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技術 耐溶着チッピング性にすぐれた表面被覆切削工具

出願人 三菱マテリアル株式会社
発明者 小野晃斉藤正典土橋正卓河原佳祐
出願日 2017年9月29日 (3年3ヶ月経過) 出願番号 2017-192119
公開日 2019年4月25日 (1年8ヶ月経過) 公開番号 2019-063937
状態 未査定
技術分野 物理蒸着 バイト、中ぐり工具、ホルダ及びタレット ダイヤモンド又は金属化合物を含有する合金 フライス加工
主要キーワード 乾式ブラスト処理 合金ブロック 腐食処理 加工端 投射圧力 圧縮残留応力値 酸化ジルコニウム層 マッピング像
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重要な関連分野

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課題

溶着を発生しやすい被削材であるTi合金ステンレス合金等に対するフライス切削等の断続切削加工においても、溶着に起因するチッピングに対してすぐれた耐溶着チッピング性を有する表面被覆切削工具を提供すること。

解決手段

WC基超硬合金工具基体表面に、単層あるいは積層を含む硬質被覆層が形成されてなる表面被覆切削工具において、前記工具基体と前記硬質被覆層の界面の少なくともホーニング部からすくい部50μmまでの領域において、厚み0.03〜1.8μm、幅0.1〜10μmの酸化ジルコニウム層を2〜10個を有する、表面被覆切削工具、および、さらに、前記すくい部の前記領域における圧縮残留応力が、1000〜1900MPaである、表面被覆切削工具。

概要

背景

従来、被覆工具においては、基材被膜との密着性を高めるとの観点から、基材の表面の清浄化あるいは表面改質のための前処理、たとえば、基材表面の酸化などによる汚染物を除去するためのボンバード処理や、基材の表面を酸やアルカリ溶液による表面改質のための腐食処理などが知られている。
そして、さらには、被覆工具において、積極的に、基材と被膜との密着性を高めるとの観点から、基材の表面に乾式ブラスト処理を実施し、表面を研削し、被膜との密着性を向上させ、耐チッピング性の向上を図ることが提案されている。

すなわち、たとえば、特許文献1では、炭化タングステンを主成分とする超硬合金基材の表面に対し、アルミナ単独、あるいは、アルミナに従来から用いられている炭化ケイ素酸化クロム酸化ケイ素などを含有させてなる硬質メディアを用いて乾式ブラスト処理を行った後、Tiの炭化物、窒化物などを化学蒸着法等を用い、成膜することにより、基材と被膜との密着性が高く、バラつきが少なく、通常の機械構造用鋼断続切削加工に適用した場合において、耐チッピング性にすぐれ、寿命が向上した被覆工具が提案されている。

概要

溶着を発生しやすい被削材であるTi合金ステンレス合金等に対するフライス切削等の断続切削加工においても、溶着に起因するチッピングに対してすぐれた耐溶着チッピング性を有する表面被覆切削工具を提供すること。WC基超硬合金の工具基体表面に、単層あるいは積層を含む硬質被覆層が形成されてなる表面被覆切削工具において、前記工具基体と前記硬質被覆層の界面の少なくともホーニング部からすくい部50μmまでの領域において、厚み0.03〜1.8μm、幅0.1〜10μmの酸化ジルコニウム層を2〜10個を有する、表面被覆切削工具、および、さらに、前記すくい部の前記領域における圧縮残留応力が、1000〜1900MPaである、表面被覆切削工具。なし

目的

本発明では、より溶着性の高い、Ti合金やステンレス合金等のフライス切削等の断続切削加工においても、溶着に起因するチッピングに対してすぐれた耐溶着チッピング性にすぐれた被覆工具を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

WC基超硬合金からなる工具基体の表面に、単層あるいは積層を含む硬質被覆層が形成されてなる表面被覆切削工具において、前記工具基体と前記硬質被覆層の界面の少なくともホーニング部からすくい部50μmまでの領域において、厚み0.03〜1.8μm、幅0.1〜10μmの酸化ジルコニウム層を2〜10個、好ましくは、2〜6個有することを特徴とする表面被覆切削工具。

請求項2

請求項1に記載された表面被覆切削工具において、前記すくい部の前記領域における圧縮残留応力が、1000〜1900MPa、好ましくは、1000〜1500MPaであることを特徴とする前記請求項1に記載された表面被覆切削工具。

請求項3

請求項1に記載された表面被覆切削工具において、前記WC基超硬合金におけるCo結合相中Co相について、EBSD法電子線後方散乱回折法)を用いた画像解析により測定された、面心立方晶構造を有するCo相(以下、「fcc−Co」という。)と、六方晶構造を有するCo相(以下、「hcp−Co」という。)との総面積に対する前記hcp−Coの面積率が、前記工具基体の刃先部の最表面部においては、前記刃先部の前記最表面部より内部へ1mmの深さの位置よりも20%〜40%、好ましくは、30〜40%高いことを特徴とする前記請求項1に記載された表面被覆切削工具。

技術分野

0001

本発明は、溶着を発生しやすい被削材であるTi合金ステンレス合金等において、フライス切削を行った場合においても、溶着に起因するチッピングの発生を抑制する特性(以下、「耐溶着チッピング性」という。)にすぐれた表面被覆切削工具(以下、「被覆工具」という。)に関するものである。

背景技術

0002

従来、被覆工具においては、基材被膜との密着性を高めるとの観点から、基材の表面の清浄化あるいは表面改質のための前処理、たとえば、基材表面の酸化などによる汚染物を除去するためのボンバード処理や、基材の表面を酸やアルカリ溶液による表面改質のための腐食処理などが知られている。
そして、さらには、被覆工具において、積極的に、基材と被膜との密着性を高めるとの観点から、基材の表面に乾式ブラスト処理を実施し、表面を研削し、被膜との密着性を向上させ、耐チッピング性の向上を図ることが提案されている。

0003

すなわち、たとえば、特許文献1では、炭化タングステンを主成分とする超硬合金基材の表面に対し、アルミナ単独、あるいは、アルミナに従来から用いられている炭化ケイ素酸化クロム酸化ケイ素などを含有させてなる硬質メディアを用いて乾式ブラスト処理を行った後、Tiの炭化物、窒化物などを化学蒸着法等を用い、成膜することにより、基材と被膜との密着性が高く、バラつきが少なく、通常の機械構造用鋼断続切削加工に適用した場合において、耐チッピング性にすぐれ、寿命が向上した被覆工具が提案されている。

先行技術

0004

特開平4−28854号公報

発明が解決しようとする課題

0005

ところで、近年の切削加工における省力化および省エネ化等の要求は強く、これに伴い、切削加工は一段高速化、高効率化の傾向にあり、溶着を発生しやすい被削材であるTi合金やステンレス合金等に対するフライス切削等の断続切削加工においても、耐溶着チッピング性にすぐれた特性が求められている。
そして、これに対し、前記特許文献1にて提案された被覆工具では、たしかに、被削材が通常の機械構造用鋼である場合には、断続切削加工においても、チッピングの発生を抑制できるものの、より溶着性の高い、Ti合金やステンレス合金等に対するフライス切削等の断続切削加工においては、溶着に起因するチッピングについては、その抑制効果がきわめて劣るという問題を有するものであった。
そこで、本発明では、より溶着性の高い、Ti合金やステンレス合金等のフライス切削等の断続切削加工においても、溶着に起因するチッピングに対してすぐれた耐溶着チッピング性にすぐれた被覆工具を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0006

本発明者らは、前述の観点から、溶着に起因する溶着チッピングに対する耐溶着チッピング性の改善を図るべく、鋭意研究を重ねた結果、次のような知見を得た。

0007

すなわち、発明者らは、従来のWC基超硬合金からなる工具基体の表面に対し、アルミナ単独、あるいは、アルミナに従来から用いられている炭化ケイ素、酸化クロム、酸化ケイ素などを含有させてなる硬質のメディアを用いた乾式ブラスト処理に換えて、相対的に硬度の低い酸化ジルコニウム(ZrO2)をメディアとして用いブラスト処理を行い、その後硬質被覆層を形成することにより、前記工具基体と前記硬質被覆層の界面の少なくともホーニング部からすくい部50μmまでの領域において複数箇所酸化ジルコニウム層を有する被覆工具を得て、溶着性の高い、Ti合金やステンレス合金等の被削材に対して、フライス切削等の断続切削加工を行った際にも、従来の前記アルミナ等の硬質メディアを用いた場合に比較し、溶着に起因するチッピングを大幅に低減することができることを知見したものである。
なお、ここで、「界面の少なくともホーニング部からすくい部50μmまでの領域」とは、ホーニング加工が行われた場合のすくい面と接するホーニング加工被加工端部、もしくは、ホーニング加工と同等の加工形状が得られたすくい面と接する被加工端部から50μmまでの領域をいう。
特に、前記工具基体と前記硬質被覆層の界面の前記領域は、具体的には、50μmの領域において、厚み0.03〜1.8μm、幅0.1〜10μmの酸化ジルコニウム層が2〜10個、好ましくは2〜6個を含有するものである。
なお、酸化ジルコニウムを用いることにより、溶着に起因するチッピングが、大幅に減少した理由については、基体被覆層との界面に介在する硬度の低い酸化ジルコニウムが、基体と被覆層間に生じている応力緩和させ、工具基体と硬質被覆層間の密着性向上に寄与したためと推定される。

0008

また、本発明者らは、前記WC基超硬合金からなる工具基体の基体表面部の前記すくい面において、圧縮残留応力が1000〜1900MPaである場合には、工具基体の亀裂進展性が抑制され、被覆工具の耐溶着チッピング性が著しく向上することを見出した。
さらに、本発明者らは、特に、工具基体の刃先部において、ウエットブラストなどの手段による、酸化ジルコニウム(ZrO2)付着後のCo結合相中Co相、すなわち、面心立方晶構造を有するCo相(以下、「fcc−Co」という。)と、六方晶構造を有するCo相(以下、「hcp−Co」という。)との面積割合と前記工具基体の刃先部の特性との関係に着目し、前記工具基体の刃先部の最表面部および最表面部から内部へ1mm深さの位置の二箇所にて、それぞれ、前記fcc−Coと前記hcp−Coとの総面積に対する前記hcp−Coの面積率を、EBSD法電子線後方散乱回折法)を用いた画像解析により測定を行ったところ、前記刃先部の最表面部においては、fcc−Coに対し相対的に高硬度であるhcp−Coの前記面積率が前記刃先部の前記最表面部より内部へ1mmの深さの位置における前記面積率よりも20%〜40%高いときに、耐塑性変形性が向上することを見出したものである。

0009

そして、前記耐溶着チッピング性にすぐれたWC基超硬合金被覆工具は、WC基超硬合金基体に対するブラスト処理条件を最適な範囲、例えば、粒径が100〜300μmの球状酸化ジルコニウム(ZrO2)メディアを用い、投射圧力0.30MPa以上、投射時間30〜180秒、すくい面法線に対する投射角度0〜80度、投射距離は刃先から1〜30mmの条件にてブラスト処理を実施することにより、得られることを見出したものである。

0010

本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであって、
「(1)WC基超硬合金からなる工具基体の表面に、単層あるいは積層を含む硬質被覆層が形成されてなる表面被覆切削工具において、
前記工具基体と前記硬質被覆層の界面の少なくともホーニング部からすくい部50μmまでの領域において、厚み0.03〜1.8μm、幅0.1〜10μmの酸化ジルコニウム層を2〜10個、好ましくは、2〜6個有することを特徴とする表面被覆切削工具。
(2) 前記(1)に記載された表面被覆切削工具において、
前記すくい部の前記領域における圧縮残留応力が、1000〜1900MPa、好ましくは、1000〜1500MPaであることを特徴とする前記(1)に記載された表面被覆切削工具。
(3) 前記(1)に記載された表面被覆切削工具において、
前記WC基超硬合金におけるCo結合相中のCo相について、EBSD法(電子線後方散乱回折法)を用いた画像解析により測定された、面心立方晶構造を有するCo相(以下、「fcc−Co」という。)と、六方晶構造を有するCo相(以下、「hcp−Co」という。)との総面積に対する前記hcp−Coの面積率が、前記工具基体の刃先部の最表面部においては、前記刃先部の前記最表面部より内部へ1mmの深さの位置よりも20%〜40%、好ましくは、30〜40%高いことを特徴とする前記(1)に記載された表面被覆切削工具。
」に特徴を有するものである。

0011

以下に、本発明の被覆工具について、詳細に説明する。

0012

工具基体;
本発明では、WC超硬合金基体としては、硬質相としてWCを主成分とし、結合相成分としてCoを含有するWC超硬合金基体を用いる。その他の結合相成分としては、必要に応じ、Ru、Reなどを添加成分として添加することができる。その他の硬質相成分としては、必要に応じ、TiC、TiN、TaC、NbC、Cr3C2、VCなどを添加成分として添加することができる。
結合相成分であるCoは、特に限定されないが、通常は4〜15質量%を含有する。

0013

酸化ジルコニウム層の形成;
前述のとおり、本発明では、前記WC超硬合金基体の表面部にZrO2メディアを用いてブラスト処理を行い、その後、硬質被覆層を形成した後の前記工具基体と前記硬質被覆層の界面の少なくともホーニング部からすくい部50μmまでの領域において、厚み0.03〜1.8μm、幅0.1〜10μmの酸化ジルコニウム層が2〜10個、好ましくは、2〜6個を含有することにより、被覆工具として耐溶着性および耐チッピング性の向上を図るものである。
ここで、前記領域に存在する酸化ジルコニウム層の層厚については、0.03μm未満では、応力緩和効果が発揮されず、一方、1.8μmを超えると、酸化ジルコニウム自体を起点とする膜剥離が生じやすくなるため、0.03〜1.8μmと規定した。
また、前記領域に存在する酸化ジルコニウム層の幅については、0.1μm未満では、応力緩和効果が発揮されず、一方、10μmを超えると、酸化ジルコニウム層自体を起点とする膜剥離が生じやすくなるため、0.1〜10μmと規定した。
そして、前記領域に存在する前記酸化ジルコニウム層の個数については、2個未満では、耐溶着性および耐チッピング性について所望の効果が得られず、一方、10個を超える場合には、酸化ジルコニウム層の剥離が発生しやすくなり、耐溶着性および耐チッピング性効果が低下するため、前記酸化ジルコニウム層の個数は、2〜10個、より好ましくは、その効果が顕著な2〜6個の範囲と規定した。

0014

工具基体のすくい面における圧縮残留応力値
本発明では、前記WC基超硬合金からなる工具基体の基体表面部の前記すくい部のWCの圧縮残留応力を1000〜1900MPa、好ましくは、1000〜1500MPaと規定することにより、工具基体の亀裂進展性を抑制し、被覆工具の耐溶着チッピング性の向上を図るものである。
そして、前記圧縮残留応力が1000MPa未満では、耐チッピング性が十分でなく、一方、前記ブラスト処理による投射圧力が高いなどにより、圧縮残留応力が、1900MPaを超える場合には、WC基体にクラックが入る等により、耐チッピング性が低下するため、1000〜1900MPa、より好ましくは、その効果が顕著な1000〜1500MPaと規定した。

0015

工具基体の刃先部最表面部および該最表面部より内部へ1mm深さの位置の二箇所における、面心立方晶構造を有するCo相(「fcc−Co」)と、六方晶構造を有するCo相(「hcp−Co」)との総面積に対する面心立方晶構造を有するCo相(「fcc−Co」)の面積率について;
また、本発明では、工具基体の刃先部において、ウエットブラストなどの手段による、酸化ジルコニウム(ZrO2)付着後のCo結合相中のCo相の、面心立方晶構造を有するCo相(以下、「fcc−Co」という。)と、六方晶構造を有するCo相(以下、「hcp−Co」という。)との総面積に対する前記hcp−Coの面積率を、前記刃先部の最表面部および該最表面部から内部へ1mm深さの位置の二箇所にて測定を行い、それらの面積率について、前記刃先部の最表面部の面積率が、前記刃先部の前記最表面部より内部へ1mmの深さの位置の面積率よりも20%〜40%高い範囲、より好ましくは、30〜40%高い範囲と規定することにより、すぐれた耐塑性変形性を達成するものである。
そして、前記面積率の差分が、20%未満では、耐塑性変形性の向上効果が小さく、一方、40%を超えると結合相硬化し耐チッピング性が低下するため、20%〜40%高い範囲とし、より好ましくは、その効果が顕著である、30〜40%高い範囲と規定した。

0016

硬質被覆層の形成;
ブラスト処理による酸化ジルコニウム層の形成後の硬質被覆層の形成には、通常用いられる化学蒸着法、あるいは、アークイオンプレーティングAIP)法等の物理蒸着法により、AlTiN、AlCrN、CrN等の硬質被覆層を単層あるいは複層にて形成する。

0017

被覆工具の製造方法の概要
1)基体として、前記硬質相と結合相とからなるWC超硬合金基体を準備し、必要に応じ、基体の刃先稜線に相当する部位については、ブラシによるホーニング処理またはアルミナメディアを用いたブラスト処理を施す。
2)ついで、基体上に酸化ジルコニウム層を形成する。
具体的には、例えば、ウエットブラスト処理を用い、メディアとしてはZrO2粒を用い、酸化ジルコニア層を形成する。
このような酸化ジルコニアを用いたブラスト処理を行うことによって、刃先が削れ、結果的にホーニング処理と同様な丸みを有する刃先形状が得られるので、酸化ジルコニアを用いたブラスト処理を行う場合には、前記したホーニング処理を省略することができる。
具体的なウエットブラスト処理条件としては、例えば、以下のとおりである。
砥粒濃度:10体積%以上
メディア径:100〜300μm、好ましくは、120〜200μm
投射圧力:0.30〜0.40MPa
投射時間 :30〜180秒、好ましくは、45〜120秒
投射角度:すくい面法線に対し、0°〜80°、好ましくは、30°〜60°
投射距離:刃先から1〜30mm
なお、それぞれの処理条件について、その数値限定理由は、以下のとおりである。
砥粒濃度については10体積%以下ではZrO2の付着量が著しく減少するため、10体積%以上とした。
メディア径については、100μmより小さいと基体表面に残存するZrO2の割合が著しく減少する一方、300μmを超えるとWC基体にクラックが入り切削時の耐欠損性が大幅に低下するため、100〜300μmと規定した。
また、投射圧力については、0.30MPa未満では、十分なZrO2の付着が起こらないため、下限値を0.30MPaとした。一方、0.40MPaを超えると、ZrO2の付着が多すぎてコーティング剥離が起こるとともに基体にクラックが入り、切削時の耐欠損性が大幅に低下するため、上限値を0.40MPaとした。
同様に、投射時間については、30秒未満では、十分なZrO2の付着が起こらないため、下限値を30秒とし、180秒を超えるとZrO2の付着が多すぎてコーティング剥離が起こるとともに基体にクラックが入り、切削時の耐欠損性が大幅に低下するため、上限値を180秒とした。
また、投射角度については、10度未満では、ホーニング部分に対するZrO2の付着量が著しく減少するため、下限値を10度とした。一方、80度を超える場合には、ホーニング部分に対するZrO2の付着量が著しく減少するので、上限値を80度とした。
また、投射距離については、1mm未満では付着にムラができやすく、30mmを超えると十分なZrO2の付着が起こらないため、1mmから30mmとした。
3)ブラスト処理による酸化ジルコニウム層の形成後、硬質被覆層の形成については通常用いられている化学蒸着法、あるいは、アークイオンプレーティング(AIP)法等の物理蒸着法により、AlTiN、AlCrN、CrN等の硬質被覆層を単層あるいは複層にて形成した。

0018

基体表面と硬質被覆層との界面に位置する酸化ジルコニウム層の測定;すくい面におけるWC基体の圧縮残留応力値の測定;および、工具基体の刃先部最表面部および該最表面部より内部へ1mm深さの位置の二箇所における、面心立方晶構造を有するCo相(「fcc−Co」)と、六方晶構造を有するCo相(「hcp−Co」)との総面積に対する面心立方晶構造を有するCo相(「fcc−Co」)の面積率の測定;
(1)基体表面と硬質被覆層との界面に位置する酸化ジルコニウム層の測定
基体表面と硬質被覆層との界面に位置する酸化ジルコニウム層は、例えば、SEM−EDS(走査型電子顕微鏡(SEM)搭載のエネルギー分散X線分析装置(EDS))法を用い、測定対象となる基体表面と硬質被覆層との界面のすくい面の特定の領域において、SEM観察およびEDS分析を行うことにより、酸化ジルコニウム層について測定することができる。
すなわち、すくい面の測定対象とする特定の領域において、断面組織をSEM観察し、二次電子像を得るとともに、EDSにて、同箇所のZr元素、O元素、W元素など含有する元素のマッピング像を取得し、Zr元素とO元素が重なる部分をZrO2として、画像処理にて抜き出し、画像解析によりZrO2粒子相が占める領域の大きさおよびその個数を測定することができる。
そして、具体的には、硬質被覆層を形成した後の前記工具基体と前記硬質被覆層の界面の少なくともホーニング部からすくい部50μmまでの領域において、厚み0.03〜1.8μm、幅0.1〜10μmの酸化ジルコニウム層が2〜10個、好ましくは、2〜6個を含有しているときに、被覆工具として耐溶着性および耐チッピング性にすぐれていることを確認することができた。

0019

(2)すくい面におけるWC基体の圧縮残留応力の測定
すくい面におけるWC基体の圧縮残留応力は、例えば、すくい面のホーニング部分から5mm以内の部分について、X線応力測定法(sin2ψ法)を用い、Cuκαを用いたX線回折装置にて測定することができる。
工具基体であるWCの残留応力は、WCについては、(211)面の回折ピークを用い、ヤング率としては706GPaを、ポアソン比としては0.190を用いることにより、材料および測定波長に基づく定数Kが定まり、実験によって2θ−sin2ψの関係式から定まる勾配に前記定数Kを乗ずることにより求めることができる。

0020

(3)工具基体の刃先部最表面部および該最表面部より内部へ1mm深さの位置の二箇所における、面心立方晶構造を有するCo相(「fcc−Co」)と、六方晶構造を有するCo相(「hcp−Co」)との総面積に対する面心立方晶構造を有するCo相の面積率の測定
測定箇所とする、刃先部最表面部、および、該最表面部より内部へ1mm深さの位置は、例えば、ノーズRの先端のすくい面と逃げ面が交わる刃先稜線から、すくい面と逃げ面がなす角度の1/2の角度にて基体におろした面が交わる箇所を「刃先部最表面部」とし、さらに、そのまま前記基体におろした面が基体内部に1mm入った箇所を「前記最表面部より内部へ1mm深さの位置」とすることができ、前記基体におろした面に対し、垂直な縦断面にて測定を行うことができる。
前記WC基超硬合金におけるCo結合相中のCo相について、EBSD法(電子線後方散乱回折法)を用いた画像解析により、面心立方晶構造を有するCo相(「fcc−Co」)と、六方晶構造を有するCo相(「hcp−Co」)とを区別して認識することができるため、前記工具基体の刃先部の最表面部および前記刃先部の最表面部より内部へ1mmの深さの位置の二箇所において、面心立方晶構造を有するCo相(「fcc−Co」)と、六方晶構造を有するCo相(「hcp−Co」)との総面積に対する面心立方晶構造を有するCo相(「fcc−Co」)の面積率を測定することができる。
具体的には、電界放出型走査電子顕微鏡鏡筒内に上記工具基体をセットし、測定面に対して70度の入射角度で15kVの加速電圧電子線を5nAの照射電流で、表面研磨した前記測定面に照射して電子後方散乱回折像装置を用いて20μm×30μmの領域を0.05μm/stepの間隔で反射回折パターンEBSDパターン)を得た。

発明の効果

0021

本発明に係る被覆工具は、以上のとおり、WC基超硬合金基体の表面部にZrO2メディアを用いてブラスト処理を行い、その後、硬質被覆層を形成した後の前記工具基体と前記硬質被覆層との界面の少なくともホーニング部からすくい部50μmまでの領域において、所定の厚みと幅を有する酸化ジルコニウム層の個数を規定することにより、従来課題とされた、Ti合金やステンレス合金等のフライス切削加工等の断続切削加工時に発生する、溶着に起因するチッピングの発生を抑制し、耐溶着性および耐チッピング性にすぐれたWC基超硬合金を基体とする表面被覆切削工具の提供を行うものである。

0022

つぎに、本発明の被覆工具およびその製造方法について、実施例により具体的に説明する。

0023

原料粉末として、いずれも0.5〜3μmの平均粒径を有するWC粉末TiC粉末、TiN粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr3C2粉末、VC粉末およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示す配合組成にて配合し、ワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体プレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度にて、1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、切刃稜線部にブラシを用いて、R:0.05mmのホーニング加工を施すことによりRPHT1248インサート形状のWC基超硬合金製の工具基体A〜Cを作製した。

0024

ついで、表4に示すように、前記工具基体A〜Cに対し、表2に示すA〜Kの条件にて、ZrO2メディアを用い、工具基体のすくい面に対してウエットブラスト処理を施し、酸化ジルコニウム層を形成した。
次に、酸化ジルコニウム層が形成された前記工具基体をアセトン中にて超音波洗浄等の通常の洗浄を行った後、アークイオンプレーティング装置内において、イオンボンバードメント洗浄を行い、ついで、物理蒸着法であるアークイオンプレーティング法を用い、表4に示す目的とする硬質被覆層に対応した成膜条件を表3より選択し、AlTiN、AlCrN、CrN等の単層あるいは複層からなる硬質被覆層を形成してなる本発明被覆工具1〜14を作製した。
表4には、作製された本発明被覆工具1〜14について、前記SEM−EDS法により測定された、前記工具基体と前記硬質被覆層の界面の少なくともホーニング部からすくい部50μmまでの領域における、厚み0.03〜1.8μm、幅0.1〜10μmの酸化ジルコニウム層の個数、および、前記X線応力測定法(sin2ψ法)を用い、X線回折装置にて測定された、工具基体の圧縮残留応力値を示す。また、あわせて、工具基体の刃先部の最表面部、および、前記刃先部の最表面部より深さ1mmの位置において、EBSD法(電子線後方散乱回折法)を用いた画像解析により求められた、面心立方晶構造を有するCo相(「fcc−Co」)と、六方晶構造を有するCo相(「hcp−Co」)とが占める総面積に対する六方晶構造を有するCo相(「hcp−Co」)のそれぞれの面積率と、その面積率差の値を示す。

0025

また、比較の目的で、前記で作製したWC基超硬合金製の工具基体Aに対して、表2にて比較例として示される条件、すなわち、ZrO2以外のメディアを用いたものや、メディアとしては、ZrO2を用いるものの、投射圧力等の処理条件が所定の範囲外であるものについて、すくい面に対するウエットブラストを実施し、比較例被覆工具1〜3を作製し、本発明被覆工具1〜14と同様に、前記工具基体と前記硬質被覆層の界面の前記の特定領域における、厚み0.03〜1.8μm、幅0.1〜10μmの酸化ジルコニウム層の個数、前記基体の圧縮残留応力値を測定し、表4に示す。また、あわせて、工具基体の刃先部の最表面部、および、前記刃先部の最表面部より深さ1mmの位置において、EBSD法(電子線後方散乱回折法)を用いた画像解析により求められた、面心立方晶構造を有するCo相(「fcc−Co」)と、六方晶構造を有するCo相(「hcp−Co」)とが占める総面積に対する六方晶構造を有するCo相(「hcp−Co」)のそれぞれの面積率と、その面積率差の値についても示す。

0026

0027

0028

0029

0030

つぎに、前記本発明切削工具1〜14および前記比較例切削工具1〜3について、以下の切削条件Aおよび切削条件Bにて切削試験を実施した。
<切削条件A>
被削材: Ti−6Al−4V合金ブロック熱処理黒皮
切削速度: 40m/分
一刃送り: 0.3mm/t
切込深さ: 3.0mm
切削幅: 38mm
切削時間: 10分
以上の条件にて湿式切削試験

<切削条件B>
被削材 : Ti−6Al−4V合金ブロック(黒皮なし)
切削速度: 40m/分
一刃送り: 0.5mm/t
切込深さ: 3.0mm
切削幅 : 38mm
切削時間: 10分
以上の条件にて湿式切削試験。

上記切削試験において、溶着の発生の有無、チッピング発生の有無を観察し、表5に切削試験結果を示す。

0031

実施例

0032

表4および表5に示される結果からも明らかなように、本発明被覆工具1〜14は、工具基体と前記硬質被覆層との界面の少なくともホーニング部からすくい部50μmまでの領域において、所定の厚みと幅を有する酸化ジルコニウム層を複数存在させることにより、耐溶着性にすぐれ、そのため、溶着に起因するチッピングや膜の剥離を回避する特性を有するものである。
さらに、基体において所定の圧縮残留応力値を有するものにおいては、圧縮応力の効果により、不安定なワークの切削に対し、チッピング発生頻度を低下させるという、すぐれた耐チッピング性を発揮することができた。
他方、工具基体の刃先部の最表面部より深さ1mmの位置に対して、刃先部の最表面部における六方晶構造を有するCo層の面積率を高めることにより、耐塑性変形性を向上することができ、難削材の高速切削加工等において刃先に蓄熱が多い場合においても、チッピングの発生頻度を低下させるというすぐれた効果を発揮することができた。
これに対して、比較例被覆工具1〜3では、所定のウエットブラスト処理条件を満たしておらず、所望の酸化ジルコニウム層が得られていないため、耐溶着性、および、耐チッピング性に関して、十分な切削性能を有するものではなかった。

0033

本発明に係る表面被覆切削工具は、Ti合金やステンレス合金等の溶着を発生しやすい被削材のフライス切削等の断続切削加工においても、すぐれた切削性能を発揮するものであるから、切削装置高性能化並びに切削加工の省力化および省エネ化による低コスト化に対しても十分満足に対応できるものである。

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