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技術 半導体素子、半導体装置、及び製造方法

出願人 NTTエレクトロニクス株式会社
発明者 清水誠伊藤弘樹石橋忠夫小高勇
出願日 2018年11月27日 (2年2ヶ月経過) 出願番号 2018-221315
公開日 2019年4月11日 (1年10ヶ月経過) 公開番号 2019-057724
状態 特許登録済
技術分野 ダイオード アンテナの細部
主要キーワード 逆放射 ミキシングデバイス 電気接続ライン 受信検波回路 電気接続線 電子バリア RF入力回路 ゼロバイアス状態
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図面 (13)

課題

バリア高さφBnを調整でき、高周波帯RF電気信号検波感度を向上させるためのゼロバイアス動作及びアンテナインピーダンスとの整合を可能とした半導体素子、その製造方法及びそれを備える半導体装置を提供することを目的とする。

解決手段

本発明に係る半導体素子は、InGaAs(n形InGaAs層2)の濃度を、上で述べた「バリア高さがバイアスにより変化」することを防止する範囲を越えて、深く縮退する範囲まで意図的に増大させ、電子フェルミ準位(EF)をInGaAs(n形InGaAs層2)のバンド端からInP(InP空乏化層3)のバンド端の方向に上昇させる。

概要

背景

ミリ波からTHz周波数帯の様々な無線ステムにおいて、そのRFキャリアに含まれる信号を検出するための手段として、非線形デバイスが用いられる。Schottky Barrier Diode(SBD)は典型的なデバイスの一つであり、包絡線検波(envelope−detection)、可変容量動作(Varactor Operation)を利用したミキシングデバイスとして機能する。ここでは包絡線検波について背景を述べる。

SBDの電流電圧(I−V)特性は、飽和電流(Saturation Current)をISとして、数1で表現できる。



VT熱電圧(thermal voltage = kT/q: kはボルツマン常数、Tは絶対温度、qは電子電荷)であり、室温で25mVの値となる。
このI−V特性非線形性を利用することにより、RF電気信号入力でSBD端子誘起される電圧VRFにより検波出力(=平均電流)を発生させることができる。

図11は、ダイオード等価回路である。図12は、当該ダイオードの電流電圧(I−V)特性、高周波入力に対する検波I−V特性を模式的に示した図である。検波I−V特性のカーブは、高周波信号無入力時のI−V特性を負電圧側にシフトされたI−V特性となり、検波出力回路負荷抵抗に従って動作点Pが決まる。
小信号入力時、SBDのインピーダンス実数部(=微分抵抗値)は、高周波信号無入力時のI−V特性の電圧微分であり、



となる。2乗検波の一般論から、シリーズ抵抗RSと接合容量Cjを無視し、入力ラインとRDのインピーダンス整合成立、すなわち、電力の結合が100%とした場合、入力電力PRFに対する検波電流感度は、RDが変化しても、ゼロ電圧動作時では1/VT(A/W)であり、ISに無依存の一定値を保つ。
電圧感度(=オープン出力条件)に関しては、インピーダンス整合状態では、1/IS(V/W)であり、ISが小さいほど電圧感度は高く、低速の変調信号の場合はこの検波電圧を測定することが多い。通常、SBDの感度性能として、電圧感度(V/W)が用いられる理由である。

一方、信号の変調高速の場合は、入力抵抗が比較的小さい帰還アンプを用いて出力を増幅するので、むしろ検波電流感度が重要である。典型的な検波動作として、RF信号同軸線路導波管線路から直接ゼロ電圧動作のSBDに入力される場合を考える。それら入力線路特性インピーダンスZ0inputは、従来のSBDを用いるかぎり、ダイオード微分抵抗(RD)に比べはるかに小さい(Z0input << RD)。すなわち、整合条件は成立せず、SBDへのRF信号はほとんど反射して電力の結合が不十分の状態となっている。このインピーダンス不整合の際の検波電流感度は、インピーダンス整合時の値(1/VT)から
2(Z0input/RD)VT−1=2(Z0input×IS)VT−2
に低下する。この様な場合は、ISを上げること、言い換えると、(1)式の出力電流ISBDを適切な値に上げることが必要とされる。これは(2)式の関係から、RDを下げることに等しい。この様な理由のため、従来のISが小さいGaAs−SBDなどを使用する際には、バイアスを与えた条件((2)式においてVを大きくしてRDを小さくした条件)で検波回路を構成することになる。入力線路とSBDとの間にインピーダンス変換回路を挿入することにより、整合状態を改善することもできるが、これは動作帯域幅を制限することになるので、検波デバイスの広帯域特性犠牲となってしまう。

さらに、微弱な信号を検出する際には、電源ノイズの影響を抑制すべく、ゼロバイアスで動作させることが望ましい。バイアス回路が不要となることも利点である。ゼロバイアス状態で良好な感度を得るためには、(1)式のISを適切に上げる必要がある。言い換えると、数2においてV=0なのでRD=VT/ISとなり、RDが下がる状態である。しかしながら、最も典型的な化合物半導体のGaAsでSBDを製作するかぎり、ISは最適値よりも小さく、RDは入力ラインの実効的インピーダンスよりもかなり大きな値となる。

特に重要となるのは、数100GHz〜数THzまでのTHz帯で動作する広帯域受信器を構成する場合である。THz受信器は、一定のアンテナインピーダンス(Zo)を持つ純抵抗アンテナ直接接続することが多く、そのため整合回路を組み込むことが困難となる。例えば、半導体基板に形成した純抵抗アンテナのインピーダンスは約75Ωと低いので、インピーダンス整合が成立しにくく、その条件では検波電流出力はISに依存する傾向を持つ。この様なインピーダンス整合を取りにくい回路構成の場合、結合効率を確保するためにはRDをZoに近い値まで下げることが望ましい。

ここで、RDを下げるためには(2)式から明らかなようにISを大きくする必要がある。ISは、数3のように、SBDの接合面積(Sj)とSBDのバリア高さ(φBn)の関数である。



ここで、A*はリチャードソン常数、kはボルツマン常数、Tは温度(K)である。

ところが、広帯域受信器を構成する場合、周波数特性を確保するために接合面積Sjを小さくしてデバイスの接合容量(Cj)を小さくする必要があるので、φBnが一定(半導体材料同一)であれば必然的にISを大きくすることは困難となる傾向にある。結局、受信器に要求される動作帯域が上るほどISが下がることになり、ゼロバイアス動作にとって適正な状態から大きく離れ、ゼロバイアス動作の特性が劣化するという課題がある。

ISを大きくするためには、半導体材料を変えてSBDのバリア高さφBnを小さくする手段がある。例えば、一般的な半導体材料であるGaAsよりバリア高さφBnが小さくなる半導体材料としてInP格子整合したInGaAsPがある。図10は、InGaAsPを用いたSBD構造バンドダイアグラムを模式的に示すものである。低濃度InGaAsP層31にショトキバリア金属36が接触し、SBD構造を形成する。2層構成のn形のコンタクト層(33、34)とコンタクト電極35が接続される。なお、低濃度とは、「空乏化したときに当該層内で大きな電界変化を引き起こすような電荷が殆んど生じない程度にドナー又はアクセプタの濃度が低い状態」を意味する。すなわち、低濃度のInGaAsP層31は、他のいずれのドーピングされた層と比較してもドナー又はアクセプタの濃度が低く、当該層をノンドープとしてもダイオードの効果を得ることができる。

InGaAsPの中で最もSBDのバリアが小さくなるのはそのInP組成がゼロとなるInGaAsである。しかしながら、InGaAsとしても電子バリアφBnは0.2〜0.25V程度であり、また、動作周波数が上がるほど、要求されるSjは小さくなる。結局、数100GHz以上の高周波動作を目的とするSBDの場合、所望のISを得られるほどφBnを低下させることはできない。Univ. Darmstadtのグループの例では、THz周波数帯動作を目的に製作されたInGaAs−SBDの微分抵抗は、0VでRD=4.7kΩと報告されており(例えば、非特許文献1を参照。)、そのRDから計算されるISは約5μAである。このRDは依然として典型的な純抵抗アンテナのインピーダンス(約75Ω)よりもかなり大きいことがわかる。

金属と半導体からなるSBDではなく、半導体ヘテロ構造を利用したダイオード(ヘテロバリアダイオード[HBD:Hetero Barrier Diode])が報告されている(非特許文献2を参照。)。非特許文献2では、n形InGaAs/n形InPからなるisotype接合は、ISを決めるφBnが200meVとなることが示されている。しかしながら、このφBnはInGaAs−SBDのφBnと同等であり、ISの増大は見込めない。

単結晶状態半金属(semimetal)と半導体とのヘテロ構造を利用したダイオードも報告されている(非特許文献3を参照。)。上記の半金属/半導体ダイオードは、半金属ErAsとInAlGaAs[組成はInPに格子整合の条件で、(In0。52Al0。48As)x( In0。53Ga0。47As)1−x]との接合からなり、x=0の条件:ErAs/InGaAsの接合は最小のバリア高さとしてφBn=150meVと報告されている。しかしながら、実験的にはその様な小さなφBnを持つダイオードの特性は良好ではなく、設計指針は必ずしも明らかにされてはいない。

以上の説明のように、ミリ波から数THz波までの周波数帯でゼロバイアス動作させるSBDもしくは半導体ヘテロ構造ダイオードの高性能化には、電流感度を上げ、同時に動作点の微分抵抗値RDを適切な値とするために飽和電流ISを現在のデバイスより大きくする必要がある。しかしながら、報告されているInGaAs−SBDは依然としてφBnが大きいために飽和電流ISと微分抵抗値RDを最適化することはできず、ISを増大する意図をもって製作されφBnの小さなErAs/InAlGaAsヘテロ構造を用いたダイオード(非特許文献3)でも、その効果は認められていない。

概要

バリア高さφBnを調整でき、高周波帯のRF電気信号の検波感度を向上させるためのゼロバイアス動作及びアンテナインピーダンスとの整合を可能とした半導体素子、その製造方法及びそれを備える半導体装置を提供することを目的とする。本発明に係る半導体素子は、InGaAs(n形InGaAs層2)の濃度を、上で述べた「バリア高さがバイアスにより変化」することを防止する範囲を越えて、深く縮退する範囲まで意的に増大させ、電子フェルミ準位(EF)をInGaAs(n形InGaAs層2)のバンド端からInP(InP空乏化層3)のバンド端の方向に上昇させる。

目的

本発明は、バリア高さφBnを調整でき、高周波帯のRF電気信号の検波電流感度をゼロバイアス動作時に向上させ、同時にアンテナインピーダンスとの整合を可能とした半導体素子、その製造方法及びそれを備える半導体装置を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

アノード側からカソード側へ、n形の第1半導体層、第2半導体層、n形の第3半導体層の順で積層され、前記第1半導体層と前記第2半導体層とがヘテロ接合である積層ダイオード構造を備える半導体素子の製造方法であって、前記第1半導体層をInGaAsとし、前記第2半導体層をInPとし、前記ヘテロ接合の面積をSj(μm2)としたとき、前記第1半導体層の電子濃度ne(cm−3)を数式C1で定めることを特徴とする製造方法。

請求項2

アノード側からカソード側へ、n形の第1半導体層、第2半導体層、n形の第3半導体層の順で積層され、前記第1半導体層と前記第2半導体層とがヘテロ接合である積層ダイオード構造を備える半導体素子であって、前記第1半導体層はInGaAsであり、前記第2半導体層はInPであり、前記ヘテロ接合の面積をSj(μm2)としたとき、前記第1半導体層の電子濃度ne(cm−3)が数式C1であることを特徴とする半導体素子。

請求項3

前記積層ダイオード構造は、前記第1半導体層のアノード側に積層されるn形の第4半導体層と、前記第3半導体層のカソード側に積層されるn形の第5半導体層と、をさらに備え、半絶縁性半導体基板に、前記第5半導体層を接するように前記積層ダイオード構造が形成されることを特徴とする請求項2に記載の半導体素子。

請求項4

アノード電極カソード電極をさらに備え、前記アノード電極は、前記第4半導体層の前記第2半導体層と反対側に接しており、前記第5半導体層は、積層方向から見た面積が前記第3半導体層の面積より大きく、前記カソード電極は、前記第5半導体層の前記第3半導体層側、且つ前記第3半導体層に非接触である位置に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の半導体素子。

請求項5

前記アノード電極は、積層方向から見た面積が前記第4半導体層の面積より大きいことを特徴とする請求項4に記載の半導体素子。

請求項6

前記第1半導体層は、積層方向から見た面積が前記第2半導体層の面積より大きいことを特徴とする請求項4又は5に記載の半導体素子。

請求項7

電気高周波入力回路電気出力回路とを接続する電気接続線と、前記カソード側を前記電気接続線に接続し、前記アノード側をグランドに接続し、前記電気高周波入力回路からの電気高周波検波した検波信号を前記電気出力回路へ出力する請求項2から6のいずれかに記載の半導体素子と、を備える半導体装置

請求項8

前記電気高周波入力回路がアンテナであること特徴とする請求項7に記載の半導体装置。

請求項9

前記電気高周波入力回路が前記半絶縁性半導体基板上に形成された平面アンテナであること特徴とする請求項3から6のいずれかを引用する請求項8に記載の半導体装置。

技術分野

0001

本発明は、複数の半導体層を積層して形成した半導体素子、その製造方法及びそれを備える半導体装置に関する。

背景技術

0002

ミリ波からTHz周波数帯の様々な無線ステムにおいて、そのRFキャリアに含まれる信号を検出するための手段として、非線形デバイスが用いられる。Schottky Barrier Diode(SBD)は典型的なデバイスの一つであり、包絡線検波(envelope−detection)、可変容量動作(Varactor Operation)を利用したミキシングデバイスとして機能する。ここでは包絡線検波について背景を述べる。

0003

SBDの電流電圧(I−V)特性は、飽和電流(Saturation Current)をISとして、数1で表現できる。



VT熱電圧(thermal voltage = kT/q: kはボルツマン常数、Tは絶対温度、qは電子電荷)であり、室温で25mVの値となる。
このI−V特性非線形性を利用することにより、RF電気信号入力でSBD端子誘起される電圧VRFにより検波出力(=平均電流)を発生させることができる。

0004

図11は、ダイオード等価回路である。図12は、当該ダイオードの電流電圧(I−V)特性、高周波入力に対する検波I−V特性を模式的に示した図である。検波I−V特性のカーブは、高周波信号無入力時のI−V特性を負電圧側にシフトされたI−V特性となり、検波出力回路負荷抵抗に従って動作点Pが決まる。
小信号入力時、SBDのインピーダンス実数部(=微分抵抗値)は、高周波信号無入力時のI−V特性の電圧微分であり、



となる。2乗検波の一般論から、シリーズ抵抗RSと接合容量Cjを無視し、入力ラインとRDのインピーダンス整合成立、すなわち、電力の結合が100%とした場合、入力電力PRFに対する検波電流感度は、RDが変化しても、ゼロ電圧動作時では1/VT(A/W)であり、ISに無依存の一定値を保つ。
電圧感度(=オープン出力条件)に関しては、インピーダンス整合状態では、1/IS(V/W)であり、ISが小さいほど電圧感度は高く、低速の変調信号の場合はこの検波電圧を測定することが多い。通常、SBDの感度性能として、電圧感度(V/W)が用いられる理由である。

0005

一方、信号の変調高速の場合は、入力抵抗が比較的小さい帰還アンプを用いて出力を増幅するので、むしろ検波電流感度が重要である。典型的な検波動作として、RF信号同軸線路導波管線路から直接ゼロ電圧動作のSBDに入力される場合を考える。それら入力線路特性インピーダンスZ0inputは、従来のSBDを用いるかぎり、ダイオード微分抵抗(RD)に比べはるかに小さい(Z0input << RD)。すなわち、整合条件は成立せず、SBDへのRF信号はほとんど反射して電力の結合が不十分の状態となっている。このインピーダンス不整合の際の検波電流感度は、インピーダンス整合時の値(1/VT)から
2(Z0input/RD)VT−1=2(Z0input×IS)VT−2
に低下する。この様な場合は、ISを上げること、言い換えると、(1)式の出力電流ISBDを適切な値に上げることが必要とされる。これは(2)式の関係から、RDを下げることに等しい。この様な理由のため、従来のISが小さいGaAs−SBDなどを使用する際には、バイアスを与えた条件((2)式においてVを大きくしてRDを小さくした条件)で検波回路を構成することになる。入力線路とSBDとの間にインピーダンス変換回路を挿入することにより、整合状態を改善することもできるが、これは動作帯域幅を制限することになるので、検波デバイスの広帯域特性犠牲となってしまう。

0006

さらに、微弱な信号を検出する際には、電源ノイズの影響を抑制すべく、ゼロバイアスで動作させることが望ましい。バイアス回路が不要となることも利点である。ゼロバイアス状態で良好な感度を得るためには、(1)式のISを適切に上げる必要がある。言い換えると、数2においてV=0なのでRD=VT/ISとなり、RDが下がる状態である。しかしながら、最も典型的な化合物半導体のGaAsでSBDを製作するかぎり、ISは最適値よりも小さく、RDは入力ラインの実効的インピーダンスよりもかなり大きな値となる。

0007

特に重要となるのは、数100GHz〜数THzまでのTHz帯で動作する広帯域受信器を構成する場合である。THz受信器は、一定のアンテナインピーダンス(Zo)を持つ純抵抗アンテナ直接接続することが多く、そのため整合回路を組み込むことが困難となる。例えば、半導体基板に形成した純抵抗アンテナのインピーダンスは約75Ωと低いので、インピーダンス整合が成立しにくく、その条件では検波電流出力はISに依存する傾向を持つ。この様なインピーダンス整合を取りにくい回路構成の場合、結合効率を確保するためにはRDをZoに近い値まで下げることが望ましい。

0008

ここで、RDを下げるためには(2)式から明らかなようにISを大きくする必要がある。ISは、数3のように、SBDの接合面積(Sj)とSBDのバリア高さ(φBn)の関数である。



ここで、A*はリチャードソン常数、kはボルツマン常数、Tは温度(K)である。

0009

ところが、広帯域受信器を構成する場合、周波数特性を確保するために接合面積Sjを小さくしてデバイスの接合容量(Cj)を小さくする必要があるので、φBnが一定(半導体材料同一)であれば必然的にISを大きくすることは困難となる傾向にある。結局、受信器に要求される動作帯域が上るほどISが下がることになり、ゼロバイアス動作にとって適正な状態から大きく離れ、ゼロバイアス動作の特性が劣化するという課題がある。

0010

ISを大きくするためには、半導体材料を変えてSBDのバリア高さφBnを小さくする手段がある。例えば、一般的な半導体材料であるGaAsよりバリア高さφBnが小さくなる半導体材料としてInP格子整合したInGaAsPがある。図10は、InGaAsPを用いたSBD構造バンドダイアグラムを模式的に示すものである。低濃度InGaAsP層31にショトキバリア金属36が接触し、SBD構造を形成する。2層構成のn形のコンタクト層(33、34)とコンタクト電極35が接続される。なお、低濃度とは、「空乏化したときに当該層内で大きな電界変化を引き起こすような電荷が殆んど生じない程度にドナー又はアクセプタの濃度が低い状態」を意味する。すなわち、低濃度のInGaAsP層31は、他のいずれのドーピングされた層と比較してもドナー又はアクセプタの濃度が低く、当該層をノンドープとしてもダイオードの効果を得ることができる。

0011

InGaAsPの中で最もSBDのバリアが小さくなるのはそのInP組成がゼロとなるInGaAsである。しかしながら、InGaAsとしても電子バリアφBnは0.2〜0.25V程度であり、また、動作周波数が上がるほど、要求されるSjは小さくなる。結局、数100GHz以上の高周波動作を目的とするSBDの場合、所望のISを得られるほどφBnを低下させることはできない。Univ. Darmstadtのグループの例では、THz周波数帯動作を目的に製作されたInGaAs−SBDの微分抵抗は、0VでRD=4.7kΩと報告されており(例えば、非特許文献1を参照。)、そのRDから計算されるISは約5μAである。このRDは依然として典型的な純抵抗アンテナのインピーダンス(約75Ω)よりもかなり大きいことがわかる。

0012

金属と半導体からなるSBDではなく、半導体ヘテロ構造を利用したダイオード(ヘテロバリアダイオード[HBD:Hetero Barrier Diode])が報告されている(非特許文献2を参照。)。非特許文献2では、n形InGaAs/n形InPからなるisotype接合は、ISを決めるφBnが200meVとなることが示されている。しかしながら、このφBnはInGaAs−SBDのφBnと同等であり、ISの増大は見込めない。

0013

単結晶状態半金属(semimetal)と半導体とのヘテロ構造を利用したダイオードも報告されている(非特許文献3を参照。)。上記の半金属/半導体ダイオードは、半金属ErAsとInAlGaAs[組成はInPに格子整合の条件で、(In0。52Al0。48As)x( In0。53Ga0。47As)1−x]との接合からなり、x=0の条件:ErAs/InGaAsの接合は最小のバリア高さとしてφBn=150meVと報告されている。しかしながら、実験的にはその様な小さなφBnを持つダイオードの特性は良好ではなく、設計指針は必ずしも明らかにされてはいない。

0014

以上の説明のように、ミリ波から数THz波までの周波数帯でゼロバイアス動作させるSBDもしくは半導体ヘテロ構造ダイオードの高性能化には、電流感度を上げ、同時に動作点の微分抵抗値RDを適切な値とするために飽和電流ISを現在のデバイスより大きくする必要がある。しかしながら、報告されているInGaAs−SBDは依然としてφBnが大きいために飽和電流ISと微分抵抗値RDを最適化することはできず、ISを増大する意図をもって製作されφBnの小さなErAs/InAlGaAsヘテロ構造を用いたダイオード(非特許文献3)でも、その効果は認められていない。

先行技術

0015

D.Schoeherr et al.、“Extremely Broadband Characterization of a Schottky Diode Based THz Detector”, IRMMW−2010, pp.1−2, 2010.
S.R.Forrest and O.K.Kim,“An n−In0.53Ga0.47As/n−InPrectifiers”,J.Appl.Phys. Vol.52, pp.5838−5842,1981.
E.R.Brown et al.,“Advances in Schottky Rectifier Performance”,IEEE Microwave Magazine, June 2007, pp.54−59, 2007.
N. Kashio et al., “High−Speed and High−Reliability InP−BasedHBTs with a Novel Emitter”, IEEE Trans. Elec. Dev. Vol.57, NO.2, pp.373−379, 2010.

発明が解決しようとする課題

0016

上述のように、高い周波数帯、特にTHz帯でゼロバイアス動作させる検波デバイスの性能を上げるには、動作点の飽和電流ISを現在のデバイスより大きく(=微分抵抗値RDを小さく)する必要がある。しかしながら、従来のSBDでは、その目的に必要となる小さなバリア高さφBnを実現できないこと、また、半導体ヘテロ構造ダイオードではSBDと比べてもφBnが十分に低下していないこと、また、その設計指針が明らかにされていない。つまり、従来の半導体検波デバイスは、ショットキーバリア高さφBnを低減できず、高周波帯のRF電気信号の検波感度を向上させるためのゼロバイアス動作及びアンテナインピーダンスとの整合が困難という課題がある。

0017

そこで、前記課題を解決するために、本発明は、バリア高さφBnを調整でき、高周波帯のRF電気信号の検波電流感度をゼロバイアス動作時に向上させ、同時にアンテナインピーダンスとの整合を可能とした半導体素子、その製造方法及びそれを備える半導体装置を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0018

上記目的を達成するために、本発明は、半導体素子内のヘテロ接合を成す半導体層において、電子親和力の大きい側の半導体層の電子濃度を調整することで、バリア高さφBnを調整することとした。なお、本明細書では、半導体素子とはヘテロバリアダイオード(HBD)を意味する。

0019

具体的には、本発明に係る半導体素子の製造方法は、アノード側からカソード側へ、n形の第1半導体層、前記第1半導体層よりも電子親和力の小さな第2半導体層、n形の第3半導体層の順で積層され、前記第1半導体層と前記第2半導体層とがヘテロ接合である積層ダイオード構造を備える半導体素子の製造方法であって、
前記半導体素子のアノードとカソードの間に所定の高周波信号を入力して検波した検波出力電流を最大とするように前記第1半導体層のドーピング量を調整することを特徴とする。

0020

図2バンドダイアグラムにおいて、符号2で示した層が第1半導体層に相当し、n形のドーピング濃度を上げるに従い、フェルミ準位Efは上昇する。ここで、第2の半導体層との伝導帯不連続ΔECは一定であるから、バリア高さエネルギーは、
[数4]
qφBn=ΔEC−(Ef−EC) (4)
に従って変化することになる。ここで、Ef−ECは第1半導体層の伝導帯端から測った値である。すなわち、ドーピング濃度によりφBnを調整することができる。

0021

本発明に係る半導体素子の製造方法は、ヘテロ接合を含む複数の半導体層を積層し、ダイオード構造を作成するときに、ヘテロ接合させた半導体層において、電子親和力の大きい側の半導体層(第1半導体層)の最適電子濃度を予め取得しておく。最適電子濃度の取得手法は、所定のRF信号を入力した時に検波電流が最大となる電子濃度である。つまり、最適なバリア高さφBnを検波電流の大きさを指標として決定する。従って、本発明は、バリア高さφBnを調整でき、高周波帯のRF電気信号の検波電流感度をゼロバイアス動作時に向上させ、同時にアンテナインピーダンスとの整合を可能とした半導体素子の製造方法を提供することができる。
なお、第1半導体層の電子濃度でヘテロバリア高さφBnを調整することで、HBDの微分抵抗値RDをアンテナインピーダンス程度まで調整できることは、当業者に知られていない。

0022

本発明に係る半導体素子の製造方法は、アノード側からカソード側へ、n形の第1半導体層、前記第1半導体層よりも電子親和力の小さな第2半導体層、n形の第3半導体層の順で積層され、前記第1半導体層と前記第2半導体層とがヘテロ接合である積層ダイオード構造を備える半導体素子の製造方法であって、
前記半導体素子を、前記半導体素子のアノードとカソードの間に所定の高周波信号を入力して検波する検波回路とする場合に、
前記検波回路の高周波信号入力側の線路インピーダンス、もしくは純抵抗のアンテナインピーダンスと、前記検波回路の検波出力に接続されるアンプ入力インピーダンスがあらかじめ与えられた時、前記検波出力の電流を最大とするように前記第1半導体層のドーピング量を調整することを特徴とする。

0023

本製造方法は、半導体素子を検波回路に使用するときの高周波信号入力側の線路インピーダンス、もしくは純抵抗のアンテナインピーダンスと、検波回路の検波出力に接続されるアンプの入力インピーダンスにおいて、検波電流が最大となるように第1半導体層のドーピング量を調整することが好ましい。

0024

また、本発明に係る半導体素子の製造方法は、アノード側からカソード側へ、n形の第1半導体層、第2半導体層、n形の第3半導体層の順で積層され、前記第1半導体層と前記第2半導体層とがヘテロ接合である積層ダイオード構造を備える半導体素子の製造方法であって、
前記第1半導体層をInGaAsとし、
前記第2半導体層をInPとし、
前記ヘテロ接合の面積をSj(μm2)としたとき、前記第1半導体層の電子濃度ne(cm−3)を数式C1で定めることを特徴とする製造方法。

0025

数C1について説明する。まず、数3は、温度Tが一定として扱うと、ISとSjおよびφBnとの3つのパラメータの関係である。ここで、ISは、最適な検波電流を得る条件により一義的に決まるものであり、用いる周波数に応じてSjが与えられた時、求めるべきパラメータはφBnである。ここで、数3を見ると、log(Sj)もしくはlog[sqr.(Sj)]とφBnは線形結合の関係にあることが理解される。

0026

一方、数4から、用いるヘテロ構造がきまれば、ΔECは一定であるので、φBnを決めることはEfを決めることに他ならない。さらに、実験的に、Efの上昇分とキャリア濃度neとの関係がいくつかの半導体材料についてすでに測定されており、一定濃度以下のneの範囲では、Efとneは線形の関係にあることがわかっている。結局、neとlog[sqr.(Sj)]は線形の関係にあることが理解される。

0027

従って、Efの上昇分とキャリア濃度neとの関係が既知の場合、上で述べた様なダイオード構造を持つ半導体素子を実際に製作して「検波電流の最大値」から最適なneを求めることは、必ずしも必要ない。InGaAsの場合について非特許文献4のデータを基に、(Ef−EC)/q=1.2×10−20×neと推定すると、それをInP/InGaAsヘテロ接合の場合について適用し、具体的な数値で表現したのが、数C1である。なお、数C1の導出は後述する[Appendix]に示した。

0028

さらに、本発明に係る半導体素子は、アノード側からカソード側へ、n形の第1半導体層、第2半導体層、n形の第3半導体層の順で積層され、前記第1半導体層と前記第2半導体層とがヘテロ接合である積層ダイオード構造を備える半導体素子であって、
前記第1半導体層はInGaAsであり、
前記第2半導体層はInPであり、
前記ヘテロ接合の面積をSj(μm2)としたとき、前記第1半導体層の電子濃度ne(cm−3)が数式C1であることを特徴とする。

0029

本発明に係る半導体素子及びその製造方法は、ヘテロ接合を含む複数の半導体層を積層し、ダイオード構造を作成するときに、ヘテロ接合させた半導体層において、電子親和力の大きい側の半導体層(第1半導体層)の最適電子濃度をヘテロ接合の接合面積の設計値に基づいて決定する。従って、本発明は、バリア高さφBnを調整でき、高周波帯のRF電気信号の検波電流感度をゼロバイアス動作時に向上させ、同時にアンテナインピーダンスとの整合を可能とした半導体素子及びその製造方法を提供することができる。

0030

本発明に係る半導体素子の前記積層ダイオード構造は、
前記第1半導体層のアノード側に積層されるn形の第4半導体層と、
前記第3半導体層のカソード側に積層されるn形の第5半導体層と、
をさらに備え、
半絶縁性半導体基板に、前記第5半導体層を接するように前記積層ダイオード構造が形成されることを特徴とする。

0031

本発明に係る半導体素子は、アノード電極カソード電極をさらに備え、
前記アノード電極は、前記第4半導体層の前記第2半導体層と反対側に接しており、
前記第5半導体層は、積層方向から見た面積が前記第3半導体層の面積より大きく、
前記カソード電極は、前記第5半導体層の前記第3半導体層側、且つ前記第3半導体層に非接触である位置に配置されていることを特徴とする。

0032

本発明に係る半導体素子の前記アノード電極は、積層方向から見た面積が前記第4半導体層の面積より大きいことを特徴とする。アノード電極の面積を大きくすることで配線を容易にすることができる。

0033

本発明に係る半導体素子の前記第1半導体層は、積層方向から見た面積が前記第2半導体層の面積より大きいことを特徴とする。ダイオードの接合容量を小さくして周波数特性を向上させることができる。

0034

本発明に係る半導体装置は、
電気高周波入力回路電気出力回路とを接続する電気接続線と、
前記カソード側を前記電気接続線に接続し、前記アノード側をグランドに接続し、前記電気高周波入力回路からの電気高周波を検波した検波信号を前記電気出力回路へ出力する前記半導体素子と、
を備える。
本半導体装置は、前述の半導体素子を備えている。従って、本発明は、バリア高さφBnを調整でき、高周波帯のRF電気信号の検波電流感度をゼロバイアス動作時に向上させ、同時にアンテナインピーダンスとの整合を可能とした半導体素子及びその製造方法を提供することができる。

0035

本発明に係る半導体装置は、前記電気高周波入力回路をアンテナとすることができる。

0036

本発明に係る半導体装置は、前記電気高周波入力回路を前記半絶縁性半導体基板上に形成された平面アンテナとすることができる。

発明の効果

0037

本発明は、バリア高さφBnを調整でき、高周波帯のRF電気信号の検波電流感度をゼロバイアス動作時に向上させ、同時にアンテナインピーダンスとの整合を可能とした半導体素子及びその製造方法を提供することができる。

図面の簡単な説明

0038

本発明に係る半導体素子の構造を説明する図である。
本発明に係る半導体素子のバンドダイヤグラムを説明する図である。
本発明に係る半導体素子の構造を説明する図である。
本発明に係る半導体素子の構造を説明する図である。
本発明に係る半導体装置(検波回路)を説明する図である。
本発明に係る半導体装置(検波回路)の等価回路を説明する図である。
本発明に係る半導体素子のバリア高さと周波数特性と説明する図である。
本発明に係る半導体素子の第1半導体層の電子濃度と本発明に係る半導体装置が出力する検波電流の関係を説明する図である。
本発明に係る半導体装置(検波回路)を説明する図である。
InGaAsPを用いたHBD構造バンドダイアグラムを説明する図である。
ダイオードの等価回路を説明する図である。
ダイオードの電流電圧(I−V)特性、高周波入力に対する検波I−V特性を模式的に示した図である。

実施例

0039

添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。

0040

(実施形態1)
図1は、本実施形態の半導体素子301の基本構成を説明する模式図である。各半導体層は、次の通りである。
1:高濃度n形InGaAsコンタクト層(第4半導体層)
2:電子濃度を要求に応じて調整したn形InGaAs層(第1半導体層)
3:低濃度のInP空乏化層(第2半導体層)
4:高濃度のn形InP層(第3半導体層)
5:高濃度n形InGaAsコンタクト層(第5半導体層)
6:アノード電極
7:カソード電極

0041

図2は、本実施形態の半導体素子のバンドダイアグラムである。フェルミレベル(EF)と電子濃度分布の様子(符号10)を合わせて図示してある。InGaAsの電子親和力はInPのそれよりも大きいので、図2のように、n形InGaAsコンタクト層1とn形InGaAs層2との間で、バンド配列(in band lineup)上で伝導帯不連続(ΔEC=240meV)が生じる。それに伴い、数4のInGaAs/InP接合の非対称電子エネルギーバリアqφBn=ΔEC−(Ef−EC)が生じる。InPからInGaAs側へのバリア高さは電圧に依存するが、InGaAsからInP側へのバリア高さは電圧による変化がほとんど生じない。このバリアにより整流特性(=非線形性)を持つダイオードを構成できることになる。

0042

InGaAs/InP界面のInGaAs(n形InGaAs層2)の電子濃度は、ヘテロ界面電子蓄積効果によるバリア高さφBnの電圧変化が小さくなる様に、高濃度することが望ましい。これは、濃度が低いと空乏化したInP(InP空乏化層3)の電界遮蔽するため、InGaAs側(n形InGaAs層2)の電荷の変化により、ヘテロ界面でのバリア高さφBn(=ΔEC−EF)がバイアスにより変化してしまうからである。

0043

本発明に係る半導体素子の思想は、InGaAs(n形InGaAs層2)の電子濃度を、上で述べた「バリア高さがバイアスにより変化」することを防止する範囲を越えて、深く縮退する範囲まで意図的に増大させ、電子フェルミ準位(EF)をInGaAs(n形InGaAs層2)のバンド端からInP(InP空乏化層3)のバンド端の方向に上昇させることである。この時のHBDのI−V特性は、理想的な場合、



で表すことができる。つまり、n形InGaAs層2の電子濃度neを変えてEFを上下させてバリア高さφBnを調整することで、HBDのI−V特性を変化させる(飽和電流ISと微分抵抗値RDを変化させる)ことができる。

0044

実験的にHBDのn形InGaAs層2の電子濃度neを最適化する手法の一つは、次の通りである。アノード側からカソード側へ、n形の第1半導体層、前記第1半導体層よりも電子親和力の小さな第2半導体層、n形の第3半導体層の順で積層され、前記第1半導体層と前記第2半導体層とがヘテロ接合であるダイオード構造を複数作成する。第1半導体層を積層するときにドーピング量を変化させることで各ダイオード構造の第1半導体層の電子濃度を変えておく。そして、これらのダイオード構造に所定のRF信号を入力した時の検波電流をそれぞれプロットし、その結果から検波電流が最大となる電子濃度を見つける。

0045

より具体的には、前記HBD素子を最適化する際、検波回路の高周波信号入力側の線路インピーダンス、もしくは純抵抗のアンテナインピーダンスと、検波出力に接続されるアンプの入力インピーダンスがあらかじめ与えられた時、高周波信号を入力して検波された出力電流を最大とするように第1半導体層のドーピング量を調整する。上記のようにドーピング量を変化させた複数のダイオード構造を作成し、これを検波回路として高周波信号入力側の線路インピーダンス、もしくは純抵抗のアンテナインピーダンスと、検波出力に接続されるアンプの入力インピーダンスを与え、所定のRF信号を入力した時の検波電流をそれぞれプロットし、その結果から検波電流が最大となる電子濃度を見つける。

0046

また、HBDを含む検波回路の構成が同一であれば、最適な飽和電流ISは一定の値となるから、ヘテロ接合の面積Sjに応じて、バリア高さφBnが変わる。このため、n形InGaAs層2の電子濃度neは、周波数特性上必要となるヘテロ接合の接合面積をSj(μm2)とした時、数C1を指標として決定する。

0047

この様にn形InGaAs層2の電子濃度neを決めると、典型的なアンテナインピーダンス(75Ω)に対して、35〜200Ωの広いアンプ入力ラインインピーダンス範囲で最良受信特性が得られることを見いだした。例えば、Sj=0.5μm2とすると、ne=1.3×1019(/cm3)となる。この条件では、フェルミレベルEFは伝導帯端から約160meV上昇する。その結果、実効的な電子に対する電子エネルギーバリアqφBn=ΔEC−EFは80meVと極めて低くなり、ISは従来のHBDに比較して約0.17mAと極めて高くなる。

0048

(実施形態2)
本実施形態の半導体素子は、図1の半導体素子301が半絶縁性半導体基板をさらに備える。具体的には、半絶縁性半導体基板に、前記第5半導体層を接するように前記積層ダイオード構造が形成される。そして、前記アノード電極は、前記第4半導体層の前記第2半導体層と反対側に接しており、前記第5半導体層は、積層方向から見た面積が前記第3半導体層の面積より大きく、前記カソード電極は、前記第5半導体層の前記第3半導体層側、且つ前記第3半導体層に非接触である位置に配置されている。

0049

図3及び図4は本実施形態の半導体素子302を説明する模式図であり、それぞれ、本半導体素子の平面図と断面図(A−A’断面)である。各半導体層は、次の通りである。
11:高濃度n形InGaAsコンタクト層(第4半導体層)
12:電子濃度を要求に応じて調整したn形InGaAs層(第1半導体層)
13:低濃度のInP空乏化層(第2半導体層)
14:高濃度のn形InP(第3半導体層)
15:高濃度n形InGaAsコンタクト層(第5半導体層)
16:アノード電極
17:カソード電極
18:半絶縁性半導体基板
19:配線金属
20:HBDの領域
符号11〜17は、図1の符号1〜7の層に対応する。

0050

このHBDを製作するには、MO−VPE法もしくはMBE法によりすべての半導体層をエピタキシャル成長し、その基板パタニング加工する。アノード電極16をパタニングしそれをマスクとして、その下の半導体層を化学エッチングすると、図4の断面に示した様な、オーバーハング形状を製作することができる。半導体層の接合サイズよりもアノード電極16のサイズを大きくできるので、配線金属19のパタニングを容易にする。n形InGaAs層12をマスクとして、低濃度のInP空乏化層13、高濃度のn形InP14を化学エッチングするので、さらに微細なサイズとなり、HBDの接合容量Cjを低減できる。

0051

(実施形態3)
図5及び図6は、本実施形態の半導体装置401を説明する図である。
半導体装置401は、電気高周波入力回路8Aと電気出力回路8Bとを接続する電気接続線9Aと、
前記カソード側を電気接続線9Aに接続し、前記アノード側をグランド9Bに接続し、電気高周波入力回路8Aからの電気高周波を検波した検波信号を電気出力回路8Bへ出力する前記半導体素子301と、を備える。各回路等は、次の通りである(実施形態1で説明したものを省略)。
8A:電気高周波(RF)入力回路
8B:電気出力回路
9A:電気接続ライン
9B:グランド
9C:RF電気信号入力ポート
9D:検波出力ポート

0052

半導体装置401は、半導体素子301のカソード電極7とアノード電極6との間に二つの電極端子対が形成されたものであり、電極端子対の一方に電気RF入力回路8A、他方に電気出力回路8Bが接続され、検波回路として機能する。

0053

電気RF入力回路8Aは、例えば伝送線路やアンテナである。電気RF信号が誘起する検波電圧と電流は、HBDの真正部(CjとRDの並列回路)に印可されるRF電圧と動作点とで支配されるので、一定のRF入力に対して、どの様なRF電圧がHBD真正部の両端に到達するかを見積もることにより、検波出力特性を評価できる。

0054

電気RF入力回路8Aが純抵抗アンテナ(インピーダンスZo=75Ω)である場合を考える。HBDにこの純抵抗アンテナが直接接続されたとすると、これは図6の等価回路で考えることができる。一定のRF入力31に対してRDに誘起される電圧を求める。

0055

図6の回路で、入力ラインのインピーダンスをZo=75Ω、Sj=0.5μm2、Cj=1.85fF、RS=10Ω、Rin=無限大(半導体装置の出力をオープン状態)を仮定する。一定のRF電力入力時、ISを変化(=InGaAsの電子濃度を変化)させた際に、HBDの微分抵抗RDに誘起されるRF電流(IRF)が、周波数でどの様に変わるか計算した[図7]。図7において、横軸はRF入力31の周波数、縦軸は微分抵抗RDに誘起されるRF電流(IRF)である。

0056

qφBn=63meVの場合、シリーズ抵抗RSの電圧降下は多少あるものの、RDがラインのインピーダンスにほぼ整合しているので、低周波領域では0dBに近い値となっている。一方、qφBn=80meV、qφBn=138meVと大きくするに従い、Zo<RDの不整合状態に向かうので、RDを流れる電流は低下し、検波電流もそれに直結して低下する。背景技術の節で述べた様に、インピーダンス整合が成立していれば、電流感度は不変である。すなわち、RDが大きくなりインピーダンスの不整合が大きくなることが、検波電流の低下をもたらすのである。なお、検波電流については、図8の説明で再度述べる。

0057

帯域(周波数特性)については、不整合時にCj・Zoで決まる状態から、RDが小さくなるに従ってCj・RDで決まる傾向に移行するので、qφBnが小さいほど有利である。3dB低下帯域(f−3dB)で見ると、qφBn=138meVで f−3dB=1.1THzが、qφBn=63meVでf−3dB=2.2THzに上昇することがわかる(図7のそれぞれの周波数特性上に記した○印)。

0058

前述の様に、現実高速信号を扱うシステムでは、検波出力は帰還アンプに接続されることが多く、その入力インピーダンス(Rin)は典型的には50Ωである。ここでは、検波電流出力を大きく取れることがS/N比を増大させる上で重要となる。

0059

n形InGaAs層2の電子濃度ne(=電子エネルギーバリアqφBn)を変化させた時に、検波出力電流がどの様に振舞うかを計算することができる。図8Aは、図6回路で、入力ラインのインピーダンスをZo=75Ω、Rin=50Ωとしている。図8Bでは、Zo=250Ω、Rin=500Ωとしている。これらの図で、横軸はn形InGaAs層2の電子濃度ne、縦軸はHBDから出力された検波電流のうち、Rinに出力される電流である。なお、RF入力31は−30dBmである。

0060

縦軸の検波電流は、RDを電源インピーダンスとする検波回路がRin部に出力する電流である。n形InGaAs層2のneが小さく、qφBnが大きいほどISも小さいので検波電流は小さくなる。一方、neが最適領域を超える様になると、RDがZoに比べ相対的に小さくなってしまう。この様な状態では入力高周波が反射し、(=整合状態が劣化してHBD端子電圧が低下)検波電流は低下する。この理由により、図8A及び図8Bの様に、Rin部の検波電流は、あるqφBn値、すなわち、あるInGaAsの電子濃度neでピークを持つことになる。シリーズ抵抗RSは、0Ωの場合と、現実的な値である10Ω及び20Ωの場合を示している。RSによるneの最適点の変動はあまり大きくはない。

0061

図8Aの無給電(=ゼロバイアス)動作の例ではne=1.3×1019(/cm3)付近に最適値(qφBn=80meVに相当)がある。このときの電子濃度neは、接合面積Sj=0.5μm2なので数C1により、RD=150Ω、IS=166μAに対応する。HBDの微分抵抗RDが、入力ラインのインピーダンスZo=75Ωに正確に整合した状態よりも少し高い状態で、検波電流出力が最大の値を与えることがわかる。

0062

図8Bの無給電(=ゼロバイアス)動作の例では、ne=1.0×1019(/cm3)付近に最適値がある。これらの例の様に、与えられた回路条件に従って、ある最適なneのピークが存在すること、また、数C1から推測される様に、neとlog[√Sj]が線形の関係を持つことが重要な点である。なお、式C1の説明の部分で述べたSjと最適なneについて、数値で表現された関係は、入力ラインのインピーダンスZo=75Ω、アンプの入力インピーダンスがRin=50Ωの場合(高速信号の受信検波回路)に相当する。

0063

(実施形態4)
図9は、本実施形態の半導体装置402を説明する図である。電気RF入力回路8Bとして平面ボータイアンテナが半導体装置に接続されている。各回路は次の通りである。
19:配線金属
20:HBDの領域
21:ボータイアンテナ金属
22:検波出力ライン(一方が電気接続線、他方がグランドに相当する。)
23:接続端
本実施形態のHBDの領域20とは、図3で説明したHBDの領域20である。

0064

図9で示したHBDの領域20から延長された配線金属19とボータイアンテナ金属21のパタン端が接続される。そして、伝送線路で回路を構成する場合、通常、接続端23に高周波を除去する高インピーダンスフィルタ回路を接続する。ボータイアンテナに入力された高周波信号は当該アンテナから逆放射される成分もあるが、高インピーダンスのフィルタ回路が接続された検波検出ライン22への結合が少ない。つまり、電気RF入力回路8Aであるアンテナ側から見ると、電気出力回路8Bが接続される検波出力ライン22は高域カットオフ状態にある。
一方、接続端23からアンテナ側を見ると、接続端23の周波数はボータイアンテナの帯域から外れるので低域カットオフ状態となる。
従って、半導体装置402は、図6で示した等価回路(電気RF入力回路8A及びHBDの領域20)と基本的に同じ回路形態であることがわかる。

0065

(効果)
以上述べた様に、本発明は 高い周波数帯、特にTHz周波数領域でゼロバイアス動作させる検波デバイスの検波電流出力と3dB帯域の性能を上げる技術を提供する。これは、従来のHBDに比べ、より低いバリア高さφBnを実現し、飽和電流ISを上げ、動作点の微分抵抗値RDをRF入力ラインのインピーダンスに対して整合状態に近づけることが基本であり、検波電流出力を最適に設定する設計手法である。半導体のみで構成されるダイオードであるがゆえ、SBDで問題となるバリア金属に由来する特性の不安定性の問題も改善され、均一な検波出力が要求されるアレー形センサを製作するのに都合が良い。

0066

[Appendix]
数C1の導出について説明する。
数3の両辺のlog( )を取る。



ここで、フェルミ準位の電子濃度依存性次式で仮定する。



Gは係数である。
また、接合面積をSj=Sjum×10−8(cm2)として、ミクロン単位表記にすると、次式のように表現できる。



InGaAs/InPヘテロ接合の場合、論文報告例からG=1.21×10−20と推測され、本出願で典型的な高速検波回路の場合:
・入力ラインのインピーダンス:Zo=75Ω
・アンプの入力インピーダンス:Rin=50Ω
の条件で最適となるのは、IS(optimum)=166μA(本文中に説明あり)となる。
また、VT=0.025、ΔEC=0.24/qを数A3に代入すると次式となる。



数A4は数C1に相当する。

0067

[付記]
以下は、本発明に係る、ミリ波からTHz周波数帯のRF電気信号を受信する半導体検波デバイス、より具体的にはゼロバイアスで動作する低雑音で高速な半導体検波デバイスを説明するものである。
本発明は、高周波帯でRF電気信号を受信する半導体検波デバイスに関するものであり、小さな接合容量でも、簡易な構造で飽和電流ISとゼロバイアス動作点の微分抵抗値RDを適切に設定し、検波受信デバイス受信感度の改善を可能とする手段を提供する。

0068

<1>:
第1のn形半導体と第2の半導体からなるヘテロ接合、第2の半導体に接してコンタクト層となる第3のn形半導体が配置された積層ダイオード構造を含み、第1のn形半導体への電気的接触を持つ電極端子、第3のn形半導体への電気的接触を持つ電極端子を有し、上記第1のn形半導体と第2の半導体からなるヘテロ接合の面積(Sjμm2)が所望の値として与えられた時、
一定のRF入力に対してその後段に接続される増幅器への検波電流入力を最大値にすべく、第1のn形半導体の電子濃度を調整して、その構造を決定することを特徴とする半導体素子。

0069

<2>:
上記<1>の範囲において、
第1のn形半導体をInGaAs、第2の半導体を低濃度のInPとし、
第1のn形半導体と第2の半導体からなるヘテロ接合の面積(Sjμm2)が与えられた時、
第1のn形半導体の電子濃度(ne)を、
ne=1.16×1019−9.5×1018×log[√Sj] /cm3
に従って決めることを特徴とする半導体素子。

0070

<3>:
上記<1>及び<2>の範囲において、上記積層ダイオード構造の上記第1のn形半導体の外側に接して第3のn形コンタクト層が接して配置され、上記第3のn形半導体の外側に接して第4のn形コンタクト層が配置され、各層が基板上に形成されたことを特徴とする半導体装置素子。

0071

<4>:
上記<1>、<2>及び<3>の範囲において、上記二つ電極端子対に、電気RF入力回路、及び検波出力回路が接続されることを特徴とする半導体装置。

0072

<5>:
上記<1>、<2>、<3>及び<4>の範囲において、電気RF入力回路が基板上に形成された平面アンテナ、もしくは立体アンテナであることを特徴とする半導体装置。

0073

301、302:半導体素子(HBD)
401、402:半導体装置

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