する手段を備え、プラグ断面積がプラグ形成領域の第1流路断面積と本質的に同一であることを特徴とする、基板内部の少なくとも1つのプラグの内部における反応を誘導する方法。なし
目的
その例として、糖分、重合体、有機金属群、蛍光群または発光群、分子内または分子間での電子伝達などの工程を増強するもしくは工程に関与する半群あるいは群、たんぱく質が特定の整合または一連の整合を備えることを促進または誘導する半群あるいは群、タンパク質が特定の整合または一連の整合を備えることを妨害もしくは抑制する半群あるいは群、タンパク質フォールディング(折りたたみ)を誘導・増強もしくは抑制する半群あるいは群、あるいはアミノ酸シーケンスに組込まれそのシーケンスの化学・生化学・生物学的特性の変更を目的とする
効果
実績
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この技術が所属する分野
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成
請求項1
本明細書に記載の発明。
技術分野
0001
(発明の背景)
非線形力学は、マイクロフルイディック(微細流体)とともに、本発明による装置の設計および方法において中心的な役割を果たす。マイクロフルイディックは、通常、ミクロレベルの寸法である流路網(チャンネル・ネットワーク)を通り流体の輸送処理を行う。(「チップ上の実験室(LOC)」とも称される)マイクロフルイディック・システムは、マイクロスケール化学または生物学的分析(マイクロ総合分析システム)の手段となりうる。マイクロフルイディック・システムの主な利点は、その高速試剤と低消費量にある。したがって、医療診断および高度な処理能力を伴うスクリーニングの分野において非常に有望である。マイクロフルイディック・システムの高度な平列構造は、巨視的な量におよぶ化学的および生物学的な化合物合成(例:化学兵器破壊・調合薬合成)の手段となりうる。その利点はより高度に物質および熱輸送を制御しうるということである。
0002
一般的にマイクロフルイディック・システムは、流体を流路経由でポンプによりくみ出す手段を必要とする。最も一般的な方法として、圧力駆動によるものと、電気浸透流(EOF)駆動によるものとの2種類が挙げられる。EOF駆動による流れの魅力は、複雑なネットワーク(網状組織)においてでさえも容易に制御できるというところにある。EOF駆動による流れは平坦なプラグ状の速度プロフィールを持つ。すなわち、流体速度は壁付近および流路中央において同じであることを示す。したがって、少量の複数検体が流路に連続注入される場合、これらのプラグは重複せずに (低度の分散で)輸送される。この場合、分散のほとんどはプラグ間の拡散から帰する。EOFの主な欠点は、流路壁の荷電表面部二重層の動きにより生じるため、荷電不純物による表面異物に大いに影響を受けやすいということである。DNAが一律に負の電荷をもち壁に吸着しないので、DNA分析・操作において、負の電荷をもつ面にある流路を使う場合には問題ないかもしれない。しかしながら、電荷を頻繁に伴い、荷電表面に吸着する傾向をもつタンパク質に関係する場合の用途において、これは大きな妨げとなりえる。さらに、大抵の場合、高電圧を伴うものは望まれず、なお、ポータブルアナライザーのような高電圧源を利用できない場合がある。
0003
典型的に、圧力駆動による流れはEOFとくらべると著しく界面化学に影響されにくい。圧力駆動による流れの主な欠点は、EOFのように平らなプロフィールをもたず、通常、放物線状の流れのプロフィールを持っているということである。流路中央の溶質は、流路壁付近の溶質よりはるかに速く流れる(平均流速の約2倍)。圧力駆動の流れは、放物線状の速度プロフィールにおいて、通常、大きく分散する。流路に注入された溶質のプラグは、流路形状に順応して直ちに歪み伸長する。流路中央から壁方向及び反転方向の拡散による溶質輸送によって、この歪みは多少減少するが、流路に沿う分散発生により歪みが大きくなる(この分散を総括してテイラーの分散と呼ぶ)。
0004
テイラーの分散によりサンプル(試料)プラグが広がり薄くなる。サンプルのいくつかがプラグの後にテール状(尾状)に残る場合が多々ある。これらテールの重なりは、通常、その他プラグ内サンプルの二次汚染につながる。このため、サンプルは頻繁に緩衝液洗浄(バッファー洗浄)により隔離され、流路内へと個々に導入される。一方、長い緩衝液プラグでサンプルをインターリーブする(すなわち、サンプル間の緩衝液でシステムを洗う)ことにより、システムの処理能力(コントロール)を低下させる。
0005
EOFにおける送流は本質的に線形である。すなわち、2つの反応原系がプラグに導入され、EOFによって輸送される場合、その滞留時間(および反応速度)は、単に、流路内輸送距離を速度で割ることにより計算することができる。当線形輸送は、流路長さと流量を適切に調節することにより滞留時間の精密な制御を可能にする。対照的に、圧力駆動の流れ分散作用においてプラグが移動するのには通常広範な滞留時間を要し、結果として時間的管理能力が低下する。
0006
ここでの時間的管理は重要である。多くの化学・生化学作用は特定の時間内に生じる。そして、反応時間測定値により、試剤濃度または反応性を示すことができる。典型的に静止流体式器機がこれらの測定の手段となる。これらの器機は乱流に依存して試剤を混合し、最小限の分散量でそれらを輸送する。
0007
通常、乱流は直径大および多流量のチューブ内で生じる。
0008
したがって、静止流体式器機は、多くの試剤(ml/秒単位レベル)を要する傾向がある。静止流体式のマイクロフルイディック機器は、試剤消費量が少な目(通常μL/分)であり、科学器具(例:診断用装置)として効果的に利用できる可能性がある。これまで、マイクロフルイディック装置は、通常、圧力駆動による流れが分散されることにより(小規模分散ではあるが)EOFを多大に遅延させるため、静止流体式器機に対抗することができないでいた。
0009
さらに、マイクロフルイディック・システムでの混合は、(大型システムにおける乱流に対し)流れが層流であるため、流体を送る方法が何であろうと、速度低下が頻繁に見られる。層流での混合は拡散に依存し、DNAとタンパク質のような大型分子の場合は特に遅くなる。
0010
さらに、マイクロフルイディック・システムによる微粒子処理は困難であるといえる。細胞がこれらの緩衝液と同密度であるため水性緩衝液内細胞の懸濁(けんだく)が比較的容易である一方、流体と同密度でない微粒子は、流路の底に沈降する傾向があり、それにより最終的には流路をふさいでしまう。
0011
それ故に、微粒子を除去するために、分析用サンプルを頻繁にろ過する必要がある。
課題を解決するための手段
0012
(発明の要約)
発明による基板内部反応の伝導方法とは、基板第1流路に搬送流体を導入すること、第1流路に少なくとも2本のプラグ流体を導入すること、そして、プラグ流体の混合物を含む実質上同一のプラグを形成すべく基板内流体の流れを誘導するために第一流路に圧力を加えることが可能であるものとする。プラグ流体は搬送流体に対し不混和性を持つ。プラグ形成中に、プラグ断面は第1流路断面に実質的似ているため、プラグが第1流路の壁全体に著しく接することになる。プラグ形成後、プラグ断面は流路断面より縮小する可能性がある。搬送流体の薄い層が消える場合もあるが、通常、この層は流路の壁とプラグの間に存在する。一般的に、流路における初期形成時と各プラグサイズが著しく類似する。さらに、流路内プラグのキャピラリー数は、一般的に1未満、というよりも ≦約0.2が好ましく、さらに ≦約0.1がより理想である。
0013
1本以上のプラグ流体(流体塊)からプラグが形成される場合、急速な流体混合が生じる。流路が直線でない場合、プラグ内部の混合はさら増加する(例:カオス的流れの発生時)。非周期流路の設計はプラグ内部の急速混合を誘導するのに好ましい。他の場合において、混合速度を緩めたり、もしくは、屈曲した流路を用いたり、流体粘度を変えたり、プラグ流体の組成を変えたり、さらには、管理可能な旋回機能を使用することにより制御することもできる。
0014
本発明による装置は1本以上のプラグ流体を融合する(組合せる)手段となりうる。プラグ流体を単一または複数の入口から導入することができる。プラグ流体が単一の入口によって導入される場合、第1流路への導入に先立って大幅な混合が生じないように、入口のまさに上流で混合されるのが好ましい。プラグ流体が複数の入口によって導入される場合、異なるプラグ流体から成るプラグが出口前で一連のプラグに融合される(すなわち、一連のプラグはプラグ流体の混合物から構成され形成される)ように、複数のプラグ流体の(粘度、プラグ寸法、プラグ流体・搬送流体界面(接触面)の表面張力、またはプラグ流体・流路壁界面の表面張力といった)物理的性質が調節される。あるいは、単一のプラグ流体から成るプラグを形成するために、プラグ流体を個別の流路へ導入することもできる。
0015
その時、これらの流路は単一の融合した流路へと融合される。基板内部の連続的な輸送は、単一の合流した流路内で融合されたプラグを形成する。
0016
本発明による装置は、プラグを2本以上の流路へと分割する手段となりうる。上記の装置と技術を使い、重合・(小型分子とタンパク質等の)結晶化・ナノ粒子合成・不安定中間体の形成・酵素触媒作用の反応・分析評価、タンパク質結合などの、様々な反応作用を誘導することができる。複数反応を、同時にまたは連続して誘導することができる。
0017
さらに、本発明にのっとって、本発明は1つ以上の基板から構成される装置を備える。
0018
発明の装置及び方法は、詳細に渡り下記されるように、制限されることなく多様な実施形態や変更(修正)形態を備える。
(項目1)
基板の第1流路へ搬送流体を導入する手段(ステップ)と、搬送流体に対して非混和性を持つ少なくとも2つの異なるプラグ流体を1つ以上のプラグ形成領域の第1流路へ導入する手段と、プラグ流体混合物を含む少なくとも1つのプラグを形成するために基板で流体の流れを誘発することを目的として第1流路に圧力を適用(加圧)する手段を備え、プラグ断面積がプラグ形成領域の第1流路断面積と本質的に同一であることを特徴とする、基板内部の少なくとも1つのプラグの内部における反応を誘導する方法。
(項目2)
搬送流体が油を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
(項目3)
搬送流体にフッ素化物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
(項目4)
フッ素添加油がパーフルオロデカリンまたはパーフルオパーハイドロフェナントレンであることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
(項目5)
搬送流体が少なくとも1つの界面活性剤を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
(項目6)プラグ流体の少なくとも1つが試剤と溶媒を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
(項目7)
プラグ流体の少なくとも1つが溶媒と界面活性剤を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
(項目8)
プラグ流体が少なくとも1つの入口を通って導入されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
(項目9)
プラグ流体の体積流量調節によりプラグに含まれるプラグ流体の濃度を調節する手段をさらに備えた、請求項1に記載の方法。
(項目10)
プラグがキャピラリー数<約0.2で形成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
(項目11)
プラグ流体の反応により少なくとも1つのプラグ内部に不溶性反応生成物が形成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
(項目12)
プラグ流体の反応により少なくとも1つのプラグ内部に溶性反応生成物が形成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
(項目13)
プラグ流体が単一の入口を通って第1流路へ導入されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
(項目14)
入口における又は入口前のプラグ流体が特異的な(はっきりと識別できる)層流であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
(項目15)
プラグ流体が2つ以上の入口を通って第1流路へ導入されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
(項目16)
プラグ内におけるプラグ流体の混合を加速する手段をさらに備えた請求項1に記載の方法。
(項目17)
流路に沿った幾何学様式(形状)の変化により混合が加速されることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
(項目18)
流路が1つ以上の曲がり角、屈曲、および直線部またはそれらの組み合わせを備えることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
(項目19)
「ベーカーによる変態の(補助)定理」の実装を目的として設計された流路形状を通してプラグを流すことにより混合が加速されることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
(項目20)
プラグ流体または搬送流体の少なくとも1つの構成を変化することにより混合が加速されることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
(項目21)
プラグ流体または搬送流体の少なくとも1つの粘度を変化することにより混合が加速されることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
(項目22)
流路壁のパターンを変化することにより混合が加速されることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
(項目23)
第1流路または分岐流路の少なくとも一部分の親水特性を変化することにより混合が加速されることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
(項目24)
第1流路または分岐流路の少なくとも一部分の電荷を変化することにより混合が加速されることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
(項目25)
少なくとも1つのプラグが第1流路のプラグ形成領域下流にある別のプラグと融合する手段をさらに備える、請求項1に記載の方法。
(項目26)
第1流路および基板上の第2流路へ搬送流体を導入する手段を備えた第1および第2流路が流体交流(伝達)することを特徴とする、および、搬送流体に対して非混和性を持つ第1プラグ流体を第1プラグ形成領域の第1流路へ導入する手段と、搬送流体に対して非混和性を持つ第2プラグ流体を第2プラグ形成領域の第2流路へ導入する手段と、第1プラグ流体を含む第1プラグ集合体そして第2プラグ流体を含む第2プラグ集合体の形成を目的として基板で流体の流れを誘導するために圧力を適用(加圧)する手段を備えた、プラグ断面積がプラグ形成領域の流路断面積と本質的に同一であることを特徴とする、そして、第1プラグ集合体からの少なくとも1つのプラグが第2プラグ集合体からの少なくとも1つのプラグと融合することを特徴とする、基板内部における反応を誘導する方法。
(項目27)
プラグの第1および第2集合体の各断面が本質的に類似していることを特徴とする、請求項26に記載の方法。
(項目28)
プラグの第1および第2集合体が異なる相対速度であることを特徴とする、請求項26に記載の方法。
(項目29)
第1流路においてプラグ形成領域下流の2箇所以上へとプラグを分裂させる手段をさらに備えた請求項1に記載の方法。
(項目30)
少なくとも1つのプラグを2箇所以上に分裂させ、従って、プラグ形成箇所の下流に第2流路が存在すことを特徴とする空間(流路)を通過して第1プラグ集合体が第2流路へと送られる手段をさらに備えた請求項1に記載の方法。
(項目31)
第1流路の断面寸法が第2流路の断面寸法と異なることを特徴とする、請求項30に記載の方法。
(項目32)
第1流路の断面寸法が第2流路の断面寸法とほぼ等しいことを特徴とする、請求項30に記載の方法。
(項目33)
第1流路内の圧力が第2流路の圧力と異なることを特徴とする、請求項30に記載の方法。
(項目34)
第1および第2流路の合流地点またはその付近に収縮(圧縮)作用が存在することを特徴とする、請求項30に記載の方法。
(項目35)
搬送流体からの少なくとも1つのプラグを分離する手段をさらに備えた請求項1に記載の方法。
(項目36)
第1流路のプラグ形成領域下流において少なくとも1つのプラグの存在を検出する手段をさらに備えた請求項1に記載の方法。
(項目37)
反応生成物の検出をさらに備えた請求項1に記載の方法。
(項目38)
反応監視能力をさらに備えた請求項1に記載の方法。
(項目39)
反応速度の監視能力をさらに備えた請求項1に記載の方法。
(項目40)
プラグの少なくとも1つの光学特性を測定する能力が監視機能に含まれることを特徴とする、請求項38に記載の方法。
(項目41)
搬送流体およびプラグ流体の屈折率が本質的に類似していることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
(項目42)
基板流路沿いの一箇所以上で監視が行われることを特徴とする、請求項38に記載の方法。
(項目43)
多大なる数の基板を並行して消耗する機能をさらに備えた請求項1に記載の方法。
(項目44)
流体を一定期間停止する機能をさらに備えた請求項1に記載の方法。
(項目45)
重合反応を特徴とする、請求項1に記載の方法。
(項目46)
搬送流体を基板の第1流路へ導入する手段と、少なくとも1つのプラグ形成領域における少なくとも第1および第2プラグ流体を第1流路へ導入する手段と、少なくとも第1および第2プラグ流体を備えるプラグ形成を目的として基板における流体の流れを誘発するために第1流路に圧力を適用(加圧)する手段を備えた、少なくともプラグのいくつかにおいて結晶が形成されることを特徴とする、物質の結晶化方法。
(項目47)
物質がナノ粒子であるところの、請求項46に記載の方法。
(項目48)
物質が、タンパク質、DNA、RNA、病原体、薬剤、薬剤同質異像または小型分子であるところの、請求項46に記載の方法。
(項目49)
物質が、タンパク質、DNA、RNA、病原体、薬剤、薬剤同質異像または小型分子2つ以上の錯体であるところの、請求項46に記載の方法。
(項目50)
第1プラグ流体がタンパク質を含み、第2プラグ流体が沈殿剤を含むことを特徴とする、請求項46に記載の方法。
(項目51)
第1および第2プラグ流体間の界面を作り出す手段をさらに備えた請求項50に記載の方法。
(項目52)
第1流路長さ分(流体が第1流路を通過する間)界面が十分に維持されることを特徴とする、請求項50に記載の方法。
(項目53)
プラグの蒸発をさらに備えた請求項46に記載の方法。
(項目54)
一定の期間にわたり流体の流れを停止する機能をさらに備えた請求項46に記載の方法。
(項目55)
反応により不安定中間体が生じることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
(項目56)
非直線部を少なくとも1つ備えた少なくとも1つの流路と、前述流路と流体が交流している少なくとも1つのプラグ流体入口と、前述流路と流体が交流している少なくとも1つの搬送流体入口と、前述流路内部に流体の流れを生成する手段を備えた、少なくとも1つの基板を備える装置。
(項目57)
流体の流れが減速するところの、流路沿い膨張範囲1つ以上をさらに備えた請求項56に記載の装置。
図面の簡単な説明
0019
図1Aは、プラグ内の急速混合を誘導するために使うことができる流路構造の概略図。図1B(1)-(4)は、基本的な流路構造の一連の周期的変化を示す概略図。図1C(1)—(4)は、図1Aにおいて示される基本設計要素と、図10B(1)—(4)において示される一連の周期的変化に基づく代替要素のシーケンスから生じる一連の非周期的な組み合わせを描いた概略図。
図2Aは、流路の層流輸送とプラグ輸送を対比する概略図。図2B(1)は、プラグ内部での屈曲する流路を通過する急速混合を図示する写真(右上)を示す図。図2B(2)は、流路屈曲により、PFD非存在下では、層流内の混合加速現象が生じないことを表す写真(右下)を示す図。
図3は、0.5μL/分と1.0μl/分の流量で、湾曲した流路における水性プラグ流体と油(搬送流体)からのプラグ流れを示す写真(右側)と概略図(左側)を示す図。
図4は、油と複数プラグ流体の注入によるプラグ形成を図示する写真(下部)と概略図(上部)を示す図。
図5は、反応および混合作用を制御するために異なる幾何学形状の組み合わせを用いて油および複数プラグ流体の注入による2段階に渡るプラグ形成反応を図示する概略図。
図6は、プラグ分割・融合の両方を可能とする複数の入口を持つマイクロフルイディック・ネットワークの一部を示す概要描写。この概略図は、同時に誘導される2反応を示す図。(最初の2反応による混合の中間である)第3反応は精密な時間的遅延を利用して誘導される。
図7(a)-(b)は、均一総流速にて屈曲流路を通るプラグ内の急速混合(a)と層流における小規模な混合(b)を図示するマイクロ写真(10μ秒の露光)を示す図。図7(c)は、Fluo-4溶液とCaCl2溶液プラグ内部の急速混合から生じる、蛍光性を時間平均して示す偽色彩法マイクロ写真(2秒の露光、個々のプラグは見えない)を示す図。図7(d)は、プラグを通って移動した距離関数(左)と所定流量にてその距離を移動するのに要した時間関数(右)に基づき、画像から得た相関的且つ正規化補正後の蛍光強度(I)の線グラフを示す図。図7(e)は、(c)の溶液の層流における小規模混合から生じる弱い蛍光性の偽色彩法マイクロ写真(2s露光)を示す図。
図8は、各階段の屈折角度が90°の階段流路における流量約0.5μL/分と約1.0μL/分での急速混合を図示する写真(右側)と結線図(左側)を示す図。
図9は、各階段の屈折角度が135°の階段流路における流量約1.0μL/分と約0.5μL/分での急速混合を図示する結線図(左側)と写真(右側)を示す図。
図10a)は、プラグ内の乱流を三次元共焦点可視化したものを描く概略図。図10b)は、三次元流の可視化に好ましいシーケンスを示す線グラフ。
図11は、マイクロフルイディック流路を流れるプラグの「ベーカーによる変態の(補助)定理」を実装および可視化するために設計された流路形状の概略図を示す図。
図12は、個別の流路または流路の垂直分岐に流れるプラグの混合(上)と分裂(下)を表す写真。
図13は、プラグ内の急速混合(とがった吸収頂点を伴う範囲)および従来の溶液混合によって形成されたCdSナノ粒子のUV-VIS領域を示す図。
図14は、単相水性層流(図14A)および水不混和性パーフルオロデカリン(perfluorodecaline)により囲まれる水性プラグ(図14B)内のPDMSマイクロフルイディック流路のCdSナノ粒子合成を図示する概要図(左側)と写真(右側)を示す図。
図15は、プラグ内部のCdSナノ粒子合成の概要描写を示す図。
図16は、プラグのトラッピングを図示する、発明によるマイクロフルイディック装置の概要説明図。
図17は、タンパク質結晶化可変組成を伴いプラグを形成するマイクロフルイディック方式の略図図。
図18は、水性プラグ流体・搬送流体界面の界面化学を変えることにより、不均質核生成を制御する方法の概要描写を示す図。
図19は、本発明によるマイクロフルイディック・ネットワークを手段とする核生成と成長の分別方法を示す概要図。
図20は、混合に対する精密且つ再現可能なレベルにおよぶ制御能力を可能にし、タンパク質結晶化に対する混合効果を定める手段となりうる二つの方法を図示する概要図。
図21は、クロライト‐チオ硫酸塩反応が不安定な点を図示する反応線図。
図22A-Dは、単一視像から動態情報を得る手段となりうる発明によるマイクロフルイディック・流路形状の様々な事例を示す概要図。
図23は、マイクロフルイディック・ネットワークの略図(左側)と、流路高さ15μmと2μmのネットワーク用パラメーターの表を示す図。
図24は、(a)タンパク質吸着に対する抵抗力を備え、(b)陽の荷電を持ち、及び(c)負の電荷を持つ、単分子層を形成するフッ素添加界面活性剤の事例を表す反応スキームを示す図。図24bは、アミンまたはグアニジニウム群のプロトン化による水との相互作用により、荷電された中性界面活性剤の化学構造を示す。図24cは、カルボン酸群の脱プロトン化による水との相互作用により、荷電された中性界面活性剤の化学構造を示す。
図25は、異なる水性流濃度によるプラグ形成を示す写真 ( a・ b・ cの右側 ) だけでなく、プラグ内部の水溶液濃度を制御する手段となりえるマイクロフルイディック・ネットワーク( a・ b・ cの左側 )の概要図。
図26は、マイクロフルイディック・ネットワークの概要図(aとbの左側)と、流れ方式を示すために赤と緑の色素で水性流を染色したネットワーク内プラグ形成部位の写真(aとbの右側)を示す図。
図27は、直線のマイクロ流路を通過するプラグ内部流れの再循環を伴う混合作用に対する初期条件の効果を示す写真と線グラフを示す図。図27a1は、(黒い矢印よって指される)再循環中の流れが、初期プラグ表半面・裏半面の試剤溶液と効率的に混合した状態を示す概要図。図27a2は、(黒い矢印よって指される)再循環中の流れが、初期プラグ表半面・裏半面の試剤溶液と効率的に混合しなかった状態を示す概要図。図27bは、入口部(左側)を示す概要図、およびプラグの様々な周期・長さの測定値を表す画像写真を示す図。図27c1は、異なった長さのプラグにおいてFe(SCN)x(3-x)+複素数の相関的光学強度のグラフを示す図。図27c2)は、各プラグが1.3mmの距離を横断する場合を除いて図7c1と同様。
図28は、移動方向に関連したプラグの異なる部位を示すために、従来の表記法で描かれたプラグ概要描写を示す図。
図29a-bは総流速の関数(図29a)と水の割合(図29b)を表す、プラグ周期および長さの線グラフ。
図30は、プラグ周期・長さと総計流速におけるプラグ内部の流れ方式との依存性が低いことを図示する写真を示す図。
図31は、水の割合が各々0.20、0.40および0.73だった場合のプラグ周期と長さの分布を示す棒グラフ。
図32は、マイクロフルイディック・ネットワークの図(左側)と共に、プラグ・トラップがマイクロフルイディック・ネットワーク内の結晶形成に不要であることを表す写真(中央と右側)を示す図。
図33a-d(左側)は、同一又は非同一寸法の流路を備えるマイクロフルイディック・ネットワークの平面図(左側)と写真(右側)を示す図。図33aは、写真に示されるように、T字型流路にてまれに生じるプラグ融合を示す図。図33bは、Y字型合流地点(表示されている拡大図参照)における、異なるタイミングで到達するプラグ間に生じるプラグ融合を示す図。図33cは、同相の融合(合流地点にある少なくとも2本のプラグが同時に到達した時に生じるプラグ融合、2対の入口において異なる油・水の割合により生じる異なるサイズから成るプラグが同時に到達した時に生じるプラグ融合、等)を示す図。図33dは、後に続く2本のプラグ流れの相関的な速度の変動によりもたらされた欠陥(つまり標準又は理想条件の下においてプラグ融合が生じないという異常)を図示する。
図34a-cは、流路網を上から見た状態を概要図(a、左側)と写真(b、c)のおのおのに示した図。図34aは、実験に使用された流路網の概要図。図34bは、プラグが第1プラグの約半サイズのプラグへと分裂する状態を示す写真図。図34cは、P1 < P2時に生じたプラグの非対称分裂を表す写真を示す図。
図35は、マイクロフルイディック・ネットワークを利用して、合流地点付近における圧縮の無い状態で生じたプラグの分裂を示す概要図(a、左側)と写真(b、c)。
図36は、結晶化を伴ったマイクロフルイディック・ネットワークの線図(左側)だけでなく、マイクロフルイディック流路水源内の水プラグ内で成長(増加)したリゾチーム結晶の写真(右側)を示す図。
図37は、自触媒作用を伴う(且つ不安定ともいえる)反応混合物による小規模な化学信号を拡張する手段となりうる、発明によるマイクロフルイディック装置を示す概要図。
図38は、分子レベルで検知する手段となりうる多段化学を増幅する方法を図示する概要図。
図39は、マイクロフルイディック・ネットワークの図解(左側)と、PDMSの壁に付着した水プラグの写真(右側)を示す図。
図40は、蛍光発生基質(チップ上酵素反応動力学)により、リボヌクレアーゼA(RNA分解酵素A)による反応速度データを測定する手段となるマイクロフルイディック・ネットワークの概要描写(左側)、及び、 リボヌクレアーゼ Aと蛍光発生基質間の反応速度データを線グラフで示す図。
図41は、マイクロフルイディック・ネットワークの図解(左側)だけでなく、マイクロフルイディック・ネットワークの水滴部位の写真(中央と右側、T=時間)を示す図。
図42は、マイクロフルイディック・ネットワークの概要図(左側)と、勾配が流量変化により形成されたマイクロフルイディック・ネットワークのインク・プラグ部位の写真(右側)を示す図。
図43は、マイクロフルイディック・ネットワークの概要図(左側)と、勾配によりマイクロフルイディック・ネットワークに形成されたリゾチーム結晶の写真(右側)を示す図。
図44は、分離した試剤Bの水性サンプルを水流に注入することにより、最初の勾配がどのように発生しうるかを示す概要描写を示す図。
図45aは、試剤の流量変化によりチップ上での希釈を成し遂げうることを実証する手段となりうるマイクロフルイディック・ネットワークの略図を示す図。青い長方形は、図45cとdに記されている画像の視野を描く図。図45bは、マイクロ流路内プラグにおいて希釈したフルオレスセイン(蛍光色素)溶液の蛍光性を測定することにより、当希釈法を数量化したグラフを示す図。
0020
(発明の詳細な説明)
「分析」という用語は典型的に、分類・試験・測定・最適化・識別・総合・追加・ろ過・分解または混合を含む、物理学・化学・生化学・生物学的分析に関係する工程または手段に関係する。
0023
「流路」という用語は一般的に、少なくとも部分的な開口を備えうるが、典型的には包囲された導管(ダクト)に関係する。且つ、化合物・溶媒・溶液・乳剤・又は分散に関係するかもしれない同質もしくは異質でありうる、1つ以上の物質タイプまたは混合物タイプが、流路を通過しえる。前述のうちのいずれか一つは、固形・液体・または気相形態でありえる。流路は、管状、円筒状、長さに伴い同一又は変形形態の寸法(例えば、テーパー状、等)、及び長方形・円形・三角形等の長さに伴い1つ以上の断面形状のような、形態・形状を伴うと推測できる。流路は一般的に、重合体、金属、ガラス、合成、又はその他の比較的無活性な材質を含み且つ適合する材質からなる。本申請書では、「流路」という用語は、装置における用途に適切な寸法を備えるマイクロ流路に関係する。流路網とは、一般的に接続中もしくは相互伝達する流路の重複度に関係する。流路は、バルブなど別種の導管を通し他の少なくとも1本の流路に接続されうる。
0024
「化学物質」という用語は、物質、化合物、混合物、溶液、乳剤、分散、分子、イオン、二量体、重合体やタンパク質などの高分子、有生分子、沈殿物、結晶、化学系半群または群、粒子、ナノ粒子、試剤、反応生成物、溶媒あるいは液体に関係する。前述のうちのいずれか一つは、固形、流体、あるいは気態として存在するかもしれず、一般的に分析の対象となりえる。
0025
「検出領域」という用語は、化学物質が先決特性または特徴に基づいて識別、測定、選別されることを特徴とする基板または流路の一部分あるいは部位に関係する。
0026
「装置」という用語は、ウェットエッチングまたはドライエッチング、かつまたは従来のリソグラフィ技術、あるいはソフトリソグラフィのようなマイクロマシーニング技術などの技術を手段として、製作または製造された装置に関係する。本申請書において、「装置」という用語は、マイクロファブリケーション(微細加工)された装置として、称される又は認識される又は分類されるものに関係する。発明による装置は、各側面の寸法が約0.3cmから約15cm(6インチ・ウエハー同等)、および約1マイクロメータから約1cmの厚さを備えうるが、装置の寸法はこれらの範囲外となりうる。
0028
「下流」という用語は、流体が初期点を通過後に到達する最初の位置に関係する。フロー装置循環中の場合、「下流」とは、流れが再び初期点を交差する前の流動経路に沿ってさらに前進したところの位置に関係する。「上流」とは、流体が基板または装置の与えられた初期点に達する又は通過する前に、その流体が達する又は通過するだろう流動経路のある時点に関係する。
0029
「流れ」という用語は、固体または液体のような流体の、いかなる動作をも意味する。例として、発明による基板または基板構成要素において、あるいは発明にのっとる方法に関係する基板または基板構成要素において(例:発明によるマイクロフルイディック基板の流路を通り)、プラグ流体・搬送流体・またはプラグの動作が流れを形成する。いかなる力も流れを形成する手段となりうる。いかなる特定の理論あるいはアクション・メカニズム(実施機構)に制限されるものではないが、流れを供給する力の例としては、圧力・毛管作用・電気浸透・電気泳動・誘電泳動・光ピンセット・およびそれらの組み合わせが挙げられる。
0030
「不混和性」という用語は、相がある種の機械的または物理学的撹拌作用を受けた後でさえも、少なくとも2相または2流体が少なくとも部分的に分離し続ける又は分離したままになるなどの、特定条件または一組の条件(例:温度かつまたは圧力)の下において、少なくとも2相あるいは2流体の混合時に生じる抵抗力に関係する。
0032
「吸込口(インレットポート)」という用語は、プラグ流体を受け入れる基板の一部に関係する。吸込口は、化学物質の基板浸入を促進する吸込流路、水源または貯水溝、開口、および他の機構を備える。望ましくは、基板は1つ以上の吸込口を備えうる。吸込口は、流路と流体伝達しうる、あるいはバルブにより流路から分離しうる。
0034
典型的に、ナノ粒子の新しい識別特性と機能は、一般に100nm未満の物質の限界長さ尺度で観察および発生しうる。ナノ粒子はナノサイズの構造を可能にする手段となりうる。そして、より大規模な材質構成要素やシステムおよび体系へと統合されうる。ある特定の場合、ナノ粒子に関係する新しい特性と現象の限界長さ尺度は、1nm未満(例:約0.1nmでの原子操作)あるいは100nm以上(例:ナノ粒子により強化された重合体は、約200〜300nmにおいて、ナノ粒子と重合体の間で局部ブリッジまたは結合剤として機能するなど、ユニークな機構を備える)。
0035
「核生成組成」という用語は、結晶形成にふさわしい条件の下における結晶化機能を備える1つ以上の核を含む物質または混合物に関係する。例として、蒸発、試剤濃度の変化、沈殿剤などの物質添加、固形物を種とする形成、機械的撹拌、あるいは核生成の組成との界面上での干渉に伴って生じる結晶化により、核生成の組成が誘導されうる。
0038
「微粒子」という用語は、原子、分子、イオン、二量体、重合体あるいは有生分子などのような粒子の群または集塊に関係する。
0039
微粒子は、固形物を有したり非常に固い場合があり、さらに、多孔性であったり部分的に空洞を有するかもしれない。液体またはガスを含んでいるかもしれない。さらに、微粒子は同質のものまたは異質的なものかもしれない。すなわち、それらは1つ以上の物質あるいは材質を備えうる。
0040
本発明によると、少なくとも1本のプラグ流体が本質的に混合できないところの搬送流体へ導入される場合に「プラグ」が基板において形成される。装置内における流体の流れは、例として、圧力、放射、熱、振動、音波、電界、又は磁界の存在またはアプリケーションから、直接あるいは間接的に生じる推進力または刺激により誘導される。本発明によるプラグ断面は、サイズは異なりえるが、プラグ形成時に形成される流路断面に事実上類似していることとする。プラグが融合またはプラグ・トラップ内部でトラッピングした場合、プラグの断面が変化するかもしれない。例えば、プラグがより広い流路に入るとき、通常、その横断面は拡大する。
0041
さらに、本発明によると、プラグ形状が異なりうる。例えば、球状かもしれないし、非球状かもしれない。プラグの形状は、流路の形状に依存しないかもしれない(例:プラグが長方形流路内を移動する歪んだ球体でありうる。ここでいうプラグは、水性プラグ流体が油などの無極疎水性流体により囲まれていることを特徴とする1つ以上の試剤かつまたは試剤反応作用により形成された1つ以上の生成系を含む水性プラグ流体を備えるプラグの形をしているかもしれない。プラグはまた、主として水性流体で囲まれる無極・疎水性流体を備えるプラグの形をしているかもしれない。プラグは、疎水性・親水基の両方あるいはその半群を備える一層以上の分子層により包まれうる。「プラグ」という用語はまた、1つ以上の小さめのプラグ(すなわちプラグ内部のプラグ)を備えるプラグに関係する。
0042
プラグに含まれる試剤と反応生成物の相関量は、プラグ内に生じる反応などの要素に常に依存する。好ましくは、少なくとも2本のプラグ流体の混合物がプラグに含まれているものとする。
0043
「プラグ形成領域」という用語は、発明による吸込口と基板上第1流路との合流地点に関係する。好ましくは、第1流路からの流体にプラグ形成領域で形成されたプラグ流体が流入できるために、吸込口へと導入された流体が第1流路の流体と「非互換性」(つまり不混和性)を有するものとする。
0044
「プラグ流体」という用語は、反応すなわち沈降反応が生じうることを特徴とする流体、もしくは反応すなわち沈降反応の発生を利用する流体に関係する。いくつかの実施形態において、試剤を含まないプラグ流体が少なくとも1本存在しうるが、典型的にプラグ流体は溶媒と試剤を含む。試剤は、溶媒に対し溶性あるいは不溶性のどちらでもありうる。プラグ流体は界面活性剤を含みうる。本発明において、少なくとも2本の異なるプラグ流体が用いられる。両プラグ流体が試剤を含む場合一般的に混和性をもつが、各プラグ流体の試剤が少なくとも1つの生成系または中間体に形成反応をおよぼしえる限り、これら2本のプラグにもたらされる混和性は不完全でありうる。
0045
「重合体(ポリマー)」という用語は、互いに反復結合する2つ以上の基礎成分(「mers」-特定部類に属する化合体)を備えるあらゆる物質あるいは化合物を意味する。例えば、「二量体」は2つの基礎成分がともに連結された化合物である。重合体は縮合と付加重合体の両方に関係する。縮合重合体の代表例として、ポリアミド、ポリエステル、タンパク質、ウール、絹、ポリウレタン、セルロースおよびポリシロキサンなどが挙げられる。付加重合体の例として、ポリエチレン、ポリイソブチレン、ポリアクリロニトリル、ポリ(塩化ビニル)およびポリスチレンが挙げられる。他の例は、導電性重合体あるいは光屈折性重合体など、重合体の電気的性質または光学的性質(例えば非線形光学的性質)が高まることに関係する。重合体には、線形および分岐型重合体がある。
0046
「タンパク質」という用語は、一般的に、特定のシーケンスで通常共に連結する一組のアミノ酸に関係する。天然タンパク質と人工たんぱく質とがありえる。本申請書において、「タンパク質」という用語は、半群または群を含むために組み替えられたアミノ酸シーケンスに関係する。その例として、糖分、重合体、有機金属群、蛍光群または発光群、分子内または分子間での電子伝達などの工程を増強するもしくは工程に関与する半群あるいは群、たんぱく質が特定の整合または一連の整合を備えることを促進または誘導する半群あるいは群、タンパク質が特定の整合または一連の整合を備えることを妨害もしくは抑制する半群あるいは群、タンパク質フォールディング(折りたたみ)を誘導・増強もしくは抑制する半群あるいは群、あるいはアミノ酸シーケンスに組込まれそのシーケンスの化学・生化学・生物学的特性の変更を目的とするその他の半群または群など、が挙げられる。本申請書において、タンパク質の例としてはこれらに限定されないが、細胞工程又は細胞活動などの過程に関与する酵素、構造要素、抗体、ホルモン、電子担体、およびその他の高分子が挙げられる。
0048
「反応」という用語は、物理学・化学・生化学・生物学的変態に関係する。これらの変態は通常、反応原系、試剤、相、搬送流体あるいはプラグ流体を例とする少なくとも1つの化学物質に関係し、そしてまた、(物理学・化学・生化学・生物学的変態の場合には)共有結合、非共有結合、ファンデルワールス結合、水素結合あるいはイオン結合などの1つ以上の結合の分裂または形成に関係する。本用語は、共有結合と非共有結合、相転移、変色、相転移、結晶化、分解、発光、光吸収・放射特性の変化、温度変化あるいは熱吸収あるいは放射、整合の変化、そしてタンパク質などの高分子フォールディングまたは変性だけではなく、総合反応、中和反応、分解反応、変位反応、酸化還元反応、沈降反応、結晶化、燃焼反応、そして重合反応などの典型的な化学反応に関係する。
0049
「試剤」という用語は、追加反応または一連の反応を受けるかもしれない1つ以上の反応生成物あるいは中間体を生成するために、基板上に存在する他のプラグ流体の構成要素1つ以上または試剤を含む搬送流体と伴って、少なくとも1タイプの反応を受けたりそれに関与したりする(例:反応率または平衡状態位置に影響を及ぼすことにより関与する)、プラグ流体の構成要素に関係する。
0050
放射・熱・温度または圧力変化・超音波・触媒から帰する刺激により別の試剤や中間体または生成系での試剤変態反応を引き起こす誘導反応が、プラグ流体に含まれる試剤にもたらされるかもしれない。また、他のプラグ流体または試剤を含む搬送流体の構成要素1つ以上に相互作用で相転移するなどの反応(例えば沈降反応)が、試剤にもたらされるかもしれない。
0051
「基板」という用語は、装置またはチップの作成又は製作に用いられた1つ以上の材質の層や部品に関係する。本申請書において、「基板」という用語は、従来の又は認知のいかなるマイクロ加工技術により組み立てられたあらゆる基板に関係する。
0052
「基板」という用語はさらに、装置またはチップの、全本体あるいはその本体から取り外し可能又は着脱式の一部、一領域、又は一画に関係する。
0054
プラグ形成、一連のプラグ勾配生成、プラグ試剤濃度の変化、プラグ内急速混合、および混合時間の尺度構成を目的とした、発明による様々な装置と方法の詳細説明を下記する。その中でも特に、流路によるプラグの融合、分裂かつまたは選別に関する詳細な説明が論じられている。当説明により、様々な製品の製作・分析から、電子工学・医学・診断学および薬学へのアプリケーション等の範囲に及ぶ様々な用途における、発明による様々な装置と方法の実用性を裏付けする根拠が確立される。プラグおよびプラグ内に生じる工程の検出・測定方法も、他のアプリケーションと共に記述されている。
0055
粒子分離・選別、合成、非線形・(線形)確率システムの調査、不安定自触媒作用混合物による非線形増幅、化学増幅用確率化学システムの利用、反応速度測定、過程の時間的管理、反応速度測定ダイナミック・レンジ拡大、超高速測定、タンパク質結晶化、そして界面化学の動的制御などが、発明による装置と方法に関係する様々なアプリケーションとして挙げられる。
0056
これらに加え、発明による装置と方法は、その他の広範囲にわたるアプリケーションを提供する。例として、発明による装置と方法は、一連の時間尺度(例:結晶化の場合、数十マイクロ秒単位から数時間または数週間単位)での、また、一連の溶液量(例:フェムトリットル単位から数百ナノリットル単位)での溶液や反応作用に関する効果的で迅速かつ精密な操作とモニタリング(監視)の手段となる。
0057
発明の一態様において、発明による様々な装置と方法は、マイクロフルイディックがもつ次の問題1件以上を克服する手段となる。第一に、マイクロフルイディック流路では大幅な溶質分散は試剤消費量増加が生じるために、長期の時間尺度(例えば分単位から時間単位)での実験または測定が困難になる。発明による様々な装置と方法は、非混合性の搬送流体によりプラグ内部に閉じ込められている試剤を局部集中することにより、この難問を克服することを目的とする。
0059
さらに、乱流に基づいた混合技術はサンプル消費量を法外に増加させる。本発明にのっとって、プラグ内部の混合作用によりこの難問に取り組むことが好ましい。発明による様々な装置と方法は、乱流に依存するのではなく、むしろ混合作用を加速するためにカオス的移流に依存することが好ましい。カオス的移流がもたらす利点は、小規模および大規模の両流路において効率的に作用することが期待されるということである。
0060
第三に、装置内部表面の化学物質に対する制御を達成することは、装置が小規模の場合に極めて重要でありうる。したがって、非常に望ましい条件として、小型装置内の界面化学を制御することが可能であるということが例として挙げられる。発明による装置と方法にのっとって、好ましくはプラグとそれらを囲む不混和性流体の接点で結集する設計を伴う界面活性剤の念入りな選択により、溶液が露出される界面化学を好ましくは制御する。
0061
発明による装置と方法はまた、例として小型化と高速化が重要視されるマイクロフルイディック従来の分野における手段を提供する。
0063
また、内蔵型プラットホームとしても、または既存の技術(特に不混和性流体の流れに依存するもの)と組み合わせることによって、高度処理能力をともなうスクリーニング、コンビナトリアル合成、分析および診断の手段ともなりうる。
0064
ここで重要なのは、発明による装置はオートメーションおよびロボット工学技術による作動に適合しうるということである。例として、高度処理能力を備える生体分子構造・機能分類用超オートメーション・システムの基本原理として応用してもよい。したがって、発明による様々な装置と方法は、生物学・化学・生物物理学・生物工学および医学(例:診断学)の分野における、高速かつ経済的でアクセス可能(手頃)な合成・分析および測定の手段を提供する。
0065
発明による装置と方法は、この他にも多数の可能性に満ちた用途を提供する。例として、レイノルズ数低値でのカオス的混合は、不安定な化学反応を制御するための重要なツールとして利用することができる。さらに、発明によるシステムと装置は、非常に不安定な(もしくは爆発性を持つ)中間体を生成する反応を制御かつまたは監視する手段となりうる。
0066
また、自触媒作用反応に関係する反応または工程を制御または監視するにあたり有益になりうる。例として、純粋過酸化水素(H2O2)は低コストという利点に加え非常に効果的な酸化体であるが、その自触媒分解(変質)作用により、たびたび保管および取り扱い時の爆発をもたらすという問題がある。発明によるマイクロフルイディック・システムの場合、好ましくは、H2O2が原位置(in-situ)において生成され、カオス的流れにより安定し、化学兵器および細菌戦の病原体を破壊する手段となる。
0067
これらのシステム中の不安定な混合物が、発明にのっとって形成されたプラグ内部において局部集中されるので、1つ以上のプラグ内で時折生じる自触媒分解(変質)がそれらのプラグ内に局部集中されたままになる。それによって、システム全体に関係する破局反応を防ぐ。さらに、高度な処理能力を供給するのと並行してマイクロフルイディック・リアクトルの大規模なシーケンスを機能しうる。
0068
また、発明による装置と方法を用いて、単一ネットワーク内にある複数の自触媒作用の反応を結合することも可能である。例として、サンプルプラグはそれ自体よりも小さい多数のプラグに分裂し、個々の増幅階段流へと転送されうる。階段流流出物に含まれるものは、システム中の検体パターンに相当するパターンを持っているので、人工ニューラル・ネット(ANN)(Jackson,R.B.a.T. Neural Computing : An Introduction, Hilger, New York,1991;Zornetzer et al.,An Introduction to Neural and Electronic Networks,Academic Press,San Diego,CA, 1990. )のアルゴリズムを用いて、これらのパターンを分析しえる。例として、血液または唾液分析において生じるパターンは、人間と動物などを例とする生態にたずさわる一定の正常状態または異常状態(例:疾病、疲労、汚染、中毒)に匹敵しうる。
0069
さらにまた、発明にのっとり、非線形化学反応がANNアルゴリズムを手段として、検出だけでなく分析も実施できる知的マイクロフルイディック・システムを作り出すことが可能となりうる。例として、増幅後に、本発明による流路は典型的に、ヒドロゲル作動バルブを操作する材質を十分に含んでいる(Liu et al.,"Fabrication and characterization of hydrogel-basedmicrovalves,"J.Microelectromech.Syst. 2002, vol.11, pp. 45-53;Yu et al.,"Responsive biomimetic hydrogel valve for microfluidics," Appl. Phys.Lett.2001,vol.78,pp.2589-2591;Beebe et al., "Functional hydrogel structures for autonomous flow control inside microfluidicchannels," Nature, 2000, vol. 404,588.)。
0070
これらのバルブは、サンプルプラグ組成機能をもち、システム内部の流れを制御する手段となりえる。これにより、前送り網(feed-forward-network)が作り出され、分析の手段となりうる。同様に、 (例として、ヒドロゲル・バルブで入力流れを制御することにより)逆送り網(feed-backward-network)さえも作り出され、分析の手段となりうる。このような非線形ネットワークは、流路接続により事前にプログラムされたパターンを認識する(Hjelmfelt et al.,"Pattern-Recognition in Coupled Chemical Kinetic Systems,"Science, 1993, 260, 335-337. )ためだけでなく、非線形ネットワーク自体を再構成することによりパターンを学ぶ手段となりうる(Jackson, R. B. a. T. Neural Computing :An Introduction, Hilger, New York,1991 ;Zornetzer et al., An Introduction to Neural and Electronic Networks,Academic Press,SanDiego, CA,1990.)。このような知的マイクロフルイディック装置は、恐らく、完全に自律した検出・分析および信号処理を行うことが出来るなど、現代の生物学的システムおよび人工システムによるものをしのぐ、前例無き能力を備えうるものである。
0071
また、発明による装置と方法は、分類を要し微量でのみ利用可能である何千もの新しい有生分子を識別する手段であるゲノミクスとプロテオミクスにおいて有用である。特に、ゲノミクスとプロテオミクスにおける成功事例として挙げられるのは、タンパク質結晶化に効果的な高度処理能力機構の需要増加である。X線の構造判定はタンパク質構造分類の主な方法として応用され続けている。しかしながら、結晶化作用を理解するための著しい努力にもかかわらず、その合理的な研究方法案のヒントとなる一般理論さえも発見されておらず、高分子結晶化作用の大部分は未だ実験的知識の分野として認識されるままである。結果として、タンパク質結晶に最も広く用いられている方法は実験的スクリーニングである。
0072
発明による装置と方法のアプリケーションを下記に続ける。例として、問題の多くは、高度処理能力の速度とタンパク質結晶化に携わるものである。タンパク質構造判定とタンパク質間の相互作用を量的に確認する場合、少なくとも次の技術的課題2項目が挙げられる。(1)ロボット工学技術の大部分は未だ、既存の方法を単にオートメーション化するだけであるにもかかわらず、多くの場合、小規模な研究所には賄えない金額を要する。そして(2)結晶化工程に対するさらに優れた制御能力を備える新しい概念による方式が必要とされる。さらに、結晶化試験のセットアップ(準備)と観察は、通常、秒単位から数日に及ぶ周期にわたり、マイクロリットル量以下という微量の流体処理に関係する。
0073
したがって、本発明による様々な装置と方法は、溶性・膜タンパク質の高度な処理能力を伴う結晶化の今までに無い効果的な手段を提供する設計がされている。発明によるシステムは、数千にわたる結晶化を分単位で試験できる簡易且つ経済的なセットアップ方を提供するだけでなく、結晶化に至る混合および核生成などの工程に関する独特な時間的管理を可能にする。また、本発明によるシステムは、核生成など短い時間尺度で生じる現象だけでなく、結晶成長など長期にわたる時間尺度で生じる現象を制御することにより、タンパク質結晶化を制御する手段となりうる。
0074
その上、本発明による装置と方法は、時間領域が10−5 −10−7秒という高度な処理能力・動力学・生物物理学的測定の手段となりうる。好ましくは、本発明による様々な装置と方法が必要とする各種溶液量は、約数ナノリットルから数マイクロリットルのみである。このような装置と方法のアプリケーションは、酵素反応動力学とRNAフォールディング、そしてナノ粒子分類・合成の研究に関係する。その詳細を後述する。
0075
(流路と装置)
発明の一態様として、出口とは別の入口を備える第1流路を備える1つ以上の基板をともなう装備が装置にはなされている。状況に応じて、第1流路と流体が伝達する1本以上の第2流路(又は分岐流路)、第1流路と流体が伝達する少なくとも1つの搬送流体貯水溝、第1流路と流体が伝達する少なくとも2つのプラグ流体貯水溝、そして基板内部の流体に連続的な圧力を加えるための手段も装備可能である。
0076
発明による装置は、少なくとも1つの基板を好ましくは備えている。
0077
基板は、プラグのトラッピングが生じえることを特徴とする流路に沿った、1つ以上の拡張部位または領域を備えうる。本発明による基板は多くの接続する流路を備えうる。
0078
装置は1つ以上の出口または吸込口を備えうる。また、各出口と吸込口は、水源または貯水溝と伝達しうる。入口と出口は、接続されている流路または貯水溝と流体伝達するかもしれない、または1つ以上のバルブを含んでいるかもしれない。
0079
いかなる手段においても流体を入口から流路へ導入することができる。典型的に、入口に入る流体の流量を制御できることを特徴とするシリンジポンプが手段となりうる。
0080
およそ同一サイズのプラグ又はプラグ形成領域内の流路断面とよく似たサイズの断面を備えるプラグがプラグ群により形成されるように、プラグ形成領域には通常、プラグ流体入口と搬送流体を含む流路の合流地点が備えられている。ある実施形態において、基板は複数プラグ形成領域を備えうる。
0081
異なるプラグ形成領域は各々、基板上の同一又は異なる流路に接続されてもよい。好ましくは、加圧されたプラグ流体が第1流路を通過する搬送流体の流れる角度で第1流路へ導入されるようにサンプル入口が第1流路と交差する。例として、T字型合流地点でサンプル入口と第1流路が交差する(例:サンプル入口が第1流路に垂直なるように[つまり90度で]交差する)のが好ましい実施形態。しかしながら、サンプル入口はいかなる角度でも第1流路と交差しうる。
0083
用途に合わせて、他の形状および流路の幾何形状を用いてもよい。模範的な実施形態において、交差する流路間の角度は約60度〜約120度の範囲内である。特定模範角度は45度、60度、90度、120度である。識別領域の精密な境界は必要ないが好ましい。
0084
本発明による第1及び分岐流路は、各別々に、直線または1つ以上の屈曲を備えうる。基板に関連する屈曲角度は約10度以上となりうる(好ましくは、約 135度・180度・270度または360度以上)。
0085
発明のある実施形態における基板は、プラグ形成領域またはその付近で第1流路と伝達する少なくとも1つの吸入口と、第1流路やプラグ形成領域の全範囲もしくは一部分の中にあるまたはこれらの領域に一致する検出領域と、検出領域を伴う検出器を備えている。ある特定の実施形態において、装置に2つ以上のプラグ形成領域が備えられているかもしれない。例として、分析ユニットが、第1プラグ形成領域で第1流路と伝達する第1吸込口と、第2プラグ形成領域で第1流路と伝達する第2吸込口(好ましくは第1プラグ形成領域の下流)とを備える場合に実施形態が実現する場合などがある。
0087
好ましくは、これらの入口流路は並列しており、おのおの直角に第1流路と交差する。異なるプラグ形成領域から導入されるプラグの混合を特徴とする特定の実施形態において、入口流路が第1流路に沿って互いに隣接していることが好ましい。例として、第一流路の直径60μmがプラグ形成領域またはその付近で30μmに逓減(ていげん)しうる。それからまた、入口流路直径が約30μmであるのが好ましく、且つ、プラグ混合が好まれる実施形態においては、第一流路が端から端まで入口流路直径とほぼ同等の距離(つまり約30μm)で離れているのが好ましい。
0088
発明による実施形態においては、基板にもまた流路に沿う検出領域が備わっている。例えば、試剤のような化学物質に関する1つ以上の特性を分析するために、独立してまたは共に作用する複数の検出領域と検出器が備えうる。
0089
検出領域は、プラグ形成領域またはその下流の第1流路部の中にある又はそれと伝達もしくは一致する。実施形態を選別する際には、検出領域が、識別領域もしくは分岐点またはその上流の第1流路部の中にある又はそれと伝達もしくは一致する。検出領域の精密な境界は必要ではないが好ましい。
0090
発明による典型的な基板は、メイン吸収口下流にあるプラグ形成領域にある第1流路と伝達する1つ以上のプラグ流体入口に加えて、第1流路の一部であり且つ第一流路に直接供給または伝達する搬送流体入口を備える(個々の異なるプラグ流体入口が異なるプラグ形成領域で第1流路と好ましくは伝達する)。
0091
異なるプラグ流体または溶液から形成されたプラグの流れはいかなる順序においても開始されうる。例として、第1プラグ流体を含む水溶液の流れを、第1プラグ形成領域の第1入口から開始しうる。続いて、水性第2プラグ流体のプラグの流れを、第1入口下流の第2プラグ形成領域にある第2入口から開始しうる。
0092
(流路、基板、および装置の製作)
ソフトリソグラフィを例とする従来のフォトリソグラフィ(写真平版)技術またはマイクロ加工技術を用いてシリコン基板・チップまたは装置をエッチングすることにより、発明による基板と装置が製作される。ポリジメチルシロキサンを用いるマイクロフルイディック装置の製作は前ですでに述べられている。これらの製作およびその他の方法は、低コストの小型化された装置を提供する手段となりえ、ソフトリソグラフィの場合には、改善された柔軟性、安定性および機械的耐久性のような有利な特性を持つ強固な装置を提供する手段となりえる。好ましくは、光学的検出が用いられる場合、プラグ・搬送流体・および基板材質などから発する光拡散性が発明により最小限に保たれる。発明による装置は、比較的低コストでセットアップが簡単である。
0093
発明による流路、基板および装置を製作する手段となりうる機械加工方法(例:マイクロ加工方法)は、その巧みな技術で世に知られており、回転塗布・化学蒸着法のような膜蒸着(膜形成)工程・レーザー製作またはフォトリソグラフィ技術・または湿式化学エッチング又はプラズマエッチングなどのいずれかに関係する。
0094
光学透明シリコーンゴム上またはポリジメチルシロキサン(PDMS) 上で(好ましくはPDMS上で)流路が成形されうる。これは、例として半導体製作において用いられる同タイプの結晶シリコンウエハーにこれらの流路の陰画をエッチングして流路を型鋳造することにより実行しえる。半導体機構をパターン化するのと同じ又は類似した技術が、流路パターンを形成する手段となりえる。流路製作の一方法として、硬化処理されていないPDMSを例としてペトリざら底に置かれた型に注ぐというものがある。好ましくは、硬化を促進するために型を焼成す。硬化後、PDMSは型から取り外されてトリミングされる。例えばコルクボーラーまたはシリンジ針のようなツールを用いてPDMSに穴加工しうる。表面に親水性をもたらすことが望まれる場合は、使用前にPDMS流路をHCl熱浴に浸してもよい。それから、流路の底あるいは床または上部を形成する手段となりうる顕微鏡カバースリップ(又は他の適切な平面状のいかなるもの)の上に、PDMS流路を設置することができる。
0095
発明による基板は、ガラスまたは重合体またはシリコン半導体集積回路素子またはシリコーン・エラストマーのような材質から好ましくは製作される。
0096
例として、基板の寸法は 各側面約0.3cmから約7cm、厚さ約1ミクロンから約1cmに及ぶかもしれないが、これ以外の寸法が適合されるかもしれない。
0097
基板は通常、入口流路と流体伝達する吸込口の流体貯水溝または水源で構造しうる。貯水溝は、基板中および第1流路中への流体導入を好ましくは促進する。
0098
サンプルが装置内へ進入できるように、吸込口は基板の床のように開口が備えられているかもしれない。吸込口はまた、(流体供給管でありうる)Teflon(登録商標)パイプまたは液体クロマトグラフィーやHPLCパイプなどの適切な配管部品を接続するのに適合するコネクタを備えているかもしれない。このような処置は、プラグ形成領域で望まれる圧力を得るために、正圧流体の導入を促進することを目的とする。
0099
製作工程を経た流路と他の構成要素を含む基板は、(他の透明または不透明カバー材質も使用可能だが)好ましくは薄いガラスや水晶のような透明カバーで覆われ密封されていることが好ましい。精密且つ効率的な製作方法を確立すべく充実した開発が重ねられた技術であるという点で、シリコンは好ましい基板材質であるといえるが、ポリテトラフルオロエチレンのような重合体を含む他の材質を用いてもよい。流路、バルブおよび他の要素を備える分析装置は、様々な基板材質で設計し製作することができる。外部放射線源または検出器が使用される場合、流体への光学アクセスを可能にするために、検出領域は透明なカバー材質で覆われていることが好ましい。例として、シリコン基板をPYREX(登録商標)カバースリップと陽極結合するには、両構成要素を水性H2SO4/H2O2浴槽で洗浄してから水でゆすぎ、それから、一例として450Vの電圧をかけながら約350℃まで加熱することにより成し遂げることができる。
0100
サンプルの流れ・混合を目的とした様々な流路を基板上で製作することができ、これらの流路を検出点・識別点・または選別点として基板やチップまたは装置上のいかなる部位にも配置することができる。また、異なる時間・距離で検出器の視野に流体を入れるために、基板中に流路を設計することもできる。精密な時間・距離で流体の流れを融合または分裂するための流路を設計することもできる。
0101
一群のマニホールド(共通流路へ繋がる又は共通流路から繋がるいくつかの流路から成る領域)は、異なる分析ユニットから複数の分岐流路を通り適切な溶液出口に向かうプラグの動きを促進することに関係しえる。
0102
マニホールドは、異なるレベルの深さで基板内に好ましくは製作される。したがって、発明による装置は、各ユニットの分岐流路から溶液を集結し、溶液を出口へと導くマニホールドに送ることができる複数の分析ユニットを備えうる。出口は、例として配管のセグメントまたはサンプル管(例:標準の1.5ml遠心分離管)接続の受け側として適合しうる。またマイクロピペットを用いても集結操作が可能である。
0103
(プラグ形成方法)
発明による様々な流路、基板および装置は、主としてプラグ形成・操作のために使われる。
0104
好ましい実施形態において、プラグ流体が第1流路への導入時または導入前に著しい混合作用をしめさない。プラグ流体が、入口または入口前で別個の層流を形成しうる。それらは追加流体により分離されうる。
0105
あるいは、それらのプラグ流体は、異なるサイズの入口を経由して搬送流体に導入されうる。
0106
プラグ内のプラグ流体濃度は、プラグ流体の体積流量を調節することにより調節しうる。さらに、第1流路と分岐流路[複数可]の直径が異なりうる。
0107
図2Aは、流路の層流輸送とプラグ輸送を対比する概略図である。プラグ輸送を示す下図において(赤と青で印される)水性試剤2種は、仕切り(ディバイダ)水性流により分離するところの層流を形成する。プラグ形成後、プラグ流体が混合する時点で、流展する油と共に3本の流れが流路に入る。一般的に、プラグ輸送中にプラグ流体の急速混合がプラグ内に生じる。それと対照的に、上図に示されるように、層流輸送では流体混合の激しい分散が徐々に生じる。上図において、dlがd=0からの距離を示し、Uが流速を示すとして、所定の一点dlの時間tをt1≒d1 /Uから概算することができる。下図において、時間tlはtl = dl/Uから得ることができる。
0108
図2Bは、水プラグおよび油プラグ内混合(上部の略図と写真)、および水性プラグ流体のみを備える層流内混合(下部の略図と写真)を示す写真と概要図を示す。油(ここの場合は搬送流体)は基板の流路200番に導入される。油の代わりに層流による混合がなされる場合、水が(油の200番に相当する)207番の流路に導入される。201番と202番と203番の吸込口から(そして層流の場合は、204番、205番、206番の吸込口から)3本の水性プラグ流体が搬送流体に導入する。
0109
好ましいスキームとは、水性プラグ流体が、好ましくは短距離または最短距離で搬送流体に接する前に、共流するといったものである。好ましい実施形態において、共流するプラグ流体が横断する距離は流路幅とほぼまたは実質的に等しいとされる。
0110
上図が示す中央または第2水性プラグ流体は、淡水、緩衝液、溶媒、もしくは異なるプラグ流体でありうる。水性流体が搬送流体と接触する前に、中央の水性プラグ流体がまずは他の2本の水性プラグ流体を好ましくは分離する。したがって、間に入る(中央の)水性プラグ流体が搬送流体に接する前に、外部水性プラグ流体2本の反応または混合を防いだり、遅らせたり、最小限に抑えうる。非分岐流路に沿って継続すること、分裂後に流路内へ進入すること、別流路からのプラグと融合すること、または出口を通り基板の外に出ることが、プラグ形成領域で形成されるプラグには可能である。油の非存在下では、著しい混合が生じない又は単なる局部的な混合しか生じない状態において、水性プラグ流体が層流へと流れる状況が図2に表されている。これと対照的に、プラグ内でプラグ流体は大部分あるいは完全に混合する。
0111
図3は、水性プラグ流体と油(搬送流体)から0.5μL/分(上部の概要図と写真)と1.0μL/分(下部の概要図と写真)の流量で湾曲した流路内を流れるプラグ流れを示す写真と概要図を示す。このスキームは、滑らかなかどまたは曲線状に湾曲した流路に沿って流れる細長いプラグにおける試剤混合の増強を可能にする。3本の水性プラグ流体が個別の吸込口301番〜306番に導入される間、搬送流体は基板上吸込口300番と307番に導入される。図2のように、好ましいスキームとは、プラグ流体が好ましくは短距離または最短距離で、搬送流体に接する前に、まず共流するといったものである。好ましい実施形態において、共流するプラグ流体(例:水性プラグ流体)が横断する距離は流路幅とほぼまたは実質上等しいとされる。中央または第2水性プラグ流体は淡水、緩衝液、溶媒、またはプラグ流体を備えうる。そして、水性プラグ流体が搬送流体(この場合、油)と接触する前に、中央の水性プラグ流体が好ましくは最初に他の2本の水性プラグ流体を分離する。したがって、間に入る(中央の)水性プラグ流体は、油(又は搬送流体)に接する前に、2本の外部水性プラグ流体の反応または混合を防いだり、遅らせたり、最小限に抑えうる。
0112
図4は、油および複数プラグ流体の注入によるプラグ形成を図示する写真と概要図を示す。図4は別個のプラグ流体5本を示すが、一本のプラグ流体が5本未満又は5本以上のプラグ流体を別々に基板へ導入することもある。プラグ流体を形成する試剤または溶媒が異なるかもしれない、あるいは、それらのうちのいくつかは同一または類似するものかもしれない。図2のように、水性プラグ流体が個別の吸込口401〜405番に導入される一方、油は基板の吸込口400番に導入される。それから、水プラグは406番の出口を流れる。好ましいスキームは、水性プラグ流体が、好ましくは短距離または最短距離で、油に接する前にまず共流するといったものである。好ましい実施形態において、共流するプラグ流体が横断する距離は流路幅とほぼまたは実質上等しいとされる。1本以上の水性プラグ流体は、淡水、緩衝液、溶媒、またはプラグ流体を備えるかもしれない。そして、水性プラグ流体が油と接触する前に、少なくとも1本の水性プラグ流体が最初に少なくとも他の2本の水性流を分離することが好ましい。したがって、水性流が油に接する前に、間に入る少なくとも1本の水性プラグ流体が外部の水性流2つの反応または混合を防ぐかまたは遅らせるまたは最小限に抑えるとする。図5は、図4と類似して、いくつかの試剤が複数の入口から導入することができるマイクロフルイディック・ネットワークを示す。
0113
さらに、図5は、試剤4種(A、B、CおよびD)がプラグにより混合されるところの屈曲部を備える流路を示す。図5において示されるように、水性流が502番と504番と506番の吸込口に導入される一方、試剤A、B、CおよびDは501番と503番と505番と507番の吸込口に導入される。図5は、様々な混合段階におけるプラグを表している。様々な混合段階とは次のことを特徴とする。混合物50番は初期のA+B混合物に相当する。混合物51番は初期のC+D混合物に相当する。混合物52番は混合工程後のA+B混合物に相当する。混合物53番は混合工程後のC+D混合物に相当する。そして、混合物54番はA+B+C+D混合物に相当する。等式
C.n. = Uμ/γ Eqn.(1)
から算出されるキャピラリー数C.nが低数値の時に、選択的プラグ形成が生じる。 等式 (1) において、Uは流速、μはプラグ流体または搬送流体の粘度、そしてγは水と界面活性剤の界面における表面張力である。
0114
異なる粘度または本質的に同一粘度の溶媒によって、プラグが形成されうる。好ましくは、実験または反応において使われる条件とパラメーターは、キャピラリー数値結果が約0.001≦C. n. ≦約10の範囲内におさまるものとする。好ましくは、粘度や速度などのパラメーター設定値はプラグ形成が確実に行われるようなものとする。理論に関わらず、流れが停止しない限りC. n.は≦約0.2となり、そしてプラグ流体・搬送流体界面の表面張力が溶液と壁の接触面の表面張力より低い限り、プラグ形成が持続すると考えられている。流れが停止した場合、C. n.は0である。
0115
搬送流体にパーフルオロデカリンが使われプラグ流体が水性であるところの一実施形態において、当システムをC.n.値約0.1 (300 mm s-1) まで操作しえることが発見された。このシステムにおいて、C.n.値が約0.2以上に上昇した時点でプラグ形成が不規則になった。パーフルオロデカリン粘度は5.10×10-3kg m-3 s-1で、プラグと搬送流体の界面における表面張力は13×10-3 N m-1であった。
0116
プラグ流体と搬送流体の割合変化、またはプラグ流体と搬送流体流れの相関的体積流量の変化などの技術により、そのサイズが、例として、流路断面寸法(dが流路の断面寸法であるところの「d」)の約1〜4倍となるように、プラグの長さを制御することができる。水性流の流量が搬送流体より低い場合に短いプラグが形成される傾向がある。プラグ流体流量が搬送流体より多い場合に長いプラグが形成される傾向がある。
0117
ある近似値において、dが流路断面寸法であるところの2xd3とプラグ量が等しくなる。したがって、例をとると、約16ピコリッター(pL)から16ナノリットル(nL)のプラグ量に相当する20×20から200× 200μ22の横断面積を伴う流路において、プラグを形成することができることになる。流路サイズは、約500μm(量に換算すると約250nLに相当)またはそれ以上に増大しうる。流路サイズは、例として、1μm(量に換算すると約1フェムトリットルに相当)まで縮小しえる。大き目のプラグが、特にタンパク質結晶化のような特定のアプリケーションにおいて有用である一方、小さ目のプラグは、超高速度での反応速度測定のようなアプリケーションにおいて特に有用である。
0118
好ましい一実施形態において、プラグは個々の容量を維持しながら、流路のサイズと形状に順応(一致)する。したがって、プラグは、幅の広い流路からより狭い流路へ移動するにつれて、好ましくはより長くより薄くなり、その逆もまた同様である。
0119
プラグ流体は、溶媒と、状況に応じて反応原系を備えうる。発明における手段に適した溶媒は、プラグ流体で使われているようなものであり、有機溶媒、水性溶媒、油、あるいはメタノールとエタノール、メタノールおよび水などを例とする同一または異なるタイプの溶媒混合物に関係する。発明による溶媒は、極性・無極性溶媒に依存する中極性のものを含む極性溶媒・無極性溶媒に関係する。好ましい実施形態において、超純水(例:カラムクロマトグラフィーを例とする18MΩの固有抵抗)、10mMのトリスHC1および1mMのEDTA(TE)緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水または緩衝酢酸溶液を、溶媒としてもよい。試剤と互換性をもつその他の溶媒を使ってもよい。
0121
プラグ内試剤濃度は変更可能である。発明によるある実施形態において、大半のプラグが単一分子以上または粒子以上のものを含まないように充分なレベルの薄さに試剤濃度を調整しうる。これにより、プラグが2つ以上の分子または粒子を含む確立がわずかとなる。他の実施形態において、プラグ流体の試剤濃度は、反応生成物量を最大限にするのに充分な濃度に調節しうる。
0122
油を含む搬送流体、好ましくはフッ素添加された油を含む搬送流体が適している。例として、パーフルオロデカリン(perfluorodecaline)またはパーフルオロペルヒドロフェナントレン(perfluoroperhydrophenanthrene) のような粘性流体、パーフルオヘキサン(perfluorohexane)のような非粘性流体、そしてその混合物(搬送流体とプラグ流体の粘度調和に特に有用)などが挙げられる。
0123
フルオリナーツ(Fluorinertz)液体TM(3M社, St. Paul, MN, USA) のような市販のフッ素添加化合物を使用してもよい。
0124
搬送流体やプラグ流体、またはその両方は、表面張力を低下させる物質(例:界面活性剤)等の添加物を含みうる。プラグ流体内に界面活性剤を含むことが望ましくない場合、プラグ流体と相対する搬送流体の中に存在する他の溶性物質もまたその手段となりうる。界面活性剤は、プラグのサイズ、流れおよび均一性の制御および最適化を促進する手段となりうる。
0125
例として、界面活性剤は、交差する流路へのプラグ押出成形または注入に要されるせん断力を低下させる手段となりうる。界面活性剤は、プラグ容量や周期、または交差する流路にプラグが離脱する割合または頻度に影響を及ぼすかもしれない。さらに、界面活性剤は、流体によって流路壁の湿潤性を制御する手段となりうる。発明による一実施形態において、プラグ流体の少なくとも1つは、界面活性剤を少なくとも1つ備えている。
0126
手段となりうる好ましい界面活性剤の例としてはこれらに限定されないが、搬送・プラグ流体と互換性をもつなどを特徴とする界面活性剤が挙げられる。
0127
典型的な界面活性剤として、TweenTM、SpanTM、ZonylTM(デュポン社、Wilmington, DE, USA)などのフッ素添加界面活性剤が挙げられる。例として、搬送流体がフッ素添加流体で、プラグ流体が水溶液である場合、親水基をもつフッ素添加界面活性剤が好ましい。
0128
しかしながら、界面活性剤の中には、そのアプリケーションによって、それほど望ましくないものがありうる。例えば、水性プラグが、(生化学反応を含む)化学反応マイクロリアクターとして、または生体適合物質の分析かつまたは選別に使用される場合、SDSのような水溶性界面活性剤によりプラグ内容の特性が奪われるまたは不活性化することがありうる。
0129
搬送流体がプラグよりも流路の壁を優先的に湿潤することが好ましい。この条件が満たされる場合、通常、プラグは流路の壁に接することなく搬送流体の薄い層により壁から離されたままの状態となる。この条件下で、プラグの安定性が保たれ、その流路に残留物を残さない。好ましくは、適切な界面活性剤の選択などにより表面張力を設定することで、プラグ流体よりも優先的な搬送流体による流路壁の湿潤が達成される。好ましくは、プラグ流体−流路壁界面における表面張力(例:水−PDMS界面における表面張力約38 mN/m)は、プラグ流体−搬送流体界面の表面張力(例:搬送流体パーフルオロデカリンに含まれる10%の1H,1H,2H,2Hパーフルオオクタノール〔perfluorooctanol〕などの界面活性剤を伴う水−搬送流体界面における表面張力約13mN/m)よりも高い設定となる。この条件が満たされない場合、プラグは、流路壁に吸着し、円滑な輸送が行われない傾向にあり(例:lH,lH,2H, 2Hパーフルオオクタノールの非存在により、水−パーフルオロデカリン界面における表面張力が55mN/mで、水−PDMS界面の表面張力〔例:約38 mN/m〕より高数値)、その結果、プラグはPDMS流路の壁に吸着する。
0130
フッ素添加界面活性剤の導入時、流路(PDMS、フッ素添加無し)と搬送流体(フッ素添加油)の壁が、化学上本質的に異なるため、壁−水界面上において、界面活性剤が油−水界面の表面張力を選択的に低下させる。
0131
これにより、流路壁に付着しないプラグの形成が可能になる。
0133
プラグ流体と搬送流体は1つ以上の入口から導入されうる。特に流体は、プラグ流体または搬送流体のいずれかを含む空圧作動シリンジ貯水溝を通って基板に導入されるかもしれない。プラグは相対応力の変更により搬送流体において生成されるかもしれない。プラグ流体がプラグ形成領域内の搬送流体と接触後に分離したプラグへと剪断変形する。
0134
発明において、プラグ形成領域で、第1流路を通過する搬送流体の流れにプラグ流体を導入することによりプラグが形成される。圧力差によるもの、または弁作用によるものなど、望ましい流れ制御のいかなる方法を用いても、流れの応力と方向を制御することができる。これにより、1つ以上の望ましい分岐流路または出口にプラグを移動させることが可能となる。
0135
発明による好ましい実施形態において、物理的または化学的特性・標識・特質またはタグの検出または測定に基づき、ミクロレベルの流れにおいて1つ以上のプラグは力学的に検出・分析・分類・または選別される。
0136
第1流路の流れは、必ずしもではないが一般的に、連続的であり、停止・開始・反転・速度変更等の動向を示しうる。選別に先立って、非プラグ流体は、(入口の水源または流路等の)サンプル吸込口へと導入され、使用に向けて装置を水和・調整するためにプラグ形成領域を通って(例:毛管作用によって)誘導される。同様に、 (例:「停滞」空気の)基板を取り除き使用に向けて調整するために、緩衝液または油もまた、第1流路と直接伝達するメイン吸込口に導入することができる。望ましくは、例として出口に緩衝液または油を加えることによりその圧力を調節または均一化することもできる。
0137
例として吸入口に送られる加圧シリンジを伴うメインおよびサンプル吸入口での圧力調節により、プラグ形成領域圧もまた調整することができる。プラグ形成領域で油と水の流量差を制御することにより、生成されたプラグのサイズと周期を調整しうる。あるいは、プラグ形成領域に入る溶液の流れを制御することによりプラグサイズと周期を制御しているプラグ形成領域のサンプル吸入口、又はそこへ接続されているサンプル吸入口の、どちらにもバルブを設置または適合しうる。
0138
周期およびプラグ容量はまた、流路直径かつまたは流体粘度に依存するかもしれない。
0139
(プラグ内混合)
図7(a)-(b)は、同値の総流速にて屈曲流路を通るプラグ内急速混合(a)と層流内のごくわずかな混合作用(b)を図示するマイクロ写真(10p.s露光)を示す。水性流は、図7(a)-(b)に示される吸入口700番〜705番に導入された。図7(c)と7(e)において、Fluo-4は吸入口706番と709番に導入され、緩衝液は吸入口707番と710番に導入され、CaCkは吸入口708番と711番に導入された。図7(c)は緩衝ナトリウム・モルホリノプロパンスルホン酸水溶液(aqueous sodium morpholinepropanesulfonate buffer) (20μM、pH 7.2)内のFluo-4溶液(54μM)とCaCl2溶液(70μM)から成るプラグ内部の急速混合により生じる時間平均された蛍光性を示す偽色彩法マイクロ写真(2s露光、個々のプラグは見えない)を示す。この緩衝液は中間水性流としても用いられた。図7(d)は、プラグを通り移動した距離の関数(左)と所定流量でその距離を移動するのに要した時間の関数(右)に基づき、画像から得た相関的且つ正規化補正後の蛍光強度(I)の線グラフを示す。全流路幅にわたる強度が測定された。「PFD:水」の総体積流(μL min-1の流量)は、0.6 : 0.3、 1.0 : 0.6、12.3 : 3.7、10: 6、20: 6であった。図7(e)は、(c)で使用された溶液の層流における小規模な混合から生じる弱い蛍光性の偽色彩法マイクロ写真(2s露光)を示す。全流路の深さは45μm。吸入口流路の幅は50μmで、屈曲流路の幅は28μm:Re(レイノルズ数) -(約)5.3 (水)、 -(約)2. 0 (PFD)。
0140
図8は、各階段の屈折角度が90°の階段流路において約0.5μL/分(上部の概要図と写真)と約1.0μl/分(下部の概要図と写真)の流量における急速混合を図示する写真と結線図を示す。その一方、 図9は、各階段の屈折角度が135°の階段流路において約1.0μL/分(上部の概要図と写真)と約0.5μL/分(下部の概要図と写真)の流量における急速混合を図示する結線図と写真を示す。
0141
搬送流体が流路806番と807番(図9の流路906番と907番)に導入される一方、水性流は図8の吸入口800番〜805番(図9の吸入口900番〜905番)に導入される。その時に形成されるプラグは、出口808番と809番(図8)そして出口908番と909番(図9)を通る。図8と図9に見られるように、(他の流路にみられる急カーブと比べて比較的)なだらかなカーブを伴う流路ではなく、多重階段を伴う流路に沿ってプラグが輸送されている。このような多重階段型流路の利点は、プラグ内部の物質混合をさらに促進しうるということである。
0142
混合を加速または改善する手段となりうるアプローチがいくつかある。これらのアプローチは、混合制御機能を備える幾何学様式により流路を設計する手段となりうる。流動プラグ内部流れと対称する直線流路移動中のプラグ内部流れが相違するように、前者を摂動させることにより、流れを制御することができる。
0143
例として、流路の幾何学様式の変化(例:屈曲流路の適用)、プラグ流体の組成変化(例:粘度変化)、搬送流体の組成変化(例:プラグ形成の粘度または表面張力が異なる搬送流体層流のいくつかを適用する—この事例においては典型的に混合に対する影響が及ぼされ、他の場合には増強作用が生じる)、さらに、流路壁のパターン変化(例:親水性・疎水性あるいは差動荷電パッチ〔patches〕が流動中のプラグと相互作用し、その内部の混合増強をもたらすべく時間周期的な流れを誘導すること)により、流れの摂動をもたらすことができる。
0144
プラグ内の混合を増強するために、様々な流路設計を実装することができる。
0145
図1Aは基本的な流路設計の略図を示し、図1Bは基本的な流路設計の一連の周期的変化を示している。図1Cは、図1Aにおいて示される基本設計要素と、図1B(1)—(4)において示される一連の周期的変化に基づく代替要素のシーケンスにより生じる一連の非周期的組み合わせを示す。これらの周期的変化による影響を可視化した場合、その非周期的組み合わせは周期的な流れから生じる対称性を、好ましくは無効にする手段となる(図1Cを参照)。ここにおいて、関連するパラメーターは、チャネル幅、流路幅、周期、曲率半径、および曲り方向に基づく曲りのシーケンスである。基本設計のパラメーターを、c=路幅、 l=周期、そしてr=曲率半径のように定義する。基本設計において、「左」と「右」が流路内のプラグ経路に沿う中心線と相関関係にあるところの(左、右、左、右)としてシーケンスを定義することができる。
0146
図1B(1)-4は、基本設計における一連の周期的変化の概要図を示す。図laのパラメーター定義に基づいて、少なくとも1つの可変パラメーターを定義するのが好ましい。図1B(1)において、チャネル幅はc/2である。図1B(2)において、周期は2lである。そして、図1B(3)において、曲率半径は2rである。図1B(4)において、曲率半径はr/2、シーケンスは(左、左、右、右)。
0147
図1C(1)-(4)は、図1B(1)—(4)における周期的変化の一連要素と図1Aにおいて示される基本設計要素を組み合わせることにより形成された、一連の非周期的組み合わせの概要図を示す。図1C(1)において、図1Aで示される基本設計の周期(ここにおいて「a」と表記)と、図1B(1)で示される代替の流路周期パターン(ここにおいて「bl」と表記)は、a +b 1 + a+…から得られる。図1C(2)において、非周期的組み合わせは+b2+aから得られる。図1C(3)に示される流路(ここにおいて「c3」と表記)において、非周期的組み合わせは+c3+aから得られる。図1C(4)に示される流路(ここにおいて「c4」と表記)において、(右・左)シーケンスが特異性を持つパターンで導入され、通常(左、右)シーケンスの反復が観察される。この特異性を加えることによって、 (左、右、左、右)+(右、左)+(左、右、左、右)というシーケンスになる。
0148
混合作用を加速する別のアプローチとしては、ベーカーによる変態の(補助)定理として知られるものを応用し、マイクロフルイディック・チップ上の合理的設計を伴うカオス的流れに依存するものがある。
0149
ベーカーによる変態の(補助)定理による急速混合を達成するにあたり、流体の方向転換は重大な要素となる。ベーカーによる変態の(補助)定理によると、アンフォールディング(引き伸ばし)とフォールディング(折りたたみ)のシーケンスが、2つの構成要素の光条厚さ(混合が拡散によって生じなければならない距離)の指数関数の減少をもたらす。あらゆるフォールディング‐アンフォールディング作用において、(異なる数値の場合もあるが)一般的に因数2の数により光条厚さを低下させる。理想的条件において、光条厚さ(ST)は下の等式(2)で表すことが出来る。したがって、理想条件下において、シーケンスn数のフォールディング‐アンフォールディング・方向転換作用で、
ST(tn)=ST(t0)× 2-n Eqn.(2)
により得られる指数関数の減少が光条厚にもたらされる。等式(2)において、ST(tn)はtn時の光条厚さ、ST(t0)はt0時の初期光条厚さとして示され、nはフォールディング‐アンフォールディング・方向転換作用の数を示す。
0150
発明にのっとって、ベーカーによる変態の(補助)定理は、直線領域と急な曲りを伴うシーケンスから成る流路を作り出すことにより好ましくは実装される。図11は、マイクロフルイディック流路を流れるプラグのベーカーによる変態の(補助)定理を実装し可視化することを目的とした流路の幾何学設計の概要図を示す。他の設計もまた手段となりうる。流路屈曲角度およびその直線部長さは、表記されている流れ方式に対応する最適な混合作用を生じさせることを前提に選択される。関連する特定の用途または反応に応じて、異なる直線経路長さおよび異なる屈曲を適用することができる。
0151
(ベーカーによる変態の補助定理の一周期に匹敵する)流路の直線部112番と急な屈曲部111番のペアをそれぞれ流動するプラグには、一連の方向転換とアンフォールディングおよびフォールディング作用がもたらされる。流路直線部において、プラグ流れは通常の再循環流となる。急な屈曲点では通常、プラグが波動し、その結果、方向転換をもたらす。これは、急な内角の勾配圧力がはるかに高く、外部の壁に沿う移動経路がより広範のために起こる現象である。ベーカーによる変態の(補助)定理に基づく当混合法は非常に効果的であり、したがって、好ましい混合タイプの一例として挙げられる。特に、この種の混合は、拡散による試剤混合に要される時間を速やかに削減することを可能にする。
0152
流量限界が典型的に流路サイズに依存しないキャピラリー数(C.n.)によって設定されるので、異なるサイズの流路でほぼ均一の流量にてプラグ形成を維持することができると考えられている。定流量時の混合時間( t miX)は、流路サイズ(d)の縮小に伴って減少するかもしれない。第1に、大型・小型流路両方の試剤を混合するには、同n数のフォールディング‐アンフォールディング‐方向転換サイクルが要されると推定される。当仮定(n=5)は、前に測定したd=55マイクロメータ(μm)とd=20マイクロメータ(μm)の流路における混合の場合とほぼ一致する。各サイクルにおいて、プラグがプラグ長さの約2倍の距離(約3d)以上移動する必要がある。それ故に、15dを移動する時間とほぼ等しい混合時間、および流路サイズ(tmiX~ d)とともに直線的に減少することが推測される。25-μmの流路において約1msで混合できる方法を手段とし、好ましくは1-μmの流路において約40μsでの混合が可能になる。
0153
マイクロ秒単位の混合時間を達成するには、通常、小型流路を使う必要がある。
0154
小型流路により流れを送るためには、通常、高圧が必要とされる。
0155
理論に関わらず、理論モデリングは、直径dの流路で混合が生じるたのに必要とされるおおよそのサイクル数(往復動数)は、
n×22n ≒ dU/D Eqn. (3)
から得られる。等式(3)において、nはサイクル数、Uは流速、Dは拡散定数を示し、一サイクルは6dに等しいと想定され、さらに、対流と拡散の時間尺度が一致するときに混合が生じるとする。混合時間は、主としてサイクル数によって定められる。当結果は、混合が、単に流路直径に正比例して加速されるのではないだろうことを示す。例として、dが因数10の数により減少するとき、混合時間はd×Log(d)=10×Log(10)の因数により減少する。設計が適切になされている流路の場合、1μm流路の混合時間は約20μsに制限されるかもしれない。しかしながら、(タンパク質結晶化等に関係する)低流量又は長い流路の場合でさえもなお、著しい混合が生じえる。さらに、理論に関わらず、因数10の数による流量Uの増加は、因数Log (U)/U=(Log (10))/10の数による混合時間の減少につながると推測される。
0156
発明による流路での混合作用を可視化するために、マーカ色素(a colored marker)を単一のプラグ流体に用いることができる。プラグ内マーカ色素の初期分布は、細目にわたるプラグ形成要素に強く依存することが認められている。移流する搬送流体への不動水性プラグ押出成形時に、搬送流体とプラグ流体の相互作用に対する剪断変形が、渦を引き起こし、この渦によりマーカ色素が異なるプラグ領域に再分布された。この渦の形成をここで「旋回(twirling)」と呼ぶ (図27bを参照)。旋回が本質的にあらゆるRe値と速度で認められたため、旋回はレイノルズ数(Re)が高値の場合にのみ生じる現象ではないといえる(図30を参照)。しかしながら、この渦流れ方式は、速度によって多少影響されるようである。
0157
旋回の様々な特性と行動が認められた。旋回は、プラグの方側から反対側に(例:プラグの右側から左側に)輸送することによりマーカを再分布した。最小限の強度変動が認められた時点、つまり、マーカがプラグ一帯に平等に分布された時点で、最も効果的な混合が認められた。研究対象となったあらゆる長さを伴うプラグの形成において旋回が認められた反面、混合工程における旋回の重要度はプラグの長さに依存するということも認められた。例として、長いプラグより短いプラグに伴う旋回の方がはるかに激しいということが認められた。
0158
また、長いプラグの場合、旋回の影響はわずかな部分にのみ及び、プラグ内マーカ分布への影響もわずかであることも認められた。それ以上に、形成中プラグ先端がマイクロチャンネル壁の右側に接触する前の地点では、旋回がその先端でのみ生じた。
0159
また、プラグにおける旋回量は、先端を通過した搬送流体量と関係あるということが認められた。旋回およびその混合作用への影響に関する実験結果によると、直線流路を移動するプラグ内混合発生に対する理想的条件を定める際に、旋回は(最も重要な要素であると断言できないとしても)最も重要な要素の1つであるということが判明した。なぜなら、旋回を引き起こすことによって混合を促進、旋回を防ぐことによって完全混合を抑えうるからである。
0160
混合の抑制は、(図5と図6において示されるもの例とする)いくつかの反応スキームにおいて重要でありうる。試剤Bに試剤Aを混合する際、そしてまた試剤Dに試剤Cを混合する際に、全4試剤すべてをいっぺんに混合せずに、選択的に各ペアを混合することが、これらの反応スキームにより可能になる。後に、例としてプラグが流路屈曲部を移流する際に、全4試剤すべての混合作用が生じる。当アプローチにより、いろいろな反応を異なったタイミングで生じさせることが可能になる。さらに、プラグ流体間の界面(例として、タンパク質結晶化方法に要される界面〔図20〕)が生成されなければならない場合に、混合を抑えることが重要となりうる。
0161
形成中プラグ先端の渦により、混合の可視化と分析が複雑となるかもしれない。この渦は、短いプラグの場合に通常大きな影響をもたらすが、長いプラグの場合はわずかな影響しか及ぼさない。混合の可視化に関係するアプリケーション用基板には、細長いプラグが形成されるようにプラグ形成領域に狭い流路を備える設計がなされている。プラグ形成領域の直ぐ下流で、流路寸法が拡張するのが好ましい。流路[複数可]の拡張領域で、表面張力によりプラグが拡張し、短い球形となる。これにより、プラグ内部のマーカ分布が維持される。
0162
当アプローチは、様々なサイズを伴うプラグの内部混合を比較的容易に可視化するための手段を提供する。ビデオ顕微鏡は水滴に含まれるマーカ色素分布の観察手段となりうる。共焦点顕微鏡もまた標準的な蛍光マーカ三次元分布を可視化する手段となりうる。
0163
aCa2+/Fluo-4-4反応により、可視化を補足または確認することができる。当反応は、ミリモル単位の濃度で約1μsの半減期を伴って生じると推測される。したがって、約10μsまたはそれ以上の時間尺度で生じる混合を測定する手段となりうる。
0164
プラグ内流れに関する三次元可視化の少なくとも一方法が次の議論において説明されている。三次元におけるカオス的輸送の可視化は、特に小規模の場合、非常に難しい作業である。二次元システムを用いて予測を生み出すことにより、三次元のマイクロフルイディック流路を移動するプラグに関する見識を得ることができるかもしれない。二次元システムに関係する実験とシミュレーションは、二次元の液体プラグ内のカオス的流れを確実にする流路の設計に役立てることができる。共焦点顕微鏡検査は流路の安定した継続的な三次元の流れを数量化する手段として使われてきた。しかしながら、共焦点顕微鏡などの光学機器には器械的制限があるため、高解像度での観察、例としてカオス的流れの自己相似的次元分裂構造特性を高解像度で観察するために、流れを十分に可視化することができない可能性がある。それでもやはり、全面的な流れのダイナミクスを捕らえ、(島状に分布した)非カオス的局所領域の非存在を確認しうる。好ましくは、可視化の過程で対象となる流路(周期的または非周期的)はPDMSのソフトリソグラフィを手段として製作される。PDMSレプリカ(複製)は、共焦点顕微鏡を使って流れを観察するために、ガラス製の薄いカバースリップにより密封されるのが好ましい。
0165
発明による一実験において、一連の回線走査により、プラグ内部の蛍光マーカ三次元分布の画像を得ることができる。図10aは、プラグ内カオス的流れを三次元共焦点で可視化したものを示す概要図である。プラグは3つの層流から形成されるのが好ましい。中間流11番は蛍光マーカを含んでいることが好ましい。
0166
好ましくは、中間流11番は体積流量が低い状態で流路システムに注入される。マーカの流れを流路における適切な部位に置くために、二面流10番・12番の体積流量を調節するのが好ましい。
0167
カール・ツァイスLSM510のような共焦点顕微鏡を手段とするのが好ましい。LSM510は、約0.38ms/512ピクセルまたは約0.2ms/100ピクセルの線における回線走査能力を備える。拡散による干渉が最小限の状態における流れを可視化するために、好ましくは約0.2μmの蛍光性微小球体および蛍光的に標識付けされた高分子量の重合体を手段とするのが好ましい。幅100μm、深さ100μmといった寸法の流路が手段となりうる。回線走査技術は、長さ約800-μmの油流れにより分離している長さ200-μmのプラグを伴うものなど、様々なシーケンスに応用されうる。
0168
ビームをxとz方角に固定しy方向に沿って前後に繰り返し走査するのが好ましい。x方角へのプラグの動きが、好ましくはx方向に沿う解像度を提供する。幅100μrnの流路を横切る100ピクセルの回線走査はy方向に約1μm/ピクセルの解像度を提供する。約1μm/ピクセルの解像度をもたらすために、回線走査を一プラグ当たり約200回実施することが好ましい。約2000μs/秒で移動する200μmのプラグの場合、(200μm)/(2000 μm/秒) = 0. 1 秒または線一本に当たり約0.5 msで実施されるのが好ましい。
0169
* 図10bにおいて示されるシーケンスは、三次元のカオス的流れを可視化する手段となるのが好ましい。プラグが約500μmで移動できるように、走査間隔に約0.3msの遅延を伴い、各回線走査に約0.2msかかるのが好ましい。プラグが約0.2μmでx方向に移る時に、ある程度の光学的歪が約0.2msの走査中に生じるかもしれない。しかしながら、これらの歪みは適用手段の解像能力に相応すると認識されている。x方向の所定位置において、プラグ10本分のx-y断面をとるためにz方向に沿う各点において約10秒間、一連の回線走査を実施することが好ましい。プラグ内の蛍光マーカ分布の全面的な三次元画像を得るために、z方向走査を1μm間隔で行うことが好ましい。プラグが流路に沿って移動時のプラグ内蛍光マーカ三次元分布の変化などの情報を取得するために、x方向にある異なる位置で当方式を繰り返すことが好ましい。
0170
周期的摂動の場合には、上記の方式により回復されたy-z面プラグの蛍光断面は、ポアンカレ断面を表わし、初めの薄い色素層の発展に対応する。小型プラグの形成に際する水相旋回によりプラグ全体にわたり過度な色素が分布され、可視化の確実性を低下しかねない。プラグ形成領域に小さいネックを設計し、それから第一方向転換を下流方向において開始することにより、このような旋回を防ぐことが好ましい。当アプローチは、流れの可視化に効果的に実用されており、反応誘導管理に有用でありうる。
0171
(プラグ融合)
本発明は、さらに基板内におけるプラグの融合方法を提供する(図12の上を参照)。プラグは前述で説明されたのように形成される。異なるプラグ流体を個別に流路へ導入することにより異なる試剤を含むプラグを形成することが可能である。異なる試剤を含む複数のプラグは、本質的に類似する又は異なる粘度を有するかもしれない。異なる試剤を含む複数のプラグは各々、本質的に類似する又は異なるサイズを有するかもしれない。異なる試剤を含む複数のプラグの相対速度が異なるという条件の下に、これらのプラグが流路において融合する。様々な方法で融合地点を制御することが可能である。その方法例として、プラグ流体入口の位置変化によるもの、(流体を形成するプラグの1つを第2流路へ導入する場合)流路合流地点の位置変化によるもの、プラグのサイズ変化によるもの、本質的に同サイズのプラグの粘度または表面張力変化によるもの、異なるプラグ集合体の輸送速度調節によるもの、などが挙げられる。
0172
図12(上欄の写真)で示されるように、プラグ120番・121番がT字形の流路あるいはT字形の流路領域を通過するように導くまたは通過することを可能にすることにより、プラグを融合しうる。結果として融合したプラグ122番は、個別の流路またはそれに垂直(図12)または非垂直(図33)でありうる流路分岐を流れる。融合プラグ122番にさらなる融合あるいは分裂が生じるかもしれず、もしくは、一種以上の特性化・測定・検出・選別(分類)・または分析など1つ以上の反応または「処理」が同プラグに帰されうるところの、基板上にある別の流路・流路分岐・範囲または領域へと同プラグを導きうる。
0173
一実施形態において、大小のプラグが個別の流路またはそれらが融合する共通流路に向かう流路分岐を流れる。大型(大きい)プラグが小型(小さい)プラグより速く流れるため、大型プラグと小型プラグが同地点で同時に合流しない場合は、大型プラグが小型プラグに追いつき互いに融合するという過程を経てから最終的に融合プラグが形成される。大型プラグと小型プラグが同地点あるいは領域でまともに真っ向から合流した場合、それらが即結合し融合プラグが形成される。融合プラグに分裂(下記に説明)あるいはさらなる融合が生じるかもしれず、 もしくは、一種以上の特性化・測定・検出・選別(分類)・または分析など1つ以上の反応または「処理」が同プラグに帰されうるところの、基板上にある別の流路・流路分岐・範囲または領域へと同プラグを導きうる。
0174
他の実施形態において、二つのプラグがほぼ同時に流路共通点・部位・又は領域に到達し単一プラグを形成するように、その流路合流点・部位・又は領域に向かって流れるプラグの到達時間を制御することによりプラグ融合が可能になる。
0175
他の実施形態において、弓形・半円形・又は円形流路は、プラグ融合の効率を向上する手段を提供する。故に、例として、よりコンパクトな基板の範囲あるいは領域内においてより多くの頻度で融合が生じることになる。当スキームにおいて、弓形・半円形・又は円形流路又は流路分岐が本来違相にあるプラグの対(ペア)を同位相に存在するプラグの対に変換するため又はその変換補助するため、共通流路に向かい個別の流路を流れるプラグを従来よりも短い距離あるいは短い時間で融合しうる。
0176
特に、弓形・半円形・又は円形流路又は流路分岐により遅れプラグが先行プラグに追いつき、融合することが可能になり、それによって、一定期間または基板上の一定範囲または領域において融合するプラグ数を増加させることになる。
0177
(プラグの分裂かつまたは選別)
本発明はさらに、基板内プラグ分裂方法を提供する。第2流路がプラグ形成箇所下流にある開口(経路)を通して、プラグの始部を第2流路へ送ることによりプラグを分裂することが可能である、あるいは、流路の「Y字型」交差点でプラグを分裂しうる。両実施形態において、元のプラグは始部と別の部分に分かれて分裂する。そしてその後、各片は個別の流路(あるいは出口)へと送られる。一旦形成されたプラグが分割、あるいは、融合されたプラグが分裂しうるかのどちらかである。図6は、複数の入口(試剤A・B・C・D用入口601番・603番・605番・607番;水性流用入口602番・604番・606番)によりプラグ分割および融合の両機能を備えるマイクロフルイディック・ネットワークの一部を図示する概要図を示す。この概要図は、同時に誘導される2反応を示す。(最初の2反応による混合の中間である)第3反応は精密な時間的遅れを利用して誘導される。プラグは反応前と反応後のどちらでも分裂しうる。図6はさらに、初期混合物60(A+B)と初期混合物61(C+D)から、混合溶液62(A+B)と63(C+D)およびこれら四成分の混合物64(A+B+C+D)にいたる、様々な混合過程におけるプラグを示す。
0178
図12(下部の写真)において示されるように、プラグ123番・124番をT字形流路またはT字形の流路領域を通過するように誘導またはその通過を可能にすることにより、プラグを分裂しうる。好ましい実施形態において、プラグが分裂する範囲または合流地点は、その合流地点よりある程度離れたところに存在するプラグの直径に比例して細め又は多少収縮したものでありうる。結果として生じた分裂プラグ125番は、垂直(図12)または非垂直(図33)でありうる個別の流路または流路分岐を流れる。分裂プラグ125番に融合あるいはさらなる分裂が生じるかもしれず、もしくは、一種以上の特性化・測定・検出・選別(分類)・または分析など1つ以上の反応または「処理」が同プラグに帰されうるところの基板上にある別の流路・流路分岐・範囲または領域へと同プラグを誘導しうる。
0179
別の実施形態において、分岐する親水性・疎水性流路を利用することにより油搬送流体から水プラグを分裂または選別することが可能である。流路または流路面が優勢的に親水性または疎水性を有するように、流路または流路領域の前処理により流路を親水性または疎水性にする。より詳細に渡り下記に論じられるように、ポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane)における急速プロトタイピング(試作)のような方法を手段として、親水性流路表面を備えた基板を製作しうる。流路表面をシラン処理または熱処理のいずれかによって疎水性にすることが可能である。例として、(トリデカフルオロ〔tridecafluoro〕-1,1,2,2-テトラハイドロオクチル〔tetrahydrooctyl〕)-1-トリクロロシラン・ガス〔trichlorosilane vapor〕(United Chamical Technologies社)を、流路表面のシラン処理用搬送ガスとして乾燥窒素を伴う基板の入口に適用しうる。
0180
一旦プラグが個別の流路へ分裂したならば、さらなる反応原系を含むその他のプラグと共に分裂プラグを融合することにより、さらなる反応作用を生じさせることが出来る。
0182
正味荷電を持たず互いに関連して正または負の荷電をもつ領域を伴う誘電性物体の動きが、誘電泳動によりもたらされると考えられている。プラグ且つまたは粒子の存在下における交流の不均等な電界は、プラグ且つまたは粒子を電気的に極性化し、結果として誘電泳動力をもたらす。粒子と懸濁化剤の誘電性分極率に依存して、誘電性粒子は磁界の強さが強い領域または弱い領域のどちらかに向かって移動する。従来の半導体技術を使って、マイクロ加工された装置中の力場を制御するために基板上に電極を製作することが可能である。
0183
誘電泳動は、電気的導体である物体を動かすのに特に適している。イオンのパーマネント・アラインメントを防ぐために交流(AC)を用いることが好ましい。メガヘルツ頻度はネット・アラインメント、引力および比較的長距離の運動をもたらすのに適している。
0185
温度差または圧力差をもたらすことにより、あるいは基板の1つ以上の流路間または発明による方法に勾配を備えることにより、流れを形成・制御することが可能である。
0186
プラグを含む流体と搬送流体の両方が、比較的低値のレイノルズ数(例として10−2)を伴うことが好ましい。レイノルズ数は、流体濃度・速度および一定の断面範囲における流路粘度間の反比例関係を表わす。より粘着性が高く、密度が低めで、流れの遅い流体のレイノルズ数は低値を示すため、乱流を生じさせることなく転換・停止・開始・逆転がより簡単にできる。製作された流体システムは、サイズが小さく、速度が低速のため、大抵の場合レイノルズ数低領域(Re<二次流れを引き起こす)内部効果は数えるに足らないレベルであり、粘着効果によりそのダイナミクスが左右される。これらの条件は分析を行う際に有利であり、発明による装置によって提供される。従って、レイノルズ数100未満、一般的に50未満、好ましくは10未満、さらに好ましくは5未満、最も好ましくは1未満で、発明による装置を操作することが好ましい。
0187
(検出と測定)
本発明のシステムは、標準顕微鏡のような機器を用いての光測定に非常に適している。例として、PDMSは可視部において透明である。基板構築にPDMSを使う場合、PDMSネットワークを覆うか密閉するのにガラスまたは石英ガラスのカバースリップを手段としうる。それによって、可視光線、紫外線、または赤外線で特性化されうる一式の流路を構築しうる。蛍光測定は吸収測定より高感度が強いので、好ましくは、後者の代わりに前者を実行する。光学測定によりプラグを監視する場合、搬送流体およびプラグ流体の屈折率は、本質的に類似していることが好ましいが、場合によっては異なりうる。
0189
いくつかの事例において、絶対的濃度を例とするものの量的光学測定を実行する際にプラグを手段とすることは、非水平状態の油と水の界面がプラグを囲んでいるために複雑な作業となる。これらの湾曲した界面はレンズのように機能し、放射光線の減少または光学的歪みをもたらしうる。このような歪みは、例として成長中のタンパク質結晶を目視観測する際に悪影響を及ぼしたり、もしくはその妨げとなったりするかもしれない。かなりの圧力勾配を流れるプラグの表面と裏面で当界面が適合されうる形状が複雑なために、これらの損失(減少)を正確にモデリングすることは通常困難である。
0190
発明にのっとって、屈折率整合などの技術を使うことによりこの問題を克服するか最小限に抑えることが可能である。減少と歪みは、水相の屈折率(ηD)と非混和性搬送流体の屈折率の間の差に依存する。好ましくは、分析に用いられる搬送流体の屈折率が、水および水成緩衝液の屈折率(表1)に本質的に類似していること(例:フッ素添加油が、589nmでナトリウムDライン付近の水の屈折率に近い屈折率を有するなど)。
0191
好ましくは、検出または測定に関係するアプリケーション用搬送流体は、観察用波長において一般に使用される水溶液の屈折率と整合する屈折率をもつものであること。量的蛍光測定用にシステムを口径測定(調整)するために、プラグに既知の蛍光色素濃度が含まれていることが好ましい。プラグからの蛍光性が測定され、次に、油の非存在下における流路内の同蛍光色素溶液から発する蛍光性と好ましくは比較される。屈折率整合が生じる場合、プラグからの蛍光強度(I)は、水性流の画分調整後、水溶液からの蛍光強度に本質的に類似しているかまたは等しいと考えられている。
0192
Iplug = Isolution×Vwater/(Vwater+Voil) Eqn.(3)。等式(3)において、Vは流体の流れの体積流量。界面の湾曲部を多く備える小型プラグは理想的なプラグ反応よりも大きな偏差を示すと推測される、つまり、これらの小型プラグはより大きな光学歪みを生じる傾向がある。
0193
必要な場合、屈折率非整合に伴う誤差を断定するために部分的測定を行なう。未知の流体を分析する場合、または二流体の屈折率整合および粘度整合間における妥協が要される場合に、これらの測定データが役立つ。
0194
表1: 特定のマイクロフルイディック装置実施形態において用いられた流体いくつかの物理的性質。
0195
0196
検出器とは、流体が検出領域を通過する時に流体の物理的特性を評価するためのいかなる装置または方法でありえる。適する検出器の例としてCCD検出器が挙げられる。好まし
い検出器は顕微鏡のような光学検出器である。これらは、既知の技術を用いて顕微鏡から出力された画像または情報を処理するコンピュータ且つ又は他の画像処理装置または画像補強装置につながれているかもしれない。例として、分子をサイズまたは分子量により分析または選別することが可能である。生成された生成物濃度または所定時間に残存する反応原系濃度の測定により、反応作用を監視することが可能である。酵素が酵素基板の化学反応を触媒する範囲で、酵素を分析且つまたは選別することが可能である。(その反面、酵素によって触媒された化学反応レベルに基づき酵素基板を分析〔例:選別〕することが可能である)。タンパク質の存在または量に関する光学示度を得るために各細胞またはビリオン(ウイルス粒子)を光学検出器を用いて検査(検討)することにより、それらが特定のタンパク質を含んでいるか生成するかどうかによって、生体微粒子または細胞およびビリオンのような分子を選別することが可能である。化学薬品そのものを、例として特殊蛍光によって検知できるかもしれない。または、標識付けしたり、もしくは例として(少なくとも限界量の)望まれるタンパク質の存在下で検知可能信号を出力するタグと関連したりできるかもしれない。
0197
希望特性を有する化学物質と有さない化学物質とを区別する目的で分析における重要特性(または複数特性)を十分に識別・検知または測定することができるという条件の下に、発明による技術を手段として化学物質のいかなる特性[複数可]をも識別または測定することが事実上可能である。例として、プラグ流体や反応生成物またはプラグを(例:選別によって)分析する基盤として、微粒子サイズや搬送流体に対する試剤の疎水性などを用いることが可能である。
0198
好ましい実施形態において、装置内の検出ウィンドーまたは検出領域を通過時に、光学検知可能な群または半群または化合物(ここにおいて「タグ」と呼ばれる)から送られる信号の強度に基づいてプラグが分析される。選択限界または選択範囲内で一定タグ量またはタグレベルを有するプラグを基板上の所定の出口または分岐流路に誘導することが可能である。タグ信号を顕微鏡により収集または光電子増倍管(PMT)のような検出器により測定しうる。PMT信号をディジタル化し且つ弁作用に基づく方法などによって流れを制御するために、好ましくはコンピュータを用いる。あるいは、タグ且つ又はそれに相応する特性または標識の基準として(例:プラグ選別などを必ずしも継続して行わず、評価目的のためだけに)信号を記録又は数量化することができる。
0199
発明による一実施形態において、感光性半導体素子のような検出器の直径は流路幅よりも大きいため、(流路長さに伴って)長さが幅を上回る検出領域を形成する。このような検出領域の容積は、半導体素子×半導体素子径の数値を上回り、流路横断面にほぼ等しいものとなる。化学物質またはタグを検知するため、あるいは化学物質またはタグが希望特性を備えているかどうか判定するために、その希望特性により測定可能な光エネルギー放射等の反応が生じるように化学物質を刺激する機器(例:レーザー、レーザー半導体素子、水銀灯のような高輝度ランプ等の光源)を検出領域は備えうる。ランプ使用の実施形態において、検出領域を除く全領域において流路を光線から保護することが好ましい。
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