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技術 急冷焼入れ装置及び急冷焼入れ方法並びに金属板製品の製造方法

出願人 JFEスチール株式会社
発明者 吉本宗司杉原広和
出願日 2018年11月14日 (1年7ヶ月経過) 出願番号 2018-213420
公開日 2019年6月24日 (1年0ヶ月経過) 公開番号 2019-099916
状態 特許登録済
技術分野 熱処理 ストリップ・線材の熱処理
主要キーワード 波状変形 金属板製品 急冷焼 溶融亜鉛鍍金鋼板 遮蔽カバー マルテンサイト変態終了温度 水噴出ノズル 事前測定
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2019年6月24日)のものです。
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図面 (8)

課題

金属板(例えば、鋼板)を連続的に通板しながら焼鈍を行う連続焼鈍設備において、急冷焼入れ時に金属板に発生する形状不良を、金属板に欠陥を発生させることなく、また引張強度を低下させることなく、抑制することができる急冷焼入れ装置及び急冷焼入れ方法並びに金属板製品の製造方法を提供する。

解決手段

金属板を連続的に通板しながら冷却する急冷焼入れ装置であって、前記金属板の両面側から前記金属板に冷却流体噴射する複数のノズルを備えた冷却流体噴射装置と、前記ノズルから噴射された冷却流体が前記金属板に衝突するのを中断する可動マスキングとを備え、前記金属板の温度がマルテンサイト変態開始温度に達する位置に、前記可動マスキングの先端が位置し、前記金属板にフェライト析出しない範囲の位置に、前記可動マスキングの後端が位置するようにすることを特徴とする急冷焼入れ装置。

概要

背景

鋼板をはじめとする金属板金属板製品)の製造においては、金属板を連続的に通板しながら焼鈍を行う連続焼鈍設備において、金属板を加熱後に冷却し、相変態を起こさせる等して材質造り込みを行う。

近年、自動車業界では車体の軽量化と衝突安全性の両立を目的として、薄肉化した高張力鋼板ハイテン)の需要増している。高張力鋼板の製造時には、鋼板を急速に冷却する技術が重要となる。鋼板の冷却速度が最も速い技術の1つとして、水焼入れ法が知られている。水焼入れ法では、加熱された鋼板を水中に浸漬させると同時に、水中内に設けられたクエンチノズルにより冷却水を鋼板に噴射することで、鋼板の急冷焼入れが行われる。

図4は従来の急冷焼入れ装置90を示す説明図である。この急冷焼入れ装置90は、連続焼鈍炉均熱帯の出側に設けられた冷却設備に適用されうる。図4に示すように、急冷焼入れ装置90は、水2aが張られた水槽7と、水槽7内に、金属板(例えば、鋼板)1に冷却水を吹き付けて水温まで冷却させるための水噴出ノズル2と、金属板1を水槽7に浸漬させて、金属板1の搬送方向を変更するシンクロール4を備えている。

このような金属板の急冷焼入れ時には、金属板に反りや波状変形等の形状不良が発生するという問題がある。このような金属板の急冷焼入れ時における形状不良を防止するために、従来、様々な手法が提案されている。

例えば、特許文献1では、金属板のMs点の温度(マルテンサイト変態開始温度)をTMs(℃)、Mf点の温度(マルテンサイト変態終了温度)をTMf(℃)とすると、急冷焼入れ中の金属板を、金属板の温度が(TMs+150)(℃)から(TMf−150)(℃)である範囲において、一対の拘束ロールにより拘束する手法が提案されている。

また、特許文献2では、冷却装置の後に加熱装置を設け、その後にまた冷却装置を設けることで、金属板の急冷を一旦停止して等温保持した後、再度急冷する手法が提案されている。

概要

金属板(例えば、鋼板)を連続的に通板しながら焼鈍を行う連続焼鈍設備において、急冷焼入れ時に金属板に発生する形状不良を、金属板に欠陥を発生させることなく、また引張強度を低下させることなく、抑制することができる急冷焼入れ装置及び急冷焼入れ方法並びに金属板製品の製造方法を提供する。金属板を連続的に通板しながら冷却する急冷焼入れ装置であって、前記金属板の両面側から前記金属板に冷却流体を噴射する複数のノズルを備えた冷却流体噴射装置と、前記ノズルから噴射された冷却流体が前記金属板に衝突するのを中断する可動マスキングとを備え、前記金属板の温度がマルテンサイト変態開始温度に達する位置に、前記可動マスキングの先端が位置し、前記金属板にフェライト析出しない範囲の位置に、前記可動マスキングの後端が位置するようにすることを特徴とする急冷焼入れ装置。

目的

本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、金属板(例えば、鋼板)を連続的に通板しながら焼鈍を行う連続焼鈍設備において、急冷焼入れ時に金属板に発生する形状不良を、金属板に欠陥を発生させることなく、また引張強度を低下させることなく、抑制することができる急冷焼入れ装置及び急冷焼入れ方法並びに金属板製品の製造方法を提供する

効果

実績

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請求項1

金属板を連続的に通板しながら冷却する急冷焼入れ装置であって、前記金属板の両面側から前記金属板に冷却流体噴射する複数のノズルを備えた冷却流体噴射装置と、前記ノズルと前記金属板が通過する金属板通板ラインとの間に設けられ、前記ノズルから噴射された冷却流体が前記金属板に衝突するのを中断する可動マスキングとを備え、前記金属板の温度がマルテンサイト変態開始温度に達する位置に、前記可動マスキングの先端が位置し、前記金属板にフェライト析出しない範囲の位置に、前記可動マスキングの後端が位置するようにすることを特徴とする急冷焼入れ装置。

請求項2

前記可動マスキングによる冷却中断時間τ(s)として、τ(s)を下式のようにすることを特徴とする請求項1に記載の急冷焼入れ装置。0<τ≦3.0

請求項3

前記可動マスキングは空気噴出ノズルを備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の急冷焼入れ装置。

請求項4

連続的に通板する金属板の表面に複数のノズルから冷却流体を噴射することで冷却する急冷焼入れ方法であって、前記ノズルから噴射された冷却流体が前記金属板に衝突するのを中断する可動マスキングを用いて、前記金属板の温度がマルテンサイト変態開始温度に達する位置で、前記冷却流体による前記金属板の冷却を中断し、前記金属板にフェライトが析出しない範囲の位置で、前記冷却流体による前記金属板の冷却を再開するようにすることを特徴とする急冷焼入れ方法。

請求項5

前記金属板の冷却開始位置から冷却中断位置までの距離を、前記金属板の通板速度焼入れ開始温度、前記金属板のMs点の温度、前記金属板の冷却速度に基づいて設定することを特徴とする請求項4に記載の急冷焼入れ方法。

請求項6

前記金属板の通板速度をv(mm/s)、焼入れ開始温度をT1(℃)、前記金属板のMs点の温度をTMs(℃)、前記金属板の冷却速度をCV(℃/s)として、冷却開始位置から冷却中断位置までの距離d(mm)を下式で表すことを特徴とする請求項5に記載の急冷焼入れ方法。d=(T1−TMs)v/CV

請求項7

前記金属板の冷却開始位置から冷却中断位置までの距離を、前記金属板の通板速度、焼入れ開始温度、前記金属板のMs点の温度、冷却条件、前記金属板の板厚に基づいて設定することを特徴とする請求項4に記載の急冷焼入れ方法。

請求項8

前記金属板の通板速度をv(mm/s)、焼入れ開始温度をT1(℃)、前記金属板のMs点の温度をTMs(℃)とし、冷却条件により定まる定数α(℃・mm/s)と、前記金属板の板厚t(mm)を用いて、前記金属板の冷却開始位置から冷却中断位置までの距離d(mm)を下式で表すことを特徴とする請求項7に記載の急冷焼入れ方法。d=(T1−TMs)vt/α

請求項9

前記可動マスキングによる冷却中断時間をτ(s)として、τ(s)を下式のようにすることを特徴とする請求項4〜8のいずれかに記載の急冷焼入れ方法。0<τ≦3.0

請求項10

前記金属板の通板速度をv(mm/s)として、冷却中断位置から冷却再開位置までの距離e(mm)を下式のようにすることを特徴とする請求項4〜9のいずれかに記載の急冷焼入れ方法。0<e≦3.0v

請求項11

金属板製品を製造する際に、請求項4〜10のいずれかに記載の急冷焼入れ方法を用いて急冷焼入れを行うことを特徴とする金属板製品の製造方法。

請求項12

前記金属板製品は、高強度冷延鋼板溶融亜鉛鍍金鋼板合金化溶融亜鉛鍍金鋼板のいずれかであることを特徴とする請求項11に記載の金属板製品の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、金属板を連続的に通板しながら焼鈍を行う連続焼鈍設備において、急冷焼入れ時に金属板に発生する形状不良を抑制する急冷焼入れ装置および急冷焼入れ方法並びに金属板製品の製造方法に関する。

背景技術

0002

鋼板をはじめとする金属板(金属板製品)の製造においては、金属板を連続的に通板しながら焼鈍を行う連続焼鈍設備において、金属板を加熱後に冷却し、相変態を起こさせる等して材質造り込みを行う。

0003

近年、自動車業界では車体の軽量化と衝突安全性の両立を目的として、薄肉化した高張力鋼板ハイテン)の需要増している。高張力鋼板の製造時には、鋼板を急速に冷却する技術が重要となる。鋼板の冷却速度が最も速い技術の1つとして、水焼入れ法が知られている。水焼入れ法では、加熱された鋼板を水中に浸漬させると同時に、水中内に設けられたクエンチノズルにより冷却水を鋼板に噴射することで、鋼板の急冷焼入れが行われる。

0004

図4は従来の急冷焼入れ装置90を示す説明図である。この急冷焼入れ装置90は、連続焼鈍炉均熱帯の出側に設けられた冷却設備に適用されうる。図4に示すように、急冷焼入れ装置90は、水2aが張られた水槽7と、水槽7内に、金属板(例えば、鋼板)1に冷却水を吹き付けて水温まで冷却させるための水噴出ノズル2と、金属板1を水槽7に浸漬させて、金属板1の搬送方向を変更するシンクロール4を備えている。

0005

このような金属板の急冷焼入れ時には、金属板に反りや波状変形等の形状不良が発生するという問題がある。このような金属板の急冷焼入れ時における形状不良を防止するために、従来、様々な手法が提案されている。

0006

例えば、特許文献1では、金属板のMs点の温度(マルテンサイト変態開始温度)をTMs(℃)、Mf点の温度(マルテンサイト変態終了温度)をTMf(℃)とすると、急冷焼入れ中の金属板を、金属板の温度が(TMs+150)(℃)から(TMf−150)(℃)である範囲において、一対の拘束ロールにより拘束する手法が提案されている。

0007

また、特許文献2では、冷却装置の後に加熱装置を設け、その後にまた冷却装置を設けることで、金属板の急冷を一旦停止して等温保持した後、再度急冷する手法が提案されている。

先行技術

0008

特許第6094722号公報
特開2015−38234号公報

発明が解決しようとする課題

0009

しかし、特許文献1に記載された方法では、確かに急冷焼入れ時の金属板の変形を防止できるものの、拘束ロールが金属板と接触する時に、金属板に擦り傷欠陥が発生する場合があるという問題がある。

0010

また、特許文献2に記載された方法では、2つの冷却装置間の距離が遠く、等温保持時間が長いために、フェライト析出し、引張強度が低下するという問題がある。

0011

本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、金属板(例えば、鋼板)を連続的に通板しながら焼鈍を行う連続焼鈍設備において、急冷焼入れ時に金属板に発生する形状不良を、金属板に欠陥を発生させることなく、また引張強度を低下させることなく、抑制することができる急冷焼入れ装置及び急冷焼入れ方法並びに金属板製品の製造方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0012

本発明者らは、このような問題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下のような知見と着想を得た。

0013

すなわち、金属板の急冷焼入れ時における形状不良は、急冷による熱収縮中に、Ms点からMf点の間でマルテンサイト変態による膨張が生じるために、金属板に大きな応力が働き、形状が崩れるからである。そこで、通常は連続して発生する熱収縮と変態膨張発生タイミングをずらす、つまり熱収縮と変態膨張を不連続に発生させることができれば、金属板に働く応力を小さくすることが可能であり、結果として形状が崩れにくくなる。この熱収縮と変態膨張を不連続に発生させるというのは、通板する金属板上の任意の一点について見たら、温度がMs点に達した瞬間に冷却を一旦停止し(中断し)、一定時間後に冷却を再開することを意味する。その際に、前記特許文献2について述べたように、この一定時間(保持時間)が長すぎると、フェライトが析出し、引張強度が低下するので、フェライトの析出を抑止できる時間にする。また、金属板の急冷焼入れでは、必ずしも金属板を水中に浸漬させる必要は無く、十分な水量をノズルから噴射すれば、水中で噴射するのと同等の冷却能力が得られる。

0014

本発明は、上記のような知見と着想に基づいており、以下のような特徴を有している。

0015

[1]金属板を連続的に通板しながら冷却する急冷焼入れ装置であって、
前記金属板の両面側から前記金属板に冷却流体を噴射する複数のノズルを備えた冷却流体噴射装置と、前記ノズルと前記金属板が通過する金属板通板ラインとの間に設けられ、前記ノズルから噴射された冷却流体が前記金属板に衝突するのを中断する可動マスキングとを備え、
前記金属板の温度がマルテンサイト変態開始温度に達する位置に、前記可動マスキングの先端が位置し、前記金属板にフェライトが析出しない範囲の位置に、前記可動マスキングの後端が位置するようにすることを特徴とする急冷焼入れ装置。

0016

[2]前記可動マスキングによる冷却中断時間τ(s)として、τ(s)を下式のようにすることを特徴とする前記[1]に記載の急冷焼入れ装置。
0<τ≦3.0

0017

[3]前記可動マスキングは空気噴出ノズルを備えていることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の急冷焼入れ装置。

0018

[4]連続的に通板する金属板の表面に複数のノズルから冷却流体を噴射することで冷却する急冷焼入れ方法であって、前記ノズルから噴射された冷却流体が前記金属板に衝突するのを中断する可動マスキングを用いて、前記金属板の温度がマルテンサイト変態開始温度に達する位置で、前記冷却流体による前記金属板の冷却を中断し、前記金属板にフェライトが析出しない範囲の位置で、前記冷却流体による前記金属板の冷却を再開するようにすることを特徴とする急冷焼入れ方法。

0019

[5]前記金属板の冷却開始位置から冷却中断位置までの距離を、前記金属板の通板速度焼入れ開始温度、前記金属板のMs点の温度、前記金属板の冷却速度に基づいて設定することを特徴とする前記[4]に記載の急冷焼入れ方法。

0020

[6]前記金属板の通板速度をv(mm/s)、焼入れ開始温度をT1(℃)、前記金属板のMs点の温度をTMs(℃)、前記金属板の冷却速度をCV(℃/s)として、冷却開始位置から冷却中断位置までの距離d(mm)を下式で表すことを特徴とする前記[5]に記載の急冷焼入れ方法。
d=(T1−TMs)v/CV

0021

[7]前記金属板の冷却開始位置から冷却中断位置までの距離を、前記金属板の通板速度、焼入れ開始温度、前記金属板のMs点の温度、冷却条件、前記金属板の板厚に基づいて設定することを特徴とする前記[4]に記載の急冷焼入れ方法。

0022

[8]前記金属板の通板速度をv(mm/s)、焼入れ開始温度をT1(℃)、前記金属板のMs点の温度をTMs(℃)とし、冷却条件により定まる定数α(℃・mm/s)と、前記金属板の板厚t(mm)を用いて、前記金属板の冷却開始位置から冷却中断位置までの距離d(mm)を下式で表すことを特徴とする前記[7]に記載の急冷焼入れ方法。
d=(T1−TMs)vt/α

0023

[9]前記可動マスキングによる冷却中断時間をτ(s)として、τ(s)を下式のようにすることを特徴とする前記[4]〜[8]のいずれかに記載の急冷焼入れ方法。
0<τ≦3.0

0024

[10]前記金属板の通板速度をv(mm/s)として、冷却中断位置から冷却再開位置までの距離e(mm)を下式のようにすることを特徴とする前記[4]〜[9]のいずれかに記載の急冷焼入れ方法。
0<e≦3.0v

0025

[11]金属板製品を製造する際に、前記[4]〜[10]のいずれかに記載の急冷焼入れ方法を用いて急冷焼入れを行うことを特徴とする金属板製品の製造方法。

0026

[12]前記金属板製品は、高強度冷延鋼板溶融亜鉛鍍金鋼板合金化溶融亜鉛鍍金鋼板のいずれかであることを特徴とする前記[11]に記載の金属板製品の製造方法。

発明の効果

0027

本発明においては、金属板(例えば、鋼板)を連続的に通板しながら焼鈍を行う連続焼鈍設備において、急冷焼入れ時に金属板に発生する形状不良を、金属板に欠陥を発生させることなく、また引張強度を低下させることなく、抑制することができる。

図面の簡単な説明

0028

本発明の実施形態1に係る急冷焼入れ装置を示す図である。
本発明の実施形態2に係る急冷焼入れ装置を示す図である。
本発明の実施形態で用いる可動マスキングの例を示す図である。
従来の急冷焼入れ装置を示す図である。
本発明例と比較例の比較結果(反り量)を示すグラフである。
本発明例と比較例の比較結果(引張強度)を示すグラフである。
図5における反り量の定義を示す図である。

0029

本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。

0030

[実施形態1]
図1は本発明の実施形態1に係る急冷焼入れ装置11を示す図である。この急冷焼入れ装置11は、連続焼鈍炉の均熱帯の出側に設けられた冷却設備に適用されうる。

0031

図1に示すように、この実施形態1に係る急冷焼入れ装置11は、連続的に通板する金属板(例えば、鋼板)1の両面側から金属板1に冷媒(冷却流体)である水2aを噴射し急速冷却を行う複数の水噴出ノズル2(冷却流体噴射装置)と、水噴出ノズル2と金属板1が通過する金属板通板ラインとの間に設けられて、水噴出ノズル2から噴射された水2aが金属板1に衝突するのを中断する可動マスキング3を備えている。また、急冷焼入れ装置11の周囲には、水噴出ノズル2から噴射された水2aが周囲へ飛散するのを防止するために、遮蔽カバー5が設置されている。また、遮蔽カバー5の出側には、金属板1の搬送方向(通板方向)を変更するシンクロール4が設けられている。

0032

そして、金属板1の表面に複数の水噴出ノズル2から水2aを噴射して急冷焼入れを行う際に、金属板1の温度がマルテンサイト変態開始温度に達する高さ位置に、可動マスキング3の先端(通板方向上流側端部、ここでは上端)が位置し、金属板1にフェライトが析出しない範囲の高さ位置に、可動マスキング3の後端(通板方向下流側端部、ここでは下端)が位置するようにする。

0033

言い換えれば、可動マスキング3を用いて、金属板1の温度がマルテンサイト変態開始温度に達する高さ位置で、水2aによる金属板1の冷却を中断し、金属板1にフェライトが析出しない範囲の高さ位置で、水2aによる金属板1の冷却を再開するようにする。

0034

これによって、可動マスキング3が存在する範囲内に位置する金属板1は、マルテンサイト変態開始温度の状態で保持されて、マルテンサイト変態による膨張が抑止されるので、水2aでの急冷による熱収縮とマルテンサイト変態による膨張とが不連続に発生するようになる。その結果、金属板1に働く応力が小さくなり、形状不良の発生を抑制することができる。また、上述した特許文献1のような拘束ロールとの接触による擦り傷欠陥の発生を回避することができるとともに、上述した特許文献2のようなフェライトの析出による引張強度の低下を防止することができる。

0035

その際に、冷却開始位置(最上部の水噴出ノズル2からの水2aが金属板1に衝突する位置)から冷却中断位置(可動マスキング3の上端、すなわち、金属板1がマルテンサイト変態開始温度に達する高さ位置)までの距離d(mm)は、通板速度v(mm/s)、金属板1の板厚t(mm)、焼入れ開始温度T1(℃)、金属板1のMs点の温度TMs(℃)、金属板1の冷却速度CV(℃/s)に基づいて設定することが好ましい。

0036

ここで、上記の値の間には、下記(1)式の関係が成立するので、距離d(mm)は下記(2)式で表される。
CV=(T1−TMs)/(d/v) ・・・(1)
d=(T1−TMs)v/CV ・・・(2)

0037

なお、冷却速度CVは、冷却条件(板厚tおよびノズル形状、噴射される冷却流体の種類(ここでは、水2a)・温度、噴射量など)に応じて定まる定数αと、金属板1の板厚tとを用いて表すことができ、板厚tにほぼ反比例することから、下記(3)式で表すことができる。
CV=α/t ・・・(3)

0038

例えば、板厚t=1〜2mmの鋼板では、下記(4)式で表され、中間値をとれば、下記(5)式で表される(特許文献1の段落[0022]参照)。
CV=1000/t〜2000/t(℃/s) ・・・(4)
CV=1500/t(℃/s) ・・・(5)

0039

すなわち、この場合は、αは下記(6)式または(7)式ということになる。
α=1000〜2000(℃・mm/s) ・・・(6)
α=1500(℃・mm/s) ・・・(7)

0040

このことから、上記(2)式は下記(8)式で表すことができる。
d=(T1−TMs)vt/α ・・・(8)

0041

なお、冷却速度CV(℃/s)やα(℃・mm/s)については、事前に、実験数値解析等によって求めておき、データベース化計算式化しておけばよい。Ms点の温度TMs(℃)は、金属板1の成分組成から算出することができる。

0042

また、可動マスキング3による冷却中断時間τ(s)は、事前に、金属学的な考察や実験や数値解析等に基づいて定めておけばよい。例えば、下記(9)式のようにする。
0<τ≦3.0 ・・・(9)

0043

ここで、冷却中断時間τ(s)の上限を3.0sとしているのは、後述する実施例にも示しているように、冷却中断時間τ(s)が3.0sを超えると、金属板1にフェライトが析出して、引張強度が低下することを確認しているからである。

0044

そして、可動マスキング3の長さ(言い換えれば、冷却中断位置(可動マスキング3の上端)から冷却再開位置(可動マスキング3の下端)までの距離)e(mm)は、下記(10)式の関係に基づいて、下記(11)式のようにすればよい。
e=v×τ・・・(10)
0<e≦3.0v ・・・(11)

0045

なお、冷却中断時間τ(s)を変更するために可動マスキング3の長さe(mm)を変更するには、必要な長さの可動マスキング3にその都度取り換えるか、図3のような、入れ子式伸縮して長さを変更できる構造の可動マスキング3Aを用いれば良い。

0046

[実施形態2]
図2は本発明の実施形態2に係る急冷焼入れ装置12を示す図である。

0047

図2に示すように、この実施形態2に係る急冷焼入れ装置12は、基本的な構成は、上記の実施形態1に係る急冷焼入れ装置11と同じであるが、それに加えて、可動マスキング3は、空気6aを噴射する空気噴出ノズル6を備えている。

0048

これによって、可動マスキング3の位置にまで金属板1上の水2aが流入してくるのを防止するようにしている。

0049

そして、上記の実施形態1、2は、金属板製品(製品として出荷される金属板)の製造に適用することができ、高強度鋼板(ハイテン)の製造に適用することが特に好ましい。より具体的には、引張強度が580MPa以上である鋼板の製造に適用することが好ましい。引張強度の上限は特に制限されないが、一例として1600MPa以下であればよい。

0050

ちなみに、上記の高強度鋼板(ハイテン)としては、高強度冷延鋼板、およびそれらに表面処理を施した溶融亜鉛鍍金鋼板、合金化溶融亜鉛鍍金鋼板等がある。

0051

高強度冷延鋼板の組成の具体例として、質量%で、Cが0.04%以上0.30%以下、Siが0.01%以上2.50%以下、Mnが0.80%以上4.00%以下、Pが0.001%以上0.090%以下、Sが0.0001%以上0.0050%以下、sol.Alが0.005%以上0.065%以下、必要に応じて、Cr、Mo、Nb、V、Ni、Cu、及びTiの少なくとも1種以上がそれぞれ0.5%以下、さらに必要に応じて、B、Sbがそれぞれ0.01%以下、残部がFe及び不可避的不純物からなる例が挙げられる。

0052

また、高強度冷延鋼板だけでなく、溶融亜鉛鍍金鋼板や合金化溶融亜鉛鍍金鋼板の製造に適用することも同じように好ましい。

0053

このようにして、この実施形態1、2においては、急冷焼入れ時に金属板1に発生する形状不良を、金属板1に欠陥を発生させることなく、また引張強度を低下させることなく、抑制することができる。

0054

なお、上記の実施形態1、2では、鋼板を水で急冷焼入れする場合を念頭において述べたが、本発明は、鋼板以外の金属板全般の冷却に適用することができ、また、水以外の冷媒を用いた急冷焼入れにも適用することができる。

0055

本発明の実施例を述べる。

0056

本発明例として、上記の本発明の実施形態1に係る急冷焼入れ装置11を用いて、板厚tが1.0mm、板幅が1000mm、Ms点の温度TMsが400℃の引張強さ1470MPa級高張力冷延鋼板を、通板速度vを1500mm/s、焼入れ開始温度T1を800℃にして製造した。水温は30℃で、冷却速度α/tについては、事前測定と前記(5)式に基づいて1500/t(℃/s)と設定した。冷却開始位置から冷却中断位置までの距離d(mm)は、(8)式に基づいてd=400mmで設定した。また、冷却中断時間τ(s)は、前記(9)式に基づいて0.25〜3.0sとした。

0057

これに対して、比較例1として、図4に示した従来の急冷焼入れ装置90を用い、その他の条件は、本発明例と同じにして、上記の高張力冷延鋼板を製造した。ただし、この急冷焼入れ装置90では一旦開始した冷却を中断することができないため、冷却中断時間τ(s)は当然0sである。

0058

また、比較例2として、前記特許文献2に示した急冷焼入れ装置を用い、その他の条件は、本発明例と同じにして、上記の高張力冷延鋼板を製造した。ただし、この急冷焼入れ装置では、2つの冷却装置間の距離が遠いため、その間の冷却中断時間(保持時間)τ(s)は4.0〜5.0sになった。

0059

そして、それぞれの場合(本発明例、比較例1、比較例2)について、冷却中断時間と冷却終了後の鋼板の反り量との関係、および、冷却中断時間と冷却終了後の鋼板の引張強度との関係を調査した。なお、反り量の定義を図7に示す。具体的には、鋼板を水平面に置いた場合の、最も高い位置の高さを反り量とした。また、引張強度は、JIS Z 2241金属材料引張試験方法に基づいて求めた。

0060

まず、図5に、冷却中断時間と冷却終了後の鋼板の反り量との関係を示す。本発明例と比較例2は、冷却中断時間によらず、鋼板の反り量は全て10mm以下にまで低減していたが、比較例1は、鋼板の反り量は10mm以上となった。

0061

一方、図6に、冷却中断時間と冷却終了後の鋼板の引張強度との関係を示す。本発明例と比較例1は、冷却中断時間によらず、引張強度は全て1470MPa以上であったが、比較例2は、引張強度は1470MPa以下にまで大幅に低減していた。

0062

以上のことから、鋼板の反り量を低減しつつ、引張強度を低下させずに製造できたのは、本発明例のみであった。

実施例

0063

これによって、本発明の有効性が確認された。

0064

1金属板
2水噴出ノズル
2a 水
3可動マスキング
3A 可動マスキング
4シンクロール
5遮蔽カバー
6空気噴出ノズル
6a 空気
7水槽
11急冷焼入れ装置
12 急冷焼入れ装置
90 急冷焼入れ装置

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