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技術 タンニン酸誘導体を含む皮膜形成性組成物を用いて基材上に膜を形成する皮膜形成方法、及び基材上に形成されたタンニン酸誘導体を含む膜

出願人 国立研究開発法人物質・材料研究機構
発明者 内藤昌信パイラデバブラタ
出願日 2019年1月25日 (1年11ヶ月経過) 出願番号 2019-011459
公開日 2019年5月23日 (1年7ヶ月経過) 公開番号 2019-077954
状態 特許登録済
技術分野 その他の表面処理 塗料、除去剤 金属の防食及び鉱皮の抑制 流動性材料の適用方法、塗布方法
主要キーワード 上横軸 円板表面 円板試験片 タンニン誘導体 防錆膜 アノード電流密度 凝集膜 腐食電流密度
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (20)

課題

高い防錆効果を奏する防錆剤の提供。

解決手段

タンニン酸誘導体を含む皮膜形成性組成物を用いて基材上に膜を形成する皮膜形成方法、及び基材上に形成されたタンニン酸誘導体を含む膜であって、タンニン酸誘導体は、タンニン酸の少なくとも一部の水酸基における水素原子が、炭素数3〜18の鎖状炭化水素基により置換されたタンニン酸誘導体を含む皮膜形成性組成物を用いて基材上に膜を形成する皮膜形成方法、及び基材上に形成されたタンニン酸誘導体を含む膜。皮膜形成性組成物は、種々の基材上で良好な皮膜を形成し、高い防錆効果等を奏する。

概要

背景

マグネシウム(Mg)は、地表豊富元素であり、軽く、強靭であり、鋳造性が良いため、車輪航空機部品携帯電話部品などに広く使用されている。しかし、Mgは腐食性であり、酸性溶液アルカリ性溶液、塩水に浸漬すると、水素の発生を伴いながら容易に腐食される。そのため、Mg及びMg合金等の金属基板の表面を保護する防錆剤が種々開発されている。

例えば、有害なクロム系化合物を使用しない、防錆性耐食性鉄材の製造方法が開示されている(特許文献1)。また、6価クロムを含まない表面処理金属板及びその製造方法が開示されている(特許文献2)。

防錆剤として、ポリフェノール一種であるタンニンが古くから使用され、例えば亜鉛表面上に安定な皮膜を形成することが知られている(非特許文献1)。しかし、タンニンは有機溶媒にほとんど溶解しないので、用途が限定されている。これを解決するために、該タンニン分子中に含まれる水酸基の少なくとも一部をアルキルエーテルまたはアルキルエステル置換して、水不溶性タンニン酸誘導体とすることが知られている(特許文献3)。

概要

高い防錆効果を奏する防錆剤の提供。タンニン酸誘導体を含む皮膜形成性組成物を用いて基材上に膜を形成する皮膜形成方法、及び基材上に形成されたタンニン酸誘導体を含む膜であって、タンニン酸誘導体は、タンニン酸の少なくとも一部の水酸基における水素原子が、炭素数3〜18の鎖状炭化水素基により置換されたタンニン酸誘導体を含む皮膜形成性組成物を用いて基材上に膜を形成する皮膜形成方法、及び基材上に形成されたタンニン酸誘導体を含む膜。皮膜形成性組成物は、種々の基材上で良好な皮膜を形成し、高い防錆効果等を奏する。

目的

本発明者らは高い防錆効果を奏する防錆剤を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

タンニン酸誘導体を含む皮膜形成性組成物を用いて基材上に膜を形成する皮膜形成方法であって、前記タンニン酸誘導体は、タンニン酸の少なくとも一部の水酸基における水素原子が、炭素数3〜18の鎖状炭化水素基により置換されたタンニン酸誘導体であり、タンニン酸誘導体分子同士が、配向をすることにより膜が形成される、皮膜形成方法。

請求項2

前記タンニン酸誘導体は、前記鎖状炭化水素基がアルキル基である、請求項1に記載の皮膜形成方法。

請求項3

前記タンニン酸誘導体は、その水酸基の10%〜80%が前記鎖状炭化水素基により置換されている、請求項1又は2に記載の皮膜形成方法。

請求項4

前記皮膜形成性組成物は、さらに溶剤を含み、溶液もしくはペーストの形態である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の皮膜形成方法。

請求項5

前記皮膜形成性組成物は、さらに水を含み、エマルジョンの形態である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の皮膜形成方法。

請求項6

前記皮膜形成性組成物は、さらに不活性ガスを含み、スプレーの形態である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の皮膜形成方法。

請求項7

基材上に形成されたタンニン酸誘導体を含む膜であって、前記タンニン酸誘導体は、タンニン酸の少なくとも一部の水酸基における水素原子が、炭素数3〜18の鎖状炭化水素基により置換されたタンニン酸誘導体であり、タンニン酸誘導体分子同士が、配向をして形成されている膜。

請求項8

前記タンニン酸誘導体は、前記鎖状炭化水素基がアルキル基である、請求項7に記載の膜。

請求項9

前記タンニン酸誘導体は、その水酸基の10%〜80%が前記鎖状炭化水素基により置換されている、請求項7又は8に記載の膜。

技術分野

0001

本発明は、タンニン酸誘導体を含む皮膜形成性組成物を用いて基材上に膜を形成する皮膜形成方法、及び基材上に形成されたタンニン酸誘導体を含む膜に関し、詳細には所定の鎖状炭化水素基を備えるタンニン酸誘導体を含み、防錆性抗菌性滅菌性殺菌性等に優れた皮膜を形成する組成物を用いて基材上に膜を形成する皮膜形成方法、及び基材上に形成されたタンニン酸誘導体を含む膜に関する。

背景技術

0002

マグネシウム(Mg)は、地表豊富元素であり、軽く、強靭であり、鋳造性が良いため、車輪航空機部品携帯電話部品などに広く使用されている。しかし、Mgは腐食性であり、酸性溶液アルカリ性溶液、塩水に浸漬すると、水素の発生を伴いながら容易に腐食される。そのため、Mg及びMg合金等の金属基板の表面を保護する防錆剤が種々開発されている。

0003

例えば、有害なクロム系化合物を使用しない、防錆性・耐食性鉄材の製造方法が開示されている(特許文献1)。また、6価クロムを含まない表面処理金属板及びその製造方法が開示されている(特許文献2)。

0004

防錆剤として、ポリフェノール一種であるタンニンが古くから使用され、例えば亜鉛表面上に安定な皮膜を形成することが知られている(非特許文献1)。しかし、タンニンは有機溶媒にほとんど溶解しないので、用途が限定されている。これを解決するために、該タンニン分子中に含まれる水酸基の少なくとも一部をアルキルエーテルまたはアルキルエステル置換して、水不溶性タンニン酸誘導体とすることが知られている(特許文献3)。

0005

特開2004−197151号公報
特開2009−249690号公報
特開2004−307362号公報

先行技術

0006

金属表面技術、第29巻、第1号、第38〜42頁、1978年

発明が解決しようとする課題

0007

上記安定な皮膜は、タンニン酸中の没食子酸等が亜鉛と反応して形成された膜上に、タンニン酸が凝集性重合あるいは会合性重合を起こして形成された膜が重なったものであるとされている(非特許文献1、図10及びそれに関する第42頁左欄)。これらの反応に関与するのは、タンニン酸中に含まれる没食子酸等の水酸基である。従って、この水酸基をアルキルエーテル等に変えてしまうと、皮膜が形成され難くなり、防錆効果が低下することが予測される。特許文献1においても、専ら溶液状態で評価されている。

0008

しかし、驚くことに、本発明者らは高い防錆効果を奏する防錆剤を提供することを目的として種々検討するなかで、該アルキルエーテル誘導体がタンニン酸とは全く異なる機序により皮膜を形成して、防錆効果だけでなく種々の効果を奏することを見出し、本発明を為した。

課題を解決するための手段

0009

即ち、本発明は、タンニン酸誘導体を含む皮膜形成性組成物を用いて基材上に膜を形成する皮膜形成方法、及び基材上に形成されたタンニン酸誘導体を含む膜であって、前記タンニン酸誘導体は、タンニン酸の少なくとも一部の水酸基における水素原子が、炭素数3〜18の鎖状炭化水素基により置換されたタンニン酸誘導体であり、タンニン酸誘導体分子同士が、配向をすることにより膜が形成される、皮膜形成方法、及び基材上に形成されたタンニン酸誘導体を含む膜である。

発明の効果

0010

上記本発明の組成物は膜形成性であり、種々の基材上に安定な膜を形成する。該膜形成の機序についての研究は緒に就いたばかりであるが、タンニン酸誘導体分子同士が、その鎖状炭化水素基同士を揃えるようにして並ぶことで、秩序立った配向をすることが理由であると考えられる。この配向は、水酸基の減少を補って余りある膜の安定性をもたらし、タンニン酸の凝集膜よりも優れた防錆性、抗菌性、殺菌性等の種々の機能を示す。

図面の簡単な説明

0011

タンニン酸の誘導化の一例を示す化学反応工程図である。
タンニン酸の粉末外観写真(a)と、該粉末を水(b)、クロロホルム(c)に加えたときの外観写真である。
タンニン酸誘導体の外観写真である。
タンニン酸誘導体の外観写真(a)と、水(b)、クロロホルム(c)に加えたときの外観写真である。
比較例1(タンニン酸:TA)、実施例1(TA(C10)5)、実施例2(TA(C10)10)、実施例3(TA(C10)15)、実施例4(TA(C10)20)で調製された誘導体のFT−IRスペクトルである。
基材へのドロップキャスト量と皮膜厚の関係を示すグラフである。
防錆能を試験するために用いた電極構成図である。
防錆試験1におけるカソード電流密度(Cathodic current density)の測定結果である。
防錆試験1におけるアノード電流密度(Anodic current density)の測定結果である。
防錆試験2におけるカソード電流密度の測定結果である。
防錆試験2におけるアノード電流密度の測定結果である。
塩水浸漬試験の方法を示す概略図である。
防錆試験3における各サンプルの外観写真である。
防錆試験4における各サンプルの外観写真である。
膜厚腐食電流密度の関係及び浸漬時間と腐食電流密度の関係を示すグラフである。
塩水浸漬実験の結果を示す写真である。
ガラス基板上の皮膜を示す写真である。
ガラス基板上に形成した皮膜上における大腸菌の数の変化を示すグラフである。
ガラス基板上に形成した皮膜上に黄色ブドウ球菌((a),(c))、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌((b),(d))を播いて24時間後の表面の写真である。
ガラス基板上に形成した各種厚みの皮膜を示す写真である。
図20に示す各皮膜のUV−可視吸収スペクトルである。
図20に示す各皮膜の透過率スペクトルである。

0012

タンニンは、加水分解多価フェノールを生じる植物成分の総称であり、没食子酸やエラグ酸グルコースなどの糖にエステル結合し、酸や酵素で加水分解されやすい加水分解型タンニンと、フラバノール骨格を持つ化合物が重合した縮合型タンニンに大別される。
いずれのタイプのタンニンであっても、また、それらの混合物であっても、本発明における誘導体化は可能であり、本発明の効果が奏されるものと考えられる。好ましくは加水分解型タンニンであり、例えば下記式(1)で表されるタンニン酸を主成分とするものが誘導体化される。なお、後述する実施例で使用しているタンニン酸は、ヌルデの虫こぶ由来天然物であり、抽出や精製の過程で没食子酸やエラグ酸のエステル結合の切断や再結合などによって生成される物質を含み得るが、防錆、殺菌等の各効果は十分に達成できることが確認されている。

0013

タンニン酸は複数の水酸基を有するが、本発明における誘導体は、該複数の水酸基のうちの少なくとも一部の水酸基における水素原子が炭素数3〜18の鎖状炭化水素基により置換されている。原料タンニン酸の水酸基の総数は種類に応じて異なる。好ましくは、置換基数の10%以上が置換されており、より好ましくは20%以上、特に好ましくは40%以上が置換されている。例えば上記式(1)の場合、水酸基の総数は25個であり、少なくとも1個、好ましくは3個以上、より好ましくは5個以上、特に好ましくは10個以上置換されている。

0014

置換基数の上限は、置換基の種類、適用する基材及び使用目的に応じて異なる。使用する基材に対して、所望の固着性が達成できるのであれば、全ての水酸基が置換されていてもよい。金属、ガラス等の極性基材へ適用する際には、置換基数の80%以下が置換されていることが好ましく、より好ましくは60%以下が置換されている。例えば上記式(1)の場合、好ましくは20個以下、より好ましくは15個以下である。

0015

炭素数3〜18の鎖状炭化水素基としては、直鎖もしくは分岐状のアルキル基アルケニル基アルキニル基が挙げられ、これが水酸基由来の酸素原子を含む結合を介して、タンニン酸骨格に結合される。鎖状炭化水素基の具体例には、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基オクチル基、イソオクチル基ノニル基、イソノニル基、デシル基ウンデシル基、ドデシル基ヘキサデシル基、プロピレン基ヘキシレン基ヘキサデセニル基オクタデセニル基等が包含される。好ましくは炭素数4〜18であり、より好ましくは炭素数6〜16である。該酸素原子を含む結合としては、例えばエーテル結合、エステル結合、ウレタン結合が挙げられる。なお、該鎖状炭化水素基以外の基の場合であっても皮膜形成能を有する可能性があるが、上述のとおり、タンニン酸誘導体の皮膜形成能については未知の部分が多く、検討を要する。

0016

該タンニン酸誘導体は、アルキル化反応の一つであるウィリアムソンエーテル合成法によって得られる。具体的には、テトラヒドロフランジメチルホキサイド等の溶媒中で、塩基性触媒の存在下で、タンニン酸にハロゲン化アルキルを反応させて作ることができる。塩基性触媒としてはMH、M2CO3、M(M:アルカリ金属)の群から選択されるいずれか1又は2以上の触媒を使うことができる。例えば、K2CO3は、OH基をO−M+に変換し、ハロゲン化アルキル(X−R1:X:ハロゲン、R1:アルキル基)へのO−基の求核反応を促進することができる。ハロゲン化アルキルとしては、例えば、ヨウ化アルキルを用いることができる。また、ハロゲン化アルキルの代わりに、スルホニル基などを脱離基として有するものも使用できる。また、上記、ウィリアムソンエーテル合成法以外のアルキル化反応を用いることもできる。さらに、N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)等の縮合剤を用いたカルボン酸類との脱水縮合反応や、イソシアネートとの縮合反応を用いることもできる。

0017

反応は70℃以上100℃以下で、約1時間程度加熱する。図1は、式(1)のタンニン酸の誘導体化の一例を示す。塩基性触媒としてK2CO3を用い、DMF中で、85℃に加熱して、デシル基を9つ有する誘導体(TA(C10)9)を合成する例を示している。タンニン酸に対するハロゲン化アルキルのモル比を変えることにより、アルキル基のタンニン酸中への導入数であるnの値を所望の値に設定できる。

0018

本発明の組成物は、皮膜形成性である。例えば、基材上に溶液等の形態で施与された後に、溶媒を除去すると、基材上に膜の形態で残る。該皮膜は、連続膜でなくてもよく、例えばスプレー等によって非連続的に形成された膜であってもよい。また、該膜の耐久性向上等の目的で、タンニン誘導体架橋したり、樹脂等のマトリックスと混合してもよい。
架橋剤は、本発明の組成物に予め混合し、又は組成物を基材に施与する際に添加する等してよい。

0019

本発明の組成物は、タンニン誘導体の種々の作用と皮膜形成能を利用する種々の用途に使用できる。例えば、防錆剤、抗酸化剤消毒剤、殺菌又は滅菌剤抗菌剤として供することができる。施与する基材も限定されず、金属、金属酸化物、樹脂、エラストマポリマー無機物コンクリートモルタル、木材、動物もしくはヒトの皮膚等、多岐に亘る。

0020

該組成物は種々の形態であってよく、例えば溶液、ペーストゲルエマルジョン、スプレーの形態で供される。溶液もしくはペーストの形態の場合、組成物には少なくとも一種の溶剤が含まれる。溶剤としては、該タンニン酸誘導体を溶解することができればよく、例えばプロピレンアルコールブタノール等のアルコール系溶剤エチレングリコールモノメチルエーテルエチレングリコールモノプロピルエーテル等のエーテル系溶剤酢酸エチル酢酸イソブチル等のエステル系溶剤メチルエチルケトン等のケトン系溶剤が挙げられる。

0021

組成物がクリーム乳液等のエマルジョンの形態である場合、本発明の組成物は水もしくは、アルコール類など水と相溶性を有する有機溶媒との混合溶媒を含む。エマルジョンの形態は限定されず、水中油滴型(o/w)、油中水滴型(w/o)エマルジョン、さらにはw/o/w型のいずれであってもよい。調整方法としては、水中にタンニン酸誘導体を水中に直接分散させてもよいし、タンニン酸誘導体の有機溶媒溶液を分散させてもよい。また、水と相溶性を有する有機溶媒との混合溶媒中でエマルジョンを作成したのち、有機溶媒のみを揮発させることで得られる水分散体でもよい。

0022

組成物がスプレーの形態である場合、本発明の組成物は噴射剤として作用する液化もしくは圧縮ガスを含む。液化ガスとしては液化石油ガスジメチルエーテル等が、圧縮ガスとしては二酸化炭素窒素が挙げられる。また、二酸化炭素は臨界点を超えた超臨界流体であってもよく、工業的殺菌プロセス等において使用してもよい。

0023

本発明の組成物は、目的に応じた濃度となる量のタンニン酸誘導体と上記各成分を、定法に従い混合することによって調製することができる。タンニン酸誘導体の濃度は、用途、塗布法に応じて種々調整すればよい。また、各組成物には慣用添加剤、例えば界面活性剤分散剤消泡剤レベリング剤pH調節剤、架橋剤、フィラー等を本発明の目的を阻害しない範囲で配合してよい。

0024

皮膜の形成法は任意の方法であってよく、バーコータ法、スピンコーティング法ディッピング法スプレー法などが挙げられる。皮膜の膜厚も限定されず、用途に応じて調整することが好ましい。例えば防錆膜の場合は、100nm以上とすることが好ましい。100nm未満では、金属又は合金からなる基板の表面への水分子の接近を十分防止できず、十分な防錆効果が得られない場合がある。

0025

以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[比較例1]
(材料調製・特性評価
タンニン酸の粉末(WAKO, 203-06331)を用意した。図2は、タンニン酸の粉末の外観写真(a)と、水(b)、クロロホルム(c)に添加した時の外観写真である。図2(a)に示すように、タンニン酸の粉末は、黄土色の粉末であった。タンニン酸は水に溶解し、クロロホルム(CHCl3)には溶解しなかった。この原料のタンニン酸を比較例1として用いた。

0026

下記実施例1〜8において、上記タンニン酸(以下「TA」と表す場合がある)とヨウ化アルキルをDMFに溶解し、そこにヨウ化アルキル(ヨウ化n−デシル、ヨウ化n−ヘキシル、ヨウ化n−ヘキサデシル)と、夫々、等量のK2CO3を添加した後、85℃で8時間加熱して、表1に示す各タンニン酸誘導体を合成した。以下において、炭素数mの置換基をn個有するタンニン酸誘導体を「TA(Cm)n」と表す。

0027

[実施例1]
タンニン酸の濃度を56wt%とし、ヨウ化n−デシルの濃度を44wt%として、上述の合成条件で、化学式(2)に示すTA(C10)5を合成した。図3は、得られた誘導体の外観写真である。ゲル状物質であった。なお、式(2)において、m=10である。収率は88%であった。置換基の導入数は、タンニン酸とヨウ化n−デシルの仕込み比から見積もった。

0028

図4は、誘導体の外観写真(a)と、水(b)、クロロホルム(c)に添加したときの外観写真である。図4(a)に示すように、誘導体は部分的にゲル状の粉末であった。図4(b)に示すように、誘導体は水に溶解しなかった。図4(c)に示すように、誘導体の粉末はCHCl3に溶解した。

0029

[実施例2]
タンニン酸の濃度を39wt%とし、ヨウ化n−デシルの濃度を61wt%と変えた他は実施例1と同様の合成条件で、化学式(3)に示すTA(C10)10を合成した。なお、式(3)において、m=10である。収率は74%であった。

0030

[実施例3]
タンニン酸の濃度を30wt%とし、ヨウ化n−デシルの濃度を70wt%と変えた他は実施例1と同様の合成条件で、化学式(4)に示すTA(C10)15を合成した。なお、式(4)において、m=10である。収率は76%であった。

0031

[実施例4]
タンニン酸の濃度を24wt%とし、ヨウ化n−デシルの濃度を76wt%と変えた他は実施例1と同様の合成条件で、化学式(5)に示すTA(C10)20を合成した。なお、式(5)において、m=10である。収率は94%であった。

0032

[実施例5]
タンニン酸の濃度を62wt%とし、ヨウ化n−ヘキシルを用い、その濃度を38wt%と変えた他は実施例1と同様の合成条件で、TA(C6)5を合成した。収率は73%であった。

0033

[実施例6]
タンニン酸の濃度を45wt%とし、ヨウ化n−ヘキシルを用い、その濃度を55wt%と変えた他は実施例1と同様の合成条件で、TA(C6)10を合成した。収率は87%であった。

0034

[実施例7]
タンニン酸の濃度を49wt%とし、ヨウ化n−ヘキサデシルを用い、その濃度を51wt%と変えた他は実施例1と同様の合成条件で、TA(C16)5を合成した。収率は72%であった。

0035

[実施例8]
タンニン酸の濃度を33wt%とし、ヨウ化n−ヘキサデシルを用い、その濃度を67wt%と変えた他は実施例1と同様の合成条件で、TA(C16)10を合成した。収率は61%であった。

0036

<FT−IR測定
得られた各誘導体のFT−IR測定を行った。図5に、比較例1、実施例1〜4で得られた各誘導体の各スペクトルを重ねて示す。実施例の各誘導体については3000cm−1付近にアルキル基のピークを確認した。

0037

本発明の皮膜形成性組成物は、防錆用組成物消毒用殺菌用滅菌用又は抗菌用組成物として有用であるが、この組成物を、金属、ガラス等の基板に被覆し、防錆性皮膜、殺菌・滅菌性皮膜を形成した材料(サンプル)について、以下、その効果を具体的に示す。

0038

<防錆試験1>
Mg合金棒(AZ31)(大阪富士工業社製、組成:Al 3.2質量%, Zn0.93質量%, Mn0.4質量%, Si0.04質量%, Cu0.0038質量%, Ni0.0086質量%, Fe0.003質量%, Mg残部、直径1.5cm)を切断し、厚さ4mmのMg合金円板を作製した。次に、表面をSiCペーパーで磨き、EtOH、H2O、アセトン順番清浄処理して、下記の円板試験片(1)〜(6)を作製した。
(1)Mg合金(AZ31)無被覆サンプル。
(2)Mg合金(AZ31)円板表面をTA(C10)5(実施例1)で被覆したサンプル。
(3)Mg合金(AZ31)円板表面をTA(C10)10(実施例2)で被覆したサンプル。
(4)Mg合金(AZ31)円板表面をTA(C10)15(実施例3)で被覆したサンプル。
(5)Mg合金(AZ31)円板表面をTA(C10)20(実施例4)で被覆したサンプル。
(6)Mg合金(AZ31)円板表面をTA(比較例1)で被覆したサンプル。

0039

実施例1〜4の各試料及び比較例1に用いたTAを、テトラヒドロフラン(THF)に8wt%で溶解した溶液40μLを、基板に滴下し、キャストして塗布した。室温で溶媒の蒸発させたのち、各々80℃で1時間アニーリングした。

0040

図6は、TA(C10)5(実施例1)を用いたときの、ドロップ−キャスト量と乾燥膜厚の関係を示すグラフである。同図に示すように、形成される厚さは、ドロップ−キャスト量に線形に依存した。いずれの材料の場合でも同様であり、このグラフに基づき、いずれも乾燥膜厚を20μmとした。

0041

得られた各円板を作用電極(working electrode)とし、カロメル電極(std.calomel electrode)を参照電極とし、白金ワイヤー対電極(counter electrode)とし、電解質溶液として3.5wt.%NaCl水溶液)を用いて、図7に示す構成で、I−V(電流電圧)特性を測定した。スキャン速度は1mV/sとした。

0042

図8は、カソード電流密度(Cathodic current density)の測定結果である。無被覆サンプル及び比較例1(TA)はほとんど同じで、最も多く電流が流れた。すなわち、一番大きく腐食した。一方、TA(C10)10(実施例2)が最も防錆効果が大きかった。

0043

図9は、アノード電流密度(Anodic current density)の測定結果である。比較例1(TA)が最も腐食した。一方、TA(C10)10(実施例2)の電流値は低く、変化が少なく、最も防錆効果が大きかった。

0044

<防錆試験2>
防錆試験1と同様にして、下記の4つのサンプルについて、I−V特性を測定した。
(1)Mg合金(AZ31)無被覆サンプル。
(2)Mg合金(AZ31)円板表面をTA(C10)10(実施例2)で被覆したサンプル。
(3)Mg合金(AZ31)円板表面をTA(C6)10(実施例6)で被覆したサンプル。
(4)Mg合金(AZ31)円板表面をTA(C16)10(実施例8)で被覆したサンプル。

0045

図10は、カソード電流密度の測定結果である。無被覆が一番大きく腐食した。一方、TA(C10)10(実施例2)とTA(C16)10(実施例8)は同程度の優れた防錆効果を示した。

0046

図11は、アノード電流密度の測定結果である。無被覆が一番大きく腐食した。一方、TA(C10)10(実施例2)の電流値は低く、変化が少なく、最も防錆効果に優れた。
TA(C16)10(実施例8)も同様に変化が少なく、防錆効果が大きかった。

0047

<防錆試験3>
Mg合金(AZ31)無被覆サンプルと、Mg合金(AZ31)円板表面をTA(C10)10(実施例2)で被覆したサンプルの塩水浸漬実験を行った。図12に示すように、浸漬時、撹拌子を用い、200rpmで攪拌した。塩水は、3.5wt%NaCl溶液を298Kの条件で用いた。
図13に、無被覆サンプルの浸漬前の写真(a)、2時間浸漬後の写真(b)、TA(C10)10(実施例2)で被覆したサンプルの浸漬前の写真(c)、50時間浸漬後の写真(d)を示す。無被覆サンプルはわずか2時間浸漬しただけで表面の8割が腐食したのに対し、TA(C10)10(実施例2)で被覆したサンプルでは50時間浸漬しても腐食がほとんど見られなかった。

0048

<防錆試験4>
TA(比較例1)を被覆したサンプル(TA coated(contorol))、TA(C10)20(実施例4)で被覆したサンプル(TA(C10)20 coated)、TA(C10)5(実施例1)で被覆したサンプル(TA(C10)5 coated)、TA(C10)15(実施例3)で被覆したサンプル(TA(C10)15 coated)を用いた他は防錆試験3と同様にして、塩水浸漬実験を行った。

0049

図14に、各サンプルの浸漬前と50時間浸漬した後の写真を示す。TA coatedサンプルは50時間浸漬した後、表面が大きく腐食し、部分的に剥がれが生じた。また、TA(C10)5 coatedサンプルは、わずかに腐食した。一方、TA(C10)20 coated サンプル及びTA(C10)15 coatedサンプルはいずれも50時間浸漬しても腐食がほとんど見られなかった。

0050

<防錆試験5>
膜厚20μmの他、12、27、32、40μmとして、TA(C10)10(実施例2) coatedサンプルを作成し、腐食電流密度を測定した。腐食電流密度とは腐食電位における腐食速度のことである。
図15の左縦軸、下横軸を基準とするグラフは、膜厚と腐食電流密度の関係を示すグラフである。20μm以上に膜厚を厚くすると腐食電流密度は低減し、腐食防止効果が高くなることが判明した。

0051

次に、上記の膜厚20μmサンプルについて、腐食電流密度の浸漬時間依存性を測定した。結果を、図15の右縦軸、上横軸を基準とするグラフに示す。0時間から40時間まで、腐食電流密度はほとんど変化しなかった。

0052

<防錆試験6>
基板をMg合金の他、Zn、Fe、Cu、Alとして、無被覆サンプルと、TA(C16)10(実施例8) coatedサンプルを作成し、塩水浸漬実験を行った。図16にサンプルの写真を示す。無被覆サンプルは、所定の時間の塩水浸漬により、いずれも腐食された。一方、TA(C16)10 coated サンプルの場合、いずれの金属も腐食されなかった。

0053

<ガラス基板上への膜形成性>
TA(比較例1)、TA(C6)10(実施例6)、TA(C10)10(実施例2)、TA(C16)10(実施例8)の各々について、5cm×5cmのガラス基板上へドロップ−キャスト膜を形成した。THF溶液を調製し、1.1mg/cm2の量、ドロップ−キャストしてから、1h、80℃の条件でアニールして、ドロップ−キャスト膜を作成した。

0054

図17は、タンニン酸の膜を示す写真(a)、TA(C6)10の膜を示す写真(b)、TA(C10)10の膜を示す写真(c)、TA(C16)10の膜を示す写真(d)である。TAは、ガラス上では綺麗な膜を形成できず、ふくれを伴う皺ができた。一方、他のサンプルはいずれもわずかに薄オレンジ色の着色が見られたものの、透明度の高い膜を形成できた。

0055

<殺菌・滅菌性試験1>
TA(比較例1)、TA(C6)10(実施例6)、TA(C10)10(実施例2)、TA(C16)10(実施例8)の各々について、上述の方法でガラス基板上に膜を形成し、その上に大腸菌を播いて、室温での表面の変化を観察した。図18は、膜上でのバクテリアの増殖結果を示すグラフである。スタート時(0h)に播いた、大腸菌の個数は1.2×105CFU/mLであった。24h後、TA coated(control)については、1.4×107CFU/mLとなっていた。一方、TA(C6)10では、ほとんど無くなっており(<10個)、抗菌殺菌効果があることが分かった。また、TA(C10)10は、24h後に2.7×102CFU/mLとなり、TA(C16)10は、24h後に1.6×102CFU/mLとなり、抗菌・殺菌効果があることが分かった。タンニン酸はこれまで水溶液としては殺菌性を示すことが知られていたが、成膜しても皴皺になってしまい、膜としての耐久性がなかったことが問題であった。また、水に対して高い溶解性を持つことから、薄膜化した状態では抗菌試験等の水系の試験を行うことができなかった。一方、本発明におけるタンニン酸誘導体は、水に対する溶解性を極めて低く調整することが可能であることから、薄膜としての抗菌性を始めて評価することが可能となった。ここで、CFU/mlとは、食品細菌検査の定量単位を意味するColony Forming Unit(コロニーフォーミングユニット)の略称で菌量の単位である。例えば、コロニーを形成する能力のある単位数20CFU/mlとは1ml中に菌が20個存在することを表す。

0056

同様に、黄色ブドウ球菌(S.Aureus)、又はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を播いて、抗菌・殺菌効果を調べた。表2に、大腸菌(E.Coli)、黄色ブドウ球菌(S.Aureus)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対する抗菌・殺菌効果の結果を示す。

0057

0058

図19は、TA coated(contorol)に黄色ブドウ球菌(S.Aureus)を播いて24時間後の表面の写真(a)、TA coated(contorol)にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を播いて24時間後の表面の写真(b)、TA(C6)10のドロップキャスト膜上に黄色ブドウ球菌(S.Aureus)を播いて24時間後の表面の写真(c)、TA(C6)10のドロップキャスト膜上にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を播いて24時間後の表面の写真(d)である。TA(C6)10、TA(C10)10、TA(C16)10は、黄色ブドウ球菌(S.Aureus)及びメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の抗菌・殺菌効果があった。

0059

<殺菌・滅菌性試験2>
上記と同様の方法でガラス基板上に形成したTA(C6)10の膜上(塗布量1.2mg/cm2)に、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を1.6x105(CFU/mL)播き、室温での菌数の変化を時間を追って調べた。表3に示すとおり、2時間以内にMRSAを殺菌することが分かった。

0060

0061

<殺菌・滅菌性試験3>
上記と同様の方法でガラス基板上に形成した異なる厚みのTA(C6)10の膜に、殺菌性試験2と同様にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を1.6x105(CFU/mL)播き、24時間後菌数を調べた。表4に示すとおり、膜が0.1mg/cm2の薄い場合であっても問題なく殺菌された。

0062

実施例

0063

上記と同様の方法でガラス基板上に、TA(C6)10の塗布量が、夫々、0.1mg/cm2、0.5mg/cm2、1.0mg/cm2、2.0mg/cm2である膜を作成した。図20にそれらの写真を示す。また、図21にガラス基板を参照試料としたときの、各膜のUV−可視スペクトル(Abs.)を、図22可視透過(%)スペクトルを示す。塗布量が0.1mg/cm2の膜は、全可視光領域において90%以上の透過率を示した。上述のとおり、0.1mg/cm2の膜は殺菌性も十分であることから、表示装置用の殺菌性膜としての使用が期待される。

0064

本発明の膜形成性組成物は、金属、ガラス等の上に膜を形成して、防錆、滅菌、殺菌効果を奏し、幅広い用途が期待される。

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