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技術 低α線放出量の金属又は錫合金及びその製造方法

出願人 三菱マテリアル株式会社
発明者 平野広隆吉田能弘片瀬琢磨
出願日 2018年7月30日 (11ヶ月経過) 出願番号 2018-142195
公開日 2019年3月7日 (4ヶ月経過) 公開番号 2019-035145
状態 特許登録済
技術分野 金属の製造または精製 金属の電解製造
主要キーワード 真空梱包 鉛不純物 低減割合 プロペラ形状 移送管路 メンブレンシステム α崩壊 製造初期
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図面 (4)

課題

原料錫の210Pb濃度高低に拘わらず、加熱してもα線放出量が上昇せずに、α線放出量が0.002cph/cm2以下である低α線放出量の錫、銀、銅、亜鉛又はインジウムのいずれかの金属又は錫合金を提供する。

解決手段

錫、銀、銅、亜鉛又はインジウムのいずれかの低α線放出量の金属であって、大気中で100℃、6時間加熱した後のα線の放出量が0.002cph/cm2以下である。不純物として鉛をそれぞれ含む錫、銀、銅、亜鉛又はインジウムのいずれかの金属を硫酸水溶液に溶解して前記金属の硫酸塩水溶液を調製するとともにこの水溶液中で硫酸鉛沈殿させて除去する。硫酸鉛を除去した硫酸塩水溶液を撹拌しながらα線放出量が10cph/cm2以下の鉛を含む硝酸鉛水溶液を添加して硫酸塩水溶液中で硫酸鉛を沈殿させ、同時にこの水溶液から硫酸鉛を除去しながら循環させる。硫酸塩水溶液を電解液として前記金属を電解採取する。

概要

背景

電子部品を製造するためのはんだ材料には、鉛(Pb)が環境に影響を及ぼすということから、Pbフリーの錫(Sn)を主たる金属とするはんだ材料、例えばSn−Ag−Cu、Sn−Ag、Sn−Cu、Sn−Zn、Sn−In、Sn−Bi等の錫合金が開発されている。また上記合金に更にNi、Ge等の微量成分を添加した合金等が開発されている。こうしたはんだ材料は半導体メモリーにおけるチップ基板接合など半導体装置の製造に使用されている。Pbフリーのはんだ材料であっても、主たるはんだ材料であるSnからPbを完全に除去することは非常に困難で、Sn中には微量のPbが不純物として含まれる。近年、ますます高密度化及び高容量化している半導体装置は、このPbの同位体である210Pbから生じる210Poから放出されるα線ソフトエラーを引き起こす。このため、この不純物として含まれる210Pbに起因するα線を極力放出しない低α線放出量の錫が求められている。また、現状の市場では、α線放出量は0.002cph/cm2以下の製品が最も普及しており、一つの指標として0.002cph/cm2以下であることが重要視される。また、製品の使用環境多様化に伴い、0.001cph/cm2以下への要求も高まってきている。

低α線放出量の錫を得る方法として、錫とα線放出量が10cph/cm2以下の鉛を合金化した後、錫に含まれる鉛を除去する精錬を行う低α線放出量の錫の製造方法が開示されている(例えば、特許文献1(請求項1、段落[0011]〜段落[0016]、段落[0022])参照。)。この文献の実施例1の方法では、表面α線放出量が5cph/cm2、純度:99.99%の市販のSnと、表面α線放出量が10cph/cm2、純度:99.99%の市販のPbを用意し、SnとPbを窒素雰囲気中、高純度黒鉛ルツボ内で高周波誘導炉で溶解し、Sn−5wt%Pb合金を製造し、この合金を高純度黒鉛ルツボに入れて加熱溶融して、Pbを蒸発除去し、冷却後、ルツボ内残留したSnを圧延して低α線放出量のSn板を作製している。

また、別の低α線放出量の錫を得る方法として、原料となる錫を硫酸のような酸で浸出させた後、この浸出液電解液とし、該電解液に不純物の吸着剤である酸化チタン酸化アルミニウム酸化錫活性炭カーボンのいずれか1種類以上を懸濁させ、原料Snアノードを用いて電解精製を行い、U、Thのそれぞれの含有量が5ppb以下、Pb、Biのそれぞれの含有量が1ppm以下であり、純度が5N以上(但し、O、C、N、H、S、Pのガス成分を除く)である高純度錫を得る方法が開示されている(例えば、特許文献2(請求項3、段落[0014])参照。)。この文献には、この方法で製造された高純度錫又は錫合金は最終的には、溶解鋳造によって製造されるものであるが、その錫の鋳造組織を持つ高純度錫のα線カウント数が0.001cph/cm2以下とすることができると記載されている。

一方、はんだによって基板に接合したチップが使用時に高温環境に曝された場合、使用初期と比較して、ソフトエラーの発生率が上昇する問題が近年報告されている(例えば、非特許文献1(Abstract)参照。)。この報告によれば、ソフトエラーの発生率の上昇は、高温環境下ではんだ材料からのα線放出量が増加することに起因するとされている。

概要

原料錫の210Pb濃度高低に拘わらず、加熱してもα線放出量が上昇せずに、α線放出量が0.002cph/cm2以下である低α線放出量の錫、銀、銅、亜鉛又はインジウムのいずれかの金属又は錫合金を提供する。錫、銀、銅、亜鉛又はインジウムのいずれかの低α線放出量の金属であって、大気中で100℃、6時間加熱した後のα線の放出量が0.002cph/cm2以下である。不純物として鉛をそれぞれ含む錫、銀、銅、亜鉛又はインジウムのいずれかの金属を硫酸水溶液に溶解して前記金属の硫酸塩水溶液を調製するとともにこの水溶液中で硫酸鉛沈殿させて除去する。硫酸鉛を除去した硫酸塩水溶液を撹拌しながらα線放出量が10cph/cm2以下の鉛を含む硝酸鉛水溶液を添加して硫酸塩水溶液中で硫酸鉛を沈殿させ、同時にこの水溶液から硫酸鉛を除去しながら循環させる。硫酸塩水溶液を電解液として前記金属を電解採取する。

目的

本発明の目的は、原料錫の210Pb濃度の高低に拘わらず、加熱してもα線放出量が上昇せずに、α線放出量が0.002cph/cm2以下である低α線放出量の錫、銀、銅、亜鉛又はインジウムのいずれかの金属又は錫合金を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

錫、銀、銅、亜鉛又はインジウムのいずれかの低α線放出量の金属であって、大気中で100℃、6時間加熱した後のα線の放出量が0.002cph/cm2以下であることを特徴とする低α線放出量の金属。

請求項2

請求項1記載の低α線放出量の錫と、銀、銅、亜鉛、インジウム、ビスマスニッケル及びゲルマニウムからなる群より選ばれた1種又は2種以上の金属との合金であって、大気中で100℃、6時間加熱した後のα線の放出量が0.002cph/cm2以下であることを特徴とする低α線放出量の錫合金

請求項3

前記低α線放出量の錫と合金を形成する金属が、銀、銅、亜鉛及びインジウムからなる群より選ばれた1種又は2種以上の金属である請求項2記載の低α線放出量の錫合金。

請求項4

大気中で200℃、6時間加熱した後の前記金属又は前記錫合金のα線の放出量が0.002cph/cm2以下である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の低α線放出量の金属又は錫合金。

請求項5

不純物として鉛をそれぞれ含む錫、銀、銅、亜鉛又はインジウムのいずれかの金属を硫酸水溶液に溶解して前記金属の硫酸塩水溶液を調製するとともに前記硫酸塩水溶液中で硫酸鉛沈殿させる工程(a)と、前記工程(a)の前記硫酸塩水溶液をフィルタリングして前記硫酸鉛を前記硫酸塩水溶液から除去する工程(b)と、第1槽で、前記工程(b)の前記硫酸鉛を除去した硫酸塩水溶液を少なくとも100rpmの回転速度で撹拌しながらα線放出量が10cph/cm2以下の鉛を含む所定の濃度の硝酸鉛水溶液を所定の速度で30分以上かけて添加して、硫酸塩水溶液中で硫酸鉛を沈殿させ、同時に前記硫酸塩水溶液をフィルタリングして前記硫酸鉛を前記硫酸塩水溶液から除去しながら、前記第1槽中で全体液量に対する循環流量が少なくとも1体積%の割合で循環させる工程(c)と、前記工程(c)の前記硫酸塩水溶液を前記第1槽から別の第2槽に移した後、前記硫酸塩水溶液を電解液として前記金属を電解採取する工程(d)とを含むことを特徴とする低α線放出量の金属の製造方法。

請求項6

前記工程(c)の前記硝酸鉛水溶液中の硝酸鉛の所定の濃度が10質量%〜30質量%である請求項5記載の低α線放出量の金属の製造方法。

請求項7

前記工程(c)の前記硝酸鉛水溶液の所定の添加速度が前記硫酸塩水溶液1リットルに対して1mg/秒〜100mg/秒である請求項5又は6記載の低α線放出量の金属の製造方法。

請求項8

金属錫に、銀、銅、亜鉛、インジウム、ビスマス、ニッケル及びゲルマニウムからなる群より選ばれた1種又は2種以上の金属を添加混合して、この混合物鋳造することによって低α線放出量の錫合金を製造する方法であって、前記金属錫は、請求項5ないし7のいずれか1項に記載の方法により製造された金属錫であり、前記金属錫に添加する金属は、α線放出量が0.002cph/cm2以下であることを特徴とする低α線放出量の錫合金の製造方法。

請求項9

金属錫に、銀、銅、亜鉛及びインジウムからなる群より選ばれた1種又は2種以上の金属を添加混合して、この混合物を鋳造することによって低α線放出量の錫合金を製造する方法であって、前記金属錫及び前記金属錫に添加する金属は、それぞれ請求項5ないし7のいずれか1項に記載の方法により製造された金属であることを特徴とする低α線放出量の錫合金の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、電子部品を製造するためのはんだ材料に好適なα線の放出量が極めて少ない低α線放出量の錫、銀、銅、亜鉛又はインジウムのいずれかの金属に関する。また銀、銅、亜鉛、インジウム、ビスマスニッケル及びゲルマニウムからなる群より選ばれた1種以上の金属と錫との低α線放出量の合金(以下、錫合金という。)に関する。更にこれらの低α線放出量の金属又は錫合金の各製造方法に関する。

背景技術

0002

電子部品を製造するためのはんだ材料には、鉛(Pb)が環境に影響を及ぼすということから、Pbフリーの錫(Sn)を主たる金属とするはんだ材料、例えばSn−Ag−Cu、Sn−Ag、Sn−Cu、Sn−Zn、Sn−In、Sn−Bi等の錫合金が開発されている。また上記合金に更にNi、Ge等の微量成分を添加した合金等が開発されている。こうしたはんだ材料は半導体メモリーにおけるチップ基板接合など半導体装置の製造に使用されている。Pbフリーのはんだ材料であっても、主たるはんだ材料であるSnからPbを完全に除去することは非常に困難で、Sn中には微量のPbが不純物として含まれる。近年、ますます高密度化及び高容量化している半導体装置は、このPbの同位体である210Pbから生じる210Poから放出されるα線がソフトエラーを引き起こす。このため、この不純物として含まれる210Pbに起因するα線を極力放出しない低α線放出量の錫が求められている。また、現状の市場では、α線放出量は0.002cph/cm2以下の製品が最も普及しており、一つの指標として0.002cph/cm2以下であることが重要視される。また、製品の使用環境多様化に伴い、0.001cph/cm2以下への要求も高まってきている。

0003

低α線放出量の錫を得る方法として、錫とα線放出量が10cph/cm2以下の鉛を合金化した後、錫に含まれる鉛を除去する精錬を行う低α線放出量の錫の製造方法が開示されている(例えば、特許文献1(請求項1、段落[0011]〜段落[0016]、段落[0022])参照。)。この文献の実施例1の方法では、表面α線放出量が5cph/cm2、純度:99.99%の市販のSnと、表面α線放出量が10cph/cm2、純度:99.99%の市販のPbを用意し、SnとPbを窒素雰囲気中、高純度黒鉛ルツボ内で高周波誘導炉で溶解し、Sn−5wt%Pb合金を製造し、この合金を高純度黒鉛ルツボに入れて加熱溶融して、Pbを蒸発除去し、冷却後、ルツボ内残留したSnを圧延して低α線放出量のSn板を作製している。

0004

また、別の低α線放出量の錫を得る方法として、原料となる錫を硫酸のような酸で浸出させた後、この浸出液電解液とし、該電解液に不純物の吸着剤である酸化チタン酸化アルミニウム酸化錫活性炭カーボンのいずれか1種類以上を懸濁させ、原料Snアノードを用いて電解精製を行い、U、Thのそれぞれの含有量が5ppb以下、Pb、Biのそれぞれの含有量が1ppm以下であり、純度が5N以上(但し、O、C、N、H、S、Pのガス成分を除く)である高純度錫を得る方法が開示されている(例えば、特許文献2(請求項3、段落[0014])参照。)。この文献には、この方法で製造された高純度錫又は錫合金は最終的には、溶解鋳造によって製造されるものであるが、その錫の鋳造組織を持つ高純度錫のα線カウント数が0.001cph/cm2以下とすることができると記載されている。

0005

一方、はんだによって基板に接合したチップが使用時に高温環境に曝された場合、使用初期と比較して、ソフトエラーの発生率が上昇する問題が近年報告されている(例えば、非特許文献1(Abstract)参照。)。この報告によれば、ソフトエラーの発生率の上昇は、高温環境下ではんだ材料からのα線放出量が増加することに起因するとされている。

0006

特許第3528532号公報
特許第4472752号公報

先行技術

0007

B. Narasimham et al. "Influence of Polonium Diffusion at Elevated Temperature on the Alpha Emission Rate and Memory SER",IEEE, pp 3D-4.1 - 3D-4.8, 2017

発明が解決しようとする課題

0008

上記非特許文献1の報告から、デバイスが高温環境に曝された際にはんだ材料由来のα線放出量の増加がソフトエラーの増加につながることが明らかになり、錫を製造した初期のα線放出量のみならず、高温環境に曝されたときの錫のα線放出量に関しても、初期と変わらないα線放出量であり、0.002cph/cm2以下であることが必要とされている。実際に、初期の錫のα線放出量が0.001cph/cm2以下であっても、高温環境下に相当する加熱下では、必要とされる錫の低α線放出量が得られていないことを、本発明者らは確認している。しかしながら、上記特許文献1及び2では、はんだ接合後の錫の高温環境下でのα線放出量の議論はなされておらず、特許文献1及び2で得られた金属錫では、高温環境に曝されたときの錫のα線放出量が0.001cph/cm2を超えているか、若しくは0.002cph/cm2でさえ超えているおそれがある。

0009

また、上記特許文献1の方法では、原料錫に高純度鉛を添加する方法として、SnとPbを窒素雰囲気中、高周波誘導炉を用い、高純度黒鉛ルツボ内で溶解する必要があるため、製造に時間と熱エネルギーを多く必要とし、より簡便な製造方法が求められていた。

0010

また、特許文献2の表1には、原料錫中の220wtppmの鉛(Pb)が精製後の実施例4で0.06wtppmになることが記載されていることから、原料錫中のPbの濃度の低減割合は最大でも1/4000程度である。ここで、α線放出量に起因する210Pbは非放射性の安定したPbと同様の挙動を示すことから、210Pbの低減割合も最大で1/4000程度であり、210Pb濃度の低減には限界があることが示される。このため、特許文献2の方法では、不純物としてのPb濃度が高い原料錫に対応できる保証がなく、原料錫中のPb濃度が高くなった場合には、0.001cph/cm2以下のレベルのα線放出量を達成しないおそれがある。

0011

本発明の目的は、原料錫の210Pb濃度の高低に拘わらず、加熱してもα線放出量が上昇せずに、α線放出量が0.002cph/cm2以下である低α線放出量の錫、銀、銅、亜鉛又はインジウムのいずれかの金属又は錫合金を提供することにある。本発明の別の目的は、こうした低α線放出量の上記金属又は錫合金を液相法で製造する方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

0012

本発明者らは、上記の課題を解決するために、鋭意研究を行った結果、原料錫と低α線放出量の鉛とをルツボで溶解して合金化して原料錫中に含まれる210Pbの濃度を低減する特許文献1に示されるような熱溶融法に依らずに、原料錫中に含まれる210Pbの濃度を液相で低減する方法を案出した。そして低減程度を調整することで、高温環境に曝されて使用されても、α線放出量が増加しない金属を得る本発明に到達した。

0013

本発明の第1の観点は、錫、銀、銅、亜鉛及びインジウムのいずれかの低α線放出量の金属であって、大気中で100℃、6時間加熱した後のα線の放出量が0.002cph/cm2以下であることを特徴とする低α線放出量の金属である。

0014

本発明の第2の観点は、第1の観点の低α線放出量の錫と、銀、銅、亜鉛、インジウム、ビスマス、ニッケル及びゲルマニウムからなる群より選ばれた1種又は2種以上の金属との合金であって、大気中で100℃、6時間加熱した後のα線の放出量が0.002cph/cm2以下であることを特徴とする低α線放出量の錫合金である。

0015

本発明の第3の観点は、第2の観点に基づく発明であって、前記低α線放出量の錫と合金を形成する金属が、銀、銅、亜鉛及びインジウムからなる群より選ばれた1種又は2種以上の金属である低α線放出量の錫合金である。

0016

本発明の第4の観点は、第1ないし第3の観点のいずれかの観点に基づく発明であって、大気中で200℃、6時間加熱した後の前記金属又は前記錫合金のα線の放出量が0.002cph/cm2以下である低α線放出量の金属又は錫合金である。

0017

本発明の第5の観点は、図1(a)に示すように、不純物として鉛(Pb)をそれぞれ含む錫、銀、銅、亜鉛又はインジウムのいずれかの金属(M)を硫酸(H2SO4)水溶液に溶解して前記金属の硫酸塩(MSO4)水溶液を調製するとともに硫酸塩水溶液中で硫酸鉛(PbSO4)を沈殿させる工程(a)と、図1(b)に示すように、工程(a)の硫酸塩水溶液をフィルタリングして硫酸鉛を硫酸塩水溶液から除去する工程(b)と、図1(c)に示すように、第1槽で、工程(b)の硫酸鉛を除去した硫酸錫水溶液を少なくとも100rpmの回転速度で撹拌しながらα線放出量が10cph/cm2以下の鉛を含む所定の濃度の硝酸鉛(PbNO3)水溶液を所定の速度で30分以上かけて添加して、硫酸塩水溶液中で硫酸鉛を沈殿させ、同時に硫酸塩水溶液をフィルタリングして硫酸鉛を硫酸塩水溶液から除去しながら、第1槽中で全体液量に対する循環流量が少なくとも1体積%の割合で循環させる工程(c)と、図1(d)に示すように、工程(c)の硫酸塩水溶液を第1槽から別の第2槽に移した後、硫酸塩水溶液を電解液として前記金属(M)を電解採取する工程(d)とを含むことを特徴とする低α線放出量の金属の製造方法である。

0018

本発明の第6の観点は、第5の観点に基づく発明であって、前記工程(c)の前記硝酸鉛水溶液中の硝酸鉛の所定の濃度が10質量%〜30質量%である低α線放出量の金属の製造方法である。

0019

本発明の第7の観点は、第5又は第6の観点に基づく発明であって、前記工程(c)の前記硝酸鉛水溶液の所定の添加速度が前記硫酸塩水溶液1リットル(以下、Lという。)に対して1mg/秒〜100mg/秒である低α線放出量の金属の製造方法である。

0020

本発明の第8の観点は、金属錫に、銀、銅、亜鉛、インジウム、ビスマス、ニッケル及びゲルマニウムからなる群より選ばれた1種又は2種以上の金属を添加混合して、この混合物鋳造することによって低α線放出量の錫合金を製造する方法であって、前記金属錫は、第5ないし第7のいずれかの観点の方法により製造された金属錫であり、前記金属錫に添加する金属は、α線放出量が0.002cph/cm2以下であることを特徴とする低α線放出量の錫合金の製造方法である。

0021

本発明の第9の観点は、金属錫に、銀、銅、亜鉛及びインジウムからなる群より選ばれた1種又は2種以上の金属を添加混合して、この混合物を鋳造することによって低α線放出量の錫合金を製造する方法であって、前記金属錫及び前記金属錫に添加する金属は、それぞれ第5ないし第7のいずれかの観点により製造された金属であることを特徴とする低α線放出量の錫合金の製造方法である。

発明の効果

0022

本発明の第1の観点の錫、銀、銅、亜鉛及びインジウムのいずれかの低α線放出量の金属、本発明の第2及び第3の観点の低α線放出量の錫合金は、それぞれ製造初期及び製造から長時間経過してもα線放出量が上昇しない特長があるとともに、大気中で100℃、6時間加熱してもα線放出量が上昇せずに、α線放出量が0.002cph/cm2以下のままである。このため、第1ないし第3の観点の低α線放出量の金属又は錫合金をはんだ材料としてチップと基板の接合など半導体装置に使用して、この半導体装置を高温環境に曝しても、はんだに含まれる前記金属又は前記錫合金からはα線の放出が極めて少なく、ソフトエラーを生じさせない確率が高い。加熱条件を第1の観点の発明で「100℃で6時間」とするのは、実際の使用環境が100℃程度と見込まれるためであり、時間に関しては6時間の加熱で長時間の加熱と同程度の上昇が確認されることから、測定条件を明確にするためである。第4の観点の発明で「200℃で6時間」とするのは、加熱温度が高いほどα線放出量は上昇し易く、また200℃を超えると金属が錫の場合には、錫の融点である232℃に近くなりサンプルが溶解してしまうことから、測定条件を明確にするためである。このため、本発明における低α線放出量の金属は、金属が錫の場合には、錫の融点以下の温度で加熱してもα線放出量が上昇せずに、α線放出量が0.002cph/cm2以下のままであると言い換えられる。

0023

また、はんだ材料のα線は210Poから放出されるが、親核種の210Pbが存在するとその半減期に従ってα線放出量が増加していく傾向が良く知られている。このため、α線放出量が時間の経過とともに変化することを確認することはとても重要な要素である。このα線放出量の増加はシミュレーションにより計算可能であり、約828日で最大値を迎える。このため、時間の経過によるα線放出量の変化の有無を確認するためには、828日までの変化を確認することが好ましい。一方、α線放出量は、時間の経過とともに2次曲線的に変化し、1年経過後のα線放出量は最大で変化したときの80%以上の割合で変化する。このため、本発明では、1年後のα線放出量が変化しないことを確認することで時間経過で変化しないことを確認している。

0024

本発明の第5の観点の低α線放出量の金属の製造方法では、原料の錫と低α線放出量の鉛とをルツボで溶解して合金化して原料錫中に含まれる210Pbの濃度を低減する特許文献1に示されるような熱溶融法と異なり、不純物として鉛をそれぞれ含む錫、銀、銅、亜鉛又はインジウムのいずれかの金属原料を硫酸錫水溶液にして、ここで生じる硫酸鉛をフィルタリングで除去する。その後、この金属原料の硫酸塩水溶液を低α線放出量の鉛(210Pb含有量の少ないPb)を含む硝酸鉛水溶液と反応させて硫酸塩水溶液中の高α線量の鉛(210Pb含有量の多いPb)イオンを低α線放出量の鉛(210Pb含有量の少ないPb)イオンに置換しながら硫酸鉛として沈殿させ、フィルタリングにより除去するという液相法で、上記金属原料中に含まれる210Pbの濃度を低減する。
このため、この方法は、特許文献1の方法と比べて、より簡便に低α線放出量の金属を製造することができる。この方法では、所定の濃度の硝酸鉛水溶液を所定の添加速度で30分以上かけて添加し、かつ硫酸塩水溶液をフィルタリングして硫酸鉛を除去しながら、槽内で循環させるため、金属原料が含む鉛不純物量と最終的な狙いのα線放出量に合わせて、必要な割合で210Pbを低減することが可能である。
このため、最終的に得られる上記錫、銀、銅、亜鉛又はインジウムのいずれかの金属は、210Pbに起因するα線量が、特許文献1で製造される錫のα線量より大幅に減少し、製造初期及び製造から長時間経過した後のα線放出量は勿論のこと、大気中で100℃又は200℃で6時間加熱しても、加熱後のα線放出量は初期値から大きく変化しない。また、この方法では、連続的に210Pbの濃度を低減することが可能であるため、理論上どんなに210Pbの濃度が高い金属原料を用いても、低α線放出量の上記金属を製造することが可能である。

0025

本発明の第6の観点の低α線放出量の金属の製造方法では、工程(c)の硝酸鉛水溶液中の硝酸鉛の濃度を10質量%〜30質量%にすることにより、金属原料に由来する鉛(210Pb)をより確実に沈殿除去できるため、上記加熱後の上記錫、銀、銅、亜鉛又はインジウムのいずれかの金属のα線放出量はより一層減少する。

0026

本発明の第7の観点の低α線放出量の金属の製造方法では、工程(c)の硝酸鉛水溶液の添加速度を硫酸塩水溶液1Lに対して1mg/秒〜100mg/秒にすることにより、金属原料に由来する鉛(210Pb)を更により一層確実に沈殿除去できるため、上記加熱後の上記錫、銀、銅、亜鉛又はインジウムのいずれかの金属のα線放出量は更により一層減少する。

0027

本発明の第8の観点の低α線放出量の錫合金の製造方法では、第5ないし第7の観点で製造された低α線放出量の金属錫に、α線放出量が0.002cph/cm2以下の銀等の金属を添加して鋳造し、錫合金を製造するため、第5の観点に基づく発明と同様に、理論上どんなに210Pbの濃度が高い錫原料を用いても、低α線放出量の錫合金を製造することが可能である。

0028

本発明の第9の観点の低α線放出量の錫合金の製造方法では、第5ないし第7の観点で製造された低α線放出量の金属錫に、第5ないし第7の観点で製造された低α線放出量のα線放出量が0.002cph/cm2以下の銀等の金属を添加して鋳造し、錫合金を製造するため、第5の観点に基づく発明と同様に、理論上どんなに210Pbの濃度が高い錫原料を用いても、低α線放出量の錫合金を製造することが可能である。

図面の簡単な説明

0029

本発明の低α線放出量の錫、銀、銅、亜鉛及びインジウムのいずれかの金属の製造方法の各工程を示すフローチャートである。
ウラン(U)が崩壊し、206Pbに至るまでの崩壊チェーン(ウラン・ラジウム崩壊系列)を示す図である。
本実施形態の低α線放出量の金属の製造装置の一部を示す図である。

0030

次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。

0031

α線を放出する放射性元素は数多く存在するが、多くは半減期が非常に長いか非常に短いために実際には問題にならず、実際に問題になるのは、例えば、図2破線の枠内に示すように、α線は、U崩壊チェーンにおける、210Pb→210Bi→210Poのようにβ崩壊した後のポロニウムの同位体210Poから鉛の同位体206Pbにα崩壊する時に放出する放射線一種である。特に、はんだに用いる錫のα線の放出メカニズムに関しては過去の調査によりこのことが明らかとなっている。ここでは、Biは半減期が短いため、管理上無視することができる。要約すると、錫のα線源は主に210Poであるが、その210Poの放出源である210Pbの量がα線の放出量に起因している。

0032

<第1の実施形態>
先ず、本発明の第1の実施形態の低α線放出量の錫、銀、銅、亜鉛及びインジウムのいずれかの金属の製造方法を図1に示す工程の順に、また図3に示す製造装置に基づいて説明する。

0033

<工程(a)と工程(b)>
〔金属原料〕
第1の実施形態の低α線放出量の錫、銀、銅、亜鉛及びインジウムのいずれかの金属(図1においてMで表す。)を得るための金属原料は、不純物のPb含有量やα線放出量の多寡によってその選定束縛されない。例えばPb濃度が320質量ppm程度含まれ、Pbによるα線放出量が9cph/cm2程度である市販品の錫のような金属を金属材料として使用しても、以下に述べる製造方法と製造装置とを使用して最終的に得られる上記金属においては、大気中で100℃又は200℃で6時間加熱した後のα線放出量を0.002cph/cm2以下にすることができる。なお、上記金属原料の形状は限定されず、粉末状であっても塊状であってもよい。溶解速度を速めるには、水素イオン交換膜を用いて電解溶出する方法を採用してもよい。

0034

〔硫酸塩水溶液の調製と硫酸鉛の沈殿分離
図1に示す工程(a)と工程(b)では、図3に示すように、硫酸塩調製槽11に供給口11aから硫酸水溶液(H2SO4)を入れて槽11に貯えておき、そこに供給口11bから上記金属原料を添加して、撹拌機12で撹拌することにより、上記金属原料を硫酸水溶液に溶解して上記金属原料の硫酸塩(MSO4)水溶液13を調製する。具体的には、硫酸錫、硫酸銀硫酸銅硫酸亜鉛硫酸インジウムの水溶液を調製する。以下、この水溶液を硫酸塩水溶液という。この時、硫酸塩調製槽11の底部に上記金属原料中の鉛(Pb)が硫酸鉛(PbSO4)となって沈殿する。硫酸塩調製槽11の外部に設けられたポンプ14により、硫酸塩水溶液をフィルター16に通して(以下、フィルタリングという。)、また移送管路17を経由して次の第1槽21に移送する。フィルター16により硫酸塩調製槽11の底部に沈殿する硫酸鉛は硫酸塩水溶液から除去される。フィルター16としてはメンブレンフィルターが好ましい。フィルターの孔径は0.1μm〜10μmの範囲が好ましい。

0035

<工程(c)>
〔鉛(210Pb)の低減〕
図1に示す工程(c)では、図3に示す第1槽21には、ポンプ14により移送され、硫酸鉛が除去された硫酸塩水溶液23が貯えられる。この硫酸塩水溶液が第1槽21に所定量貯えられたところで、第1槽21において、供給口21aから10cph/cm2以下の低α線放出量の鉛(Pb)を含む所定の濃度の硝酸鉛水溶液を添加して、撹拌機22で少なくとも100rpmの回転速度で硫酸塩水溶液23を撹拌する。ここでは、硫酸鉛を除去した上記金属原料の硫酸塩水溶液23を温度10℃〜50℃に調整して低α線放出量の鉛(Pb)を含む硝酸鉛水溶液を所定の速度で30分以上かけて添加する。これにより、硫酸塩水溶液中で硫酸鉛(PbSO4)が第1槽21の底部に沈殿する。この硝酸鉛水溶液は、例えば表面α線放出量が10cph/cm2、純度が99.99%のPbを硝酸水溶液に混合して調製される。上記により、上記金属原料に含まれていた高α線放出量の原因である不純物の放射性同位体の鉛(210Pb)及び安定同位体の鉛(Pb)イオンが液中で混合した後に取り除かれ、液中の放射性同位体の鉛(210Pb)の含有量が徐々に低減される。なお、上記金属原料の硫酸塩水溶液中の硫酸塩の濃度としては、100g/L以上250g/L以下とすることが好ましい。硫酸塩水溶液中の硫酸(H2SO4)濃度としては10g/L以上50g/L以下とすることが好ましい。

0036

硫酸塩水溶液の撹拌速度が100rpm未満では、硫酸塩水溶液と硝酸鉛水溶液中の鉛イオンが十分に混合される前に硫酸鉛として沈殿してしまうため、硫酸塩水溶液中の放射性同位体の鉛(210Pb)イオンを安定同位体の鉛(Pb)イオンに置換できない。撹拌速度の上限値は、液が撹拌によって飛散しない程度の回転速度であり、反応槽である第1槽21の大きさ、撹拌機22の羽根のサイズ、形状によって決められる。ここで、第1槽21の大きさとしては直径1.5m程度の円柱形容器を用いることができ、撹拌機22の羽根の大きさは0.5m程度であり、形状はプロペラ形状のものを用いることができる。

0037

硝酸鉛水溶液に含まれる鉛のα線放出量は、特許文献1の原料錫と合金化する鉛と同じ10cph/cm2以下の低α線放出量である。このα線放出量を10cph/cm2以下としたのは、10cph/cm2を超えると、最終的に得られる金属原料のα線放出量を0.002cph/cm2以下にすることができないからである。また硝酸鉛水溶液中の硝酸鉛の濃度は、10質量%〜30質量%であることが好ましい。10質量%未満では、硫酸塩水溶液と硝酸鉛水溶液との反応時間が長引いて製造効率が悪化し易く、30質量%を超えると、硝酸鉛が効率的に活用されず、無駄になり易い。

0038

また硝酸鉛水溶液の添加速度は、硫酸塩水溶液1Lに対して1mg/秒〜100mg/秒であることが好ましく、1mg/秒〜10mg/秒であることが更に好ましい。この添加速度は、硝酸鉛水溶液中の硝酸鉛濃度に依存する一方、1mg/秒未満では、硫酸塩水溶液と硝酸鉛水溶液との反応時間が長引いて製造効率が悪化し易く、100mg/秒を超えると、硝酸鉛が効率的に活用されず、無駄になり易い。更に硝酸鉛水溶液を添加するのに30分以上かけるのは、硝酸鉛水溶液の濃度及び添加速度を高めても、放射性同位体の鉛(210Pb)の低減は、一定の割合でしか進行せず、十分に低減させるのに一定の時間をかけて添加する必要があるからである。このため、添加時間が30分未満であると、上記金属原料のα線放出量を所望の値まで低下させることができない。

0039

図3に戻って、図1に示すこの工程(c)では、上記添加と同時に、第1槽21内の温度10℃〜50℃の硫酸塩水溶液23は第1槽21の外部に設けられたポンプ24により、フィルター26を通して、循環管路27に送られるか、或いは移送管路28を経由して、図示しない次の第2槽に移送される。循環管路27及び移送管路28には、それぞれ開閉バルブ27a及び28aが設けられる。ポンプ24を稼働させて、第1槽21でフィルター26により、残存する硫酸鉛(PbSO4)を硫酸塩水溶液23から除去しながら、バルブ27aを開放し、バルブ28aを閉止することにより、第1槽中で全体液量に対する循環流量が少なくとも1体積%の割合で硫酸塩水溶液23を循環管路27を通して循環させる。この硫酸塩水溶液の循環により、液中の余分な硫酸鉛が除去され、硫酸塩水溶液中の放射性同位体の鉛(210Pb)イオンと安定同位体の鉛(Pb)イオンの置換がスムーズに行われる。循環流量を少なくとも1体積%(1体積%以上)にするのは、1体積%未満では、フィルター26を通過する硫酸塩水溶液の液量が僅かになり、液中に浮遊する硫酸鉛のフィルター26における捕集効率が低下するためである。捕集効率が低下すると、硫酸塩水溶液中に硫酸鉛が大量の残留し、硫酸塩水溶液中の放射性同位体の鉛(210Pb)イオンと安定同位体の鉛(Pb)イオンの置換がスムーズに行われなくなる。フィルター26は上述したメンブレンフィルターを用いることができる。

0040

<工程(d)>
〔錫、銀、銅、亜鉛及びインジウムのいずれかの金属の電解採取〕
続いて、バルブ27aを閉止し、バルブ28aを開放することにより、第1槽21から別の図示しない第2槽に鉛(210Pb)イオンのα線量が低下した硫酸塩水溶液をフィルター26でフィルタリングした後に移送する。温度10℃〜50℃の硫酸塩水溶液を電解液として用い、電解液中にアノードにチタン白金板を、カソードにSUS製の板をそれぞれ配置して、第2槽で硫酸塩水溶液を電解することにより、カソードに錫、銀、銅、亜鉛及びインジウムのいずれかの金属を析出させる。カソードに析出したこの金属を採取し、必要により溶解、鋳造することにより、上記金属のインゴットを得る。インゴットの一部を圧延して板状の金属を得ることもできる。

0041

これにより、製造初期及び製造から長時間経過した後のα線放出量が0.002cph/cm2以下であるとともに、大気中で100℃又は200℃で、6時間加熱してもα線放出量が0.002cph/cm2以下である、低α線放出量の金属錫(Sn)、金属銀(Ag)、金属銅(Cu)、金属亜鉛(Zn)又は金属インジウム(In)を製造することができる。また、上述した製造方法によれば、製造初期及び製造から長時間経過した後のα線放出量が0.001cph/cm2以下であるとともに、大気中で100℃又は200℃で、6時間加熱してもα線量が0.001cph/cm2以下である、低α線放出量の金属錫(Sn)、金属銀(Ag)、金属銅(Cu)、金属亜鉛(Zn)又は金属インジウム(In)を製造することもできる。更には、上述した製造方法によれば、製造初期及び製造から長時間経過した後のα線放出量が0.0005cph/cm2以下であるとともに、大気中で100℃及び200℃で、6時間加熱してもα線量が0.0005cph/cm2以下である、低α線放出量の金属錫(Sn)、金属銀(Ag)、金属銅(Cu)、金属亜鉛(Zn)又は金属インジウム(In)を製造することも可能である。

0042

<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態の低α線放出量の錫合金の製造方法を説明する。この製造方法では、第1の実施形態で得られた低α線放出量の金属錫(Sn)と、銀、銅、亜鉛、インジウム、ビスマス、ニッケル及びゲルマニウムからなる群より選ばれた1種又は2種以上の金属とを鋳造することにより錫合金を製造する。ここで金属錫と合金を形成する金属としては、錫合金をはんだとして用いた場合、そのはんだの融点と機械特性の観点から、銀、銅、亜鉛、インジウムが好ましい。本発明の目的を達成するため、金属錫と合金を形成する銀、銅、亜鉛、インジウム、ビスマス又はニッケルのα線放出量は0.002cph/cm2以下である。

0043

なお、本実施形態において、鋳造は、例えば、高周波誘導溶解炉等、一般的に鋳造に用いられる炉を利用することができる。また、鋳造時の雰囲気としては、真空雰囲気や、窒素又はアルゴン等の不活性ガス雰囲気が挙げられる。更にコンタミネーションを防ぐために、低α線合金専用の溶解炉を使用することが好ましい。

0044

第2の実施形態で得られた錫合金は、第1の実施形態で得られた金属と同様に、製造初期及び製造から長時間経過した後のα線放出量が0.002cph/cm2以下であるとともに、大気中で100℃又は200℃で、6時間加熱してもα線放出量が0.002cph/cm2以下である特徴を有する。

0045

次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。

0046

<実施例1>
金属原料としてα線放出量が10.2cph/cm2でPb濃度が15ppmの市販のSn粉末を用いて、これを硫酸錫調製槽に貯えられた、濃度130g/Lの硫酸水溶液に添加混合して、50℃で溶解して200g/Lの硫酸錫水溶液1m3を調製した。これにより金属原料の錫に含まれていたPbが硫酸鉛として沈殿した。硫酸錫水溶液をユアサメンブレンシステム社製のメンブレンフィルター(孔径:0.2μm)を通してろ過し、硫酸鉛を除去した。次いで第1槽で、硫酸鉛を除去した硫酸錫水溶液を100rpmの回転速度で撹拌しながら、この水溶液にα線放出量が5cph/cm2のPbを含む硝酸鉛水溶液(硝酸鉛濃度:20質量%)を1mg/秒・L(1000mg/秒)の速度で30分かけて添加した。なお、第1槽としては、直径1.5mの円柱形の容器を用いた。この添加と同時に硫酸錫水溶液を上記と同一のメンブレンフィルターに通して硫酸鉛を硫酸錫水溶液から除去しながら、第1槽中で全体液量に対する循環流量が1体積%の割合になるように硫酸錫水溶液を循環させた。

0047

その後、硫酸錫水溶液を第1槽からフィルタリングした後に第2槽に移し、第2槽でこの硫酸錫水溶液を電解液として用い、電解液中にアノードとしてチタン白金板を、カソードとしてSUS板をそれぞれ配置し、液温30℃、カソード電流密度5A/dm2で電解を行った。カソードに析出した金属錫を採取し、最終製品である圧延して板状の金属錫を得た。上記実施例1の製造条件を以下の表1に示す。なお、硝酸鉛水溶液の添加速度は、硫酸錫水溶液1Lに対する添加速度である。硝酸鉛水溶液の全添加量は、硫酸錫水溶液1Lに対する添加量である。

0048

0049

<実施例2〜16及び比較例1〜7>
実施例2〜16及び比較例1〜7では、実施例1で述べた原料錫、硫酸錫水溶液の撹拌速度・循環速度、硝酸鉛水溶液のPbのα線量、硝酸鉛濃度、添加速度、添加時間を上記表1に示すように変更した。以下、実施例1と同様にして、最終製品である板状の金属錫を得た。

0050

<比較例8>
比較例8では、本明細書の背景技術に記載した特許文献1の実施例1に準じて、最終製品である板状の金属錫を得た。具体的には、表面α線放出量が5cph/cm2、純度:99.99%でPb濃度が240ppmの市販のSnと、表面α線放出量が10cph/cm2、純度:99.99%の市販のPbを用意し、SnとPbを窒素雰囲気中、高純度黒鉛ルツボ内で高周波誘導炉を用いて溶解し、Sn−5質量%Pb合金を製造し、この合金を高純度黒鉛ルツボに入れて加熱溶融して、Pbを蒸発除去し、冷却後、ルツボ内に残留したSnを圧延して低α線放出量のSn板を作製した。

0051

<比較例9>
比較例9では、本明細書の背景技術に記載した特許文献2の実施例1に準じて、板状の金属錫を得た。具体的には、原料錫としてα線放出量が9.2cph/cm2でPb濃度が240ppmの市販のSn粉末を用いた。この原料錫を硫酸で浸出し、この浸出液を電解液とした。またアノードには3NレベルのSn板を用いた。これを電解温度20℃で電流密度1A/dm2という条件で電解を行った。カソードに析出した金属錫を採取し、圧延して最終製品である板状の金属錫を得た。

0052

比較試験及び評価その1>
実施例1〜16及び比較例1〜9で得られた25種類の最終製品である金属錫について、次に述べる方法で、金属錫中のPb濃度及びこのPbによるα線放出量を加熱前と加熱後と加熱し徐冷してから1年経過した後で測定した。この結果を、以下の表2に示す。

0053

0054

(a)金属錫中のPb濃度
金属錫中のPb濃度は、板状の金属錫を試料とし、これを熱塩酸に溶解し、得られた液をICP(プラズマ発光分光分析装置定量下限:1質量ppm)で分析し、不純物Pb量を測定した。

0055

(b)金属錫中のPbによるα線放出量
初めに、得られた板状の金属錫を加熱前の試料1とした。この加熱前の試料1から放出されるα線量をアルファサイエンス社製ガスフロー式α線測定装置(MODEL−1950、測定下限:0.0005cph/cm2)で96時間測定した。この装置の測定下限は0.0005cph/cm2である。この時のα線放出量を加熱前のα線放出量とした。次に、加熱前で測定した試料1を大気中、100℃で6時間加熱した後、室温まで徐冷して試料2とした。この試料2のα線放出量を試料1と同様の方法で測定した。この時のα線放出量を「加熱後(100℃)」とした。次に、α線放出量の測定が終わった試料2を大気中、200℃で6時間加熱した後、室温まで徐冷して試料3とした。この試料3のα線放出量を試料1と同様の方法で測定した。この時のα線放出量を「加熱後(200℃)」とした。更に試料3をコンタミネーションを防ぐために真空梱包して1年間保管して試料4とし、この試料4のα線放出量を試料1と同様の方法で測定した。この時のα線放出量を「1年後」とした。

0056

表2から明らかなように、比較例1では、硝酸鉛水溶液を添加する際の硫酸錫水溶液の撹拌速度を50rpmにしたために、原料錫の放射性同位体の鉛(210Pb)が十分に低減されず、加熱前の金属錫のα線量は0.0005cph/cm2未満であったが、100℃での加熱後は0.0024cph/cm2に、また200℃での加熱後は0.0027cph/cm2に、更に1年後では0.0135cph/cm2に、それぞれ増加していた。

0057

比較例2では、硝酸鉛水溶液を添加中及び添加後の硫酸錫水溶液の循環速度を硫酸錫水溶液1Lに対して0.5体積%にしたために、原料中の放射性同位体の鉛(210Pb)が十分に低減されず、加熱前の金属錫のα線量は0.0005cph/cm2未満であったが、100℃での加熱後は0.0021cph/cm2に、また200℃での加熱後は0.0025cph/cm2に、更に1年後では0.0186cph/cm2に、それぞれ増加していた。

0058

比較例3では、硝酸鉛水溶液の硝酸鉛濃度を40質量%と高くしたにも拘わらず、添加時間を20分間にしたために、原料錫の放射性同位体の鉛(210Pb)が十分に低減されず、加熱前の金属錫のα線量は0.0005cph/cm2未満であったが、100℃及び200℃での加熱後はそれぞれ0.0022cph/cm2に、更に1年後では0.0045cph/cm2に、増加していた。

0059

比較例4では、硝酸鉛水溶液の硝酸鉛濃度を20質量%にして、添加時間を20分間にしたために、原料錫の放射性同位体の鉛(210Pb)が十分に低減されず、加熱前の金属錫のα線量は0.0006cph/cm2であったが、100℃での加熱後は0.0025cph/cm2に、また200℃での加熱後は0.0029cph/cm2に、更に1年後では0.0043cph/cm2に、それぞれ増加していた。

0060

比較例5では、硝酸鉛水溶液の添加速度を10mg/秒に速めたにも拘わらず、添加時間を20分間にしたために、原料錫の放射性同位体の鉛(210Pb)が十分に低減されず、加熱前の金属錫のα線量は0.0005cph/cm2未満であったが、100℃での加熱後は0.0023cph/cm2に、また200℃での加熱後は0.0025cph/cm2に、更に1年後では0.0038cph/cm2に、それぞれ増加していた。

0061

比較例6では、硝酸鉛水溶液の添加速度を100mg/秒に速めたにも拘わらず、添加時間を20分間にしたために、原料錫の放射性同位体の鉛(210Pb)が十分に低減されず、加熱前の金属錫のα線量は0.0007cph/cm2であったが、100℃での加熱後は0.0024cph/cm2に、また200℃での加熱後は0.0031cph/cm2に、更に1年後では0.0032cph/cm2に、それぞれ増加していた。

0062

比較例7では、硝酸鉛水溶液に含まれるPbのα線量が12cph/cm2である硝酸鉛水溶液を用いたために、原料錫の放射性同位体の鉛(210Pb)が十分に低減されず、加熱前の金属錫のα線量は0.0008cph/cm2であったが、100℃での加熱後は0.0021cph/cm2に、また200℃での加熱後は0.0025cph/cm2に、更に1年後では0.0076cph/cm2に、それぞれ増加していた。

0063

比較例8の特許文献1の実施例1に記載された条件で作られた金属錫のα線量は、加熱前は0.0005cph/cm2未満であったが、100℃での加熱後は0.0026cph/cm2に、また200℃での加熱後は0.0027cph/cm2に、更に1年後では0.0021cph/cm2に、それぞれ増加していた。

0064

比較例9の特許文献2の実施例1に記載された条件で作られた金属錫のα線量は、加熱前は0.0008cph/cm2であったが、100℃での加熱後は0.0021cph/cm2に、また200℃での加熱後は0.0023cph/cm2に、更に1年後では0.0032cph/cm2に、それぞれ増加していた。

0065

これに対して、本発明の第5の観点の製造条件を満たした実施例1〜16で得られた金属錫は、加熱前の金属錫のα線量は、0.0005cph/cm2未満であるか、0.0005〜0.0007cph/cm2であった。また100℃での加熱後の金属錫のα線量は、0.0005cph/cm2未満であるか、0.0005cph/cm2であり、200℃での加熱後の金属錫のα線量は、0.0005cph/cm2未満であるか、0.0005〜0.0006cph/cm2であった。更に1年後の金属錫のα線量は、0.0005cph/cm2未満であった。即ち、実施例1〜16で得られた金属錫は、加熱前のα線量は0.001cph/cm2未満であり、100℃での加熱後のα線量は0.001cph/cm2以下であり、200℃での加熱後のα線量は0.002cph/cm2以下であり、1年後の金属錫のα線量は、0.0005cph/cm2未満であった。

0066

<実施例17及び比較例10>
金属原料として実施例1で述べた原料錫の代わりにα線放出量が0.2cph/cm2でPb濃度が15ppmの市販のCu粉末を用い、実施例1で述べた硫酸錫水溶液の代わり硫酸銅水溶液を調製した。

0067

<実施例18及び比較例11>
金属原料として実施例1で述べた原料錫の代わりにα線放出量が3cph/cm2でPb濃度が15ppmの市販のZn粉末を用い、実施例1で述べた硫酸錫水溶液の代わり硫酸亜鉛水溶液を調製した。

0068

<実施例19及び比較例12>
金属原料として実施例1で述べた原料錫の代わりにα線放出量が5cph/cm2でPb濃度が15ppmの市販のインジウム粉末を用い、実施例1で述べた硫酸錫水溶液の代わり硫酸インジウム水溶液を調製した。

0069

実施例17〜19及び比較例10〜12の硫酸塩水溶液の撹拌速度・循環速度、硝酸鉛水溶液のPbのα線量、硝酸鉛濃度、添加速度、添加時間を以下の表3に示すように変更した。以下、実施例1と同様にして、最終製品である金属銅、金属亜鉛及び金属インジウムをそれぞれ得た。

0070

0071

<比較試験及び評価その2>
実施例17〜19及び比較例10〜12で得られた金属銅、金属亜鉛及び金属インジウムについて、前述した方法で、これらの金属中のPb濃度及びこのPbによるα線放出量を、加熱前と加熱後と1年後でそれぞれ測定した。この結果を、以下の表4に示す。

0072

0073

表4から明らかなように、比較例10では、硝酸鉛水溶液を添加する際の硫酸銅水溶液の撹拌速度を50rpmにしたために、原料Cu粉末の放射性同位体の鉛(210Pb)が十分に低減されず、加熱前の金属銅のα線量は0.0005cph/cm2未満であったが、100℃での加熱後は0.0029cph/cm2に、また200℃での加熱後は0.0031cph/cm2に、更に1年後では0.0092cph/cm2に、それぞれ増加していた。

0074

比較例11では、硝酸鉛水溶液を添加する際の硫酸亜鉛水溶液の撹拌速度を50rpmにし、循環速度を0.5体積%にしたために、原料Zn粉末の放射性同位体の鉛(210Pb)が十分に低減されず、加熱前の金属亜鉛のα線量は0.0005cph/cm2未満であったが、100℃での加熱後は0.0026cph/cm2に、また200℃での加熱後は0.0025cph/cm2に、更に1年後では0.0123cph/cm2に、それぞれ増加していた。

0075

比較例12では、硝酸鉛水溶液を添加する際の硫酸インジウム水溶液の撹拌速度を50rpmにしたために、原料インジウム粉末の放射性同位体の鉛(210Pb)が十分に低減されず、加熱前の金属銅のα線量は0.0005cph/cm2未満であったが、100℃での加熱後は0.0031cph/cm2に、また200℃での加熱後は0.0028cph/cm2に、更に1年後では0.0109cph/cm2に、それぞれ増加していた。

0076

これに対して、本発明の第5の観点の製造条件を満たした実施例17〜19で得られた金属銅、金属亜鉛及び金属インジウムは、加熱前のこれら金属のα線量は、0.0005cph/cm2未満であった。また100℃での加熱後のこれらの金属のα線量は、0.0005cph/cm2未満であるか、0.0005cph/cm2であり、200℃での加熱後の金属錫のα線量は、0.0005cph/cm2未満であるか、0.0005cph/cm2であった。更に1年後の金属錫のα線量は、0.0005cph/cm2未満であった。即ち、実施例17〜19で得られた金属銅、金属亜鉛及び金属インジウムは、加熱前のα線量は0.001cph/cm2未満であり、100℃での加熱後のα線量は0.001cph/cm2以下であり、200℃での加熱後のα線量は0.002cph/cm2以下であり、1年後の金属銅、金属亜鉛及び金属インジウムのα線量は、0.0005cph/cm2未満であった。

0077

<実施例20〜27及び比較例13〜20>
実施例20〜27では、実施例1で得られた板状の金属錫を用い、比較例13〜20では、比較例1で得られた板状の金属錫を用いた。これらの金属錫と、以下の表5に示すα線放出量が0.002cph/cm2以下の銀、銅、亜鉛、インジウム、ビスマス、ニッケル、ゲルマニウムの金属原料とを切断、計量し、カーボンルツボに入れ、高周波誘導真空溶解炉を用いて、真空雰囲気下で、各金属原料の溶融温度以上の温度に加熱して、最終製品である錫合金を鋳造した。

0078

0079

<比較試験及び評価その3>
実施例20〜27及び比較例13〜20で得られた最終製品である錫合金について、前述した方法で、これらの錫合金中のPb濃度及びこのPbによるα線放出量を、加熱前と加熱後と1年後で測定した。この結果を以下の表6に示す。

0080

0081

表6から明らかなように、比較例13〜20では、比較例1で得られた板状の金属錫を用いたため、加熱前の錫合金のα線量は0.0005cph/cm2未満であるか、0.0005〜0.0006cph/cm2であったが、100℃での加熱後は0.0021〜0.0029cph/cm2に、また200℃での加熱後は0.0022〜0.0028cph/cm2に、更に1年後では0.0084〜0.0120cph/cm2に、それぞれ増加していた。

実施例

0082

これに対して、実施例20〜27では、実施例1で得られた板状の金属錫を用いたため、実施例20〜27で得られた加熱前の錫合金のα線量は、0.0005cph/cm2未満であるか、0.0005〜0.0006cph/cm2であった。また100℃での加熱後の錫合金のα線量は、0.0005cph/cm2未満であるか、0.0005〜0.0007cph/cm2であり、200℃での加熱後の錫合金のα線量及び1年後の錫合金のα線量は、それぞれ0.0005cph/cm2未満であるか、0.0005〜0.0006cph/cm2であった。即ち、実施例20〜27で得られた錫合金は、加熱前のα線量は0.001cph/cm2未満であり、100℃での加熱後のα線量は0.001cph/cm2以下であり、200℃での加熱後のα線量は0.002cph/cm2以下であり、1年後の錫合金のα線量は、0.0005cph/cm2未満であった。

0083

本発明の低α線放出量の錫、銀、銅、亜鉛又はインジウムのいずれかの金属、又は銀、銅、亜鉛、インジウム、ビスマス、ニッケル及びゲルマニウムからなる群より選ばれた1種以上の金属と錫との低α線放出量の錫合金は、α線の影響によりソフトエラーが問題視される半導体装置の半導体チップ接合用の錫を主たる金属とするはんだ材料に利用することができる。

0084

11硫酸塩調製槽
12, 22攪拌機
13硫酸塩水溶液
14, 24ポンプ
16, 26フィルター
17, 28移送管路
21 第1槽
23 硫酸塩水溶液
27 循環管路

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