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課題

接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板を用いているにも拘わらず、当該接合境界部を有効に利用した、新規積層体を提供する。

解決手段

接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板の上に、少なくとも半導体ドリフト層が積層された積層体であって、 前記単結晶ダイヤモンド基板の前記接合境界部は、レーザ励起波長785nmでのラマンスペクトルにおいて、ダイヤモンドに起因する1332cm-1付近ピーク半値全幅が、前記接合境界部とは異なる部分でのピーク半値全幅よりも広がって観察される部分であり、 前記接合境界部の幅が200μm以上であり、 少なくとも前記接合境界部の上に、前記半導体ドリフト層が積層されている、積層体。

概要

背景

半導体として優れた特性を有するダイヤモンドは、高出力パワーデバイス高周波デバイス受光デバイスなど半導体デバイス用の材料として期待されている。特に、ダイヤモンドを半導体材料として実用化するためには、大面積且つ均質単結晶ダイヤモンドからなるウェハが必要である。

従来、単結晶ダイヤモンドの成長は、主に高圧合成法気相合成法などの方法によって 行われている。これらの方法の内で、高圧合成法は、1cm角程度の面積を有する基板の製造が限界とされており、これ以上の面積を有する単結晶基板を製造する方法としては期待できない。また、10mm角程度以上の面積を有する単結晶ダイヤモンド基板入手することは困難であり、その面積を拡大することも容易ではない。また、気相合成法による単結晶ダイヤモンドは、これまで報告された最大の大きさは13mm角程度であり(下記非特許文献1参照)、一般に入手できる最大の大きさも8mm角程度にとどまる。

一方、気相合成法により、異種基板上にダイヤモンドを成長するヘテロエピタキシャル成長法により、1インチの単結晶ダイヤモンドが実現されている(下記非特許文献2参照)。しかしながら、この方法で成長したダイヤモンドは、単結晶基板上に成長したダイヤモンドに比べ、結晶性が著しく劣るという問題がある。

このため、大面積の単結晶ダイヤモンドを作製する方法として、同一表面上に並べた複数の高温高圧合成ダイヤモンド単結晶上に、気相合成法によりダイヤモンド結晶を成長させて接合することによって、大型のダイヤモンド結晶とする、いわゆるモザイク状ダイヤモンドの作製技術が開発されている(下記特許文献1参照)。

しかしながら、上記の方法では、大型のモザイク状ダイヤモンド基板を1枚作製するために多数の高温高圧合成基板が必要となり、また、基板を再利用するためには、レーザ切断などの方法により成長層を基板から分離する必要がある。この場合、特に10mmを超える大型の基板をレーザ切断によって分離する場合、切断にかなりの時間を要するとともに、損失も大きくなる上、ダイヤモンド結晶が破壊される危険性がある。

このような問題を解決する方法として、上記と同様な方法でモザイク状ダイヤモンド基板を作製した後、該基板にイオン注入し、その後、ダイヤモンドを成長させて、ダイヤモンド成長層をモザイク状ダイヤモンド基板から分離して、モザイク状ダイヤモンドを製造する方法が提案されている(下記特許文献2参照)。この方法によれば、モザイク状ダイヤモンド基板に対してイオン注入とダイヤモンドの成長を繰り返すことによって、モザイク状ダイヤモンドを複製することが可能であるが、種結晶となる複数のダイヤモンド上にダイヤモンドを成長させて接合しモザイク状ダイヤモンドを作成した後、イオン注入する前に、成長したダイヤモンドの表面を研磨して平滑な面を形成する必要がある。しかしながら、ダイヤモンドの精密加工は非常に難しいため、接合した基板の面積が増大するに伴い、多大な作業時間を必要とする上に、研磨の際にダイヤモンド結晶が破壊される危険性がある。

このような問題を解決する方法として、例えば、特許文献3には、複数のダイヤモンド単結晶基板に対してイオン注入を行って該ダイヤモンド単結晶基板の表面近傍非ダイヤモンド層を形成し、該ダイヤモンド単結晶基板はイオン注入前又はイオン注入後平坦支持台上でモザイク状に並べた状態とされ、モザイク状に並べたイオン注入後のダイヤモンド単結晶基板表面に気相合成法で単結晶ダイヤモンド層を成長させてダイヤモンド単結晶基板を接合した後、該非ダイヤモンド層をエッチングして、該非ダイヤモンド層より上層の単結晶ダイヤモンド層を分離することを特徴とする、モザイク状ダイヤモンドの製造方法が開示されている。この方法によれば、従来法と比較してより簡単な製造方法によって、ダイヤモンド単結晶基板の破壊を回避して、歩留まりよく大量のモザイク状ダイヤモンドを効率よく製造することができる。

概要

接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板を用いているにも拘わらず、当該接合境界部を有効に利用した、新規積層体を提供する。 接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板の上に、少なくとも半導体ドリフト層が積層された積層体であって、 前記単結晶ダイヤモンド基板の前記接合境界部は、レーザ励起波長785nmでのラマンスペクトルにおいて、ダイヤモンドに起因する1332cm-1付近ピーク半値全幅が、前記接合境界部とは異なる部分でのピーク半値全幅よりも広がって観察される部分であり、 前記接合境界部の幅が200μm以上であり、 少なくとも前記接合境界部の上に、前記半導体ドリフト層が積層されている、積層体。なし

目的

本発明は、接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板を用いているにも拘わらず、当該接合境界部を有効に利用した、新規な積層体を提供する

効果

実績

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請求項1

接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板の上に、少なくとも半導体ドリフト層が積層された積層体であって、前記単結晶ダイヤモンド基板の前記接合境界部は、レーザ励起波長785nmでのラマンスペクトルにおいて、ダイヤモンドに起因する1332cm-1付近ピーク半値全幅が、前記接合境界部とは異なる部分でのピーク半値全幅よりも広がって観察される部分であり、前記接合境界部の幅が200μm以上であり、少なくとも前記接合境界部の上に、前記半導体ドリフト層が積層されている、積層体。

請求項2

前記接合境界部の上に、P+導電層と前記半導体ドリフト層とがこの順に積層されている、請求項1に記載の積層体。

請求項3

前記半導体ドリフト層の上に、さらに電極が積層されている、請求項2に記載の積層体。

請求項4

請求項1〜3のいずれかに記載の積層体を有する、パワー半導体デバイス

請求項5

接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板を用意する工程と、前記単結晶ダイヤモンド基板の少なくとも前記接合境界部の上に、半導体ドリフト層を積層する工程と、を備えており、前記単結晶ダイヤモンド基板の前記接合境界部は、レーザ励起波長785nmでのラマンスペクトルにおいて、ダイヤモンドに起因する1332cm-1付近のピークの半値全幅が、前記接合境界部とは異なる部分でのピーク半値全幅よりも広がって観察される部分であり、前記接合境界部の幅が200μm以上である、積層体の製造方法。

請求項6

接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板の少なくとも前記接合境界部上に、P+導電層が積層された積層体Aを用意する工程と、前記P+導電層の上に、さらに半導体ドリフト層を積層する工程と、を備えおり、前記単結晶ダイヤモンド基板の前記接合境界部は、レーザ励起波長785nmでのラマンスペクトルにおいて、ダイヤモンドに起因する1332cm-1付近のピークの半値全幅が、前記接合境界部とは異なる部分でのピーク半値全幅よりも広がって観察される部分であり、前記接合境界部の幅が200μm以上である、積層体の製造方法。

請求項7

接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板の前記接合境界部の上に、P+導電層と、半導体ドリフト層とがこの順に積層された積層体Bを用意する工程と、前記半導体ドリフト層の上に、さらに電極を積層する工程と、を備えており、前記単結晶ダイヤモンド基板の前記接合境界部は、レーザ励起波長785nmでのラマンスペクトルにおいて、ダイヤモンドに起因する1332cm-1付近のピークの半値全幅が、前記接合境界部とは異なる部分でのピーク半値全幅よりも広がって観察される部分であり、前記接合境界部の幅が200μm以上である、積層体の製造方法。

請求項8

接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板の少なくとも前記接合境界部の上に、P+導電層と、半導体ドリフト層と、電極とがこの順に積層された積層体Cを用意する工程と、前記積層体Cを積層方向に切断する工程と、を備えており、前記単結晶ダイヤモンド基板の前記接合境界部は、レーザ励起波長785nmでのラマンスペクトルにおいて、ダイヤモンドに起因する1332cm-1付近のピークの半値全幅が、前記接合境界部とは異なる部分でのピーク半値全幅よりも広がって観察される部分であり、前記接合境界部の幅が200μm以上である、ダイヤモンド半導体素子の製造方法。

請求項9

接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板を用意する工程と、前記単結晶ダイヤモンド基板の表面を研磨する工程と、を備えており、前記単結晶ダイヤモンド基板の前記接合境界部は、レーザ励起波長785nmでのラマンスペクトルにおいて、ダイヤモンドに起因する1332cm-1付近のピークの半値全幅が、前記接合境界部とは異なる部分でのピーク半値全幅よりも広がって観察される部分であり、前記接合境界部の幅が200μm以上である、ダイヤモンド半導体素子の製造に用いるための単結晶ダイヤモンド基板の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、単結晶ダイヤモンド基板を含む積層体に関する。より具体的には、本発明は、単結晶ダイヤモンド基板の上に、少なくとも半導体ドリフト層が積層された積層体、当該積層体の製造方法、当該積層体を利用したダイヤモンド半導体素子の製造方法、及び当該積層体を利用したパワー半導体デバイスに関する。

背景技術

0002

半導体として優れた特性を有するダイヤモンドは、高出力パワーデバイス高周波デバイス受光デバイスなど半導体デバイス用の材料として期待されている。特に、ダイヤモンドを半導体材料として実用化するためには、大面積且つ均質単結晶ダイヤモンドからなるウェハが必要である。

0003

従来、単結晶ダイヤモンドの成長は、主に高圧合成法気相合成法などの方法によって 行われている。これらの方法の内で、高圧合成法は、1cm角程度の面積を有する基板の製造が限界とされており、これ以上の面積を有する単結晶基板を製造する方法としては期待できない。また、10mm角程度以上の面積を有する単結晶ダイヤモンド基板を入手することは困難であり、その面積を拡大することも容易ではない。また、気相合成法による単結晶ダイヤモンドは、これまで報告された最大の大きさは13mm角程度であり(下記非特許文献1参照)、一般に入手できる最大の大きさも8mm角程度にとどまる。

0004

一方、気相合成法により、異種基板上にダイヤモンドを成長するヘテロエピタキシャル成長法により、1インチの単結晶ダイヤモンドが実現されている(下記非特許文献2参照)。しかしながら、この方法で成長したダイヤモンドは、単結晶基板上に成長したダイヤモンドに比べ、結晶性が著しく劣るという問題がある。

0005

このため、大面積の単結晶ダイヤモンドを作製する方法として、同一表面上に並べた複数の高温高圧合成ダイヤモンド単結晶上に、気相合成法によりダイヤモンド結晶を成長させて接合することによって、大型のダイヤモンド結晶とする、いわゆるモザイク状ダイヤモンドの作製技術が開発されている(下記特許文献1参照)。

0006

しかしながら、上記の方法では、大型のモザイク状ダイヤモンド基板を1枚作製するために多数の高温高圧合成基板が必要となり、また、基板を再利用するためには、レーザ切断などの方法により成長層を基板から分離する必要がある。この場合、特に10mmを超える大型の基板をレーザ切断によって分離する場合、切断にかなりの時間を要するとともに、損失も大きくなる上、ダイヤモンド結晶が破壊される危険性がある。

0007

このような問題を解決する方法として、上記と同様な方法でモザイク状ダイヤモンド基板を作製した後、該基板にイオン注入し、その後、ダイヤモンドを成長させて、ダイヤモンド成長層をモザイク状ダイヤモンド基板から分離して、モザイク状ダイヤモンドを製造する方法が提案されている(下記特許文献2参照)。この方法によれば、モザイク状ダイヤモンド基板に対してイオン注入とダイヤモンドの成長を繰り返すことによって、モザイク状ダイヤモンドを複製することが可能であるが、種結晶となる複数のダイヤモンド上にダイヤモンドを成長させて接合しモザイク状ダイヤモンドを作成した後、イオン注入する前に、成長したダイヤモンドの表面を研磨して平滑な面を形成する必要がある。しかしながら、ダイヤモンドの精密加工は非常に難しいため、接合した基板の面積が増大するに伴い、多大な作業時間を必要とする上に、研磨の際にダイヤモンド結晶が破壊される危険性がある。

0008

このような問題を解決する方法として、例えば、特許文献3には、複数のダイヤモンド単結晶基板に対してイオン注入を行って該ダイヤモンド単結晶基板の表面近傍非ダイヤモンド層を形成し、該ダイヤモンド単結晶基板はイオン注入前又はイオン注入後平坦支持台上でモザイク状に並べた状態とされ、モザイク状に並べたイオン注入後のダイヤモンド単結晶基板表面に気相合成法で単結晶ダイヤモンド層を成長させてダイヤモンド単結晶基板を接合した後、該非ダイヤモンド層をエッチングして、該非ダイヤモンド層より上層の単結晶ダイヤモンド層を分離することを特徴とする、モザイク状ダイヤモンドの製造方法が開示されている。この方法によれば、従来法と比較してより簡単な製造方法によって、ダイヤモンド単結晶基板の破壊を回避して、歩留まりよく大量のモザイク状ダイヤモンドを効率よく製造することができる。

0009

特開平7—48198号公報
特表2009−502705号公報
特許第5621994号

先行技術

0010

Y.Mokuno, A.Chayahara, H.Yamada, and N.Tsubouchi, Diamond and Related Materials 18, 1258 (2009).
前田、渡辺、安、鈴木、澤邊、第19回ダイヤモンドシンポジウム講演要旨集、50 (2005).

発明が解決しようとする課題

0011

前述の通り、例えば特許文献3に開示された方法によれば、従来法と比較してより簡単な製造方法によって、ダイヤモンド単結晶基板の破壊を回避して、歩留まりよく大量のモザイク状ダイヤモンドを効率よく製造することができる。

0012

しかしながら、モザイク状ダイヤモンドには、複数のダイヤモンド単結晶基板の境界部分に対応する位置に、接合境界部が形成される。モザイク状ダイヤモンドの接合境界部には、結晶方位不連続性により、多数の欠陥が含まれている。このため、モザイク状ダイヤモンドの半導体素子、さらにはパワー半導体デバイスへの利用には、依然として大きな制約があると考えられている。

0013

モザイク状ダイヤモンドを半導体素子に利用する方法としては、例えば、モザイク状ダイヤモンドの接合境界部をデバイスとして利用せずに、ダイシングラインとすることが考えられる。しかしながら、接合境界部をダイシングラインとすると、大面積のモザイク状ダイヤモンドの利点が損なわれ、また、新たなプロセス制約となるという問題がある。

0014

このような状況下、本発明は、接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板を用いているにも拘わらず、当該接合境界部を有効に利用した、新規な積層体を提供することを主な目的とする。さらに、本発明は、当該積層体を利用したパワー半導体デバイス、当該積層体の製造方法、ダイヤモンド半導体素子の製造方法、ダイヤモンド半導体素子の製造に用いるための単結晶ダイヤモンド基板の製造方法を提供することも目的とする。

課題を解決するための手段

0015

本発明者らは、上記のような課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板の上に、少なくとも半導体ドリフト層が積層された積層体であって、単結晶ダイヤモンド基板の接合境界部は、レーザ励起波長785nmでのラマンスペクトルにおいて、ダイヤモンドに起因する1332cm-1付近ピーク半値全幅が、前記接合境界部とは異なる部分でのピーク半値全幅よりも広がって観察される部分であり、接合境界部の幅が200μm以上であり、少なくとも接合境界部の上に、半導体ドリフト層が積層されている積層体は、接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板を用いているにも拘わらず、当該接合境界部上に半導体ドリフト層が形成され、接合境界部を有効に利用できることを見出した。本発明は、このような知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成された発明である。

0016

すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1.接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板の上に、少なくとも半導体ドリフト層が積層された積層体であって、
前記単結晶ダイヤモンド基板の前記接合境界部は、レーザ励起波長785nmでのラマンスペクトルにおいて、ダイヤモンドに起因する1332cm-1付近のピークの半値全幅が、前記接合境界部とは異なる部分でのピーク半値全幅よりも広がって観察される部分であり、
前記接合境界部の幅が200μm以上であり、
少なくとも前記接合境界部の上に、前記半導体ドリフト層が積層されている、積層体。
項2. 前記接合境界部の上に、P+導電層と前記半導体ドリフト層とがこの順に積層されている、項1に記載の積層体。
項3. 前記半導体ドリフト層の上に、さらに電極が積層されている、項2に記載の積層体。
項4. 項1〜3のいずれかに記載の積層体を有する、パワー半導体デバイス。
項5. 接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板を用意する工程と、
前記単結晶ダイヤモンド基板の少なくとも前記接合境界部の上に、半導体ドリフト層を積層する工程と、
を備えており、
前記単結晶ダイヤモンド基板の前記接合境界部は、レーザ励起波長785nmでのラマンスペクトルにおいて、ダイヤモンドに起因する1332cm-1付近のピークの半値全幅が、前記接合境界部とは異なる部分でのピーク半値全幅よりも広がって観察される部分であり、
前記接合境界部の幅が200μm以上である、積層体の製造方法。
項6. 接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板の少なくとも前記接合境界部上に、P+導電層が積層された積層体Aを用意する工程と、
前記P+導電層の上に、さらに半導体ドリフト層を積層する工程と、
を備えおり、
前記単結晶ダイヤモンド基板の前記接合境界部は、レーザ励起波長785nmでのラマンスペクトルにおいて、ダイヤモンドに起因する1332cm-1付近のピークの半値全幅が、前記接合境界部とは異なる部分でのピーク半値全幅よりも広がって観察される部分であり、
前記接合境界部の幅が200μm以上である、積層体の製造方法。
項7. 接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板の前記接合境界部の上に、P+導電層と、半導体ドリフト層とがこの順に積層された積層体Bを用意する工程と、
前記半導体ドリフト層の上に、さらに電極を積層する工程と、
を備えており、
前記単結晶ダイヤモンド基板の前記接合境界部は、レーザ励起波長785nmでのラマンスペクトルにおいて、ダイヤモンドに起因する1332cm-1付近のピークの半値全幅が、前記接合境界部とは異なる部分でのピーク半値全幅よりも広がって観察される部分であり、
前記接合境界部の幅が200μm以上である、積層体の製造方法。
項8. 接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板の少なくとも前記接合境界部の上に、P+導電層と、半導体ドリフト層と、電極とがこの順に積層された積層体Cを用意する工程と、
前記積層体Cを積層方向に切断する工程と、
を備えており、
前記単結晶ダイヤモンド基板の前記接合境界部は、レーザ励起波長785nmでのラマンスペクトルにおいて、ダイヤモンドに起因する1332cm-1付近のピークの半値全幅が、前記接合境界部とは異なる部分でのピーク半値全幅よりも広がって観察される部分であり、
前記接合境界部の幅が200μm以上である、ダイヤモンド半導体素子の製造方法。
項9. 接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板を用意する工程と、
前記単結晶ダイヤモンド基板の表面を研磨する工程と、
を備えており、
前記単結晶ダイヤモンド基板の前記接合境界部は、レーザ励起波長785nmでのラマンスペクトルにおいて、ダイヤモンドに起因する1332cm-1付近のピークの半値全幅が、前記接合境界部とは異なる部分でのピーク半値全幅よりも広がって観察される部分であり、
前記接合境界部の幅が200μm以上である、ダイヤモンド半導体素子の製造に用いるための単結晶ダイヤモンド基板の製造方法。

発明の効果

0017

本発明によれば、接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板を用いているにも拘わらず、当該接合境界部を有効に利用した、新規な積層体を提供することができる。さらに、本発明によれば、当該積層体を利用したパワー半導体デバイス、当該積層体の製造方法、ダイヤモンド半導体素子の製造方法、ダイヤモンド半導体素子の製造に用いるための単結晶ダイヤモンド基板の製造方法を提供することもできる。

図面の簡単な説明

0018

接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板を製造する方法の一例(第一方法)の製造工程を示す模式図である。
単結晶ダイヤモンド基板の側面及びエッジ形状と成長したダイヤモンド層の状態を示す模式図である。
接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板を製造する方法の一例(第二方法)の製造工程を示す模式図である。
実施例における接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板(モザイク状ダイヤモンド)のプロセスフローを示す図である。
実施例において、単結晶ダイヤモンド基板(モザイク状ダイヤモンド)の接合境界部上と、接合境界部外で測定したラマンスペクトルを示すグラフである(左側がλ=532nm、右側がλ=785nm)。
実施例において、単結晶ダイヤモンド基板(モザイク状ダイヤモンド)の接合境界部の中心部付近での2Dラマンマッピング測定を行った結果を示す図である(なお、図6(a)は、ラマンシフトマッピング図6(b)はFWHMマッピングである)。
実施例の単結晶ダイヤモンド基板のカソードルミネッセンススペクトルである(接合境界部上と外)。
実施例の単結晶ダイヤモンド基板のBand−A発光のカソードルミネッセンススペクトルマッピング像である(接合境界部上と外)。
実施例において、単結晶ダイヤモンド基板の上に、p+導電層およびp−ドリフト層を積層した積層体(疑似縦型ショットキーバリアダイオード(pVSBD)用積層ダイヤモンド)の模式図である。
実施例において、単結晶ダイヤモンド基板の上に、p+導電層およびp−ドリフト層を積層した積層体(疑似縦型ショットキーバリアダイオード(pVSBD)用積層ダイヤモンド)のデバイスマップである。
実施例において、単結晶ダイヤモンド基板の上に、p+導電層およびp−ドリフト層を積層した積層体(疑似縦型ショットキーバリアダイオード(pVSBD)用積層ダイヤモンド)のデバイスマップ(各モザイク部の中央部でのデバイスマップの拡大図)である。
実施例において、単結晶ダイヤモンド基板の上に、p+導電層およびp−ドリフト層を積層した積層体(疑似縦型ショットキーバリアダイオード(pVSBD)用積層ダイヤモンド)のデバイス構造である。
実施例において、接合境界部上に形成したショットキーデバイスI−V特性を示すグラフである。
実施例におけるMurphy’s plot解析用ショットキー電極光学顕微鏡像である。
実施例におけるMurphy’s plotである。
実施例における接合境界部上の電極を除く解析結果である(接合境界部外ショットキーバリアダイオードの理想因子(n)障壁高さ (ΦB)プロット。接合境界部上の電極を除くArea−A〜Dの領域での評価結果)。
実施例における接合境界部上でのn−ΦBプロットである(接合境界部上のショットキーバリアダイオードの理想因子 (n) 障壁高さ (ΦB) プロット。ラマンマッピング像(右図)に示す黒丸電極を境界上と位置付けて解析した))。

0019

1.積層体
本発明の積層体は、接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板の上に、少なくとも半導体ドリフト層が積層された積層体であって、単結晶ダイヤモンド基板の接合境界部は、レーザ励起波長785nmでのラマンスペクトルにおいて、ダイヤモンドに起因する1332cm-1付近のピークの半値全幅が、接合境界部とは異なる部分でのピーク半値全幅よりも広がって観察される部分であり、当該接合境界部の幅が200μm以上であり、少なくとも当該接合境界部の上に、半導体ドリフト層が積層されていることを特徴としている。本発明の積層体は、単結晶ダイヤモンド基板にこのような特定の接合境界部を有しており、当該接合境界部上に半導体ドリフト層が形成され、接合境界部を有効に利用することができる。

0020

前述の通り、例えば特許文献3に開示されたような、モザイク状ダイヤモンドの製造方法によれば、ダイヤモンド単結晶基板の破壊を回避して、歩留まりよく大量のモザイク状ダイヤモンドを効率よく製造することができる。しかしながら、得られるモザイク状ダイヤモンドには、複数のダイヤモンド単結晶基板の境界部分に対応する位置に、接合境界部が形成される。モザイク状ダイヤモンドの接合境界部には、結晶方位の不連続性により、多数の欠陥が含まれている。このため、モザイク状ダイヤモンドの半導体素子への利用には大きな制約があると考えられている。

0021

これに対して、本発明者らが検討した結果、例えば特許文献3、さらには、「Yamada et al., Diamond Relat. Mater. 24 (2012) 29」の論文の方法や、特許第4849691号、国際公開2011/074599A1、特開2015−67516号公報、特開2015−67517号公報などの技術で採用されている、モザイク状ダイヤモンド(単結晶ダイヤモンド基板)の製造方法のように、接合境界部に空隙が存在しないようにしてモザイク状ダイヤモンドを製造する手法(以下、「接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板を製造する手法」ということがある)によって、前述の所定の接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板を製造することができ、さらに、当該単結晶ダイヤモンド基板の接合境界部の上に半導体ドリフト層を設けることにより、得られた積層体は、ダイヤモンド半導体素子、パワー半導体デバイスなどとして好適に利用することが可能となることが見出された。以下、本発明の積層体について、詳述する。

0022

本発明の積層体は、単結晶ダイヤモンド基板の上に、少なくとも半導体ドリフト層が積層された積層体である。単結晶ダイヤモンド基板は、接合境界部を有する。接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板の詳細の一例については、「接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板の製造方法」の欄で後述する。

0023

本発明において、単結晶ダイヤモンド基板の接合境界部とは、レーザ励起波長785nmでのラマンスペクトルにおいて、ダイヤモンドに起因する1332cm-1付近のピークの半値全幅が、接合境界部とは異なる部分でのピーク半値全幅よりも広がって観察される部分を意味する。具体的には、前述の「接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板を製造する手法」により、複数のダイヤモンド単結晶基板を接合してモザイク状ダイヤモンド(単結晶ダイヤモンド基板)を製造すると、複数のダイヤモンド単結晶基板の接合部分には、接合境界部が形成される。当該接合境界部は、接合境界部とは異なる部分(例えば、ダイヤモンド単結晶基板の中心部)に比して、結晶性が低下していることから、レーザ励起波長785nmでのラマンスペクトルにおいて、ダイヤモンドに起因する1332cm-1付近のピークの半値全幅が、接合境界部とは異なる部分でのピーク半値全幅に比して、広がって観察される。本発明において、単結晶ダイヤモンド基板には、幅(すなわち、単結晶ダイヤモンド基板の厚み方向とは垂直方向最大長さ)が200μm以上の接合境界部が含まれている。

0024

本発明の積層体において、幅が200μm以上の接合境界部が含まれているが、当該接合境界物の幅は、例えば300μm以上であってもよい。ただし、当該接合境界部の幅は、1000μm以下であることが好ましく、800μm以下であることがより好ましい。なお、本発明の積層体においては、幅が200μm以上の接合境界部の上に、後述の半導体ドリフト層が積層されていればよく(すなわち、単結晶ダイヤモンド基板には、少なくとも一部に、幅が200μm以上の接合境界部が存在しており、かつ、当該接合境界部の上に、半導体ドリフト層が積層されている)、本発明の積層体において、全ての接合境界部の幅が200μm以上である必要はなく、幅が200μm未満の接合境界部が含まれていてもよい。本発明においては、幅が200μm未満の接合境界部の上に、後述の半導体ドリフト層が積層されていてもよいし、接合境界部外に後述の半導体ドリフト層が積層されていてもよい。本発明の積層体においては、単結晶ダイヤモンド基板の一方側の主面の全面に半導体ドリフト層が積層されていることが好ましい。接合境界部の幅は、ラマンマッピングにより測定することができる(実施例を参照)。

0025

当該接合境界部は、通常、例えば平板状のダイヤモンド単結晶基板を複数接合することで形成され、2つの平板状のダイヤモンド単結晶基板が接合している接合境界部よりも、3つ又は4つの平板状のダイヤモンド単結晶基板が接合している接合境界部の方が、接合境界部の幅は大きくなる。

0026

半導体ドリフト層としては、特に制限されず、公知の半導体素子(特に、ダイヤモンド半導体素子)に設けられる公知の半導体ドリフト層が挙げられ、例えば、ダイヤモンド半導体ドリフト層が挙げられる。半導体ドリフト層の具体例としては、ホウ素をドープしたダイヤモンド半導体ドリフト層(p(ドリフト層)などが挙げられる。

0027

ホウ素をドープしたダイヤモンド半導体ドリフト層において、ホウ素濃度としては、特に制限されないが、下限については、例えば、1×1015cm3以上、好ましくは1×1016cm3以上が挙げられ、上限については、例えば、1×1019cm3以下、好ましくは1×1018cm3以下が挙げられる。

0028

また、半導体ドリフト層の厚みとしては、特に制限されず、例えば、1〜100μm程度、好ましくは5〜20μm程度が挙げられる。また、半導体ドリフト層は、単層であってもよいし、複層であってもよい。また、半導体ドリフト層が複層である場合、各層は異なる素材によって構成されていてもよい。

0029

半導体ドリフト層の形成方法としては、特に制限されず、化学気相成長CVD)などの公知の半導体ドリフト層の形成方法を採用することができる。

0030

また、本発明の積層体において、単結晶ダイヤモンド基板の接合境界部と、半導体ドリフト層との間には、P+導電層などを設けることができる。この場合、本発明の積層体において、接合境界部の上に、P+導電層と半導体ドリフト層とがこの順に積層されている。なお、本発明の積層体において、P+導電層を有する場合、通常、接合境界部とは異なる部分と、半導体ドリフト層との間にも、当該P+導電層が積層されている。

0031

P+導電層としては、公知の半導体素子(特に、ダイヤモンド半導体素子)に設けられる公知のP+導電層が挙げられ、例えば、ダイヤモンドP+導電層が挙げられる。P+導電層の具体例としては、ホウ素をドープしたダイヤモンドP+導電層などが挙げられる。

0032

ホウ素をドープしたダイヤモンドP+導電層において、ホウ素濃度としては、特に制限されないが、下限については、例えば、1×1019cm3以上、好ましくは1×1020cm3以上が挙げられ、上限については、例えば、1×1022cm3以下、好ましくは1×1021cm3以下が挙げられる。

0033

また、P+導電層の比抵抗としては、上限については、例えば、10mΩcm以下、好ましくは5mΩcm以下が挙げられ、下限については、例えば1mΩcmが挙げられる。

0034

また、P+導電層の厚みとしては、特に制限されず、例えば、1〜100μm程度、好ましくは3〜20μm程度が挙げられる。また、P+導電層は、単層であってもよいし、複層であってもよい。また、P+導電層が複層である場合、各層は異なる素材によって構成されていてもよい。

0035

さらに、本発明の積層体においては、半導体ドリフト層の上に、さらに電極が積層されていてもよい。電極を設けることにより、積層体の電極を含む部分をダイヤモンド半導体素子として好適に用いることができる。なお、本発明の積層体において、電極が積層されている場合、幅が200μm以上の接合境界部の上だけでなく、幅が200μm未満の接合境界部の上や、接合境界部外の上においても、電極が積層されていてもよい。電極は、ダイヤモンド半導体素子、さらにはパワーデバイスの構造や用途などに適合したパターン状に形成される。

0036

電極は、通常、金属により構成されている。金属の種類、電極の大きさ、厚み、構造などは、本発明の積層体を用いるダイヤモンド半導体素子、さらにはパワーデバイスの構造や用途などに応じて適宜設計される。

0037

電極を構成する金属としては、例えば、モリブデン、金、チタンタングステンなどが挙げられ、これらのうち少なくとも1種を含む合金なども用いることができる。

0038

また、電極の厚みとしては、特に制限されず、例えば、0.001〜1μm程度、好ましくは0.01〜0.05μm程度が挙げられる。また、電極は、単層であってもよいし、複層であってもよい。また、電極が複層である場合、各層は異なる素材によって構成されていてもよい。

0039

(接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板の製造方法)
本発明において、前記所定の接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板は、前述の通り、前述の「接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板を製造する手法」によって製造することができる。以下、当該手法の一例として、特許文献3に開示された方法を説明する。なお、以下の方法は、接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板の製造方法の一例であって、本発明においては、前記所定の接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板を備えていればよい。ただし、当該単結晶ダイヤモンド基板は、接合境界部に空隙(すなわち、単結晶ダイヤモンドが存在していない部分)を有していない。

0040

なお、前記所定の接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板は、前述の「接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板を製造する手法」によって製造することができるが、このような方法によって得られた単結晶ダイヤモンド基板を、ダイヤモンド半導体素子の製造に用いるためには、接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板を用意した後、単結晶ダイヤモンド基板の表面を研磨することが好ましい。従来の「接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板を製造する手法」では、得られた単結晶ダイヤモンド基板について、接合境界部の上に半導体ドリフト層などを積層してダイヤモンド半導体素子として利用することが想定されていないため、単結晶ダイヤモンド基板の表面を研磨することも想定されていない。しかしながら、本発明においては、接合境界部の上に半導体ドリフト層などを積層してダイヤモンド半導体素子として利用するためには、単結晶ダイヤモンド基板の表面が研磨されていることが好ましい。

0041

特許文献3に開示された方法は、複数のダイヤモンド単結晶基板に対してイオン注入を行って該ダイヤモンド単結晶基板の表面近傍に非ダイヤモンド層を形成し、該ダイヤモンド単結晶基板はイオン注入前又はイオン注入後に平坦な支持台上でモザイク状に並べた状態とされ、モザイク状に並べたイオン注入後のダイヤモンド単結晶基板表面に気相合成法で単結晶ダイヤモンド層を成長させてダイヤモンド単結晶基板を接合した後、該非ダイヤモンド層をエッチングして、該非ダイヤモンド層より上層の単結晶ダイヤモンド層を分離することを特徴とする、モザイク状ダイヤモンドの製造方法である。この方法のより具体的な方法としては、以下の第一方法、第二方法、第三方法が挙げられる。

0042

(1)第一方法:
接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板の製造方法の一例について、図1にその概念図を示す。図1に示す方法では、まず、種基板となる複数のダイヤモンド単結晶基板に対してイオン注入を行って、該ダイヤモンド単結晶基板の表面近傍に非ダイヤモンド層を形成する。種基板となるダイヤモンド単結晶基板は、イオン注入前又はイオン注入後に平坦な支持台上でモザイク状に並べた状態とされる。この様にしてモザイク状に並べたイオン注入後のダイヤモンド単結晶基板表面に気相合成法で単結晶ダイヤモンド層を成長させてダイヤモンド単結晶基板を接合した後、該非ダイヤモンド層をエッチングして、該非ダイヤモンド層より上層の単結晶ダイヤモンド層を分離することによって、接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板(モザイク状ダイヤモンド)を作製する(以下、この方法を「第一方法」という)。以下、第一方法の各工程について具体的に説明する。

0043

(i)イオン注入工程
第一方法では、まず、種基板となる複数のダイヤモンド単結晶基板に対してイオン注入を行って、該基板の表面近傍に結晶構造変質したイオン注入層を形成する。

0044

イオン注入法は、試料高速イオン照射する方法であり、一般的には所望の元素イオン化して取り出し、これに電圧印加して電界により加速した後、質量分離して所定のエネルギーを持ったイオンを試料に照射することにより行うが、プラズマの中に試料を浸漬し、試料に負の高電圧パルスを加えることによりプラズマ中の正イオン誘引するプラズマイオン注入法により行ってもよい。注入イオンとしては、例えば炭素酸素アルゴンヘリウムプロトンなどを用いることができる。

0045

イオンの注入エネルギーは、一般的なイオン注入で用いられる10 keV〜10 MeV程度の範囲でよい。注入イオンは、イオンの種類とエネルギー、およびイオン注入される材料の種類によって決まる注入深さ(飛程)を中心に一定の幅を持って分布する。試料の損傷はイオンが停止する飛程近傍が最大になるが、飛程近傍より表面側でもイオンが通過することにより一定程度の損傷を受ける。これら飛程や損傷の度合いは、SRIMコードのようなモンテカルロシミュレーションコードによって計算・予測することができる。尚、SRIMコードは、例えば、 The Stoppingand Range of Ions in Matter, James F. Ziegler, JochenP. Biersack, Matthias D. Ziegler, http://www.srim.org/index.htm#HOMETOP等からダウンロードして利用できる。

0046

ダイヤモンド単結晶基板にイオン注入を行うことにより、照射量がある一定量を超えると、イオンの飛程近傍より表面側で結晶構造が変質し、ダイヤモンド構造が破壊されて非ダイヤモンド層が形成される。

0047

形成される非ダイヤモンド層の深さや厚さは、使用するイオンの種類、注入エネルギー、照射量、イオン注入される材料の種類などによって異なるので、これらの条件については、イオンの飛程近傍において分離可能な非ダイヤモンド層が形成されるように決めればよい。通常は、注入されたイオンの原子濃度が最も高い部分について、原子濃度が1x1020atoms/cm3程度以上であることが好ましく、確実に非ダイヤモンド層を形成するためには1x1021 atoms/cm3程度が好ましい。

0048

例えば、炭素イオンを注入エネルギー3 MeVで注入する場合には、イオンの照射量は、1x1016 ions/cm2〜1x1017 ions/cm2程度とすればよい。この場合、イオンの照射量が多くなりすぎると、表面の結晶性が悪化し、一方、照射量が少なすぎると、非ダイヤモンド層が十分に形成されず、表層部分の分離が困難となる。

0049

上記した方法でイオン注入を行うことによって、種基板の表面近傍に非ダイヤモンド層が形成される。

0050

非ダイヤモンド層が形成される部分の深さについては特に限定はないが、深い程、後に分離されるモザイク状ダイヤモンドを厚くすることができる。

0051

次いで、イオン注入後、親基板真空中、還元性雰囲気、酸素を含まない不活性ガス雰囲気等の非酸化性雰囲気中で600℃以上の温度で熱処理することによって、非ダイヤモンド層のグラファイト化を進行させる。これにより、後述するエッチングによるモザイク状ダイヤモンドの分離が速く進行する。熱処理温度の上限はダイヤモンドがグラファイト化しはじめる温度となるが、通常、1200℃程度とすればよい。熱処理時間については、熱処理温度などの処理条件により異なるが、例えば、5分〜10時間程度とすればよい。

0052

イオン注入を行う際、種基板とするダイヤモンド単結晶基板の並べ方については特に限定はなく、均一にイオン注入ができる範囲に任意の配置で並べればよい。但し、後述する単結晶ダイヤモンド成長工程において単結晶ダイヤモンドを成長させる前には、種基板とするダイヤモンド単結晶基板は、平坦な支持台上でモザイク状に並べた状態とすることが必要である。よって、該ダイヤモンド単結晶基板は、イオン注入前又はイオン注入後に平坦な支持台上でモザイク状に並べることが必要である。

0053

ダイヤモンド単結晶基板をモザイク状に並べる方法は特に限定的ではなく、通常は、平坦な支持台上において、目的とするモザイク形状となるように、各基板の側面同士が接触するか、或いは、側面の間隔ができるだけ狭くなる状態で並べればよい。この場合、同一の単結晶ダイヤモンド基板から分離した複数の単結晶ダイヤモンド基板を種基板とする場合には、結晶面の方向が一致した状態となるように並べることによって、オフ角、結晶面の方向、ひずみや欠陥の分布等が揃ったモザイク状ダイヤモンドを得ることができる。

0054

尚、基板をモザイク状に並べる際に、各基板の頂点部分が接近する部分においてダイヤモンドの異常成長が生じ易くなる。このため、基板を3枚以上並べる場合には、3枚以上の基板の頂点が互いに接触する状態、或いは接近した状態となることを避けることが好ましい。具体的には、二枚の基板を、互いの頂点が接触するか或いは接近する状態で並べる場合には、これらの頂点が接触又は接近する位置と、他の基板の頂点の位置とがずれるように基板を並べることが好ましい。

0055

ダイヤモンド単結晶基板は、モザイク状に並べる際に基板同士が接触する側面部分について、該側面と基板表面とによって形成される角度を90°又はそれ以下とし、且つ該側面と基板表面とによって形成される角(エッジ)部分をほぼ90°以下の角度とするか、或いは、曲率半径ができるたけ小さい曲面とすることが好ましい。これによって、隣接して配置される基板表面同士のエッジ部分間の間隔Wを狭くすることができ、この上に気相合成法で単結晶ダイヤモンド層を形成する際に、成長したダイヤモンド層における結晶性が劣る部分の領域を狭くすることができる。

0056

図2は、この状態を模式的に示す図面である。図2において、上部左図は、曲率半径が大きい曲面からなるエッジ部分を有する2個の基板を並べた状態のエッジ部分の拡大図であり、下部左図は、エッジ部分がほぼ90°の2個の基板を並べた状態のエッジ部分の拡大図である。

0057

この場合、該側面と基板表面とによって形成される稜線に沿ったエッジ部分については、できるだけ精度良く加工して、直線に近い状態とすることが好ましい。例えば、図2に示す通り、エッジ部分の直線からのずれの最大幅Eについては、隣接する二枚の基板のエッジ部分同士の間隔をWとした場合に、E/Wの値が1/10程度以下となるようにすることが好ましく、10-6程度以下となるようにすることがより好ましい。

0058

図2の下部左図は、基板のエッジ部分が直線からのずれが小さく、且つ、隣接する二枚の基板のエッジ部分同士の間隔Wが狭い状態を表すものである。図2の上部右図と下部右図の対比から明らかなように、エッジ部分がほぼ90°であって、直線からのずれが小さい基板を並べた上に気相合成法で単結晶ダイヤモンド層を成長させる場合には、結晶性が劣るダイヤモンド層が形成される領域が非常に狭くなり、良質な単結晶ダイヤモンド層が形成される範囲を広くすることが可能となる。

0059

尚、上記した条件を満足するようにダイヤモンド単結晶基板の側面を加工する方法については特に限定はないが、例えば、スカイフ研磨メカノケミカル研磨レーザ加工紫外線照射プラズマエッチングイオンビームエッチング中性ビーム照射等の公知の方法を採用することができる。加工精度は高い方が望ましく、例えば、微小金属微粒子過酸化水素等を研磨剤として導入した研磨や、パルス幅が短く短波長レーザ光を用いたレーザ加工、ステッパ等を用いた紫外線照射、リソグラフィー技術を用いたプラズマエッチング、イオンビームエッチング、中性ビーム照射などが適用できる。

0060

上記したダイヤモンド単結晶基板の側面及びエッジ部分の形状については、後述する第二方法及び第三方法において用いるダイヤモンド単結晶基板についても同様に適用できる。

0061

支持台の種類については特に限定はなく、種基板とするダイヤモンド単結晶基板を全て並べることができる平坦部を有する支持台であればよい。イオン注入に用いた支持台を、そのまま後述する気相合成法による単結晶ダイヤモンドの成長工程に用いる場合には、気相合成法に適した高融点であって熱伝導性が良好な金属又は合金、例えば、モリブデン、タングステン等からなる支持台を用いることが好ましい。

0062

(ii)単結晶ダイヤモンド成長工程:
次いで、上記した方法で非ダイヤモンド層を形成し、モザイク状に並べられた種基板の表面に気相合成法によって単結晶ダイヤモンドを成長させる。

0063

気相合成法については特に限定はなく、例えば、マイクロ波プラズマCVD法熱フィラメント法直流放電法などの公知の方法を適用できる。

0064

特に、マイクロ波プラズマCVD法によれば、高純度ダイヤモンド単結晶膜を成長させることができる。具体的な製造条件については特に限定はなく、公知の条件に従って、ダイヤモンド単結晶を成長させればよい。原料ガスとしては、例えば、メタンガス水素ガス混合ガスを用いることができる。具体的なダイヤモンド成長条件の一例を示すと、反応ガスとして用いる水素及びメタン混合気体では、メタンは、水素供給量モルに対して、0.01〜0.33モル程度となる比率で供給することが好ましい。また、プラズマCVD装置内の圧力は、通常、13.3〜40kPa程度とすればよい。マイクロ波としては、通常、2.45GHz、915MHz等の工業および科学用に許可された周波数のマイクロ波が使用される。マイクロ波電力は、特に限定的ではないが、通常、0.5〜5kW程度とればよい。この様な範囲内において、例えば、基板(単結晶ダイヤモンド子基板)の温度が900〜1300℃程度、好ましくは900〜1100℃程度となるように各条件を設定すればよい。

0065

成長する単結晶ダイヤモンドの厚さについても特に限定はなく、目的とするモザイク状ダイヤモンドの厚さに応じて決めればよい。例えば、100〜1000μm程度とすることができる。

0066

(iii)非ダイヤモンド層のエッチング工程:
上記した方法で単結晶ダイヤモンド層を成長させた後、上記(i)工程で形成した非ダイヤモンド層をエッチングして非ダイヤモンド層より表層部分を分離する。これにより、表層部分の単結晶ダイヤモンドが分離されて、目的とするモザイク状ダイヤモンドを得ることができる。この方法によれば、成長したダイヤモンド層の切断、研磨という煩雑な工程が不要であり、作業工程を簡略化でき、更に、研磨の際のダイヤモンド結晶の破壊を回避することができる。

0067

これに対して、例えば、上記した特許文献2に記載の方法では、種結晶となる複数のダイヤモンド上にダイヤモンドを成長させてモザイク状ダイヤモンドを作成した後、イオン注入する前に、成長したダイヤモンドの表面を研磨して平滑な面を形成する必要がある。この場合、研磨工程において、接合したモザイク状ダイヤモンドが割れやすいことに加えて、接合により大面積化したモザイク状ダイヤモンドを研磨するために、研磨工程に非常に長時間を要するという大きな問題点がある。

0068

一方、特許文献3などの方法によれば、成長したダイヤモンド層の切断、研磨という煩雑な工程が不要であり、処理時間を大きく短縮でき、更に、歩留まりが向上するために、製造効率飛躍的に向上させることができる。

0069

非ダイヤモンド層より表層部分を分離する方法については、特に限定的ではないが、例えば、電気化学エッチング熱酸化放電加工などの方法を適用できる。

0070

電気化学エッチングによって非ダイヤモンド層を取り除く方法としては、例えば、電解液の中に2個の電極を、一定間隔を置いて設置し、非ダイヤモンド層を形成した単結晶ダイヤモンド基板を電解液中の電極間に置き、電極間に直流電圧を印加する方法を採用できる。電解液としては、純水が望ましい。電極材料導電性を有するものであれば特に制限はないが、化学的に安定な白金グラファイトなどの電極が望ましい。電極間隔および印加電圧は、最もエッチングが速く進むように設定すればよい。電解液の中の電界強度は通常100〜300V/cm程度であればよい。

0071

また、電気化学エッチングによって非ダイヤモンド層を取り除く方法において、交流電圧を印加してエッチングを行う方法によれば、多数の単結晶ダイヤモンド基板をモザイク状に並べた場合であっても、非ダイヤモンド層においてエッチングが結晶の内部にまで極めて速く進行し、非ダイヤモンド層より表面側のダイヤモンドを短時間に分離することが可能となる。

0072

交流電圧を印加する方法についても、電極間隔および印加電圧は、最もエッチングが速く進むように設定すればよいが、通常、印加電圧を電極間隔で割った電解液の中の電界強度は通常50〜10000V/cm程度とすることが好ましく、500〜10000V/cm程度とすることがより好ましい。

0073

交流としては、商用の周波数60または50Hzの正弦波交流を用いるのが簡単であるが、同様の周波数成分をもてば、波形は特に正弦波に限るものではない。

0074

電解液として用いる純水は、比抵抗が高い(即ち、導電率が低い)ほうが高電圧を印加できるので都合がよい。一般の超純水装置を用いて得られる超純水は、18MΩ・cm程度という十分に高い比抵抗を有するので、電解液として好適に使用できる。

0075

また、熱酸化で非ダイヤモンド層を取り除く方法としては、例えば、酸素雰囲気中で500〜900℃程度の高温に加熱し、酸化によって非ダイヤモンド層をエッチングすればよい。この際、エッチングがダイヤモンド内部まで進むと、結晶の外周から酸素が透過しにくくなるため、非ダイヤモンド層を形成するためのイオンとして酸素イオンを選択し、かつエッチングが起こるのに必要な照射量より十分に多量の酸素イオンを注入しておけば、エッチング時に酸素が非ダイヤモンド層の内部からも供給され、非ダイヤモンド層のエッチングをより速く進行させることができる。

0076

さらに、グラファイト化が進んだ非ダイヤモンド層は導電性があるため、放電加工により切断(エッチング)することもできる。

0077

上記した方法で、非ダイヤモンド層をエッチングして表層部分の単結晶ダイヤモンド層を分離することによって、目的とする接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板(モザイク状ダイヤモンド)を得ることができる。

0078

また、上記した方法でモザイク状ダイヤモンドを分離した後、モザイク状に並べた複数の単結晶ダイヤモンド基板に対して、更に、イオン注入工程、気相合成法による単結晶ダイヤモンド成長工程、及び非ダイヤモンド層のエッチング工程を繰り返し行うことによって、接合境界部を有する複数の単結晶ダイヤモンド基板(モザイク状ダイヤモンド)を容易に作製できる。

0079

(2)第二方法:
第二方法について、図3にその概念図を示す。図3に示す方法は、下記(i)〜(v)の工程を含む方法である(以下、この方法を「第二方法」という):
(i)種基板となる複数のダイヤモンド単結晶基板に対してイオン注入を行って該ダイヤモンド単結晶基板の表面近傍に非ダイヤモンド層を形成する工程、
(ii)非ダイヤモンド層を形成した各ダイヤモンド単結晶基板を反転させて平坦な支持台上でモザイク状に並べる工程、
(iii)上記(ii)工程でモザイク状に並べたダイヤモンド単結晶基板に気相合成法で単結晶ダイヤモンド層を成長させてダイヤモンド単結晶基板を接合する工程、
(iv)接合されたダイヤモンド単結晶基板を、再度平坦な支持台上で反転させて、イオン注入を行った面を上面とし、この面上に気相合成法で単結晶ダイヤモンド層を成長させる工程、
(v)単結晶ダイヤモンド層を成長させた後、非ダイヤモンド層をエッチングして、非ダイヤモンド層より上層の単結晶ダイヤモンド層を分離する工程。

0080

第二方法では、上記(i)工程において、種基板とするダイヤモンド単結晶基板に対して、イオン注入を行って非ダイヤモンド層を形成する。この際、ダイヤモンド単結晶基板の並べ方については特に限定はなく、均一にイオン注入ができる範囲に任意の配置で並べればよい。イオン注入の条件については、第一方法におけるイオン注入工程と同様とすればよい。

0081

次いで、第二方法の(ii)工程では、(i)工程においてイオン注入を行って非ダイヤモンド層を形成した各ダイヤモンド単結晶基板を反転させて、平坦な支持台上に目的とするモザイク状に並べる。この際、ダイヤモンド単結晶基板におけるイオン注入を行った面が支持台に接する状態とする。

0082

次いで、(iii)工程では、モザイク状に並べたダイヤモンド単結晶基板のイオン注入を行った面の反対面に気相合成法で単結晶ダイヤモンド層を成長させて複数のダイヤモンド単結晶基板を接合する。この接合により、種基板の厚さを厳密に揃えることなく、イオン注入を行った面の高さが実質的に揃った状態のモザイク基板が得られる。

0083

単結晶ダイヤモンド層の成長方法については、特に限定的ではないが、例えば、第一方法における単結晶ダイヤモンド成長工程と同様の条件とすればよい。形成される単結晶ダイヤモンド層の厚さについては特に限定的ではなく、各単結晶ダイヤモンド基板に対して十分な接合強度を付与できる厚さとすればよく、例えば、100〜1000μm程度とすればよい。また、この接合により、各単結晶基板が熱的に結合され、次の(iv)行程において基板上の温度分布が均一になり、成長速度などの成長パラメータの分布が均一になる効果が期待できる。

0084

次いで、(iv)工程では、(iii)工程において接合されたダイヤモンド単結晶基板を、再度支持台上で反転させて、イオン注入を行った面を上面とし、この面上に気相合成法で単結晶ダイヤモンド層を成長させる。この場合の単結晶ダイヤモンドの成長方法についても、第一方法における単結晶ダイヤモンド成長工程と同様の条件とすればよい。形成される単結晶ダイヤモンド層の厚さについては目的とするモザイク状ダイヤモンドの厚さに応じて決めれば良く、例えば、100〜1000μm程度とすることができる。

0085

次いで、(v)工程では、非ダイヤモンド層をエッチングして、非ダイヤモンド層より表層部分を分離する。これにより、表層部分の単結晶ダイヤモンドが分離されて、目的とする接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板(モザイク状ダイヤモンド)を得ることができる。この方法によっても、成長したダイヤモンド層の切断、研磨という煩雑な工程が不要であり、作業工程を簡略化でき、更に、研磨の際のダイヤモンド結晶の破壊を回避することができる。

0086

更に、上記した方法でモザイク状ダイヤモンドを分離した後、モザイク状ダイヤモンドを分離したダイヤモンド単結晶基板に対して、イオン注入による非ダイヤモンド層の形成工程、気相合成法による単結晶ダイヤモンド成長工程、及び非ダイヤモンド層のエッチング工程を繰り返し行うことによって、接合境界部を有する複数の単結晶ダイヤモンド基板(モザイク状ダイヤモンド)を容易に作製できる。

0087

(3)第三方法:
第三方法では、下記(i)〜(vi)の工程を含む方法を挙げることができる(以下、この方法を「第三方法」という):
(i)複数のダイヤモンド単結晶基板を平坦な支持台上にモザイク状に並べる工程、
(ii)モザイク状に並べられたダイヤモンド単結晶基板の表面に、気相合成法で単結晶ダイヤモンド層を形成して、ダイヤモンド単結晶基板を接合する工程、
(iii)接合されたダイヤモンド単結晶基板を平坦な支持台上で反転させる工程、
(iv)反転したダイヤモンド単結晶基板に対してイオン注入を行って該ダイヤモンド単結晶基板の表面近傍に非ダイヤモンド層を形成する工程、
(v)非ダイヤモンド層を形成した各ダイヤモンド単結晶基板の表面に気相合成法で単結晶ダイヤモンド層を成長させる工程、
(vi)単結晶ダイヤモンド層を成長させた後、非ダイヤモンド層をエッチングして、非ダイヤモンド層より上層の単結晶ダイヤモンド層を分離する工程。

0088

第三方法では、(i)工程において、種基板となる複数のダイヤモンド単結晶基板を平坦な支持台上にモザイク状に並べる。この方法については、特に限定はなく、第一方法における種基板の並べ方と同様とすればよい。

0089

次いで、(ii)工程では、モザイク状に並べられたダイヤモンド単結晶基板の表面に、気相合成法で単結晶ダイヤモンド層を成長させて、モザイク状の並べられたダイヤモンド単結晶基板を接合する。この工程では、第二方法の(iii)工程と同様に、各ダイヤモンド単結晶基板について、十分な接合強度を持つように単結晶ダイヤモンドを成長させればよい。

0090

次いで、(iii)工程では、接合されたダイヤモンド単結晶基板を平坦な支持台上で反転させる。この工程により、(ii)工程において成長させた単結晶ダイヤモンド層が、支持台の表面に接する状態となる。

0091

次いで、(iv)工程では、(iii)工程において反転させたダイヤモンド単結晶基板に対してイオン注入を行って該ダイヤモンド単結晶基板の表面近傍に非ダイヤモンド層を形成する。この工程におけるイオン注入の条件については、例えば、第一方法におけるイオン注入工程と同様とすればよい。

0092

次いで、(v)工程において、非ダイヤモンド層を形成した各ダイヤモンド単結晶基板の表面に気相合成法で単結晶ダイヤモンド層を成長させ、次いで、(vi)工程において、非ダイヤモンド層をエッチングして、非ダイヤモンド層より表層部分を分離する。これにより、表層部分の単結晶ダイヤモンドが分離されて、目的とする接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板(モザイク状ダイヤモンド)を得ることができる。上記(v)工程及び(vi)工程の条件としては、第二方法における(iv)工程及び(v)工程の条件と同様とすればよい。この方法についても、成長したダイヤモンド層の切断、研磨という煩雑な工程が不要であり、作業工程を簡略化でき、更に、研磨の際のダイヤモンド結晶の破壊を回避することができる。

0093

更に、上記した方法でモザイク状ダイヤモンドを分離した後、モザイク状ダイヤモンドを分離したダイヤモンド単結晶基板に対して、上記(iv)〜(vi)工程のイオン注入による非ダイヤモンド層の形成、気相合成法による単結晶ダイヤモンド成長、及び非ダイヤモンド層のエッチングを繰り返し行うことによって、複数のモザイク状ダイヤモンドを容易に作製できる。

0094

更に、第一方法〜第三方法の各方法において、モザイク状に並べた種基板から分離して得られたモザイク状ダイヤモンドについて、該モザイク状ダイヤモンドの種基板からの分離面に対して、上記したイオン注入による非ダイヤモンド層の形成、気相合成法による単結晶ダイヤモンド成長、及び非ダイヤモンド層のエッチングによる該非ダイヤモンド層より上層の単結晶ダイヤモンド層の分離からなる処理工程を少なくとも一回行うことによって、モザイク状ダイヤモンドと同一の形状を有するモザイク状ダイヤモンドを容易に作製することができる。

0095

尚、第二方法の(iv)工程における気相合成法による単結晶ダイヤモンド層を成長させる工程、及び第三方法の(v)工程における気相合成法による単結晶ダイヤモンド層を成長させる工程において、単結晶ダイヤモンドの成長条件として、モザイク状に並べた種基板の境界部分にまで成長することなく、各種基板の表面にのみ単結晶ダイヤモンドが成長する条件を採用することによって、単結晶ダイヤモンド基板を量産する方法として利用することもできる。

0096

本発明において、単結晶ダイヤモンド基板の一方側の主面の表面積は、好ましくは8mm2以上、より好ましくは12mm2以上、さらに好ましくは200mm2以上が挙げられる。前述の接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板を製造する手法を用いて、単結晶ダイヤモンド基板を製造することによって、このような大面積の単結晶ダイヤモンド基板を用意することができる。単結晶ダイヤモンド基板の一方側の主面の表面積の上限については、例えば、2500mm2以下が挙げられる。

0097

本発明において、単結晶ダイヤモンド基板の厚みとしては、好ましくは100μm以上、より好ましくは200μm以上が挙げられる。なお、当該厚みの上限については、例えば、1000μm以下が挙げられる。

0098

2.パワー半導体デバイス
本発明の積層体は、パワー半導体デバイス(すなわち、電力の制御や変換、供給を行うための半導体素子)に好適に利用することができる。本発明の積層体を好適に利用できるパワー半導体デバイスの具体例としては、例えば、ダイオードトランジスタなどが挙げられる。

0099

本発明の積層体をパワー半導体デバイスに利用する場合、本発明の積層体を利用したダイヤモンド半導体素子を作製し、これをパワー半導体デバイスに利用することができる。ダイヤモンド半導体素子においては、単結晶ダイヤモンド基板と、半導体ドリフト層に加えて、通常、電極が積層されている。

0100

所望のデバイス構造となるようにして、接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板、半導体ドリフト層、電極などを積層して本発明の積層体とし、これを半導体素子の単位毎に分割(ダイシング)することにより、個々のダイヤモンド半導体素子を製造することができる。

0101

3.積層体及びダイヤモンド半導体素子の製造方法
本発明の積層体の製造方法としては、前記所定の接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板の上に、少なくとも半導体ドリフト層、必要に応じてP+導電層、電極などが積層された積層体が得られれば、特に制限されない。なお、接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板、半導体ドリフト層、P+導電層、及び電極の詳細については、前述の通りである。また、単結晶ダイヤモンド基板の接合境界部は、レーザ励起波長785nmでのラマンスペクトルにおいて、ダイヤモンドに起因する1332cm-1付近のピークの半値全幅が、前記接合境界部とは異なる部分でのピーク半値全幅よりも広がって観察される部分である。幅が200μm以上の接合境界部の上に、少なくとも半導体ドリフト層を積層する。

0102

本発明の積層体は、例えば、以下の工程を備える方法により好適に製造することができる。
接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板を用意する工程。
前記単結晶ダイヤモンド基板の少なくとも前記接合境界部の上に、半導体ドリフト層を積層する工程。

0103

また、本発明の積層体は、例えば、以下の工程を備える方法によっても好適に製造することができる。
接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板の少なくとも前記接合境界部上に、P+導電層が積層された積層体Aを用意する工程。
前記P+導電層の上に、さらに半導体ドリフト層を積層する工程。

0104

また、本発明の積層体は、例えば、以下の工程を備える方法によっても好適に製造することができる。
接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板の前記接合境界部の上に、P+導電層と、半導体ドリフト層とがこの順に積層された積層体Bを用意する工程。
前記半導体ドリフト層の上に、さらに電極を積層する工程。

0105

さらに、以下に示すように、本発明の積層体が、少なくとも、前記所定の接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板、半導体ドリフト層、P+導電層、及び電極を備える場合において、積層体を積層方向に切断することによって、ダイヤモンド半導体素子とすることができる。

0106

本発明のダイヤモンド半導体素子は、以下の工程を備える方法により好適に製造することができる。
接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板の少なくとも前記接合境界部の上に、P+導電層と、半導体ドリフト層と、電極とがこの順に積層された積層体Cを用意する工程。
前記積層体Cを積層方向に切断する工程。

0107

以下に、実施例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。

0108

<接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板の製造>
接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板(モザイク状ダイヤモンド)は、図4に示されるプロセスフローによって作製した。詳細な条件については、「Yamada et al., Diamond Relat. Mater. 24 (2012) 29」の論文に記載のとおりである。図4の(1)〜(4)のプロセスは、イオン注入及びエッチングを利用したリフトオフ法による種基板複製である。図4の(5)のプロセスは、種基板並列配置上へのCVDエピタキシャル成長である。図4の(6)のプロセスは、リフトオフ法による基板分離である。今回用いた試料は、10mm□の種基板が4枚接合されたモザイク結晶であり、結晶面は (100) である。なお、図4の(6)のプロセス(接合基板分離)の後に、分離面を用いて再度イオン注入及びCVD成長、さらにリフトオフする工程を数回繰り返し、分離後自立基板(単結晶ダイヤモンド基板)には元の種結晶は残っていない。下記の単結晶ダイヤモンド基板の結晶性評価においては、CVD成長後の分離面(グラファイト層エッチング側)について評価した。

0109

<単結晶ダイヤモンド基板の接合境界部の結晶性評価>
上記で得られた単結晶ダイヤモンド基板の接合境界部について、それぞれ、ラマンマッピング法による評価とカソードルミネッセンス法による評価を行った。

0110

(1)ラマンマッピング法による評価
単結晶ダイヤモンド基板の接合境界部についてのラマンマッピング法による評価は、以下の条件によって行った。
・装置:ナノフォトン社製のRAMANtouch
レーザ波長:532 nm/785 nm
グレーティング:1200 gr/mm
波数分解能:約2 cm-1 (1200 gr/mm使用時)
対物レンズ: ×5 (NA 0.15)
CCD温度:−75℃空冷
空間分解能= 0.61×λ/NA = 2.16 μm (λ= 532 nm、 NA=0.15 時)
・マッピング間隔 10 μm XY

0111

図5に、単結晶ダイヤモンド基板(モザイク状ダイヤモンド)の接合境界部上と、接合境界部外で測定したラマンスペクトルを示す(モザイク単結晶基板の接合境界部上と、接合境界部外でのラマンスペクトル)。レーザ励起波長は532 nmおよび785 nmを用いた。ダイヤモンドに起因するシャープなラマン線が1332 cm-1付近に観測された。非ダイヤモンド成分に起因するGバンド,Dバンドは確認されなかった。境界上では半値全幅が広がっており、また僅かにピーク位置がシフトする傾向がみられた。レーザ波長532 nmでは、ダイヤモンド中窒素空孔中心 (NV0 center) による蛍光が1420 cm-1付近に観測される。この蛍光強度はN濃度と関連しており(H. Yamada, A. Chayahara, Y. Mokuno, Effects of intentionally introduced nitrogen and substrate temperature on growth of diamond bulk single crystals, Jpn. J. Appl. Phys. 55 (2016) 01AC07. http://stacks.iop.org/1347−4065/55/i=1S/a=01AC07.)、境界上ではNの取り込みが低くなっていることが推測される。ラマンマッピングでは、NV0 centerの蛍光の影響を排除するためにλ=785 nmで測定を行った。

0112

次に、単結晶ダイヤモンド基板(モザイク状ダイヤモンド)の接合境界部の中心部付近での2Dラマンマッピング測定を行った結果を図6に示す(モザイク結晶の接合境界(中心部)の平面2Dラマンマッピング)。なお、図6(a)は、ラマンシフトマッピング、図6(b)はFWHMマッピングである。ラマンシフトマッピングでは、中心波数からのずれをイメージングすることで、応力分布可視化することが出来る。接合境界部から充分離れた領域でのラマン中心波数は1332.26 cm-1であり、接合境界部近傍では最大で±0.48 cm-1程度の応力シフトが局所的に観測されることが分かった。この局所応力は、接合境界部上に集中することなく、接合境界部から約400 μm付近に広く非連続的に分布していた。残留応力(は、ダイヤモンドラマンピーク位置より以下の式から計算される。

0113

0114

ここで(ν0(ν)は中心波数ν0からのシフト量、αは換算係数でダイヤモンドでは3 cm-1/GPaが用いられる。正の値は引張、負の値は圧縮応力を示す。今回観測されたシフト量±0.48 cm-1 は0.16 GPaの残留応力に対応する。この値は多結晶ダイヤモンドで一般的に観測される応力1〜2 GPaと比べて低く、また単結晶ダイヤモンド基板の結晶欠陥位置で観測される残留応力〜0.1 Mpa(Y. Kato, H. Umezawa, S.I. Shikata, T. Teraji, Local stress distribution of dislocations in homoepitaxial chemical vapor deposite single−crystal diamond, Diam. Relat. Mater. 23 (2012) 109−111. doi:10.1016/j.diamond.2012.01.024.)と同程度であることが分かる。このことから、転位もしくは束となった転位が局所的なストレスを引き起こしていると考えられる。図6(b)の半値全幅マッピングでは、接合境界位置でのFWHM広がりが明瞭に観測された。FWHMは最大で6 cm-1程まで広がっていた。

0115

(2)カソードルミネッセンス法による評価
単結晶ダイヤモンド基板の接合境界部についてのカソードルミネッセンス法による評価は、以下の条件によって行った。
日本電子製 JEOL 7001F
電子線加速電圧15 kV
倍率×1500
電子侵入深さ1.74 μm (Kanaya、 Okayama model)
試料温度80 K
分光器:HORIBA製 TRIAX190
・グレーティング300 gr/mm (ブレーズ波長250 nm)
・PMTスリット幅1.2 mm
・マッピング時のバンド幅: 約20 nm (中心波長430 nm,300 gr/mmの条件)

0116

単結晶ダイヤモンド基板の接合境界部付近でのカソードルミネッセンススペクトルを図7に示す(接合境界部の外と、接合境界部上で測定したカソードルミネッセンススペクトル)。接合境界部上では、欠陥に起因するBand−A発光(430 nm) が主に観測された。境界の外ではN−V発光、H3センタ(N−V−N or V−N−N−V)に起因する強い発光がみられ、Band−Aはそれらの発光と重なっており明瞭なスペクトルとして現れなかった。同一試料面内での測定であるため、注入電子線量は一定であるとすると、N関連のCL発光強度は境界上で約1/10となっている。N−Vの発光強度はN濃度に依存すると考えられるが、ラマンスペクトルから推測される境界上でのN取り込み変化は僅かである。境界上のBand−A欠陥等がN−V発光の再結合センタとして働いた可能性も考えられる。

0117

また、Band−A発光のカソードルミネッセンススペクトルマッピング像を図8に示す(接合境界の外と、接合境界部上で測定したカソードルミネッセンススペクトルマッピング.バンドパスフィルタ、430 nmを使用して撮影)。430 nmのバンドパスフィルタを用いて、光電子増倍管(PMT) で強度マッピングした。境界の外ではBand−A発光が白い点状で観測され、スポット密度は1×106 cm-2であった。これは高温高圧法Ib基板の転位密度(約104 cm-2) より高く、ヘテロエピタキシャル基板の転位密度 (約108 cm-2) より小さかった。境界上では点状のパターンに加え。網目状の模様が全体的に観測された。転位等の結晶欠陥が高密度に存在していることが推測される。

0118

<単結晶ダイヤモンド基板の接合境界部の電気的特性評価
上記で得られた単結晶ダイヤモンド基板について、接合境界部の電気的特性評価を行った。まず、疑似縦型ショットキーバリアダイオードを試作するため、単結晶ダイヤモンド基板の上に、p+導電層およびp−ドリフト層を積層して積層体(疑似縦型ショットキーバリアダイオード(pVSBD)用積層ダイヤモンド)を得た。p+導電層、p−ドリフト層のドーピング濃度は、各1020、1018/cm3程度とした(図9参照。図9の「窒素ドープ半絶縁性基板」が、単結晶ダイヤモンド基板に対応する。)。この積層体上(p−ドリフト層側)に、リソグラフィーを用いてショットキー電極を形成した。ショットキー電極はMo/Auとし、リフトオフ法によってデバイスを形成した。続いて、オーミック電極として、メタルスルーマスクを用いてTi/Mo/Auを10nm/10nm/30nmの厚さで形成した。それぞれのプロセス条件(CVD合成条件及び電極形成条件)は、以下の通りである。

0119

CVD合成条件
<p+導電層>
熱フィラメントCVD装置(sp3 Diamond Technologies社製)
・H2 1000 sccm, CH4 30 sccm, TMB(2%)/H2 5 sccm
メタン濃度3%, B/C 3300 ppm
・圧力 10 Torr
・合成時間 10 h
膜厚約5 μm
・ホウ素濃度約1020 cm-3

0120

<p(ドリフト層>
マイクロ波プラズマCVD装置(Cones Technologies社製)
・H2 480 sccm, CH4 20 sccm, O2 0.1 sccm
・メタン濃度4%
・圧力 120 Torr
・合成時間 1 h
・膜厚約4 μm
・ホウ素濃度約1018 cm-3

0121

電極形成条件
<ショットキー電極>
・熱混酸処理 (250(C, 50 min) による表面酸素終端
・EBリソグラフィーによるパターン形成
・電極Mo (10 nm)/Au (30 nm),EB蒸着
電極径100 μmΦ,Murphy plot解析用に接合境界の外に30〜400μmΦの電極を形成

0122

<オーミック電極>
・Ti (10 nm)/Mo (10 nm)/Au (30 nm),EB蒸着
・電極径2 mmΦ

0123

図10及び図11に、上記で作製した積層体のデバイスマップ(pVSBDデバイスマップ)を示す。接合境界部を跨ぐように直径100 μmの電極を配置し、また、接合境界部外(各モザイク部の中央部に位置)に電極径の異なる素子を配置した。図11に示すように、中央部(非境界部)の電極サイズは30から400 μmとし、電気特性による良・不良品率評価(Murphyプロット)から欠陥密度を評価できるようにした。なお、本素子において、フィールドプレートやJTEなどの縁辺終端技術は用いなかった。

0124

ショットキーバリアダイオードの電流電圧特性
前記で得られた積層体(疑似縦型ショットキーバリアダイオード)の電流電圧特性を評価した。前記で得られた積層体(疑似縦型ショットキーバリアダイオード)のデバイス構造を図12に示す。当該デバイス構造では、接合境界部を跨ぐ形で直径100 μmのショットキー電極が並んでおり、接合界面がデバイス特性に与える影響を評価できる。そこで、電流電圧(I−V) 特性を半導体パラメータアナライザ(Agilent Technologies B1505A) を用い、室温・大気中で測定した。

0125

接合境界部上に形成したショットキーデバイスのI−V特性を図13に示す。境界の有無に関わらず、明瞭な整流動作を確認した。順方向では約1Vで急峻な立ち上がりが、逆方向では低電圧領域で装置の検出限界である10-11 A以下のリーク電流が確認された。整流比は最大で108であった。境界上では、境界の外と同等の高い整流比を示すことが明らかとなった.これまでの報告から、高密度な欠陥を有するデバイスではオーミック的な巨大リークパスを有することが知られている(「S. Ohmagari, T. Teraji, Y. Koide, Non−destructive detection of killer defects of diamond Schottky barrier diodes, J. Appl. Phys. 110 (2011) 5−8. doi:10.1063/1.3626791.」及び「H. Umezawa, N. Tokuda, M. Ogura, S.G. Ri, S. ichi Shikata, Characterization of leakage current on diamond Schottky barrier diodes using thermionic−field emission modeling, Diam. Relat. Mater. 15 (2006) 1949−1953. doi:10.1016/j.diamond.2006.08.030.」)が、その結果に反して、接合境界部上においても接合境界部外と同一のデバイス特性が得られることが分かった。これは、図4に示す通り,同一種結晶から複製した(所謂コピー基板)を接合したこと(すなわち、例えば、「Yamada et al., Diamond Relat. Mater. 24 (2012) 29」の論文の方法や、特許文献3、特許第4849691号、国際公開2011/074599A1、特開2015−67516号公報、特開2015−67517号公報などで採用されているモザイク状ダイヤモンドの製造方法のように、接合境界部には空隙が存在していないこと)による効果であると考えられる。より具体的には、単結晶ダイヤモンド基板の接合境界部が、レーザ励起波長785nmでのラマンスペクトルにおいて、ダイヤモンドに起因する1332cm-1付近のピークの半値全幅が、接合境界部とは異なる部分でのピーク半値全幅よりも広がって観察される部分であり、かつ、当該接合境界部の幅が200μm以上の接合境界部を有する単結晶ダイヤモンド基板を用いていることにより、接合境界部においても、連続的な結晶構造については維持されており、接合境界部においても、デバイスの形成が可能となっていると考えられる。

0126

Murphy’s plotによる良品率調査
上記で得られた単結晶ダイヤモンド基板について、接合境界部から充分離れた領域において、図14に示す通りショットキー電極の面積が異なるデバイスを作製した。巨大リーク電流が生じ、順方向にオーミックライク伝導パスマルチバリア成分)を有する素子を欠品として判定した。境界外の電極30 μmΦでは測定電極全18デバイス中1素子において欠品 (欠品率6%),電極400 μmΦでは18デバイス中4素子が欠品 (欠品率23%) であった。尚、境界上 (電極直径100 μm) では29デバイス中4素子が欠品 (欠品率 14%) であった。図15にMurphy’s plotを示す(巨大リーク電流が生じ順方向特性でマルチバリア成分が観測されるデバイスを欠品として判断した)。電極サイズ別のYield (良品率) を以下の式でフィッティングした。

0127

0128

Dは致命的欠陥密度(cm-2)、Sはデバイス面積 (cm2) である。フィテイング結果,D = 272 cm-2 と見積もられた。境界上では電極サイズ100 μmのみの結果であるが,境界外のプロットの同一曲線上に位置することがわかった。このように接合境界部の上・外に関わらず、同じ良品率でデバイスを作製出来る点は、製造上のメリットが大きい。

0129

ショットキーダイオードの理想因子及び障壁高さの解析
接合境界部上に形成した前記のショットキーデバイスの順方向I−V特性より、ショットキーダイオードの理想因子(n)、障壁高さ(ΦB)を以下の式から求めることができる。

0130

0131

ここで、Jは順方向電流密度(A/cm2)、 q、 k、Tはそれぞれ電荷素量、ボルツマン定数、温度 (K) である。A*はリチャードソン定数で、ダイヤモンドでは90 (A/K2) である。

0132

各電極において、n,ΦB値を求めた。表1に、接合境界部外に形成したショットキーバリアダイオードのデバイス特性を示す。また、表2に、接合境界部上に形成したショットキーバリアダイオードのデバイス特性を示す。また、接合境界部上の電極を除く解析結果を図16に示す(接合境界部外ショットキーバリアダイオードの理想因子(n)障壁高さ (ΦB)プロット。接合境界部上の電極を除くArea−A〜Dの領域での評価結果)。結晶中央部での境界を境として、挿入図に示すようにそれぞれArea−A〜Dと区分した。それらすべての評価結果を同一グラフ上にNormal regionsとして表示した。n値は1.15〜1.33と見積もられた。理想因子n=1に近い値が得られており、拡散電流が支配的であることが分かった。またΦBは1.25〜1.35 eVに分布していた。外挿直線から見積もられるn=1でのΦBは1.44 eVであった。n−ΦBプロットは単一の直線上に特性が分布していることから、種結晶の違いによる特性のばらつきは認められなかった。

0133

次に接合境界部上でのn−ΦBプロットを図17に示す(接合境界部上のショットキーバリアダイオードの理想因子(n)障壁高さ (ΦB) プロット。ラマンマッピング像(右図)に示す黒丸電極を境界上と位置付けて解析した))。ラマンマッピング結果より境界近傍約400 μmに渡ってFWHM値が広がっていることから、挿入図に示すように黒丸の電極部を境界上の特性として区分した。境界上ではn = 1.15〜1.42、ΦB = 1.21〜1.36 eVに分布した。n=1でのΦB値は1.43 eVと境界外での値 (1.44 eV) と同一であった。境界上/外での電流伝導機構は同一であると判断できる。

0134

実施例

0135

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