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課題
解決手段
概要
背景
概要
検出値が温度変化の影響を受け難く、小型化と低コスト化が容易な力覚センサを提供する。力覚センサ100Aは、ベース部1と、外力を受けてベース部1に対して変位する変位部2と、ベース部1と変位部2を連結する弾性支持部3と、X方向での変位部2のベース部1に対する変位を検出する2組の変位センサからなる第1の変位センサ対と、Y方向での変位部2のベース部1に対する変位を検出する2組の変位センサからなる第2の変位センサ対とを備え、第1の変位センサ対を構成する2組の変位センサの中点を通り、X方向とY方向のそれぞれに沿った2本の直線によって分けられる4象限のうち、第1の変位センサ対が配置された2つの象限に第2の変位センサ対を配置した構成とする。
目的
本発明は、検出値が温度変化の影響を受け難く、小型化と低コスト化が容易な力覚センサを提供する
効果
実績
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請求項1
ベース部と、外力を受けて前記ベース部に対して変位する変位部と、前記ベース部と前記変位部を連結する弾性支持部と、第1の方向での前記変位部の前記ベース部に対する変位を検出する2組の変位センサからなる第1の変位センサ対と、前記第1の方向と交差する第2の方向での前記変位部の前記ベース部に対する変位を検出する2組の変位センサからなる第2の変位センサ対と、を備え、前記第1の変位センサ対を構成する2組の変位センサの中点を通り、前記第1の方向と前記第2の方向のそれぞれに沿った2本の直線によって分けられる4象限のうち、前記第1の変位センサ対が配置された2つの象限に前記第2の変位センサ対が配置されていることを特徴とする力覚センサ。
請求項2
前記変位センサは、前記変位部の温度変化に伴う変位を検出することを特徴とする請求項1に記載の力覚センサ。
請求項3
前記第1の変位センサ対を構成する2組の変位センサの中点と前記第2の変位センサ対を構成する2組の変位センサの中点とが略一致することを特徴とする請求項1又は2に記載の力覚センサ。
請求項4
請求項5
前記変位検出器は、前記検出対象体の変位を光学的に検出することを特徴とする請求項4に記載の力覚センサ。
請求項6
前記変位検出器は、前記検出対象体との間の静電容量の変化を検出することにより前記検出対象体の変位を検出することを特徴とする請求項4に記載の力覚センサ。
請求項7
前記変位検出器は、磁場の変化を検出することにより前記検出対象体の変位を検出することを特徴とする請求項4に記載の力覚センサ。
請求項8
前記弾性支持部は、前記4象限を分ける直線と対応するように、前記中点から放射状に90度ごとに4カ所に配置されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の力覚センサ。
請求項9
前記4カ所の弾性支持部のそれぞれに前記中点について対称となる位置に配置された検出対象体と、前記検出対象体と対向するように前記ベース部に配置された変位検出器と、を備えることを特徴とする請求項8に記載の力覚センサ。
請求項10
技術分野
背景技術
0002
産業用ロボットのアームや医療用等のマニピュレータの各部に作用する外力を検出する手段として力覚センサが使用されている。多軸の外力を検出する力覚センサとして、特許文献1には、複数の受光素子列からなる光学式変位センサから得られた複数の変位情報に基づいて外力を定量的に検出する光学式力覚センサが記載されている。特許文献1に記載された光学式力覚センサでは、光学式変位センサの実装面に対する面外方向の変位を含む多軸変位を検出することができ、光学式力覚センサ全体の薄型化が可能である。
先行技術
0003
特開2010−281635号公報
発明が解決しようとする課題
0004
しかしながら、上記特許文献1に記載された光学式力覚センサでは、位置検出器を連結する部材と、位置検出対象が固定されている構造部の部材の熱膨張率の差により、温度変化に伴って検出値が変化しやすい。
0005
本発明は、検出値が温度変化の影響を受け難く、小型化と低コスト化が容易な力覚センサを提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
0006
本発明に係る力覚センサは、ベース部と、外力を受けて前記ベース部に対して変位する変位部と、前記ベース部と前記変位部を連結する弾性支持部と、第1の方向での前記変位部の前記ベース部に対する変位を検出する2組の変位センサからなる第1の変位センサ対と、前記第1の方向と直交する第2の方向での前記変位部の前記ベース部に対する変位を検出する2組の変位センサからなる第2の変位センサ対と、を備え、前記第1の変位センサ対を構成する2組の変位センサの中点を通り、前記第1の方向と前記第2の方向のそれぞれに平行な2本の直線によって分けられる4象限のうち、前記第1の変位センサ対が配置された2つの象限に前記第2の変位センサ対が配置されていることを特徴とする。
発明の効果
0007
本発明によれば、小型で検出値が温度変化の影響を受け難い力覚センサを低コストで実現することができる。
図面の簡単な説明
0008
本発明に係る力覚センサの概念図である。
第1実施形態に係る力覚センサの概略構成を示す、上面側からの透視図及び断面図である。
図2の力覚センサが備える回路基板の平面図である。
変位検出器の構成とスケールの読み取り方法を説明する図である。
比較例に係る力覚センサの概略構成を示す、上面側からの透視図及び回路基板の平面図である。
第2実施形態に係る力覚センサの概略構成を示す、上面側からの透視図及び下面側からの透視図である。
第2実施形態係る力覚センサの断面図である。
図6の力覚センサが備える回路基板の平面図である。
搬送装置の概略構成を示す側面図である。
実施例
0009
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明に係る力覚センサ100の概念図である。力覚センサ100は、入力(印加)される外力を検出し、外力に応じた信号を出力する。力覚センサ100は、ベース部1、変位部2、弾性支持部3、スケール4(検出対象体)、変位検出器10及び回路基板6を備える。弾性支持部3は、ベース部1と変位部2の間に作用する外力に応じて弾性変形が可能となるように形状と材質が選択されている。弾性支持部3の弾性は、検出したい外力の範囲に応じて適切に設計される。つまり、微小な外力を検出する場合には変形しやすいように弾性を高め(弾性率(弾性係数)を小さくし)、大きな外力を検出する場合又は機械的な剛性を高めたい場合には弾性を低く(弾性率を大きく)設計される。
0010
<第1実施形態>
図2(a)は、本発明の第1実施形態に係る力覚センサ100Aの概略構成を示す上面側からの透視図である。図2(b)は、図2(a)に示す矢視A−Aでの力覚センサ100Aの概略構成を示す断面図である。力覚センサ100Aは、ベース部1、変位部2、弾性支持部3、スケール4A〜4D、回路基板6、スケール保持部7及び変位検出器10A〜10Dを備える。なお、説明の便宜上、図2に示すように、互いに交差、より好ましくは直交するX軸、Y軸及びZ軸を定め、適宜、説明に用いるものとする。
0011
力覚センサ100Aの外輪部を構成する変位部2と内輪部を構成するベース部1とは、上面側から見て90度ごとに放射状に配置された4本の弾性支持部3によって連結されている。ベース部1には、回路基板6が固定されている。変位部2の内周側には、スケール4A〜4Dを保持するスケール保持部7が連結されている。スケール4A〜4Dは、スケール保持部7において回路基板6と対向する面上に固定されている。スケール4A〜4Dは、例えば、ガラス基板上にクロム反射膜のパターンが格子状にパターニングされたものである。
0012
図3は、回路基板6の平面図である。変位検出器10A〜10Dはそれぞれ、スケール4A〜4Dに対してZ方向において1対1で対向するように回路基板6に実装されている。変位検出器10Aとスケール4Aが1組の変位センサを構成し、変位検出器10Bとスケール4Bセンサが1組の変位センサを構成し、これら2組の変位センサが第1の変位センサ対を構成すると定義する。第1の変位センサ対は、後述するように、変位部2のX方向(第1の方向)での変位量を検出する。また、変位検出器10Cとスケール4Cが1組の変位センサを構成し、変位検出器10Dとスケール4Dセンサが1組の変位センサを構成し、これら2組の変位センサが第2の変位センサ対を構成すると定義する。第2の変位センサ対は、後述するように、変位部2のY方向(第2の方向)での変位量を検出する。
0013
変位検出器10A,10Bは、X方向とY方向の各方向で所定距離だけ離間し、力覚センサ100AのXY面の中心に対して点対称となる位置に配置されている。よって、第1の変位センサ対を構成する2組の変位センサの中点は、力覚センサ100AのXY面の中心と略一致する。同様に、変位検出器10C,10Dは、X方向とY方向の各方向で所定距離だけ離間し、力覚センサ100AのXY面の中心位置に対して点対称となる位置に配置されている。よって、第2の変位センサ対を構成する2組の変位センサの中点は、力覚センサ100AのXY面の中心と略一致する。
0014
力覚センサ100AのXY面の中心を通り、X軸とY軸のそれぞれに沿った、より好ましくは平行な直線で力覚センサ100A(回路基板6)を4象限に分けたとき、変位検出器10A,10Cが同じ象限に配置され、変位検出器10B,10Dが同じ象限に配置されている。なお、変位検出器10A,10Cが配置された象限と変位検出器10B,10Dが配置された象限とは、XY面の中心に対して点対称となる位置関係にある。本実施形態では、4本の弾性支持部3は、4象限に分ける2本の直線と対応するように、XY面の中心から放射状に90度ごとに配置されている。変位検出器10A〜10Dが実装されていない象限には、信号処理回路20や、信号処理回路20からの信号を出力するコネクタ21等の電気部品が実装されている。
0015
図4は、変位検出器10Aの構成と、変位検出器10Aによるスケール4Aの読み取り方法を説明する図である。なお、変位検出器10B〜10Dの構成と変位検出器1010B〜10Dのそれぞれによるスケール4B〜4Dの読み取り方法は、変位検出器10Aの構成と変位検出器10Aによるスケール4Aの読み取り方法に準ずるため、説明を省略する。
0016
変位検出器10は、光源12と、受光素子アレイ16を有する受光IC14とが同一パッケージ内に実装された受発光一体型のセンサユニットである。光源12には、電流狭窄型のLEDや半導体レーザ等を使用することができる。受光素子アレイ16は、スケール4Aのパターンからの光の分布を検出する複数の受光素子(検出素子)が、スケール4Aの移動方向(測位方向)に並べられた構造となっている。変位検出器10Aは、スケール4Aと対向するように配置されることで、スケール4Aの相対変位量を検出する。つまり、光源12から出射した発散光束は、スケール4A上の格子パターンに反射され、回折及び干渉によって受光素子アレイ16上で縞状の光量分布(干渉縞)を形成する。受光素子アレイ16の各受光素子は、A+相、B+相、A−相及びB−相の順に循環的に割り当てられており、これら4つの相における各相に割り当てられた複数の受光素子が1つの受光素子群を構成する。なお、受光素子の循環周期は、干渉縞の周期に合うように設定されている。
0017
受光素子群を構成する受光素子は互いに電気的に接続されており、これらの出力(電流)は互いに足し合わされて後段に相ごとに設けられたIV変換アンプ(不図示)に入力される。4つのIV変換アンプはそれぞれ、4相の信号S1(A+),S1(B+),S1(A−),S1(B−)を出力する。4相の信号S1(A+),S1(B+),S1(A−),S1(B−)は、スケール4Aの移動に応じてその値が正弦波状に変化する電圧信号(正弦波信号)となる。4つの相に対して設けられた4つのIVアンプの出力信号はそれぞれ、信号位相の0度、90度、180度及び270度に対応している。信号処理回路20は、4相の信号S1(A+),S1(B+),S1(A−),S1(B−)に対して以下の[数1]に示す2つの式の演算処理を行い、4相の信号から直流成分が除去された2相の正弦波信号S1(A),S1(B)を生成する。こうして得られる2相の正弦波信号S1(A),S1(B)は、スケール4Aの位置情報を表す。
0018
0019
また、信号処理回路20は、以下の[数2]で表される演算により、位置信号の元となる位相信号Φを取得する。なお、ATAN2[Y,X]は、象限を判別して0〜2π位相に変換する逆正接演算関数である。位相信号Φは、スケール4Aの格子パターンの移動に伴う干渉縞の移動量に対応し、位相信号Φの変化量を累積することにより、スケール4Aと変位検出器10Aの相対変位量を検出することができる。変位検出器10Aの変位検出方向は、スケール4Aの格子パターンの格子周期方向となる。図3に示すように、変位検出器10A,10Bの変位検出方向はX方向であり、変位検出器10C,10Dの変位検出方向はY方向である。
0020
0021
続いて、力覚センサ100Aでの外力検出のための演算処理について説明する。変位検出器10A,10B,10C,10Dからの出力をそれぞれ、Da,Db,Dc,Ddとすると、外力情報及び温度情報を以下の[数3]に示す式を用いて演算することができる。なお、FxはX方向の外力であり、FyはY方向の外力であり、MzはZ軸まわりのモーメントであり、Tは熱膨張成分である。ここで、変換行列Cは、変位検出器10A〜10Dからの出力を3軸の外力成分及び熱膨張成分に変換するための行列である。k,l,mは、変位量を外力に換算する係数であり、設計値で決定してもよいし、実測値に基づいて決定してもよい。
0022
0023
このとき、3軸の外力成分及び熱膨張成分が独立して(分離されて)検出されていることについて以下に説明する。X方向の外力Fxが力覚センサ100Aに入力された場合、変位検出器10A,10Bでそれぞれスケール4A,4Bとの相対変位が検出される。このとき、変位検出器10A〜10Dからの変位出力をそれぞれ、Da_Fx,Db_Fx,Dc_Fx,Dd_Fxとすると、変位量pとの関係は以下の[数4]の通りに表される。
0024
0025
同様に、Y方向の外力Fyが力覚センサ100Aに入力された場合、変位検出器10C,10Dでそれぞれスケール4C,4Dとの相対変位が検出される。このとき、変位検出器10A〜10Dからの変位出力をそれぞれ、Da_Fy,Db_Fy,Dc_Fy,Dd_Fyとすると、変位量pとの関係は以下の[数5]の通りに表される。
0026
0027
Z軸まわりのモーメントMzが力覚センサ100Aに入力された場合、変位検出器10A〜10Dのそれぞれでスケール4A〜4Dとの相対変位が検出される。このとき、変位検出器10A〜10Dからの変位出力をそれぞれ、Da_Mz,Db_Mz,Dc_Mz,Dd_Mzとすると、変位量qとの関係は以下の[数6]の通りに表される。
0028
0029
力覚センサ100Aに対する熱の移動により熱膨張(温度変化)が生じた場合、変位検出器10A〜10Dのそれぞれでスケール4A〜4Dとの相対変位が検出される。この相対変位量は主に、回路基板6とその他の部位(ベース部1、変位部2、弾性支持部3等の構造物)との熱膨張量の差によって生じる。力覚センサ100Aのように回路基板6が変位検出器10A〜10Dの略中央においてベース部1に固定されている場合、変位検出器10A〜10Dのそれぞれが検出する相対変位量は略等しくなる。よって、変位検出器10A〜10Dからの変位出力をそれぞれ、Da_T,Db_T,Dc_T,Dd_Tとすると、変位量rとの関係は以下の[数7]の通りに表される。
0030
0031
これら3軸の外力成分及び熱膨張成分の力覚センサ100Aへの入力に対する応答をまとめた4×4の行列Dmatは、以下の[数8]の通りに表わされる。そして、行列Dmatに変換行列Cを積算すると、[数9]の通りに表される対角行列となる。
0032
0033
0034
変位検出器10A〜10Dは、力覚センサ100Aのサイズ(機械的サイズ)に対して極めて微小な変位を検出するため、それぞれの軸方向に入力された外力に対する応答には重ね合わせ近似が成り立つ。よって、Fx,Fy,Mz,Tの4成分が複合して力覚センサ100Aに入力された場合であっても、分離して検出することが可能である。特に、Da,Dcの符号関係とDb,Ddの符号関係はMzが加わった場合と熱膨張が生じた場合とでは逆転するため、良好なSN比で両者を分離することが可能となる。
0035
なお、熱膨張と相関の強い温度信号を用いて、各種の温度補正を行うことが可能である。例えば、回路基板6が変位検出器10A〜10Dの略中央からずれてベース部1に固定された場合等のように固定点が中央からずれて取り付けられた場合、FxやFyでは熱膨張成分Tの分離精度が低下してしまうが、温度信号を用いた補正が可能である。その場合、変換行列Cを以下の[数10]に示す式に置き換える。ここで、m´及びm″はそれぞれ、温度信号のFx,Fyへの干渉係数である。例えば、力覚センサ100Aの出荷時に温度信号とFx,Fyとの相関データを取得しておくことによってm´及びm″を算出しておけばよい。
0036
0037
ここで、本発明に対する比較例としての力覚センサについて、上記の力覚センサ100Aと対比して説明する。図5(a)は、比較例に係る力覚センサ900の概略構成を示す上面側からの透視図である。図5(b)は、力覚センサ900が備える回路基板6の平面図である。力覚センサ900の構成部品は力覚センサ100Aの構成部品と同じであるが、力覚センサ900と力覚センサ100Aとではスケール4A〜4Dと変位検出器10A〜10Dの配設位置が異なる。力覚センサ900では、X軸とY軸のそれぞれに平行な直線で力覚センサ900を4象限に分けたときの各象限に1つずつスケールが配置されている。
0038
力覚センサ900にX方向の外力Fxが入力された場合、変位検出器10A,10Bのそれぞれでスケール4A,4Bとの相対変位が検出される。このとき、変位検出器10A〜10Dからの変位出力をそれぞれDa´_Fx,Db´_Fx,Dc´_Fx,Dd´_Fxとすると、変位量pとの関係は以下の[数11]の通りに表される。
0039
0040
力覚センサ900にY方向の外力Fyが入力された場合、変位検出器10C,10Dのそれぞれでスケール4C,4Dとの相対変位が検出される。このとき、変位検出器10A〜10Dからの変位出力をそれぞれDa´_Fy,Db´_Fy,Dc´_Fy,Dd´_Fyとすると、変位量pとの関係は以下の[数12]の通りに表される。
0041
0042
力覚センサ900にZ軸まわりのモーメントMzが入力された場合、変位検出器10A〜10Dのそれぞれでスケール4A〜4Dとの相対変位が検出される。このとき、変位検出器10A〜10Dからの変位出力をそれぞれDa´_Mz,Db´_Mz,Dc´_Mz,Dd´_Mzとすると、変位量qとの関係は以下の[数13]の通りに表される。
0043
0044
力覚センサ100Aに対する熱の移動により熱膨張が生じた場合、変位検出器10A〜10Dのそれぞれでスケール4A〜4Dとの相対変位が検出される。この相対変位量は主に、回路基板6とその他の部位との熱膨張量の差によって生じる。回路基板6が変位検出器10A〜10Dの略中央において固定されている場合、変位検出器10A〜10Dのそれぞれが検出する相対変位量は略等しくなる。よって、変位検出器10A〜10Dの変位出力をそれぞれ、Da´_T,Db´_T,Dc´_T,Dd´_Tとすると、変位量rとの関係は以下の[数14]の通りに表される。
0045
0046
上記[数13]及び[数14]から、力覚センサ900では、Z軸まわりのモーメントMzによって変位が生じる変位検出器と熱膨張によって変位が生じる変位検出器は同じであり、且つ、同じ符号関係となるため、これらの成分の分離が困難となる。また、力覚センサ900では、回路基板6上にまとまった実装スペースが確保することができないため、信号処理回路20やコネクタ21等の大型部品の実装が困難になる。
0047
したがって、上記第1実施形態に係る力覚センサ100Aは、比較例に係る力覚センサ900と比較して、温度変化の影響を受け難く、より正確な外力の検出が可能となっていると言うことができる。また、回路基板6への部品実装の自由度が高く、高密度な部品実装が可能となることで、回路基板6の小型化に伴う力覚センサ100A全体の小型化や低コスト化を図ることができる。
0048
なお、本実施形態では、変位検出器10A〜10Dを用いて光学的にスケール4A〜4Dの変位を検出する構成について説明したが、変位検出方式は光学式に限定されるものではなく、磁気式や静電容量式等の他の変位検出方式を用いても構わない。例えば、磁気式の検出方式を用いる場合、スケールに磁性体を用い、磁性の極性分布をスケール4A等の反射膜と同様の形状に形成し、アレイ状に並べた磁界検出素子をスケールに近接対向させて配置した構成とすればよい。こうして、磁界検出素子により磁場の変化を検出することによって磁石の変位を検出することができる。また、静電容量式の検出方式を用いる場合、検出対象体にはスケール4A等の反射膜と同様の形状に導電性の電極パターンを形成し、別のアレイ状の電極パターンを近接対向させて配置した構成とすればよい。こうして、電極パターン間の静電容量の変化を検出することで、検出対象体の変位を検出することができる。ところで、必ずしもアレイ状のスケール及び検出器は必要ではなく、少なくとも1つの検出部と1つのスケールパターンエッジがあれば、外力の検出は可能である。その場合、変位検出方向はスケール面内のエッジの法線方向となる。
0049
<第2実施形態>
図6(a)は、第2実施形態に係る力覚センサ100Bの概略構成を示す上面側からの透視図である。図6(b)は、力覚センサ100Bの概略構成を示す下面側からの透視図である。図7は、図6(a)に示す矢視B−Bでの力覚センサ100Bの概略構成を示す断面図である。以下、力覚センサ100Aの構成要素と同じの構成要素については、同じ名称と符号を用いることとし、各構成要素についての重複する説明を省略する。力覚センサ100Bは、ベース部1、変位部2、弾性支持部3、スケール4A〜4H、回路基板6及び変位検出器10A〜10Hを備える。ベース部1は、変位部2の外周部を構成する円筒形状部を封止すると共に回路基板6を保持している。
0050
力覚センサ100Bにおけるスケール4A〜4DのXY平面上での配設位置は、第1実施形態に係る力覚センサ100におけるスケール4A〜4DのXY平面上での配設位置に準ずる。力覚センサ100Bでは、スケール4A〜4Dを配置するために変位部2から−Z方向に突出する柱状部50が4カ所に設けられており、1本の柱状部の先端面(回路基板6と対向する面)に1つのスケールが固定されている。変位部2にX方向の力、Y方向の力、Z軸まわりのモーメントの外力が入力されると、スケール4A〜4Dには、入力された力の方向に応じた変位がXY平面内で生じる。
0051
力覚センサ100Bは、4カ所に設けられた弾性支持部3に変位方向の変換機能を付与した構造を有しており、この変位方向の変換機能はコの字型の凹部30によって実現される。4カ所の凹部30のそれぞれの先端面(回路基板6と対向する面)に1つのスケールが固定されることで、スケール4E〜4Hが配置されている。変位部2に−Z方向の力が入力されると、凹部30に配置されたスケール4E〜4HにはXY平面内での変位が生じる。スケール4A〜4Hは、Z方向において略同じ高さ(つまり、同一平面内)に配置されている。
0052
図8は、力覚センサ100Bが備える回路基板6の平面図である。回路基板6には、スケール4E〜4HとZ方向において対向するように変位検出器10A〜10Hが実装されている。変位検出器10A,10Bは、X方向とY方向の各方向で所定距離だけ離間し、力覚センサ100BのXY面の中心に対して点対称となる位置に配置されている。変位検出器10A,10Bの変位検出方向はX方向である。同様に、変位検出器10C,10Dは、X方向とY方向の各方向で所定距離だけ離間し、力覚センサ100BのXY面の中心に対して点対称となる位置に配置されている。変位検出器10C,10Dの変位検出方向はY方向である。
0053
力覚センサ100BのXY面の中心を通り、X軸とY軸のそれぞれに平行な直線で力覚センサ100B(回路基板6)を4象限に分けたとき、変位検出器10A,10Cが同じ象限に配置され、変位検出器10B,10Dが同じ象限に配置されている。なお、変位検出器10A,10Cが配置された象限と変位検出器10B,10Dが配置された象限とは、力覚センサ100BのXY面の中心に対して点対称となる位置関係にある。変位検出器10A〜10Dが実装されていない象限には、信号処理回路20や、信号処理回路20からの信号を出力するコネクタ21等の電気部品が実装されている。つまり、力覚センサ100Aと同様に、力覚センサ100でも、回路基板6への部品実装の自由度が高く、高密度な部品実装が可能となることで、小型化や低コスト化を図ることができる。
0054
変位検出器10Eの変位検出方向はX方向であり、変位検出器10Eの位置は、X方向では変位検出器10Aと略同一であり、Y方向においては変位検出器10Aとの間に所定の間隔が設けられている。変位検出器10Fの変位検出方向はX方向であり、変位検出器10Fの位置は、X方向では変位検出器10Bと略同一であり、Y方向においては変位検出器10Bとの間に所定の間隔が設けられている。変位検出器10E,10Fは、X軸と平行な同一の直線上に配置されている。
0055
変位検出器10Gの変位検出方向はY方向であり、変位検出器10Gの位置は、Y方向では変位検出器10Cと略同一であり、X方向においては変位検出器10Cとの間に所定の間隔が設けられている。変位検出器10Hの変位検出方向はY方向であり、変位検出器10Hの位置は、Y方向では変位検出器10Dと略同一であり、X方向においては変位検出器10Dとの間に所定の間隔が設けられている。変位検出器10G,10Hは、Y軸と平行な同一の直線上に配置されている。
0056
次に、力覚センサ100Bでの外力検出のための演算処理について説明する。力覚センサ100Bでは、入力された6軸の外力成分と2軸の熱膨張成分を検出することができる。6軸の外力成分とは、X方向の外力Fx、Y方向の外力Fy、Z方向の外力Fz、X軸まわりのモーメントMx、Y軸まわりのモーメントMy及びZ軸まわりのモーメントMzである。2軸の熱膨張成分とは、X方向の熱膨張成分Tx及びY方向の熱膨張成分Tyである。変位部2へのこれら6軸の外力成分及び2軸の熱膨張成分の入力に対する応答をまとめた8×8の行列Dmatは、以下の[数15]の通りに表わされる。本実施形態における設計によれば、変位量の単位をマイクロメートルとすると、[数15]の行列式は[数16]の通りとなる。
0057
0058
0059
よって、変位検出器10A,10Cからの出力Da,Dcと変位検出器10B,10Dからの出力Db,Ddの符号関係が、Z軸まわりのモーメントMzが入力された場合と熱膨張が生じた場合とで逆転する。これにより、良好なSN比で両者を分離することが可能となる。
0060
また、熱膨張成分を精度よく分離することが可能となることで、以下に説明するように、Z軸まわりのモーメントMz以外の成分に対しても、熱膨張の影響を補正することができる。すなわち、変位検出器10A〜10Hからの出力Da〜Dhを用いて6軸の外力成分及び2軸の熱膨張成分を算出する演算は、下記の[数17]の通りに行うことができる。ここで、変換行列Cは、出力Da〜Dhを6軸の外力成分及び2軸の熱膨張成分に変換するための行列である。変換行列Cは、[数16]で示したDmatの逆行列により以下の[数18]の通りに表すことができる。
0061
0062
0063
力覚センサ100Bに対して各軸の方向に独立した外力が入力された場合の変位検出器10A〜10Hからの出力Da〜Dhを8×8の行列Dmatとして、そのDmatに変換行列Cを掛けると、逆行列の性質により、以下の[数19]で表される対角行列となる。
0064
0065
変位検出器10A〜10Hは、力覚センサ100Bのサイズに対して極めて微小な変位を検出するため、それぞれの軸方向に入力された外力に対する応答には重ね合わせ近似が成り立つ。よって、6軸の外力成分及び2軸の熱膨張成分の8つの成分は、複合して作用した場合であっても互いに独立した成分として分離して検出することが可能である。なお、回路基板6には、ガラス入りエポキシ樹脂が使用されることが多い。ガラス入りエポキシ樹脂には、通常、線膨張係数に異方性があるため、2軸の熱膨張成分を独立して取得し又は分離することが可能となることで、熱膨張に対して2軸方向で独立して温度補正を行うことができる。このように、力覚センサ100Bは、外力の検出値が温度変化の影響を受け難いという特徴を有する。
0066
<第3実施形態>
ここでは、第2実施形態で説明した力覚センサ100Bを備えた搬送装置について説明する。図9は、搬送装置400の概略構成を示す側面図である。搬送装置400は、ロボットアーム200、力覚センサ100B、把持部201及び制御装置210を備える。
0067
ロボットアーム200は、不図示の他のロボットアーム等と連結されており、所定の位置の間を移動可能となっている可動部の1つである。把持部201は、閉動作により被搬送物205を掴み、開動作により把持した被搬送物205を放すことができる可動部の1つである。ここでは、搬送装置400は、把持部201が所定位置で被搬送物205を把持し、把持した被搬送物205を基板206に形成された穴部206aに挿入する動作を行っており、その動作を制御装置210が制御しているものとする。
0068
ロボットアーム200と把持部201との間に配置された力覚センサ100Bは、把持部201が被搬送物205を介して基板206から受ける上向きの外力Fを検出する。例えば、被搬送物205が基板206の上面における穴部206a以外の部分に接触している場合、把持部201から力覚センサ100Bに外力が作用するため、被搬送物205の位置が穴部206aの位置から外れていることが検出される。そこで、制御装置210は、被搬送物205を基板206の上面に沿って移動させるようにロボットアーム200の動作を制御する。そして、制御装置210は、被搬送物205が穴部206aの上方に位置すると、それまで把持部201を介して力覚センサ100Bに作用していた外力がなくなるため、被搬送物205の位置が穴部206aの位置に一致したことが検出される。すると、制御装置210は、被搬送物205を穴部206a内に挿入するようにロボットアーム200の動作を制御した後、被搬送物205を放すように把持部201を制御する。
0069
このように、搬送装置400では、力覚センサ100Bを用いることにより、ロボットアーム200の動作を高精度に制御することができる。なお、上述した本発明の実施形態に係る力覚センサは、搬送装置400以外の、外力検出の結果を用いて動作の制御を行う各種の機械装置に用いることができる。
0070
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。さらに、上述した各実施形態は本発明の一実施形態を示すものにすぎず、各実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
0071
1ベース部
2変位部
3弾性支持部
4A〜4Hスケール
10A〜10H変位検出器
100,100A,100B力覚センサ
400 搬送装置