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技術 炭化ケイ素繊維の製造方法及び炭化ケイ素繊維

出願人 株式会社IHIエアロスペース
発明者 宇田道正
出願日 2018年2月8日 (2年10ヶ月経過) 出願番号 2018-021307
公開日 2019年8月22日 (1年4ヶ月経過) 公開番号 2019-137935
状態 未査定
技術分野 無機繊維 炭素・炭素化合物 合成繊維
主要キーワード 電子線照射設備 二次焼成温度 B型粘度計 ガス化成分 熱負荷後 繊維弾性率 加熱最高温度 デジタルフォースゲージ
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2019年8月22日)のものです。
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図面 (5)

課題

焼成前の不融化処理が不要で電子線照射設備を必要としない安価な炭化ケイ素繊維の製造方法の提供。

解決手段

本発明の炭化ケイ素繊維の製造方法は、ポリカルボシラン分子量を調製する分子量調製工程と、 分子量が調製されたポリカルボシランを繊維状にする乾式紡糸工程と、 ポリカルボシラン繊維から炭化ケイ素繊維を得る焼成工程と、を順に備え、 ポリカルボシランから不融性のポリカルボシランを調製しこれを乾式紡糸することで、焼成時の繊維同士の融着が防止されて、焼成前の不融化処理が不要で電子線照射設備を必要としない安価な炭化ケイ素繊維の製造方法が提供され、本製造方法により、安価な直径10μm以下の高性能炭化ケイ素繊維が提供される。

概要

背景

炭化ケイ素繊維は、軽量で耐熱性を有し、かつ高強度であるため、合金に替わる材料としてジェットエンジンガスタービンなどの熱機関に適用されている。

炭化ケイ素繊維は、炭化ケイ素系前駆体高分子ポリカルボシランPCS)を紡糸し、窒素などの非酸化性雰囲気中で1000〜1600℃で焼成し、セラミック化することで作製できる。
そして、上記ポリカルボシラン繊維が焼成時の高温下においても、繊維同士が溶融してくっつくことなく繊維形状を保持できるように、焼成前に不融化処理が行われる。

上記不融化処理として、特許文献1には、ポリカルボシラン繊維を酸化雰囲気下で50℃〜400℃に加熱し、ポリカルボシランを酸化架橋不融性にすることが開示されている。

しかし、熱酸化による不融化処理では、炭化ケイ素繊維に酸素が大量に不純物として混入する。そして、混入した酸素は、高温下で熱炭素還元反応により炭化ケイ素の粗大結晶化を促進するため、炭化ケイ素繊維の強度を低下させる。

また、特許文献2には、電子線照射による不融化処理が開示され、上記不融化処理によれば、ポリカルボシラン繊維中に酸素が導入されないため、炭化ケイ素繊維中の酸素含有量を1質量%以下にすることができ、1800℃の耐熱性が得られる旨が記載されている。

概要

焼成前の不融化処理が不要で電子線照射設備を必要としない安価な炭化ケイ素繊維の製造方法の提供。本発明の炭化ケイ素繊維の製造方法は、ポリカルボシランの分子量を調製する分子量調製工程と、 分子量が調製されたポリカルボシランを繊維状にする乾式紡糸工程と、 ポリカルボシラン繊維から炭化ケイ素繊維を得る焼成工程と、を順に備え、 ポリカルボシランから不融性のポリカルボシランを調製しこれを乾式紡糸することで、焼成時の繊維同士の融着が防止されて、焼成前の不融化処理が不要で電子線照射設備を必要としない安価な炭化ケイ素繊維の製造方法が提供され、本製造方法により、安価な直径10μm以下の高性能炭化ケイ素繊維が提供される。なし

目的

本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とする

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

ポリカルボシラン分子量を調製する分子量調製工程と、分子量が調製されたポリカルボシランを繊維状にする乾式紡糸工程と、ポリカルボシラン繊維から炭化ケイ素繊維を得る焼成工程と、を順に備えることを特徴とする炭化ケイ素繊維の製造方法。

請求項2

上記分子量調製工程前にポリカルボシラン合成工程を備え、上記ポリカルボシラン合成工程が、ポリカルボシランの原料であるポリシラン熱分解で生成する液相中のポリシランの低沸点成分蒸発させ、気相中でさらに加熱してポリカルボシランとし、上記ポリカルボシランを上記液相に戻して高分子量化する処理を含むことを特徴とする請求項1に記載の炭化ケイ素繊維の製造方法。

請求項3

上記ポリカルボシラン合成工程で合成したポリカルボシランが、最大分子量が3.5万〜23万のポリカルボシランであることを特徴とする請求項2に記載の炭化ケイ素繊維の製造方法。

請求項4

上記分子量調製工程が、合成したポリカルボシランを良溶媒貧溶媒混合溶媒に溶解させ、低分子量のポリカルボシランを除去する処理であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の炭化ケイ素繊維の製造方法。

請求項5

上記分子量調製工程が、分子量が1000未満のポリカルボシランを除去する処理であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の炭化ケイ素繊維の製造方法。

請求項6

上記分子量調製工程で分子量が調製されたポリカルボシランの数平均分子量(Mn)が6000〜11000であり、かつ重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.2〜3.7であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の炭化ケイ素繊維の製造方法。

請求項7

上記乾式紡糸工程が、分子量が調製されたポリカルボシランを溶媒に溶解して乾式紡糸溶液を調製する処理を含み、上記乾式紡糸溶液の粘度が10〜40Pa・s(25℃)であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つの項に記載の炭化ケイ素繊維の製造方法。

請求項8

上記乾式紡糸溶液が、ポリカルボシランを56〜62質量%含むことを特徴とする請求項7に記載の炭化ケイ素繊維の製造方法。

請求項9

上記焼成工程が、水素ガスと、窒素ガスあるいはアルゴンガスとの混合ガス中で焼成する一次焼成と、窒素ガスあるいはアルゴンガス中で焼成する二次焼成とを含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つの項に記載の炭化ケイ素繊維の製造方法。

請求項10

炭素ケイ素水素及び酸素から成り、上記酸素の含有量が3質量%以下であり、繊維径が、5〜9μmであることを特徴とする炭化ケイ素繊維。

請求項11

炭素とケイ素のモル比(C/Si)が、0.9〜1.1であることを特徴とする請求項10に記載の炭化ケイ素繊維。

請求項12

引張強度が2.5GPa以上であり、1500℃の熱負荷後の引張強度が2.0GPa以上であることを特徴とする請求項10又は11に記載の炭化ケイ素繊維。

技術分野

0001

本発明は、炭化ケイ素繊維の製造方法に係り、更に詳細には、安価な炭化ケイ素繊維の製造方法及び炭化ケイ素繊維に関する。

背景技術

0002

炭化ケイ素繊維は、軽量で耐熱性を有し、かつ高強度であるため、合金に替わる材料としてジェットエンジンガスタービンなどの熱機関に適用されている。

0003

炭化ケイ素繊維は、炭化ケイ素系前駆体高分子ポリカルボシランPCS)を紡糸し、窒素などの非酸化性雰囲気中で1000〜1600℃で焼成し、セラミック化することで作製できる。
そして、上記ポリカルボシラン繊維が焼成時の高温下においても、繊維同士が溶融してくっつくことなく繊維形状を保持できるように、焼成前に不融化処理が行われる。

0004

上記不融化処理として、特許文献1には、ポリカルボシラン繊維を酸化雰囲気下で50℃〜400℃に加熱し、ポリカルボシランを酸化架橋不融性にすることが開示されている。

0005

しかし、熱酸化による不融化処理では、炭化ケイ素繊維に酸素が大量に不純物として混入する。そして、混入した酸素は、高温下で熱炭素還元反応により炭化ケイ素の粗大結晶化を促進するため、炭化ケイ素繊維の強度を低下させる。

0006

また、特許文献2には、電子線照射による不融化処理が開示され、上記不融化処理によれば、ポリカルボシラン繊維中に酸素が導入されないため、炭化ケイ素繊維中の酸素含有量を1質量%以下にすることができ、1800℃の耐熱性が得られる旨が記載されている。

先行技術

0007

米国特許第4100233号明細書
米国特許第5322822号明細書

発明が解決しようとする課題

0008

しかしながら、電子線照射による不融化処理は、高価な電子線照射設備が必要であるため低コスト化が困難である。

0009

本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電子線照射設備を必要としない安価で高温下で強度低下しない炭化ケイ素繊維の製造方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

0010

本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、ポリカルボシランの分子量を調製して不融化処理が不要な高分子量のポリカルボシランとし、溶融紡糸が困難な上記高分子量のポリカルボシランを乾式紡糸することにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。

0011

即ち、上記課題は、本発明の炭化ケイ素繊維の製造方法により解決される。
(1)ポリカルボシランの分子量を調製する分子量調製工程と、
分子量が調製されたポリカルボシランを繊維状にする乾式紡糸工程と、
ポリカルボシラン繊維から炭化ケイ素繊維を得る焼成工程と、を順に備えることを特徴とする炭化ケイ素繊維の製造方法。
(2)上記分子量調製工程前にポリカルボシラン合成工程を備え、
上記ポリカルボシラン合成工程が、ポリカルボシランの原料であるポリシラン熱分解で生成する液相中のポリシランの低沸点成分蒸発させ、気相中でさらに加熱してポリカルボシランとし、上記ポリカルボシランを上記液相に戻して高分子量化する処理を含むことを特徴とする上記第(1)項に記載の炭化ケイ素繊維の製造方法。
(3)上記ポリカルボシラン合成工程で合成したポリカルボシランが、最大分子量が3.5万〜23万のポリカルボシランであることを特徴とする上記第(2)項に記載の炭化ケイ素繊維の製造方法。
(4)上記分子量調製工程が、合成したポリカルボシランを良溶媒貧溶媒混合溶媒に溶解させ、低分子量のポリカルボシランを除去する処理であることを特徴とする上記第(1)項〜第(3)項のいずれか1つの項に記載の炭化ケイ素繊維の製造方法。
(5)上記分子量調製工程が、分子量が1000未満のポリカルボシランを除去する処理であることを特徴とする上記第(1)項〜第(4)項のいずれか1つの項に記載の炭化ケイ素繊維の製造方法。
(6)上記分子量調製工程で分子量が調製されたポリカルボシランの数平均分子量(Mn)が6000〜11000であり、かつ重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.2〜3.7であることを特徴とする上記第(1)項〜第(5)項のいずれか1つの項に記載の炭化ケイ素繊維の製造方法。
(7)上記乾式紡糸工程が、分子量が調製されたポリカルボシランを溶媒に溶解して乾式紡糸溶液を調製する処理を含み、
上記乾式紡糸溶液の粘度が10〜40Pa・s(25℃)であることを特徴とする上記第(1)項〜第(6)項のいずれか1つの項に記載の炭化ケイ素繊維の製造方法。
(8)上記乾式紡糸溶液が、ポリカルボシランを56〜62質量%含むことを特徴とする上記第(7)項に記載の炭化ケイ素繊維の製造方法。
(9)上記焼成工程が、水素ガスと、窒素ガスあるいはアルゴンガスとの混合ガス中で焼成する一次焼成と、窒素ガスあるいはアルゴンガス中で焼成する二次焼成とを含むことを特徴とする上記第(1)項〜第(8)項のいずれか1つの項に記載の炭化ケイ素繊維の製造方法。

0012

また、上記課題は、本発明の炭化ケイ素繊維により解決される。
(10)炭素ケイ素水素及び酸素から成り、
上記酸素の含有量が3質量%以下であり、繊維径が、5〜9μmであることを特徴とする炭化ケイ素繊維。
(11)炭素とケイ素のモル比(C/Si)が、0.9〜1.1であることを特徴とする上記第(10)項に記載の炭化ケイ素繊維。
(12)引張強度が2.5GPa以上であり、1500℃の熱負荷後の引張強度が2.0GPa以上であることを特徴とする上記第(10)項又は第(11)項に記載の炭化ケイ素繊維。

発明の効果

0013

本発明によれば、焼成時に繊維形状を保持できる不融性の高分子量ポリカルボシランを乾式紡糸することとしたため、焼成前の不融化処理が不要で電子線照射設備を必要としない安価な炭化ケイ素繊維の製造方法及び炭化ケイ素繊維を提供することができる。

図面の簡単な説明

0014

分子量調製工程におけるポリカルボシランの変化の一例を示すグラフである。
昇温速度100℃/Hrで一次焼成した炭化ケイ素繊維のSEM写真である。
昇温速度50℃/Hrで一次焼成した炭化ケイ素繊維のSEM写真である。
液相−気相熱分解縮合装置の一例を示す概略図である。
液相−気相熱分解縮合法で作製したポリカルボシランのFT−IRスペクトルである。

0015

本発明の炭化ケイ素繊維の製造方法について詳細に説明する。
上記炭化ケイ素繊維の製造方法は、
ポリカルボシランの分子量を調製する分子量調製工程と、
分子量が調製されたポリカルボシランを繊維状にする乾式紡糸工程と、
ポリカルボシラン繊維から炭化ケイ素繊維を得る焼成工程と、を順に備える。

0016

<分子量調製工程>
上記分子量調製工程は、低分子量成分から高分子量成分まで含む分子量分布ブロードなポリカルボシランから融着の原因となる低分子量成分を除去し、焼成時の高温下においても溶融せずに繊維同士の融着を防止できる高分子量成分のみとする工程である。
具体的には、ポリスチレン標準物質として用いたGPC(gel permeation chromatography)測定による分子量が1000未満の低分子量成分を溶媒分別法で除去することで焼成時の融着を防止する。

0017

ポリカルボシランは分子量により良溶媒と貧溶媒の混合溶媒に対し溶解性が変わる。
例えば、ヘキサンアセトン混合溶媒に対する溶解性が変わるため、ヘキサン/アセトン混合溶媒のアセトン比を変えることで、ヘキサン/アセトン混合溶媒に溶解させて除去する低分子量成分の分子量範囲を変えることができる。良溶媒と貧溶媒の混合溶媒の組み合わせとしては、ヘキサン/メタノール、ヘキサン/エタノールなどを挙げることができる。

0018

図1に、重量平均分子量が5800のポリカルボシランをアセトン比が異なるヘキサン/アセトン混合溶媒に溶解させ、分離したときの沈殿物の分子量の変化をGPCで測定した重量平均分子量を示す。

0019

図1から、ヘキサン/アセトン混合溶媒中のアセトン含有量が少なくなるにつれてヘキサン/アセトン混合溶媒に溶解して排除されるポリカルボシランの分子量が大きくなって、沈殿したポリカルボシランの重量平均分子量が大きくなることがわかる。

0020

上記ヘキサン/アセトン混合溶媒は、アセトンを70質量%〜80質量%含むことが好ましく、70質量%〜78質量%含むことがより好ましい。

0021

アセトンの含有量が80質量%以下であることで、焼成時に融着の原因となる分子量が1000以下のポリカルボシランの大半を除去することができる。また、アセトンの含有量が70質量%未満であると、高分子量のポリカルボシランまで除去されて収率が低下する。

0022

アセトンが80質量%のヘキサン/アセトン混合溶媒を用いて分別し、乾式紡糸したポリカルボシランの生糸を、H2/Ar雰囲気中1000℃(昇温速度100℃/Hr)で一次焼成し、Ar雰囲気中1300℃で二次焼成した炭化ケイ素繊維のSEM写真を図2に示す。また、一次焼成の昇温速度50℃/Hrに替えて焼成した炭化ケイ素繊維のSEM写真を図3に示す。

0023

図2のSEM写真では、炭化ケイ素繊維に融着による傷痕がみられるが、図3のSEM写真では、炭化ケイ素繊維に融着による傷痕がみられない。

0024

図3に示す炭化ケイ素繊維では、一次焼成の昇温速度を下げることで、焼成時にポリカルボシランの生糸から排出される低分子量ポリカルボシランの、焼成雰囲気中の蒸気濃度の上昇が抑制され、繊維同士の融着を回避できたと考えられる。

0025

アセトンが80質量%のヘキサン/アセトン混合溶媒では、融着の原因となる低分子量のポリカルボシランを完全には除去できていないが、一次焼成の昇温速度を下げることで、繊維同士の融着を回避できることから、アセトンの含有量が80質量%以下の混合溶媒であれば、焼成時の融着の原因となる低分子量成分を除去できることがわかる。

0026

上記分子量調製工程により、平均分子量が高分子側にシフトすると共に、分子量分布がシャープになる。

0027

上記分子量調製工程後のポリカルボシランは、不融性であればよいが、数平均分子量(Mn)が6000〜11000であることが好ましい。
上記分子量分布のポリカルボシランは、乾式紡糸が可能であり、焼成時の繊維同士の融着を防止できると共に、低分子量のガス化成分が少なく体積収縮が小さいため焼成による繊維の変形を防止できる。

0028

また、上記分子量調製工程後のポリカルボシランは、ポリカルボシランの平均分子量にもよるが、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.2〜3.7であることが好ましい。

0029

また、上記分子量調製工程後のポリカルボシランは、分子量が1000〜2000のポリカルボシランを10質量%未満含んでいてもよい。
分子量が1000未満のポリカルボシランは、焼成時に融着の原因となるが、分子量が1000〜2000のポリカルボシランは、後述する乾式紡糸溶液の溶媒成分となり、超高分子量のポリカルボシランを溶解し易くすると考えられる。

0030

<乾式紡糸工程>
上記乾式紡糸工程は、ポリカルボシランを繊維状にする工程であり、上記分子量が調製されたポリカルボシランを溶媒に溶解して乾式紡糸溶液を調製する処理を含む。
具体的には、上記乾式紡糸溶液を紡糸口金(ノズル) から吐出させ、上記溶剤自然乾燥または加熱乾燥などにより気化してポリカルボシランの繊維を得る。

0031

上記乾式紡糸工程は、300℃以上の高温で紡糸する溶融紡糸とは異なり、室温で、または高温を与えなくても紡糸が可能であり、紡糸したのちに急激な温度低下が生じないため、温度変化に起因する繊維径のバラツキを防止できる。

0032

上記乾式紡糸溶液の粘度は、紡糸ノズルの径にもよるが、10〜40Pa・s(25℃であることが好ましい。
40Pa・sを超えると乾式紡糸が困難であり、10Pa・s未満では繊維径のバラツキが生じ易くなる。
なお、乾式紡糸溶液の粘度はB型粘度計で測定した値である。

0033

上記粘度の乾式紡糸溶液は、上記分子量のポリカルボシランを56質量%〜62質量%含むことが好ましい。ポリカルボシランの濃度が上記範囲であることで、繊維断面の変形が防止され、断面が真円に近い炭化ケイ素繊維を得ることができる。

0034

上記溶媒としては、ポリカルボシランを溶解することができればよく、例えば、脂肪族炭化水素芳香族炭化水素ハロゲン化炭化水素を挙げることができ、キシレントルエンは、ポリカルボシランの溶解性、揮発性に優れるため好適に使用できる。

0035

上記乾式紡糸溶液を用いて、例えば、紡糸ノズルのノズル径φが80〜120μm、圧力0.5MPa〜1.6MPa、紡糸速度60〜110m/minで紡糸することで生糸を得ることができる。

0036

ポリカルボシラン繊維は、焼成によって約30%体積収縮するため、繊維径φが10〜12μmの生糸からはおよそ5〜9μmの炭化ケイ素繊維を得ることができる。

0037

<焼成工程>
上記焼成工程は、ポリカルボシラン繊維をセラミック化して炭化ケイ素繊維にする工程であり、一次焼成と、二次焼成とを含む。

0038

上記一次焼成は、非酸化性雰囲気中でポリカルボシラン繊維をおよそ1000℃で焼成し、過剰炭素を排除して炭化ケイ素繊維にする処理である。

0039

上記二次焼成は、非酸化性雰囲気中で炭化ケイ素繊維を1300〜1600℃で焼成し、結晶化を進めて高強度化を図る処理である。
上記二次焼成は、必要により張力を付加しながら行うことが好ましい。張力を付加しながらの焼成は、繊維の縮れなどを除去する場合に効果的であり、高強度な繊維を得るために効果的である。

0040

二次焼成の温度が1300℃未満では結晶化が進まずアモルファス相が多くなって低弾性率であり、強度も大きくない。また、1600℃を超えると結晶化が進み結晶子サイズが大きくなりすぎて繊維弾性率が高くなり、繊維が脆くなるとともに、強度が低下し始める。

0041

また、上記一次焼成は、非酸化性雰囲気の水素ガスと窒素ガスあるいはアルゴンガスとの混合ガス中で行うことができ、上記二次焼成は、非酸化性雰囲気の窒素ガスあるいはアルゴンガスとの混合ガス中で行うことができるが、一次焼成は水素ガスとアルゴンガスとの混合ガス中、二次焼成はアルゴンガス中で行うことが好ましい。
アルゴンガスを用いて炭化ケイ素繊維が炉内の酸化物に接触させずに行うことで、酸素含有量が1質量%以下の高耐熱性・高強度の炭化ケイ素繊維を得ることができる。

0042

また、炭化ケイ素繊維は炭素とケイ素のモル比(C/Si)が化学量論比である1のときに最も高い耐熱性を有する。
炭素を過剰に含有している炭化ケイ素繊維は、大気中などの酸化環境下では、連続的な熱負荷により炭化ケイ素繊維中の過剰炭素が徐々にガス化して放出されるため繊維強度が低下するが、上記一次焼成条件及び二次焼成温度が上記範囲であることで炭素とケイ素のモル比(C/Si)が0.9〜1.1である高強度の炭化ケイ素繊維を得ることができる。

0043

<ポリカルボシラン合成工程>
本発明の炭化ケイ素繊維の製造方法は、上記分子量調製工程前に、ポリカルボシラン合成工程を備えることができる。
本発明の炭化ケイ素繊維の製造方法は、焼成時の高温下においても溶融せずに繊維同士の融着を防止できる高分子量成分を含むポリカルボシランであれば使用できるが、本発明のポリカルボシラン合成工程によれば、上記高分子量のポリカルボシランを容易に合成できる。

0044

上記ポリカルボシラン合成工程は、液相−気相熱分解縮合法により高分子量のポリカルボシランを合成する工程である。
図4に、液相−気相熱分解縮合装置の一例を示す。

0045

具体的には、液相反応容器1に入れたポリカルボシランの原料であるポリシランを、300℃〜500℃で加熱して熱分解で生成する液相中の低沸点成分を蒸発させる。
蒸発した低分子量のポリシランを気相反応石英管2中でさらに600〜700℃で加熱して、低分子量ポリカルボシランとした後、冷却して上記液相反応容器1に戻す。
そして、液相反応容器1中で低分子量ポリカルボシラン同士を縮合させることで高分子量化したポリカルボシランが得られる。
これら一連の反応を繰り返し行うことで、低沸点成分の減少に伴って液相温度上がり、ポリカルボシランの高分子量化が徐々に進んで超高分子量のポリカルボシランを得ることができる。

0046

上記ポリシランとしては、骨格がSi−Si結合のみからなるポリマーであればよく、側鎖に炭素数1〜6のアルキル基フェニル基を有する従来公知のポリシランを使用できる。

0047

ポリカルボシランの分子量は、合成時間や液相反応容器の加熱最高温度により調節することができる。
上記液相−気相熱分解縮合法では、合成時間の経過と共に液相反応容器中のポリカルボシランが高分子量化する。また、上記液相反応容器の温度が500℃を超えると高分子量化が急激に進んでポリカルボシランが高分子量化して増粘して、最終的にはゲル化し、不溶化する。

0048

上記ポリカルボシラン合成工程では、最大分子量が3.5万〜23万のポリカルボシランを合成することが好ましい。

0049

最大分子量が3.5万以上のポリカルボシランとする合成条件とすることで、上記分子量調製工程で除去する低分子量成分が少なくなって収率が向上する。
また、分子量が23万以上のポリカルボシランを含むと、溶媒に溶解し難い高分子量のポリカルボシランが多くなるため、後述する乾式紡糸可能な乾式紡糸溶液の調製が困難になったり、炭化ケイ素繊維の特性が低下したりする恐れがあり好ましくない。

0050

<炭化ケイ素繊維>
上記本発明の炭化ケイ素繊維の製造方法によれば、焼成前の不融化処理が不要で電子線照射設備を必要としない安価な炭化ケイ素繊維が得られる。
上記炭化ケイ素繊維は、炭素、ケイ素、水素、酸素から成り、酸素の含有量が3質量%以下であるため、粗大結晶の成長が防止され耐熱性が優れる。
酸素含有量は1質量%以下であることが好ましい。酸素含有量が1質量%以下であることで、耐熱性がさらに向上する。

0051

上記炭化ケイ素繊維は、炭素とケイ素のモル比(C/Si)が、0.9〜1.5あることが好ましく、0.9〜1.1であることがより好ましい。
C/Siモル比が0.9〜1.5であることで耐熱性が得られ、0.9〜1.1であることでさらに耐酸化性が得られる。

0052

また、上記本発明の炭化ケイ素繊維の製造方法によれば、繊維径が6〜15μmの炭化ケイ素繊維を紡糸することができ、上記繊維径のモノフィラメントの引張強度が2.5GPa以上であり、1500℃の熱負荷後の引張強度が2.0GPa以上の高強度かつ高耐熱性の炭化ケイ素繊維が得られる。

0053

以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。

0054

<ポリカルボシラン合成工程>
[実施例1]
ポリシラン(パーメチルポリシラン:日本曹達株式会社製)を図4に示す液相−気相熱分解縮合装置の液相反応容器に入れ、液相反応容器を400〜500℃に加熱し、気相反応管を600〜700℃に加熱して5時間反応させ、ポリカルボシランを得た。

0055

ポリカルボシランのFT−IRスペクトルを図5に示す。
図5より液相‐気相熱分解縮合法によりカルボシラン骨格を有するポリカルボシランが生成したことが確認された。

0056

[実施例2]
合成時間を20時間に代える他は実施例1と同様にしてポリカルボシランを得た。
実施例2のポリカルボシランのFT−IRスペクトルは実施例1と同様であった。

0057

[実施例3]
液相反応容器の温度を実施例1よりも10℃上げる他は実施例1と同様にしてポリカルボシランを得た。
実施例3のポリカルボシランのFT−IRスペクトルは実施例1と同様であった。

0058

[実施例4]
実施例4のポリカルボシランとして、NGSアドバンスファイバー社製PCS−UHを用意した。

0059

(分子量の測定)
実施例1〜4のポリカルボシランの分子量を以下の条件でGPC(Gel Permeation Chromatography)測定により求めた。

・装置:GPC−8020(東ソー株式会社製)
カラム:TSKG2000HXL及びG4000HXL(東ソー株式会社製)
・温度:40℃
・溶媒:THF(テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分間

濃度0.5質量%のポリカルボシランを1mL注入し、上記の条件で測定したポリカルボシランの分子量分布から、単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用してポリカルボシラン体の数平均分子量Mn、及び重量平均分子量Mwを算出した。測定結果を表1に示す。

0060

0061

<分子量調製工程>
アセトンが78質量%のヘキサン/アセトン混合溶媒を用いて実施例1のポリカルボシランを溶媒分別した。
また、実施例2,3のポリカルボシランは、アセトンが80質量%のヘキサン/アセトン混合溶媒を用いて溶媒分別した。
さらに、実施例4のポリカルボシランを、アセトン比が70質量%のヘキサン/アセトン混合溶媒を用いて溶媒分別した。

0062

分子量を調製した実施例1〜4のポリカルボシランの分子量を測定した。
測定結果を表2に示す。

0063

0064

<乾式紡糸工程>
分子量を調製した実施例1、2のポリカルボシランを多量のキシレンに完全に溶解させて低濃度の乾式紡糸溶液とした後、濾紙濾過してから減圧脱泡処理し、減圧加熱によりキシレンを蒸発させて所望の濃度に調節して乾式紡糸溶液を得た。
上記乾式紡糸溶液を表3に示す条件で乾式紡糸し、繊維径φが10〜12μmのポリカルボシランの生糸を得た。

0065

0066

<焼成工程>
上記実施例1−2、実施例2、実施例4−1、実施例4−2のポリカルボシランの生糸に張力を付加しながら表4に示す条件で焼成して炭化ケイ素繊維を得た。

0067

・一次焼成:温度1000℃ 、昇温速度50〜100℃/Hr
雰囲気40〜60Vol%H2/Ar250ml/min
・二次焼成:温度1300〜1500℃ 、昇温速度100℃/Hr
雰囲気Ar250ml/min

0068

<評価>
炭化ケイ素繊維を下記の方法で評価した。評価結果を焼成条件と共に表4に示す。

0069

(酸素含有量及び(C/Si)の測定)
炭化ケイ素繊維のC,H,O含有量をLeco社製SC−144DR、HORIBA製EMGA−930を用いて測定し、SiはC,H,Oを除いた残量として算出して炭素とケイ素のモル比(C/Si)を求めた。

0070

(引張強度の測定)
株式会社イマダ製デジタルフォースゲージ荷重変位測定ユニット組合せて、モノフィラメントの引張強度を測定した。

0071

0072

表4より、本発明の炭化ケイ素繊維の製造方法により、引張強度が2.5GPa以上、1500℃の熱負荷後の引張強度が2.0GPa以上の優れた耐熱性を有することが確認された。

0073

また、上記実施例1−1〜1−3、実施例2及び実施例4−1,4−2のポリカルボシランの生糸に張力を付加しながら表5に示す条件で焼成した炭化ケイ素繊維について、繊維径のバラツキを確認した。

0074

0075

表4、5より、本発明の炭化ケイ素繊維の製造方法により、繊維径が5〜9μmの細径化された炭化ケイ素繊維を得られることがわかる。

0076

また、実施例1のポリカルボシランを、アセトンが80質量%のヘキサン/アセトン混合溶媒を用いて分別し、乾式紡糸したポリカルボシランの生糸に張力を付加しながら表6に示す条件で焼成した炭化ケイ素繊維の組成を調べた。

0077

実施例

0078

表6からH2/Ar雰囲気中で1000℃まで一次焼成を行えば、炭素とケイ素のモル比(C/Si)が、0.9〜1.1、酸素含有量が0.83質量%以下の炭化ケイ素繊維を得られることがわかる。

0079

1液相反応容器
2気相反応石英管
電気炉
冷却器
5 冷却器
6 冷却器
コック
8 N2ガスボンベ
流量計
10熱電対
11 熱電対
12マントルヒータ
13ガス出口

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