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課題

レーダ装置における雑音スペクトル推定を行う。

解決手段

1つの実施例によれば、第1のRF発振器によって第1のRF信号を生成し、第2のRF発振器によって第2のRF信号を生成することと、第1のRF信号と第2のRF信号とをミキサによって混合することと、ミキサ出力信号デジタル化し、デジタル化された信号からミキサ出力信号の電力スペクトル密度推定値を計算することと、を有する方法が記載される。ミキサ出力信号の電力スペクトル密度の推定値に基づいて、第1のRF信号および第2のRF信号に含まれている雑音を特徴付け雑音電力スペクトル密度の推定値が計算される。

概要

背景

高周波数(RF)送信機および受信機は、多数の用途において、とりわけ無線通信およびレーダセンサの分野において見受けられる。自動車分野では、とりわけ、例えばアダプティブクルーズコントロール(Adaptive Cruise Control:ACC)システムまたはレーダクルーズコントロール(Radar Cruise Control)システムのような先進運転支援システム(Advanced Driver Assistance Systems:ADAS)において使用可能なレーダセンサに対する需要が高まっている。このようなシステムは、前方を走行する他の自動車(ならびに他の物体および歩行者)との安全な距離を維持するために自動車の速度を自動的に適合させることができる。自動車分野における他の用途には、例えば盲点検出(blind spot detection)、車線変更支援(lane change assist)等がある。

現代レーダシステムは、高集積RF回路を使用しており、このような高集積RF回路は、レーダトランシーバRFフロントエンドのすべてのコア機能を単一のハウジングシングルチップレーダトランシーバ)に統合することができる。そのような高集積RF回路は、一般にMMICと呼ばれる。RFフロントエンドは、(必ずしも必要とは限らないが)一般に、とりわけ位相制御回路に接続された電圧制御発振器(Voltage Controlled Oscillator:VCO)と、電力増幅器(Power Amplifier:PA)と、方向性結合器と、ミキサと、RFフロントエンドを制御および監視するための対応する制御回路装置と、を含む。MMICは、デジタル信号処理を可能にするために、基底帯域(または中間周波数帯域)におけるアナログ信号処理のための回路と、アナログデジタル変換器(Analog-to-Digital-Converter:ADC)と、を有することもできる。用途によっては、VCOの代わりにデジタル制御発振器(digitally controlled oscillator:DCO)を使用することもできる。センサ用途では、複数のアンテナを介してRFレーダ信号放射および/または受信するために複数のMMICを相互接続カスケード接続)することもできる。複数のアンテナを有するこのような配置構成を、例えばビーム形成技術のために使用することができる。とりわけ、受信したレーダエコー入射角度(Direction of Arrival:DoA(到来方向))を特定すべき場合には、複数の受信アンテナが必要である。

レーダ用途では、RF信号に含まれているノイズフロア(noise floor)が、取得される測定値の達成可能な精度および信頼性に対して直接的に影響を及ぼす。(例えば自動車用途の場合には)機能的な安全性に関する標準化された要件に鑑みて、雑音を定量的に推定および監視することが重要であろう。これに関連する規格は、ISO26262である。

概要

レーダ装置における雑音のスペクトル推定を行う。1つの実施例によれば、第1のRF発振器によって第1のRF信号を生成し、第2のRF発振器によって第2のRF信号を生成することと、第1のRF信号と第2のRF信号とをミキサによって混合することと、ミキサ出力信号デジタル化し、デジタル化された信号からミキサ出力信号の電力スペクトル密度推定値を計算することと、を有する方法が記載される。ミキサ出力信号の電力スペクトル密度の推定値に基づいて、第1のRF信号および第2のRF信号に含まれている雑音を特徴付け雑音電力スペクトル密度の推定値が計算される。

目的

効果

実績

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請求項1

方法であって、第1のRF発振器によって第1のRF信号(sLO,1(t))を生成し、第2のRF発振器によって第2のRF信号(sLO,2(t))を生成するステップと、前記第1のRF信号(sLO,1(t))と前記第2のRF信号(sLO,2(t))とをミキサ(111)によって混合するステップと、ミキサ出力信号(y(t))をデジタル化し、デジタル化された信号(y[n])から前記ミキサ出力信号(y(t))の電力スペクトル密度(Syy(f))の推定値を計算するステップと、前記ミキサ出力信号(y(t))の電力スペクトル密度(Syy(f))の前記推定値に基づいて、前記第1のRF信号(sLO,1(t))および前記第2のRF信号(sLO,2(t))に含まれている雑音特徴付け雑音電力スペクトル密度(Sφφ(f))の推定値を計算するステップと、を含む方法。

請求項2

計算された前記推定値は、前記第1のRF信号(sLO,1(t))に含まれている位相雑音の雑音電力スペクトル密度(Sφ1φ1(f))と、前記第2のRF信号(sLO,2(t))に含まれている位相雑音の雑音電力スペクトル密度(Sφ2φ2(f))と、の平均値を表している、請求項1記載の方法。

請求項3

前記ミキサ出力信号(y(t))を、DC信号重畳された雑音とを実質的に含むようにフィルタリングするステップをさらに含む、請求項1または2記載の方法。

請求項4

前記第1のRF信号(sLO,1(t))と前記第2のRF信号(sLO,2(t))との間の位相差(ΔΦ)を、前記第1のRF信号(sLO,1(t))と前記第2のRF信号(sLO,2(t))とが前記ミキサ(111)の入力部において実質的に直交するように調整するステップをさらに含む、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。

請求項5

前記第1のRF信号(sLO,1(t))および前記第2のRF信号(sLO,2(t))は、基準発振器(51)によって同期されて生成される、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。

請求項6

前記第1のRF信号(sLO,1(t))および前記第2のRF信号(sLO,2(t))は、前記第1のRF信号(sLO,1(t))に含まれている雑音(φ1(t))と、前記第2のRF信号(sLO,2(t))に含まれている雑音(φ2(t))と、が弱く相関するように、または、無相関となるように生成される、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。

請求項7

前記第1のRF発振器および前記ミキサ(111)は、第1のレーダチップ(1)に配置されており、前記第2のRF発振器は、第2のチップ(2)に配置されており、前記第2のRF信号(sLO,2(t))は、電気線路を介して前記第1のレーダチップ(1)に供給される、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。

請求項8

前記雑音電力スペクトル密度(Sφφ(f))の計算された前記推定値が、規定された範囲内にあるかどうかをチェックするステップをさらに含む、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。

請求項9

前記雑音電力スペクトル密度(Sφφ(f))の計算された前記推定値が、前記規定された範囲内にない場合に、第3のRF発振器によって第3のRF信号を生成するステップと、前記第1のRF信号(sLO,1(t))と前記第3のRF信号とを前記ミキサ(111)によって混合するステップと、ミキサ出力信号(y(t))をデジタル化し、デジタル化された信号(y[n])から前記ミキサ出力信号(y(t))の電力スペクトル密度(Syy(f))の推定値を計算するステップと、前記ミキサ出力信号(y(t))の電力スペクトル密度(Syy(f))の前記推定値に基づいて、前記第1のRF信号(sLO,1(t))および前記第2のRF信号(sLO,2(t))に含まれている雑音を特徴付ける雑音電力スペクトル密度(Sφφ(f))の別の推定値を計算するステップと、をさらに含む、請求項8記載の方法。

請求項10

前記第1のRF信号(sLO,1(t))および前記第2のRF信号(sLO,2(t))は、一定の周波数(fLO)を有するか、または、前記第1のRF信号(sLO,1(t))および前記第2のRF信号(sLO,2(t))は、周波数変調されている、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。

請求項11

前記第1のRF信号(sLO,1(t))および前記第2のRF信号(sLO,2(t))は、線形に増加する周波数を有し、前記第1のRF信号(sLO,1(t))の周波数増分(k)と、前記第2のRF信号(sLO,2(t))の周波数増分(k)と、は同じである、請求項10記載の方法。

請求項12

回路装置であって、第1のRF信号(sLO,1(t))を生成するように構成された第1のRF発振器(101)と、第2のRF信号(sLO,2(t))を生成するように構成された第2のRF発振器と、前記第1のRF信号(sLO,1(t))および前記第2のRF信号(sLO,2(t))を入力信号として受信するように構成されたミキサ(111)と、前記ミキサ(111)によって供給されたミキサ出力信号(y(t))をデジタル化するように構成されており、前記ミキサ(111)に後置接続されたアナログデジタル変換器(30)と、計算ユニット(40)と、を有し、前記計算ユニット(40)は、デジタル化されたミキサ出力信号(y[n])を受信し、前記デジタル化されたミキサ出力信号(y[n])に基づいて、前記ミキサ出力信号(y(t))の電力スペクトル密度(Syy(f))の推定値を計算し、前記ミキサ出力信号(y(t))の電力スペクトル密度(Syy(f))の前記推定値に基づいて、前記第1のRF信号(sLO,1(t))および前記第2のRF信号(sLO,2(t))に含まれている雑音を特徴付ける雑音電力スペクトル密度(Sφφ(f))の推定値を計算する、ように構成されている、回路装置。

請求項13

前記第1のRF発振器および第2のRF発振器(101)は、単一のチップに集積されているか、または、それぞれ異なるチップ(1,2)に集積されている、請求項12記載の回路装置。

請求項14

計算された前記推定値は、前記第1のRF信号(sLO,1(t))に含まれている位相雑音の雑音電力スペクトル密度(Sφ1φ1(f))と、前記第2のRF信号(sLO,2(t))に含まれている位相雑音の雑音電力スペクトル密度(Sφ2φ2(f))と、の平均値を表している、請求項12または13記載の回路装置。

請求項15

前記ミキサ出力信号(y(t))を、DC信号と重畳された雑音とを実質的に含むようにフィルタリングするように構成された、前記ミキサ(111)に後置接続されたフィルタ(21)をさらに有する、請求項12から14までのいずれか1項記載の回路装置。

請求項16

前記ミキサ(111)の入力部に前置接続された少なくとも1つの位相シフタをさらに有し、前記位相シフタは、前記第1のRF信号(sLO,1(t))と前記第2のRF信号(sLO,2(t))との間の位相差(ΔΦ)を、前記第1のRF信号(sLO,1(t))と前記第2のRF信号(sLO,2(t))とが前記ミキサの入力部において実質的に直交するように適合させるように構成されている、請求項12から15までのいずれか1項記載の回路装置。

請求項17

第1のチップ(1)および第2のチップ(2)が配置されている回路担体(9)をさらに有し、前記第2のチップ(2)に設けられたRF発振器は、前記回路担体(9)上に配置された線路を介して、前記第1のチップ(1)に設けられた前記ミキサ(111)に接続されている、請求項12から15までのいずれか1項記載の回路装置。

請求項18

それぞれのチップ(1,2)が、複数の送信チャネル(TX01,TX02,TX03)と、複数の受信チャネル(RX01,RX02,RX03)と、を有し、前記複数の送信チャネル(TX01,TX02,TX03)のうちの少なくとも1つは、前記第1のRF信号(sLO,1(t))を増幅して、該当する送信チャネルの出力部においてレーダ信号として供給するように構成されており、それぞれの受信チャネル(RX01,RX02,RX03)は、到来したレーダエコー信号を受信して、前記第1のRF信号(sLO,1(t))と混合するように構成されている、請求項13記載の回路装置。

請求項19

前記第1のチップ(1)の送信チャネル(TX03)は、線路を介して前記第2のチップ(2)の送信チャネル(TX03)に接続されており、前記複数の送信チャネルは、それぞれ前記第1のRF信号または前記第2のRF信号のための入力部としても出力部としても構成可能である、請求項18記載の回路装置。

技術分野

0001

本明細書は、高周波数(RF)回路の分野に関する。種々の実施例は、例えばレーダセンサにおいて使用可能な、2つ以上のカスケード接続されたモノリシックマイクロ波集積回路(Monolithic Microwave IntegratedCircuits :MMIC)を有する装置に関する。

背景技術

0002

高周波数(RF)送信機および受信機は、多数の用途において、とりわけ無線通信およびレーダセンサの分野において見受けられる。自動車分野では、とりわけ、例えばアダプティブクルーズコントロール(Adaptive Cruise Control:ACC)システムまたはレーダクルーズコントロール(Radar Cruise Control)システムのような先進運転支援システム(Advanced Driver Assistance Systems:ADAS)において使用可能なレーダセンサに対する需要が高まっている。このようなシステムは、前方を走行する他の自動車(ならびに他の物体および歩行者)との安全な距離を維持するために自動車の速度を自動的に適合させることができる。自動車分野における他の用途には、例えば盲点検出(blind spot detection)、車線変更支援(lane change assist)等がある。

0003

現代レーダシステムは、高集積RF回路を使用しており、このような高集積RF回路は、レーダトランシーバRFフロントエンドのすべてのコア機能を単一のハウジングシングルチップレーダトランシーバ)に統合することができる。そのような高集積RF回路は、一般にMMICと呼ばれる。RFフロントエンドは、(必ずしも必要とは限らないが)一般に、とりわけ位相制御回路に接続された電圧制御発振器(Voltage Controlled Oscillator:VCO)と、電力増幅器(Power Amplifier:PA)と、方向性結合器と、ミキサと、RFフロントエンドを制御および監視するための対応する制御回路装置と、を含む。MMICは、デジタル信号処理を可能にするために、基底帯域(または中間周波数帯域)におけるアナログ信号処理のための回路と、アナログデジタル変換器(Analog-to-Digital-Converter:ADC)と、を有することもできる。用途によっては、VCOの代わりにデジタル制御発振器(digitally controlled oscillator:DCO)を使用することもできる。センサ用途では、複数のアンテナを介してRFレーダ信号放射および/または受信するために複数のMMICを相互接続(カスケード接続)することもできる。複数のアンテナを有するこのような配置構成を、例えばビーム形成技術のために使用することができる。とりわけ、受信したレーダエコー入射角度(Direction of Arrival:DoA(到来方向))を特定すべき場合には、複数の受信アンテナが必要である。

0004

レーダ用途では、RF信号に含まれているノイズフロア(noise floor)が、取得される測定値の達成可能な精度および信頼性に対して直接的に影響を及ぼす。(例えば自動車用途の場合には)機能的な安全性に関する標準化された要件に鑑みて、雑音を定量的に推定および監視することが重要であろう。これに関連する規格は、ISO26262である。

課題を解決するための手段

0005

1つの実施例によれば、第1のRF発振器によって第1のRF信号を生成し、第2のRF発振器によって第2のRF信号を生成することと、第1のRF信号と第2のRF信号とをミキサによって混合することと、ミキサ出力信号デジタル化し、デジタル化された信号からミキサ出力信号の電力スペクトル密度推定値を計算することと、を有する方法が記載される。ミキサ出力信号の電力スペクトル密度の推定値に基づいて、第1のRF信号および第2のRF信号に含まれている雑音を特徴付け雑音電力スペクトル密度の推定値が計算される。

0006

さらに、回路装置が記載される。1つの実施例によれば、この回路装置は、第1のRF信号を生成するように構成された第1のRF発振器と、第2のRF信号を生成するように構成された第2のRF発振器と、第1のRF信号および第2のRF信号を入力信号として受信するように構成されたミキサと、ミキサによって供給されたミキサ出力信号をデジタル化するように構成されており、ミキサに後置接続されたアナログデジタル変換器と、を有する。計算ユニットは、デジタル化されたミキサ出力信号を受信し、このデジタル化されたミキサ出力信号に基づいて、ミキサ出力信号の電力スペクトル密度の推定値を計算し、ミキサ出力信号の電力スペクトル密度の計算された推定値に基づいて、第1のRF信号および第2のRF信号に含まれている雑音を特徴付ける雑音電力スペクトル密度の推定値を計算するように構成されている。

0007

図面の簡単な説明
以下では、実施例を図面に基づいてより詳細に説明する。図面は、必ずしも縮尺通りではなく、実施例は、図示された態様だけに限定されているわけではない。むしろ、実施例の基礎を成す原理を図示することに重点がおかれている。

図面の簡単な説明

0008

距離測定および/または速度測定のためのFMCWレーダシステムの機能原理を示すための概略図である。
FMCWシステムによって生成されたRF信号の周波数変調を示すための2つのタイミング図である。
FMCWレーダシステムの基本的な構造を示すためのブロック図である。
レーダシステムの送信チャネルおよび受信チャネルの例示的な実装を示すためのブロック図である。
複数のカスケード接続されたMMICを有するシステムを示すためのブロック図であり、ここでは、局部発振器信号が1つのマスタMMICによって生成され、複数のスレーブMMICに分配される。
構成可能なTXチャネルを有するMMICの一例を示す図である。
2つ以上のカスケード接続されたMMICを有するシステムにおける、2つのMMICによる位相雑音の測定を示すための概略ブロック図である。
3つのMMICを有するシステムにおける例示的なテストシーケンスを示すための表である。
局部発振器信号に含まれている位相雑音を測定するための方法の一例を示すためのフローチャートである。

実施例

0009

本明細書に記載される実施例は、レーダ受信機またはレーダトランシーバの文脈で記載される。しかしながら、本明細書に記載される種々の実施例は、レーダ用途に限定されているわけではなく、例えばRF通信装置RFトランシーバのような他の分野において使用することも可能である。

0010

図1は、一般にレーダターゲットと呼ばれる物体の距離および速度を測定するためのセンサとしてのFMCWレーダシステムの使用を示す。この例では、レーダ装置10は、別個の送信(TX)アンテナ5および受信(RX)アンテナ6を有する(バイスタティックレーダ構成、または疑似モノスタティックレーダ構成)。しかしながら、送信アンテナとしても受信アンテナとしても同時に使用される単一のアンテナを使用することもできる(モノスタティックレーダ構成)ことに留意すべきである。送信アンテナ5は、例えば線形チャープ信号周期的な線形の周波数ランプ)によって周波数変調されている連続的なRF信号sRF(t)を放射する。放射された信号sRF(t)は、レーダターゲットTにおいて後方散乱され、後方散乱(反射)された信号yRF(t)は、受信アンテナ6によって受信される。

0011

図2は、信号sRF(t)の上述した周波数変調を例示的に示す。図2に示すように、信号sRF(t)は、多数の「チャープ」から構成されており、すなわち、信号sRF(t)は、増加(アップチャープ)または減少(ダウンチャープ)する周波数を有する正弦状の信号推移波形)のシーケンスを含む(図2の上方の線図を参照)。この例では、チャープの瞬時周波数f(t)は、開始周波数fSTARTから開始して期間TRAMP内で停止周波数fSTOPまで線形に増加する(図2の下方の線図を参照)。このようなチャープは、線形の周波数ランプとも呼ばれる。図2には、3つの同一の線形の周波数ランプが示されている。しかしながら、パラメータfSTART、fSTOP、TRAMP、および個々の周波数ランプ間の休止時間を変化させることができることに留意すべきである。周波数変動は、必ずしも線形である必要はない。実装に応じて例えば、指数関数的な周波数変動(指数関数的なチャープ)または双曲線的な周波数変動(双曲的なチャープ)を有する送信信号を使用することもできる。

0012

図3は、レーダ装置1(レーダセンサ)の考えられる構造を例示的に示すブロック図である。同様の構造は、例えば無線通信システムのような他の用途において使用されるRFトランシーバにおいても見受けられる。したがって、少なくとも1つの送信アンテナ5(TXアンテナ)および少なくとも1つの受信アンテナ6(RXアンテナ)がRFフロントエンド10に接続されており、このRFフロントエンド10は、RF信号処理のために必要とされるすべての回路コンポーネントを含むことができる。これらの回路コンポーネントには、例えば局部発振器(LO)と、RF電力増幅器と、低雑音増幅器(low-noise amplifier:LNA)と、方向性結合器(例えばラットレースカプラサーキュレータ等)と、RF信号を基底帯域または中間周波数帯域(IF帯域)にダウンコンバートするためのミキサと、が含まれる。RFフロントエンド10を(場合によっては別の回路コンポーネントと一緒に)モノリシックマイクロ波集積回路(monolithic microwave integrated circuit:MMIC)に集積することができる。図示の例は、別個のRXアンテナおよびTXアンテナを有するバイスタティック(または疑似モノスタティック)レーダシステムを示す。モノスタティックレーダシステムの場合には、電磁波(レーダ)信号の放射と受信の両方のために単一のアンテナが使用されるであろう。この場合には、レーダチャネルへと放射すべきRF信号をレーダチャネルによって受信されたRF信号(レーダエコー)から分離するために方向性結合器(例えばサーキュレータ)を使用することができる。レーダシステムは、実際には、複数の送信アンテナまたは受信アンテナを有する複数の送信チャネルおよび受信チャネルを有することが多く、これによって、とりわけレーダエコーを受信する方向(direction of arrival:DoA(到来方向))を測定することが可能となる。

0013

周波数変調連続波(FMCW)レーダシステムの場合には、TXアンテナ5を介して放射されるRF信号を、例えば約20GHz〜100GHzの範囲(例えば多くの用途では約77GHz)とすることができる。上述したように、RXアンテナ6によって受信されるRF信号は、レーダエコー、すなわち1つまたは複数のレーダターゲットにおいて後方散乱された信号成分を含む。受信されたRF信号yRF(t)は、例えば基底帯域にダウンコンバートされ、基底帯域においてアナログ信号処理によってさらに処理される(図3アナログ基底帯域信号処理チェーン20を参照)。上記のアナログ信号処理は、実質的に基底帯域信号フィルタリング処理と、場合によっては増幅処理と、を含む。基底帯域信号は、最後にデジタル化され(図3のアナログデジタル変換器30を参照)、デジタル領域においてさらに処理される。デジタル信号処理チェーンは、プロセッサ上で、例えばマイクロコントローラまたはデジタル信号プロセッサ図3のDSP40を参照)上で実行可能なソフトウェアとして少なくとも部分的に実現することができる。システム全体は、基本的にシステムコントローラ50によって制御され、このシステムコントローラ50も、例えばマイクロコントローラのようなプロセッサ上で実行可能なソフトウェアとして少なくとも部分的に実現することができる。RFフロントエンド10とアナログ基底帯域信号処理チェーン20と(任意選択的にアナログデジタル変換器30も)を、単一のMMIC(すなわち1つのRF半導体チップ)に一緒に集積することができる。あるいは、個々のコンポーネントを複数の集積回路に分散させることも可能である。

0014

図4は、図3のレーダセンサの一部とすることができる、後置接続された基底帯域信号処理チェーン20を有するRFフロントエンド10の例示的な実装を示す。図4は、1つの送信チャネル(TXチャネルTX01)および1つの受信チャネル(RXチャネルRX01)を有するRFフロントエンドの基本的な構造を示すための単純化された回路図であることに留意すべきである。具体的な用途に大きく依存し得る実際の実装は、当然より複雑である可能性があり、基本的に複数のTXチャネルおよび/またはRXチャネルを有している可能性がある。RFフロントエンド10は、RF発振器信号sLO(t)を生成する局部発振器101(LO)を含む。図2を参照しながら上述したように、RF発振器信号sLO(t)を周波数変調することができ、RF発振器信号sLO(t)は、LO信号とも呼ばれる。レーダ用途では、LO信号は、一般にSHF超高周波センチメートル波帯域またはEHF(超高周波、ミリ波)帯域にあり、例えば多数の自動車用途における76GHz〜81GHzの範囲にある。

0015

LO信号sLO(t)は、送信信号経路(TXチャネル)および受信信号経路(RXチャネル)の両方において処理される。TXアンテナ5によって放射される送信信号sRF(t)(図2を参照)は、例えばRF電力増幅器102によってLO信号sLO(t)を増幅することによって生成され、したがって、LO信号sLO(t)の増幅されたバージョンに過ぎない。増幅器102の出力部を、TXアンテナ5に結合させることができる(バイスタティックレーダ構成または疑似モノスタティックレーダ構成の場合)。RXアンテナ6によって受信された受信信号yRF(t)は、RXチャネル内の受信回路に供給され、ひいてはミキサ104のRFポートに直接的または間接的に供給される。受信信号経路(RXチャネル)は、実質的にヘテロダイン受信機を有する。この例では、RF受信信号yRF(t)(アンテナ信号)は、増幅器103(利得g)によって事前に増幅される。すなわち、ミキサ104には、増幅されたRF受信信号g・yRF(t)が供給される。増幅器103は、例えばLNAとすることができる。ミキサ104の基準ポートにはLO信号sLO(t)が供給され、これによってミキサ104は、(事前に増幅された)RF受信信号yRF(t)を基底帯域にダウンコンバートする。ダウンコンバートされた基底帯域信号(ミキサ出力信号)は、yBB(t)で表される。この基底帯域信号yBB(t)は、初めにアナログでさらに処理され、アナログ基底帯域信号処理チェーン20は、望ましくない側波帯域およびイメージ周波数を抑制するために、増幅部(増幅器22)およびフィルタリング部(例えばバンドパス21)を有することができる。アナログデジタル変換器(図3のADC30を参照)に供給することができる結果的に得られるアナログ出力信号は、y(t)で表される。出力信号デジタルレーダ信号)をデジタルでさらに処理するための方法は、それ自体が公知である(例えばレンジドップラー分析)ので、本明細書ではこれ以上は説明しない。

0016

この例では、ミキサ104は、事前に増幅されたRF受信信号g・yRF(t)(すなわち増幅されたアンテナ信号)を基底帯域にダウンコンバートする。このコンバートは、一度で(すなわちRF帯から直接的に基底帯域に)実施することができるか、または1つまたは複数の中間段階を介して(すなわちRF帯域から中間周波数帯域に、そしてさらに基底帯域に)実施することができる。この場合、受信ミキサ104は、複数の直列に接続された個々のミキサ段を効果的に含んでいる。図4に示す例を考慮すると、レーダ測定の品質が、LO信号sLO(t)の品質によって、例えばLO信号sLO(t)に含まれている雑音によって大きく影響を受けることは明らかであり、この雑音は、局部発振器101の位相雑音によって定量的に求められる。

0017

レーダシステムでは、レーダターゲットを検出することできる感度がノイズフロア(noise floor)によって制限され、したがって距離測定の精度も制限されることとなる。位相雑音は、測定の信頼性を低下させる可能性があるか、またはそれどころか、(とりわけレーダの断面積が小さい場合には)レーダターゲットの検出を不可能にする可能性さえある。いずれにせよ、レーダセンサが動作中である間に、LO信号に含まれている雑音と、とりわけ位相雑音と、を定量的に推定および観察することが、レーダセンサの機能的な安全性にとって重要である。

0018

図5は、複数の結合された(カスケード接続された)MMICを有するMIMOレーダシステムを例示的に示すブロック図である。図示の例では、1つの担体9、例えば1つの回路基板(printed circuit board:PCB)上に4つのMMICが配置されている。それぞれのMMIC1,2,3および4は、複数の送信チャネルTX01,TX02等と、複数の受信チャネルRX01,RX02等と、を有することができる。レーダシステムの動作のためには、これらのMMICによって使用されるLO信号同士がコヒーレントであることが重要である。したがって、LO信号は、1つのMMIC(マスタMMIC1)のみにおいて生成され、スレーブMMIC2,3および4に分配される。図示の例では、このために、LO信号sLO(t)がマスタMMIC1のLO出力部LOoutから電力分配器(power splitter)8の入力部へと導かれる。すなわち、電力分配器の出力部は、それぞれのスレーブMMIC2,3および4のLO入力部LOinに接続されている。LO出力部LOoutおよびLO入力部LOinは、チップパッケージに応じてピンまたははんだボール等として実現されている。種々の実施例では、LO出力部LOoutおよび/またはLO入力部LOinを専用の外部コンタクト(例えばピン、はんだボール等)によって実現することができる。MMICの外部コンタクトの個数を少なく抑えるために、送信チャネル(例えばチャネルTX03)の出力部をLO出力部またはLO入力部として構成することもできる。ただし、その場合には、LO出力部またはLO入力部として構成された送信チャネルを(送信)アンテナに接続するために利用することはもはやできない。図5に示す例によれば、マスタMMIC1において、送信チャネルTX03のRF出力部をLO出力部として構成することができ、このためにはRF増幅器図4の増幅器102を参照)の利得を適合させるだけでよい。これによって引き起こされる、信号電力の適合(低減)が必要である。なぜなら、LO出力部は、基本的にアンテナ出力部よりも少ない信号電力を供給しなければならないからである。スレーブMMIC2,3および4では、それぞれの送信チャネルTX03のRF出力部がLO入力部として構成されており、このことは、カプラおよび/またはスイッチによって実現することができる。

0019

図示の例では、TX01およびTX02が付された出力部を(送信)アンテナに接続することができ、RX01,RX02,RX03およびRX04が付された入力部を(受信)アンテナに接続することができる。MMICと電力分配器8との間の接続は、例えば担体回路基板9上の(例えば差動の)ストリップラインによって実現することができる。電力分配器8も、担体回路基板9上のストリップラインによって実現することができる(例えばウィルキンソン分配器として)。この箇所において、すべてのMMICは、局部発振器101(例えばPLL)を有することができるが、これらの局部発振器101が、スレーブとして構成されたMMIC2〜4では利用されないことに留意すべきである。

0020

図5に示す例では、マスタMMIC1は、LO信号sLO(t)を生成して、これをマスタMMIC1のLO出力部を介してスレーブMMIC2,3および4に分配し、これによって複数のMMICを直列に接続する(カスケード接続する)ことができる。マスタMMIC1によって(システム)クロック信号sCLK(t)も生成され、スレーブMMIC2,3および4に分配される。この目的のために、MMIC1,2,3および4は、別個のクロック出力部XOUTまたはクロック入力部XINを有し、ストリップラインを介してこれらを接続することができる。クロック信号sCLK(t)は、数MHz(例えば200MHz)のクロック周波数を有することができ、これに対してLO信号は、数GHz(例えば76〜81GHz)のLO周波数fLOを有する。あるいは、水晶発振器を含むことができる別個のクロック発生器チップにおいてクロック信号を生成することもできる。この場合には、クロック発生器チップによって生成されたクロック信号sCLK(t)が、すべてのMMIC(マスタMMIC1およびスレーブMMIC2〜4)に供給される。種々の実施例では、マスタMMIC1がスレーブMMIC2〜4のためにクロック信号sCLK(t)およびLO信号sLOだけを生成するように、かつ送信チャネルTX01、TX02等および受信チャネルRX01、RX02等が利用されないままとなるように、マスタMMIC1を構成することもできる。

0021

図6は、MMIC1の一部を例示的に示す。送信チャネルTX03が示されており、この送信チャネルTX03を、通常の送信チャネル(すなわち送信アンテナの接続のため)として構成することも、LO出力部LOoutまたはLO入力部LOinとして構成することもできる。通常の送信チャネルとしての構成とLO出力部としての構成とは、設定されている電力増幅器102の利得gout(図4も参照)だけが異なっている。LO出力部として動作する場合には、出力されるRF信号がアンテナを介して放射される送信モードの場合よりも、少ないRF電力が供給されなければならない。この構成の場合には、増幅器105はアクティブではない(例えばスイッチによって切断されているか、またはスイッチオフされている)。LO入力部として構成されている場合には、増幅器105はアクティブであり、電力増幅器102は非アクティブである(例えばスイッチによって切断されているか、またはスイッチオフされている)。

0022

図6の例は、監視ユニット110も含み、この監視ユニット110には、チャネルTX03を介して到来するLO信号sLO,2(t)と、局部発振器101によって局部的に生成されるLO信号sLO,1(t)と、が供給されている。この監視ユニット110は、2つのLO信号sLO,1(t)およびsLO,2(t)からLO信号に含まれている雑音の電力スペクトル密度の推定値を求めるように構成されている。

0023

図5に示す、2つ以上のMMICを有するカスケード接続構造は、2つの局部発振器のLO信号を混合することによって、LO信号sLO(t)に含まれている雑音を間接的に求めるため、すなわち測定された値に基づいて推定するために使用することができる。図7は、2つのMMIC1および2のみを有するカスケード接続構造を示すブロック図であり、ここでは、両方のMMICにおいて測定するために局部発振器101がアクティブになっている。MMIC1の局部発振器101によって生成されたLO信号は、sLO,1(t)で表され、MMIC2の局部発振器101によって生成されたLO信号は、sLO,2(t)で表される。2つの局部発振器101は、同一の(システム)クロック信号sCLKによって動作し、この(システム)クロック信号sCLKは、例えば、MMIC1に含まれている発振器51(基準発振器)によって生成され、MMIC1のクロック出力部XOUTおよびMMIC2のクロック入力部XINを介してMMIC2に供給される(図5も参照)。

0024

通常の動作時とは異なり、(スレーブ)MMIC2では、LO信号sLO,2(t)をMMIC1に供給することができるようにするために、送信チャネルTX03のRF入力部がLO出力部LOoutとして構成される。このために(マスタ)MMIC1では、送信チャネルTX03のRF出力部がLO入力部LOinとして構成されており、このLO入力部LOinにおいてLO信号sLO,2(t)が受信される。MMIC1では、受信されたLO信号sLO,2(t)が監視ユニット110に供給され、この監視ユニット110は、ミキサ111と、1つまたは複数のフィルタ112と、アナログデジタル変換器30と、デジタル信号処理のための計算ユニットと、を有することができる。したがって、2つのLO信号sLO,1(t)およびsLO,2(t)がミキサ111に供給され、これら2つのLO信号をミキサ111が乗算する。ミキサ出力信号は、フィルタ112によって実質的にローパスフィルタリングされる(図4を参照)。バンドパスフィルタリングも可能であろう。図7に示す例では、計算ユニットとしてDSP40が使用される。概して、「計算ユニット」という用語は、本明細書に記載される実施例に関連して説明した計算を実行するために適しており、かつそのために構成されている、任意のハードウェアユニットまたはソフトウェアユニットまたはそれらの組み合わせであると理解される。

0025

以降の説明に関して、LO信号は正弦波として、すなわち、
sLO,1(t)=A1・sin(2πfLOt+Φ1+φ1(t))
(1)
および
sLO,2(t)=A2・cos(2πfLOt+Φ2+φ2(t))
(2)
として記述される。なお、A1およびA2は、信号の振幅を表しており、fLOは、信号の周波数を表している。Φ1およびΦ2は、一定の位相項を表しており、φ1(t)およびφ2(t)は、位相雑音(phase noise:PN)を表している。一般性を制限することなく、以下の考察のために振幅A1およびA2を1と仮定することができる。他の振幅値は、測定結果を一定の係数だけスケーリングするものに過ぎない。

0026

ミキサ111は、実質的に2つのLO信号sLO,1(t)およびsLO,2(t)の乗算をもたらす。A1=1かつA2=1とし、加算定理
sin(a)・cos(b)=1/2(sin(a−b)+sin(a+b))
(3)
を使用すると、
y’(t)=sLO,1(t)・sLO,2(t)=
=sin(2πfLOt+Φ1+φ1(t))・cos(2πfLOt+Φ2+φ2(t))=
=1/2(sin(Φ1−Φ2+φ1(t)−φ2(t)))+sin(4πfLOt+Φ1+Φ2+φ1(t)+φ2(t))
(4)
となる。上述したローパスフィルタリング(フィルタ112)に基づいて、方程式3の第2の被加数角周波数4πfLOによって除去され、ローパスフィルタリングされた信号y(t)を、以下のように記述することができる:
y(t)=hTP(t)*y’(t)≒1/2sin(Φ1−Φ2+φ1(t)−φ2(t))
(5)
なお、hTP(t)は、ローパスフィルタインパルス応答を表している。一般性を制限することなく、以下の説明のために位相差Φ1−Φ2をゼロと仮定することができ(ΔΦ=Φ1−Φ2=0)、すなわち、LO信号sLO,1(t)とsLO,2(t)とが相互に直交する(方程式1および2を参照)。後述するように、小さな位相差ΔΦは、測定結果において小さいDCオフセットしかもたらさない。ΔΦ=0であると仮定すると:
y(t)=1/2sin(φ1(t)−φ2(t))
(6)
となる。

0027

位相雑音項φ1(t)およびφ2(t)は、実際には比較的小さいので、微小近似(small-angle approximation)
sin(a)≒a、ただしa≪1の場合
(7)
を行うことができる。次いで、ローパスフィルタリングされたミキサ出力信号y(t)のための方程式を、以下のように記述することができる:
y(t)=1/2(φ1(t)−φ2(t))
(8)
この信号y(t)は、直接的な測定によってアクセス可能であり、例えばアナログデジタル変換器(図1のADC30を参照)によって、対応するデジタル信号y[n]に変換される。この箇所において、信号y(t)が定常ランダムプロセスランダム信号であることに留意すべきである。なぜなら、LO信号の位相雑音を(準)定常ランダムプロセスとしてモデル化することができるからである。信号y(t)の電力スペクトル密度(power spectral density:PSD)を、(定常ランダムプロセスを仮定して)



として規定することができ(Fはフーリエ変換演算子を表す)、この電力スペクトル密度に関して、測定されたデジタル信号y[n]から、電力スペクトル密度を推定(spectral density estimation)するための(例えばウェルチ法のような)公知の方法を用いて推定値を計算することができる。

0028

ローパスフィルタリングされたミキサ出力信号y(t)の電力スペクトル密度Syy(f)と、位相雑音項φ1(t)またはφ2(t)の電力スペクトル密度Sφ1φ1(f)およびSφ2φ2(f)と、がどのように関係しているのかを観察するために、初めに、y(t)の自己共分散Cyy(u)が考慮され、このy(t)の自己共分散Cyy(u)は、方程式8を考慮して以下のように記述することができる(Eは期待値を表す):
Cyy(u)=E{y(t)・y(t+u)}=1/4E{(φ1(t)−φ2(t))(φ1(t+u)−φ2(t+u))}
(10)
方程式10の右辺を乗算することにより、



が得られ、なお、Cφ1φ1(u)およびCφ2φ2(u)は、LO信号sLO,1(t)およびsLO,2(t)に含まれている位相雑音項φ1(t)またはφ2(t)の自己共分散である。方程式(11)から見て取れるように、MMIC1の局部発振器の位相雑音φ1(t)と、MMIC2の局部発振器の位相雑音φ2(t)と、が無相関であることが仮定されており、その結果、積φ1(t)φ2(t+u)およびφ2(t)φ1(t+u)の期待値はゼロとなる。この仮定は、位相雑音φ1(t)が生成される局部発振器と、位相雑音φ2(t)が生成される局部発振器と、がそれぞれ異なるチップに配置されており、雑音の基礎を成すランダムプロセスが相互に独立して進行するという事実によって正当化されている。したがって、この仮定が実際には厳密には正しくない場合であっても、項φ1(t)とφ2(t)とは、少なくとも弱くしか相関しておらず、積φ1(t)φ2(t+u)およびφ2(t)φ1(t+u)の期待値は、無視できるほど十分に小さいものである。

0029

ウィーナー=ヒンチンの定理によれば、定常ランダムプロセスの場合、自己共分散関数フーリエ変換によって電力スペクトル密度を計算することができる。したがって、方程式11からフーリエ変換を使用すると:
Syy(f)=F{Cyy(u)}(f)=1/4F{Cφ1φ1(u)+Cφ2φ2(u)}=1/4(Sφ1φ1(f)+Sφ2φ2(f))
(12)
となる。方程式12の右辺は、位相雑音項φ1(t)またはφ2(t)の雑音電力スペクトル密度Sφ1φ1(f)およびSφ2φ2(f)の半平均値である。図7による例では、2つのMMIC1および2は、実質的に同一構造であり、基本的に同一のロット(バッチ)から取り出されており、同一の担体回路基板上に配置されており、動作中に実質的に同じ温度を有するので、位相雑音項φ1(t)またはφ2(t)の電力スペクトル密度Sφ1φ1(f)およびSφ2φ2(f)が等しいことが仮定されており、現実的にはすなわち、
Sφ1φ1(f)≒Sφ2φ2(f)≒Sφφ(f)
(13)
である。方程式13の仮定により、方程式12は、
Syy(f)=1/2Sφφ(f)
(14)
のように簡単化される。方程式13の仮定が正しくない場合(例えば2つの局部発振器のうちの一方が劣化しているため)には、電力スペクトル密度Sφφ(f)(雑音電力スペクトル密度)は、上述したように、電力スペクトル密度Sφ1φ1(f)およびSφ2φ2(f)の平均値に相当する。それにもかかわらず、平均値(Sφ1φ1(f)+Sφ2φ2(f))/2は、2つのLO信号sLO,1(t)およびsLO,2(t)に含まれている位相雑音を特徴付けている。雑音電力スペクトル密度Sφ1φ1(f)およびSφ2φ2(f)のうちの一方が所望の仕様に相当していない場合には、この位相雑音を平均値Sφφ(f)において識別することも可能である。

0030

上述したように、電力スペクトル密度Syy(f)は、測定された(ローパスフィルタリングされた)ミキサ出力信号y(t)から公知の推定手法によって計算することができる。次いで、方程式14を以下のように変形することにより、位相雑音φ1(t)またはφ2(t)の、求めるべき電力スペクトル密度Sφφ(f)を計算することができる:
Sφφ(f)=2・Syy(f)
(15)
実際の実装では、電力スペクトル密度Syy(f)を、例えばデジタル信号y[n]=y(nTS)から計算することができる(TSは、図3のADC30のサンプリング周期を表す)。考えられる1つの推定手法は、ウェルチ法である。したがって、電力スペクトル密度Syy(f)を、



によって近似することができ、なお、Δfは、周波数分解能(Δf=(MTS)−1)を表しており、kは、離散周波数kΔfを表しており、jは、虚数単位を表している。

0031

上記の方程式16において、以下の表現



は、長さMのシーケンスy(i)[n]の窓付き離散フーリエ変換を表しており、wM[n]は、長さMおよび平均電力Uを有するそれぞれの窓関数(例えばハン窓)を表している。シーケンスy(i)[n]は、デジタル信号y[n]の重複部分、すなわち、
y(i)[n]=y[n+i・D]
(17)
を表しており、この場合、方程式16による推定のために、それぞれ長さM(n=0,...,M−1)を有するI個のシーケンス(i=0,...,I−1)が考慮される。値Dは、シーケンスy(i)[n]の時間オフセットを表しており、すなわち、2つの隣り合うシーケンスy(i)[n]とy(i+1)[n]とがM−Dサンプルだけ相互に重複する。したがって、方程式16による推定は、長さMのI個の重複したシーケンスy(i)[n]の二乗(窓付き)フーリエ変換の平均値形成に基づいている。位相雑音の求めるべき電力スペクトル密度に関して、方程式15および16から、



となる。

0032

この箇所において、電力スペクトル密度を推定するための他の手法が存在し、方程式16が、説明のための例としてのみ理解されるべきであることに留意すべきである。実際には、フーリエ変換を計算するために基本的にFFTアルゴリズムが使用される。この目的のために、それぞれのMMICは、プロセッサ(例えば図7のDSP40を参照)を有することができる。この関連において「プロセッサ」とは、フーリエ変換を計算するために適した任意の計算ユニットであると理解される。計算ユニットを、例えばMAC(multiply-accumulate:乗累算ユニットフィールドによって実装することもできる。あるいは、位相雑音の電力スペクトル密度の推定値を計算するために、MMICとは別個に担体回路基板上に配置された外部のプロセッサ(例えば信号プロセッサまたはマイクロコントローラ)を使用することもできる。

0033

上記の説明では、RF信号sLO,1(t)とsLO,2(t)とが(方程式1および2を参照)直交していることを前提にした。正弦関数余弦関数とは、π/2(90°)の相対的な位相シフトを有するので、RF信号sLO,1(t)の位相Φ1とRF信号sLO,2(t)の位相Φ2とが同じである場合にこの直交性が満たされる。この場合には、Φ1−Φ2=0が当てはまり、ミキサ出力信号y(t)の平均値がゼロになる。位相差Φ1−Φ2が消えない場合には、



が当てはまり、ミキサ出力信号y(t)を、方程式5および7を使用して以下のように計算することができる:
y(t)=1/2(φ1(t)−φ2(t))+(ΔΦ/2)
(19)
したがって、



の小さな位相差は、ミキサ出力信号y(t)においてΔΦ/2のDCオフセットを結果的にもたらす。このDCオフセットは、周波数領域(すなわち電力スペクトル密度Syy(f))においてゼロヘルツでのスペクトル線を結果的にもたらし、このスペクトル線を、ハイパスまたはバンドパスを用いてフィルタアウトすることができるか(信号y(t)をデジタル化する前)、または(例えばミキサ入力部に前置接続された位相シフタを用いた)位相Φ1およびΦ2の能動的な同調によって除去することができる。ミキサ出力信号y(t)のDCオフセットが低減されることにより、アナログデジタル変換器のダイナミックレンジ利用率を改善することが可能となる。位相差ΔΦが比較的大きい場合には、ゼロヘルツでのスペクトル線に加えて、方程式15によるPSDのスケーリングが追加的に実施される。すなわち、位相差ΔΦが大きい場合(微小角近似を適用できない場合)には、方程式15の係数2を係数2/cos(ΔΦ)2によって置き換えなければならない。位相差ΔΦが小さい場合には、この係数は約2である。

0034

方程式18による位相雑音の電力密度



を推定するための上記の説明は、方程式1および2による信号モデルに基づいており、すなわち、2つのMMIC1および2における局部発振器101は、規定された周波数fLOの正弦波の無変調信号sLO,1(t),sLO,2(t)を生成する。位相雑音は周波数fLOに依存しているので、複数の異なる周波数に対して測定を繰り返すことができる。あるいは、無変調信号の代わりに、(周波数変調された)チャープ信号sLO,1(t),sLO,2(t)(周波数ランプ)を使用することもできる。この場合には、MMIC1の発振器に関して以下の信号モデルが得られる:
t∈[0,T]の場合、
sLO,1(t)=A1・cos(2πf1t+πk1t2+Φ1+φ1(t))
(20)
なお、A1は、振幅を表しており、f1+k1t/2は、チャープ信号(周波数ランプ)の(線形の)時間依存性の瞬時周波数fLO,1(t)である。Φ1は、一定の位相を表しており、φ1(t)は、位相雑音を表している。係数k1/2は、周波数ランプの傾きdfLO,1/dtであり、Tは、チャープ持続時間である。同様にして、MMIC2の発振器に関して以下の信号モデルが得られる:
t∈[tD,tD+T]の場合、
sLO,2(t)=A2・cos(2πf2(t−tD)+πk2(t−tD)2+Φ2+φ2(t−tD))
(21)
なお、A2は、振幅を表しており、f2+k2tは、チャープ信号(周波数ランプ)の(線形の)時間依存性の瞬時周波数fLO,2(t)である。Φ2は、一定の位相を表しており、φ2(t)は、位相雑音を表している。係数k2は、周波数ランプの傾きdfLO,2/dtである。時間tDは、MMIC2からMMIC1のミキサ111への信号sLO,2(t)の伝搬時間(propagation delay:伝搬遅延)に相当する(図7を参照)。

0035

一般性を制限することなく、以下の考察のために振幅A1およびA2を再び1と仮定することができる。他の振幅値は、測定結果を一定の係数だけスケーリングするものに過ぎない。さらに、傾きが等しいこと、すなわちk1=k2=kが仮定される。ミキサ111は、実質的に2つのLO信号sLO,1(t)およびsLO,2(t)の乗算をもたらす。A1=1かつA2=1、かつk1=k2=kとし、(フィルタリングされていない)ミキサ出力信号y’(t)の場合には、



となる。なお、φD(t)は、位相雑音項φ1(t)とφ2(t−tD)との差を表しており、fDは、ミキサ111の入力部における2つの周波数ランプの周波数差を表しており、ΔΦは、一定の位相項を表している。

0036

ミキサ出力信号y’(t)は、さらにフィルタリングされ(フィルタ112)、すなわち、フィルタ112のインパルス応答hTP(t)によって畳み込まれる(方程式5を参照):
y(t)=hTP(t)*y’(t)=hTP(t)*[1/2cos(2πfDt+φD(t)+ΔΦ)]
(23)
微小角近似によって(φD(t)が小さい場合)、方程式23から、
y(t)≒hTP(t)*[1/2cos(2πfDt+ΔΦ)−φD(t)1/2sin(2πfDt+Δφ)]
(24)
となる。周波数fDを有する信号成分がフィルタ112の通過帯域内にあり、実質的に変化されることなくフィルタ112を通過すると仮定すると、方程式24から、畳み込み演算線形性に基づいて、
y(t)≒1/2cos(2πfDt+ΔΦ)−φD,L(t)1/2sin(2πfDt+ΔΦ)
(25)
となる。なお、φD,L(t)は、フィルタリングされた位相雑音
φD,L(t)=hTP(t)*φD(t)
(26)
を表している。

0037

この箇所において、位相雑音を、平均値ゼロの弱定常(wide-sense stationary:WSS)プロセスであると見なすことができるので、位相雑音を、位相雑音の電力スペクトル密度(power spectral density:PSD)によって特徴付けることができることに留意すべきである。正弦項(方程式25を参照)による乗算により、フィルタリングされたミキサ出力信号y(t)は、周期TD=1/fDにわたる平均PSDによって表される周期的なプロセスとなる。局部発振器の開始周波数f1およびf2を、周波数差fD=f1−f2+ktDが所望の値となるように設定することができる(この態様については後で詳しく説明する)。したがって、周期TDは既知のパラメータである。第1の例と同様に、PSDは自己共分散関数から計算される。

0038

フィルタリングされたミキサ出力信号y(t)の自己共分散Cyy(u)は、方程式25から出発して以下のように計算することができる:



(平均値ゼロの)位相雑音の期待値がゼロであるので、上記の方程式における2つの平均被加数はゼロである。方程式27の最後の項は、フィルタリングされた差分位相雑音
φD,L(t)=(φ1,L(t)−φ2,L(t))
(28)
の自己共分散CφD,LφD,L(u)である。

0039

位相雑音項φ1(t)とφ2(t)とは、ひいてはφ1,L(t)とφ2,L(t)も、無相関であるか、または少なくとも非常に弱く相関している(方程式11を参照)ので、自己共分散CφD,LφD,L(u)に関して以下のことが当てはまる
CφD,LφD,L(u)=Cφ1,Lφ1,L(u)+Cφ2,Lφ2,L(u)
(29)
自己共分散Cφ1,Lφ1,L(u)およびCφ2,Lφ2,L(u)は、MMIC1および2の局部発振器の出力信号におけるフィルタリングされた位相雑音項φ1,L(t)およびφ2,L(t)の自己共分散である。方程式28と29とを組み合わせると、



が得られる。

0040

項D(t)およびR(t)は、公知の加算定理を使用して以下のように簡単化することができる:
D(t)=1/2[cos(2πfDu)−cos(2πfD(2t+u)+2ΔΦ)] (31)
および
R(t)=1/2[cos(2πfDu)+cos(2πfD(2t+u)+2ΔΦ)] (32)
方程式31および32によって方程式30は、
Cyy(t,u)=1/8[(cos(2πfDu)−cos(2πfD(2t+u)+2ΔΦ))+(cos(2πfDu)+cos(2πfD(2t+u)+2ΔΦ))・(Cφ1,Lφ1,L(u)+Cφ2,Lφ2,L(u))]
(33)
のように簡単化される。

0041

上述したように、ミキサ出力信号y(t)は、周期定常ランダムプロセスである。したがって、TD=1/fDの周期にわたって平均される自己共分散は、方程式33の積分によって計算される:



平均PSD



は、平均自己共分散関数のフーリエ変換によって得られる。

0042

2つのMMIC1および2(ひいては2つの局部発振器101、図7を参照)は、実質的に同じシステムクロック信号sCLK(t)を使用しており、同一の担体回路基板上に配置されており、動作中に実質的に同じ温度を有するので、以下の仮定が現実的である(方程式13を参照):
Sφ1,Lφ1,L(f−fD)≒Sφ2,Lφ2,L(f−fD)
(36)
および
Sφ1,Lφ1,L(f+fD)≒Sφ2,Lφ2,L(f+fD)
(37)
したがって、2つの局部発振器の位相雑音の平均PSDによって、以下のように計算することができる:



方程式(38)および(39)によって方程式(35)は、



のように簡単化される。方程式40のPSD



は、周波数fDにおいて追加的な最大値を有する、MMIC1および2の局部発振器101のローパスフィルタリングされた位相雑音の平均PSDの、fDだけ周波数シフトされてスケーリングされたバージョンである。方程式40を変形することにより、中間結果として、



が得られる。以下では、チャープの開始周波数f1およびf2によって達成され得るように、方程式41がさらに簡単化されることが示される。

0043

方程式22によれば、周波数fDと、対応する周期期間TDと、が以下のように規定される:
fD=1/TD=(f1−f2+ktD)
(42)
平均PSD



を推定/計算するために、FFTによって計算されたピリオドグラムが使用される場合には、任意の整数nの周期にわたって平均することができる。したがって、この例においてチャープ持続時間(図2ではTRAMPと呼ばれる)に相当する平均化時間間隔Tは、
T=nTD=n/fD=n/(f1−f2+ktD)
(43)
である。周波数f1は、レーダ用途にとって典型的な周波数に、例えばf1=76GHzに設定される。その場合、周波数f2に関しては、
f2=f1+ktD−(n/T’)
(44)
となり、そうすると、方程式42から、
fD=n/T
(45)
となる。すなわち、方程式41のPSDにおけるピークは、n番目の離散周波数値(周波数ビン)において発生する。

0044

ここで、方程式44および45においてn=1であり、かつ時間間隔Tが比較的大きく選択された場合には、周波数fDは、以下の近似



が有意な誤差をもたらさないほど小さい。方程式46の近似によって方程式41は、



のように簡単化される。この手順は、無変調信号による測定のための方程式15と同様の結果をもたらす。したがって、推定された平均PSD



は、



のための適切な推定値である。第1の周波数ビンだけが、周波数fDにおける信号y(t)の電力を追加的に含む。この電力は、既知のシステムパラメータであり、デジタル後処理によって補償することができる。

0045

別の実施例では、方程式44および45においてn=0を選択することができ、その結果、周波数fDはゼロになり、f2=f1+ktDになる。これによって方程式25は、
y(t)≒1/2cos(ΔΦ)−1/2sin(ΔΦ)φD,L(t)
(48)
のように簡単化され、方程式27は、方程式29を考慮して、
Cyy(u)=E{y(t)・y(t+u)}=1/4cos(ΔΦ)2+1/4sin(ΔΦ)2・CφD,LφD,L(u)=1/4cos(ΔΦ)2+1/4sin(ΔΦ)2・(Cφ1,Lφ1,L(u)+Cφ2,Lφ2,L(u))
(49)
のように簡単化される。自己共分散関数は時間依存性を有さないので、平均化は必要ない。PSDSyy(u)は、Cyy(u)のフーリエ変換であり、すなわち、



であり、なお、上記の方程式では、方程式36〜39からの仮定が相応に適用された。

0046

方程式50を変形することにより、



が得られる。方程式51において、ΔΦ=0またはΔΦ=πのときにゼロによる除算が生じることが見て取れ、このことよって数値的な問題および誤った結果がもたらされる。信号y(t)の直流成分を測定し、以下の方程式



に従って位相ΔΦを求めることによって(方程式22を参照)、この問題を解決することができる。ΔΦを測定することにより、MMIC1および2の局部発振器101における位相シフトΦ1および/またはΦ2を適合させることによって、ΔΦを非臨界値に、例えばΔΦ=π/2に適合させることも可能となる。

0047

図7および方程式1〜19および方程式20〜50を参照しながら本明細書で説明される概念は、局部発振器によって生成される位相雑音の推定値の形態の、局部発振器の性能パラメータ品質パラメータ)を、簡単に求めることを可能にする。位相雑音はランダムプロセスに基づいているので、この位相雑音を雑音電力スペクトル密度によって特徴付けることができる。したがって、この雑音電力スペクトル密度を、局部発振器の品質を表す性能パラメータとして使用することができる。図5のカスケード接続構造において、通常動作時にマスタMMIC1の局部発振器101しか使用されない場合であっても、位相雑音を推定するために、2つのMMIC、すなわちマスタMMIC1およびスレーブMMIC2における局部発振器がアクティブにされる。この箇所において、2つの別個の局部発振器を使用することにより、位相雑音信号φ1(t)とφ2(t)とが無相関であるという仮定がもたらされることに再度留意すべきである(方程式11を参照)。2つのLO信号sLO,1(t)およびsLO,2(t)のうちの一方が少なくとも1つの周波数帯域において増加した位相雑音を有する場合には、2つの局部発振器のうちのいずれの局部発振器が該当しているのかを測定/推定によって特定することはできない。しかしながら、MMICのペアを種々に変えて測定を繰り返すと、欠陥のある局部発振器を特定することが可能となる。

0048

図8に示す表は、3つのカスケード接続されたMMIC1,2および3を有するシステムに関する例示的なテストシーケンスを示す。通常動作では、MMIC1をマスタMMICとすることができる(図5を参照)。第1のテストでは、MMIC1および2において生成されたLO信号sLO,1(t)とsLO,2(t)とを混合することによって位相雑音が測定される。第1のテストが肯定的である(すなわち位相雑音が、規定された許容範囲内にある)場合には、マスタMMIC1のLOは正常である。第1のテストが否定的である(すなわち位相雑音が、規定された許容範囲外にある)場合には、第2のテストにおいて、MMIC1および3において生成されたLO信号sLO,1(t)とsLO,3(t)とを混合することによって位相雑音が測定される。第2のテストが肯定的である場合には、マスタMMIC1のLOは正常であり、スレーブMMIC2のLOは故障であるが、マスタMMIC1がLO信号を生成および分配するので、このことは動作においてもはや重要ではない。2つのテストが否定的である場合には、第3のテストにおいて、MMIC2および3において生成されたLO信号sLO,2(t)とsLO,3(t)とを混合することによって位相雑音を測定することができる。第3のテストが肯定的である場合には、マスタMMIC1のLOは故障であり、これに対してスレーブMMIC2および3のLOは正常である。

0049

図9は、本明細書に記載される方法の一例を示すためのフローチャートである。初めに、2つの異なるRF発振器によって2つのRF信号sLO,1(t)およびsLO,2(t)が生成される(図9のステップS1、方程式1および2も参照)。2つのRF発振器は、それぞれ異なるMMICに集積された局部発振器とすることができる(図7を参照)。独立して動作する2つのRF発振器を使用することにより、基本的に、RF信号sLO,1(t)およびsLO,2(t)に含まれている雑音信号φ1(t)とφ2(t)とが無相関となる(方程式11を参照)。しかしながら、それぞれのRF発振器が実質的に同一構造である場合には、それぞれの雑音信号φ1(t)およびφ2(t)の電力スペクトル密度がほぼ等しくなる(方程式13を参照)。2つのRF信号sLO,1(t)とsLO,2(t)とが混合され(図9のステップS2を参照)、この場合、ミキサの帯域幅が限定されていることに基づいて周波数2fLOとの混合積が除去され、かつ/または後続のローパスフィルタリングまたはバンドパスフィルタリングが除去される。したがって、ミキサ出力信号y(t)は、実質的に、雑音が重畳されたDC信号であり(方程式5を参照)、このDC信号は、2つのRF信号sLO,1(t)とsLO,2(t)とがミキサ111の入力部において相互に直交している場合には平均値ゼロを有する。「DC信号」とは、実質的に直流電圧信号または直流電流信号であると理解される。ミキサ出力信号y(t)がデジタル化され(図9のステップS3を参照)、このデジタル化された信号y[n]に基づいて、電力スペクトル密度Syy(f)の推定値



が計算され(図9のステップS4、例えば方程式16も参照)、次いで、この推定値から、雑音の電力スペクトル密度Sφφ(f)の推定値を簡単に求めることができる(図9のステップS5を参照)。

0050

本明細書に記載される例では、RF信号sLO,1(t)およびsLO,2(t)に含まれている雑音が、位相雑音としてモデル化される(例えば、方程式1および2または方程式20および21による信号モデルを参照)。方程式1および2ならびに方程式20および21による信号モデルにおいて、振幅値A1およびA2にも雑音が含まれ得ることは自明である。しかしながら、基本的に電圧制御発振器(voltage controlled oscillator:VCO)によるRF発振器の場合には、位相雑音がノイズフロア全体の大部分を占めるので、殆どの用途において、位相雑音のみを考慮した信号モデルで十分である。

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