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技術 骨格筋特異的TRPV2ノックアウト非ヒト動物

出願人 国立大学法人岡山大学
発明者 片野坂友紀
出願日 2017年8月30日 (3年3ヶ月経過) 出願番号 2017-165196
公開日 2019年3月22日 (1年8ヶ月経過) 公開番号 2019-041600
状態 未査定
技術分野 動物の育種及び生殖細胞操作による繁殖 突然変異または遺伝子工学
主要キーワード ポリモーダル 筋変性疾患 骨格筋幹細胞 非ヒトモデル動物 受容器 組織形態 陽イオンチャネル 分化誘導能
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (9)

課題

骨格筋特異的にTRPV2(transient receptor potential, vanilloid family type 2)タンパク質の機能が抑制されてなる非ヒト動物を提供する。

解決手段

骨格筋特異的にTRPV2の機能を抑制した非ヒト動物による。より具体的には、骨格筋特異的にTRPV2をコードする遺伝子の全部又は一部の発現を抑制してなる非ヒト動物による。本発明の非ヒト動物によれば、TRPV2は筋の再生分化誘導等に重要な役割を果たすことが確認された。

概要

背景

Trp(transient receptor potential)は、哺乳類では29種類の遺伝子、6つのグループ(TRPC、TRPV、TRPM、TRPA、TRPML及びTRPP)からなるTRPスーパーファミリーを形成していることが知られている。いずれも形質膜を6回貫通する非特異的陽イオンチャネルであり、四量体として働くポリモーダル受容器である。TRPV2及びそのアゴニストの2APBの存在は公知であり、Ca2+チャネル電気生理学的性質を利用したTRPV1、TRPV2、TRPV3の測定系について報告がある。

TRPV2は生体に広く発現する分子であることは知られているが、その生理的、病態生理的役割については、不明な点が多い。TRPV2はストレッチ活性化Ca2+チャネルであり、正常組織では細胞内膜系に存在するが、筋ジストロフィー心筋症などの筋変性疾患に伴って細胞膜移行し、TRPV2の膜発現が上昇することが細胞内への過度なCa2+流入を引き起こし、細胞壊死悪性因子となることが報告されている(非特許文献1)。一方で、TRPV2をターゲットとした全身性ノックアウトマウスは、胎生致死であるために、生体にはなくてはならない分子であることがうかがえる(非特許文献2)。

しかしながら、従来は骨格筋組織特異的にTRPV2ノックアウト非ヒトモデル動物又はTRPV2の発現及び機能が抑制されてなる非ヒトモデル動物が作製されていないために、TRPV2の生理的な役割が不明で、骨格筋においてTRPV2が必須の分子であるのか、あるいはこの分子は筋生理に悪性に働くのかは不明であった。

概要

骨格筋特異的にTRPV2(transient receptor potential, vanilloid family type 2)タンパク質の機能が抑制されてなる非ヒト動物を提供する。骨格筋特異的にTRPV2の機能を抑制した非ヒト動物による。より具体的には、骨格筋特異的にTRPV2をコードする遺伝子の全部又は一部の発現を抑制してなる非ヒト動物による。本発明の非ヒト動物によれば、TRPV2は筋の再生分化誘導等に重要な役割を果たすことが確認された。

目的

本発明は、骨格筋特異的にTRPV2タンパク質の機能が抑制されてなる非ヒト動物を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

骨格筋特異的にTRPV2タンパク質の機能が抑制されてなる非ヒト動物

請求項2

骨格筋特異的にTRPV2遺伝子の全部又は一部の発現が抑制されており、骨格筋特異的にTRPV2タンパク質の機能が抑制されてなる、請求項1に記載の非ヒト動物。

請求項3

骨格筋特異的に発現可能なプロモーターが搭載されたベクターを用いて骨格筋特異的にTRPV2の全部又は一部の発現を抑制させる工程を含む、骨格筋特異的にTRPV2タンパク質の機能が抑制されてなる非ヒト動物の作製方法

請求項4

前記発現が抑制されるTRPV2の全部又は一部が、NCBI Reference Sequence: NP_035836.2に開示されるアミノ酸配列のうち、少なくとも第63番目〜第756番目のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の非ヒト動物の作製方法。

請求項5

骨格筋特異的にTRPV2の全部又は一部の発現を抑制させる工程が、Cre発現依存的遺伝子欠損ステムを用いてTRPV2をコードする遺伝子の全部又は一部をノックアウトする工程を含む、請求項4に記載の作製方法。

請求項6

TRPV2をコードする遺伝子の全部又は一部が、NCBI Reference Sequence: NP_035836.2に開示されるアミノ酸配列のうち、少なくとも第63番目〜第756番目のアミノ酸配列をコードする遺伝子である、請求項5に記載の作製方法。

請求項7

骨格筋特異的に発現可能なプロモーターが、MCK遺伝子プロモーター、myf5遺伝子プロモーター及びpax7遺伝子プロモーターから選択されるいずれかである、請求項3〜6のいずれかに記載の作製方法。

請求項8

請求項3〜7のいずれかに記載の作製方法により作製された、骨格筋特異的にTRPV2タンパク質の機能が抑制されてなる非ヒト動物。

請求項9

請求項1、2及び8のいずれかに記載の非ヒト動物を用いることを特徴とする、筋疾患治療剤スクリーニング方法

技術分野

0001

本発明は、骨格筋特異的にTRPV2タンパク質の機能が抑制されてなる非ヒト動物に関する。

背景技術

0002

Trp(transient receptor potential)は、哺乳類では29種類の遺伝子、6つのグループ(TRPC、TRPV、TRPM、TRPA、TRPML及びTRPP)からなるTRPスーパーファミリーを形成していることが知られている。いずれも形質膜を6回貫通する非特異的陽イオンチャネルであり、四量体として働くポリモーダル受容器である。TRPV2及びそのアゴニストの2APBの存在は公知であり、Ca2+チャネル電気生理学的性質を利用したTRPV1、TRPV2、TRPV3の測定系について報告がある。

0003

TRPV2は生体に広く発現する分子であることは知られているが、その生理的、病態生理的役割については、不明な点が多い。TRPV2はストレッチ活性化Ca2+チャネルであり、正常組織では細胞内膜系に存在するが、筋ジストロフィー心筋症などの筋変性疾患に伴って細胞膜移行し、TRPV2の膜発現が上昇することが細胞内への過度なCa2+流入を引き起こし、細胞壊死悪性因子となることが報告されている(非特許文献1)。一方で、TRPV2をターゲットとした全身性ノックアウトマウスは、胎生致死であるために、生体にはなくてはならない分子であることがうかがえる(非特許文献2)。

0004

しかしながら、従来は骨格筋組織特異的にTRPV2ノックアウト非ヒトモデル動物又はTRPV2の発現及び機能が抑制されてなる非ヒトモデル動物が作製されていないために、TRPV2の生理的な役割が不明で、骨格筋においてTRPV2が必須の分子であるのか、あるいはこの分子は筋生理に悪性に働くのかは不明であった。

先行技術

0005

J. Cell Biology; 161(5): 957-967 (2003)
J. Neuteoscience; 31(32): 11425-11436 (2011)

発明が解決しようとする課題

0006

本発明は、骨格筋特異的にTRPV2タンパク質の機能が抑制されてなる非ヒト動物を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0007

本願発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、骨格筋の筋幹細胞成熟筋等、骨格筋細胞の成熟・分化ステージに応じて機能的に作用するプロモーターを用いることで、骨格筋特異的にTRPV2の機能を抑制した非ヒト動物を作製することができ、本発明を完成した。

0008

すなわち本発明は、以下よりなる。
1.骨格筋特異的にTRPV2タンパク質の機能が抑制されてなる非ヒト動物。
2.骨格筋特異的にTRPV2遺伝子の全部又は一部の発現が抑制されており、骨格筋特異的にTRPV2タンパク質の機能が抑制されてなる、前項1に記載の非ヒト動物。
3.骨格筋特異的に発現可能なプロモーターが搭載されたベクターを用いて骨格筋特異的にTRPV2の全部又は一部の発現を抑制させる工程を含む、骨格筋特異的にTRPV2タンパク質の機能が抑制されてなる非ヒト動物の作製方法
4.前記発現が抑制されるTRPV2の全部又は一部が、NCBI Reference Sequence: NP_035836.2に開示されるアミノ酸配列のうち、少なくとも第63番目〜第756番目のアミノ酸配列を含む、前項3に記載の非ヒト動物の作製方法。
5.骨格筋特異的にTRPV2の全部又は一部の発現を抑制させる工程が、Cre発現依存的遺伝子欠損ステムを用いてTRPV2をコードする遺伝子の全部又は一部をノックアウトする工程を含む、前項4に記載の作製方法。
6.TRPV2をコードする遺伝子の全部又は一部が、NCBI Reference Sequence: NP_035836.2に開示されるアミノ酸配列のうち、少なくとも第63番目〜第756番目のアミノ酸配列をコードする遺伝子である、前項5に記載の作製方法。
7.骨格筋特異的に発現可能なプロモーターが、MCK遺伝子プロモーター、myf5遺伝子プロモーター及びpax7遺伝子プロモーターから選択されるいずれかである、前項3〜6のいずれかに記載の作製方法。
8.前項3〜7のいずれかに記載の作製方法により作製された、骨格筋特異的にTRPV2タンパク質の機能が抑制されてなる非ヒト動物。
9.前項1、2及び8のいずれかに記載の非ヒト動物を用いることを特徴とする、筋疾患治療剤スクリーニング方法

発明の効果

0009

本発明の骨格筋特異的にTRPV2の機能が抑制された非ヒト動物、より具体的には骨格筋特異的にTRPV2をコードする遺伝子の全部又は一部の発現を抑制してなる非ヒト動物によれば、TRPV2は筋の再生分化誘導等に重要な役割を果たすことが確認された。本発明の非ヒト動物によれば、骨格筋におけるTRPV2の生理的な役割を解明することができると考えられる。さらには、筋疾患に有効な治療剤のスクリーニングのために本発明の非ヒト動物を使用することができ、筋疾患に対する治療戦略の新たな方向性を提案することに貢献できる。

図面の簡単な説明

0010

骨格筋特異的TRPV2ノックアウト(KO)マウスの作製スキームを示す図である。(実施例1)
骨格筋の筋線維でのTRPV2の発現を確認した図である。(実験例1)
骨格筋特異的TRPV2KOマウスの体重に及ぼす影響を確認した図である。(実験例2)
骨格筋特異的TRPV2 KOマウスの運動能力に及ぼす影響を確認した図である。(実験例3)
骨格筋特異的TRPV2 KOマウスの筋線維の大きさに及ぼす影響を確認した図である。(実験例4)
骨格筋特異的TRPV2 KOマウスの筋線維の再生に及ぼす影響を確認した図である。(実験例5)
骨格筋特異的TRPV2 KOマウスの筋線維の再生能力に関し、骨格筋幹細胞の数に及ぼす影響を確認した図である。(実験例6)
骨格筋特異的TRPV2 KOマウスの骨格筋幹細胞の分化能に及ぼす影響を確認した図である。(実験例7)

0011

本発明の「骨格筋特異的にTRPV2タンパク質の機能が抑制されてなる」とは、文言通り骨格筋においてTRPV2タンパク質の機能が抑制されていることをいう。骨格筋特異的なTRPV2タンパク質の機能の抑制は、例えば骨格筋特異的にTRPV2遺伝子の全部又は一部の発現が抑制されていればよい。TRPV2遺伝子の一部の発現が抑制とは、TRPV2遺伝子の一部の発現が抑制されていることで発現したTRPV2の部分配列からなるタンパク質がTRPV2タンパク質としての機能が発揮しなければよい。TRPV2タンパク質を構成するアミノ酸配列は、NCBI Reference Sequence: NP_035836.2に開示される(配列番号1)。TRPV2タンパク質としての機能を発揮するためには、配列番号1に示すアミノ酸配列のうち特に第63番目〜第756番目のアミノ酸配列が重要と考えられる。そこで、本明細書において「TRPV2遺伝子の一部の発現が抑制されている」とは、配列番号1に示すアミノ酸配列のうち少なくとも第63番目〜第756番目のアミノ酸配列をコードする遺伝子の発現が抑制されていることが好適である。

0012

本発明の非ヒト動物は、上記骨格筋特異的にTRPV2タンパク質の機能が抑制されてなる非ヒト動物である。本発明における非ヒト動物としては、ヒト以外の哺乳動物が挙げられ、例えばウシサルブタイヌネコモルモットウサギラット、マウスなどが挙げられる。特にモルモット、ラット、マウスなどのげっ歯類の取扱いが容易であるため好ましく、中でもマウスが好ましい。その後PCR法サザンブロット法等により、対象遺伝子ターゲッティングされているか否かを確認することができる。PCRにおいて、プライマーは、例えばターゲティングベクターの外側のゲノムDNA領域上、及びターゲティングベクターの配列のうち薬剤耐性遺伝子上から設計することができる。サザンブロット解析は、例えば以下の通り行うことができる。ターゲティングベクターに含まれないゲノム領域を認識する1又は2種類のプローブを設計し、目的遺伝子ゲノムを含むクローンを適当な制限酵素で処理することにより得られるDNA断片と、上記プローブとのハイブリダイゼーションを行なうことにより、目的遺伝子の破壊の有無を確認することができる。

0013

本発明の骨格筋特異的にTRPV2タンパク質の機能が抑制されてなる非ヒト動物は、骨格筋特異的にTRPV2の全部又は一部の発現を抑制させることで作製することができる。骨格筋特異的なTRPV2の全部又は一部の発現抑制は、TRPV2をコードする遺伝子の全部又は一部が欠損しており、TRPV2の全部又は部分が欠損した発現タンパク質であって、その機能抑制されていればよい。TRPV2の全部又は一部の発現抑制とは、TRPV2をコードする遺伝子の少なくとも第63番目〜第756番目のアミノ酸配列をコードする遺伝子を標的とし、当該部分がノックアウト(KO)されていればよい。遺伝子KOの方法は、自体公知又は今後開発されるあらゆる方法を適用することができる。本発明では、骨格筋特異的に遺伝子がKOされていることが必要である。発現タンパク質の機能が全身的に抑制されると致死となるからである。そのため、骨格筋特異的に遺伝子KOする方法は、例えばDNA組換え酵素Cre発現依存的遺伝子欠損システムを利用することができる。具体的には以下の方法によることができる。

0014

TRPV2をコードする遺伝子の全部又は一部のKO非ヒト動物作製用F1動物を作製する。以降、本明細書において「TRPV2をコードする遺伝子の全部又は一部」を、欠損させたい遺伝子として「対象遺伝子」ともいう。対象遺伝子を欠損させるためのKO用ベクターを「ターゲッティングベクター」という。対象遺伝子のターゲッティングベクターは、相同組換えを起こさせた後の組換え体のスクリーニングが容易となるように構築することができる。例えば、ポジティブネガティブ選択をするために、ターゲッティングベクターに薬剤耐性遺伝子又は毒素遺伝子などの選択マーカーを連結してもよい。選択マーカー遺伝子は、ポジティブ選択用として例えばネオマイシン耐性遺伝子(neo)、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子テトラサイクリン耐性遺伝子などを使用することができ、ネガティブ選択用として例えばヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子(HSV-tk)、ジフテリア毒素A遺伝子などを使用することができる。上記の方法により作製したターゲッティングベクターを用いて、相同組換えを行う。現在確立されている遺伝子ターゲティング法では、KO非ヒト動物を作製する場合には、例えばES細胞iPS細胞等の多能性幹細胞を使用することができる。

0015

相同組換えを起こさせるために、ターゲティングベクターを多能性幹細胞に導入する。ターゲティングベクターを細胞に導入する方法としては、例えばエレクトロポレーション法リン酸カルシウム法、DEAE-デキストラン法、リポソーム法等の自体公知の方法又は今後開発されるあらゆる方法を用いることができる。

0016

バクテリオファージP1由来組換えシステムであるCre-loxPシステムを使用を用いた遺伝子ターゲッティングについて説明する。loxPはCreリコンビナーゼ標的配列である。Cre-loxPシステムによればloxPとCreを用いて特定の部位(臓器)で対象遺伝子を欠損させることができる。対象遺伝子を欠損させることで対象とする遺伝子がコードするタンパク質の発現が抑制され、又は発現してもタンパク質の機能が抑制される。

0017

CreはDNA組換え酵素であり、loxPと呼ばれる34塩基の配列を認識して、この部位で組換えを起こさせることができる。欠損させたい対象遺伝子をloxP配列とloxP配列との間にはさみこんだ非ヒト動物を作製する(flox動物)。また、Cre遺伝子を組織特異的プロモーター下流に組み込んだターゲッティングベクターを導入した非ヒト動物を作製する(Cre動物)。flox動物とCre動物を掛け合わせて所望の対象遺伝子を欠損したヘテロ型で非ヒト動物(F2)を作製し、F3でホモ型の非ヒト動物を作製することができる。

0018

具体的には、まずTRPV2をコードする遺伝子の全部又は一部を対象遺伝子としてloxPで挟んだ非ヒト動物をflox動物として作製する(TRPV2flox/flox)。別途、骨格筋特異的に発現可能なプロモーターの制御下でCreを発現するCre動物を作製する。flox動物とCre動物を交配することでヘテロ型非ヒト動物(F2)が作製され、F3で骨格筋特異的プロモーターが働く部位でRPV2をコードする遺伝子の全部又は一部を欠損する非ヒト動物を作製することができる(図1a参照)。骨格筋特異的に発現可能なプロモーターは特に限定されないが、例えばMCK遺伝子プロモーター、myf5遺伝子プロモーター、pax7遺伝子プロモーター等が挙げられ、特に好適にはMCK遺伝子プロモーター、myf5遺伝子プロモーター及びpax7遺伝子プロモーターが挙げられる。

0019

MCK遺伝子プロモーターは、特に成熟骨格筋細胞特異的に作用し、myf5遺伝子プロモーター及びpax7遺伝子プロモーターは骨格筋幹細胞に作用する。骨格筋は、筋幹細胞・成熟筋細胞など、成熟・分化のステージによって生理的な作用が変わるので、各成熟・分化ステージの細胞特異的に作用するプロモーターを使用することで、筋細胞の各分化のステージごとにTRPV2タンパク質の機能が抑制されてなる非ヒト動物を作製することができる。筋幹細胞特異的なTRPV2ノックアウト(KO)非ヒト動物、具体的にはpax7プロモーター下流でTRPV2をノックアウトするマウス(Pax7-TRPV2-cKO)、及びmyf5プロモーター下流でTRPV2をノックアウトするマウス(myf5-TRPV2-cKO)、並びに成熟筋細胞特異的なTRPV2 KO非ヒト動物、具体的にはMCKプロモーター下流でTRPV2をノックアウトするマウス(MCK-TRPV2-cKO)等の骨格筋特異的TRPV2ノックアウト(KO)マウスを作製することができる。特に、Pax7プロモーターは、薬剤でノックアウトする時期を調整することができる。KO非ヒト動物の骨格筋組織には、TRPV2発現は認められない。

0020

上記のようにして得た非ヒト動物の中から、対象遺伝子欠損ヘテロ型KO非ヒト動物を繁殖させることができる。上記のようにして得た目的遺伝子ヘテロ型KO非ヒト動物同士を交配させて、遺伝子欠損ホモKO非ヒト動物を得ることができる。KO非ヒト動物が得られたことの確認は、組織から染色体DNAを抽出し、例えばサザンブロット法やPCR法で行うことができる。さらに組織からRNAを抽出し、ノーザンブロット解析により遺伝子の発現パターン解析することもできる。目的遺伝子であるTRPV2に対する抗体を用いてウエスタンブロッティングを行なってもよい。

0021

また、樹立した非ヒト動物系統について、ヘテロ型KO非ヒト動物及びホモ型KO非ヒト動物の表現型を解析することもできる。表現型の解析は、肉眼的観察、解剖による内部の観察、各臓器の組織切片X線撮影による観察、行動や記憶の観察、血液検査血清生化学検査行う。解析時期は、胎生期から成体までの任意の時期であってよく、特に限定されるものではない。

0022

本発明の骨格筋特異的にTRPV2タンパク質の機能が抑制されてなる非ヒト動物が、マウスの場合には運動能力、組織像筋壊死からの筋再生能力、筋幹細胞数の変化に関し、正常マウスと本発明の骨格筋特異的にTRPV2タンパク質の機能が抑制されてなるマウスの間に差が認められた。これにより、本発明の骨格筋特異的にTRPV2タンパク質の機能が抑制されてなる非ヒト動物を用いた、骨格筋に係る病態改善薬のスクリーニングを行うことができる。また、骨格筋細胞の成熟・分化のステージを変えてTRPV2タンパク質の機能が抑制されてなる非ヒト動物を作製することができるため、本発明の非ヒト動物を用いて、骨格筋再生促進メカニズムの解明や、骨格筋の恒常性維持のメカニズム解明等の研究目的に使用することができる。

0023

本発明は、骨格筋特異的にTRPV2タンパク質の機能が抑制されてなる非ヒト動物を用いた、骨格筋に係る病態改善薬のスクリーニング方法にも及ぶ。候補化合物を本発明の非ヒト動物と同野生型非ヒト動物に投与し、表現型を比較することで、候補化合物の効果を確認することができ、さらに候補化合物の作用メカニズムを確認することができる。

0024

発明を実施するための最良の形態及び具体的な実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。

0025

以下、本発明の理解を深めるために、実施例及び実験例を示して本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではないことはいうまでもない。

0026

(実施例1)骨格筋特異的TRPV2ノックアウト(KO)マウスの作製
本実施例では、Cre-loxPシステムを用いた骨格筋特異的TRPV2KOマウス(TRPV2flox/flox:TRPV2-Cre+/-(cKO))の作製方法について説明する。作製方法の概要は、図1に示した。マウスはC57/BL6Jを用い、遺伝子はES細胞にエレクロトポーレーション法により導入した。

0027

欠損させる対象遺伝子は、NCBI Reference Sequence: NP_035836.2に開示されるアミノ酸配列(配列番号1)をコードする遺伝子である。該対象遺伝子をloxP配列とloxP配列との間にはさみこんだTRPV2flox/floxマウス(F1)を作製した。ターゲッティングベクターとして、Cre遺伝子をMCK遺伝子プロモーター下流、myf5遺伝子プロモーター下流又はpax7遺伝子プロモーター下流に組み込んだ各ベクターを作製し、MCK-Cre+/-マウス(F1)、myf5-Cre+/-マウス(F1)又はpax7-Cre+/-マウス(F1)の各F1マウスを作製した。Creリコンビナーゼはヘテロで維持した。

0028

TRPV2flox/floxマウス(F1)と各ターゲッティングベクターを導入したF1マウスを各々交配し、ヘテロ型TRPV2flox/+:MCK-Cre+/-マウス(F2)、TRPV2flox/+:myf5-Cre+/-マウス(F2)又はTRPV2flox/+:pax7-Cre+/-マウス(F2)の各F2マウスを作製した。

0029

ヘテロ型の各F2マウスを各々TRPV2flox/floxマウスとさらに交配し、TRPV2flox/flox:MCK-Cre+/-(cKO)、TRPV2flox/flox:myf5-Cre+/-(cKO)又はTRPV2flox/flox:pax7-Cre+/-(cKO)の各F3マウスを作製した(図1)。

0030

以降の各実験例において、作製した各F3マウスについて、TRPV2flox/flox:MCK-Cre+/-(cKO)マウスをMCK-TRPV2-cKOマウス、TRPV2flox/flox:myf5-Cre+/-(cKO)マウスをmyf5-TRPV2-cKOマウス、及びTRPV2flox/flox:pax7-Cre+/-(cKO)マウスをPax7-TRPV2-cKOマウスという。またコントロールマウス(TRPV2flox/flox)を、単にFloxedという場合がある。

0031

(実験例1)骨格筋特異的TRPV2KOマウスの前脛骨筋におけるTRPV2発現
本実験例では実施例1で作製したmyf5-TRPV2-cKOマウスについて、前脛骨筋でのTRPV2発現を確認した。マウスから前脛骨筋を単離して凍結切片を作製し、TRPV2抗体にて免疫染色を行った。TRPV2抗体は、Alexa-Fluor 488が付加した2次抗体可視化した。
その結果、コントロールマウスの組織と比較して本発明のmyf5-TRPV2-cKOマウスの組織ではTRPV2発現が著しく減弱していた(図2)。

0032

(実験例2)骨格筋特異的TRPV2KOマウスの体重変化
本実験例では実施例1で作製したPax7-TRPV2-cKOマウスについて体重の変化を確認した。Pax7-TRPV2-cKOマウスは、生後2週及び4週に4日間ずつ4mmg/kgのタモキシフェンを注射して、TRPV2の発現を抑制した。12週目に体重を比較すると、本発明のPax7-TRPV2-cKOマウスは、コントロールマウスと大きな違いが無いことが明らかとなった(図3)。

0033

(実験例3)骨格筋特異的TRPV2KOマウスの運動能力の変化
本実験例では実施例1で作製したPax7-TRPV2-cKOマウスについて運動能力の変化を確認した。Pax7-TRPV2-cKOマウスは、生後2週及び4週に4日間ずつ4mmg/kgのタモキシフェンを注射して、TRPV2の発現を抑制した。10週目に、Pax7-TRPV2-cKOマウスのランニングにおけるスピード及び持久走の能力を、コントロールマウスと比較したところ、ランニング可能な最高速度が低下し、能力低下がみられた(図4)。

0034

(実験例4)組織像の変化
本実験例では実施例1で作製したPax7-TRPV2-cKOマウスについて組織像の変化を確認した。Pax7-TRPV2-cKOマウスは、生後2週及び4週に4日間ずつ4mmg/kgのタモキシフェンを注射して、TRPV2の発現を抑制した。10週目に筋を摘出し、HE染色後、組織形態を解析すると、コントロールマウスの筋線維と比較して筋線維の径が小さいことが明らかとなった(図5)。このことから、本発明のPax7-TRPV2-cKOマウスの骨格筋は細い筋線維であると考えられた。

0035

(実験例5)筋壊死から筋再生能力の変化
本実験例では実施例1で作製した各骨格筋特異的TRPV2-cKOマウスについて筋再生能力の違いを確認した。MCK-TRPV2-cKOマウス、myf5-TRPV2-cKOマウス及びPax7-TRPV2-cKOマウスについて、10μMのカルジオトキシン100μlを前脛骨筋に筋注し、筋を壊死させた。注射前、注射後3、5及び10日の筋再生の様子を観察したところ、いずれのcKOマウスでも筋の再生能が低かった。Pax7-TRPV2-cKOマウスの結果を図6に示した。注射前では筋細胞数はPax7-TRPV2-cKOマウスと正常マウスの間で殆ど差を認めなかった。注射後5日目で、本発明のPax7-TRPV2-cKOマウスについて筋壊死後の幹細胞数が少ないことが観察された。そして、注射後10日目では、Pax7-TRPV2-cKOマウスでは再生した骨格筋線維の太さが正常マウスに比べて細いことが確認された。

0036

(実験例6)筋幹細胞について
本実験例では実施例1で作製したmyf5-TRPV2-cKOマウスについて、実験例5と同様に10μMのカルジオトキシン100μlを前脛骨筋に筋注した。幹細胞数を確認した。myf5-TRPV2-cKOマウスと野生型マウス(WT)との間で単離した幹細胞の数に有意差は認めなかった(図7)。以上によりTRPV2は筋細胞の数の決定に重要ではなく、筋細胞を活性化するプロセスにおいて重要であることが考えられた。

実施例

0037

(実験例7)幹細胞から筋分化能力について
本実験例では実施例1で作製したmyf5-TRPV2-cKOマウスについて骨格筋細胞への分化誘導能について確認した。10μMのカルジオトキシン100μlを前脛骨筋に筋注した。MyoD及びPax7が両方発現することで、骨格筋細胞の分化誘導が有効に行われる。コントロールマウスについては、MyoD及びPax7の両タンパクが多く発現しているが、myf5-TRPV2-cKOマウスでは両マーカーの発現は少なかった(図8)。本結果からも、TRPV2は筋細胞を活性化するプロセスにおいて重要であることが考えられた。

0038

以上説明したように、骨格筋特異的にTRPV2の機能が抑制された非ヒト動物、より具体的には骨格筋特異的にTRPV2をコードする遺伝子の全部又は一部の発現を抑制してなる本発明の非ヒト動物によれば、骨格筋におけるTRPV2の生理的な役割を解明することができると考えられる。また、本発明の非ヒト動物の作製において使用した各プロモーターは、骨格筋細胞の分化の過程において特異的に作用するといわれている。このことから、骨格筋の画分化の過程におけるTRPV2の生理的役割もさらに解明することができる。

0039

筋の維持とは、その壊死と再生のバランスを調節しながら組織の大きさ・機能を一定に保つことである。現状では、例えば筋ジストロフィーなどの疾患における筋壊死に対してTRPV2が悪性因子として働くことがクローズアップされている。しかしながら、筋再生にもTRPV2が必要であることは全く明らかになっていない。本発明の非ヒト動物を用いることで、筋の恒常性の維持、筋再生メカニズム等の解明に貢献することができると考えられる。さらには、筋疾患に有効な治療剤のスクリーニングのために本発明の非ヒト動物を使用することができ、筋疾患に対する治療戦略の新たな方向性の提案に貢献することができる。

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