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概要
背景
非水電解質電池は、ハイブリッド自動車や電気自動車等を含む自動車用電池として実用化されている。このような車載電源用電池としてリチウムイオン二次電池が使用されている。リチウムイオン二次電池は、出力特性、エネルギー密度、容量、寿命、高温安定性等の種々の特性を併せ持つことが要求されている。特に電池の入出力特性を改善するために、電極について様々な改良が図られている。たとえば、電池の充放電効率を向上させるために、負極材料の高密度化が試みられている。
たとえば、特許文献1には、つぶれやすさが等しく、粉体の吸油量および円形度の異なる2種類の黒鉛粉末を混合して負極活物質として用いることが提案されている。特許文献1は、2種類の黒鉛を使用することで、電極密度が高く、電解液の浸透性に優れ、充放電による容量損失が少なく、サイクル性能の良いリチウムイオン二次電池用負極活物質を提供することができると説明する。
概要
負極の炭素材料の性質を最適化することで、リチウムイオン二次電池用負極のエネルギー密度と充放電効率を向上させること。 本発明のリチウムイオン二次電池用負極は、負極集電体の少なくとも一面に負極活物質を含む負極活物質層が設けられたリチウムイオン二次電池用負極である。ここで負極活物質は炭素材料を含み、負極活物質層に対してP(メガパスカル)の圧力をかけた後に測定した該負極活物質層の密度D(グラム/cm3)が、以下の式:[数1] 0.8≦D≦0.003P+1.1 (0<P<366)を満たす値であることを特徴とする。
目的
特許文献1は、2種類の黒鉛を使用することで、電極密度が高く、電解液の浸透性に優れ、充放電による容量損失が少なく、サイクル性能の良いリチウムイオン二次電池用負極活物質を提供する
効果
実績
- 技術文献被引用数
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この技術が所属する分野
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請求項1
負極集電体の少なくとも一面に負極活物質を含む負極活物質層が設けられたリチウムイオン二次電池用負極であって、該負極活物質が炭素材料を含み、該負極活物質層に対してP(メガパスカル)の圧力をかけた後に測定した該負極活物質層の密度D(グラム/cm3)が、以下の式:[数1]0.8≦D≦0.003P+1.1(0<P<366)を満たす値であることを特徴とする、前記リチウムイオン二次電池用負極。
請求項2
該負極活物質層に対してP(メガパスカル)の圧力をかけた後に測定した該負極活物質層の密度D(グラム/cm3)が、以下の式:[数2]0.9≦D≦0.003P+1.1(0<P≦350)を満たす値であることを特徴とする、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用負極。
請求項3
該負極活物質層に対してP(メガパスカル)の圧力をかけた後に測定した該負極活物質層の密度D(グラム/cm3)が、以下の式:[数3]0.92≦D≦0.003P+1.1(0<P≦300)を満たす値であることを特徴とする、請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池用負極。
請求項4
該負極活物質層に対してP(メガパスカル)の圧力をかけた後に測定した該負極活物質層の密度D(グラム/cm3)が、以下の式:[数4]0.003P+0.8≦D≦0.003P+1.1(0<P<366)を満たす値であることを特徴とする、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用負極。
請求項5
該炭素材料が、黒鉛を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極。
請求項6
請求項7
請求項8
請求項1〜7のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極と、正極集電体の少なくとも一面に正極活物質を含む正極活物質層が設けられたリチウムイオン二次電池用正極と、セパレータと、電解液と、を含む発電要素を、外装体内部に含む、リチウムイオン二次電池。
技術分野
0001
本発明は、非水電解質電池、特にリチウムイオン二次電池に使用する負極に関する。
背景技術
0002
非水電解質電池は、ハイブリッド自動車や電気自動車等を含む自動車用電池として実用化されている。このような車載電源用電池としてリチウムイオン二次電池が使用されている。リチウムイオン二次電池は、出力特性、エネルギー密度、容量、寿命、高温安定性等の種々の特性を併せ持つことが要求されている。特に電池の入出力特性を改善するために、電極について様々な改良が図られている。たとえば、電池の充放電効率を向上させるために、負極材料の高密度化が試みられている。
0003
たとえば、特許文献1には、つぶれやすさが等しく、粉体の吸油量および円形度の異なる2種類の黒鉛粉末を混合して負極活物質として用いることが提案されている。特許文献1は、2種類の黒鉛を使用することで、電極密度が高く、電解液の浸透性に優れ、充放電による容量損失が少なく、サイクル性能の良いリチウムイオン二次電池用負極活物質を提供することができると説明する。
先行技術
0004
特許第6029200号
発明が解決しようとする課題
0005
一般に、負極材料は、その密度を高くすると電解液の浸透性が低下し、電解液の浸透性を向上させるべく電極密度を低くすると充放電効率等の電池性能が低下するという問題がある。特許文献1の負極は、2種類の黒鉛を混合して用いることで、この問題を解決しようとしている。しかしながら望ましい負極性能に見合う黒鉛の混合比率を決定するのが困難であり、混合比率に関する何らかの目安が必要であった。また1種類の炭素材料のみで高い電極密度と高い電解液の浸透性とを両立することができれば、負極の製造をより容易にすることができると考えられる。
そこで、本発明は、負極の炭素材料の性質を最適化することで、リチウムイオン二次電池用負極のエネルギー密度と充放電効率を向上させることを目的とする。
課題を解決するための手段
0006
本発明の実施形態におけるリチウムイオン二次電池用負極は、負極集電体の少なくとも一面に負極活物質を含む負極活物質層が設けられたリチウムイオン二次電池用負極である。ここで負極活物質は炭素材料を含み、負極活物質層に対してP(メガパスカル)の圧力をかけた後に測定した該負極活物質層の密度D(グラム/cm3)が、以下の式:
[数1]
0.8≦D≦0.003P+1.1 (0<P<366)
を満たす値であることを特徴とする。
発明の効果
0007
本発明のリチウムイオン二次電池用負極は、負極活物質層の密度が高く、エネルギー密度が高く、耐久性にも優れている。本発明のリチウムイオン二次電池用負極を使用したリチウムイオン二次電池は、充放電効率が高く耐久性に優れ、長寿命である。
図面の簡単な説明
0008
図1は、負極活物質層に対する圧力(単位はメガパスカル)と、当該圧力をかけた後に測定した負極活物質層の密度(単位はグラム/cm3)との関係を示すグラフである。
図2は、負極活物質層に対する圧力(単位はメガパスカル)と、当該圧力をかけた後に測定した負極活物質層の密度(単位はグラム/cm3)との関係を示すグラフである。
図3は、負極活物質層に対する圧力(単位はメガパスカル)と、当該圧力をかけた後に測定した負極活物質層の密度(単位はグラム/cm3)との関係を示すグラフである。
図4は、負極活物質層に対する圧力(単位はメガパスカル)と、当該圧力をかけた後に測定した負極活物質層の密度(単位はグラム/cm3)との関係を示すグラフである。
図5は、負極活物質層に対する圧力(単位はメガパスカル)と、当該圧力をかけた後に測定した負極活物質層の密度(単位はグラム/cm3)との関係を示すグラフである。
図6は、実施形態のリチウムイオン電池の断面図の一例である。
0009
本発明の実施形態を以下に説明する。本明細書においてリチウムイオン二次電池とは、正極と、負極と、セパレータと、電解液と、を含む発電要素を、外装体内部に含むリチウムイオン二次電池である。ここでリチウムイオン二次電池用負極(以下、単に「負極」ともいう。)は、負極活物質層が負極集電体に配置されたものである。具体的には、負極とは、負極活物質と、バインダと、必要な場合導電助剤との混合物を負極集電体に塗布して負極活物質層を形成した薄板状あるいはシート状の電池部材である。負極活物質層は、負極集電体の少なくとも一面に設けられている。負極活物質層が負極集電体の両面(二面)に設けられていてもよい。
0010
ここで負極活物質として、炭素材料を用いることが好ましい。特に炭素材料は、黒鉛を含むことができる。各実施形態において用いられる黒鉛は、負極活物質層に含まれていると、電池の残容量(SOC)が低いときにも電池の出力を向上させることができるというメリットがある。黒鉛は、六方晶系六角板状結晶の炭素材料であり、石墨、グラファイト等と称されることがある。黒鉛は粒子の形態であることが好ましい。
0011
黒鉛には、天然黒鉛と人造黒鉛がある。天然黒鉛は安価に大量に入手することができ、構造が安定し耐久性に優れている。人造黒鉛とは人工的に生産された黒鉛のことであり、純度が高い(同素体などの不純物がほとんど含まれていない)ため電気抵抗が小さい。実施形態における炭素材料として、天然黒鉛、人造黒鉛とも好適に用いることができる。
0012
ここで黒鉛として人造黒鉛を用いる場合、層間距離d値(d002)が0.337nm以上であることが好ましい。人造黒鉛の結晶の構造は、一般的に天然黒鉛よりも薄い。人造黒鉛をリチウムイオン二次電池用負極活物質として用いる場合は、リチウムイオンが挿入可能な層間距離を有していることが条件となる。リチウムイオンの挿脱が可能な層間距離はd値(d002)で見積もることができ、d値が0.337nm以上であれば問題なくリチウムイオンの挿脱が行われる。
0013
炭素材料として、非晶質炭素を用いることができる。非晶質炭素とは、部分的に黒鉛に類似するような構造を有していてもよい、微結晶がランダムにネットワークした構造をとった、全体として非晶質である炭素材料のことである。非晶質炭素として、カーボンブラック、コークス、活性炭、カーボンファイバー、ハードカーボン、ソフトカーボン、メソポーラスカーボン等が挙げられる。実施形態で用いられる非晶質炭素の被覆層を有する黒鉛粒子とは、非晶質炭素による被覆層を有する天然黒鉛粒子、または非晶質炭素による被覆層を有する人造黒鉛のいずれであっても良い。これらを負極活物質の炭素材料として用いると、電解液の分解が抑制されて負極の耐久性が向上する上、電池の充電時のガスの発生が抑制されるため電池自体の耐久性も向上する。
0014
炭素材料として、非晶質炭素の被覆層を有する黒鉛粒子を用いることもできる。ここで「非晶質炭素の被覆層を有する黒鉛粒子」とは、先に説明した黒鉛の粒子の表面が非晶質炭素で被覆されていることを意味する。黒鉛粒子の表面の一部が非晶質炭素で被覆されていればよく、黒鉛粒子の表面全体が非晶質炭素で被覆されている必要はない。また「被覆層」の語は、必ずしも均一な厚みを有する層を意味するものではない。
0015
負極活物質として、タップ密度が1.0〜1.5グラム/cm3、嵩密度0.5〜1.0グラム/cm3である炭素材料を用いることが好ましい。炭素材料は、一般にその内部に空隙を含んでいるが、この空隙の割合が25〜35%であることが好ましい。炭素材料の空隙の割合を好適な範囲に維持することにより、負極活物質への電解液の浸透性を高めることができる。
0016
負極活物質層には、バインダが含まれていてよい。バインダは、負極活物質層のつぶれを抑制し、負極活物質層の構造を維持する役割を果たす。バインダとして、水系バインダを用いることが非常に好ましい。バインダは、負極活物質である炭素材料の粒子同士や、負極活物質層と金属箔とを接着する役割を果たす。好ましい水系バインダとして、たとえばスチレンブタジエンラバー(SBR)、ブタジエンラバー(BR)、クロロプレンラバー(CR)、イソプレンラバー(IR)、アクリロニトリルブタジエンラバー(NBR)等の合成ゴム、あるいはカルボキシメチルセルロース(CMC)、キサンタンガム、グアーガム、ペクチン等の多糖類を挙げることができる。特に水系バインダとしてSBR、CMCおよびこれらの混合物を用いると、上記の炭素材料間の接着力を向上させることができ、かつ形成した負極活物質層の強度を向上させることができる。これらのうちSBRは弾性が比較的高いため、負極活物質層の空孔率を適度に維持することができ、負極活物質層への電解液の浸透性を高めることに貢献することができる。またSBRは、電池の充放電時に生じうる負極活物質層の膨張・収縮時に負極活物質同士が接触して割れることを防ぐこともできる。一方、CMCは、電解液の濡れ性が高いため、SBRと同様、負極活物質層への電解液の浸透性を高める。
0017
この他、バインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用いることもできる。バインダにPVDFを用いると、水ではなくN−メチルピロリドン(NMP)を溶剤として使用することができるので、残留水分に起因するガスの発生を防ぐことができる。バインダとして、PVDFのほか、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ポリアニリン類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリピロール類等の導電性ポリマーを用いることもできる。
0019
負極活物質層には、導電助剤を含んでいてもよい。導電助剤として、カーボンナノファイバー等のカーボン繊維、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、活性炭、メゾポーラスカーボン、フラーレン類、カーボンナノチューブ等の炭素材料が挙げられる。その他、負極活物質層には増粘剤、分散剤、安定剤等の、電極形成のために一般的に用いられる電極添加剤を適宜使用することができる。導電助剤は、負極活物質層全体の重量を基準として0.1〜0.5重量%程度用いることが好ましい。導電助剤の含有量を当該範囲とすると、負極導電率が向上し、弾性体として機能することで活物質層内の空隙の均一性が維持される。導電助剤としてカーボンブラックを用いると、負極活物質層の電解液の濡れ性が向上し、負極活物質層への電解液の浸透性を高めることができる。
0020
実施形態において負極活物質層は、負極活物質である炭素材料、バインダ、および導電助剤を溶媒(水またはN−メチルピロリドン(以下、「NMP」と称する。)等)に適切な割合で混合してスラリーを形成し、これを金属箔(銅箔等)からなる負極集電体に塗布または圧延し、加熱して溶媒を蒸発させることにより形成することができる。この際、スラリーの塗布量を変化させることにより、溶媒蒸発後の負極活物質層の目付量、空孔率(負極活物質層に存在する空隙部の存在割合)等を適宜調整することができる。溶媒蒸発後に負極活物質層全体をプレスして所望の密度および空孔率を有する負極活物質層を形成する。ここで、完成した負極活物質層に対して特定の圧力をかけたときに、特定の範囲の電極密度になるように、負極活物質層は形成されている。具体的には、完成した負極活物質層に対してPメガパスカルの圧力をかけたときに、負極活物質層の密度D(グラム/cm3)が、以下の式:
[数2]
0.8≦D≦0.003P+1.1 (0<P<366)
を満たす値となる。完成した負極活物質層は、所定の密度と空孔率をもってその形態を維持している。その負極活物質層に対して所定の圧力をかけると、負極活物質層は圧縮され、完成後の負極活物質層の形態からは変形する。この際、完成後の負極活物質層が、所定の範囲の圧力に対する耐久性を有し、ある程度その形態を維持できるものであることが好ましい。すなわち、完成後の負極活物質層が所定の範囲の圧力の負荷に対して「脆く潰れやすいもの」であることは、本実施形態においては不都合である。負極活物質層を形成する上で、負極活物質層がそのような不都合なものではないことの指標が必要である。本発明者らが、負荷圧力とそれにより得られる負極電極密度との関係を鋭意検討したところ、上記の関係式を満たす負極活物質層が好適であることがわかった。
0021
図1は、負極活物質層に対する圧力(単位はメガパスカル)と、当該圧力をかけた後に測定した負極活物質層の密度(単位はグラム/cm3)との関係を示すグラフである。グラフ中、横軸は負極活物質層に対して負荷する圧力(MPa)であり、縦軸は当該圧力をかけた後に測定した電極密度(g/cm3)である。実線はD=0.003P+1.1の直線である。負極活物質層の表面に対して0を超え366MPa未満のプレス圧力をかけると、負極活物質層は幾ばくか変形し、電極密度は圧力負荷の前よりも高くなる。圧力負荷後の電極密度が、当該実線よりも下(グラフ中、左斜め斜線で示される範囲)となるような負極活物質層が好ましい。負極活物質層に対して負荷圧力0<P<366(MPa)の範囲の所定の圧力をかけた時に電極密度DがD=0.003P+1.1の直線を上回る(すなわち、D=0.003P+1.1の直線よりも上にプロットされる)ことは、負極活物質層が軟らかく、圧力の負荷によりその表面が選択的に高密度化して必要以上に変形してしまうことを意味する。このような負極活物質層は強度が不足しているため、このリチウムイオン二次電池用負極を用いたリチウムイオン二次電池はサイクル特性に劣り、寿命が短くなる。
0022
負極活物質層に対してP(メガパスカル)の圧力をかけた後に測定した負極活物質層の密度D(グラム/cm3)が、以下の式:
[数3]
0.9≦D≦0.003P+1.1 (0<P≦350)
を満たす値となることが好ましい。当該式で表される範囲は、図2で説明される。図2のグラフ中、右斜め斜線で示される範囲が好ましい範囲である。
0023
さらに、負極活物質層に対してP(メガパスカル)の圧力をかけた後に測定した負極活物質層の密度D(グラム/cm3)が、以下の式:
[数4]
0.92≦D≦0.003P+1.1 (0<P≦300)
を満たす値となることが特に好ましい。当該式で表される範囲は、図3で説明される。図2のグラフ中、縦線で示される範囲が特に好ましい範囲である。
0024
さらに負極活物質層に対してP(メガパスカル)の圧力をかけた後に測定した負極活物質層の密度D(グラム/cm3)が、以下の式:
[数5]
0.003P+0.8≦D≦0.003P+1.1 (0<P<366)
を満たす値となることが非常に好ましい。当該式で表される範囲は、図4で説明される。図2のグラフ中、横線で示される範囲が非常に好ましい範囲である。
0025
負極活物質層に対してかける圧力Pと、電極密度Dとの関係が、上に説明する範囲に入るように負極活物質層を形成することができる。負極活物質混合物スラリーを負極集電体に塗布する際は、負極活物質層の単位面積当たりの重量(目付量)が2.5〜10mg/cm2となるように該スラリーを配置することが好ましい。負極集電体の片面あたりの目付量は、スラリーの濃度、スラリーの配置量と配置厚み、溶媒蒸発のための加熱時間等を適宜変更して調整することができる。負極活物質層の目付量を少なくすると、負極の抵抗が小さくなるため好ましいが、片面あたりの目付量を2.5mg/cm2とすることは非常に困難である。そこで負極活物質層の目付量は、片面あたり2.5〜15mg/cm2となるようにすることが好ましい。最後に負極活物質層をプレスして、負極活物質層の空孔率を調整して負極活物質層を完成させる。負極活物質層の空孔率は、25〜35体積%であることが好ましい。負極活物質層の空孔率を適切な範囲に保つことにより、負極活物質層の耐久性を向上させることができる。
0026
このようにして、適切な負極活物質層を施した負極をリチウムイオン二次電池用負極として用い、リチウムイオン二次電池を作製することができる。上記の通り、本明細書においてリチウムイオン二次電池とは、正極と、負極と、セパレータと、電解液と、を含む発電要素を、外装体内部に含むリチウムイオン二次電池である。そこでリチウムイオン二次電池は、負極の他に、正極、セパレータおよび電解液を含む発電要素と、これらを包む外装体とから構成されている。負極以外の構成部品を以下に説明する。
0027
実施形態のリチウムイオン二次電池において正極とは、正極活物質と、バインダと、導電助剤との混合物を金属箔等の正極集電体に塗布または圧延および乾燥して正極活物質層を形成した薄板状あるいはシート状の電池部材である。正極活物質層は、好ましくはリチウム・ニッケル系複合酸化物を正極活物質として含む。リチウム・ニッケル系複合酸化物とは、一般式LixNiyMe(1−y)O2(ここでMeは、Al、Mn、Na、Fe、Co、Cr、Cu、Zn、Ca、K、Mg、およびPbからなる群より選択される、少なくとも1種以上の金属である。)で表される、リチウムとニッケルとを含有する遷移金属複合酸化物のことである。
0028
実施形態において用いることができる正極は、正極活物質を含む正極活物質層が正極集電体に配置された正極を含む。好ましくは、正極は、正極活物質、バインダおよび場合により導電助剤の混合物をアルミニウム箔などの金属箔からなる正極集電体に塗布または圧延し、乾燥して得た正極活物質層を有している。各実施形態において、正極活物質層は、好ましくはリチウム・ニッケル系複合酸化物を正極活物質として含む。リチウム・ニッケル系複合酸化物とは、一般式LixNiyMe(1−y)O2(ここでMeは、Al、Mn、Na、Fe、Co、Cr、Cu、Zn、Ca、K、Mg、およびPbからなる群より選択される、少なくとも1種以上の金属である。)で表される、リチウムとニッケルとを含有する遷移金属複合酸化物のことである。
0029
正極活物質層は、さらにリチウム・マンガン系複合酸化物を正極活物質として含むことができる。リチウム・マンガン系複合酸化物は、たとえばジグザグ層状構造のマンガン酸リチウム(LiMnO2)、スピネル型マンガン酸リチウム(LiMn2O4)等を挙げることができる。リチウム・マンガン系複合酸化物を併用することで、より安価に正極を作製することができる。特に、過充電状態での結晶構造の安定度の点で優れるスピネル型のマンガン酸リチウム(LiMn2O4)を用いることが好ましい。
0030
正極活物質層は、特に、一般式LixNiyCozMn(1−y−z)O2で表される層状結晶構造を有するリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物を正極活物質として含むことが好ましい。ここで、一般式中のxは1≦x≦1.2であり、yおよびzはy+z<1を満たす正の数であり、yの値が0.5以下である。なお、マンガンの割合が大きくなると単一相の複合酸化物が合成されにくくなるため、1−y−z≦0.4とすることが望ましい。また、コバルトの割合が大きくなると高コストとなり容量も減少するため、z<y、z<1−y−zとすることが望ましい。高容量の電池を得るためには、y>1−y−z、y>zとすることが特に好ましい。
0031
正極活物質層に場合により用いられる導電助剤として、カーボンナノファイバー等のカーボン繊維、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、活性炭、黒鉛、メゾポーラスカーボン、フラーレン類、カーボンナノチューブ等の炭素材料が挙げられる。その他、正極活物質層には増粘剤、分散剤、安定剤等の、電極形成のために一般的に用いられる電極添加剤を適宜使用することができる。
0032
正極活物質層に用いられるバインダとして、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ポリアニリン類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリピロール類等の導電性ポリマー、スチレンブタジエンラバー(SBR)、ブタジエンラバー(BR)、クロロプレンラバー(CR)、イソプレンラバー(IR)、アクリロニトリルブタジエンラバー(NBR)等の合成ゴム、あるいはカルボキシメチルセルロース(CMC)、キサンタンガム、グアーガム、ペクチン等の多糖類を用いることができる。
0033
実施形態のリチウムイオン二次電池においてセパレータとは、正極と負極とを隔離して負極・正極間のリチウムイオンの伝導性を確保するための膜状の電池部材である。実施形態において用いられるセパレータは、オレフィン系樹脂層から構成される。オレフィン系樹脂層は、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、へキセンなどのα−オレフィンを重合または共重合させたポリオレフィンから構成される層である。実施形態において、電池温度上昇時に閉塞される空孔を有する構造、すなわち多孔質あるいは微多孔質のポリオレフィンから構成される層であることが好ましい。オレフィン系樹脂層がこのような構造を有していることにより、万一電池温度が上昇しても、セパレータが閉塞して(シャットダウンして)、イオン流を寸断することができる。シャットダウン効果を発揮するためには、多孔質のポリエチレン膜を用いることが非常に好ましい。セパレータは、場合により耐熱性微粒子層を有していてよい。この際、電池の異常発熱を防止するために設けられた耐熱性微粒子層は、耐熱温度が150℃以上の耐熱性を有し、電気化学反応に安定な無機微粒子から構成される。このような無機微粒子として、シリカ、アルミナ(α−アルミナ、β−アルミナ、θ−アルミナ)、酸化鉄、酸化チタン、チタン酸バリウム、酸化ジルコニウムなどの無機酸化物;ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、スピネル、マイカ、ムライトなどの鉱物を挙げることができる。このように、耐熱性樹脂層を有するセラミックセパレータを用いることもできる。
0034
実施形態のリチウムイオン二次電池において電解液とは、イオン性物質を溶媒に溶解させた電気伝導性のある溶液のことである。実施形態においては特に非水電解液を用いることができる。正極と負極とセパレータと電解液とを含む発電要素とは、電池の主構成部材の一単位であり、通常、正極と負極とがセパレータを介して積層されて、この積層物が電解液に浸漬されている。
0035
本明細書の実施形態において用いる電解液は、非水電解液であって、ジメチルカーボネート(以下「DMC」と称する。)、ジエチルカーボネート(以下「DEC」と称する。)、エチルメチルカーボネート(以下「EMC」と称する。)、ジ−n−プロピルカーボネート、ジ−t−プロピルカーボネート、ジ−n−ブチルカーボネート、ジ−イソブチルカーボネート、またはジ−t−ブチルカーボネート等の鎖状カーボネートと、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(以下「EC」と称する。)等の環状カーボネートとを含む混合物であることが好ましい。電解液は、このようなカーボネート混合物に、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)等のリチウム塩を溶解させたものである。
0036
電解液は、環状カーボネートであるPCとECと、鎖状カーボネートであるDMCとEMCとを必須の成分として含む。特にPCは、凝固点が低い溶媒であり、電池の低温時の出力の向上のために欠かすことができない。ただしPCは負極として用いられる黒鉛との相性がやや低いことが知られている。ECは極性が高く誘電率が高い溶媒であり、リチウムイオン二次電池用電解液の構成成分として欠かすことができない。ただしECは融点(凝固点)が高く、室温で固体であるため、これを混合溶媒にしても、低温下では凝固および析出するおそれがある。DMCは拡散係数が大きく粘度が低い溶媒である。ただしDMCは融点(凝固点)が高いため、電解液が低温下で凝固するおそれがある。EMCもDMCと同様拡散係数が大きく粘度が低い溶媒である。このように、電解液の構成成分はそれぞれに異なる特性を有しており、電池の低温時の出力を向上させるためにはこれらのバランスを考慮することが重要である。環状カーボネートと鎖状カーボネートとの含有割合を調整することにより、常温での粘度が低く、低温下においても性能を失わない電解液を得ることができる。
0037
電解液は、このほか、添加剤として環状カーボネート化合物を含んでいてもよい。添加剤として用いられる環状カーボネートとしてビニレンカーボネート(VC)が挙げられる。また、添加剤としてハロゲンを有する環状カーボネート化合物を用いてもよい。これらの環状カーボネートも、電池の充放電過程において正極ならびに負極の保護被膜を形成する化合物である。特に、上記のジスルホン酸化合物またはジスルホン酸エステル化合物のような硫黄を含む化合物による、リチウム・ニッケル系複合酸化物を含有する正極活物質への攻撃を防ぐことができる化合物である。ハロゲンを有する環状カーボネート化合物として、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート、トリフルオロエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ジクロロエチレンカーボネート、トリクロロエチレンカーボネート等を挙げることができる。ハロゲンを有し不飽和結合を有する環状カーボネート化合物であるフルオロエチレンカーボネートは特に好ましく用いられる。
0038
また、電解液は、添加剤としてジスルホン酸化合物をさらに含んでいてもよい。ジスルホン酸化合物とは、一分子内にスルホ基を2つ有する化合物であり、スルホ基が金属イオンと共に塩を形成したジスルホン酸塩化合物、あるいはスルホ基がエステルを形成したジスルホン酸エステル化合物を包含する。ジスルホン酸化合物のスルホ基の1つまたは2つは、金属イオンと共に塩を形成していてもよく、アニオンの状態であってもよい。ジスルホン酸化合物の例として、メタンジスルホン酸、1,2−エタンジスルホン酸、1,3−プロパンジスルホン酸、1,4−ブタンジスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ビフェニルジスルホン酸、およびこれらの塩(メタンジスルホン酸リチウム、1,3−エタンジスルホン酸リチウム等)、およびこれらのアニオン(メタンジスルホン酸アニオン、1,3−エタンジスルホン酸アニオン等)が挙げられる。またジスルホン酸化合物としてはジスルホン酸エステル化合物が挙げられ、メタンジスルホン酸、1,2−エタンジスルホン酸、1,3−プロパンジスルホン酸、1,4−ブタンジスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、またはビフェニルジスルホン酸のアルキルジエステルまたはアリールジエステル等の鎖状ジスルホン酸エステル;ならびにメチレンメタンジスルホン酸エステル、エチレンメタンジスルホン酸エステル、プロピレンメタンジスルホン酸エステル等の環状ジスルホン酸エステルが好ましく用いられる。メチレンメタンジスルホン酸エステル(MMDS)は特に好ましく用いられる。
0039
実施形態のリチウムイオン二次電池は、外装体の内部に該発電要素が含まれて成り、好ましくは、発電要素は該外装体内部に封止されている。封止されているとは、発電要素が外気に触れないように、外装体材料により包まれていることを意味する。すなわち外装体は、発電要素をその内部に封止することが可能な袋形状をしている。外装体としてアルミニウムラミネートを用いることができる。
0040
実施形態にかかるリチウムイオン二次電池の構成例を図6に示す。図6においてリチウムイオン二次電池10は、主な構成要素として、負極集電体11、負極活物質層13、セパレータ17、正極集電体12、正極活物質層15を含む。図6では、負極集電体11の両面に負極活物質層13が設けられ、正極集電体12の両面に正極活物質層15が設けられているが、各々の集電体の片面上のみに活物質層を形成することもできる。負極集電体11、正極集電体12、負極活物質層13、正極活物質層15、及びセパレータ17が一つの電池の構成単位、すなわち発電要素である(図中、単電池19)。このような単電池19を、セパレータ17を介して複数積層する。各負極集電体11から延びる延出部を負極リード25上に一括して接合し、各正極集電体12から延びる延出部を正極リード27上に一括して接合してある。なお正極リードとしてアルミニウム板、負極リードとして銅板が好ましく用いられ、場合により他の金属(たとえばニッケル、スズ、はんだ)または高分子材料による部分コーティングを有していてもよい。正極リードおよび負極リードはそれぞれ正極および負極に溶接される。このように複数の単電池を積層してできた電池は、溶接された負極リード25および正極リード27を外側に引き出す形で、外装体29により包装される。外装体29の内部には電解液31が注入されている。外装体29は、2枚の積層体を重ね合わせ、周縁部を熱融着した形状をしている。
0041
<負極活物質の調製>
平均粒径60μmに粉砕したピッチと、平均粒径17μmの球形化黒鉛を重量比8:92で乾式混合した。窒素雰囲気下、1100℃で15時間焼成した。この焼成物を解砕し、400メッシュのふるいに通し、平均粒径17μmの炭素材料(非晶質炭素による被覆層を有する黒鉛)を得た。
一方、焼成温度を1200℃とした以外は上記と同様にして、もう1種類の炭素材料(非晶質炭素による被覆層を有する黒鉛)を得た。表1では、各実施例で用いた炭素材料の焼成時間をそれぞれ記載した。
0042
<負極活物質混合物スラリーの塗工>
負極活物質として炭素材料と、導電助剤としてBET比表面積62m2/gのカーボンブラック粉末(以下、「CB」と称する。)(IMERYSGC製、Super−C65)と、バインダ樹脂としてカルボキシメチルセルロース(以下、「CMC」と称する。)の2重量%水溶液、およびスチレンブタジエン共重合体ラテックス(以下、「SBR」と称する。)の40重量%水溶液とを、固形分質量比で炭素材料:CB:CMC:SBR=96.6:0.4:1.0:2.0の割合で混合し、イオン交換水に添加して撹拌し、これらの材料を均一に混合・分散させてスラリーを作製した。得られたスラリーを、負極集電体となる厚み8μmの銅箔上に乾燥後重量が片面あたり10mg/cm2となるように塗布した。次いで、100℃にて10分間、電極を加熱し、水を蒸発させることにより負極活物質層を形成した。
0043
<負極の圧縮成形>
上記のように得られた負極活物質層を形成した負極をロールプレスにて電極密度1.55g/cm3となるように圧縮成形し、実施例1の負極とした。
電極密度1.90g/cm3となるように圧縮成形したこと以外は実施例1と同様に負極を作製した(実施例2)
電極密度1.20g/cm3となるように圧縮成形したこと以外は実施例1と同様に負極を作製した(実施例3)
負極活物質混合物スラリー作製時の固形分質量比を、炭素材料:CB:CMC:SBR=95.6:0.4:1.0:3.0とし、電極密度2.1/cm3となるように圧縮成形したこと以外は実施例1と同様に負極を作製した(実施例4)
負極活物質混合物スラリー作製時の固形分質量比を、炭素材料:CB:CMC:SBR=95.6:0.4:1.0:3.0とし、電極密度を1.00g/cm3となるように圧縮成形したこと以外は実施例1と同様に負極を作製した(実施例5)。
電極密度を1.55g/cm3となるように圧縮成形したこと以外は実施例5と同様に負極を作製した(実施例6)。
負極活物質炭素材料の焼成温度を1200℃とし、電極密度を1.90g/cm3となるように圧縮成形したこと以外は実施例1と同様に負極を作製した(実施例7)。
負極活物質混合物スラリー作製時の固形分質量比を、炭素材料:CB:CMC:SBR=97.6:0.4:1.0:1.0とし、電極密度を1.70g/cm3となるように圧縮成形したこと以外は実施例5と同様に負極を作製した(比較例1)。
表1では、上記の負極活物質の混合比率を「負極混合比率」の欄に記載し、負極活物質層の形成の際に負荷した圧力を「製造時プレス圧」の欄に記載し、出来上がった負極活物質層の密度を「負極密度*製造時」の欄に記載した。
0044
<正極の作製>
炭酸リチウム(Li2CO3)と、水酸化ニッケル(Ni(OH)2)と水酸化コバルト(Co(OH)2)と、水酸化マンガン(Mn(OH)2)とを、焼成後のLiOH量、Li2CO3量がそれぞれ1.0重量%となるように、所定のモル比で混合し、乾燥雰囲気下750℃で20時間焼成した。このリチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物を粉砕して、平均粒径9μmのリチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物(NCM=523、リチウム/メタル比=1.04、BET比表面積22m2/g)を得た。このNCM523とリチウムマンガン酸化物(LiMn2O4)とを80:20で混合した混合酸化物を正極活物質の材料とした。この混合酸化物と、BET比表面積62m2/gのCB、BET比表面積22m2/gの黒鉛粉末(以下、「GR」と称する。)ならびにバインダ樹脂としてPVDF(クレハ製、#7200)とを、固形分質量比でCB:GR:PVDFが3:1:3の割合となるように混合したものとを90:10となるように混合し、溶媒であるNMPに添加した。さらに、この混合物に有機系水分捕捉剤として無水シュウ酸(分子量90)を、上記混合物からNMPを除いた固形分100質量部に対して0.03質量部添加した上で遊星方式の分散混合を30分間実施することで、これらの材料を均一に分散させてスラリーを作製した。得られたスラリーを、正極集電体となる厚み15μmのアルミニウム箔上に塗布した。次いで、125℃にて10分間、電極を加熱し、NMPを蒸発させることにより正極活物質層を形成した。さらに、電極をプレスして、正極集電体の片面上に厚さ140μmの正極活物質層を塗布した正極を作製した。
0046
<電解液>
エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)およびエチルメチルカーボネート(EMC)を、30:60:10(体積比)で混合した混合非水溶媒に電解質塩としての六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を濃度が0.9mol/Lとなるように溶解させ、次いで、添加剤としてメチレンメタンジスルホネート(MMDS)、ビニレンカーボネート(VC)およびフルオロエチレンカーボネート(FEC)を合計濃度が1重量%となるように溶解させた。この非水混合溶媒を電解液として各々用いた。
0047
<リチウムイオン二次電池の作製>
上記のように作製した正極板および負極板を所定のサイズの矩形に切り出した。正極端子を接続するための未塗布部にアルミニウム製の正極リード端子を超音波溶接した。同様に負極端子を接続するための未塗布部にニッケル製の負極リード端子を超音波溶接した。ポリプロピレン多孔質セパレータの両面に上記負極板と正極板とを両活物質層がセパレータを隔てて重なるように配置して電極積層体を得た。この電極積層体を2枚のアルミニウムラミネートフィルムで包み、長辺の一方を除いて三辺を熱融着により接着した。電解液を電極積層体とセパレータの空孔に対して140%の液量となるように注液して真空含浸させた後、減圧下にて開口部を熱融着により封止することによって、積層型リチウムイオン電池を作成した。この積層型リチウムイオン電池の初充電を行った後、45℃でエージングを数日間行い、積層型リチウムイオン二次電池を得た。
0048
<負極への電解液の浸透性>
得られた各負極を直径16mmの円形に打ち抜き、露点−30℃の雰囲気下で、プロピレンカーボネート(PC)1マイクロリットルを負極活物質層上に滴下した。表面の光沢がなくなった時点を目視で観測し、この時点でPCが負極活物質層に浸透したと判断した。負極活物質層へのPCの滴下から浸透までの時間を測定した。測定した値は、表1中、「電解液浸透時間」の欄に記載した。
0049
<負極のプレス特性>
得られた各負極に、250MPa、300MPa、あるいは350MPaの圧力をかけた後の負極活物質層密度を測定した。測定した値は、表1中、「負極密度*250MPaプレス後」、「負極密度*300MPaプレス後」および「負極密度*350MPaプレス後」の欄にそれぞれ記載した。
0050
<初回充放電>
上記の通り作製した積層型リチウムイオン二次電池を用いて初回充放電を行った。初回充放電は、まず雰囲気温度25℃で、100mA電流、上限電圧4.2Vでの定電流定電圧(CC−CV)充電を行い、その後、45℃で数日間エージングを行った。その後、2.5Vまで20mA電流での定電流放電を行った。
0051
<サイクル特性試験>
上記の通り初回充放電を実施した積層型リチウムイオン二次電池を用いて、サイクル特性試験を実施した。サイクル条件は、温度25℃環境下で、充電:100mA、上限電圧4.15V、終止電流1mAでの定電流定電圧充電、放電:100mA、下限電圧2.5V終止で定電流放電の充放電を1サイクルとして500サイクル(500回)繰り返した。このとき測定した1サイクル目の放電容量と、500サイクル目の放電容量を用い、1サイクル目の放電容量に対する500サイクル目の放電容量の維持率(%)(=500サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量×100(%))を算出し、これを電池の耐久性の目安とした。
0052
上記の実施例ならびに比較例の負極を用いた積層型リチウムイオン二次電池のサイクル特性(放電容量維持率)を表1に示す。なお表1に記載された値は、実施例1にて測定された放電容量維持率を100としたときの相対値となっている。
0053
0054
負極活物質層に対する圧力(単位はメガパスカル)と、当該圧力をかけた後に測定した負極活物質層の密度(単位はグラム/cm3)との関係が所定の条件を満たす負極活物質層を有する負極を用いた電池は、サイクル特性に優れていることがわかる。電池のサイクル特性は、負極活物質層の製造直後の密度ではなく、製造後に特定の圧力でプレスしたときにどのくらいの密度の値になるかに関連している。負極活物質層に所定の圧力をかけた時に負極活物質層密度が高くなりすぎるものは、すなわち、負極活物質層が圧力により変形しやすいものであることを意味する。このように強度が不足した負極活物質層を有する負極を用いたリチウムイオン二次電池は、サイクル特性が低下すると考えられる。
実施例
0055
以上、本発明の実施例について説明したが、上記実施例は本発明の実施形態の一例を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を特定の実施形態あるいは具体的構成に限定する趣旨ではない。
0056
1リチウムイオン二次電池用負極
101負極集電体
102負極活物質
103導電助剤
104バインダ
10リチウムイオン二次電池
11 負極集電体
12正極集電体
13負極活物質層
15正極活物質層
17セパレータ
25負極リード
27正極リード
29外装体
31 電解液
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