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技術 グラフェン積層体とその製造方法

出願人 コニカミノルタ株式会社
発明者 大澤祥中澤幸仁北弘志
出願日 2016年6月14日 (3年5ヶ月経過) 出願番号 2016-117600
公開日 2019年8月15日 (3ヶ月経過) 公開番号 2019-135196
状態 未査定
技術分野 炭素・炭素化合物 積層体(2)
主要キーワード 酸素含有比率 共有結合結晶 薄型機器 高電気抵抗層 高熱伝導金属 放熱方向 熱拡散性能 銅箔板
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (9)

課題

本発明の課題は、熱拡散シートに適した、良好な熱伝導性を示すグラフェン積層体を提供することである。また、安価なその製造方法を提供することである。

解決手段

本発明のグラフェン積層体は、酸化グラフェン含有層グラフェン含有層とを有するグラフェン積層体であって、前記酸化グラフェン含有層と前記グラフェン含有層との間に、前記酸化グラフェン含有層側からグラフェン含有層側に向けて厚さ方向に酸素含有比率が連続的に減少する濃度勾配を示す混合層を有することを特徴とする。

概要

背景

スマートフォンが普及して以来、ユーザーがより快適に利用するために、新製品が開発されるごとに、ソフトウェアの処理速度の向上が追い求められてきた。その中でも近年マルチコア型のセントラルプロセッシングユニット中央処理装置、以下CPU)が普及している。単一のCPUは、プログラム中の複数の処理を行うとき利用時間を細かく分割して順番割り当てることによって処理しているが、マルチコア型のCPUは、同時に並列で複数の処理を行うことができ、処理速度が速くなるため、CPUの形態として主流となっている。

しかしながら、一つのCPUの処理能力が高いものをマルチコア化すると、必然的に消費電力は増え、それに伴い発熱量も増加する。このCPUから発生する熱は、適切にCPUから熱を除去、放熱されることが、高温によるCPU自体の故障を防ぐことと、ユーザーのやけどを防ぐために、必須であり、スマートフォンの開発における最も重要な課題の一つとなっている。

発熱体から熱を放熱させる方法としては、伝導対流放射の三つがある。伝導は物質を通して熱が伝わる現象、対流は、液体気体の流れによって熱が伝わる現象、放射は物体から電磁波が放射することによって熱が伝わる現象である。これらは、対流、伝導、放射の順に放熱性能が高い。

対流を利用した放熱部材の例としてはヒートパイプが挙げられる。ヒートパイプは内部に液体を有しており、発熱部に近い箇所が高温になり、内部の液体が沸騰し、反対側で冷却され凝縮し、これが循環することによって、放熱がなされている。

しかしながら、スマートフォンのような薄型機器では、十分な熱輸送を実現できる量の液体を導入できるスペースがないため、対流の次に放熱性能が高い伝導の機構を用いたシート状の部材による熱伝導が放熱の手段として利用されることになる。特にCPUなどで発生した熱をシート状の部材を用いて、面内方向に放熱する部材を熱拡散シートと呼ぶ。この熱拡散シートは、比較的高い熱伝導率を有する部材で、数十μm程の厚さであれば、薄型機器であるスマートフォンなどに導入することができ、かつCPUの発熱による局所的な温度上昇を放熱させて抑えることができる。

実際、熱拡散シートに使われる放熱部材は、数百W/(m・K)以上の高熱伝導のものが使用されており、熱伝導率が、それぞれ、236W/(m・K)、401W/(m・K)のアルミ箔銅箔などの金属箔と、数百W/(m・K)から最高で約2000W/(m・K)となるグラファイトシートなどがある。

上記金属箔やグラファイトシートの熱伝達を担うキャリアはそれぞれ主に自由電子と、格子振動由来する音子フォノン)である。金属箔の高熱伝導性は金属が有する自由電子に由来している。グラファイトシートでは、フォノン、つまり格子振動が熱伝達の主なキャリアとなっている。グラファイトは、炭素のような比較的軽い元素が、面内、二次元方向に共有結合で強く束縛されているため、格子振動の伝達が速く、シート面内熱伝導性が高いと考えられる。

以上のように金属箔とグラファイトシートの主な熱伝導のキャリアは自由電子とフォノンとで異なっているが、しかし、どちらの材料も電気伝導性を有している。前述したように金属材料は主に自由電子によって熱が伝わるため、熱伝導性と電気伝導性は相関しており、当然電気伝導性を有する。グラファイトシートのフォノンによる熱伝導は、グラファイトの共有結合結晶が大きいほど高くなるが、グラファイトの共有結合結晶が大きいと、グラファイトのπ共役系も大きくなるため、π電子による電気伝導性が生じ、こちらも電気伝導性を有するシートとなる。

したがって、熱拡散シートに使われる金属箔やグラファイトシートなどの高熱伝導部材は、いずれも電気伝導性を有するため、CPUなどの電子部品の放熱を目的にスマートフォン内部に熱拡散シートを設置する場合などは、熱拡散シートが電子部品と触れてショートするのを防ぐため、放熱層PETフィルムなどの絶縁層を積層して用いることが一般的となっている。つまり、高熱伝導性を有する部材をスマートフォンの熱拡散用途で使用する場合は、必然的に、高い熱伝導性を有するが電気伝導性を有してしまう部材を、絶縁層を積層して使用するという構成となってしまう。

さらに近年では、CPUの性能向上に伴う発熱量の増加によって、より高熱伝導性のシートが求められてきており、ポリイミドなどの高分子フィルムを3000℃付近超高温熱処理で作製する高熱伝導性のグラファイトシートが普及してきている。高分子フィルムを原料として3000℃付近まで加熱することで、シート状態を維持しながら高分子組成物グラファイト化することができ、炭素−炭素再結合によるグラファイト結晶の増大と配向性の向上により、最高で2000W/(m・K)近い熱伝導率を有する熱拡散シートが報告されている。

しかしながら、3000℃付近の熱処理では、多大な電力が必要となり、また、ヒーター断熱材の劣化冷却設備構築、安全面での対策が必要となり、簡便とは言えない高エネルギーを要する手法である。つまり、近年必要とされる熱伝導シートは、より高熱伝導性の部材ゆえに簡便ではない高エネルギーを要して作製されるシートに電気伝導性が生じるため、絶縁層を後工程で貼り合わせるという構成となっている。

もちろんこのような製法が最適とは考えにくく、当然、旧来から微小炭素材料粒子を原料として大面積放熱シートを作りたいという考えはあり、実際にグラファイト粉末を圧力と熱を使ってシート状にした放熱材料も市販されている。しかし、単に粉末を固めただけでは、数百W/(m・K)のものしかできていないのが現状である。つまり、数百W/(m・K)から1000W/(m・K)を超えるような高熱伝導性のグラファイトシートを、炭素材料微粒子を原料として低コストで作製することは難しいと考えられてきた。

新たな潮流として、グラファイト粉末のような破砕型粒子から脱却して、より簡便に高熱伝導性のシートを作製するための材料としてグラフェン材料が注目されている。グラフェンとはグラファイトを一枚一枚剥離した状態のものを言い、単層グラフェンの熱伝導率は2000〜5000W/(m・K)とも報告されているため、このグラフェンを原料にシートを作製すれば、高熱伝導を達成できる可能性は十分にあり、多くの研究者技術者がその実現に向けて検討を行っている。

グラフェンを用いてシートなどを成形するには、一般的にはグラフェンを水や有機溶媒などに分散し、成膜後、溶媒を除去することで作製することができる。ただし、グラフェンは、水や有機溶媒に対して非常に低濃度でしか分散できないため、一般的にはナノオーダーの厚さのシートならば作製することができる。

しかしながら、実際の熱拡散性能となる熱輸送量は、熱伝導率に加えて、その成形品体積に比例するため、ナノレベルの厚さでは熱輸送量が十分ではなく、高い放熱性能を発揮させることができない。熱輸送量を担保するため、グラフェンから数十μmの厚さのグラフェンシートを作製しようとすると、その低濃度の分散性から膨大な量の溶媒が必要となり、工業的に実現するのは難しい。その他の方法として、分散剤などを使用すれば、より高濃度グラフェン分散物を作製することができるが、分散剤は熱伝導性を阻害するため、熱拡散シート用途には適した方法とは言えない。

そこで、より高濃度で溶媒に分散できるグラフェン材料として、酸化グラフェンが注目されている。酸化グラフェンは、グラファイトを過マンガン酸カリウム硫酸などの強酸化剤酸化し、グラファイトを構成するグラフェンの面内にヒドロキシ基エポキシ基カルボニル基や、カルボキシ基などの親水性酸素含有基を付与することで、水や一部の有機溶媒への分散性を著しく向上させたグラフェン材料である。酸化グラフェン分散物を成膜、溶媒を除去することで、数十μmの厚さの酸化グラフェンシートを作製することができる。

ただし、酸化グラフェンは、グラフェン面内に官能基を導入したことによって、グラフェンの共有結合結晶構造が失われており、グラフェンに比べて熱伝導性は減少している。そのため、高熱伝導を達成するためには再びグラフェン構造に戻す必要がある。なお、酸化グラフェンから酸素含有基を除去し再びグラフェンに戻す処理を以下において、還元とも呼ぶ。

酸化グラフェンの還元方法の中で最も検討されているのが熱処理による還元である(例えば、特許文献1参照)。酸化グラフェンを熱処理することで、脱水脱酸素を経て、酸化グラフェン中の酸素含有基が除去され、グラフェン構造を作り出せることが知られている。

ただし、熱処理は膜全体に均一にエネルギー印加できる方法であるが、炉内の空間全体を高温にしなければならない点からエネルギーロスが生じるため、効率的な方法とは言えない。また、酸化グラフェンのグラフェン化に必要な熱処理温度は、前述した高分子フィルムからグラファイトシートを作製する際の熱処理温度より低い温度で達成されるが、依然として高温が必要である。このため、熱処理よりエネルギーロスが少ない、より安価で高熱伝導性の熱拡散シートが求められていた。

概要

本発明の課題は、熱拡散シートに適した、良好な熱伝導性を示すグラフェン積層体を提供することである。また、安価なその製造方法を提供することである。本発明のグラフェン積層体は、酸化グラフェン含有層グラフェン含有層とを有するグラフェン積層体であって、前記酸化グラフェン含有層と前記グラフェン含有層との間に、前記酸化グラフェン含有層側からグラフェン含有層側に向けて厚さ方向に酸素含有比率が連続的に減少する濃度勾配を示す混合層を有することを特徴とする。なし

目的

本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、熱拡散シートに適した、良好な熱伝導性を示すグラフェン積層体を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
0件

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請求項1

酸化グラフェン含有層グラフェン含有層とを有するグラフェン積層体であって、前記酸化グラフェン含有層と前記グラフェン含有層との間に、前記酸化グラフェン含有層側から前記グラフェン含有層側に向けて厚さ方向に酸素含有比率原子%)が連続的に減少する濃度勾配を示す混合層を有することを特徴とするグラフェン積層体。

請求項2

前記混合層の厚さが、0.2〜5μmの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のグラフェン積層体。

請求項3

前記グラフェン含有層の厚さと酸素含有比率が、それぞれ、10〜60μm、0.1〜15原子%の範囲内であり、前記酸化グラフェン含有層の厚さと酸素含有比率が、それぞれ、0.5〜10μm、24〜50原子%の範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のグラフェン積層体。

請求項4

前記グラフェン含有層の酸素含有比率が、0.1〜10原子%であることを特徴とする請求項3に記載のグラフェン積層体。

請求項5

前記グラフェン含有層の酸素含有比率が、0.1〜3原子%であることを特徴とする請求項3に記載のグラフェン積層体。

請求項6

前記酸化グラフェン含有層を有する面の表面抵抗率が1×104〜1×109Ω/sqの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のグラフェン積層体。

請求項7

前記グラフェン含有層が、酸化グラフェンシートの厚さ方向の部分還元体であることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載のグラフェン積層体。

請求項8

請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載のグラフェン積層体を製造するグラフェン積層体の製造方法であって、酸化グラフェンシートの両面から電圧印可することにより、当該酸化グラフェンシートの厚さ方向において、酸化グラフェンを部分的に還元して、グラフェン含有層と、グラフェンと酸化グラフェンとの混合層と、酸化グラフェン含有層とからなる積層体を形成し、かつ、当該混合層が、前記酸化グラフェン含有層側から前記グラフェン含有層側に向けて厚さ方向に酸素含有比率(原子%)が連続的に減少する濃度勾配を有するように制御することを特徴とするグラフェン積層体の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、グラフェン積層体とその製造方法に関し、より詳しくは、熱拡散シートに適した、良好な熱伝導性を示すグラフェン積層体及び安価なその製造方法に関する。

背景技術

0002

スマートフォンが普及して以来、ユーザーがより快適に利用するために、新製品が開発されるごとに、ソフトウェアの処理速度の向上が追い求められてきた。その中でも近年マルチコア型のセントラルプロセッシングユニット中央処理装置、以下CPU)が普及している。単一のCPUは、プログラム中の複数の処理を行うとき利用時間を細かく分割して順番割り当てることによって処理しているが、マルチコア型のCPUは、同時に並列で複数の処理を行うことができ、処理速度が速くなるため、CPUの形態として主流となっている。

0003

しかしながら、一つのCPUの処理能力が高いものをマルチコア化すると、必然的に消費電力は増え、それに伴い発熱量も増加する。このCPUから発生する熱は、適切にCPUから熱を除去、放熱されることが、高温によるCPU自体の故障を防ぐことと、ユーザーのやけどを防ぐために、必須であり、スマートフォンの開発における最も重要な課題の一つとなっている。

0004

発熱体から熱を放熱させる方法としては、伝導対流放射の三つがある。伝導は物質を通して熱が伝わる現象、対流は、液体気体の流れによって熱が伝わる現象、放射は物体から電磁波が放射することによって熱が伝わる現象である。これらは、対流、伝導、放射の順に放熱性能が高い。

0005

対流を利用した放熱部材の例としてはヒートパイプが挙げられる。ヒートパイプは内部に液体を有しており、発熱部に近い箇所が高温になり、内部の液体が沸騰し、反対側で冷却され凝縮し、これが循環することによって、放熱がなされている。

0006

しかしながら、スマートフォンのような薄型機器では、十分な熱輸送を実現できる量の液体を導入できるスペースがないため、対流の次に放熱性能が高い伝導の機構を用いたシート状の部材による熱伝導が放熱の手段として利用されることになる。特にCPUなどで発生した熱をシート状の部材を用いて、面内方向に放熱する部材を熱拡散シートと呼ぶ。この熱拡散シートは、比較的高い熱伝導率を有する部材で、数十μm程の厚さであれば、薄型機器であるスマートフォンなどに導入することができ、かつCPUの発熱による局所的な温度上昇を放熱させて抑えることができる。

0007

実際、熱拡散シートに使われる放熱部材は、数百W/(m・K)以上の高熱伝導のものが使用されており、熱伝導率が、それぞれ、236W/(m・K)、401W/(m・K)のアルミ箔銅箔などの金属箔と、数百W/(m・K)から最高で約2000W/(m・K)となるグラファイトシートなどがある。

0008

上記金属箔やグラファイトシートの熱伝達を担うキャリアはそれぞれ主に自由電子と、格子振動由来する音子フォノン)である。金属箔の高熱伝導性は金属が有する自由電子に由来している。グラファイトシートでは、フォノン、つまり格子振動が熱伝達の主なキャリアとなっている。グラファイトは、炭素のような比較的軽い元素が、面内、二次元方向に共有結合で強く束縛されているため、格子振動の伝達が速く、シート面内の熱伝導性が高いと考えられる。

0009

以上のように金属箔とグラファイトシートの主な熱伝導のキャリアは自由電子とフォノンとで異なっているが、しかし、どちらの材料も電気伝導性を有している。前述したように金属材料は主に自由電子によって熱が伝わるため、熱伝導性と電気伝導性は相関しており、当然電気伝導性を有する。グラファイトシートのフォノンによる熱伝導は、グラファイトの共有結合結晶が大きいほど高くなるが、グラファイトの共有結合結晶が大きいと、グラファイトのπ共役系も大きくなるため、π電子による電気伝導性が生じ、こちらも電気伝導性を有するシートとなる。

0010

したがって、熱拡散シートに使われる金属箔やグラファイトシートなどの高熱伝導部材は、いずれも電気伝導性を有するため、CPUなどの電子部品の放熱を目的にスマートフォン内部に熱拡散シートを設置する場合などは、熱拡散シートが電子部品と触れてショートするのを防ぐため、放熱層PETフィルムなどの絶縁層を積層して用いることが一般的となっている。つまり、高熱伝導性を有する部材をスマートフォンの熱拡散用途で使用する場合は、必然的に、高い熱伝導性を有するが電気伝導性を有してしまう部材を、絶縁層を積層して使用するという構成となってしまう。

0011

さらに近年では、CPUの性能向上に伴う発熱量の増加によって、より高熱伝導性のシートが求められてきており、ポリイミドなどの高分子フィルムを3000℃付近超高温熱処理で作製する高熱伝導性のグラファイトシートが普及してきている。高分子フィルムを原料として3000℃付近まで加熱することで、シート状態を維持しながら高分子組成物グラファイト化することができ、炭素−炭素再結合によるグラファイト結晶の増大と配向性の向上により、最高で2000W/(m・K)近い熱伝導率を有する熱拡散シートが報告されている。

0012

しかしながら、3000℃付近の熱処理では、多大な電力が必要となり、また、ヒーター断熱材の劣化冷却設備構築、安全面での対策が必要となり、簡便とは言えない高エネルギーを要する手法である。つまり、近年必要とされる熱伝導シートは、より高熱伝導性の部材ゆえに簡便ではない高エネルギーを要して作製されるシートに電気伝導性が生じるため、絶縁層を後工程で貼り合わせるという構成となっている。

0013

もちろんこのような製法が最適とは考えにくく、当然、旧来から微小炭素材料粒子を原料として大面積放熱シートを作りたいという考えはあり、実際にグラファイト粉末を圧力と熱を使ってシート状にした放熱材料も市販されている。しかし、単に粉末を固めただけでは、数百W/(m・K)のものしかできていないのが現状である。つまり、数百W/(m・K)から1000W/(m・K)を超えるような高熱伝導性のグラファイトシートを、炭素材料微粒子を原料として低コストで作製することは難しいと考えられてきた。

0014

新たな潮流として、グラファイト粉末のような破砕型粒子から脱却して、より簡便に高熱伝導性のシートを作製するための材料としてグラフェン材料が注目されている。グラフェンとはグラファイトを一枚一枚剥離した状態のものを言い、単層グラフェンの熱伝導率は2000〜5000W/(m・K)とも報告されているため、このグラフェンを原料にシートを作製すれば、高熱伝導を達成できる可能性は十分にあり、多くの研究者技術者がその実現に向けて検討を行っている。

0015

グラフェンを用いてシートなどを成形するには、一般的にはグラフェンを水や有機溶媒などに分散し、成膜後、溶媒を除去することで作製することができる。ただし、グラフェンは、水や有機溶媒に対して非常に低濃度でしか分散できないため、一般的にはナノオーダーの厚さのシートならば作製することができる。

0016

しかしながら、実際の熱拡散性能となる熱輸送量は、熱伝導率に加えて、その成形品体積に比例するため、ナノレベルの厚さでは熱輸送量が十分ではなく、高い放熱性能を発揮させることができない。熱輸送量を担保するため、グラフェンから数十μmの厚さのグラフェンシートを作製しようとすると、その低濃度の分散性から膨大な量の溶媒が必要となり、工業的に実現するのは難しい。その他の方法として、分散剤などを使用すれば、より高濃度グラフェン分散物を作製することができるが、分散剤は熱伝導性を阻害するため、熱拡散シート用途には適した方法とは言えない。

0017

そこで、より高濃度で溶媒に分散できるグラフェン材料として、酸化グラフェンが注目されている。酸化グラフェンは、グラファイトを過マンガン酸カリウム硫酸などの強酸化剤酸化し、グラファイトを構成するグラフェンの面内にヒドロキシ基エポキシ基カルボニル基や、カルボキシ基などの親水性酸素含有基を付与することで、水や一部の有機溶媒への分散性を著しく向上させたグラフェン材料である。酸化グラフェン分散物を成膜、溶媒を除去することで、数十μmの厚さの酸化グラフェンシートを作製することができる。

0018

ただし、酸化グラフェンは、グラフェン面内に官能基を導入したことによって、グラフェンの共有結合結晶構造が失われており、グラフェンに比べて熱伝導性は減少している。そのため、高熱伝導を達成するためには再びグラフェン構造に戻す必要がある。なお、酸化グラフェンから酸素含有基を除去し再びグラフェンに戻す処理を以下において、還元とも呼ぶ。

0019

酸化グラフェンの還元方法の中で最も検討されているのが熱処理による還元である(例えば、特許文献1参照)。酸化グラフェンを熱処理することで、脱水脱酸素を経て、酸化グラフェン中の酸素含有基が除去され、グラフェン構造を作り出せることが知られている。

0020

ただし、熱処理は膜全体に均一にエネルギー印加できる方法であるが、炉内の空間全体を高温にしなければならない点からエネルギーロスが生じるため、効率的な方法とは言えない。また、酸化グラフェンのグラフェン化に必要な熱処理温度は、前述した高分子フィルムからグラファイトシートを作製する際の熱処理温度より低い温度で達成されるが、依然として高温が必要である。このため、熱処理よりエネルギーロスが少ない、より安価で高熱伝導性の熱拡散シートが求められていた。

先行技術

0021

特表2015−536900号公報

発明が解決しようとする課題

0022

本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、熱拡散シートに適した、良好な熱伝導性を示すグラフェン積層体を提供することである。また、安価なその製造方法を提供することである。

課題を解決するための手段

0023

本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において酸化グラフェンシートに、僅か数V程度の電界を印加することにより、酸化グラフェンの還元反応が起こり、酸化グラフェン層グラフェン層、及びその間に酸素含有比率濃度勾配を有する混合層を形成することができることを見いだし本発明に至った。

0024

すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。

0025

1.酸化グラフェン含有層グラフェン含有層とを有するグラフェン積層体であって、前記酸化グラフェン含有層と前記グラフェン含有層との間に、前記酸化グラフェン含有層側から前記グラフェン含有層側に向けて厚さ方向に酸素含有比率(原子%)が連続的に減少する濃度勾配を示す混合層を有することを特徴とするグラフェン積層体。

0026

2.前記混合層の厚さが、0.2〜5μmの範囲内であることを特徴とする第1項に記載のグラフェン積層体。

0027

3.前記グラフェン含有層の厚さと酸素含有比率が、それぞれ、10〜60μm、0.1〜15原子%の範囲内であり、前記酸化グラフェン含有層の厚さと酸素含有比率が、それぞれ、0.5〜10μm、24〜50原子%の範囲内であることを特徴とする第1項又は第2項に記載のグラフェン積層体。

0028

4.前記グラフェン含有層の酸素含有比率が、0.1〜10原子%の範囲内であることを特徴とする第3項に記載のグラフェン積層体。

0029

5. 前記グラフェン含有層の酸素含有比率が、0.1〜3原子%の範囲内であることを特徴とする第3項に記載のグラフェン積層体。

0030

6.前記酸化グラフェン含有層を有する面の表面抵抗率が、1×104〜1×109Ω/sqの範囲内であることを特徴とする第1項から第5項までのいずれか一項に記載のグラフェン積層体。

0031

7.前記グラフェン含有層が、酸化グラフェンシートの厚さ方向の部分還元体であることを特徴とする第1項から第6項までのいずれか一項に記載のグラフェン積層体。

0032

8.第1項から第7項までのいずれか一項に記載のグラフェン積層体を製造するグラフェン積層体の製造方法であって、酸化グラフェンシートの両面から電圧印可することにより、当該酸化グラフェンシートの厚さ方向において、酸化グラフェンを部分的に還元して、グラフェン含有層と、グラフェンと酸化グラフェンとの混合層と、酸化グラフェン含有層とからなる積層体を形成し、かつ、当該混合層が、前記酸化グラフェン含有層側から前記グラフェン含有層側に向けて厚さ方向に酸素含有比率(原子%)が連続的に減少する濃度勾配を有するように制御することを特徴とするグラフェン積層体の製造方法。

発明の効果

0033

本発明の上記手段により、熱拡散シートに適した、良好な熱伝導性を示すグラフェン積層体を提供することができる。また、安価なその製造方法を提供することができる。

0034

本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。

0035

酸化グラフェンシートに電界を印加すると、効率的に酸化グラフェン分子励起状態を作り出すことができ、この励起状態から酸化グラフェン中にある酸素含有基が脱水や脱酸素の形で、還元反応が陰極側から効率的に進行するためであると推察している。

図面の簡単な説明

0036

本発明のグラフェン積層体の断面図の一例
熱伝導を示す概念図である。
電極と酸化グラフェンシートのエネルギー準位の模式図
酸化グラフェンシートの陽極側における正孔の生成を表した模式図
陽極側から陰極側にラジカルカチオンが移動する過程を表した模式図
酸化グラフェンシートの陰極側のLUMO準位に電子注入されることを表した模式図
キャリア再結合で励起状態が形成され、その励起状態から還元される様子を表した模式図
還元されたグラフェン層が電極となり、さらに次の層が反応し、還元反応が進行する様子を表した模式図
本発明のグラフェン積層体と比較例の積層体の熱拡散性評価結果

0037

本発明のグラフェン積層体は、酸化グラフェン含有層とグラフェン含有層とを有するグラフェン積層体であって、前記酸化グラフェン含有層と前記グラフェン含有層との間に、前記酸化グラフェン含有層側から前記グラフェン含有層側に向けて厚さ方向に酸素含有比率(原子%)が連続的に減少する濃度勾配を示す混合層を有することを特徴とする。この特徴は、各請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。

0038

本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記混合層の厚さが、0.2〜5μmの範囲内であることが好ましい。

0039

前記グラフェン含有層の厚さと酸素含有比率が、それぞれ、10〜60μm、0.1〜15原子%の範囲内であり、前記酸化グラフェン含有層の厚さと酸素含有比率が、それぞれ、0.5〜10μm、24〜50原子%の範囲内であることが、汎用性に優れた高熱伝導金属であるアルミの熱伝導率を上回ることと、熱輸送量の観点、また、高電気抵抗性の観点から好ましい。

0040

前記グラフェン含有層の酸素含有比率が、0.1〜10原子%の範囲内であることが、汎用性の高い高熱伝導金属である銅の熱伝導率を上回るため産業上価値がある。

0041

前記グラフェン含有層の酸素含有比率が、0.1〜3原子%の範囲内であることが、1000W/(m・K)を超える極めて高い熱伝導性を有するため、産業上特に価値がある。

0042

さらに、本発明においては、前記酸化グラフェン含有層を有する面の表面抵抗率が、1×104〜1×109Ω/sqの範囲内であることが、電子部品に対する熱拡散シートとして用いた場合にショートを防ぐ観点から好ましい。

0043

また、前記グラフェン含有層が、酸化グラフェンシートの厚さ方向の部分還元体であることが好ましい。

0044

本発明のグラフェン積層体を製造するグラフェン積層体の製造方法としては、酸化グラフェンシートの両面から電圧を印可することにより、当該酸化グラフェンシートの厚さ方向において、酸化グラフェンを部分的に還元して、グラフェン含有層と、グラフェンと酸化グラフェンとの混合層と、酸化グラフェン含有層とからなる積層体を形成し、かつ、当該混合層が、前記酸化グラフェン含有層側から前記グラフェン含有層側に向けて厚さ方向に酸素含有比率(原子%)が連続的に減少する濃度勾配を有するように制御する態様の製造方法であることが、低エネルギーで安価に製造できることから好ましい。

0045

以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。

0046

なお本発明において酸素含有比率(原子%)は、酸素原子炭素原子を足し合わせたものに対する酸素原子の原子比率(O/(C+O))を%で示したものである。

0047

《グラフェン積層体の概要
本発明のグラフェン積層体は、酸化グラフェン含有層とグラフェン含有層とを有するグラフェン積層体であって、前記酸化グラフェン含有層と前記グラフェン含有層との間に、前記酸化グラフェン含有層側から前記グラフェン含有層側に向けて厚さ方向に酸素含有比率(原子%)が連続的に減少する濃度勾配を有する混合層を有することを特徴とする(図1参照。)。

0048

この混合層は前記酸化グラフェン含有層から前記グラフェン含有層に向けて厚さ方向に酸素含有比率(原子%)が連続的に減少する濃度勾配を有するために、還元されたグラフェン含有層と還元されていない酸化グラフェン含有層の間で明確な界面が存在しないことから、密着性に優れ、放熱性能に優れる。通常、電子部品に用いられる熱拡散シートは、電子部品の上に、絶縁層などの高電気抵抗層があり、その上に熱伝導層が配置される。そのため、電子部品で発生した熱は高電気抵抗層を通り熱伝導層に浸透することになり、熱拡散シートの実際の放熱性能に対して高電気抵抗層と熱伝導層の間の界面熱抵抗が影響すると考えられる。

0049

図2は、熱伝導を示す概念図である。電子部品Hで発生する熱は、白矢印で示した放熱方向4に放熱する。この時、明確な界面が存在しない本発明のグラフェン積層体を用いた場合(図2(a)参照。)は、酸化グラフェン含有層からグラフェン含有層まで、連続的に酸素含有比率が減少することにより明確な界面が存在せず、密着性に優れ酸化グラフェン含有層からグラフェン含有層に効果的に熱を伝えることができると考えられる。一方、界面が存在する場合(図2(b)参照。)は、明確な界面が存在しない場合と比べ、効果的に熱を伝えることができないと考えられる。

0050

本発明のグラフェン積層体を電界印加により作製するとき、酸化グラフェンシートは陰極側から還元反応が進む。陽極側からは正孔が注入される、つまり電子が引き抜かれ、常に酸化状態となるため、陽極に接する面の酸化グラフェンは還元されることがなく、結果として、酸化グラフェンシートの両面から電界印加すると、高熱伝導性を有するグラフェン含有層に加えて、高い電気抵抗を有する酸化グラフェン層が残り、一回の処理で熱伝導層と高電気抵抗層とを有する熱拡散シートの構成に適したグラフェン積層体を安価に製造することができる。

0051

《酸化グラフェン》
本発明において、酸化グラフェンとは、グラフェンに、カルボキシ基、カルボニル基、ヒドロキシ基、及びエポキシ基等の酸素含有基が修飾されたものを指す。本発明に用いる酸化グラフェンについては特に限定されないが、カルボキシ基、カルボニル基、ヒドロキシ基又はエポキシ基等の酸素含有基を有する酸化グラフェンの酸素含有比率(原子%)は、24〜50原子%の範囲内であることが好ましい。24原子%以上であると上述の酸素含有基が特定量以上結合することでπ共役が切断され、酸化グラフェンの電気抵抗が高くなるため好ましい。また、50原子%以下であると還元反応を効果的に進行させられるため好ましい。酸化グラフェンは酸化グラフェンシートとして用いる。

0052

<酸化グラフェンの面方向の径>
酸化グラフェンは、グラファイトを酸化処理することで、グラファイトを構成するグラフェンが剥離、酸化された、層状粒子である。この層状粒子の面方向の径が大きいほど、熱伝導性の観点で好ましい。これは、シート内部の層状粒子間の界面は、熱伝導の阻害要因となるため、層の面方向の径が大きいほど、界面が少なくなり、熱伝導性の観点で好ましい。高熱伝導性の観点で、層の面方向の径が、1μm以上あることが好ましく、5μm以上がより好ましく、酸化グラフェン溶媒分散体分散状態に不具合が生じない範囲で、10μm以上あることがさらに好ましい。

0053

《酸化グラフェンシートの還元》
酸化グラフェンシートの還元は、酸化グラフェン中にある酸素含有基が脱水や脱酸素の形で脱離していく化学反応である。したがって、化学反応を効率的に引き起こすには、いかに分子を効率的に励起して高エネルギー状態にできるかが重要となる。一般に熱によって、化学反応を進行させるのに十分な励起分子を生じさせるには、数千度から一万度以上の温度が必要と言われており、事実、前述したようにポリイミドフィルムや酸化グラフェンシートをグラファイト、グラフェンシートに熱的に変換するには、2000℃から3000℃付近の温度が必要となっている。

0054

そこで、励起状態を効率的につくる技術の例として、電界を加えたときに発光する半導体素子有機エレクトロルミネッセンス有機EL)などが挙げられる。

0055

有機EL素子では、層状の素子に電界印加することで、陽極側素子の最高被占軌道(HOMO)準位にある電子が陽極に移り、ラジカルカチオンが生じる。ラジカルカチオンは隣の電子がカチオンを埋める形で、カチオンとしては陰極側に移動していく。一方、陰極では電子が素子の最低空軌道(LUMO)に注入され、ラジカルアニオンが生じ、陽極側にホッピング移動していく。移動したラジカルカチオンとラジカルアニオンが再結合することで、励起状態が形成されることになる。

0056

この励起状態は、僅か数Vで生成させることができ、励起状態を作り出す手段としては低エネルギーと言える。実際、有機EL素子では、この励起状態から失活するとき放出するエネルギーを光として利用しているが、例えば、白熱電灯などは、フィラメント通電し2000℃以上に発熱させることで励起状態を作り出し発光させており、これに対してラジカルカチオンとラジカルアニオンの再結合による励起状態の生成は、低エネルギーであると言える。実際、白熱電灯とLED照明有機EL照明エネルギー効率は約10倍の差があると言われている。

0057

ここで、有機ELの機構と酸化グラフェンの特性を利用することで、酸化グラフェンを効率的にグラフェン化させることができるのではないかと考えた。

0058

グラフェンやグラファイトに電界印加した場合には、金属材料と同じようにオームの法則に従い、抵抗体電流が流れるだけであって、分子の励起状態を効率的に作り出すことはできない。

0059

一方、酸化グラフェンは、実際にシートにして、HOMO−LUMO準位を測定すると、HOMO準位は約5.7eVと計測され、吸収スペクトルからの解析でLUMO準位は約3.1eVと推算された。さらに金属電極で酸化グラフェンシートを挟むと電極と酸化グラフェンシート6のエネルギー準位の模式図は図3のようになり、この構成で電界印加することで、酸化グラフェン内部に電荷再結合による励起状態を形成させ、効率的にグラフェン化させることができると考えた。

0060

この酸化グラフェンシート6の厚さ方向の電界印加による還元の推定メカニズムを以下にさらに詳しく説明する。図4は、酸化グラフェンシート6の陽極側における正孔の生成を表した模式図である。

0061

まず酸化グラフェンシート6に電界をかけると、陽極との酸化グラフェンのHOMOの準位差Bが小さいため、陽極からキャリアの注入が起こる。つまり、酸化グラフェンから電子が陽極に注入される。すなわち、陽極から正孔(ラジカルカチオン)が注入される。

0062

陽極及び陰極と酸化グラフェンの準位が図4の左図のような位置関係にある場合は、陰極と酸化グラフェンのLUMO準位差Aの方が、陽極と酸化グラフェンのHOMO準位の差Bよりも大きくなるため、電極(陰極)からLUMO準位への電子注入が起こる前に、ラジカルカチオンが陰極近傍にまで拡散していくと考えられる。

0063

陽極側付近で生じたラジカルカチオン(正孔)は、直流電源から印加された電圧により、図では右方向(陽極側)から左方向(陰極側)へと移動していく(図5参照。)。

0064

もちろん陰極でも電極(陰極)の準位と、酸化グラフェンのLUMOのエネルギー準位差以上の電圧をかけることにより、酸化グラフェンの陰極側のLUMO準位に電子が注入される(図6参照。)。

0065

この時、先に説明したように、陰極近傍までラジカルカチオンが存在しているために、その部位でキャリア(ラジカルアニオンとラジカルカチオン)の再結合が起こり、励起状態が形成され、この励起状態が効率的に酸化グラフェンの還元反応へと使われていくと考えられる(図7参照。)。

0066

つまり、模式図のようなエネルギー準位を持つ酸化グラフェンにおいては、陰極側でまずキャリア再結合が起き、励起状態が形成されることで、酸化グラフェンが還元されグラフェンになり、グラフェン含有層2と酸化グラフェン含有層3が形成すると考えられる。

0067

このようにして、陰極側からグラフェンが形成していくが、前記のとおりグラフェンはオームの法則に従う導電体であるため、下の右図のように通電経時で還元されたグラフェンを含有するグラフェン含有層2が電極となり、さらに次の層が反応し、還元が陽極側へと進行していく(図8参照。)。陰極側は導電性のグラフェン含有層2が徐々に厚くなる。

0068

この方式の特徴は、電界を印加しても、陽極に接している酸化グラフェンを含有する酸化グラフェン含有層3は、陽極に電子を出し続ける(陽極から正孔を注入し続ける)ため、常に酸化状態となり、還元されてグラフェンとなることはない。つまり、陽極に接している側は電気抵抗が高い層が残り、還元されたグラフェンを含有するグラフェン含有層2と、還元されない酸化グラフェンを含有する酸化グラフェン含有層3が同一のシートに形成されることになる。

0069

このような電荷再結合による励起エネルギーを用いた還元は、電極準位と酸化グラフェンのLUMO準位の電位差から、せいぜい数ボルトから十数ボルト程度で還元が進むことと、キャリア再結合方式を用いるために、3000℃加熱のような従来の燃焼方式に較べると約10分の1程度のエネルギー使用量で製造ができることが最大の利得である。

0070

また、この方式で作製したグラフェン積層体は、その製法上の特異性から陽極に接する、又は陽極近傍に存在する酸化グラフェン層は還元されないため、電気抵抗が高い酸化グラフェン層が、熱伝導性の高いグラフェン層と同時に形成できることが先進的であり、画期的な組成物となる。

0071

従来のグラファイトシートなどの熱拡散シートでは、グラファイト構造又はグラフェン構造を有するシート状組成物を作製するために、ポリイミドフィルムや酸化グラフェンシートを高温熱処理する必要があり、さらに絶縁性をもたせるために樹脂フィルムなどを後工程で貼り合わせる必要があったが、このようなコストのかかる操作が不要になることも産業利用上好適である。

0072

<グラフェン含有層>
電界印加によって、酸化グラフェン中のエポキシ基やヒドロキシ基、カルボニル基や、カルボキシ基などの酸素含有基が除去され、それとともに、酸化グラフェンに二重結合、π共役系が形成され、グラフェン構造が生成する。酸素含有基の除去は脱酸素、脱水、又は脱炭酸の形で進行していると考えられる。このような反応を本発明では還元と呼び、電界印加によって還元反応が進行して酸化グラフェンが還元されて形成された層を、グラフェン含有層と呼ぶ。本発明において、グラフェン含有層は酸素含有比率(原子%)が15原子%以下の層をいう。

0073

なお、本明細書において、グラフェン含有層は、単層のグラフェン、又は2層以上100層以下の多層グラフェンを含むものである。単層グラフェンとは、π結合を有する1原子層炭素分子のシートのことをいう。また、酸化グラフェンとは、上記グラフェンが酸化された化合物のことをいう。

0074

また、酸化グラフェンを還元してグラフェンを形成する場合、酸化グラフェンに含まれる酸素は全て脱離される訳でなく、一部の酸素はグラフェンに残存する。グラフェンに酸素が含まれる場合、酸素の割合は、XPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy)で測定した場合にグラフェン積層体中の酸素含有比率が、0〜15原子%の範囲内であり、好ましくは0〜10原子%であり、より好ましくは0〜3原子%以下の範囲内である。酸素含有比率が15原子%以下であると、汎用性の高い高熱伝導金属であるアルミの熱伝導率を上回り、10原子%以下だと、汎用性の高い高熱伝導金属の中で最も熱伝導性が高い銅の性能を上回り、3原子%以下だと、1000W/(m・K)を超え、低エネルギーで作製することで、産業上特に価値がある。

0075

グラフェン含有層中に残存する酸素量は印加する電圧、反応時間等で調整することができる。印加する電圧は2〜15Vの範囲内が好ましい。グラフェン含有層は良好な熱伝導層として機能する。

0076

グラフェン含有層の厚さは、熱輸送量の観点から10μm以上であることが好ましい。実際の熱拡散性能は、熱伝導率と膜厚に比例するため、10μm以上の一定の厚さが存在することが好ましい。近年のスマートフォンやタブレット用途における省スペースでの熱拡散用途の観点から60μm以下の薄膜が好ましい。

0077

<酸化グラフェン含有層>
酸化グラフェン含有層は、酸化グラフェンシートの還元反応で陽極側に残る還元されなかった酸化グラフェンを含有する層である。本発明において、酸化グラフェン含有層は酸素含有比率(原子%)が24原子%以上の層をいう。

0078

酸化グラフェンシートに電圧印加し、グラフェン積層体を作製する際、陽極側部分で必ず還元されない酸化グラフェン層が残ることになる。低エネルギー印加でグラフェン積層体を作製できると同時に、電気抵抗の高い酸化グラフェン層の形成とともに、高電気抵抗層を同一シート内で形成させることができ、アルミ(236W/(m・K))や銅(401W/(m・K))の性能を超える高熱伝導で、同一積層体内に高抵抗層を含む構成は、産業上価値があり、1000W/(m・K)以上の高熱伝導で同一積層体内に高抵抗層を含む構成は、産業上さらに価値がある。

0079

(高電気抵抗層)
一方の面に電気抵抗が高い還元されない酸化グラフェン層が残ることによって、この層に接している面では、電子部品のショートによる不具合を起こしにくい。

0080

もちろん用途によってはさらに絶縁層を貼り合わせてもよく、その際も酸化グラフェン層が存在する方が、絶縁層の厚さを薄くすることができ、産業上価値がある。

0081

<混合層>
混合層は、前記酸化グラフェン含有層側から前記グラフェン含有層側に向けて厚さ方向に酸素含有比率(原子%)が連続的に減少する濃度勾配を有する混合層である。24〜15原子%の領域まで連続的に濃度勾配を有している。このような濃度勾配を有することで、前述したように、酸化グラフェン含有層とグラフェン含有層が界面を有する場合と比べて界面熱抵抗が減少し、熱伝導性を良好にすることができる。

0082

その傾きは、酸素含有比率が0.1μm当たり、0.15〜25.0原子%の範囲内の減少率で、酸素含有比率が24〜50原子%の酸化グラフェン含有層の領域から、酸素含有比率が0.1〜15原子%のグラフェン含有層の領域まで連続して減少する領域であることが好ましい。この傾きは、例えば、グラフェン積層体の酸化グラフェン含有層から、必要に応じ0.1μm厚ごとに剥離していったときの酸素含有比率の測定から求めることができる。

0083

混合層の厚さは、0.2〜5μmの範囲内であることが好ましい。

0084

電圧印加によって作製されたグラフェンシートの厚さ方向の酸素含有比率(原子%)の分布は、グラフェンシートを粘着テープへき開、剥離していき、都度XPSで酸素含有比率とそのときの厚さを計測することで明らかにすることができる。電圧や印加時間によって、濃度勾配の差はあるものの、酸化グラフェンの還元された層と、還元されていない層は明白に境界があるわけではなく、徐々に変化している。この状態によって、電子部品の発熱が厚さ方向に伝わる際の界面熱抵抗が少なく、放熱性で優れた材料となっていると考えられる。

0085

酸素含有比率の測定は以下のようにして行うことができる。

0086

<酸素含有比率と各層の厚さの測定>
グラフェン積層体の酸素含有比率(原子%)はX−ray Photoelectron Spectroscopy(以下、XPSともいう。)で測定することができ、O/(C+O)原子%で表される値である。本発明の実施例で用いた酸化グラフェンの酸素含有比率は約24、50原子%であるが、用途によって、また分散状態に不具合が生じない範囲で、酸化反応の条件を変え、酸素含有比率を調整してもよい。

0087

粘着テープを用いて、陽極側から1μm厚ごとに剥離していき、都度XPSで酸素含有比率とそのときの厚さを計測することにより厚さを横軸、酸素含有比率を縦軸にした酸素含有比率(原子%)のXPSプロファイルから読み取ることができる。また、必要に応じ0.1μmごとに剥離して、都度酸素含有比率を測定することで、混合層の厚さを正確に求めることができる。

0088

具体的には酸化グラフェン含有層の酸素含有比率は、陽極から1μmごとに剥離したとき、酸素含有比率が24%に達するまでの厚さと、それまでの酸素含有比率の算術平均値とから算出することができる。

0089

グラフェン含有層も同様にして、1μmごとに剥離していったとき、酸素含有比率が15%に減少してから、陰極に接していた面に達するまでの厚さから求めることができる。

0090

混合層は、上記のようにして測定した酸化グラフェン含有層とグラフェン含有層の中間の層として厚さを求めることができる。

0091

本発明において、それぞれの層の酸素含有比率は、上記のようにして求めた1μmごとの酸素含有比率の算術平均値とする。層の厚さが2μm以下の場合、酸素含有比率は0.1μm剥離していくごとにXPSによる酸素含有比率(原子%)を測定したデータをもとに層の酸素含有比率を求めることができる。

0092

<電極>
電極としては、金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、銅、アルミニウム、銀、白金、金、鉄、マグネシウム、などの金属、ステンレス真鍮などの合金、グラファイトなどの炭素材料や、インジウムチンオキシドなどの無機半導体材料などが挙げられる。

0093

《グラフェン積層体の物性》
<熱伝導率>
放熱性能を表す物理量として熱伝導率がある。熱伝導率(W/(m・K))は熱拡散率(m2/s)、比熱容量(J/Kg・K)、密度(g/cm3)の積で表される。熱拡散率、比熱容量、密度をそれぞれ測定することで、熱伝導率を算出できる。

0094

<放熱性能>
高い熱伝導率を有する汎用性の金属の性能は、アルミで300Kの温度で236W/(m・K)、銅で401W/(m・K)である。したがって、アルミや銅を超える熱伝導率を有し、かつ安価に作ることができれば、産業上価値がある。さらに、1000W/(m・K)以上の熱伝導率を有する部材を提供するためには、現状、約3000℃付近の焼結によってグラファイトシートを作製するしかなく、本発明の、低エネルギーで作製することができ、1000W/(m・K)以上の熱伝導率を有する部材は、産業上特に価値がある。

0095

<熱拡散シート性能>
それぞれの電子部品において、動作時の最高発熱量に対して、電子部品が故障しないための放熱すべき熱量が存在する。熱伝導率は、単位長さあたりに1℃の温度勾配があるときに、単位断面積を通過する熱量であるため、シートの面積が一定であれば実際に輸送される熱量は熱伝導率と厚さに比例する。グラフェン含有層の熱伝導率と厚さを調整することで、電子部品が故障しないための適切な放熱を行うことができる。

0096

《製造方法》
本発明のグラフェン積層体を製造するグラフェン積層体の製造方法は、酸化グラフェンシートの両面から電圧を印可することにより、当該酸化グラフェンシートの厚さ方向において、酸化グラフェンを部分的に還元して、グラフェン含有層と、グラフェンと酸化グラフェンとの混合層と、酸化グラフェン含有層とからなる積層体を形成し、かつ、当該混合層が、前記酸化グラフェン含有層側から前記グラフェン含有層側に向けて厚さ方向に酸素含有比率(原子%)が連続的に減少する濃度勾配を有するように制御することを特徴とする。

0097

<酸化グラフェン溶媒分散体>
酸化グラフェンは、グラファイト、又は多層グラフェンを強酸化剤で酸化することによって、グラフェン粒子の面上や縁にエポキシ基やヒドロキシ基、カルボニル基や、カルボキシ基などの酸素含有基を付与し、シート作製に必要な溶媒分散性をもたせることができる。酸化グラフェン溶媒分散物はHummers法、又はそれを改良したModified Hummers法で、公知の文献に基づいて作製することができる。溶媒は酸化グラフェンの分散性の観点から、水が最も汎用的だが、酸化グラフェンの凝集や、作製されたシートの膜質に関して不具合が生じない範囲で有機溶媒を用いることもできる。酸化グラフェン作製の公知文献としては、例えば、W.S.Hummers.,Journal of American Chemistry (1958)1339、M.Hirata.,Carbon 42(2004)2929などが挙げられる。

0098

<酸化グラフェンシートの作製>
酸化グラフェンシートは、酸化グラフェン溶媒分散体をある一定の厚さで塗布し、溶媒を乾燥させることで作製することができる。一定の厚さで塗布し、乾燥させることができれば、膜質に不具合が生じない範囲でいかなる塗布方法を用いてもよい。例えば、本発明の実施例におけるキャスト製膜に加えて、濾過製膜ディップコートスピンコートスプレー塗布などがある。また、酸化グラフェンシートはガラス基板樹脂基材に塗布することで、剥離することができる。酸化グラフェンシートが剥離できる範囲で、基板基材にはいかなる材料を用いてもよい。

0099

酸化グラフェンシートの厚さは、基板からの剥離時に生じる張力に耐えるための強度を保つ観点から、10μm以上であることが好ましい。また、酸化グラフェン溶媒分散体の濃度や、製膜時の酸化グラフェン溶媒分散体の厚さを大きくすることで、酸化グラフェンシートの厚さを大きくすることができるが、濃度を上げることによる酸化グラフェンの凝集や、シートの膜面の平滑性の観点から通常100μm以下の範囲内であることが好ましい。また酸化グラフェンシート中の酸化グラフェンの含有量は80〜100質量%であることが好ましい。好ましくは、酸化グラフェンシートは酸化グラフェンのみからなることである。

0100

添加物
還元反応の活性化エネルギーをさらに下げる目的で、公知の還元剤を酸化グラフェンシートに添加してもよい。例えば、公知文献(C.K.Chua.,Chemical Society Reviews 43(2014)291)に記載の還元剤などが挙げられる。添加物は例えば、酸化グラフェン溶媒分散体の段階で混ぜ、製膜することで、酸化グラフェンシートに添加することができる。また、分散状態に不具合が生じない範囲で、酸化グラフェン溶媒分散体に還元剤を添加し、撹拌、適切に加温、反応時間を調整することで、分散体の状態で酸化グラフェンの酸素含有比率を調整してもよい。

0101

<電界印加>
剥離した酸化グラフェンシートを電極で両面を挟むことで膜全体に電界印加することができる。膜圧方向に電極で挟むことがきれば、電極はいかなる形態であってもよい。例えば、単に金属板で挟んで電界印加してもよいし、ロール状の電極を二つ用意し、シートを、ロール電極間を圧着し、搬送させながら電界印加してもよい。また電極は金属や合金に加えて、ITOなどの無機酸化物、炭素材料など、グラフェン化に不具合が生じない限り、いかなる電極材料を用いてもよい。

0102

《用途》
本発明のグラフェン積層体は、低エネルギーで、1回の電界印加で高熱伝導層と高電気抵抗層を有し、かつ、高熱伝導層と高電気抵抗層の境界が、明確な界面ではなく濃度勾配を有しているため、電子部品などから発生した熱を効果的に伝えることができる。また、安価に製造することができ、熱拡散シートに好ましく適用することができる。

0103

以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。

0104

〔実施例1〕
《グラフェン積層体の作製》
〈グラフェン積層体1の作製〉
(酸化グラフェン水分散体1の調製)
東京化成工業(株)のグラフェンナノプレートレット(厚さ6〜8nm、幅5μm)10g、硝酸ナトリウム7.5gをフラスコに入れ、そこに濃硫酸621gを加えた。フラスコを氷浴につけ、撹拌しながら、過マンガン酸カリウム45gを溶液温度が20℃を超えないように少量ずつ加えた。その後、室温に戻し、5日間撹拌した後、そこに、1Lの5質量%硫酸を加え1時間撹拌した。さらに、そこに30質量%の過酸化水素水30gを加え、1時間撹拌した。硫酸の濃度が3質量%、過酸化水素水の濃度が0.5質量%となるように調整した混合溶液1Lを加え希釈した。この溶液を、遠心分離(5000rpm、15分)し、上澄みを除去、同様の混合溶液を加え、遠心分離を繰り返し10回行った。同様の遠心分離を純水で10回行い、10回目で上澄みを捨てた後、250mLの純水を加え酸化グラフェン水分散体1を作製した。

0105

(酸化グラフェン水分散体2の調製)
過マンガン酸カリウムを加えた後14日間撹拌したこと以外は、酸化グラフェン水分散体1と同様に作製した。

0106

(酸化グラフェンシートの作製)
4gの酸化グラフェン水分散体1をガラス基板に貼り付けた25μmのPET(ポリエチレンテレフタレートフィルム上に0.75mmのギャップに調整したアプリケーターで塗布した。50℃で10時間乾燥させた後、PETフィルムから剥離し、厚さ20.7μmの酸化グラフェンシートを得た。

0107

(酸化グラフェンシートの部分還元)
この酸化グラフェンシートを2枚の100μm銅箔板で挟み、プレス機を用いて10MPaの圧力をかけながら、2枚の銅箔板間に12Vの電圧を3時間印加し、グラフェン積層体1を作製した。

0108

〈グラフェン積層体2〜8の作製〉
表1に記載の電圧と印加時間を変更した以外は、グラフェン積層体1と同様に作製し、グラフェン積層体2〜8を得た。

0109

〈グラフェン積層体9〜16の作製〉
酸化グラフェン水分散体1を塗布する際の、アプリケーターのギャップを1.5mmに、また、電圧、印加時間を表1に記載の条件に変更した以外はグラフェン積層体1と同様に作製し、グラフェン積層体9〜16を得た。

0110

〈グラフェン積層体17〜24の作製〉
酸化グラフェン水分散体1を塗布する際の、アプリケーターのギャップを2.25mmに、また、電圧、印加時間を表1に記載の条件に変更した以外はグラフェン積層体1と同様に作製し、グラフェン積層体7〜24を得た。

0111

〈グラフェン積層体25〜32の作製〉
酸化グラフェン水分散体2を使用し、また、電圧、印加時間を表2に記載の条件に変更した以外は、グラフェン積層体1と同様に作製し、グラフェン積層体25〜32を得た。

0112

〈グラフェン積層体33〜40の作製〉
酸化グラフェン水分散体2を使用し、酸化グラフェン水分散体2を塗布する際の、アプリケーターのギャップを1.5mmに、また、電圧、印加時間を表2に記載の条件に変更した以外はグラフェン積層体1と同様に作製し、グラフェン積層体33〜40を得た。

0113

〈グラフェン積層体41〜48の作製〉
酸化グラフェン水分散体2を使用し、酸化グラフェン水分散体2を塗布する際の、アプリケーターのギャップを2.25mmに、また、電圧、印加時間を表2に記載の条件に変更した以外はグラフェン積層体1と同様に作製し、グラフェン積層体41〜48を得た。

0114

〈グラフェン積層体の酸素含有比率(原子%)の測定〉
得られたグラフェン積層体1の、グラフェン含有層の酸素含有比率(原子%)を測定したところ、酸素含有比率が24.6原子%から1.2原子%まで減少しており、還元が進行していることを確認した。また、酸化グラフェン含有層をXPSで同様に測定したところ、酸素含有比率が24.7原子%と還元が進行していないことを確認した。

0115

さらに、グラフェン積層体1を粘着テープ(3M、スコッチ粘着テープ)によって、陽極に接していた面から1μmごとにへき開、剥離していき、XPSで測定し、酸素含有比率が24.0%に達するまでの厚さを求め、これを酸化グラフェン含有層の厚さとした。同様にへき開、剥離を進め、酸素含有比率が15%に減少してから、陰極に接していた面に達するまでの厚さをグラフェン含有層とした。また、それぞれの1μmごとのXPS測定値の酸素含有比率の算術平均値から酸化グラフェン含有層及びグラフェン含有層の酸素含有比率を求めた。

0116

層の厚さが2μm以下の場合、酸素含有比率は0.1μm剥離していくごとにXPSによる酸素含有比率(原子%)を測定したデータをもとに層の酸素含有比率を求めた。

0117

また、混合層と、グラフェン含有層又は酸化グラフェン含有層の境界部分においては、0.1μm剥離していくごとにXPSによる酸素含有比率(原子%)を測定していき、それぞれの層の厚さを測定した。

0118

グラフェン積層体2〜48について同様にへき開・剥離し、表1及び表2に記載の混合層のそれぞれの厚さに渡って、酸化グラフェン含有層の酸素含有比率からグラフェン含有層の酸素含有比率まで減少していることを確認した。

0119

また、XPS測定条件は以下のとおりである。

0120

アルバックファイ株式会社製のQuanteraSXMを用いて測定を行った。測定条件としてはX線源として、単色化したAl−Kα線を用い、分光器清浄化した銀のAg3d5/2ピークを測定した際のピーク半値幅が0.5eV以下となるような条件で設定し、測定を行った。分光器の較正はISO15472に従って行った。

0121

〈表面抵抗率の測定〉
グラフェン積層体1〜48を23℃相対湿度55%の環境下で24時間静置した後、酸化グラフェン含有層側の表面抵抗率を電気抵抗率計測器(三菱化学アナリテック社製、ハイレスタUP、MCPHT450)で測定した。その結果を表1及び表2に示す。グラフェン積層体1〜48について電気抵抗の高い層が残ることを確認した。

0122

〈熱伝導率の測定〉
上記作製したグラフェン積層体1〜48において、酸化グラフェン含有層、混合層を粘着テープで剥離していき、除去し、熱伝導率を測定した。前述したように熱伝導率は以下の式で表され、熱拡散率、比熱容量、密度をそれぞれ測定することで算出できる。

0123

熱伝導率=熱拡散率×比熱容量×密度
熱拡散率は、アドバンス理工(株)のLaser Pit、比熱容量は、示差走査熱量計DSC6220:(株)日立ハイテクノロジーズ製)、密度は、シートの質量と体積を測定し、温度23℃における熱伝導率を算出した。

0124

〈厚さの測定〉
層の厚さは、ニコン社製デジマイクロMH−15Mで測定した。

0125

以上の結果を表1及び表2に示す。

0126

0127

0128

〔実施例2〕
比較グラフェン積層体1〜48の作製〉
グラフェン積層体1〜48をそれぞれ、粘着テープで、剥離していき、酸化グラフェン含有層、混合層を除去し、残ったグラフェン含有層に対し、酸化グラフェン水分散体を表3に記載の倍率で希釈し、アプリケーターのギャップを0.75mmで塗布、50℃で10時間乾燥させることにより、本発明のグラフェン積層体1〜48のそれぞれの酸化グラフェン含有層と同じ厚さの酸化グラフェン含有層を設けた。この積層体を比較積層体1〜48とした。なお、比較積層体1〜24の作製には、酸化グラフェン水分散体1を用い、比較積層体25〜48には、酸化グラフェン水分散体2を用いた。

0129

0130

〈熱拡散性の評価〉
次に、積層体の熱拡散性を以下のように評価した。グラフェン積層体1〜48を縦1cm、横3cmに切り出し、試験片の一方の端、縦1cm、横1cmの領域において、酸化グラフェン含有層側の面を、熱伝導シート(タイカ(株)、αGEL、COH−4000LVC、1mm)を介してホットプレートに貼りつけた。ホットプレートを80℃に昇温させ、1分後、試験片のヒーターと接している領域とは反対側の、もう一方の端、縦1cm、横1cmの領域の中心部を、グラフェン含有層側から非接触温度計を用いて、温度を測定し、本発明のグラフェン積層体1〜48の熱拡散性を評価した。また、上記と同様に比較グラフェン積層体1〜48の熱拡散性を評価した。

0131

その結果を図9に示す。黒色棒グラフ、白抜きの棒グラフがそれぞれ、本発明、比較例である。横軸の番号はそれぞれ本発明のグラフェン積層体1〜48、比較積層体1〜48に対応した積層体の番号である。図9にあるように、グラフェン含有層に、単に酸化グラフェン層を積層塗布した比較積層体の測定温度と比較して、本発明のグラフェン積層体は、ヒーターに接した箇所から離れた位置でも温度が高く、ヒーターの熱をより伝えることができており、熱拡散性能が高いことがわかる。

実施例

0132

以上、これらの結果を統括すると、高熱伝導性のグラフェン含有層、高電気抵抗性の酸化グラフェン含有層、また、その間に前記酸化グラフェン含有層からグラフェン含有層まで酸素含有比率が連続的に減少する混合層を有する本発明のグラフェン積層体は、熱拡散シートとして好ましい形態であり、高い放熱性を有する。さらに、酸化グラフェンシート膜厚方向に電界を加えることによって、一回の処理で作製することができ、簡便に低エネルギーで作製することができる。

0133

1グラフェン積層体
2グラフェン含有層
3酸化グラフェン含有層
4放熱の方向
5混合層
6酸化グラフェンシート
熱源(電子部品)
A陰極と酸化グラフェンのLUMOの準位差
B陽極と酸化グラフェンのHOMOの準位差

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