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図面 (11)

課題

虚血を有する又は虚血の危険性のある対象者における、中枢神経系に対する虚血の損傷作用を治療するための医薬組成物の提供。

解決手段

PSD−95阻害剤を含み、再かん流療法が対象者に実施され、前記PSD−95阻害剤及び再かん流療法によって前記対象者の中枢神経系に対する虚血の損傷作用が治療され、前記再かん流療法には、血栓溶解剤投与が含まれる、医薬組成物。

効果

再かん流療法と組み合わせてPSD−95阻害剤を投与することで、再かん流療法の効果が向上し、及び/又は、再かん流療法の効果の虚血発症後の経時的低下減速し、再かん流療法が適用可能な時間帯が拡大される。

概要

背景

関連出願の参照
本出願は非仮出願であり、2011年6月24日出願の米国特許出願第US61/501,117号および2012年3月28日出願の米国特許出願第US61/617,001の利益を主張しており、これら両出願は、あらゆる目的のために、参照によってその全体が組み込まれる。

背景技術
虚血性脳卒中は、死および重篤障害の一般的原因であり、通常、頭蓋内腔および/もしくは脳に至るまたはそれらの内部の血管の閉塞によって引き起こされる。利用可能な有効な治療はほとんどない。1つの治療は、問題の血管内の閉塞物を取り除くことから成る。他の治療は、脳への血圧を高めることによって、脳内のかん流圧を変化させることから成る。血管の閉塞物は、様々な機械装置を使用して、または、静脈内投与もしくは動脈投与される「血液塊破壊剤」を使用して、取り除くことが可能である。このような血液塊破壊剤の中には、虚血の原因となっている塞栓を溶解して脳への血流回復するために脳卒中の対象者に投与される血栓溶解剤である、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ならびに、アルテプラーゼレテプラーゼおよびテネクテプラーゼなどの遺伝子組換えtPAがある。血液塊を破壊する他の血栓溶解薬には、ストレプトキナーゼウロキナーゼおよびデスモプラーゼが含まれる。機械再かん流装置には、動脈内カテーテルバルーンステント、および、Penumbra System Reperfusion Catherなどの種々の血液塊修復装置がある。脳内のかん流圧を変化させる治療には、大動脈などの脳外動脈内で膨張させて、血流を他の身体部位から転用脳動脈かん流を高めることが可能なバルーンなどの、脳内の動脈かん流を上昇させる装置、たとえば、CoAxia NeuroFlo(商標カテーテル装置、が用いられる。まとめると、これらの方略は、脳虚血発症に際してまたはその後に、脳かん流を高める薬剤および機械手段であると考えることができる(以下、「再かん流療法」と総称する)。

虚血の発症後すぐに施されるtPAおよび他の再かん流療法は、虚血性脳卒中による死および障害を減少させるのに有効であるが、虚血を呈する対象者の約3%未満が、tPAまたは他の再かん流療法で治療されるに過ぎない。tPAおよび他の再かん流療法の使用が少ないことは、脳出血を患っている、または脳出血を被る危険性が高い患者に施した場合には死の危険性がある、ということに部分的に起因している。脳卒中は、虚血または出血のいずれの結果でもあり得る。多くの場合、対象者を病院に運び、初期診断に達し、虚血性脳卒中と出血性脳卒中識別するために脳スキャンを実施するのに要する時間は、tPAまたは他の再かん流療法が有効であり得る時間帯の外に、対象者を置いてしまう。したがって、多くの虚血性脳卒中の対象者が、tPAまたは他の再かん流療法の利益を享受することができるかも知れないのに、そのような治療を受けずにいる。

脳卒中および関連状態の治療の別の形態が、現在、臨床試験中である(国際特許出願公開公報第WO2010144721号およびAartsらのScience 298,846−850(2002)を参照)。この治療は、PSD−95を阻害する薬剤であるTat−NR2B9c(NA−1)を使用し、したがって、N−メチル−D−アスパラギン酸受容体NMDAR)および神経型一酸化窒素合成酵素(nNOS)への結合を妨害し、脳虚血により誘発される興奮毒性を低減するものである。治療は、梗塞の大きさを減少させ、機能障害を軽減させる。

概要

虚血を有する又は虚血の危険性のある対象者における、中枢神経系に対する虚血の損傷作用を治療するための医薬組成物の提供。PSD−95阻害剤を含み、再かん流療法が対象者に実施され、前記PSD−95阻害剤及び再かん流療法によって前記対象者の中枢神経系に対する虚血の損傷作用が治療され、前記再かん流療法には、血栓溶解剤の投与が含まれる、医薬組成物。再かん流療法と組み合わせてPSD−95阻害剤を投与することで、再かん流療法の効果が向上し、及び/又は、再かん流療法の効果の虚血発症後の経時的低下減速し、再かん流療法が適用可能な時間帯が拡大される。なし

目的

本発明は、中枢神経系に対する虚血の損傷作用を治療する方法であって、虚血を有するまたは虚血の危険性のある対象者にPSD−95阻害剤を投与し、前記対象者に再かん流療法を実施し、前記PSD−95阻害剤および再かん流療法が、前記対象者の中枢神経系に対する虚血の損傷作用を治療するものである方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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請求項1

中枢神経系に対する虚血の損傷作用を治療する方法であって、虚血を有するまたは虚血の危険性のある対象者PSD−95阻害剤投与し、前記対象者に再かん流療法を実施し、前記PSD−95阻害剤および再かん流療法は、前記対象者の中枢神経系に対する虚血の損傷作用を治療するものであることを特徴とする方法。

請求項2

前記PSD−95阻害剤は、前記再かん流療法が実施される前に、投与されることを特徴とする請求項1に記載の方法。

請求項3

前記PSD−95阻害剤は、虚血の危険性のある対象者に、虚血の発症前に投与され、前記再かん流療法は、虚血の発症後に実施されることを特徴とする請求項1に記載の方法。

請求項4

前記PSD−95阻害剤は、虚血の発症後に投与され、再かん流療法は、虚血の発症後に実施されることを特徴とする請求項1に記載の方法。

請求項5

前記虚血は、脳虚血であることを特徴とする請求項1に記載の方法。

請求項6

前記対象者は、脳卒中を有していることを特徴とする請求項1に記載の方法。

請求項7

前記虚血は、CNSへのまたはCNSからの血流阻害することによって、中枢神経系に影響する心臓、または主肢の虚血であることを特徴とする請求項1に記載の方法。

請求項8

前記対象者は、前記PSD−95阻害剤の投与と前記再かん流療法の実施との間に、脳虚血の存在および/または脳出血欠如について試験されることを特徴とする請求項1に記載の方法。

請求項9

前記対象者は、前記PSD−95阻害剤の投与と前記再かん流療法の実施との間に、出血の存在または危険性について評価されることを特徴とする請求項1に記載の方法。

請求項10

前記評価は、PETスキャンCATスキャン、MRIを実施するステップ、または、前記対象者の病歴もしくは虚血の目安を提供する1つ以上の生体標識再検討するステップを含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。

請求項11

前記PSD−95阻害剤は、ペプチドであることを特徴とする請求項1に記載の方法。

請求項12

前記PSD−95阻害剤は、tat−NR2B9cであることを特徴とする請求項1に記載の方法。

請求項13

前記再かん流は、血栓溶解剤を投与することによって実施されることを特徴とする請求項1に記載の方法。

請求項14

前記血栓溶解剤は、プラスミノーゲン活性化因子であることを特徴とする請求項13に記載の方法。

請求項15

前記血栓溶解剤はtPAであることを特徴とする請求項14に記載の方法。

請求項16

前記PSD−95阻害剤の投与と前記再かん流療法との間隔は、30分〜6時間であることを特徴とする請求項13〜15のいずれか1項に記載の方法。

請求項17

前記血栓溶解剤は、損傷した血流の部位への局所投与で投与されることを特徴とする請求項13〜16のいずれか1項に記載の方法。

請求項18

前記再かん流療法は、機械的再かん流であることを特徴とする請求項1に記載の方法。

請求項19

前記再かん流療法は、虚血の発症後3時間よりも後に実施されることを特徴とする請求項1に記載の方法。

請求項20

前記再かん流療法は、虚血の発症後4.5時間よりも後に実施されることを特徴とする請求項1に記載の方法。

請求項21

前記再かん流療法は、虚血の発症後4.5時間よりも後かつ24時間よりも前に実施されることを特徴とする請求項1に記載の方法。

請求項22

前記再かん流療法は、CT,MRIまたはPET分析によって示される、完全梗塞がないこと、虚血ペナンブラおよび出血がないことに基づいて、再かん流について対象者が適格であると決定した後に実施されることを特徴とする請求項1に記載の方法。

請求項23

前記再かん流療法は、虚血の発症後少なくとも12時間または少なくとも24時間に実施されることを特徴とする請求項22に記載の方法。

請求項24

前記再かん流療法は、虚血の発症後275〜690分に実施されることを特徴とする請求項22に記載の方法。

請求項25

前記ペプチドは、内在化ペプチドに結合するか脂質付加されており、これによって、細胞膜または血液脳関門の透過が容易になっていることを特徴とする請求項11に記載の方法。

請求項26

前記ペプチドはミリストイル化ペプチドであることを特徴とする請求項25に記載の方法。

請求項27

前記ペプチドは、KLSSIESDV(配列番号5)もしくはKLSSIETDV(配列番号43)から成る、またはKLSSIESDV(配列番号5)もしくはKLSSIETDV(配列番号43)を含むアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項26に記載の方法。

請求項28

前記ミストイル化は、前記ペプチドのN末端においてなされていることを特徴とする請求項26または27に記載の方法。

請求項29

虚血の兆候および/または症状を呈する対象者群を治療する方法であって、PSD−95阻害剤を対象者に投与するステップを有し、再かん流療法の副作用容認できない危険性について対象者を分析し、副作用の容認できない危険性を有しない対象者は再かん流療法を受け、副作用の容認できない危険性を有する対象者は再かん流療法を受けないことを特徴とする方法。

請求項30

副作用の容認できない危険性の前記分析には、出血の存在または危険性についての分析が含まれることを特徴とする請求項29に記載の方法。

請求項31

前記対象者は、脳卒中の兆候および/または症状を呈し、前記分析は、虚血性脳卒中出血性脳卒中とを区別する脳スキャンを実施することを含み、虚血性脳卒中を有する対象者は、再かん流療法を受け、出血性脳卒中を有する対象者は再かん流療法を受けないことを特徴とする請求項29に記載の方法。

請求項32

再かん流療法も受ける対象者における中枢神経系に対する虚血の損傷作用を治療するために使用される、NMDAR 2Bに結合するPSD−95を阻害する薬剤であって、前記再かん流療法および前記薬剤は、中枢神経系に対する虚血の損傷作用を治療することを特徴とする薬剤。

請求項33

NMDAR 2B,2AまたはnNOSに結合するPSD−95を阻害する薬剤も受ける対象者における再かん流療法に使用するための薬剤または装置であって、前記再かん流療法および前記薬剤は、中枢神経系に対する虚血の損傷作用を治療することを特徴とする薬剤または装置。

請求項34

コイルステントバルーン(たとえば、大動脈内バルーン、ポンプ)、またはカテーテルであることを特徴とする請求項33に記載の薬剤または装置。

請求項35

血栓溶解剤、血管拡張剤または高血圧剤であることを特徴とする請求項33に記載の薬剤または装置。

背景技術

0001

関連出願の参照
本出願は非仮出願であり、2011年6月24日出願の米国特許出願第US61/501,117号および2012年3月28日出願の米国特許出願第US61/617,001の利益を主張しており、これら両出願は、あらゆる目的のために、参照によってその全体が組み込まれる。

0002

背景技術
虚血性脳卒中は、死および重篤障害の一般的原因であり、通常、頭蓋内腔および/もしくは脳に至るまたはそれらの内部の血管の閉塞によって引き起こされる。利用可能な有効な治療はほとんどない。1つの治療は、問題の血管内の閉塞物を取り除くことから成る。他の治療は、脳への血圧を高めることによって、脳内のかん流圧を変化させることから成る。血管の閉塞物は、様々な機械装置を使用して、または、静脈内投与もしくは動脈投与される「血液塊破壊剤」を使用して、取り除くことが可能である。このような血液塊破壊剤の中には、虚血の原因となっている塞栓を溶解して脳への血流回復するために脳卒中の対象者に投与される血栓溶解剤である、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ならびに、アルテプラーゼレテプラーゼおよびテネクテプラーゼなどの遺伝子組換えtPAがある。血液塊を破壊する他の血栓溶解薬には、ストレプトキナーゼウロキナーゼおよびデスモプラーゼが含まれる。機械再かん流装置には、動脈内カテーテルバルーンステント、および、Penumbra System Reperfusion Catherなどの種々の血液塊修復装置がある。脳内のかん流圧を変化させる治療には、大動脈などの脳外動脈内で膨張させて、血流を他の身体部位から転用脳動脈かん流を高めることが可能なバルーンなどの、脳内の動脈かん流を上昇させる装置、たとえば、CoAxia NeuroFlo(商標カテーテル装置、が用いられる。まとめると、これらの方略は、脳虚血発症に際してまたはその後に、脳かん流を高める薬剤および機械手段であると考えることができる(以下、「再かん流療法」と総称する)。

0003

虚血の発症後すぐに施されるtPAおよび他の再かん流療法は、虚血性脳卒中による死および障害を減少させるのに有効であるが、虚血を呈する対象者の約3%未満が、tPAまたは他の再かん流療法で治療されるに過ぎない。tPAおよび他の再かん流療法の使用が少ないことは、脳出血を患っている、または脳出血を被る危険性が高い患者に施した場合には死の危険性がある、ということに部分的に起因している。脳卒中は、虚血または出血のいずれの結果でもあり得る。多くの場合、対象者を病院に運び、初期診断に達し、虚血性脳卒中と出血性脳卒中識別するために脳スキャンを実施するのに要する時間は、tPAまたは他の再かん流療法が有効であり得る時間帯の外に、対象者を置いてしまう。したがって、多くの虚血性脳卒中の対象者が、tPAまたは他の再かん流療法の利益を享受することができるかも知れないのに、そのような治療を受けずにいる。

0004

脳卒中および関連状態の治療の別の形態が、現在、臨床試験中である(国際特許出願公開公報第WO2010144721号およびAartsらのScience 298,846−850(2002)を参照)。この治療は、PSD−95を阻害する薬剤であるTat−NR2B9c(NA−1)を使用し、したがって、N−メチル−D−アスパラギン酸受容体NMDAR)および神経型一酸化窒素合成酵素(nNOS)への結合を妨害し、脳虚血により誘発される興奮毒性を低減するものである。治療は、梗塞の大きさを減少させ、機能障害を軽減させる。

図面の簡単な説明

0005

図1非ヒト霊長類(NHP)への投与プロトコルを説明する図、および、損傷領域を示すMRI上の結果の拡散体積を示すグラフである。図1B 4.5時間脳卒中の発症後48時間のDWI MRIを示す図である。図1C 4.5時間脳卒中の発症後48時間のT2体積を示す図である。図1D 4.5時間脳卒中の発症後7日のT2体積を示す図である。

0006

図2動物を4.5時間MCAOに付してTat−NR2B9cまたはプラシーボで5分処理したときの、処理動物および対照動物におけるMCAO後のDWI高信号の増加の時間経過を示す図である。図2B 異なる時点での脳のかん流画像およびMRI画像を示す図である。

0007

プラシーボまたはTat−NR2B9c動物におけるペナンブラ不一致時間変化を示す図である。

0008

図4A Tat−NR2B9cが、細胞ATP枯渇を低減し、マウス皮質ニューロン酸素グルコース欠乏(OGD)によって誘発される細胞毒性に対して保護することを示す図であり、OGD後20時間にヨウ化プロピジウム標識法により測定した細胞死の割合を示す図である。図4B 正常酸素圧対照試料に対する%ATP濃度で表した、化学発光ATP検出アッセイにより測定した皮質ニューロンからの細胞内ATP濃度を示す図である。

0009

NA−1(Tat−NR2B9c)は、脳卒中後単回投与したとき、磁気共鳴画像法(MRI)により評価して、脳における障害の発達を停止させることができるが、その有効性が、脳血流量の変更を介して生じるのではないことを示す図である。

0010

図6A 開始時におけるかん流障害の体積を示す図である。図6B 30日にわたるDWIおよびT2画像により測定した脳卒中体積の分析を示す図である。図6C MCAO後24時間にプラシーボおよび薬物で処理した動物において生じた脳卒中の、代表的なT2強調画像を示す図である。図6D 30日にNA−1(Tat−NR2B9c)およびプラシーボで処理した動物からの、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色した代表的な連続組織切片を示す図である。図6E 24時間DWI体積および30日T2強調体積を用いて計算した脳卒中体積を示す図である。図6F 30日の観察期間にわたるNHPSSを示す図である。

0011

図7Aかん流障害の体積を示す図である。図7B 7日にわたるDWIおよびT2MRIにより測定した脳卒中体積を示す図である。図7C 各動物の初期かん流障害に対して規格化した、48時間DWIおよびT2ならびに7日T2強調MRIスキャンからの脳卒中体積を示す図である。図7D 代表的な7日MRIを示す図である。図7E 代表的な7日組織を示す図である。図7F 7日の観察期間にわたるNHPSSスコアを示す図である。

0012

図8Aかん流障害の体積を示す図である。図8B 14日にわたるDWIおよびT2MRIにより測定した脳卒中体積を示す図である。図8C 各動物の初期かん流障害に対して規格化した、48時間DWIおよびT2ならびに14日T2強調MRIスキャンからの脳卒中体積を示す図である。図8D 代表的な14日MRIを示す図である。図8E 代表的な14日組織を示す図である。図8F 14日の観察期間にわたるNHPSSスコアを示す図である。

0013

図9A 脳卒中およびNA−1(Tat−NR2B9c)での処理に続く、ラットの同側半球と対側半球とのPSD−95:NMDAR共免疫沈降の割合を示すグラフである。図9B 様々な濃度のNA−1または対照の存在下での、抗PSD−95抗体で免疫沈降したNMDARの量を示す例示的免疫ブロットである。

0014

脳卒中およびNA−1(Tat−NR2B9c)での処理に続く異なる時点での、ラットの同側半球と対側半球とのPSD−95:NMDAR共免疫沈降の割合を示すグラフである。

0015

脳卒中に付し、種々の組み合わせおよび回数のtPAおよびNA−1(Tat−NR2B9)投与で処理した、24時間後のラット脳における梗塞領域を示す図である。

0016

発明の概要
本発明は、中枢神経系に対する虚血の損傷作用を治療する方法であって、虚血を有するまたは虚血の危険性のある対象者にPSD−95阻害剤を投与し、前記対象者に再かん流療法を実施し、前記PSD−95阻害剤および再かん流療法が、前記対象者の中枢神経系に対する虚血の損傷作用を治療するものである方法を提供する。随意的に、前記PSD−95阻害剤は、前記再かん流療法が実施される前に、投与される。随意的に、前記PSD−95阻害剤は、虚血の危険性のある対象者に、虚血の発症前に投与され、前記再かん流療法は、虚血の発症後に実施される。随意的に、前記PSD−95阻害剤は虚血の発症後に投与され、再かん流療法は虚血の発症後に実施される。いくつかの方法において、前記虚血は脳虚血である。いくつかの方法において、前記対象者は脳卒中を有している。いくつかの方法において、前記虚血は、CNSへのまたはCNSからの血流を阻害することによって、中枢神経系に影響する心臓、または主肢の虚血である。いくつかの方法において、前記対象者は、前記薬剤の投与と前記再かん流療法の実施との間に、脳虚血の存在および/または脳出血の欠如について試験される。いくつかの方法において、前記対象者は、前記薬剤の投与と前記再かん流療法の実施との間に、出血の存在または危険性について評価される。いくつかの方法において、前記評価は、PETスキャン、CATスキャン、MRIを実施すること、または、前記対象者の病歴もしくは虚血の目安を提供する1つ以上の生体標識再検討することを含む。いくつかの方法において、前記PSD−95阻害剤はペプチドである。いくつかの方法において、前記薬剤はNA−1(Tat−NR2B9c)である。いくつかの方法において、前記再かん流は、血栓溶解剤を投与することによって実施される。いくつかの方法において、前記血栓溶解剤はプラスミノーゲン活性化因子である。いくつかの方法において、前記血栓溶解剤はtPAである。いくつかの方法において、前記再かん流療法は機械的再かん流である。いくつかの方法において、前記再かん流療法は、虚血の発症後3時間よりも後に実施される。いくつかの方法において、前記再かん流療法は、虚血の発症後4.5時間よりも後に実施される。いくつかの方法において、前記再かん流療法は、虚血の発症後4.5時間よりも後かつ24時間よりも前に実施される。いくつかの方法において、前記再かん流療法は、CT,MRIまたはPET分析によって示される完全梗塞がないこと、虚血ペナンブラおよび出血がないことに基づいて、再かん流について対象者が適格であると決定した後に実施される。いくつかの方法において、前記再かん流療法は、虚血の発症後少なくとも12時間または少なくとも24時間に実施される。いくつかの方法において、前記再かん流療法は、虚血の発症後275〜690分に実施される。いくつかの方法において、PSD−95の投与と前記再かん流療法との間隔は、30分〜6時間であり得る。いくつかの方法において、血栓溶解剤が、損傷した血流の部位への局所投与で投与される。上記の方法のいずれにおいても、前記ペプチドまたは他の薬剤は、内在化ペプチドに結合されるか脂質付加されて、これによって、細胞膜または血液脳関門の透過が容易になり得る。いくつかのペプチドまたは他の薬剤は、ミリストイル化されている。ペプチドは、好ましくは、N末端においてミリストイル化されている。

0017

本発明は、さらに、虚血の兆候および/または症状を呈する対象者群を治療する方法であって、PSD−95阻害剤を対象者に投与し、再かん流療法の副作用容認できない危険性について対象者を分析し、副作用の容認できない危険性を有しない対象者は再かん流療法を受け、副作用の容認できない危険性を有する対象者は再かん流療法を受けない方法を提供する。いくつかの方法において、副作用の容認できない危険性の前記分析には、出血の存在または危険性についての分析が含まれる。いくつかの方法において、前記対象者は脳卒中の兆候および/または症状を呈し、前記分析は、虚血性脳卒中と出血性脳卒中とを区別する脳スキャンを実施することを含み、虚血性脳卒中を有する対象者は再かん流療法を受け、出血性脳卒中を有する対象者は再かん流療法を受けない。

0018

本発明は、再かん流療法も受ける対象者における中枢神経系に対する虚血の損傷作用を治療するために使用される、NMDAR 2Bまたは他のNMDAR 2サブユニットに結合するPSD−95を阻害する薬剤であって、前記再かん流療法および前記薬剤は、中枢神経系に対する虚血の損傷作用を治療する薬剤を提供する。

0019

本発明は、さらに、NMDAR 2B,2AまたはnNOSに結合するPSD−95を阻害する薬剤も受ける対象者における再かん流療法に使用するための薬剤または装置であって、前記再かん流療法および前記薬剤は、中枢神経系に対する虚血の損傷作用を治療する薬剤または装置を提供する。随意的に、前記装置は、コイル、ステント、バルーン(たとえば、大動脈内バルーン、ポンプ)、またはカテーテルである。随意的に、前記薬剤は、血栓溶解剤、血管拡張剤または高血圧剤である。

0020

定義
キメラペプチド」は、天然には互いに会合していないが、融合タンパクとしてまたは化学結合によって、互いに結合している2つの成分ペプチドを有するペプチドを意味する。

0021

「融合」タンパクまたはペプチドは、天然には互いに融合して単一ポリペプチド配列となっていない、2つ(以上)の異なる非相同ポリペプチド由来する配列から成る複合ペプチド、すなわち単一アミノ酸配列を指す。

0022

PDZドメイン」の用語は、脳シナプスタンパクPSD−95、ショウジョウバエ中隔結合タンパクDiscs−Large(DLG)、および、上皮密着結合タンパクZO1(ZO1)に対する有意な配列同一性(たとえば、少なくとも60%)によって特徴付けられる、約90個のアミノ酸モジュールタンパクドメインを指す。PDZドメインは、Discs−Large相同反復(「DHR」)およびGLGF(配列番号68)反復としても知られている。PDZドメインは、一般に、コアコンセンサス配列(Doyle,D.A.,1996,Cell 85:1067−76)を保持していると見られる。例示的なPDZドメイン含有タンパクおよびPDZドメイン配列が、米国特許出願第10/714,537号に開示されており、この出願は参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。

0023

PLタンパク」または「PDZリガンドタンパク」の用語は、PDZドメインと分子複合体を形成する天然タンパク、または、完全長タンパクから切り離された(たとえば、3,4,5,8,9,10,12,14または16残基などの3〜35残基のペプチドフラグメントとしての)発現の場合は、カルボキシ末端がそのような分子複合体を形成するタンパクを指す。この分子複合体は、たとえば米国特許公開公報第US20060148711号に記載の、「Aアッセイ」または「Gアッセイ」を使用してインビトロで、または、インビボで観察することが可能である。

0024

NMDA受容体」または「NMDAR」の用語は、NMDAと相互作用することが知られている、下記の種々のサブユニット型を含む膜結合タンパクを指す。このような受容体は、ヒトまたは非ヒト(たとえば、マウス、ラット、ウサギサル)由来であり得る。

0025

「PLモチーフ」は、PLタンパクのC末端アミノ酸配列(たとえば、C末端の3,4,5,6,7,8,9,10,12,14,16,20または25個の連続残基)(「C末端PL配列」)、または、PDZドメインに結合することが知られている内部配列(「内部PL配列」)を指す。

0026

PLペプチド」は、PDZドメインに特異的に結合するPLモチーフを含む、またはそのようなPLモチーフから成る、あるいは、別の態様でそのようなPLモチーフに基づくペプチドである。

0027

「単離された」または「精製された」の用語は、対象種(たとえば、ペプチド)が、その対象種を含有する天然資源から得られた試料などの、試料に存在する汚染物質から精製されていることを意味する。対象種が単離または精製されている場合、それは、試料に存在する主要な高分子(たとえば、ポリペプチド)種であり(すなわち、モル基準で、その組成物における他の個々の種よりも多く存在する)、好ましくは、その対象種は、存在する全高分子種の少なくとも約50%(モル基準で)を含む。一般的に、精製されたまたは実質的に純粋な組成物は、その組成物に存在する全高分子種の80〜90%超を含む。最も好ましくは、対象種は、実質的に均一になるまで精製され(つまり、従来の検出方法では汚染種が検出され得ない)、組成物は本質的に単一の高分子種から成る。「単離された」または「精製された」の用語は、単離種との組み合わせで作用するよう意図された他の成分の存在を、必ずしも排除しない。たとえば、内在化ペプチドは、活性ペプチドに結合しているにもかかわらず、単離されていると表現することができる。

0028

ペプチド模倣体」は、天然アミノ酸から成るペプチドと、同じ構造的および/または機能的特徴を実質的に有する合成化合物を指す。ペプチド模倣体は、全体的にアミノ酸の合成非天然アナログを含み得、または、部分的に天然ペプチドアミノ酸で、部分的にアミノ酸の非天然アナログであるキメラ分子であり得る。ペプチド模倣体は、また、天然アミノ酸の保存的置換を、その置換模倣体の構造および/または阻害もしくは結合活性を実質的に変化させない限り、あらゆる程度で含むことができる。ポリペプチド模倣組成物は、あらゆる組み合わせの非天然構造要素を含むことができ、非天然構造要素は、一般に、a)天然のアミド結合(「ペプチド結合」)連結とは異なる残基連結基;b)天然アミノ酸残基に代わる非天然残基;または、c)二次構造模倣を引き起こす(つまり、たとえば、ベータターンガンマターン、ベータシートアルファヘリックスコンフォメーションなどの二次構造を誘導しまたは安定化する)残基、の3つの構造群に由来する。活性ペプチドおよび内在化ペプチドを含むキメラペプチドのペプチド模倣体において、活性部位もしくは内在化部位または両者は、ペプチド模倣体であり得る。

0029

特異的結合」の用語は、2分子、たとえばリガンドと受容体、の結合であって、分子(リガンド)が、他の様々な多くの分子の存在下においてさえ、他の特異的分子(受容体)に会合する、つまり、1つの分子が、分子の異種混合物において、他の分子に優先的に結合する能力によって特徴付けられる結合を指す。リガンドの受容体への特異的結合は、検出可能に標識されたリガンドの受容体への結合が、過剰の非標識リガンドの存在で減少すること(つまり、結合競合アッセイ)によっても証拠だてられる。

0030

興奮毒性は、NMDA受容体、たとえば、NMDAR 2Bサブユニットを有するNMDA受容体などの、興奮性神経伝達物質グルタメートの受容体の過剰活性化によって、ニューロンが損傷し死亡する病理過程である。

0031

「対象者」の用語は、ヒト、および、前臨床試験で使用されるマウスまたはラットなどの実験動物モデルと共に、哺乳類などの獣医学動物を含む。

0032

「薬剤」の用語は、薬理活性を有するまたは有しない化合物、天然化合物、合成化合物、小分子、ペプチド、およびペプチド模倣体を含む、あらゆる化合物を含む。PSD−95阻害剤は、以下にさらに述べるように、PSD−95を阻害する薬剤である。

0033

薬理活性剤」は、薬理活性を有する薬剤を意味する。薬理活性剤には、既知の薬物である化合物、および、薬理活性が確認されているが、動物モデルまたは臨床試験において治療効果評価がさらに行われている化合物、が含まれる。キメラ薬剤は、内在化ペプチドに結合した薬理活性剤を含む。薬剤は、活性薬剤が、疾病の予防もしくは治療に有用である、または有用かも知れないことを示すスクリーニング系において活性を示す場合、薬理活性を有すると表現することができる。スクリーニング系は、インビトロ系細胞系、動物系、またはヒト系であり有る。薬剤は、疾病の治療において実際の予防的または治療的有用性確立するために、さらなる試験が必要とされるかも知れなくても、薬理活性を有すると表現することができる。

0034

tatペプチドは、GRKKRRRRR(配列番号1)を含み、またはこの配列から成り、この配列内の5残基を超える残基が削除、置換または挿入されておらず、結合ペプチドまたは他の薬剤の細胞への取り込みを促進する能力を維持しているペプチドを意味する。好ましくは、あらゆるアミノ酸変化は保存的置換である。好ましくは、会合体におけるあらゆる置換、削除または内部挿入は、好ましくは上記の配列の電荷に類似する、正味正電荷をペプチドに残す。このことは、かなりの数のR残基およびK残基を置換または削除しないことで、達成することができる。tatペプチドのアミノ酸は、ビオチンまたは小分子で誘導体化して、炎症反応を軽減することが可能である。

0035

薬理活性剤の同時投与とは、それらの薬剤の検出可能な量が血漿中に同時に存在するように、それらの薬剤が近接した時間内に投与されること、および/または、それらの薬剤が疾病の同一の症状発現に対して治療効果を発揮するように、もしくは、それらの薬剤が疾病の同一の症状発現の治療において協働的もしくは相乗的に作用するように、投与されることを意味する。たとえば、内在化ペプチドによって誘導され得る抗炎症反応を抗炎症剤が阻害し得るように、抗炎症剤とtatペプチドを含む薬剤とが十分に近接した時間内に投与されるとき、抗炎症剤はtatペプチドを含む薬剤と協働的に作用する。

0036

統計的に有意とは、0.05未満の、好ましくは0.01未満の、最も好ましくは0.001未満のp値を指す。

0037

疾病の症状発現とは、疾病の兆候および/または症状が散在的に存在する期間、つまり、兆候および/または症状が存在しない、あるいはより低い程度で存在するより長い期間に挟まれた期間、を意味する。

0038

発明の詳細な説明
I.概要
本発明は、虚血性脳卒中などの、CNSにおけるまたはCNSに影響する虚血のための組み合わせ治療を提供する。本治療は、PSD−95阻害剤の投与、および、再かん流療法(たとえば、tPAもしくは他の血栓溶解剤の投与による、または、影響を受けたCNS領域への血流を増大させる機械装置の使用による)を実施すること含む。tPAおよび他の再かん流療法の従来の使用においては、有効性は虚血の発症から時間の経過に伴って低下し、出血の副作用の可能性が高まる。したがって、tPAの場合、血栓溶解の療法は、虚血の発症から約3〜4.5時間後には無効であると考えられている。本発明は、再かん流療法と組み合わせてPSD−95阻害剤を投与することが、再かん流療法の効果を高め、および/または、虚血発症後の時間経過に伴うtPAまたは他の再かん流療法の効果の低下を減速させ、これによって、tPAまたは他の再かん流療法を施し得る時間帯を広げる、という洞察に部分的に基づいている。

0039

tPAおよび他の再かん流療法が、虚血性脳卒中を有することが判明している脳卒中対象者にのみ安全に投与できるのに対し、PSD−95阻害剤は、対象者が虚血性脳卒中または出血性脳卒中のいずれを有するかによらず、ならびに、対象者がそもそも脳卒中を患っているかによらず、脳卒中を有するまたは脳卒中の可能性のある対象者に、安全に投与することができる。PSD−95阻害剤を投与することにより、虚血性脳卒中の存在を判断するために脳スキャンまたは他の何らかの診断を実施して、その後、適切であれば、tPAまたは他の再かん流療法を施すために利用可能な時間が増す。したがって、虚血性脳卒中を有するより多くの対象者が、tPAまたは他の再かん流療法の恩恵を受けることができ、同時に、PSD−95阻害剤の恩恵を受けることができる。

0040

II.PSD−95を阻害する薬剤
PSD−95阻害剤は、PSD−95と、1つ以上のNMDAR(たとえば、2A,2B,2Cもしくは2D)またはnNOS(たとえば、Swiss−Prot P29475)との、相互作用を阻害する。阻害は、たとえば、PSD−95への阻害剤の特異的結合の結果であり得る。このような薬剤は、脳卒中、および、少なくとも部分的にNMDAR興奮毒性によって媒介される他の神経学的状態の、1つ以上の損傷作用を軽減するのに有用である。このような薬剤には、NMDA受容体またはPSD−95のPDZドメインの、PLモチーフを含むまたはこれに基づくアミノ酸配列を有するペプチドが含まれる。このようなペプチドは、PSD−95とnNOSならびにKV1−4およびGluR6などの他のグルタメート受容体(たとえば、カイナイト(kainite)受容体またはAMPA受容体)との相互作用をも阻害し得る。好ましいペプチドは、シナプス後肥厚−95タンパク(PSD−95)(Stathakism,Genomics 44(1):71−82(1997)によって提供されるヒトアミノ酸配列)のPDZドメイン1および2と、ニューロンのN−メチル−D−アスパルテートNR2Bサブユニットを含む1つ以上のNMDA受容体2サブユニットのC末端PL配列との相互作用を阻害する(Mandich et al.,Genomics 22,216−8(1994))。NMDAR2Bは、GenBankID 4099612、C末端の20個のアミノ酸FNGSSNGHVYEKLSSIESDV(配列番号11)、および、PLモチーフESDV(配列番号12)を有する。好ましいペプチドは、ヒト型のPSD−95とヒトNMDAR受容体とを阻害する。しかし、阻害は、タンパクの変種からも示され得る。使用可能なNMDAおよびグルタメート受容体のリストを次に示す。

0041

いくつかのペプチドは、PSD-95と複数のNMDARサブユニットとの相互作用を阻害する。そのような例において、そのペプチドを使用することは、興奮性神経伝達への異なるNMDARのそれぞれの寄与を理解することを、必ずしも必要としない。他のペプチドは、単一のNMDARに対して特異的である。

0042

ペプチドは、上記サブユニットのいずれかのC末端に由来するPLモチーフを含みまたはPLモチーフに基づくことができ、[S/T]−X−[V/L]を含むアミノ酸配列を有し得る。この配列は、好ましくは、本発明のペプチドのC末端に現れる。好ましいペプチドは、[E/D/N/Q]−[S/T]−[D/E/Q/N]−[V/L](配列番号38)を含むアミノ酸配列を、C末端に有する。例示的ペプチドは、C末端アミノ酸として、ESDV(配列番号12)、ESEV(配列番号29)、ETDV(配列番号39)、ETEV(配列番号40)、DTDV(配列番号41)およびDTEV(配列番号42)を含む。特に好ましい2つのペプチドは、KLSSIESDV(配列番号5)およびKLSSIETDV(配列番号43)である。このようなペプチドは、通常、3〜25個のアミノ酸を有し(内在化ペプチドなし)、5〜10個のアミノ酸、特に9個のアミノ酸(ここでも内在化ペプチドなし)のペプチド長が好ましい。そのようないくつかのペプチドにおいて、すべてのアミノ酸は、NMDA受容体のC末端に由来する(内在化ペプチド由来のアミノ酸を含まない)。

0043

PSD−95とNMDARとの相互作用を阻害する他のペプチドには、PSD−95のPDZドメイン1および/もしくは2、または、NR2Bなどの、PSD−95とNMDA受容体との相互作用を阻害するこれらのいずれかのサブフラグメントに由来するペプチドが含まれる。このような活性ペプチドは、PSD−95のPDZドメイン1および/またはPDZドメイン2に由来する、少なくとも50,60,70,80または90個のアミノ酸を含み、これらのアミノ酸は、Stathakism,Genomics 44(1):71−82(1997)によって提供されるPSD−95(ヒトの配列)、または、NP_031890.1,GI:6681195(マウスの配列)の、アミノ酸65〜248付近に見られる。

0044

本発明のペプチドおよびペプチド模倣体は、変更されたアミノ酸残基、たとえば、N−アルキル化された残基を含み得る。N末端アルキル化の変更には、たとえば、N−メチル、N−エチル、N−プロピル、N−ブチル、N−シクロヘキシルメチル、N−シクロヘキシルエチル、N−ベンジル、N−フェニルエチル、N−フェニルプロピル、N−(3,4−ジクロロフェニル)プロピル、N−(3,4−ジフルオロフェニル)プロピル、および、N−(ナフチレン−2−イル)エチルが含まれる。

0045

Bach,J.Med.Chem.51,6450−6459(2008)および国際特許出願公開公報第WO2010/004003号には、NR2B9c(配列番号6)の一連のアナログが記載されている。PDZ結合活性は、3個のC末端アミノ酸(SDV)のみを有するペプチドによって示される。Bachは、また、X1tSX2V(配列番号68)を含みまたはこの配列から成るアミノ酸配列であって、tおよびSは代替アミノ酸であり、X1はE,QおよびAの中から選択され、または、それらのアナログであり、X2はA,Q,D,N,N−メチル−A,N−メチル−Q,N−メチル−D,およびN−メチル−Nの中から選択され、または、それらのアナログである、アミノ酸配列を有するアナログを報告している。随意的に、このペプチドは、P3位置(C末端から3番目のアミノ酸、つまり、tSによって占められる位置)においてN−アルキル化されている。このペプチドは、シクロヘキサンまたは芳香族置換基によってN−アルキル化され、さらに、その置換基とペプチドまたはペプチドアナログ末端基との間にスペーサ基を含むことができ、スペーサ基は、好ましくはメチレンエチレンプロピレン、およびブチレンの中から選択されるアルキル基である。芳香族置換基は、ナフタレン−2−イル部分、または、1つ以上のハロゲンおよび/もしくはアルキル基で置換された芳香族環であり得る。

0046

他の変更も活性に悪影響を及ぼすことなく組み込むことが可能であり、これらには、天然のL異性型の1個以上のアミノ酸の、D異性型のアミノ酸による置換が含まれる。したがって、L配位(これは、化学物質の構造に応じて、RまたはSとも言われる)で天然に産するあらゆるアミノ酸は、同じ化学構造型を有しキラリティーが逆のアミノ酸またはペプチド模倣体、つまり、一般にDアミノ酸と呼ばれるが、RまたはS型と呼ぶこともできるアミノ酸で、置き換えることが可能である。したがって、ペプチド模倣体は、Dアミノ酸残基を、1,2,3,4,5個、少なくとも50%、または、すべて含んでよい。Dアミノ酸残基をいくつかまたはすべて含むペプチド模倣体は、「インベルソ」ペプチドと呼ばれることがある。

0047

ペプチド模倣体は、レトロペプチドも含む。レトロペプチドは、逆のアミノ酸配列を有する。ペプチド模倣体は、また、アミノ酸の順序が逆で、したがって、もともとC末端のアミノ酸がN末端に現れ、Lアミノ酸に代えてDアミノ酸が使用される、レトロインベルソペプチドも含む。国際特許出願公開公報第WO2008/014917号には、アミノ酸配列vdseisslk−rrrqrrkkrgyin(配列番号69)(小文字はDアミノ酸を指す)を有する、Tat−NR2B9cのレトロインベルソアナログが記載されており、これが脳虚血の阻害に有効であると報告されている。本明細書に記載の他の有効なペプチドは、Rv−Tat−NR2B9c(RRRQRRKKRGYKLSSIESDV;配列番号70)である。

0048

リンカー、たとえばポリエチレングリコールリンカーは、ペプチドまたはペプチド模倣体の活性部分を二量化して、タンデムPDZドメインを含有するタンパクに対するその親和性および選択性を向上させるのに使用することができる。Bach et al.,(2009) Angew.Chem.Int.Ed.48:9685−9689および国際特許出願公開公報第WO2010/004003号を参照。PLモチーフ含有ペプチドは、好ましくは、2つの分子のN末端を連結して二量化され、C末端は自由のままとされる。Bachは、さらに、NMDARのC末端由来の五量体ペプチドIESDV(配列番号71)が、PSD−95へのNMDAR 2Bの結合の阻害に有効であると報告している。IETDV(配列番号73)を、IESDVの代わりに使用することもできる。随意的に、PEGの2〜10個のコピーは、直列に連結してリンカーとすることができる。随意的に、リンカーは、内在化ペプチドに結合し、または脂質付加して、細胞取り込みを高めることもできる。例示的な二量体阻害剤の例を次に示す(Bach et al.,PNAS 109(2012)3317−3322を参照)。本明細書に開示のPSD−95阻害剤のいずれも、IETDVの代わりに使用することが可能であり、あらゆる内在化ペプチドまたは脂質付加部分は、tatの代わりに使用することができる。示したtatへの他のリンカーも使用可能である。



IETAVは配列番号74であり、YGRKKRRQRRRは配列番号2であり、rrrqrrkkrは配列番号75であり、小文字はDアミノ酸を示す。

0049

ペプチド、ペプチド模倣体または他の薬剤の適当な薬理活性は、所望の場合、霊長類および本出願に記載の臨床試験における試験に先立ち、前述の脳卒中のラットモデルを用いて、確認することができる。ペプチドまたはペプチド模倣体は、PSD−95とNMDAR 2Bとの相互作用を阻害する能力について、米国特許出願公開公報第US20050059597号に記載のアッセイを用いて、スクリーニングすることも可能であり、この公報は参照によって組み込まれる。有用なペプチドは、一般に、そのようなアッセイにおいて、50μM,25μM,10μM,0.1μMまたは0.01μMのIC50値を有している。好ましいペプチドは、一般に、0.001〜1μMのIC50値を、より好ましくは、0.001〜0.05,0.05〜0.5または0.05〜0.1μMのIC50値を有している。ペプチドまたは他の薬剤が、1つの相互作用、たとえば、NMDAR2BへのPSD−95の相互作用、の結合を阻害するとして特徴付けられるとき、そのような表現は、ペプチドまたは薬剤が、他の相互作用、たとえば、nNOSへのPSD−95の結合、をも阻害することを排除するものではない。

0050

上述のものなどのペプチドは、随意的に、誘導体化(たとえば、アセチル化リン酸化、ミリストイル化、ゲラニル化および/またはグリコシル化)して、阻害剤への結合親和性を高め、阻害剤の細胞膜を透過する能力を高め、または安定性を高めることが可能である。具体的な例として、C末端から3番目の残基がSまたはTである阻害剤については、この残基は、そのペプチドを使用する前に、リン酸化することができる。

0051

薬理活性剤には、PSD−95とNMDAR 2Bとの相互作用、および/または上述の他の相互作用、を阻害する小分子も含まれる。好適な小分子阻害剤は、たとえば、国際特許出願公開公報第WO/2009/006611号に、記載されている。好適な化合物の例示的クラスは次の式を有する。



ここで、R1は、0〜4個のR7で置換されたシクロヘキシル、0〜4個のR7で置換されたフェニル、−(CH2)u−(CHR8R9),分枝C1−6アルキルイソプロピルイソブチル、1−イソプロピル−2−メチル−ブチル、1−エチル−プロピル)および−NH−C(O)−(CR10R11)vHで構成される群から選択され、
各R7は、C1−6アルキル、C1-6アルコキシ、−C(O)R12、OH、COOH、−NO、N置換インドリンおよび細胞膜移行ペプチドで構成される群から選択される個別の構成要素であり、
各R8およびR9は、H、OH、シクロヘキサン、シクロペンタン、フェニル、置換フェニル、およびシクロペンタジエンで構成される群から個別に選択され、
各R10およびR11は、H,シクロヘキサン、フェニルおよび細胞膜移行ペプチドで構成される群から個別に選択され、
R12は、C1−6アルキルおよびアリールで構成される群から選択される構成要素であり、uおよびvの各々は個別に0〜20であり、
ここで、R2,R3,R4,R5およびR6のうちの1つは−COOHであり、R2,R3,R4,R5およびR6の残余は各々、F,H,OCH3およびCH3で構成される群から個別に選択される。

0052

このような化合物の1つは0620−0057であり、その構造は次のとおりである。

0053

薬理活性剤は、内在化ペプチドに結合させて、細胞への取り込みおよび/または血液脳関門の通過を促進することができる。内在化ペプチドは、多くの細胞タンパクまたはウイルスタンパクが膜を横断するのを可能にする、比較的短いペプチドの周知のクラスである。内在化ペプチドは、細胞膜形質導入ペプチドまたは細胞透過性ペプチドとしても知られ、たとえば5〜30個のアミノ酸を有し得る。このようなペプチドは、一般に、膜透過を促進すると信じられているアルギニン残基および/またはリジン残基の上記の通常の表記から、(一般のタンパクと比べて)正電荷を有する。いくつかのこのようなペプチドは、少なくとも5,6,7または8個のアルギニン残基および/またはリジン残基を有する。例には、アンテナペディアタンパク(Bonfanti,Cancer Res.57,1442−6(1997))(およびその変異体)、ヒト免疫不全ウイルスのtatタンパク、タンパクVP22,ヘルペスシンプレックスウイルスタイプ1のUL49遺伝子の産生物ペネトラチン、SynB1および3、トランスポータン(Transportan)、アンフィシック(Amphipathic)、gp41NLS、polyArg、ならびに、リシンアブリン、モデシンジフテリア毒素コレラ毒素炭疽毒素易熱性毒素、および、緑膿菌外毒素A(ETA)などの、いくつかの植物および細菌タンパク毒素が含まれる。他の例は、以下の文献に記載されている(Temsamani,Drug Discovery Today,9(23):1012−1019,2004;De Coupade,Biochem J.,390:407−418,2005;Saalik Bioconjugate Chem.15:1246−1253,2004;Zhao,Medicinal Research Reviews 24(1):1−12,2004;Deshayes,Cellular and Molecular Life Sciences 62:1839−49,2005);Gao,ACS Chem.Biol.2011,6,484−491,SG3(RLSGMNEVLSFRWL)(すべて参照によって組み込まれる)。

0054

好ましい内在化ペプチドは、HIVウイルス由来のtatである。先の研究で報告したtatペプチドは、HIVtatタンパクに見られる標準的アミノ酸配列YGRKKRRQRRR(配列番号2)を含み、またはこの配列から成る。このようなtatモチーフに隣接する追加の残基が(薬理活性剤の他に)存在する場合、その残基は、たとえば、tatタンパク由来のこのセグメントに隣接する天然アミノ酸、もしくは、2つのペプチドドメインを連結するのに一般に使用される種類のスペーサまたはリンカーアミノ酸、たとえば、gly(ser)4(配列番号44)、TGEKP(配列番号45)、GGRRGGGS(配列番号46)、もしくはLRQRDGERP(配列番号47)(たとえば、Tang et al.(1996),J.Biol.Chem.271,15682−15686;Hennecke et al.(1998),Protein Eng.11,405−410)を参照)であり、または、隣接残基なしに変異体の取り込みをもたらす能力を大きく減じることのない他のあらゆるアミノ酸であり得る。好ましくは、活性ペプチド以外の隣接アミノ酸の数は、YGRKKRRQRRR(配列番号2)のどちら側においても10を超えない。YGRKKRRQRRR(配列番号2)のC末端に隣接する追加のアミノ酸残基を含む1つの好適なtatペプチドは、YGRKKRRQRRRPQ(配列番号48)である。ただし、好ましくは、隣接アミノ酸は存在しない。使用可能な他のtatペプチドには、GRKKRRQRRRPQ(配列番号4)およびGRKKRRQRRRP(配列番号72)が含まれる。

0055

N型カルシウムチャンネルに結合する能力が低い上記tatペプチドの変異体は、国際特許出願公開公報第WO/2008/109010号に記載されている。そのような変異体は、アミノ酸配列XGRKKRRQRRR(配列番号49)を含み、またはこのアミノ酸配列から成り、ここで、Xは、Y以外のアミノ酸であるか、存在しない(この場合、Gが自由N末端残基である)。好ましいtatペプチドは、N末端のY残基がFで置換されている。したがって、FGRKKRRQRRR(配列番号3)を含む、またはこの配列から成るtatペプチドが好ましい。他の好ましい変異tatペプチドは、GRKKRRQRRR(配列番号1)から成る。他の好ましいtatペプチドは、RRRQRRKKRGまたはRRRQRRKKRGY(配列番号70のアミノ酸1〜10または1〜11)を含み、またはこの配列から成る。N型カルシウムチャンネルを阻害することなく薬理活性剤の取り込みを促進する他のtat由来ペプチドには、次の表2に示したものが含まれる。

0056

Xは、遊離アミ末端、1個もしくは2個のアミノ酸、または結合部分を表し得る。内在化ペプチドは、結合ペプチドまたはペプチド模倣体を各型内に有するまたは有しない、インベルソ型またはレトロ型またはインベルソレトロ型で使用することができる。たとえば、好ましいキメラペプチドは、RRRQRRKKRGY−KLSSIESDV(NA−1もしくはTat−NR2B9cとしても知られる配列番号70)のアミノ酸配列を含み、もしくはこのアミノ酸配列から成り、または、RRRQRRKKRGY−KLSSIETDV(配列番号37)のアミノ酸配列を含み、もしくはこのアミノ酸配列から成る。

0057

内在化ペプチドは、従来の方法によって、薬理活性剤に取り付けることが可能である。たとえば、薬剤は、化学結合で、たとえばカップリン剤または結合剤によって、内在化ペプチドに結合させることができる。多くのそのような試薬が市販されており、S.S.Wong,Chemistry of Protein Conjugation and Cross−Linking,CRCPress(1991)によって、総説されている。架橋化剤のいくつかの例には、J−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオプロピオネート(SPDP)またはN,N’−(1,3−フェニレンビスマレイミド;N,N’−エチレン−ビス−(ヨードアセタミド)または6〜11個の炭素メチレン架橋(これは、比較的にスルフヒドリル基に特異的である)を有する他の試薬;および、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン(これは、アミノ基およびチロシン基不可逆的結合を形成する)が含まれる。他の架橋化剤には、p,p’−ジフルオロ−m、m’−ジニトロジフェニルスルホン(これは、アミノ基およびフェノール基と不可逆的架橋を形成する);ジメチルアジピミデート(これは、アミノ基に特異的である);フェノール−1,4−ジスルホニルクロライド(これは、主としてアミノ基と反応する);ヘキサメチレンジイソシアネートもしくはジイソチオシアネート、または、アゾフェニル−p−ジイソシアネート(これは、主としてアミノ基と反応する);グルタルアルデヒド(これは、いくつかの異なる側鎖と反応する)、および、ジスジアゾベンジジン(これは、主としてチロシンおよびヒスチジンと反応する)が含まれる。

0058

内在化ペプチドへのペプチド付着である薬理活性剤は、好ましくはN末端にて内在化ペプチドに融合したペプチド配列を含む、融合タンパクを生成することによって達成することができる。

0059

PSD−95を阻害するペプチド(または他の薬剤)を内在化ペプチドに結合させることに代えて、または加えて、そのようなペプチドは脂質に結合させて(脂質付加)、複合体の疎水性をペプチド単独よりも高め、これによって、結合ペプチドが細胞膜および/または脳関門を透過するのを促進することができる。脂質付加は、好ましくは、N末端アミノ酸において実施されるが、PSD−95とNMDAR 2Bとの相互作用を阻害するペプチドの能力が、50%を超えて低下しないことを条件に、内部アミノ酸においても実施することが可能である。好ましくは、脂質付加は、最もC末端の4個のアミノ酸の1つ以外のアミノ酸において実施される。脂質は、水よりもエーテル溶け易い有機分子であり、脂肪酸グリセリドおよびステロイドを含む。脂質付加の好適な形態は、ミリストイル化、パルミトイル化、または、ラウリル酸およびステアリン酸などの、好ましくは10〜20炭素の鎖長を有する他の脂肪酸の付加のほか、ゲラニル化、ゲラニルゲラニル化およびイソプレニル化である。天然タンパクの翻訳後の変更で生じる種類の脂質付加が、好ましい。ペプチドのN末端アミノ酸のアルファアミノ基へのアミド結合の形成を介する、脂肪酸での脂質付加も好ましい。脂質付加は、予め脂質付加されたアミノ酸を含むペプチド合成により行うことができ、インビトロで酵素的に、または、遺伝子組み換え発現によって、化学架橋によって、もしくはペプチドの化学的誘導体化によって、実施することができる。ミリストイル化によって変更されたアミノ酸および他の脂質変更体は、市販されている。

0060

脂質付加は、好ましくは、標準的なtatペプチドを高用量(たとえば、3mg/kg以上)で投与したときに見られるような血圧の一過性の低下を引き起こすことなく、または、少なくとも、標準的なtatペプチドに結合した同一のペプチドよりも小さい低下を伴うのみで、結合ペプチド(たとえば、KLSSIESDV(配列番号5)またはKLSSIETDV(配列番号43))が、細胞膜および/または血液脳関門を通過するのを促進する。

0061

随意的にtatペプチドに融合された、薬理活性ペプチドは、固相合成または遺伝子組み換え法によって合成することができる。ペプチド模倣体は、科学文献および特許文献、たとえば、Organic Syntheses Collective Volumes,Gilman et al.(Eds) John Wiley & Sons,Inc.,NY, al−Obeidi(1998) Mol.Biotechnol. 9:205−223;Hruby(1997) Curr.Opin.Chem.Biol.1:114−119;Ostergaard(1997) Mol.Divers.3:17−27;Ostresh(1996) Methods Enzymol.267:220−234、に記載されている様々な処理および手法を用いて合成することができる。

0062

III.再かん流のための薬剤および方法
虚血を引き起こすプラークおよび血液塊(塞栓としても知られる)は、薬理的手段および物理的手段の双方によって、溶解し、除去し、または迂回することが可能である。プラークおよび血液塊の溶解および除去ならびに結果として生じる血流の回復は、再かん流と呼ばれる。1つのクラスの薬剤は、血栓溶解により作用する。これらの薬剤は、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)の注入を通じて、プラスミンによる線維素溶解を模すことによる。プラスミンは、架橋したフィブリン網目(血液塊の骨格)を消去して、血液塊を可溶にし、他の酵素によるさらなるタンパク分解に付し、閉塞した血管の血流を回復させる。血栓溶解剤の例には、組織プラスミノーゲン活性化因子t−PA、アルテプラーゼ(Activase)、レテプラーゼ(Retavase)、テネクテプラーゼ(TNKase)、アニストレプラーゼ(Eminase)、ストレプトキナーゼ(Kabikinase,Streptase)、および、ウロキナーゼ(Abbokinase)が含まれる。

0063

再かん流に使用することができる薬物の他のクラスは、血管拡張剤である。これらの薬剤は、血管を弛緩させ広げて、血液が閉塞の周囲を流れるようにすることで、作用する。血管拡張剤の種類のいくつかの例には、アルファ−アドレナリン受容体拮抗剤(アルファ−ブロッカー)、アンジオテンシン受容体ブロッカー(ARB)、ベータ2−アドレナリン受容体拮抗剤(β2−ブロッカー)、カルシウムチャンネルブロッカー(CCB)、中枢作用性交神経遮断剤、直接作用性血管拡張剤、エンドセリン受容体拮抗剤神経節遮断剤、ニト拡張剤(nitrodilator)、ホスホジエステラーゼ阻害剤カリウムチャンネル開口剤、および、レニン阻害剤が含まれる。

0064

再かん流に使用することができる薬物の他のクラスは、エピネフリンフェニレフリンプソイドエフェドリンノルエピネフリンノルエフェドリンテルブタリンサルブタモール、および、メチルエフェドリンなどの、昇圧剤(つまり、血圧を上昇させる薬剤)である。上昇したかん流圧は、障害物の周囲の血液の流れを増大させ得る。

0065

再かん流の機械的方法には、血管形成術カテーテル法動脈バイパス移植術ステント挿入法、塞栓除去術、または、動脈内膜切除術が含まれる。このような処置は、プラークを機械的に除去し、血管を開いたままにすることによって、血小板の流れを回復させ、よって、血液が、プラークの周りを流れ、または、プラークを迂回し得るようになる。

0066

再かん流の他の方法には、血流を身体の他の領域から脳に転用する装置の使用が含まれる。1つの例は、大動脈を部分的に閉塞するカテーテルであり、たとえば、CoAxia NeuroFlo(商標)カテーテル装置であり、これは、最近、無作為化試験に付されており、脳卒中治療についてのFDAの認可を受けるかも知れない。この装置は、虚血の発症後14時間までの脳卒中を示す対象者に、使用されている。

0067

非血栓溶解剤または再かん流の機械的方法の使用は、ペプチドPSD−95阻害剤をタンパク分解のために使用せず、したがって、このことは、PSD−95阻害剤および再かん流が同時にまたは時間的に近接して施される場合には、利点であるかも知れない。

0068

IV.脳卒中
脳卒中は、原因によらずCNSにおける血流の損傷から生じる状態である。原因となり得るものには、塞栓症、出血および血栓形成が含まれる。いくつかの神経細胞は、血流損傷の結果、速やかに死ぬ。これらの細胞は、グルタメートを含むその成分分子を放出し、グルタメートはNMDA受容体を活性化し、このことは細胞内カルシウムベル、および細胞内酵素レベルを上昇させて、さらなる神経細胞の死(興奮毒性カスケード)をもたらす。CNS組織の死は、梗塞と呼ばれる。梗塞体積(つまり、脳卒中の結果で死んだ神経細胞の体積)は、脳卒中の結果による病理損傷の程度の指標として使用することができる。症状的効果は、梗塞の体積、および、梗塞が脳のどこに位置するか、の双方に依存する。ランキンストロークアウトカムスケール(Rankin,Scott Med J;2:200−15(1957))およびバーセルインデックスなどの、障害指数は、症状的損傷の尺度となり得る。ランキンスケールは、以下のように、対象者の全体的状態を直接評価することに基づいている。

0069

バーセルインデックスは、日常生活の10の基本的動作を行う対象者の能力についての一連の質問に基づいており、結果は0〜100のスコアで表され、低いスコアは障害が重いことを示す(Mahoney et al.,Maryland State Medical Journal 14:56−61(1965))。

0070

代替の脳卒中重度転帰は、www.ninds.nih.gov/doctors/NIH_Stroke_Scale_Booklet.pdfにて入手可能な、NIHストロークスケールを用いて測定することができる。

0071

このスケールは、対象者の意識、運動知覚および言語機能のレベルの評価を含む、11群の機能を行う対象者の能力に基づいている。

0072

虚血性脳卒中とは、より具体的には、脳への血流の妨害によって引き起こされる種類の脳卒中を指す。この種の妨害の基礎疾患は、血管壁内張りする脂肪性沈着物成長が、最も普通である。この状態は、アテローム性動脈硬化と呼ばれる。これらの脂肪性沈着物は、2種類の妨害を引き起こし得る。脳血栓症とは、血管の詰まった部分に成長する血栓(血液塊)を指す。「脳塞栓」とは、一般に、循環系の他の場所、通常、心臓または胸郭上部および頸部の大動脈、で形成された血液塊またはアテロームを指す。次いで、血液塊および/またはアテロームの一部が抜け出して血流に入り、脳の血管を通って、最終的に、通り抜けるには小さすぎる血管に達する。塞栓の第2の重要な原因は、心房細動として知られる不規則心拍である。これは、血液塊が心臓で形成され、遊離して脳に達する状況を生成する。虚血性脳卒中の原因となり得るさらなるものには、出血、血栓形成、動脈または静脈切開心拍停止、出血を含むあらゆる原因のショック、および、脳血管または脳に達する血管の外科手術または心臓手術などの医原生の原因が含まれる。虚血性脳卒中はすべての脳卒中の症例の、約83%を占める。

0073

一過性脳虚血発作(TIA)は、小脳卒中または警告脳卒中である。TIAにおいては、虚血性脳卒中を示す状態が存在し、一般的な脳卒中の危険信号が現れる。ただし、妨害(血液塊)は、短時間生じて、通常の機構で自然に消える傾向にある。心臓手術を受ける対象者は、一過性脳虚血発作の危険性が特に高い。

0074

出血性脳卒中は、脳卒中症例の約17%を占める。これは、破裂して周囲の脳に出血する、弱くなった血管の結果で生じる。血液は鬱積し、周囲の脳組織圧迫する。出血性脳卒中の2つの一般な種類は、脳内出血およびくも膜下出血である。出血性脳卒中は、弱くなった血管の破裂の結果生じる。弱くなった血管の破裂の原因となり得るものには、高い血圧が血管の破裂を引き起こす高血圧性出血、または、脳動脈瘤を含む破裂性脳血管奇形動静脈奇形(AVM)もしくは海綿状奇形などの、弱くなった血管の他の根本原因が含まれる。出血性脳卒中は、梗塞部の血管を弱める虚血性脳卒中の出血性変化、または、異常に弱い血管を包含するCNSにおける原発性もしくは転移性腫瘍からの出血によっても生じ得る。出血性脳卒中は、脳血管への直接の外科的損傷などの、医原生の原因からも生じ得る。動脈瘤は、血管の弱った領域の膨張である。放置すると、動脈瘤は弱くなり続け、最終的に破裂して脳に出血する。動静脈奇形(AVM)は、異常に形成された血管の房である。海綿状奇形は、弱くなった静脈構造からの出血を引き起こし得る静脈異常である。これらの血管のいずれも、破裂して、脳への出血を引き起こし得る。出血性脳卒中は、身体外傷からも生じ得る。脳の一部分における出血性脳卒中は、出血性脳卒中で失われる血液の不足を通じて、他の部分に虚血性脳卒中をもたらし得る。

0075

V.治療に適する対象者
治療に適する対象者には、CNS、または、身体の他の部位であって、閉塞が脳内の血流を妨げることになる血管に影響を及ぼす部位、のいずれかに虚血の兆候または症状を呈している対象者が含まれる。これらの対象者には、脳卒中の兆候もしくは症状、心筋虚血肺塞栓症、肢虚血、腎虚血または網膜虚血を呈している対象者が含まれる。このような対象者には、そのような状態が疑われるが他の状態を排除することができない対象者の他、一般に認められている基準、たとえばDSMIV TRに従って診断される対象者が、含まれる。

0076

治療に適する対象者には、また、虚血の危険性がありながら、虚血が未だ発症していない対象者も含まれる。対象者は、彼または彼が、対象集団よりも虚血を生じる危険性が高い場合に、危険性がある。対照集団には、その疾患と診断された、または、その疾患の家族歴を有する一般集団(たとえば、年齢性別人種および/または民族性適合する)から無作為に選択された1以上の個体が含まれてよい。対象者は、その疾患に関わる「危険因子」がその対象者に付随していることが判った場合、疾患の危険性があると考え得る。危険因子には、たとえば、対象者の集団の統計的または疫学的研究を通じた、所与の疾患に関わるあらゆる活性、形質出来事または特性が含まれる。したがって、対象者は、危険因子を特定する研究が特にその対象者を含んでいなかった場合でも、疾患について危険性があると分類され得る。たとえば、一過性脳虚血発作の頻度は、心臓手術を受けていない対象者の集団よりも心臓手術を受けた対象者の集団で高いので、心臓手術を受ける対象者は、一過性脳虚血発作の危険性がある。

0077

脳に影響する虚血の危険性のある対象者には、脳またはCNSに、血管内手術クリッピング、ステント挿入、またはマイクロカテーテル法などの、外科的処置を受ける者が含まれる。このような対象者には、また、脳に血液を供給する血管(つまり、脳を心臓に接続する血管、たとえば、頸動脈および頸静脈)、または、網膜腎臓脊髄もしくは肢に血液を供給する動脈に影響を及ぼす身体のどこかに手術を受ける者も含まれる。対象者の好ましいクラスは、脳動脈瘤を治療するために血管内手術を受ける者である。これらの種類の手術を受ける対象者は、CNSに影響を及ぼす虚血の危険性が高い。脳卒中の危険性がある対象者には、喫煙者高血圧者糖尿病者、高コレステロール血症者である患者も含まれる。特に危険性の高い対象者は、脳卒中、小脳卒中、または一過性虚血発作既往があるものである。

0078

VI.組み合わせた治療方法
組み合わせた方法は、PSD−95阻害剤を投与すること、および、再かん流療法の一形態を、治療に適する対象者に施すことを含む。PSD−95阻害剤および再かん流は、どちらの順序でも、または同時に、施すことができる。通常、PSD−95阻害剤および再かん流は、同時に、重複もしくは近接する時間(つまり、15分間隔以内)に施され、または、PSD−95阻害剤が先に施される。

0079

前もって予測することができない虚血の治療については、PSD−95阻害剤は、虚血の発症後できるだけまたは実際的に速やかに、投与することができる。たとえば、PSD−95阻害剤は、虚血の発症後0.5,1,2,3,4,5,6,9,12または24時間以内に、投与することができる。前もって予測することが可能な虚血については、PSD−95阻害剤は、虚血の発症の前に、発症と同時に、または発症の後に、投与することができる。たとえば、手術に起因する虚血については、PSD−95阻害剤は、虚血が生じているか生じそうであるかにかかわらず定期的に、手術の開始前30分から始まり手術後1,2,3,4,5,6,9,12または24時間に終わる期間に、投与されることがある。PSD−95阻害剤は、重大な副作用がないので、脳卒中または虚血の他の状態が疑われるときは、当技術分野において承認されている基準に従う診断がなされていなくても、投与することが可能である。たとえば、PSD−95阻害剤は、脳卒中が起こった場所(たとえば、患者の家庭)で、または、対象者を病院に搬送する救急車の中で、投与することができる。PSD−95阻害剤は、また、発症前の脳卒中または虚血の他の状態の危険性があり、実際にその状態を生じるかも生じないかも知れない対象者にも、安全に投与することができる。

0080

PSD−95阻害剤の投与に続き、または時として前に、虚血の兆候および/または症状を呈する対象者は、対象者がCNS内にまたはCNSに影響する虚血を有するかを判断するために、および、対象者が出血を有するまたは出血を疑われるかを判断するために、さらなる診断評価を受けることができる。脳卒中の症状を呈する対象者において特に、その脳卒中が出血または虚血のどちらの結果であるかを判断する試験では、出血が脳卒中の17%を占める。診断試験は、CATスキャン、MRIもしくはPET画像スキャンなどの1つ以上の器官のスキャン、または、脳卒中が起こっていることを示唆する生体標識についての血液検査を含み得る。B型神経成長因子フォン・ヴィレブランド因子マトリクスメタロプロテイナーゼ−9、および、単球走化性タンパク−1(Reynoldset al.,Clinical Chemistry 49:1733−1739(2003)を参照)を含む、脳卒中に関係するいくつかの生体標識が知られている。スキャンされる器官には、虚血の場所であると疑われるあらゆる器官(たとえば、脳、心臓、肢、脊椎、肺、、網膜)の他、出血の源であると疑われるあらゆる器官が含まれる。脳のスキャンは、虚血性脳卒中と出血性脳卒中とを区別するための普通の手続である。診断評価は、対象者の病歴を記録しまたは検討すること、および他の試験を実施すること、も含み得る。以下の因子のいずれかが単独でまたは組み合わせで存在することは、再かん流療法が許容できない危険性を示すかを評価するのに使用することができる:対象者の症状が小さいまたは急速に改善していること、対象者が脳卒中の発症に際し発作を起こしたこと、対象者が他の脳卒中または重篤な頭部外傷を過去3ヶ月以内に有したこと、対象者が過去14日以内に大きな手術を受けたこと、対象者が頭蓋内出血の既知の病歴を有すること、対象者が185mmHgを超える最高血圧持続的に有すること、対象者が110mmHgを超える最低血圧を持続的に有すること、対象者の血圧を降下させるために積極的な治療が必要なこと、対象者がくも膜下出血を示唆する症状を有すること、対象者が過去21日以内に消化管出血または尿路出血を有すること、対象者が過去7日以内に非圧縮性部位に動脈穿刺を受けたこと、対象者が過去48時間以内にヘパリンを受けPTTが上昇していること、対象者のプロトロンビン時間が15秒を超えること、対象者の血小板数が100,000μL未満であること、対象者の血清グルコースが50mg/dL未満であるまたは400mg/dLを超えること、対象者が血友病患者であるか他の凝固欠乏症を有すること。

0081

さらなる診断調査は、承認されている基準に従って、または少なくとも高い可能性で、調査の前に、対象者が虚血状態を有するか、および、対象者が出血を有するか、出血の許容できない危険性を有するか、または、副作用の許容できない危険性により、再かん流療法を受けることから除外されるか、を決定する。そして、CNS内のまたはCNSに影響しそうな虚血状態という診断が確認されており、副作用の許容できない危険性を有しない対象者は、再かん流療法に付される。好ましくは、再かん流療法は、何らかの診断手続の完了後出来る限り早く実施される。何人かの対象者において、再かん流療法は、虚血の発症後0,1,2,3,4,4.5,5,6,7,8,10,12,15,18,または24時間を超えて開始される。医療機関にて(たとえば、血管内手術中に)発生する脳卒中において、治療は発症後1時間よりも前に開始される。何人かの対象者において、再かん流療法は、虚血の発症後0.5〜6,0.5〜12,0.5〜18または0.5〜24時間に開始される。何人かの対象者において、再かん流療法は、これまで再かん流療法が有効であると考えられていた3〜4.5時間の時間帯外に開始される。たとえば、何人かの対象者において、再かん流療法は、虚血の発症後3時間または4.5時間を超え、虚血の発症後24時間または48時間までに、開始される。何人かの対象者において、再かん流療法は、虚血の発症後5,6,7,8,9または10から24時間または48時間までに、開始される。何人かの対象者において、再かん流療法は、虚血の発症後275〜390分から開始される。何人かの対象者において、再かん流療法は、CTスキャンで完全梗塞がないこと、コンピュータ断層撮影(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)またはポジトロン断層撮影(PET)画像基準による虚血性ペナンブラの証拠があること、および脳出血がないことなどの、特定の診断基準に基づいて、再かん流について適格であるとされることを条件に、虚血の発症の時間にかかわらず、開始される。

0082

再かん流の時間は、PSD−95阻害剤の投与から測定することもできる。時間間隔は、たとえば、5分〜24時間または48時間であり得る(PSD−95の投与と再かん流との間隔であり、ここでも本明細書の他所でも、PSD−95阻害剤の投与の開始から再かん流実施の開始までが測定される)。時間間隔は、たとえば、15分〜6時間、15分〜4.5時間、15分〜3時間、15分〜1時間、30分〜6時間、30分〜3時間、30分〜4.5時間、1〜3時間、または1〜4.5時間である。タンパク分解を通じて作用する再かん流のための薬剤(たとえば、tPA)と組み合わせて使用されるTat−NR2B9cなどのペプチドPSD-95阻害剤については、より長い間隔が有利となり得、これは、より長い間隔は、阻害剤が、生じるプラスミンによるタンパク分解を受ける前の、作用を発現するまでの時間を長くするからである。

0083

虚血状態が確認されていない、または虚血状態ではなさそうであると考えられる対象者は、通常、再かん流療法は施されない。このような対象者は、PSD-95阻害剤から利益を受けていないかも知れないが、治療されない場合よりも悪くなることもない。虚血状態が確認されていない、または虚血状態ではなさそうであると考えられるが、再かん流療法の副作用の許容できない危険性があると考えられる対象者は、再かん流療法を施されない。このような対象者は、PSD−95阻害剤の利益を得るかも知れないが、再かん流療法の許容できない副作用の危険性から免れる。

0084

PSD−95阻害剤および再かん流療法の両治療は、梗塞の大きさおよび虚血による機能障害を減少させる能力を、個別に有する。本方法に従って組み合わせて使用されるときは、梗塞の大きさおよび/または機能障害の減少は、好ましくは、組み合わせ(つまり、協働的)以外の比較可能投与計画で単独で投与されるいずれかの薬剤の使用よりも大きい。より好ましくは、梗塞の大きさおよび/または機能障害の減少は、組み合わせ以外の比較可能な投与計画での単独の薬剤で達成される減少の、少なくとも和であり、または、好ましくは、和を超える(つまり、相乗的である)。いくつかの投与計画において、再かん流療法は、同時のまたは前もってのPSD−95阻害剤の投与がなければ無効であるときでも、虚血の発症後の時点(たとえば、4.5時間超)で、梗塞の大きさおよび/または機能障害を減少させるのに有効である。換言すれば、対象者がPSD−95阻害剤および再かん流療法を施されるとき、再かん流療法は、好ましくは、PSD−95阻害剤なしでより早い時点に施される場合と少なくとも同様に有効である。したがって、PSD−95阻害剤は、再かん流療法が効く前または効くときに、虚血の1つ以上の損傷作用を低減することによって、再かん流療法の有効性を効果的に高める。したがって、PSD−95阻害剤は再かん流療法の実施の遅延補償し、その遅延は、対象者が彼または彼女の初期症状を認識することの遅延によるものか、対象者を病院または他の医療機関に搬送することの遅延によるものか、あるいは、虚血の存在および/もしくは出血の非存在、またはその許容できない危険性を確立するための診断手続を実施することの遅延によるものか、にかかわらない。PSD−95阻害剤と再かん流療法との、相加的または相乗的効果を含む、統計的に有意な組み合わせ効果は、臨床試験における集団間で、または、臨床前研究における動物モデルの集団間で、立証することができる。

0085

VI.有効な投与計画
PSD−95阻害剤は、CNSの虚血の1つ以上の損傷作用を軽減し、阻害しまたは遅延させる量、頻度および投与経路で投与される。他に示さない限り、内在化ペプチドに結合した薬理活性剤を含む、キメラ薬剤である阻害剤の用量は、キメラ薬剤の薬理活性成分のみならず、薬剤全体についていう。有効量は、疾病を患い本発明の薬剤で治療される対象者(または動物モデル)の集団における虚血の1つ以上の損傷作用を、その疾病または症状を患いその薬剤で治療されない対象者(または動物モデル)の対照集団における損傷に比べて、軽減し、阻害しまたは遅延させるに足る薬剤の量を意味する。量は、また、個々の治療対象者が、本発明の方法により治療されない比較対象者の対照集団における平均の転帰よりも、好ましい転帰を示す場合に、有効であると考えられる。有効な投与計画には、意図する目的を達成するために必要な、頻度、投与経路での有効な薬剤の投与が含まれる。

0086

治療を必要とする状態が脳卒中であるとき、転帰は梗塞体積または障害指数によって決定することができ、用量は、治療を受けた個々の対象者が、ランキンスケールの2以下の障害、または、バーセルスケールで75以上を示す場合に、有効であると認識することができ(Lees et al.,N Engl J Med 2006;354:588−600を参照)、または、治療を受けた対象者の集団が、いずれかの障害スケール(たとえば、バーセル、ランキン、NIHストロークスケール)上で、治療を受けていない比較集団よりも、有意に改善された(つまり、より軽度の障害)スコア分布を示す場合に、もしくは、治療を受けた対象者の集団が、治療を受けていない比較集団と比べて、有意に減少した梗塞体積もしくは梗塞数を示す場合に、有効であると認定することができる。薬剤の単回用量が、通常、脳卒中の治療に十分である。ただし、複数回用量を、たとえば、1,2,3,6,12,18または24時間の時間間隔で、完全閉塞の存在がCTスキャンで検出されるまで、または、さらなる利益が見られなくなるまで、投与することもできる。

0087

薬剤に応じて、投与は、非経口、静脈内、経鼻、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、くも膜下腹腔内、局所的、鼻腔内、または、筋肉内に行うことができる。ペプチド薬剤には静脈内投与が好ましい。

0088

内在化ペプチドを含むキメラ薬剤、特に、アミノ酸配列YGRKKRRQRRR(配列番号2)を含むHIVtatペプチドについては、本薬剤の投与は、ヒスタミンの放出および高レベルの内在化ペプチドに関連するその下流効果を低減するために、抗炎症剤と組み合わせてもよいし、しなくてもよい。併用に好ましい薬剤は、クロモリンもしくはロドキサミド、または本明細書に記載のいずれか他の薬物などの、肥満細胞脱顆粒阻害剤である。抗ヒスタミン剤またはコルチコステロイドを、特に、両者を組み合わせて、または高用量で、使用することも可能である(国際特許出願公開公報第WO2009/076105号および第WO2010/144742号を参照)。

0089

ヒトへの投与については、キメラ薬剤Tat−NR2B9cの好ましい用量は、2〜3mg/kg、および、より好ましくは2.6mg/kgである。示した用量は、一般的な病院で測定され得る精度の許容範囲を含むものと理解すべきである。この用量は、ほとんどの対象者において、かなりの量のヒスタミンの放出およびその後遺症なしで、薬剤を投与することができる最大用量なので、好ましい。高用量でのヒスタミンの放出は、上述のように抗炎症剤の併用で制御することが可能であり、いずれにせよ、通常は有害事象なしで自然と解消するが、用量を3mg/kg未満、および、好ましくは2〜3mg/kg、より好ましくは2.6mg/kgに保つことによって、回避するのが最も良い。このような量は、単回投与、つまり、疾病の症状発現当たり1回投与、のものである。このような用量は、毎日、またはより頻繁に、投与することができる。より低い用量、随意的に、1〜2mg/kg、0.5〜1mg/kg、0.1〜0.5mg/kg、または、0.1mg/kg未満、を用いてもよい。反復投与の投与計画については、さらに低い用量を使用してよい。

0090

上記で示した用量は、キメラ薬剤Tat−NR2B9c(YGRKKRRQRRRKLSSIESDV;配列番号6)のものである。同じ効果を達成するための他の薬剤の等価用量は、いくつかの手法で決定することができる。1個または数個のアミノ酸が置換、挿入または削除されており、分子量が約±25%の範囲内で同じに保たれている、その薬剤の近縁変異体については、上記の用量が依然として良好な指針である。ただし、一般に、他の薬剤については、等価用量は、内在化ペプチドが存在する場合、これを含むまたは含まないその薬剤の分子量、標的に対するKd、ならびに、その薬物動態および薬力学パラメータ、に依存して変り得る。いくつかの薬剤については、等価用量は、等モル量の薬理活性剤を供給するように、計算することができる。他の薬剤については、Kdまたは薬物動態もしくは薬力学パラメータの差異を考慮して、さらなる調整をすることができる。いくつかの薬剤については、等価用量は、動物モデルまたは臨床試験において同じ終点への到達を達成した用量から、実験的に決定される。

0091

Tat−NR2B9cなどのペプチド薬剤は、好ましくは、血管への注入、より好ましくは、静脈注射によって、供給される。キメラ薬剤Tat−NR2B9cについては、これらの考察間のバランスを提供する好ましい注入時間は、5〜15分、より好ましくは10分である。示した時間は、±10%の誤差の記録を含むと理解すべきである。注入時間は、完了した初期の注入で残るすべての液滴を洗い落すためのすすぎ注入の延長時間を含まない。Tat−NR2B9cについての注入時間は、随意的に内在化ペプチドに結合した他の薬理活性剤、特に、上述のTat−NR2B9cの近縁変異体、の指針となり得る。

0092

PSD−95阻害剤は、医薬組成物の形態で投与することが可能である。医薬組成物は、一般に、GMP条件下で製造される。非経口投与の医薬組成物は、好ましくは、殺菌されており(たとえば、ペプチドのフィルター殺菌)、発熱物質がない。医薬組成物は、単位用量型(つまり、単回投与のための用量)で提供することができる。医薬組成物は、1つ以上の生理学的に許容可能な担体希釈剤添加剤、または、キメラ薬剤を処理して薬学的に使用し得る組成物にするのを容易にする補助剤、を使用する従来の方法で、調製することができる。適切な組成物は、選択される投与経路に依存する。

0093

キメラ薬剤Tat−NR2B9cの例示的な組成物は、生理食塩水(0.8〜1.0%および好ましくは0.9%生理食塩水)またはリン酸緩衝生理食塩水中に、10〜30mg/mlの濃度、たとえば、16〜20mg/ml、18mg/mlまたは20mg/mlの濃度で、ペプチドを含有する。凍結すると、このような組成物は、4年以上の期間にわたって安定である(僅かなペプチドの分解または凝集)。追加の添加剤を加えることもでき、この安定性を得るためには、このような添加物を有しない生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水で十分である。使用のためには、このような組成物は、融解され、血管への注入のために、希釈されてより大きな体積の生理食塩水とされる。

0094

再かん流のための薬理活性剤の多くの例が、臨床に使用されている。このような薬剤は、それらの従来の組成物、用量、投与経路、および投与頻度に従って、本組み合わせ方法で使用することができる(Physician’s Desk Reference、および適用可能なパッケージ挿入物を参照)。たとえば、tPAまたは他の血栓溶解剤は、ヒトにおいて、0.5〜1.5mg/kg、好ましくは0.9mg/kgの用量で静脈内に投与することが可能である。tPAまたは他の血栓溶解剤は、また、ヒトの患者において、36時間にわたる0.02〜0.1mg/kg/時の用量で、動脈内に投与することも可能である。tPAまたは他の血栓溶解剤は、また、損傷した血流の部位、たとえば、脳の塞栓、に直接投与することも可能であり、これについては、好ましい用量は、ヒトの患者において、2mg(または、30kg未満の体重の患者においてはそれ未満)である。局所投与は、好ましくは、カテーテル経由である。梗塞部位への直接の投与は、ペプチドPSD−95阻害剤がタンパク分解に曝される可能性を低減する。同様に、再かん流の機械的方法を、従来の実務に従って、採用することも可能である。

0095

実施例1:
皺脳旧世界霊長類における脳卒中後の神経保護作用
序論

0096

遺伝学上、解剖学上および行動上のヒトへの類似性を有する高次皺脳非ヒト霊長類(NHP)を使用して、シナプス後肥厚部タンパクPSD−95を神経毒シグナル伝達経路から分離する化合物であるPSD−95阻害剤による神経保護作用を試験した。ここで、脳卒中損傷は、脳卒中発症後にPSD−95阻害剤が投与されるNHPにおいて、防止され得ることが示された。この治療は、磁気共鳴画像法(MRI)によって測定される梗塞体積および組織構造を減少させ、虚血脳組織のゲノム規模スクリーニングにおいて虚血細胞の遺伝子転写能力を保存し、神経行動学的アッセイにおいて神経機能を大きく保存した。MRIによる組織神経保護作用の程度は、神経機能の保存に強く対応し、脳組織完全性機能的転帰を反映し得るという未証明見解を支持した。我々の知見は、脳卒中後の組織神経保護作用および改善された機能的転帰は、皺脳NHPにおいてPSD−95阻害剤を用いて明白に達成することが可能である、ということを確立する。

0097

実験の一般的流れおよび評価

0098

割り付け隠匿し、すべての転帰を評価して、すべての実験を行った。一次転帰の判定は、T2強調MRI研究から30日に測定した梗塞体積であった。解剖上の二次転帰は、拡散強調画像(DWI)MRIによる4時間および24時間での、T2MRIによる24時間での、およびT2MRIによる30日での梗塞体積、ならびに、組織構造であった。神経行動学的転帰は、30日の観察期間全体を通じて、非ヒト霊長類ストロークスケール(NHPSS)、ならびに、ヒルアンドバレータスク(hill and valley task)、2チューブタスク(two-tube task)および6ウェルタスク(six well task)を含む、知覚運動バッテリーを用いて、測定した。治療および評価の計画図1Aに示し、以下に説明する。中大脳動脈閉塞の時間は、以下に述べるように、実験間で変動した。

0099

マカクに、90分のMCAOの開始後1時間または3時間のどちらかに始まる、Tat−NR2B9c(2.6mg/kg)またはプラシーボ(0.9%生理食塩水)の10分間の静脈内注射を、無作為に与えた。NHPのために選択した用量は、ラット研究で使用した先の用量から外挿した「霊長類等価用量」の計算から近似し、体表面積種間差の規格化に基づいた。

0100

MCAOから15分以内に動物をMRIスキャン装置に移し、MCAO中に血流を奪われた脳体積(危険性のある組織)を定量化するために、すべての動物について、かん流画像化を行った。さらに、MR血管造影法(MRA)を行って、MCAOを確認した。90分のMCAOの終了後に、2回目のMRAを行って、MCAの再かん流を確認し、その後4時間に、拡散画像撮影した。次いで、動物を覚醒させ、自然に回復させた。動物を再び麻酔して、24時間および30日に再撮影した。NHPSSスコアを、MCAOの8時間以内におよび30日まで割り当て、残りの神経試験を、第7日および第14日または30日のいずれかに、行った。

0101

生理学的パラメータには、実験における群間で差がなく、または、MCAOから15分以内のかん流画像で判定した危険性のある組織の体積には、薬剤とプラシーボとで差がなかった。

0102

非ヒト霊長類ストロークスケール(NHPSS)ならびに、場合によっては、ヒルアンドバレー(hill and valley task)、2チューブチョイスタスク(two-tube choice task)および6ウェルタスク(six well task)を含む知覚運動バッテリーを用いて、14日〜30日の観察期間全体を通して神経学的評価を行った。NHPSSは、ヒト脳卒中検査に使用されるNIHストロークスケールに類似の複合評定である。41点というスコアが、重篤な両側性神経障害を表し、0は正常である。残りの試験は、四肢の全体的な強さ、微細運動機能、および半側空間無視または視野欠損の影響の組み合わせを測定する。

0103

Tat−NR2B9c治療は、脳虚血を低減し、再かん流療法の時間帯を、tPAについての通常の4.5時間帯を超えて、広げることができる。
現在のところ、唯一の広く認可されている急性虚血性脳卒中の治療は、線維素溶解薬、rt−PA(遺伝子組み換えプラスミノーゲン活性化因子)の静脈内注射を使用する、閉塞した脳動脈の再かん流である。rt−PAの静脈内注射での従来の再かん流は、脳卒中発症後90分以内に施したときに臨床転帰の改善において最も有益であり、利益は、その後減少して、4.5時間でごく僅かになるか無くなる。再かん流の有用性についてのこの狭い時間帯は、利益を受けられたかも知れない患者の数を制限している。したがって、神経保護剤での早期治療の1つの可能性のある用途は、再かん流療法から臨床的利益が得られるかも知れない時間間隔を広げることである。神経外科医およびニューロインターベンショナリスト(neurointerventionalist)は、脳の状態が、助けるべき有用な脳が未だあること、および、出血の危険性なしにそうすることが確実にできることを示すならば、標準的時間帯の外で、再かん流療法を使用することができる。これを調べるために、静脈注射rt−PAがヒトにおいて有意に有益ではなくなる(Cook et al.,Nature.483,213−7 2012も参照)4.5時間の時点まで再かん流を遅らせたときに、MCAO開始後60分でのTat−NR2B9c投与が脳卒中の転帰を改善するかを、NHPにおいて評価した。

0104

6頭のマカクを永久MCAOに付し、虚血発症後5分から始めて、Tat−NR2B9cまたはプラシーボのいずれかで処理した。動物をMRIスキャン装置に置き、DWI MRIスキャンを15分ごとに得た(図2A)。DWI高強度が検出可能な脳の体積は、両群において、時間と共に増加した。ただし、Tat−NR2B9cでの処理は、その増加の速度を約2倍鈍らせた(図2A;対照およびTat−NR2B9cの時定数=2.20±0.28時間および4.50±0.54時間;p=0.019)。MCAO後4.5時間においてさえ、Tat−NR2B9cで処理した動物は、48時間および7日に、MRIおよびT2スキャンで梗塞の大きさの有意な減少を示した(図1B〜図1D)。さらに、虚血体積内において、Tat−NR2B9cで処理した動物の脳のDWI強度は、非処理の対照よりも低いままであり、梗塞体積内の組織がより良好な完全性を保っていることを示唆している(図2B)。これらのデータは、救済され得る脳が残存しており、有効な時間帯の外であるため通常は改善しないと考えられる時点での、再かん流剤または療法の実施が、再かん流および脳組織の生存を改善しそうであることの証拠を提供する。これらのデータは、また、Tat−NR2B9cが、残存する組織を救うための脳の再かん流に有用な時間を、広げ得ることの証拠を提供する。

0105

Tat−NR2B9cは、90分の脳卒中に付した非ヒト霊長類において、梗塞体積および積神経損傷を有意に減少させる。

0106

虚血性脳卒中後1時間に与えたときのTat−NR2B9cの効果を調べる後続の研究を、このモデルで行った。20頭のマカクを、90分MCAOの開始後1時間から始まる、Tat−NR2B9c(2.6mg/kg)またはプラシーボ(0.9%生理食塩水)の10分間静脈内注射に、無作為に付した。NHPのために選択した用量は、ラット研究で使用した先の用量から外挿した「霊長類等価用量」の計算から近似し、体表面積の種間差の規格化に基づいた。

0107

MCAOから15分以内に動物をMRIスキャン装置に移し、MCAO中に血流を奪われた脳体積(危険性のある組織)を定量化するために、すべての動物について、かん流画像化を行った。さらに、MR血管造影法(MRA)を行って、MCAOを確認した。90分のMCAO後に、2回目のMRAを行って再かん流を確認し、その4時間後に、拡散画像を撮影した。次いで、動物を覚醒させ、自然に回復させた。動物を再び麻酔して、24時間および30日に再撮影した。NHPSSスコアを、MCAOの8時間以内におよび30日まで割り当て、残りの神経試験を、第7日および第30日に行った。

0108

プラシーボを与えた10頭の動物のうちの4頭は、その脳卒中から48時間以内に、脳腫脹およびヘルニアにより、死亡した。Tat−NR2B9cで試験した3頭の動物は、脳卒中には、または薬剤には無関係の手術/麻酔の合併症の結果、死亡した。どれも「包括解析」(ITT)から除外しなかった。早期死亡のせいで欠けたデータは、あり得る最大の梗塞体積および最悪の神経学スコアを反映するようにした。このやり方は、有意な治療効果の検出に対して偏見をもたらすが、これが最も保守的であり、ヒト臨床試験に採用されるやり方を最もよく反映している。

0109

生理学的パラメータ、または、MCAOから15分以内のかん流画像で判定した危険性のある組織の体積には、薬剤とプラシーボとで差がなかった(図6A)。ただし、24時間までに、Tat−NR2B9cで処理した動物は、DWI画像(44.0%減少、p=0.039;図6B)およびT2強調画像(37.4%減少、p=0.010;図6B、図6C)で、プラシーボと比べて、梗塞体積の有意な減少を示した。梗塞体積におけるこの減少は、30日T2強調MRIスキャンで反映され(38.7%減少、p=0.013;図6C)および30日の組織学的評価で反映された(図6D;ITTおよび早期死亡例を除いて、それぞれ、梗塞体積の59.3%および73.6%減少;p<0.001)。NHPは、ヒトと同様に、MCAO後に可変の梗塞を有するかも知れないので、各動物の梗塞体積は、MCAOの15分以内に検出したそのMRIかん流に対して規格化した。この規格化は、Tat−NR2B9cでの治療が、DWI画像で測定して、24時間までに、梗塞を危険性のある体積の55%減少させ、T2強調MRIで測定して、30日に、70%減少させることを、明らかにした。24時間MRIから計算した梗塞体積は、30日組織学的分析から得られたものと、よく相関した(R=0.691,p<0.01)。

0110

30日の観察期間全体を通して、非ヒト霊長類ストロークスケール(NHPSS)ならびにヒルアンドバレータスク(hill and valley task)、2チューブチョイスタスク(two-tube choice task)および6ウェルタスク(six well task)を含む知覚運動バッテリーを用いて、神経学的評価を行った。NHPSSは、ヒト脳卒中検査に使用されるNIHストロークスケールに類似の複合評定である。41点というスコアが、重篤な両側性神経障害を表し、0は正常である。残りの試験は、四肢の全体的な強さ、微細運動機能、および半側空間無視または視野欠損の影響の組み合わせを測定する。

0111

Tat−NR2B9cで処理した動物は、30日の観察期間全体を通して、虚血発症後8時間の最初の評価から、改善されたNHPSSスコアを示した(P=0.018、二元反復測定ANOVA図6F)。2チューブチョイスタスク(two-tube choice task)での能力は、Tat−NR2B9cで処理した動物においては、脳卒中前のレベルに戻ったが、プラシーボ群においては、完全に損なわれたままであった。このことは、脳救済が、「消滅」、つまり、病変部位同側半側空間における事項への注意が病変部位対側半側空間における事項への注意をらせる傾向、を妨げることを示唆している。Tat−NR2B9cでの処理は、また、左上肢において、6ウェルタスク(6-well task)およびヒルアンドバレーステアケイスタスク(Hill and Valley Staircase task)での能力を有意に改善した。右上肢の能力も改善を示し、注意および知覚の能力の全体的な改善を示唆した。

0112

Tat−NR2B9cは、重篤な脳卒中における梗塞の大きさおよび神経障害を減少させるのに有効である。

0113

次いで、tPAでの再かん流の有効性の限界、4.5時間を超えて続く脳卒中における、Tat−NR2B9cの効果を明らかにした。12頭のマカクを、4.5時間MCAOの開始後1時間から始まる、Tat−NR2B9c(2.6mg/kg)またはプラシーボ(0.9%生理食塩水)の10分間静脈内注射に、無作為に付した。他の点では、やり方は、MRIスキャンのタイミングと、神経学的評価を7日に行ったこととを除いて、我々の最初の研究と同様であった。

0114

死亡例はなく、生理的パラメータまたはMCAOの危険性がある組織の体積において、薬物とプラシーボとで差はなかった(図7A)。ただし、虚血の期間が長いにもかかわらず、Tat−NR2B9cで処理した動物は、48時間でのT2およびDWI画像で、および、7日のT2強調画像で、プラシーボと比較して、梗塞体積の有意な減少を示した(図7B〜図7E)。さらに、Tat−NR2B9cで処理した動物は、虚血発症後12時間および7日の観察期間全体を通して、NHPSSスコアを最初の評価から改善し(P=<0.001;二元反復ANOVA;図7F)、6ウェルタスク(6-well task)およびヒルアンドバレーステアケイスタスク(Hill and Valley Staircase task)においてより良好な能力の傾向を示した。これらの結果は、Tat−NR2B9cでの早期の処理は、側副循環が制限されペナンブラが小さい重篤なMCAOのモデルにおいてさえ、再かん流が機能的利益を有する時間帯を、上昇させるかも知れない。MRIで測定した、および神経学的評価での、脳卒中後4.5時間での処理の利益の大きさは、再かん流療法の利益を拡大して4.5時間の時間帯を超えさせる、早期の神経保護作用の有用性の可能性を示唆する。

0115

Tat−NR2B9cは、脳卒中発症後3時間に投与されると、脳卒中に続く虚血および神経障害の減少に有効である。

0116

脳卒中発症の60分以内の神経保護剤での処理は、患者の小さなサブセットにおいて実行可能であるが、投与の治療時間帯を広げることは、脳卒中被害者のはるかに大きな集団に利益をもたらすであろう。したがって、脳卒中発症後3時間でのTat−NR2B9cの投与が、長期のMCAOの発症において有益であるかを判断した。ヒトにおいて、脳卒中発症後3時間の静脈内投与rt−PAでの再かん流は、神経保護作用を欠く場合においても有益である。これは、多くの患者において、救助可能なペナンブラのこの時点での存在を証明する。この臨床的筋書を、NHPが3時間にPWI/DWI不一致(ペナンブラ)を示すMCAOモデルを用いて、実験的に再現した。ヒトにおける場合と同様に、そのような不一致は、治療がない場合、梗塞へと成長する。

0117

24頭のマカクを、3.5時間MCAOの開始後3時間から始まる、Tat−NR2B9c(2.6mg/kg)またはプラシーボ(0.9%生理食塩水)の10分間静脈内注射に、無作為に付した。他のやり方は、最終の画像化および神経学的評価を14日に行ったことを除いて、変えなかった。死亡例はなく、生理的パラメータまたはMCAOの危険性がある組織の体積において、群間で差はなかった(図8A)。ただし、虚血の期間が長く、また、Tat−NR2B9cでの治療が遅かったにもかかわらず、薬物で処理した動物は、48時間および14日の解剖学的(MRI)基準での評価で、プラシーボと比較して、梗塞体積の有意な減少を示した(図8B〜図8E)。Tat−NR2B9cで処理したNHPは、また、14日の観察期間全体を通して改善されたNHPSSスコアを示し(P=0.004;二元反復ANOVA;図8F)、6ウェルタスク(6-well task)およびヒルアンドバレーステアケイスタスク(Hill and Valley Staircase task)においてより良好な能力の傾向を示した。したがって、NHPにおいて、脳卒中発症後3時間のTat−NR2B9cでの処理は、脳卒中損傷の軽減に有効である。この治療時間帯は、脳卒中被害者において実用的であるので、PSD−95阻害剤での処理は、臨床上実用的な治療方略を構成し、再かん流のみの使用よりも有効であり得る。

0118

結論
Tat−NR2B9cは、サルおよびヒトのような高次脳における脳卒中の後の障害の重症度を、効果的に低下させる。脳卒中後の時点でのMRIDWIおよびT2画像は、虚血の領域の損傷が非処理の動物のものよりも有意に少ないことを示している。病変の体積の減少に加えて、このことは、DWI−MRIによる画像の強度が小さいこと、および、T2画像の信号強度が低いことによっても示唆される。これらのデータは、救うべき脳が未だ存在すること、および、Tat−NR2B9c処理なしではできないであろう脳の大部分に血液が浸透して作用することを、再かん流療法が未だ可能にし得ることの、証拠を提供する。したがって、特にtPAのような薬剤での、再かん流療法は、より浸透して、脳の病変部への血流をさらに増大させることに、効果的であり得る。

0119

非ヒト霊長類方法

0120

脳卒中モデル:動物を麻酔し(イソフラン1.0〜2.5%)、挿管して酸素を供給した。脚カフスによるBP、呼気終末のCO2、O2飽和度ECG、および、直腸プローブでの温度を、非侵襲的監視に含めた。温度を、加熱毛布で一定(37±0.5℃)に保った。大腿部動脈ラインを使用して、BPおよび血液ガスを監視した。カニクイザル(3.0〜4.0kg)において、右前側頭開頭術を使用し、そして眼窩前頭分岐およびレンズ核線条体動脈の起点から遠位の位置で5mmチタン動脈瘤クリップを用いてシルビウス裂溝の右MCAを閉塞して、MCAOを実施した。

0121

虚血ペナンブラ組織の定義:ペナンブラ組織を、組織摘出時には梗塞されていないが確実に後の梗塞に至る組織であると、操作上定義した。ペナンブラはマカクにおいて変わり得るかも知れないので、8つの2×2mm生体組織を、MCAO後1時間または6時間のどちらかに、脳卒中と同側のMCA血管分布全体にわたる大脳皮質から採取し、また、脳卒中と対側の、虚血大脳皮質から採取したものに対して鏡像位置からも採取した。生体組織位置を撮影した。8つの生体組織のどれがペナンブラ組織を表しているかを決定するために、動物を7TMRIスキャン装置に移し、生体組織採取から15分以内および5.75時間に、拡散強調画像(DWI)、T2画像およびかん流画像を撮影した。1時間でのペナンブラ組織を、DWIにより5.75時間に梗塞に至った、梗塞のない組織と定義した。6時間でのペナンブラ組織を、MRかん流障害の範囲内であるが、DWIまたはT2強調を示していない組織である、と定義した。NHPのペナンブラを定義するのにMRIを使用することは、救済可能な組織の量が6時間までに減少するので、必須である。

0122

一般的MRI処理:画像撮影は、Paravision 4.0ソフトウエア稼働し、B−GA20S傾斜磁場コイルを使用する7テスラBruker BioSpecシステムで行った。内径15.5cmの直交送受信ボリュームコイルを、NHPのスキャンに使用した。NHPに挿管して酸素を供給し、うつ伏せで撮影した。生理的監視を全期間維持した。プロトコルは、軸平面内の2D T2強調画像、かん流画像および拡散強調画像の積み重ねを提供した。T2強調画像には、高速スピンエコー法とも呼ばれるRARE法を使用した(TE/TR=84/5000ms、rare factor=14、9cm視野上の225x225マトリクスで400x400x1500ミクロン解像度)。拡散強調画像には、スピンエコーマルチショットエコープラナー法を使用した(TE/TR=32/10000ms、9EPIショット、250kHzバンド幅、b=1000s/mm2で3つの直交拡散方向、9cm視野上の180x180マトリクスでの10の平均で500x500x1500ミクロン解像度)。かん流画像は動的造影感受性強調かん流法(dynamic, contrast enhanced, susceptibility-weighted perfusion method)で撮影した(T2*EPI、TE=18ms、2 EPIショット、2秒の時間分解能、90反復、9cm視野上の180x180マトリクスで5つの連続断層にわたる700x700x1500ミクロン解像度)。かん流スキャンのために、末梢静脈への全7秒の注射時間の3回目の繰り返しに始めて、ガドリニウム(0.1mmol/kg)を静脈内に急速投与した。拡散画像は、MATLAB(Natick,MA,USA)にて後処理して、3つのb=1000s/mm2画像から平均画像を生成し、見かけ拡散係数(Apparent Diffusion Coefficient)(ADCマップを計算した。脳卒中体積は、ITK−Snap等高線作図ソフトウエア(Pittsburgh,PA,USA)を用い、積み重ねて3次元再構成した平均拡散画像で計算した。かん流画像は、PerfToolソフトウエアを用いて処理し、脳血流量マップを作成した。

0123

実験計画および統計分析:脳卒中実験は、脳卒中療法産学円卓(STAIR)会議(Stroke Therapy Academic Industry Roundtable committee)の「良い科学研究を確保するための推奨(recommendations for ensuring good scientific enquiry)」に従って実施した。30日T2強調MRIに基づき、検出力0.8、アルファ=0.05および群平均の30%という想定標準偏差で、薬物とプラシーボとの間で、梗塞体積における40%の差を検出する、という要望に基づいて、10動物/群のサンプルサイズを設定した。含まれるあらゆる動物を除外しない包括解析アプローチに基づいて、一次分析を行った。20頭のカニクイザルを、薬物またはプラシーボ(担体のみ)での処理に無作為に付した。虚血の誘導、維持および回復、実験動物の世話(早期の犠牲を含む)に関する決定、ならびに、すべての転帰の評価、を担当する調査者は、動物がどちらの実験群に属するかを、知らされなかった。群間の差異は、必要に応じて、スチューデントt検定または反復測定ANOVAを用いて、測定した。早死またはタスクを完了することができないことにより欠けた値は、そのタスクに利用可能な最悪のスコア、または、全動物について得られる最大の梗塞体積により規定される可能な最大の脳卒中体積、を反映するようにした。

0124

神経学的評価:神経学的評価は、既に確認されている非ヒト霊長類ストロークスケール(NHPSS)、ならびに、ヒルアンドバレータスク(hill and valley task)、2チューブタスク(two-tube task)および6ウェルタスク(six well task)を含む知覚運動バッテリーを使用して行った。NHPSSスコアは、意識のある状態、防御反応把握反射、四肢運動、足取り、旋回行動、動作緩慢平衡、無視、視野削減/片側視野欠損、および、顔面麻痺の複合評定であり、その多くは、ヒトに使用されるNIHストローク点数付けにも組み込まれている。全41点のうち、0は正常な挙動に相当し、41点は、重篤な両側性神経障害に相当する。残りの試験は、どこかに記載されている普通のマーモセット(Callithrix jacchus)のために開発されたアッセイを、変更したものである。微小な知覚運動機能を評価することに加えて、それらは、消失および知覚空間障害/無視も試験する。パイロット実験において、5頭のマカクを90分MCAOに付し、NHPSS結果は、最初の36時間(平均36.3、SEM=5.7)持続して、その後、14日〜30日(平均=14.36、SEM=3.2)のプラトーレベルに徐々に低下する、初期ピークをスコアに示した。知覚運動試験は、動物に、重篤な時空無視が残り、脳卒中後7日および30日に僅かな経時回復を示す片側不全麻痺が残った。これらの欠点は、6ウェルタスク(six well task)および左腕のヒルアンドバレータスク(hill and valley task)の完了における有意な遅延として明瞭であり、前者については、7.8倍の平均遅延および開始時の5.33倍、後者については、バレー区分上で8.2倍の平均遅延および開始時の6.4倍、ならびに、ヒル区分上で7.6倍の平均遅延および開始時の5.8倍であった。

0125

実施例2:
PSD−95阻害剤は、かん流/拡散強調MRI上で虚血ペナンブラ進展を停止させる
この実施例の目的は、PSD−95阻害剤を用いた神経保護作用が、実験永久MCAOにおいて、脳血流量の増加(再かん流)なしで実行可能であることを、証明することである。

0126

方法:ラットをpMCAOに付し、その1時間後に、PSD−95阻害剤Tat−NR2B9c(7.5mg/kg)または生理食塩水の、5分間の静脈内注射で処理した。かん流MRI(PWI)および拡散MRI(DWI)を、4.7T Brukerシステムで、pMCAO後30,45,70,70,120,150および180分に得て、脳血流量(CBF)および見かけ拡散係数(ADC)マップを決定した。24時間に動物を神経学的に採点して殺し、脳を切片化して、浮腫についての梗塞体積補正を確かめるためにTTCで染色した。OGDに付したニューロンにおいて、インビトロで、記載されている(上記Aarts et al.(2002))ように、ATPレベルに対するTat−NR2B9cの作用を測定し、製造元(Promega,Madison,WI)の指示に従って、CellTiter−Glo Luminescent Cell Viability Assayを用いて、ATPレベルを評価した。

0127

結果:血液ガス、電解質、および血中グルコースは、両群の間で差がなかった。24時間での神経スコアは、Tat−NR2B9c群が、プラシーボと比べて、有意に改善した神経スコアを有することを示した。図3は、CBF由来とADC由来との病変体積の絶対的不一致を示す。プラシーボ動物と比べて、Tat−NR2B9c群において、ADC/BCF不一致病変体積は閉塞後90分以降で有意に大きい。中心ペナンブラと皮質ペナンブラとにおける相対的CBF値の関心領域の分析は、どちらの処理群においても、時点間で、相対CBFに有意な変化を示さず、Tat−NR2B9c処理はCBFに対して影響がないことを表している。

0128

閾値由来ADCおよびCBF病変体積で表される虚血性脳卒中の時空進化は、プラシーボ処理動物において、TTC由来病変体積とよく相関した。Tat−NR2B9c処理動物において、ADC病変体積は、プラシーボ群と同様に、MCAO後25分〜45分に増加した。ただし、Tat−NR2B9c薬剤開始直後70分の時点で、増加は弱まった。120分およびそれ以降では、Tat−NR2B9c処理動物におけるADC病変は、プラシーボ処理ラットにおけるよりも、有意に小さいままであった。CBF由来体積およびTTC梗塞体積は、Tat−NR2B9c動物において、有意に小さかった。図5は、CBF由来とADC由来との病変体積の絶対的不一致を示す。プラシーボ動物と比べて、Tat−NR2B9c群において、ADC/BCF不一致病変体積は閉塞後90分以降で有意に大きい。これらの結果は、Tat−NR2B9cは、梗塞を通じての血流が処理によって増大するならば生じるであろう如くには、梗塞の大きさを減少させず、または、虚血ペナンブラを収縮させることにより転帰を改善しない、ことを示唆する。むしろ、それは、Tat−NR2B9cが、存在する虚血に対する虚血組織抵抗力を高める、神経保護剤として作用することを示唆する。

0129

100nM Tat−NR2B9cで処理した一次神経培養は、正常酸素圧状態で、生理食塩水対照と比べて有意な細胞死またはATPレベルを示さなかった。ただし、100nM Tat−NR2B9cでの前処理は、OGD後20時間に、生理食塩水対照と比べて、細胞死の26%の減少という結果になった(図4A)。ATPレベルは、Tat−NR2B9c処理培養において、OGD後1時間に、生理食塩水対照と比べて34%大きかった(図4B)。

0130

考察:ラットまたはマウスにおけるMCAO後60分のTat−NR2B9c投与は、ADC低強度体積の有意な減少という結果になり、TTCによる梗塞体積の減少と相関した。脳卒中体積の減少は、MCAO後24時間での神経学的スコアの有意な改善に関連した。pMCAO後の脳卒中転帰におけるこれらの解剖学的および神経学的改善は、脳血流に影響することなく達成され、血流を増大させなくても、神経保護によって脳卒中療法が達成可能であることを、確立する。したがって、PSD−95阻害剤での治療と再かん流方略とを物理的または治療的に組み合わせることは、脳卒中後の神経組織または脳の救済をさらに向上させそうである、と期待される。

0131

虚血の発症に続いて、恒常性維持機構混乱細胞機能の障害、および細胞死に関連する、細胞内ATPレベルの急速な低下がニューロンおよびグリアにおいて生じる。PSD−95阻害剤処理は、ATP枯渇の抑制をもたらした。これらの結果は、PSD−95阻害剤処理が、虚血ペナンブラを保全して、再かん流療法の治療上または時間上の幅を広げる実行可能なアプローチを提供することを、もたらす。

0132

実施例3:
脳卒中に付した齧歯動物の脳においてNMDAR:PSD−95複合体を妨害するのに、Tat−NR2B9cの4〜5分の単回注射で十分である
方法の概要

0133

シナプス後肥厚−95阻害剤:Tat−NR2B9cは、HIV−1−Tatタンパク(YGRKKRRQRRR;Tat)の細胞膜タンパク形質導入領域に融合した、NR2Bサブユニットの9個のC末端アミノ酸(KLSSIESDV)を含む、合成ペプチドである。PSD−95に結合し得ない対照は、SDVからADAに変更され、この対照を「ADA」ペプチドと呼ぶ。化合物およびその用量を知らない者が、ペプチドを生理食塩水中で4〜5分にわたって静脈内投与した。

0134

動物:成体雄Sprague−Dawleyラット(250〜300g;Charles River Laboratories,Sherbrooke,Quebec,Canada)を、研究機関の動物管理委員会(institutional animal care committees)によって承認された手続きに従って使用した。すべての実験は、非絶食動物に対して行った。

0135

手術準備:永久的軟膜血管閉塞(3PVO)のために、ラットを、100mg/kgケタミン、2mg/kgアセプロマジンおよび50mg/kgキシラジンで、麻酔した。ラットをインキュベートし、酸素供給した(60ストローク/分、30〜35mLの換気量)。平均動脈血圧、血液ガス、pH、およびグルコースを、左大腿動脈カテーテルで監視した。薬物を尾静脈から投与した。

0136

実験手続:動物を3PVO虚血に付した。その1時間後、動物に、生理食塩水、3nmol/gのTat−KLSSIEADA(配列番号76)、または、0.3nmol/g,3nmol/gおよび10nmol/gのTat−NR2B9c(Tat−KLSSIESDV)を、注射した。さらに1時間後、同側(脳卒中側)および脳卒中の対側から、大脳皮質を速やかに採取した。処理した動物は、開頭術を施しただけで、脳卒中または薬物注射をしなかった。次いで、常法を用いて、採取した組織にCo−IP実験を行った。抗NR2B抗体または抗PSD−95抗体でのCoIPに続いて、示した抗体(抗NR2B,PSD−95およびSrc)でブロットを調べた。Image Jソフトウエアを用いて、バンド濃度分析を行った。関連タンパクのCo−IPに対する処理の効果を測定するために、まず、ブロット上の各タンパクのレベルを、免疫沈降したタンパク(PSD−95またはNR2B)のレベルに対して規格化し、次いで、同側(脳卒中側)からのレベルを、対側のレベルに対して規格化した。

0137

結果:実験は5回反復した。各回の組織は、6匹の異なるラットから得た(条件ごとに1匹)。各回において、組織は、脳卒中側(同側)半球および対側半球の両方から得た。PSD−95およびNR2Bの共免疫沈降(いずれかのタンパクに対する抗体で実施したIP)での評価の通り、偽剤処理(脳卒中なし、薬物注射なし)の効果はなかった(例として示す図9A、図9B)。同様に、対照ペプチドTat−KLSSIEADAは、PSD−95とNR2BとのCo−IPに対して効果を有しなかった。ただし、Tat−KLSSIESDVでの処理は、PSD−95とNR2BとのCo−IPを、用量依存的に阻害した(図9A、図9B)。PSD−95とNR2BとのCo−IPの阻害の程度は、脳卒中の阻害におけるTat−NR2B9cの能力に平行し、0.3nmol/gは、この脳卒中モデルにおける梗塞の大きさの減少に無効であり、3または10nmol/gの用量は有効であった。具体的には、0nM/gまたは0.3nM/gのTat−NR2B9c用量は、脳卒中の減少に無効であり、PSD−95とNR2Bとの会合を有意に阻害しなった。一方、3nM/gまたは10nM/gの用量のTat−NR2B9cでの処理は、脳卒中損傷の阻害において有効であり、また、NR2BとPSD−95との会合を有意に阻害した。さらなる対照として、PSD−95またはNR2Bで免疫沈降した組織を、NMDAR関連タンパクキナーゼSrc、NMDARシグナル伝達複合体25における主要制御タンパク、に対する抗体で調べた。10nM/g Tat−NR2B9cでの処理は、NR2BをPSD−95から解離させ、PSD−95またはNR2BのSrcとの会合に効果がなかった(不図示)。このことは、NR2B/PSD−95相互作用の阻害におけるTat−NR2B9cの作用が特異的であり、いずれかのタンパクとSrcとの同様の相互作用には効果がないことを示す。

0138

結論:第1に、Tat−NR2B9cは、脳卒中後に投与されたとき、脳卒中側の脳に入り、虚血脳において先に形成されたNR2B/PSD−95複合体を解離させることができる。第2に、Tat−NR2B9cは、これを、用量依存的に達成することができる。第3に、Tat−NR2B9cが、脳において先に形成されたNR2B/PSD−95複合体の有意な解離を達成する濃度は、Tat−NR2B9cが、同じ動物脳卒中モデルにおいて神経保護作用を有する用量に相当する。第4に、Tat−NR2B9cが、脳において先に形成されたNR2B/PSD−95複合体の有意な解離を達成し得ない用量も、また、Tat−NR2B9cが、同じ動物脳卒中モデルにおいて神経保護作用を有しない用量である。第5に、Tat−NR2B9cは、NR2B/PSD−95複合体に対して、選択的にその効果を達成する(つまり、これは、NMDARシグナル伝達複合体分子への非特異的作用ではない)。

0139

第2の研究を、同じモデル、および、脳卒中に付した脳の領域に位置するニューロンにおけるPSD−95:NMDAR複合体の解離の時間経過を調べる処理条件と同じ条件で、行った。先の研究と同様に、脳卒中を誘導するpial血管閉塞後2,4,8,24または48時間に、ラット脳を採取した。図10は、NMDAR:PSD−95複合体が、Tat−NR2B9cの単回静脈内注射の後、少なくとも8時間、潜在的には24〜48時間、解離することを表している。したがって、Tat−NR2B9cを患者に投与し得る時と、患者が、薬物療法的であれ物理的であれ、再かん流療法の利益を受けるかも知れない時との間に、広い時間帯が存在する。

0140

詳細な材料および方法

0141

材料:NA1(GMPロット165I1107)およびTAT−ADA(YGRKKRRQRRRKLSSIEADA)は、それぞれ、BachemおよびGeneScriptによって化学合成された。すべてのペプチドは、高速液体クロマトグラフィーによって、95%を超える純度に精製した。ペプチド備蓄品(3mMまたは10mM)を滅菌生理食塩水で調製し、4℃にて保存した。

0142

抗体:免疫沈降およびウエスタン:マウス抗NMDA2B(ab28373;Abcam)、ウサギ抗PSD−95(2507;Cell Signaling)、ウサギ抗NMDA2B(4212,Cell Signaling)、マウスモノクローナル抗PSD−95(MA1−046,Thermo)、マウスモノクローナル抗Src(ab16885−100)(Abcam)。Dynabeadsprotein G Immunoprecipitation Kitを、免疫沈降(100.07D,Invitrogen)に使用した。ウエスタンブロットのための二次抗体は、AffiniPure F(ab’)2 Fragment Goat anti RabbitIgGantibody(111−036−047)と結合したペルオキシダーゼ、および、Jackson ImmunoResearch Lab IncからのAffiniPure F(ab’)2 Fragment Goat anti Mouse IgG(115−036−006)と結合したペルオキシダーゼであった。
虚血の3pial血管閉塞モデル:体重250〜300gの雄Sprague Dawleyラット(Co−IP実験当たりn=6)を、この研究に使用した。永久的3pial血管閉塞(3PVO)は、先に記載した4,26のように実施した。手短に述べれば、ラットを、ケタミン(100mg/kg)、アセプロマジン(2mg/kg)およびキシラジン(5mg/kg)の0.5ml/kgの筋肉内注射で、必要に応じて初期用量の3分の1を追加して、麻酔した。肛門温度計を挿入し、動物を37℃に保った加温パッドに載置した。正中切開によって頭蓋骨露出させ、組織をこすり取った。解剖顕微鏡および空気圧式歯科用ドリルを用いて、右体感覚皮質の上(ブレグマの2mm後方、5mm側方)に、硬膜をそのままにしながら、頭蓋骨を貫通する長方形を開け、頭蓋骨の一部を持ち上げて除くことによって、6〜8mmの頭蓋窓を開けた。バレル皮質の周囲の3つのpial細動脈中大脳動脈分枝を、動脈当たり2ヶ所で、硬膜を通して電気的に焼灼した。焼灼後、頭皮縫合した。3PVO虚血後1時間に、合計で約300μlの生理食塩水中の処理薬剤を3分にわたってラットに大腿静脈から投与した(動物に対する目的のmg/kg用量を達成するための厳密な体積は、動物の体重によって決定した)。処理薬剤の投与後1時間(脳卒中の2時間後)に、酸素を混合した3%イソフルランを用いて、ラットを安楽死させた。

0143

溶解物の調製:脳を頭蓋骨から除去して、皮質の虚血領域と対側の等価試料とを、速やかに採取した。各脳試料を、350μlのRIPA溶解用緩衝液(Tris−HCL 50mM,NaCl 150mM,EDTA1mM,SDS 0.1%,Deoxycholic acid 0.5%,NP−40 1%、に加えて、コンプリートプロテアーゼインヒビターカクテル(PhosSTOPリン酸インヒビターカクテル,Roche))に入れ、均質にして、上に載置した。

0144

ラット大脳皮質由来のNMDARおよびその関連タンパクの共免疫沈降:ラット大脳皮質溶解液を氷上で1時間インキュベートし、その後、4℃にて20分間遠心分離した(12,000rpm)。上清を新たなチューブに移し、5μgの抗PSD−95またはNMDAR抗体を(提供された洗浄緩衝液を用いる製造元のプロトコルに従って)あらかじめ加えた30μl Dynabeadsprotein G(Invitrogen)で、4℃にて一夜インキュベートした。Dynabead−抗体−抗原複合体を4回洗浄し、30μlのRIPA緩衝液に10μlのSDS−PAGEローディング緩衝液(2.4ml 1Mトリス pH6.8、0.8g SDS、4ml 100%グリセリン、0.1%ブロモフェノールブルー、1mlベータメルカプトエタノールをdH2Oで10mLに量変化させた)を加えたものに、再懸濁した。試料を、ビーズを保つために磁気上に載置して75℃にて10分間加熱し、次いで、上清を分析のためにSDS−PAGEゲルに載せた。

0145

SDS−PAGEおよびウエスタンブロット:単離した免疫沈降物を、10%SDS−PAGEを用いて分解し、その後、ニトロセルロース膜に移した。膜を1:1000の抗PSD−95で調べ、次いで、洗浄し、ECL化学発光キット(Amersham/GE Healthcare)を用いて展開した。Luminescent Image Analyzer LAS−3000(Fujifilm)を用いて、30秒〜2分の露出で、画像を撮影した。その後、膜を室温にて10分のストリップ処理(1.5%グリシン,0.1%SDS,1% Tween 20、pH2.2)を行い、再ブロック化した。次いで、膜を、抗NMDAR2B(1:1000)および抗Src抗体(1:500)で再調査し、洗浄し、展開して、上述のように画像を撮影した。

0146

画像分析:画像のバンド強度を、Image J(NIH)を使用して分析した。同じ動物由来の同側と対側との免疫沈降のバンド強度の比率を生成する前に、同側バンドおよび対側バンドを、まず、免疫沈降したPSD−95またはNR2Bレベルに対して規格化した。

0147

実施例4:
Tat−NR2B9cおよびtPAは、脳卒中からの転帰を改善するために、同時にまたは別の時に投与することができる
まず、Tat−NR2B9cが血液塊溶解に影響しないこと、および、Tat−NR2B9cが血液塊からフィブリンを放出するtPAの能力または速度に影響しないことを明らかにするために、インビトロ試験を行った。手短に述べれば、125Iで標識したフィブリノーゲンを含有するヒト血漿を、100nM NaCL、30nM Na2HPO4、3mM 30nM NaH2PO4を含有する緩衝液中の、種々の濃度のTat−NR2B9c、Tat−NR2B9c+1500ng/ml tPA、または、tPAのみで、pH7.4、37℃にて2時間インキュベートした。血液塊からのフィブリン放出の定量化を、可溶材料シンチレーション計数によって測定した。Tat−NR2B9cは、血液塊を溶解せず、また、血液塊からフィブリノーゲンを放出するtPAの能力に影響しなかった。

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