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技術 高Ni厚鋼板およびその製造方法

出願人 日本製鉄株式会社
発明者 大塚貴之明石透松本恭平石橋寿啓安井洋二
出願日 2018年1月30日 (3年0ヶ月経過) 出願番号 2018-013713
公開日 2019年8月8日 (1年6ヶ月経過) 公開番号 2019-131851
状態 未査定
技術分野 鋼の加工熱処理
主要キーワード 加熱昇温過程 試験水準 収縮度合い 板厚変化率 厚板材 中間加熱 貯蔵用タンク 変形過程
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (2)

課題

熱処理後に、焼減りが少ない高Ni厚鋼板およびその製造方法を提供することを課題とする。

解決手段

質量%で、C:0.10超〜0.30%、Si:0.01〜1.5%、Mn:0.1〜2.0%、Ni:1〜5%、P:0.03%以下、S:0.02%以下、N:0.05%以下、Al:0.05%以下、および残部がFeおよび不可避的不純物、あるいはこれに所定の種類と量の選択添加成分で構成される化学成分を有し、1/4厚部のNiミクロ偏析度が1.2以下である高Ni厚鋼板。

概要

背景

高Ni厚鋼板は、液化天然ガス貯蔵用タンクにおけるような、−160℃以下の極低温での用途に使用されている。このような高Ni厚鋼板として特許文献1〜5に記載されるような鋼板が開示されている。

また、海洋構造物などに用いられる極厚材についても、高Ni鋼の開発が進んでいる(特許文献6および特許文献7)。これらは0.2%を上限とする比較的高い炭素量を含有し、板厚中心部の強度・靭性に優れることが特徴である。

高Ni厚鋼板の低温靭性を向上させるためには、Ni量を増加させることが重要であるが、コスト高になることなどから、添加したNiを最大限活用する試みがなされてきた。例えば、特許文献8〜10ではNiを含有する鋼板において、1/4板厚部のNiの偏析比(観察部の最大濃度平均濃度との比)が1.3以下である鋼板を特徴としている。

高Ni厚鋼板を含め、厚鋼板は、圧延成形後にしばしば、焼なまし焼鈍)、焼戻し焼入れ等の熱処理と呼ばれる工程を経るが、これは残留応力除去や組織制御などの材質を調整することを目的としている。

熱処理工程においては、加熱温度冷却速度を制御することで所望の強度や成形性等の機械的性質を得るが、熱処理方法によっては、望まない残留応力が発生することなどにより、形状や寸法が変化し、格落ちとなる場合がある。

このような課題に対し、例えば特許文献11には、押し付けロールによる形状矯正をしながら熱処理を行う方法が示されており、熱処理を施すことによって発生する板の反り等の形状変化に対応している。また、特許文献12には、熱処理前プレス矯正を行う方法が示されている。

しかしながら、これらの方法では、熱処理による板の反り、たわみ、じれ等の変形による形状変化には対応できるものの、あくまでも矯正であるので、加熱および冷却時の相変態による、板幅、板厚、板長自体が大きく変化する寸法変化には対応できず、しばしば切削研磨等の鋼板の機械的手入れ工程の追加や格落ち(不良品)となっていた。

特許文献13には、所定の板寸法に切断する機能を熱処理工程に追加することで、板寸法が変化した際にも対応が可能なようになっている。
しかし、特許文献13の技術によっても、熱処理により設計予定の大きさより板が収縮した場合は、足りない長さを補うことができず、やはり歩留りの悪化につながっていた。

特許文献14には、オーステナイト結晶粒径を均一微細化させる目的で、圧延工程を2回に分割し製造し、中心偏析を低減し、中心部の靱性を向上させることを特徴としている。しかしながら、熱処理寸法変化を抑えるための十分な効果が得られなかった。

また、極厚材においては熱処理時の板厚変化が寸法精度に大きな影響を与えるが、上述の特許文献11および特許文献12による方法では、熱処理時の寸法変化を抑えることができなかった。

概要

熱処理後に、焼減りが少ない高Ni厚鋼板およびその製造方法を提供することを課題とする。質量%で、C:0.10超〜0.30%、Si:0.01〜1.5%、Mn:0.1〜2.0%、Ni:1〜5%、P:0.03%以下、S:0.02%以下、N:0.05%以下、Al:0.05%以下、および残部がFeおよび不可避的不純物、あるいはこれに所定の種類と量の選択添加成分で構成される化学成分を有し、1/4厚部のNiミクロ偏析度が1.2以下である高Ni厚鋼板。

目的

本発明は、上記実情に鑑み、熱処理後に、焼減りが少ない高Ni厚鋼板およびその製造方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

質量%で、C:0.10超〜0.30%、Si:0.01〜1.5%、Mn:0.1〜2.0%、Ni:1〜5%、P:0.03%以下、S:0.02%以下、N:0.05%以下、Al:0.05%以下、および残部がFeおよび不可避的不純物で構成される化学成分を有し、1/4厚部のNiミクロ偏析度が1.2以下であることを特徴とする高Ni厚鋼板

請求項2

前記高Ni厚鋼板が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.1%以下、Nb:0.1%以下、B:0.01%以下、Cr:1.5%以下、Cu:1.0%以下、の1種、または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の高Ni厚鋼板。

請求項3

前記高Ni厚鋼板が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Mo:1.0%以下、W:0.5%以下、V:0.5%以下、の1種、または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の高Ni厚鋼板。

請求項4

請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の高Ni厚鋼板の製造方法であって、請求項1〜3のいずれか1項に記載の成分を含有するスラブを、圧下比が少なくとも2まで粗圧延を行い、その後1180℃以上の温度で1h以上加熱し、その後に仕上げ圧延工程を行うことを特徴とする高Ni厚鋼板の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、高Ni厚鋼板特に海洋構造物等に用いられる極厚材およびその製造方法に関する。

背景技術

0002

高Ni厚鋼板は、液化天然ガス貯蔵用タンクにおけるような、−160℃以下の極低温での用途に使用されている。このような高Ni厚鋼板として特許文献1〜5に記載されるような鋼板が開示されている。

0003

また、海洋構造物などに用いられる極厚材についても、高Ni鋼の開発が進んでいる(特許文献6および特許文献7)。これらは0.2%を上限とする比較的高い炭素量を含有し、板厚中心部の強度・靭性に優れることが特徴である。

0004

高Ni厚鋼板の低温靭性を向上させるためには、Ni量を増加させることが重要であるが、コスト高になることなどから、添加したNiを最大限活用する試みがなされてきた。例えば、特許文献8〜10ではNiを含有する鋼板において、1/4板厚部のNiの偏析比(観察部の最大濃度平均濃度との比)が1.3以下である鋼板を特徴としている。

0005

高Ni厚鋼板を含め、厚鋼板は、圧延成形後にしばしば、焼なまし焼鈍)、焼戻し焼入れ等の熱処理と呼ばれる工程を経るが、これは残留応力除去や組織制御などの材質を調整することを目的としている。

0006

熱処理工程においては、加熱温度冷却速度を制御することで所望の強度や成形性等の機械的性質を得るが、熱処理方法によっては、望まない残留応力が発生することなどにより、形状や寸法が変化し、格落ちとなる場合がある。

0007

このような課題に対し、例えば特許文献11には、押し付けロールによる形状矯正をしながら熱処理を行う方法が示されており、熱処理を施すことによって発生する板の反り等の形状変化に対応している。また、特許文献12には、熱処理前プレス矯正を行う方法が示されている。

0008

しかしながら、これらの方法では、熱処理による板の反り、たわみ、じれ等の変形による形状変化には対応できるものの、あくまでも矯正であるので、加熱および冷却時の相変態による、板幅、板厚、板長自体が大きく変化する寸法変化には対応できず、しばしば切削研磨等の鋼板の機械的手入れ工程の追加や格落ち(不良品)となっていた。

0009

特許文献13には、所定の板寸法に切断する機能を熱処理工程に追加することで、板寸法が変化した際にも対応が可能なようになっている。
しかし、特許文献13の技術によっても、熱処理により設計予定の大きさより板が収縮した場合は、足りない長さを補うことができず、やはり歩留りの悪化につながっていた。

0010

特許文献14には、オーステナイト結晶粒径を均一微細化させる目的で、圧延工程を2回に分割し製造し、中心偏析を低減し、中心部の靱性を向上させることを特徴としている。しかしながら、熱処理寸法変化を抑えるための十分な効果が得られなかった。

0011

また、極厚材においては熱処理時の板厚変化が寸法精度に大きな影響を与えるが、上述の特許文献11および特許文献12による方法では、熱処理時の寸法変化を抑えることができなかった。

先行技術

0012

特開平09−143557号公報
特開2016−183387号公報
特開2014−34708号公報
特開2011−241419号公報
特開2011−219849号公報
国際公開第2014/141697号
国際公開第2015/140846号
国際公開第2010/038470号
国際公開第2012/005330号
国際公開第2013/046357号
特開2005−230914号公報
特開2005−226106号公報
特開2001−25810号公報
特開2000−129351号公報

発明が解決しようとする課題

0013

相変態を伴う熱処理によって板寸法が変化する現象は、古くから知られていた。例えば、焼入れによって生じるマルテンサイト相は、フェライト相パーライト相に比べて密度が低いため、全体的に体積膨張する。一方、加熱により、オーステナイト化する場合は、逆に体積が収縮する。

0014

加熱と冷却を行う熱処理過程において、この膨張と収縮はほぼ発生する。その際に、熱処理中に発生する膨張量と収縮量が最終的に相殺され、熱処理後にほぼゼロとなれば、熱処理前の寸法と、熱処理工程を経た後の寸法がほとんど変化しないことになるが、実際はそのようなことは稀である。

0015

さらに、厚鋼板の熱処理過程において、合金元素として含まれるNi量が高い、高Ni厚鋼板、中でも海洋構造物用の厚鋼板を熱処理する場合に、「焼減り」と呼ばれる板厚が顕著に減少する現象があり、歩留りの悪化につながっていた。そのため、熱処理工程を経ても、寸法変化の少ない高Ni厚鋼板が求められていた。

0016

本発明は、上記実情に鑑み、熱処理後に、焼減りが少ない高Ni厚鋼板およびその製造方法を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0017

上記の課題を解決するための本発明の要旨は次の通りである。
(1)質量%で、
C:0.10超〜0.30%、
Si:0.01〜1.5%、
Mn:0.1〜2.0%、
Ni:1〜5%、
P:0.03%以下、
S:0.02%以下、
N:0.05%以下、
Al:0.05%以下、
および残部がFeおよび不可避的不純物で構成される化学成分を有し、1/4厚部のNiミクロ偏析度が1.2以下であることを特徴とする高Ni厚鋼板。
(2)前記高Ni厚鋼板が、前記Feの一部に代えて、質量%で、
Ti:0.1%以下、
Nb:0.1%以下、
B:0.01%以下、
Cr:1.5%以下、
Cu:1.0%以下、
の1種、または2種以上を含有することを特徴とする(1)に記載の高Ni厚鋼板。
(3)前記高Ni厚鋼板が、前記Feの一部に代えて、質量%で、
Mo:1.0%以下、
W:0.5%以下、
V:0.5%以下、
の1種、または2種以上を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の高Ni厚鋼板。
(4)(1)〜(3)のいずれか1つに記載の高Ni厚鋼板の製造方法であって、(1)〜(3)いずれか1つに記載の成分を含有するスラブを、圧下比が少なくとも2まで粗圧延を行い、その後1180℃以上の温度で1h以上加熱し、その後に仕上げ圧延工程を行うことを特徴とする高Ni厚鋼板の製造方法。

発明の効果

0018

本発明によれば、熱処理後に、焼減りが少ない高Ni厚鋼板およびその製造方法を提供することができる。

図面の簡単な説明

0019

板厚方向に合金元素が層状の濃度分布を有する鋼板において、加熱過程での各層の変形過程を説明する図である。

0020

以下本発明について詳細に説明する。本発明の高Ni厚鋼板は、板厚4mm以上の鋼板である。より好ましくは6mm以上の厚さの鋼板である。
特に合金元素として多量にNiを含む高Ni厚鋼板において、たとえばオーステナイトが生成し始める温度であるAc1以上に加熱する熱処理を施した際に、熱処理前後の寸法変化が顕著である。寸法が変化する方向について調べたところ、板幅方向、板厚方向、板長方向のうち、特に焼減りを起こす板厚方向での寸法変化が顕著であり、板幅方向、板長方向では、どちらも板厚方向の変化の半分程度の寸法変化であった。

0021

そこで、本発明者は、板幅方向、板長方向の寸法変化が比較的小さく、同じ程度であるのに対し、熱処理後に板厚方向だけに顕著に寸法変化が発生する理由を解明するため、高Ni厚鋼板の各部において詳細な元素分析を行った。
その結果、従来の高Ni厚鋼板は、板厚方向に、Niの濃度が高い濃化層と、上記濃度が低い欠乏層が、繰り返しミクロに積層されて構成されているバンド組織となっていることが明らかとなった。このバンド組織は、ミクロ偏析部が圧延されて延ばされることによって形成されるもので、特に、本発明が対象とするような厚鋼板では、さらに顕著に形成されやすくなっていた。また、焼減りが起こった熱処理後においても、このバンド組織はそのまま残留していた。
尚、ミクロ偏析部とは、デンドライト樹間に合金元素(本発明の場合はNi)が濃化して偏在している部分を言う。
バンド組織は、いってみれば、ある程度、板幅方向、板長方向に均一な濃度を有する薄い層が、複数、板厚方向に積層しているような構造をとっている。すなわち、板幅方向、板長方向では、Niの濃度変化が乏しいのに対し、板厚方向では、場所によるNiの濃度変化が著しい。

0022

Niの濃度変化が乏しい板幅方向、板長方向では、熱処理前後の寸法変化が比較的小さいことから、板厚方向への寸法変化が大きいのは、この板厚方向へのNiの濃度変化(濃化層と欠乏層の存在)が原因となり、熱処理時の変態あるいは逆変態時にある一つのNiの濃化層とその隣のNi濃度の異なる層で相変態のタイミングがずれるため、変態膨張あるいは収縮によるひずみを補償するために生じる塑性変形が起因していると考えられた。

0023

この点について以下に説明する。
図1に示すL1を最も低い温度で相変態する層とする。加熱昇温していくと、積層した各濃化層および各非濃化層の組成が各々異なることから、各層が実際に相変態する温度には差が生じる。すなわち、昇温の際に、低い温度で先に相変態して収縮する層L1と、高い温度で後から相変態して収縮する層L2〜LNが生じ、各層の相変態と、相変態による寸法変化にタイムラグが生じる。そのため、図1(A)の矢印の長さ、L1収縮量1、L2収縮量2で表現したように、寸法の収縮度合いにL1とL2で差が生じる。相変態による体積変化は大きいため、最も相変態温度が低く、加熱昇温過程で先に相変態する層L1において相変態が起こると、L1収縮力3により、板長方向、板幅方向、板厚方向に長さが収縮しようとする(図1(B)参照)。しかしながら、L1の隣の層L2はまだ相変態を起こしていないので、層L1も、それほど板長方向、板幅方向には長さが収縮できない。なぜなら、層L1が収縮しようとしても、長さが変化していない隣の層L2からL1への拘束力4に拘束されて、板長方向、板幅方向の長さを変化させることが困難になるからである。そのため、先に相変態した層L1の実際のL1収縮力5は、拘束されている板長方向、板幅方向以外の残る方向である、板厚方向に働くので、この方向に主に収縮し(図1(C)参照)、本来収縮すべき量より板長方向、板幅方向は長い長さのままでL1の相変態は完了する。その後温度が上昇し、L2が相変態し、板長方向、板幅方向に収縮しようとしても、今度は、本来収縮すべき量より板長方向、板幅方向は長い長さのままであるL1に拘束されて、この方向に十分に収縮することができず、L2はL1と同様に板厚方向に過剰に収縮すると考えられる。このような加熱過程の寸法変化により、各層の収縮は板厚方向に起こりやすく、全体としても、板厚方向に大きく収縮すると考えられる。冷却降温時には、逆に膨張力が働くが、同様に各層に拘束力が働くことによって、板厚方向の変化が大きくなると考えられた。
なお、図1においては説明の便宜上、最表層のL1を最も低い温度で相変態する層としたが、必ずしも、最表層が、最も低い温度で相変態する層ではない。また、各層の変態の順番は、製造条件や成分によって異なるために、特段規則性を有するものでもない。

0024

そこで、この板厚方向への合金元素の濃度変化を把握するために、Niの濃度変化をNiミクロ偏析度として数値化した。分析は、EPMAを用いて、鋼板の1/4厚部における1mm×1mmの視野を、1μmピッチで、Niの濃度を測定し、板厚方向にライン分析することによって行った。そして、Niの最大濃度と平均濃度との比を、Niミクロ偏析度MNiとして数値化した。その結果、従来の高Ni厚鋼板では、MNiは、1.2を超えていた。

0025

このようなMNiが1.2を超える従来の高Ni厚鋼板を熱処理すると、熱処理前後で、板厚方向に大きな寸法変化、すなわち焼減りが起こる。
そのため、Niミクロ偏析度MNiを小さくし、Niのミクロ偏析を無くしてバンド組織を解消すれば、焼減りも無くなると考えられた。なお、本発明でいう「ミクロ偏析」とは、いわゆる鋳造マクロ偏析ではないという趣旨の意味であって、組織オーダーが必ずしもミクロンオーダーであるという意味ではない。

0026

本発明では、これらの知見に基づいて、高Ni厚鋼板の化学成分および組織を決定した。

0027

まず、本発明の高Ni厚鋼板の化学成分の限定理由を説明する。なお、化学成分についての「%」はすべて質量%を意味する。

0028

(C:0.10超〜0.30%)
Cは、本発明が主たる対象とする海洋構造物用の厚板材においては、強度、焼入性、靱性を確保する必要があり、そのためには、0.10%超添加する。一方、CはNiと同様にγ相安定化元素であるため、焼減りを助長させる元素である。すなわち、CはMnやNiに比べて拡散速度が速く、α鉄に殆ど固溶しないため、α/γ変態中に、γ中に濃化する傾向がある。このためにMnやNiが若干でも濃化している部分があれば、濃化している部分のγ変態が早期に起こると、この相対的にMnやNi濃度が高い部分でCが濃化してγ変態は促進され、Cが濃化していない部分ではγ変態のタイミングが著しく遅くなる。その結果、焼減りが助長される。従って、Cの含有量が0.30%を超えると、MnやNiが周囲の部分に比較して相対的に高い部分にCが濃化することで焼減りが大きくなる。さらに、炭化物相が生じ靭性および脆性亀裂伝播停止性能が低下し、溶接性が悪くなる。よって、Cは、0.10超〜0.30%含有させる。C量は、0.10%超、0.20%以下が好ましく、0.10%超、0.18%以下がさらに好ましい。

0029

(Si:0.01〜1.5%)
Siは、安価な脱酸剤であり、さらに、固溶強化により強度が向上するため、0.01%以上添加する。一方、その含有量が1.5%を超えると、表面性状が低下するため上限を1.5%とする。Si量は、0.3%以上、1.2%以下がさらに好ましい。

0030

(Mn:0.1〜2.0%)
Mnは、脱酸剤であり、さらに、強度、焼入性、靱性が向上するため、0.1%以上添加する。一方、その含有量が2.0%を超えると、焼減りが増加し、また、靭性が低下するため上限を2.0%とする。Mn量は、0.3%以上、1.8%以下がさらに好ましい。

0031

(Ni:1〜5%)
Niは、本発明で添加される合金元素において、最も重要な元素である。Niは、耐食性が向上するため、1%以上添加する。一方、5.0%を超えると、コストが上昇するので5%以下とする。Ni量は、1.3%以上、4.5%以下がさらに好ましい。

0032

(P:0.03%以下)
Pは、不純物として鋼中に存在し、0.03%を超えると、粒界偏析して靭性が低下する原因となるため、その含有量を0.03%以下とする。Pの含有量はできるだけ小さくするのがよく、Pの好ましい含有量は0.01%以下である。下限は特に限定しないが、製造コストの兼ね合いから、0.001%以上とすることが好ましい。

0033

(S:0.02%以下)
Sは、不純物として鋼中に存在し、0.02%を超えると、脆性破壊の原因となる延伸形状のMnSが多量に生成して靱性が低下する原因となるため、その含有量を0.02%以下とする。Sの含有量はできるだけ小さくするのがよく、Sの好ましい含有量は0.005%以下である。下限は特に限定しないが、製造コストの兼ね合いから、0.0005%以上とすることが好ましい。

0034

(N:0.05%以下)
Nは、不純物として鋼中に存在し、0.05%を超えると、鋼中に固溶するN量の増加や析出物の生成によって靭性の低下の原因となるため、その含有量を0.05%以下とする。Nの含有量はできるだけ小さくするのがよく、Nの好ましい含有量は、0.01%以下である。下限は特に限定しないが、製造コストの兼ね合いから、0.0001%以上とすることが好ましい。

0035

(Al:0.05%以下)
Alは脱酸剤として添加されるが、0.05%を超えると、介在物に起因して靱性が低下するため、その含有量を0.05%以下とする。より好ましくは0.04%以下である。
なお、脱酸剤としての効果を得るためには、その含有量は、0.002%以上とすることが好ましい。より好ましくは、0.005%以上である。

0036

上記が必須添加元素、あるいは不純物として含まれる元素についての限定である。残部はFeおよび不可避的不純物である。
さらに、選択添加成分として、Feに代えて以下の元素の1種以上を添加してもよい。

0037

(Ti:0.1%以下)
Tiは、強度が向上するため、0.1%以下の範囲で添加することができる。この効果を十分に得るためには、0.01%以上添加することが好ましい。一方、その含有量が0.1%を超えると、介在物の生成に起因して靱性が低下するため、その含有量を、0.1%以下とする。

0038

(Nb:0.1%以下)
Nbは、強度が向上するため、0.1%以下の範囲で添加することができる。この効果を十分に得るためには、0.01%以上添加することが好ましい。一方、その含有量が0.1%を超えると、介在物の生成に起因して靱性が低下するため、その含有量を、0.1%以下とする。

0039

(B:0.01%以下)
Bは、焼入性が向上するため、0.01%以下の範囲で添加することができる。この効果を十分に得るためには、0.0001%以上添加することが好ましい。一方、0.01%を超えると、介在物の生成に起因して靱性が低下するため、その含有量を、0.01%以下とする。

0040

(Cr:1.5%以下)
Crは、強度、硬度、焼入性が向上するため、1.5%以下の範囲で添加することができる。この効果を十分に得るためには、0.1%以上添加することが好ましい。一方、1.5%を超えると、靱性が低下するため、その含有量を、1.5%以下とする。

0041

(Cu:1.0%以下)
Cuは、強度、焼入性が向上するため、1.0%以下の範囲で添加することができる。この効果を十分に得るためには、0.1%以上添加することが好ましい。一方、1.0%を超えると、表面性状が悪くなるため、その含有量を、1.0%以下とする。

0042

(Mo:1.0%以下)
Moは、強度が向上するため、1.0%以下の範囲で添加することができる。この効果を十分に得るためには、0.01%以上添加することが好ましい。一方、その含有量が1.0%を超えると、靱性が低下するため、その含有量を、1.0%以下とする。
(W:0.5%以下)
Wは、強度が向上するため、0.5%以下の範囲で添加することができる。この効果を十分に得るためには、0.01%以上添加することが好ましい。一方、その含有量が0.5%を超えると、靱性が低下するため、その含有量を、0.5%以下とする。
(V:0.5%以下)
Vは、強度が向上するため、0.5%以下の範囲で添加することができる。この効果を十分に得るためには、0.01%以上添加することが好ましい。一方、その含有量が0.5%を超えると、靱性が低下するため、その含有量を、0.5%以下とする。

0043

次に、本発明の高Ni厚鋼板の組織の限定理由について説明する。

0044

(1/4厚部のNiミクロ偏析度MNiが1.2以下)
本発明に係る高Ni厚鋼板は、鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置において、Niミクロ偏析度MNiを1.2以下と限定した。ここで、MNiについて、鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置の鋼組織を限定するのは、当該位置における鋼組織が、高Ni厚鋼板等の熱延鋼板の鋼組織を代表するからである。
MNiが1.2を超えると、熱処理を施した際に、熱処理前からの焼減りが大きくなるため、MNiを1.2以下とした。MNiを1.2以下としたことにより、たとえば焼入れにおいて、熱処理後の焼減りを減少させることができる。MNiのさらに好ましい範囲は、1.1以下である。

0045

続いて、本発明における製造条件の限定理由を説明する。
本発明の高Ni厚鋼板の製造方法については、必ずしも本発明の高Ni厚鋼板自体を限定するものではないが、製造条件として、以下の条件を示すことができる。

0046

上記、本発明に限定する化学成分を有するスラブに、熱間圧延を施して高Ni厚鋼板を製造する。熱間圧延に供するスラブは、連続鋳造や鋳造・分塊圧延により得たものでよいが、それらに熱間加工または冷間加工を加えたものであってもよい。
本発明の高Ni厚鋼板の製造方法において、特徴となる製造条件は以下の熱間圧延工程である。

0047

(粗圧延において、圧下比が少なくとも2)
本発明において、ここでいう圧下比とは、スラブ厚粗圧延後の板厚との比である。本発明では、粗圧延後、仕上げ圧延前に後述する加熱処理中間加熱)を施すため、ここでいう圧下比とは、言い換えると、スラブ厚と中間加熱前の板厚との比ということもできる。
圧下比が2未満であると、粗圧延において、Niの拡散が十分に促進されず、Niが偏析してバンド組織が形成されるため、高Ni厚鋼板のMNiを1.2以下とすることができない。その結果、焼減りを低減できない。そのため、圧下比を2以上とした。圧下比の上限については特に限定しないが、製造施設運用上、20以下とすることが好ましい。

0048

(粗圧延と仕上げ圧延の間で、1180℃以上の温度で1h以上加熱)
粗圧延と仕上げ圧延の間において、1180℃以上の温度で1h以上加熱する、中間加熱を施すことは、MNiを1.2以下とするために重要な工程である。この中間加熱において、加熱温度が1180℃未満、または、加熱時間が1h(1時間)未満の場合、Niの拡散が十分に促進されず、Ni偏析部が残留してバンド組織が形成されるため、高Ni厚鋼板のMNiを1.2以下とすることができない。その結果、焼減りを低減できない。そのため、1180℃以上の温度で1h以上加熱するとした。加熱温度、加熱時間の上限についは特に限定しないが、加熱温度については、1300℃を超えるとスケールの発生が著しく、結晶が粗大化して機械的特性が低下するため、1300℃以下とすることが好ましい。一方、加熱時間の上限は、時間が長すぎると生産効率が低下する。

0049

中間加熱を施した鋼板に、仕上げ圧延を施す。仕上げ圧延の条件は特に限定されるものではないが、通常通り、900〜1100℃の温度で、圧下比1〜30程度で行えばよい。

0050

化学成分が質量%で表1に示されるスラブを用意した。

0051

0052

このスラブを表2に示す条件で粗圧延、粗圧延後の中間加熱、及び仕上げ圧延を行った。ここで、粗圧延における圧下比とは、スラブ厚と粗圧延後の板厚との比である。粗圧延と仕上げ圧延の間には中間加熱を行っており、加熱温度および当該加熱温度で保持する時間を変化させた条件を設定している。また条件番号8は粗圧延から直接仕上げ圧延を行い、中間加熱を実施しない条件である。

0053

0054

これらの組み合わせとして、表3に示すような条件で試験を行い、圧延材を得た。これらの板を常温に冷却した後、1℃/sで810℃まで加熱し、10分保持し、40℃/sで常温まで冷却する焼入れの熱処理を行い、この熱処理前後での板厚変化率を測定した。この結果を、表3に示す。
ただし、板厚変化率は、(熱処理前板厚−熱処理後板厚)/熱処理前板厚、として定義した。また鋼板の1/4厚部における1mm×1mmの視野を1μmピッチでEPMAを用いてNiの濃度を測定し、ライン分析によって得られたNiの最大濃度と平均濃度との比であるミクロ偏析度MNiを求めた。

0055

実施例

0056

表3において、本発明である試験水準2、4、6、8、11、13、14、15、16、18、19,20は、成分および粗圧延、中間加熱の条件が本発明に限定する範囲内であり、その結果、ミクロ偏析度MNiを本発明の限定する1.2以下とすることができたため、板厚変化率を0.2%以内に抑えることができた。
表3において、本発明である試験水準22〜24は、鋼符号cに対し、各選択添加成分を加えた際の影響について調査する目的である。何れの場合も、選択添加成分を添加したことによるNiの偏析への影響は小さく、従って熱処理中の板厚変化率も小さな値となった。
一方、比較例である試験水準1は、粗圧延における圧下比が2よりも小さかったため、Niの拡散が十分に促進されず、ミクロ偏析度MNiが1.2を超え、その結果、板厚変化が0.3%となった。
比較例である試験水準3は、中間加熱の加熱温度が低かったため、Niの拡散が不十分で、ミクロ偏析度MNiが1.2を超える偏析が生じ、熱処理における板厚変化率が0.7%となった。
比較例である試験水準5および10は、中間加熱を行わなかったため、Niの拡散がなされず、ミクロ偏析度MNiが1.2を超える偏析が生じ、熱処理における板厚変化率が1.0%となった。試験水準7は中間加熱の時間が短かったため、偏析の拡散が不十分で板厚変化率が0.4%となった。
比較例である試験水準7は、中間加熱の時間が不十分であり、Niの拡散がなされず、ミクロ偏析度MNiが1.2を超える偏析が生じ、熱処理における板厚変化率が0.4%となった。
比較例である試験水準9は、成分が本発明の限定を満たさなくとも、ミクロ偏析度MNiが1.2以下を満たすため、板厚の変化率が0.2%であったが、Cの添加量が本発明よりも低いため、靭性に難がある。
比較例である試験水準12は、ミクロ偏析度MNiが1.2以下であったが、成分が本発明の限定を超えており、Mnの偏析を生じたため、板厚の変化率0.3%となった。
本発明のCの上限値である鋼符号e〜hを用いた試験水準13〜16では、目的の範囲内に抑えることが出来た一方、比較例である試験水準17では、鋼符号iのC含有量が本発明の条件を超過しており、ミクロ偏析度MNiが1.32となったため、板厚変化率が0.3%となった。
比較例である試験水準21は、Niの量が本発明の範囲を超えており、中間加熱を十分に行ってもミクロ偏析度MNiが1.2を超える偏析が残存するため、熱処理における板厚変化率が0.4%となった。この場合、より加熱温度を上げるか加熱時間を長時間とする必要がある。
比較例である試験水準25は、製造方法が本発明の限定を満たさなくとも、ミクロ偏析度MNiが1.2以下を満たすため、板厚の変化率が0.2%であったが、Niの添加量が本発明よりも低いため、耐食性に難がある。

0057

本発明により、高Ni厚鋼板の焼減りが低減できるので、機械的手入れ工程の追加の手間やコストが低減され、格落ち(不良品)を低減できる。その結果、高品質の高Ni厚鋼板を廉価で提供できるという優れた産業上の利用性を有する。

0058

1…L1収縮量、2…L2収縮量、3…L1収縮力、4…L2からL1への拘束力、5…実際のL1収縮力

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