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技術 ミトコンドリアの機能障害の改善剤、及びミトコンドリアの機能障害に起因する疾患又は症状の予防又は治療薬、並びにそれらの用途

出願人 学校法人自治医科大学国立大学法人東北大学
発明者 小坂仁山形崇倫神保恵理子宮内彰彦阿部高明
出願日 2017年11月7日 (1年9ヶ月経過) 出願番号 2017-214460
公開日 2019年6月6日 (2ヶ月経過) 公開番号 2019-085364
状態 未査定
技術分野 他の有機化合物及び無機化合物含有医薬 化合物または医薬の治療活性
主要キーワード 基礎呼吸 患者家族 ジマレイン酸塩 酸素呼吸 レーベル病 BSO 斜線パターン 乳幼児期
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (7)

課題

ミトコンドリア機能障害に起用する疾患又は症状の予防又は治療のための医薬組成物の提供。

解決手段

下記の式で例示される化合物またはフェノチアジン及びその誘導体、それらの立体異性体若しくはそれらの塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分として含む、医薬組成物。

概要

背景

ミトコンドリアは、真核生物細胞における主要なエネルギー産生器官である。ミトコンドリアが機能障害に陥ると、様々な疾患又は症状を引き起こすことになる。

ミトコンドリア病は、ミトコンドリアの機能障害に起因する代表的な疾患である。ミトコンドリア病は、500人に1人の頻度発症する、比較的頻度の高い遺伝性代謝疾患である。ミトコンドリア病は、全臓器罹患対象となり得るが、特にエネルギー需要の高い脳、中枢神経系及び筋肉において顕著な症状が発現し得る。例えば、中枢神経系における症状としては、不可逆性の知的退行痙攣脳卒中様発作及び小脳失調等を挙げることができる。

ミトコンドリア病の臨床病型は、通常は、10種類以上に分類される。その中でも、リー脳症、及びミトコンドリア脳筋症乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群(以下、「MELAS」とも記載する)は、小児領域における二大病型とみなされている。リー脳症は、乳幼児期から、精神運動発達遅延及び退行等の症状を起こす。MELASは、ATP産生のようなミトコンドリアの機能に障害が生じることにより、反復する脳卒中様発作等の症状を起こす。

ミトコンドリアの機能障害に起因する疾患又は症状の治療に関して、例えば、特許文献1は、式(I)で表されるフェナジン-3-オン及びフェノチアジン-3-オン誘導体化合物、又はその立体異性体、立体異性体の混合物溶媒和物水和物、若しくは薬学的に許容される塩を記載する。当該文献は、前記化合物を、遺伝性ミトコンドリア病のようなミトコンドリア障害処置するために使用し得ると記載する。

特許文献2は、一般式(I)で表されるフェノチアジンジアミニウム塩及び医薬として許容可能なその塩から選ばれる化合物を記載する。当該文献は、前記化合物及び該化合物を含む組成物を、ミトコンドリア病を処置するために使用することができると記載する。当該文献は、ミトコンドリア病の処置に対する前記化合物の薬理学的試験の結果を示していない。

特許文献3は、一般式(I)で表されるチアゾール誘導体、且つ、ラセミ混合物の形、鏡像体の形又はこれらの形の任意の組み合わせの形の化合物又は一般式(I)の化合物の製剤学的に許容される塩の、リー症候群又はMELAS等の治療用の医薬を調製するための使用を記載する。

非特許文献1は、欧州において、補酵素Q10の類縁体であるイデベノンが、ミトコンドリア病の臨床病型の1種であるレーバー遺伝性視神経炎に対する治療薬として認可されていることを記載する。

概要

ミトコンドリアの機能障害に起用する疾患又は症状の予防又は治療のための医薬組成物の提供。下記の式で例示される化合物またはフェノチアジン及びその誘導体、それらの立体異性体若しくはそれらの塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分として含む、医薬組成物。なし

目的

本発明は、ミトコンドリアの機能障害を実質的に改善する手段を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

下記の式:で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分として含む、ミトコンドリア機能障害改善剤

請求項2

式(I-1)で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分として含む、請求項1に記載のミトコンドリアの機能障害の改善剤。

請求項3

下記の式:で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む、ミトコンドリアの機能障害に起因する疾患又は症状の予防又は治療に使用するための医薬

請求項4

式(I-1)で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む、請求項3に記載の医薬。

請求項5

ミトコンドリアの機能障害に起因する疾患又は症状が、リー脳症ミトコンドリア脳筋症乳酸アシドーシス脳卒中様発作症候群MELAS)、又はレーベル病であるミトコンドリア病糖尿病、及び癌からなる群より選択される1種以上の疾患又は症状である、請求項3又は4に記載の医薬。

請求項6

下記の式:で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物と、1種以上の製薬上許容される担体とを含む、ミトコンドリアの機能障害に起因する疾患又は症状の予防又は治療に使用するための医薬組成物

請求項7

式(I-1)で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む、請求項6に記載の医薬組成物。

請求項8

ミトコンドリアの機能障害に起因する疾患又は症状が、リー脳症、ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群(MELAS)、又はレーベル病であるミトコンドリア病、糖尿病、及び癌からなる群より選択される1種以上の疾患又は症状である、請求項6又は7に記載の医薬組成物。

技術分野

0001

本発明は、ミトコンドリア機能障害改善剤、及びミトコンドリアの機能障害に起因する疾患又は症状の予防又は治療薬、並びにそれらの用途に関する。

背景技術

0002

ミトコンドリアは、真核生物細胞における主要なエネルギー産生器官である。ミトコンドリアが機能障害に陥ると、様々な疾患又は症状を引き起こすことになる。

0003

ミトコンドリア病は、ミトコンドリアの機能障害に起因する代表的な疾患である。ミトコンドリア病は、500人に1人の頻度発症する、比較的頻度の高い遺伝性代謝疾患である。ミトコンドリア病は、全臓器罹患対象となり得るが、特にエネルギー需要の高い脳、中枢神経系及び筋肉において顕著な症状が発現し得る。例えば、中枢神経系における症状としては、不可逆性の知的退行痙攣脳卒中様発作及び小脳失調等を挙げることができる。

0004

ミトコンドリア病の臨床病型は、通常は、10種類以上に分類される。その中でも、リー脳症、及びミトコンドリア脳筋症乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群(以下、「MELAS」とも記載する)は、小児領域における二大病型とみなされている。リー脳症は、乳幼児期から、精神運動発達遅延及び退行等の症状を起こす。MELASは、ATP産生のようなミトコンドリアの機能に障害が生じることにより、反復する脳卒中様発作等の症状を起こす。

0005

ミトコンドリアの機能障害に起因する疾患又は症状の治療に関して、例えば、特許文献1は、式(I)で表されるフェナジン-3-オン及びフェノチアジン-3-オン誘導体化合物、又はその立体異性体、立体異性体の混合物溶媒和物水和物、若しくは薬学的に許容される塩を記載する。当該文献は、前記化合物を、遺伝性ミトコンドリア病のようなミトコンドリア障害処置するために使用し得ると記載する。

0006

特許文献2は、一般式(I)で表されるフェノチアジンジアミニウム塩及び医薬として許容可能なその塩から選ばれる化合物を記載する。当該文献は、前記化合物及び該化合物を含む組成物を、ミトコンドリア病を処置するために使用することができると記載する。当該文献は、ミトコンドリア病の処置に対する前記化合物の薬理学的試験の結果を示していない。

0007

特許文献3は、一般式(I)で表されるチアゾール誘導体、且つ、ラセミ混合物の形、鏡像体の形又はこれらの形の任意の組み合わせの形の化合物又は一般式(I)の化合物の製剤学的に許容される塩の、リー症候群又はMELAS等の治療用の医薬を調製するための使用を記載する。

0008

非特許文献1は、欧州において、補酵素Q10の類縁体であるイデベノンが、ミトコンドリア病の臨床病型の1種であるレーバー遺伝性視神経炎に対する治療薬として認可されていることを記載する。

0009

特表2016-514697号公報
特表2014-505095号公報
特表2005-500337号公報

先行技術

0010

Gueven N., Idebenone for Leber's hereditary optic neuropathy., Drugs Today (Barc), 第52(3)巻, p. 173-181, 2016年3月

発明が解決しようとする課題

0011

前記のように、ミトコンドリアの機能障害に起因する疾患又は症状として、様々な疾患又は症状が知られている。しかしながら、これらのミトコンドリアの機能障害に起因する疾患又は症状は、いずれも根本的な治療方法確立されていない。ミトコンドリアの機能障害に起因する疾患又は症状の治療薬として承認されている薬剤の例としては、現在のところ、欧州において、補酵素Q10の類縁体であるイデベノンが、レーバー遺伝性視神経炎に対する治療薬として認可されている例があるのみである(非特許文献1)。特に、ミトコンドリアの機能障害に起因する疾患又は症状の中でも、小児領域における二大病型であるリー脳症及びMELASに対しては、予防又は治療の有効性が実証された薬剤が存在しなかった。

0012

ミトコンドリアの機能障害に起因する疾患又は症状の予防又は治療手段を開発するためには、ミトコンドリアの機能障害に対して改善効果を有する薬剤を発見することが必要となる。しかしながら、ミトコンドリアの機能障害に対して実質的な改善効果を有する薬剤は知られていなかった。

0013

それ故、本発明は、ミトコンドリアの機能障害を実質的に改善する手段を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0014

本発明者らは、前記課題を解決するための手段を種々検討した。本発明者らは、公知の薬剤ライブラリーをスクリーニングすることにより、特定の化合物が、ミトコンドリアの機能障害を実質的に改善し得ることを見出した。本発明者らは、前記知見に基づき本発明を完成した。

0015

すなわち、本発明の要旨は、以下の実施形態の通りである。
(1) 下記の式:




で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分として含む、ミトコンドリアの機能障害の改善剤。
(2) 式(I-1)で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分として含む、前記実施形態(1)に記載のミトコンドリアの機能障害の改善剤。
(3) 下記の式:




で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む、ミトコンドリアの機能障害に起因する疾患又は症状の予防又は治療に使用するための医薬。
(4) 式(I-1)で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む、前記実施形態(3)に記載の医薬。
(5) ミトコンドリアの機能障害に起因する疾患又は症状が、リー脳症、ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群(MELAS)、又はレーベル病であるミトコンドリア病、糖尿病、及び癌からなる群より選択される1種以上の疾患又は症状である、前記実施形態(3)又は(4)に記載の医薬。
(6) 下記の式:




で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物と、1種以上の製薬上許容される担体とを含む、ミトコンドリアの機能障害に起因する疾患又は症状の予防又は治療に使用するための医薬組成物
(7) 式(I-1)で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む、前記実施形態(6)に記載の医薬組成物。
(8) ミトコンドリアの機能障害に起因する疾患又は症状が、リー脳症、ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群(MELAS)、又はレーベル病であるミトコンドリア病、糖尿病、及び癌からなる群より選択される1種以上の疾患又は症状である、前記実施形態(6)又は(7)に記載の医薬組成物。

発明の効果

0016

本発明により、ミトコンドリアの機能障害を実質的に改善する手段を提供することが可能となる。

0017

前記以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。

図面の簡単な説明

0018

図1は、L-ブチオニン-(S,R)-スルホキシミンBSO)の添加濃度試験した細胞の生細胞率との関係を示すグラフである。A:リー脳症患者由来のME54細胞の結果、B:正常細胞であるPromo1細胞の結果。
図2は、リー脳症患者由来のKCMC10細胞に対する薬剤ライブラリーの各薬剤の酸化ストレス付与試験の結果を示すグラフである。
図3は、リー脳症患者由来のME54細胞に対する薬剤ライブラリーの各薬剤の酸化ストレス付与試験の結果を示すグラフである。
図4は、MELAS患者由来のME110細胞に対する薬剤ライブラリーの各薬剤の酸化ストレス付与試験の結果を示すグラフである。
図5は、薬剤No. 5(式(I-1-1)の化合物)添加24時間後のKCMC10又はME110細胞における基礎呼吸量、ATP産生能及び最大呼吸量を評価した結果を示すグラフである。A:KCMC10細胞における基礎呼吸量、B:KCMC10細胞におけるATP産生能、C:KCMC10細胞における最大呼吸量、D:ME110細胞における基礎呼吸量、E:ME110細胞におけるATP産生能、F:ME110細胞における最大呼吸量。
図6は、表3に示す遺伝子が関与するシグナル経路の模式図である。
図7は、表5に示す遺伝子が関与するシグナル経路の模式図である。

0019

以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。

0020

<1.ミトコンドリアの機能障害の改善剤>
本明細書において、「ミトコンドリア」は、真核生物の細胞において、エネルギー産生を担う小器官を意味する。ミトコンドリアの機能障害に起因する疾患又は症状として、様々な疾患又は症状が知られている。しかしながら、これらのミトコンドリアの機能障害に起因する疾患又は症状は、いずれも根本的な治療方法が確立されていない。特に、ミトコンドリアの機能障害に起因する疾患又は症状の中でも、小児領域における二大病型であるリー脳症及びMELASに対しては、予防又は治療の有効性が実証された薬剤が存在しなかった。

0021

ミトコンドリアの機能障害に起因する疾患又は症状の予防又は治療手段を開発するためには、ミトコンドリアの機能障害に対して改善効果を有する薬剤を発見することが必要となる。特に、リー脳症及びMELASのような脳又は中枢神経系に主な症状が発現する疾患又は症状に所望の予防又は治療効果を発揮する薬剤は、血液脳関門を通過して脳又は中枢神経系に送達し得る薬物動態学的特性を有することが好ましいと考えられる。しかしながら、そのような効果及び特性を有する薬剤は知られていなかった。

0022

本発明者らは、公知の薬剤ライブラリーをスクリーニングすることにより、脳又は中枢神経系への送達が期待される特定の化合物が、ミトコンドリアの機能障害を実質的に改善し得ることを見出した。それ故、本発明の一態様は、下記の式:




で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分として含む、ミトコンドリアの機能障害の改善剤に関する。前記式で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの塩、又はそれらの溶媒和物は、血液脳関門を通過し得ることが知られている。それ故、これらの化合物は、脳又は中枢神経系に送達され、ミトコンドリアの機能障害を改善することにより、ミトコンドリアの機能障害に起因する種々の疾患又は症状を予防又は治療することができる。

0023

本発明の各態様において、ミトコンドリアは、通常は、真核生物、例えば、ヒト又は非ヒト哺乳動物(例えば、ブタイヌウシラットマウスモルモットウサギニワトリヒツジネコサルマントヒヒ若しくはチンパンジー等の温血動物)の細胞又はその構造体に存在するミトコンドリアであり、特に、ヒトの細胞又はその構造体に存在するミトコンドリアである。前記生物の細胞又はその構造体に対して、前記式で表される化合物、又は該化合物を有効成分として含む医薬等を投与することにより、該細胞又はその構造体に存在するミトコンドリアの機能を実質的に改善することができる。

0024

本発明の各態様において、ミトコンドリアの機能障害は、通常は、酸素呼吸、ATP産生、及び脂肪、糖、アミノ酸又は尿酸等の代謝からなる群より選択される1種以上のミトコンドリアの機能が、正常な状態と比較して実質的に低下した状態を意味する。

0025

本発明の各態様において、有効成分として使用される化合物によるミトコンドリアの機能障害の改善効果は、限定するものではないが、例えば、以下の手段により、決定することができる。ミトコンドリアの機能障害では、例えば、ATP産生の障害及び/又は酸化ストレスの増加が起こり、これにより、細胞のアポトーシスが引き起こされる。このため、ミトコンドリアの機能障害を有する個体では、正常な個体と比較して、酸化ストレスに対して脆弱であることが報告されている(Shrader WDら, Bioorg Med Chem Lett., 2011年6月15日, 第21(12)巻, p. 3693-8, doi:10.1016/j.bmcl.2011.04.085.電子出版2011年4月24日, PubMedPMID: 21600768)。そこで、ミトコンドリアの機能障害に起因する疾患又は症状を有する被験体の細胞(例えば、皮膚線維芽細胞)に酸化ストレス(例えば、L-ブチオニン-(S,R)-スルホキシミン(以下、「BSO」とも記載する)の添加)を付与してアポトーシスを誘導した条件下で、該細胞に対象化合物を添加する。所定期間培養後、対象化合物を添加した細胞の生細胞率と対照の細胞の生細胞率とを比較して、生細胞率の向上を確認することにより、ミトコンドリアの機能障害の改善効果を評価することができる。或いは、細胞外フラックスアナライザーを使用して、ミトコンドリアの機能障害に起因する疾患又は症状を有する被験体の細胞(例えば、皮膚線維芽細胞)に対象化合物を添加した後、該細胞におけるATP合成時にミトコンドリアで使用される酸素消費速度(以下、「OCR」とも記載する)を、ATP合成酵素阻害剤(例えば、オリゴマイシン及びロテノン)、及び脱共役剤(例えば、カルボニルシアニド-p-トリフルオロメトキシフェニルヒドラゾンFCCP))を添加しながら継続的に測定することで、ミトコンドリア機能の評価をすることができる。評価項目は、例えば、ミトコンドリア機能評価における主要な指標とされる、基礎呼吸量、ATP産生能及び最大呼吸量について解析する。これにより、ミトコンドリアの機能障害の改善効果を評価することができる。

0026

本発明の各態様において、有効成分として使用される前記式で表される化合物は、通常は10 nM以上、例えば10 nM〜10 μMの範囲、好ましくは10 nM〜1 μMの範囲、特に10〜100 nMの範囲で、前記手順で決定されるミトコンドリアの機能障害の改善効果を発現することができる。

0027

前記式で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの塩、又はそれらの溶媒和物は、医薬品の有効成分として公知の薬剤を包含する。例えば、式(I-1)で表される化合物は、パーキンソン病治療薬として知られるR(-)-アポモルフィン塩酸塩半水和物(薬剤No. 5、式(I-1-1))を包含する。式(I-2)で表される化合物は、統合失調症の治療薬として知られるアセナピンマレイン酸塩(薬剤No. 105、式(I-2-1))を包含する。式(I-3)で表される化合物は、非定型抗精神病薬として知られるオランザピン(薬剤No. 118、式(I-3-1))を包含する。式(I-4)で表される化合物は、統合失調症の治療薬として知られるプロクラルペジンジマレイン酸塩(薬剤No. 35、式(I-4-1))を包含する。式(I-5)で表される化合物は、精神安定剤として知られるプロマジン塩酸塩(薬剤No. 56、式(I-5-1))を包含する。式(I-6)で表される化合物は、精神安定剤として知られるフェノチアジン(薬剤No. 129、式(I-6-1))を包含する。当業者であれば、前記慣用名及び下記化学構造に基づき、これらの化合物を購入等するか、或いは自ら調製することにより、準備することができる。

0028

本発明の各態様において、有効成分として使用される化合物は、式(I-1-1)、(I-2-1)、(I-3-1)、(I-4-1)、(I-5-1)又は(I-6-1)で表される化合物であることが好ましい。前記特徴を有するこれらの化合物を有効成分として使用することにより、ミトコンドリアの機能障害を強く改善することができる。

0029

本発明の各態様において、有効成分として使用される化合物は、式(I-1)で表される化合物であることが好ましく、式(I-1-1)で表される化合物であることが特に好ましい。前記式で表される化合物を有効成分として使用することにより、ミトコンドリアの機能障害を、特に強く改善することができる。

0030

本発明の各態様において、式(I-1)、(I-2)、(I-3)、(I-4)、(I-5)及び(I-6)で表される化合物、特に式(I-1-1)、(I-2-1)、(I-3-1)、(I-4-1)、(I-5-1)及び(I-6-1)で表される化合物は、該化合物自体だけでなく、その塩も包含する。前記式で表される化合物の塩としては、限定するものではないが、例えば、ナトリウムイオンカリウムイオンカルシウムイオンマグネシウムイオン、若しくは置換若しくは非置換のアンモニウムイオンのようなカチオンとの塩、又は塩酸臭化水素酸硫酸硝酸炭酸若しくはリン酸のような無機酸、又はギ酸酢酸マレイン酸フマル酸安息香酸アスコルビン酸乳酸コハク酸ビスメチレンサリチル酸メタンスルホン酸エタンジスルホン酸プロピオン酸酒石酸リンゴ酸、サリチル酸、クエン酸グルコン酸アスパラギン酸ステアリン酸パルミチン酸イタコン酸グリコール酸p-アミノ安息香酸グルタミン酸ベンゼンスルホン酸シクロヘキシルスルファミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸イセチオン酸p-トルエンスルホン酸若しくはナフタレンスルホン酸のような有機酸アニオンとの塩が好ましい。前記式で表される化合物が前記の塩の形態である場合、ミトコンドリアの機能障害の改善効果を実質的に低下させることなく、該化合物を使用することができる。

0031

本発明の各態様において、式(I-1)、(I-2)、(I-3)、(I-4)、(I-5)及び(I-6)で表される化合物、特に式(I-1-1)、(I-2-1)、(I-3-1)、(I-4-1)、(I-5-1)及び(I-6-1)で表される化合物は、前記化合物自体だけでなく、該化合物又はその塩の溶媒和物も包含する。前記式で表される化合物、又はそれらの塩と溶媒和物を形成し得る溶媒としては、限定するものではないが、例えば、水、又は低級アルコール(例えば、メタノールエタノール若しくは2-プロパノールイソプロピルアルコール)のような1〜6の炭素原子数を有するアルコール)、高級アルコール(例えば、1-ヘプタノール若しくは1-オクタノールのような7以上の炭素原子数を有するアルコール)、ジメチルスルホキシドDMSO)、酢酸、エタノールアミン若しくは酢酸エチルのような有機溶媒が好ましい。前記式で表される化合物又はその塩が前記の溶媒との溶媒和物の形態である場合、ミトコンドリアの機能障害の改善効果を実質的に低下させることなく、該化合物を使用することができる。

0032

本発明の各態様において、式(I-1)、(I-2)、(I-3)、(I-4)、(I-5)及び(I-6)で表される化合物、特に式(I-1-1)、(I-2-1)、(I-3-1)、(I-4-1)、(I-5-1)及び(I-6-1)で表される化合物は、前記化合物自体だけでなく、その保護形態も包含する。本明細書において、「保護形態」は、1個又は複数個官能基(例えばヒドロキシル基又はアミノ基)に保護基が導入された形態を意味する。本明細書において、前記化合物の保護形態を、前記化合物の保護誘導体と記載する場合がある。また、本明細書において、「保護基」は、望ましくない反応の進行を防止するために、特定の官能基に導入される基であって、特定の反応条件において定量的に除去され、且つそれ以外の反応条件においては実質的に安定、即ち反応不活性である基を意味する。前記化合物の保護形態を形成し得る保護基としては、限定するものではないが、例えば、ヒドロキシル基の保護基の場合、シリル(例えば、t-ブチルジメチルシリル(TBS)、トリイソプロピルシリル(TIPS)若しくはtert-ブチルジフェニルシリル(TBDPS))、又はアルコキシ(例えば、メトキシメトキシ(MOM)若しくはメトキシ(Me))が、アミノ基の保護基の場合、t-ブトキシカルボニル(Boc)、2-ブロモベンジルオキシカルボニル(BrZ)、又は9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)が、それぞれ好ましい。前記保護基による保護化及び脱保護化は、公知の反応条件に基づき、当業者が適宜実施することができる。前記式で表される化合物が前記の保護基による保護形態である場合であっても、ミトコンドリアの機能障害の改善効果を実質的に低下させることなく、該化合物を使用することができる場合がある。

0033

本発明の各態様において、式(I-1)、(I-2)、(I-3)、(I-4)、(I-5)及び(I-6)で表される化合物、特に式(I-1-1)、(I-2-1)、(I-3-1)、(I-4-1)、(I-5-1)及び(I-6-1)で表される化合物が1個又は複数個の互変異性体を有する場合、前記化合物は、該化合物の個々の互変異性体の形態も包含する。

0034

また、本発明の各態様において、式(I-1)、(I-2)、(I-3)、(I-4)、(I-5)及び(I-6)で表される化合物、特に式(I-1-1)、(I-2-1)、(I-3-1)、(I-4-1)、(I-5-1)及び(I-6-1)で表される化合物が1個又は複数個の立体中心キラル中心)を有する場合、前記化合物は、該化合物の個々のエナンチオマー及びジアステレオマー、並びにラセミ体のようなそれらの混合物を含む、該化合物の立体異性体も包含する。

0035

前記特徴を有することにより、式(I-1)、(I-2)、(I-3)、(I-4)、(I-5)及び(I-6)で表される化合物、特に式(I-1-1)、(I-2-1)、(I-3-1)、(I-4-1)、(I-5-1)及び(I-6-1)で表される化合物は、ミトコンドリアの機能障害に対して高い改善効果を発現することができる。

0036

<2.医薬用途
すでに説明したように、式(I-1)、(I-2)、(I-3)、(I-4)、(I-5)又は(I-6)で表される化合物、特に式(I-1-1)、(I-2-1)、(I-3-1)、(I-4-1)、(I-5-1)又は(I-6-1)で表される化合物を前記で例示した真核生物の細胞又はその構造体に対して投与することにより、該細胞又はその構造体におけるミトコンドリアの機能障害を実質的に改善することができる。それ故、本発明の別の一態様は、式(I-1)、(I-2)、(I-3)、(I-4)、(I-5)又は(I-6)で表される化合物、特に式(I-1-1)、(I-2-1)、(I-3-1)、(I-4-1)、(I-5-1)又は(I-6-1)で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む、ミトコンドリアの機能障害の改善に使用するための医薬に関する。

0037

式(I-1)、(I-2)、(I-3)、(I-4)、(I-5)及び(I-6)で表される化合物、特に式(I-1-1)、(I-2-1)、(I-3-1)、(I-4-1)、(I-5-1)及び(I-6-1)で表される化合物は、いずれも医薬品の有効成分として公知の薬剤であるか、又はそのような公知の薬剤を包含する。医薬品の有効成分として公知のこれらの薬剤は、安全性が十分に確認されている。それ故、前記式で表される化合物は、安全性が確認された有効成分として、本発明の各態様の医薬用途に適用することができる。

0038

式(I-1)、(I-2)、(I-3)、(I-4)、(I-5)及び(I-6)で表される化合物、特に式(I-1-1)、(I-2-1)、(I-3-1)、(I-4-1)、(I-5-1)及び(I-6-1)で表される化合物は、血液脳関門を通過し得ることが知られている。それ故、前記式で表される化合物は、脳又は中枢神経系に送達され、ミトコンドリアの機能障害を改善することにより、ミトコンドリアの機能障害に起因する種々の疾患又は症状を予防又は治療することができる。

0039

式(I-1)、(I-2)、(I-3)、(I-4)、(I-5)又は(I-6)で表される化合物、特に式(I-1-1)、(I-2-1)、(I-3-1)、(I-4-1)、(I-5-1)又は(I-6-1)で表される化合物を医薬用途に適用する場合、これらの化合物は、該化合物自体だけでなく、該化合物の立体異性体、それらの製薬上許容される塩、及びそれらの製薬上許容される溶媒和物も包含する。前記式で表される化合物、及びその立体異性体の製薬上許容される塩、並びにそれらの製薬上許容される溶媒和物としては、限定するものではないが、例えば、前記で例示したそれらの塩又は溶媒和物が好ましい。前記式で表される化合物又はその立体異性体が前記の塩又は溶媒和物の形態である場合、ミトコンドリアの機能障害の改善効果を実質的に低下させることなく、該化合物を所望の医薬用途に適用することができる。

0040

式(I-1)、(I-2)、(I-3)、(I-4)、(I-5)又は(I-6)で表される化合物、特に式(I-1-1)、(I-2-1)、(I-3-1)、(I-4-1)、(I-5-1)又は(I-6-1)で表される化合物を医薬用途に適用する場合、これらの化合物は、該化合物自体だけでなく、該化合物のプロドラッグ形態も包含する。本明細書において、「プロドラッグ」は、生体内で親薬物に変換される化合物を意味する。前記化合物のプロドラッグ形態としては、限定するものではないが、例えば、ヒドロキシル基が存在する場合、該ヒドロキシル基と任意のカルボン酸とのエステル、及び該ヒドロキシル基と任意のアミンとのアミド等を挙げることができる。例えば、アミノ基が存在する場合、該アミノ基と任意のカルボン酸とのアミド等を挙げることができる。前記式で表される化合物が前記のプロドラッグ形態である場合、親薬物である前記式で表される化合物のミトコンドリアの機能障害の改善効果を実質的に低下させることなく、対象へのプロドラッグ形態の投与時の薬物動態を向上させることができる。

0041

式(I-1)、(I-2)、(I-3)、(I-4)、(I-5)又は(I-6)で表される化合物、特に式(I-1-1)、(I-2-1)、(I-3-1)、(I-4-1)、(I-5-1)又は(I-6-1)で表される化合物を医薬用途に適用する場合、該化合物を単独で使用してもよく、1種以上の製薬上許容される成分と組み合わせて使用してもよい。本態様の医薬は、所望の投与方法に応じて、当該技術分野で通常使用される様々な剤形に製剤されることができる。それ故、本態様の医薬はまた、前記式で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの塩、又はそれらの溶媒和物と、1種以上の製薬上許容される担体とを含む医薬組成物の形態で提供されることもできる。本態様の医薬組成物は、前記成分に加えて、製薬上許容される1種以上の媒体(例えば、滅菌水のような溶媒又は生理食塩水のような溶液)、賦形剤結合剤ビヒクル溶解補助剤防腐剤、安定剤、膨化剤、潤滑剤、界面活性剤乳化剤油性液(例えば、植物油)、懸濁剤緩衝剤無痛化剤酸化防止剤甘味剤及び香味剤等を含んでもよい。

0042

式(I-1)、(I-2)、(I-3)、(I-4)、(I-5)又は(I-6)で表される化合物、特に式(I-1-1)、(I-2-1)、(I-3-1)、(I-4-1)、(I-5-1)又は(I-6-1)で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む本態様の医薬の剤形は、特に限定されず、非経口投与に使用するための製剤であってもよく、経口投与に使用するための製剤であってもよい。また、本態様の医薬の剤形は、単位用量形態の製剤であってもよく、複数投与形態の製剤であってもよい。非経口投与に使用するための製剤としては、例えば、水若しくはそれ以外の製薬上許容される媒体との無菌性溶液又は懸濁液等の注射剤ローション剤軟膏剤点眼剤及び座剤を挙げることができる。注射剤に混和することができる成分としては、限定するものではないが、例えば、生理食塩水、ブドウ糖若しくはその他の補助薬(例えば、D-ソルビトール、D-マンニトール、D-マンノース若しくは塩化ナトリウム)を含む等張液のようなビヒクル、アルコール(例えばエタノール若しくはベンジルアルコール)、ポリアルコール(例えばプロピレングリコール若しくはポリエチレングリコール)若しくはエステル(例えば安息香酸ベンジル)のような溶解補助剤、ポリソルベート80商標)又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油のような非イオン性界面活性剤ゴマ油又は大豆油のような油性液、リン酸塩緩衝液又は酢酸ナトリウム緩衝液のような緩衝剤、塩化ベンザルコニウム又は塩酸プロカインのような無痛化剤、ヒト血清アルブミン又はポリエチレングリコールのような安定剤、保存剤、並びに酸化防止剤等を挙げることができる。調製された注射剤は、通常、適当なバイアル(例えばアンプル)に充填され、使用時まで適切な環境下で保存される。

0043

経口投与に使用するための製剤としては、例えば、錠剤丸薬散剤顆粒剤粉末剤カプセル剤マイクロカプセル剤エリキシル剤液剤シロップ剤スラリー剤及び懸濁液等を挙げることができる。錠剤は、所望により、糖衣又は溶解性被膜を施した糖衣錠ゼラチン被包錠、腸溶被錠又はフィルムコーティング錠の剤形として製剤してもよく、或いは二重錠又は多層錠の剤形として製剤してもよい。

0044

錠剤又はカプセル剤等に混和することができる成分としては、限定するものではないが、例えば、水、エタノール、プロパノール単シロップグルコース液、カルボキシメチルセルロースセラックメチルセルロースリン酸カリウムポリビニルピロリドン、ゼラチン、コーンスターチトラガントガム又はアラビアゴムのような結合剤;結晶性セルロース乳糖白糖、塩化ナトリウム、グルコース、尿素澱粉炭酸カルシウムカオリン又はケイ酸のような賦形剤;乾燥澱粉アルギン酸ナトリウム寒天末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、澱粉又は乳糖のような崩壊剤;白糖、ステアリンカカオバター又は水素添加油のような崩壊抑制剤第四級アンモニウム塩又はラウリル硫酸ナトリウムのような吸収促進剤グリセリン又はデンプンのような保湿剤;澱粉、乳糖、カオリン、ベントナイト又はコロイド状ケイ酸のような吸着剤;精製タルクステアリン酸塩(例えばステアリン酸マグネシウム)、ホウ酸末又はポリエチレングリコールのような潤滑剤;ショ糖、乳糖又はサッカリンのような甘味剤;及びペパーミントアカモノ油又はチェリーのような香味剤等を挙げることができる。製剤がカプセル剤の場合、さらに油脂のような液状担体を含有してもよい。

0045

本態様の医薬は、デポー製剤として製剤化することもできる。この場合、デポー製剤の剤形の本態様の医薬を、例えば皮下若しくは筋肉に埋め込み、又は筋肉注射により投与することができる。本態様の医薬をデポー製剤に適用することにより、式(I-1)、(I-2)、(I-3)、(I-4)、(I-5)又は(I-6)で表される化合物、特に式(I-1-1)、(I-2-1)、(I-3-1)、(I-4-1)、(I-5-1)又は(I-6-1)で表される化合物のミトコンドリアの機能障害の改善効果を、長期間に亘って持続的に発現することができる。

0046

式(I-1)、(I-2)、(I-3)、(I-4)、(I-5)又は(I-6)で表される化合物、特に式(I-1-1)、(I-2-1)、(I-3-1)、(I-4-1)、(I-5-1)又は(I-6-1)で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む本態様の医薬は、医薬として有用な1種以上の他の薬剤と併用することもできる。本態様の医薬において、前記式で表される化合物と併用される他の薬剤としては、限定するものではないが、例えば、該化合物を除く前記式で表される1種以上の他の化合物、イデベノン、タウリン、5-アミノレブリン酸(5-aminolevulinic acid、5-ALA)及びバチキノン(EPI-743)等を挙げることができる。この場合、本態様の医薬は、前記式で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物と、1種以上の前記他の薬剤とを含む併用医薬の形態となる。前記併用医薬は、前記式で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物と、1種以上の前記他の薬剤とを組み合わせてなる医薬組成物の形態であってもよく、前記式で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を含む、1種以上の前記他の薬剤と併用される医薬組成物の形態であってもよい。本態様の医薬が前記のような併用医薬の形態である場合、前記式で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物と、1種以上の他の薬剤とを含む、単一製剤の形態で提供されてもよく、1種以上の他の薬剤とが別々に製剤化された複数の製剤を含む医薬組合せ又はキットの形態で提供されてもよい。医薬組合せ又はキットの形態の場合、それぞれの製剤を同時又は別々に(例えば連続的に)投与することができる。

0047

式(I-1)、(I-2)、(I-3)、(I-4)、(I-5)又は(I-6)で表される化合物、特に式(I-1-1)、(I-2-1)、(I-3-1)、(I-4-1)、(I-5-1)又は(I-6-1)で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む本態様の医薬は、ミトコンドリアの機能障害に起因する種々の疾患、症状及び/又は障害を、同様に予防又は治療することができる。前記疾患、症状及び/又は障害としては、限定するものではないが、例えば、リー脳症、ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群(MELAS)、又はレーベル病等のミトコンドリア病、糖尿病、及び癌を挙げることができる。前記疾患、症状若しくは障害の予防又は治療を必要とする対象に本態様の医薬を投与することにより、ミトコンドリアの機能障害に起因する前記疾患、症状若しくは障害、例えば、リー脳症、MELAS又はレーベル病等のミトコンドリア病、糖尿病、及び癌からなる群より選択される1種以上の疾患又は症状を予防又は治療することができる。

0048

式(I-1)、(I-2)、(I-3)、(I-4)、(I-5)又は(I-6)で表される化合物、特に式(I-1-1)、(I-2-1)、(I-3-1)、(I-4-1)、(I-5-1)又は(I-6-1)で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む本態様の医薬は、ミトコンドリアの機能障害に起因する前記症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療を必要とする様々な対象に適用することができる。前記対象は、通常は、真核生物、例えば、ヒト又は非ヒト哺乳動物(例えば、ブタ、イヌ、ウシ、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ニワトリ、ヒツジ、ネコ、サル、マントヒヒ若しくはチンパンジー等の温血動物)の被験体又は患者であることが好ましい。前記対象に本態様の医薬を投与することにより、該対象が有するミトコンドリアの機能障害に起因する前記疾患、症状及び/又は障害を予防又は治療することができる。

0049

本明細書において、「予防」は、症状、疾患及び/又は障害の発生(発症又は発現)を実質的に防止することを意味する。また、本明細書において、「治療」は、発生(発症又は発現)した症状、疾患及び/又は障害を抑制(例えば進行の抑制)、軽快修復及び/又は治癒することを意味する。

0050

式(I-1)、(I-2)、(I-3)、(I-4)、(I-5)又は(I-6)で表される化合物、特に式(I-1-1)、(I-2-1)、(I-3-1)、(I-4-1)、(I-5-1)又は(I-6-1)で表される化合物は、前記で説明した症状、疾患及び/又は障害(例えば、ミトコンドリア病、糖尿病又は癌)を有する対象において、該症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用することができる。それ故、本態様の医薬は、前記で説明した症状、疾患及び/又は障害(例えば、ミトコンドリア病、糖尿病又は癌)の予防又は治療に使用するための医薬であることが好ましく、リー脳症、MELAS又はレーベル病等のミトコンドリア病、糖尿病、及び癌からなる群より選択される1種以上の疾患又は症状の予防又は治療に使用するための医薬であることがより好ましい。本態様の医薬をミトコンドリアの機能障害に起因する前記症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用することにより、前記式で表される化合物のミトコンドリアの機能障害の改善効果を介して、該症状、疾患及び/又は障害を予防又は治療することができる。

0051

式(I-1)、(I-2)、(I-3)、(I-4)、(I-5)又は(I-6)で表される化合物、特に式(I-1-1)、(I-2-1)、(I-3-1)、(I-4-1)、(I-5-1)又は(I-6-1)で表される化合物は、前記で説明した症状、疾患及び/又は障害(例えば、ミトコンドリア病、糖尿病又は癌)を有する対象において、該症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用することができる。それ故、本発明の別の一態様は、前記で説明した症状、疾患及び/又は障害(例えば、ミトコンドリア病、糖尿病又は癌)の予防又は治療を必要とする対象に、有効量の式(I-1)、(I-2)、(I-3)、(I-4)、(I-5)又は(I-6)で表される化合物、特に式(I-1-1)、(I-2-1)、(I-3-1)、(I-4-1)、(I-5-1)又は(I-6-1)で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を投与することを含む、ミトコンドリアの機能障害に起因する前記疾患若しくは症状の予防又は治療方法である。前記症状、疾患及び/又は障害は、リー脳症、MELAS又はレーベル病等のミトコンドリア病、糖尿病、及び癌からなる群より選択される1種以上の疾患又は症状であることが好ましい。ミトコンドリアの機能障害に起因する前記症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療を必要とする対象に、前記式で表される化合物を投与することにより、前記式で表される化合物のミトコンドリアの機能障害の改善効果を介して、該症状、疾患及び/又は障害を予防又は治療することができる。

0052

本発明の別の一態様は、前記で説明した症状、疾患及び/又は障害(例えば、ミトコンドリア病、糖尿病又は癌)の予防又は治療に使用するための、式(I-1)、(I-2)、(I-3)、(I-4)、(I-5)又は(I-6)で表される化合物、特に式(I-1-1)、(I-2-1)、(I-3-1)、(I-4-1)、(I-5-1)又は(I-6-1)で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物である。本発明の別の一態様は、前記で説明した症状、疾患及び/又は障害(例えば、ミトコンドリア病、糖尿病又は癌)の予防又は治療に用いるための医薬の製造のための、式(I-1)、(I-2)、(I-3)、(I-4)、(I-5)又は(I-6)で表される化合物、特に式(I-1-1)、(I-2-1)、(I-3-1)、(I-4-1)、(I-5-1)又は(I-6-1)で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物の使用である。前記症状、疾患及び/又は障害は、リー脳症、MELAS又はレーベル病等のミトコンドリア病、糖尿病、及び癌からなる群より選択される1種以上の疾患又は症状であることが好ましい。前記式で表される化合物又は本態様の医薬を、ミトコンドリアの機能障害に起因する前記症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用することにより、前記式で表される化合物のミトコンドリアの機能障害の改善効果を介して、該症状、疾患及び/又は障害を予防又は治療することができる。

0053

式(I-1)、(I-2)、(I-3)、(I-4)、(I-5)又は(I-6)で表される化合物、特に式(I-1-1)、(I-2-1)、(I-3-1)、(I-4-1)、(I-5-1)又は(I-6-1)で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む医薬を、対象、特にヒト患者に投与する場合、正確な用量及び用法(例えば、投与量、投与回数及び/又は投与経路)は、対象の年齢性別、予防又は治療されるべき症状、疾患及び/又は障害の正確な状態(例えば重症度)、並びに投与経路等の多くの要因を鑑みて、担当医が治療上有効な投与量、投与回数及び投与経路等を考慮して、最終的に決定すべきである。それ故、本態様の医薬において、有効成分である前記式で表される化合物は、治療上有効な量及び回数で、対象に投与される。例えば、本態様の医薬をヒト患者に投与する場合、有効成分である前記式で表される化合物の投与量は、通常は、1回投与あたり、0.001〜100 mg/kg体重の範囲であり、典型的には、1回投与あたり、0.01〜10 mg/kg体重の範囲であり、特に、1回投与あたり、0.1〜10 mg/kg体重の範囲である。また、本態様の医薬の投与回数は、例えば、1日に1回又は複数回(例えば2若しくは3回)、或いは数日に1回とすることができる。また、本態様の医薬の投与経路は、特に限定されず、経口的に投与されてもよく、非経口的(例えば、直腸内、径粘膜、腸内、筋肉内、皮下、骨髄内、鞘内、直接心室内、静脈内、硝子体内腹腔内、鼻腔内又は眼内)に単回若しくは複数回投与されてもよい。本態様の医薬を、前記の用量及び用法で使用することにより、前記式で表される化合物のミトコンドリアの機能障害の改善効果を介して、ミトコンドリアの機能障害に起因する前記症状、疾患及び/又は障害を予防又は治療することができる。

0054

以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。

0055

<I. 材料>
[I-1.化合物]
ミトコンドリアの機能障害に起因する疾患又は症状のうち、リー脳症又はMELAS等は、中枢神経系において主要な症状が発現する。そこで、血液脳関門を通過し得ることが知られている市販の薬剤ライブラリー(プレストウィック・ザ・ケミカルライブラリーVer.16; 中枢神経作動薬、プレストウィック社)を使用した。この薬剤ライブラリーは、137個の公知の薬剤を含む。

0056

[I-2.細胞]
以下に示す実験では、核遺伝子変異によるリー脳症、ミトコンドリア遺伝子変異によるリー脳症、又はMELASを有する患者からそれぞれ樹立した皮膚線維芽細胞を使用した。リー脳症を有する患者における遺伝子変異は、いずれも呼吸鎖複合体Iの活性低下を引き起こす変異である。正常細胞の対照としては、Promo Cell社から購入した正常皮膚線維芽細胞を使用した。サンプルに関しては、自治医科大学附属病院の倫理委員会により承認されており、全ての患者家族からインフォームドコンセントを得た。

0057

0058

<II. 方法>
[II-1.概要
ミトコンドリアの機能障害では、例えば、ATP産生の障害及び/又は酸化ストレスの増加が起こり、これにより、細胞のアポトーシスが引き起こされる。このため、ミトコンドリアの機能障害を有する個体では、正常な個体と比較して、酸化ストレスに対して脆弱であることが報告されている(Shrader WDら, Bioorg Med Chem Lett., 2011年6月15日, 第21(12)巻, p. 3693-8., doi:10.1016/j.bmcl.2011.04.085.電子出版2011年4月24日, PubMedPMID: 21600768)。そこで、前記で説明した各患者の皮膚線維芽細胞に酸化ストレスを付与してアポトーシスを誘導した条件下で、該細胞に薬剤ライブラリーの各化合物を投与する一次スクリーニングを実施した。次いで、一次スクリーニングで選抜された候補薬剤を用いて、ミトコンドリア機能の評価試験及びマイクロアレイ発現解析等のin vitro評価試験による二次スクリーニングを実施した。

0059

[II-2.酸化ストレス付与試験]
酸化ストレス付与試験は、L-ブチオニン-(S,R)-スルホキシミン(BSO)の添加によって細胞死を誘導した条件下で行う、公知の薬剤スクリーニング法である(Arce PMら, ACS Med Chem Lett., 2011年5月31日, 第2(8)巻, p. 608-13, doi: 10.1021/ml200095w. eCollection 2011年8月11日, PubMedPMID: 24900356; PubMed Central PMCID: PMC4018135)。BSOは、細胞内において、抗酸化物質であるグルタチオンの合成を阻害し、グルタチオンを枯渇させることにより、細胞内における活性酸素の過剰を引き起こす。試験の手順は、下記の通りである。試験に用いる細胞を、細胞培養用96ウェルプレートに、5,000細胞 /ウェル及び80 μL培地/ ウェルの濃度になるよう播種し、炭酸ガスインキュベーター内(37℃、5% CO2)で24時間培養した。培養24時間後に、BSO及び薬剤ライブラリーの各薬剤(最終濃度1 μM)をウェル中の細胞に共添加し、添加48時間後に、生細胞率を測定した。生細胞率の測定は、生細胞数測定試薬SFナカライテスク社)を使用して、生成したホルマザン吸光度を測定することにより行った。正の対照化合物として、レーバー遺伝性視神経炎に対する治療薬として欧州で認可されているイデベノン(非特許文献1)を同一濃度で使用した。

0060

[II-3.ミトコンドリア機能の評価試験]
ATP産生能を含むミトコンドリア機能の評価試験は、細胞外フラックスアナライザー(XFe96、プライムテック社)を使用して実施した。細胞外フラックスアナライザーを使用して、ATP合成時にミトコンドリアで使用される酸素消費速度(OCR)を、ATP合成酵素阻害剤(オリゴマイシン、ロテノン及びアンチマイシンA)、及び脱共役剤(カルボニルシアニド-p-トリフルオロメトキシフェニルヒドラゾン(FCCP))を添加しながら継続的に測定することで、ミトコンドリア機能の評価をすることができる。評価項目は、ミトコンドリア機能評価における主要な指標とされる、基礎呼吸量、ATP産生能及び最大呼吸量について解析した。試験の手順は、下記の通りである。試験に用いる細胞を、細胞培養用96ウェルプレートに、20,000細胞 /ウェル及び80 μL培地/ ウェルの濃度になるよう播種し、炭酸ガスインキュベーター内(37℃、5% CO2)で24時間培養した。培養24時間後に、薬剤ライブラリーの各薬剤(最終濃度1,000、100又は10 nM)又は対照として同量のジメチルスルホキシド(DMSO)をウェル中の細胞に添加し、次いで薬剤添加20分後にオリゴマイシン(最終濃度2 μM)を、薬剤添加50分後にFCCP(最終濃度2 μM)を、薬剤添加80分後にロテノン及びアンチマイシンA(最終濃度0.5 μM)を、順次添加して、酸素消費速度(OCR)を経時的に測定した。薬剤ライブラリーの薬剤添加24時間後における測定結果に基づき、基礎呼吸量、ATP産生能及び最大呼吸量を評価した。

0061

[II-4.マイクロアレイ発現解析]
マイクロアレイによる発現解析は、アジレント社のSurePrint G3 Human Gene Expression 8x60K v3を用いて実施した。リー脳症患者由来のKCMC10細胞に、BSOを添加して酸化ストレスを付与した群と、BSO及び薬剤ライブラリーから選抜された候補薬剤を共添加した群とを2サンプルずつ作成した。各サンプルよりRNAを抽出し、マイクロアレイによる発現解析を実施した。

0062

<III. 結果>
[III-1.酸化ストレス付与試験]
薬剤ライブラリーの薬剤を用いるスクリーニングの前に、前記I-2で準備したミトコンドリア病患者由来線維芽細胞の酸化ストレスに対する脆弱性を確認した。BSOの添加濃度と試験した細胞の生細胞率との関係を図1に示す。図中、Aは、リー脳症患者由来のME54細胞の結果を、Bは、正常細胞であるPromo1細胞の結果を、それぞれ示す。

0063

図1に示すように、リー脳症患者由来のME54細胞は、50 μM以上のBSOの添加により、生細胞率が顕著に低下した(図1A)。これに対し、正常細胞であるPromo1細胞は、1〜1000 μMの範囲のBSOを添加しても、生細胞率に有意な差は確認されなかった(図1B)。他のミトコンドリア病患者由来線維芽細胞でも、同様の結果が確認された(結果は示していない)。前記結果より、ミトコンドリア病患者由来線維芽細胞は、対照の正常細胞と比較して、BSOの添加によって引き起こされる酸化ストレスに対して脆弱性を示すことが確認された。ミトコンドリア病患者由来線維芽細胞のこのような性質は、Shrader WBらの文献から知られている(Shrader WDら, Bioorg Med Chem Lett., 2011年6月15日, 第21(12)巻, p. 3693-8, doi:10.1016/j.bmcl.2011.04.085.電子出版2011年4月24日, PubMedPMID: 21600768)。

0064

前記I-2で準備した3系統のミトコンドリア病患者由来線維芽細胞を用いて、酸化ストレス付与試験を実施した。正の対照化合物であるイデベノンと同等以上の生細胞率を示した薬剤を有効と判定した。KCMC10細胞に対する薬剤ライブラリーの各薬剤の酸化ストレス付与試験の結果を図2に、ME54細胞に対する薬剤ライブラリーの各薬剤の酸化ストレス付与試験の結果を図3に、ME110細胞に対する薬剤ライブラリーの各薬剤の酸化ストレス付与試験の結果を図4に、それぞれ示す。図中の各グラフにおいて、左から1番目の棒(白抜き)は、BSO非添加の対照を、2番目の棒(点パターン)は、SBO添加且つ薬剤ライブラリーの薬剤非添加の対照を、3番目の棒(斜線パターン)は、SBO添加且つイデベノン添加の正の対照を、それぞれ示す。また、横軸方向の点線は、有効と判定されるイデベノン添加の場合の生細胞率の値を示す。

0065

図2〜4に示すように、KCMC10細胞に対しては、12種類の薬剤(薬剤No. 5、30、35、53、56、63、88、104、105、108、118及び129)が、ME54細胞に対しては、12種類の薬剤(薬剤No. 5、30、35、56、105、118、129、131、133、134、135及び136)が、ME110細胞に対しては、11種類の薬剤(薬剤No. 5、35、53、56、88、99、104、105、108、118及び129)が、有効と判定された。

0066

前記結果から、3系統のミトコンドリア病患者由来線維芽細胞のいずれに対しても有効と判定された6種類の薬剤(薬剤No. 5、35、56、105、118及び129)を、二次スクリーニングに用いる候補薬剤として選抜した。6種類の候補薬剤の化合物名及び化学構造を以下に示す。

0067

0068

[III-2.ミトコンドリア機能の評価試験]
薬剤No. 5(式(I-1-1)の化合物)添加24時間後のKCMC10又はME110細胞における基礎呼吸量、ATP産生能及び最大呼吸量を評価した結果を図5に示す。図中、Aは、KCMC10細胞に10、100又は1,000 nMの薬剤No. 5を添加した場合の基礎呼吸量を、Bは、KCMC10細胞に10、100又は1,000 nMの薬剤No. 5を添加した場合のATP産生能を、Cは、KCMC10細胞に10,100又は1,000 nMの薬剤No. 5を添加した場合の最大呼吸量を、Dは、ME110細胞に10 nMの薬剤No. 5を添加した場合の基礎呼吸量を、Eは、ME110細胞に10 nMの薬剤No. 5を添加した場合のATP産生能を、Fは、ME110細胞に10 nMの薬剤No. 5を添加した場合の最大呼吸量を、それぞれ示す。図中、白抜きの棒は、対照の値を、黒塗りの棒は、薬剤No. 5を添加した場合の値を、それぞれ示す。また、**又は***は、スチューデントt-検定により算出した、対照(DMSO)に対するp値が、0.0001未満、又は0.05未満であることを、それぞれ示す。

0069

図5に示すように、薬剤No. 5の添加は、KCMC10及びME110細胞のいずれにおいても、対照の場合と比較して、基礎呼吸量、ATP産生能及び最大呼吸量が有意に向上した。特に、KCMC10細胞においては、10〜100 nMの範囲の薬剤No. 5の添加により、対照の場合と比較して、基礎呼吸量、ATP産生能及び最大呼吸量が有意に向上した。前記結果より、薬剤No. 5の添加は、ミトコンドリア病の一種であるリー脳症又はMELAS患者由来の皮膚線維芽細胞に対して、ミトコンドリア機能を改善し得ることが示された。

0070

[III-3.マイクロアレイ発現解析]
BSO添加群とBSO及び薬剤No. 5(式(I-1-1)の化合物)添加群との間の発現比率データに基づき、二群間で2倍以上の発現比率の差が観察された遺伝子を、薬剤No. 5の添加によって有意な発現変化を示す遺伝子として抽出した。その結果、475種類の遺伝子が、有意な発現変化を示す遺伝子として確認された。薬剤No. 5の添加によって有意な発現変化を示す遺伝子の概要を表3〜5に示す。表中、二群間のLog 2比が1の場合は2倍の、2の場合は4倍の、3の場合は8倍の発現比率の差を意味する。また、表3に示す遺伝子が関与するシグナル経路の模式図を図6に、表5に示す遺伝子が関与するシグナル経路の模式図を図7に、それぞれ示す。図中、点パターンの円で示す遺伝子は、発現が増加する遺伝子を、横線パターンの円で示す遺伝子は、発現が低下する遺伝子を、それぞれ示す。

0071

0072

薬剤No. 5の添加によって有意な発現変化を示す遺伝子のうち、表3に示す遺伝子は、いずれもWNT-mTORシグナル経路に関与する遺伝子であった。これらの遺伝子は、全体としてWNT-mTORシグナル経路を抑制する方向に発現変化した。

0073

0074

薬剤No. 5の添加によって有意な発現変化を示す遺伝子のうち、表4に示す遺伝子は、いずれも炎症若しくは自然免疫に関わるサイトカイン又はケモカインに関与する遺伝子であった。これらの遺伝子は、全体として前記サイトカイン又はケモカインの発現を抑制する方向に発現変化した。

0075

0076

薬剤No. 5の添加によって有意な発現変化を示す遺伝子のうち、表5に示す遺伝子は、いずれもJAK-STATシグナル経路に関与する遺伝子であった。

0077

薬剤No. 5の添加によって有意な発現変化を示す、WNT-mTORシグナル経路、炎症若しくは自然免疫、及びJAK-STATシグナル経路に関与する遺伝子は、ミトコンドリア機能に関連する可能性がある。例えば、mTORシグナル経路の抑制により、リー脳症モデルマウスにおけるミトコンドリア機能が改善したことが報告されている(Johnson SCら, Science, 2013年12月20日, 第342(6165)巻, p. 1524-8)。それ故、薬剤No. 5の添加により、これらの遺伝子の発現変化を介して、ミトコンドリア機能が改善されると推測される。

実施例

0078

なお、本発明は、前記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除及び/又は置換をすることが可能である。

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