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技術 質量分析データ処理装置及び質量分析データ処理方法

出願人 日本電子株式会社
発明者 田中博一
出願日 2017年10月6日 (2年1ヶ月経過) 出願番号 2017-195947
公開日 2019年5月9日 (6ヶ月経過) 公開番号 2019-070547
状態 未査定
技術分野 その他の電気的手段による材料の調査、分析
主要キーワード 保持時間範囲 ピーク位置情報 手動指定 ピークトップ位置 ノイズ抽出 次質量分析 バックグラウンドスペクトル ピークサーチ
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (20)

課題

ライブラリサーチ同定精度の低下を回避する。

解決手段

本発明の一態様は、全イオン電流クロマトグラムにおけるピーク頂点部の保持時間が基準ピーククロマトグラムのサチュレーションしている区間に該当する場合には、全イオン電流クロマトグラムにおけるマススペクトル抽出位置を、基準ピーククロマトグラムのサチュレーションしていない区間内の所定の条件を満たす位置に補正するスペクトル抽出位置補正部15を備える。

概要

背景

クロマトグラフ質量分析は、クロマトグラフィー法を用いて化合物を時間的に分離した成分を順次にイオン化し、さらに質量分析器によってイオン質量電荷比[m/z]に応じて分離して検出器で検出する分析方法であり、既知の成分の定量分析、及び未知の成分の定性分析が可能である。このような分析を行う質量分析装置は、経過時間(保持時間)に伴ってクロマトグラフが検出した各成分のマススペクトル質量スペクトル)をデータ処理するためのデータ処理装置を備えている。

このデータ処理装置は、例えば定性分析であれば、未知の成分のイオンの総量にあたる信号強度を保持時間に伴ってプロットした全イオン電流クロマトグラム(Total Ion Current Chromatogram:以下、TICCと記す)を作成する。そして、TICC上のピークサーチによって得たクロマトグラムのピーク位置におけるマススペクトルを抽出し、このマススペクトルをライブラリと比較することによって、クロマトグラムのピークの試料成分を同定する。

一方、定量分析であれば、データ処理装置は、既知の成分のイオンの信号強度を保持時間に伴ってプロットしたクロマトグラムを作成し、このクロマトグラムから求めた化合物ピーク面積検量線から濃度を算出し、既知の成分を定量する。

例えば、特許文献1には、「クロマトグラフ質量分析装置用のデータ処理装置において、目的質量電荷比におけるマスクロマトグラム目的成分由来目的ピークの強度が閾値以上である場合に、該ピークの出現時刻に対応したマススペクトル上で前記閾値未満のピークの質量電荷比を補正用質量電荷比とし(S13)、前記目的ピーク中で信号強度が閾値を超えない時刻におけるマススペクトルを取得し(S14)該スペクトル上の目的質量電荷比の強度を同スペクトル上における補正用質量電荷比の強度で除した感度係数を算出し(S15)、補正用質量電荷比におけるマスクロマトグラムを作成し(S16)、それに前記感度係数を乗算することにより補正マスクロマトグラムを作成する(S17)。」と記載されている。

概要

ライブラリサーチ同定精度の低下を回避する。本発明の一態様は、全イオン電流クロマトグラムにおけるピークの頂点部の保持時間が基準ピーククロマトグラムのサチュレーションしている区間に該当する場合には、全イオン電流クロマトグラムにおけるマススペクトルの抽出位置を、基準ピーククロマトグラムのサチュレーションしていない区間内の所定の条件を満たす位置に補正するスペクトル抽出位置補正部15を備える。

目的

上記の状況から、ライブラリサーチの同定精度の低下を回避する手法が望まれていた

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

クロマトグラフによって保持時間に応じて分離した試料成分を順次質量分析して得られたデータに基づいて、前記試料成分の同定を行うための質量分析データ処理装置であって、前記質量分析によって得られたデータから全イオン電流クロマトグラムを作成する全イオン電流クロマトグラム作成部と、前記全イオン電流クロマトグラムにおけるピーク上の指定された保持時間を抽出位置として、マススペクトルを抽出するマススペクトル抽出部と、前記全イオン電流クロマトグラムの中で最大の強度を持つ基準ピークを抽出した基準ピーククロマトグラムを作成する基準ピーククロマトグラム作成部と、前記全イオン電流クロマトグラムにおけるピークの頂点部の保持時間が前記基準ピーククロマトグラムのサチュレーションしている区間に該当する場合には、前記全イオン電流クロマトグラムにおける前記マススペクトルの抽出位置を、前記基準ピーククロマトグラムのサチュレーションしていない区間内の所定の条件を満たす位置に補正するスペクトル抽出位置補正部と、前記全イオン電流クロマトグラム上の補正後の前記抽出位置で抽出された前記マススペクトルに基づいて、前記試料成分を同定するための同定処理を行う同定部と、を備える質量分析データ処理装置。

請求項2

前記スペクトル抽出位置補正部は、前記基準ピーククロマトグラムのサチュレーションしていない区間内のうち、前記基準ピーククロマトグラムの強度が最大となる位置を、前記全イオン電流クロマトグラムにおける前記マススペクトルの抽出位置に設定する請求項1に記載の質量分析データ処理装置。

請求項3

前記スペクトル抽出位置補正部は、前記基準ピーククロマトグラムのサチュレーションしていない区間内であって、前記全イオン電流クロマトグラムのピークの頂上部に対応する保持時間よりも短い側の第1の保持時間と、前記頂上部の保持時間よりも長い側の第2の保持時間のうち、より前記頂上部に近い保持時間を、前記全イオン電流クロマトグラムにおける前記マススペクトルの抽出位置に設定する請求項1に記載の質量分析データ処理装置。

請求項4

前記スペクトル抽出位置補正部は、前記基準ピーククロマトグラムのサチュレーションしていない区間内であって、前記全イオン電流クロマトグラムのピークの頂上部に対応する保持時間よりも短い側の第1の保持時間と、前記頂上部の保持時間よりも長い側の第2の保持時間の両方を、前記全イオン電流クロマトグラムにおける前記マススペクトルの抽出位置に設定し、前記マススペクトル抽出部は、前記第1の保持時間を抽出位置として第1のマススペクトルを抽出し、また前記第2の保持時間を抽出位置として第2のマススペクトルを抽出し、当該第1のマススペクトルと当該第2のマススペクトルを平均化し、前記同定部は、平均化後のマススペクトルに基づいて前記同定処理を行う請求項1に記載の質量分析データ処理装置。

請求項5

前記スペクトル抽出位置補正部は、前記基準ピーククロマトグラムのサチュレーションしていない区間内であって、前記全イオン電流クロマトグラムのピークの頂上部に対応する保持時間よりも短い側の第1の保持時間と、前記頂上部の保持時間よりも長い側の第2の保持時間の両方を、前記全イオン電流クロマトグラムにおける前記マススペクトルの抽出位置に設定し、前記マススペクトル抽出部は、前記第1の保持時間を抽出位置として第1のマススペクトルを抽出し、また前記第2の保持時間を抽出位置として第2のマススペクトルを抽出し、前記同定部は、前記第1のマススペクトル及び前記第2のマススペクトルについて同定処理を行い、ライブラリ内に予め登録された物質との類似度が高い方のマススペクトルを同定結果として採用する請求項1に記載の質量分析データ処理装置。

請求項6

前記スペクトル抽出位置補正部は、前記基準ピーククロマトグラムのサチュレーションしていない区間内のうち、前記全イオン電流クロマトグラムの信号強度閾値を超える保持時間を、前記全イオン電流クロマトグラムにおける前記マススペクトルの抽出位置に設定する請求項1に記載の質量分析データ処理装置。

請求項7

前記スペクトル抽出位置補正部は、前記全イオン電流クロマトグラムの頂上部に対応する保持時間よりも短い側の保持時間に相当する第1の裾位置、及び/又は前記補正後の抽出位置の保持時間よりも長い側の保持時間に相当する第2の裾位置が、前記基準ピーククロマトグラムのサチュレーションしている区間に該当する場合には、前記第1の裾位置及び/又は前記第2の裾位置に代えて、それぞれ前記基準ピーククロマトグラムのサチュレーションしていない区間内の任意の位置を前記全イオン電流クロマトグラムの裾における前記マススペクトルの抽出位置とする請求項1乃至6のいずれかに記載の質量分析データ処理装置。

請求項8

前記全イオン電流クロマトグラムと前記基準ピーククロマトグラムを一つのグラフに表示するための画像データを作成する画像データ作成部と、前記画像データに基づく画面を表示する表示部と、を更に備える請求項1に記載の質量分析データ処理装置。

請求項9

操作者の操作に応じた入力信号を生成する操作部、を更に備え、前記スペクトル抽出位置補正部は、前記操作部からの入力信号に基づいて、前記基準ピーククロマトグラムのサチュレーションしていない区間に該当する前記全イオン電流クロマトグラムにおける指定された位置を、前記全イオン電流クロマトグラムにおける前記スペクトルの抽出位置に設定する請求項8に記載の質量分析データ処理装置。

請求項10

前記画像データ作成部は、前記基準ピーククロマトグラムのサチュレーションしていない区間に該当する、前記全イオン電流クロマトグラムにおける前記マススペクトルの抽出位置を設定可能な範囲を示す画像データを作成する請求項9に記載の質量分析データ処理装置。

請求項11

クロマトグラフによって保持時間に応じて分離した試料成分を順次質量分析して得られたデータに基づいて、前記試料成分の同定を行うための質量分析データ処理装置であって、前記質量分析によって得られたデータから全イオン電流クロマトグラムを作成する全イオン電流クロマトグラム作成部と、前記全イオン電流クロマトグラムにおけるピーク上の設定された保持時間を抽出位置として、マススペクトルを抽出するマススペクトル抽出部と、前記全イオン電流クロマトグラムの中で最大の強度を持つ基準ピークを抽出した基準ピーククロマトグラムを作成する基準ピーククロマトグラム作成部と、前記マススペクトル抽出部により抽出されたマススペクトル内の各スペクトル信号強度比を補正するスペクトル強度比補正部と、を備え、前記スペクトル強度比補正部は、前記全イオン電流クロマトグラムにおけるピークの頂点部の保持時間が前記基準ピーククロマトグラムのサチュレーションしている区間に該当する場合には、前記基準ピーククロマトグラムのサチュレーションしていない区間内の任意の抽出位置のマススペクトル内の各スペクトル信号の強度比を用いて、前記全イオン電流クロマトグラムにおけるピークの頂点部の保持時間を抽出位置として得られたマススペクトル内の各スペクトル信号の強度比を補正する質量分析データ処理装置。

請求項12

前記スペクトル強度比補正部は、前記全イオン電流クロマトグラムにおけるピークの頂点部の保持時間を抽出位置として得られた前記マススペクトルから、サチュレーションしていないスペクトル信号のうち最大の強度を持つスペクトル信号を、前記強度比の補正に使用する請求項11に記載の質量分析データ処理装置。

請求項13

クロマトグラフによって保持時間に応じて分離した試料成分を順次質量分析して得られたデータに基づいて、前記試料成分の同定を行うための質量分析データ処理装置であって、前記質量分析によって得られたデータから全イオン電流クロマトグラムを作成するステップと、前記全イオン電流クロマトグラムにおけるピーク上の指定された保持時間を抽出位置として、マススペクトルを抽出するステップと、前記全イオン電流クロマトグラムの中で最大の強度を持つ基準ピークを抽出した基準ピーククロマトグラムを作成するステップと、前記全イオン電流クロマトグラムにおけるピークの頂点部の保持時間が前記基準ピーククロマトグラムのサチュレーションしている区間に該当する場合には、前記全イオン電流クロマトグラムにおける前記マススペクトルの抽出位置を、前記基準ピーククロマトグラムのサチュレーションしていない区間内の所定の条件を満たす位置に補正するステップと、前記全イオン電流クロマトグラム上の補正後の前記抽出位置で抽出された前記マススペクトルに基づいて、前記試料成分を同定するための同定処理を行うステップと、を含む質量分析データ処理方法

請求項14

クロマトグラフによって保持時間に応じて分離した試料成分を順次質量分析して得られたデータに基づいて、前記試料成分の同定を行うための質量分析データ処理装置であって、前記質量分析によって得られたデータから全イオン電流クロマトグラムを作成するステップと、前記全イオン電流クロマトグラムにおけるピーク上の設定された保持時間を抽出位置として、マススペクトルを抽出するステップと、前記全イオン電流クロマトグラムの中で最大の強度を持つ基準ピークを抽出した基準ピーククロマトグラムを作成するステップと、抽出された前記マススペクトル内の各スペクトル信号の強度比を補正するステップと、を備え、前記強度比を補正するステップにおいて、前記全イオン電流クロマトグラムにおけるピークの頂点部の保持時間が前記基準ピーククロマトグラムのサチュレーションしている区間に該当する場合には、前記基準ピーククロマトグラムのサチュレーションしていない区間内の任意の抽出位置のマススペクトル内の各スペクトル信号の強度比を用いて、前記全イオン電流クロマトグラムにおけるピークの頂点部の保持時間を抽出位置として得られたマススペクトル内の各スペクトル信号の強度比を補正する質量分析データ処理方法。

技術分野

0001

本発明は、クロマトグラフで分離した試料成分を順次に質量分析して得た質量分析データを処理する質量分析データ処理装置、及び質量分析データ処理方法に関する。

背景技術

0002

クロマトグラフ質量分析は、クロマトグラフィー法を用いて化合物を時間的に分離した成分を順次にイオン化し、さらに質量分析器によってイオン質量電荷比[m/z]に応じて分離して検出器で検出する分析方法であり、既知の成分の定量分析、及び未知の成分の定性分析が可能である。このような分析を行う質量分析装置は、経過時間(保持時間)に伴ってクロマトグラフが検出した各成分のマススペクトル質量スペクトル)をデータ処理するためのデータ処理装置を備えている。

0003

このデータ処理装置は、例えば定性分析であれば、未知の成分のイオンの総量にあたる信号強度を保持時間に伴ってプロットした全イオン電流クロマトグラム(Total Ion Current Chromatogram:以下、TICCと記す)を作成する。そして、TICC上のピークサーチによって得たクロマトグラムのピーク位置におけるマススペクトルを抽出し、このマススペクトルをライブラリと比較することによって、クロマトグラムのピークの試料成分を同定する。

0004

一方、定量分析であれば、データ処理装置は、既知の成分のイオンの信号強度を保持時間に伴ってプロットしたクロマトグラムを作成し、このクロマトグラムから求めた化合物ピーク面積検量線から濃度を算出し、既知の成分を定量する。

0005

例えば、特許文献1には、「クロマトグラフ質量分析装置用のデータ処理装置において、目的質量電荷比におけるマスクロマトグラム目的成分由来目的ピークの強度が閾値以上である場合に、該ピークの出現時刻に対応したマススペクトル上で前記閾値未満のピークの質量電荷比を補正用質量電荷比とし(S13)、前記目的ピーク中で信号強度が閾値を超えない時刻におけるマススペクトルを取得し(S14)該スペクトル上の目的質量電荷比の強度を同スペクトル上における補正用質量電荷比の強度で除した感度係数を算出し(S15)、補正用質量電荷比におけるマスクロマトグラムを作成し(S16)、それに前記感度係数を乗算することにより補正マスクロマトグラムを作成する(S17)。」と記載されている。

先行技術

0006

国際公開第2015/132861号パンフレット

発明が解決しようとする課題

0007

図1は、従来の化合物同定処理手法の手順を示すフローチャートである。
未知化合物既知化合物を同定する場合、データ処理装置は測定結果からクロマトグラム(TICC)を作成し(S1)、作成したクロマトグラムからピークを検出する処理を実行し(S2)、ピークが検出されなかった場合には(S3のNO)本フローチャートを処理する。一方、ピークが検出された場合には(S3のYES)、データ処理装置は検出したピークからマススペクトルを抽出し(S4)、抽出したマススペクトルに対しライブラリサーチを実行することで化合物の同定を行う(S5)。ステップS4,S5の処理は、検出された全てのピークに対して行う。

0008

[マススペクトル抽出方法
ここで、クロマトグラムのピークからマススペクトルを抽出する一般的な方法の例について、図2図6を参照して説明する。
図2は、TICC上で検出されたピークの例を示す説明図である。図2横軸は保持時間[RT]であり、縦軸は信号強度[I]である。TICCで検出されたピークは、例えば、図2に示すようにガウス分布のような形状で表示される。ここで、保持時間[RT]が「11.2」であるピークの中央を中央位置Bと呼び、中央位置Bの左側の裾位置を裾位置Aと呼び、中央位置Bの右側の裾位置を裾位置Cと呼ぶ。

0009

試料分離部101及び質量分析部102の内部においては、試料以外の成分(質量分析装置1が置かれている部屋の空気成分ゴムパッキンの成分、水分の成分)等がイオン化部102aに到達する場合がある。これらの成分がイオン化部102aにてイオン化されるとバックグラウンドイオンとしてピークが検出されてしまう。このため、クロマトグラムのピークからマススペクトルから抽出する際には、バックグラウンドイオンの影響を除くことが望ましい。

0010

図3は、中央位置B(ピークトップ位置)のマススペクトルの例を示す説明図である。図4は、裾位置A(ピークの裾の左側の位置)のマススペクトルの例を示す説明図である。図5は、裾位置C(ピークの裾の右側の位置)のマススペクトルの例を示す説明図である。図6は、TICCのピークから抽出したマススペクトルの例を示す説明図である。図3図6の横軸は質量電荷比[m/z]であり、縦軸は信号強度[I]である。

0011

図3には、質量電荷比[m/z]が最も大きい「129」のピークをベースピークとし、このベースピークの信号強度[I]を100%とした場合の、他の質量電荷比[m/z]における相対的な信号強度[I]が示されている。同様に、図4図5においても、それぞれ質量電荷比[m/z]が最も大きい「57」の信号強度[I]を100%とした場合の、他の質量電荷比[m/z]における相対的な信号強度[I]が示されている。

0012

ここで、クロマトグラム上で検出されたピークのトップ位置のマススペクトルから、ピークの左側及び右側の裾位置のマススペクトルを平均化(m/z毎の信号強度を平均化)したものをバックグラウンドとして減算する処理が行われる。このとき、次式(1)が用いられる。

0013

B−(A+C)/2 ・・・・式(1)

0014

具体的には、図3のマススペクトルから、図4図5のマススペクトルの平均を減じる処理が行われる。これにより、図6に示すように、例えば、質量電荷比[m/z]が「57」のマススペクトルのバックグラウンドがなくなる。このようにしてクロマトグラムのピークからマススペクトルを抽出することができる。このマススペクトルをライブラリサーチにかけることで化合物が同定される。

0015

ところで、クロマトグラムのピークから抽出されたスペクトルに対して、ライブラリサーチを実行して化合物同定を行う過程において、抽出したスペクトルや抽出元のTICC、サチュレーション飽和)していない質量電荷比[m/z]を指定したEICの波形から、スペクトルのある質量電荷比[m/z]のスペクトルがサチュレーションしているかどうかを読み取ることはできない。

0016

もし仮に、クロマトグラムのピークのトップ位置で抽出したマススペクトルのある質量電荷比[m/z]のスペクトル信号がサチュレーションしていると、クロマトグラムピークから抽出されたマススペクトルは、質量電荷比[m/z]のスペクトル間の信号強度比の正確性に欠ける。そのため、該当マススペクトルをライブラリサーチにかけても、ライブラリサーチの類似度が低くなったり、異なる化合物のマススペクトルが検索されたりする可能性が高くなり、ライブラリサーチの同定精度が低下する。

0017

上記の状況から、ライブラリサーチの同定精度の低下を回避する手法が望まれていた。

課題を解決するための手段

0018

本発明の一態様の質量分析データ処理装置は、クロマトグラフによって保持時間に応じて分離した試料成分を順次質量分析して得られたデータに基づいて、試料成分の同定を行うための質量分析データ処理装置である。
この質量分析データ処理装置は、質量分析によって得られたデータから全イオン電流クロマトグラムを作成する全イオン電流クロマトグラム作成部と、全イオン電流クロマトグラムにおけるピーク上の指定された保持時間を抽出位置として、マススペクトルを抽出するマススペクトル抽出部と、全イオン電流クロマトグラムの中で最大の強度を持つ基準ピークを抽出した基準ピーククロマトグラムを作成する基準ピーククロマトグラム作成部と、全イオン電流クロマトグラムにおけるピークの頂点部の保持時間が基準ピーククロマトグラムのサチュレーションしている区間に該当する場合には、全イオン電流クロマトグラムにおける前記マススペクトルの抽出位置を、基準ピーククロマトグラムのサチュレーションしていない区間内の所定の条件を満たす位置に補正するスペクトル抽出位置補正部と、全イオン電流クロマトグラム上の補正後の抽出位置で抽出されたマススペクトルに基づいて、試料成分を同定するための同定処理を行う同定部と、を備える。

0019

本発明の他の態様の質量分析データ処理装置は、クロマトグラフによって保持時間に応じて分離した試料成分を順次質量分析して得られたデータに基づいて、試料成分の同定を行うための質量分析データ処理装置である。
この質量分析データ処理装置は、質量分析によって得られたデータから全イオン電流クロマトグラムを作成する全イオン電流クロマトグラム作成部と、全イオン電流クロマトグラムにおけるピーク上の設定された保持時間を抽出位置として、マススペクトルを抽出するマススペクトル抽出部と、全イオン電流クロマトグラムの中で最大の強度を持つ基準ピークを抽出した基準ピーククロマトグラムを作成する基準ピーククロマトグラム作成部と、マススペクトル抽出部により抽出されたマススペクトル内の各スペクトル信号の強度比を補正するスペクトル強度比補正部と、を備える。このスペクトル強度比補正部は、全イオン電流クロマトグラムにおけるピークの頂点部の保持時間が基準ピーククロマトグラムのサチュレーションしている区間に該当する場合には、基準ピーククロマトグラムのサチュレーションしていない区間内の任意の抽出位置のマススペクトル内の各スペクトル信号の強度比を用いて、全イオン電流クロマトグラムにおけるピークの頂点部の保持時間を抽出位置として得られたマススペクトル内の各スペクトル信号の強度比を補正する。

発明の効果

0020

本発明の少なくとも一態様によれば、ライブラリサーチの同定精度の低下を回避することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。

図面の簡単な説明

0021

従来の化合物同定処理手法の手順を示すフローチャートである。
クロマトグラムのピークからスペクトルを抽出する一般的な方法の例を示す説明図であり、TICC上で検出されたピークの例を示す。
中央位置B(ピークトップ位置)のマススペクトルの例を示す説明図である。
裾位置A(ピークの裾の左側の位置)のマススペクトルの例を示す説明図である。
裾位置C(ピークの裾の右側の位置)のマススペクトルの例を示す説明図である。
TICCのピークから抽出したマススペクトルの例を示す説明図である。
本発明の第1の実施形態に係る質量分析装置の概略を示す構成図である。
本発明の第1の実施形態に係る質量分析データ処理装置が処理するデータの構成例を示す説明図である。
本発明の第1の実施形態に係る質量分析装置の測定結果を表示する表示画面の構成例を示す説明図である。
表示画面のクロマトグラム表示領域の一例を示す説明図である。
表示画面のスペクトル表示領域の一例を示す説明図である。
表示画面のスペクトル表示領域(ライブラリサーチ結果)の一例を示す説明図である。
本発明の第1の実施形態に係る質量分析データ処理装置による化合物同定処理手法の手順を示すフローチャートである。
図14AはTICC上で検出されたピークの例を示し、図14Bは基準ピーククロマトグラム(BPC)の例を示す説明図である。
図14AのTICCのピークから抽出したマススペクトルの例を示す説明図である。
図16AはTICC上で検出されたピークに対してスペクトル抽出位置を補正する例を示し、図16Bは基準ピーククロマトグラム(BPC)の例を示す説明図である。
図16Aにおける変更後のスペクトル抽出位置に基づいてTICCのピークから抽出したマススペクトルの例を示す説明図である。
TICCと基準ピーククロマトグラム(BPC)の例を示す説明図である。
本発明の第2の実施形態に係る化合物同定処理手法の手順を示すフローチャートである。
本発明の第3の実施形態に係る質量分析装置の概略を示す構成図である。
本発明の第3の実施形態に係るスペクトル信号の強度比を補正する方法を示す説明図であり、ピークのトップ位置のスペクトル抽出位置で得られたスペクトル信号の強度がサチュレーションしている例を示す説明図である。
基準ピーククロマトグラム(BPC)のサチュレーションしていない区間のスペクトル抽出位置で得られた各スペクトル信号の強度を示す説明図である。
図22に示すスペクトルの強度比を用いて、図21のピークのトップ位置のスペクトル抽出位置で得られたスペクトル信号の強度比を補正する方法を示す説明図である。
本発明の第4の実施形態に係るスペクトル抽出位置を手動で変更する第1の方法を示す説明図であり、図24Aは変更前のスペクトル抽出位置、図24Bは変更後のスペクトル抽出位置を示す。
本発明の第4の実施形態に係るスペクトル抽出位置を手動で変更する第2の方法を示す説明図であり、図25Aは変更前のスペクトル抽出位置、図25Bは変更後のスペクトル抽出位置を示す。
図25Bに示すスペクトル抽出位置の設定可能範囲の拡大図である。

実施例

0022

以下、本発明を実施するための形態の例について、添付図面を参照しながら説明する。添付図面において実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。

0023

<1.第1の実施形態>
[質量分析装置]
図7は、第1の実施形態に係る質量分析装置の概略を示す構成図である。図7に示す第1の実施形態に係る質量分析装置1は、クロマトグラフによって保持時間に応じて試料成分を分離し、分離した試料成分を所定の時間間隔で繰り返し質量分析して得られたデータに基づいて、試料成分の同定を行うものである。質量分析装置1は、試料分離部101及び質量分析部102と共に、第1の実施形態の質量分析データ処理装置1aを備えている。以下、これらの構成要素の詳細を説明する。

0024

[試料分離部]
試料分離部101は、分析対象となる混合物試料を成分毎に分離するクロマトグラフの一例である。この試料分離部101は、分析対象となる混合物試料を導入するための試料導入部101aと、試料導入部101aから導入された試料を成分毎に分離するためのカラム101bとを備えている。カラム101bは、試料導入部101aから導入された試料を通過させる固定相充填されたものである。固定相を通過する速度に応じて時間的に分離された成分は、各成分に固有の保持時間[RT:Retention Time]で質量分析部102に供給される。

0025

試料分離部101として、例えば、ガスクロマトグラフが用いられるが、これに限定されることはなく液体クロマトグラフや他のクロマトグラフであってもよい。

0026

[質量分析部]
質量分析部102は、試料分離部101で分離され、時間差を持って供給される各成分を順次にイオン化し、イオン化した各成分のイオンをさらに質量電荷比[m/z]に応じて分離して検出する。このような質量分析部102は、イオン化部102aと質量分離部102bと検出器102cとを備えている。

0027

イオン化部102aは、試料分離部101から供給された成分を、順次にイオン化する。このイオン化部102aでは、試料分離部101から供給された成分の分子イオンと、分子イオンが開裂した複数のフラグメントイオンとが生成される。

0028

質量分離部102bは、イオン化部102aから供給された各イオンを質量電荷比[m/z]毎に分離し、特定の質量電荷比[m/z]のイオンのみを通過させ検出器102cに到達させる。この質量分離部102bにおいては、検出器102cに到達させるイオンの質量電荷比[m/z]をスキャンさせることにより、各イオンを質量電荷比[m/z]毎に順次に検出器102cに到達させる処理が、一定時間ごとに繰り返し行われる。このような質量分離部102bは、イオン化部102aとの組み合わせによって適宜の方式のものが用いられる。

0029

検出器102cは、質量分離部102bにおいて質量電荷比[m/z]に応じて分離されたイオンの信号強度[I]を検出する。そして、検出器102cは、得られた信号強度[I]を上記質量電荷比[m/z]のスキャンに対応させて取り出すことにより、マススペクトル信号を各スキャン毎に得る。検出器102cが得たマススペクトル信号は、質量分析データ処理装置1aに供給される。

0030

[質量分析データ処理装置]
質量分析データ処理装置1aは、試料分離部101によって保持時間に応じて分離した試料成分を順次質量分析して得られたデータに基づいて、試料成分の同定を行う。このため、質量分析データ処理装置1aは、検出器102cで検出されたマススペクトル信号と保持時間[RT]を関連付けたデータを記憶部11に記憶し、このデータに基づいて、分析対象となる試料の定性分析を実施する。

0031

また、質量分析データ処理装置1aは、クロマトグラムのピークからマススペクトルを抽出する際に、スペクトル抽出位置を自動で補正する機能を備える。このような質量分析データ処理装置1aは、入出力制御部10、記憶部11、全イオン電流クロマトグラム作成部12、クロマトグラム作成部13、マススペクトル抽出部14、スペクトル抽出位置補正部15、サーチ部16、画像データ作成部17、操作部21、及び表示部22を備えている。なお図7において、全イオン電流クロマトグラム作成部12を、TICC作成部12と記載しているが、以下の説明でもTICC作成部12と称する。

0032

入出力制御部10は、予め設定されたプログラム、及びオペレーターによる操作部16からの操作に従って、他の各部における動作のタイミングを制御し、これによって質量分析データ処理を実行する。この入出力制御部10は、質量分析データ処理装置1aを構成する他の各部と、質量分析部102の検出器102cとに接続されている。

0033

上述したように記憶部11には、検出器102cで検出されたマススペクトル信号を保持時間[RT]に関連付けたデータが記憶される。また、記憶部11には、以降に説明するクロマトグラム作成部13で作成されたマスクロマトグラム(Extracted Ion Chromatogram:以下「EIC」とも記す)が記憶される。マスクロマトグラムとは、後述する図8破線で示すように、質量電荷比[m/z]ごとの、保持時間[RT]に対するイオンの信号強度[I]のグラフであり、抽出イオンクロマトグラムとも呼ばれる。

0034

図8は、質量分析データ処理装置1aが処理するデータの構成例を示す説明図である。図8に示すように、入出力制御部10には、前述した繰り返しスキャン毎に検出器102cで検出されたマススペクトル信号が、保持時間[RT]に従って順に入力される。そして、記憶部11には、以降に説明するクロマトグラム作成部13で作成された質量電荷比[m/z]毎のクロマトグラムが記憶される。ここで、図8に破線で示すように、特定質量電荷比の保持時間[RT]に対するイオンの信号強度[I]の変化を表すグラフをマスクロマトグラムと呼ぶ。

0035

クロマトグラムは、保持時間[RT]に対して設定された保持時間範囲[Tw]中の所定の抽出時間位置[tp]にピークを有する。そして、抽出時間位置[tp]の周辺ノイズ抽出時間位置[tn]が設定される。ノイズ抽出時間位置[tn]は、抽出時間位置[tp]のピーク高さからノイズ高さを差し引くために設定される。例えば、ノイズ抽出時間位置[tn]は、抽出時間位置[tp]にピークトップ極大点)を有するピークの裾付近、すなわちベースラインの端部に設定される。ただし、ノイズ抽出時間位置[tn]は、ベースラインの端部に限定されることはなく、質量分析装置1のオペレーターによって様々な位置が選択可能である。以降の説明において、抽出時間位置を、「抽出位置」とも称する。

0036

さらに、記憶部11には、既知の物質のマススペクトルを化合物名及び構造式づけたデータが、ライブラリとして格納されている。

0037

TICC作成部12は、記憶部11に記憶されているデータに基づいて、検出器102cで検出された信号強度[I]を保持時間[RT]毎に積算した全イオン電流クロマトグラム(TICC)を作成する(図2及び図8参照)。

0038

クロマトグラム作成部13は、例えば操作部16からの入力によって設定された所定の保持時間範囲[Tw]にて、記憶部11に記憶されたデータに基づいて、整数質量の各質量電荷比[m/z]に対応するマスクロマトグラム(EIC)を作成する(図8参照)。なお、図8においては、説明のために4箇所の質量電荷比[m/z]に対応する4つのマスクロマトグラムを破線で示した。また、クロマトグラム作成部13は、設定された所定の保持時間範囲に関し、基準ピーク(マススペクトル中で最大の強度を持つピーク)を抽出した基準ピーククロマトグラム(Base Peak Chromatogram:以下「BPC」と記す)を作成する。クロマトグラム作成部13は、基準ピーククロマトグラム作成部の一例である。

0039

マススペクトル抽出部14は、自動ピーク検出(いわゆるピークサーチ)プログラムに従って、TICCに基づく一連のマススペクトル抽出を実施する。このような自動ピーク検出においては、信号強度[I]のノイズ成分除去も自動的に実施される。なお、自動ピーク検出及びノイズ成分除去を、TICC作成部12が実行してもよい。その場合、マススペクトル抽出部14は、TICC作成部12からピーク位置情報を取得する。

0040

クロマトグラムのピークからマススペクトルを抽出する方法は問わないが、以下にマススペクトルを抽出する際のノイズ除去方法の一例を説明する。ノイズ成分除去は、典型的には、TICC上の各ピーク位置に出現している各質量電荷比[m/z]のピークトップの信号強度[I]から、ピークトップの左側及び右側の裾位置の信号強度[I]を平均化した値をバックグラウンドとして差し引くことによって実施される。このノイズ成分除去の具体的な例は、前述した図2図6にて説明した。マススペクトル抽出部14は、このような自動ピーク検出によって、TICC上の各ピークに該当する保持時間[RT]毎のマススペクトルを抽出する。

0041

スペクトル抽出位置補正部15は、TICCのピークのトップ位置(極大点:ピークの左端から右端の間で最も強度が大きい位置)に対応する保持時間(抽出位置)が、基準ピーククロマトグラム(BPC)のサチュレーションしている区間に該当する場合には、同定処理に用いるマススペクトルの抽出位置を補正する処理を行う。すなわち、スペクトル抽出位置補正部15は、TICCにおけるマススペクトルの抽出位置(保持時間)を、基準ピーククロマトグラムのサチュレーションしていない区間内の所定の条件を満たす位置に変更する。この場合、マススペクトル抽出部14は、補正後の抽出位置によりTICCからマススペクトルを抽出する。以下、TICCのピークのトップ位置を、頂上部とも称す。

0042

サーチ部16(同定部の一例)は、マススペクトル抽出部14で抽出されたマススペクトルに対してライブラリサーチを実施し、マススペクトルが示す成分(試料成分)とライブラリに記憶された物質との同定処理を行う。すなわちサーチ部16は、予め多数の概知物質に関するマススペクトルが登録されたライブラリを参照し、抽出されたマススペクトルが示す成分に該当する物質を検索し、ライブラリサーチ結果として該当物質の候補を類似度と共に出力する。このサーチ部16は、試料分離部101により試料成分が質量分析されるタイミングに合わせて、リアルタイムに同定処理を行う。また、サーチ部16は、試料分離部101により試料成分が質量分析された後、質量分析とは異なるタイミングで同定処理を行うことも可能である。

0043

画像データ作成部17は、TICC作成部12、クロマトグラム作成部13、マススペクトル抽出部14、及びスペクトル抽出位置補正部15により作成された各データ、サーチ部16での同定結果を表示部22に表示するための画像データを作成する。また画像データ作成部17は、質量分析データ処理装置1aで実施する処理内容を、オペレーターが選択し、又は設定するための画面に対応する画像データを作成する。画像データの詳細は、以降の質量分析データ処理方法において説明する。

0044

操作部21は、質量分析データ処理装置1aにおいて実行するデータ処理に関する各種設定を入力する。データ処理に関する各種設定とは、例えばクロマトグラム作成部13においてクロマトグラムを作成する保持時間範囲[Tw]の設定や、スペクトル抽出位置の手動指定(後述する第4の実施形態)などである。この操作部21は、例えばキーボードマウス、又は表示部22と一体形成されたタッチパネル式の操作部であってもよい。

0045

表示部22は、画像データ作成部17で作成された画像データに基づいて画像を表示する。表示部22に表示される画像として、例えば、後述する図9図12に示すクロマトグラム表示画面、スペクトル表示画面(ライブラリサーチ結果画面)がある。

0046

[測定結果を表示する表示画面]
図9は、質量分析装置1の測定結果を表示する表示画面の構成例を示す。
図9に示す表示画面は、左側にクロマトグラム表示領域22a、右側にスペクトル表示領域22bを有する。クロマトグラム表示領域22aは、測定結果から作成したクロマトグラムを表示する領域である。このクロマトグラム表示領域22aには、作成されたTICCやEIC、BPC等のクロマトグラム、TICCのスペクトル抽出位置、手動でスペクトル抽出位置を指定する(後述する第4の実施形態)ための操作画面などが表示される。

0047

スペクトル表示領域22bは、クロマトグラム上で抽出されたマススペクトルを表示する領域である。このスペクトル表示領域22bには、TICCから抽出されたマススペクトル、ライブラリサーチ結果(同定結果)などが表示される。

0048

図10は、表示画面のクロマトグラム表示領域22aの一例を示す。
図10のクロマトグラム表示領域22aの上段には、設定された保持時間範囲のTICC30が表示されている。TICC30に関して、ピークトップのスペクトル抽出位置(抽出位置A)、バックグラウンドスペクトルの抽出位置(裾位置B,C)が表示されている。また、クロマトグラム表示領域22aの下段には、m/z112について同じ保持時間範囲のEICが表示されている。

0049

図11は、表示画面のスペクトル表示領域22bの一例を示す。
図11のスペクトル表示領域22bの上段及び下段には、図10のTICC30の異なる保持時間から抽出されたマススペクトルがそれぞれ表示されている。

0050

図12は、表示画面のスペクトル表示領域(ライブラリサーチ結果)の一例を示す。
図12のスペクトル表示領域22bの上段及び下段はそれぞれ、図11のスペクトル表示領域22bの上段及び下段に表示されたマススペクトルに対してライブラリサーチを実施した後のスペクトル表示である。マススペクトルに対し、ライブラリに登録されたマススペクトル(以下「ライブラリスペクトル」と称する)を横にずらして重ねて表示されている。表示方法は、マススペクトルとライブラリスペクトルを上下に表示してもよい。ライブラリサーチ結果では、例えばライブラリサーチでヒットしたライブラリスペクトルとの類似度、及びライブラリスペクトルの化合物名、及びライブラリサーチでヒットした化合物の構造式が表示される。

0051

[化合物同定処理手法]
図13は、第1の実施形態に係る質量分析データ処理装置1aによる化合物同定処理手法の手順を示すフローチャートである。TICC作成部12により測定データから全イオン電流クロマトグラム(TICC)を作成し(S11)、作成したTICCからピークを検出する(S12)過程までは、従来技術で説明した方法と同じである。

0052

ステップS12の処理後、マススペクトル抽出部14は、TICCからピークが検出されたか否かを判断し(S13)、ピークが検出されなかった場合には(S13のNO)、本フローチャートの処理を終了する。一方、ピークが検出されると(S13のYES)、マススペクトル抽出部14が、TICCから検出したピークのマススペクトルを抽出する際に、クロマトグラム作成部13は、基準ピーククロマトグラム(BPC)を作成する(S14)。このBPCにより、マススペクトル抽出部14は、ピークのトップ位置におけるマススペクトル内のスペクトル信号がサチュレーションしている区間に属するか否かを判断する(S15)。

0053

マススペクトル抽出部14は、TICCのピークのトップ位置がBPC上でサチュレーションしている区間に属さないと判断した場合には(S15のNO)、ステップS17の処理に進む。一方、マススペクトル抽出部14は、TICCのピークのトップ位置がBPC上でサチュレーションしている区間に属すると判断した場合には(S15のYES)、その判断結果をスペクトル抽出位置補正部15へ出力する。スペクトル抽出位置補正部15は、このマススペクトル抽出部14の判断結果を受けて、ピークのトップ位置に対するスペクトル抽出位置を自動的に補正する(S16)。

0054

スペクトル抽出位置補正部15は、まずTICCのピークのトップ位置の左側(トップ位置の保持時間よりも保持時間が短い側)及び右側(トップ位置の保持時間よりも保持時間が短い側)を走査して、それぞれBPC上でサチュレーションしていない位置を検索する。次いで、マススペクトル抽出部14は、検索して見つけた左側の該当位置のBPCの強度と右側の該当位置のBPCの強度とを比較し、強度の大きい方をピークのトップ位置の代わりのスペクトル抽出位置とする。すなわち、BPCのサチュレーションしていない区間内のうち、BPCの強度が最大となる位置を、TICCにおけるマススペクトルの抽出位置に設定する。BPCの強度が大きい位置をスペクトル抽出位置とすることで、バックグラウンドノイズの影響を避けることができる。

0055

なお、スペクトル抽出位置の別の補正方法として、TICC30のピークの左側の裾位置Aからピークの右側の裾位置Bまでの区間のBPC31がサチュレーションしている区間を除いた中で、BPC31の強度が最も高い位置を新たなスペクトル抽出位置とする方法でもよい。

0056

次いで、ステップS15のNOの場合、又はステップS16の処理後、マススペクトル抽出部14は、TICCの各位置(ピークのトップ位置(補正位置)、ピークの裾位置)からそれぞれマススペクトルを抽出し、バックグラウンドを除去したマススペクトルを抽出する(S17)。そして、サーチ部16は、抽出したマススペクトルに対し、ライブラリサーチを実行して化合物を同定する(S18)。上記のステップS15〜S18の処理を、検出されたピ−ク全てに対して行う。

0057

[スペクトル抽出位置補正の具体例]
(補正前のスペクトル抽出位置)
次に、上述したスペクトル抽出位置の補正について、図14図17を参照してさらに具体的に説明する。図14AはTICC上で検出されたピークの例を示し、図14BはBPCの例を示す。図15は、図14AのTICCのピークから抽出したマススペクトルの例を示す。

0058

図14Aに示すTICC30のピークを検出した結果、ピークのトップ位置(抽出位置B)が、図14Bに示すBPC31のサチュレーションしている区間(両矢印で示す範囲)に入っている。図15に示すように、TICC30のピークのトップ位置(抽出位置B)から抽出したマススペクトルは、複数の質量電荷比(m/z43,56,70,83,98)のスペクトル信号が強度100%に達してサチュレーションしている。

0059

(補正後のスペクトル抽出位置)
図16AはTICC30上で検出されたピークに対してスペクトル抽出位置を補正する例を示し、図16BはBPC31の例を示す。図16BのBPC31は図14AのBPC31と同じである。図17は、図16Aにおける変更後のスペクトル抽出位置に基づいてTICCのピークから抽出したマススペクトルの例を示す説明図である。

0060

図16Aに示すように、BPC31のサチュレーションしていない区間内において、TICC30のピークのトップ位置から左側及び右側を走査した結果、BPC31上でサチュレーションしていない位置はトップ位置から左側の位置B´である。この位置B´は、BPC31のサチュレーションしていない区間内において、BPC31の強度が最大となる位置である。よって、マススペクトル抽出部14は、このトップ位置の左側の位置B´を、ピークのトップ位置(当初の抽出位置B)の代わりとなるスペクトル抽出位置とする。

0061

[変形例1]
なお、スペクトル抽出位置補正部15は、検索して見つけたBPC上の左側の該当位置と、BPC上の右側の該当位置とを比較し、よりTICCのピークのトップ位置に近い方を、新たなスペクトル抽出位置に採用してもよい。すなわち、スペクトル抽出位置補正部15は、BPCのサチュレーションしていない区間内であって、TICCのピークのトップ位置に対応する保持時間よりも短い側の該当保持時間(第1の保持時間)と、トップ位置の保持時間よりも長い側の該当保持時間(第2の保持時間)のうち、よりトップ位置に近い保持時間を、TICCにおけるマススペクトルの抽出位置に設定する。

0062

一般にスペクトル抽出位置がTICCのピークのトップ位置に近いほど、BPCの強度が大きく、バックグラウンドノイズの影響を避けることができる。それゆえ、ライブラリサーチの同定精度の低下を回避することができる。

0063

[変形例2]
また、検索して見つけたBPC上の左側の該当位置のマススペクトルと、BPC上の右側の該当位置のマススペクトルの平均をとったマススペクトルを、同定処理に用いてもよい。すなわち、スペクトル抽出位置補正部15は、BPCのサチュレーションしていない区間内であって、TICCのピークのトップ位置に対応する保持時間よりも短い側の該当保持時間(第1の保持時間)と、トップ位置の保持時間よりも長い側の該当保持時間(第2の保持時間)の両方を、TICCにおけるマススペクトルの抽出位置に設定する。

0064

マススペクトル抽出部14は、第1の保持時間を抽出位置としてTICCから第1のマススペクトルを抽出し、また第2の保持時間を抽出位置としてTICCから第2のマススペクトルを抽出し、第1のマススペクトルと第2のマススペクトルを平均化する。そして、サーチ部16は、平均化後のマススペクトルに基づいて同定処理を行う。これにより、同定処理に使用するマススペクトルが安定し、ライブラリサーチの同定精度の低下を回避することができる。

0065

[変形例3]
また、TICCのピークのトップ位置の左側及び右側のマススペクトルを抽出し、これらをライブラリサーチして類似度が高い方のマススペクトルを同定処理に使用するようにしてもよい。すなわち、スペクトル抽出位置補正部15は、BPCのサチュレーションしていない区間内であって、TICCのピークのトップ位置に対応する保持時間よりも短い側の該当保持時間(第1の保持時間)と、トップ位置の保持時間よりも長い側の該当保持時間(第2の保持時間)の両方を、TICCにおけるマススペクトルの抽出位置に設定する。

0066

マススペクトル抽出部14は、第1の保持時間を抽出位置としてTICCから第1のマススペクトルを抽出し、また第2の保持時間を抽出位置としてTICCから第2のマススペクトルを抽出する。そして、サーチ部16は、第1のマススペクトル及び第2のマススペクトルについて同定処理を行い、ライブラリ内に予め登録された物質との類似度が高い方のマススペクトルの同定結果を採用する。このように、TICCのピークのトップ位置の左側及び右側から抽出したマススペクトルの同定結果のうち、より類似度の高い方を採用するため、ライブラリサーチの同定精度の低下を回避することができる。

0067

[変形例4]
また、スペクトル抽出位置補正部15は、BPCのサチュレーションしていない区間内のうち、TICCの信号強度が予め設定した閾値を超える保持時間をTICCにおけるマススペクトルの抽出位置に設定する。逆に言えば、TICCの信号強度が閾値以下である保持時間の測定データは、マススペクトル抽出に使用しない。これにより、ライブラリサーチの同定精度を一定レベル以上に保つことが期待できる。なお、上記条件に該当する複数の測定データがあれば、それらのマススペクトルの平均値をとり、平均化後のマススペクトルに基づいて同定処理を行うようにしてもよい。それにより、変形例2と同様に、同定処理に使用するマススペクトルが安定し、ライブラリサーチによる化合物の同定精度の低下を回避することができる。

0068

上述した第1の実施形態によれば、TICCにおけるピークのトップ位置の保持時間がBPCのサチュレーションしている区間に該当する場合には、TICCにおけるマススペクトルの抽出位置を、BPCのサチュレーションしていない区間内の所定の条件を満たす位置に補正する。それにより、ライブラリサーチによる化合物の同定精度の低下を回避することができる。

0069

<2.第2の実施形態>
図18は、TICCとベースピーククロマトグラム(BPC)の例を示す説明図である。可能性としては低いものの、TICCのピークの裾位置から抽出したマススペクトルのある質量電荷比[m/z]のスペクトル信号が、サチュレーションすることがある。これは、図18を例に説明すると、TICC40のピークの右側の極小点に相当する裾位置Pcが、BPC41のサチュレーションしている区間(両矢印で示す範囲)に属している状態である。このようにTICCのピークの裾位置がBPCのサチュレーションしている区間に属する場合には、裾位置に対するスペクトル抽出位置をBPCのサチュレーションしていない区間内に変更する。

0070

TICCのピークの裾位置がBPCのサチュレーションしている区間に属すると判断された場合、ピークのトップ位置に対して左側の裾位置がBPCのサチュレーションしている区間に属している場合には、その位置より左方向(保持時間が長くなる方向)に向かってサチュレーションしない位置を検索する。一方、ピークのトップ位置に対して右側の裾位置がBPCのサチュレーションしている区間に属している場合には、その位置より右方向(保持時間が短くなる方向)に向かってサチュレーションしない位置を検索する。そして、見つけた場所をそれぞれの裾位置の代わりのスペクトル抽出位置とする。

0071

図18に示す例では、TICC40のピークのトップ位置Paに対して右側の裾位置Pcが、BPC41のサチュレーションしている区間に属している。この場合には、その裾位置Pcより右方向に向かってサチュレーションしない位置を検索し、TICC40上のサチュレーションしない位置Pc´を発見している。

0072

すなわちスペクトル抽出位置補正部15は、TICCのトップ位置に対応する保持時間よりも短い側の保持時間に相当する第1の裾位置、及び/又はトップ位置に対応する保持時間よりも長い側の保持時間に相当する第2の裾位置が、BPCのサチュレーションしている区間に該当するか否かを判定する。そして、スペクトル抽出位置補正部15は、TICCの第1の裾位置及び/又は第2の裾位置が、BPCのサチュレーションしている区間に該当する場合には、第1の裾位置及び/又は第2の裾位置に代えて、それぞれBPCのサチュレーションしていない区間内の任意の位置をTICCの裾におけるマススペクトルの抽出位置とする。

0073

図19は、第2の実施形態に係る化合物同定処理手法の手順を示すフローチャートである。図19のステップS21〜S26の処理は、図13のステップS11〜S16の処理と同じであるため説明を省略する。

0074

ステップS25のNOの場合、又はステップS26においてTICCのピークのトップ位置に対するスペクトル抽出位置が自動的に補正された後、マススペクトル抽出部14は、TICCのピークの左側の裾位置におけるマススペクトル内のスペクトル信号が、BPCのサチュレーションしている区間に属するか否かを判断する(S27)。マススペクトル抽出部14は、TICCのピークの左側の裾位置がBPC上でサチュレーションしている区間に属すると判断した場合には(S27のYES)、ピークの左側の裾位置に対するスペクトル抽出位置を自動的に補正する(S28)。一方、マススペクトル抽出部14は、TICCのピークの左側の裾位置がBPC上でサチュレーションしている区間に属さないと判断した場合には(S27のNO)、ステップS29の処理に進む。

0075

次いで、ステップS27のNOの場合、又はステップS28の処理後、マススペクトル抽出部14は、TICCのピークの右側の裾位置におけるマススペクトル内のスペクトル信号が、BPCのサチュレーションしている区間に属するか否かを判断する(S29)。マススペクトル抽出部14は、TICCのピークの右側の裾位置がBPC上でサチュレーションしている区間に属すると判断した場合には(S29のYES)、ピークの右側の裾位置に対するスペクトル抽出位置を自動的に補正する(S30)。一方、マススペクトル抽出部14は、TICCのピークの右側の裾位置がBPC上でサチュレーションしている区間に属さないと判断した場合には(S29のNO)、ステップS31の処理に進む。

0076

次いで、ステップS29のNOの場合、又はステップS30の処理後、マススペクトル抽出部14は、TICCの各位置(ピークのトップ位置(補正位置)、ピークの裾位置(補正位置))からそれぞれマススペクトルを抽出し、バックグラウンドを除去したマススペクトルを抽出する(S31)。そして、サーチ部16は、抽出したマススペクトルに対し、ライブラリサーチを実行して化合物を同定する(S32)。上記のステップS25〜S32の処理を、検出されたピ−ク全てに対して行う。

0077

上述した第2の実施形態によれば、TICCにおけるピークのトップ位置、及び/又は左右の裾位置の保持時間がBPCのサチュレーションしている区間に該当する場合には、TICCにおけるマススペクトルの抽出位置を、BPCのサチュレーションしていない区間内の所定の条件を満たす位置に補正する。それにより、ライブラリサーチによる化合物の同定精度の低下を回避することができる。また、本実施形態の場合には、裾位置のスペクトル照射位置の補正も自動的に行うため、第1の実施形態と比較して化合物の同定精度の低下を更に確実に回避することができる。

0078

<3.第3の実施形態>
第1及び第2の実施形態では、クロマトグラムのピークのトップ位置や裾位置におけるスペクトルがサチュレーションしている区間に属する場合、スペクトル抽出位置を補正していたが、第3の実施形態は、抽出位置は変更しないで強度比を補正する方法である。第3の実施形態は、第1及び第2の実施形態とマススペクトルの抽出方法が異なるだけで、その他の構成は第1及び第2の実施形態と同じである。

0079

図20は、第3の実施形態に係る質量分析装置の概略を示す構成図である。以下、図20の質量分析データ処理装置1bが、図7の質量分析データ処理装置1aと異なる部分を中心に説明する。

0080

質量分析データ処理装置1bは、クロマトグラムのピークからマススペクトルを抽出する際に、マススペクトル内のサチュレーションしているスペクトルの強度を自動で補正する機能を有する。すなわち、質量分析データ処理装置1bは、スペクトル抽出位置補正部15に代えて、スペクトル強度比補正部18を備える。

0081

スペクトル強度比補正部18は、マススペクトル抽出部14により抽出されたマススペクトル内の各スペクトル信号の強度比を補正する処理を行う。このスペクトル強度比補正部18は、TICCにおけるピークのトップ位置の保持時間がBPCのサチュレーションしている区間に該当する場合には、BPCのサチュレーションしていない区間内の任意の抽出位置のマススペクトル内の各スペクトル信号の強度比を用いて、TICCにおけるピークのトップ位置(もしくは裾位置)の保持時間を抽出位置として得られたマススペクトル内の各スペクトル信号の強度比を補正する。

0082

図21は、第3の実施形態に係るスペクトル信号の強度比を補正する方法を示す説明図である。図21では、ピークのトップ位置のスペクトル抽出位置で得られたm/z55のスペクトル信号の強度がサチュレーションしている例を示す。強度が100%でサチュレーションしているものとする。m/z42は、サチュレーションしていないピークから抽出したマススペクトルの中で強度が最大のものとする。

0083

図22は、基準ピーククロマトグラム(BPC)のサチュレーションしていない区間のスペクトル抽出位置で得られた各スペクトル信号の強度を示す説明図である。強度比の補正に使うマススペクトルは、第1の実施形態と同様の方法により見つけた、サチュレーションしている質量電荷比[m/z]のスペクトル信号が存在しないマススペクトルとする。サチュレーションしているスペクトル信号と他のスペクトル信号との強度比の補正に使用するm/zは、サチュレーションしているm/z(図21のm/z55)のスペクトル信号を持つマススペクトルのm/zのスペクトル信号の中で、サチュレーションしていないm/zのスペクトル信号の強度が最大のもの(図21のm/z42)を使用する。検索して見つけたサチュレーションしていないマススペクトル(図22)から、m/z55とm/z42のスペクトル信号の強度比の値を計算する。図22の場合、m/z55とm/z42のスペクトル信号の強度比は、2:1である。

0084

図23は、図22に示すスペクトルの強度比を用いて、図21のピークのトップ位置のスペクトル抽出位置で得られたスペクトル信号の強度比を補正する方法を示す説明図である。スペクトル強度比補正部18は、検索により見つけたサチュレーションしていないマススペクトルの強度比を利用して、スペクトル抽出位置のサチュレーションしているスペクトルの強度比を補正する。図23では、図21からm/z55とm/z42のスペクトル信号の強度比は2:1であることが得られたので、m/z42のスペクトル信号の強度“80%”に対してm/z55のスペクトル信号の強度は“160%”となる。

0085

上述した第3の実施形態によれば、スペクトル抽出時にマススペクトル内のスペクトル信号の強度比の正確性が欠如しているスペクトル信号の強度比を自動的に補正することができる。それにより、ライブラリサーチによる化合物の同定精度の低下を防止することができる。

0086

<4.第4の実施形態>
第4の実施形態は、基準ピーククロマトグラム(BPC)を確認しながら、オペレーターが手動でスペクトル抽出位置を指定する機能を有する例である。第1及び第2の実施形態では自動でピークを検出し、検出したピークからマススペクトルを抽出する際に、自動でスペクトル抽出位置を補正していたが、第4の実施形態においては、オペレーターが手動でスペクトル抽出位置をBPCを見ながら補正する。自動ピーク検出では検出されなかったが、オペレーターがピークと思われる場所から手動でマススペクトルを抽出する場合や、自動ピーク検出で検出されたピークから自動で決定したスペクトル抽出位置を修正する場合を想定する。

0087

[第1の方法]
図24は、第4の実施形態に係るスペクトル抽出位置を手動で変更する第1の方法を示す説明図であり、図24Aは変更前のスペクトル抽出位置、図24Bは変更後のスペクトル抽出位置を示す。

0088

図24Aでは、TICC50にBPC51が重ねて表示されている。これにより、オペレーターは、TICC50のピークのトップ位置に対応する位置マーカー53がBPC51のサチュレーションしている区間(両矢印で示す範囲)に属していることが確認できる。位置マーカー52はTICC50の左側(保持時間が短い側)の裾位置に相当し、位置マーカー54はTICC50の右側(保持時間が長い側)の裾位置に相当する。そこで、図24Bに示すように、オペレーターは、位置マーカー53をBPC51の左側のサチュレーションしていない区間(斜面)のうち強度の最も大きい位置に移動させ、ピークトップ位置のスペクトル照射位置に設定する。移動操作は、オペレーターが操作部21を操作して、表示画面上の指示部ポイント等)の位置を位置マーカー53に合わせて選択及び移動させることにより実現できる。画像データ作成部17は、操作状況に応じた画像データを作成する。

0089

上述した第4の実施形態における第1の方法によれば、TICCにBPCを重ねて表示するとともに照射位置を手動で移動できる構成とすることにより、オペレーターは、BPCのサチュレーションしている区間を避けて自由にスペクトル抽出位置を指定することができる。それゆえ、第4の実施形態における第1の方法は、上述した他の実施形態と同様に、ライブラリサーチによる化合物の同定精度の低下を回避することができる。

0090

なお、図24A及び図24Bに表示された位置マーカーは短いが、長くすることも可能である。図24A及び図24Bのように、位置マーカーを短く表示した場合には、位置マーカーとTICC及びBPCの波形とが重ならないため、視認性及び操作性が向上する。

0091

[第2の方法]
図25は、第4の実施形態に係るスペクトル抽出位置を手動で変更する第2の方法を示す説明図であり、図25Aは変更前のスペクトル抽出位置、図25Bは変更後のスペクトル抽出位置を示す。

0092

第4の実施形態に係る質量分析装置として、図7に示した質量分析装置1を用いることができる。スペクトル抽出位置補正部15は、操作部21がオペレーターから受け付け操作内容に基づいてスペクトル抽出位置を補正する。

0093

図25Aでは、TICC60にBPC61が重ねて表示されている。TICC60のピークのトップ位置に対応する位置マーカー63がBPC61のサチュレーションしている区間(両矢印で示す範囲)に属している。位置マーカー62はTICC60の左側(保持時間が短い側)の裾位置に相当し、位置マーカー64はTICC60の右側(保持時間が長い側)の裾位置に相当する。そこで、図25Bに示すように、オペレーターは、位置マーカー63をBPC61の左側のサチュレーションしていない区間(斜面)のうち強度の最も大きい位置に移動させ、ピークトップ位置のスペクトル照射位置に設定する。

0094

第1及び第2の実施形態において自動でスペクトル抽出位置を補正する場合には、マススペクトルの抽出位置はTICCのピークのトップ位置、ピークの左側の裾位置及びピークの左側の裾位置それぞれ1点のみであった。本実施形態では、位置マーカー62〜64は、保持時間[RT]を示す横軸に沿って所定の長さを有する帯状である(図26参照)。それにより、オペレーターがスペクトル抽出位置を補正する場合に、スペクトル抽出位置の範囲指定を可能としている。

0095

図26は、図25Bに示すスペクトル抽出位置の設定可能範囲の拡大図である。例えば位置マーカー63は、始点63s及び終点63eを有し、始点63sから始点63eまでの間に、保持時間t1〜t4の4つのデータ点が含まれる。オペレーターが、操作部15により位置マーカー63を選択して、始点63s及び/又は始点63eを横軸方向に移動させることにより、保持時間の範囲を指定することが可能である。オペレーターにより範囲指定された場合には、その範囲に含まれる複数のデータ点に基づく複数のマススペクトルを平均化したマススペクトルを抽出する。

0096

上述した第4の実施形態における第2の方法によれば、上述した第2の方法と同様の作用効果を奏する。また、第4の実施形態における第2の方法によれば、保持時間の範囲を指定することが可能であり、指定した範囲に含まれる複数のデータ点に基づく複数のマススペクトルを平均化したマススペクトルを抽出することができる。それにより、第1の実施形態における変形例4と同様に、同定処理に使用するマススペクトルが安定し、ライブラリサーチによる化合物の同定精度の低下を回避することができる。

0097

さらに、本発明は上述した各実施形態例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、その他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。

0098

例えば、上述した実施形態例は本発明を分かりやすく説明するために装置及びシステムの構成を詳細且つ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態例の構成の一部を他の実施形態例の構成に置き換えることは可能である。また、ある実施形態例の構成に他の実施形態例の構成を加えることも可能である。また、各実施形態例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。

0099

また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリハードディスクSSD(Solid State Drive)等の記録装置、又はICカードSDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。

0100

1…質量分析装置、 1a…質量分析データ処理装置、 10…入出力制御部、 11…記憶部、 12…TICC作成部、 13…クロマトグラム作成部、 14…マススペクトル抽出部、 15…スペクトル抽出位置補正部、 16…サーチ部、 17…画像データ作成部、 21…操作部、 22…表示部、 101…試料分離部、102…質量分析部

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