図面 (/)

技術 多孔質炭素及びその製造方法

出願人 国立研究開発法人産業技術総合研究所
発明者 久保史織井村知弘
出願日 2017年12月28日 (2年2ヶ月経過) 出願番号 2017-253982
公開日 2019年7月22日 (8ヶ月経過) 公開番号 2019-119632
状態 未査定
技術分野 固体収着剤及びろ過助剤 電池の電極及び活物質 無消耗性電極 炭素・炭素化合物
主要キーワード 本乾燥後 シート状形状 本焼成処理 逆対称 高温焼成後 低相対圧 攪拌洗浄後 炭素ナノ構造
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2019年7月22日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (20)

課題

解決手段

炭素前駆体(炭素源)として糖の脂肪酸エステルを用い、これを100〜350℃で水熱処理することにより、構造鋳型剤テンプレート)を用いることなく、簡便かつエネルギー消費の少ない手法で、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシル基などの含酸素官能基やアルキル基などの官能基を有する多孔質炭素を得る。

概要

背景

多孔質炭素は、その細孔を利用して、吸着剤分離材触媒担体カラム担体、薬物包含材等として産業界で非常に重要な材料である。さらに近年では、細孔空間電解質の効率移動空間として利用した二次電池キャパシタセンサーなどの炭素電極としての利用が幅広く実用化されており、分離材や電極材料としての利用においては、化学修飾により機能性を付与した多孔質炭素が好ましく用いられている。

多孔質炭素は種々の方法により製造されるが、その1つに、界面活性剤又はブロック共重合体などの両親媒性化合物を構造鋳型剤として用い、それらの存在下で炭素前駆体炭素源)の炭素化を進行させる、いわゆる有機テンプレート法がある。
例えば、特許文献1には、モノマーおよび/またはプレポリマー中に、鋳型である界面活性剤のミセルを形成させた後、前記モノマーおよび/またはプレポリマーを重合硬化させて、ミセル含有有機ポリマーを形成し、さらにこの有機ポリマー焼成して炭素化を行う方法が開示されている。また、特許文献2、非特許文献1、2等には、構造鋳型剤としてブロック共重合体を用い、炭素前駆体として、フェノールホルムアルデヒド、またはレゾルシノールなどのフェノール系樹脂を用いていることが開示されている。
しかしながら、これらの方法では、原料分子内に含酸素官能基が少ないこと、炭素化には、高温熱処理が必要であり、その際に官能基を失うこと、などが要因となり、得られる炭素材料中の含酸素官能基の量は限られる。そのため、分離担体や電極材料としての利用に重要な、化学修飾による炭素への機能性の付与は難しい。また、これらの方法で得られる炭素材料は、水相での用途は限られることが予想される。

一方、糖の水熱反応生成物からなる炭素材料の炭素骨格フラン骨格基本骨格として含むことは既に公知であり、糖やバイオマスを原料とした水熱合成によれば、含酸素官能基を豊富に有する炭素材料が得られる(非特許文献3、4)。また、キチンキトサングルコースアミン等の窒素を含む糖を炭素源とした水熱合成によれば、窒素がドープされた炭素材料が得られることも公知になっている(非特許文献5)。
こうした糖の水熱合成に、ブロック共重合体などの両親媒性化合物を有機テンプレートとする合成手法を組み合わせることにより、多孔質炭素を得ることができる(非特許文献6)。しかしながら、現在発表されている、有機テンプレートを用いるプロセスでは、数百℃以上(例えば550℃)の不活性雰囲気下での加熱処理による構造鋳型剤の熱分解除去が必要であり、合成におけるエネルギーコストが余計にかかる。また、加熱処理時に、表面官能基の量が減少することを防ぐことができない。

また、無機テンプレート法として、シリカ多孔体などの無機多孔体構造テンプレートとして用い、その細孔内に、糖類等の炭素前駆体(炭素源)を浸漬させた後、水熱処理し、最後に無機多孔体をフッ化水素酸などの強酸溶解除去する方法がある(非特許文献7、8等)。該方法によれば、表面官能基を有し、かつ多孔性の炭素材料を得ることができる。
しかし、得られる多孔体細孔構造は、シリカ多孔体の逆構造(レプリカ)であって、前記の界面活性剤や両親媒性ポリマー等の高次集合体の構造をそのまま反映したものではない。例えば、ヘキサゴナル構造と呼ばれる、ハニカム状チャンネル構造を得ることは非常に困難と思われる。さらに、この方法では、シリカ多孔体そのものの合成が必要であるほか、強酸によるエッチングなどの工業的生産にはそぐわないステップを必要とするため、産業界での実用化の面で問題がある。

一方、特許文献4及び非特許文献9には、アルギン酸ペクチンアミロース、キトサンなどの炭水化物を原料として、構造鋳型剤(テンプレート)を用いることなく、メソ孔を有する多孔質炭素を得ることが記載されている。これらの文献に記載の方法では、多糖を、水に溶解させ、加温することで、粘性の高いゲルを得、該ゲルを冷却することにより、多糖分子水素結合により繋がれた多糖ゲルを得、その後さらに該多糖ゲルを乾燥させた後、有機酸存在下、数百℃で、真空または不活性雰囲気下焼成することにより、多孔質炭素を得ている。
しかしながら、この方法では、構造形成は、水による多糖ネットワーク膨潤と多糖分子間の水素結合に基づくため、構造形成における配向性の誘発は容易ではなく、よって、得られる炭素材料のナノ構造に、明確な配向性を持たせたり、配向度合いや種類を制御したりすることは難しい。また、焼成により炭素ネットワークの芳香族化が進み、400℃付近以上の温度で焼成すると、含酸素官能基の多くが損失されてしまう。

概要

安価な炭素前駆体(炭素源)を用いて、簡便かつエネルギー消費の少ない手法で、ヒドロキシル基カルボニル基カルボキシル基などの含酸素官能基やアルキル基などの官能基を有する多孔質炭素を提供する。炭素前駆体(炭素源)として糖の脂肪酸エステルを用い、これを100〜350℃で水熱処理することにより、構造鋳型剤(テンプレート)を用いることなく、簡便かつエネルギー消費の少ない手法で、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシル基などの含酸素官能基やアルキル基などの官能基を有する多孔質炭素を得る。

目的

特開2004−59904号公報
特開2014−34475号公報
特開2010−267542号公報
国際公開第2009/037354号




Y.Meng,D.Gu,F.Zhang,Y.Shi,H.Yang,Z.Li,Z.Yu,B. Tu,D.Zhao,Angew.Chem.Int.Ed.2005,44,7053-7059.
C.Liang,K.Hong,G.A.Guiochon,J.W.Mays,S.Dai,Angew.Chem.Int.Ed.2004,43,5785-5789.
M-M.Titirici,M.Antonietti,Chem.Soc.Rev.2010,39,103-116.
C.Falco,F.P.Caballero,F.Babonneau,C.Gervais,G.Laurent.M-M,Titirici.N.Baccile,Langmuir,2011,27,14460.
R.J.White,M.Antonietti,M-M.Titirici,J.Mater.Chem. 2009,19,8645.
S.Kubo,R.J.White,N.Yoshizawa,M.Antonietti,M-M.Titirici,Chem.Mater.2011,23,4882-4885.
M-M.Titirici,A.Thomas,M.Antonietti,J.Mater.Chem.2007,17,3412-3418.
M-M.Titirici,A.Thomas,M.Antonietti,Adv.Funct.Mater.2007,17,1010-1018.
Budarin et al.,Angew.Chem.Int.Ed.2006,45,3782-3786.






前述のとおり、官能基を有する多孔質炭素を、簡便かつエネルギー消費の少ない手法で、安価な原料を用いて得ることが望まれている

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

この技術が所属する分野

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

請求項2

炭素骨格に前記脂肪酸由来アルキル基を含有することを特徴とする請求項1に記載の多孔質炭素。

請求項3

前記脂肪酸のアルキル基が、二重結合を含んでもよい炭素数1〜100のアルキル基であることを特徴とする請求項1又は2に記載の多孔質炭素。

請求項4

糖の脂肪酸エステルを原料とする水熱反応生成物の焼成物からなる多孔質炭素。

請求項5

炭素骨格にヒドロキシル基を含有することを特徴とする請求項4に記載の多孔質炭素。

請求項6

前記糖が、窒素を含んでいてもよい、単糖二糖又は多糖、或いはこれらの2種類以上の混合物である請求項1〜5のいずれか1項に記載の多孔質炭素。

請求項7

前記糖の脂肪酸エステルが、モノエステルジエステル又はポリエステル、或いはこれらの2種類以上の混合物である請求項1〜6のいずれか1項に記載の多孔質炭素。

請求項8

窒素吸着測定により算出される全細孔容量が、0.04〜5cm3/gであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の多孔質炭素。

請求項9

配向性ナノ構造を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の多孔質炭素。

請求項10

請求項1〜9のいずれか1項に記載の多孔質炭素を主成分とする吸着剤

請求項11

請求項1〜9のいずれか1項に記載の多孔質炭素を主成分とする多孔質担体

請求項12

前記多孔質担体が、触媒担体分離担体クロマト担体生体分子足場材、生体分子捕捉材、薬物包含材又は香料担体のいずれかである請求項11に記載の多孔質担体。

請求項13

請求項1〜9のいずれか1項に記載の多孔質炭素を主成分とする電極材

請求項14

請求項13に記載の電極材を用いた電極を備えた二次電池

請求項15

請求項13に記載の電極材を用いた電極を備えた電気化学キャパシタ

請求項16

請求項13に記載の電極材を用いた電極を備えた燃料電池

請求項17

請求項13に記載の電極材を用いた電極を備えたセンサー

請求項18

請求項1〜9のいずれか1項に記載の多孔質炭素を主成分とする食品用添加剤

請求項19

請求項1〜9のいずれか1項に記載の多孔質炭素を含有する食品

請求項20

請求項1〜9のいずれか1項に記載の多孔質炭素を主成分とする化粧品用添加剤

請求項21

糖の脂肪酸エステルを100〜350℃で水熱処理し、得られた固体を水及び有機溶媒洗浄した後、乾燥させることを特徴とする多孔質炭素の製造方法。

請求項22

前記脂肪酸のアルキル基が、二重結合を含んでもよい炭素数1〜100のアルキル基である請求項21に記載の多孔質炭素の製造方法。

請求項23

前記糖が、窒素を含んでいてもよい、単糖、二糖又は多糖、或いはこれらの2種類以上の混合物である請求項21又は22に記載の多孔質炭素の製造方法。

請求項24

前記糖の脂肪酸エステルが、モノエステル、ジエステル又はポリエステル、或いはこれらの2種類以上の混合物である請求項21〜23のいずれか1項に記載の多孔質炭素の製造方法。

請求項25

請求項21〜24のいずれか1項に記載の方法で多孔質炭素を製造した後、さらに焼成することを特徴とする多孔質炭素の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、多孔質炭素及びその製造方法に関する。

背景技術

0002

多孔質炭素は、その細孔を利用して、吸着剤分離材触媒担体カラム担体、薬物包含材等として産業界で非常に重要な材料である。さらに近年では、細孔空間電解質の効率移動空間として利用した二次電池キャパシタセンサーなどの炭素電極としての利用が幅広く実用化されており、分離材や電極材料としての利用においては、化学修飾により機能性を付与した多孔質炭素が好ましく用いられている。

0003

多孔質炭素は種々の方法により製造されるが、その1つに、界面活性剤又はブロック共重合体などの両親媒性化合物を構造鋳型剤として用い、それらの存在下で炭素前駆体炭素源)の炭素化を進行させる、いわゆる有機テンプレート法がある。
例えば、特許文献1には、モノマーおよび/またはプレポリマー中に、鋳型である界面活性剤のミセルを形成させた後、前記モノマーおよび/またはプレポリマーを重合硬化させて、ミセル含有有機ポリマーを形成し、さらにこの有機ポリマー焼成して炭素化を行う方法が開示されている。また、特許文献2、非特許文献1、2等には、構造鋳型剤としてブロック共重合体を用い、炭素前駆体として、フェノールホルムアルデヒド、またはレゾルシノールなどのフェノール系樹脂を用いていることが開示されている。
しかしながら、これらの方法では、原料分子内に含酸素官能基が少ないこと、炭素化には、高温熱処理が必要であり、その際に官能基を失うこと、などが要因となり、得られる炭素材料中の含酸素官能基の量は限られる。そのため、分離担体や電極材料としての利用に重要な、化学修飾による炭素への機能性の付与は難しい。また、これらの方法で得られる炭素材料は、水相での用途は限られることが予想される。

0004

一方、糖の水熱反応生成物からなる炭素材料の炭素骨格フラン骨格基本骨格として含むことは既に公知であり、糖やバイオマスを原料とした水熱合成によれば、含酸素官能基を豊富に有する炭素材料が得られる(非特許文献3、4)。また、キチンキトサングルコースアミン等の窒素を含む糖を炭素源とした水熱合成によれば、窒素がドープされた炭素材料が得られることも公知になっている(非特許文献5)。
こうした糖の水熱合成に、ブロック共重合体などの両親媒性化合物を有機テンプレートとする合成手法を組み合わせることにより、多孔質炭素を得ることができる(非特許文献6)。しかしながら、現在発表されている、有機テンプレートを用いるプロセスでは、数百℃以上(例えば550℃)の不活性雰囲気下での加熱処理による構造鋳型剤の熱分解除去が必要であり、合成におけるエネルギーコストが余計にかかる。また、加熱処理時に、表面官能基の量が減少することを防ぐことができない。

0005

また、無機テンプレート法として、シリカ多孔体などの無機多孔体構造テンプレートとして用い、その細孔内に、糖類等の炭素前駆体(炭素源)を浸漬させた後、水熱処理し、最後に無機多孔体をフッ化水素酸などの強酸溶解除去する方法がある(非特許文献7、8等)。該方法によれば、表面官能基を有し、かつ多孔性の炭素材料を得ることができる。
しかし、得られる多孔体細孔構造は、シリカ多孔体の逆構造(レプリカ)であって、前記の界面活性剤や両親媒性ポリマー等の高次集合体の構造をそのまま反映したものではない。例えば、ヘキサゴナル構造と呼ばれる、ハニカム状チャンネル構造を得ることは非常に困難と思われる。さらに、この方法では、シリカ多孔体そのものの合成が必要であるほか、強酸によるエッチングなどの工業的生産にはそぐわないステップを必要とするため、産業界での実用化の面で問題がある。

0006

一方、特許文献4及び非特許文献9には、アルギン酸ペクチンアミロース、キトサンなどの炭水化物を原料として、構造鋳型剤(テンプレート)を用いることなく、メソ孔を有する多孔質炭素を得ることが記載されている。これらの文献に記載の方法では、多糖を、水に溶解させ、加温することで、粘性の高いゲルを得、該ゲルを冷却することにより、多糖分子水素結合により繋がれた多糖ゲルを得、その後さらに該多糖ゲルを乾燥させた後、有機酸存在下、数百℃で、真空または不活性雰囲気下焼成することにより、多孔質炭素を得ている。
しかしながら、この方法では、構造形成は、水による多糖ネットワーク膨潤と多糖分子間の水素結合に基づくため、構造形成における配向性の誘発は容易ではなく、よって、得られる炭素材料のナノ構造に、明確な配向性を持たせたり、配向度合いや種類を制御したりすることは難しい。また、焼成により炭素ネットワークの芳香族化が進み、400℃付近以上の温度で焼成すると、含酸素官能基の多くが損失されてしまう。

0007

特開2004−59904号公報
特開2014−34475号公報
特開2010−267542号公報
国際公開第2009/037354号

先行技術

0008

Y.Meng,D.Gu,F.Zhang,Y.Shi,H.Yang,Z.Li,Z.Yu,B. Tu,D.Zhao,Angew.Chem.Int.Ed.2005,44,7053-7059.
C.Liang,K.Hong,G.A.Guiochon,J.W.Mays,S.Dai,Angew.Chem.Int.Ed.2004,43,5785-5789.
M-M.Titirici,M.Antonietti,Chem.Soc.Rev.2010,39,103-116.
C.Falco,F.P.Caballero,F.Babonneau,C.Gervais,G.Laurent.M-M,Titirici.N.Baccile,Langmuir,2011,27,14460.
R.J.White,M.Antonietti,M-M.Titirici,J.Mater.Chem. 2009,19,8645.
S.Kubo,R.J.White,N.Yoshizawa,M.Antonietti,M-M.Titirici,Chem.Mater.2011,23,4882-4885.
M-M.Titirici,A.Thomas,M.Antonietti,J.Mater.Chem.2007,17,3412-3418.
M-M.Titirici,A.Thomas,M.Antonietti,Adv.Funct.Mater.2007,17,1010-1018.
Budarin et al.,Angew.Chem.Int.Ed.2006,45,3782-3786.

発明が解決しようとする課題

0009

前述のとおり、官能基を有する多孔質炭素を、簡便かつエネルギー消費の少ない手法で、安価な原料を用いて得ることが望まれている。また、炭素源の重合をより直接的にかつ精密に制御できる可能性を利用して、薄膜単分子二分子膜、各種基板との積層体を形成することが期待されている。

0010

本発明は、こうした現状を鑑みてなされたものであって、安価な炭素前駆体(炭素源)を用いて、簡便かつエネルギー消費の少ない手法で、ヒドロキシル基カルボニル基カルボキシル基などの含酸素官能基やアルキル基などの官能基を有する多孔質炭素を提供することを目的とするものである。

課題を解決するための手段

0011

上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、炭素前駆体(炭素源)として糖の脂肪酸エステルを用いることにより、構造鋳型剤(テンプレート)を用いることなく、簡便かつエネルギー消費の少ない手法で、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシル基などの含酸素官能基やアルキル基などの官能基を有する多孔質炭素を製造できるという知見を得た。

0012

本発明はこれらの知見に基づいて完成に至ったものであり、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]糖の脂肪酸エステルを原料とする水熱反応生成物からなる多孔質炭素。
[2]炭素骨格に前記脂肪酸由来のアルキル基を含有することを特徴とする[1]に記載の多孔質炭素。
[3]前記脂肪酸のアルキル基が、二重結合を含んでもよい炭素数1〜100のアルキル基であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の多孔質炭素。
[4]糖の脂肪酸エステルを原料とする水熱反応生成物の焼成物からなる多孔質炭素。
[5]炭素骨格にヒドロキシル基を含有することを特徴とする[4]に記載の多孔質炭素。
[6]前記糖が、窒素を含んでいてもよい、単糖二糖又は多糖、或いはこれらの2種類以上の混合物である[1]〜[5]のいずれかに記載の多孔質炭素。
[7]前記糖の脂肪酸エステルが、モノエステルジエステル又はポリエステル、或いはこれらの2種類以上の混合物である[1]〜[6]のいずれかに記載の多孔質炭素。
[8]窒素吸着測定により算出される全細孔容量が、0.04〜5cm3/gであることを特徴とする[1]〜[7]のいずれかに記載の多孔質炭素。
[9]配向性のナノ構造を有することを特徴とする[1]〜[8]のいずれかに記載の多孔質炭素。
[10][1]〜[9]のいずれかに記載の多孔質炭素を主成分とする吸着剤。
[11][1]〜[9]のいずれかに記載の多孔質炭素を主成分とする多孔質担体
[12]前記多孔質担体が、触媒担体、分離担体、クロマト担体生体分子足場材、生体分子捕捉材、薬物包含材又は香料担体のいずれかである[11]に記載の多孔質担体。
[13][1]〜[9]のいずれかに記載の多孔質炭素を主成分とする電極材
[14][13]に記載の電極材を用いた電極を備えた二次電池。
[15][13]に記載の電極材を用いた電極を備えた電気化学キャパシタ
[16][13]に記載の電極材を用いた電極を備えた燃料電池
[17][13]に記載の電極材を用いた電極を備えたセンサー。
[18][1]〜[9]のいずれかに記載の多孔質炭素を主成分とする食品用添加剤
[19][1]〜[9]のいずれかに記載の多孔質炭素を含有する食品
[20][1]〜[9]のいずれかに記載の多孔質炭素を主成分とする化粧品用添加剤
[21]糖の脂肪酸エステルを100〜350℃で水熱処理し、得られた固体を水及び有機溶媒洗浄した後、乾燥させることを特徴とする多孔質炭素の製造方法。
[22]前記脂肪酸のアルキル基が、二重結合を含んでもよい炭素数1〜100のアルキル基である[21]に記載の多孔質炭素の製造方法。
[23]前記糖が、窒素を含んでいてもよい、単糖、二糖又は多糖、或いはこれらの2種類以上の混合物である[21]又は[22]に記載の多孔質炭素の製造方法。
[24]前記糖の脂肪酸エステルが、モノエステル、ジエステル又はポリエステル、或いはこれらの2種類以上の混合物である[21]〜[23]のいずれかに記載の多孔質炭素の製造方法。
[25][21]〜[24]のいずれかに記載の方法で多孔質炭素を製造した後、さらに焼成することを特徴とする多孔質炭素の製造方法。

発明の効果

0013

本発明によれば、安価な原料を用いて、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシル基などの含酸素官能基及びアルキル基等の原料由来の官能基を残したままの多孔質炭素を、簡便かつエネルギー消費の少ない手法で得ることができる。また、本発明によれば、不活性雰囲気下で焼成した後の多孔質炭素において、芳香族性が高まるばかりでなく、ヒドロキシル基等の含酸素官能基を有する多孔質炭素を得ることができる。さらに、本発明によれば、厚さ数十〜200nm程度のシート状炭素(炭素薄膜)を得ることができる。

図面の簡単な説明

0014

実施例1〜6および比較例1、2で得られる材料のフーリエ変換赤外吸収スペクトル
実施例7〜8および比較例3で得られる材料のフーリエ変換赤外吸収スペクトル
実施例1〜8で得られる材料の窒素吸着等温線
比較例1および2で得られる材料の窒素吸着等温線
実施例1で得られる材料の走査型電子顕微鏡像
実施例1で得られる材料の透過型電子顕微鏡像
実施例2で得られる材料の走査型電子顕微鏡像
実施例2で得られる材料の透過型電子顕微鏡像
実施例3で得られる材料の走査型電子顕微鏡像
実施例4で得られる材料の走査型電子顕微鏡像
実施例4で得られる材料の透過型電子顕微鏡像
実施例5で得られる材料の走査型電子顕微鏡像
実施例5で得られる材料の透過型電子顕微鏡像
実施例6で得られる材料の走査型電子顕微鏡像
比較例1で得られる材料の走査型電子顕微鏡像
比較例1で得られる材料の透過型電子顕微鏡像
比較例2で得られる材料の走査型電子顕微鏡像
実施例7で得られる材料の走査型電子顕微鏡像
実施例7で得られる材料の透過型電子顕微鏡像
実施例8で得られる材料の走査型電子顕微鏡像
比較例3で得られる材料の走査型電子顕微鏡像

0015

本発明の多孔質炭素は、原料として糖の脂肪酸エステルを用い、その水熱反応により得られるものであって、原料に糖の脂肪酸エステルを用いることにより、基本骨格である炭素骨格内に、該脂肪酸エステルに由来のアルキル基を含有すること、或いは、該水熱反応により得られた生成物の焼成物からなるものであることを特徴とするものである。
また、本発明の多孔質炭素の製造方法は、炭素前駆体(炭素源)として糖の脂肪酸エステルを用い、これを100〜350℃で水熱処理し、得られた固体を水及び有機溶媒で洗浄した後、乾燥させる、或いはさらに、焼成することを特徴とするものである。

0016

本発明において、水熱反応の原料として用いる糖の脂肪酸エステルは、両親媒性分子であるため、従来のような鋳型を用いずとも、多孔質炭素を得ることができる。
また、本発明によれば、従来のような鋳型を除去するに必要な焼成工程を必要としないため、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシル基などの含酸素官能基および上記両親媒性分子由来のアルキル基などの官能基を有する多孔質炭素を得ることができる。
さらに、両親媒性分子であるショ糖脂肪酸エステルを原料とする本発明の手法によれば、厚さ数十〜200nm程度のシート状炭素(炭素薄膜)や、単分子・二分子膜および各種基板との積層体の形成が可能となる。

0017

以下、本発明の多孔質炭素及びその製造方法についてさらに詳しく説明する。

0018

[糖の脂肪酸エステル]
本発明においては、水熱反応の炭素源として、糖の脂肪酸エステルを用いる。
糖としては、果糖ブドウ糖などの単糖、ショ糖などの二糖、アルギン酸、ペクチン、アミロース等の多糖、又はキチン、キトサン、グルコースアミン等の窒素を含む糖のいずれでもよく、或いはこれらの2種類以上の混合物であっても良い。
また、脂肪酸エステルとしては、脂肪酸の結合数が、1のモノエステル、2のジエステル、又は3以上のポリエステル、或いはこれらの2種類以上の混合物が用いられる。

0019

このように、本発明において用いられる糖の脂肪酸エステルは特に限定されないが、例えば、下記の式1〜3で表されるもの、或いはこれらの混合物等が挙げられる。ただし、式中、脂肪酸部位は、上記化学構造式とは異なる部位に導入されていても良い。言い換えれば、糖のどの部位のOH基エステル化されてアルキル基が伸長しているかは問わない。

0020

0021

0022

0023

脂肪酸のアルキル基は、二重結合を含んでいてもよく、上記式中のnが、1〜100、好ましくは、1〜50、さらに好ましくは1〜20のものが用いられる。
本発明の糖の脂肪酸エステルは、アルキル鎖長の異なる糖の脂肪酸エステルを混合して用いてもよく、さらに、ジエステルおよびポリエステルにおいては、一つの糖の脂肪酸エステルの分子に2種類以上の異なるアルキル鎖長を含んでいてもよい。言い換えれば、ジエステルおよびポリエステルにおいては、糖の一分子内のOH基から、異なる鎖長のアルキル基が伸長していても良い。
また、本発明における糖の脂肪酸エステルは、合成品でもよく、或いは、入手可能な市販品でも良い。入手容易な市販品としては、具体的には、ショ糖ラウリン酸エステルショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖ベヘニン酸エステル等が挙げられる。

0024

[水熱合成]
本発明の多孔質炭素は、以下の1〜3の工程で合成される。
工程1:糖の脂肪酸エステルを水に溶解させ、溶液密閉加熱する工程
工程2:得られる固体を回収し、室温で洗浄した後、乾燥させる工程
工程3:乾燥後の固体を加温下で溶媒洗浄した後、乾燥させる工程
ただし、用いる原料の種類によっては工程3を省略しても良い。
以下、順に説明する。

0025

(工程1)
前記工程1は、濃度1〜70重量パーセントの糖の脂肪酸エステルの水溶液(以下、「原料水溶液」ということもある)を、100〜350℃において密閉容器内で、1時間以上加熱することにより行われる。
水熱反応の原料である原料水溶液中に、従来用いられている、例えば、ポリエチレンオキシドポリプロピレンオキシド−ポリエチレンオキシドトリブロック共重合体などの両親媒性ポリマーや、ドデシル硫酸ナトリウムなどの一般的な界面活性剤、ポリスチレン粒子などの有機コロイド又はシリカ粒子などの無機コロイドなどのテンプレート剤を加えて使用しても良い。また、従来のシリカ多孔体などの無機多孔質テンプレート剤を加えて使用しても良い。また、これらの従来のテンプレート剤を2種類以上混合して加えても良い。
また、前記原料水溶液中に、従来の、果糖、ブドウ糖などの単糖、ショ糖などの二糖、アルギン酸、ペクチン、アミロース等の多糖、又はキチン、キトサン、グルコースアミン等の窒素を含む糖、或いはこれらの2種類以上の混合物を加えても良い。
また、前記原料水溶液中に、窒素や硫黄をドープするための添加物を加えても良い。こうした添加剤として、システインアルブミンオボアルブミンチオフェンアルデヒドなどが挙げられる。
また、前記原料水溶液中に、pH調整剤を添加して合成しても良い。
さらに、前記原料水溶液中に、塩酸硫酸硝酸ボロン酸などの無機酸またはトルエンスルホン酸などの有機酸等の酸、或いは、水酸化ナトリウム水酸化アンモニウムなどの無機塩基等の塩基を加えても良い。
さらに、細孔膨潤剤として、例えば、ヘキサントリメチルベンゼンシメンなどの有機系の添加物を加えても良い。
さらにまた、o/wエマルジョンコロイド分散剤と組み合わせて用いてもよい。

0026

(工程2、3)
本発明の多孔質炭素は、水熱合成反応で得られた固体を水及び有機溶媒で洗浄した後、乾燥させることにより得られる。有機溶媒としては、特に限定されないが、エタノールアセトンジエチルエーテルなどが好ましく用いられる。
具体的には、水熱合成後に得られる色い固体を、十分な量の水および有機溶媒でそれぞれ室温以上の温度で洗浄した後、室温以上の温度で3時間以上乾燥させる。真空条件下において乾燥させても良い。本乾燥後の茶色い固体に有機溶媒を十分量加え、室温以上の温度で1時間以上、撹拌洗浄する。攪拌洗浄後の茶色い固体を室温以上の温度で3時間以上乾燥させることにより、目的とする糖の脂肪酸由来の多孔質炭素材料を得る。真空条件下において乾燥させても良い。また有機溶媒による攪拌洗浄およびその後の乾燥工程は、用いる糖の脂肪酸エステルの種類によっては省いても良い。
上記の1回目の乾燥の代わりに、凍結乾燥法による乾燥を行っても良い。すなわち、十分な量の水および有機溶媒で洗浄した後に、試料に含まれる有機溶媒を水で置換した後、凍結乾燥を行う。
また上記の2回目の乾燥後に塩基による洗浄を行っても良い。

0027

[水熱反応生成物]
本発明において、糖の脂肪酸エステルを原料とする水熱合成により得られた多孔質炭素は、炭素骨格内に糖由来の含酸素官能基および脂肪酸由来のアルキル基を有し、大きさ数〜数百μmの塊状の形状や、厚さ数nm〜数μm程度のシート状の形状をなす。塊状およびシート状形状はさらに、数〜数十nmの微粒子が互いに連結した構造もしくは、太さ数〜数十nmの共連続様の構造からなっている。さらに、本微粒子連結形態に緩やかな配向性を持たせることができる。得られた粉体窒素吸着による細孔評価では、0.04〜3cm3/gの細孔容量を示す。

0028

(不活性雰囲気下での焼成処理
通常、糖から水熱合成手法で得られる炭素骨格は、400〜500℃以上での不活性雰囲気下における焼成により炭素骨格の芳香族化が進行し、焼成温度の更なる上昇とともに、炭素材料は良好な電気伝導性を帯び電極材料などとしての用途が開けることが知られている。
本発明においても、前記の乾燥後の多孔質炭素を、さらに不活性雰囲気下で焼成することにより、芳香族性を高めることができる。
具体的には、前記乾燥後の多孔質炭素を、50mL/min以上の不活性ガスフロー下において、200℃以上の温度で焼成する。不活性ガスとしては、窒素やアルゴンヘリウム等が用いられる。

0029

糖から得られた炭素材料を焼成した後の炭素材料は、焼成により炭素ネットワークの芳香族化が進み、通常400℃付近以上の温度で焼成すると、含酸素官能基の多くが損失されてしまう(特許文献4、非特許文献9参照)。
これに対し、本発明における、糖の脂肪酸エステルの水熱合成から得られた炭素材料を不活性雰囲気下で焼成して得られた多孔質炭素は、比較的高い芳香族性とともに、含酸素官能基(ヒドロキシル基)を含有することを特徴としている。
また、本発明における、この焼成後の多孔質炭素は、大きさ数〜数百μmの塊状の形状や、厚さ数nm〜数μm程度のシート状の形状をなし、塊状およびシート状の形状はさらに、数〜数十nmの微粒子が互いに連結した構造からなっている。

0030

さらに、本発明における、この焼成後の多孔質炭素は、窒素吸着による細孔評価では、0.2〜5cm3/gの細孔容量を示す。通常、糖そのものから得られる炭素材料を同様に不活性雰囲気下で焼成した場合の細孔容量は、0.15cm3g−1以下である(L.Yu et al.,Langmuir,2012,28.12373参照)ことからみて、本発明においては、原料として糖の脂肪酸エステルを用いることにより、より細孔容量が大きいものが得られるといえる。

0031

本発明の、糖の脂肪酸エステルを原料とする水熱反応生成物からなる多孔質炭素、或いは該水熱反応生成物の焼成物からなる多孔質炭素は、その小さな孔(細孔)を利用して、吸着剤、及び触媒担体、分離担体、クロマト担体、生体分子足場材、生体分子捕捉材、薬物包含材又は香料担体等の多孔質担体として用いることができるばかりでなく、細孔空間を電解質の効率移動空間として利用した二次電池やキャパシタ、燃料電池、センサーなどの炭素電極としての利用が可能である。
また、本発明の多孔質炭素は、糖の脂肪酸エステルを原料とするものであるため、環境負荷が少ないばかりでなく、生体分子足場材、生体分子捕捉材、薬物包含材等の医療用途に好ましく用いることができ、さらに、食品、食品用添加剤又は化粧品添加剤等にも用いることができる。
また、本発明の多孔質炭素は、ヒドロキシル基やカルボニル基、カルボキシル基などの含酸素官能基や糖の脂肪酸エステル由来のアルキル基などの官能基を有するため、これらの官能基を用いて、種々の機能性を付与した多孔質炭素を提供することができる。

0032

以下に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。

0033

評価方法
以下に記載する実施例及び比較例で得られた炭素材料に含まれる官能基を、フーリエ変換赤外吸収分光法により確認した。
図1(A)(B)は、実施例1〜6及び比較例1、2で得られた炭素材料のフーリエ変換赤外吸収スペクトルであり、(B)は、脂肪酸由来のアルキル基の吸収ピークを詳細に解析するために、(A)のスペクトル波数4000−2000cm−1の範囲を拡大したものである。
図2は、実施例7、8及び比較例3で得られた炭素材料のフーリエ変換赤外吸収スペクトルである。

0034

また、実施例及び比較例で得られた炭素材料の全細孔容積を、窒素吸着法により測定した。
図3は、実施例1〜8で得られた炭素材料の窒素吸着等温線であり、図4は、比較例1,2で得られた炭素材料の窒素吸着等温線である。

0035

さらに、実施例及び比較例で得られた炭素材料について、走査型電子顕微鏡及び透過型電子顕微鏡による観察を行った。なお、透過型電子顕微鏡による観察は、得られた粒子を、より詳細に観察するためのものであり、得られた炭素材料を熱硬化性樹脂中に包埋し、該包埋材料をミクロトームで厚さ数十〜100nmに薄切して得た薄片試料を観察した。
図5図21は、実施例及比較例で得られた炭素材料の各観察像である。

0036

[実施例1]
(工程1)
糖の脂肪酸エステルとして、分子式C30H57O12で表される、ショ糖ステアリン酸エステル(第一工業製薬株式会社 DKエステルSSHLB19、モノエステル率;約100%)4gを10mLの脱イオン水に溶解させた。一晩静置させた後、密閉容器内で、120℃で103時間加熱した。
(工程2)
得られた茶色い固体を回収した。通常3層に分かれて析出するが、そのうち最も比重の小さい、最上層を取り出した。約40mLの脱イオン水を注いでシェーカー振とうした後、遠心分離し固体を沈殿させた。上澄み溶液を取り除き、再び同量の脱イオン水を注ぎ、同様の操作をさらにあと2回繰り返した。次いで約40mLのエタノールを注いで、同様に振とう、遠心分離を行った。上澄み溶液を取り除き、本操作をさらにあと2回繰り返した。得られた沈殿を65℃で一晩以上乾燥させた。
(工程3)
乾燥後の茶色い固体にエタノール50mLを加え、60℃で一晩以上撹拌洗浄した。洗浄後、遠心分離を行い、上澄みを取り除いた後、エタノールを40mL加え、室温で振とうさせた。遠心分離を行った後、上澄みを取り除いた。本操作をもう一度繰り返した。沈殿を65℃で一晩以上乾燥させることにより、目的とするショ糖脂肪酸エステル由来の炭素材料を得た。

0037

(フーリエ変換赤外吸収スペクトル)
実施例1で得られた炭素材料では、カルボキシル基やカルボニル基に由来するC=O(伸縮、1800〜1520cm−1)やOH(伸縮、3700〜3100cm−1)に帰属されるピークが認められることから、炭素材料中に含酸素官能基が存在することが分かった。さらに、2955cm−1付近(CH3対称伸縮振動)、2920cm−1付近(vCH2逆対称)、および2851cm−1付近(vCH2対称)に脂肪酸由来のアルキル基に特徴的なピークが見られ、アルキル基も有することが分かった。

0038

(窒素吸着等温線)
実施例1で得られた炭素材料は、高相対圧付近において、わずかではあるが等温線立ち上がりが見られ、算出された全細孔容量は0.04cm3/g(表2)であった。

0039

(走査型電子顕微鏡像及び透過型電子顕微鏡像)
実施例1で得られた炭素材料の走査型電子顕微鏡像を図5に示す。数〜数十nmの粒子が互いに連なり、数〜数十μmの大きさの粒子が形成されている様子が観察された。
実施例1で得られた炭素材料の透過型電子顕微鏡像を図6に示す。の太さが数十nm程度の共連続様の構造が形成されている様子が観察された。

0040

よって、本実施例から、糖の脂肪酸エステルを原料とした水熱合成により多孔質炭素が得られ、その材料は含酸素官能基およびアルキル基を有することが分かった。
なお、実施例1の工程2において、3層に分かれて析出する固体のうち、比重の最も大きい最下層を取り出し、それ以外の操作を実施例1と同様に行っても炭素材料が得られたが、その炭素材料では脂肪酸由来のアルキル基は有しなかった。

0041

[実施例2]
本実施例では、実施例1と同じショ糖脂肪酸エステルを用い、工程2において比重の二番目に小さい中間層を取り出した。本実施例における工程を以下に示す。
(工程1)
糖の脂肪酸エステルとして、分子式C30H57O12で表される、ショ糖ステアリン酸エステル(第一工業製薬株式会社 DKエステルSS,HLB19、モノエステル率;約100%)4gを10mLの脱イオン水に溶解させた。一晩静置させた後、密閉容器内で、120℃で103時間加熱した。
(工程2)
得られた茶色い固体を回収した。通常3層に分かれて析出するが、そのうち実施例1とは異なり、二番目に比重の小さい中間層を取り出した。約40mLの脱イオン水を注いで、シェーカーで振とうした後、遠心分離し固体を沈殿させた。上澄み溶液を取り除き、再び同量の脱イオン水を注ぎ、同様の操作をさらにあと2回繰り返した。次いで約40mLのエタノールを注いで、同様に振とう、遠心分離を行った。上澄み溶液を取り除き、本操作をさらにあと2回繰り返した。得られた沈殿を65℃で一晩以上乾燥させた。
(工程3)
乾燥後の茶色い固体にエタノール50mLを加え、60℃で一晩以上撹拌洗浄した。洗浄後、遠心分離を行い、上澄みを取り除いた後、エタノールを40mL加え、室温で振とうさせた。遠心分離を行った後、上澄みを取り除いた。本操作をもう一度繰り返した。沈殿を65℃で一晩以上乾燥させることにより、目的とするショ糖脂肪酸エステル由来の炭素材料を得た。

0042

(フーリエ変換赤外吸収スペクトル)
実施例2で得られた炭素材料では、カルボキシル基やカルボニル基に由来するC=O(伸縮、1800〜1520cm−1)やOH(伸縮、3700〜3100cm−1)に帰属されるピークが認められることから、炭素材料中に含酸素官能基が存在することが分かった。さらに、波数2955cm−1付近(CH3対称伸縮振動)、2924cm−1付近(vCH2逆対称)、および2853cm−1付近(vCH2対称)に脂肪酸由来のアルキル基に特徴的なピークが見られ、アルキル基も存在することが分かった。

0043

ここで、観測されたアルキル基は、原料であるショ糖脂肪酸エステル分子内のエステル結合水熱条件下切れて、脂肪酸が炭素材料に物理混合された結果生じている可能性も否定できない。そこで、本アルキル基が炭素材料内に物理的に混合された脂肪酸に由来するものではなく、共有結合によってアルキル基が炭素骨格内に組み込まれた結果生じていることを確かめるため、実施例2において工程3の操作を2回行った後、フーリエ変換赤外吸収測定を行い、本工程前後での赤外吸収スペクトルにおける脂肪酸由来アルキル基のピーク強度を比較した。脂肪酸は通常水にはほとんど溶けないが(溶解度:0.0003%、20℃)、加温したエタノールにはやや溶けやすい。アルキル基と炭素とが物理的に混合したものであった場合、2回洗浄後にはより多くのアルキル基が除去されることにより、上記で見られたアルキル基のピーク強度が減少するはずである。

0044

工程3を2回行った後の、フーリエ変換赤外吸収スペクトルを図1(A)および(B)に示す(“実施例2(EtOH2回洗浄後“)と表示されたスペクトルである)。工程3を2回行った材料についても、波数2957cm−1付近(CH3対称伸縮振動)、2924cm−1付近(vCH2逆対称)、および2855cm−1付近(vCH2対称)に脂肪酸由来のアルキル基に特徴的なピークが見られたことから、アルキル基と炭素とが物理的に混合したものではなく、炭素骨格内にアルキル基が共有結合で組み込まれていると考えられる。

0045

(窒素吸着等温線)
実施例2で得られた炭素材料は、高相対圧付近において、実施例1よりも等温線の立ち上がりが大きく見られ、算出された全細孔容量は0.16cm3/g(表2)であり、実施例1よりも大きかった。

0046

(走査型電子顕微鏡像及び透過型電子顕微鏡像)
実施例2で得られた炭素材料の走査型電子顕微鏡像を図7に示す。数〜数十nmの粒子が互いに連なっている様子が観察された。また本連結体は、厚さ数十〜200nm程度のシート状の形状をなしていた。
実施例2で得られた炭素材料の透過型電子顕微鏡像を図8に示す。図8は、シート形状の断面を表していると考えられ、本シート形状は数〜数十nmの粒子が互いに連なることにより形成されている様子が観察された。

0047

よって、本実施例から、糖の脂肪酸エステルを原料とした水熱合成により多孔質炭素が得られ、その材料は含酸素官能基およびアルキル基を有することが分かった。

0048

[実施例3]
本実施例では、本実施例で得られた炭素材料の耐塩基性を調べるため、塩基による洗浄処理を行った。本塩基処理工程を含む合成を以下に示す。
(工程1)
糖の脂肪酸エステルとして、分子式C30H57O12で表される、ショ糖ステアリン酸エステル(第一工業製薬株式会社 DKエステルSS,HLB19、モノエステル率;約100%)4gを10mLの脱イオン水に溶解させた。一晩静置させた後、密閉容器内で、120℃で103時間加熱した。
(工程2)
得られた茶色い固体を回収した。通常3層に分かれて析出するが、そのうち実施例2と同様に、二番目に比重の小さい中間層を取り出した。約40mLの脱イオン水を注いで、シェーカーで振とうした後、遠心分離し固体を沈殿させた。上澄み溶液を取り除き、再び同量の脱イオン水を注ぎ、同様の操作をさらにあと2回繰り返した。次いで、約40mLのエタノールを注いで、同様に振とう、遠心分離を行った。上澄み溶液を取り除き、本操作をさらにあと2回繰り返した。得られた沈殿を65℃で一晩以上乾燥させた。
(工程3)
乾燥後の茶色い固体に、エタノール50mLを加え、60℃で、一晩以上、撹拌洗浄した。洗浄後、遠心分離を行い、上澄みを取り除いた後、エタノールを40mL加え、室温で振とうさせた。遠心分離を行った後、上澄みを取り除いた。本操作をもう一度繰り返した。沈殿を65℃で一晩以上乾燥させた。
(塩基処理工程)
工程3で得られた炭素材料を、0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液中で室温において撹拌した。撹拌後の炭素材料に約40mLの脱イオン水を注いでシェーカーで振とうした後、遠心分離し固体を沈殿させた。上澄み溶液を取り除いた後、約40mLのEtOHを注いでシェーカーで振とうした後、遠心分離し固体を沈殿させた。沈殿を65℃で一晩以上乾燥させることにより、目的とする水酸化ナトリウム処理炭素材料を得た。

0049

ショ糖脂肪酸由来炭素材料のアルキル基は、エステル基を介して炭素骨格に共有結合していると考えられる。そのため、エステル結合の耐塩基性が低い場合アルキル基の数が減少し、フーリエ変換赤外吸収スペクトルのアルキル基のピーク強度が減少することが予想される。

0050

(フーリエ変換赤外吸収スペクトル)
実施例3で得られた炭素材料では、OH(伸縮、3700〜3100cm−1)の大きな吸収ピークに影響を受けるため、実施例1や2に比べると明確ではないものの、波数2967cm−1付近(CH3対称伸縮振動)にやや吸収が見られる。2927cm−1付近(vCH2逆対称)、および2850cm−1付近(vCH2対称)に脂肪酸由来のアルキル基に特徴的なピークが見られ、炭素骨格内に組み込まれたアルキル基が保たれることが分かった。また、カルボキシル基やカルボニル基に由来するC=O(伸縮、1800〜1520cm−1)やOH(伸縮、3700〜3100cm−1)に帰属されるピークが認められることから、含酸素官能基も同時に保たれることが分かった。

0051

(窒素吸着等温線)
実施例3で得られた炭素材料は、高相対圧付近において、実施例2と類似した等温線の立ち上がりが確認され、算出された全細孔容量は0.17cm3/g(表2)であった。よって、細孔容量が保たれていることが分かった。

0052

(走査型電子顕微鏡像)
本実施例で得られた炭素材料の走査型電子顕微鏡像を図9に示す。数〜数十nmの粒子が互いに連なり、数〜数十μmの大きさの粒子が形成されている様子が観察された。

0053

よって、本実施例から、0.1Mの水酸化ナトリウム処理を行っても、ショ糖脂肪酸エステル由来の炭素材料の含酸素官能基とアルキル基、及び細孔容量は保たれることが分かった。

0054

[実施例4]
実施例1〜3において、ショ糖一分子につきアルキル基が一鎖連結したショ糖脂肪酸エステルを原料とした水熱合成により、含酸素官能基とアルキル基を有する多孔質炭素が得られることが分かった。
よって、本実施例では、用いるショ糖脂肪酸エステル原料の疎水鎖を、実施例1〜3で用いたショ糖脂肪酸エステルよりも増やして界面活性を増大させることにより、得られるショ糖脂肪酸エステル由来炭素材料の細孔容量の増大と配向性の付与を試みた。
実施例1〜3では糖一分子につきアルキル基が一鎖連結した分子を原料としたが、ここでは実施例1〜3とは異なり、ショ糖一分子につき、アルキル基が二鎖以上連結した分子を30%含むショ糖脂肪酸エステルを原料として用いた。本合成を以下に示す。
(工程1)
糖の脂肪酸エステルとして、分子式C33H62O12で表され、HLBが15、モノエステル率が70%のもの(第一工業製薬株式会社 DKエステルF160)1gを10mLの脱イオン水に溶解させた。一晩静置させた後、密閉容器内で、120℃で182時間加熱した。
(工程2)
得られた茶色い固体を回収した。通常、上層と下層の2層に分かれて析出するが、そのうち比重の小さい上層を取り出した。約40mLの脱イオン水を注いでシェーカーで振とうした後、遠心分離し固体を沈殿させた。上澄み溶液を取り除き、再び同量の脱イオン水を注ぎ、同様の操作をさらにあと2回繰り返した。次いで約40mLのエタノールを注いで同様に振とう、遠心分離を行った。上澄み溶液を取り除き、本操作をさらにあと2回繰り返した。得られた沈殿を65℃で一晩以上乾燥させた。
(工程3)
乾燥後の茶色い固体にエタノール50mLを加え、60℃で一晩以上撹拌洗浄した。洗浄後、遠心分離を行い、上澄みを取り除いた後、エタノールを40mL加え、室温で振とうさせた。遠心分離を行った後、上澄みを取り除いた。本操作をもう一度繰り返した。沈殿を65℃で一晩以上乾燥させることにより、目的とするショ糖脂肪酸エステル由来の炭素材料を得た。

0055

(フーリエ変換赤外吸収スペクトル)
実施例4で得られた炭素材料では、カルボキシル基やカルボニル基に由来するC=O(伸縮、1800〜1520cm−1)やOH(伸縮、3700〜3100cm−1)に帰属されるピークが認められることから、炭素材料中に含酸素官能基が存在することが分かった。さらに、通常波数2963cm−1付近に見られるCH3対称伸縮振動は明確には見られないものの、2922cm−1付近(vCH2逆対称)、および2853cm−1付近(vCH2対称)に脂肪酸由来のアルキル基に特徴的なピークが見られ、アルキル基も存在することが分かった。

0056

(窒素吸着等温線)
実施例4で得られた炭素材料は、高相対圧付近において、実施例1と同様にわずかではあるが等温線の立ち上がりが見られ、算出された全細孔容量は0.05cm3/g(表2)であった。

0057

(走査型電子顕微鏡像及び透過型電子顕微鏡像)
実施例4で得られた炭素材料の走査型電子顕微鏡像を図10に示す。本実施例で得られた炭素材料は、数〜数十nmの粒子が互いに連なっている様子が観察された。
実施例4で得られた炭素材料の透過型電子顕微鏡像を図11に示す。幹の太さが数十nm程度の共連続様の構造が形成されている様子が観察された。

0058

よって、本実施例から、ショ糖一分子につき、アルキル基が二鎖以上連結した分子を30%含むショ糖脂肪酸エステルを原料とした水熱合成によっても多孔質炭素が得られ、その材料は含酸素官能基およびアルキル基を有することが分かった。

0059

[実施例5]
本実施例においては、実施例4と同じショ糖脂肪酸エステルを用い、工程2において比重の大きい下層を取り出した。本合成を以下に示す。
(工程1)
糖の脂肪酸エステルとして、分子式C33H62O12で表され、HLBが15、モノエステル率が70%のもの(第一工業製薬株式会社 DKエステルF160)1gを10mLの脱イオン水に溶解させた。一晩静置させた後、密閉容器内で、120℃で182時間加熱した。
(工程2)
得られた茶色い固体を回収した。通常、上層と下層の2層に分かれて析出するが、そのうち実施例4とは異なり、比重の大きい下層を取り出した。約40mLの脱イオン水を注いでシェーカーで振とうした後、遠心分離し固体を沈殿させた。上澄み溶液を取り除き、再び同量の脱イオン水を注ぎ、同様の操作をさらにあと2回繰り返した。次いで、約40mLのエタノールを注いで、同様に振とう、遠心分離を行った。上澄み溶液を取り除き、本操作をさらにあと2回繰り返した。得られた沈殿を65℃で一晩以上乾燥させ、目的とするショ糖脂肪酸エステル由来の炭素材料を得た。
(工程3)
乾燥後の茶色い固体にエタノール50mLを加え、60℃で一晩以上撹拌洗浄した。洗浄後、遠心分離を行い、上澄みを取り除いた後、エタノールを40mL加え、室温で振とうさせた。遠心分離を行った後、上澄みを取り除いた。本操作をもう一度繰り返した。沈殿を65℃で一晩以上乾燥させることにより、目的とするショ糖脂肪酸エステル由来の炭素材料を得た。

0060

(フーリエ変換赤外吸収スペクトル)
実施例5で得られた炭素材料では、カルボキシル基やカルボニル基に由来するC=O(伸縮、1800〜1520cm−1)やOH(伸縮、3700〜3100cm−1)に帰属されるピークが認められることから、炭素材料中に含酸素官能基が存在することが分かった。さらに、波数2972cm−1付近(CH3対称伸縮振動)、2925cm−1付近(vCH2逆対称)、および2854cm−1付近(vCH2対称)に脂肪酸由来のアルキル基に特徴的なピークが見られ、アルキル基も存在することが分かった。

0061

(窒素吸着等温線)
実施例5で得られた炭素材料は、高相対圧付近において、等温線の大きな立ち上がりが見られ、算出された全細孔容量は0.72cm3/g(表2)であり、これまでの実施例の中で最も大きな細孔容量を示した。

0062

(走査型電子顕微鏡像及び透過型電子顕微鏡像)
実施例5で得られた炭素材料の走査型電子顕微鏡像を図12に示す。大きさ数十nm程度の粒子(一次粒子)が、緩やかではあるが一定の配向性を持って互いに連なり、数〜数十μmの大きさの粒子(二次粒子)が形成されている様子が観察された。配向の方向を図12中に矢印で示した。

0063

よって、本実施例から、糖の脂肪酸エステルを原料とした水熱合成により多孔質炭素が得られ、その材料は、含酸素官能基およびアルキル基を有すること、および緩やかな配向性を有することが分かった。

0064

なお、実施例5においては実施例1〜4とは異なり、工程3を省略することが可能である。上述のように、本発明で得られる多孔質炭素は工程1〜3の3つの工程によって合成されるが、そのうち工程3は物理混合されたアルキル基の除去を目的とし、工程2の後に得られる材料が物理混合されたアルキル基を含む場合にのみ必要とされる。実施例1〜4においては、工程3の後には、工程3を行う前に比べてフーリエ変換赤外吸収スペクトルにおいてアルキル基のピーク強度の減少が見られ、物理混合されて存在するアルキル基は工程3により除去されていることが分かった。さらに上述のように、工程3をもう一度繰り返しても、その前後ではフーリエ変換赤外吸収スペクトルのアルキルのピーク強度は変わらないことから、工程3の操作は一度で十分であることが言える。
実施例5においては、図1(A)(B)に示すように、工程3の前後ではフーリエ変換赤外吸収スペクトルで見られるアルキル基のピーク強度に大きな変化は見られなかった(工程3の前の炭素材料のフーリエ変換赤外吸収スペクトルを“実施例5(工程3省略)”と表記した)。よって工程2で得られる材料には物理混合されたアルキル基がほとんど存在しないと考えられるため、工程3は行わなくても良い。

0065

また実施例5では、走査型電子顕微鏡観察および窒素吸着測定の観察結果も、工程3の有無に関わらず大きく変わらなかった。工程3を省略して得た炭素材料の走査型電子顕微鏡観察では、工程3を行った得た炭素材料と同様に、大きさ数十nm程度の粒子(一次粒子)が、緩やかではあるが一定の配向性を持って互いに連なり、数〜数十μmの大きさの粒子(二次粒子)が形成されている様子が観察された。
さらに、窒素吸着高相対圧付近においても工程3を行って得た炭素材料と同様に、等温線の大きな立ち上がりが見られ、算出された全細孔容量は0.70cm3/gであった。
さらに、本実施例では、工程1の水熱処理時間を実施例1〜3と同様の103時間としても、茶色の固体は得られるが、前記[0033]〜[0035]に記載の材料評価のうち、窒素吸着測定に必要な収量に達しなかった。ただし、この場合にも、フーリエ変換赤外吸収測定および走査型電子顕微鏡からは、実施例5とほぼ同様の結果が得られた。
実施例5において工程1を103時間とし、工程3を省略して得られた炭素材料の透過型電子顕微鏡像を図13に示す。大きさ数十nm程度の一次粒子が連結した構造が二次粒子内部に渡って均一に形成されている様子が観察された。

0066

[実施例6]
上記実施例1〜5のショ糖脂肪酸由来炭素材料の合成においては、工程2および工程3に蒸発乾燥工程を含む。ここで一般に多孔質材料の蒸発乾燥においては、多孔体からの溶媒の脱離・蒸発に伴い多孔体構造収縮し細孔容量が減少すると言われる。一方、凍結乾燥と呼ばれる乾燥方法では、溶媒は一度凍結され、その後昇華することにより除去される。従って凍結乾燥法用いればショ糖脂肪酸由来炭素材料の乾燥工程における細孔体積の減少が抑制できることが予想される。
よって、本実施例では、これまで細孔容量が最も大きかった実施例5で得られた材料について、細孔容量をさらに増大するために、65℃での蒸発乾燥の代わりに凍結乾燥を行った。本合成を以下に示す。
(工程1)
糖の脂肪酸エステルとして、分子式C33H62O12で表され、HLBが15、モノエステル率が70%のもの(第一工業製薬株式会社 DKエステルF160)1gを10mLの脱イオン水に溶解させた。一晩静置させた後、密閉容器内で、120℃で182時間加熱した。
(工程2)
得られた茶色い固体を回収した。通常、上層と下層の2層に分かれて析出するが、そのうち実施例5と同様に、比重の大きい下層を取り出した。約40mLの脱イオン水を注いで、シェーカーで振とうした後、遠心分離し固体を沈殿させた。上澄み溶液を取り除き、再び同量の脱イオン水を注ぎ、同様の操作をさらにあと2回繰り返した。次いで、約40mLのエタノールを注いで、同様に振とう、遠心分離を行った。上澄み溶液を取り除き、本操作をさらにあと2回繰り返した。
(凍結乾燥工程)
工程2において、エタノール洗浄後に、脱イオン水で残留するエタノールを置換した。その後凍結乾燥を行い、目的とするショ糖脂肪酸由来炭素材料を得た。
なお本実施例の工程1および2は実施例5と同様である。すなわち工程2の後に得られる材料中には物理混合しているアルキル基はほとんど存在しないため、工程3は省略できる。よって本実施例においては工程3を経ずに、凍結乾燥工程を行った。

0067

(フーリエ変換赤外吸収スペクトル)
実施例6で得られた炭素材料では、カルボキシル基やカルボニル基に由来するC=O(伸縮、1800〜1520cm−1)やOH(伸縮、3700〜3100cm−1)に帰属されるピークが認められることから、炭素材料中に含酸素官能基が存在することが分かった。さらに、波数2959cm−1付近(CH3対称伸縮振動)、2926cm−1付近(vCH2逆対称)、および2859cm−1付近(vCH2対称)に脂肪酸由来のアルキル基に特徴的なピークが見られ、アルキル基も存在することが分かった。

0068

(窒素吸着等温線)
実施例6で得られた炭素材料は、高相対圧付近において等温線の大きな立ち上がりが見られ、算出された全細孔容量は0.98cm3/g(表2)であり、実施例5よりもさらに大きな細孔容量を示した。

0069

(走査型電子顕微鏡像)
実施例6で得られた炭素材料の走査型電子顕微鏡像を図14に示す。大きさ数十nm程度の粒子が、緩やかではあるが一定の配向性を持って互いに連なり、数〜数十μmの大きさの粒子が形成されている様子が観察された。配向の方向を図14中に矢印で示した。

0070

よって、本実施例から、実施例5において、工程2において65℃で乾燥させる代わりに、凍結乾燥工程を行っても、多孔質炭素が得られ、その材料は含酸素官能基およびアルキル基を有すること、および緩やかな配向性を有することが分かった。

0071

[比較例1]
分子内にアルキル基が組み込まれていない、すなわち両親媒性ではない、ショ糖そのものを原料とし、上記の実施例とほぼ同様の操作で比較合成試験を実施した。本合成を以下に示す。
(工程1)
実施例1で用いたショ糖ステアリン酸エステルの物質量と同等にあたる、ショ糖2.3 gを10mLの脱イオン水に溶解させた。一晩静置させた後、密閉容器内で、120℃で103時間加熱した。
(工程2)
得られた茶色い沈殿物を回収し、約40mLの脱イオン水を注いでシェーカーで振とうした後、遠心分離し固体を沈殿させた。上澄み溶液を取り除き、再び同量の脱イオン水を注ぎ、同様の操作をさらに2回繰り返した。次いで約40mLのエタノールを注いで、同様に振とう、遠心分離を行った。上澄み溶液を取り除いた後、この操作をさらに2回繰り返した。得られた沈殿を65℃で一晩以上乾燥させた。

0072

(フーリエ変換赤外吸収スペクトル)
比較例1で得られた炭素材料は、カルボキシル基やカルボニル基に由来するC=O(伸縮、1800〜1520cm−1)やOH(伸縮、3700〜3100cm−1)に帰属されるピークが認められるものの、通常波数2963cm−1付近(CH3対称伸縮振動)、2925cm−1付近(vCH2逆対称)、および2854cm−1付近(vCH2対称)に生成する、脂肪酸由来のアルキル基に特徴的なピークは見られなかった。
なお上述のように実施例の多孔質材料は、工程1〜3の3つの工程によって合成されるが、この中の工程3は物理混合されたアルキル基の除去を目的とし、工程2の後に得られる材料が物理混合されたアルキル基を含む場合にのみ必要とされる。本比較例では、工程2の後に得られる材料のフーリエ変換赤外吸収スペクトルはアルキル基のピークをほとんど示さなかった。よって脂肪酸由来のアルキル基自体を有しないため、該アルキル基が物理混合していないことも自明であった。そこで、比較例1の合成においては、工程3は省略した。

0073

(窒素吸着等温線)
比較例1で得られた炭素材料は、全相対圧範囲で立ち上がりを示さず、算出された細孔容量は0.01cm3/g(表2)にとどまった。

0074

(走査型電子顕微鏡像及び透過型電子顕微鏡像)
比較例1で得られた炭素材料の走査型電子顕微鏡像を図15に示す。直径数μmおよび数百nmの2種類の大きさの球状粒子が観察されたが、どちらの粒子表面も平滑であり、実施例で見られたような大きさ数〜数十nm程度の粒子が互いに連なっている様子は観察されなかった。
比較例1で得られた炭素材料の透過型電子顕微鏡像を図16に示す。
電子顕微鏡像に多少の濃淡は見られたが、マイクロ粒子内部全体にわたって、実施例で見られたような共連続構造や微粒子連結体が形成されている様子は観察されなかった。

0075

[比較例2]
どちらも両親媒性ではないショ糖と脂肪酸とを物理的に混合したものを原料とし、上記の実施例と同様の操作で比較合成試験を実施した。本合成を以下に示す。
(工程1)
実施例1で用いたショ糖ステアリン酸エステルの物質量と同等にあたる、ショ糖2.2gおよびステアリン酸1.9gに10mLの脱イオン水を加えた。一晩静置させた後、密閉容器内で、120℃で103時間加熱した。
(工程2)
得られた茶色い沈殿物を回収し、約40mLの脱イオン水を注いでシェーカーで振とうした後、遠心分離し固体を沈殿させた。上澄み溶液を取り除き、再び同量の脱イオン水を注ぎ、同様の操作をさらに2回繰り返した。次いで約40mLのエタノールを注いで、同様に振とう、遠心分離を行った。上澄み溶液を取り除いた後、この操作をさらに2回繰り返した。得られた沈殿を65℃で一晩以上乾燥させた。

0076

(フーリエ変換赤外吸収スペクトル)
比較例2で得られた炭素材料は、カルボキシル基やカルボニル基に由来するC=O(伸縮、1800〜1520cm−1)やOH(伸縮、3700〜3100cm−1)に帰属されるピークが認められるものの、通常波数2963cm−1付近(CH3対称伸縮振動)、2925cm−1付近(vCH2逆対称)、および2854cm−1付近(vCH2対称)に生成する、脂肪酸由来のアルキル基に特徴的なピークは見られなかった。なお、比較例1と同様に、本比較例においても、工程2の後に得られる材料のフーリエ変換赤外吸収スペクトルはアルキル基のピークをほとんど示さなかった。そこで本比較例の合成においても工程3は省略した。

0077

(窒素吸着等温線)
比較例2で得られた炭素材料も、比較例1と同様に、全相対圧範囲で立ち上がりを示さず、算出された細孔容量は0.01cm3/g(表2)にとどまった。

0078

(走査型電子顕微鏡像及び透過型電子顕微鏡像)
比較例2で得られた炭素材料の走査型電子顕微鏡像を図17に示す。比較例1と同様に、直径数μmおよび数百nmの2種類の大きさの球状粒子が観察されたが、どちらの粒子表面も平滑であり、実施例で見られたような数〜数十nmの微小粒子が並んでいる様子は観察されなかった。

0079

上より、ショ糖そのものを原料とした場合およびショ糖そのものと脂肪酸の物理混合物を原料とした場合、どちらの場合においても、多孔質炭素は得られず、炭素材料は脂肪酸由来のアルキル基も有しないことが分かった。

0080

糖から水熱合成手法で得られる炭素骨格は、通常400〜500℃以上での不活性雰囲気下における焼成により炭素骨格の芳香族化が進行し、焼成温度の更なる上昇とともに、炭素材料は良好な電気伝導性を帯び電極材料などとしての用途が開ける。
そこで、実施例1〜6で得られたショ糖脂肪酸エステル由来多孔質カーボンの炭素骨格の芳香族性を高めるため、得られた多孔質カーボンを不活性雰囲気下で焼成した。
実施例1〜6の中で特に細孔容量の大きく、かつ塩基処理や凍結乾燥などの特別な処理を行わなかった、実施例2および5について本焼成処理を行い、それぞれ実施例7および8とした。以下に示す。

0081

[実施例7]
(工程1)
糖の脂肪酸エステルとして、分子式C30H57O12で表される、ショ糖ステアリン酸エステル(第一工業製薬株式会社 DKエステルSS,HLB19、モノエステル率;約100%)4gを10mLの脱イオン水に溶解させた。一晩静置させた後、密閉容器内で、120℃で103時間加熱した。
(工程2)
得られた茶色い固体を回収した。通常3層に分かれて析出するが、そのうち実施例2と同様に、二番目に比重の小さい中間層を取り出した。約40mLの脱イオン水を注いでシェーカーで振とうした後、遠心分離し固体を沈殿させた。上澄み溶液を取り除き、再び同量の脱イオン水を注ぎ、同様の操作をさらにあと2回繰り返した。次いで約40mLのエタノールを注いで、同様に振とう、遠心分離を行った。上澄み溶液を取り除き、本操作をさらにあと2回繰り返した。得られた沈殿を65℃で一晩以上乾燥させた。
(工程3)
乾燥後の茶色い固体にエタノール50mLを加え、60℃で一晩以上撹拌洗浄した。洗浄後、遠心分離を行い、上澄みを取り除いた後、エタノールを40mL加え、室温で振とうさせた。遠心分離を行った後、上澄みを取り除いた。本操作をもう一度繰り返した。沈殿を65℃で一晩以上乾燥させた。
(窒素下焼成工程)
得られた材料を600mL/minの窒素フロー下において550℃で焼成し、目的とするショ糖脂肪酸エステル由来の炭素材料を得た。

0082

(フーリエ変換赤外吸収スペクトル)
実施例7で得られた炭素材料は、通常波数2963cm−1付近(CH3対称伸縮振動)、2925cm−1付近(vCH2逆対称)、および2854cm−1付近(vCH2対称)に生成する、脂肪酸由来のアルキル基に特徴的なピークは見られなかったが、1650〜1450cm−1に、共役C=Cまたは、オレフィン系C=C−Oの伸縮のピークが見られた。また、886cm−1、および緩やかではあるが、805cm−1、766cm−1に、芳香族環の炭素—水素面外変角振動に帰属する吸収ピークが見られた。さらに、3700〜3100cm−1にOH基の伸縮運動に帰属する吸収ピークが見られ、得られる炭素材料はヒドロキシル基を有することが分かった。

0083

ここで、上述のように実施例の多孔質材料は、工程1〜3の3つの工程によって合成されるが、この中の工程3は物理混合されたアルキル基の除去を目的とし、工程2の後に得られる材料が物理混合されたアルキル基を含む場合にのみ必要とされる。本実施例においては工程2でアルキル基が物理混合されていたとしても、550℃の焼成ではアルキル基は自身で熱分解するため、工程3を用いずとも本アルキル基は除去されると考えられる。よって本実施例においては、以下の測定を、工程3を経ずに焼成工程を行って得た炭素材料について行った。

0084

(窒素吸着等温線)
実施例7で得られた炭素材料は、低相対圧側での立ち上がりと高相対圧側での立ち上がりが見られた。前者はマイクロ孔の存在、後者はメソ孔とマクロ孔の少なくともどちらか一方の存在を示す。窒素吸着等温線から算出された全細孔容量は0.62cm3/g(表2)であった。

0085

(走査型電子顕微鏡像及び透過型電子顕微鏡像)
実施例7で得られた炭素材料の走査型電子顕微鏡像を図18に示す。数〜数十nmの粒子が互いに連なっている様子が観察された。また本連結体は厚さ数十〜200nm程度のシート状の形状をなしていた。
実施例7で得られた炭素材料の透過型電子顕微鏡像を図19に示す。該図はシート形状の断面を表していると考えられ、本シート形状は数〜数十nmの粒子が互いに連なることにより形成されている様子が観察された。

0086

導電性の測定)
実施例7で得られた炭素材料の密集した粒子群の両端を2本の端子で挟むようにして、デジタルマルチメーターを用いて抵抗値を測定することにより、以下のようにして導電性の有無を確認した。
予め、導電性を有する材料(例えば、S.Kubo et al.,Chem.Mater.2013,25,4781に記載の導電性多孔質炭素)では抵抗値が表示されるが、絶縁性の材料では抵抗値が表示されないことを確かめた上で、上記測定を行い、抵抗値の表示の有無を確認した。
実施例7で得られた炭素材料は、両端子間が0.5〜1mm程度の距離になるような条件で測定した場合、10〜20MΩ程度の抵抗値を示した。

0087

よって、糖の脂肪酸エステルを原料として多孔質炭素材料を不活性雰囲気下で焼成することにより、糖の脂肪酸エステル原料から、芳香族性の高い、導電性の多孔質炭素材料が得られ、その材料はヒドロキシル基を有することが分かった。

0088

[実施例8]
(工程1)
糖の脂肪酸エステルとして、分子式C33H62O12で表され、HLBが15、モノエステル率が70%のもの(第一工業製薬株式会社 DKエステルF160)1gを10mLの脱イオン水に溶解させた。一晩静置させた後、密閉容器内で、120℃で182時間加熱した。
(工程2)
得られた茶色い固体を回収した。通常、上層と下層の2層に分かれて析出するが、そのうち実施例5と同様に、比重の大きい下層を取り出した。約40mLの脱イオン水を注いでシェーカーで振とうした後、遠心分離し固体を沈殿させた。上澄み溶液を取り除き、再び同量の脱イオン水を注ぎ、同様の操作をさらにあと2回繰り返した。次いで、約40mLのエタノールを注いで同様に振とう、遠心分離を行った。上澄み溶液を取り除き、本操作をさらにあと2回繰り返した。得られた沈殿を65℃で一晩以上乾燥させた。
(窒素下焼成工程)
得られた材料を600mL/minの窒素フロー下において550℃で焼成し、目的とするショ糖脂肪酸エステル由来の炭素材料を得た。
ここで、本実施例の工程1,2は実施例5と同様である。すなわち工程3は省略しても良いため、本実施例では工程3を行わずに窒素下焼成を行った。

0089

(フーリエ変換赤外吸収スペクトル)
実施例8で得られた炭素材料は、通常波数2963cm−1付近(CH3対称伸縮振動)、2925cm−1付近(vCH2逆対称)、および2854cm−1付近(vCH2対称)に生成する、脂肪酸由来のアルキル基に特徴的なピークは見られなかったが、1650〜1450cm−1に、共役C=Cまたは、オレフィン系C=C−Oの伸縮のピークが見られた。また、882cm−1、807cm−1、758cm−1に、芳香族環の炭素—水素面外変角振動に帰属する吸収ピークが見られた。さらに、3700〜3100cm−1にOH基伸縮運動に帰属する吸収ピークが見られ、得られる炭素材料はヒドロキシル基を有することが分かった。

0090

(窒素吸着等温線)
実施例8で得られた炭素材料には、低相対圧側での立ち上がりと高相対圧側での大きな立ち上がりが見られた。前者はマイクロ孔の存在、後者はメソ孔とマクロ孔の少なくともどちらか一方の存在を示す。窒素吸着等温線から算出された全細孔容量は1.23cm3/g(表2)であった。

0091

(走査型電子顕微鏡像)
実施例8で得られた炭素材料の走査型電子顕微鏡像を図20に示す。大きさ数十nm程度の粒子が互いに連なり、数〜数十μmの大きさの粒子が形成されている様子が観察された。
(導電性の測定)
実施例7と同様にして抵抗値を測定したところ、実施例8で得られた炭素材料は、両端子間が0.5〜1mm程度の距離になるような条件で測定した場合、5〜25MΩ程度の抵抗値を示した。

0092

よって、糖の脂肪酸エステルを原料として多孔質炭素材料を不活性雰囲気下で焼成することにより、糖の脂肪酸エステル原料から、芳香族性の高い、導電性の多孔質炭素材料が得られ、その材料はヒドロキシル基を有することが分かった。

0093

[比較例3]
分子内にアルキル基が組み込まれていない、すなわち両親媒性ではない、ショ糖そのものを原料とし、上記の実施例とほぼ同様の操作で比較合成試験を実施した。特にショ糖そのものを原料とした水熱合成して得た炭素材料を窒素フロー下で焼成することにより、実施例7および8との比較を行った。本合成を以下に示す。
(工程1)
実施例1で用いたショ糖ステアリン酸エステルの物質量と同等にあたる、ショ糖2.3gを10mLの脱イオン水に溶解させた。一晩静置させた後、密閉容器内で、120℃で103時間加熱した。
(工程2)
得られた茶色い沈殿物を回収し、約40mLの脱イオン水を注いでシェーカーで振とうした後、遠心分離し固体を沈殿させた。上澄み溶液を取り除き、再び同量の脱イオン水を注ぎ、同様の操作をさらに2回繰り返した。次いで約40mLのエタノールを注いで、同様に振とう、遠心分離を行った。上澄み溶液を取り除いた後、この操作をさらに2回繰り返した。得られた沈殿を65℃で一晩以上乾燥させた。
(窒素下焼成工程)
得られた材料を600mL/minの窒素フロー下において、550℃で焼成することにより比較炭素材料を得た。
なお本比較例においては、窒素下焼成を行った実施例7および8と同様に、工程3を経ずに焼成工程を行った。

0094

(フーリエ変換赤外吸収スペクトル)
本比較例で得られた炭素材料は、通常波数2963cm−1付近(CH3対称伸縮振動)、2925cm−1付近(vCH2逆対称)、および2854cm−1付近(vCH2対称)に生成する、脂肪酸由来のアルキル基に特徴的なピークは見られなかった。1650〜1450cm−1に、共役C=Cまたはオレフィン系C=C−Oの伸縮のピークが、874cm−1、801cm−1、748cm−1に、芳香族環の炭素−水素面外変角振動に帰属する吸収ピークが見られたが、3700〜3100cm−1にはOH基伸縮運動に帰属する明確な吸収ピークは見られず、本比較炭素材料ではヒドロキシル基の多くが失われたことが分かった。

0095

(走査型電子顕微鏡像及び透過型電子顕微鏡像)
比較例3で得られた炭素材料の走査型電子顕微鏡像を図21に示す。比較例1および2と同様に、直径数μmおよび数百nmの2種類の大きさの球状粒子が観察されたが、どちらの粒子表面も平滑であり、実施例で見られたような数〜数十nmの微小粒子が並んでいる様子は観察されなかった。

0096

上記実施例・比較例における製造条件及び多孔性の評価結果を下記の表1に記載する。
但し、多孔性の評価については、窒素吸着量が0.01cm3/gの比較例1及び2(×)を基準とし、吸着量が大きいものから順に、◎→○→△とした。

0097

0098

上記実施例・比較例で得られた炭素材料の全細孔容量を下記の表2に記載する。
ただし、全細孔容量は相対圧0.991以上0.996以下の測定点における窒素吸着量から算出した。

0099

0100

以上のとおり、本発明の、糖の脂肪酸エステルを原料とする水熱合成から得られる炭素材料は、含酸素官能基およびアルキル基を有した。一方、比較例1、2の、ショ糖そのもの及びショ糖と脂肪酸の物理混合物から得られる炭素材料は、含酸素官能基を有するものの、アルキル基を持たなかった。
また、本発明のアルキル基含有炭素材料は、比較例1、2の、糖そのもの及び糖と脂肪酸の物理混合物を原料として得られる炭素材料を上回る細孔容量を有した。
さらに、本発明の、糖の脂肪酸エステル原料から得られる炭素材料は、大きさ数〜数十nm程度の粒子が互いに連なって形成された、数〜数十μmの大きさの粒子からなった。さらに、上記の大きさ数〜数十nm程度の粒子が、緩やかではあるが一定の配向性を持って連結しているものや、連結体が厚さ数十〜200nm程度のシート状の形状をなしているものもあった。これは、比較例1、2の、糖そのものや糖と脂肪酸の混合物から得られる平滑な表面テクスチャを有する、直径数百nm〜数μmの球状粒子とは大きく異なった。
よって、本発明の糖の脂肪酸エステル由来の多孔質炭素は、炭素源自身が両親媒性であることを利用して製造されるといえる。すなわち原料分子の、糖の部位が親水部として、アルキル部位が疎水部として作用することにより、水熱合成中で炭素源自身の界面現象が誘発され、ミセルや液晶などの炭素ナノ構造が形成される。その結果得られる材料が多孔化すると考えられる。本発明の方法によれば、炭素材料は水熱合成後にすでに多孔化しているため、通常鋳型を用いた際に必要とされる熱分解除去工程を用いずとも、多孔質炭素材料が得られる。そのため含酸素官能基が保たれた多孔質炭素を得ることができる。

実施例

0101

一方で電極材等への応用には得られる糖の脂肪酸エステル由来の多孔質炭素の炭素骨格の芳香族性を高めなければならない。そこで、上記糖の脂肪酸エステル由来の多孔質炭素を不活性雰囲気で焼成したところ、通常官能基の損失が進む高温焼成後においても、本発明の糖の脂肪酸エステル由来の多孔質炭素は、含酸素官能基(ヒドロキシル基)を有していた。また、その細孔容量は0.62〜1.23cm3/gであった。また炭素骨格の芳香族性も高まり、導電性も有した。
一方、比較例3の、糖そのものから得られる炭素材料は、不活性雰囲気で焼成した場合、炭素骨格の芳香族性は高まったが含酸素官能基の多くを失った。さらに、通常糖そのものから得られる炭素材料を実施例7および8と同様の550℃の不活性雰囲気で焼成した場合の細孔容量は、0.15cm3/g以下である(非特許文献:L. Yu et al., Langmuir, 2012, 28, 12373参照)。
さらに、本発明の、糖の脂肪酸エステルを原料とする水熱合成物の焼成物からなる炭素材料は、数〜数十nm程度の粒子が互いに連なって形成された、数〜数十μmの大きさの粒子からなった。さらに、大きさ数〜数十nmの粒子が互いに連なり、厚さ数十〜200nm程度のシート状の形状をなしているものもあった。これは、比較例3の、糖そのものの水熱合成物を焼成して得られる、平滑な表面テクスチャを有する、直径数百nm〜数μmの球状粒子とは大きく異なった。
よって、本発明においては、糖の脂肪酸エステルを原料に用いることにより、不活性雰囲気中での焼成後も、細孔容量が大きく、炭素骨格の芳香族性と含酸素官能基を併せ持つ多孔質炭素が得られるといえる。

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

関連する公募課題

該当するデータがありません

ページトップへ

技術視点だけで見ていませんか?

この技術の活用可能性がある分野

分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

この 技術と関連性が強い技術

関連性が強い 技術一覧

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

関連する挑戦したい社会課題一覧

この 技術と関連する公募課題

該当するデータがありません

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ