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技術 中空糸膜、中空糸膜の製造方法、および中空糸膜を用いたビール、ワインまたは日本酒の製造方法

出願人 東レ株式会社
発明者 小岩雅和志村芙美志村俊小崎陽一郎金森智子
出願日 2019年1月30日 (1年3ヶ月経過) 出願番号 2019-014258
公開日 2019年8月8日 (8ヶ月経過) 公開番号 2019-130522
状態 未査定
技術分野 重合方法(一般) 合成繊維 半透膜を用いた分離 食品の調整及び処理一般 醤油及び醤油関連製品 グラフト、ブロック重合体
主要キーワード 吐出口温度 インプットファイル 水和エネルギー 材料表 製造原液 ゲル状成形体 強度強化 全反射赤外分光
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2019年8月8日)のものです。
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図面 (3)

課題

ビールワイン醤油等の発酵液のろ過中の目詰まりが発生しにくい上、洗浄による膜性能回復性、更にはその持続性に優れた中空糸膜を提供すること。

解決手段

発酵液ろ過用の中空糸膜であって、前記中空糸膜は、フッ素樹脂疎水性高分子と少なくとも親水性高分子を含有し 、前記親水性高分子は、2種類以上のモノマー単位から構成される共重合体を含有し、下記式(1)に基づいて算出される前記親水性高分子の水和エネルギー密度が、40〜70cal・mol−1・Å−3であることを特徴とする中空糸膜を提供する。

概要

背景

特に、食品分野における発酵液の処理においては、従来、発酵後のビールワイン中の酵母固形物コロイド等の除去するために珪藻土が利用されていたが、珪藻土自体の安全性や使用済みの珪藻土は焼却処分できず、また、大量に使用するため廃棄にかかるコスト高の問題があった。そこで、近年、装置の小型化に優れる限外濾過膜精密濾過膜等の中空糸膜による発酵液の処理が注目されている。

ビールおよびワイン等の発酵液を中空糸膜モジュールで処理する際には、除去された微生物類やその破砕物等からなる層が膜面上で形成されて膜が目詰まりして、ろ過圧の上昇やろ過速度の経時的な減少が起きやすいという問題があった。

膜面が目詰まりしにくく、ろ過性を発揮できる膜構造として、中空糸膜の片側の表面孔径が除去したい物質よりも大きく、もう一方の表面または膜厚部のいずれかの範囲に最小孔径層を持ち、膜の内部に不純物捕捉する、いわゆるデプス濾過が可能な膜が開発されている。

特許文献1、2には、中空糸膜の外表面から内表面に向けて徐々に孔径が大きくなる、傾斜構造の膜が提案されている。また、特許文献3、4において、親水性高分子を含有し、非対称構造を持つ、ビールろ過用中空糸膜が開示されている。

概要

ビール、ワイン、醤油等の発酵液のろ過中の目詰まりが発生しにくい上、洗浄による膜性能回復性、更にはその持続性に優れた中空糸膜を提供すること。発酵液ろ過用の中空糸膜であって、前記中空糸膜は、フッ素樹脂疎水性高分子と少なくとも親水性高分子を含有し 、前記親水性高分子は、2種類以上のモノマー単位から構成される共重合体を含有し、下記式(1)に基づいて算出される前記親水性高分子の水和エネルギー密度が、40〜70cal・mol−1・Å−3であることを特徴とする中空糸膜を提供する。なし

目的

冷却浴に用いる液体中空部形成用の液体は、同一であっても良いし、異なっていても良く、目的とする

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

この技術が所属する分野

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請求項1

親水性高分子疎水性高分子を含有する中空糸膜であって、前記親水性高分子は、N種類のモノマー単位1,2,・・・i・・・Nから構成される共重合体を含有し、下記式(1)に基づいて算出される前記親水性高分子の水和エネルギー密度が、40〜70cal・mol−1・Å−3であることを特徴とする中空糸膜。[式(1)中、任意のモノマー単位iの水和エネルギーは、モノマー単位iの水中のエネルギーからモノマー単位iの真空中のエネルギーを引いた値の絶対値であり、Nは、共重合体を構成するモノマー種総数を表し、iは、1以上N以下の整数を表し、Nは2以上の整数である。]

請求項2

前記親水性高分子は、下記式(2)に基づいて算出される水和エネルギー密度の最も大きいモノマー単位について、下記式(3)に基づいて算出される体積分率が、35〜90%であることを特徴とする請求項1に記載の中空糸膜。任意のモノマー単位iの水和エネルギー密度(cal・mol−1・Å−3)=(当該モノマー単位iの水和エネルギー)/(当該モノマー単位iの体積)・・・式(2)[式(3)中、N及びiは、前記定義に同じである。]

請求項3

前記親水性高分子は、下記式(4)で算出される水和エネルギー密度の差が、10〜100cal・mol−1・Å−3であることを特徴とする請求項2に記載の中空糸膜。水和エネルギー密度の差(cal・mol−1・Å−3)=(水和エネルギー密度の最も大きいモノマー単位jの水和エネルギー密度)−(水和エネルギー密度の最も小さいモノマー単位kの水和エネルギー密度)・・・式(4)

請求項4

前記中空糸膜は、疎水性高分子としてフッ素系樹脂スルホン系樹脂から構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の中空糸膜。

請求項5

前記疎水性高分子がポリフッ化ビニリデンから構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の中空糸膜。

請求項6

前記中空糸膜の広角X線回折法で得られる回折パターンにおいて、中空糸長手方向を水平に置き測定したときの回折角度(2θ)が39±3°の範囲に含まれるγ晶の割合が、全結晶の0.5%以上15%以下であることを特徴とする請求項5に記載の中空糸膜。

請求項7

X線光電子分光法(XPS)により算出した、前記中空糸膜断面の内表層、中間層における酸素原子フッ素原子の値が、外表層の酸素原子/フッ素原子の値に対して、0.8以上1.2以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の中空糸膜。

請求項8

前記中空糸膜の親水性高分子の含有量(C1)と、前記中空糸膜を90℃の熱水に30分間浸漬した後の親水性高分子の含有量(C2)とが、(C1−C2/C1)≦0.1がを満たすことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の中空糸膜。

請求項9

前記中空糸膜は、平均孔径0.01〜10μmの範囲の細孔、かつ平均直径が0.5〜15μmの範囲の球状構造を有し、かつ前記球状構造は103〜108個/mm2の範囲の密度範囲であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の中空糸膜。

請求項10

空隙率が40〜80%の範囲であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の中空糸膜。

請求項11

請求項1〜10に記載の中空糸膜が、(a)疎水性高分子を含有する溶液相分離することにより中空糸を形成する工程、(b)前記中空糸を熱処理する工程、(c)前記熱処理した中空糸に親水性高分子を導入することを特徴とする、中空糸膜の製造方法

請求項12

請求項11に記載の親水性高分子の導入方法が、親水性高分子を溶解した水溶液を中空糸膜に通液、もしくは浸漬後、放射線照射や熱処理を行うことを特徴とする、請求項11に記載の中空糸膜の製造方法。

請求項13

請求項1〜12に記載の中空糸膜により発酵液をろ過する工程を有する、ビールワインまたは日本酒の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、ビールワイン醤油等の発酵液のろ過中の目詰まりが発生しにくい上、洗浄による膜性能回復性、更にはその持続性に優れた中空糸膜に関するものである。

背景技術

0002

特に、食品分野における発酵液の処理においては、従来、発酵後のビール、ワイン中の酵母固形物コロイド等の除去するために珪藻土が利用されていたが、珪藻土自体の安全性や使用済みの珪藻土は焼却処分できず、また、大量に使用するため廃棄にかかるコスト高の問題があった。そこで、近年、装置の小型化に優れる限外濾過膜精密濾過膜等の中空糸膜による発酵液の処理が注目されている。

0003

ビールおよびワイン等の発酵液を中空糸膜モジュールで処理する際には、除去された微生物類やその破砕物等からなる層が膜面上で形成されて膜が目詰まりして、ろ過圧の上昇やろ過速度の経時的な減少が起きやすいという問題があった。

0004

膜面が目詰まりしにくく、ろ過性を発揮できる膜構造として、中空糸膜の片側の表面孔径が除去したい物質よりも大きく、もう一方の表面または膜厚部のいずれかの範囲に最小孔径層を持ち、膜の内部に不純物捕捉する、いわゆるデプス濾過が可能な膜が開発されている。

0005

特許文献1、2には、中空糸膜の外表面から内表面に向けて徐々に孔径が大きくなる、傾斜構造の膜が提案されている。また、特許文献3、4において、親水性高分子を含有し、非対称構造を持つ、ビールろ過用中空糸膜が開示されている。

先行技術

0006

WO2002/058828号公報
WO2010/035793号公報
WO2016/182015号公報
WO2017/155034号公報

発明が解決しようとする課題

0007

発酵液のろ過において、膜におけるさらなる目詰まりの抑制が求められている。

課題を解決するための手段

0008

上記目的を達成するために本発明は、次の[1]〜[11]の構成を特徴とするものである。
[1]親水性高分子と疎水性高分子を含有する中空糸膜であって、前記親水性高分子は、N種類のモノマー単位1,2,・・・i・・・Nから構成される共重合体を含有し、下記式(1)に基づいて算出される前記親水性高分子の水和エネルギー密度が、40〜70cal・mol−1・Å−3であることを特徴とする中空糸膜。

0009

0010

[式(1)中、モノマー単位iの水和エネルギーは、モノマー単位iの水中のエネルギーからモノマー単位iの真空中のエネルギーを引いた値の絶対値であり、Nは、共重合体を構成するモノマー種総数を表し、iは、1以上N以下の整数を表し、Nは2以上の整数である。]
[2] 前記親水性高分子は、下記式(2)に基づいて算出される水和エネルギー密度の最も大きいモノマー単位jについて、下記式(3)に基づいて算出される体積分率が、35〜90%であることを特徴とする[1]に記載の中空糸膜。

0011

モノマー単位の水和エネルギー密度(cal・mol−1・Å−3)=(モノマー単位の水和エネルギー)/(モノマー単位の体積) ・・・式(2)

0012

0013

[式(3)中、N及びiは、前記定義に同じである。]
[3] 前記親水性高分子は、下記式(4)で算出される水和エネルギー密度の差が、10〜100cal・mol−1・Å−3であることを特徴とする[2]に記載の中空糸膜。

0014

水和エネルギー密度の差(cal・mol−1・Å−3)=(水和エネルギー密度の最も大きいモノマー単位jの水和エネルギー密度)−(水和エネルギー密度の最も小さいモノマー単位kの水和エネルギー密度) ・・・式(4)
[4] 前記中空糸膜は、疎水性高分子としてフッ素系樹脂スルホン系樹脂から構成されていることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の中空糸膜。
[5] 前記疎水性高分子がポリフッ化ビニリデンから構成されていることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の中空糸膜。
[6] 前記中空糸膜の広角X線回折法で得られる回折パターンにおいて、中空糸長手方向を水平に置き測定したときの回折角度(2θ)が39±3°の範囲に含まれるγ晶の割合が、全結晶の0.5%以上15%以下であることを特徴とする[5]に記載の中空糸膜。
[7]X線光電子分光法(XPS)により算出した、前記中空糸膜断面の内表層、中間層における酸素原子フッ素原子の値が、外表層の酸素原子/フッ素原子の値に対して、0.8以上1.2以下であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載の中空糸膜。
[8] 前記中空糸膜の親水性高分子の含有量(C1)と、前記中空糸膜を90℃の熱水に30分間浸漬した後の親水性高分子の含有量(C2)とが、(C1−C2/C1)≦0.1がを満たすことを特徴とする[1]〜[7]のいずれかに記載の中空糸膜。
[9] 前記中空糸膜は、平均孔径0.01〜10μmの範囲の細孔、かつ平均直径が0.5〜15μmの範囲の球状構造を有し、かつ前記球状構造は103〜108個/mm2の範囲の密度範囲であることを特徴とする[1]〜[8]のいずれかに記載の中空糸膜。
[10]空隙率が40〜80%の範囲であることを特徴とする[1]〜[9]のいずれかに記載の中空糸膜。
[11] [1]〜[10]に記載の中空糸膜が、
(a) 疎水性高分子を含有する溶液相分離することにより中空糸を形成する工程、
(b)前記中空糸を熱処理する工程、
(c)前記熱処理した中空糸に親水性高分子を導入することを特徴とする、
中空糸膜の製造方法
[12] [11]に記載の親水性高分子の導入方法が、親水性高分子を溶解した水溶液を中空糸膜に通液、もしくは浸漬後、放射線照射や熱処理を行うことを特徴とする、[11]に記載の中空糸膜の製造方法。
[13] [1]〜[10]に記載の中空糸膜により発酵液をろ過する工程を有する、ビール、ワインまたは日本酒の製造方法。

発明の効果

0015

本発明によると、中空糸膜の目詰まりが抑制される。

図面の簡単な説明

0016

液−液型相分離における相図である。
固−液型相分離における相図である。
ポリフッ化ビニリデン系樹脂示差走査熱量測定DSCチャートである。

0017

1.中空糸膜
本発明の中空糸膜は、疎水性高分子と親水性高分子を含有する。

0018

(1)親水性高分子
中空糸膜は、N種類のモノマー単位から構成される共重合体を含有し、前記式(1)に基づいて算出される親水性高分子の水和エネルギー密度が、40〜70cal・mol−1・Å−3である親水性高分子を含む。

0019

下記式(3)に基づいて算出される水和エネルギー密度の最も大きいモノマー単位の体積分率が、35〜90%であり、下記式(4)で算出される水和エネルギー密度の差が、10〜100cal・mol−1・Å−3であることを特徴としている。

0020

水和エネルギー密度の差(cal・mol−1・Å−3)=(モノマー単位の水和エネルギー密度の最も大きいモノマー単位の水和エネルギー密度)−(モノマー単位の水和エネルギー密度の最も小さいモノマー単位の水和エネルギー密度) ・・・式(4)
「モノマー単位」とは、モノマー重合して得られる単独重合体又は共重合体の中の繰り返し単位を指す。例えば、疎水性モノマー単位とは、疎水性モノマーを重合して得られる単独重合体又は共重合体の中の繰り返し単位を指す。

0021

「N種類のモノマー単位を含有する」とは、共重合体がN種類の繰り返し単位(つまりモノマー単位)を含むことを意味する。Nは2以上の整数であり、モノマー単位iとは、N種類のモノマー単位のうちの任意の1種を指す。例えば、ビニルピロリドンデカン酸ビニルランダム共重合体は、ビニルピロリドン及びデカン酸ビニルの2種類のモノマー単位を含有している。

0022

「共重合体」とは、2種類以上のモノマー単位から構成される重合体を意味する。

0023

「水和エネルギー」とは、溶質を水溶液に入れたときに系が得られるエネルギー変化を意味する。

0024

「モノマー単位の水和エネルギー」は、モノマー単位の水中のエネルギーから当該モノマー単位の真空中のエネルギーを引いた値の絶対値を意味する。

0025

「水和エネルギー密度」とは、単位体積当たりの水和エネルギーを意味する。例えば、モノマーの場合、下記式(2)で定義される数値である。

0026

任意のモノマー単位iの水和エネルギー密度(cal・mol−1・Å−3)=(当該モノマー単位iの水和エネルギー)/(当該モノマー単位iの体積) ・・・式(2)
「水和エネルギー密度の差」とは、前記式(4)で定義される数値を意味する。

0027

「水和エネルギー密度の最も大きいモノマー単位j」とは、親水性高分子を構成するモノマー単位の中で、前記式(2)で定義される前記水和エネルギー密度が最も大きいモノマー単位を意味する。

0028

「水和エネルギー密度の最も小さいモノマー単位k」とは、親水性高分子を構成するモノマー単位の中で、前記式(2)で定義される前記水和エネルギー密度が最も小さいモノマー単位を意味する。

0029

前記モノマー単位の分子モデルについては、例えば、モノマー単位が次式(I)の化学式で示される構造である場合、次式(II)の化学式で示される構造を計算対象とする。すなわち、側鎖Rが結合した側の炭素末端メチル基(次式(II)中(a))でターミネートし、側鎖Rが結合していない側の炭素末端は水素原子(次式(II)中(b))でターミネートした構造を用いる。

0030

0031

0032

前記式(1)中のモノマー単位の真空中のエネルギー及び水中のエネルギーは、以下の方法で計算することができる。

0033

はじめに、前記モノマー単位の分子モデルを構造最適化する。構造最適化には、密度汎関数理論を使用する。汎関数にはB3LYP、基底関数には6—31G(d,p)を使用する。さらにインプットファイルに記載するキーワードとして、optを設定する。

0034

次に、前記構造最適化された構造に対して、真空中のエネルギー及び水中のエネルギーを計算する。

0035

真空中のエネルギー算出は、密度汎関数理論を使用する。汎関数にはB3LYP、基底関数には6—31G(d,p)を使用する。

0036

水中のエネルギー算出は、密度汎関数理論を使用する。汎関数にはB3LYP、基底関数には6—31G(d,p)を使用する。さらに水中のエネルギーを算出するために、連続誘電体モデルを利用し、キーワードとして、以下を使用する。
SCRF=(PCM、G03Defaults、Read、Solvent=Water)
Radii=UAHF
Alpha=1.20
真空中及び水中のSCFエネルギーを求めることで前記モノマー単位の水和エネルギーが決定する。ここで、SCFエネルギーとは、”SCF Done:”と記載された行に書かれたEの値である。

0037

前記エネルギー計算には、Gaussian社製の量子化学計算ソフトGaussian09(登録商標)を使用する。

0038

前記親水性高分子において、前記親水性高分子の水和エネルギー密度は、下記式(1)に基づいて定義される。

0039

0040

[前記式(1)中、モノマー単位iの水和エネルギーは、モノマー単位iの水中のエネルギーからモノマー単位iの真空中のエネルギーを引いた値の絶対値であり、Nは、前記親水性高分子を構成するモノマー種の総数を表し、iは、1以上N以下の整数を表す。]
前記モノマー単位の体積は、例えば、BIOVIA製のMaterialsStudio(登録商標)のConnollysurface法を利用して算出することができる。その際、設定したパラメータは以下の通りである。
Gridresolution=Coarse
Gridinterval=0.75Å
vdWfactor=1.0
Connollyradius=1.0Å
前記式(1)中の前記モノマー単位の体積は、前記構造最適化された構造とする。

0041

前記親水性高分子の水和エネルギー密度は、40〜70cal・mol−1・Å−3であり、好ましくは、43〜60cal・mol−1・Å−3であり、より好ましくは、45〜55cal・mol−1・Å−3である。いずれの好ましい下限値もいずれの好ましい上限値と組み合わせることができる。

0042

前記親水性高分子を構成するモノマー種の総数Nは、特に上限として制限はないが、2〜5が好ましく、2〜3がより好ましく、2が最も好ましい。

0043

前記親水性高分子全体の水和エネルギー密度が40cal・mol−1・Å−3以上、70cal・mol−1・Å−3以下であることにより、前記親水性高分子と前記親水性高分子の吸着水発酵液中の不純物と前記発酵液中の不純物の吸着水の構造が安定すると考えられる。その結果、中空糸膜表面に存在する前記親水性高分子と発酵液中の不純物との静電相互作用、あるいは疎水性相互作用等が小さくなり、発酵液中の不純物の中空糸膜への付着が抑制される。

0044

前記式(1)及び下記式(3)のモノマー単位のモル分率は、親水性高分子を構成するモノマー単位の総数における各種モノマー単位の数の占める割合である。後述のとおり、核磁気共鳴(NMR)装置で測定してピーク面積から算出する。ピーク同士が重なる等の理由でNMR測定による前記モル分率の算出ができない場合は、元素分析により前記モル分率を算出してもよい。

0045

0046

[前記式(3)中、N及びiは、前記定義に同じである。]
中空糸膜は、後述のように疎水性高分子の相分離と、その後の親水性高分子の導入で形成されることで、疎水性高分子で構成された球状構造の集合体と、その球状構造の表面に付着した親水性高分子と、を有する。

0047

前記親水性高分子の数平均分子量は、小さすぎると材料表面へ親水性高分子を導入した場合に効果が十分発揮されにくくなる場合があり、発酵液中の不純物の付着が抑制されにくくなる場合があることから、2,000以上が好ましく、3,000以上がより好ましい。一方、前記共重合体の数平均分子量の上限については特に制限はないが、数平均分子量が大きすぎると材料表面への導入効率が低下する場合があることから、1,000,000以下が好ましく、200,000以下がより好ましく、100,000以下がさらに好ましい。

0048

前記親水性高分子において、前記式(2)に基づいて算出される水和エネルギー密度が最も大きいモノマー単位(説明の便宜上モノマー単位jと称する)の体積分率は、35%〜90%であり、40%〜80%であることが好ましく、40%〜75%であることがより好ましく、40%〜70%であることがさらに好ましい。いずれの好ましい下限値もいずれの好ましい上限値と組み合わせることができる。

0049

前記体積分率が前記範囲にある場合、親水性モノマー単位と疎水性モノマー単位の両方の効果によって、中空糸膜表面に存在する前記親水性高分子と前記親水性高分子の吸着水が発酵液中の不純物と発酵液中の不純物の吸着水に及ぼす相互作用が適切な大きさとなると考えられ、結果として発酵液中の不純物の付着が抑制される。

0050

また、前記親水性高分子において、水和エネルギー密度の差は、下記式(4)で算出される。
(水和エネルギー密度の差)cal・mol−1・Å−3=
(水和エネルギー密度の最も大きいモノマー単位jの水和エネルギー密度)−(水和エネルギー密度の最も小さいモノマー単位kの水和エネルギー密度) ・・・式(4)
前記水和エネルギー密度の差は、10〜100cal・mol−1・Å−3であり、10〜80cal・mol−1・Å−3であることが好ましく、10〜60cal・mol−1・Å−3であることがより好ましい。

0051

前記水和エネルギー密度の差が前記範囲にある場合、中空糸膜表面に存在する親水性高分子の親水性モノマー単位が吸着水保持の役割を担い、疎水性モノマー単位が吸着水の運動性制御の役割を担うことができると考えられる。その結果、材料表面に存在する前記親水性高分子と前記親水性高分子の吸着水が発酵液中の不純物と発酵液中の不純物の吸着水に及ぼす相互作用が適切な大きさとなると考えられ、結果として発酵液中の不純物の付着が抑制される。

0052

前記2種類以上のモノマー単位は、疎水性モノマー単位及び親水性モノマー単位であることが好ましい。

0053

「疎水性モノマー単位」とは、水和エネルギー密度が親水性モノマー単位より小さいモノマー単位を意味し、例えば、カルボン酸ビニルメタクリル酸エステルアクリル酸エステル及びスチレン誘導体からなる群から選択されるモノマーを重合して得られる、単独重合体又は共重合体の中の繰り返し単位が好適に用いられる。これらのうち、親水性モノマー単位とのバランスがとりやすく、材料表面に存在する吸着水の運動性を制御しやすいことから、カルボン酸ビニルを重合して得られる単独重合体又はカルボン酸ビニルを共重合して得られる共重合体の中の繰り返し単位がより好ましく、カルボン酸ビニルを重合して得られる単独重合体の繰り返し単位がさらに好ましい。

0054

「親水性モノマー単位」とは、疎水性モノマー単位より水和エネルギー密度が大きいモノマー単位を意味し、例えば、アリルアミンビニルアミン、N−ビニルアミド、N−ビニルラクタム及びN−アクリロイルモルホリンからなる群から選択されるモノマーを重合して得られる、単独重合体又は共重合体の中の繰り返し単位が好適に用いられる。これらのうち、材料表面に存在する吸着水との相互作用が強すぎず、疎水性モノマー単位とのバランスが取りやすいことから、N−ビニルラクタムを重合して得られる単独重合体又はN−ビニルラクタムを共重合して得られる共重合体の中の繰り返し単位が好ましく、N−ビニルラクタムを重合して得られる単独重合体の繰り返し単位がより好ましい。その中でも、ビニルピロリドンを重合して得られる単独重合体又はビニルピロリドンを共重合して得られる共重合体の中の繰り返し単位がさらに好ましく、ビニルピロリドンを重合して得られる単独重合体が最も好ましい。

0055

なお、前記親水性高分子の作用・機能を阻害しない程度、すなわち前記(1)〜(8)を満たす範囲において、他のモノマー、例えば、グリシジル基のような反応性基を含むモノマーが共重合されていてもよい。

0056

前記親水性高分子における親水性モノマー単位と疎水性モノマー単位の配列としては、例えば、グラフト共重合体ブロック共重合体交互共重合体、ランダム共重合体等が挙げられる。これらのうち、発酵液中の不純物の付着抑制機能が高い点において好ましいのは、ブロック共重合体、交互共重合体、ランダム共重合体であり、1分子の中で親水性疎水性の適度なバランスを有する点においてより好ましいのは、ランダム共重合体又は交互共重合体である。ブロック共重合体や交互共重合体、ランダム共重合体が、グラフト共重合体、例えば主鎖が親水性モノマー単位、側鎖が疎水性モノマー単位からなるグラフト共重合体よりも発酵液中の不純物の付着抑制機能が高い理由は、グラフト共重合体では、主鎖にグラフトしたモノマー単位部分がタンパク質等と接触する機会が多いため、共重合ポリマーとしての特性よりも、グラフト鎖部分の特性が大きく影響するためと考えられる。また、交互共重合体、ランダム共重合体が、ブロック共重合体より親水性と疎水性の適度なバランスの点でより好ましいのは、ブロック共重合体では、それぞれのモノマー単位の特性がはっきり分かれるためではないかと考えられる。

0057

上記親水性高分子は、例えば、アゾ系開始剤を用いたラジカル重合法に代表される連鎖重合法により合成できるが、合成法はこれに限られるものではない。

0058

上記親水性高分子は、例えば、以下の製造方法により製造されるが、この方法に限られるものではない。

0059

親水性モノマー、疎水性モノマーをそれぞれ所定量と、重合溶媒及び重合開始剤とを混合し、窒素雰囲気下で所定温度にて所定時間、攪拌しながら混合し、重合反応させる。親水性モノマー、疎水性モノマーの量比は、共重合体における親水性モノマー単位のモル分率に応じて決めることができる。反応液を室温まで冷却して重合反応を停止し、ヘキサン等の溶媒投入する。析出した沈殿物回収し、減圧乾燥することで、親水性高分子を得ることができる。

0060

上記重合反応の反応温度は、30〜150℃が好ましく、50〜100℃がより好ましく、70〜80℃がさらに好ましい。

0061

上記重合反応の圧力は、常圧であることが好ましい。

0062

上記重合反応の反応時間は、反応温度等の条件に応じて適宜選択されるが、1時間以上が好ましく、3時間以上がより好ましく、5時間以上がさらに好ましい。反応時間が短いと、共重合体に大量の未反応モノマーが残存しやすくなる場合がある。一方、反応時間は24時間以下が好ましく、12時間以下がより好ましい。反応時間が長くなると、二量体の生成等副反応が起こりやすくなり、分子量の制御が困難になる場合がある。

0063

上記重合反応に用いる重合溶媒は、モノマーと相溶する溶媒であれば特に限定はされず、例えば、ジオキサン若しくはテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒ベンゼン若しくはトルエン等の芳香族炭化水素系溶媒メタノールエタノールイソプロピルアルコールアミルアルコール若しくはヘキサノール等のアルコール系溶媒又は水等が用いられるが、毒性の点から、アルコール系溶媒又は水を用いることが好ましい。

0064

上記重合反応の重合開始剤としては、例えば、光重合開始剤熱重合開始剤が用いられる。ラジカルカチオン又はアニオンのいずれを発生する重合開始剤を用いてもよいが、モノマーの分解を起こさないという点で、ラジカル重合開始剤が好適に使用される。ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリルアゾビスジメチルバレロニトリル若しくはアゾビス(イソ酪酸)ジメチル等のアゾ系開始剤又は過酸化水素過酸化ベンゾイル、ジ−tert−ブチルペルオキシド若しくはジクミルペルオキシド等の過酸化物開始剤が使用される。

0065

重合反応停止後、重合反応溶液を投入する溶媒としては、共重合体が沈殿する溶媒であれば得に限定はされず、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンオクタンノナン若しくはデカンのような炭化水素系溶媒又はジメチルエーテルエチルメチルエーテルジエチルエーテル若しくはジフェニルエーテルのようなエーテル系溶媒が用いられる。

0066

(2)親水性高分子の含有量
中空糸膜の親水性高分子の含有量は、X線電子分光法(XPS)、全反射赤外分光法(ATR−IR)、プロトン核磁気共鳴分光法(1H−NMR)、等によって定量可能である。以下では、XPSを用いた中空糸膜がフッ素樹脂系疎水性高分子を含有する場合を例に説明する。XPSで親水性高分子の導入量を定量する方法は、中空糸膜を長さ方向に対して垂直にカットした後、断面を深さ方向に外表層部、中央部、内表層部、と3等分し、各部分における酸素原子、およびフッ素原子の原子百分率(atm%)をXPSにて測定する。本測定を中空糸膜の任意の5点で行い、各部位(外表層部、中央部、内表層部)における酸素原子/フッ素原子の平均値を算出し、フッ素樹脂系疎水性高分子に対する親水性高分子の含有量を求める。親水性高分子の含有量は、疎水性高分子100重量部に対し、親水性高分子を、0.2重量部以上、1.0重量部以下であることが好ましい。より好ましくは、0.3以上、0.9以下であり、更に好ましくは0.4以上、0.8以下である。親水性高分子の含有量が0.2重量部より小さい場合は、ろ過中の目詰まり抑制効果が小さく、洗浄による膜性能の回復性も小さい。また1.0重量部より大きい場合は、親水性高分子により流路が狭まり、液体透過性が低下してしまう。

0067

本発明の中空糸膜は、前記外表層部の酸素原子/フッ素原子の値に対する、中央部、内表層部の酸素原子/フッ素原子の値、すなわち(中央部or内表層部の酸素原子/フッ素原子)/(外表層部の酸素原子/フッ素原子)が0.8以上1.2以下であることが好ましい。より好ましくは、0.85以上1.15以下であり、更に好ましくは0.9以上、1.1以下である。

0068

本発明の中空糸膜に含まれる親水性高分子の含有量(C1)に対し、前記中空糸膜を90℃の熱水に30分間浸漬した後の親水性高分子の含有量(C2)の変化の割合(C1−C2/C1)が0.1以下であることが好ましい。より好ましくは、0.08以下であり、更に好ましくは0.05以下である。含有量変化の割合は、洗浄前後の中空糸膜の前記XPS、ATR−IR、もしくは1H−NMR測定から算出することができる。0.1より大きい場合は、親水性高分子が溶出しやすいため、目詰まりが発生しやすくなる上、洗浄による膜性能の回復性、更にはその持続性が低下してくる。

0069

以上に説明した中空糸膜は、ビール、ワイン、醤油等の発酵液からの酵母、固形物、コロイド等の除去において、ろ過性能が高く、ろ過中の目詰まりが少なく、さらに洗浄による膜性能の回復性とその持続性に優れた性能を有する。

0070

(3−1)疎水性高分子
本発明において、疎水性高分子とは、耐熱性耐薬品性等に優れた疎水性の樹脂成分を表し、この樹脂成分としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂、もしくは、ポリスルホンポリエーテルスルホン等のスルホン系樹脂が挙げられる。この中でも特に、溶媒との相溶性が高く、均一な製造原液を容易に作製できる、フッ化ビニリデン樹脂が好ましい。フッ化ビニリデン樹脂とは、フッ化ビニリデンホモポリマーおよびフッ化ビニリデン共重合体のうちの少なくとも1つを含有する樹脂を意味する。フッ化ビニリデン樹脂は、複数の種類のフッ化ビニリデン共重合体を含有してもよい。

0071

フッ化ビニリデン共重合体は、フッ化ビニリデン残基構造を有するポリマーであり、典型的にはフッ化ビニリデンモノマーとそれ以外のフッ素系モノマーなどとの共重合体である。このような共重合体としては、例えば、フッ化ビニル、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、三フッ化塩化エチレンから選ばれた1種類以上のモノマーとフッ化ビニリデンとの共重合体が挙げられる。

0072

また、本発明の効果を損なわない程度に、前記フッ素系モノマー以外の例えばエチレンなどのモノマーが共重合されていてもよい。

0073

また、フッ化ビニリデン樹脂の重量平均分子量は、要求される高分子分離膜の強度と透水性能によって適宜選択すればよいが、重量平均分子量が大きくなると透水性能が低下し、重量平均分子量が小さくなると強度が低下する。このため、重量平均分子量は5万以上100万以下が好ましい。高分子分離膜が薬液洗浄に晒される水処理用途の場合、重量平均分子量は10万以上70万以下が好ましく、さらに15万以上60万以下が好ましい。

0074

中空糸膜は、フッ化ビニリデン樹脂を主成分として含有することが好ましく、中空糸膜においてフッ化ビニリデン樹脂が占める割合は、80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、95重量%以上であることが更に好ましい。

0075

前記中空糸膜の広角X線回折法で得られる回折パターンにおいて、中空糸長手方向を水平に置き測定したときの回折角度(2θ)が39±3°の範囲に含まれるフッ化ビニリデン樹脂のγ晶の割合が、全結晶の0.5%以上15%以下であることが膜の強度と透水性、更には親水性高分子の導入量を兼備する上で好ましく、その結果、ビール、ワイン、醤油等の発酵液からの酵母、固形物、コロイド等を除去する際に、ろ過性能が高く、ろ過中の目詰まりが少なく、さらに洗浄による膜性能の回復性とその持続性に優れた性能を発揮する。39±3°の範囲に含まれるフッ化ビニリデン樹脂のγ晶の割合は、1%以上12%以下がより好ましく、2%以上10%以下がもっとも好ましい。

0076

(3−2)平均孔径
本発明の中空糸膜は、平均孔径が0.01〜10μmの範囲の細孔を有することが好ましい。細孔の平均孔径は、より好ましくは0.05〜5μmの範囲であり、更に好ましくは0.1〜3μmの範囲である。平均孔径が0.01μm以上であると、透過抵抗が大きくなりにくく、ろ過に要する圧力が高くなることを防止でき、例えば微生物粒子を含む液をろ過する場合、微生物粒子の破壊、変形による膜面閉塞ろ過効率の低下等が起ることを防止できる。また、3μm以下であると、十分な分画性が得られる。

0077

なお、細孔は、どのような形状であってもよく、水銀圧入法により細孔径を測定する。水銀圧入法では、前記ポリスルホン膜連通孔に水銀が圧入されるように水銀に圧力pをかけ、圧力の増分dpに対するセル内の水銀の体積変化dVを測定することによって、次式(5)から、細孔分布関数F(r)を求める。

0078

0079

(ここで、rは細孔半径,σは水銀の表面張力(0.480N/m),θは接触角(140°)を表す。)平均孔径は、次式によって求めることができる。

0080

0081

(3−3)球状構造
本発明の中空糸膜は、平均直径が0.5〜15μmの範囲、好ましくは0.6〜10μmの範囲、さらに好ましくは、0.8〜8μmの範囲の球状構造を有する。特に、中空糸膜の内部が、該球状構造を有していることが好ましい。中空糸膜の内部が、前記の平均直径の範囲の球状構造が連結され、その間隙に空隙を有する構造からなることにより、従来の網目状の構造に比べて、強度を高くでき、しかも透水性能も高くできる。ここで、中空糸膜の内部とは、外表面を除いた、中空糸膜の実質的な内部および/または内表面をいう。

0082

前記球状構造の直径は、中空糸膜の断面および/または内表面を球状構造が明瞭に確認できる倍率走査型電子顕微鏡等を用いて写真を撮り、10個以上、好ましくは20個以上の任意の球状構造の直径を測定し、平均して求める。写真を画像処理装置解析し、等価円直径の平均を求めることも好ましく採用できる。球状構造の密度は103〜108個/mm2の範囲が好ましく、より好ましくは104〜106個/mm2の範囲である。球状構造の密度が103個/mm2以上であることで発酵液処理に求められる高い強度が実現でき、108個/mm2以下であることで高い純水透過性能が得られる。

0083

なお、球状構造の密度は、直径の測定と同様に写真を撮り、単位面積あたりの球状構造の個数計測する。球状構造は、略球形乃至は楕円形であり、真円率短径長径)は好ましくは0.5以上、より好ましくは0.6以上、更に好ましくは0.7以上である。

0084

(3−4)空隙率
本発明の中空糸膜は、高い純水透過性能と高い強度を両立するために、空隙率は40%以上80%以下が好ましく、45%以上75%以下がより好ましく、50%以上70%以下がさらに好ましい。空隙率が、40%以上であることで高い純水透過性能が得られ、80%以下であることで発酵液処理に求められる高い強度を実現することができる。

0085

空隙率は、水銀圧入法により、連通孔に水銀が圧入される前の嵩密度Daを求め、次式によって求める。
Da=(m0−m1)/ρ ・・・式(7)
(ここで、m0は空の測定セル内に水銀を満たしたときの水銀の重量,m1は試料をセル内に入れ、水銀をセル内に導入したときの水銀の重量,ρは水銀の密度を表す。)
更に水銀が圧入されて連通孔が完全に水銀で置換される前と後の体積変化V1から、真密度Dtを次式によって求め、
Dt=W/(W/Da−V1)・・・式(8)
(ここで、Wは試料重量を表す。)
空隙率は
空隙率=(Dt−Da)×100/Dt ・・・式(9)
をもって算出される値である。

0086

(3−5)その他
中空糸膜の外径と膜厚は、膜の強度を損なわない範囲で、中空糸膜内部長手方向圧力損失を考慮し、膜モジュールとして透水量目標値になるように決めればよい。即ち、外径が、太ければ圧力損失の点で有利になるが、充填本数が減り、膜面積の点で不利になる。一方、外径が細い場合は充填本数を増やせるので膜面積の点で有利になるが、圧力損失の点で不利になる。また、膜厚は強度を損なわない範囲で薄い方が好ましい。従って、おおよその目安を示すならば、中空糸膜の外径は、好ましくは0.3〜3mm、より好ましくは0.4〜2.5mm、更に好ましくは、0.5〜2.0mmである。また、膜厚は、好ましくは外径の0.08〜0.4倍、より好ましくは0.1〜0.35倍、更に好ましくは0.12〜0.3倍である。

0087

本発明の中空糸膜は実質上、マクロボイドを有しないことが好ましい。ここで、マクロボイドとは、中空糸膜横断面において、膜実質部分に観察される長径が50μm以上の空孔である。実質上有しないとは、横断面において10個/mm2以下、より好ましくは5個/mm2以下、であり、全く有しないことが、もっとも好ましい。

0088

本発明の中空糸膜は、10kPa,25℃における透水性能が0.1〜10m3/m2・h 、好ましくは0.5〜9m3/m2・h、更に好ましくは1〜8m3/m2・hの範囲にあり、破断強度が0.3〜3kg/本、好ましくは0.4〜2.5kg/本、更に好ましくは0.5〜2kg/本の範囲にあり、かつ、破断伸度が20〜1000%、好ましくは40〜800%、更に好ましくは60〜500%の範囲にあることが好ましい。この範囲にあることにより、通常の使用条件で、十分な透水性能を発揮するとともに、中空糸膜の破断を起こさない。

0089

2.中空糸膜の製造方法
上述の中空糸膜の製造方法の一例について、以下に説明する。以下に説明する製造方法は、
(a)疎水性高分子を含有する溶液を相分離することにより中空糸を形成する工程、
(b)前記中空糸膜を熱処理する工程
(c)前記熱処理した中空糸に親水性高分子を導入する工程
を有する。

0090

(1)中空糸の形成工程
疎水性高分子の種類は、上述したとおりである。疎水性高分子および該疎水性高分子の貧溶媒を含有し、温度が相分離温度以上である疎水性高分子溶液を相分離温度以下の冷却浴吐出することにより、中空糸を形成することができる。疎水性高分子がポリフッ化ビニリデン系樹脂である場合、貧溶媒とは、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を60℃未満の低温では5重量%以上溶解させることができないが、60℃以上かつポリフッ化ビニリデン系樹脂の融点以下(例えばポリフッ化ビニリデン系樹脂が、フッ化ビニリデンホモポリマー単独で構成される場合は178℃程度)の高温領域で5重量% 以上溶解させることができる溶媒のことである。

0091

また、貧溶媒に対し、60℃未満の低温でもポリフッ化ビニリデン系樹脂を5重量%以上溶解させることが可能な溶媒を良溶媒、フッ素樹脂系疎水性高分子の融点または液体の沸点まで、フッ素樹脂系疎水性高分子を溶解も膨潤もさせない溶媒を非溶媒と定義する。

0092

ここで貧溶媒としては、シクロヘキサノンイソホロンγ−ブチロラクトンメチルイソアミルケトンフタル酸ジメチルプロピレングリコールメチルエーテルプロピレンカーボネートジアセトンアルコールグリセロールトリアセテート等の中鎖長のアルキルケトンエステルグリコールエステル及び有機カーボネート等が挙げられる。これらの中でシクロヘキサノン、イソホロン、γ−ブチロラクトン、フタル酸ジメチルが好ましく、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトンが更に好ましい。

0093

また良溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトンアセトン、テトラヒドロフラン、テトラメチル尿素リン酸トリメチル等の低級アルキルケトン、エステル、アミド等が挙げられる。

0094

さらに非溶媒としては、水、ヘキサン、ペンタン、ベンゼン、トルエン、メタノール、エタノール、四塩化炭素、o−ジクロルベンゼン、トリクロルエチレン、低分子量のポリエチレングリコール等の脂肪族炭化水素芳香族炭化水素塩素化炭化水素、またはその他の塩素化有機液体等が挙げられる。

0095

本工程における、まずフッ素樹脂系疎水性高分子の濃度は、好ましくは20〜60重量%、より好ましくは30〜50重量%である。

0096

なお、本製造方法は、本工程の前にフッ素樹脂系疎水性高分子の貧溶媒に相分離温度以上の温度、すなわち80〜175℃、好ましくは100〜170 ℃の温度範囲で溶解し、フッ素樹脂系疎水性高分子溶液を調製する工程を含んでもよい。

0097

ポリマー濃度は高くなれば高い強伸度特性を有する中空糸膜が得られるが、高すぎると製造した中空糸膜の空孔率が小さくなり、透水性能が低下する。また、調製したポリマー溶液の粘度が適正範囲に無ければ、中空糸状成型することが困難である。なお、前記ポリマー溶液の調製において、複数の貧溶媒を用いても良い。また、ポリマーの溶解性に支障が生じない範囲内で、前記貧溶媒に良溶媒、非溶媒、造核剤酸化防止剤可塑剤成型助剤滑剤等を必要に応じて添加することができる。これら配合物加熱攪拌溶解することにより、製膜ポリマー原液を得る。

0098

従来法の湿式溶液法では、透水性能を発現させるためポリマー濃度は10〜20重量%程度であり、強伸度が大きい膜は得られていなかった。これに対して、本書で述べる製造方法では、ポリマー濃度を前記の通り高濃度にすることで、高い強伸度特性を発現している。また、該ポリマー溶液を80〜175℃の相分離温度以上の範囲から、冷却液体などを用いて相分離温度以下に冷却することで凝固させると、球状構造が連結されて、その間に空隙を有する構造の中空糸膜を得ることができる。

0099

球状構造とは、専ら、球晶であると推定される。球晶とは、フッ素樹脂系疎水性高分子溶液が相分離して多孔構造を形成する際に、フッ素樹脂系疎水性高分子が球状に析出、固化した結晶のことである。このような構造を有する中空糸膜は、従来の湿式溶液法で得られる網目構造を有する中空糸膜と比べて、強度を高くでき、しかも透水性能も高くすることができる。一方で、このような貧溶媒を用いた高濃度のポリマー溶液は、温度変化に対する溶解性の変化、すなわちポリマー溶液の粘度変化が大きく、中空糸状に成型することが非常に困難であった。つまり、ポリマー溶液の粘度が低くなり過ぎ、ポリマー溶液が乾式部もしくは冷却浴中で連続的につながらずに切れてしまい中空糸を得ることができなかったり、ポリマー溶液の粘度が高くなり過ぎ、ポリマー溶液がなめらか口金から吐出されないため中空糸を得ることができなかったりした。発明者らは鋭意検討した結果、ポリマー溶液温度とその冷却方法で、前記の球状構造を制御できることを見出し、本発明に至った。すなわち、(1)ポリマー溶液の温度が低すぎると、球状構造が発達する以前にゲル化し、固化するため、多孔構造を発現せず、透水性が得られないこと、(2)ポリマー溶液温度が高すぎると、冷却、ゲル化、固化に時間を要し、球状構造が充分発達してしまうため、球状構造が大きくなり、また、球状構造と球状構造を連結するポリマー分子凝集体が減るため、強度的に低い膜構造になることを見出した。本発明の原理について次に詳細に説明する。

0100

相分離法による多孔質膜の製造方法は、非溶媒の接触により相分離を誘起する非溶媒誘起相分離法と温度変化により相分離を誘起する熱誘起相分離法の2つに大別できるが、熱誘起相分離法により製造する場合、主に2種類の熱誘起相分離機構が利用される。一つは高温時に均一に溶解したポリマー溶液が、降温時に溶液の溶解能力低下が原因でポリマー濃厚相と希薄相に分離する液−液相分離法、もう一つが高温時に均一に溶解したポリマー溶液が、降温時にポリマーの結晶化が起こりポリマー固体相とポリマー希薄溶液相に相分離する固−液相分離法である(Journal of Membrane Science 117(1996)1−31)。前者であるか後者であるかは、ポリマーと溶液の相図により決定される。

0101

図1に典型的な液−液型相分離を示す場合の相図を示す。製膜原液の融点Tm(℃)、結晶化温度Tc(℃)は後述する手法により求めることができる。Tm、Tc共、特に記述がない場合、本発明においては示差走査熱量測定(DSC測定)においてDSC昇降温速度10℃/minにて測定した値を採用する。バイノーダル曲線曇点測定より得られる相分離温度をプロットすることにより求める。液−液型相分離の場合、結晶化曲線よりもバイノーダル曲線が高温側にあり、ポリマー溶液を降温すると、溶液をTmから徐々に降温していくと、余熱により均一に溶解しているものがバイノーダル曲線に到達した時点でバイノーダル分解がおこり、ポリマー濃厚相と希薄相に相分離し、結晶化温度に到達するまで分離がおこる。最終的に溶媒を除去した多孔質構造は、ポリマー溶液組成や降温速度にも依存するが、海島構造である。

0102

図2に典型的な固−液型相分離を示す場合の相図を示す。この場合、バイノーダル曲線より結晶化曲線が高温側にある。この場合、ポリマー溶液を降温すると、結晶化温度に到達した時点でポリマーの結晶化がおこる。さらに降温すると結晶の成長がおこる。最終的に溶媒を除去した多孔質構造は、ポリマー溶液組成や降温速度にも依存するが、球晶構造が多くみられる。例えばポリフッ化ビニリデン系樹脂/貧溶媒系の相図はどれも結晶化温度曲線に隠れてバイノーダル曲線が観察されない固−液型である。バイノーダル曲線の相対位置はポリマーに対して親和性が低い溶媒ほど高温シフトするが、液−液型を発現する溶媒は未だ報告されていない。

0103

本発明における結晶化温度Tcの定義を、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を例にとり、以下に説明する。ポリフッ化ビニリデン系樹脂と溶媒など製膜ポリマー原液組成と同組成の混合物密封式DSC容器密封し、DSC装置を用いて、昇温速度10℃/minで溶解温度まで昇温し、5分保持して均一に溶解した後に、降温速度10℃/minで降温する過程で観察される結晶化ピーク立ち上がり温度をTcとする(図3)。このポリマー溶液の結晶化温度と、熱誘起相分離により得られる膜構造との間には、密接な関係が存在する。製膜因子を積極的に結晶化温度が高くなるように制御する事、すなわち結晶化温度Tc(℃)が40℃以上120℃ 以下であるポリマー溶液を用いる事で、膜構造、すなわち球晶粒径微小化できる。膜構造が微小であるということは、すなわち分離性能に優れた膜を得ることができることを意味する。製膜原液の結晶化温度に影響を及ぼす製膜因子としては、例えばポリマー溶液中のポリマー濃度、ポリマーグレード(分子量、分岐形状、共重合体の種類)、溶媒の種類、結晶形成に影響を与える添加剤などがある。例えばポリマー濃度については、ポリマー濃度が高くなる程、Tcは高くなり、球晶粒径が小さくなる。Tcそのものと球晶粒径にも相関があり、Tcが高温になるほど球晶粒径が小さくなるという関係を見いだした。また、ポリマーの分子量の影響については分子量の高いもの程、球晶粒径が小さくなるという関係を見いだした。分子量とTcには相関は少なく、それよりもホモポリマーであるかコポリマーであるか、あるいは分岐形状の違いがTcに影響を及ぼしている。分子量の近い場合、分岐や共重合体の違いでTcが高いポリマーグレードを用いると球晶粒径が小さくなる傾向がある。ポリマー溶液のポリマー濃度を上げたり、ポリマー溶液のTcが高くなるようにポリマーグレードを選択することは本発明にとって好ましく、同じように製膜原液のTcを高温シフトさせるような無機有機塩などの添加物を添加することも好ましく選択できる。球晶構造形成過程は、X線回折の結果などから結晶生成過程であることがわかる。結晶生成過程は発熱過程である。一般にポリフッ化ビニリデン系樹脂などの結晶性高分子が結晶化する際に初めに生成する結晶を一次核という。この一次核が成長し、1つの球晶になる。この一次核生成速度が遅いと、初めに生成した一次核の結晶成長に伴う発熱のため、その周辺の新たな一次核生成が抑制され、初めに発生した結晶が大きな結晶に成長する。球晶の成長は球晶同士が衝突するまで続き、衝突により成長が停止するので、最終的な球晶粒径は最初に生成する一次核の数に依存する。すなわち小さな微小球晶構造を得るには多数の一次核を生成する必要がある。Tcが高いポリマー溶液は、結晶化が起こりやすいポリマー溶液であり、一次核生成時に瞬時に多数の場所で一次核の生成がおこり、微小な球晶構造が得られると考えられる。逆にTcが低いポリマー溶液は結晶化が起こりにくいポリマー溶液であり、一次核生成時に最初に生成した一次核成長に伴う発熱で周囲の一次核生成が抑制され、結果的に球晶数が少なく大きな球晶構造が得られると考えられる。本発明に用いるポリマー溶液のTcは40℃以上120℃以下である。より好ましくは45℃以上105℃以下、さらに好ましくは48℃以上95℃以下である。Tcが40℃よりも低いと微小構造膜を得ることができない。Tcが120℃よりも高いとポリマー溶液の結晶化が容易に起こりやすく、溶解槽製膜原液配管、降温条件など製膜条件を高温で制御する必要があり、エネルギー的ロスが多い。また、ポリマー濃度を高くする必要があり、空孔率の高い膜を得にくい。

0104

本発明に用いるポリマー溶液中のフッ素樹脂系疎水性高分子濃度は前述したとおり中空糸膜の強度特性と透水性能のバランスの観点と中空糸状への成形性の観点から20〜60重量%であることが好ましく、30〜50重量%の範囲がさらに好ましいが、結晶化温度の観点からもポリマー濃度が20重量%に満たない場合、ポリマー溶液のTcが低くなり、微小構造が得られにくく好ましくない。フッ素樹脂系疎水性高分子濃度を30重量%以上60重量%以下に制御することにより透過性が高く、微小構造をもつ膜が得られ、かつ製膜安定性も良好になる。ここで製膜原液中のフッ素樹脂系疎水性高分子の重量平均分子量は2×105以上であることが好ましい。分子量が2×105未満では溶液粘度が低くなり、製膜安定性が悪く、得られる膜強度も弱くなる傾向がある。またポリマーが高分子量の場合は、ポリマー溶液の溶液粘度が高くなるので高分子鎖運動が抑制され結晶成長速度が遅くなり、多数の球晶核が生成するので微小構造をもつ膜が得られ易い。本発明におけるフッ素樹脂系疎水性高分子の重量平均分子量は、好ましくは3×105〜3×106である。

0105

本発明では、ポリマー溶液を二重管状吐出口等から吐出し、中空糸状に成形後冷却してゲル状成形体を得る。本発明において吐出口温度Ts(℃)は、ポリマー溶液を吐出する口金の吐出口における温度である。本発明においては、Tc≦Ts≦Tc+90の関係を満たすようにTsを制御する。好ましくはTc+10≦Ts≦Tc+85、さらに好ましくはTc+20≦Ts≦Tc+80である。

0106

TsがTc以上であることで、吐出口でのポリマーの結晶化、およびそれに伴うポリマー溶液の伴うゲル化を抑制することができる。従って、TsがTc以上であることで、口金からのポリマー溶液の吐出量が安定する。一方で、TsがTc+90以下であることで、膜自体の余熱を除くことができるので、冷却工程による十分な効果を得ることができる。その結果、微小構造が得られる。

0107

TsがTc以上であることで、吐出口でのポリマーの結晶化、およびそれに伴うポリマー溶液の伴うゲル化を抑制することができる。従って、TsがTc以上であることで、口金からのポリマー溶液の吐出量が安定する。一方で、TsがTc+90以下であることで、膜自体の余熱を除くことができるので、冷却工程による十分な効果を得ることができる。その結果、微小構造が得られる。

0108

冷却工程は、例えば、中空糸膜紡糸用の二重管式口金から吐出されたポリマー溶液を、所定の長さの乾式部を通過させた後、冷却浴中に導いて凝固させる。二重管式口金を用いる場合、口金から吐出する前に、ポリマー溶液を、5〜100μmのステンレス製フィルター等で濾過することが好ましい。使用する前記口金の寸法は、製造する中空糸膜の寸法と膜構造により適宜選択すればよいが、おおよそスリット外径0.7〜10mm、スリット内径0.5〜4mm、注入管内径0.25〜2mmの範囲であることが好ましい。また、紡糸ドラフト引取り速度原液口金吐出線速度)は0.8〜100、好ましくは0.9〜50、更に好ましくは1〜30、乾式長10〜1000mmの範囲であることが好ましい。また吐出口温度Tsと溶解温度が異なっても構わない。溶解温度については、溶解を短時間に均一に行うという点から、Tsより高い温度に設定することも好ましく採用できる。前記の通り、中空糸状に成形されたポリマーは、凝固し中空糸膜とするが、この際温度が0〜50℃、好ましくは5〜30℃ であり、濃度が60〜100重量%、好ましくは75〜90重量%の範囲で貧溶媒を含有する液体を用いて凝固させることが好ましい。貧溶媒は、複数のものを混合して用いても良い。また、前記の濃度範囲外れない限りにおいて、貧溶媒に、良溶媒や非溶媒を混合しても良い。ポリマー溶解温度から大きい温度差を与えて急冷することで、球状構造が微少になると同時に、適度に球状構造間にポリマー分子の凝集体が存在し、高い透水性と高い強伸度特性を有する膜構造を発現する。また、冷却液体にある程度高い濃度の貧溶媒を含有させることで、非溶媒誘起相分離を抑制し、膜表面に緻密層を形成することなく、中空糸膜状に成型することが可能となる。冷却液体に水等の非溶媒を高い濃度で含有する液体を用いると、膜表面に緻密層を形成してしまい、例え延伸しても透水性能は発現しない。また、中空糸膜の中空部形成には、通常気体もしくは液体をポリマー溶液に随伴させるが、本発明においては、濃度が60〜100重量%の範囲で貧溶媒を含有する液体を用いることが好ましく採用できる。貧溶媒の濃度は、より好ましくは70〜100重量%更に好ましくは80〜 100重量%の範囲である。冷却浴同様、高い濃度の貧溶媒を含有させることで、非溶媒誘起相分離を抑制し、微細な球状構造を形成することが可能となる。貧溶媒は、複数のものを混合して用いても良い。また、前記の濃度範囲を外れない限りにおいて、貧溶媒に、良溶媒や非溶媒を混合しても良い。冷却浴に用いる液体と中空部形成用の液体は、同一であっても良いし、異なっていても良く、目的とする中空糸膜の特性等に応じて適宜選択すればよい。製造工程の観点からは、ポリマー溶液、冷却浴に用いる液体、および中空部形成用の液体に用いる貧溶媒が同一種である場合、製造過程における溶媒の回収等で利便性が高いが特に限定されるものではない。なお、前記冷却浴の形態としては、冷却液体と膜状に成形されたポリマー溶液とが十分に接触して冷却等が可能であるならば、特に限定されるものではなく、文字通り冷却液体が貯留された液槽形態であっても良いし、さらに必要により前記液槽は、温度や組成が調製された液体が循環乃至は更新されても良い。前記液槽形態が最も好適ではあるが、場合によっては、冷却液体が管内を流動している形態であっても良いし、空中を走行している膜に冷却液体が噴射される形態であっても良い。

0109

本発明では、ポリマー溶液の冷却に際して、ポリマー溶液が結晶化温度Tcを通過する時
に2×103 ℃/min以上106℃/min以下の平均降温速度Vtで冷却することが
特徴である。平均降温速度Vtは、好ましくは5×103℃/min以上6×105℃/min以下、さらに好ましくは104℃/min以上3×105℃/min以下である。この範囲の平均降温速度V t で冷却相分離させることにより、さらに微小構造をもつ微多孔膜を製造することが可能となる。

0110

本発明における製膜時の平均降温速度Vtは以下のa、bいずれかの方法により求められ
る。
a .結晶化温度Tc到達時にポリマー溶液が空気中にあるとき
Vt=(Ts−Tc)/t(sc)
Ts:吐出口温度(℃)、Tc:結晶化温度(℃) 、
t(sc):製膜原液吐出後Tc到達までの経過時間(min)
t(sc)の測定において、気中の膜温度がどの時点でTcに達しているかはサーモグラフィー等により測定することができる。吐出口からTc到達点までの距離と、製膜速度とからt(sc)を計算することができる。
b.結晶化温度Tc到達時にポリマー溶液が冷却浴中にあるとき
Vt=(Ts−Ta)/t(sa)
Ts:吐出口温度(℃)、Ta:冷却浴温度(℃)
t(sa):製膜原液吐出後冷却浴到達までの経過時間(min)
t(sa)の測定において、ポリマー溶液の温度は冷却浴中に浸漬された時点で、瞬時に冷却浴の温度に等しくなるとみなす。したがって、吐出口から冷却浴の液面までの距離と、製膜速度とからt(sa)を計算することができる。平均降温速度が2×103℃/min未満であると多孔構造が肥大化し分離性能の良い膜が得られない。一方、平均降温速度を106℃/minよりも大きくするためには、非常に早い速度で冷却する必要がある。例えば、冷却浴で冷却する方式を用いた場合には、非常に早い吐出速度で吐出して、冷却浴に浸漬する必要があり、吐出ムラ冷却ムラの問題があり、安定した性能の膜を得られない。結晶化温度Tc通過時の冷却速度を大きくすると微小構造が得られる理由は、結晶成長の原因である降温による一次核生成時の発熱が急激な冷却により除去されるので、同時に多数の一次核が生成し微小構造が得られることによると考えられる。

0111

上記のような製造方法で得られた本発明の微多孔膜は、微小な球晶構造が連結され、その間隙に空隙を有する構造からなることにより、従来の微多孔膜に比べて、強度を高くでき、透水性能も高くでき、かつ分離性能も高くできる。冷却され、ゲル化した膜は、次に抽出溶媒に浸漬されることにより、あるいは膜乾燥により溶媒の抽出を行い、多孔質膜が得られる。以上までの製造工程に加えて、球晶同士の接触部の引き伸ばしまたは引き裂きによる空孔性向上および細孔径向上、延伸配向による膜強度強化を目的として延伸を行うことも有用であり好ましいものである。発明者らは、この延伸の方法について鋭意検討し、好ましくは50〜140℃、より好ましくは55〜120℃、更に好ましくは60〜100℃の温度範囲で、好ましくは1.1〜5倍、より好ましくは1.1〜4倍、更に好ましくは1.1〜3倍に延伸することで、より透水性能に優れた中空糸膜が得られることを見出した。50℃未満の低温雰囲気で延伸した場合、安定して均質に延伸することが困難であり、構造的に弱い部分のみが破断する。50〜140℃の温度で延伸した場合、球状構造の一部および球状構造と球状構造を連結するポリマー分子の凝集体が均質に延伸され、微細で細長い細孔が多数形成され、強伸度特性を維持したまま透水性能が著しく向上する。140℃を超える温度で延伸した場合、フッ素樹脂系疎水性高分子の融点に近くなるため、球状構造が融解してしまい、細孔が形成されずに延伸されるため、透水性能が向上しない。また、延伸は液体中で行う方が温度制御が容易であり好ましいが、スチームなどの気体中で行っても構わない。液体としては水が簡便で好ましいが、90℃程度以上で延伸する場合には、低分子量のポリエチレングリコールなどを用いることも好ましく採用できる。さらに水とポリエチレングリコールの混合液体等、複数の液体の混合液体中で延伸することも採用できる。一方、このような延伸を行なわなかった場合は、延伸を行なった場合と比べて、透水性能は低下するが、ろ過性能が高くなる。したがって、延伸工程の有無については、中空糸膜の用途に応じて適宜設定することができる。

0112

(2)熱処理工程
中空糸膜の熱処理工程としては、乾燥状態で熱を加える方法、水蒸気などの湿潤下で熱を加える方法などが挙げられる。熱処理を行うことで疎水性高分子の構造が活性化され、次の工程における親水性高分子が導入しやすくなり、目詰まりを抑制できると共に、薬品洗浄による性能の回復率も向上する。したがって、熱処理温度が低すぎると十分な量の親水性高分子が導入されない。疎水性高分子がポリフッ化ビニリデン系樹脂である場合、熱処理の温度としては、50℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、90℃以上がもっとも好ましい。一方、熱処理温度が高すぎると前記工程で作製した微小構造をもつ中空糸膜の微多孔が閉塞してしまい、透水性が低下してしまう。そのため、熱処理温度としては、145℃以下が好ましく、135℃以下がより好ましく、130以下がもっとも好ましい。熱処理工程の温度については、中空糸膜を構成する疎水性高分子の融点やTgに応じて適宜設定することができる。

0113

(3)親水性高分子の導入工程
親水性高分子の種類は中空糸膜の欄で説明したとおりである。親水性高分子を導入する方法として、親水性高分子を溶解した水溶液を中空糸膜に通液、もしくは浸漬後、放射線照射や熱処理を行い、親水性高分子を不溶化させる方法、または中空糸膜に存在する反応性基との化学反応により共有結合を形成する方法が挙げられる。

0114

親水性高分子水溶液の濃度は、小さすぎると十分な量の親水性高分子が表面に導入されない。したがって、上記水溶液中の共重合体濃度は10ppm以上が好ましく、100ppm以上がより好ましく、500ppm以上がもっとも好ましい。ただし、水溶液の親水性高分子の濃度が大きすぎると、モジュールからの溶出物の増加が懸念されるため、上記水溶液中の共重合体濃度は100,000ppm以下が好ましく、10,000ppm以下がより好ましい。なお、上記親水性高分子の数平均分子量は、後述のとおり、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定される。

0115

なお、上記親水性高分子が水に難溶又は不溶である場合は、中空糸を溶解しない有機溶媒又は水と相溶し、かつ中空糸を溶解しない有機溶媒と水との混合溶媒に親水性高分子を溶解させてもよい。上記有機溶媒又は上記混合溶媒に用いうる有機溶媒の具体例として、メタノール、エタノール又はプロパノール等のアルコール系溶媒が挙げられるが、これらに限定されるものではない。

0116

また、上記混合溶媒中の有機溶媒の割合が多くなると、中空糸が膨潤し、中空糸膜の孔径等が変化してしまう可能性がある。したがって、上記混合溶媒中の有機溶媒の重量分率は60%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、1%以下が最も好ましい。

0117

前記放射線照射にはα線β線γ線、X線、紫外線又は電子線等を用いることができる。ここで、安全性や簡便さの点から、γ線や電子線を用いた放射線法が好ましい。放射線の照射線量は15kGy以上が好ましく、25kGy以上がより好ましい。15kGy以上にすることで親水性高分子を効果的に導入することができる。また、上記照射線量は100kGy以下が好ましい。照射線量が100kGyを超えると、共重合体が3次元架橋やカルボン酸ビニルモノマー単位のエステル基部分の分解等を起こしやすくなり場合があるためである。

0118

放射線を照射する際の架橋反応を抑制するため、抗酸化剤を用いてもよい。抗酸化剤とは、他の分子に電子を与えやすい性質を持つ物質のことを意味し、例えば、ビタミンC等の水溶性ビタミン類ポリフェノール類又はメタノール、エタノール若しくはプロパノール等のアルコール系溶媒が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの抗酸化剤は単独で用いてもよいし、2種類以上混合して用いてもよい。抗酸化剤を用いる場合、安全性を考慮する必要があるため、エタノールやプロパノール等、毒性の低い抗酸化剤が好適に用いられる。

0119

また、反応性基との化学反応により共有結合を形成する方法として、具体的には、材料の基材表面のアミノ基、スルホン酸基ハロゲン化アルキル基等の反応性基と、共重合体の主鎖の末端や側鎖に導入された反応性基とを反応させることによって達成される。

0120

材料表面に、反応性基を導入する方法としては、例えば、反応性基を有するモノマーを重合して表面に反応性基を有する基材を得る方法や、重合後、オゾン処理プラズマ処理によって反応性基を導入する方法等が挙げられる。

0121

上記共重合体の主鎖の末端に反応性基を導入する方法としては、例えば、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチルプロピオンアミド]や4,4’−アゾビス(4−シア吉草酸)のような反応性基を有する開始剤を使用する方法等が挙げられる。

0122

上記共重合体の側鎖に反応性基を導入する方法としては、上記共重合体の作用・機能を阻害しない程度において、メタクリル酸グリシジルのような反応性基を有するモノマーを共重合する方法等が挙げられる。

0123

前記親水性高分子の中空糸膜への導入量は、前述のとおり、全反射赤外分光法(ATR−IR)により定量可能である。また、必要に応じて、X線電子分光法(XPS)等によっても定量可能である。

0124

さらに、前記製造方法で製造された中空糸膜は、中空糸膜モジュールとして用いることができる。モジュールとは、中空糸膜を複数本束ねて円筒状の容器に納め、両端または片端ポリウレタンエポキシ樹脂等で固定し、透過水集水できるようにしたものや、平板状に中空糸膜の両端を固定して透過水を集水できるようにしたもののことである。この中空糸膜モジュールの原液側ポンプ水位差などの加圧手段を設けたり、透過液側にポンプまたはサイフォン等による吸引手段を設けたりすることにより、原液である発酵液の膜ろ過を行う分離装置として用いることができる。この分離装置を用いて、発酵液から、精製された透過液を製造することができる。

0125

3.中空糸膜の利用
上述の中空糸膜は、この中空糸膜を用いて発酵液をろ過する工程を有する、ビール、ワインまたは日本酒の製造方法に好適に利用される。ろ過によって、発酵液の濁質等、製品に不要な成分を除去することができる。

0126

上述の中空糸膜は、目詰まりを起こしにくいろ過中の目詰まりが発生しにくいので、これらの用途に好適である。

0127

以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものはない。
なお、実施例及び比較例において、以下の略号を用いる。
PVP:ポリニルピロリドン
PVP/PVAc:ビニルピロリドン/酢酸ビニルランダム共重合体
PVP/PVPr:ビニルピロリドン/プロパン酸ビニルランダム共重合体
PVP/PVA:ビニルピロリドン/ビニルアルコールランダム共重合体
(平均孔径、空隙率)
長さ100mmの中空糸膜10本を切り出し、精の後、重ならないように測定用セルに入れ、減圧下に水銀を注入した。次に本試料をマイクロメリテック社製ポアサイザー9320で平均孔径、空隙率を測定した。測定回数は1回とした。

0128

(球状構造の平均直径、密度)
中空糸膜を凍結割断法で切断して膜断面観察サンプルを作成し、このサンプルに白金を薄くコーティング後、高分解能電界放射型走査電子顕微鏡日立製S−900型電子顕微鏡)を用いて3〜6kVの加速電圧で断面写真を撮影した。SEMにより撮影した断面写真を画像解析ソフトImage Proに取り込み、解析を行い、球状構造の平均直径、密度を求めた。

0129

(親水性高分子の水和エネルギー密度)
量子化学計算から得られるモノマー単位の水和エネルギーは、以下に示すモノマー単位の分子モデルによって定義する。

0130

上記モノマー単位の分子モデルは、繰り返し単位が次式(V)の化学式に示される構造である場合、次式(VI)の化学式で示される構造を計算対象とした。例として、プロパン酸ビニルの場合を記述した。

0131

0132

0133

量子化学計算には、Gaussian社製のGaussian09(登録商標)、ConnollysurfaceにはBIOVIA製のMaterialsStudio(登録商標)を使用した。

0134

上記モノマー単位の水和エネルギーは以下の方法で算出した。

0135

はじめに、真空中のモノマー単位を構造最適化し、その後、構造最適化された構造に対して、真空中のエネルギー及び水中のエネルギーを算出した。

0136

構造最適化工程では、密度汎関数理論を使用した。汎関数にはB3LYP、基底関数には6—31G(d,p)を使用した。さらにインプットファイルに記載されるキーワードとして、optを設定した。

0137

真空中のエネルギーは、密度汎関数理論を使用して算出した。汎関数にはB3LYP、基底関数には6—31G(d,p)を使用した。

0138

水中のエネルギーは、密度汎関数理論を使用して算出した。汎関数にはB3LYP、基底関数には6—31G(d,p)を使用した。さらに水中のエネルギーを算出するために、連続誘電体モデルを利用し、キーワードとして、以下を使用した。
SCRF=(PCM、G03Defaults、Read、Solvent=Water)
Radii=UAHF
Alpha=1.20
また、モノマー単位の体積は、Connollysurface法を利用して算出した。その際、設定したパラメータは以下の通りとした。
Gridresolution=Coarse
Gridinterval=0.75Å
vdWfactor=1.0
Connollyradius=1.0Å
前記親水性高分子の水和エネルギー密度は、上記水和エネルギー及びConnollysurface法で計算した体積をもとに、上記式(1)で定義される。上記式(1)中の上記モノマー単位の体積は、前記構造最適化された構造とした。

0139

(モノマー単位iの水和エネルギー密度)
上記モノマー単位iの水和エネルギー密度は、上記式(2)に基づいて算出した。

0140

(水和エネルギー密度の最も大きいモノマー単位の体積分率)
水和エネルギー密度の最も大きいモノマー単位の体積分率は、上記式(3)に基づいて算出した。

0141

(水和エネルギー密度の差)
水和エネルギー密度の差は、上記式(4)によって算出した。

0142

以下の実施例及び比較例において算出した、親水性高分子の水和エネルギー密度、水和エネルギー密度の最も大きいモノマー単位の体積分率及び水和エネルギー密度の差を、表1に示す。

0143

(モジュールの作製)
複数本の中空糸膜を約30cmの長さに切断し、ポリエチレンフィルムで巻いて中空糸膜束とした。この中空糸膜束を円筒型ポリカーボネートモジュールケースに挿入し、両末端をエポキシポッティング剤で固めた。端部を切断して、両末端が開口したモジュールを得た。中空糸膜の本数は、中空糸膜内径基準の膜面積が100〜200cm2となるよう適宜設定した。なお、円筒状のモジュールケースには両端部付近の2箇所にポートを設け、中空糸膜の外面を流体灌流できるようにし、両末端には液の出入り口を有するエンドキャップを装着して、中空糸膜の中空部を流体が灌流できるようにした。

0144

(ビール透過性の測定)
ビール酵母を含有した市販の無ろ過ビール「銀河高原ビール」を(以下、評価用ビールと呼称する)使用した。モジュール内にRO水を充填し1時間以上放置した後、中空糸膜の外側のRO水を排出した後、中空部に存在する水を評価用ビールで置換した。容器内に0℃を維持した評価用ビール2Lを用意し、この容器からポンプを介して評価用ビールが中空糸膜の外面を灌流して容器に戻ると同時に、中空糸膜によってろ過されたろ液は評価用ビールが入っている容器とは異なる容器で採取するよう回路を組んだ。その際、モジュールへの評価用ビールの入口圧出口圧およびろ過側の圧を測定できるようにした。モジュール入口を、評価用ビールが1.5m/secの流速で流れるように、評価用ビールを導入した。また、ろ過速度は、100[L/m2/h]になるように調整した。この状態で、中空糸膜外面に評価用ビールを5±3℃で灌流、一部をろ過するクロスフローろ過を継続して実施した。所定の時間毎に入口圧、出口圧およびろ過側の圧力を測定し、膜間圧力差(TMP)が1.0kPaまで上昇する時間[h]を測定して、ビール処理量を算出した。
TMP=(Pi+Po)/2−Pf とした。
ここで、Piは入口圧、Poは出口圧およびPfはろ過側の圧である。
ビール処理量[L/m2]=ろ過速度100[L/m2/h]×圧力1.0kPaまで上昇する時間[h]。

0145

(ビール処理量回復率の算出)
ビールの定速ろ過を実施し、1回目のビール処理量をビール処理量(1回目)とした。ろ過後のモジュールを50℃の0.04%NaOH水溶液に20分浸漬後、引き続き50℃の0.3%次亜塩素酸Na水溶液(pH12)で中空糸膜の内側から外側に向かって200[L/m2/h]となる条件で逆ろ過を15分行なった後、水に置換し、再度ビールの定速ろ過測定を行った。前記操作を繰り返し、合計で9回のビールの定速ろ過測定を行った。その後、前記と同様の洗浄操作を行なった後、最後に中空糸膜の内側と外側を水に置換し、ビールの定速ろ過を実施した。この時の5回目と10回目のビール処理量を、ビール処理量(5回目)、ビール処理量(10回目)とし、下記の方法でビール処理量回復率を求めた。
ビール処理量回復率(A)(%)=ビール処理量(5回目)/ビール処理量(1回目)×100
ビール処理量回復率(B)(%)=ビール処理量(10回目)/ビール処理量(1回目)×100
(フッ化ビニリデン樹脂のγ晶の割合の算出)
中空糸膜を長さ方向に対して垂直にカットした後、広角X線回折法分析で得られる回折パターンにおいて、中空糸長手方向を水平に置き測定したときの回折角度(2θ)が39±3°の範囲に含まれるγ晶の割合を測定した。本測定を中空糸膜の任意の5点で行い、平均値を算出した。なお、広角X線回折法の評価条件は以下の通りである。
・装置:Bruker AXS社製 D8 ADVANCE(封入管型)
X線源:CuK 線(Niフィルター使用)
・出力:40kV、40mA
検出器シンチレーションカウンター
スキャン方式:2θ/θ連続スキャン
測定範囲:2〜90°
ステップ幅:0.02°
計数時間:5秒/ステップ
γ晶の割合は、結晶性ピークの全散乱強度(結晶性ピーク+非晶性ピーク)に対する比率から求めた。最初にベースラインを引いて、試料のバックグラウンドから機器のバックグラウンドを差し引いた。結晶反射は、PVDF結晶学的構造(試料の結晶構造組成から規定される、αPVDF、βPVDF、またはγPVDFのいずれか)で定義されるピーク位置にあてはめた。

0146

(酸素原子/フッ素原子の測定)
中空糸膜を長さ方向に対して垂直にカットした後、断面を深さ方向に外表層部、中央部、内表層部、と3等分し、X線電子分光法(XPS)分析から各部分における酸素原子、およびフッ素原子の原子百分率(atm%)を測定した。本測定を中空糸膜の任意の5点で行い、各部位(外表層部、中央部、内表層部)における酸素原子/フッ素原子の平均値を算出し、外表層部に対する中央部または内表層部の割合、すなわち(中央部または内表層部の酸素原子/フッ素原子)/(外表層部の酸素原子/フッ素原子)、並びに中空糸断面における酸素原子/フッ素原子の平均値(すなわち、中空糸膜の親水性高分子含有量)をそれぞれ求めた。なお、XPSの測定条件は以下の通りである。
・装置:ESCALAB220iXL
励起X線:monochromatic Al K α 1,2線(1486.6eV)
・X線径:1mm
光電子脱出角度: 90°
熱水洗浄による親水性高分子の含有量変化)
中空糸膜を90℃で30分間洗浄し、洗浄前後における親水性高分子の含有量変化の割合を前記XPS分析による酸素原子の原子百分率変化から求めた。

0147

(参考例1)
分子量41.7万のフッ化ビニリデンホモポリマー40重量%とγ−ブチロラクトン60重量%を150℃ で溶解させて均一溶液を得た。このポリマー溶液を110℃で静置脱泡後、吐出口温度100℃の中空糸成型用二重管状口金の外側の管から吐出し、更に二重管状口金の内側の管から、中空部に100重量%のγ−ブチロラクトン注入液を注入した。乾式長4cmで、液温5℃のγ−ブチロラクトン80重量%および水20重量%からなる冷却浴に、押出速度6.0m/min、製膜平均降温速度14250℃/minで吐出し、冷却浴中でゲル化させ、80℃の熱水浴中で1.5倍延伸し、中空糸膜を得た。この中空糸膜の膜構造は平均孔径0.6μm、空隙率60%、更に平均直径1.8μm、密度5x105/mm2の球状構造を有していた。

0148

(参考例2)
分子量35.8万のフッ化ビニリデンホモポリマー55重量%とプロピレンカーボネート45重量%を170℃ で溶解させて均一溶液を得た。このポリマー溶液を165℃で静置、脱泡後、吐出口温度160℃の中空糸成型用二重管状口金の外側の管から吐出し、更に二重管状口金の内側の管から、中空部に100重量%のプロピレンカーボネート注入液を注入した。乾式長0.5cmで、液温20℃のプロピレンカーボネート85重量%および水15重量%からなる冷却浴に、押出速度15.0m/min、製膜平均降温速度46500℃/minで吐出し、冷却浴中でゲル化させ、80℃の熱水浴中で1.8倍延伸し、中空糸膜を得た。この中空糸膜の膜構造は平均孔径0.65μm、空隙率43%、更に平均直径1.9μm、密度4x105/mm2の球状構造を有していた。

0149

(参考例3)
分子量44.4万のフッ化ビニリデンホモポリマー25重量%とγ−ブチロラクトン75重量%を130℃ で溶解させて結晶化温度57℃の均一溶液を得た。このポリマー溶液を110℃で静置、脱泡後、吐出口温度100℃の中空糸成型用二重管状口金の外側の管から吐出し、更に二重管状口金の内側の管から、中空部に100重量%のγ−ブチロラクトン注入液を注入した。乾式長10cmで、液温40℃のγ−ブチロラクトン80重量%および水20重量%からなる冷却浴に、押出速度4.0m/min、製膜平均降温速度1600℃/minで吐出し、冷却浴中でゲル化させ、80℃の熱水浴中で1.5倍延伸し、中空糸膜を得た。この中空糸膜の膜構造は平均孔径1.0μm、空隙率79%、更に平均直径4.3μm、密度2x103/mm2の球状構造を有していた。

0150

(実施例1)
親水性高分子として、ビニルピロリドン/プロパン酸ビニルランダム共重合体を用いた。

0151

親水性高分子(ビニルピロリドン/プロパン酸ビニルランダム共重合体)の水和エネルギー密度/水和エネルギー密度の最も大きいモノマー単位(ビニルピロリドン)の体積分率/ビニルピロリドンとプロパン酸ビニルとの水和エネルギー密度差=43.6/60/18であった。

0152

この親水性高分子を以下の方法で作製した。ビニルピロリドンモノマー19.5g、プロパン酸ビニルモノマー17.5g、重合溶媒としてt−アミルアルコール56g、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.175gを混合し、窒素雰囲気下、70℃にて6時間撹拌した。反応液を室温まで冷却して反応を停止し、濃縮後、ヘキサンに投入した。析出した白色沈殿物を回収し、減圧乾燥して、共重合体21.0gを得た。1H—NMRの結果から、ビニルピロリドンモノマー単位のモル分率は60%であることがわかった。また、GPCの測定結果から、数平均分子量Mnが16,500であった。

0153

作製したビニルピロリドン/プロパン酸ビニルランダム共重合体からなる親水性高分子1000ppmを溶解した1.0重量%エタノール水溶液に、参考例1で作製した中空糸膜を2時間浸漬させた後、25kGyのγ線を照射して中空糸膜にビニルピロリドン/プロパン酸ビニルランダム共重合体を導入した。

0154

得られた中空糸膜の広角X線回折法から算出した回折角度(2θ)が39±3°の範囲に含まれるγ晶の割合、XPSの測定結果(外表層部に対する、中央部、内表層部の酸素原子/フッ素原子)、製膜後(すなわち、熱水洗浄前)でのビニルピロリドン/プロパン酸ビニルランダム共重合体含有量、熱水洗浄前後でのビニルピロリドン/プロパン酸ビニルランダム共重合体含有量の変化、ビール処理量、ビール処理量回復率は表1、2に示すとおりであった。

0155

(実施例2)
ビニルピロリドン/プロパン酸ビニルランダム共重合体の代わりに、ビニルピロリドン/酢酸ビニルランダム共重合体(コリドンVA64;BASF社製、)を用いた以外は、実施例1と同様の方法でビニルピロリドン/酢酸ビニルランダム共重合体を含有する中空糸膜を作製した。

0156

モノマー単位の比は6/4であり、親水性高分子の水和エネルギー密度/水和エネルギー密度の最も大きいモノマー単位(ビニルピロリドン)の体積分率/ビニルピロリドンと酢酸ビニルとの水和エネルギー密度差は、45.2/60/14である。得られた中空糸膜のXPSの測定結果(外表層部に対する、中央部、内表層部の酸素原子/フッ素原子)、製膜後(すなわち、熱水洗浄前)でのビニルピロリドン/酢酸ビニルランダム共重合体含有量、熱水洗浄前後でのビニルピロリドン/酢酸ビニルランダム共重合体含有量の変化、ビール処理量、ビール処理量回復率は表1、2に示すとおりであった。

0157

(実施例3)
ビニルピロリドン/酢酸ビニルランダム共重合体(コリドンVA64;BASF社製、)を用いた0.2%のNaOH水溶液で加水分解を行い、ビニルピロリドン/ビニルアルコールランダム共重合体を得た。ビニルピロリドン/ビニルアルコールランダム共重合体を用いた以外は、実施例2と同様の方法で製膜を行い、表1、2の結果を得た。

0158

親水性高分子の水和エネルギー密度/水和エネルギー密度の最も大きいモノマー単位(ビニルピロリドン)の体積分率/ビニルピロリドンと酢酸ビニルとの水和エネルギー密度差は、61.3/60/5.0である。

0159

(実施例4)
中空糸膜として、参考例1の代わりに参考例2を用いた以外は、実施例2と同様の方法で親水性高分子の導入を行い、表1、2の結果を得た。

0160

(実施例5)
親水性高分子水溶液への浸漬時間を45分に変更した以外は、実施例2と同様の方法で親水性高分子の導入を行い、表1、2の結果を得た。

0161

(実施例6)
親水性高分子水溶液への浸漬時間を15分に変更した以外は、実施例5と同様の方法で親水性高分子の導入を行い、表1、2の結果を得た。

0162

(実施例7)
γ線照射による固定化を行わなかった以外は実施例2と同様の方法で親水性高分子の導入を行い、表1、2の結果を得た。

0163

(実施例8)
参考例1で作製した中空糸膜を、135℃の水蒸気で1時間熱処理後に、実施例2と同様の方法で親水性高分子の導入、表1、2の結果を得た。

0164

(実施例9)
参考例1で作製した中空糸膜を、125℃の水蒸気で1時間熱処理後に、実施例2と同様の方法で親水性高分子の導入を行い、表1、2の結果を得た。

0165

(実施例10)
参考例1で作製した中空糸膜を、80℃の水蒸気で1時間熱処理後に、実施例2と同様の方法で親水性高分子を導入し、表1、2の結果を得た。

0166

(実施例11)
参考例1で作製した中空糸膜を、40℃のオーブンで24時間乾燥後、さらに120℃のオーブンで2時間熱処理した後、実施例8と同様の方法で親水性高分子の導入を行い、表1、2の結果を得た。

0167

(実施例12)
参考例2で作製した中空糸膜を用いた以外は実施例9と同様の方法で親水性高分子の導入を行い、表1、2の結果を得た。

0168

(実施例13)
参考例2で作製した中空糸膜を用いた以外は実施例11と同様の方法で親水性高分子の導入を行い、表1、2の結果を得た。

0169

(実施例14)
参考例1で作製した中空糸膜を、150℃の水蒸気で1時間熱処理した後、実施例2と同様の方法で親水性高分子の導入を行い、表1、2の結果を得た。
(実施例15)
実施例2と同様の方法で得られた膜を125℃の水蒸気で1時間熱処理を行い、表1,2の結果得た。
(実施例16)
中空糸膜として、参考例1の代わりに参考例3を用いた以外は、実施例2と同様の方法で親水性高分子の導入を行い、表1、2の結果を得た。

0170

(比較例1)
中空糸膜として参考例1を用い、親水性高分子を導入しない状態での、ビール処理量、ビール処理量回復率の測定を行い、表1、2の結果を得た。

0171

(比較例2)
親水性高分子として、ポリビニルピロリドン(PVP K30;BASF社製)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で製膜を行い、表1、2の結果を得た。なお、親水性高分子の水和エネルギー密度/ビニルピロリドンの体積分率/水和エネルギー密度差は、51.0/100/0である。

0172

(比較例3)
実施例1と同様の方法で、ビニルピロリドン/酪酸ビニルランダム共重合体を合成した。ただし、親水性高分子の水和エネルギー密度/エネルギー密度の最も大きいモノマー単位(ビニルピロリドン)の体積分率/ビニルピロリドンと酪酸ビニルとの水和エネルギー密度差=39.3/50/23とした。

0173

親水性高分子として、このビニルピロリドン/酪酸ビニルランダム共重合体を用いた以外は、実施例1と同様の方法でビニルピロリドン/酪酸ビニルランダム共重合体を含有する中空糸膜を作製した。得られた中空糸膜のXPSの測定結果(外表層部に対する、中央部、内表層部の酸素原子/フッ素原子)、製膜後(すなわち、熱水洗浄前)でのビニルピロリドン/酪酸ビニルランダム共重合体含有量、熱水洗浄前後でのビニルピロリドン/酪酸ビニルランダム共重合体含有量の変化、ビール処理量、ビール処理量回復率は表1、2に示すとおりであった。

0174

(参考例4)
参考例1で作製した中空糸膜を、125℃の水蒸気で熱処理を行い、表1、2の結果を得た。

0175

実施例

0176

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